(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051450
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】処理装置、プログラム、方法及び処理システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20220324BHJP
A63B 71/06 20060101ALI20220324BHJP
A61H 1/02 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
A61B5/11 230
A63B71/06 J
A61H1/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020157937
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】520365285
【氏名又は名称】iMU株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】230121016
【弁護士】
【氏名又は名称】小笠原 匡隆
(72)【発明者】
【氏名】名倉 武雄
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼地 康文
(72)【発明者】
【氏名】原藤 健吾
(72)【発明者】
【氏名】岩間 友
(72)【発明者】
【氏名】福田 敦史
【テーマコード(参考)】
4C038
4C046
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VA05
4C038VB14
4C038VC20
4C046AA25
4C046AA33
4C046AA47
4C046AA48
4C046AA50
4C046BB07
4C046CC01
4C046DD39
4C046DD41
4C046EE04
4C046EE09
4C046EE25
4C046EE32
(57)【要約】
【課題】 運動時の状態を推定、又は推定を補助する際に、使用者がより簡便に利用可能な処理装置、プログラム、方法及び処理システムを提供する。
【解決手段】 ヒトの脚の膝又はその周囲に取り付けられ、前記ヒトの運動時の加速度を検出するための加速度センサから、有線又は無線で検出された加速度を受信するように構成された入出力インターフェイスと、所定の指示命令に加えて、受信された前記加速度と、前記膝に関連する関連情報とを記憶するように構成されたメモリと、所定の情報を出力するように構成された出力インターフェイスと、前記所定の指示命令を実行することによって、前記加速度に基づいて前記ヒトの膝の状態を推定し、推定された前記状態に基づいて前記メモリに記憶された前記関連情報を特定し、前記特定された関連情報を前記出力インターフェイスに出力するための処理をするように構成されたプロセッサと、を含む処理装置である。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの脚の膝又はその周囲に取り付けられ、少なくとも前記ヒトの運動時の加速度を検出するための加速度センサから、有線又は無線で検出された加速度を受信するように構成された入出力インターフェイスと、
所定の指示命令に加えて、受信された前記加速度と、前記膝に関連する関連情報とを記憶するように構成されたメモリと、
所定の情報を出力するように構成された出力インターフェイスと、
前記所定の指示命令を実行することによって、前記加速度に基づいて前記ヒトの膝の状態を推定し、推定された前記状態に基づいて前記メモリに記憶された前記関連情報を特定し、前記特定された関連情報を前記出力インターフェイスに出力するための処理をするように構成されたプロセッサと、
を含む処理装置。
【請求項2】
ヒトの脚の膝又はその周囲に取り付けられ、少なくとも前記ヒトの運動時の加速度を検出するための加速度センサから、有線又は無線で検出された加速度を受信するように構成された入出力インターフェイスと、
所定の指示命令に加えて、受信された前記加速度と、前記膝に関連する関連情報とを記憶するように構成されたメモリと、
所定の情報を出力するように構成された出力インターフェイスと、
前記所定の指示命令を実行することによって、前記加速度に基づいて前記メモリに記憶された前記関連情報を特定し、前記特定された関連情報を前記出力インターフェイスに出力するための処理をするように構成されたプロセッサと、
を含む処理装置。
【請求項3】
ヒトの脚の膝又はその周囲に取り付けられ、少なくとも前記ヒトの運動時の加速度を検出するための加速度センサから、有線又は無線で検出された加速度を受信するように構成された入出力インターフェイスと、
所定の指示命令に加えて、受信された前記加速度と、前記膝に関連する関連情報とを記憶するように構成されたメモリと、
所定の情報を出力するように構成された出力インターフェイスと、
前記所定の指示命令を実行することによって、前記加速度に基づいて前記ヒトの変形性膝関節症の程度を推定し、推定された前記程度に基づいて前記メモリに記憶された前記関連情報を特定し、前記特定された関連情報を前記出力インターフェイスに出力するための処理をするように構成されたプロセッサと、
を含む処理装置。
【請求項4】
前記関連情報は前記膝の診断及び治療の少なくともいずれか一方が可能な医療機関に関する情報を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項5】
前記関連情報は前記膝の診断及び治療の少なくともいずれか一方を行う医師を補助するため情報を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項6】
前記メモリに記憶された前記関連情報は所定のタイミングで更新される、請求項1~5のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項7】
前記関連情報は、推定された前記膝の状態に応じて異なる情報である、請求項1に記載の処理装置。
【請求項8】
前記関連情報は、前記加速度に応じて異なる情報である、請求項2に記載の処理装置。
【請求項9】
前記関連情報は、推定された前記変形性膝関節症の程度に応じて異なる情報である、請求項3に記載の処理装置。
【請求項10】
ヒトの脚の膝又はその周囲に取り付けられ、少なくとも前記ヒトの運動時の加速度を検出するための加速度センサから、有線又は無線で検出された加速度を受信するように構成された入出力インターフェイスと、受信された前記加速度と、前記膝に関連する関連情報とを記憶するように構成されたメモリと、所定の情報を出力するように構成された出力インターフェイスとを含むコンピュータを、
前記加速度に基づいて前記ヒトの膝の状態を推定し、推定された前記状態に基づいて前記メモリに記憶された前記関連情報を特定し、前記特定された関連情報を前記出力インターフェイスに出力するための処理をするように構成されたプロセッサ、
として機能させるプログラム。
【請求項11】
ヒトの脚の膝又はその周囲に取り付けられ、少なくとも前記ヒトの運動時の加速度を検出するための加速度センサから、有線又は無線で検出された加速度を受信するように構成された入出力インターフェイスと、受信された前記加速度と、前記膝に関連する関連情報とを記憶するように構成されたメモリと、所定の情報を出力するように構成された出力インターフェイスとを含むコンピュータを、
前記加速度に基づいて前記ヒトの膝の状態を推定し、推定された前記状態に基づいて前記メモリに記憶された前記関連情報を特定し、前記特定された関連情報を前記出力インターフェイスに出力するための処理をするように構成されたプロセッサ、
として機能させるプログラム。
【請求項12】
ヒトの脚の膝又はその周囲に取り付けられ、少なくとも前記ヒトの運動時の加速度を検出するための加速度センサから、有線又は無線で検出された加速度を受信するように構成された入出力インターフェイスと、受信された前記加速度と、前記膝に関連する関連情報とを記憶するように構成されたメモリと、所定の情報を出力するように構成された出力インターフェイスとを含むコンピュータを、
前記加速度に基づいて前記メモリに記憶された前記関連情報を特定し、前記特定された関連情報を前記出力インターフェイスに出力するための処理をするように構成されたプロセッサ、
として機能させるプログラム。
【請求項13】
ヒトの脚の膝又はその周囲に取り付けられ、少なくとも前記ヒトの運動時の加速度を検出するための加速度センサから、有線又は無線で検出された加速度を受信するように構成された入出力インターフェイスと、所定の指示命令に加えて、受信された前記加速度と、前記膝に関連する関連情報とを記憶するように構成されたメモリと、所定の情報を出力するように構成された出力インターフェイスと含むコンピュータにおいて、プロセッサが前記所定の指示命令を実行することによりなされる方法であって、
前記加速度に基づいて前記ヒトの膝の状態を推定する段階と、
推定された前記状態に基づいて前記メモリに記憶された前記関連情報を特定する段階と、
前記特定された関連情報を前記出力インターフェイスに出力する段階と、
を含む方法。
【請求項14】
ヒトの脚の膝又はその周囲に取り付けられ、少なくとも前記ヒトの運動時の加速度を検出するための加速度センサから、有線又は無線で検出された加速度を受信するように構成された入出力インターフェイスと、所定の指示命令に加えて、受信された前記加速度と、前記膝に関連する関連情報とを記憶するように構成されたメモリと、所定の情報を出力するように構成された出力インターフェイスと含むコンピュータにおいて、プロセッサが前記所定の指示命令を実行することによりなされる方法であって、
前記加速度に基づいて前記メモリに記憶された前記関連情報を特定する段階と、
前記特定された関連情報を前記出力インターフェイスに出力する段階と、
を含む方法。
【請求項15】
ヒトの脚の膝又はその周囲に取り付けられ、少なくとも前記ヒトの運動時の加速度を検出するための加速度センサから、有線又は無線で検出された加速度を受信するように構成された入出力インターフェイスと、所定の指示命令に加えて、受信された前記加速度と、前記膝に関連する関連情報とを記憶するように構成されたメモリと、所定の情報を出力するように構成された出力インターフェイスと含むコンピュータにおいて、プロセッサが前記所定の指示命令を実行することによりなされる方法であって、
