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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051348
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】唾液回収具、並びに、唾液回収方法
(51)【国際特許分類】
   G10D 9/00 20200101AFI20220324BHJP
【FI】
G10D9/00 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020157776
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】599082229
【氏名又は名称】株式会社ドルチェ楽器
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】安川 透
(57)【要約】
【課題】唾液排出口を開閉するウォーターキーを有する気鳴楽器から、唾液を良好に回収することができる唾液回収具、並びに、唾液回収方法を提供することである。
【解決手段】ウォーターキーで開閉される唾液排出口を有する気鳴楽器の内部に貯まった唾液を回収する唾液回収具であって、唾液を受け入れる開口部4を備えた受け部2と、唾液を収容する収容部3を有し、受け部2の収容部3側の部位が、収容部3に近づくほど先細っており、その先端には、受け部2と収容部3を連通させる貫通孔11が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォーターキーで開閉される唾液排出口を有する気鳴楽器の内部に貯まった唾液を回収する唾液回収具であって、
唾液を受け入れる開口を備えた受け部と、唾液を収容する収容部を有し、
前記受け部の収容部側の部位が、収容部に近づくほど先細っており、
その先端には、前記受け部と前記収容部を連通させる孔が設けられていることを特徴とする唾液回収具。
【請求項2】
前記受け部の開口付近の内壁の対向間隔が大きい部位と、当該大きい部位よりは小さい部位とがあることを特徴とする請求項1に記載の唾液回収具。
【請求項3】
前記受け部の内壁は、開口から孔まで連続する滑らかな曲面を構成することを特徴とする請求項1又は2に記載の唾液回収具。
【請求項4】
前記孔に逆止弁が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の唾液回収具。
【請求項5】
前記受け部と前記収容部が別部材で構成されており、
前記受け部と前記収容部が分離可能に一体化されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の唾液回収具。
【請求項6】
保持部材を有し、
前記保持部材は、他の部材に固定可能であり、
前記他の部材に固定された前記保持部材により、前記受け部及び収容部が所定の高さ位置で所定の姿勢で保持されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の唾液回収具。
【請求項7】
前記受け部及び/又は収容部は、抗菌効果又は殺菌効果を有する材料が練り込まれた樹脂、又は抗菌効果又は殺菌効果を有する材料が表面に塗布された樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の唾液回収具。
【請求項8】
前記気鳴楽器は、トランペットであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の唾液回収具。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の唾液回収具で気鳴楽器の内部に溜まった唾液を回収することを特徴とする唾液回収方法。
【請求項10】
ウォーターキーで開閉される唾液排出口を備えた気鳴楽器の内部に貯まった唾液を回収する唾液回収方法であって、
唾液を受け入れる開口と、唾液を収容する収容部と、前記収容部側から前記開口側への回収した唾液の逆流を防止する逆流防止機能を有する唾液回収具の前記開口を、気鳴楽器の前記唾液排出口から唾液が飛散する領域をカバーするように配置し、
