(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051254
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】アラーム管理装置、アラーム管理方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
G10L 25/51 20130101AFI20220324BHJP
G10L 25/18 20130101ALI20220324BHJP
G06F 3/16 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
G10L25/51
G10L25/18
G06F3/16 620
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020157633
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】302069930
【氏名又は名称】NECエンベデッドプロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】鐙 英輔
(57)【要約】
【課題】対象装置の発するアラーム音がどのような内容を示すアラーム音であるかをより精度高く監視者に通知する。
【解決手段】認識対象アラーム音のテンプレート情報を特定する。対象装置の新たに発した検知アラーム音の周波数特性を抽出し、検知アラーム音の周波数特性とテンプレート情報が示す周波数特性とを比較して検知アラーム音が認識対象アラーム音であるかを判定する。検知アラーム音が認識対象アラーム音である場合に、当該検知アラーム音に対応する出力情報の出力指示を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
認識対象のアラーム音の周波数特性を示す情報であって、解析することのできる前記アラーム音の周波数帯域を整数n以下でn分割した周波数帯域ごとの識別子と、当該周波数帯域ごとの強度が整数m以下でm分割した各段階の何れかの強度であるかを時間に応じて示す強度変化とを保持した認識対象アラーム音のテンプレート情報を特定し、
対象装置の新たに発した検知アラーム音の周波数特性を抽出し、
前記検知アラーム音の周波数特性と、前記テンプレート情報が示す周波数特性とを比較して前記検知アラーム音が前記認識対象アラーム音であるかを判定し、
前記検知アラーム音が前記認識対象アラーム音である場合に、当該検知アラーム音に対応する出力情報の出力指示を行う
アラーム管理装置。
【請求項2】
前記対象装置の表示部に表示された映像情報を撮影し、
前記検知アラーム音と前記映像情報とに対応する前記出力情報の出力指示を行う
請求項1に記載のアラーム管理装置。
【請求項3】
前記テンプレート情報に基づいて、前記検知アラーム音の特徴を有する各周波数帯域の検出したタイミングの強度それぞれが、当該テンプレート情報の示す前記周波数帯域それぞれの最初のタイミングの強度に一致するかを判定し、
前記検知アラーム音の特徴を有する各周波数帯域の前記検出したタイミングの強度それぞれが、前記テンプレート情報の示す前記周波数帯域それぞれの最初のタイミングの強度に一致する場合に、そのタイミングに基づいて、前記周波数帯域それぞれの強度の変化を比較して、前記検知アラーム音が前記認識対象アラーム音であるかを判定する
請求項1または請求項2に記載のアラーム管理装置。
【請求項4】
指定された一つまたは複数の前記テンプレート情報に基づいて、前記検知アラーム音の特徴を有する各周波数帯域の検出したタイミングの強度それぞれが、当該指定された一つまたは複数のテンプレート情報の示す前記周波数帯域それぞれの最初のタイミングの強度に一致するかを判定する
請求項3に記載のアラーム管理装置。
【請求項5】
認識対象のアラーム音の周波数特性を示す情報であって、解析することのできる前記アラーム音の周波数帯域を整数n以下でn分割した周波数帯域ごとの識別子と、当該周波数帯域ごとの強度が整数m以下でm分割した各段階の何れかの強度であるかを時間に応じて示す強度変化とを保持した認識対象アラーム音のテンプレート情報を特定し、
