(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051234
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】ローションティシュー製品
(51)【国際特許分類】
A47K 10/16 20060101AFI20220324BHJP
A47K 10/20 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
A47K10/16 C
A47K10/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020157602
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 創
【テーマコード(参考)】
2D135
【Fターム(参考)】
2D135AA02
2D135AA20
2D135AB03
2D135AB10
2D135AC01
2D135AD03
2D135AD04
2D135AD07
2D135AD08
2D135AD12
2D135AD23
2D135BA08
2D135DA02
2D135DA05
2D135DA06
2D135DA10
2D135DA12
2D135DA13
2D135DA28
2D135DA35
(57)【要約】
【課題】カートンから取り出す時の破れを低減でき且つドロップバックの発生を低減できるローションティシュー製品を提供すること。
【解決手段】ローションティシュー製品において、1ply当たりの坪量が14g/m
2以上20g/m
2以下であり、厚さが0.58mm/10ply以上0.85mm/10ply以下であり、薬剤の含有量が15重量%以上28重量%以下であり、乾燥縦強度が220gf/25mm以上380gf/25mm以下である。以下である第1領域(1Hz以上3Hz)における第1振動刺激値が400V/s以上1100V/s以下であり、第2領域(3Hzより大きく40Hz以下)における第2振動刺激値が5000V/s以上12000V/s以下であり、第3領域(40Hzより大きく1000Hz以下)における第3振動刺激値が15000V/s以上25000V/s以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2plyのシートで構成され且つ薬剤が塗布されたローションティシューと、
複数の前記ローションティシューが積層された状態で収納される直方体状のカートンと、
を備え、
1plyの前記シートの坪量が、14g/m2以上20g/m2以下であり、
前記シートの厚さが、0.58mm/10ply以上0.85mm/10ply以下であり、
前記ローションティシューの前記薬剤の含有量が、15重量%以上28重量%以下であり、
前記ローションティシューの、抄紙機の流れ方向と平行な縦方向の乾燥時の引張強さである乾燥縦強度が220gf/25mm以上380gf/25mm以下であり、
振動測定装置を用いて測定される前記ローションティシューの振動特性、及び最低振動検出閾値近似線の値に基づき算出される振動刺激値のうち、周波数が1Hz以上3Hz以下である第1領域における第1振動刺激値が、400V/s以上1100V/s以下であり、
前記振動刺激値のうち、周波数が3Hzより大きく40Hz以下である第2領域における第2振動刺激値が、5000V/s以上12000V/s以下であり、
前記振動刺激値のうち、周波数が40Hzより大きく1000Hz以下である第3領域における第3振動刺激値が、15000V/s以上25000V/s以下である
ローションティシュー製品。
【請求項2】
前記ローションティシューの、前記縦方向に対して直交する横方向の乾燥時の引張強さである乾燥横強度が50gf/25mm以上110gf/25mm以下である
請求項1に記載のローションティシュー製品。
【請求項3】
前記薬剤は、油性成分を含み、
前記ローションティシューの前記油性成分の含有量は、0.08重量%以上0.55重量%以下である
請求項1又は2に記載のローションティシュー製品。
【請求項4】
前記カートンから前記ローションティシューを引き出す時、前記ローションティシューの前記縦方向が引き出し方向と平行である
請求項1から3のいずれか1項に記載のローションティシュー製品。
【請求項5】
前記カートンの長辺の長さは、220mm以上260mm以下であり、
前記カートンの短辺の長さは、105mm以上135mm以下であり、
前記カートンの高さは、70mm以上110mm以下であり、
前記ローションティシューの前記縦方向の長さは、190mm以上250mm以下であり、
前記ローションティシューの前記縦方向に対して直交する横方向の長さは、185mm以上225mm以下である
請求項1から4のいずれか1項に記載のローションティシュー製品。
【請求項6】
前記カートンは、前記ローションティシューの取り出し口を覆うフィルムを備え、
前記フィルムは、長さが100mm以上125mm以下であるスリットを備える
請求項1から5のいずれか1項に記載のローションティシュー製品。
【請求項7】
前記カートンの高さは、70mm以上110mm以下であり、
前記カートンに収納された前記ローションティシューの組数は、170組以上260組以下である
請求項1から6のいずれか1項に記載のローションティシュー製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローションティシュー製品に関する。
【背景技術】
【0002】
フェイシャルティシューは、適切な触感のしっとり感、柔らかさ、及びボリューム感を有することが求められる。触感のしっとり感、及び柔らかさを向上させる方法として、フェイシャルティシューに薬液を塗布する方法が知られている。例えば、特許文献1には、薬液が塗布されたティシュペーパー製品の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、薬液の塗布量が増加するほど、紙の強度は低下する。また、薬液の塗布量の高いローションティシューは、比重が高いので、カートンの中の積層体の自重によって少しずつ潰れていく。このため、カートンの中では、隣接する2組のローションティシューの間の隙間(空気層)が狭くなることが多い。言い換えると、ローションティシューの組同士の重なりが強くなる傾向がある。その結果、1組のローションティシューをカートンから取り出す時に、取り出した組のうち次の1組と重なった部分、次の1組のうち取り出した組と重なった部分、又は取り出した組と次の1組の両方が破れる可能性がある。
【0005】