前記唾液排出口を開き、マウスピースから息を吹き込み、気鳴楽器の内部に貯まった唾液を前記唾液排出口から排出し、排出された唾液を前記唾液回収具で回収することを特徴とする唾液回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に溜まった唾液を排出する唾液排出口を開閉するウォーターキーを有する気鳴楽器から、唾液を回収する唾液回収具、並びに、唾液回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気鳴楽器は、演奏者が息(呼気)を吹き込んで音を発するため、内部には息に含まれた唾液が溜まってしまう。気鳴楽器には、この内部に溜まった唾液を排出するための排出口(唾抜き孔)が設けられている。さらに気鳴楽器には、この排出口を開閉するウォーターキーが設けられたものがある。
【0003】
ウォーターキーを有する気鳴楽器では、演奏中は、ウォーターキーによって排出口が閉じられており、内部の唾液が外部に垂れ落ちることを防止することができ、演奏の合間には、ウォーターキーを開いて排出口から内部に溜まった唾液を外部に排出することができる。
【0004】
気鳴楽器の内部に唾液が溜まると、気鳴楽器本来の音色が出せなくなるため、ある程度溜まると外部に排出する必要がある。一方、オーケストラや、学校の吹奏楽の授業、部活等では、大勢が密集して演奏することになり、さらに演奏が長時間に及ぶことも多い。このような場合には、従来は、周囲を気遣いながらもその場でウォーターキーを開いて、唾液を排出せざるを得なかった。
【0005】
従来は、排出された唾液は、そのまま周囲に飛び散り、不衛生であった。そこで、特許文献1に開示されているような唾液入れが提案されている。特許文献1に開示されている唾液入れは、紙製の入れ物であり、底に水分吸収体が設けられている。特許文献1では、この水分吸収体に唾液が吸収されることにより、唾液が床等に付着することを防止することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-39882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、演奏者が気鳴楽器の内部に溜まった唾液を排出する場合、マウスピース(歌口)から息を勢いよく吹き込まないと、唾液を十分に外部に排出することはできない。そのため、唾液の排出時には、唾液の飛沫が周囲に飛散する懸念がある。
一方、昨今は、世界的に新型コロナウイルス感染症の感染の懸念が高く、従来のように唾液を排出するのは、いかにソーシャル・ディスタンスを保っていても、差し控えなくてはならない。また、特許文献1に開示されているような従来の唾液入れでは、垂れ落ちる唾液は回収できるものの、飛沫化して飛散する唾液を回収することはできない。
【0008】
そこで本発明は、唾液排出口を開閉するウォーターキーを有する気鳴楽器から、唾液を良好に回収することができる唾液回収具、並びに、唾液回収方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための第一の様相は、ウォーターキーで開閉される唾液排出口を有する気鳴楽器の内部に貯まった唾液を回収する唾液回収具であって、唾液を受け入れる開口を備えた受け部と、唾液を収容する収容部を有し、前記受け部の収容部側の部位が、収容部に近づくほど先細っており、その先端には、前記受け部と前記収容部を連通させる孔が設けられていることを特徴とする唾液回収具である。
【0010】
本様相の唾液回収具は、唾液を受け入れる開口を備えた受け部と、唾液を収容する収容部を有し、受け部と収容部は隣接している。
すなわち、唾液回収具は、受け部と収容部を上下の向きに配置すると、開口は唾液回収具の上端に配される。
そして、受け部の開口より下方に吹き付けられた唾液の飛沫は、受け部に付着する。すなわち、唾液の飛沫が周囲に飛散することを防止又は抑制することができる。
受け部に付着した唾液は、受け部の内壁に沿って落下する。
ここで、受け部の収容部側の部位は、収容部に近づくほど先細っており、その先端には、受け部と収容部を連通させる孔が設けられているので、唾液は、孔を通過して収容部に収容される。
ここで、仮に唾液回収具が転倒したとしても、収容部に収容された唾液は、孔を介して受け部側へ移動しにくい。
