(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051403
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】学習支援プログラム、学習支援方法および学習支援装置
(51)【国際特許分類】
G09B 7/04 20060101AFI20220324BHJP
G09B 19/00 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
G09B7/04
G09B19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020157855
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】390024350
【氏名又は名称】株式会社ジャストシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】中村 尚
【テーマコード(参考)】
2C028
【Fターム(参考)】
2C028BA02
2C028BB04
2C028BC01
2C028BC04
2C028BD01
(57)【要約】
【課題】学習者の学力に適応した学習支援ができること。
【解決手段】学習支援装置100は、問題・ヒント格納DB101aに予め記憶されている教科または当該教科の単元別の問題を、生徒の生徒端末111でが回答可能に提示する。生徒が問題を回答できない場合、当該生徒の操作に基づき、正解への補助の度合いが低い順の複数のヒントを交流情報格納DB101cから読み出して生徒に提示する。回答中以外の他の生徒及び先生は、生徒端末111、先生端末112の操作で問題のヒントを作成することができ、作成したヒントを回答中の生徒に提示でき、作成したヒントは交流情報格納DB101cに記録される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
予め記憶されている教科または当該教科の単元別の問題を、ユーザが回答可能に提示する問題提示工程と、
前記問題を回答できない場合、前記ユーザの操作に基づき、正解への補助の度合いが低い順の複数のヒントを前記ユーザに提示するヒント提示工程と、
の処理を実行させることを特徴とする学習支援プログラム。
【請求項2】
前記ヒント提示工程は、
回答中の前記ユーザ以外の他のユーザが前記ヒントを作成することを特徴とする請求項1に記載の学習支援プログラム。
【請求項3】
前記ヒント提示工程は、
前記他のユーザが作成した前記ヒントを前記問題に関連付けて記憶し、
前記ユーザの操作に基づき、記憶された前記ヒントを読み出して前記ユーザに提示することを特徴とする請求項2に記載の学習支援プログラム。
【請求項4】
前記ヒント提示工程は、
予め前記問題が単元ごとに記憶されたうち、回答中の前記問題の回答の前提となる単元を前記ユーザの操作に基づき、選択可能なことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の学習支援プログラム。
【請求項5】
さらに、前記ユーザが提示された前記ヒントで前記問題を解けない場合、前記ユーザから前記問題に対する質問を受け付ける質問受付工程と、
受け付けた前記質問を前記他のユーザに提示し、前記他のユーザが作成した質問回答を前記ユーザに提示する質問回答工程と、
を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の学習支援プログラム。
【請求項6】
さらに、前記問題の回答に対する得点を付与する得点付与工程を含み、当該得点付与工程は、
前記ヒントなしでの正解を満点とし、前記ヒントを前記ユーザに提示した数に応じて前記得点を差し引くことを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の学習支援プログラム。
【請求項7】
さらに、前記ユーザによる前記問題毎の回答状況を記録する回答状況記録工程と、
前記ユーザの学力を推定し、推定した前記ユーザの学力に類似する、既に回答済みの他の類似学力ユーザを推定する類似学力推定工程と、
前記他の類似学力ユーザによる前記問題の回答状況に基づき、前記ユーザの学力に適した問題を提示する問題提示工程と、
を含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の学習支援プログラム。
【請求項8】
前記類似学力推定工程は、
前記問題毎の前記ヒントの提示数、前記ヒントの閲覧時間、を用いた所定スコアを基に、前記ユーザおよび前記他の類似学力ユーザの学力を推定することを特徴とする請求項7に記載の学習支援プログラム。
【請求項9】
前記問題提示工程は、
前記ユーザに前記問題を提示する際、前記他の類似学力ユーザで推定した学力に応じた問題を提示することを特徴とする請求項8に記載の学習支援プログラム。
【請求項10】
前記問題提示工程は、前記他の類似学力ユーザが所定の問題甲に高確率で誤答した場合、前記問題甲の前提となる単元乙の問題を提示することを特徴とする請求項9に記載の学習支援プログラム。
【請求項11】
コンピュータが、
予め記憶されている教科または当該教科の単元別の問題を、ユーザが回答可能に提示する問題提示工程と、
前記問題を回答できない場合、前記ユーザの操作に基づき、正解への補助の度合いが低い順の複数のヒントを前記ユーザに提示するヒント提示工程と、
の処理を実行することを特徴とする学習支援方法。
【請求項12】
予め記憶されている教科または当該教科の単元別の問題を、ユーザが回答可能に提示し、
前記問題を回答できない場合、前記ユーザの操作に基づき、正解への補助の度合いが低い順の複数のヒントを前記ユーザに提示する制御部、
を備えたことを特徴とする学習支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドリル等を用いた学習を支援する学習支援プログラム、学習支援方法および学習支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
eラーニングを含むオンライン学習では、生徒等の学習者に対し学習問題を提示して回答させ、この際、回答の補助となるヒントを与えることで正解の回答に導くことが行われている。
【0003】
このような学習支援に関連する技術として、例えば、ビデオコンテンツの再生中のユーザ入力を受けて、予め定められた正解等の応答と比較したユーザスコアをユーザにフィードバックすることで、視聴するコンテンツにユーザが参加できるようにした技術がある(例えば、下記特許文献1参照。)。また、学習者が誤答した場合、誤答パターンに応じて誤答前の学習段階の問題を遡って提示する技術がある(例えば、下記特許文献2参照。)。また、プレイヤの機器操作状況により習熟度を推測し、作業効率が効率化できる複数のプレイヤ同士のマッチングを行う技術がある(例えば、下記特許文献3参照。)。
【0004】
また、選択された講座のコンテンツの再生終了後、問題回答の正誤を直前に再生したコンテンツに基づき報知することで、まとめて答え合わせすることなく一人で学習を進めることができる技術がある(例えば、下記特許文献4参照。)。また、クイズの問題文データの表示開始からプレイヤによる入力操作が行われるまでの解答時間が基準内であれば解答可能とし、遅いと得点が下がるクイズゲームの技術がある(例えば、下記特許文献5参照。)。また、学習問題を小単元に分類し難易度を付与してデータベースに登録し、問題の小単元毎および難易度毎の回答履歴に基づき難易度を変更した問題集を作成する技術がある(例えば、下記特許文献6参照。)。また、学習者ユーザ毎の学習結果を、学科毎、単元毎、学習レベル毎の問題生成ルールを参照して問題を生成することで、学習結果に基づき出題と回答と正誤判定とを繰り返し可能にした技術がある(例えば、下記特許文献7参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-085715号公報
【特許文献2】特開2017-102316号公報
【特許文献3】特開2016-053804号公報
【特許文献4】特開2014-102301号公報
【特許文献5】特開2014-097168号公報
【特許文献6】特開2012-093691号公報
【特許文献7】特開2005-070465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、学習問題を回答できない学習者に対して適切な学習支援が行えなかった。例えば、ヒントを見ても問題を回答できない学習者に対して、学習成果が得られる回答に導く学習支援が行われていない。
【0007】
例えば、従来技術では、問題を解くためのヒントが一つの場合が多く、この場合、以下の問題がある。