前記加速度に基づいて前記ヒトの変形性膝関節症の程度を推定する段階と、
推定された前記程度に基づいて前記メモリに記憶された前記関連情報を特定する段階と、
前記特定された関連情報を前記出力インターフェイスに出力する段階と、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒトの運動時の状態を推定、又は推定を補助することが可能な処理装置、プログラム、方法及び処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、膝関節は人体で最も大きな関節であり、特に歩行や方向転換などの運動時における脚のスムーズで安定した動きのために大きな役割を担うことが知られていた。しかし、膝関節の骨、軟骨、靭帯等の摩耗や損傷などによって、膝関節は様々な症状を引き起こす。例えば、膝関節の軟骨の摩耗等によって引き起こされる変形性膝関節症は、歩行などの運動時において疼痛を生じることで知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、評価対象者の運動の状態を評価するために、対象者の前後いずれかの姿を撮像した画像データと左右いずれかの姿を撮影した画像データとを用いて解析し、身体動作に関するパラメータを算出するための運動評価装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、運動時の状態を推定するため、又は推定を補助するために、このような大掛かりな評価装置を用いることは、膝関節に何らかの症状を有する使用者にとって負担が大きいものとなっていた。そこで、本開示の様々な実施形態では、運動時の状態を推定、又は推定を補助する際に、使用者がより簡便に利用可能な処理装置、プログラム、方法及び処理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、「ヒトの脚の膝又はその周囲に取り付けられ、少なくとも前記ヒトの運動時の加速度を検出するための加速度センサから、有線又は無線で検出された加速度を受信するように構成された入出力インターフェイスと、所定の指示命令に加えて、受信された前記加速度と、前記膝に関連する関連情報とを記憶するように構成されたメモリと、所定の情報を出力するように構成された出力インターフェイスと、前記所定の指示命令を実行することによって、前記加速度に基づいて前記ヒトの膝の状態を推定し、推定された前記状態に基づいて前記メモリに記憶された前記関連情報を特定し、前記特定された関連情報を前記出力インターフェイスに出力するための処理をするように構成されたプロセッサと、を含む処理装置」が提供される。
【0007】
本開示の一態様によれば、「ヒトの脚の膝又はその周囲に取り付けられ、少なくとも前記ヒトの運動時の加速度を検出するための加速度センサから、有線又は無線で検出された加速度を受信するように構成された入出力インターフェイスと、所定の指示命令に加えて、受信された前記加速度と、前記膝に関連する関連情報とを記憶するように構成されたメモリと、所定の情報を出力するように構成された出力インターフェイスと、前記所定の指示命令を実行することによって、前記加速度に基づいて前記メモリに記憶された前記関連情報を特定し、前記特定された関連情報を前記出力インターフェイスに出力するための処理をするように構成されたプロセッサと、を含む処理装置」が提供される。
【0008】
本開示の一態様によれば、「ヒトの脚の膝又はその周囲に取り付けられ、少なくとも前記ヒトの運動時の加速度を検出するための加速度センサから、有線又は無線で検出された加速度を受信するように構成された入出力インターフェイスと、所定の指示命令に加えて、受信された前記加速度と、前記膝に関連する関連情報とを記憶するように構成されたメモリと、所定の情報を出力するように構成された出力インターフェイスと、前記所定の指示命令を実行することによって、前記加速度に基づいて前記ヒトの変形性膝関節症の程度を推定し、推定された前記程度に基づいて前記メモリに記憶された前記関連情報を特定し、前記特定された関連情報を前記出力インターフェイスに出力するための処理をするように構成されたプロセッサと、を含む処理装置」が提供される。
【0009】
本開示の一態様によれば、「ヒトの脚の膝又はその周囲に取り付けられ、少なくとも前記ヒトの運動時の加速度を検出するための加速度センサから、有線又は無線で検出された加速度を受信するように構成された入出力インターフェイスと、受信された前記加速度と、前記膝に関連する関連情報とを記憶するように構成されたメモリと、所定の情報を出力するように構成された出力インターフェイスとを含むコンピュータを、前記加速度に基づいて前記ヒトの膝の状態を推定し、推定された前記状態に基づいて前記メモリに記憶された前記関連情報を特定し、前記特定された関連情報を前記出力インターフェイスに出力するための処理をするように構成されたプロセッサ、として機能させるプログラム」が提供される。
【0010】
本開示の一態様によれば、「ヒトの脚の膝又はその周囲に取り付けられ、少なくとも前記ヒトの運動時の加速度を検出するための加速度センサから、有線又は無線で検出された加速度を受信するように構成された入出力インターフェイスと、受信された前記加速度と、前記膝に関連する関連情報とを記憶するように構成されたメモリと、所定の情報を出力するように構成された出力インターフェイスとを含むコンピュータを、前記加速度に基づいて前記ヒトの膝の状態を推定し、推定された前記状態に基づいて前記メモリに記憶された前記関連情報を特定し、前記特定された関連情報を前記出力インターフェイスに出力するための処理をするように構成されたプロセッサ、として機能させるプログラム」が提供される。
【0011】
本開示の一態様によれば、「ヒトの脚の膝又はその周囲に取り付けられ、少なくとも前記ヒトの運動時の加速度を検出するための加速度センサから、有線又は無線で検出された加速度を受信するように構成された入出力インターフェイスと、受信された前記加速度と、前記膝に関連する関連情報とを記憶するように構成されたメモリと、所定の情報を出力するように構成された出力インターフェイスとを含むコンピュータを、前記加速度に基づいて前記メモリに記憶された前記関連情報を特定し、前記特定された関連情報を前記出力インターフェイスに出力するための処理をするように構成されたプロセッサ、として機能させるプログラム」が提供される。
【0012】
本開示の一態様によれば、「ヒトの脚の膝又はその周囲に取り付けられ、少なくとも前記ヒトの運動時の加速度を検出するための加速度センサから、有線又は無線で検出された加速度を受信するように構成された入出力インターフェイスと、所定の指示命令に加えて、受信された前記加速度と、前記膝に関連する関連情報とを記憶するように構成されたメモリと、所定の情報を出力するように構成された出力インターフェイスと含むコンピュータにおいて、プロセッサが前記所定の指示命令を実行することによりなされる方法であって、前記加速度に基づいて前記ヒトの膝の状態を推定する段階と、推定された前記状態に基づいて前記メモリに記憶された前記関連情報を特定する段階と、前記特定された関連情報を前記出力インターフェイスに出力する段階と、を含む方法」が提供される。
【0013】
本開示の一態様によれば、「ヒトの脚の膝又はその周囲に取り付けられ、少なくとも前記ヒトの運動時の加速度を検出するための加速度センサから、有線又は無線で検出された加速度を受信するように構成された入出力インターフェイスと、所定の指示命令に加えて、受信された前記加速度と、前記膝に関連する関連情報とを記憶するように構成されたメモリと、所定の情報を出力するように構成された出力インターフェイスと含むコンピュータにおいて、プロセッサが前記所定の指示命令を実行することによりなされる方法であって、前記加速度に基づいて前記メモリに記憶された前記関連情報を特定する段階と、前記特定された関連情報を前記出力インターフェイスに出力する段階と、を含む方法」が提供される。
【0014】
本開示の一態様によれば、「ヒトの脚の膝又はその周囲に取り付けられ、少なくとも前記ヒトの運動時の加速度を検出するための加速度センサから、有線又は無線で検出された加速度を受信するように構成された入出力インターフェイスと、所定の指示命令に加えて、受信された前記加速度と、前記膝に関連する関連情報とを記憶するように構成されたメモリと、所定の情報を出力するように構成された出力インターフェイスと含むコンピュータにおいて、プロセッサが前記所定の指示命令を実行することによりなされる方法であって、前記加速度に基づいて前記ヒトの変形性膝関節症の程度を推定する段階と、推定された前記程度に基づいて前記メモリに記憶された前記関連情報を特定する段階と、前記特定された関連情報を前記出力インターフェイスに出力する段階と、を含む方法」が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、運動時の状態を推定、又は推定を補助する際に、使用者がより簡便に利用可能な処理装置、プログラム、方法及び処理システムを提供することができる。
【0016】
なお、上記効果は説明の便宜のための例示的なものであるにすぎず、限定的なものではない。上記効果に加えて、又は上記効果に代えて、本開示中に記載されたいかなる効果や当業者であれば明らかな効果を奏することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本開示に係る処理システム1の使用状態を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係る処理システム1の概略図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係る処理システム1の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係る検出装置200の外観を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態に係る補助具400の外観を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態に係る検出装置200で検出された出力値の一例を示す図である。