すなわち、受け部の収容部側の部位は、収容部に近づくほど先細っており、その先端部位に孔が設けられているので、孔は、受け部及び収容部の中心側に位置している。そのため、受け部側から収容部側への唾液の移動は容易であるが、唾液の収容部側から受け部側への移動は容易ではなく、回収した唾液が、周囲にこぼれる事態を防止することができる。
【0011】
前記受け部の開口付近の内壁の対向間隔が大きい部位と、当該大きい部位よりは小さい部位とがあるのが好ましい。
【0012】
この構成によれば、気鳴楽器の唾液排出口及びウォーターキーを唾液回収具の開口に近接させる際に、ウォーターキーが開閉動作する方向を、受け部の内面の対向間隔が大きい部位に合わせることにより、ウォーターキーの開閉操作を支障なく行える上に、気鳴楽器の唾液排出口を開口の内側(内部)に配置し易くなる。
また、このときの内壁の対向間隔が、前述の大きい部位(比較的大きい部位)よりは小さい部位(比較的小さい部位)への、気鳴楽器からの唾液の飛散距離は短く、早く開口内の内壁に達する。すなわち、唾液の飛散距離が短いので、唾液が飛散する範囲が狭くなる。そのため、開口付近の内壁の対向間隔が小さい方向への唾液の飛散は抑制される。
これにより、気鳴楽器の唾液排出口から排出された唾液は、受け部の開口の内部で飛散し、唾液が周囲に飛散することが防止され、唾液は確実に唾液回収具に回収される。
【0013】
前記受け部の内壁は、開口から孔まで連続する滑らかな曲面を構成するのが好ましい。
【0014】
この構成によれば、受け部の内壁が、開口から孔まで連続する滑らかな曲面を構成するので、受け部に侵入した唾液は、内壁に沿って開口側から孔に導かれ、孔を介して収容部へ収容される。
【0015】
前記孔に逆止弁が設けられているのが好ましい。
【0016】
この構成によれば、唾液回収具の姿勢によらず、収容部内の唾液が、孔を介して受け部側へ移動することを確実に防止することができる。
【0017】
前記受け部と前記収容部が別部材で構成されており、前記受け部と前記収容部が分離可能に一体化されているのが好ましい。
【0018】
この構成によれば、受け部と収容部を分離することにより、収容部に蓄積された唾液を、破棄することができる。また、唾液を破棄した後、再度受け部と収容部を一体化させる事により、唾液回収具を再利用することができる。
【0019】
保持部材を有し、前記保持部材は、他の部材に固定可能であり、前記他の部材に固定された前記保持部材により、前記受け部及び収容部が所定の高さ位置で所定の姿勢で保持されるのが好ましい。
【0020】
この構成によれば、保持部材は、他の部材に固定可能であるので、当該保持部材に保持された唾液回収具の姿勢が安定する。また、保持部材により、受け部及び収容部が所定の高さ位置で保持されるので、演奏者にとって唾液を排出し易い高さ位置に受け部及び収容部を配置することができる。すなわち、演奏者が楽な姿勢で気鳴楽器内の唾液を唾液回収具に排出することができる。
【0021】
前記受け部及び/又は収容部は、抗菌効果又は殺菌効果を有する材料が練り込まれた樹脂、又は抗菌効果又は殺菌効果を有する材料が表面に塗布された樹脂で形成されているのが好ましい。
【0022】
この構成によれば、受け部及び/又は収容部は、抗菌効果又は殺菌効果を有する材料が練り込まれた樹脂、又は抗菌効果又は殺菌効果を有する材料が表面に塗布された樹脂で形成されているので、気鳴楽器から排出された唾液に含まれる雑菌が、受け部及び/又は収容部で減少し易い。
【0023】
前記気鳴楽器は、トランペットであるのが好ましい。
【0024】
トランペットの唾液排出口及び当該唾液排出口を開閉するウォーターキーは、本様相の唾液回収具の開口に近接させ易い。そのため、演奏者は、トランペット内に溜まった唾液を唾液回収具に排出させ易い。
【0025】
前述のいずれかの唾液回収具で気鳴楽器の内部に溜まった唾液を回収するのが好ましい。
【0026】
上記課題を解決するための第二の様相は、ウォーターキーで開閉される唾液排出口を備えた気鳴楽器の内部に貯まった唾液を回収する唾液回収方法であって、唾液を受け入れる開口と、唾液を収容する収容部と、前記収容部側から前記開口側への回収した唾液の逆流を防止する逆流防止機能を有する唾液回収具の前記開口を、気鳴楽器の前記唾液排出口から唾液が飛散する領域をカバーするように配置し、前記唾液排出口を開き、マウスピースから息を吹き込み、気鳴楽器の内部に貯まった唾液を前記唾液排出口から排出し、排出された唾液を前記唾液回収具で回収することを特徴とする唾液回収方法である。
【0027】