a.提示されたヒントでも正答に至らない様な学力レベルの生徒にとって学ぶ機会が失われる。
b.上記a.の学習者は、失敗体験によるやる気低下が起きやすい。
c.問題のどこでつまずいたかの詳細な情報が得られず、装置側ではAI等による分析に制限が生じる。
【0008】
また、問題を小問に分ける場合や、複数のヒントにより正答への誘導を行う場合、学習者は学習のペナルティなしで全てのヒントが閲覧できてしまう。この場合、少ないヒントで回答するという動機がない。このため、以下の問題がある。
d.ヒントなしで回答できる高レベルの学力の獲得効果が小さい。
e.簡単に正答相当を与えることになり、学習者に飽きによるやる気低下が起きやすい。
f.どのヒントまで見たかなどの情報と、学習者の学力との関係が弱くなり、つまずき箇所としてのAI等による分析にノイズがより多く混ざり、正確な学習度合いを得ることができない。
【0009】
より具体的には、ヒントに基づき問題を回答できる/回答できない、の2択のみで判断を行っている。この場合、ヒントを見ても問題を回答できない学習者を回答できるように導くことができない。そして、全く分からない学習者が学ぶべきものを学べなくなったり、学習者のやる気が削がれたり、成功体験が得にくい問題があった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑み、学習者の学力に適応した学習支援を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の学習支援プログラムは、コンピュータに、予め記憶されている教科または当該教科の単元別の問題を、ユーザが回答可能に提示する問題提示工程と、前記問題を回答できない場合、前記ユーザの操作に基づき、正解への補助の度合いが低い順の複数のヒントを前記ユーザに提示するヒント提示工程と、の処理を実行させることを特徴とする。
【0012】
また、前記ヒント提示工程は、回答中の前記ユーザ以外の他のユーザが前記ヒントを作成することを特徴とする。
【0013】
また、前記ヒント提示工程は、前記他のユーザが作成した前記ヒントを前記問題に関連付けて記憶し、前記ユーザの操作に基づき、記憶された前記ヒントを読み出して前記ユーザに提示することを特徴とする。
【0014】
また、前記ヒント提示工程は、予め前記問題が単元ごとに記憶されたうち、回答中の前記問題の回答の前提となる単元を前記ユーザの操作に基づき、選択可能なことを特徴とする。
【0015】
さらに、前記ユーザが提示された前記ヒントで前記問題を解けない場合、前記ユーザから前記問題に対する質問を受け付ける質問受付工程と、受け付けた前記質問を前記他のユーザに提示し、前記他のユーザが作成した質問回答を前記ユーザに提示する質問回答工程と、を含むことを特徴とする。
【0016】
さらに、前記問題の回答に対する得点を付与する得点付与工程を含み、当該得点付与工程は、前記ヒントなしでの正解を満点とし、前記ヒントを前記ユーザに提示した数に応じて前記得点を差し引くことを特徴とする。
【0017】
さらに、前記ユーザによる前記問題毎の回答状況を記録する回答状況記録工程と、前記ユーザの学力を推定し、推定した前記ユーザの学力に類似する、既に回答済みの他の類似学力ユーザを推定する類似学力推定工程と、前記他の類似学力ユーザによる前記問題の回答状況に基づき、前記ユーザの学力に適した問題を提示する問題提示工程と、を含むことを特徴とする。
【0018】
また、前記類似学力推定工程は、前記問題毎の前記ヒントの提示数、前記ヒントの閲覧時間、を用いた所定スコアを基に、前記ユーザおよび前記他の類似学力ユーザの学力を推定することを特徴とする。
【0019】
また、前記問題提示工程は、前記ユーザに前記問題を提示する際、前記他の類似学力ユーザで推定した学力に応じた問題を提示することを特徴とする。
【0020】
また、前記問題提示工程は、前記他の類似学力ユーザが所定の問題甲に高確率で誤答した場合、前記問題甲の前提となる単元乙の問題を提示することを特徴とする。
【0021】
また、本発明の学習支援方法は、コンピュータが、予め記憶されている教科または当該教科の単元別の問題を、ユーザが回答可能に提示する問題提示工程と、前記問題を回答できない場合、前記ユーザの操作に基づき、正解への補助の度合いが低い順の複数のヒントを前記ユーザに提示するヒント提示工程と、の処理を実行することを特徴とする。
【0022】
また、本発明の学習支援装置は、予め記憶されている教科または当該教科の単元別の問題を、ユーザが回答可能に提示させ、前記問題を回答できない場合、前記ユーザの操作に基づき、正解への補助の度合いが低い順の複数のヒントを前記ユーザに提示させる制御部、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、学習者の学力に適応した学習支援を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、実施の形態にかかる学習支援システムのシステム構成図である。
【
図2】
図2は、実施の形態にかかる学習支援装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施の形態にかかる学習支援システムによる問題の回答~正答に至る流れを示す流れ図である。
【
図4】
図4は、実施の形態にかかる問題回答の表示画面例を示す図である。(その1)
【
図5】
図5は、実施の形態にかかる問題回答の表示画面例を示す図である。(その2)
【
図6】
図6は、実施の形態にかかる問題回答の表示画面例を示す図である。(その3)
【
図7】
図7は、実施の形態にかかる問題回答の表示画面例を示す図である。(その4)
【
図8】
図8は、実施の形態にかかる問題回答の表示画面例を示す図である。(その5)
【
図9】
図9は、実施の形態にかかる問題回答の表示画面例を示す図である。(その6)
【
図10】
図10は、実施の形態にかかる問題回答の表示画面例を示す図である。(その7)
【
図11】
図11は、実施の形態にかかる追加ヒントの作成の表示画面例を示す図である。(その1)
【
図12】
図12は、実施の形態にかかる追加ヒントの作成の表示画面例を示す図である。(その2)
【
図13】
図13は、実施の形態にかかる追加ヒントの作成の表示画面例を示す図である。(その3)
【
図14】
図14は、実施の形態にかかる追加ヒントの作成の表示画面例を示す図である。(その4)
【
図15】
図15は、実施の形態にかかる追加ヒントの作成後の各表示画面例を示す図である。(その1)
【
図16】
図16は、実施の形態にかかる追加ヒントの作成後の各表示画面例を示す図である。(その2)
【
図17】
図17は、実施の形態にかかる追加ヒントの作成後の各表示画面例を示す図である。(その3)
【
図18】
図18は、実施の形態にかかる追加ヒントの作成後の各表示画面例を示す図である。(その4)
【
図19】
図19は、実施の形態の学習支援装置による追加ヒント提示の処理例を示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、実施の形態にかかるつまずきベクトルを利用したユーザ類似度計算を説明する図表である。
【
図21】
図21は、実施の形態にかかるつまずきベクトルを利用した問題誘導の表示画面例を示す図である。
【
図22】
図22は、実施の形態の学習支援装置によるつまずきベクトルを利用した問題誘導の処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施の形態)
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる学習支援プログラム、学習支援方法および学習支援装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0026】
(システム構成例)
図1は、実施の形態にかかる学習支援システムのシステム構成図である。学習支援システムは、学習支援装置100と、学習支援装置100にLAN等の通信網NWを介して通信接続される利用者(ユーザ)毎のクライアント(端末)と、を含む。
【0027】
学習支援装置100は、複数のデータベース(DB)101、学力類似度推定部102、問題推薦部103、中心演算装置104を含む。
図1の例では、端末は、生徒端末111と、先生端末112とを含む。生徒端末111と先生端末112は、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ(PC)等を用いることができる。
【0028】
学習支援装置100は、学校や学習塾等に設けられるサーバ等で構成することができる。また、学力類似度推定部102、問題推薦部103は、それぞれ個別のサーバ等で構成し、DB101にアクセス可能に構成することもできる。このほか、学習支援装置100は、クラウド上に設けることもできる。