【
図7A】
図7Aは、本開示の実施形態に係る処理装置100に記憶される加速度テーブルの例を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、本開示の実施形態に係る処理装置100に記憶される使用者テーブルの例を示す図である。
【
図7C】
図7Cは、本開示の実施形態に係る処理装置100に記憶されるKAM変換テーブルの例を示す図である。
【
図7D】
図7Dは、本開示の実施形態に係る処理装置100に記憶される予後変換テーブルの例を示す図である。
【
図7E】
図7Eは、本開示の実施形態に係る処理装置100に記憶される機関テーブルの例を示す図である。
【
図7F】
図7Fは、本開示の実施形態に係る処理装置100に記憶される補助情報テーブルの例を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態に係る処理装置100において実行される処理フローを示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態に係る処理装置100において実行される処理フローを示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態に係る処理装置100において実行される処理フローを示す図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施形態に係る処理装置100において実行される処理フローを示す図である。
【
図12】
図12は、本開示の実施形態に係る検出装置200で検出された加速度の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、本開示の実施形態に係る処理装置100において実行される処理フローを示す図である。
【
図14】
図14は、本開示の実施形態に係る処理装置100に表示される画面の例を示す図である。
【
図15】
図15は、本開示の実施形態に係る処理装置100に表示される画面の例を示す図である。
【
図16】
図16は、本開示の実施形態に係る処理装置100に表示される画面の例を示す図である。
【
図17】
図17は、本開示の実施形態に係る学習済み推定モデルの生成に係る処理フローを示す図である。
【
図18】
図18は、本開示の実施形態に係る処理装置100において実行される処理フローを示す図である。
【
図19】
図19は、実際に測定された加速度とKAM値との相関関係を示す図である。
【
図20】
図20は、実際に測定された出力値とKAM値との相関関係を示す図である。
【
図21】
図21は、実際に測定された出力値とKAM値との相関関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面を参照して本開示の様々な実施形態を説明する。なお、図面における共通する構成要素には同一の参照符号が付されている。
【0019】
1.処理システム1の概要
本開示に係る処理システム1は、処理装置100及び検出装置200を含み、使用者に取り付けられた検出装置200によって検出された出力値を処理装置100において処理することで、使用者(ヒト)の膝の状態を推定又は推定を補助するために用いられる。特に、当該処理システム1は、使用者の膝又はその周囲に取り付けられ、使用者の運動時に検出装置200で検出された出力値を用いて、変形性膝関節症の程度や予後を推定又は推定を補助するために用いられる。したがって、以下においては、本開示に係る処理システム1を変形性膝関節症の程度や予後を推定又は推定を補助するために用いた場合について主に説明する。ただし、変形性膝関節症の程度や予後は状態の一例であって、検出装置の取り付け位置も一例であるにすぎない。
【0020】
図1は、本開示に係る処理システム1の使用状態を示す図である。具体的には、処理システム1のうち検出装置200を使用者10に取り付けて使用している状態を示す図である。
図1によると、処理システム1の検出装置200aは、使用者10の右脚12aの右膝11aの下部に、補助具400aを右脚12aの周囲に巻き付けるようにすることで、取り付けられる。同様に、処理システム1の検出装置200bは、使用者10の左脚12bの左膝11bの下部に補助具400bを左脚12bの周囲に巻き付けるようにすることで、取り付けられる。その後、検出装置200a及び検出装置200bが装着された使用者に対して所定の方向に歩行運動させるが、検出装置200a及び検出装置200bはこの歩行運動中に生じる出力値(例えば、加速度)を検出する。そして、検出装置200a及び検出装置200bは、検出された出力値を処理システム1の処理装置100(
図1においては図示していない。)に送信する。
【0021】
なお、本開示において、検出装置200が取り付けられる使用者は、患者、被検者、診断対象者など、あらゆるヒトを含みうる。本開示に係る検出装置200は、例えば医療機関で使用される場合に限らず、例えばスポーツジムや接骨院、整骨院、さらには使用者の職場や自宅など、その使用場所はいずれでもよく、ゆえに検出装置200が装着される者の属性も問わない。また、本開示において、操作者は、単に処理装置100を操作する者のことを意味しているにすぎない。したがって、上記の使用者と同一のものであってもよいし、例えば医療従事者やジムトレーナーなど、使用者と異なる者であってもよい。
【0022】
また、
図1の例では検出装置200a又は200bが膝下(前側)に装着される例を示しているが、膝上、膝、脚の他の部位のいずれに装着されてもよい。また、検出装置200a又は200bが脚12a又は12bの前面側に限らず、後面側又は側面側のいずれに装着されてもよい。さらに、
図1では検出装置200a及び200bの2個の検出装置200が用いられる例を示しているが、当然にその個数は片足側に1個でもよいし、脚12a及び/又は12bの複数の位置に2個以上装着されてもよい。
【0023】
また、検出装置200としては典型的には加速度センサが用いられ、運動時の加速度が検出される。しかし、加速度センサのみに限らず、ジャイロセンサ、地磁気センサ、伸縮センサなど、使用者10の運動、特に膝の曲げ伸ばしなどの動きが検出可能なセンサであればいずれでも用いることが可能であり、それに応じた出力値を運動状態の推定又はその補助に用いることが可能である。また、加速度センサやジャイロセンサなど、複数のセンサを組み合わせて利用することも可能である。
【0024】
また、処理システム1によって推定又は推定を補助される状態は、運動時の状態である。この運動は、典型的には使用者の歩行であるが、そのほかには走行、屈伸、跳躍など、様々な運動を含みうる。そして、状態の推定又は推定の補助のためだけにこれらの運動をする必要はなく、例えば日常的に検出装置200を使用者10に装着し日常生活中の運動における出力値を検出してもよい。
【0025】
また、補助具400は、検出装置200を使用者に取り付けるのを補助できるものであればいずれでもよい。典型的には、
図5に示すような柔軟性を有する帯状体が用いられるが、絆創膏、テーピングテープ、包帯、バンテージ、創傷被覆材、粘着テープ、サポーターなどであってもよい。さらに、補助具400は、検出装置200と分離可能な別体として構成される必要はなく、検出装置200に直接貼り付けられた両面テープや、腕時計状のバンドなども補助具400として利用することが可能である。
【0026】
2.処理システム1の構成
図2は、本開示の実施形態に係る処理システム1の概略図である。当該処理システム1は、使用者に取り付けられ使用者の運動時の出力値を検出する検出装置200と、当該検出装置200との間で通信可能に接続され検出された出力値を処理する処理装置100とを含む。そして、このような処理システム1は、無線通信のためのネットワークを介してサーバ装置300に接続される。サーバ装置300は、プロセッサ、メモリ、通信インターフェイス等を含み、処理装置100の処理に必要な指示命令、情報等を適宜送受信する。典型的には、処理装置100からの要求を受けて、サーバ装置300内に記憶された機関情報や補足情報などの関連情報を送信したり、これらの更新情報を受信することで随時更新して記憶する。なお、処理装置100及び検出装置200の詳細については後述する。
【0027】
図3は、本開示の実施形態に係る処理システム1の構成を示すブロック図である。
図3によれば、処理システム1は、処理装置100と、当該処理装置100に無線又は有線で通信可能に接続された検出装置200とを含む。処理装置100は、使用者による操作入力を受け付けて、検出装置200による運動時における出力値の検出を制御する。また、処理装置100は、検出装置200によって検出された出力値を処理して、使用者の運動時における状態を推定又はその補助をする。さらに、処理装置100は、検出装置200によって検出された出力値や当該出力値に基づいて算出された値、推定又はその補助をした結果を示す情報を使用者等が確認できるようにする。
【0028】
処理システム1は、プロセッサ111、メモリ112、操作入力インターフェイス113、ディスプレイ114及び通信インターフェイス115を含む処理装置100と、プロセッサ211、センサ212、メモリ213及び通信インターフェイス214を含む検出装置200とを含む。これらの各構成要素は、互いに、制御ライン及びデータラインを介して互いに電気的に接続される。なお、処理システム1は、
図3に示す構成要素のすべてを備える必要はなく、一部を省略して構成することも可能であるし、他の構成要素を加えることも可能である。例えば、処理システム1は、各構成要素を駆動するためのバッテリ、処理システム1で処理した結果を外部に送信したり、外部からの指示命令を受信するための通信インターフェイス等を含むことが可能である。
【0029】
なお、処理システム1は、処理装置100及び検出装置200をそれぞれ分離可能な別体として含む。しかし、これに限らず、例えばウエアラブル端末装置などのように、処理装置100と検出装置200とを一体として構成することも可能である。また、処理装置100は、単一の構成要素として構成される物に限らず、有線又は無線で接続された他の構成要素(例えば、クラウドサーバ装置など)にその処理の少なくとも一部を実行されるような場合、当該他の構成要素を含めて処理装置100と称することもある。
