(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051332
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】FM中継装置、遅延プロファイル生成方法
(51)【国際特許分類】
H04B 7/015 20060101AFI20220324BHJP
H04L 27/12 20060101ALI20220324BHJP
H04H 20/67 20080101ALI20220324BHJP
H04B 1/10 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
H04B7/015
H04L27/12 Z
H04H20/67
H04B1/10 L
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020157756
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】591249323
【氏名又は名称】日本通信機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515320008
【氏名又は名称】山口放送株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591164613
【氏名又は名称】株式会社NHKテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】河野 憲治
(72)【発明者】
【氏名】貝嶋 誠
(72)【発明者】
【氏名】峰吉 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】大久保 寛
(72)【発明者】
【氏名】▲恵▼良 勝治
(72)【発明者】
【氏名】岩木 昌三
(72)【発明者】
【氏名】山根 実
(72)【発明者】
【氏名】上田 大一朗
【テーマコード(参考)】
5K046
5K052
【Fターム(参考)】
5K046AA05
5K046BA05
5K046HH11
5K052AA01
5K052BB05
5K052CC04
5K052DD02
5K052FF32
(57)【要約】
【課題】単一周波数ネットワークを構成するFM放送システムの中継所において、回り込み波を抑制する技術を提供する。
【解決手段】信号再生部(41)は、受信アンテナからの受信信号を復調し、復調した信号を再変調することで送信信号を生成する。送信信号の搬送波は、FM放送において許容される中心周波数偏差の範囲内で設定されるオフセット周波数だけ、放送波の搬送波とは異なる。プロファイル生成部(432)は、受信信号と送信信号とを用いて算出される時間軸相関に従って、遅延プロファイルを生成する。抑制部(434,435)は、遅延プロファイルに従って回り込み波のレプリカ信号を生成し、信号再生部に入力される受信信号からレプリカ信号を減じる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
FM放送の放送波を、受信アンテナ(2)を介して受信するように構成された受信部(3)と、
前記受信部からの受信信号を復調し、復調した信号を再変調することで送信信号を生成するように構成された信号再生部(41)と、
前記信号再生部にて生成された前記送信信号を用いて前記放送波を再現した中継波を、送信アンテナ(7)を介して送信するように構成された送信部(5)と、
前記受信信号と前記送信信号とを用いて時間軸相関を算出し、前記時間軸相関の最大値である最大相関値、及び該最大相関値が得られるときの前記受信信号に対する前記送信信号の遅延時間を含んだ情報である遅延プロファイルを生成するように構成されたプロファイル生成部(432)と、
前記信号再生部で生成される前記送信信号を、前記遅延プロファイルに従って、前記遅延時間だけ遅延させ且つ前記最大相関値に応じた強度と位相に調整することでレプリカ信号を生成し、前記信号再生部に入力される前記受信信号から前記レプリカ信号を減じるように構成された抑制部(434,435)と、
を備え、
前記信号再生部は、前記送信信号の搬送波を、前記放送波の搬送波とは、FM放送波において許容される中心周波数偏差の範囲内で設定されるオフセット周波数だけ異ならせるように構成された
FM中継装置。
【請求項2】
請求項1に記載のFM中継装置であって、
前記プロファイル生成部は、前記オフセット周波数をΔfoとして、前記オフセット周波数Δfoの逆数であるTo=1/Δfoの時間幅で畳み込み演算を実行することで前記時間軸相関を生成するように構成された
FM中継装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のFM中継装置であって、
当該FM中継装置の起動時に、前記送信アンテナが送信する前記中継波の出力レベルを、予め設定された最小レベルに設定し、前記出力レベルを予め設定された最大レベルまで回り込み波除去の進捗に応じて段階的に調整するように構成された出力調整部(414)
を更に備えるFM中継装置。
【請求項4】
請求項3に記載のFM中継装置であって、
当該FM中継装置の発振を検知するように構成された発振検知部(42)と、
前記プロファイル生成部にて生成された前記遅延プロファイルを記憶するように構成されたプロファイル記憶部(433)と、
を更に備え、
