(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051333
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】FM中継装置
(51)【国際特許分類】
H04B 7/15 20060101AFI20220324BHJP
H04B 7/005 20060101ALI20220324BHJP
H04B 1/10 20060101ALI20220324BHJP
H04B 7/0408 20170101ALI20220324BHJP
【FI】
H04B7/15
H04B7/005
H04B1/10 L
H04B7/0408
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020157757
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】591249323
【氏名又は名称】日本通信機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515320008
【氏名又は名称】山口放送株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591164613
【氏名又は名称】株式会社NHKテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】河野 憲治
(72)【発明者】
【氏名】貝嶋 誠
(72)【発明者】
【氏名】峰吉 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】大久保 寛
(72)【発明者】
【氏名】▲恵▼良 勝治
(72)【発明者】
【氏名】岩木 昌三
(72)【発明者】
【氏名】山根 実
(72)【発明者】
【氏名】上田 大一朗
【テーマコード(参考)】
5K046
5K052
5K072
【Fターム(参考)】
5K046AA05
5K046EE57
5K052AA01
5K052BB05
5K052CC04
5K052FF32
5K052GG31
5K052GG41
5K072AA04
5K072AA29
5K072BB03
5K072BB14
5K072BB25
5K072BB27
5K072GG10
5K072GG12
5K072GG13
(57)【要約】
【課題】単一周波数ネットワークを構成するFM放送システムの中継所において、回り込み波に代表される同一周波数の干渉波を抑制する技術を提供する。
【解決手段】受信部(3A,3B)は、FM同期放送用の放送波を、二つの受信アンテナ(2A,2B)を用いて受信する。信号合成部(40)は、二つの受信アンテナによって得られる二つの受信信号を、干渉波に基づく信号成分である干渉波成分の位相が逆相となり、かつ、干渉波成分の信号強度が一致するように合成する。信号再生部(41)は、信号合成部からの合成信号を復調し、復調した信号を再変調することで送信信号を生成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
FM同期放送用の放送波を、二つの受信アンテナ(2A,2B)を用いて受信するように構成された受信部(3A,3B)と、
前記受信部から得られる二つの受信信号を、干渉波に基づく信号成分である干渉波成分の位相が逆相となり、かつ、前記干渉波成分の信号強度が一致するように合成するように構成された信号合成部(40)と、
前記信号合成部からの合成信号を復調し、復調した信号を再変調することで送信信号を生成するように構成された信号再生部(41)と、
前記信号再生部にて生成された前記送信信号を用いて前記放送波を再現した中継波を、送信アンテナ(7)を介して送信するように構成された送信部(5)と、
を備えるFM中継装置。
【請求項2】
請求項1に記載のFM中継装置であって、
前記二つの受信アンテナは、前記放送波に基づく信号成分である放送波成分が、前記信号再生部での処理に必要な信号強度で前記合成信号に含まれるように配置された
FM中継装置。
【請求項3】
請求項2に記載のFM中継装置であって、
前記二つの受信アンテナで受信される前記放送波の位相差をΔθp、前記放送波のレベル差をΔPp、前記干渉波の位相差をΔθr、前記干渉波のレベル差をΔPr、前記信号再生部での処理に必要な信号強度に応じて設定される下限閾値をTHθ、THpとして、
前記二つの受信アンテナは、|Δθp-Δθr|≧THθ、及びΔPp-ΔPr≧THPのうち、少なくとも一方を満たすように配置された
FM中継装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のFM中継装置であって、
前記信号合成部は、
前記受信部から得られる前記二つの受信信号を、設定された合成係数に従って位相差及びレベル差が調整された状態で合成することで前記合成信号を生成するように構成された干渉波逆相合成部(401)と、
前記合成信号の信号品質を指標として前記合成係数を設定するように構成された係数設定部(402,404)と、
を備えるFM中継装置。
【請求項5】
請求項4に記載のFM中継装置であって、
前記信号合成部は、予め設定された計測時間毎に、前記二つの受信信号の位相差の平均値及びレベル差の平均値を算出するように構成された差分検出部(403)を更に備え、
前記係数設定部は、前記干渉波が前記放送波より受信強度が大きい状態のときに、前記差分検出部での検出結果に従って前記合成係数を設定するように構成された FM中継装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のFM中継装置であって、
前記合成信号と前記送信信号とを用いて時間軸相関を算出し、前記時間軸相関の最大値である最大相関値、及び該最大相関値が得られるときの前記受信信号に対する前記送信信号の遅延時間を含んだ情報である遅延プロファイルを生成するように構成されたプロファイル生成部(432)と、
前記信号再生部で生成される前記送信信号を、前記遅延プロファイルに従って、前記遅延時間だけ遅延させ且つ前記最大相関値に応じた強度と位相に調整することでレプリカ信号を生成し、前記信号再生部に入力される前記合成信号から前記レプリカ信号を減じるように構成された抑制部(434,435)と、
を備え、
前記信号再生部は、前記送信信号の搬送波を、前記放送波の搬送波とは、FM放送において許容される中心周波数偏差の範囲内で設定されるオフセット周波数だけ異ならせるように構成された
FM中継装置。
【請求項7】
請求項6に記載のFM中継装置であって、
前記プロファイル生成部は、前記オフセット周波数をΔfoとして、前記オフセット周波数Δfoの逆数であるTo=1/Δfoの時間幅で畳み込み演算を実行することで前記時間軸相関を生成するように構成された
FM中継装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載のFM中継装置であって、
当該FM中継装置の起動時に、前記送信アンテナが送信する前記中継波の出力レベルを、予め設定された最小レベルに設定し、前記出力レベルを予め設定された最大レベルまで回り込み波除去の進捗に応じて段階的に調整するように構成された出力調整部(414)
を更に備えるFM中継装置。
【請求項9】
請求項8に記載のFM中継装置であって、