【0030】
まず、
図3に基づいて処理装置100について説明する。プロセッサ111は、メモリ112に記憶されたプログラムに基づいて処理システム1の他の構成要素の制御を行う制御部として機能する。プロセッサ111は、メモリ112に記憶されたプログラムに基づいて、検出装置200の各構成要素の駆動を制御するとともに、検出装置200から受信した出力値をメモリ112に記憶し、記憶された出力値を処理する。具体的には、プロセッサ111は、使用者による操作入力インターフェイス113への指示入力を受け付け検出装置200をオンにしセンサ212による検出を指示する処理、検出装置200から送信された出力値を通信インターフェイス115を介して受信しメモリ112に記憶する処理、メモリ112に記憶された出力値に基づいて使用者の運動時における膝関節の状態を推定又はその補助をする処理、検出装置200から受信した出力値のうち脚の着地後の出力値を出力する処理、検出装置200から受信した出力値に基づいて変形性膝関節症の程度又は予後を推定又はその補助をする処理、検出装置200から受信した出力値、膝関節の状態又は変形性膝関節症の程度に応じて関連情報を出力する処理、関連情報を所定のタイミングで更新する処理などを、メモリ112に記憶されたプログラムに基づいて実行する。プロセッサ111は、主に一又は複数のCPUにより構成されるが、適宜GPUなどを組み合わせてもよい。
【0031】
メモリ112は、RAM、ROM、不揮発性メモリ、HDD等から構成され、記憶部として機能する。メモリ112は、本実施形態に係る処理システム1の様々な制御のための指示命令をプログラムとして記憶する。具体的には、メモリ112は、使用者による操作入力インターフェイス113への指示入力を受け付け検出装置200をオンにしセンサ212による検出を指示する処理、検出装置200から送信された出力値を通信インターフェイス115を介して受信しメモリ112に記憶する処理、メモリ112に記憶された出力値に基づいて使用者の運動時における膝関節の状態を推定又はその補助をする処理、検出装置200から受信した出力値のうち脚の着地後の出力値を出力する処理、検出装置200から受信した出力値に基づいて変形性膝関節症の程度又は予後を推定又はその補助をする処理、検出装置200から受信した出力値、膝関節の状態又は変形性膝関節症の程度に応じて関連情報を出力する処理、関連情報を所定のタイミングで更新する処理などをプロセッサ111が実行するためのプログラムを記憶する。また、メモリ112は、当該プログラムのほかに、加速度テーブル、使用者テーブル、KAM変換テーブル、機関テーブル、補助情報テーブルなどを記憶する。また、KAM値の予測や膝関節の状態の推定等に機械学習を用いる場合には、メモリ112は、学習済みのKAM値推定モデルを記憶する。なお、メモリ112は、外部に通信可能に接続された記憶媒体を用いるか、このような記憶媒体を組み合わせて用いることも可能である。
【0032】
操作入力インターフェイス113は、処理装置100及び検出装置200に対する使用者の指示入力を受け付ける操作入力部として機能する。操作入力インターフェイス113の一例としては、検出装置200による検出の開始・終了を指示するための「開始ボタン」、各種選択を行うための「確定ボタン」、前画面に戻ったり入力した確定操作をキャンセルするための「戻る/キャンセルボタン」、ディスプレイ114に表示されたアイコン等の移動をするための十字キーボタン、処理装置100の電源のオンオフをするためのオン・オフキー等が挙げられる。なお、操作入力インターフェイス113には、ディスプレイ114に重畳して設けられ、ディスプレイ114の表示座標系に対応する入力座標系を有するタッチパネルを用いることも可能である。タッチパネルによる使用者の指示入力の検出方式は、静電容量式、抵抗膜式などいかなる方式であってもよい。
【0033】
ディスプレイ114は、検出装置200によって検出された出力値又は出力値に基づいて算出された値を表示したり、当該出力値に基づいて推定された結果等を表示するための表示部として機能する。液晶パネルによって構成されるが、液晶パネルに限らず、有機ELディスプレイやプラズマディスプレイ等から構成されていてもよい。
【0034】
通信インターフェイス115は、有線又は無線で接続された検出装置200に対して検出開始などに関連する各種コマンドや検出装置200で検出された出力値等を送受信したり、サーバ装置300と情報の送受信をするための通信部として機能する。通信インターフェイス115の一例としては、USB、SCSIなどの有線通信用コネクタや、LTEやBluetooth(登録商標)、wifi、赤外線などの無線通信用送受信デバイスや、プリント実装基板やフレキシブル実装基板用の各種接続端子や、それらの組み合わせなど、様々なものが挙げられる。
【0035】
このような処理装置100の一例としては、スマートフォンに代表される無線通信可能な携帯型の端末装置が挙げられる。しかし、それ以外にも、タブレット端末、ラップトップパソコン、デスクトップパソコン、フィーチャーフォン、携帯情報端末、PDAなど、本開示に係る処理を実行可能な装置であれば、いずれでも好適に適用することが可能である。
【0036】
次に、検出装置200について説明する。プロセッサ211は、メモリ213に記憶されたプログラムに基づいて検出装置200の他の構成要素を制御する制御部として機能する。プロセッサ211は、メモリ213に記憶されたプログラムに基づいて、具体的には、センサ212による出力値の検出を制御する処理、検出された出力値をメモリ213に記憶する処理、メモリ213に記憶された出力値を通信インターフェイス214を介して処理装置100に送信する処理などを実行する。プロセッサ111は、主に一又は複数のCPUにより構成されるが、適宜GPUなどを組み合わせてもよい。
【0037】
メモリ213は、RAM、ROM、不揮発性メモリ、HDD等から構成され、記憶部として機能する。メモリ213は、本実施形態に係る検出装置200の様々な制御のための指示命令をプログラムとして記憶する。具体的には、メモリ213は、センサ212による出力値の検出を制御する処理、検出された出力値をメモリ213に記憶する処理、メモリ213に記憶された出力値を通信インターフェイス214を介して処理装置100に送信する処理などをプロセッサ211が実行するためのプログラムを記憶する。また、メモリ213は、当該プログラムのほかに、センサ212によって検出された出力値を記憶する。なお、メモリ112は、外部に通信可能に接続された記憶媒体を用いるか、このような記憶媒体を組み合わせて用いることも可能である。
【0038】
センサ212は、プロセッサ211からの指示により駆動され、使用者の運動時における出力値を検出するための検出部として機能する。センサ212は、一例としては加速度センサが用いられる。加速度センサは、単位時間当たりの移動量(速度)の変化率を検出する。その種類としては、静電容量方式、ピエゾ方式、熱検知方式などがあるが、いずれの方式であっても好適に用いることが可能である。また、加速度センサは、少なくとも水平方向の加速度を検出するとともに、垂直方向の加速度及び/又は奥行き方向の加速度もさらに検出できるのが好ましい。また、センサ212には、加速度センサと組み合わせてジャイロセンサも利用することが可能である。この場合、ジャイロセンサによって水平方向の軸に対する角速度、垂直方向の軸に対する角速度、奥行き方向の軸に対する角速度の3つの出力値を得ることが可能である。すなわち、水平方向、垂直方向、奥行き方向の合計3つの加速度に加えて、上記3つの角速度(つまり、合計6軸の出力値)が利用可能となる。なお、この例以外にも、地磁気センサ、伸縮センサなど、使用者10の運動、特に膝の曲げ伸ばしやブレなどの動きが検出可能なセンサを適宜組み合わせて使用することが可能である。
【0039】
通信インターフェイス214は、有線又は無線で接続された処理装置100に対して検出開始などに関連する各種コマンドや検出装置200で検出された出力値等を送受信するための通信部として機能する。通信インターフェイス214の一例としては、USB、SCSIなどの有線通信用コネクタや、LTEやBluetooth(登録商標)、wifi、赤外線などの無線通信用送受信デバイスや、プリント実装基板やフレキシブル実装基板用の各種接続端子や、それらの組み合わせなど、様々なものが挙げられる。
【0040】
図4は、本開示の実施形態に係る検出装置200の外観を示す図である。具体的には、検出装置200のセンサ212として加速度センサが用いられる場合の外観の一例を示す。
図4によれば、検出装置200はその上面に検出装置200の電源のオン/オフを切り替える電源スイッチ216を有する。また、検出装置200は、通信インターフェイス214の一例として、USB端子215を有する。さらに、検出装置200は、異常等の駆動状態を通知するためにインジケータ217を含む。
【0041】
このような検出装置200は、一例としては補助具400を用いて使用者の膝又はその周囲(典型的には、膝下前面)に取り付けられる。
図5は、本開示の実施形態に係る補助具400の外観を示す図である。当該補助具400は、短手方向の長さとして検出装置200の短手方向の長さに対応する長さを有し、長手方向の長さとして使用者の脚周りを被覆するのに十分な長さを有する。このような補助具400は、典型的には、柔軟性を有するシート状の素材によって生成される。補助具400は、両端に一対の固定部材412及び413を有する。このような固定部材412及び413の一例としては、面ファスナーが挙げられるが、そのほかにボタン、粘着テープなど端部を互いに接合可能なものであればいずれでも用いることが可能である。
【0042】
補助具400は、長手方向の略中央に検出装置200を収容するための袋部材414を有する。当該袋部材414は、検出装置200の大きさに対応する大きさを有する。したがって、補助具400の袋部材414内に検出装置200を挿入し、検出装置200が挿入された補助具400を脚に取り付けることによって、検出装置200が補助具400の内部で運動によって位置ずれするのを防止し、運動による振動のみを適切に検出することが可能となる。つまり、袋部材414は検出装置200をより確実に位置決めするために用いられる。