【0029】
複数のDB101は、問題・ヒント格納DB101a、回答状況格納DB101b、交流情報格納DB101cを含む。問題・ヒント格納DB101aは、学習用の各教科毎の単元別のドリル等の問題と、回答のヒントとを格納する。回答状況格納DB101bは、学習用の問題毎の回答状況を格納する。
【0030】
交流情報格納DB101cは、学習用の問題を回答できない状態の生徒が入力した質問に相当するヘルプと、ヘルプに対応して先生あるいは回答済みの生徒が作成した回答を補助する追加ヒントと、基礎問題の出題状況、等の情報を格納する。基礎問題は、出題した問題を回答できない場合にさかのぼって出題した問題等である。
【0031】
中心演算装置104は、問題・ヒント格納DB101aにアクセスして、学習する生徒の端末111に対し、学習用の問題を出題する。この中心演算装置104は、出題した問題の生徒の回答状況に応じて、正解の回答(正答)ができない場合、後述の手順で交流要素によらないヒントまたは交流要素による追加ヒントを生徒端末111に表示する。また、中心演算装置104は、新たに入力されたヘルプと、追加ヒントとを関連付けて回答状況格納DB101b、交流情報格納DB101cに更新記憶する。
【0032】
学力類似度推定部102は、生徒の回答状況に応じて類似する学力の他の生徒(類似学力者)を推定する。学力類似度推定部102は、類似学力者が正解の回答(正答)に基礎問題を必要とした場合には、生徒に対し基礎問題を出力(表示)する。
【0033】
問題推薦部103は、回答状況格納DB101bの情報を元に学力類似度推定部102が演算した学力の類似した生徒とその正答状況を得る。類似生徒の追加ヒント無しでの正答率が規定の水準より低い場合、類似生徒の正答に役立った追加ヒントから関連付けられた基礎問題を交流情報格納DB101cから取得し、推奨する基礎問題として学習する生徒の端末111に提示する。
【0034】
学習支援装置100は、例えば、WebページやWebウィジェット等の表示画面を生成して生徒端末111、先生端末112に送信する。生徒端末111は、学習支援装置100が生成した表示画面を表示し、生徒の操作により問題に対する回答を行い、回答結果を学習支援装置100に送信する。
【0035】
先生端末112は、学習支援装置100からの問題の出題状況および生徒端末111による問題の回答状況を確認することができる。先生端末112は、生徒端末111に対する学習用の問題を指定して出題できる。この際、先生端末112では、生徒端末111毎の問題の回答状況として、ヘルプ、追加ヒント、基礎問題の出題の状況を確認することができ、先生端末112はこれらヘルプ、追加ヒント、基礎問題を生徒端末111に指摘(出題)することができる。また、問題を正答した生徒も生徒端末111を操作して回答中の生徒に対し追加ヒントや基礎問題を指摘(出題)することができる。
【0036】
ここで、実施の形態の学習支援装置100(問題推薦部103)は、生徒端末111において問題の回答ができない場合、下記1~4に示す「多段ヒントの提示」処理を行い、生徒に対しできるだけ軽微なヒントを与えて正答に導くようにする。ここで、学習支援装置100が予め用意したものを「ヒント」、提示されたヒントでもわからないときの生徒のヘルプに対し、他者(先生や他の生徒)が作成したものを「追加ヒント」、これら「ヒント」と「追加ヒント」をまとめたものを「多段ヒント」と呼ぶ。
1.複数のヒントを正解への誘導度合いが低い順に提示する。
2.上記ヒントには、他者(先生等)から教えてもらうことも含む。
3.上記のヒントには、前提単元(上記さかのぼって出題した問題等)の問題も含む。
4.上記のヒントをより多く見るほど、正解時の得点を多く割り引く。
【0037】
実施の形態の学習支援装置100は、生徒端末111において問題の回答ができない場合、問題推薦部103による上記1~4の処理に加えて、学力類似度推定部102により下記5、6に示す「つまずきベクトルを利用した問題誘導」処理を行い、問題回答でのつまずきの状況をベクトル化し、正答に導くようにすることができる。
5.複数のヒントの閲覧時間比、どのヒントまで閲覧してから正解したか、どのヒントで質問を発したか等の情報を記録し、つまずきベクトルとして回答中の生徒と類似学力の生徒(類似学力者)を探す。
6.類似学力の生徒の挙動から、ある問題甲に高確率でつまずき、その解消に前提単元乙の問題が必要と推定された場合、甲を解かせる前に、乙の問題に誘導する。
【0038】
上記のように、実施の形態の学習支援装置100は、ヒントを見ても回答できない生徒を、回答できるように導く。従来技術では、出題された問題が回答(正解)であるか否かで点数を付けていた。このため、問題が全く分からない生徒は、学習すべきものが学べず、成功体験も得られなかった。問題に回答できない生徒には『どうせできないし…』と学習の無力感を与えることがあった。これに対し、実施の形態では、問題を生徒全員が解けるように導き、正答に必要な補助(ヘルプ、追加ヒント、基礎問題の出題)が少ないほど高得点とする。
【0039】
そして、実施の形態の学習支援装置100では、従来(既存)のドリルに対して以下の改善点を有する。
・前提知識が足りない生徒に対しては、基礎となる問題をまず解いてもらう。
・ヒントをレベル別の複数段階にして、ヒントの出題回数にしたがって正答の補助を増やしていく。例えば、はじめの第1ヒントは、正答を得るためのごく軽い補助とし、ここで正解すると高得点(8割、80点)の得点を与える。第1ヒントで正答できない場合、次の第2ヒントは、第1ヒントよりも多く(正答が得られ易いレベル)の補助を与え、この第2ヒントで正解できれば5割(50点)得点を与える。レベル別ヒントでも回答できない生徒に対しては、回答のヘルプを出す。例えば、レベル別ヒント内で出す。ヒントでは、レベル別ヒントの内容として、レベル別のポイントを示すことで、生徒が回答する際のハードルを下げる(回答しやすい状況にする)ことができる。
・ヘルプに対し、先生と正答済みの生徒は、追加のヒントを送信できる。
【0040】
レベル別のヒントは、例えば、作成したヒント毎に作成した生徒あるいは先生が所定のレベル情報を付与し、交流情報格納DB101cに格納しておくことができる。これにより、学習支援装置100は、交流情報格納DB101cから問題のヒントを読み出すとき、読み出したヒントのレベル、およびレベルに対応する得点を得ることができる。
【0041】
(ハードウェア構成例)
図2は、実施の形態にかかる学習支援装置のハードウェア構成例を示す図である。例えば、
図1に示す学習支援装置100は、
図2に示す構成を有する。201は装置全体を制御する制御部として機能するCPUである。202は基本入出力プログラムを記憶したROMを、203はCPU201のワークエリアとして使用されるRAMである。
【0042】
また、204はCPU201の制御にしたがってHD(ハードディスク)205に対するデータのリード/ライトを制御するHDD(ハードディスクドライブ)を、205はHDD204の制御にしたがって書き込まれたデータを記憶するHDを、それぞれ示している。
【0043】
また、206はCPU201の制御にしたがってFD(フレキシブルディスク)207に対するデータのリード/ライトを制御するFDD(フレキシブルディスクドライブ)を、207はFDD206の制御にしたがって書き込まれたデータを記憶する着脱自在のFDを、それぞれ示している。
【0044】
また、208はCPU201の制御にしたがってCD-RW209に対するデータのリード/ライトを制御するCD-RWドライブを、209はCD-RWドライブ208の制御にしたがって書き込まれたデータを記憶する着脱自在のCD-RWを、それぞれ示している。
【0045】
また、210はカーソル、メニュー、ウィンドウ、あるいは文字や画像などの各種データを表示するディスプレイを、211は文字、数値、各種指示などの入力のための複数のキーを備えたキーボードを、212は各種指示の選択や実行、処理対象の選択、マウスポインタの移動などを行うマウスを、それぞれ示している。
【0046】
また、213は通信ケーブル214を介してLANやWANなどのネットワークNWに接続され、当該ネットワークNWとCPU201とのインターフェースとして機能するネットワークI/Fを、200は上記各部を接続するためのバスを、それぞれ示している。
【0047】
上記構成のほかに、DVDドライブや、SSD,フラッシュメモリ等の記録媒体を用いることができる。
【0048】
図1に示した学習支援装置100は、
図2に記載のROM202、RAM203、ハードディスク205、フレキシブルディスク207などに記録されたプログラムやデータを用いて、CPU201が所定のプログラムを実行することによって、学習支援装置100の機能を実現する。