当該FM中継装置の発振を検知するように構成された発振検知部(42)と、
前記プロファイル生成部にて生成された前記遅延プロファイルを記憶するように構成されたプロファイル記憶部(433)と、
を更に備え、
前記抑制部は、前記プロファイル記憶部の記憶内容に従って前記レプリカ信号を生成するように構成され、
前記プロファイル生成部は、前記発振検知部による発振検知時に、前記プロファイル記憶部の記憶内容を再設定する再設定処理を行うように構成された、
前記出力調整部は、前記起動時に加え、前記発振検知部による発振検知時にも、前記中継波の出力レベルを調整するように構成された、
FM中継装置。
【請求項10】
請求項9に記載のFM中継装置であって、
前記プロファイル生成部は、前記再設定処理として、前記プロファイル記憶部の記憶内容を消去するように構成された
FM中継装置。
【請求項11】
請求項9に記載のFM中継装置であって、
前記プロファイル記憶部には、前記遅延プロファイルの履歴が更に記憶されるように構成され、
前記プロファイル生成部は、前記再設定処理として、前記プロファイル記憶部の記憶内容を、前記遅延プロファイルの履歴を用いて発振検知前の状態に戻すように構成された、
FM中継装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載のFM中継装置であって、
前記受信部は、前記受信信号を、同相成分を表すI信号及び直交成分を表すQ信号に変換して出力し、
前記送信部は、前記I信号及び前記Q信号で表わされた前記送信信号を直交復調して送信するように構成された
FM中継装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、FM放送システムの放送波を中継する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
周波数変調された同一周波数かつ同一プログラムの音声放送波を、複数の送信所から送信するFM同期放送が知られている。FMは、frequency Modulationの略である。一般に放送システムでは、受信エリアを拡大するために中継所が設けられる。既存のFM放送で用いられる中継所は、複数周波数ネットワーク(MFN)を構築する。すなわち、MFNに属する各中継所は、親局となる送信所から受信した放送波(以下、親局波)とは異なる周波数の放送波(以下、中継波)を再送信する。
【0003】
これに対して、FM同期放送で用いられる中継所は、親局波と同一周波数の中継波を用いる単一周波数ネットワーク(以下、SFN)を構築する。すなわち、SFNに属する各中継所は、親局波と同一周波数の中継波を再送信する。そして、SFNに属する中継所では、受信アンテナに親局波より強いレベルの中継波が回り込む、いわゆるマイナスD/Uの状態になると回り込み発振を起こすため、回り込み発振への対策が必要となる。
【0004】
特許文献1には、SFNを採用する地上デジタル放送システムにおいて、中継所で生じる回り込み波をキャンセルする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、OFDM信号を用いる地上デジタル放送を前提とするものであり、使用する放送信号の形式が全く異なるアナログ変調方式のFM放送に適用することができないという問題があった。
【0007】
本開示の1つの局面は、単一周波数ネットワークを構成するFM放送システムの中継所において、回り込み波に代表される同一周波数の干渉波を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、FM中継装置であって、受信部(3A,3B)と、信号合成部(40)と、信号再生部(41)と、送信部(5)と、を備える。
受信部は、FM同期放送用の放送波を、二つの受信アンテナ(2A,2B)を用いて受信するように構成される。信号合成部は、二つの受信部から得られる二つの受信信号を、干渉波に基づく信号成分である干渉波成分の位相が逆相となり、かつ、干渉波成分の信号強度が一致するように合成するように構成される。信号再生部は、信号合成部からの合成信号を復調し、復調した信号を再変調することで送信信号を生成するように構成される。送信部は、信号再生部にて生成された送信信号を用いて放送波を再現した中継波を、送信アンテナ(7)を介して送信するように構成される。
【0009】
このように構成されたFM中継装置では、最大強度の干渉波(例えば、回り込み波U0)を、二つの受信アンテナから得られる信号の合成によって除去するため、回り込み波Uの全体レベルを速やかに低下させることができる。その結果、回り込み波による発振が抑制され、動作の安定性を向上させることができる。
【0010】
FM中継装置では、信号合成部は、二つの受信アンテナから得られる信号を合成することで、干渉波を除去するため、最大強度の干渉波が、中継波とは異なる波形を有する場合でも、この干渉波を有効に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】同一周波数FM放送システムの概要を示す説明図である。
【
図2】FM中継装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】FM中継装置における親局波、中継波、回り込み波の関係を示す説明図である。
【
図5】信号品質の検出結果を例示するグラフである。
【
図6】第1及び第2受信IQ信号、並びに合成IQ信号に含まれる親局波成分及び回り込み波成分をベクトルで示した説明図である。
【
図7】処理ブロックB5で検出される信号品質の検出結果を複素平面上に示したグラフである。
【
図8】ステレオコンポジット信号のスペクトラムを示す説明図である。
【
図9】相関解析部での処理内容を示すフローチャートである。
【
図10】遅延プロファイルの概要、及び遅延プロファイルの生成に用いるパラメータを示す説明図である。
【
図11】起動時及び発振検知時に実施される中継波の出力レベル制御を示す説明図である。
【
図12】回り込み波による干渉がない場合及び干渉がある場合それぞれについての受信IQ信号を、複素平面上で示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.同一周波数FM放送システム]
まず、本開示に係るFM中継装置が適用される同一周波数FM放送システム100について説明する。
【0013】
同一周波数FM放送システム100は、
図1に示すように、配信局101と一つ以上の送信所102,103と、一つ以上の中継所105とを備える。配信局101は、同一の音声信号を、所定の伝送網104を介して各送信所102,103に配信する。送信所102,103は、それぞれの放送エリアA1,A2の少なくとも一部が、互いに重なり合うように配置される。以下では、重なり合う放送エリアを重複エリアAdという。送信所102,103は、伝送網104を介して配信局101から受信した同一の音声信号により、同一周波数の搬送波を周波数変調した放送波を送信することで、FM同期放送(以下、単に同期放送)を行う。また、送信所102,103では、GPSを利用して取得される1秒パルス信号(以下、1pps)に同期したクロックを用いてFM変調のタイミングを含むFM変調特性が、両送信所間で同一となるように制御される。GPSは、Global Positioning Systemの略である。