【0043】
なお、このような補助具400は単なる一例である。上述のとおり、絆創膏、テーピングテープ、包帯、バンテージ、創傷被覆材、粘着テープ、サポーターなどであってもよい。さらに、補助具400は、検出装置200と分離可能な別体として構成される必要はなく、検出装置200に直接貼り付けられた両面テープや、腕時計状のバンドなども補助具400として利用することが可能である。
【0044】
図6は、本開示の実施形態に係る検出装置200で検出された出力値の一例を示す図である。具体的には、検出装置200のセンサ212として加速度センサを用い、使用者の膝下前面(例えば左脚のみ)に取り付け歩行運動時の垂直方向(
図6の縦軸方向)の加速度と水平方向(
図6の横軸方向)の加速度の両方を検出した例を示す。ここで、一般的に、歩行運動においては、使用者の片脚(例えば左脚)の踵部分が地面に着地したのち、伸展した状態の膝関節が屈曲を始め、膝を含む使用者の身体が進行方向へ移動を開始する。その後、踵部分で着した脚は、足裏の略全体が地面に着地した状態になる。次に、さらに歩行を進めると、踵部分から徐々に地面から遊離し始め、最後には地面を指先で蹴るように動くことで指先が地面から完全に足が遊離した状態となる。他方、反対側の脚(例えば右脚)では、左脚の踵部分が地面に着地するころに、指先が地面から遊離し始めるとともに、左脚の指先が地面から遊離し始めるころに、踵部分が地面に着地する。このように、歩行運動は、踵部分での着地から指先の遊離までの立脚期と、指先の遊離から踵部分の着地までの遊離期とを周期的に繰り返すことにより行われる。
【0045】
図6において、垂直方向(つまり縦軸方向)の加速度に着目すると、一方の脚の踵が着地することによって最初の加速度のピークが検出され、その後反対側の脚の踵が着地することによって次の加速度のピークが検出される。したがって、最初のピークの立ち上がりから次のピークの立ち下がりまでが立脚期S1とすることができる。そして、このような二つのピークが立脚期S2などの立脚期を迎えるたびに周期的に検出される。
【0046】
このとき、水平方向の加速度(つまり横軸)に着目すると、立脚期の開始後所定の期間内に最初のピークが検出される。例えば変形性膝関節症などの疾患の場合、立脚期が開始され膝関節に荷重がかかると水平方向にスラストが起きる。したがって、この立脚期開始後の水平方向の移動を検出することによって効果的に膝関節の状態や変形性膝関節症の状態を推定することが可能となる。
【0047】
ここで、変形性膝関節症の程度や予後を評価する指標としてKAM(外部膝関節内反モーメント)値がある。このKAM値は、ある値以上になると所定期間経過後に変形性膝関節症が進行するリスクが高く、別のある値以下になると進行するリスクは低いとされている(文献1:T Miyazakira,Dynamic load at baseline can predict radiographic disease progression in medial compartment knee osteoarthritis,Ann Rheum Dis.,2002,No.61,pp.617-622、文献2:Kim L Bennell et all,Higher dynamic medial knee load predicts greater cartilage loss over 12 months in medial knee osteoarthritis,Ann Rheum Dis.,2011,No.70,pp.1770-1774、文献3:Nicholas M. Brisson,Baseline Knee Adduction Moment Interacts With Body Mass Index to Predict Loss of Medial Tibial Cartilage Volume Over 2.5 Years in Knee Osteoarthritis,JOURNAL OF ORTHOPAEDIC RESEARCH,2017,NOVEMBER,pp.2476-2483)。ここで、KAM値と膝又は膝の周辺に取り付けられた加速度センサによって検出された水平方向の加速度との間には一定の相関関係がある。したがって、検出された水平方向の加速度からKAM値を算出することで、変形性膝関節症の程度又は予後を推測又はその補助をすることが可能となる。具体的には、垂直方向の加速度(つまり縦軸)によって特定された立脚期S1及びS2の開始後、所定の期間T1及びT2内に検出された水平方向(つまり横軸)の加速度のピーク幅H1及びH2の値を算出し、その値に基づいてKAM値を推定する。
【0048】
また、使用者が変形性膝関節症の症状を有する場合、当該症状を有さない使用者と比較して、水平方向の加速度のピークが検出されるまでの時間が短いこと、及び立脚期の開始後、所定の期間内に検出されるピークの数が多いことが見いだされた。したがって、立脚期S1及びS2の開始後、水平方向の加速度のピークが検出されるまでの時間D1及びD2、及び所定の期間T1及びT2内に検出されたピークの数も、ピーク幅H1及びH2に代えて、又は組み合わせて、変形性膝関節症の程度や予後を評価する指標として用いることが可能である。
【0049】
このように、
図6に示された検出装置200で検出された出力値(垂直方向の加速度及び水平方向の加速度)を用いることによって、KAM値を推定し、ヒトの運動時にける膝関節の状態、具体的には変形性膝関節症の程度やその予後を評価することが可能となる。なお、検出装置200で検出された出力値のうち、垂直方向の加速度は、ヒトの運動周期、すなわち立脚期を特定するために用いている。したがって、水平方向の加速度値と同期し、立脚期が特定できれば他の数値を用いることも可能であり、垂直方向の加速度値は必ずしも必要ではない。
【0050】
なお、本開示においては、「KAM値」としては以下の二つのいずれを利用することも可能である。横軸に時間、縦軸に各時間において算出されたKAM値がプロットされる二次元曲線(KAM値曲線)がある。このとき、一つ目のKAM値としては、立脚期において検出された最も高いピーク値(KAMピーク値)を利用することができる。このKAMピーク値は、立脚期において膝関節に対して最も大きな力が加わった瞬間の値を反映することが可能である。二つ目のKAM値としては、立脚期におけるKAM値曲線と横軸(直線)との間の面積値(KAM面積値)を利用することができる。このKAM面積値は、立脚期において膝関節に対して加わった荷重全体の値を反映することが可能である。実際、上記文献1においては、KAMピーク値が変形性膝関節症の程度や予後の評価に用いられ、上記文献2及び3ではKAM面積値が変形性膝関節症の程度や予後の評価に用いられている。
【0051】
3.処理装置100に記憶される情報
図7Aは、本開示の実施形態に係る処理装置100に記憶される加速度テーブルの例を示す図である。当該加速度テーブルは、使用者ごとに用意され、使用者を特定する使用者ID情報に対応付けてそれぞれ記憶される。
図7Aには、その一例として、使用者ID情報が「U1」である使用者の加速度テーブルが記載されている。
図7Aによると、加速度テーブルには、時間情報に対応づけて加速度情報が記憶される。「時間情報」は、検出装置200において各加速度が測定された時間を特定する情報である。当該情報は、検出装置200に含まれるタイマーを用いて具体的な日時の情報であってもよいし、測定開始からの経過時間などであってもよい。「加速度情報」は、対応する時間情報において検出された具体的な加速度の値を示す情報である。「時間情報」及び「加速度情報」はともに検出装置200においてそれぞれ検出されると、当該検出装置200から送信され、受信した処理装置100のメモリ112に記憶される。なお、
図7Aにおいては、加速度情報として各時間情報に対応付けて水平方向の加速度が典型的には記憶される。しかし、これに限らず、水平方向の加速度に加えて、垂直方向の加速度も各時間情報に対応付けて記憶されてもよい。
【0052】
図7Bは、本開示の実施形態に係る処理装置100に記憶される使用者テーブルの例を示す図である。
図7Bによると、使用者テーブルには、使用者ID情報に対応付けて、使用者名情報、ピーク数情報、出願時間情報、ピーク幅情報、KAM値情報、予後情報、レベル情報がそれぞれ記憶される。「使用者ID情報」は、検出装置200が取り付けられ、加速度の測定対象となる使用者が新たに登録されるごとに生成される情報であって、各使用者に固有の情報で、各使用者を特定するための情報である。「使用者名情報」は、例えば処理装置のディスプレイ114などにおいて表示される使用者の名称を示す情報である。「ピーク数情報」は、使用者ID情報ごとに記憶された加速度テーブルに記憶された加速度情報に基づいて特定される情報であって、
図6の所定の期間(例えば、T1及びT2)内で検出された水平方向の加速度のピークの数を示す情報である。「出願時間情報」は、使用者ID情報ごとに記憶された加速度テーブルに記憶された加速度情報に基づいて特定される情報であって、
図6の立脚期(例えば、S1及びS2)においての開始後、水平方向の加速度のピークが検出されるまでの時間(例えば、D1及びD2)を示す情報である。「ピーク幅情報」は、使用者ID情報ごとに記憶された加速度テーブルに記憶された加速度情報に基づいて特定される情報であって、
図6の立脚期(例えば、S1及びS2)の開始後、所定の期間(例えば、D1及びD2)内に検出された水平方向の加速度のピーク幅を示す情報出る。「KAM値情報」は、ピーク幅情報に基づいて推定された情報で、変形性膝関節症の予後を評価するために用いられる情報である。「予後情報」は、KAM値情報に基づいて特定された情報で、変形性膝関節症の予後の推定結果を示す情報である。「レベル情報」は、ピーク数情報、出願時間情報、ピーク幅情報、及びそれらの組み合わせの少なくともいずれかに基づいて推定された現在の膝の状態、具体的には変形性膝関節症の程度の推定結果を示す情報である。
【0053】
図7Cは、本開示の実施形態に係る処理装置100に記憶されるKAM変換テーブルの例を示す図である。