前記抑制部は、前記プロファイル記憶部の記憶内容に従って前記レプリカ信号を生成するように構成され、
前記プロファイル生成部は、前記発振検知部による発振検知時に、前記プロファイル記憶部の記憶内容を再設定する再設定処理を行うように構成された、
前記出力調整部は、前記起動時に加え、前記発振検知部による発振検知時にも、前記中継波の出力レベルを調整するように構成された、
FM中継装置。
【請求項5】
請求項4に記載のFM中継装置であって、
前記プロファイル生成部は、前記再設定処理として、前記プロファイル記憶部の記憶内容を消去するように構成された
FM中継装置。
【請求項6】
請求項4に記載のFM中継装置であって、
前記プロファイル記憶部には、前記遅延プロファイルの履歴が更に記憶されるように構成され、
前記プロファイル生成部は、前記再設定処理として、前記プロファイル記憶部の記憶内容を、前記遅延プロファイルの履歴を用いて発振検知前の状態に戻すように構成された、
FM中継装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のFM中継装置であって、
前記受信部は、前記受信信号を、同相成分を表すI信号及び直交成分を表すQ信号に変換して出力し、
前記送信部は、前記I信号及び前記Q信号で表された前記送信信号を直交復調して送信するように構成された
FM中継装置。
【請求項8】
FM同期放送の放送波を受信する受信アンテナから得られる受信信号を復調し、復調した信号を再変調することで送信信号を生成し、前記送信信号を用いて前記放送波を再現した中継波を送信アンテナから送信するFM中継装置において、前記送信アンテナから送信され前記受信アンテナにて受信される回り込み波の情報を表す遅延プロファイルを生成する遅延プロファイル生成方法であって、
前記送信信号の搬送波を、前記FM放送波において許容される中心周波数偏差の範囲内で設定されるオフセット周波数だけ前記放送波の搬送波とは異ならせ、
前記受信信号と前記送信信号とを用いて時間軸相関を算出し、前記時間軸相関の最大値である最大相関値、及び最大相関値が得られるときの前記受信信号に対する前記送信信号の遅延時間を抽出することで、前記遅延プロファイルを生成する
遅延プロファイル生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、FM放送システムの放送波を中継する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
周波数変調された同一周波数かつ同一プログラムの音声放送波を、複数の送信所から送信するFM同期放送が知られている。FMは、frequency Modulationの略である。一般に放送システムでは、受信エリアを拡大するために中継所が設けられる。既存のFM放送で用いられる中継所は、複数周波数ネットワーク(MFN)を構築する。すなわち、MFNに属する各中継所は、親局となる送信所から受信した放送波(以下、親局波)とは異なる周波数の放送波(以下、中継波)を再送信する。
【0003】
これに対して、FM同期放送で用いられる中継所は、親局波と同一周波数の中継波を用いる単一周波数ネットワーク(以下、SFN)を構築する。すなわち、SFNに属する各中継所は、親局波と同一周波数の中継波を再送信する。そして、SFNに属する中継所では、受信アンテナに親局波より強いレベルの中継波が回り込む、いわゆるマイナスD/Uの状態になると回り込み発振を起こすため、回り込み発振への対策が必要となる。
【0004】
特許文献1には、SFNを採用する地上デジタル放送システムにおいて、中継所で生じる回り込み波をキャンセルする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、OFDM信号を用いる地上デジタル放送を前提とするものであり、使用する放送信号の形式が全く異なるアナログ変調方式のFM放送に適用することができないという問題があった。
【0007】
本開示の1つの局面は、単一周波数ネットワークを構成するFM放送システムの中継所において、回り込み波を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、FM中継装置であって、受信部(3)と、信号再生部(41)と、送信部(5)と、プロファイル生成部(432)と、抑制部(434,435)と、を備える。
【0009】
受信部は、FM放送の放送波を、受信アンテナ(2)を介して受信する。信号再生部は、受信部からの受信信号を復調し、復調した信号を再変調することで送信信号を生成する。但し、送信信号の搬送波は、FM放送において許容される中心周波数偏差の範囲内で設定されるオフセット周波数だけ、放送波の搬送波とは異なる。送信部は、信号再生部にて生成された送信信号を用いて放送波を再現した中継波を、送信アンテナ(7)を介して送信する。プロファイル生成部は、受信信号と送信信号とを用いて時間軸相関を算出し、時間軸相関の最大値である最大相関値及び最大相関値が得られるときの受信信号に対する送信信号の遅延時間を含んだ情報である遅延プロファイルを生成する。抑制部は、信号再生部で生成される送信信号を、遅延プロファイルに従って、遅延時間だけ遅延させ且つ最大相関値に応じた強度と位相に調整することでレプリカ信号を生成し、信号再生部に入力される受信信号からレプリカ信号を減じる。
【0010】