【0014】
音声信号の配信に用いる伝送網104は、送信所102,103毎に異なっていてもよいし、同じでもよい。また、伝送網104は、例えば無線伝送網やIP伝送網などで構成されるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
中継所105は、地勢的な影響で送信所102,103ではカバーできない地域(以下、難聴地域)A3での番組聴取を可能とするために設けられ、親局(
図1では、送信所102)から受信した放送波を、同一周波数にて再送信することで中継放送を実現する。
【0016】
[2.FM中継装置の構成]
中継所105を構成するFM中継装置1について説明する。
図2に示すように、FM中継装置1は、二つの受信アンテナ2A,2Bと、二つの受信部3A,3Bと、中継処理部4と、送信部5と、パワーアンプ6と、送信アンテナ7と、を備える。
【0017】
以下では、
図3に示すように、親局となる送信所102から受信アンテナ2A,2Bに到来する放送波を親局波D、送信アンテナ7から送信される放送波を中継波Dr、送信アンテナ7から受信アンテナ2A,2Bに回り込む中継波Drを回り込み波U0~Unという。回り込み波U0は、送信アンテナ7から受信アンテナ2A,2Bに直接到達する直達波である。回り込み波U1~Unは、何らかの物体に反射して受信アンテナ2A,2Bに間接的に到達する反射波であり、受信アンテナ2A,2Bでの受信強度が大きい順に番号が付与されるものとする。回り込み波U0~Unは、いずれも中継波Drを減衰かつ遅延させた波形を有する。
【0018】
また、FM中継装置1は、中継波Drが親局波Dから再送遅延時間Trだけ遅延して送信されるように設計される。再送遅延時間Trは、親局波Dと中継波Drとの干渉によって後述するステレオコンポジット信号Scにおける19KHzのパイロット信号の歪を低減するために、パイロット信号の1周期(すなわち、52.6μs)の整数倍に設定される。具体的には、例えば、パイロット信号の周期の6倍、即ち、Tr=315.8μsに設定される。
【0019】
図2に戻り、受信アンテナ2A,2Bは、理想的には、親局波Dが同相で受信され、かつ、回り込み波U0が逆相(すなわち、180°の位相差)で受信されるように配置される。実際には、受信アンテナ2A,2Bでそれぞれ受信される親局波Dと回り込み波U0の位相差は、正確に逆相である必要はなく、回り込み波U0を逆位相、かつ同レベルで合成したとき、親局波Dが残るように設定されていればよい。つまり、受信アンテナ2A,2Bは、後述する信号合成部40で生成される信号に、親局波Dに基づく信号成分である親局波成分が、後述する信号再生部41での処理に必要な信号強度で含まれるように配置される。
【0020】
具体的には、受信アンテナ2A,2Bは、(1)(2)式のうち、少なくとも一方を満たすように配置されていればよい。但し、受信アンテナ2A,2Bで受信される親局波Dの位相差をΔθp、レベル差をΔPp、回り込み波U0の位相差をΔθr、レベル差をΔPrとする。また、THθ,THPは、信号再生部41での処理に必要な信号強度に応じて設定され、例えば、THθ=10°、THP=3dBに設定される。
【0021】
|Δθp-Δθr|≧THθ (1)
ΔPp-ΔPr≧THP (2)
受信アンテナ2A,2Bは、無指向性アンテナでも指向性アンテナでもよい。親局波Dは、FM変調波であり、その中心周波数をfcとする。
【0022】
受信部3Aは、受信アンテナ2Aに接続され、受信部3Bは、受信アンテナ2Bに接続される。
受信部3Aは、増幅器31と、ローカル信号生成器32と、ミキサ33と、A/D変換器34と、直交復調器35とを備える。
【0023】
ローカル信号生成器32は、受信アンテナ2Aから供給される受信信号の周波数をダウンコンバートするためのローカル信号LOを生成する。以下では、ローカル信号LOの周波数をflとする。
【0024】
増幅器31は、受信アンテナ2Aからの受信信号を増幅する。
ミキサ33は、増幅器31にて増幅された受信信号に、ローカル信号生成器32から供給されるローカル信号LOを混合することで、受信信号の周波数をfc-flにダウンコンバートする。
【0025】
A/D変換器34は、ミキサ33にてダウンコンバートされた受信信号を予め設定されたサンプリング周波数Fadにてサンプリングする。なお、A/D変換器34より上流の処理に関する説明では、「信号」はアナログ信号を意味し、A/D変換器34より下流の処理に関する説明では、「信号」はデジタル値の系列を意味する。A/D変換器34のサンプリング周波数Fadは、所望するチャンネル(すなわち、放送波Dに割り当てられた周波数帯)以外の広帯域のノイズ成分(あるいは別チャンネルの放送波)を除去するために、数十MHz程度に設定される。具体的には、信号処理用のサンプリング周波数の整数倍、例えば、49.152MHzに設定される。また、信号処理用のサンプリング周波数の整数倍に設定することで、後述のダウンサンプリングを簡潔に行うことができる。
【0026】
直交復調器35は、受信信号にヒルベルト変換を施すことで受信信号のサンプル値毎に同相成分及び直交成分を求めることで、受信信号を複素化する。具体的には、互いに直交する(即ち、位相が90°異なる)二つの搬送波信号を、受信信号に乗じることで同相成分を表すI信号及び直交成分を表すQ信号を生成する。I信号及びQ信号はベースバンド信号である。I信号及びQ信号はFM変調信号の2倍以上の帯域をカバーする周波数、例えば768kHzまでダウンサンプリングすることでデータ数を減らし、以降の中継処理部4での演算負荷を軽減してもよい。この信号処理用のサンプリング周波数Fsは、FM変調信号の帯域を十分カバーすることができればよく、768kHz以外に設定されてもよい。
【0027】
受信部3Bは、受信部3Aと同様の構成を有するため、説明を省略する。但し、上述の受信部3Aについての説明において、受信アンテナ2Aは受信アンテナ2Bに読み替えるものとする。また、ローカル信号生成器32は、受信部3A,3Bで共通の構成とされてもよい。
【0028】
以下では、受信部3Aにて生成されるI信号及びQ信号を総称して、第1受信IQ信号と呼び、受信部3Bにて生成されるI信号及びQ信号を総称して、第2受信IQ信号と呼ぶ。
【0029】
中継処理部4は、受信部3A,3Bにて生成された第1受信IQ信号と第2受信IQ信号とを合成した合成受信IQ信号から、帯域外成分を除去後にFM復調し、再度、FM変調することで一定の振幅となるI信号及びQ信号を再生する。ここでのFM変調では、中心周波数をオフセット周波数Δfoだけシフトして変調信号を生成する。なお、中継処理部4の詳細は、後述する。以下では、中継処理部4で再生されるI信号及びQ信号を総称して、送信IQ信号という。
【0030】
オフセット周波数Δfoは、FM放送波において許容される中心周波数偏差(20ppm)の範囲内で設定され、例えば、100Hz(搬送波信号の周波数が80MHzなら1.25ppm)程度に設定される。
【0031】
送信部5は、直交変調器51と、D/A変換器52と、ローカル信号生成器53と、ミキサ54と、増幅器55とを備える。
直交変調器51は、中継処理部4にて再生された送信IQ信号に、互いに直交する二つの搬送波信号を乗じて加算することで、FM変調された送信信号を生成する。
【0032】