対象装置の新たに発した検知アラーム音の周波数特性を抽出し、
前記検知アラーム音の周波数特性と、前記テンプレート情報が示す周波数特性とを比較して前記検知アラーム音が前記認識対象アラーム音であるかを判定し、
前記検知アラーム音が前記認識対象アラーム音である場合に、当該検知アラーム音に対応する出力情報の出力指示を行う
アラーム管理方法。
【請求項6】
アラーム管理装置のコンピュータを、
認識対象のアラーム音の周波数特性を示す情報であって、解析することのできる前記アラーム音の周波数帯域を整数n以下でn分割した周波数帯域ごとの識別子と、当該周波数帯域ごとの強度が整数m以下でm分割した各段階の何れかの強度であるかを時間に応じて示す強度変化とを保持した認識対象アラーム音のテンプレート情報を特定する手段、
対象装置の新たに発した検知アラーム音の周波数特性を抽出する手段、
前記検知アラーム音の周波数特性と、前記テンプレート情報が示す周波数特性とを比較して前記検知アラーム音が前記認識対象アラーム音であるかを判定する手段、
前記検知アラーム音が前記認識対象アラーム音である場合に、当該検知アラーム音に対応する出力情報の出力指示を行う手段、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アラーム管理装置、アラーム管理方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院などの施設においてアラーム音を発する対象装置が多く利用されている。例えばアラーム音を発する対象装置として人工呼吸器や心電波形を監視する装置などが利用されている。このような対象装置の発するアラーム音が、適切な管理者に通知されることが望ましい。管理者とは例えば対象装置が病院内で利用される装置である場合には、医師や看護師、臨床工学技士などである。
【0003】
関連技術として、機器の発声音を収音して、正常時の発声音の時系列データをFFT(Fast Fourier Transform)により周波数分析した結果と比較して機器の正常、異常を判定する技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような技術において、対象装置の発するアラーム音がどのような内容を示すアラーム音であるかをより精度高く監視者に通知する技術が求められている。
【0006】
そこでこの発明は、上述の課題を解決するアラーム管理装置、アラーム管理方法、プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、アラーム管理装置は、認識対象のアラーム音の周波数特性を示す情報であって、解析することのできる前記アラーム音の周波数帯域を整数n以下でn分割した周波数帯域ごとの識別子と、当該周波数帯域ごとの強度が整数m以下でm分割した各段階の何れかの強度であるかを時間に応じて示す強度変化とを保持した認識対象アラーム音のテンプレート情報を特定し、対象装置の新たに発した検知アラーム音の周波数特性を抽出し、前記検知アラーム音の周波数特性と、前記テンプレート情報が示す周波数特性とを比較して前記検知アラーム音が前記認識対象アラーム音であるかを判定し、前記検知アラーム音が前記認識対象アラーム音である場合に、当該検知アラーム音に対応する出力情報の出力指示を行う。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、アラーム管理方法は、認識対象のアラーム音の周波数特性を示す情報であって、解析することのできる前記アラーム音の周波数帯域を整数n以下でn分割した周波数帯域ごとの識別子と、当該周波数帯域ごとの強度が整数m以下でm分割した各段階の何れかの強度であるかを時間に応じて示す強度変化とを保持した認識対象アラーム音のテンプレート情報を特定し、対象装置の新たに発した検知アラーム音の周波数特性を抽出し、前記検知アラーム音の周波数特性と、前記テンプレート情報が示す周波数特性とを比較して前記検知アラーム音が前記認識対象アラーム音であるかを判定し、前記検知アラーム音が前記認識対象アラーム音である場合に、当該検知アラーム音に対応する出力情報の出力指示を行う。
【0009】