【0049】
また、
図1に示した生徒端末111と先生端末112についても、
図2同様のハードウェアで構成することができる。これら生徒端末111と先生端末112は、学習支援装置100から問題毎の画面を受信して表示し、問題に対する回答を行い、回答の情報を学習支援装置100に送信する。これら生徒端末111と先生端末112が、タブレットやスマートフォン等の携帯機器の場合、例えば、ハードディスク205やフレキシブルディスク207に代えてフラッシュメモリを用いることができ、また、ディスプレイ210、キーボード211、マウス212としてタッチパネルを用いることができる。
【0050】
(学習支援全体の流れ)
図3は、実施の形態にかかる学習支援システムによる問題の回答~正答に至る流れを示す流れ図である。
図3において、生徒の問題回答時の状況(気持ち)をK、教師や他の生徒等による操作はP、学習支援装置100が行うデータ処理はSで示す。
【0051】
はじめに、ある生徒が「ドリル解くぞ」の状況K1でドリル問題を学習しはじめる。この際、学習支援装置100は、処理群300での処理結果のフィードバックRでAIによるつまずき予測S1を行う。このフィードバックRにより、つまずき予測S1は、処理群300でヒントを出した以降の生徒の挙動からつまずきと予防教材を学習する。
【0052】
つまずき予測の結果が「つまずかなそう」との判断S2aであれば、学習支援装置100は、生徒に対し問題文を表示する(S3)。一方、つまずき予測の結果が「つまずきそう」との判断S2bであれば、学習支援装置100は、生徒に対し、つまずきを予防するさかのぼり問題に誘導し、さかのぼり問題文を表示し(S4)、以上の流れを終える。
【0053】
S3の処理による問題文表示後、問題文が表示された生徒が「分からないからヒント」K2を求めた場合、学習支援装置100は、処理群300の処理を行う。ここでは、まず、レベル別ヒントを表示する(S5)。レベル別ヒントは、上記のように第1ヒント、第2ヒント、第3ヒント、…と正答を得るために段階的な異なる補助のレベルからなる(上記「多段ヒント」に相当)。一方、S3の処理による問題文表示後、生徒が「ヒントを見ずに(問題を)解けた」状況K3の場合、S7以降の流れに移行する。
【0054】
S5の処理でレベル別ヒントが表示された状態でも、生徒が「それでも分からないから誰か助けて」との状況K3aであれば、学習支援装置100は、生徒にヘルプ(回答用の質問)作成させる(P1)。一方、S5の処理でレベル別ヒントの表示により生徒が「レベル別ヒントで(問題を)解けた」状況K3bであれば、以上の流れを終える。
【0055】
そして、上記ヘルプ作成の依頼(P1)に対応して追加ヒント(あるいはさかのぼり問題)が先生等により作成され、学習支援装置100が受信することで(S6)、生徒はこの追加ヒント(あるいはさかのぼり問題)により「(問題を)解けた」との状況K4に達することができ、以上の流れを終える。
【0056】
S7以下の流れは、ヘルプに対応する追加ヒント作成の流れであり、先生(あるいは正答済みの生徒)は、学習支援装置100からのヘルプ作成の依頼(P1)により、「助けてあげよう」との状況K5となり、追加ヒント(およびさかのぼり問題)を作成する(P2)。
【0057】
作成された追加ヒント(およびさかのぼり問題)は、学習支援装置100により問題回答中の生徒に提示され、生徒がこの追加ヒント(あるいはさかのぼり問題)により「(問題を)解けた」との状況K4になれば、学習支援装置100は、該当する問題を「解けた人数として加算」し(S8)、先生(あるいは正答済みの生徒)は、「役に立ってうれしい」との状況K6となり、以上の流れを終える。
【0058】
図3の説明では、生徒のヘルプ毎に先生あるいは正答済みの生徒に対し、追加ヒントの作成を依頼する(P2)こととした。これに限らず、学習支援装置100は、該当するヘルプと追加ヒントの情報が予め交流情報格納DB101cに記憶されている場合、ヘルプに対応する追加ヒントを生徒に送信する。すなわち、学習支援装置100は、生徒が作成したヘルプと、このヘルプに対応して先生あるいは正答済みの生徒が作成した追加ヒントと、を関連付けて交流情報格納DB101cに蓄積記憶する。
【0059】
図3に示した上記の流れにおいて、処理群300の各処理は、学習支援装置100の主に問題推薦部103が上記1~4の「追加ヒント提示」処理を行うことに相当する。また、処理群300以外の各処理は、学習支援装置100の主に学力類似度推定部102が上記5、6の「つまずきベクトルを利用した問題誘導」処理を行うことに相当する。
【0060】
(ヘルプおよび追加ヒントの表示画面例)
図4~
図10は、実施の形態にかかる問題回答の表示画面例を示す図である。これらの表示画面は、学習支援装置100が生成し、生徒端末111上に表示される。生徒は生徒端末111上の表示画面上の操作により、問題を回答する。
【0061】
図4は、問題の表示画面400を示し、この
図4では、ヒントなしで誤答した場合の状態を示している。この表示画面400の問題は、科目が「算数」で単元が「17-1」の面積算出、の問題例である。表示画面400の最上段には、各種操作ボタンとして、「表示選択」ボタン401、「ヒント」ボタン402、「パス」ボタン403、「ペン」ボタン404、「消す」ボタン405、「全部消す」ボタン406、「やめる」ボタン407が表示される。
【0062】
「表示選択」ボタン401は、操作によりメニュー、例えば各単元のリストを表示し、生徒がリスト上で所望の単元を選択することで、他の単元の問題に切り替えることができる。「ヒント」ボタン402は、表示中の問題を回答できず、ヒントが欲しい場合に操作する。「パス」ボタン403は、この問題の回答を行わない場合に操作する。「ペン」ボタン404は、表示画面400上で生徒が操作入力する場合に操作され、「消す」ボタン405は、操作入力した内容を消去する場合に操作される。「全部消す」ボタン406は、表示画面400上での操作入力を全て消去する場合に操作される。「やめる」ボタン407は、表示中の問題の回答をやめる場合に操作される。
【0063】
各種操作ボタンの下段には、問題の項目説明410として、単元「17-1」広さの表し方、(学習の)ねらい「1平方センチメートルをもとにして、面積を求めよう。」、問題数(ステップ数)がそれぞれ表示される。
【0064】
問題の項目の下段には、問題内容411が表示される。図示の問題は、1cmマス単位を縦方向と横方向が4×5で配置し、うち、一部が斜線(2×3)とされた図形412が表示されている。また、問題文413として「右の長方形の面積は何cm2でしょう。」と表示され、回答(答え)記入欄414が表示される。
【0065】
ここで、
図4に示すように生徒が回答記入欄414に「5」cm
2と回答したとする。この場合、斜線で示された長方形の面積は「6」cm
2であり、学習支援装置100は誤答と判断する。
【0066】
この場合、学習支援装置100は、ヒントなしで誤答したと判断し、ガイド420をポップアップ表示させる。ガイド420では、「ざんねん、間違いだよ。」と誤答であることを表示する。また、ガイド420には、「ヒントを見てもう一度」のボタン421と、「パス」のボタン422を表示する。
【0067】
ここで、生徒のボタン操作が「ヒントを見てもう一度」のボタン421であれば、学習支援装置100は、回答のヒントを表示する処理を行う。また、生徒が「パス」のボタン422を操作すれば、誤答とする処理を行う。
【0068】
(レベル別ヒントについて)
図5は、表示画面400に第1ヒントを表示した例を示す。
図4において、生徒が「ヒントを見てもう一度」のボタン421を操作した場合、表示画面400の下部に第1ヒント画面500が表示される。
【0069】
第1ヒント画面500には、第1ヒント501として「1辺が1cmの正方形の面積を1平方センチメートルといい、1cm
2と書くよ。」と表示する。この第1ヒント501により、生徒は再度、回答記入欄414に回答を行うことができる。学習支援装置100は、この第1ヒントで正答した場合、「7点」を得点として計算する。なお、ヒントなし(
図4相当)で正答した場合の得点は満点の「10点」である。
【0070】
また、第1ヒント画面500の右側には、回答のための補助ボタンとして、次の第2ヒント用の「次のヒントを見ると7→5点」のヒントボタン502と、「他の人(先生あるいは正答済みの生徒)から教えてもらう/たのむと0点」のヘルプボタン503が表示される。
【0071】
学習支援装置100は、第1ヒント画面500上で、あらかじめ有する既存のヘルプと追加ヒント(汎用のFAQに相当)を生徒に提示する(例えば、
図7相当の画面)。第1ヒント画面500で生徒がヒントボタン502を操作すると、学習支援装置100は、「追加ヒント」である第2ヒントを表示する。生徒は、提示された既存のヘルプと追加ヒントのなかに、自分の疑問に答えたものがなければ、生徒は、ヘルプ(