この構成によれば、気鳴楽器の唾液排出口付近に唾液回収具を配置してからウォーターキーを開くので、気鳴楽器内の唾液が唾液排出口から垂れ落ちたとしても、垂れ落ちた唾液は、唾液回収具内に回収される。
また、ウォーターキーを開き、マウスピースから息を吹き込み、気鳴楽器の内部に貯まった唾液を唾液排出口から排出すると、唾液は、気鳴楽器側から唾液回収具側へ飛散する。その際、唾液は、周囲に飛散する前に唾液回収具内に進入し、唾液は唾液回収具に回収される。すなわち、気鳴楽器内の唾液は、周囲に飛散することなく、唾液回収具に回収される。
さらに、唾液回収具に回収された唾液は、逆流防止機能によって収容部から開口に移動することが防止されており、回収された唾液が受け部側へ逆流して開口から周囲にこぼれる事態を防止することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の唾液回収具、並びに、唾液回収方法によると、気鳴楽器に溜まった唾液を良好に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】(a)は、本実施形態に係る唾液回収具の斜視図であり、(b)は、(a)のA-A断面図であり、(c)は、(a)のB-B断面図である。
図2図1の唾液回収具の平面図である。
図3図1の唾液回収具の分解断面図である。
図4】(a)は、図1の唾液回収具を、他の部材に固定する直前の状態を示す斜視図であり、(b)は、(a)において、唾液回収具を他の部材に固定した状態を示す斜視図である。
図5】椅子の脚に取り付けた唾液回収具に、トランペット内の唾液を排出している状態を示す斜視図である。
図6】譜面台に取り付けた唾液回収具に、トロンボーン内の唾液を排出している状態を示す斜視図である。
図7】(a)は、トランペットの唾液排出口を、唾液回収具に近接させた状態を示す部分拡大斜視図であり、(b)は、(a)において、ウォーターキーを操作し、唾液排出口を開いてトランペット内に溜まった唾液を唾液回収具に排出している状態を示す斜視図である。
図8】(a)は、唾液回収具が床上で転倒した状態を示す正面断面図であり、(b)は、唾液回収具が床上で上下逆さまになった状態を示す正面断面図である。
図9】(a)は、別の実施形態の唾液回収具の断面図であり、(b)は、さらに別の実施形態の唾液回収具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本実施形態に係る唾液回収具は、唾液排出口をウォーターキーで開閉することができる気鳴楽器に対して使用することができる。ウォーターキーを有する気鳴楽器とは、トランペット、トロンボーン、ホルン、チューバ、ユーフォニアム等の金管楽器、サクソフォン等の木管楽器が該当する。以下では、気鳴楽器を主としてトランペットを例示して説明する。
【0031】
以下、図面を参照しながら説明する。
図1(a)~図1(c)に示すように、本実施形態に係る唾液回収具1は、受け部2と収容部3を備えている。受け部2及び収容部3は、抗菌効果又は殺菌効果を有する材料が練り込まれた樹脂、又は抗菌効果又は殺菌効果を有する材料が表面に塗布された樹脂で成形されたものである。また、受け部2と収容部3は、別部材で構成されており、一体化して唾液回収具1を構成すると共に、分離することも可能である。
【0032】
収容部3は、側壁21と底壁22を有し、上方が開口した器を構成している。
側壁21は、円筒状を呈している。側壁21の一端(上端)は開口しており、開口部21a(図3)を構成している。
開口部21aの内面には、係合部23(図3)が設けられている。
また、開口部21aには、半径方向外側へ張り出すフランジ部24が設けられている。
【0033】
図1(b)、図1(c)、図3に示すように、受け部2は、筒状の外側部材2aと、外側部材2aの内部に収容される内側部材2bを有する。
【0034】
外側部材2aは、開口部側部材6aと、仕切部側部材6bで構成されている。
開口部側部材6aは筒状の側壁26aを有し、開口部側部材6a(側壁26a)の一端(上端)は開口部4を構成している。
開口部4の開口形状は、円形でも差し支えはないが、本実実施形態では、図2に示すように、楕円形に近い鶏の卵のような形状である。すなわち、開口部4は、滑らかな曲線が環状に連続した形状を呈しており、開口部4の対向間隔は、円の直径のように一様ではなく、図1(a)、図2に示すように、比較的大きい大間隔部D1と比較的小さい小間隔部D2がある。