本発明の第3の態様によれば、プログラムは、アラーム管理装置のコンピュータを、認識対象のアラーム音の周波数特性を示す情報であって、解析することのできる前記アラーム音の周波数帯域を整数n以下でn分割した周波数帯域ごとの識別子と、当該周波数帯域ごとの強度が整数m以下でm分割した各段階の何れかの強度であるかを時間に応じて示す強度変化とを保持した認識対象アラーム音のテンプレート情報を特定する手段、対象装置の新たに発した検知アラーム音の周波数特性を抽出する手段、前記検知アラーム音の周波数特性と、前記テンプレート情報が示す周波数特性とを比較して前記検知アラーム音が前記認識対象アラーム音であるかを判定する手段、前記検知アラーム音が前記認識対象アラーム音である場合に、当該検知アラーム音に対応する出力情報の出力指示を行う手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、対象装置の発するアラーム音がどのような内容を示すアラーム音であるかをより精度高く、また対象機器と有線接続することなく監視者に通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第一実施形態によるアラーム管理装置を備えた監視システムを示す図である。
【
図2】第一実施形態によるアラーム管理装置の処理概要を示す第一の図である。
【
図3】第一実施形態によるアラーム管理装置の処理概要を示す第二の図である。
【
図4】第一実施形態によるアラーム管理装置の処理フローを示す図である。
【
図5】第二実施形態によるアラーム管理装置を備えた監視システムを示す図である。
【
図7】第二実施形態による検知アラーム音に基づいて文字認識する処理の概要を示す図である。
【
図8】第三実施形態によるアラーム管理装置の処理フローを示す図である。
【
図9】アラーム管理装置の最小構成を示す図である。
【
図10】最小構成のアラーム管理装置の処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態によるアラーム管理装置を図面を参照して説明する。
図1は、同実施形態によるアラーム管理装置を備えた監視システムを示す図である。
監視システム100は、アラーム管理装置1、対象装置2、マイク3、サーバ4を少なくとも有する。監視システム100は通信ネットワークを介して管理者が携帯する端末の一態様である携帯端末5と通信接続する。
【0013】
対象装置2はスピーカを備え、何らかの要因で異常などの所定の状態を検知するとスピーカからアラーム音を発する。対象装置2は例えば病院で利用される人工呼吸器であってよい。マイク3は対象装置2が発するアラーム音を収音し電圧波形として入力する。マイク3は、例えば対象装置2のスピーカ付近に設置される。マイク3は、正面の感度が高い「単一指向性」を使用し、対象装置2に正対するように取り付けられる。これによりマイク3が入力するアラーム音は、指向性の強い方向かつ近距離から入力されるため、電圧波形の振幅が大きい信号となり、周囲音は指向性の弱い方向かつ比較的遠方からの入力のため振幅の小さい信号となる。この違いによりアラーム音と、周囲音によって発生する電圧波形の振幅の差が大きくなるので、1つのマイク3でもアラーム音の特徴を抽出することができる。サーバ4は、アラーム管理装置1の出力した情報を携帯端末5へ中継するための装置である。アラーム管理装置1は、携帯端末5へ直接情報を出力するようにしてもよい。
【0014】
アラーム管理装置1は、音信号入力部11、FFT部12、演算部13、制御部14、通信部15等の機能を備える。例えば、アラーム管理装置1は、自装置に備わるCPUがプログラムを実行することにより、またはアラーム管理装置1に備わる電子回路の機能によって、音信号入力部11、FFT部12、演算部13、制御部14、通信部15の各機能を発揮する。またアラーム管理装置1は、メモリ16、フラッシュROM17等の記憶機能を備える。
【0015】
音信号入力部11は、マイク3から入力した電圧波形を適切なレベルへ増幅するとともに認識に関係ない周波数を除去するフィルタリングなどを行った後、デジタル変換を行い、そのデジタル信号をFFT部12へ出力する。