図10参照)を書く。なお、これに限らず、学習支援装置100は、生徒がヘルプボタン503を操作すると、FAQの閲覧とヘルプテキストの記述を省略し、先生あるいは正答済みの生徒に対して回答用のヘルプを依頼する、という派生構成とすることもできる。この場合、学習支援装置100は、回答用のヘルプとして、
図5に相当する問題内容と、第1ヒントの表示状態に相当する情報を先生あるいは正答済みの生徒に送信する。
【0072】
第1ヒント画面500は、上部に「とじる」ボタン510が表示され、この「とじる」ボタン510の操作により、第1ヒント画面500は再表示可能に折り畳み等の状態にされる。
【0073】
図6は、表示画面400に第2ヒントを表示した例を示す。
図5において、生徒がヒントボタン502を操作した場合、表示画面400の下部に第2ヒント画面600が表示される。
【0074】
第2ヒント画面600には、第2ヒント601として第1ヒントよりも正答しやすくなる補助として、「縦横1cmの、この正方形の面積が1cm2だよ。」と表示し、ヒントの図形601aに第2ヒントを具体的に示す図形(1cm2)を表示する。この第2ヒント601により、生徒は再度、回答記入欄414に回答を行うことができる。学習支援装置100は、この第2ヒントで正答した場合、「5点」を得点として計算する。
【0075】
また、第2ヒント画面600の右側には、補助ボタンとして、次の第3ヒント用の「次のヒントを見ると5→2点」のヒントボタン602と、「他の人(先生あるいは正答済みの生徒)から教えてもらう/たのむと0点」のヘルプボタン603が表示される。
【0076】
学習支援装置100は、生徒がヒントボタン602を操作すると第3ヒントを表示する。提示された既存のヘルプと第3ヒントのなかに、自分の疑問に答えたものがなければ、生徒は、ヘルプ(後述の
図10参照)を書く。これに限らず、学習支援装置100は、ヘルプボタン603を操作すると、先生あるいは正答済みの生徒に対する回答用のヘルプを依頼してもよい。この場合、学習支援装置100は、回答用のヘルプとして、
図6に相当する問題内容と、第2ヒントの表示状態に相当する情報を先生あるいは正答済みの生徒に送信する。
【0077】
第2ヒント画面600は、左側に「前のヒント」ボタン605が表示され、上部に「とじる」ボタン610が表示される。「前のヒント」ボタン605の操作により、以前表示した第1ヒント501の表示に戻される。また、「とじる」ボタン610の操作により、第2ヒント画面600は再表示可能に折り畳み等の状態にされる。
【0078】
以上説明した第1ヒント、第2ヒントに続いて、さらに学習支援装置100は、生徒の操作により次のヒント(第3ヒント以降)を順次表示していくことができる。学習支援装置100は、このように補助のレベルを変えたヒントを順次表示可能である。
【0079】
(ヘルプ画面について)
次に、
図5、
図6で示したレベルヒントでも回答できない場合のヘルプについて説明する。このヘルプは、先生あるいは正答済みの生徒が作成したものが表示される。
【0080】
図7は、表示画面400にヘルプを表示した例を示す。
図6において、生徒がヘルプボタン603を操作した場合、
図7に示すように、表示画面400の下部にヘルプ画面700が表示される。
【0081】
学習支援装置100は、ヘルプ画面700として、第2ヒント画面600の第2ヒント601に加えて、ヘルプ画面700に他の生徒のヘルプに、別の生徒または先生が回答した追加ヒントを重畳表示する。
【0082】
ヘルプ画面700では、例えば、回答が分からない生徒が入力した「面積とは?」のヘルプ701を表示する。また、ヘルプ701に対応して先生等が作成した追加ヒント702として「面積は広さのことで、■の広さが1cm2だよ。斜線の□の広さは■のいくつ分かな?」を表示する。
【0083】
学習支援装置100は、これらヘルプ701、追加ヒント702の表示内容として、交流情報格納DB101cに記憶された該当するヘルプと追加ヒントを表示する。また、ヘルプ画面700上で回答が分からない生徒がヘルプ701として「面積とは?」と入力した場合、このヘルプ701を交流情報格納DB101cに記憶する。
【0084】
これらヘルプ701、追加ヒント702の表示により、生徒は再度、回答記入欄414に回答を行うことができる。学習支援装置100は、ヘルプにより正答した場合、「0点」を得点として計算する。
【0085】
また、ヘルプ画面700の右側には、「さかのぼりヒント」ボタン703として、『「どちらが広い」にさかのぼる』が表示される。学習支援装置100は、生徒が「さかのぼりヒント」ボタン703を操作すると現在の問題より以前に出題済みの問題を表示する。
【0086】
また、ヘルプ画面700の左側には「十字キー」ボタン705が表示され、上下キー705aの操作により、別の生徒のヘルプ701を表示する。上下キー705aの操作により、回答が分からない別の生徒が入力したヘルプ701を順次表示できる。また、左右キー705bの操作により、同じヘルプ内の別の追加ヒントを表示する。
【0087】
また、ヘルプ画面700に表示されたヘルプ内容が理解できた場合、ヘルプ内容が分かった旨の「いいね」ボタン706が表示される。学習支援装置100は、「いいね」ボタン706が押されると、交流情報格納DB101cに記憶された該当する追加ヒント702に対して「いいね(ヘルプ内容が分かった旨)」の識別子(押下回数相当)を付与する。
【0088】
図8は、ヘルプ画面700の追加ヒント702を最後まで見た例を示す。
図7に示したヘルプ画面700で「十字キー」ボタン705の左右キー(右キー)705bを操作して別の追加ヒント702を順次見ることができる。
図8に示すように、追加ヒント702を最後まで見た場合、左右キー(右キー)705bが非表示となり、より詳しい追加ヒント702を依頼する「もっと詳しく」ボタン801が表示される。学習支援装置100は、「もっと詳しく」ボタン801が押されると、先生あるいは正答済みの生徒に対し、追加ヒントの作成を依頼する。
【0089】
図9は、ヘルプ画面700で追加ヒント702が付与されていない状態を示す。交流情報格納DB101cに記憶されたヘルプ701に対応する追加ヒント702が全て表示された後の状態に相当する。この場合、ヘルプ画面700の「十字キー」ボタン705の左右キー(左キー)705bは非表示となり、さらに追加ヒントを依頼する「同じ質問」ボタン901が表示される。学習支援装置100は、「同じ質問」ボタン901が押されると、先生あるいは正答済みの生徒に対し、追加ヒントの作成を優先的に依頼する。
【0090】
図10は、ヘルプ画面700に必要なヘルプ701が表示されていない状態を示す。回答が分からない生徒がヘルプ画面700の「十字キー」ボタン705を操作してヘルプ701を最後まで表示させた状態であり、生徒が所望するヘルプ701がなかった状態に相当する。
【0091】
この場合、学習支援装置100は、生徒に対して新たなヘルプ701aの文言入力が可能な状態にする。例えば、
図10の状態で「ペン」ボタン404が有効となり、生徒がフリーハンド、あるいは文字入力で「斜線の□の長方形と透明な大きな長方形のどちらを答えるかわかりません。」と新たなヘルプ701aを操作入力後、「これで質問」の依頼ボタン1001を操作する。学習支援装置100は、「これで質問」ボタン1001が押されると、先生あるいは正答済みの生徒に対し、新たなヘルプ701aに対する追加ヒントの作成を依頼する。
【0092】
(追加ヒントの作成例)
次に、
図11~
図14は、実施の形態にかかる追加ヒントの作成の表示画面例を示す図である。これらの表示画面は、学習支援装置100が生成し、先生端末112あるいは生徒端末111上に表示される。
【0093】
図11は、生徒端末111上に表示される追加ヒント作成依頼の表示画面1100である。表示画面1100の最上段には、各種情報1101として操作ボタンのほかに、「生徒情報(4年2組 三浦尚士)」表示1102、「友達からの助け 2」として自分のヘルプへの未読追加ヒント数の表示1103と、「友達を助ける 3」として追加ヒント作成依頼件数の表示1104、等が表示される。
【0094】
各種情報1101の下段には、各教科、国語、算数、理科、社会、えい語のタブ1110が表示され、図示の例では、「算数」のタブ1112が表示された状態である。タブ1110の下段には、「算数」の各単元1120として、「1.3年のまとめ」、「2.大きい数のしくみ」、「3.折れ線グラフと表」、…、が表示される。図示の例では、選択した「2.大きい数のしくみ」の小単元1121として、「2-1 大きい数のしくみ」、…、「2-6 まとめ」が一覧表示されている。
【0095】