このように構成されたFM中継装置によれば、中継波(ひいては送信アンテナから受信アンテナに回り込む回り込み波)となる送信信号と、受信信号に含まれる放送波に基づく信号成分との相関を弱めることができ、受信信号から回り込み波に基づく信号成分の検出精度を向上させることができる。
【0011】
FM中継装置では、回り込み波の影響を除去する処理を、送信信号の遅延及び強度と位相を調整したレプリカ信号を用いて行っている。つまり、レプリカ信号は回り込み波と同じ波形を有するため、発振の原因となる回り込み波に基づく信号成分を的確に抑制できる。
【0012】
FM中継装置では、回り込み波の影響を抑制する処理を、アナログ的な波形レベルで行っているため、回り込み波が有する遅延時間に関する情報と位相に関する情報とを、別個に分離することなく同時に処理でき、装置構成を簡略化できる。
【0013】
FM中継装置では、処理を繰り返すことで、強度の大きい回り込み波から順番に処理されるため、回り込み波の数に関わらず、全ての回り込み波に対処できる。
本開示の一態様は、FM中継装置にて発生する回り込み波の情報を表す遅延プロファイルを生成する遅延プロファイル生成方法である。FM中継装置は、FM放送波を受信する受信アンテナから得られる受信信号を復調し、復調した信号を再変調することで送信信号を生成し、送信信号を用いて放送波を再現した中継波を送信する。
【0014】
遅延プロファイル生成方法では、送信信号の搬送波を、FM放送波において許容される中心周波数偏差の範囲内で設定されるオフセット周波数だけ放送波の搬送波とは異ならせる。そして、受信信号と送信信号とを用いて時間軸相関を算出し、時間軸相関が最大となるときの受信信号に対する送信信号の遅延時間及び相関値を抽出することで、遅延プロファイルを生成する。
【0015】
このような方法によれば、FM中継装置において、受信信号に含まれる回り込み波を抑制するレプリカ信号の生成に必要な遅延プロファイルを、的確に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】同一周波数FM放送システムの概要を示す説明図である。
【
図2】FM中継装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】FM中継装置における親局波、中継波、回り込み波の関係を示す説明図である。
【
図4】ステレオコンポジット信号のスペクトラムを示す説明図である。
【
図5】相関解析部での処理内容を示すフローチャートである。
【
図6】遅延プロファイルの概要、及び遅延プロファイルの生成に用いるパラメータを示す説明図である。
【
図7】起動時及び発振検知時に実施される中継波の出力レベル制御を示す説明図である。
【
図8】回り込み波による干渉がない場合及び干渉がある場合それぞれについての受信IQ信号を、複素平面上で示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.同一周波数FM放送システム]
まず、本開示に係るFM中継装置が適用される同一周波数FM放送システム100について説明する。
【0018】
同一周波数FM放送システム100は、
図1に示すように、配信局101と一つ以上の送信所102,103と、一つ以上の中継所105とを備える。配信局101は、同一の音声信号を、所定の伝送網104を介して各送信所102,103に配信する。送信所102,103は、それぞれの放送エリアA1,A2の少なくとも一部が、互いに重なり合うように配置される。以下では、重なり合う放送エリアを重複エリアAdという。送信所102,103は、伝送網104を介して配信局101から受信した同一の音声信号により、同一周波数の搬送波を周波数変調した放送波を送信することで、FM同期放送(以下、単に同期放送)を行う。また、送信所102,103では、GPSを利用して取得される1秒パルス信号(以下、1pps)に同期したクロックを用いてFM変調のタイミングを含むFM変調特性が、両送信所間で同一となるように制御される。GPSは、Global Positioning Systemの略である。
【0019】
音声信号の配信に用いる伝送網104は、送信所102,103毎に異なっていてもよいし、同じでもよい。また、伝送網104は、例えば無線伝送網やIP伝送網などで構成されるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
中継所105は、地勢的な影響で送信所102,103ではカバーできない地域(以下、難聴地域)A3での番組聴取を可能とするために設けられ、親局(
図1では、送信所102)から受信した放送波を、同一周波数にて再送信することで中継放送を実現する。
【0021】
[2.FM中継装置の構成]
中継所105を構成するFM中継装置1について説明する。
図2に示すように、FM中継装置1は、受信アンテナ2と、受信部3と、中継処理部4と、送信部5と、パワーアンプ6と、送信アンテナ7と、を備える。
【0022】
以下では、
図3に示すように、親局となる送信所102から受信アンテナ2に直接到来する放送波を親局波D、送信アンテナ7から送信される放送波を中継波Dr、送信アンテナ7から受信アンテナ2に回り込む中継波Drを回り込み波U0~Unという。回り込み波U0~Unは、受信アンテナ2での受信強度が大きい順に番号が付与されるものとする。通常、受信強度が最大となる回り込み波U0は、送信アンテナ7から受信アンテナ2に直接到達する直達波である。その他の回り込み波U1~Unは、何らかの物体に反射して間接的到達する反射波である。回り込み波U0~Unは、いずれも中継波Drを減衰かつ遅延させた波形を有する。