D/A変換器52は、デジタル値の系列で表された送信信号をアナログ信号に変換する。D/A変換器52より下流の処理に関する説明では、「信号」はアナログ信号を意味する。
【0033】
ローカル信号生成器53は、送信信号の周波数をアップコンバートするためのローカル信号LOを生成する。ローカル信号生成器53は、受信部3のローカル信号生成器32と共通の装置であってもよい。
【0034】
ミキサ54は、D/A変換器52にて生成された送信信号と、ローカル信号生成器53にて生成されたローカル信号LOとを混合して、送信信号の周波数をアップコンバートする。アップコンバートされた送信信号の中心周波数は、親局波Dの中心周波数fcとはオフセット周波数Δfoだけ異なるfc+Δfoになる。
【0035】
増幅器55は、ミキサ54にてアップコンバートされた送信信号を増幅する。この増幅された送信信号を中継信号という。
パワーアンプ6は、送信部5にて生成された中継信号を、更に増幅して送信アンテナ7に供給する。なお、パワーアンプ6は、中継所105がカバーする中継エリアの大きさに応じて設定される増幅器であり、多段接続されてもよいし、省略されてもよい。
【0036】
送信アンテナ7は、中継信号に応じた中継波Drを中継エリアに向けて送信する。
[2-1.中継処理部]
中継処理部4は、信号合成部40と、信号再生部41と、発振検知部42と、回り込み波除去部43とを備える。
【0037】
中継処理部4の機能は、全てハードウェアによって実現されてもよいし、少なくとも一部が、プロセッサ及び非遷移的実体的記録媒体であるメモリを有するマイクロコンピュータが実行する処理によって実現されてもよい。この場合、マイクロコンピュータによって実現される各種機能は、プロセッサがメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現される。
【0038】
[2-1-1.信号合成部]
信号合成部40は、干渉波逆相合成部401と、合成誤差解析部402と、差分検出部403と、係数調整部404とを備える。なお、合成誤差解析部402及び係数調整部404が係数設定部に相当する。
【0039】
図4に示すように、干渉波逆相合成部401は、信号調整器81と、加算器82とを備える。信号調整器81は、係数調整部404によって設定される合成係数(φ,A)に従って、第2受信IQ信号の位相及び信号強度を調整する。φは位相調整量であり、Aはレベル調整量である。ここで、第1受信IQ信号に含まれる最大の回り込み波U0をUA0とし、第2受信IQ信号に含まれる最大の回り込み波U0をUB0とする。係数調整部404により、信号調整器81の位相調整量φは、回り込み波UB0の位相が、回り込み波UA0とは逆相となるように設定される。また、信号調整器81のレベル調整量Aは、回り込み波UB0の信号強度が、回り込み波UA0の信号強度と一致するように設定される。ここでは、レベル調整量Aとして、回り込み波UA0の信号強度を回り込み波UB0の信号強度で除した値をデシベルで表したものが用いられる。
【0040】
加算器82は、信号調整器81で、位相及び信号強度が調整された第2受信IQ信号と、第1受信IQ信号とを加算することで合成IQ信号を生成する。これにより、回り込み波UA0,UB0が打消し合い、親局波DA,DBが同相に近い状態で合成された合成IQ信号が生成される。
【0041】
合成誤差解析部402は、合成IQ信号の信号品質を検出する品質検出器930を有する。信号品質は、例えば、エラー量を用いることができる。エラー量は、FM変調信号の場合、単位時間当たりの振幅のばらつき(例えば、分散値)で表すことができる。
合成誤差解析部402は、更に、5個の処理ブロックB1~B5を有する。各処理ブロックBi(但し、i=1~5)は、信号調整器91iと、加算器92iと、品質検出器93iとを有する。
【0042】
信号調整器91iは、信号調整器81と同様に構成され、加算器92iは、加算器82と同様に構成され、品質検出器93iは、品質検出器930と同様に構成される。但し、係数調整部404によって信号調整器911~915に設定される合成係数がそれぞれ異なっている。
【0043】
具体的には、信号調整器81に設定される合成係数(φ,A)に基づいて、信号調整器911には、合成係数(φ,A-dA)が設定される。信号調整器912には、合成係数(φ,A+dA)が設定される。信号調整器913には、合成係数(φ-dφ,A)が設定される。信号調整器914には、合成係数(φ+dφ,A)が設定される。信号調整器915には、合成係数(φs,A)が設定される。但し、dAは微少な強度偏移量を表し、dφは微少な位相偏移量を表す。φsは、位相調整量を360°スキャンすることを意味する。
【0044】
各処理ブロックBiは、信号調整器91iに設定された合成係数に従って、位相及び信号強度が調整された第2受信IQ信号と、第1受信IQ信号とを加算することで制御用合成信号を生成し、生成された制御用合成信号の信号品質を検出する。
【0045】
つまり、合成誤差解析部402は、6種類の合成信号(すなわち、合成IQ信号、及び5種類の制御用合成信号)のそれぞれについて、信号品質を検出して、係数調整部404に供給する。
【0046】
差分検出部403は、第1受信IQ信号及び第2受信IQ信号のそれぞれについて、予め設定された計測時間毎に、位相差の平均値及びレベル差の平均値を算出し、係数調整部404に供給する。計測時間は、例えば、オフセット周波数Δfo(=100Hz)の逆数(10ms)が用いられるが、これに限定されるものではない。
【0047】
係数調整部404は、品質検出器930及び処理ブロックB1~B4にて検出された信号品質の検出結果に基づいて、信号品質を指標として、信号品質が最も良くなる(すなわち、エラー量が最小となる)ように、合成係数(φ,A)を生成する。
【0048】
ここで、合成係数が(φ,A-dA)、(φ,A)、(φ,A+dA)であるとき、すなわち、位相調整量φを固定してレベル調整量Aを微小に変化させたときの信号品質の検出結果の一例を、
図5の上段に示す。また、合成係数が(φ-dφ,A)、(φ,A)、(φ+dφ,A)であるとき、すなわち、レベル調整量Aを固定して位相調整量φを微少に変化させたときの信号品質の検出結果の一例を、
図5の下段に示す。これら二つのグラフを参照し、現在の合成係数(φ,A)に対して、マイナス側に変化させた合成係数(φ,A-dA)、(φ-dφ,A)の信号品質が良好(すなわち、エラー量が小)であれば、調整量φ,Aをマイナス側に微調整する。現在の合成係数(φ,A)に対して、プラス側に変化させた合成係数(φ,A+dA)、(φ+dφ,A)の信号品質が良好であれば、調整量φ,Aをプラス側に微調整する。位相調整量φの微調整量Δφ、及びレベル調整量Aの微調整量ΔAは、固定値であってもよいし、マイナス側の信号品質とプラス側の信号品質との差又は比に応じて設定される可変値であってもよい。そして、合成係数(φ,A-d1)及び(φ,A+dA)での信号品質が等しくなり、かつ、合成係数(φ-dφ,A)及び(φ+dφ,A)での信号品質が等しくなるように微調整を繰り返すことで、信号品質が最も良好となる合成係数(φ,A)が得られる。
【0049】
但し、係数調整部404は、受信アンテナ2A,2Bで受信される回り込み波Uの受信強度が親局波Dの受信強度より高くなる、いわゆるマイナスD/Uとなっている場合は、差分検出部403で検出された位相差φAV及び強度差AAVを利用して、(3)(4)式を満たすように、合成係数(φ,A)を設定する。