図12は、ヘルプを出す生徒端末111上に表示される追加ヒント一覧の表示画面1200である。この表示画面1200は、「ヘルプ時刻」1201、「最終更新(時刻)」1202、「正答チェック」1203、「教材」1204、「追加ヒント数」1205の各表示と、「確認する」ボタン1206、を含む。
【0096】
「ヘルプ時刻」1201は生徒自身がヘルプを出した時刻、「最終更新(時刻)」1202は新たに追加された最新の追加ヒントの時刻、「正答チェック」1203は現在時点での問題の正答状況(〇が正答、×は誤答)、「教材」1204は問題の教科と単元、「追加ヒント数」1205は自身のヘルプに対し作成された追加ヒント数、である。
【0097】
学習支援装置100は、「ヘルプ時刻」1201の上下の表示順番について、誤答×となった教材(問題)を上段に位置させる。同じ順番で複数の問題があれば未読追加ヒント(図中太文字)の教材(問題)を上段に位置させて表示する。さらには、「最終更新」1202が新しい順、「ヘルプ時刻」1201が新しい順、で教材(問題)上段に表示させることができる。
【0098】
そして、教材(問題)毎に「確認する」ボタン1206が表示される。問題を解く生徒は、ヒント一覧の表示画面1200を見て、教材(問題)に対し、自分がヘルプを出した時刻、ヘルプに対する追加ヒントの数、追加ヒントの最終更新時刻、正誤の状態、を確認できる。学習支援装置100は、生徒の「確認する」ボタン1206の操作によりヘルプに対する追加ヒント確認の表示画面(後述の
図15参照)を表示させる。
【0099】
図13は、追加ヒントを作成する生徒の生徒端末111、あるいは先生端末112上に表示される追加ヒント作成依頼一覧の表示画面1300である。この表示画面1300は、「ヘルプ時刻」1301、「最終更新(時刻)」1302、「いいね」1303、「教材」1304、「ヘルプ票数」1305、「追加ヒント数」1306の各表示と、「確認ボタン」1307、を含む。
【0100】
「ヘルプ時刻」1301は生徒がヘルプを出した時刻、「最終更新(時刻)」1302は新たに追加された最新の追加ヒントの時刻、「いいね」1303は自分の追加ヒントに対して「いいね」が押された数、「教材」1304は問題の教科と単元、「ヘルプ票数」、1305は教材(問題)内で出たヘルプに対する票数であり、作成直後は1票、他の生徒が
図9のボタン901を押すたびに1票追加される(すなわち、同じ疑問でつまずいて困っている人数に相当)。「追加ヒント数」1306は、ヘルプに対し作成された追加ヒント数、である。
【0101】
学習支援装置100は、「ヘルプ時刻」1301の上下の表示順番について、追加ヒントが未作成(図中太文字)の教材(問題)を上段に位置させる。また、追加ヒントが作成済みで複数の問題があれば「いいね」の評価(数)が高い順に上段に位置させて表示する。さらには、「ヘルプ票数」1305(正答済みも含む)の降順、「最終更新」1302が新しい順、「ヘルプ時刻」1301が新しい順、で教材(問題)を上段に表示させることができる。
【0102】
そして、各教材(問題)毎に「確認ボタン」1307が表示される。追加ヒントが作成依頼された教師あるいは生徒は、追加ヒント作成依頼の表示画面1300を見て、教材(問題)毎の追加ヒントの数を確認でき、追加ヒントが作成されていない問題を見つけ出し、追加ヒントを作成できる。また、「いいね」の評価、「ヘルプ票数」、「最終更新」、「ヘルプ時刻」、についてソートされた順番で追加ヒントを作成できる。学習支援装置100は、「確認する」ボタン1307の操作により作成した追加ヒント確認の表示画面(後述の
図15参照)を表示させ、「作成する」ボタン1308の操作により、追加ヒント作成の表示画面(後述の
図16参照)を表示させる。
【0103】
図14は、追加ヒントを作成する生徒の生徒端末111に表示される追加ヒント作成一時抑制の表示画面1400である。学習支援装置100は追加ヒントの作成について、所定のノルマ未達の場合、連続して他の追加ヒントの作成を抑制し、ある教材(問題)の追加ヒントの作成を完了後に作成を可能にする。ノルマ未達とは、例えば、本日出された複数の問題の回答が終了していない場合、あるいは本日の問題の完了数がクラス全体の生徒数の所定(例えば中央値)未満の場合、等である。
【0104】
図14に表示される各項目は、
図13と同等であるが、「いいね」1303に対する評価が行われていない3つの教材(問題)があり。この場合、学習支援装置100は、これら3つの教材(問題)については、「確認ボタン」1307を操作できない状態(図示の例では「作成するには何かドリルを解いてね」と表示)にし、追加ヒントが作成できない状態にする。
【0105】
(追加ヒント作成後の各表示画面)
図15~
図18は、実施の形態にかかる追加ヒントの作成後の各表示画面例を示す図である。これらの表示画面は、学習支援装置100が生成し、先生端末112あるいは生徒端末111上に表示される。
【0106】
図15は、ヘルプを出した生徒の生徒端末111上に表示される追加ヒント確認画面である。例えば、画面最上段の「解き直す」ボタン1501を操作すると、学習支援装置100は、生徒がヘルプを出した教材(問題)の最初から解き直す画面を生徒端末111上に表示させる。学習支援装置100は、追加ヒントを確認する表示画面1500では、生徒による回答記入欄414への回答を入力できない状態にする。
【0107】
図15に示すヘルプ画面1510の内容は
図7同様であり、
図7で説明した符号を付しており、生徒が出したヘルプ701に対応する追加ヒント702が表示されている。また、
図7で説明した「さかのぼりヒント」ボタン703として、『「どちらが広い」にさかのぼる』が表示される。ヘルプ画面1510の「十字キー」ボタン705のうち、上下キー705aの操作により、別の生徒のヘルプ701を表示し、左右キー705bの操作により、同じヘルプ内の別の追加ヒントを表示する。図示の例では、最初の追加ヒントに切り替える右キー705bのみ表示されている。
【0108】
図16は、追加ヒントを作成する生徒の生徒端末111、あるいは先生端末112上に表示される追加ヒント作成画面である。学習支援装置100は、追加ヒントを作成する表示画面1600を生徒端末111、あるいは先生端末112上に表示させる。学習支援装置100は、追加ヒントを作成する表示画面1600では、回答記入欄414への回答を入力できない状態にする。なお、追加ヒントを作成する表示画面1600では、画面最上段に、
図15で説明した「解き直す」ボタン1501は表示されない。
【0109】
図16に示すヘルプ画面1610の内容は
図7同様であり、ヘルプ701に対応する追加ヒント702をフリーハンド、あるいは文字入力することができ、追加ヒントの入力後、「これで回答」ボタン1612の操作により、作成した追加ヒントが学習支援装置100に送信される。また、図示の例では、ヘルプ画面1610の「十字キー」ボタン705のうち左右キー705bは、既に回答済みの最後の追加ヒント確認画面に切り替える左キー705bのみ表示されている。また、このヘルプ画面1610の右下には、さかのぼりヒントを選択するための「さかのぼり教材を選択」ボタン1611が表示される。学習支援装置100は、「さかのぼり教材を選択」ボタン1611の操作により、さかのぼった教材(問題)の追加ヒント確認の表示画面(後述の
図17参照)を表示させる。
【0110】
図17は、「さかのぼり教材を選択」ボタン1611(
図16参照)が操作された時の追加ヒント作成画面である。学習支援装置100は、ヘルプ画面1610内の「さかのぼり教材を選択」ボタン1611が操作されると、教材(問題)の「概要表示」1701を表示する。この「概要表示」1701は、例えば、教材である算数の1問目(○○)、2問目(××)、3問目(□□)を表示し、右側の選択ボタンの操作により、学習支援装置100は、該当する問題を表示画面1700に表示する。表示画面1700内の上下の表示順序は、さかのぼりヒントとして適切な問題をAI解析等により決定する。また、追加ヒントを作成する表示画面1700では、回答記入欄414への回答を入力できない状態にする。
【0111】
図18は、上記の操作(
図15~
図17)の処理後に表示される追加ヒントの確認画面1800である。追加ヒントの作成後、ヘルプ画面1610の「十字キー」ボタン705には、左右ともに左右キー705bが表示され、左右キー705bの操作により、自分を含めた、同じクラスの先生や生徒が作成した複数の追加ヒントを表示できるようになる。また、確認画面1800の右下には、「さかのぼりヒント」ボタン703が表示され、学習支援装置100は、「さかのぼりヒント」ボタン703の操作時には、現在の問題より以前に出題済みの問題を表示して、結びつけられたさかのぼりヒントの確認を可能にする。
【0112】
(追加ヒント提示の処理フロー例)
図19は、実施の形態の学習支援装置による追加ヒント提示の処理例を示すフローチャートである。
