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特開2022-51237金属板の歪み除去方法及びそれに用いる道具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051237
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】金属板の歪み除去方法及びそれに用いる道具
(51)【国際特許分類】
   B21D 1/12 20060101AFI20220324BHJP
【FI】
B21D1/12 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020157609
(22)【出願日】2020-09-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】518385279
【氏名又は名称】株式会社NDインパクト
(74)【代理人】
【識別番号】100151390
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 淨宗
(72)【発明者】
【氏名】浅見 由治
【テーマコード(参考)】
4E003
【Fターム(参考)】
4E003AA03
4E003DA04
(57)【要約】
【課題】金属板に生じた歪みにつき、該金属板を加熱することにより該歪みを除去する方法及びそれに用いる道具に関し、該歪みが転移することを防止し、また、それまでに行った加熱では除去しきれなかった歪みが該金属板に残存している場合に、これを的確に加熱するための方法及びそれに用いる道具を提供する。
【解決手段】加熱孔2aと止着部材挿通孔2bとが穿設されている金属製の板状部材で形成された歪み転移防止具2を金属板の歪み1aが生じていると思われる箇所に加熱孔1aが位置するようにして載置する。止着部材挿通孔2bに止着部材3を挿通させる。止着部材3に通電し、加熱孔2aを取り囲むようにして、止着部材3を金属板1に一時的に止着させる。その後、加熱孔2aを介して金属加熱器4により金属板の歪み1aに加熱する。その後、歪み転移防止具2と止着部材3とを金属板1から撤去する。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板を加熱することにより該金属板の歪みを除去するための方法であって、該金属板を加熱するための金属加熱器を用いて該金属板の歪みを加熱するための貫通孔である加熱孔と、該加熱孔を取り囲むようにして設けられている該金属板に止着するための金属製の部材で形成された止着部材を挿通するための貫通孔である止着部材挿通孔とが穿設されている金属製の板状部材で形成された歪み転移防止具を該金属板の歪みが生じていると思われる箇所に該加熱孔が位置するようにして載置する段階と、該止着部材挿通孔に該止着部材を挿通させる段階と、該止着部材に通電して、該加熱孔を取り囲むようにして該止着部材を該金属板に一時的に止着させる段階とを備えており、これらの各段階の後、該加熱孔を介して該金属加熱器により該金属板の歪みを加熱する段階を備えており、この段階の後、該歪み転移防止具と該止着部材とを該金属板から撤去する段階を備えていることを特徴とする金属板の歪み除去方法。
【請求項2】
請求項1に記載した金属板の歪み除去方法を構成する各段階に加えて、前記加熱孔を介して金属加熱器により金属板の歪みを加熱する段階の後、該加熱した箇所を冷却する段階を備えていることを特徴とする金属板の歪み除去方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載した金属板の歪み除去方法を構成する各段階に加えて、前記歪み転移防止具と止着部材とを金属板から撤去する段階において、前記金属板に一時的に止着させている前記止着部材の一部を該金属板に存置させておき、この段階の後、該歪み転移防止具を従前載置されていた箇所とは異なる金属板の歪みが生じていると思われる箇所に前記加熱孔が位置するようにして移動させ、該金属板に存置させておいた該止着部材に前記止着部材挿通孔を挿通させて、該歪み転移防止具を該金属板に再度載置する段階を備えていることを特徴とする金属板の歪み除去方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれかに記載した金属板の歪み除去方法であって、前記止着部材が前記金属板を形成している金属と同種の金属によって形成されている方法であることを特徴とする金属板の歪み除去方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれかに記載した金属板の歪み除去方法であって、前記金属加熱器の端部が銅系材料によって形成されている方法であることを特徴とする金属板の歪み除去方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれかに記載した金属板の歪み除去方法に用いる歪み転移防止具であって、金属製の板状部材で形成されており、加熱孔と止着部材挿通孔とが穿設されており、該加熱孔は、該金属板を加熱するための金属加熱器を用いて該金属板の歪みを加熱するための貫通孔であり、該止着部材挿通孔は、該金属板に止着するための金属製の部材で形成された止着部材を挿通するための貫通孔であって、該加熱孔を取り囲むようにして穿設されていることを特徴とする歪み転移防止具。
【請求項7】
請求項6に記載した金属板の歪み除去方法に用いる歪み転移防止具であって、その全体がアルミニウム系材料によって形成されていることを特徴とする歪み転移防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、金属板に生じた歪みにつき、該金属板を加熱することにより該歪みを除去する方法、及びそれに用いる道具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車を例に挙げて説明すると、自動車が衝突事故に遭う等した場合、図1に図示するように、該自動車の車体を形成している金属製の外板に歪みが生じ、該外板が伸びてこぶ状の凸部を生じたり、あるいは該外板がいわゆるペコペコしたりする状態になってしまう。従来、このような自動車の車体を形成する金属製の外板に生じた歪みを除去する方法としては、該外板を叩打するといった方法が一般に用いられてきた。しかしながら、このような方法では、該歪みを除去するために手間がかかってしまい、しかも十分に該歪みを除去することができないため、該外板にパテを塗布して均す等して該歪みを取り繕っていたのが実情であった。
【0003】