【0050】
φAV+φ=180° (3)
AAV+A=0dB (4)
位相差φAVは、第1受信IQ信号の位相の平均値から、第2受信IQ信号の位相の平均値を減算した結果である。強度差AAVは、第1受信IQ信号の強度の平均値を、第2受信IQ信号の強度の平均値で除した結果であり、単位はデシベルである。
【0051】
すなわち、マイナスD/Uの場合は、差分検出部403では、レベルが最も大きい回り込み波U0についての位相差φAV及び強度差AAVが検出されるため、この値を、合成係数(φ,A)として用いてもよい。
【0052】
受信アンテナ2A,2Bの配置により、信号合成部40に入力される、第1受信IQ信号に含まれる親局波成分DAと、第2受信IQ信号に含まれる親局波成分DBとは、
図6に示すように、略同位相となる。また、第1受信IQ信号に含まれる回り込み波成分UAと、第2受信IQ信号に含まれる回り込み波成分UBとは、180°に近い位相差を有するのが望ましいが、親局波成分の位相差と異なればよい。信号合成部40では、回り込み波成分UA,UBが、逆位相、且つ同じ信号強度となるように合成係数(φ,A)で調整された第2受信IQ信号と、第1受信IQ信号とが加算合成される。その結果、合成された回り込み波成分UA,UBは互いに打消し合い、親局波成分UA,UBは、元からの位相ずれ量に位相調整量φだけ加わった位相差を有した状態で合成される。
【0053】
係数調整部404は、処理ブロックB5での検出結果、すなわち、合成係数(φs,A)で合成された制御用合成信号の信号品質の検出結果に基づいて、
図7に示すような、位相合成パターングラフを生成する。位相合成パターングラフは、親局波Dの位相を0°として、合成時に加える位相調整量を0~360°変化させたときに各位相で検出される回り込み波U0の信号強度を表したものである。位相合成パターングラフの凹みに対応する位相が、親局波Dに対する回り込み波U0の位相差を表す。つまり、係数調整部404は、この位相差を有する信号(すなわち、回り込み波U0)の到来方向にアンテナ合成ヌルを形成することで、回り込み波U0を除去する。従って、合成係数の初期値は、位相合成パターンフラフから読みとられる位相差を用いて設定されてもよい。
【0054】
[2-1-2.信号再生部]
信号再生部41は、復調前CHフィルタ411と、FM復調部412と、コンポジットフィルタ413と、FM変調部414と、を備える。なお、CHは、Channelの略である。
【0055】
復調前CHフィルタ411は、回り込み波除去部43を介して受信部3から供給される受信IQ信号から、搬送波信号の中心周波数f1を中心とし、FM変調された搬送波がとり得る周波数範囲の信号を抽出する帯域通過フィルタである。
【0056】
FM復調部412は、復調前CHフィルタ411で不要成分が除去された受信IQ信号を用いて、予め設定された単位期間Δt毎に、受信信号の位相を算出すると共に、直前の単位期間Δtに算出された位相との差分である瞬時位相変化分Δθを算出する。なお、単位期間Δtは、信号処理用のサンプリング周期Fsの逆数であるサンプリング周期Ts=1/Fsまたはその整数倍に設定される。そして、算出した瞬時位相変化分Δθを、予め用意された変換テーブル又は変換式を用いてFM変調度に置き換えるΔf検波を行うことで、音声信号を生成する。FM変調度は、無変調時にゼロとなり、正負の符号を有した値をとる。音声信号は、ステレオ放送の場合はステレオコンポジット信号であり、モノラル放送の場合はモノラル音声信号である。
【0057】
ステレオコンポジット信号Scは、
図8に示すように、19kHzのパイロット信号と、15kHz以下の周波数成分を有するL+R信号と、38kHzを中心に±15kHzの周波数成分を有するL-R信号とを有する。なお、L+R信号は、ステレオ音声信号を表すL信号及びR信号を加算した信号である。L-R信号は、L信号からR信号を減算した信号によって、パイロット信号の2倍の周波数(即ち、38kHz)を有する搬送波をAM変調した信号である。モノラル音声信号は、15kHz以下の周波数成分を有する信号である。
【0058】
図2に戻り、コンポジットフィルタ413は、ステレオ放送の場合、FM復調部412にて復調されたステレオコンポジット信号Scから、パイロット信号、L+R信号、及びL-R信号以外の不要成分を除去する。コンポジットフィルタ413は、各信号を個別に抽出する3つのバンドパスフィルタで構成されてもよいし、各信号を一括して抽出する1つのバンドパスフィルタで構成されてもよい。コンポジットフィルタ413は、モノラル放送の場合、モノラル音声信号を通過させるバンドパスフィルタで構成する。なお、コンポジット信号に57kHzや76kHzを中心とする有効な信号がある場合は、必要に応じてフィルタの帯域を変更してもよい。
【0059】
FM変調部414は、コンポジットフィルタ413を通過した音声信号(すなわち、ステレオコンポジット信号Scまたはモノラル音声信号)について単位期間Δt毎にFM変調度Δfを算出し、FM復調部412で用いる同じ変換テーブルを用いて、FM変調度Δfから瞬時位相変化分Δθを算出する。そして、FM変調部414は、この瞬時位相変化分Δθから、送信信号の同相成分を表すI信号及び直交成分を表すQ信号、すなわち、送信IQ信号を生成する。なお、送信IQ信号の搬送波周波数は、受信IQ信号の搬送波周波数に対してオフセット周波数Δfoだけシフトした周波数に設定される。
【0060】
FM変調部414は、生成した送信IQ信号の出力レベルを複数段階で制御できるように構成される。そして、FM中継装置1の起動時、又は発振検知部42から出力される発振検知信号Soがアクティブレベルになったときに、FM変調部414の出力レベルは最小レベルに初期設定される。発振検知信号Soのアクティブレベルは、回り込み発振が検知されたことを表す。その後、FM変調部414は、予め設定された起動時間をかけて回り込み波Uを順次除去しながら出力レベルを最大レベルまで段階的に増大させる。最小レベルは、受信アンテナ2A,2Bで直接受信される送信アンテナ7からの回り込み波UOの受信強度が、親局波Dの受信強度より十分に小さくなるように設定される。最大レベルは、送信部5での処理によって信号の飽和が発生しない大きさに設定される。なお、FM変調部414において出力レベルを調整する機能を実現するための構成が出力調整部に相当する。
【0061】
[2-1-3.発振検知部]
発振検知部42は、復調前CHフィルタ411にて抽出された受信IQ信号の振幅を監視し、振幅の変動が予め設定された閾値を超えている場合、又は飽和している場合に、アクティブレベルに設定した発振検知信号Soを出力する。つまり、発振検知部42では、FM変調波を表す受信IQ信号は、理想的には振幅が一定となるが、FM変調波に、周波数がわずかに異なる信号(すなわち、回り込み波U0~Un)が重畳されている場合には、振幅が変動することを利用して、発振を検知している。なお、振幅の変動幅が一定値を超えるFM変調波は、正しく復調することが困難となる。
【0062】
[2-1-4.回り込み波除去部]
回り込み波除去部43は、変調後CHフィルタ431と、相関解析部432と、プロファイル記憶部433と、適応フィルタ434と、減算器435とを備える。なお、相関解析部432がプロファイル生成部に相当し、適応フィルタ434及び減算器435が抑制部に相当する。