図19の処理は、学習支援装置100の制御部(CPU201、主に問題推薦部103)が上記1~4の「多段ヒントの提示」処理を行うことで、生徒に対しできるだけ軽微なヒントを与えて正答に導く。
【0113】
制御部は、生徒あるいは先生による問題開始の要求に基づき以下の処理を実行する。はじめに、制御部は、所定の教科および単元の問題を生徒端末111に表示させる(ステップS1901)。次に、制御部は、問題を生徒がヒントなしで正答したか否かを判断する(ステップS1902)。
【0114】
判断結果がヒントなしで正答の場合(ステップS1902:Yes)、ステップS1903の処理に移行し、判断結果がヒントなしで正答できなかった(誤答)場合(ステップS1902:No)、ステップS1905aの処理に移行する。
【0115】
ステップS1903では、制御部は、問題に割り当てられた点数(得点)を回答者(生徒)に付与し(ステップS1903)、本問回答者リスト(回答状況格納DB101b)に追加し(ステップS1904)、以上の処理を終了する。
【0116】
ステップS1905aでは、制御部は、追加ヒント提示のループ処理を行う。はじめに、制御部は、問題に対する次のヒント(初回は第1ヒント)を生徒端末111に表示させる(ステップS1906)。次に、制御部は、表示されたヒントで正答したか判断する(ステップS1907)。判断結果が正答の場合(ステップS1907:Yes)、制御部は、該当ヒントに割り当てられた部分点(得点)を回答者に付与し(ステップS1908)、本問回答者リスト(回答状況格納DB101b)に追加し、以上の処理を終了する。
【0117】
一方、判断結果が正答でない場合(ステップS1907:No)、制御部は、生徒が提示したヒント自体が理解できないか否かを判断する(ステップS1909)。生徒が提示したヒント自体を理解できる場合(ステップS1909:No)、制御部は、まだ生徒に追加ヒントが残っている(提示できる)かを判断し(ステップS1905b)、ヒントが残っていれば(ステップS1905b:Yes)、制御部は、ループ処理によりステップS1905aの処理に戻す。これにより、生徒に対し他の追加ヒントを提示できる。
【0118】
ステップS1905bにおいて、生徒に提示できるヒントが残っていない場合(ステップS1905b:No)、ループ処理を抜けてステップS1910に移行する。
【0119】
また、生徒が提示したヒント自体を理解できない場合(ステップS1909:Yes)、ステップS1910に移行し、ループ処理から抜けて生徒による質問記述を受け付ける(ステップS1910)。この状態は、上記
図10に示した新たなヘルプ701aの文言入力に相当する。
【0120】
次に、制御部は、本問の回答済みの生徒(完答者)の生徒端末111と先生端末112に、ステップS1909で受け付けた質問を提示する(ステップS1911)。これにより、本問の回答済みの生徒と先生は、それぞれ生徒端末111、先生端末112を操作して追加ヒントを記述(作成)する(ステップS1912)。ステップS1912の処理では、上記
図11~
図14で説明した追加ヒントの作成、および
図15~
図18に説明した追加ヒントの確認等の処理を行う。
【0121】
次に、制御部は、作成された追加ヒントを生徒(生徒端末111)に提示し(ステップS1913)、ステップS1905aの処理に戻る。これにより、生徒に対し質問に対応した追加ヒントを提示できる。
【0122】
(つまずきベクトルを利用した問題誘導の処理例)
次に、学習支援装置100の制御部(CPU201)の問題推薦部103による上記1~4の「多段ヒントの提示」処理に加えて、学力類似度推定部102が上記5、6の「つまずきベクトルを利用した問題誘導」処理を行うことで、問題回答でのつまずきの状況をベクトル化して、つまずきの解消に有効となる適切な問題に誘導する処理を行う。
【0123】
図20は、実施の形態にかかるつまずきベクトルを利用したユーザ類似度計算を説明する図表である。学力類似度推定部102は、
図20に示すユーザ類似度計算表2000を作成する。このユーザ類似度計算表2000は、縦軸が各ユーザA,Bであり、横軸には計算項目として、問題(問1の点数2001、問1のヒントレベル(第1ヒント、第2ヒントに相当)2002、問1のヒント前時間2003、問1の第1ヒント時間2004、問1の第2ヒント時間2005、問1の第3ヒント時間2006、問1の第4ヒント時間2007、問1の第5ヒント時間2008、問2点数2009、類似度2010、を含む。問2(問題2)についても、問1同様のヒントレベル2002~問1の第5ヒント時間2008の情報を含む。
【0124】
問1の点数2001、問2の点数2009は、それぞれヒントなしでの正答を1点満点とした正誤を正規化した値、問1のヒントレベル2002は用意してある追加ヒントを生徒が見た割合、問1のヒント前時間は問題表示後回答までの相対時間(追加ヒントを含めた合計1で正規化)、第1~第5ヒント時間はそれぞれの追加ヒントを生徒が見た相対時間、にそれぞれ対応した値である。
【0125】
学力類似度推定部102は、ユーザ類似度計算表2000に格納した生徒(ユーザA,B)毎の情報に基づき、ユーザ(生徒)毎の問題に対する回答状態を、つまずきベクトルとして算出する。つまずきベクトルは、第1~第5ヒントの閲覧時間比、どのヒントまで閲覧してから正解したか(図示の例ではユーザAは第4ヒントまで閲覧、ユーザBは第3ヒントまで閲覧)、さらには不図示のどのヒントで質問を発したか等の情報を正規化した値である。
【0126】
そして、学力類似度推定部102は、例えば、回答中の生徒(ユーザA)と他の生徒(ユーザB)のそれぞれの計算項目2001~2009毎に乗算し(最下段が乗算結果)、乗算結果を全加算することで、類似度2010を計算する(図示の例では類似度、すなわち、回答中の生徒(ユーザA)に対する他の生徒(ユーザB)の類似度は1.25(ベクトル内積に相当)である。この類似度は、回答中の生徒(ユーザA)に対し、他の生徒(ユーザB)の学力の類似度を示す。
【0127】
学力類似度推定部102は、各生徒(ユーザA,B,C,…)の問題に対する回答状況に応じて逐次、
図20のユーザ類似度計算表2000に示す生徒毎のスコアを蓄積していくことができる。これにより、学力類似度推定部102は、ある生徒が問題を回答する段階で、この生徒の学力に類似する他の生徒(ユーザB)を判断できる。
【0128】
そして、学力類似度推定部102は、類似する学力の生徒(ユーザB)の問題に対する回答の挙動に基づき、回答中の生徒(ユーザA)に提示することが適切な問題を推定する。例えば、学力類似度推定部102は、ユーザAがある単元2の問題1に高確率でつまずき、その解消に前提となる単元1の問題xが必要と推定した場合、ユーザAに対し、単元2の問題1を提示する前に、単元1の問題xの提示に誘導する。
【0129】
図21は、実施の形態にかかるつまずきベクトルを利用した問題誘導の表示画面例を示す図である。学習支援装置100の制御部(CPU201)の問題推薦部103が、上記学力類似度推定部102の類似学力の推定結果に基づき表示する表示画面2100を示す。
【0130】
図21の例では、問題推薦部103は、生徒が高確率でつまずきそうと予測された「広さの表し方」の回答を開始しようとするタイミングで提示される画面案である。生徒が選択した『「広さの表し方」をはじめる』ボタン2102の他に、類似生徒のつまずき解消に効果があった基礎問題『おすすめ基礎問題「どちらが広い」をはじめる』ボタン2101も提示する。このボタンを押すことで、その生徒に適した基礎問題を踏まえた円滑な学習に誘導できる。
【0131】
(つまずきベクトルを利用した問題誘導の処理フロー例)
図22は、実施の形態の学習支援装置によるつまずきベクトルを利用した問題誘導の処理例を示すフローチャートである。
図22の処理は、学習支援装置100の制御部(CPU201)の問題推薦部103が上記1~4の「多段ヒントの提示」処理を行うことで、生徒に対しできるだけ軽微なヒントを与えて正答に導く。加えて、学力類似度推定部102が上記5、6の「つまずきベクトルを利用した問題誘導」処理を行うことで、問題回答でのつまずきの状況をベクトル化して適切な問題に誘導する処理を行う。
【0132】
制御部は、生徒あるいは先生による問題開始の要求に基づき以下の処理を実行する。はじめに、制御部は、問題を回答開始する生徒について、ユーザ類似度計算表2000に基づき、類似学力の他の生徒を判断し、この他の生徒が問題の正答に基礎問題の回答を必要としたか判断する(ステップS2201)。生徒が問題の正答に基礎問題の解答を必要としたかは、例えば、生徒が問題を解けずにヘルプを出した場合に、さかのぼりヒントで基礎問題を解いた直後に、ヘルプを出した問題を正答できたかどうかで判断できる。類似生徒で同様の挙動を示している割合などから基礎問題の有効性を判断することができる。
