(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051410
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】廃水処理材、廃水処理具及び廃水処理材の製造方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20060101AFI20220324BHJP
C02F 11/00 20060101ALI20220324BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20220324BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20220324BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20220324BHJP
B01J 2/20 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
C02F1/00 E ZAB
C02F11/00 101Z
B01J20/22 B
B01J20/26 D
B01J20/30
B01J2/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020157867
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】520249538
【氏名又は名称】株式会社ネットフィールド
(74)【代理人】
【識別番号】100091410
【弁理士】
【氏名又は名称】澁谷 啓朗
(72)【発明者】
【氏名】網野 通
(72)【発明者】
【氏名】田中 純司
【テーマコード(参考)】
4D059
4G004
4G066
【Fターム(参考)】
4D059AA30
4D059BG00
4D059DB11
4D059DB33
4G004LA06
4G066AC07A
4G066AC07B
4G066AC17A
4G066AC17B
4G066BA01
4G066BA12
4G066CA43
4G066DA08
4G066DA15
4G066EA13
4G066FA27
4G066FA38
4G066FA39
(57)【要約】
【課題】優れた吸水性を有する安価で取扱い易い廃水又は汚水処理材を提供する。
【解決手段】廃水処理材製造装置の原材料供給部から成形部11のフラットダイス23の表面上に、おが屑及び吸水性樹脂からなる原材料3を供給し、押圧ローラ27を移動させることによりこの原材料3を成形孔25内に押し込む。成形孔25内で圧縮成形されて成形孔25の下端開口から円柱状に押し出された原材料3をカッタ29により切断又は折ってペレット9を形成する。適当量のペレット9で廃水処理材を構成し汚水を吸水して保持する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設現場又は建築現場などで発生する廃水又は汚水を吸水して処理するための廃水処理材であって、
おが屑と粉状又は粒状の吸水性樹脂との混合物を原材料とし、この原材料をダイスの成形孔に押し込んで圧縮成形し、この成形孔から押し出された成形物を切断し又は折って得られたペレットにより構成した、ことを特徴とする廃水処理材。
【請求項2】
建設現場又は建築現場などで発生する廃水又は汚水を吸水して処理するための廃水処理具であって、
おが屑と粉状又は粒状の吸水性樹脂との混合物を原材料とし、この原材料をダイスの成形孔に押し込んで圧縮成形し、この成形孔から押し出された成形物を切断し又は折って得られたペレットを不織布製カバー内に収容することにより構成した、ことを特徴とする廃水処理具。
【請求項3】
建設現場又は建築現場などで発生する廃水又は汚水を吸水して処理するための廃水処理材の製造方法であって、
おが屑と粉状又は粒状の吸水性樹脂とを準備する工程と、
前記おが屑及び粉状又は粒状の吸水性樹脂の混合物をダイスの成形孔に押し込んで圧縮成形し、この成形孔から押し出された成形物を切断し又は折ってペレットを形成する工程と、を備えることを特徴とする廃水処理材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトロ舟(左官用練り舟)を建設又は建築現場などで水道水により洗浄した際に発生する廃水又は汚水やビルメンテナンスのクリーニングの際に生じる廃水又は汚水を処理するための廃水又は廃液処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
建設又は建築現場でモルタルが必要な場合には、トロ舟を用い、セメントと砂に水を加えて練っている。トロ舟は使用後に水道水で洗浄されるが、洗浄廃水はセメント成分や砂などを含んでいるためにそのままで排水設備に流すことは不適切である。また、中和処理などを施しても排水設備に流してしまうと依然として水質汚染の問題を引き起こすおそれがある。そして、ビルメンテナンスにおいてフロアなどをクリーニングした際の洗浄廃水も排水設備に流すのは適切ではない。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に記載されたように、おが屑や吸水性樹脂からなる汚水固化剤を用いて廃水や汚水を吸水固化し、産業廃棄物として処理する廃水処理も行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、固化剤としておが屑や紙を用いると必要な吸水性を確保するために大きな容量の固化剤が必要となるので、円滑な廃水処理を行なえないおそれがある。また、固化剤として吸水性樹脂を用いると固化剤が高価になってしまうし、保水性が不十分で取扱い性が低下するおそれもある。