【0063】
変調後CHフィルタ431は、信号再生部41にて再生された送信IQ信号から、搬送波信号の中心周波数f1を中心とし、FM変調された搬送波がとり得る周波数範囲の信号を抽出する帯域通過フィルタである。すなわち、変調後CHフィルタ431は、復調前CHフィルタ411と同様の構成を有する。
【0064】
相関解析部432は、復調前CHフィルタ411から供給される受信IQ信号と、変調後CHフィルタ431から供給される送信IQ信号を用い、送信IQ信号に対する受信IQ信号の遅延時間が、Tr~Tr+ΔTrとなる探査範囲で時間軸相関を算出する。Trは、上述した中継波Drの再送遅延時間であり、ΔTrは、適応フィルタ434のタップ数で設定される時間幅である。
【0065】
相関解析部432は、具体的には、オフセット周波数foの逆数を畳み込み演算時間To=1/Δfoとして、畳み込み演算時間To毎に受信IQ信号及び送信IQ信号を切り取る。そして、上述の探査範囲Tr~Tr+ΔTrにおいて、サンプリング周期Tsの時間ずつ、送信IQ信号を順次遅延させながら、受信IQ信号と送信IQ信号の複素共役信号を乗算して畳み込み演算を行う。畳み込み演算時間To分だけ畳み込み演算を行うことにより、送信IQ信号と同じオフセット周波数Δfoを有する回り込み波U0~Unにのみ、強い相関が現れることになる。
【0066】
相関解析部432は、畳み込み演算の結果である時間軸相関に基づき、相関係数の最大値と、その最大値の相関係数が得られる遅延時間DL(但し、DL≠0)とを抽出する。そして、相関解析部432は、抽出結果から推定される遅延波の信号強度Aと位相θと遅延時間DLとを遅延プロファイルとして、プロファイル記憶部433に記憶する。プロファイル記憶部433は、記憶内容を書き換え可能なメモリである。
【0067】
ここで、相関解析部432での処理の流れを、
図9に示すフローチャートに沿って説明する。
相関解析部432での処理は、FM中継装置1が起動すると開始される。
【0068】
S110では、相関解析部432は、プロファイル記憶部433の記憶内容を初期化(例えば、ゼロクリア)する。
続くS120では、相関解析部432は、発振検知部42にて発振が検知されたか否か、即ち、発振検知信号Soがアクティブレベルになったか否かを判定する。
【0069】
相関解析部432は、発振が検知されたと判定した場合、処理をS130に移行し、発振が検知されていないと判定した場合、処理をS140に移行する。
S130では、相関解析部432は、プロファイル記憶部433の記憶内容を再設定(例えば、ゼロクリア)する。S130での処理が再設定処理に相当する。
【0070】
S140では、相関解析部432は、送信IQ信号と受信IQ信号との畳み込み演算を実行することで時間軸相関を算出する。なお、送信IQ信号及び受信IQ信号は、いずれもI信号とQ信号とで表現される複素平面上のベクトルとして扱われ、畳み込み演算は、送信IQ信号の複素共役信号と受信IQ信号の複素信号とを乗算することで行われる。
【0071】
続くS150では、相関解析部432は、畳み込み演算の演算結果である時間軸相関に基づいて遅延プロファイルを作成する。以下では、S150にて畳み込み演算時間To毎に生成される遅延プロファイルを生成プロファイルとし、プロファイル記憶部433に既に記憶されている遅延プロファイルを既存プロファイルという。
【0072】
続くS160では、相関解析部432は、遅延時間DLが生成プロファイルと一致する既存プロファイルが存在するか否かを判定する。相関解析部432は、一致する既存プロファイルが存在しないと判定した場合、処理をS170に移行し、一致する既存プロファイルが存在すると判定した場合、処理をS180に移行する。
【0073】
S170では、相関解析部432は、生成プロファイルをプロファイル記憶部433に追加で記憶させて、処理をS120に戻す。
S180では、相関解析部432は、一致する既存プロファイルについて記憶されている信号強度Aと位相θに、生成プロファイルの信号強度Aと位相θを加えることで既存プロファイルの内容を更新して、処理をS120に戻す。
【0074】
相関解析部432での処理の結果、畳み込み演算時間To毎に遅延プロファイルが生成され、プロファイル記憶部433には、
図10に示すように、遅延時間DLの異なる複数の遅延プロファイルが蓄積される。遅延プロファイルは、受信アンテナ2にて受信される回り込み波U0~Unの状態を表す情報である。
【0075】
図2に戻り、適応フィルタ434は、プロファイル記憶部433に記憶された遅延プロファイルのそれぞれに基づき、受信IQ信号を遅延時間DLだけ遅延させ、信号強度Aに基づいて振幅を調整し、位相θに基づいて位相を調整したレプリカIQ信号を生成する。レプリカIQ信号は、レプリカI信号、及びレプリカI信号とは位相が90°異なるレプリカQ信号の総称である。適応フィルタ434は、プロファイル記憶部433に記憶された遅延プロファイルの数と同数のレプリカIQ信号を生成する。
【0076】
減算器435は、受信部3から供給される受信IQ信号から、適応フィルタ434にて生成された全てのレプリカIQ信号を減じた結果を、信号再生部41に供給する。
[3.動作]
システムの動作について説明する。
【0077】
FM中継装置1の起動直後では、中継処理部4で再生される送信IQ信号は、最低強度で出力される。これにより、送信アンテナで受信される回り込み波U0~Unの強度が十分に小さくなるため、回り込み波U0~Unによる発振が抑制される。
【0078】
信号合成部40は、受信アンテナ2A,2Bで受信される回り込み波U0が逆相となり、信号強度が等しくなるように、第1受信IQ信号と第2受信IQ信号との間の位相差及びレベル差を調整して合成する。このため、合成IQ信号では、最大の回り込み波U0が抑圧される。
【0079】
つまり、回り込み波除去部43は、信号合成部40にて除去することができない回り込み波U1~Unを、遅延プロファイルを用いて除去する。
相関解析部432は、処理を行う時点で、合成IQ信号に含まれる最も強度が強い回り込み波Ui(i=1,2,…,n)についての遅延プロファイルを生成する。従って、最初は、回り込み波U0に次ぐ強度を有する回り込み波U1の遅延プロファイルが生成されて、プロファイル記憶部433に記憶される。適応フィルタ434は、プロファイル記憶部433に記憶された遅延プロファイルに従って回り込み波U1のレプリカIQ信号を生成する。減算器435が、レプリカIQ信号を合成IQ信号から減じることで、回り込み波U1に基づく信号成分が合成IQ信号から除去される。
【0080】
引き続き、回り込み波U1の影響が除去された合成IQ信号について、同様の処理が行われることにより、回り込み波U0,U1を除いて最大強度となる回り込み波U2についての遅延プロファイルが新たに生成され、プロファイル記憶部433の内容が更新される。適応フィルタ434は、プロファイル記憶部433に記憶された遅延プロファイルに従って、回り込み波U1,U2に対応するレプリカIQ信号を生成する。減算器435が、レプリカIQ信号を合成IQ信号から減じることで、回り込み波U1,U2に基づく信号成分が合成IQ信号から除去される。
【0081】