FFT部12は、デジタル信号をサンプリング波形に対して、一定時間(例えば50ms以上)に区切ってその中のパワーを一定の周波数帯域に分割し、周波数帯域毎の強度を表す、いわゆるスペクトルを算出する。
【0016】
演算部13は、フラッシュROMに格納されている、あらかじめ作成されたテンプレート情報と、FFT部12から送られてきたスペクトル(検知アラーム音の周波数特性)との比較を行う。テンプレート情報には、認識対象となるアラーム音が示す、所定の周波数帯域毎の時間の経過に応じて数値化した情報(スペクトル)が時間の経過を示すフレーズ番号に紐づけて格納されている。一例としてスペクトルが示す信号強度はm=10以下の粗い段階に数値化されている。本実施形態においてスペクトルが示す周波数帯域の信号強度は、5段階に分類されているものとする。フレーズ番号は本実施形態においては単位時間を12分割した各時間の何れかを示す。単位時間は一例としては50ミリ秒(ms)程度である。実際に演算部13に入力するスペクトルの信号強度は、マイク3の取付位置や、周囲音の重畳によるばらつきが発生するが、粗い段階分けでのテンプレート情報との比較を行う事により、一定範囲内は同一レベルとみなすことが出来るため、比較におけるばらつきの影響を受けにくくすることができる。
【0017】
制御部14は、演算部13が検知アラーム音と一致すると判定したテンプレート情報に基づいて、出力情報を生成する。出力情報は検知アラーム音が示す警報内容を示す情報である。対象装置2が医療機器である場合には、出力情報は、検知アラーム音が示すアラーム種別、患者の状態などの詳細を示す。
通信部15は制御部14の出力した出力情報をサーバ4または携帯端末5へ送信する。
【0018】
本実施形態によるアラーム管理装置1は、上述の各機能をそなえることにより、認識対象アラーム音のテンプレート情報を特定する。具体的には、アラーム管理装置1は、解析することのできるアラーム音の周波数帯域を整数n以下でn分割した周波数帯域ごとの識別子と、当該周波数帯域ごとの強度が整数m以下でm分割した各段階の何れかの強度であるかを時間に応じて示す強度変化とを保持した認識対象アラーム音のテンプレート情報を特定する。
アラーム管理装置1は、対象装置2の新たに発した検知アラーム音の周波数特性を抽出する。
アラーム管理装置1は、検知アラーム音の周波数特性と、テンプレート情報が示す周波数特性とを比較して検知アラーム音が認識対象アラーム音であるかを判定する。
アラーム管理装置1は、検知アラーム音が認識対象アラーム音である場合に、当該検知アラーム音に対応する出力情報の出力指示を行う。
【0019】
アラーム管理装置1は、対象装置の表示部に表示された映像を撮影し、検知アラーム音と映像情報とに対応する出力情報の出力指示を行うようにしてもよい。
【0020】
上述の処理において、アラーム管理装置1は、テンプレート情報に基づいて、検知アラーム音の特徴を有する各周波数帯域の検出したタイミングの強度それぞれが、当該テンプレート情報の示す周波数帯域それぞれの最初のタイミングの強度に一致するかを判定する。
そしてアラーム管理装置1は、検知アラーム音の特徴を有する各周波数帯域の検出したタイミングの強度それぞれが、テンプレート情報の示す周波数帯域それぞれの最初のタイミングの強度に一致する場合に、そのタイミングに基づいて、周波数帯域それぞれの強度の変化を比較して、検知アラーム音が認識対象アラーム音であるかを判定する。
この時、アラーム管理装置1は、ユーザや自装置のプログラムに基づいて指定された一つまたは複数のテンプレート情報に基づいて、検知アラーム音の特徴を有する各周波数帯域の検出したタイミングの強度それぞれが、当該指定された一つまたは複数のテンプレート情報の示す周波数帯域それぞれの最初のタイミングの強度に一致するかを判定してよい。
【0021】
図2はアラーム管理装置の処理概要を示す第一の図である。
アラーム管理装置1の音信号入力部11は、
図2(a)で示すような電圧波形の信号を入力しデジタル変換してFFT部12へ出力する。
FFT部12はデジタル信号を、デジタル信号をサンプリング波形に対して、一定時間(例えば50ms以上)に区切ってその中の信号をFFT処理する。これによりFFT部12は、
図2(b)に示すような、デジタル信号が示す複数の周波数帯域ごとの強度の時間変化を示す、いわゆるスペクトルの情報を算出する。