ところで、上記のような自動車の車体を形成している金属製の外板といった各種の金属板に生じた歪みにつき、以下に示す通り、該金属板を加熱することにより該歪みを除去する方法が提案されているところである。即ち、自動車の車体を形成する金属板といった金属薄板を精密に収縮ないしは平延べするための方法において、電気溶接器具による短時間のつち打ち状の打撃運動によって点状の溶接箇所が生成され、それらの領域内において該金属薄板は短時間の間高温度に加熱され、これにより該加熱された箇所の周囲の中に応力を除去された該金属薄板の収縮が実現されるようにしたことを特徴とする方法が提案されている(例えば、下記の特許文献1を参照)。また、板表面の狭い範囲を加熱急冷することによって歪みを除去するプラズマ加熱による薄板の歪取方法において、電極とノズル電極との間に発生するプラズマジェットで板表面を加熱急冷して歪みを除去することを特徴とするプラズマ加熱による薄板の歪取り方法が提案されている(例えば、下記の特許文献2を参照)。更に、自動車の外板パネルの板金補修において補修部のみを局部的に加熱し、周辺部の熱的影響を最小限に留めた鋼板の形状を復元する方法につき、電磁誘導加熱装置を用いて局部的に鋼板を加熱し鋼板の形状を復元する方法であって、特に前記電磁誘導加熱の照射強度は照射周波数40kHzの電磁波において400~800W、照射時間は1.0~5.0秒である鋼板の形状を復元する方法が提案されている(例えば、下記の特許文献3を参照)。そして、金属製薄板の歪とり方法である加熱急冷方法であって、加熱についてアークまたは電気抵抗熱を用いて順次連続自動的に一点または数点ずつ加熱する方法であって、特に、該金属製薄板の表面に多数の孔を設けた電磁マグネット板を当てて、該孔の内部に位置する金属製薄板を電気で加熱した後、急冷する方法が提案されている(例えば、下記の特許文献4を参照)。
【0004】
上記のように、金属板に生じた歪みにつき、該歪みが生じている箇所を加熱すれば該歪みを除去できることは従前知られているところであり(例えば、下記の特許文献1ないし3を参照)、特に、孔部を穿設した板状部材を該金属板に載置させて、該孔部内に位置する箇所を電気で加熱する方法が既に提案されているところである(例えば、下記の特許文献4を参照)。このような金属板の歪み除去方法によれば、上記のように該金属板にパテを塗布して均す等して該歪みを取り繕う必要もなく、該歪みを根本的に解消することができるから、好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭50-115638号公報
【特許文献2】特開昭59-94528号公報
【特許文献3】特開2006-315009号公報
【特許文献4】特公昭42-17432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来技術に係る金属板の歪み除去方法では、該歪みを十分に除去することができないことがあった。即ち、該金属板において歪みが生じていると思われる箇所を加熱しても、該歪みが転移してしまうことがあったのである。そうすると、該歪みが転移した箇所を再度加熱しなければならず、該金属板に対する加熱を繰り返し行わなければならなくなり、該歪みを除去するための作業が煩雑になってしまっていた。
【0007】
そこで、本願発明が解決しようとする第1の課題は、金属板に生じた歪みにつき、該金属板を加熱することにより該歪みを除去する方法及びそれに用いる道具に関し、該歪みが転移することを防止できる方法及びそれに用いる道具を提供することにある。
【0008】
また、前記のような金属板の歪みは1箇所だけ生じているとは限らず、複数箇所生じていることもある。このような場合に、上記のような金属板の歪み除去方法では、それまでに行った加熱では除去しきれなかった歪みが該金属板に残存しているときに、該歪みが残存していると思われる箇所を作業者がその感覚をもって探知していたため、その箇所を正確に把握することが困難であった。そのため、該歪みが残存している箇所を探し出してこれを除去するまで、該金属板を繰り返し加熱しなければならなくなり、その作業は煩雑になってしまっていた。
【0009】
そこで、本願発明が解決しようとする第2の課題は、金属板に生じた歪みにつき、該金属板を加熱することにより該歪みを除去する方法及びそれに用いる道具に関し、それまでに行った加熱では除去しきれなかった歪みが該金属板に残存している場合に、該歪みが残存している箇所を的確に加熱するための方法及びそれに用いる道具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、上記の各課題を解決するために提案されたものであり、以下の構成を有するものである。以下では、本願発明の構成を理解することを補助するために、本願に添付した図面に表示した番号及び符号をあわせて記載する。
【0011】
請求項1に係る金属板の歪み除去方法は、金属板(1)を加熱することにより金属板の歪み(1a)を除去するための方法であって、以下の各段階を備えている。即ち、金属板(1)を加熱するための金属加熱器(4)を用いて金属板の歪み(1a)を加熱するための貫通孔である加熱孔(2a)と、加熱孔(2a)を取り囲むようにして設けられている金属板(1)に止着するための金属製の部材で形成された止着部材(3)を挿通するための貫通孔である止着部材挿通孔(2b)とが穿設されている金属製の板状部材で形成された歪み転移防止具(2)を金属板の歪み(1a)が生じていると思われる箇所に加熱孔(2a)が位置するようにして載置する段階である。止着部材挿通孔(2b)に止着部材(3)を挿通させる段階である。止着部材(3)に通電して、加熱孔(2a)を取り囲むようにして止着部材(3)を金属板(1)に一時的に止着させる段階である。これらの各段階の後、加熱孔(2a)を介して金属加熱器(4)により金属板の歪み(1a)を加熱する段階である。この段階の後に、歪み転移防止具(2)と止着部材(3)とを金属板から撤去する段階である。
【0012】
請求項2に係る金属板の歪み除去方法は、請求項1に記載した金属板の歪み除去方法を構成する各段階に加えて、以下の段階を備えている。即ち、前記加熱孔(2a)を介して金属加熱器(4)により金属板の歪み(1a)を加熱する段階の後に、該加熱した箇所を冷却する段階である。
【0013】
請求項3に係る金属板の歪み除去方法は、請求項1又は2に記載した金属板の歪み除去方法を構成する各段階に加えて、以下の段階を備えている。即ち、歪み転移防止具(2)と止着部材(3)とを金属板から撤去する段階において、金属板(1)に一時的に止着させている止着部材(3)の一部を金属板(1)に存置させておき、この段階の後に、歪み転移防止具(2)を従前載置されていた箇所とは異なる金属板の歪み(1a)が生じていると思われる箇所に加熱孔(2a)が位置するようにして移動させ、金属板(1)に存置させておいた止着部材(3)に止着部材挿通孔(2b)を挿通させて、歪み転移防止具(2)を金属板(1)に再度載置する段階である。
【0014】
請求項4に係る金属板の歪み除去方法は、請求項1から3までのいずれかに記載した金属板の歪み除去方法であって、止着部材(3)が金属板(1)を形成している金属と同種の金属によって形成されている方法である。
【0015】
請求項5に係る金属板の歪み除去方法は、請求項1から4までのいずれかに記載した金属板の歪み除去方法であって、金属加熱器の端部(4a)が銅系材料によって形成されている方法である。
【0016】
請求項6に係る金属板の歪み除去方法に用いる歪み転移防止具は、請求項1から5までのいずれかに記載した金属板の歪み除去方法に用いる歪み転移防止具であって、金属製の板状部材で形成されており、加熱孔(2a)と止着部材挿通孔(2b)とが穿設されている。加熱孔(2a)は、金属板(1)を加熱するための金属加熱器(4)を用いて金属板の歪み(1a)を加熱するための貫通孔である。止着部材挿通孔(2b)は、金属板(1)に止着するための金属製の部材で形成された止着部材(3)を挿通するための貫通孔であって、加熱孔(2a)を取り囲むようにして穿設されている。
【0017】