以下、同様の処理を繰り返すことで、回り込み波U1~Unに基づく信号成分が受信強度の大きい順に、合成IQ信号から順次除去される。仮に、信号合成部40にて、回り込み波U0の抑圧が不十分であった場合には、合成IQ信号において、抑圧された回り込み波U0の強度が最大強度となった時点で遅延プロファイルが生成される。このため、信号合成部40で除去し切れずに残った回り込み波U0も合成IQ信号から除去される。
【0082】
また、起動時等には、上述した回り込み波U0~Unを除去する処理の進捗に伴い、送信IQ信号(ひいては、中継波Dr)の出力レベルが徐々に大きくなる。
[4.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0083】
(4a)FM中継装置1では、最大強度の干渉波(例えば、回り込み波U0)を、二つの受信アンテナ2A,2Bから得られる信号の合成によって除去するため、回り込み波Uの全体レベルを速やかに低下させることができる。その結果、回り込み波Uによる発振が抑制され、動作の安定性を向上させることができる。
【0084】
(4b)FM中継装置1では、信号合成部40は、二つの受信アンテナ2A,2Bから得られる信号を合成することで、干渉波を除去するため、最大強度の干渉波が、中継波Drとは異なる波形を有する場合でも、この干渉波を有効に除去できる。例えば、同一チャンネルで異種プログラム放送が混信する場合においても、アンテナの合成によって異種プログラム放送の位相差が逆位相になるように制御され、混信を除去できる。この場合、最大強度の回り込み波U0は、遅延プロファイルを用いた処理で除去される。
【0085】
(4c)FM中継装置1では、最大強度の干渉波が抑圧された合成IQ信号に対して遅延プロファイルを用いた回り込み波Uの除去を行うため、回り込み波除去部43が扱う信号強度のレンジを狭めることができ、回り込み波除去部43の構成を簡略化できる。
【0086】
(4d)FM中継装置1では、回り込み波Uに基づく信号成分を合成IQ信号から除去するために用いるレプリカIQ信号を、中継波Drの生成に用いる送信IQ信号、即ち、回り込み波Uと同じ波形を有する信号から生成する。このため、FM中継装置1によれば、発振の原因となる回り込み波Uに基づく成分を的確に抑制できる。
【0087】
(4e)FM中継装置1では、レプリカIQ信号の生成に用いる遅延プロファイルを、処理の時点で合成IQ信号に含まれる受信強度が最も大きい1つの回り込み波Uについて生成し、その回り込み波Uの影響を抑制する処理を繰り返す。これにより、処理を繰り返す毎に、回り込み波Uの影響は、信号強度の大きい順に抑制されるため、回り込み波Uの数がいくつあっても、適応フィルタで生成可能な範囲内における全ての回り込み波Uに対処できる。
【0088】
(4f)FM中継装置1では、起動時及び発振検知時には、中継波Drの出力レベルを最小レベルに設定し、時間の経過(すなわち、回り込み波Uを除去する処理の進捗)に伴って、出力レベルを徐々に増大させる。このため、FM中継装置1によれば、
図11に示すように、回り込み波Uの元となる中継波Drの最終的な出力信号が、親局波Dより大きいレベルで受信アンテナ2A,2Bに回りこんでも、回り込み発振の発生を抑制できる。なお、回り込み波Uを除去する処理の進捗は、時間の経過によって判断する以外に、遅延プロファイルの生成状況等によって判断してもよい。
【0089】
(4g)FM中継装置1では、受信信号をヒルベルト変換することで生成される受信IQ信号から、レプリカIQ信号を減じること、すなわち、アナログ的な波形レベルで回り込み波Uの影響を抑制する処理を行う。このため、FM中継装置1によれば、回り込み波Uが有する遅延時間に関する情報と、強度及び位相に関する情報とを、別個に分離することなく同時に処理できるため、装置構成を簡略化できる。
【0090】
(4h)FM中継装置1では、親局波Dに用いる受信IQ信号と、中継波Dr(ひいては、送信IQ信号)の搬送波の中心周波数を、親局波D(ひいては合成IQ信号)の搬送波の中心周波数とは、オフセット周波数Δfoだけ異ならせている。また、FM中継装置1では、合成IQ信号と送信IQ信号との時間軸相関を算出する際に、オフセット周波数Δfoの逆数であるオフセット時間Toの区間で畳み込み演算を行う。これにより、合成IQ信号に含まれる親局波Dに基づく信号成分は、送信IQ信号との相関が弱くなり、相関解析部432での計算上では一種のノイズとして検出される。従って、FM中継装置1によれば、親局波Dに基づく信号成分が、回り込み波Uの検出において妨害となることを抑制できる。
【0091】
すなわち、FM放送波は、音声信号の変化を中心周波数からの周波数偏移に変換して伝送するアナログ変調信号であり、地上デジタル放送波とは異なり、回り込み波を推定するための情報は重畳されていない。回り込み波を推定するために親局波Dと同一チャンネル周波数の信号でありながら、中継波Drをオフセット周波数Δfoだけ異ならせることで、FM放送波に特別な信号を重畳することなく回り込み波の推定を可能としている。
【0092】
[5.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0093】
(5a)上記実施形態では、プロファイル記憶部433の記憶内容は、FM中継装置1の起動時に初期化(すなわち、S110)され、発振検知時に再設定(すなわち、S130)される。そして、初期化及び再設定時には、記憶内容をゼロクリアするように構成されているが、本開示は、これに限定されるものではない。例えば、プロファイル記憶部433に、遅延プロファイルの更新履歴を記憶させ、相関解析部432は、発振検知時に、プロファイル記憶部433の記憶内容をゼロクリアする代わりに、更新履歴に基づいて、遅延プロファイルの内容を発振検知前の状態に戻してもよい。このような構成によれば、発振検知後、回り込み波Uの影響が十分に抑制された状態に、速やかに復帰させることができる。
【0094】
(5b)上記実施形態では、起動時及び発振検知時における中継波Drの出力レベルの制御を、FM変調部414で行っているが、増幅器55や、パワーアンプ6の増幅率を変化させることで行ってもよいし、別途設けた減衰器によって行ってもよい。
【0095】
(5c)上記実施形態では、FM中継装置1を、SFNを用いるFM同期放送システムにおいて放送エリアを拡張する場合について例示したが、これに限定されるものではなく、FM同期放送ではない通常のFM放送システムにおいて放送エリアを拡張する場合に適用してもよい。
【0096】
(5d)FM中継装置1は、受信IQ信号(すなわち、第1受信IQ信号、第2受信IQ信号、及び合成IQ信号のうち少なくとも一つ)の状態や、合成誤差解析部402による信号品質の検出結果を表示するための構成を備えてもよい。具体的には、FM中継装置1は、受信IQ信号を複素平面上にプロットした画像、信号品質をグラフ化した画像を表す画像信号を生成する画像信号生成部と、画像信号を出力する画像出力端子とを備えてもよい。更に、画像出力端子に接続される表示装置や、画像信号を外部の表示装置(例えば、携帯電話等)に送信する無線通信器等を備えてもよい。
【0097】
受信IQ信号を複素平面上にプロットした画像は、
図12に示すように、回り込み波による干渉がない場合と、干渉がある場合とで、異なる画像が得られるため、干渉の有無を視覚的に確認できる。信号品質をグラフ化した画像(例えば、
図5及び
図7を参照)は、例えば、合成係数を(φ=180°,A=1)に固定して表示させることで、受信アンテナ2A,2Bの設置時に状態を確認しながら作業を進めることができる。