また、開口部4には、半径方向内側に環状に突出する環状突出部4a(段)が設けられている。すなわち、環状突出部4aは、環状の段を構成している。
開口部側部材6a(側壁26a)の他端側(下端側)には、仕切部側部材6bと一体固着する他端部25(図3)が設けられている。
【0035】
仕切部側部材6bは筒状の側壁26bと仕切部5を有している。側壁26bの一端(下端)には仕切部5が設けられている。仕切部5は、平板形状を呈しており、中央部分には孔5aが設けられている。
仕切部5の下面側(開口部4とは反対側)の外周付近には、環状の突出部5bが設けられている。突出部5bは、仕切部5の下面から垂下した部位である。
【0036】
図3に示すように、突出部5bの外周面には係合部7が設けられている。係合部7は、ネジまたは環状突起等で構成されている。突出部5bと、仕切部5の下面における突出部5bよりも外側の部位は、収容部3を装着する装着部8として機能する。
【0037】
仕切部側部材6b(側壁26b)の他端(上端)は、開口部側部材6a(他端部25)と一体固着する他端部20(図3)が設けられている。他端部20は、外周部20aと内周部20bを有する。内周部20bは、外周部20aよりも環状に上方に突出した部位である。すなわち、外周部20aと内周部20bは、環状の段を構成している。
【0038】
外周部20aには、開口部側部材6aの他端部25が一体固着されている。内周部20bは、図1(b)に示すように、後述の内側部材2b(段13b)が係合する部位である。開口部側部材6aの側壁26aと仕切部側部材6bの側壁26bが連続すると、円筒状の側壁26が形成される。側壁26の両側に、開口部4と仕切部5が配される。
【0039】
図3に示すように、受け部2の内側部材2bは、側壁13を有する。側壁13の上端には環状の縁である上端係合部9が形成されており、下端には筒状突起部10が設けられている。
【0040】
内側部材2bの内部には内部空間27が形成されている。内部空間27の周囲は、上方が開いており、側方及び下方が概ね内面13aで仕切られている。内面13aは、上端係合部9(受け部2の開口付近)側から下方へいくほど先細るように凹んでおり、内面13aの下端には貫通孔11(孔)が設けられている。すなわち、内面13aは、上端係合部9から貫通孔11(孔)に至るまで連続する滑らかな曲面を構成している。貫通孔11は、筒状突起部10の内面と連通している。
【0041】
上端係合部9は、内側部材2bの上部に設けられた環状の端部(縁)であり、内部空間27の上方の開口を形成している。
また、上端係合部9は、外側部材2aの内側にちょうど配置される大きさ及び形状の外形を有する。すなわち、上端係合部9付近の側壁13(内面13a)の対向間隔は、円の直径のように一様ではなく、上端係合部9は、外側部材2aの大間隔部D1と小間隔部D2に沿った環状突出部4aにちょうど一致して係合することができる(図1(b)、図1(c))。
【0042】
筒状突起部10は、内側部材2bの下部の中央部分に上端係合部9とは反対側に突出している。筒状突起部10の外径は、仕切部側部材6bの仕切部5の孔5aを挿通可能な大きさである。
図3に示すように、筒状突起部10の先端(下端)の内側(貫通孔11)の縁には、座部11aが形成されている。筒状突起部10の外面は、逆止弁取付部12として機能する。
【0043】
側壁13の外周側には、段13bが設けられている。すなわち、内側部材2bの略上半分は比較的大径であり、略下半分は比較的小径であり、両者の境界に段13bが設けられている。上端係合部9から段13bまでの距離は、外側部材2aの環状突出部4a(開口部側部材6a)と内周部20b(仕切部側部材6b)の距離と一致している。すなわち、内側部材2bの上端係合部9と段13bが、全周囲に渡って外側部材2aによって保持されている(図1(b)、図1(c))。
また、筒状突起部10が、仕切部5の孔5aを貫通しており、筒状突起部10が仕切部5によって半径方向に移動不能に拘束されている。
【0044】
筒状突起部10の逆止弁取付部12には、逆止弁14が装着されている。
図3に示すように、逆止弁14は、弁体15と抱持部材16を有する。
抱持部材16は、筒状の側壁19の一端に開口部16aを有し、他端に底壁16bを有している。すなわち抱持部材16は、開口部16aによって筒状の側壁19の一端が開口し、底壁16bによって側壁19の他端が閉じた袋状の部材である。