請求項7に係る金属板の歪み除去方法に用いる歪み転移防止具は、請求項6に記載した金属板の歪み除去方法に用いる歪み転移防止具(2)であって、その全体がアルミニウム系材料によって形成されている。
【発明の効果】
【0018】
本願発明に係る金属板の歪み除去方法及びそれに用いる道具は、前記の通りの構成であるから、以下のような効果を奏することができる。
【0019】
まず、請求項1に記載した金属板の歪み除去方法及び請求項6に記載した金属板の歪み除去方法に用いる歪み転移防止具は、前記のように、金属板(1)に歪み転移防止具(2)が載置されているとともに、止着部材挿通孔(2b)に挿通した止着部材(3)が金属板の歪み(1a)を取り囲むようにして金属板(1)に一時的に止着されていることにより、金属加熱器(4)を用いて金属板の歪み(1a)に加熱孔(2a)を介して加熱した際に、歪み転移防止具(2)がその熱を吸収するとともに、止着部材(3)が加熱した金属板の歪み(1a)の周囲を取り囲んでいるから、金属板の歪み(1a)が転移することを防止できる。よって、請求項1に記載した金属板の歪み除去方法及び請求項5に記載した金属板の歪み除去方法に用いる歪み転移防止具は、金属板に生じた歪みにつき、該金属板を加熱することにより該歪みを除去する方法及びそれに用いる道具につき、該歪みが転移することを防止できる方法及びそれに用いる道具を提供するという本願発明が解決しようとする第1の課題を解決することができる。
【0020】
ここで、請求項2に係る金属板の歪み除去方法は、前記のように、加熱した箇所を冷却する段階を含んでいるから、歪み転移防止具(2)がその熱を吸収する効果と相まって、より短時間で金属板の歪み(1a)を除去することができる。
【0021】
次に、請求項3に記載した金属板の歪み除去方法は、金属板(1)に一時的に止着させている止着部材(3)の一部を金属板(1)に存置させておき、歪み転移防止具(2)を従前載置されていた箇所とは異なる金属板の歪み(1a)が生じていると思われる箇所に加熱孔(2a)が位置するようにして移動させ、金属板(1)に存置させておいた止着部材(3)に止着部材挿通孔(2b)を挿通させて、歪み転移防止具(2)を金属板(1)に再度載置する段階を含んでいる。そうすると、作業者は、それまでに本願発明に係る金属板の歪み除去方法を実施した箇所の近傍に残存する別の金属板の歪み(1a)の位置を的確に把握して、これを除去することができるのである。よって、請求項3に記載した金属板の歪み除去方法は、金属板に生じた歪みにつき、該金属板を加熱することにより該歪みを除去する方法及びそれに用いる道具に関し、それまでに行った加熱では除去しきれなかった歪みが該金属板に残存している場合に、該歪みが残存している箇所を的確に加熱するための方法及びそれに用いる道具を提供するという本願発明が解決しようとする第2の課題を解決することができる。
【0022】
ここで、請求項4に係る金属板の歪み除去方法は、請求項1から3までのいずれかに記載した金属板の歪み除去方法であって、止着部材(3)が金属板(1)を形成している金属と同種の金属によって形成されているため、止着部材(3)に通電して金属板(1)に止着する作業を一層効率的に行うことができる。
【0023】
また、請求項5に係る金属板の歪み除去方法は、請求項1から4までのいずれかに記載した金属板の歪み除去方法であって、金属加熱器の端部(4a)が銅系材料によって形成されているところ、銅は熱伝導性に優れているため、金属加熱器(4)による金属板の歪み(1a)に対する加熱を一層効率的に行うことができる。
【0024】
請求項7に係る金属板の歪み除去方法に用いる歪み転移防止具は、請求項6に記載した金属板の歪み除去方法に用いる歪み転移防止具であって、その全体がアルミニウム系材料によって形成されている。即ち、アルミニウムは優れた熱伝導性を備えているため、加熱機(4)によって金属板の歪み(1a)を加熱した際に、該熱が金属板(1)から歪み転移防止具(2)にすぐに伝わるからである。そうすると、金属板の歪み(1a)が転移することを防止できると考えられる。また、歪み転移防止具(2)に伝わった熱もすぐに発散するため、歪み転移防止具(2)を金属板(1)から撤去する際にその作業を行い易くなり、好適である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本願発明に係る金属板の歪み除去方法の対象となる歪みを生じた金属板を示した参考図である。
図2】本願発明に係る金属板の歪み除去方法に用いる歪み転移防止具の平面図である。
図3】本願発明に係る金属板の歪み除去方法において歪み転移防止具を金属板に戴置した状態を示した参考断面図である。
図4】本願発明に係る金属板の歪み除去方法において止着部材を金属板に止着した状態を示した参考断面図である。
図5】本願発明に係る金属板の歪み除去方法において金属板の歪みを加熱する状態を示した参考断面図である。
図6】本願発明に係る金属板の歪み除去方法において歪み転移防止具と止着部材とを金属板から撤去した状態を示した参考図である。
図7】本願発明に係る金属板の歪み除去方法において歪み転移防止具を移動させる状態を示した参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本願発明の一実施形態に係る金属板の歪み除去方法及びそれに用いる道具につき、添付図面に基づいて、これを説明する。
【0027】
本願発明は、図1に図示するように、例えば、自動車が衝突事故に遭う等して、該外板が伸びてこぶ状の凸部を生じたり、あるいは該外板がいわゆるペコペコしたりする状態になってしまった場合に、これを修繕するために用いられるが、特にこのような場合に限定されるものではなく、各種の金属板(1)に生じた歪み(1a)を除去するために広く用いることができる。
【0028】
まず、本願発明に係る金属板の歪み除去方法に用いる歪み転移防止具について、以下に説明する。歪み転移防止具(2)は、図2に図示するように、金属製の板状部材によって形成されており、加熱孔(2a)と止着部材挿通孔(2b)とが穿設されている。ここで、歪み転移防止具はアルミニウム系材料によって形成するのが好適である。即ち、アルミニウムは優れた熱伝導性を備えているため、後述する金属加熱器(4)によって金属板(1)を加熱した際に、該熱が金属板(1)から歪み転移防止具(2)へとすぐに伝わるからである。そうすると、金属板の歪み(1a)が金属板(1)において転移することを防止できると考えられる。また、歪み転移防止具(2)に伝わった熱もすぐに発散するため、後述するように歪み転移防止具(2)を金属板(1)から撤去する作業を行い易くなり、好適である。尚、歪み転移防止具(2)は、図ではその全体的な形状が平面視角丸長方形状であるが、金属板(1)に載置させることができれば、特にこのような形状に限定されるものではない。もっとも、歪み転移防止具(2)は、図示するように、角を落としておくと、作業者が誤って接触する等した際に負傷するおそれを低減させることができ、好適である。
【0029】
加熱孔(2a)は、図2に図示するように、金属加熱器(4)を用いて金属板の歪み(1a)を加熱するための貫通孔である。例えば、図示するように、金属加熱器の端部(4a)を挿通して、金属板の歪み(1a)にこれを当接させるために用いる。図では、加熱孔(2a)は平面視正円であるが、金属加熱器の端部(4a)の形状や大きさ等にあわせて適宜変更することができ、特にこの形状に限定されるものではない。もっとも、加熱孔(2a)は金属加熱器の端部(4a)の挿通される部分より大きな面積を備えている方が、作業者は加熱孔(4a)により金属板(1)が加熱されている状態を視認することができるため好適である。また、図では、加熱孔(2a)は歪み転移防止具(1)の平面視中央に位置しているが、加熱孔(2a)を取り囲むようにして止着部材挿通孔(2b)を歪み転移防止具(1)に穿設することができるのであれば、特にその穿設する位置は限定されない。