図7Cによると、KAM変換テーブルには、ピーク幅情報に対応付けてKAM値情報が記憶される。「ピーク幅情報」は、それぞれピーク幅の数値範囲を示す情報である。「KAM値情報」は、各ピーク幅の数値範囲に対応するKAM値の推定値を示す情報である。すなわち、
図7Bに記憶されたピーク幅情報から、
図7CのKAM変換テーブルにおいて当てはまる数値範囲を特定し、その数値範囲に対応するKAM値情報がKAM値の推定値として算出される。そして、推定されたKAM値は、
図7BのKAM値情報として記憶される。
【0054】
図7Dは、本開示の実施形態に係る処理装置100に記憶される予後変換テーブルの例を示す図である。
図7Dによると、予後変換テーブルには、
図7CのKAM変換テーブルを用いて推定されたKAM値情報に対応付けて予後情報が記憶される。「KAM値情報」は、上記のとおり、
図7CのKAM変換テーブルを用いて推定される各KAM値を示す情報である。「予後情報」は、各KAM値に対応する予後の評価結果を示す情報である。すなわち、
図7Bに記憶されたKAM値情報から、
図7Dの予後変換テーブルを参照するとこと、予後の評価結果が算出される。予後情報のうち「良好」は予後が良好であることを、「経過観察」は予後について変形性膝関節症の進行の程度を定期的に確認するための経過観察が必要なことを、「進行」は変形性膝関節症が進行することが予測されることをそれぞれ意味する。なお、本実施形態においては、3段階に予後を評価しているが、当然に「進行が速い」や「進行が遅い」など、さらに複数の段階に分けて評価することも可能である。予後変換テーブルを使って評価された予後情報は、
図7Bの予後情報として記憶される。
【0055】
図7Eは、本開示の実施形態に係る処理装置100に記憶される機関テーブルの例を示す図である。当該機関テーブルは、
図7Dに記憶された予後情報ごとに対応付けて用意されるテーブルである。つまり、
図7Dに記憶された予後情報に応じてそれぞれ異なる機関テーブルが記憶され、当該機関テーブルの中にそれぞれ異なる情報が記憶される。
図7Eの例は、そのうちの一例として、
図7Bの予後情報として「進行」が選択される場合に参照される機関テーブルを示す。当該補助情報テーブルには、診断や治療のうち少なくともいずれかを行うことが可能な医療機関や医師らに関する情報であったり、予後をサポートする機関に関する情報が記憶される。具体的には、
図7Eによると、機関ID情報に対応付けて、属性情報、位置情報、時間情報等が記憶されている。「機関ID情報」は、情報の提供元となる新たな機関が登録されるたびに生成される情報であって、各機関に固有の情報で、各機関を特定するための情報である。「属性情報」は、各機関ID情報により特定される機関の種別を示す情報である。例えば「病院」は当該機関が病院であることを意味し、「整骨院」は当該機関が整骨院であることを意味し、「ジム」は当該機関がスポーツジムであることを意味する。「位置情報」は、各機関ID情報により特定される機関の位置を示す情報である。当該位置情報の一例としては、所定位置を原点とする緯度/経度などの座標情報であったり、住所情報などが挙げられる。時間情報は、各機関ID情報により特定される機関の開店(開院)時間や定休日(休診日)などを示す情報である。これらの情報は、定期的又は新たな情報の入力が行われたタイミングで随時更新される。なお、機関テーブルに記憶される情報の例として属性情報等を挙げたが、当然他の情報も併せて記憶することが可能である。例えば、主治医や主任トレーナー名情報、診療科目情報、治療実績情報、評価情報、機関の外観や内観写真情報など、種々のものを記憶することが可能である。また、特に図示はしていないが、予後情報と同様に、レベル情報ごとに対応付けて機関テーブルをさらに記憶することも可能である。つまり、
図7Dに記憶されたレベル情報に応じてそれぞれ異なる機関テーブルを記憶し、当該機関テーブルの中にそれぞれ異なる情報を記憶することも可能である。
【0056】
図7Fは、本開示の実施形態に係る処理装置100に記憶される補助情報テーブルの例を示す図である。当該補助情報テーブルは、
図7Dに記憶された予後情報ごとに対応付けて用意されるテーブルである。つまり、
図7Dに記憶されたレベル情報に応じてそれぞれ異なる補助情報テーブルが記憶され、当該補助情報テーブルの中にそれぞれ異なる情報が記憶される。
図7Fの例は、そのうちの一例として、
図7Bの予後情報として「進行」が選択される場合に参照される補助情報テーブルを示す。当該補助情報テーブルには、診断や治療のうち少なくともいずれかを行う医師らを補助するための情報であったり、使用者(患者ら)による物品購入を補助する情報が記憶される。具体的には、
図7Fによると、補助情報ID情報に対応付けて、属性情報、内容情報等が記憶されている。「補助情報ID情報」は、進行する変形性膝関節症の予後に関連する情報が登録されるたびに生成される情報であって、各情報に固有の情報で、各情報を特定するための情報である。「属性情報」は、各補助情報ID情報により特定される情報の種別を示す情報である。例えば「治療方法」は当該情報が治療方法に関連した情報であることを意味し、「物品購入」は当該情報が変形性膝関節症の進行程度を抑制する目的で有益な器具等の物品を購入するために用いられる情報であることを意味し、「論文」は変形性膝関節症の予後に関連する論文であることを意味する。「内容情報」は、各補助情報ID情報により特定される情報の具体的な内容を示す情報である。例えば、治療方法の場合には治療方法が書かれたWEBページのリンクやその具体的な治療方法等が、物品購入の場合には物品の詳細情報やその購入先アドレス等が、論文の場合にはその論文の具体的な内容や著者名、所属機関の情報などが記憶される。これらの情報は、定期的又は新たな情報の入力が行われたタイミングで随時更新される。なお、補助情報テーブルに記憶される情報の例として属性情報等を挙げたが、当然他の情報も併せて記憶することが可能である。例えば、他の使用者の体験談、引用・被引用情報など、種々のものを記憶することが可能である。また、特に図示はしていないが、予後情報と同様に、レベル情報ごとに対応付けて補助情報テーブルをさらに記憶することも可能である。つまり、
図7Dに記憶されたレベル情報に応じてそれぞれ異なる補助情報テーブルを記憶し、当該補助情報テーブルの中にそれぞれ異なる情報を記憶することも可能である。
【0057】
4.処理装置100において実行される処理フロー
[モード選択に係る処理]
図8は、本開示の実施形態に係る処理装置100において実行される処理フローを示す図である。具体的には、
図8は、本開示の実施形態に係るプログラムが処理装置100において起動されたのちに、所定周期でプロセッサ111によって実行される処理フローを示す。
【0058】
まず、プロセッサ111は、当該プログラムの起動の指示入力が操作入力インターフェイス113で受け付けられたことを示す割込み信号を受信すると、ディスプレイ114にトップ画面を表示する(S111)。当該トップ画面は特に図示しないが、検出装置200において使用者の出力値を測定するための測定モードと、その測定結果を表示する結果表示モードに遷移するためのアイコンが含まれる。その後、プロセッサ111は、操作入力インターフェイス113から操作者によるアイコンに対する操作入力を受け付けたことを示す割込み信号に基づいて、モードの選択が行われたか否かを判断する(S112)。モードの選択ではないと判断された場合には、そのままトップ画面を表示した状態を維持して、当該処理フローを終了する。
【0059】
他方、モードの選択が行われたと判断された場合には、プロセッサ111は、操作者による操作入力がなされた座標に基づいて測定モードを選択するものであったか否かを判断する(S113)。そして、測定モードであると判断された場合には、プロセッサ111はディスプレイ114に測定画面を表示するよう制御して当該処理フローを終了する。他方、測定モードではなかったと判断された場合には、プロセッサ111はディスプレイ114に結果画面を表示するよう制御して当該処理フローを終了する。
【0060】
なお、測定画面については、特に図示はしないが、測定画面には、特に図示はしないが、使用者の使用者名情報や使用者ID情報などを入力又は選択する領域や、測定の開始をするための開始ボタンアイコンなどが表示される。
【0061】
[測定開始に係る処理]
図9は、本開示の実施形態に係る処理装置100において実行される処理フローを示す図である。具体的には、
図9は、
図8において測定モードが選択され測定画面が表示されたのちに所定周期でプロセッサ111によって実行される処理フローを示す。なお、
図9において特に図示はしていないが、
図9に示す処理の前に、測定画面において測定者又は使用者によって使用者名情報や使用者ID情報などの入力又は選択がなされ、プロセッサ111は入力又は選択されたこれらの情報をメモリ112に記憶する。また、あらかじめ使用者の片方の脚の膝下部に、検出装置200が補助具400によって装着され、使用者による運動(例えば、歩行)開始の準備が全て整った状態となっている。また、
図9以降の処理フローの説明においては、説明の便宜のため、いずれか片方の脚の膝にのみ検出装置200が装着された場合について説明する。
【0062】
図9によると、プロセッサ111は、操作入力インターフェイス113によって操作者による測定ボタンアイコンに対する操作入力が受け付けられたか否かを判断する(S211)。そして、開始ボタンアイコンに対する操作入力が受け付けられたと判断された場合には、プロセッサ111は通信インターフェイス115を介して検出装置200に測定の開始を指示するための測定開始指示信号を送信するよう制御する(S212)。その後、プロセッサ111は、ディスプレイ114に測定待機画面を表示するよう制御する(S213)。なお、測定待機画面には、特に図示はしないが、測定の終了をするための終了ボタンアイコンなどが表示される。
【0063】
ここで、検出装置200側の処理について説明する。検出装置200のプロセッサ211は、使用者に装着されたのち、通信インターフェイス214を介して測定開始信号を受信すると、センサ212を駆動して所定周期(