【0022】
図3はアラーム管理装置の処理概要を示す第二の図である。
アラーム管理装置1は予めテンプレート情報を記憶する。テンプレート情報を
図3(a)に示す。テンプレート情報は、認識対象のアラーム音の周波数特性を示す情報が記録される。認識対象のアラーム音の周波数特性を示す情報とは、
図3で示すように、解析することのできるアラーム音の周波数帯域を整数n以下でn分割した周波数帯域ごとの識別子(バンド番号)を示す。本実施形態においてテンプレート情報は、n=1~27の27バンドの番号の何れかの周波数帯域を示す情報を記憶する。
【0023】
またテンプレート情報は、認識対象のアラーム音の周波数帯域ごとの時間推移(T=1~12)に応じた強度をm=5段階で示す。Tは単位時間を所定数分割した短い時間単位を示す。本実施形態においては単位時間をT=12分割している。つまりテンプレート情報は、認識対象のアラーム音の周波数特性を示す情報であって、解析することのできるアラーム音の周波数帯域を整数n以下でn分割した周波数帯域ごとの識別子と、当該周波数帯域ごとの強度が整数m以下でm分割した各段階の何れかの強度であるかを時間に応じて示す強度変化の情報とを保持する。
【0024】
図3(b)は、
図2(b)で示した検知アラーム音のスペクトルの情報である。演算部13は、検知アラーム音のスペクトル情報とテンプレート情報とを比較して、一致するか否かを判定する。演算部13は、複数のテンプレート情報を記憶しており、検知アラーム音のスペクトル情報と複数のテンプレート情報とを比較して、検知アラーム音のスペクトル情報が、記憶する複数のテンプレート情報のうちのいずれかのテンプレート情報と一致するか否かを判定してよい。
【0025】
演算部13は、複数のテンプレート情報を記憶しており、検知アラーム音のスペクトル情報と複数のテンプレート情報のちの指定されたテンプレート情報とを比較して、検知アラーム音のスペクトル情報が、指定された一つまたは複数のテンプレート情報のうちのいずれかのテンプレート情報と一致するか否かを判定してよい。
【0026】
図4は第一実施形態によるアラーム管理装置の処理フローを示す図である。
次に、アラーム管理装置1の処理の詳細を順を追って説明する。
対象装置2がアラーム音を発する。するとマイク3はアラーム音を収音する。このアラーム音を検知アラーム音と呼ぶ。マイク3はアラーム音のアナログ信号をアラーム管理装置1へ出力する。アラーム管理装置1の音信号入力部11はアラーム音のアナログ信号を入力する(ステップS101)。音信号入力部11はアラーム音をデジタル変換する(ステップS102)。そのデジタル信号をFFT部12へ出力する。FFT部12はデジタル信号を入力する。FFT部12はデジタル信号をフーリエ変換する(ステップS103)。FFT部12は、フーリエ変換後の検知アラーム音の周波数特性情報を生成する(ステップS104)。FFT部12は検知アラーム音の周波数特性情報を演算部13へ出力する。
【0027】
演算部13はFFT部12から入力した周波数特性情報とテンプレート情報を比較する(ステップS105)。この時、演算部13は、検知アラーム音の周波数特性情報が示すフレーズ番号1に相当する時間帯における各バンド番号の周波数帯域の信号強度がテンプレート情報に一致するかを判定する。同様に演算部13は、各フレーズ番号に相当する時間帯において順に、各バンド番号の周波数帯域の信号強度がテンプレート情報に一致するかを判定する処理を繰り返す。演算部13は単位時間に設定された全てのフレーズ番号(T)について検知アラーム音の周波数特性情報が示す信号強度と、テンプレート情報の周波数特性情報が示す信号強度が一致するかを判定し(ステップS106)、一致する場合には、その検知アラーム音はテンプレート情報が示す認識対象アラーム音であると判定する(ステップS107)。
【0028】
なお演算部13はテンプレート情報が指定されている場合には、検知アラーム音の周波数特性情報とその指定されているテンプレート情報とを比較する。演算部13は複数のテンプレート情報との比較をするよう指定されている場合には、検知アラーム音の周波数特性情報と各テンプレート情報とを上述の処理により順に比較し、周波数特性情報が一致するテンプレート情報を特定する。