【0045】
開口部16aの内面には、係合部18が設けられている。係合部18は、筒状突起部10の逆止弁取付部12に外嵌して係合する部位である。
側壁19には、複数の長孔17が等角度間隔で設けられている。長孔17は、抱持部材16の底壁16b(下端)に至っている。
【0046】
係合部18が逆止弁取付部12に取り付けられると、抱持部材16の内部には空間が形成される。この空間に弁体15が配置される(図1(b)、図1(c))。座部11aと底壁16bの距離は、弁体15の全長よりも若干長い。よって、弁体15は、座部11aと底壁16bの間で、往復移動(上下移動)することができる。
【0047】
受け部2が収容部3の上側に位置するとき、すなわち、受け部2の上端係合部9が筒状突起部10より上に位置する姿勢を呈するときには、重力の作用で弁体15は底壁16b側に移動し、弁体15が座部11aから離れているため、貫通孔11は長孔17と連通する。
【0048】
一方、収容部3が受け部2の上側に位置するとき、すなわち、受け部2の筒状突起部10が上端係合部9よりも上に位置する姿勢を呈するときには、重力の作用で弁体15は座部11a側へ移動し、座部11aを閉じる。このとき、貫通孔11は、長孔17との連通が遮断される。すなわち、受け部2の上下の姿勢によって、弁体15が底壁16b、座部11aのいずれかに当接し、貫通孔11と長孔17の間の連通と遮断とが切り換えられる。
【0049】
以上、説明したように、筒状突起部10の座部11aと、逆止弁14によって、収容部3に収容した唾液の逆流(収容部3側から受け部2側への流出)を防止する逆流防止機能を発揮することができる。
【0050】
本実施形態に係る唾液回収具1は、以上説明した受け部2と収容部3が一体化した構造を有する。すなわち、収容部3の開口部21a(図3)に、受け部2の装着部8(図3)が取り付けられる。具体的には、受け部2側の突出部5bの外周に設けられた係合部7(図3)を、収容部3側の開口部21aの係合部23(図3)と係合させる。係合部7、23は、着脱可能に係合することができる。
【0051】
収容部3と受け部2が一体化されると、収容部3の開口部21aが仕切部5で閉鎖される。すなわち、仕切部5が収容部3の天壁を構成する。また、収容部3内には、筒状突起部10が配置される。
【0052】
唾液回収具1が、受け部2が収容部3の上側にある通常の姿勢を呈するときには、弁体15は座部11aから離反しており、受け部2と収容部3が連通する。また、唾液回収具1が、受け部2が収容部3の下側にある姿勢(上下逆の姿勢)を呈するときには、弁体15が座部11aに当接し、受け部2と収容部3の連通が遮断される。
【0053】
以上説明した唾液回収具1は、例えば図4(a)、図4(b)に示すような保持部材30でシャフト状部材31(固定対象物)に取り付けられる。保持部材30は、唾液回収具1を保持する保持部30aと、シャフト状部材31に固定可能な固定部30bと、一つ又は複数(本実施形態では2つ)の関節を有する接続部30c(ユニバーサルジョイント)を有する。
【0054】
図4(a)に示すように、シャフト状部材31に固定部30bを固定し、さらに図4(b)に示すように、保持部30aに唾液回収具1を装着する。保持部30aは、環状またはアルファベットの略Cの字形状を呈する部位であり、唾液回収具1のフランジ部24(図1(b)、図1(c))を載置して唾液回収具1を保持することができる。また、唾液回収具1は、保持部30aから容易に取り外すことができる。
【0055】
シャフト状部材31としては、図5に示すような椅子32の脚部32aや、図6に示すような譜面台33の支柱部33aを使用することができる。また、保持部材30の固定部30bは、例えば、クリップ形式や、ネジ形式を採用することができる。さらに、固定対象物は、シャフト状の部材に限らず、固定部30bは、板状の部材に固定することもできる。
【0056】
保持部材30は、複数の関節を有する接続部30cを有しており、接続部30cを屈曲させることにより、保持部30aを所定の高さ位置に配置し、所定の向き(姿勢)に向けることができる。
【0057】
固定対象物(椅子32)に固定された保持部材30(保持部30a)に、唾液回収具1を装着する。保持部材30に装着された唾液回収具1は、演奏者にとってトランペット51(気鳴楽器)内の唾液を排出する動作が行い易い高さ位置及び向きに設定されている。保持部材30は、その都度、接続部30cの屈曲の仕方を変更し、保持した唾液回収具1の高さ位置や向き(姿勢)を調整することができる。