【0030】
止着部材挿通孔(2b)は、図2に図示するように、止着部材(3)を挿通するための貫通孔であって、前記の加熱孔(2a)を取り囲むようにして穿設されている。図では、止着部材挿通孔(2b)は、歪み転移防止具(2)において加熱孔(2a)よりも外側に位置するように、歪み転移防止具(2)の平面視上下両辺にそれぞれ設けられた4本の細長状の貫通孔であるが、加熱孔(2a)を取り囲むようにして穿設されていれば、特にこのような形態に限定されるものではない。もっとも、止着部材挿通孔(2b)は、止着部材(3)よりも大きなものとしておくと、止着部材挿通孔(2b)に挿通させた止着部材(3)を金属板(1)に止着させた際に、歪み転移防止具(2)を金属板(1)上で滑動させることにより、その位置を調整することができるようになって好適である。
【0031】
次に、本願発明に係る金属板の歪み除去方法について、以下に説明する。まず、作業者は、図3に図示するように、歪み転移防止具(2)を金属板の歪み(1a)が生じていると思われる箇所に加熱孔(2a)が位置するようにして金属板(1)に載置する。具体的には、金属板(1)が伸びてこぶ状の凸部を形成している箇所に加熱孔(2a)が位置するようにして、作業者は歪み転移防止具(2)を金属板(1)に載置する。
【0032】
次に、作業者は、図4に図示するように、金属板(1)に止着するための金属製の部材で形成された止着部材(3)を止着部材挿通孔(2a)に挿通する。また、作業者は、各種公知の電気溶接機等を用いて、止着部材(3)に通電し、加熱孔(2a)を取り囲むようにして止着部材(3)を金属板(1)に一時的に止着させる。ここで、止着部材(3)は金属板(1)を形成している金属と同種の金属によって形成された部材を用いるのが好適である。例えば、本願発明を自動車の車体を形成している金属製の外板に生じた歪み除去するために用いる場合には、一般に該外板は鋼鉄製であるところ、止着部材(3)も鉄系材料によって形成するのが好適である。即ち、金属板(1)を形成している金属と同種の金属によって形成された止着部材(3)を用いると、止着部材(3)に通電して金属板(1)に止着することが容易になるからである。尚、止着部材(3)は止着部材挿通孔(2b)に挿通することができれば、特にその形状及び大きさ等が限定されるものではない。もっとも、図示するように、止着部材(3)は板状のリング部材であれば、作業者がこれを摘まむ等して止着部材挿通孔(2b)に挿通する作業を行い易くなるとともに、金属板(1)に止着する面積が少なくなることで、後述する止着部材(3)を撤去する際の作業を効率的に行うことができるため、好適である。また、図では、止着部材(3)は4つ用いられることになるが、これは歪み転移防止具(2)に設けた止着部材挿通孔(2b)の数に合わせたものであって、止着部材挿通孔(2b)の数に合わせる等して止着部材(3)の数も適宜調節することができる。尚、上記の順序とは逆に、止着部材(3)に通電して金属板(1)に一時的に止着させた後、止着部材(3)を止着部材挿通孔(2b)に挿通し、歪み転移防止具(2)を金属板(1)に載置させてもよい。
【0033】
そして、作業者は、図5に図示するように、金属板(1)を加熱するための金属加熱器(4)を用いて金属板の歪み(1a)に加熱孔(2a)を介して加熱する。例えば、図示するように、金属加熱器の端部(4a)を加熱孔(2a)に挿通し、金属板の歪み(1a)に当接させてこれを加熱する。本願発明に係る金属板の歪み除去方法によれば、加熱孔(2a)の内部に位置する金属板(1)のみを加熱すれば、金属板(1)を広範囲に加熱することなく、金属板(1)に生じた歪み(1a)を除去することができる。
【0034】
ここで、金属加熱器(4)としては、金属板(1)に通電して加熱することができる各種公知の金属加熱器を用いることができる。上記の止着部材に通電する装置と同じ装置を用いることも可能であり、同じ装置を用いることにより効率的に作業を行うことができる。また、金属加熱器の端部(4a)は、銅系材料によって形成された物を用いるのが好適である。即ち、銅は熱伝導性に優れているため、金属加熱器の端部(4a)による金属板の歪み(1a)に対する加熱を一層効率的に行うことができるからである。
【0035】
それから、作業者は、上記のようにして加熱した金属板の歪み(1a)を冷却する。その具体的な冷却手段としては、例えば、水で濡らしたタオルを該加熱した箇所に当接させるといった手段が考えられる。加熱した箇所を冷却することにより、前記の歪み転移防止具(2)がその熱を吸収する効果と相まって、より短時間で金属板の歪み(1a)を除去することができる。
【0036】
最後に、作業者は、図6に図示するように、歪み転移防止具(2)と止着部材(3)とを金属板(1)から撤去する。ここで、歪み転移防止具(2)は金属板(1)に載置されているだけであり、止着部材(3)は金属板(1)に一時的に止着させているだけであるから、これらを金属板(1)から撤去することは容易である。
【0037】
上記のような本願発明に係る金属板の歪み除去方法によれば、金属板(1)に歪み転移防止具(2)が載置されているとともに、止着部材挿通孔(2b)に挿通した止着部材(3)が金属板の歪み(1a)を取り囲むようにして金属板(1)に一時的に止着されていることにより、金属加熱器(4)を用いて金属板の歪み(1a)に加熱孔(2a)を介して加熱した際に、歪み転移防止具(2)がその熱を吸収するとともに、止着部材(3)が加熱した金属板の歪み(1a)の周囲を取り囲んでいるから、金属板の歪み(1a)が転移することを防止できる。
【0038】
ところで、金属板の歪み(1a)は1箇所だけ生じているとは限らず、複数箇所生じていることもある。このような場合には、上記のような本願発明に係る金属板の歪み除去方法を一度だけ実施しても、金属板の歪み(1a)を金属板(1)から完全に除去することができない。このような場合には、本願発明に係る金属板の歪み除去方法を再度実施することになるが、それまでに本願発明に係る金属板の歪み除去方法を実施した箇所の近傍に残存する歪みを除去するためには、その位置を正確に把握する必要がある。
【0039】
即ち、前記のように歪み転移防止具(2)と止着部材(3)とを金属板(1)から撤去する際に、図7に図示するように、金属板(1)に一時的に止着させておいた止着部材(3)を金属板(1)から全て撤去するのではなく、その一部を金属板(1)に存置させておく。図では、1つの止着部材(3)のみを金属板(1)に存置させているが、その必要があれば2つ以上の止着部材(3)を存置させておいてもよい。そして、歪み転移防止具(2)を従前載置していた箇所とは異なる金属板の歪み(1a)が生じていると思われる箇所に加熱孔(2a)が位置するようにして移動させ、金属板(1)に存置させておいた止着部材(3)に止着部材挿通孔(2b)を挿通させて、歪み転移防止具(2)を金属板(1)に再度載置する。それから、空いている止着部材挿通孔(2b)に止着部材(3)を挿通し、前記と同様の方法により、止着部材(3)に通電してこれを金属板(1)に一時的に止着させ、金属加熱器(4)を用いて金属板の歪み(1a)に加熱孔(2a)を介して、それまでに加熱した箇所とは異なる箇所に位置する金属板の歪み(1a)に通電して加熱する。その後、作業者は、その必要に応じて上記のような方法で加熱した箇所を冷却し、歪み転移防止具(2)と止着部材(3)とを金属板(1)から撤去する。なお金属板の歪み(1a)が他の箇所に残存している場合には、再度これらの一連の作業を行う。