【0023】
また、FM中継装置1は、中継波Drが親局波Dから再送遅延時間Trだけ遅延して送信されるように設計される。再送遅延時間Trは、親局波Dと中継波Drとの干渉によって後述するステレオコンポジット信号Scにおける19KHzのパイロット信号の歪を低減するために、パイロット信号の1周期(すなわち、52.6μs)の整数倍に設定される。具体的には、例えば、パイロット信号の周期の6倍、即ち、Tr=315.8μsに設定される。
【0024】
図2に戻り、受信アンテナ2は、親局波Dを少なくとも受信するように配置される。受信アンテナ2は、無指向性アンテナでも指向性アンテナでもよい。親局波Dは、FM変調波であり、その中心周波数をfcとする。
【0025】
受信部3は、増幅器31と、ローカル信号生成器32と、ミキサ33と、A/D変換器34と、直交復調器35とを備える。
増幅器31は、受信アンテナ2からの受信信号を増幅する。
【0026】
ローカル信号生成器32は、受信アンテナ2から供給される受信信号の周波数をダウンコンバートするためのローカル信号LOを生成する。以下では、ローカル信号LOの周波数をflとする。
【0027】
ミキサ33は、増幅器31にて増幅された受信信号に、ローカル信号生成器32から供給されるローカル信号LOを混合することで、受信信号の周波数をfc-flにダウンコンバートする。
【0028】
A/D変換器34は、ミキサ33にてダウンコンバートされた受信信号を予め設定されたサンプリング周波数Fadにてサンプリングする。なお、A/D変換器34より上流の処理に関する説明では、「信号」はアナログ信号を意味し、A/D変換器34より下流の処理に関する説明では、「信号」はデジタル値の系列を意味する。A/D変換器34のサンプリング周波数Fadは、所望するチャンネル(すなわち、放送波Dに割り当てられた周波数帯)以外の広帯域のノイズ成分(あるいは別チャンネルの放送波)を除去するために、数十MHz程度に設定される。具体的には、信号処理用のサンプリング周波数の整数倍、例えば、49.152MHzに設定される。また、信号処理用のサンプリング周波数の整数倍に設定することで、後述のダウンサンプリングを簡潔に行うことができる。
【0029】
直交復調器35は、受信信号にヒルベルト変換を施すことで受信信号のサンプル値毎に同相成分及び直交成分を求めることで、受信信号を複素化する。具体的には、互いに直交する(即ち、位相が90°異なる)二つの搬送波信号を、受信信号に乗じることで同相成分を表すI信号及び直交成分を表すQ信号を生成する。I信号及びQ信号はベースバンド信号である。I信号及びQ信号はFM変調信号の2倍以上の帯域をカバーする周波数、例えば768kHzまでダウンサンプリングすることでデータ数を減らし、以降の中継処理部4での演算負荷を軽減してもよい。この信号処理用のサンプリング周波数Fsは、FM変調信号の帯域を十分カバーすることができればよく、768kHz以外に設定されてもよい。以下では、受信部3にて生成されるI信号及びQ信号を総称して、受信IQ信号という。
【0030】
中継処理部4は、受信部3にて生成された受信IQ信号から、帯域外成分を除去後にFM復調し、再度、FM変調することで一定の振幅となるI信号及びQ信号を再生する。ここでのFM変調では、中心周波数をオフセット周波数Δfoだけシフトして変調信号を生成する。なお、中継処理部4の詳細は、後述する。以下では、中継処理部4で再生されるI信号及びQ信号を総称して、送信IQ信号という。
【0031】
オフセット周波数Δfoは、FM放送波において許容される中心周波数偏差(20ppm)の範囲内で設定され、例えば、100Hz(搬送波信号の周波数が80MHzなら1.25ppm)程度に設定される。
【0032】
送信部5は、直交変調器51と、D/A変換器52と、ローカル信号生成器53と、ミキサ54と、増幅器55とを備える。
直交変調器51は、中継処理部4にて再生された送信IQ信号に、互いに直交する二つの搬送波信号を乗じて加算することで、FM変調された送信信号を生成する。
【0033】
D/A変換器52は、デジタル値の系列で表された送信信号をアナログ信号に変換する。D/A変換器52より下流の処理に関する説明では、「信号」はアナログ信号を意味する。
【0034】
ローカル信号生成器53は、送信信号の周波数をアップコンバートするためのローカル信号LOを生成する。ローカル信号生成器53は、受信部3のローカル信号生成器32と共通の装置であってもよい。
【0035】
ミキサ54は、D/A変換器52にて生成された送信信号と、ローカル信号生成器53にて生成されたローカル信号LOとを混合して、送信信号の周波数をアップコンバートする。アップコンバートされた送信信号の中心周波数は、親局波Dの中心周波数fcとはオフセット周波数Δfoだけ異なるfc+Δfoになる。
【0036】
増幅器55は、ミキサ54にてアップコンバートされた送信信号を増幅する。この増幅された送信信号を中継信号という。
パワーアンプ6は、送信部5にて生成された中継信号を、更に増幅して送信アンテナ7に供給する。なお、パワーアンプ6は、中継所105がカバーする中継エリアの大きさに応じて設定される増幅器であり、多段接続されてもよいし、省略されてもよい。
【0037】
送信アンテナ7は、中継信号に応じた中継波Drを中継エリアに向けて送信する。