【0098】
(5e)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0099】
(5f)上述したFM中継装置の他、当該FM中継装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体など、様々な形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0100】
1…中継装置、2A,2B…受信アンテナ、3A,3B…受信部、4…中継処理部、5…送信部、6…パワーアンプ、7…送信アンテナ、31,55…増幅器、32,53…ローカル信号生成器、33,54…ミキサ、34…A/D変換器、35…直交復調器、40…信号合成部、41…信号再生部、42…発振検知部、43…回り込み波除去部、51…直交変調器、52…D/A変換器、81,911~915…信号調整器、82,921~925…加算器、930~935…品質検出器、100…放送システム、101…配信局、102,103…送信所、104…伝送網、105…中継所、401…干渉波逆相合成部、402…合成誤差解析部、403…差分検出部、404…係数調整部、411…復調前CHフィルタ、412…FM復調部、413…コンポジットフィルタ、414…FM変調部、431…復調後CHフィルタ、432…相関解析部、433…プロファイル記憶部、434…適応フィルタ、435…減算器、B1~B5…処理ブロック。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
FM同期放送用の放送波を、二つの受信アンテナ(2A,2B)を用いて受信するように構成された受信部(3A,3B)と、
前記受信部から得られる二つの受信信号を、干渉波に基づく信号成分である干渉波成分の位相が逆相となり、かつ、前記干渉波成分の信号強度が一致するように合成するように構成された信号合成部(40)と、
前記信号合成部からの合成信号を復調し、復調した信号を再変調することで送信信号を生成するように構成された信号再生部(41)と、
前記信号再生部にて生成された前記送信信号を用いて前記放送波を再現した中継波を、送信アンテナ(7)を介して送信するように構成された送信部(5)と、
を備え、
前記信号合成部は、
前記受信部から得られる前記二つの受信信号を、設定された合成係数に従って位相差及びレベル差が調整された状態で合成することで前記合成信号を生成するように構成された干渉波逆相合成部(401)と、
前記合成信号の信号品質を指標として前記合成係数を設定するように構成された係数設定部(402,404)と、
を備える
FM中継装置。
【請求項2】
請求項1に記載のFM中継装置であって、
前記二つの受信アンテナは、前記放送波に基づく信号成分である放送波成分が、前記信号再生部での処理に必要な信号強度で前記合成信号に含まれるように配置された
FM中継装置。
【請求項3】
請求項2に記載のFM中継装置であって、
前記二つの受信アンテナで受信される前記放送波の位相差をΔθp、前記放送波のレベル差をΔPp、前記干渉波の位相差をΔθr、前記干渉波のレベル差をΔPr、前記信号再生部での処理に必要な信号強度に応じて設定される下限閾値をTHθ、THpとして、
前記二つの受信アンテナは、|Δθp-Δθr|≧THθ、及びΔPp-ΔPr≧THPのうち、少なくとも一方を満たすように配置された
FM中継装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のFM中継装置であって、
前記信号合成部は、予め設定された計測時間毎に、前記二つの受信信号の位相差の平均値及びレベル差の平均値を算出するように構成された差分検出部(403)を更に備え、
前記係数設定部は、前記干渉波が前記放送波より受信強度が大きい状態のときに、前記差分検出部での検出結果に従って前記合成係数を設定するように構成された
FM中継装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のFM中継装置であって、
前記合成信号と前記送信信号とを用いて時間軸相関を算出し、前記時間軸相関の最大値である最大相関値、及び該最大相関値が得られるときの前記受信信号に対する前記送信信号の遅延時間を含んだ情報である遅延プロファイルを生成するように構成されたプロファイル生成部(432)と、
前記信号再生部で生成される前記送信信号を、前記遅延プロファイルに従って、前記遅延時間だけ遅延させ且つ前記最大相関値に応じた強度と位相に調整することでレプリカ信号を生成し、前記信号再生部に入力される前記合成信号から前記レプリカ信号を減じるよ うに構成された抑制部(434,435)と、
を備え、
前記信号再生部は、前記送信信号の搬送波を、前記放送波の搬送波とは、FM放送において許容される中心周波数偏差の範囲内で設定されるオフセット周波数だけ異ならせるように構成された
FM中継装置。
【請求項6】
請求項5に記載のFM中継装置であって、
前記プロファイル生成部は、前記オフセット周波数をΔfoとして、前記オフセット周波数Δfoの逆数であるTo=1/Δfoの時間幅で畳み込み演算を実行することで前記時間軸相関を生成するように構成された
FM中継装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のFM中継装置であって、
当該FM中継装置の起動時に、前記送信アンテナが送信する前記中継波の出力レベルを、予め設定された最小レベルに設定し、前記出力レベルを予め設定された最大レベルまで回り込み波除去の進捗に応じて段階的に調整するように構成された出力調整部(414)
を更に備えるFM中継装置。
【請求項8】
請求項7に記載のFM中継装置であって、
当該FM中継装置の発振を検知するように構成された発振検知部(42)と、
前記プロファイル生成部にて生成された前記遅延プロファイルを記憶するように構成されたプロファイル記憶部(433)と、
を更に備え、
前記抑制部は、前記プロファイル記憶部の記憶内容に従って前記レプリカ信号を生成するように構成され、
前記プロファイル生成部は、前記発振検知部による発振検知時に、前記プロファイル記憶部の記憶内容を再設定する再設定処理を行うように構成された、
前記出力調整部は、前記起動時に加え、前記発振検知部による発振検知時にも、前記中継波の出力レベルを調整するように構成された、
FM中継装置。
【請求項9】
請求項8に記載のFM中継装置であって、
前記プロファイル生成部は、前記再設定処理として、前記プロファイル記憶部の記憶内容を消去するように構成された
FM中継装置。
【請求項10】
請求項8に記載のFM中継装置であって、
前記プロファイル記憶部には、前記遅延プロファイルの履歴が更に記憶されるように構成され、
前記プロファイル生成部は、前記再設定処理として、前記プロファイル記憶部の記憶内容を、前記遅延プロファイルの履歴を用いて発振検知前の状態に戻すように構成された、
FM中継装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載のFM中継装置であって、
前記受信部は、前記受信信号を、同相成分を表すI信号及び直交成分を表すQ信号に変換して出力し、
前記送信部は、前記I信号及び前記Q信号で表わされた前記送信信号を直交復調して送信するように構成された
FM中継装置。