【0040】
そうすると、作業者は、それまでに本願発明に係る金属板の歪み除去方法を実施した箇所の近傍に残存する金属板の歪み(1a)の位置を的確に把握して、これを除去することができるのである。
【0041】
もちろん、本願発明に係る金属板の歪み除去方法を実施することにより、自動車の車体を形成している金属製の外板に歪みが生じた場合に、これを修繕する方法として従前一般に行われてきたような該金属板にパテを塗布して均す等して取り繕う必要もなく、金属板の歪み(1a)を根本的に解消することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 金属板
1a 歪み
2 歪み転移防止具
2a 加熱孔
2b 止着部材挿通孔
3 止着部材
4 金属加熱器
4a 端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-01-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板を加熱することにより該金属板の歪みを除去するための方法であって、該金属板を加熱するための金属加熱器を用いて該金属板の歪みを加熱するための貫通孔である加熱孔と、該加熱孔を取り囲むようにして設けられている該金属板に止着するための金属製の部材で形成された止着部材を挿通するための貫通孔である止着部材挿通孔とが穿設されている金属製の板状部材で形成された歪み転移防止具を該金属板の歪みが生じていると思われる箇所に該加熱孔が位置するようにして載置する段階と、該止着部材挿通孔に該止着部材を挿通させる段階と、該止着部材に通電して、該加熱孔を取り囲むようにして該止着部材を該金属板に一時的に止着させる段階とを備えており、これらの各段階の後、該加熱孔を介して該金属加熱器により該金属板の歪みを加熱する段階を備えており、この段階の後、該歪み転移防止具と該止着部材とを該金属板から撤去する段階を備えており、該段階において、該金属板に一時的に止着させている該止着部材の一部を該金属板に存置させておき、この段階の後、該歪み転移防止具を従前載置されていた箇所とは異なる金属板の歪みが生じていると思われる箇所に該加熱孔が位置するようにして移動させ、該金属板に存置させておいた該止着部材に該止着部材挿通孔を挿通させて、該歪み転移防止具を該金属板に再度載置する段階を備えていることを特徴とする金属板の歪み除去方法。
【請求項2】
請求項1に記載した金属板の歪み除去方法を構成する各段階に加えて、前記加熱孔を介して金属加熱器により金属板の歪みを加熱する段階の後、該加熱した箇所を冷却する段階を備えていることを特徴とする金属板の歪み除去方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載した金属板の歪み除去方法であって、前記止着部材が前記金属板を形成している金属と同種の金属によって形成されている方法であることを特徴とする金属板の歪み除去方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれかに記載した金属板の歪み除去方法であって、前記金属加熱器の端部が銅系材料によって形成されている方法であることを特徴とする金属板の歪み除去方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれかに記載した金属板の歪み除去方法に用いる歪み転移防止具であって、金属製の板状部材で形成されており、加熱孔と止着部材挿通孔とが穿設されており、該加熱孔は、該金属板を加熱するための金属加熱器を用いて該金属板の歪みを加熱するための貫通孔であり、該止着部材挿通孔は、該金属板に止着するための金属製の部材で形成された止着部材を挿通するための貫通孔であって、該加熱孔を取り囲むようにして穿設されていることを特徴とする歪み転移防止具。
【請求項6】
請求項5に記載した金属板の歪み除去方法に用いる歪み転移防止具であって、その全体がアルミニウム系材料によって形成されていることを特徴とする歪み転移防止具。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、金属板に生じた歪みにつき、該金属板を加熱することにより該歪みを除去する方法、及びそれに用いる道具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車を例に挙げて説明すると、自動車が衝突事故に遭う等した場合、図1に図示するように、該自動車の車体を形成している金属製の外板に歪みが生じ、該外板が伸びてこぶ状の凸部を生じたり、あるいは該外板がいわゆるペコペコしたりする状態になってしまう。従来、このような自動車の車体を形成する金属製の外板に生じた歪みを除去する方法としては、該外板を叩打するといった方法が一般に用いられてきた。しかしながら、このような方法では、該歪みを除去するために手間がかかってしまい、しかも十分に該歪みを除去することができないため、該外板にパテを塗布して均す等して該歪みを取り繕っていたのが実情であった。
【0003】
ところで、上記のような自動車の車体を形成している金属製の外板といった各種の金属板に生じた歪みにつき、以下に示す通り、該金属板を加熱することにより該歪みを除去する方法が提案されているところである。即ち、自動車の車体を形成する金属板といった金属薄板を精密に収縮ないしは平延べするための方法において、電気溶接器具による短時間のつち打ち状の打撃運動によって点状の溶接箇所が生成され、それらの領域内において該金属薄板は短時間の間高温度に加熱され、これにより該加熱された箇所の周囲の中に応力を除去された該金属薄板の収縮が実現されるようにしたことを特徴とする方法が提案されている(例えば、下記の特許文献1を参照)。また、板表面の狭い範囲を加熱急冷することによって歪みを除去するプラズマ加熱による薄板の歪取方法において、電極とノズル電極との間に発生するプラズマジェットで板表面を加熱急冷して歪みを除去することを特徴とするプラズマ加熱による薄板の歪取り方法が提案されている(例えば、下記の特許文献2を参照)。更に、自動車の外板パネルの板金補修において補修部のみを局部的に加熱し、周辺部の熱的影響を最小限に留めた鋼板の形状を復元する方法につき、電磁誘導加熱装置を用いて局部的に鋼板を加熱し鋼板の形状を復元する方法であって、特に前記電磁誘導加熱の照射強度は照射周波数40kHzの電磁波において400~800W、照射時間は1.0~5.0秒である鋼板の形状を復元する方法が提案されている(例えば、下記の特許文献3を参照)。そして、金属製薄板の歪とり方法である加熱急冷方法であって、加熱についてアークまたは電気抵抗熱を用いて順次連続自動的に一点または数点ずつ加熱する方法であって、特に、該金属製薄板の表面に多数の孔を設けた電磁マグネット板を当てて、該孔の内部に位置する金属製薄板を電気で加熱した後、急冷する方法が提案されている(例えば、下記の特許文献4を参照)。
【0004】