[2-1.中継処理部]
中継処理部4は、信号再生部41と、発振検知部42と、回り込み波除去部43とを備える。
【0038】
中継処理部4の機能は、全てハードウェアによって実現されてもよいし、少なくとも一部が、プロセッサ及び非遷移的実体的記録媒体であるメモリを有するマイクロコンピュータが実行する処理によって実現されてもよい。この場合、マイクロコンピュータによって実現される各種機能は、プロセッサがメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現される。
【0039】
信号再生部41は、復調前CHフィルタ411と、FM復調部412と、コンポジットフィルタ413と、FM変調部414と、を備える。なお、CHは、Channelの略である。
【0040】
復調前CHフィルタ411は、回り込み波除去部43を介して受信部3から供給される受信IQ信号から、FM変調された搬送波がとり得る周波数範囲の信号を抽出する帯域通過フィルタである。
【0041】
FM復調部412は、復調前CHフィルタ411で不要成分が除去された受信IQ信号を用いて、予め設定された単位期間Δt毎に、受信信号の位相を算出すると共に、直前の単位期間Δtに算出された位相との差分である瞬時位相変化分Δθを算出する。なお、単位期間Δtは、信号処理用のサンプリング周期Fsの逆数であるサンプリング周期Ts=1/Fsまたはその整数倍に設定される。そして、算出した瞬時位相変化分Δθを、予め用意された変換テーブル又は変換式を用いてFM変調度に置き換えるΔf検波を行うことで、音声信号を生成する。FM変調度は、無変調時にゼロとなり、正負の符号を有した値をとる。音声信号は、ステレオ放送の場合はステレオコンポジット信号Scであり、モノラル放送の場合はモノラル音声信号である。
【0042】
ステレオコンポジット信号Scは、
図4に示すように、19kHzのパイロット信号と、15kHz以下の周波数成分を有するL+R信号と、38kHzを中心に±15kHzの周波数成分を有するL-R信号とを有する。なお、L+R信号は、ステレオ音声信号を表すL信号及びR信号を加算した信号である。L-R信号は、L信号からR信号を減算した信号によって、パイロット信号の2倍の周波数(即ち、38kHz)を有する搬送波をAM変調した信号である。モノラル音声信号は、15kHz以下の周波数成分を有する信号である。
【0043】
図2に戻り、コンポジットフィルタ413は、ステレオ放送の場合、FM復調部412にて復調されたステレオコンポジット信号Scから、パイロット信号、L+R信号、及びL-R信号以外の不要成分を除去する。コンポジットフィルタ413は、各信号を個別に抽出する3つのバンドパスフィルタで構成されてもよいし、各信号を一括して抽出する1つのバンドパスフィルタで構成されてもよい。コンポジットフィルタ413は、モノラル放送の場合、モノラル音声信号を通過させるバンドパスフィルタで構成する。なお、コンポジット信号に57kHzや76kHzを中心とする有効な信号がある場合は、必要に応じてフィルタの帯域を変更してもよい。
【0044】
FM変調部414は、コンポジットフィルタ413を通過した音声信号(すなわち、ステレオコンポジット信号Scまたはモノラル音声信号)について単位期間Δt毎にFM変調度Δfを算出し、FM復調部412で用いる同じ変換テーブルを用いて、FM変調度Δfから瞬時位相変化分Δθを算出する。そして、FM変調部414は、この瞬時位相変化分Δθから、送信信号の同相成分を表すI信号及び直交成分を表すQ信号、すなわち、送信IQ信号を生成する。なお、送信IQ信号の搬送波周波数は、受信IQ信号の搬送波周波数に対してオフセット周波数Δfoだけシフトした周波数に設定される。
【0045】
FM変調部414は、生成した送信IQ信号の出力レベルを複数段階で制御できるように構成される。そして、FM中継装置1の起動時、又は発振検知部42から出力される発振検知信号Soがアクティブレベルになったときに、FM変調部414の出力レベルは最小レベルに初期設定される。発振検知信号Soのアクティブレベルは、回り込み発振が検知されたことを表す。その後、FM変調部414は、予め設定された起動時間をかけて回り込み波Uを順次除去しながら出力レベルを最大レベルまで段階的に増大させる。なお、最小レベルは、受信アンテナ2で直接受信される送信アンテナ7からの回り込み波UOの受信強度が、親局波Dの受信強度より十分に小さくなるように設定される。最大レベルは、送信部5での処理によって信号の飽和が発生しない大きさに設定される。なお、FM変調部414において出力レベルを調整する機能を実現するための構成が出力調整部に相当する。
【0046】
発振検知部42は、復調前CHフィルタ411にて抽出された受信IQ信号の振幅を監視し、振幅の変動が予め設定された閾値を超えている場合、又は飽和している場合に、アクティブレベルに設定した発振検知信号Soを出力する。つまり、発振検知部42では、FM変調波を表す受信IQ信号は、理想的には振幅が一定となるが、FM変調波に、周波数がわずかに異なる信号(すなわち、回り込み波U0~Un)が重畳されている場合には、振幅が変動することを利用して、発振を検知している。なお、振幅の変動幅が一定値を超えるFM変調波は、正しく復調することが困難となる。
【0047】
回り込み波除去部43は、変調後CHフィルタ431と、相関解析部432と、プロファイル記憶部433と、適応フィルタ434と、減算器435とを備える。なお、相関解析部432がプロファイル生成部に相当し、適応フィルタ434及び減算器435が抑制部に相当する。