ローションティシューの摩擦係数を低くすれば、取り出し時のローションティシューの破れを低減することはできる。一方で、ローションティシューの摩擦係数を低くすると、取り出し口を覆うフィルムとの摩擦が低くなり、ドロップバック(カートンから出ているティシューが取り出し口から落ちてカートンの中に入ってしまう現象)が生じやすくなる。
【0006】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、カートンから取り出す時の破れを低減でき且つドロップバックの発生を低減できるローションティシュー製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本開示のローションティシュー製品は、2plyのシートで構成され且つ薬剤が塗布されたローションティシューと、複数の前記ローションティシューが積層された状態で収納される直方体状のカートンと、を備え、1plyの前記シートの坪量が、14g/m2以上20g/m2以下であり、前記シートの厚さが、0.58mm/10ply以上0.85mm/10ply以下であり、前記ローションティシューの前記薬剤の含有量が、15重量%以上28重量%以下であり、前記ローションティシューの、抄紙機の流れ方向と平行な縦方向の乾燥時の引張強さである乾燥縦強度が220gf/25mm以上380gf/25mm以下であり、振動測定装置を用いて測定される前記ローションティシューの振動特性、及び最低振動検出閾値近似線の値に基づき算出される振動刺激値のうち、周波数が1Hz以上3Hz以下である第1領域における第1振動刺激値が、400V/s以上1100V/s以下であり、前記振動刺激値のうち、周波数が3Hzより大きく40Hz以下である第2領域における第2振動刺激値が、5000V/s以上12000V/s以下であり、前記振動刺激値のうち、周波数が40Hzより大きく1000Hz以下である第3領域における第3振動刺激値が、15000V/s以上25000V/s以下である。
【0008】
薬剤の含有量が15重量%以上28重量%以下であることによって、ローションティシューは、適度な柔らかさ及びしっとり感を備え、且つ表面の適度な滑らかさを備えるようになる。これにより、カートンから取り出すローションティシューと、次のローションティシューとの間の摩擦が低減する。その結果、カートンから取り出す時のローションティシューが破れる可能性が低減する。その一方で、ローションティシューの摩擦係数を低くすると、ドロップバック(カートンから出ているローションティシューが取り出し口から落ちてカートンの中に入ってしまう現象)が生じやすくなる可能性がある。これに対して、本開示のローションティシューは、上述した特定の坪量、紙厚、薬剤の含有量、及び強度を有する場合に対応した、先的な摩擦係数を有する。第1振動刺激値(ISAI)、第2振動刺激値(IFAI)、及び第3振動刺激値(IFAII)が上述した範囲内であることによって、ローションティシューの摩擦係数が、カートンから取り出す時のローションティシューが破れとドロップバックの両方を抑制できる値となる。したがって、本開示のローションティシュー製品は、カートンから取り出す時の破れを低減でき且つドロップバックの発生を低減できる。
【0009】
本開示のローションティシュー製品は、前記ローションティシューの、前記縦方向に対して直交する横方向の乾燥時の引張強さである乾燥横強度が50gf/25mm以上110gf/25mm以下であることが好ましい。
【0010】
これにより、本開示のローションティシュー製品は、ローションティシューをカートンから取り出す時の破れをより低減できる。
【0011】
本開示のローションティシュー製品は、前記薬剤は、油性成分を含み、前記ローションティシューの前記油性成分の含有量は、0.08重量%以上0.55重量%以下であることが好ましい。
【0012】
これにより、本開示のローションティシュー製品は、ローションティシューの柔らかさ、しっとり感、及び表面の滑らかさをより向上させることができる。
【0013】
本開示のローションティシュー製品は、前記カートンから前記ローションティシューを引き出す時、前記ローションティシューの前記縦方向が引き出し方向と平行であることが好ましい。
【0014】
これにより、ローションティシューをカートンから取り出す時、テンションのかかる方向と縦方向が平行になりやすくなる。このため、本開示のローションティシュー製品は、ローションティシューをカートンから取り出す時の破れをより低減できる。
【0015】
本開示のローションティシュー製品は、前記カートンの長辺の長さは、220mm以上260mm以下であり、前記カートンの短辺の長さは、105mm以上135mm以下であり、前記カートンの高さは、70mm以上110mm以下であり、前記ローションティシューの前記縦方向の長さは、190mm以上250mm以下であり、前記ローションティシューの前記縦方向に対して直交する横方向の長さは、185mm以上225mm以下であることが好ましい。
【0016】
これにより、ローションティシューがカートンから引き出しやすくなる。本開示のローションティシュー製品は、ローションティシューをカートンから取り出す時の破れをより低減できる。
【0017】
本開示のローションティシュー製品は、前記カートンは、前記ローションティシューの取り出し口を覆うフィルムを備え、前記フィルムは、長さが100mm以上125mm以下であるスリットを備えることが好ましい。
【0018】
本開示のローションティシュー製品は、フィルムによって、ドロップバックの発生をより低減することができる。また、フィルムが上述した長さのスリットを備えることによって、ローションティシューがカートンから引き出しやすくなる。その結果、本開示のローションティシュー製品は、ローションティシューをカートンから取り出す時の破れをより低減できる。
【0019】
本開示のローションティシュー製品は、前記カートンの高さは、70mm以上110mm以下であり、前記カートンに収納された前記ローションティシューの組数は、170組以上260組以下であることが好ましい。
【0020】
これにより、上記の高さを有するカートンにローションティシューの束を挿入した際、束がカートンに潰されなくなる。ローションティシュー製品は、取り出す時の破れをより低減でき、且つカートンを小型化できる。
【発明の効果】
【0021】
本開示のローションティシュー製品は、カートンから取り出す時の破れを低減でき且つドロップバックの発生を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本実施形態のローションティシュー製品の斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のローションティシュー製品の斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態のローションティシュー製品の製造工程の一部を示す模式図である。