上記のように、金属板に生じた歪みにつき、該歪みが生じている箇所を加熱すれば該歪みを除去できることは従前知られているところであり(例えば、下記の特許文献1ないし3を参照)、特に、孔部を穿設した板状部材を該金属板に載置させて、該孔部内に位置する箇所を電気で加熱する方法が既に提案されているところである(例えば、下記の特許文献4を参照)。このような金属板の歪み除去方法によれば、上記のように該金属板にパテを塗布して均す等して該歪みを取り繕う必要もなく、該歪みを根本的に解消することができるから、好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭50-115638号公報
【特許文献2】特開昭59-94528号公報
【特許文献3】特開2006-315009号公報
【特許文献4】特公昭42-17432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来技術に係る金属板の歪み除去方法では、該歪みを十分に除去することができないことがあった。即ち、該金属板において歪みが生じていると思われる箇所を加熱しても、該歪みが転移してしまうことがあったのである。そうすると、該歪みが転移した箇所を再度加熱しなければならず、該金属板に対する加熱を繰り返し行わなければならなくなり、該歪みを除去するための作業が煩雑になってしまっていた。
【0007】
そこで、本願発明が解決しようとする第1の課題は、金属板に生じた歪みにつき、該金属板を加熱することにより該歪みを除去する方法及びそれに用いる道具に関し、該歪みが転移することを防止できる方法及びそれに用いる道具を提供することにある。
【0008】
また、前記のような金属板の歪みは1箇所だけ生じているとは限らず、複数箇所生じていることもある。このような場合に、上記のような金属板の歪み除去方法では、それまでに行った加熱では除去しきれなかった歪みが該金属板に残存しているときに、該歪みが残存していると思われる箇所を作業者がその感覚をもって探知していたため、その箇所を正確に把握することが困難であった。そのため、該歪みが残存している箇所を探し出してこれを除去するまで、該金属板を繰り返し加熱しなければならなくなり、その作業は煩雑になってしまっていた。
【0009】
そこで、本願発明が解決しようとする第2の課題は、金属板に生じた歪みにつき、該金属板を加熱することにより該歪みを除去する方法及びそれに用いる道具に関し、それまでに行った加熱では除去しきれなかった歪みが該金属板に残存している場合に、該歪みが残存している箇所を的確に加熱するための方法及びそれに用いる道具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、上記の各課題を解決するために提案されたものであり、以下の構成を有するものである。以下では、本願発明の構成を理解することを補助するために、本願に添付した図面に表示した番号及び符号をあわせて記載する。
【0011】
請求項1に係る金属板の歪み除去方法は、金属板(1)を加熱することにより金属板の歪み(1a)を除去するための方法であって、以下の各段階を備えている。即ち、金属板(1)を加熱するための金属加熱器(4)を用いて金属板の歪み(1a)を加熱するための貫通孔である加熱孔(2a)と、加熱孔(2a)を取り囲むようにして設けられている金属板(1)に止着するための金属製の部材で形成された止着部材(3)を挿通するための貫通孔である止着部材挿通孔(2b)とが穿設されている金属製の板状部材で形成された歪み転移防止具(2)を金属板の歪み(1a)が生じていると思われる箇所に加熱孔(2a)が位置するようにして載置する段階である。止着部材挿通孔(2b)に止着部材(3)を挿通させる段階である。止着部材(3)に通電して、加熱孔(2a)を取り囲むようにして止着部材(3)を金属板(1)に一時的に止着させる段階である。これらの各段階の後、加熱孔(2a)を介して金属加熱器(4)により金属板の歪み(1a)を加熱する段階である。この段階の後に、歪み転移防止具(2)と止着部材(3)とを金属板から撤去する段階である。
【0012】
また、請求項1に係る金属板の歪み除去方法は、歪み転移防止具(2)と止着部材(3)とを金属板から撤去する段階において、金属板(1)に一時的に止着させている止着部材(3)の一部を金属板(1)に存置させておき、この段階の後に、歪み転移防止具(2)を従前載置されていた箇所とは異なる金属板の歪み(1a)が生じていると思われる箇所に加熱孔(2a)が位置するようにして移動させ、金属板(1)に存置させておいた止着部材(3)に止着部材挿通孔(2b)を挿通させて、歪み転移防止具(2)を金属板(1)に再度載置する段階を備えている。
【0013】
請求項2に係る金属板の歪み除去方法は、請求項1に記載した金属板の歪み除去方法を構成する各段階に加えて、以下の段階を備えている。即ち、前記加熱孔(2a)を介して金属加熱器(4)により金属板の歪み(1a)を加熱する段階の後に、該加熱した箇所を冷却する段階である。
【0014】
請求項3に係る金属板の歪み除去方法は、請求項1又は2に記載した金属板の歪み除去方法であって、止着部材(3)が金属板(1)を形成している金属と同種の金属によって形成されている方法である。
【0015】
請求項4に係る金属板の歪み除去方法は、請求項1から3までのいずれかに記載した金属板の歪み除去方法であって、金属加熱器の端部(4a)が銅系材料によって形成されている方法である。
【0016】
請求項5に係る金属板の歪み除去方法に用いる歪み転移防止具は、請求項1から4までのいずれかに記載した金属板の歪み除去方法に用いる歪み転移防止具であって、金属製の板状部材で形成されており、加熱孔(2a)と止着部材挿通孔(2b)とが穿設されている。加熱孔(2a)は、金属板(1)を加熱するための金属加熱器(4)を用いて金属板の歪み(1a)を加熱するための貫通孔である。止着部材挿通孔(2b)は、金属板(1)に止着するための金属製の部材で形成された止着部材(3)を挿通するための貫通孔であって、加熱孔(2a)を取り囲むようにして穿設されている。
【0017】
請求項6に係る金属板の歪み除去方法に用いる歪み転移防止具は、請求項5に記載した金属板の歪み除去方法に用いる歪み転移防止具(2)であって、その全体がアルミニウム系材料によって形成されている。
【発明の効果】
【0018】
本願発明に係る金属板の歪み除去方法及びそれに用いる道具は、前記の通りの構成であるから、以下のような効果を奏することができる。
【0019】
まず、請求項1に記載した金属板の歪み除去方法及び請求項5に記載した金属板の歪み除去方法に用いる歪み転移防止具は、前記のように、金属板(1)に歪み転移防止具(2)が載置されているとともに、止着部材挿通孔(2b)に挿通した止着部材(3)が金属板の歪み(1a)を取り囲むようにして金属板(1)に一時的に止着されていることにより、金属加熱器(4)を用いて金属板の歪み(1a)に加熱孔(2a)を介して加熱した際に、歪み転移防止具(2)がその熱を吸収するとともに、止着部材(3)が加熱した金属板の歪み(1a)の周囲を取り囲んでいるから、金属板の歪み(1a)が転移することを防止できる。よって、請求項1に記載した金属板の歪み除去方法及び請求項5に記載した金属板の歪み除去方法に用いる歪み転移防止具は、金属板に生じた歪みにつき、該金属板を加熱することにより該歪みを除去する方法及びそれに用いる道具につき、該歪みが転移することを防止できる方法及びそれに用いる道具を提供するという本願発明が解決しようとする第1の課題を解決することができる。