変調後CHフィルタ431は、信号再生部41にて再生された送信IQ信号から、FM変調された搬送波がとり得る周波数範囲の信号を抽出する帯域通過フィルタである。すなわち、変調後CHフィルタ431は、復調前CHフィルタ411と同様の構成を有する。
【0048】
相関解析部432は、復調前CHフィルタ411から供給される受信IQ信号と、変調後CHフィルタ431から供給される送信IQ信号を用い、送信IQ信号に対する受信IQ信号の遅延時間が、Tr~Tr+ΔTrとなる探査範囲で時間軸相関を算出する。Trは、上述した中継波Drの再送遅延時間であり、ΔTrは、適応フィルタ434のタップ数で設定される時間幅である。
【0049】
相関解析部432は、具体的には、オフセット周波数Δfoの逆数を畳み込み演算時間To=1/Δfoとして、畳み込み演算時間To毎に受信IQ信号及び送信IQ信号を切り取る。そして、上述の探査範囲Tr~Tr+ΔTrにおいて、サンプリング周期Tsの時間ずつ、送信IQ信号を順次遅延させながら、受信IQ信号と送信IQ信号の複素共役信号を乗算して畳み込み演算を行う。畳み込み演算時間To分だけ畳み込み演算を行うことにより、送信IQ信号と同じオフセット周波数Δfoを有する回り込み波U0~Unにのみ、強い相関が現れることになる。
【0050】
相関解析部432は、畳み込み演算の結果である時間軸相関に基づき、相関係数の最大値と、その最大値の相関係数が得られる遅延時間DL(但し、DL≠0)とを抽出する。そして、相関解析部432は、抽出結果から推定される遅延波の信号強度Aと位相θと遅延時間DLとを遅延プロファイルとして、プロファイル記憶部433に記憶する。プロファイル記憶部433は、記憶内容を書き換え可能なメモリである。
【0051】
ここで、相関解析部432での処理の流れを、
図5に示すフローチャートに沿って説明する。
相関解析部432での処理は、FM中継装置1が起動すると開始される。
【0052】
S110では、相関解析部432は、プロファイル記憶部433の記憶内容を初期化(例えば、ゼロクリア)する。
続くS120では、相関解析部432は、発振検知部42にて発振が検知されたか否か、即ち、発振検知信号Soがアクティブレベルになったか否かを判定する。
【0053】
相関解析部432は、発振が検知されたと判定した場合、処理をS130に移行し、発振が検知されていないと判定した場合、処理をS140に移行する。
S130では、相関解析部432は、プロファイル記憶部433の記憶内容を再設定(例えば、ゼロクリア)する。S130での処理が再設定処理に相当する。
【0054】
S140では、相関解析部432は、送信IQ信号と受信IQ信号との畳み込み演算を実行することで時間軸相関を算出する。なお、送信IQ信号及び受信IQ信号は、いずれもI信号とQ信号とで表現される複素平面上のベクトルとして扱われ、畳み込み演算は、送信IQ信号の複素共役信号と受信IQ信号の複素信号とを乗算することで行われる。
【0055】
続くS150では、相関解析部432は、畳み込み演算の演算結果である時間軸相関に基づいて遅延プロファイルを作成する。以下では、S150にて畳み込み演算時間To毎に生成される遅延プロファイルを生成プロファイルとし、プロファイル記憶部433に既に記憶されている遅延プロファイルを既存プロファイルという。
【0056】
続くS160では、相関解析部432は、遅延時間DLが生成プロファイルと一致する既存プロファイルが存在するか否かを判定する。相関解析部432は、一致する既存プロファイルが存在しないと判定した場合、処理をS170に移行し、一致する既存プロファイルが存在すると判定した場合、処理をS180に移行する。
【0057】
S170では、相関解析部432は、生成プロファイルをプロファイル記憶部433に追加で記憶させて、処理をS120に戻す。
S180では、相関解析部432は、一致する既存プロファイルについて記憶されている信号強度Aと位相θに、生成プロファイルの信号強度Aと位相θを加えることで既存プロファイルの内容を更新して、処理をS120に戻す。
【0058】
相関解析部432での処理の結果、畳み込み演算時間To毎に遅延プロファイルが生成され、プロファイル記憶部433には、
図6に示すように、遅延時間DLの異なる複数の遅延プロファイルが蓄積される。遅延プロファイルは、受信アンテナ2にて受信される回り込み波U0~Unの状態を表す情報である。
【0059】
図2に戻り、適応フィルタ434は、プロファイル記憶部433に記憶された遅延プロファイルのそれぞれに基づき、受信IQ信号を遅延時間DLだけ遅延させ、信号強度Aに基づいて振幅を調整し、位相θに基づいて位相を調整したレプリカIQ信号を生成する。レプリカIQ信号は、レプリカI信号、及びレプリカI信号とは位相が90°異なるレプリカQ信号の総称である。適応フィルタ434は、プロファイル記憶部433に記憶された遅延プロファイルの数と同数のレプリカIQ信号を生成する。
【0060】
減算器435は、受信部3から供給される受信IQ信号から、適応フィルタ434にて生成された全てのレプリカIQ信号を減じた結果を、信号再生部41に供給する。
[3.動作]
システムの動作について説明する。
【0061】