【
図4】
図4は、本実施形態のローションティシュー製品の製造工程の一部を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本実施形態のローションティシュー製品の製造工程の一部を示す模式図である。
【
図6】
図6は、本実施形態の振動測定装置の斜視図である。
【
図7】
図7は、摩擦感テスターの性能を示す図である。
【
図11】
図11は、振動測定装置によって測定された振動波形を示すグラフである。
【
図12】
図12は、算出された振幅スペクトルを示すグラフである。
【
図15】
図15は、振幅スペクトル及び最低振動検出閾値近似線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0024】
(実施形態)
図1及び
図2は、本実施形態のローションティシュー製品の斜視図である。
図1に示すように、本実施形態のローションティシュー製品30は、カートン60と、ローションティシュー31と、を備える。
【0025】
図2に示すように、カートン60は、直方体状の箱である。カートン60は、複数のローションティシュー31を積層した状態で収容する内部空間を有する。カートン60は、取り出し口61と、フィルム63と、を備える。取り出し口61は、カートン60の上面に設けられる開口である。フィルム63は、取り出し口61を覆うように配置される。フィルム63は、内部のローションティシュー31を取り出すためのスリット65を備える。スリット65の長手方向は、カートン60の長辺方向と平行である。
【0026】
カートン60の長辺方向の長さW1は、220mm以上260mm以下であることが好ましい。カートン60の短辺方向の長さW2は、105mm以上135mm以下であることが好ましい。カートン60の高さHは、70mm以上110mm以下であることが好ましい。スリット65の長さSは、100mm以上125mm以下であることが好ましい。
【0027】
ローションティシュー31は、2plyのシートで構成されている。1つのローションティシュー31は、2plyのシートが重ねられることによって形成されている。ローションティシュー31を構成するシートの1ply当たりの坪量は、14g/m2以上20g/m2以下であることが好ましい。より好ましくは、シートの1ply当たりの坪量は、15.5g/m2以上18.5g/m2以下である。シートの厚さ(紙厚)は、0.58mm/10ply以上0.85mm/10ply以下であることが好ましい。より好ましくは、シートの厚さは、0.64mm/10ply以上0.80mm/10ply以下である。シートの坪量及び厚さが低すぎる場合、ローションティシュー31の強度が低下し、カートン60から取り出すときに破れやすくなることがある。一方、シートの坪量及び厚さが高すぎる場合、ローションティシュー31の柔らかさ及び滑らかさが劣化することがある。また、カートン60の小型化が難しくなる。本実施形態のローションティシュー製品30は、シートの坪量及び厚さが上述した範囲内にあることによって、ローションティシュー31のカートン60から取り出すときの破れを低減し、柔らかさ及び滑らかさを向上させ、且つカートン60を小型化できる。
【0028】
カートン60に収納された状態のローションティシュー31の縦方向は、カートン60の短辺方向と平行である。縦方向は、抄紙機の流れ方向に沿った方向であり、MD方向とも呼ばれる。カートン60のスリット65からローションティシュー31を引き出す時、ローションティシュー31の縦方向が引き出し方向と平行になる。ローションティシュー31の縦方向の長さは、190mm以上250mm以下であることが好ましい。ローションティシュー31の横方向の長さは、185mm以上225mm以下であることが好ましい。横方向は、抄紙機の流れ方向に対して直交する方向であり、CD方向とも呼ばれる。また、カートン60に収納されるローションティシュー31の組数は、170組以上260組以下であることが好ましい。
【0029】
ローションティシュー31には、薬剤が塗布されている。ローションティシュー31の薬剤の含有量は、15重量%以上28重量%以下であることが好ましい。より好ましくは、薬剤の含有量は、18重量%以上25重量%以下である。
【0030】
薬剤は、水性成分と、油性成分と、を含む。水性成分としては、例えば多価アルコール(2価以上の水酸基を有するアルコール)を挙げることができる。薬剤の水性成分の含有量を調整することにより、ローションティシュー31のしっとり感が向上する。油性成分は、シリコーン、又はシアバターであることが好ましい。2種類以上の油性成分を混ぜて使用してもよい。より好ましくは、油性成分は、アミノ変性シリコーンである。ローションティシュー31の油性成分の含有量は、0.08重量%以上0.55重量%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.17重量%以上0.41重量%以下である。これにより、ローションティシュー31の滑らかさが向上する。
【0031】
例えば、薬剤の含有量は、以下の方法により測定される。まず、ローションティシュー31を5g採取し、乾燥機(105℃)で120分乾燥させる。その後、デシケーターで30分放冷し、重量(m1)を測定する。次に、ローションティシュー31及び抽出溶媒(アセトン及びエタノールを1:1の割合で混合した溶媒)150mlを用いて4時間、ソックスレー抽出を行う。得られた抽出物を湯浴上で加熱濃縮し、乾燥機(105℃)で90分乾燥させる。その後、デシケーターで30分放冷し、重量(m2)を測定する。そして、m1とm2に基づき薬剤の含有量を算出する。薬剤の含有量(重量%)をCとすると、C=m2/m1×100によって、薬剤の含有量(重量%)が算出される。
【0032】
ローションティシュー31の乾燥時の縦方向の引張強さである乾燥縦強度(Dry Machine Direction Tensile strength:DMDT)は、220gf/25mm以上380gf/25mm以下であることが好ましい。より好ましくは、ローションティシュー31の乾燥縦強度は、250gf/25mm以上350gf/25mm以下である。乾燥縦強度が上述した範囲内であることによって、ローションティシュー31が適切な柔らかさ及び滑らかさを備えやすくなり、且つ破れにくくなる。乾燥縦強度は、JIS P8113に基づいて測定される。