【0020】
ここで、請求項2に係る金属板の歪み除去方法は、前記のように、加熱した箇所を冷却する段階を含んでいるから、歪み転移防止具(2)がその熱を吸収する効果と相まって、より短時間で金属板の歪み(1a)を除去することができる。
【0021】
次に、請求項1に記載した金属板の歪み除去方法は、金属板(1)に一時的に止着させている止着部材(3)の一部を金属板(1)に存置させておき、歪み転移防止具(2)を従前載置されていた箇所とは異なる金属板の歪み(1a)が生じていると思われる箇所に加熱孔(2a)が位置するようにして移動させ、金属板(1)に存置させておいた止着部材(3)に止着部材挿通孔(2b)を挿通させて、歪み転移防止具(2)を金属板(1)に再度載置する段階を含んでいる。そうすると、作業者は、それまでに本願発明に係る金属板の歪み除去方法を実施した箇所の近傍に残存する別の金属板の歪み(1a)の位置を的確に把握して、これを除去することができるのである。よって、請求項1に記載した金属板の歪み除去方法は、金属板に生じた歪みにつき、該金属板を加熱することにより該歪みを除去する方法及びそれに用いる道具に関し、それまでに行った加熱では除去しきれなかった歪みが該金属板に残存している場合に、該歪みが残存している箇所を的確に加熱するための方法及びそれに用いる道具を提供するという本願発明が解決しようとする第2の課題を解決することができる。
【0022】
ここで、請求項3に係る金属板の歪み除去方法は、請求項1又は2に記載した金属板の歪み除去方法であって、止着部材(3)が金属板(1)を形成している金属と同種の金属によって形成されているため、止着部材(3)に通電して金属板(1)に止着する作業を一層効率的に行うことができる。
【0023】
また、請求項4に係る金属板の歪み除去方法は、請求項1から3までのいずれかに記載した金属板の歪み除去方法であって、金属加熱器の端部(4a)が銅系材料によって形成されているところ、銅は熱伝導性に優れているため、金属加熱器(4)による金属板の歪み(1a)に対する加熱を一層効率的に行うことができる。
【0024】
請求項6に係る金属板の歪み除去方法に用いる歪み転移防止具は、請求項5に記載した金属板の歪み除去方法に用いる歪み転移防止具であって、その全体がアルミニウム系材料によって形成されている。即ち、アルミニウムは優れた熱伝導性を備えているため、加熱機(4)によって金属板の歪み(1a)を加熱した際に、該熱が金属板(1)から歪み転移防止具(2)にすぐに伝わるからである。そうすると、金属板の歪み(1a)が転移することを防止できると考えられる。また、歪み転移防止具(2)に伝わった熱もすぐに発散するため、歪み転移防止具(2)を金属板(1)から撤去する際にその作業を行い易くなり、好適である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本願発明に係る金属板の歪み除去方法の対象となる歪みを生じた金属板を示した参考図である。
図2】本願発明に係る金属板の歪み除去方法に用いる歪み転移防止具の平面図である。
図3】本願発明に係る金属板の歪み除去方法において歪み転移防止具を金属板に戴置した状態を示した参考断面図である。
図4】本願発明に係る金属板の歪み除去方法において止着部材を金属板に止着した状態を示した参考断面図である。
図5】本願発明に係る金属板の歪み除去方法において金属板の歪みを加熱する状態を示した参考断面図である。
図6】本願発明に係る金属板の歪み除去方法において歪み転移防止具と止着部材とを金属板から撤去した状態を示した参考図である。
図7】本願発明に係る金属板の歪み除去方法において歪み転移防止具を移動させる状態を示した参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本願発明の一実施形態に係る金属板の歪み除去方法及びそれに用いる道具につき、添付図面に基づいて、これを説明する。
【0027】
本願発明は、図1に図示するように、例えば、自動車が衝突事故に遭う等して、該外板が伸びてこぶ状の凸部を生じたり、あるいは該外板がいわゆるペコペコしたりする状態になってしまった場合に、これを修繕するために用いられるが、特にこのような場合に限定されるものではなく、各種の金属板(1)に生じた歪み(1a)を除去するために広く用いることができる。
【0028】
まず、本願発明に係る金属板の歪み除去方法に用いる歪み転移防止具について、以下に説明する。歪み転移防止具(2)は、図2に図示するように、金属製の板状部材によって形成されており、加熱孔(2a)と止着部材挿通孔(2b)とが穿設されている。ここで、歪み転移防止具はアルミニウム系材料によって形成するのが好適である。即ち、アルミニウムは優れた熱伝導性を備えているため、後述する金属加熱器(4)によって金属板(1)を加熱した際に、該熱が金属板(1)から歪み転移防止具(2)へとすぐに伝わるからである。そうすると、金属板の歪み(1a)が金属板(1)において転移することを防止できると考えられる。また、歪み転移防止具(2)に伝わった熱もすぐに発散するため、後述するように歪み転移防止具(2)を金属板(1)から撤去する作業を行い易くなり、好適である。尚、歪み転移防止具(2)は、図ではその全体的な形状が平面視角丸長方形状であるが、金属板(1)に載置させることができれば、特にこのような形状に限定されるものではない。もっとも、歪み転移防止具(2)は、図示するように、角を落としておくと、作業者が誤って接触する等した際に負傷するおそれを低減させることができ、好適である。
【0029】
加熱孔(2a)は、図2に図示するように、金属加熱器(4)を用いて金属板の歪み(1a)を加熱するための貫通孔である。例えば、図示するように、金属加熱器の端部(4a)を挿通して、金属板の歪み(1a)にこれを当接させるために用いる。図では、加熱孔(2a)は平面視正円であるが、金属加熱器の端部(4a)の形状や大きさ等にあわせて適宜変更することができ、特にこの形状に限定されるものではない。もっとも、加熱孔(2a)は金属加熱器の端部(4a)の挿通される部分より大きな面積を備えている方が、作業者は加熱孔(4a)により金属板(1)が加熱されている状態を視認することができるため好適である。また、図では、加熱孔(2a)は歪み転移防止具(1)の平面視中央に位置しているが、加熱孔(2a)を取り囲むようにして止着部材挿通孔(2b)を歪み転移防止具(1)に穿設することができるのであれば、特にその穿設する位置は限定されない。
【0030】
止着部材挿通孔(2b)は、図2に図示するように、止着部材(3)を挿通するための貫通孔であって、前記の加熱孔(2a)を取り囲むようにして穿設されている。図では、止着部材挿通孔(2b)は、歪み転移防止具(2)において加熱孔(2a)よりも外側に位置するように、歪み転移防止具(2)の平面視上下両辺にそれぞれ設けられた4本の細長状の貫通孔であるが、加熱孔(2a)を取り囲むようにして穿設されていれば、特にこのような形態に限定されるものではない。もっとも、止着部材挿通孔(2b)は、止着部材(3)よりも大きなものとしておくと、止着部材挿通孔(2b)に挿通させた止着部材(3)を金属板(1)に止着させた際に、歪み転移防止具(2)を金属板(1)上で滑動させることにより、その位置を調整することができるようになって好適である。
【0031】