FM中継装置1の起動直後では、中継処理部4で再生される送信IQ信号は、最低強度で出力される。これにより、送信アンテナ2で受信される回り込み波U0~Unの強度が十分に小さくなるため、回り込み波U0~Unによる発振が抑制される。
【0062】
相関解析部432は、処理を行う時点で、受信IQ信号に含まれる最も強度が強い回り込み波Ui(i=0,1,…,n)についての遅延プロファイルを生成する。従って、最初は、直達波U0の遅延プロファイルが生成されて、プロファイル記憶部433に記憶される。適応フィルタ434は、プロファイル記憶部433に記憶された遅延プロファイルに従って直達波U0のレプリカIQ信号を生成する。減算器435が、レプリカIQ信号を受信IQ信号から減じることで、直達波U0に基づく信号成分が受信IQ信号から除去される。
【0063】
引き続き、直達波U0の影響が除去された受信IQ信号について、同様の処理が行われることにより、直達波U0を除いて最大強度となる反射波U1についての遅延プロファイルが新たに生成され、プロファイル記憶部433の内容が更新される。適応フィルタ434は、プロファイル記憶部433に記憶された遅延プロファイルに従って、直達波U0,反射波U1に対応するレプリカIQ信号を生成する。減算器435が、レプリカIQ信号を受信IQ信号から減じることで、直達波U0及び反射波U1に基づく信号成分が受信IQ信号から除去される。
【0064】
以下、同様の処理を繰り返すことで、回り込み波U0~Unに基づく信号成分が受信強度の大きい順に、受信IQ信号から順次除去される。
また、起動時等には、上述した回り込み波U0~Unを除去する処理の進捗に伴い、送信IQ信号(ひいては、中継波Dr)の出力レベルが徐々に大きくなる。
【0065】
[4.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(4a)FM中継装置1では、回り込み波U0~Unに基づく信号成分を受信IQ信号から除去するために用いるレプリカIQ信号を、中継波Drの生成に用いる送信IQ信号、即ち、回り込み波U0~Unと同じ波形を有する信号から生成する。このため、FM中継装置1によれば、発振の原因となる回り込み波U0~Unに基づく成分を的確に抑制できる。
【0066】
(4b)FM中継装置1では、レプリカIQ信号の生成に用いる遅延プロファイルを、処理の時点で受信IQ信号に含まれる受信強度が最も大きい1つの回り込み波Uについて生成し、その回り込み波Uの影響を抑制する処理を繰り返す。これにより、処理を繰り返す毎に、回り込み波Uの影響は、信号強度の大きい順に抑制されるため、回り込み波Uの数がいくつあっても、適応フィルタで生成可能な範囲内における全ての回り込み波Uに対処できる。
【0067】
(4c)FM中継装置1では、起動時及び発振検知時には、中継波Drの出力レベルを最小レベルに設定し、時間の経過(すなわち、回り込み波U0~Unを除去する処理の進捗)に伴って、出力レベルを徐々に増大させる。このため、FM中継装置1によれば、
図7に示すように、回り込み波U0~Unの元となる中継波Drの最終的な出力信号が、親局波Dより大きいレベルで受信アンテナ2に回り込んでも、回り込み発振の発生を抑制できる。なお、回り込み波U0~Unを除去する処理の進捗は、時間の経過によって判断する以外に、遅延プロファイルの生成状況等によって判断してもよい。
【0068】
(4d)FM中継装置1では、受信信号をヒルベルト変換することで生成される受信IQ信号から、レプリカIQ信号を減じること、すなわち、アナログ的な波形レベルで回り込み波Uの影響を抑制する処理を行う。このため、FM中継装置1によれば、回り込み波U0~Unが有する遅延時間に関する情報と、強度及び位相に関する情報とを、別個に分離することなく同時に処理できるため、装置構成を簡略化できる。
【0069】
(4e)FM中継装置1では、親局波Dに用いる受信IQ信号と、中継波Drに用いる送信IQ信号とでオフセット周波数Δfoだけ異なる搬送波信号を用いる。また、FM中継装置1では、受信IQ信号と送信IQ信号との時間軸相関を算出する際に、オフセット周波数Δfoの逆数であるオフセット時間Toの区間で畳み込み演算を行う。これにより、受信IQ信号に含まれる親局波Dに基づく信号成分は、送信IQ信号との相関が弱くなり、相関解析部432での計算上では一種のノイズとして検出される。従って、FM中継装置1によれば、親局波Dに基づく信号成分が、回り込み波U0~Unの検出において妨害となることを抑制できる。
【0070】
すなわち、FM放送波は、音声信号の変化を中心周波数からの周波数偏移に変換して伝送するアナログ変調信号であり、地上デジタル放送波とは異なり、回り込み波を推定するための情報は重畳されていない。回り込み波を推定するために親局波Dと同一チャンネル周波数の信号でありながら、中継波Drをオフセット周波数Δfoだけ異ならせることで、FM放送波に特別な信号を重畳することなく回り込み波の推定を可能としている。
【0071】
[5.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0072】
(5a)上記実施形態では、プロファイル記憶部433の記憶内容は、FM中継装置1の起動時に初期化(すなわち、S110)され、発振検知時に再設定(すなわち、S130)される。そして、初期化及び再設定時には、記憶内容をゼロクリアするように構成されているが、本開示は、これに限定されるものではない。例えば、プロファイル記憶部433に、遅延プロファイルの更新履歴を記憶させ、相関解析部432は、発振検知時に、プロファイル記憶部433の記憶内容をゼロクリアする代わりに、更新履歴に基づいて、遅延プロファイルの内容を発振検知前の状態に戻してもよい。このような構成によれば、発振検知後、回り込み波U0~Unの影響が十分に抑制された状態に、速やかに復帰させることができる。