【0006】
そこで本発明は、優れた吸水性を有する安価で取扱い易い廃水処理材及び廃水処理具、そして優れた吸水性を有する安価で取扱い易い廃水処理材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するための本発明の廃水処理材又は廃液処理材は、建設現場又は建築現場などで発生する廃水又は汚水を吸水して処理するための廃水処理材又は廃液処理材であって、おが屑と吸水性樹脂(高吸水性樹脂)との混合物を原材料とし、この原材料を圧縮成形して得たペレット状成形物を集めて構成したもの又は固化材である。より具体的には、おが屑と粉状又は粒状の吸水性樹脂との混合物を原材料とし、この原材料をダイスの成形孔に押し込んで圧縮成形し、この成形孔から押し出された成形物を切断し又は折って得られたペレットにより構成したもの又は固化材である。おが屑を用いているので安価に構成できるし保水性又は吸水後の保形性も良好である。また、圧縮成形しているのでコンパクトなものとすることができる。しかも吸水性樹脂を混合しているので優れた吸水性を確保できる。
【0008】
また、この目的を達成するための本発明の廃水処理具又は廃液処理具は、建設現場又は建築現場などで発生する廃水又は汚水を吸水して処理するための廃水処理具又は廃液処理具であって、おが屑と吸水性樹脂(高吸水性樹脂)との混合物を原材料とし、この原材料を圧縮成形して得たペレット状成形物を集めて不織布製カバー内に収容して構成したもの又は固化具である。より具体的には、おが屑と粉状又は粒状の吸水性樹脂との混合物を原材料とし、この原材料をダイスの成形孔に押し込んで圧縮成形し、この成形孔から押し出された成形物を切断し又は折って得られたペレットを不織布製カバー内に収容することにより構成したもの又は固化具である。不織布製カバーを用いることにより砂などの不燃物等を吸収しないように構成できる。
【0009】
さらに、本発明に係る廃水処理材又は廃液処理材の製造方法は、建設現場又は建築現場などで発生する廃水又は汚水を吸水して処理するための廃水処理材又は廃液処理材の製造方法であって、おが屑と吸水性樹脂(高吸水性樹脂)とを準備する工程と、前記おが屑及び吸水性樹脂の混合物を圧縮成形し、ペレット状に形成する工程と、を備えるものである。より具体的には、おが屑と粉状又は粒状の吸水性樹脂とを準備する工程と、前記おが屑及び粉状又は粒状の吸水性樹脂の混合物をダイスの成形孔に押し込んで圧縮成形し、この成形孔から押し出された成形物を切断し又は折ってペレットを形成する工程と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明を用いれば、建設現場や建築現場又はビルメンテナンスなどで発生する廃水又は汚水を簡単かつ安価に処理又は固化することができ、水質汚染の軽減を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る廃水処理材を製造するための廃水処理材製造装置の全体構成図である。
【
図6】本発明に係る廃水処理具の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
まず、
図1を参照して本発明に係る廃水処理材を製造するための廃水処理材製造装置の全体構成を説明する。
【0014】
廃水処理材製造装置1は、原材料3を投入するためのホッパ5と、このホッパ5に設けられた原材料供給部7と、原材料供給部7から供給された原材料3を圧縮成形して廃水処理材であるペレット9を形成する成形部11と、成形部11に設けられている、形成されたペレット9を排出して廃水処理材12を構成するための排出部13と、操作制御部15と、を備えている。ホッパ5の下端部には、ホッパ5に投入された原材料3を原材料供給部7を介して成形部11に供給するフィーダ17が設けられている。なお、
図1中符号19は、成形部11を駆動する成形駆動部である。
【0015】
次に、
図2を参照して成形部11の構成を概略的に説明する。
【0016】
成形部11は円筒状のケーシング21内に円盤状のフラットダイス23を備えていて、このフラットダイス23には多数の円柱状の成形孔25が上下方向に貫通して環状に配置形成されている。フラットダイス23の表面上には一対の押圧ローラ27が回転(矢印A及び矢印B参照)しながら円形走行(矢印C参照)できるように設けられ、フラットダイス23の裏面側には押圧ローラ27の円形走行にしたがって回転移動(矢印C参照)するように一対のカッタ29又は複数のカッタ29が配置されている。押圧ローラ27及びカッタ29は成形駆動部19により回転駆動される作動軸31に取り付けられている。押圧ローラ27の円形走行及びカッタ29の回転移動は作動軸31の回転によって行われ、フラットダイス23の表面上を円形走行する際に押圧ローラ27はベアリング(図示せず)を介して回転する。
【0017】
成形部11では、原材料供給部7からフラットダイス23の表面上に供給された原材料3が自転及び公転する押圧ローラ27によって成形孔25内に押し込められ、成形孔25内で圧縮されて成形孔25の下端開口から短い円柱状の成形物として押し出される。成形孔25の下端開口から押し出された原材料3は、カッタ29の衝突によって例えばフラットダイス23の裏面位置又は裏面近傍で切断され又は折られ、ペレット9を形成する。形成されたペレット9は排出部13から外部に排出され、排出されたペレット9により廃水処理材12が構成される。ペレット9は、直径4mm乃至8mm、高さ10mm乃至20mmの円柱体とすることができる。