図7A)で加速度の検出を開始する。そして、プロセッサ211は、検出された加速度を出力値として、その検出された時間に対応付けて随時メモリ213に記憶する。そして、プロセッサ211は、この処理を処理装置100から測定終了指示信号を受信するまで実行する。
【0064】
なお、ディスプレイ114に表示された開始ボタンの押下を検出することによって測定開始指示信号を送信する場合について説明した。しかし、これに限らず、プロセッサ111が操作入力インターフェイス113において物理キーとして設けられた開始ボタンの押下を検出することによって送信するようにしてもよい。また、例えば検出装置200の電源スイッチ216に対する押下操作が受け付けられると、検出装置200が測定開始信号を処理装置100に送信し、その後プロセッサ111が測定待機画面を表示するように制御してもよい。
【0065】
以上によって、測定開始に係る処理フローを終了する。
【0066】
[測定待機時に行われる処理]
図10は、本開示の実施形態に係る処理装置100において実行される処理フローを示す図である。具体的には、
図10は、
図9において測定待機画面が表示されたのちに所定周期でプロセッサ111によって実行される処理フローを示す。
【0067】
図10によると、プロセッサ111は、操作入力インターフェイス113によって操作者による終了ボタンアイコンに対する操作入力が受け付けられ、測定が終了したか否かを判断する(S311)。そして、測定が終了したと判断された場合には、プロセッサ111は通信インターフェイス115を介して検出装置200に測定の終了を指示するための測定終了指示信号を送信するよう制御する(S312)。
【0068】
ここで、処理装置100から測定終了指示信号を通信インターフェイス214を介して受信した検出装置200において、プロセッサ211はセンサ212に対して加速度の検出を終了するよう制御する。そして、プロセッサ211は、終了までの間にメモリ213に記憶された出力値と時間情報を、通信インターフェイス214を介して処理装置100に送信するよう制御する。
【0069】
処理装置100においては、プロセッサ111が通信インターフェイス115を介して検出装置200から出力値と時間情報を受信したか否かを判断する(S313)。そして、受信したと判断された場合には、プロセッサ111はメモリ112の加速度テーブルに測定画面で入力又は選択された使用者ID情報に関連付けて受信した出力値(加速度情報)を時間情報と対応付けて記憶する(S314)。次に、プロセッサ111は、メモリ112に記憶された出力値に基づいて、様々な推定処理を行う(S315)。この処理の詳細は後述する。そして、プロセッサ111は、推定処理の過程で得られた各種情報を、使用者ID情報に対応付けてメモリ112の使用者テーブルに記憶する(S316)。
【0070】
なお、ディスプレイ114に表示された終了ボタンの押下を検出することによって測定終了指示信号を送信する場合について説明した。しかし、これに限らず、プロセッサ111が操作入力インターフェイス113において物理キーとして設けられた終了ボタンの押下を検出することによって送信するようにしてもよい。また、例えば検出装置200の電源スイッチ216に対する押下操作が受け付けられると、検出装置200が測定を終了し、出力値等を処理装置100に送信するようにしてもよい。
【0071】
以上によって、測定待機時に行われる処理フローを終了する。
【0072】
[推定処理]
図11は、本開示の実施形態に係る処理装置100において実行される処理フローを示す図である。具体的には、
図11は、
図10のS315行われる推定処理の具体的な処理フローを示す。
【0073】
図11によると、プロセッサ111は、まず、メモリ112に記憶された加速度テーブルから、測定画面で入力又は選択された使用者ID情報に関連付けられた加速度情報を読み出す(S411)。
図6は読み出された加速度情報に基づいて生成された曲線の例である。したがって、以下の説明においては、
図6も参照しながら説明する。
【0074】
次に、プロセッサ111は、読み出された加速度情報に基づいて、立脚期をそれぞれ特定する(S412)。具体的には、読み出された加速度のうち、垂直方向(すなわち、
図6の縦軸方向)の加速度から最初の加速度のピークが検出される。この最初のピークは、検出装置200が装着された方の脚が地面に着地することによって検出されるピークである。なお、当該ピークは、あらかじめ決められた閾値を超える加速度が検出された場合にプロセッサ111が最初のピークであると判断してもよいし、
図6に示す加速度曲線をディスプレイ114に表示して操作者の操作入力を受け付けることで特定してもよい。以下、ピークの検出に係る処理は同様に行う。
【0075】
次に、最初のピークが検出されたのちノイズ成分の検出のみの時間が続き、その後2回目のピークが検出される。この2回目のピークは、検出装置200が装着された脚とは反対側の脚が地面に着地することによって検出されるピークである。したがって、プロセッサ111は、この最初のピークの立ち上がりから2回目のピークの立ち下がりが検出されるまでの期間を立脚期S1であると判断する。なお、以下、3回目のピークの立ち上がりと4回目のピークの立ち下がりの間を立脚期S2として特定するが、さらに5回目以降のピークを検出して、さらに立脚期を特定してもよい。
【0076】
次に、プロセッサ111は、特定された立脚期S1及びS2に対して、それぞれ第1閾値(時間)を設定する(S413)。具体的には、立脚期S1として特定された期間に対して、その開始から所定の期間T1が経過するまでの時間を第1閾値と設定する。この所定の期間T1は、好ましくは立脚期S1の期間の40%に相当する期間、より好ましくは25%に相当する期間が設定される。また、同様に、立脚期S2の期間においても第1閾値が設定される。なお、第1閾値の設定において立脚期S1及びS2に対する割合が用いられたが、これに限らず予め決められた固定値(例えば、立脚期開始後の50m秒)を第1閾値として用いてもよい。
【0077】
次に、プロセッサ111は、設定された第1閾値(時間)までの期間T1において、水平方向(すなわち、
図6の横軸方向)の加速度のピークを検出し、そのピーク幅を算出し、算出されたピーク幅を使用者テーブルのピーク幅情報に使用者ID情報に対応付けて記憶する(S414)。具体的には、立脚期S1の開始から第1閾値を経過するまでに、水平方向の加速度のピークが検出される。そして、検出されたピークの最大値と最小値との差がピーク幅H1して算出される。また、同様に立脚期S2における水平方向の加速度のピーク幅H2も算出される。そして、算出されたピーク幅H1及びH2の平均値が、S414においてピーク値情報として利用される。なお、本実施形態では平均値を利用したが、いずれか大きい方の値又は小さい方の値を利用してもよいし、両方の値を利用することも可能である。
【0078】
次に、プロセッサ111は、メモリ112に記憶されたKAM変換テーブル(
図7C)を参照し、S414で算出されたピーク幅の値からKAM値を推定し、推定されたKAM値を使用者テーブルのKAM値情報として使用者ID情報に対応付けて記憶する(S415)。例えば、S414で算出されたピーク幅がw6以上であり、w7未満であった場合には、KAM値としてm7が推定される。
【0079】
そして、プロセッサ111は、メモリ112に記憶された予後変換テーブル(
図7D)を参照し、S415で記憶されたKAM値から変形性膝関節症の予後を推定し、推定された予後を使用者テーブルの予後情報に使用者ID情報に対応付けて記憶する(S416)。例えば、S415で記憶されたKAM値がm7であった場合には、予後として「進行」が推定される。
【0080】
次に、プロセッサ111は、立脚期S1及びS2の開始から第1閾値までの間に、水平方向の加速度において検出されるピークの数を算出し、算出されたピークの数を使用者テーブルのピーク数情報に使用者ID情報に対応付けて記憶する(S417)。具体的には、
図6の例では、立脚期S1において第1閾値が経過するまでの期間T1においてあらかじめ決められた閾値(出力値)を超えるピークが2つあるため、ピークの数が「2」と算出される。同様に、立脚期S2において第1閾値が経過するまでの期間T2においてあらかじめ決められた閾値(出力値)を超えるピークが2つあるため、ピークの数が「2」と算出される。そして、算出されたピークの数の平均値が、S417においてピーク数情報として利用される。なお、本実施形態では平均値を利用したが、いずれか大きい方の数又は小さい方の数を利用してもよいし、両方の数を利用することも可能である。
【0081】
次に、プロセッサ111は、立脚期S1及びS2において、水平方向の加速度で最初に検出されたピークの出現時間を算出し、算出された出現時間を使用者テーブルの出現時間情報に使用者ID情報と対応付けて記憶する(S418)。具体的には、
図6の例では、立脚期S1において最初のピークが検出された時間から立脚期S1の開始時間を減算することで期間D1が、立脚期S2において最初のピークが検出された時間から立脚期S2の開始時間を減算することで期間D2が、それぞれ出現時間として算出される。
【0082】
ここで、S414において算出されたピーク幅は、膝関節の水平方向のずれの大きさに関連する数値である。また、変形性膝関節症が進行していればしているほど、膝関節の水平方向のぐらつきも増えるところ、S417で算出されたピーク数は水平方向のぐらつきの程度に関連する数値である。さらに、変形性膝関節症などの膝の症状においては、膝関節の軟骨が薄くなるほどその症状が進行し、軟骨が薄いほど膝関節に振動が伝わる速さが速くなるところ、S418で算出されたピーク出現時間はこの軟骨の厚さに関連する情報である。したがって、水平方向の加速度においてS414で算出されたピーク幅、S417で算出されたピーク数、及びS418で算出されたピーク出現時間の各情報は、現在の膝の状態、一例としては変形性膝関節症のレベルを推定するのに有益な情報である。したがって、プロセッサ111は、メモリに記憶されたこれらの情報を用いて現在の膝の状態のレベルを推定し、その推定された値を使用者テーブルに使用者ID情報に対応付けて記憶する(S419)。その推定の一例としては、得られた各情報をあらかじめ設定された分類テーブルに基づいてスコア化する。その後、得られた各スコアに所定の重み付け係数をかけ合わせ、得られた重みづけ後の数値を合算した合算値を算出する。そして、その合算値に基づいて膝の状態のレベルを推定する。なお、この例は上記のとおり一例であって、その他の方法を用いることも可能である。例えば、ピーク幅、ピーク数及びピーク出現時間のそれぞれについて、あらかじめ所定の閾値を設定し、いずれか一つの数値でも閾値を越した場合には、あるいは二つの数値が閾値を越した場合、あるいは3つ全ての数値が閾値を越した場合には、現在の膝の状態を変形性膝関節症であると推定してもよい。