【0029】
演算部13は、検知アラーム音の周波数特性情報と、テンプレート情報が示す周波数特性情報とが完全一致していなくても類似している場合には、検知アラーム音はテンプレート情報が示す認識対象アラーム音に一致すると判定してよい。例えば、何れかのフレーズ番号においてあるバンド番号の周波数帯域の信号強度がプラスまたはマイナス方向に1ずれていたとして、その他のフレーズ番号や他のバンド番号の周波数帯域の信号強度がテンプレート情報に一致している場合には、検知アラーム音はテンプレート情報が示す認識対象アラーム音に一致すると判定してよい。または何らかの統計処理によって、検知アラーム音の周波数特性情報と、テンプレート情報が示す周波数特性情報とが類似していると判定できた場合には、検知アラーム音はテンプレート情報が示す認識対象アラーム音に一致すると判定してよい。
【0030】
ここで演算部13は以下のような処理により、検知アラーム音の周波数特性情報とテンプレート情報とを比較してもよい。具体的には、信号強度と、音程、リズムに着目して比較する。例えば、演算部13は、指定または特定したテンプレート情報の最初のフレーズ番号が示す時間において信号強度m=1以上のバンド番号の周波数帯域を特定する。演算部13はその特定した番号の各周波数帯域の信号強度の合計を、検知アラーム音の周波数特性情報を用いて算出し、その合計が所定の閾値を越えたか否かを判定する。
【0031】
一例として
図3で示すような検知アラーム音の周波数特性情報とテンプレート情報とを比較する場合、演算部13は、フレーズ番号1の時間帯におけるテンプレート情報の各信号強度が1以上のバンド番号11,バンド番号15,バンド番号20の各周波数帯域を特定する。演算部13は、これらバンド番号に対応する信号強度の合計を、検知アラーム音の周波数特性情報を用いて算出する。演算部13はその合計が閾値以上である場合には、フレーズ番号1の時間帯において検知アラーム音が有効であると判定する。また演算部13は各フレーズ番号の時間帯においても同様の処理を繰り返す。
【0032】
演算部13は全てのフレーズ番号の時間帯、または所定のフレーズ番号の時間帯、または統計的に有意とされる数のフレーズ番号の時間帯などにおいて、特定したバンド番号に対応する信号強度の合計が閾値以上である場合に、検知アラーム音が有効であると判定してよい。波形の振幅を用いて検知アラーム音が、所定の認識対象の音であるかを判定すると周囲の雑音などによる無関係な周波数の音でも振幅が閾値を超えれば認識対象として誤検出してしまうが、本方法によりそのような誤検出を減らすことができる。
【0033】
また演算部13は、バンド番号1の時間帯において上述の処理により検知アラーム音の特定したバンド番号に対応する信号強度の合計が閾値以上であると判定した場合に、そのバンド番号に対応する時間の始まりを、テンプレート情報との比較開始時刻と判定し、フレーズ番号が示す時間毎に、検知アラーム音のFFT処理後の周波数特性情報と、指定又は特定したテンプレート情報との比較を開始する。上述のように、単位時間に設定された全てのフレーズ番号(T)について検知アラーム音の周波数特性情報が示す信号強度と、テンプレート情報の周波数特性情報が示す信号強度が一致するかを判定する。この時、演算部13は、信号強度が0の音が途切れる時間帯についても、検知アラーム音の周波数特性情報とテンプレート情報が一致するかを判定し、一致する場合に、その検知アラーム音はテンプレート情報が示す認識対象アラーム音に一致すると判定する。これにより音程とリズム(断続音、連続音の区別等)の両方に着目して、検知アラーム音とテンプレート情報とを比較することができる。
【0034】
演算部13は検知アラーム音の周波数特性情報に一致するテンプレート情報の識別情報に紐づいて予めメモリ16またはフラッシュROM17に記憶する出力情報を読み取る(ステップS108)。出力情報は検知アラーム音に対応する、対象装置2がアラーム音により通知する通知種別、通知内容などであってよい。出力情報は他の情報を含んでよい。例えば予め設定されることによりメモリ16やフラッシュROM17が記憶する対象装置2の識別番号、患者氏名などが出力情報に含まれてもよい。演算部13は出力情報を制御部14へ出力する。制御部14は出力情報の送信先の携帯端末5のアドレスをメモリ16等から読み取り、当該携帯端末5へ送信するよう通信部15を制御する。通信部15は出力情報をサーバ4へ送信する(ステップS109)。サーバ4は携帯端末5へ送信する。携帯端末5は出力情報をディスプレイ等の出力装置に出力する。