【0033】
ローションティシュー31の乾燥時の横方向の引張強さである乾燥横強度(Dry Cross Direction Tensile strength:DCDT)は、50gf/25mm以上110gf/25mm以下であることが好ましい。より好ましくは、ローションティシュー31の乾燥横強度は、60gf/25mm以上100gf/25mm以下である。乾燥横強度が上述した範囲内であることによって、ローションティシュー31が適切な柔らかさ及び滑らかさを備えやすくなり、且つ破れにくくなる。乾燥横強度は、JIS P8113に基づいて測定される。
【0034】
図3から
図5は、本実施形態のローションティシュー製品の製造工程の一部を示す模式図である。ローションティシュー製品30は、
図3から
図5に示す工程を経ることによって製造される。
【0035】
図3は、2つの第1次原反ロール71から、第2次原反ロール72が形成される工程を示す。第1次原反ロール71は、1plyのシートが巻かれたロールである。第2次原反ロール72は、2plyのシートが巻かれたロールである。
図3に示すように、2つの第1次原反ロール71が設置される。2つの第1次原反ロール71から引き出されたシートが重ねられる。重なった2つのシートには、カレンダー機79によってカレンダー加工が施される。カレンダー加工とは、平滑なロールの間にシートを通すことによって、シートの平滑性を向上させ且つシートに光沢を付与する加工である。
【0036】
次に、第2次原反ロール72にオフラインで薬剤を塗布することによって第3次原反ロール73を形成する。オフラインとは、抄紙工程及び加工工程とは別の工程を意味する。第2次原反ロール72にオフラインで薬剤を塗布することで、オンライン(抄紙工程及び加工工程)で塗布する場合と比べて、第3次原反ロール73の保管期間を長くすることができる。このため、第3次原反ロール73に薬剤を十分に浸透させることができる。また、オンラインで薬剤を塗布する場合と比べて、多量の薬剤を均質に第2次原反ロール72に塗布することが可能である。薬剤の塗布量を増やすほど、第3次原反ロール73から製造されるローションティシュー31の柔らかさ、及びしっとり感が向上する。第2次原反ロール72にオフラインで薬剤を塗布する方法としては、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、ロール塗布、スプレー塗布等が挙げられる。
【0037】
図4は、第3次原反ロール73を保管する工程を示す。例えば、薬剤が塗布された第3次原反ロール73の外周面にラッピングフィルム91が隙間なく巻き付けられる。ラッピングフィルム91の外周面に締付バンド92が巻き付けられる。これにより、第3次原反ロール73の形態が安定する。すなわち、保管中の第3次原反ロール73の変形が抑制される。第3次原反ロール73は、ホルダ93の上に載せられた状態で所定期間保管される。
【0038】
図5は、第3次原反ロール73からローションティシュー31を形成し、ローションティシュー31をカートン60に収納する工程を示す。第3次原反ロール73は、インターフォルダ81によって加工される。インターフォルダ81は、ロータリー式インターフォルダであることが好ましい。ローションティシュー31の強度は、薬剤を塗布しないティシューの強度と比較して低い。インターフォルダ81としてロータリー式インターフォルダを用いることによって、マルチスタンド式インターフォルダを用いる場合と比較して、ローションティシュー31にテンションがかかりにくい。このため、ローションティシュー31の破れが抑制される。また、ロータリー式インターフォルダを用いることによって、カートン60からローションティシュー31を引き出す時、ローションティシュー31の縦方向が引き出し方向と平行になる。なお、仮にマルチスタンド式インターフォルダを用いた場合、カートン60からローションティシュー31を引き出す時、ローションティシュー31の横方向が引き出し方向と平行になる。
【0039】
インターフォルダ81によって、複数のローションティシュー31が形成されると共に、複数のローションティシュー31の積層体35が形成される。積層体35は、搬送装置82によって搬送される。搬送装置82の上にある積層体35の移動方向は、ローションティシュー31の縦方向と平行である。すなわち、
図5の紙面の左右方向がローションティシュー31の縦方向である。積層体35は、搬送の途中で、圧縮装置83によって圧縮される。具体的には、積層体35は、搬送装置82と圧縮装置83との間を通過することによって、圧縮される。圧縮された積層体35は、カートン60に向かって搬送され、カートン60の内部に収納される。これにより、ローションティシュー製品30が製造される。
【0040】
ローションティシュー31に関して、第1振動刺激値(以下、ISAIという)は、400V/s以上1100V/s以下である。より好ましくは、ISAIは、600V/s以上900V/s以下である。ISAIは、周波数が1Hz以上3Hz以下である第1領域における振動刺激値である。
【0041】
ローションティシュー31に関して、第2振動刺激値(以下、IFAIという)は、5000V/s以上12000V/s以下である。より好ましくは、IFAIは、6500V/s以上10500V/s以下である。IFAIは、周波数が3Hzより大きく40Hz以下である第2領域における振動刺激値である。
【0042】
ローションティシュー31に関して、第3振動刺激値(以下、IFAIIという)は、15000V/s以上25000V/s以下である。より好ましくは、IFAIIは、17000V/s以上23000V/s以下である。IFAIIは、周波数が40Hzより大きく1000Hz以下である第3領域における振動刺激値である。
【0043】
ISAI、IFAI、及びIFAIIは、後述する振動測定装置10を用いて測定されるローションティシュー31の振動特性、及び最低振動検出閾値近似線の値に基づき算出される振動刺激値である。具体的には、ISAI、IFAI、及びIFAIIは、以下で説明する方法で算出される。ISAI、IFAI、及びIFAIIは、振動測定ステップと、振幅スペクトル算出ステップと、振動刺激値算出ステップと、を経て算出される。振動測定ステップは、ローションティシュー31に接する接触子51及び振動を検出するためのセンサ59を備える振動測定装置10を用いて、ローションティシュー31が移動する時の振動情報を測定する工程である。振幅スペクトル算出ステップは、ローションティシュー31の振動情報に基づき、周波数ごとの振幅スペクトルを算出する工程である。振動刺激値算出ステップは、振幅スペクトルと最低振動検出閾値近似線の値とに基づき、ISAI、IFAI、及びIFAIIを算出する工程である。