【0018】
ホッパ5に投入される原材料3は、おが屑と吸水性樹脂(吸水性ポリマー)との混合物である。吸水性樹脂としては、例えばポリアクリル酸ナトリウムを用いることができる。吸水性樹脂は、例えば、おが屑10リットルに対して50gから250g、100gから200g、あるいはほぼ150gを混合することができる。なお、おが屑の水分が不足している場合には水を加えることができる。また、消臭材を添加することもできる。フラットダイス23の成形孔25の直径は4mm乃至8mmとすることができる。おが屑はこの成形孔25の直径より小さいことが好ましい。また、吸水性樹脂も、粉状であるかあるいは成形孔25の直径よりも小さい直径の粒状物であることが好ましい。原材料3は、押圧ローラ27とフラットダイス23の表面との間で粉砕されるが、投入時からこのように十分細かいことが効果的である。
【0019】
図3を参照して成形部11の変更例を概略的に説明する。
【0020】
変更成形部11は円筒状のケーシング21内に回転可能な円盤状のフラットダイス33を備えていて、このフラットダイス33には多数の円柱状の成形孔35が上下方向に貫通して環状に配置形成されている。フラットダイス33の表面上には一対の押圧ローラ37が回転(矢印D及び矢印E参照)できるように設けられ、フラットダイス33の裏面側にはケーシング21側から延びる一対のカッタ39又は複数のカッタ39が配置されている。フラットダイス33は成形駆動部19により回転駆動される作動軸41に取り付けられている。フラットダイス35の回転は作動軸41の回転によって行われ(矢印F参照)、フラットダイス35の表面上に接触している押圧ローラ37はベアリング(図示せず)を介して定位置で回転する。
【0021】
変形成形部11では、原材料供給部7からフラットダイス33の表面上に供給された原材料3がフラッドダイス33の回転にともなう押圧ローラ37の回転によって成形孔35内に押し込められ、成形孔35内で圧縮されて成形孔35の下端開口から短い円柱状の成形物として押し出される。成形孔35の下端開口から押し出された原材料3は、カッタ39への衝突によって例えばフラットダイス33の裏面位置又は裏面近傍で切断され又は折られ、ペレット9を形成する。形成されたペレット9は排出部13から外部に排出される。排出されたペレット9により廃水処理材12が構成される。ペレット9は、直径4mm乃至8mm、高さ10mm乃至20mmの円柱体とすることができる。なお、フラットダイス33の回転時の振動や遠心力により成形孔35の下端開口から押し出された成形物が確実に折れる場合には、カッタ39を設けないでおくことができる。
【0022】
図4及び
図5を参照してペレット9から構成される廃水処理材12の利用方法を説明する。
【0023】
例えば、使用後のトロ舟(業務用で使用されるもの又はDIYで使用されるものを含む)を洗浄した洗浄水をこの廃水処理材12を用いて処理する場合には、まず、洗浄水43をバケツなどの容器45に移し、容器45内の洗浄水43に適量のペレット9(廃水処理材12)を投入する(
図4)。ペレット9は、例えば、1kgで6リットルから10リットル、あるいはほぼ8リットルの水を吸水して保持する機能又は固化する機能を有する。そうすると、
図5に示すように、それぞれのペレット9は洗浄水43を吸収して膨潤し、ペレット全体12が水分を含んだ泥の様相(例えば高い保水性を有している場合の様相)を呈する。したがって、洗浄水43を吸水し保持している廃水処理材12を袋などに収容し、産業廃棄物として廃棄できる。なお、例えば、10リットルのおが屑と150gの吸水性樹脂とから2.0kgから3.0kgのペレット9、あるいはほぼ2.5kgのペレット9を製造できる。
【0024】
図6及び
図7を参照して本発明に係る廃水処理具を説明する。
【0025】
廃水処理具47は、適量のペレット9から構成される廃水処理材12を入口49が開口している不織布製のカバー又は袋51に収容し(
図6)、カバー又は袋51の入口49を封止することにより構成されている(
図7)。カバー又は袋51は、例えば、縦50mm乃至150mm、横50mm乃至150mmの長方形状又は正方形状とすることができる。
【0026】
図8及び
図9を参照して廃水処理具47の利用方法を説明する。
【0027】
例えば、使用後のトロ舟を洗浄した洗浄水をこの廃水処理具47を用いて処理する場合には、まず、洗浄水43をバケツなどの容器45に移し、容器45内の洗浄水43に適当数の廃水処理具47を投入する(
図8では4個の廃水処理具47を投入することとなる)。そうすると、
図9に示すように、それぞれの廃水処理具47の廃水処理材12は、不織布を通過した洗浄水43を吸収又は吸水して膨潤し、廃水処理具47が膨れた状態に変形する。したがって、洗浄液43を吸収又は吸水し保持している又は固化している廃水処理具47を袋などに収容し、産業廃棄物として廃棄できる。ここでは、洗浄水43に含まれている不燃物の砂などの固形分は、不織布製のカバー又は袋51を通過できず、廃水処理具47の外側に例えば付着しただけの状態となっているので、廃水処理具47を軽く手で叩くなどして固形分を分離できる。あるいは、洗浄水43内で沈殿していた固形分を残して廃水処理具47を容器45から取り出し袋などに収容できる。
【符号の説明】
【0028】
9 ペレット
12 廃水処理材
23、35 フラットダイス
25、37 成形孔
47 廃水処理具
51 カバー又は袋