【0058】
次に、トランペット51(気鳴楽器)について簡単に説明する。
トランペット51は、マウスピース55から息(呼気)を吹き込むため、呼気に含まれる唾液が、内部に溜まってしまう。トランペット51には、内部に溜まった唾液を排出するための唾液排出口51aが設けられている。また、トランペット51は、唾液排出口51aを開閉するウォーターキー52を有する。
【0059】
図7に示すように、ウォーターキー52は、細長い部材であり、回動中心52aと、コルク部52bを有する。回動中心52aとコルク部52bは離間しており、コルク部52bは、ウォーターキー52の一方の端部に設けられており、唾液排出口51aを封鎖することができる。
【0060】
ウォーターキー52は、回動中心52a付近がトランペット51(本体)に取り付けられている。ウォーターキー52は、回動中心52aを中心に回動可能であり、コルク部52bが唾液排出口51aに近づく方向に回動するようにバネ(図示せず)により付勢されている。すなわち、通常は、ウォーターキー52は、コルク部52bで唾液排出口51aを閉じている(図7(a))。また、バネの付勢力に抗してウォーターキー52を回動させると、コルク部52bが唾液排出口51aから離れ、唾液排出口51aを開くことができる(図7(b))。
【0061】
次に、唾液回収具1に唾液を回収する様子を、図7(a)、図7(b)を参照しながら説明する。図7(a)に示すように、ウォーターキー52(コルク部52b)で閉鎖した唾液排出口51aを、唾液回収具1の開口部4内に配置する。すなわち、唾液排出口51a(コルク部52b)は、開口部4(縁)を含む平面よりも受け部2の内部側に侵入している。
【0062】
このとき、図7(a)に示すように、開口部4の大間隔部D1(図2)に沿う方向に、矢印Mで示すウォーターキー52の移動方向を一致させるようにする。すなわち、大間隔部D1と矢印Mは、開口部4の開口面と直交する同一平面内にある。
【0063】
このように唾液回収具1に対してトランペット51(気鳴楽器)を配置すると、コルク部52b(唾液排出口51a)を、唾液回収具1の内部側(開口部4より収容部3側)に配置し易い。
【0064】
コルク部52b(唾液排出口51a)を、唾液回収具1の内部側(開口部4より収容部3側)に配置した状態で、ウォーターキー52を操作し、唾液排出口51aを開く(図7(b))。このとき、唾液排出口51a付近に唾液が溜まっていれば、液状の唾液が直ちに唾液回収具1(受け部2)内に垂れ落ちる。また、マウスピース55(図5)から息を強く吹き込むと、図7(b)に示すように、唾液排出口51aから噴霧状の唾液70が排出される。噴霧状の唾液70は、開口部4よりも受け部2の内部側(内側部材2bの内部空間27)に向かって吹き付けられるため、周囲に拡散しない。
【0065】
本実施形態に係る唾液回収具1は、受け部2の側壁13の内面13aが、開口部4側から貫通孔11まで滑らかに連続する曲面で構成されているため、内面13aに吹き付けられた唾液70は、重力の作用で湾曲した内面13aに沿って貫通孔11に導かれる。そして、図1(c)に示す貫通孔11から逆止弁14(長孔17)を通過して収容部3内に収容(回収)される。
【0066】
図5に示す例では、椅子32の脚部32aに取り付けた唾液回収具1に、トランペット51(気鳴楽器)内の唾液を回収する様子を描写している。演奏者は描写していないが、演奏者は、椅子32に着座した状態でトランペット51のウォーターキー52を操作し、さらにマウスピース55から息を吹き込んで唾液排出口51aから唾液70を排出し、排出した唾液を唾液回収具1に回収することができる。
【0067】
また、図6に示す例では、譜面台33の支柱部33aに取り付けた唾液回収具1に、トロンボーン53(気鳴楽器)内の唾液を回収する様子を描写している。図示しない演奏者は、起立姿勢でトロンボーン53のウォーターキー54を操作し、さらにマウスピース56から息を吹き込んで唾液排出口53aから噴霧状の唾液71を排出し、排出した唾液を唾液回収具1に回収することができる。
【0068】
収容部3に唾液が収容された唾液回収具1は、適宜洗面所等の適切な破棄場所で唾液を破棄する。すなわち、保持部材30から唾液回収具1を外し、唾液回収具1を唾液の破棄場所まで運び、唾液を破棄する。