【0044】
図6は、本実施形態の振動測定装置の斜視図である。
図7は、摩擦感テスターの性能を示す図である。
図8は、固定具の分解図である。
図9は、センサユニットの分解図である。
図10は、センサの性能を示す図である。
図11は、振動測定装置によって測定された振動波形を示すグラフである。
【0045】
I
SAI、I
FAI、及びI
FAIIを算出するに当たって、まず振動測定装置10を用いて、サンプル(ローションティシュー31)が移動する時の振動情報が測定される(振動測定ステップ)。
図6に示すように、振動測定装置10は、摩擦感テスター20と、固定具40と、センサユニット50と、を備える。振動測定装置10においては、固定具40によって支持されるサンプルが移動させられる。振動測定装置10は、固定具40が移動する時にサンプルに生じる振動を取得できる。
【0046】
摩擦感テスター20は、
図7に示す性能を有する。
図6に示すように、摩擦感テスター20は、移動ステージ21と、アーム23と、を備える。移動ステージ21は、水平方向に沿って移動できる。移動ステージ21は、固定具40を水平方向に移動させる。例えば、移動ステージ21は、モータ及びボールねじで駆動する直動機構によって移動する。アーム23は、移動ステージ21の上方に配置され、水平方向に延びている。アーム23は、鉛直方向に移動できる。アーム23は、センサユニット50を支持する。
【0047】
固定具40は、サンプルを支持するための装置である。
図8に示すように、固定具40は、土台41と、抑え板43と、衝撃吸収パッド45と、を備える。土台41は、移動ステージ21に固定される。抑え板43は、土台41に固定部材によって固定される。固定部材は、例えばネジである。土台41及び抑え板43は、例えばアクリルであって、NC加工機を用いて形成される。衝撃吸収パッド45は、土台41と抑え板43との間に設けられる。土台41と抑え板43との間にサンプルが配置される。固定部材が締め付けられることによって、サンプルが土台41と衝撃吸収パッド45とによって挟まれる。衝撃吸収パッド45は、サンプルが土台41からずれることを抑制する。
【0048】
図6に示すように、センサユニット50は、摩擦感テスター20のアーム23に取り付けられ、所定の高さで位置決めされる。
図9に示すように、センサユニット50は、振動板57と、センサ59と、接触子51と、挟み板53と、を備える。
【0049】
振動板57の上端は、アーム23に固定される。振動板57は、例えばリン青銅で形成される。センサ59は、振動板57に生じる振動を検出する。センサ59は、例えばひずみゲージである。センサ59は、
図10に示す性能を有する。センサ59は、振動板57の両面に配置される。センサ59は、例えば接着剤によって振動板57の表面に固定される。センサ59には、動ひずみ測定器が接続される。動ひずみ測定器は、センサ59のひずみ量を電気信号として取り込み、電圧値として表示する。接触子51及び挟み板53は、振動板57の下端に固定される。接触子51及び挟み板53は、例えばアクリルで形成される。接触子51及び挟み板53は、振動板57を挟む。接触子51及び挟み板53は、ネジによって振動板57に固定される。接触子51の底面は、曲面である。水平方向であり且つ移動ステージ21の移動方向に対して直交する方向から見て、接触子51の底面は、半円を描いている。接触子51の底面が、サンプルに接する。挟み板53は、略直方体状である。
【0050】
以下において、振動測定ステップの一例を示す。本実施形態の振動測定ステップにおいては、振動測定装置10は、サンプルが水平方向に沿って移動するように設置される。サンプルは、縦方向(MD方向)が移動方向と平行になるように設置される。すなわち、本実施形態のISAI、IFAI、及びIFAIIは、サンプルが縦方向(MD方向)且つ水平方向に沿って移動するように振動測定装置10が設置された状態で測定される振動情報に基づいて、算出される。
【0051】
振動測定ステップにおいて、サンプル(ローションティシュー31)の振動情報を測定する時、まずセンサ59の導線が動ひずみ測定器に接続される。次に、サンプルが、固定具40に固定される。その後、摩擦感テスター20を駆動することによって、振動の測定が開始される。サンプルは、接触子51によって所定の力で上から押される。例えば本実施形態において、所定の力は、0.5Nである。
【0052】
移動ステージ21は、所定の速度で水平方向に移動する。所定の速度は、1mm/sec以上8mm/sec以下であることが望ましい。例えば本実施形態において、所定の速度は、5mm/secである。移動ステージ21は、所定の時間移動させられる。所定の時間は、1秒以上であることが望ましい。例えば本実施形態において、所定の時間は、3秒間である。サンプリング周波数は10kHzである。
図11は、振動測定装置10によって測定されたサンプルの振動波形を示すグラフの一例である。
【0053】
振動測定装置10の各構成の材料は、必ずしも上述した材料に限定されない。振動板57の材料は、リン青銅に限定されず、その他の金属であってもよいし、金属以外の材料であってもよい。接触子51及び挟み板53の材料は、アクリルに限定されず、その他の材料であってもよい。
【0054】
振動測定ステップの後、サンプルの振動情報に基づき、周波数ごとの振幅スペクトルが算出される(振幅スペクトル算出ステップ)。以下において、振幅スペクトル算出ステップの一例を示す。振幅スペクトルは、例えば、フーリエ変換によって算出される。
【0055】
任意の周期信号f(t)は、三角関数の和で表示できる。周期信号は、フーリエ級数展開を行うことで、構成する三角関数に分解できる。これにより、周期信号に含まれる周波数又はスペクトル等の特徴量がわかるようになる。
【0056】
任意の周期信号f(t)に対し、フーリエ級数展開を行うと、式(1)のように表される。ただし、フーリエ係数a0、an、bnは、それぞれ式(2)、式(3)、式(4)で表される。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
周期信号f(t)は、オイラーの公式である式(5)を用いることによって、式(6)のように複素関数で表される。ただし、フーリエ係数gnは、式(7)で表される。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
デジタル信号の処理には離散的フーリエ変換(DFT)が使用される。離散信号f[n]を用いると式(8)が成り立つ。F[k]は、f[n]の周波数スペクトルと呼ばれる。
【0066】