【0133】
判断結果が基礎問題の回答を必要とした場合には(ステップS2201:Yes)、制御部は、回答開始する生徒の生徒端末111に対し基礎問題を表示し(ステップS2202)、ステップS2204の処理に移行する。
【0134】
判断結果が基礎問題の回答を必要としない場合には(ステップS2201:No)、制御部は、回答開始する生徒の生徒端末111に対し、該当する問題を表示させる(ステップS2203)。次に、制御部は、問題を生徒がヒントなしで正答したか否かを判断する(ステップS2204)。
【0135】
判断結果がヒントなしで正答の場合(ステップS2204:Yes)、ステップS2205の処理に移行し、判断結果がヒントなしで正答できなかった(誤答)場合(ステップS2204:No)、ステップS2207aの処理に移行する。
【0136】
ステップS2205では、制御部は、問題に割り当てられた点数(得点)を回答者(生徒)に付与し(ステップS2205)、本問回答者リスト(回答状況格納DB101b)に追加し(ステップS2206)、以上の処理を終了する。
【0137】
ステップS2207aでは、制御部は、追加ヒント提示のループ処理を行う。はじめに、制御部は、問題に対する次のヒント(初回は第1ヒント)を生徒端末111に表示させる(ステップS2208)。次に、制御部は、表示されたヒントで正答したか判断する(ステップS2209)。判断結果が正答の場合(ステップS2209:Yes)、制御部は、該当ヒントに割り当てられた部分点(得点)を回答者に付与し(ステップS2210)、本問回答者リスト(回答状況格納DB101b)に追加し、以上の処理を終了する。
【0138】
一方、判断結果が正答でない場合(ステップS2209:No)、制御部は、生徒が提示したヒント自体が理解できないか否かを判断する(ステップS2211)。生徒が提示したヒント自体を理解できる場合(ステップS2211:No)、制御部は、まだ生徒に追加ヒントが残っている(提示できる)かを判断し(ステップS2207b)、ヒントが残っていれば(ステップS2207b:Yes)、制御部は、ループ処理によりステップS2207aの処理に戻す。これにより、生徒に対し他の追加ヒントを提示できる。
【0139】
ステップS2207bにおいて、生徒に提示できるヒントが残っていない場合(ステップS2207b:No)、ループ処理を抜けてステップS2212に移行する。
【0140】
また、生徒が提示したヒント自体を理解できない場合(ステップS2211:Yes)、ステップS2212に移行し、ループ処理から抜けて生徒による質問記述を受け付ける(ステップS2212)。この状態は、上記
図10に示した新たなヘルプ701aの文言入力に相当する。
【0141】
次に、制御部は、本問の回答済みの生徒(完答者)の生徒端末111と先生端末112に、ステップS2212で受け付けた質問を提示する(ステップS2213)。これにより、本問の回答済みの生徒と先生は、それぞれ生徒端末111、先生端末112を操作して追加ヒントや基礎問題の指摘を記述(作成)する(ステップS2214)。ステップS2214の処理では、上記
図11~
図14で説明した追加ヒントの作成、および
図15~
図18に説明した追加ヒントの確認等の処理を行う。
【0142】
次に、制御部は、作成された追加ヒントを生徒(生徒端末111)に提示し(ステップS2215)、正答直前において生徒に提示した追加ヒントと基礎問題を回答状況格納DB101bに記録し(ステップS2216)、ステップS2207aの処理に戻る。これにより、生徒に対し質問に対応した追加ヒントや基礎問題を提示できる。
【0143】
以上説明した実施の形態によれば、学習支援装置は、予め記憶されている教科または当該教科の単元別の問題を、生徒が回答可能に提示し、問題を回答できない場合、生徒の操作に基づき、正解への補助の度合いが低い順の複数のヒントを生徒に提示する。これにより、生徒の学習機会の損失を防ぐことができる。そして、生徒に全てのヒントが閲覧できる状態にせず簡単に正答相当を与えることがなく、生徒の学力に適したヒントを提示することで、生徒の問題回答の飽きや、やる気低下を防ぎ、問題回答の成功体験を与えることができるようになる。また、生徒がどの補助の度合いのヒントまで見たかなどの情報が得られ、問題回答のつまずき箇所をAI分析する際のノイズを低減でき、生徒の正確な学習度合いを得られるようになる。
【0144】
また、回答中の生徒以外の他の生徒あるいは先生がヒントを作成することができる。これにより、正答済みの他の生徒も回答中の生徒にヒントを与えることができる。また、他の生徒あるいは先生が作成したヒントを問題に関連付けて記憶し、生徒の操作に基づき、記憶されたヒントを読み出して生徒に提示する。ここで、ヒント作成は、生徒の回答中にリアルタイムで、あるいは、記憶された問題に対して任意の時期に作成することができる。
【0145】
また、ヒントの提示は、予め問題が単元ごとに記憶されたうち、回答中の問題回答の前提となる単元をユーザの操作に基づき、選択可能である。生徒は、ある問題の回答ができない場合、回答中の問題の前提となる単元の問題を選択することで、この前提の単元の問題回答後、再度、当初の問題回答を行うことができ、問題を回答に必要な知識を確認できるようになる。
【0146】
さらに、生徒は、提示されたヒントで問題を解けない場合、問題に対する質問を出すことができ、学習支援装置は、質問を他の生徒や先生に提示し、他の生徒や先生が作成した質問回答を生徒に提示することができる。これにより、与えられたヒントがあっても問題そのものが理解できない等の場合に対応でき、生徒による問題の回答を支援できるようになる。
【0147】
さらに、学習支援装置は、問題毎の得点付与を行い、ヒントなしでの正解を満点とし、ヒントを生徒に提示した数に応じて得点を差し引くこととしてもよい。これにより、生徒に対し、できるだけヒントを閲覧せずに回答する等の学習意欲を持たせることができるようになる。
【0148】
さらに、生徒による問題毎の回答状況を記録し、生徒の学力を推定し、推定した生徒の学力に類似する、既に回答済みの他の生徒(類似学力ユーザ)を推定し、他の類似学力ユーザによる問題の回答状況に基づき、生徒の学力に適した問題を提示することができる。これにより、生徒に提示する問題自体を生徒の学力に応じたものとすることができるようになり、生徒の学力に適していない容易なレベルの問題や困難なレベルの問題をいきなり出すことを防ぎ、生徒の学習意欲を削ぐことがない。
【0149】
また、生徒および他の生徒の学力推定は、問題毎のヒントの提示数、ヒントの閲覧時間、を用いた所定スコアを基に、ユーザおよび他の類似学力ユーザの学力を推定する。これにより、生徒毎の学力をそれまでの回答実績に基づき、正確に推定できるようになる。
【0150】
また、生徒に問題を提示する際、他の類似学力ユーザで推定した学力に応じた問題を提示することができる。これにより、生徒は学力に適合した問題を回答することができ、生徒の学力に適していない容易なレベルの問題や困難なレベルの問題をいきなり出すことを防ぎ、生徒の学習意欲を削ぐことがない。
【0151】
また、生徒に問題を提示する際、他の生徒(類似学力ユーザ)が所定の問題甲に高確率で誤答した場合、問題甲の前提となる単元乙の問題を提示することができる。例えば、生徒がある単元を選択して回答開始する場合、生徒が学習済みの以前の単元、すなわち、基礎問題を提示する復習を行わせることができるようになる。
【0152】
なお、本実施の形態で説明した学習支援にかかるプログラムは、予め用意されたプログラムをコンピュータで実行することにより実現することができる。また、このプログラムは、半導体メモリ、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0153】
この発明にかかる学習支援プログラム、学習支援方法および学習支援装置は、校内教育や、通信教育、学習塾等での学習を支援する学習支援プログラム、学習支援方法および学習支援装置に有用であり、特に、小学児童などの生徒の自立した学習を支援する学習支援プログラム、学習支援方法および学習支援装置に適している。
【符号の説明】
【0154】
100 学習支援装置
101a 問題・ヒント格納DB
101b 回答状況格納DB
101c 交流情報格納DB
102 学力類似度推定部
103 問題推薦部
104 中心演算装置
111 生徒端末
112 先生端末
201 CPU
202 ROM
203 RAM
213 ネットワークI/F
400 問題の表示画面
420 ガイド
500,600 ヒント画面
601 ヒント
700 ヘルプ画面
701 ヘルプ
702 追加ヒント(第1ヒント、第2ヒント、…)
1100 追加ヒント作成依頼の表示画面
1200 追加ヒント一覧の表示画面