【0035】
これにより、携帯端末5を利用する管理者は、対象装置2の発したアラーム音に対応する通知種別や通知内容などの出力情報を確認することができる。通信部15は、携帯端末5へ直接、出力情報を送信するものであってよい。携帯端末5は、アラーム受信用アプリケーションをインストールしておき、出力情報を含むメッセージをもとにアニメーションや警告音などで利用者に対象装置2のアラーム発生を知らせるようにしてもよい。なお通信部15はSMS(Short Message Service)や電子メールなどの既存のメッセージ送信機能を用いて送信情報に出力情報を格納して携帯端末5へ送信するようにしてもよい。
【0036】
上述の処理によれば、アラーム管理装置1はアラーム音に対応するテンプレート情報を、認識対象のアラーム音の周波数特性を示す情報であって、解析することのできるアラーム音の周波数帯域を整数n以下でn分割した周波数帯域ごとの識別子と、当該周波数帯域ごとの強度が整数m以下でm分割した各段階の何れかの強度であるかを時間に応じて示す強度変化とを保持した認識対象アラーム音のテンプレート情報を特定し、対象装置2の新たに発した検知アラーム音の周波数特性を抽出し、その検知アラーム音の周波数特性と、テンプレート情報が示す周波数特性とを比較して検知アラーム音が認識対象アラーム音であるかを判定している。このような処理により、より精度高くアラーム音が示す通知種別や通知内容を判定することができる。
またアラーム管理装置1が複数の異なるアラーム音に対応するテンプレート情報を複数保持することで、様々なアラーム音に対応して、より精度高くアラーム音が示す通知種別や通知内容を判定することができる。
【0037】
<第二実施形態>
図5は第二実施形態によるアラーム管理装置を備えた監視システムを示す図である。
第二実施形態におけるアラーム管理装置1はさらに映像信号入力部18を備え、対象装置2のディスプレイを撮影するカメラ6と通信接続する。映像信号入力部18は、カメラ6が撮影により生成した映像情報を当該カメラ6から入力する。
【0038】
図6はカメラから取得した映像情報と処理例を示す図である。
映像信号入力部18は、
図6(a)で示すような映像情報を入力する。例えば対象装置2が心電監視装置である場合、映像情報には心電図が表示され、また心電監視装置がアラーム音を発している場合には、そのアラーム音が示す通知内容が含まれる。通知内容の例としては対象装置2が心電監視装置である場合には「回路外れ」などである。この場合、映像情報には、「回路外れ」の文字が含まれる(
図6(b)参照)。
【0039】
本実施形態において演算部13は、一例として検知アラーム音の特定したバンド番号に対応する信号強度の合計が閾値以上であると判定した場合に、映像信号入力部18に対してカメラ6の出力した映像情報を出力するよう指示する。映像信号入力部18は当該指示に基づいてカメラ6を制御し、映像情報を入力し、当該映像情報を演算部13へ出力する。演算部13は、検知アラーム音の周波数特性情報がテンプレート情報に一致すると判定した場合、映像情報を解析して文字列を抽出する(
図6(b)参照)。当該文字列の抽出はOCRによる文字抽出や他の文字処理による文字抽出の技術を利用してよい。そして演算部13は、検知アラーム音の周波数特性情報と一致すると特定したテンプレート情報と、映像情報から抽出した文字情報とに基づいて、出力情報を特定する。
【0040】
図7は検知アラーム音に基づいて文字認識する処理の概要を示す図である。