【0067】
DFTの計算から得られるF[k]は一般的に複素数である。F[k]の実部をRe{F[k]]}とし、F[k]の虚部をIm{F[k]]}とすると、式(9)、式(10)及び式(11)が成り立つ。|F[k]|を振幅スペクトルという。argF[k]を位相スペクトルという。
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
振幅スペクトル及び位相スペクトルの算出には、N2回の計算が必要になる。高速フーリエ変換(FFT)は、DFTを2点のDFTの組み合わせに分解することによって、計算回数がNlog2N回になるため、計算時間を短縮できる。
【0072】
例えば、振動測定ステップで得られた振動情報のうち、移動ステージ21が駆動した直後の最初の1秒間の情報に対して、数値解析ソフトウェアを用いてFFT処理が行われる。例えば、データ点数は8192点であり、窓関数にはハミング窓が用いられる。
図12は、算出された振幅スペクトルを示す図である。
図12において、縦軸は、振幅スペクトル(Amplitude Spectrum)である。
【0073】
振幅スペクトル算出ステップの後、振幅スペクトルと最低振動検出閾値近似線の値とに基づき、ISAI、IFAI、及びIFAIIが算出される(振動刺激値算出ステップ)。以下において、振動刺激値算出ステップの一例を示す。
【0074】
I
SAI、I
FAI、及びI
FAIIは、振幅スペクトルと最低振動検出閾値近似線の値とに基づき算出される。
図13は、振動検出閾値曲線を示す図である。人が物を触った際に皮膚に加わる機械的刺激を知覚するものは、機械受容器である。機械受容器は、人の触感覚に大きく関与する。機械受容器としては、マイスナー小体、パチニ小体、メルケル触盤及びルフィニ終末が存在する。機械受容器は、機械受容器とそれに連なる神経線維を合わせた受容野の形態と、機械的刺激への神経発火特性の性質とから、速順応I形(FAI)、速順応II形(FAII)、遅順応I形(SAI)及び遅順応II形(SAII)に分類される。受容野の大きさは、FAIとSAIは直径数mm程度と小さい。これに対し、FAIIとSAIIは、大きく、且つ境界が不鮮明である。また、FAIは加えられた刺激の速度成分に対して神経発火する。FAIIは加えられた刺激の加速度成分に対し神経発火する。SAIとSAIIは加えられた機械刺激の変位に対して神経発火する。マイスナー小体がFAIに分類されている。パチニ小体がFAIIに分類されている。メルケル触盤がSAIに分類されている。ルフィニ終末がSAIIに分類されている。
【0075】
受容野に対して加わった機械的刺激の大きさによって機械受容器が神経発火する。これにより、人は触感を得る。人が検出できる振動の閾値に関する情報として、振動検出閾値曲線がある。
図13に示すように、SAIに関しては、1Hz以上100Hz以下付近で周波数を変化させても検出閾値は、あまり変動しない。FAIに関しては、10Hz以上40Hz以下で検出閾値が最小になる。FAIIに関しては、100Hz以上1000Hz以下で検出閾値が最小になる。最低振動検出閾値近似線は、各周波数における最小の振動検出閾値を結んだ線である。
図13において、最低振動検出閾値近似線は、太い線で示される。最低振動検出閾値曲線よりも大きい振幅の刺激が加われば、いずれかの受容器が神経発火し、人は触感を認識すると考えられる。また、SAIIの振動検出閾値曲線は、いずれの周波数帯においても他のどの受容器よりも閾値が高く、最低振動検出閾値曲線に影響を与えないため省略されている。
【0076】
図14は、最低振動検出閾値近似線を示す図である。
図13で示す最低振動検出閾値曲線は、
図14に示す最低振動検出閾値近似線で表すことができる。最低振動検出閾値近似線の近似式は、式(12)、式(13)、式(14)及び式(15)で定義される。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
ただし、SAIは変位のセンサであることから、LSAIの値は、全てのサンプルにおいて0よりも大きくなる必要がある。3Hz以下の周波数において、最小の振幅スペクトルとなるサンプルの値と一致するようにLSAIの値が決定される。
【0082】
LSAI、LFAI、LFAII、はそれぞれSAI、FAI、FAIIの振動検出閾値近似線である。fは振動刺激の周波数である。また、LFAI,40HzとLFAII,250Hzはそれぞれ40Hz時の閾値、250Hz時の閾値を示す。
【0083】
図15は、振幅スペクトル及び最低振動検出閾値近似線を示す図である。
図15は、最低振動検出閾値近似線を対数表記したグラフと、
図12に示すグラフを対数表記したグラフと、を示す図である。
図15において、実線が
図12に示すグラフを対数表記したグラフであり、破線が最低振動検出閾値近似線を対数表記したグラフである。
図15において、最低振動検出閾値近似線を超えた部分が振動刺激値である。振動刺激値
Ii(I
SAI、I
FAI、及びI
FAII)は、式(16)、式(17)及び式(18)によって求められる。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
P
iはピリオドグラムにおけるi番目のデータの振幅スペクトルである。L
iは、最低振動検出閾値近似線のi番目の値である。f
l及びf
hは、各周波数帯の周波数における最小値および最大値である。最低振動検出閾値近似線を示す受容野ごとに分割して、I
SAI、I
FAI、及びI
FAIIが算出される。
図15に示したグラフにおいて測定された振動が閾値近似線を上回った部分が、式(16)から式(18)を使用して算出された。
【0088】
表1は、本実施形態のローションティシュー製品30の一例である実施例に対する官能評価及び使いやすさを示す表である。表2は、比較例に対する官能評価及び使いやすさ評価を示す表である。
【0089】
【0090】
【0091】
実施例及び比較例について、官能評価が行われた。具体的には、柔らかさ、しっとり感、及び滑らかさについて、官能評価が行われた。官能評価は、60名を対象にして行われた。各実施例及び各比較例の柔らかさ、しっとり感、及び滑らかさについて、60名が1点から5点で評価した。表1及び表2の柔らかさ、しっとり感、及び滑らかさの欄において、「優」は60名の評価の平均点が4点以上であることを示し、「良」は平均点が3点以上4点未満であることを示し、「不可」は、平均点が3点未満であることを示す。柔らかさ、しっとり感、及び滑らかさの官能評価がすべて「良」以上であることが、ローションティシュー製品30が満たすべき条件である。
【0092】