【0073】
(5b)上記実施形態では、起動時及び発振検知時における中継波Drの出力レベルの制御を、FM変調部414で行っているが、増幅器55や、パワーアンプ6の増幅率を変化させることで行ってもよいし、別途設けた減衰器によって行ってもよい。
【0074】
(5c)上記実施形態では、FM中継装置1を、SFNを用いるFM同期放送システムにおいて放送エリアを拡張する場合について例示したが、これに限定されるものではなく、FM同期放送ではない通常のFM放送システムにおいて放送エリアを拡張する場合に適用してもよい。
【0075】
(5d)FM中継装置1は、受信IQ信号の状態を表示するための構成を備えてもよい。具体的には、FM中継装置1は、受信IQ信号を複素平面上にプロットした画像を表す画像信号を生成する画像信号生成部と、画像信号を出力する画像出力端子とを備えてもよい。更に、画像出力端子に接続される表示装置や、画像信号を外部の表示装置(例えば、携帯電話等)に送信する無線通信器等を備えてもよい。この場合、
図8に示すように、回り込み波による干渉がない場合と、干渉がある場合とで、異なる画像が得られるため、干渉の有無を視覚的に確認できる。
【0076】
(5e)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0077】
(5f)上述したFM中継装置の他、当該FM中継装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、遅延プロファイル生成方法など、様々な形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0078】
1…FM中継装置、2…受信アンテナ、3…受信部、4…中継処理部、5…送信部、6…パワーアンプ、7…送信アンテナ、31,55…増幅器、32,53…ローカル信号生成器、33,54…ミキサ、34…A/D変換器、35…直交復調器、41…信号再生部、42…発振検知部、43…回り込み波除去部、51…直交変調器、52…D/A変換器、100…同期放送システム、101…配信局、102,103…送信所、104…伝送網、105…中継所、411…復調前CHフィルタ、412…復調部、413…コンポジットフィルタ、414…変調部、431…変調後CHフィルタ、432…相関解析部、433…プロファイル記憶部、434…適応フィルタ、435…減算器。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
FM放送の放送波を、受信アンテナ(2)を介して受信するように構成された受信部(3)と、
前記受信部からの受信信号からレプリカ信号を減じた抑制信号を生成するように構成された抑制部(434,435)と、
前記抑制信号を復調し、復調した信号を再変調することで送信信号を生成するように構成された信号再生部(41)と、
前記信号再生部にて生成された前記送信信号を用いて前記放送波を再現した中継波を、送信アンテナ(7)を介して送信するように構成された送信部(5)と、
前記抑制信号と前記送信信号とを用いて時間軸相関を算出し、前記時間軸相関の最大値である最大相関値、及び該最大相関値が得られるときの前記受信信号に対する前記送信信号の遅延時間を含んだ情報である遅延プロファイルを生成するように構成されたプロファイル生成部(432)と、
を備え、
前記抑制部は、前記信号再生部で生成される前記送信信号を、前記遅延プロファイルに従って、前記遅延時間だけ遅延させ且つ前記最大相関値に応じた強度と位相に調整することで前記レプリカ信号を生成するように構成され、
前記信号再生部は、前記送信信号の搬送波を、前記放送波の搬送波とは、FM放送波において許容される中心周波数偏差の範囲内で設定されるオフセット周波数だけ異ならせるように構成された
FM中継装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項8
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項8】
FM放送の放送波を受信する受信アンテナから得られる受信信号からレプリカ信号を減じた抑制信号を復調し、復調した信号を再変調することで送信信号を生成し、前記送信信号を用いて前記放送波を再現した中継波を送信アンテナから送信するFM中継装置において、前記送信アンテナから送信され前記受信アンテナにて受信される回り込み波の情報を表す遅延プロファイルを生成する遅延プロファイル生成方法であって、
前記送信信号の搬送波を、前記放送波において許容される中心周波数偏差の範囲内で設定されるオフセット周波数だけ前記放送波の搬送波とは異ならせ、
前記抑制信号と前記送信信号とを用いて時間軸相関を算出し、前記時間軸相関の最大値である最大相関値、及び最大相関値が得られるときの前記受信信号に対する前記送信信号の遅延時間を抽出することで、前記遅延プロファイルを生成し、
前記レプリカ信号は、前記送信信号を、前記遅延プロファイルに従って、前記遅延時間だけ遅延させ且つ前記最大相関値に応じた強度と位相に調整することで生成される信号である、
遅延プロファイル生成方法。