対象装置2がアラーム音A、アラーム音B、アラーム音Cの何れかを、監視結果に基づいて発することができるとする。そして対象装置2がアラーム音Aを発した場合、対象装置2のディスプレイには、回路外れの他、重度の閉塞、無呼吸などの複数の通知内容の何れかが表示されるとする。このような場合、アラーム管理装置1は上述の処理により、映像情報に写る文字情報を認識し、当該認識した文字列を抽出する。演算部13は出力情報にこの文字列を含んで制御部14へ出力する。これにより携帯端末5は映像情報に写る通知内容を文字列により出力することができる。対象装置2が発したアラーム音が複数の通知内容のうちの何れかを示す場合に、アラーム管理装置1は、より詳細な通知内容を管理者へ通知することができる。また、このような処理によれば、画像認識だけで通知内容を特定しようとすると対象が多い場合に認識が困難となる場合があるが、音により通知内容を絞り込むことで通知内容の画像認識の難易度を下げることができる。
【0041】
<第三実施形態>
図8は第三実施形態によるアラーム管理装置の処理フローを示す図である。
アラーム管理装置1は管理者の操作などに基づいて、新しいアラーム音のテンプレート情報を生成して記憶しておくことができる。つまりアラーム管理装置1はテンプレート生成機能を有する。具体的には、管理者などの利用者は、マイク3を対象装置2のスピーカ付近に取り付けて、アラーム管理装置1を「テンプレート生成モード」に設定し、周囲音が少ない環境下で対象装置2がサンプルとなるアラーム音を発生するよう操作する。
【0042】
するとアラーム管理装置1の音信号入力部11はアラーム音のアナログ信号を入力する(ステップS201)。音信号入力部11はアラーム音をデジタル変換する(ステップS202)。そのデジタル信号をFFT部12へ出力する。FFT部12はデジタル信号を入力する。FFT部12はデジタル信号をフーリエ変換する(ステップS203)。FFT部12は、フーリエ変換後の検知アラーム音の周波数特性情報を生成する(ステップS204)。FFT部12は検知アラーム音の周波数特性情報を演算部13へ出力する。演算部13は、検知アラーム音の周波数特性情報を用いてテンプレート情報を生成する(ステップS205)。演算部13は、生成したテンプレート情報をフラッシュメモリROM17等の記憶部に記録する(ステップS206)。このテンプレート情報はフーリエ変換後の検知アラーム音の周波数特性情報に基づいて、その周波数帯域を整数n以下でn分割した周波数帯域ごとの識別子(バンド番号)と、当該周波数帯域ごとの強度が整数m以下でm分割した各段階の何れかの強度mであるかを時間(フレーズ番号Tの時間)に応じて示す強度変化とを保持した情報である。この処理により、アラーム管理装置1は、管理者が一度サンプル音を発生させるだけで認識対象として追加することができる。
【0043】
図9はアラーム管理装置の最小構成を示す図である。
図10は最小構成のアラーム管理装置の処理フローを示す図である。
アラーム管理装置1は、少なくともテンプレート特定手段81、周波数特性抽出手段82、判定手段83、出力手段84を備えればよい。
テンプレート特定手段は、認識対象のアラーム音の周波数特性を示す情報であって、解析することのできるアラーム音の周波数帯域を整数n以下でn分割した周波数帯域ごとの識別子と、当該周波数帯域ごとの強度が整数m以下でm分割した各段階の何れかの強度であるかを時間に応じて示す強度変化とを保持した認識対象アラーム音のテンプレート情報を特定する(ステップS301)。
周波数特性抽出手段は、対象装置2の新たに発した検知アラーム音の周波数特性を抽出する(ステップS302)。
判定手段は、検知アラーム音の周波数特性と、テンプレート情報が示す周波数特性とを比較して検知アラーム音が認識対象アラーム音であるかを判定する(ステップS303)。
出力手段は、検知アラーム音が認識対象アラーム音である場合に、当該検知アラーム音に対応する出力情報の出力指示を行う(ステップS304)。
【0044】
上述の各測定は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0045】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0046】
1・・・アラーム管理装置
2・・・対象装置
3・・・マイク
4・・・サーバ
5・・・携帯端末
6・・・カメラ
11・・・音信号入力部
12・・・FFT部
13・・・演算部
14・・・制御部
15・・・通信部
16・・・メモリ
17・・・フラッシュROM
18・・・映像信号入力部
100・・・監視システム