次に、本願発明に係る金属板の歪み除去方法について、以下に説明する。まず、作業者は、図3に図示するように、歪み転移防止具(2)を金属板の歪み(1a)が生じていると思われる箇所に加熱孔(2a)が位置するようにして金属板(1)に載置する。具体的には、金属板(1)が伸びてこぶ状の凸部を形成している箇所に加熱孔(2a)が位置するようにして、作業者は歪み転移防止具(2)を金属板(1)に載置する。
【0032】
次に、作業者は、図4に図示するように、金属板(1)に止着するための金属製の部材で形成された止着部材(3)を止着部材挿通孔(2a)に挿通する。また、作業者は、各種公知の電気溶接機等を用いて、止着部材(3)に通電し、加熱孔(2a)を取り囲むようにして止着部材(3)を金属板(1)に一時的に止着させる。ここで、止着部材(3)は金属板(1)を形成している金属と同種の金属によって形成された部材を用いるのが好適である。例えば、本願発明を自動車の車体を形成している金属製の外板に生じた歪み除去するために用いる場合には、一般に該外板は鋼鉄製であるところ、止着部材(3)も鉄系材料によって形成するのが好適である。即ち、金属板(1)を形成している金属と同種の金属によって形成された止着部材(3)を用いると、止着部材(3)に通電して金属板(1)に止着することが容易になるからである。尚、止着部材(3)は止着部材挿通孔(2b)に挿通することができれば、特にその形状及び大きさ等が限定されるものではない。もっとも、図示するように、止着部材(3)は板状のリング部材であれば、作業者がこれを摘まむ等して止着部材挿通孔(2b)に挿通する作業を行い易くなるとともに、金属板(1)に止着する面積が少なくなることで、後述する止着部材(3)を撤去する際の作業を効率的に行うことができるため、好適である。また、図では、止着部材(3)は4つ用いられることになるが、これは歪み転移防止具(2)に設けた止着部材挿通孔(2b)の数に合わせたものであって、止着部材挿通孔(2b)の数に合わせる等して止着部材(3)の数も適宜調節することができる。尚、上記の順序とは逆に、止着部材(3)に通電して金属板(1)に一時的に止着させた後、止着部材(3)を止着部材挿通孔(2b)に挿通し、歪み転移防止具(2)を金属板(1)に載置させてもよい。
【0033】
そして、作業者は、図5に図示するように、金属板(1)を加熱するための金属加熱器(4)を用いて金属板の歪み(1a)に加熱孔(2a)を介して加熱する。例えば、図示するように、金属加熱器の端部(4a)を加熱孔(2a)に挿通し、金属板の歪み(1a)に当接させてこれを加熱する。本願発明に係る金属板の歪み除去方法によれば、加熱孔(2a)の内部に位置する金属板(1)のみを加熱すれば、金属板(1)を広範囲に加熱することなく、金属板(1)に生じた歪み(1a)を除去することができる。
【0034】
ここで、金属加熱器(4)としては、金属板(1)に通電して加熱することができる各種公知の金属加熱器を用いることができる。上記の止着部材に通電する装置と同じ装置を用いることも可能であり、同じ装置を用いることにより効率的に作業を行うことができる。また、金属加熱器の端部(4a)は、銅系材料によって形成された物を用いるのが好適である。即ち、銅は熱伝導性に優れているため、金属加熱器の端部(4a)による金属板の歪み(1a)に対する加熱を一層効率的に行うことができるからである。
【0035】
それから、作業者は、上記のようにして加熱した金属板の歪み(1a)を冷却する。その具体的な冷却手段としては、例えば、水で濡らしたタオルを該加熱した箇所に当接させるといった手段が考えられる。加熱した箇所を冷却することにより、前記の歪み転移防止具(2)がその熱を吸収する効果と相まって、より短時間で金属板の歪み(1a)を除去することができる。
【0036】
最後に、作業者は、図6に図示するように、歪み転移防止具(2)と止着部材(3)とを金属板(1)から撤去する。ここで、歪み転移防止具(2)は金属板(1)に載置されているだけであり、止着部材(3)は金属板(1)に一時的に止着させているだけであるから、これらを金属板(1)から撤去することは容易である。
【0037】
上記のような本願発明に係る金属板の歪み除去方法によれば、金属板(1)に歪み転移防止具(2)が載置されているとともに、止着部材挿通孔(2b)に挿通した止着部材(3)が金属板の歪み(1a)を取り囲むようにして金属板(1)に一時的に止着されていることにより、金属加熱器(4)を用いて金属板の歪み(1a)に加熱孔(2a)を介して加熱した際に、歪み転移防止具(2)がその熱を吸収するとともに、止着部材(3)が加熱した金属板の歪み(1a)の周囲を取り囲んでいるから、金属板の歪み(1a)が転移することを防止できる。
【0038】
ところで、金属板の歪み(1a)は1箇所だけ生じているとは限らず、複数箇所生じていることもある。このような場合には、上記のような本願発明に係る金属板の歪み除去方法を一度だけ実施しても、金属板の歪み(1a)を金属板(1)から完全に除去することができない。このような場合には、本願発明に係る金属板の歪み除去方法を再度実施することになるが、それまでに本願発明に係る金属板の歪み除去方法を実施した箇所の近傍に残存する歪みを除去するためには、その位置を正確に把握する必要がある。
【0039】
即ち、前記のように歪み転移防止具(2)と止着部材(3)とを金属板(1)から撤去する際に、図7に図示するように、金属板(1)に一時的に止着させておいた止着部材(3)を金属板(1)から全て撤去するのではなく、その一部を金属板(1)に存置させておく。図では、1つの止着部材(3)のみを金属板(1)に存置させているが、その必要があれば2つ以上の止着部材(3)を存置させておいてもよい。そして、歪み転移防止具(2)を従前載置していた箇所とは異なる金属板の歪み(1a)が生じていると思われる箇所に加熱孔(2a)が位置するようにして移動させ、金属板(1)に存置させておいた止着部材(3)に止着部材挿通孔(2b)を挿通させて、歪み転移防止具(2)を金属板(1)に再度載置する。それから、空いている止着部材挿通孔(2b)に止着部材(3)を挿通し、前記と同様の方法により、止着部材(3)に通電してこれを金属板(1)に一時的に止着させ、金属加熱器(4)を用いて金属板の歪み(1a)に加熱孔(2a)を介して、それまでに加熱した箇所とは異なる箇所に位置する金属板の歪み(1a)に通電して加熱する。その後、作業者は、その必要に応じて上記のような方法で加熱した箇所を冷却し、歪み転移防止具(2)と止着部材(3)とを金属板(1)から撤去する。なお金属板の歪み(1a)が他の箇所に残存している場合には、再度これらの一連の作業を行う。
【0040】
そうすると、作業者は、それまでに本願発明に係る金属板の歪み除去方法を実施した箇所の近傍に残存する金属板の歪み(1a)の位置を的確に把握して、これを除去することができるのである。
【0041】
もちろん、本願発明に係る金属板の歪み除去方法を実施することにより、自動車の車体を形成している金属製の外板に歪みが生じた場合に、これを修繕する方法として従前一般に行われてきたような該金属板にパテを塗布して均す等して取り繕う必要もなく、金属板の歪み(1a)を根本的に解消することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 金属板
1a 歪み
2 歪み転移防止具
2a 加熱孔
2b 止着部材挿通孔
3 止着部材
4 金属加熱器
4a 端部