【0069】
唾液72を収容した唾液回収具1を、過って床等に落下させた場合、唾液回収具1は、床上で例えば図8(a)又は図8(b)に示すような姿勢を呈する場合がある。図8(a)に示す例では、唾液回収具1は横向きの姿勢となっており、この場合、収容部3の天壁を構成する仕切部5によって唾液72の受け部2側への移動が阻止される。また、唾液72の液面が筒状突起部10を越えていたとしても、収容部3内の唾液72は、長孔17、貫通孔11、内部空間27(内面13a)を通過しなければ唾液回収具1の外部に流出しないため、唾液回収具1を直ちに拾い上げれば、内部の唾液72が唾液回収具1(受け部2)から床にこぼれる事態を回避することができる。
【0070】
また、図8(b)に示す例では、唾液回収具1が逆さまになった状態を示している。この場合には、逆止弁14の弁体15が、重力の作用で弁体15よりも下方の座部11aに着座するため、収容部3内の唾液72が受け部2側へ移動することが防止(逆流防止)される。
【0071】
次に、図9(a)、図9(b)を参照しながら唾液回収具の変形例について説明する。
図9(a)に示す唾液回収具41は、受け部42と収容部43を有するが、逆流防止機能は設けられていない。受け部42と収容部43は、嵌合形式で結合して一体化することができ、また、受け部42と収容部43を容易に解体(分離)することもできる。
【0072】
受け部42は、円筒状の側壁42aを有し、側壁42aの一端(上端)は開放されていて開口部44を構成しており、他端(下端)には底壁42bが設けられている。底壁42bの中央部分には貫通孔45が設けられている。側壁42aの内壁は、垂直壁であり、底壁42bの上面46は、貫通孔45設けられた中央部分が最も凹むように滑らかな曲面を構成している。
また、受け部42の底壁42bの下面47は、収容部43の天壁として機能する。受け部42の貫通孔45は、受け部42側と収容部43の内部とを連通する孔である。
【0073】
図9(a)に示す状態を唾液回収具41の縦姿勢とすると、唾液回収具41が横姿勢になった場合、収容部43内に貯留された唾液が貫通孔45から流出する懸念があるが、貯留された唾液が少量であれば、液面が貫通孔45に達することがなく、唾液が受け部42側へ逆流することはない。
【0074】
また、図9(b)に示す唾液回収具61は、受け部62と収容部63を有するが、逆流防止機能は設けられていない。受け部62と収容部63は、嵌合形式で結合して一体化することができ、また、受け部62と収容部63を容易に解体(分離)することもできる。
【0075】
受け部62の上端は開放されていて開口部64を構成しており、他端(下端)には底壁62bが設けられている。底壁62bの中央部分には貫通孔65が設けられている。受け部62の内面66は、貫通孔65が設けられた中央部分が最も凹むように滑らかな曲面を構成している。
【0076】
また、受け部62の底壁62bの下面67は、収容部63の天壁として機能する。下面67には、貫通孔65と連通する筒状突出部68が設けられている。貫通孔65と筒状突出部68の内部は、受け部62側と収容部63の内部とを連通させている。
【0077】
図9(b)に示す状態を唾液回収具61の縦姿勢とすると、唾液回収具61が横姿勢になった場合、収容部63内に貯留された唾液が貫通孔65から流出する懸念があるが、貯留された唾液が少量であれば、液面が貫通孔65に達することがなく、唾液が受け部62側へ逆流することはない。
【0078】
また、仮に唾液回収具61が逆さま姿勢になった場合においても、唾液の液面が下面67からの筒状突出部68の起立高さを超えない限り、唾液が筒状突出部68から受け部62側へ逆流することが阻止される。
【符号の説明】
【0079】
1 唾液回収具
2 受け部
3 収容部
11 貫通孔(孔)
13 内側部材の側壁
13a 内側部材の側壁の内面
14 逆止弁
30 保持部材
32 椅子
33 譜面台
51 トランペット(気鳴楽器)
51a 唾液排出口
52 ウォーターキー
53 トロンボーン
53a 唾液排出口
54 ウォーターキー
55 トランペットのマウスピース
56 トロンボーンのマウスピース
D1 大間隔部
D2 小間隔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9