柔らかさは、ローションティシューの使用時に感じる柔らかさである。柔らかさに関する官能評価において、「優」は特に柔らかく感じることを意味し、「良」は柔らかく感じることを意味し、「不可」は硬く感じることを意味する。
【0093】
しっとり感は、ローションティシューの使用時に感じるしっとり感である。しっとり感に関する官能評価において、「優」は特にしっとり感じることを意味し、「良」はしっとりと感じることを意味し、「不可」はしっとり感が感じられないことを意味する。
【0094】
滑らかさは、ローションティシューの使用時に感じる滑らかさである。滑らかさに関する官能評価において、「優」は特に滑らかと感じることを意味し、「良」は滑らかであると感じることを意味し、「不可」は滑らかさが足りず鼻をかむと痛く感じることがあることを意味する。
【0095】
実施例及び比較例について、ローションティシュー製品の使いやすさに関する実験が行われた。具体的には、カートンからローションティシューを取り出す時の破れづらさ、及びドロップバック(カートンから出ているティシューが取り出し口から落ちてカートンの中に入ってしまう現象)の発生頻度が測定された。
【0096】
取り出し時の破れづらさは、ローションティシューをカートンから取り出した時の、取り出したローションティシュー、次のローションティシュー、又は取り出したローションティシュー及び次のローションティシューの両方、に関する破れづらさを意味する。表1及び表2の取り出し時の破れづらさの欄において、「優」は、カートンに収納された全てのローションティシューを破れることなく使いきれたことを示す。「良」は、カートンに収納された全てのローションティシューを使い切るまでに破れの発生したローションティシューの数が2組以下であったことを示す。言い換えると、「良」は、ローションティシューが稀に部分的に破れることがあるが、破れが気にならない程度であったことを示す。「不可」は、カートンに収納された全てのローションティシューを使い切るまでに破れの発生したローションティシューの数が3組以上であったことを示す。
【0097】
ドロップバックの頻度は、ローションティシューをカートンから取り出した時の、ドロップバックが発生する頻度を意味する。表1及び表2のドロップバックの頻度の欄において、「優」は、カートンに収納された全てのローションティシューを、ドロップバックが発生することなく使いきれたことを示す。「良」は、カートンに収納された全てのローションティシューを使い切るまでに発生したドロップバックの回数が2度以下であったことを示す。「不可」は、カートンに収納された全てのローションティシューを使い切るまでに発生したドロップバックの回数が3度以上であったことを示す。
【0098】
第1実施例から第5実施例は、本実施形態のローションティシュー製品30の一例である。表1に示すように、第1実施例から第5実施例において、ローションティシュー31を構成する1plyのシートの坪量が14g/m2以上20g/m2以下である。第1実施例から第5実施例において、紙厚(シートの厚さ)は、0.58mm/10ply以上0.85mm/10ply以下である。第1実施例から第5実施例において、乾燥縦強度が、220gf/25mm以上380gf/25mm以下である。第1実施例から第5実施例において、振動測定装置10を用いて測定されるISAIが、400V/s以上1100V/s以下であり、IFAIが5000V/s以上12000V/s以下であり、IFAIIが15000V/s以上25000V/s以下である。第1実施例から第5実施例において、薬剤の含有量が、15重量%以上28重量%以下である。第1実施例から第5実施例においては、官能評価(柔らかさ、しっとり感、及び滑らかさ)、並びに使いやすいさ(取り出し時の破れづらさ、及びドロップバックの頻度)がすべて「良」以上である。
【0099】
表2に示すように、第1比較例においては、坪量が14g/m2未満である(14g/m2以上20g/m2以下の範囲外である)。紙厚が0.58mm/10ply未満である(0.58mm/10ply以上0.85mm/10ply以下の範囲外である)。乾燥縦強度が、220gf/25mm未満である(220gf/25mm以上380gf/25mm以下の範囲外である)。ISAIが400V/s未満である(400V/s以上1100V/s以下の範囲外である)。IFAIが5000V/s未満である(5000V/s以上12000V/s以下の範囲外である)。IFAIIが15000V/s未満である(15000V/s以上25000V/s以下の範囲外である)。第1比較例においては、ドロップバックの頻度に関する評価が「不可」である。
【0100】
表2に示すように、第2比較例においては、坪量が20g/m2よりも大きい(14g/m2以上20g/m2以下の範囲外である)。紙厚が0.85mm/10plyよりも大きい(0.58mm/10ply以上0.85mm/10ply以下の範囲外である)。乾燥縦強度が、380gf/25mmよりも大きい(220gf/25mm以上380gf/25mm以下の範囲外である)。ISAIが1100V/sよりも大きい(400V/s以上1100V/s以下の範囲外である)。IFAIが12000V/sよりも大きい(5000V/s以上12000V/s以下の範囲外である)。IFAIIが25000V/sよりも大きい(15000V/s以上25000V/s以下の範囲外である)。第2比較例においては、柔らかさ、滑らかさ、及び取り出し時の破れづらさに関する評価が「不可」である。
【0101】
表2に示すように、第3比較例においては、ISAIが400V/s未満である(400V/s以上1100V/s以下の範囲外である)。IFAIIが15000V/s未満である(15000V/s以上25000V/s以下の範囲外である)。薬剤の含有量が、15重量%未満である(15重量%以上28重量%以下の範囲外である)。第3比較例においては、しっとり感、及びドロップバックの頻度に関する評価が「不可」である。
【0102】
表2に示すように、第4比較例においては、ISAIが1100V/sよりも大きい(400V/s以上1100V/s以下の範囲外である)。IFAIが12000V/sよりも大きい(5000V/s以上12000V/s以下の範囲外である)。IFAIIが25000V/sよりも大きい(15000V/s以上25000V/s以下の範囲外である)。薬剤の含有量が、28重量%よりも大きい(15重量%以上28重量%以下の範囲外である)。第4比較例においては、滑らかさ、及び取り出し時の破れづらさに関する評価が「不可」である。
【0103】
以上で説明したように、本実施形態のローションティシュー製品30は、2plyのシートで構成され且つ薬剤が塗布されたローションティシュー31と、複数のローションティシュー31が積層された状態で収納される直方体状のカートン60と、を備える。1plyのシートの坪量が、14g/m2以上20g/m2以下であり、シートの厚さ(紙厚)が、0.58mm/10ply以上0.85mm/10ply以下である。ローションティシュー31の薬剤の含有量が、15重量%以上28重量%以下である。ローションティシュー31の、抄紙機の流れ方向と平行な縦方向の乾燥時の引張強さである乾燥縦強度が220gf/25mm以上380gf/25mm以下である。振動測定装置10を用いて測定されるローションティシュー31の振動特性、及び最低振動検出閾値近似線の値に基づき算出される振動刺激値のうち、周波数が1Hz以上3Hz以下である第1領域における第1振動刺激値(ISAI)が、400V/s以上1100V/s以下である。振動刺激値のうち、周波数が3Hzより大きく40Hz以下である第2領域における第2振動刺激値(IFAI)が、5000V/s以上12000V/s以下である。振動刺激値のうち、周波数が40Hzより大きく1000Hz以下である第3領域における第3振動刺激値(IFAII)が、15000V/s以上25000V/s以下である。
【0104】
薬剤の含有量が15重量%以上28重量%以下であることによって、ローションティシュー31は、適度な柔らかさ及びしっとり感を備え、且つ表面の適度な滑らかさを備えるようになる。これにより、カートン60から取り出すローションティシュー31と、次のローションティシュー31との間の摩擦が低減する。その結果、カートン60から取り出す時のローションティシュー31が破れる可能性が低減する。その一方で、ローションティシュー31の摩擦係数を低くすると、ドロップバック(カートン60から出ているローションティシュー31が取り出し口から落ちてカートン60の中に入ってしまう現象)が生じやすくなる可能性がある。これに対して、本実施形態のローションティシュー31は、上述した特定の坪量、紙厚、薬剤の含有量、及び強度を有する場合に対応した、先的な摩擦係数を有する。第1振動刺激値(ISAI)、第2振動刺激値(IFAI)、及び第3振動刺激値(IFAII)が上述した範囲内であることによって、ローションティシュー31の摩擦係数が、カートン60から取り出す時のローションティシュー31が破れとドロップバックの両方を抑制できる値となる。したがって、本実施形態のローションティシュー製品30は、カートン60から取り出す時の破れを低減でき且つドロップバックの発生を低減できる。その結果、ローションティシュー製品30は、表1に示すように、柔らかさ、しっとり感、滑らかさ、取り出し時の破れづらさ、及びドロップバックの頻度に関する評価を向上させることができる。
【0105】
本実施形態のローションティシュー製品30において、ローションティシュー31の、縦方向に対して直交する横方向の乾燥時の引張強さである乾燥横強度が50gf/25mm以上110gf/25mm以下である。
【0106】
これにより、本実施形態のローションティシュー製品30は、ローションティシュー31をカートン60から取り出す時の破れをより低減できる。
【0107】
本実施形態のローションティシュー製品30において、薬剤は、油性成分を含む。ローションティシューの油性成分の含有量は、0.08重量%以上0.55重量%以下である。
【0108】
これにより、本実施形態のローションティシュー製品30は、ローションティシュー31の柔らかさ、しっとり感、及び表面の滑らかさをより向上させることができる。
【0109】
本実施形態のローションティシュー製品30において、カートン60からローションティシュー31を引き出す時、ローションティシュー31の縦方向が引き出し方向と平行である。
【0110】
これにより、ローションティシュー31をカートン60から取り出す時、テンションのかかる方向と縦方向が平行になりやすくなる。このため、本実施形態のローションティシュー製品30は、ローションティシュー31をカートン60から取り出す時の破れをより低減できる。
【0111】
本実施形態のローションティシュー製品30において、カートン60の長辺の長さW1は、220mm以上260mm以下である。カートン60の短辺の長さW2は、105mm以上135mm以下である。カートン60の高さHは、70mm以上110mm以下である。ローションティシュー31の縦方向の長さは、190mm以上250mm以下である。ローションティシュー31の縦方向に対して直交する横方向の長さは、185mm以上225mm以下である。
【0112】
これにより、ローションティシュー31がカートン60から引き出しやすくなる。本実施形態のローションティシュー製品30は、ローションティシュー31をカートン60から取り出す時の破れをより低減できる。
【0113】
本実施形態のローションティシュー製品30において、カートン60は、ローションティシュー31の取り出し口61を覆うフィルム63を備える。フィルム63は、長さが100mm以上125mm以下であるスリット65を備える。
【0114】
本実施形態のローションティシュー製品30は、フィルム63によって、ドロップバックの発生をより低減することができる。また、フィルム63が上述した長さのスリット65を備えることによって、ローションティシュー31がカートン60から引き出しやすくなる。その結果、本実施形態のローションティシュー製品30は、ローションティシュー31をカートン60から取り出す時の破れをより低減できる。
【0115】
本実施形態のローションティシュー製品30において、カートン60の高さHは、70mm以上110mm以下である。カートン60に収納されたローションティシュー31の組数は、170組以上260組以下である。
【0116】
これにより、上記の高さを有するカートン60にローションティシュー31の束(積層体35)を挿入した際、束がカートンに潰されなくなる。ローションティシュー製品30は、取り出す時の破れをより低減でき、且つカートン60を小型化できる。
【符号の説明】
【0117】
10 振動測定装置
20 摩擦感テスター
21 移動ステージ
23 アーム
30 ローションティシュー製品
31 ローションティシュー
35 積層体
40 固定具
41 土台
43 抑え板
45 衝撃吸収パッド
50 センサユニット
51 接触子
53 挟み板
57 振動板
59 センサ
60 カートン
61 取り出し口
63 フィルム
65 スリット
71 第1次原反ロール
72 第2次原反ロール
73 第3次原反ロール
79 カレンダー機
81 インターフォルダ
82 搬送装置
83 圧縮装置
91 ラッピングフィルム
92 締付バンド
93 ホルダ