【0083】
ここで、
図12は、本開示の実施形態に係る検出装置200で検出された加速度の一例を示す図である。
図12によれば、横軸方向、すなわち水平方向の加速度のピークが、立脚期S1の期間T1において複数検出されている。そのうちの一つに、立脚期の開始直後に検出されたピークPaがある。しかし、本実施形態においては、ピークPaはノイズとして判断し、S414、S417及びS418の各処理では「無視」される。立脚期の最初において検出装置200が装着された脚が地面に着地したときに、着地による脚全体の水平方向の振動を検出することがある。このような振動は、変形性膝関節症による膝関節そのものの水平方向のずれに起因するものではなく、ノイズとして特定される必要があるためである。
【0084】
具体的には、プロセッサ111は、S412において立脚期S1が特定されると、S414、S417及びS418において検出された各ピークについて、立脚期S1の開始から第2閾値(時間)が経過するまでの期間T2に検出されたピークか否かを判断する。そして、その間に検出されたピークであった場合には、プロセッサ111は、そのピークはノイズと判断し、各処理において検出の対象とはしない。なお、ノイズの特定に係る処理は、例えば立脚期S1の期間の10%に相当する期間を閾値として設定してもよいし、あらかじめ決められた固定値(例えば、10m秒)を閾値として設定してもよい。さらに、縦軸方向、すなわち垂直方向の加速度において、立脚期S1の開始後すぐに検出されるピークPbの時間を閾値として設定し、この時間よりも前に検出される横軸方向、すなわち水平方向の加速度のピークはノイズであると特定するようにしてもよい。
【0085】
[結果画面の表示に係る処理]
図13は、本開示の実施形態に係る処理装置100において実行される処理フローを示す図である。具体的には
図13は、
図8のS113において測定モードではないと判断された場合、又は
図10のS316において推定処理された各種情報がメモリ112に記憶された後に表示される結果画面の出力のためにプロセッサ111によって実行される処理フローを示す。
【0086】
図13によると、まずプロセッサ111は、操作入力インターフェイス113によって操作者による操作入力を受け付けて、情報を表示させたい使用者に対応付けられた使用者ID情報の選択を行う(S511)。そして、プロセッサ111は、使用者テーブルを参照して、選択された使用者ID情報に対応付けられた予後情報及びレベル情報を読み出す。プロセッサ111は、読み出された予後情報及びレベル情報に基づいて、それぞれに対応する補助情報テーブルを参照する。このとき、プロセッサ111は、参照された補助情報テーブルに記憶された情報の全てを補助情報として特定してもよいし、一部の情報のみをフィルタリングして特定してもよい(S512)。例えば、プロセッサ111は、あらかじめ使用者テーブルに使用者ID情報に対応付けて記憶された使用者の性別、身長、体重、年齢などの様々な情報に基づいて、参照された補助情報テーブルに記憶された情報を絞り込むことが可能である。
【0087】
また、同様に、プロセッサ111は、読み出された予後情報及びレベル情報に基づいて、それぞれに対応する機関テーブルを参照する。このとき、プロセッサ111は、参照された機関テーブルに記憶された情報の全てを機関情報として特定してもよいし、一部の情報のみをフィルタリングして特定してもよい(S513)。例えば、プロセッサ111は、あらかじめ使用者テーブルに使用者ID情報に対応付けて記憶された使用者の住所情報と、機関テーブルに記憶された位置情報とに基づいて、当該住所からあらかじめ決められた距離以内に存在する機関ID情報に対応する機関か、当該住所から近い順に10個の機関に絞り込むことが可能である。
【0088】
次に、プロセッサ111は、使用者テーブルからS511で選択された使用者ID情報に対応付けられたピーク幅情報、ピーク数情報、出現時間情報、KAM値情報、予後情報及びレベル情報に加えて、当該使用者ID情報に関連付けられた加速度テーブルの情報をそれぞれ読み出し、ディスプレイ114に結果画面の出力をするよう制御する(S515)。
【0089】
5.結果画面の例
図14、
図15及び
図16は、本開示の実施形態に係る処理装置100に表示される画面の例を示す図である。具体的には、
図14は、
図13のS515において結果画面の出力がされた時に最初に表示される結果画面の例を示す図である。また、
図15及び
図16は、
図14の結果画面において各情報の表示指示が受け付けられることによって遷移した結果画面の例を示す図である。
【0090】
図14によると、
図13のS511で選択された使用者ID情報に対応する使用者情報が使用者情報表示領域21に表示される。また、その下部の出力値表示領域22には、検出装置200において検出された出力値(加速度)が、X軸方向に時間を、Y軸方向に出力値を有する曲線として表示される。また、その下部には、出現時間情報表示領域23、ピーク幅情報表示領域24、予後情報表示領域25、レベル情報表示領域26、KAM値情報表示領域39及びピーク数情報表示領域40があり、それぞれ
図13のS515で読み出された情報が対応する領域に表示される。つまり、出力値表示領域22や各表示領域23~26、39及び40に表示された情報を医師らが閲覧することによって、医師らによる膝の状態(一例としては、変形性膝関節症)の現在の程度や、変形性膝関節症の予後の推定を補助することが可能となる。また、これらの領域に隣接して、補助情報表示アイコン27及び機関情報表示アイコン28があり、各アイコンに対する操作者の操作入力を受け付けることで各情報が表示された結果画面に移行する。さらに、これらの領域に隣接して、使用者テーブルに記憶された順に、前後の使用者ID情報に対応付けられた使用者の結果画面に移行するための「次の使用者アイコン29」及び「前の使用者アイコン30」がそれぞれ表示される。
【0091】
図15には、
図14の補助情報表示アイコン27に対する操作者の操作入力が操作入力インターフェイス113によって受け付けられると、遷移する結果画面の一例が示されている。
図15によると、
図14の結果画面と同様に
図13のS511で選択された使用者ID情報に対応する使用者情報が使用者情報表示領域31に表示される。また、その下部には、補助情報表示領域32があり、当該領域には
図13のS512で特定された補助情報が表示されている。
図15の例では、補助情報テーブルに記憶された情報から、操作者である医師らによる診断や治療に役立つ情報である保存療法及び手術療法などの治療方法に関する情報や、補助器具の購入先情報などが表示される。また、補助情報表示領域32に隣接して「戻るアイコン33」が表示されており、当該アイコンへの操作入力を受け付けることによって
図14に示す結果画面へ戻る。
【0092】
図16には、
図14の機関情報表示アイコン28に対する操作者の操作入力が操作入力インターフェイス113によって受け付けられると、遷移する結果画面の一例が示されている。
図16によると、
図14の結果画面と同様に
図13のS511で選択された使用者ID情報に対応する使用者情報が使用者情報表示領域34に表示される。また、その下部には、機関情報表示領域35があり、当該領域には
図13のS513で特定された機関情報が表示されている。
図15の例では機関テーブルに記憶された情報の中から、使用者の住所情報に基づいて所定距離以内にある各機関がアイコンと共に表示されている。具体的には、現在地アイコン36が使用者の住所情報により特定される位置を示し、当該位置を中心とした地図上に、特定された各機関の位置情報に基づいて各機関のアイコンが表示される。そして、これらのアイコンのうちのいずれかに対して操作者による操作入力を受け付けると、その詳細情報表示領域37がポップアップし、重畳表示される。具体的には、操作入力を受け付けたアイコンに対応する機関の機関ID情報に基づいて機関テーブルを参照し、機関テーブルに記憶された様々な情報(機関名、住所、電話番号、診療時間情報(時間情報)、専門医の有無、予約アドレス)が表示される。また、機関情報表示領域35に隣接して「戻るアイコン33」が表示されており、当該アイコンへの操作入力を受け付けることによって
図14に示す結果画面へ戻る。
【0093】
6.学習済み推定モデルを使用する場合の例
図11の推定処理においては、
図7CのKAM変換テーブルを用いる場合について説明した。しかし、これに組み合わせるか変えて、学習済みのKAM値推定モデルを用いることも可能である。
図17は、本開示の実施形態に係る学習済み推定モデルの生成に係る処理フローを示す図である。具体的には、
図17は、
図11のS416の変形性膝関節症の予後の推定のために用いられるKAM値を推定するための学習済み推定モデルを生成するための処理である。当該処理フローは、処理装置100のプロセッサ111によって実行されてもよいし、他の処理装置のプロセッサによって実行されてもよい。
【0094】
図17によると、検出装置200からの出力値を取得するステップが実行される(S611)。出力値には、変形性膝関節症を有する使用者の膝下に装着された検出装置200で検出された出力値が用いられる。なお、出力値として、所定期間において所定周期で検出された水平方向の加速度を用いることも可能であるし、他の出力値を用いることも可能である。他の出力値の例としては、水平方向の加速度に加えて、垂直方向の加速度、奥行き方向の加速度、水平方向の軸に対する角速度、垂直方向の軸に対する角速度及び奥行き方向の軸に対する角速度をさらに用いて、合計6軸の出力値が挙げられる。そして、このような出力値を深層学習のために所定数取得する。
【0095】
次に、S611において取得された出力値と、あらかじめ正解ラベルとして他の方法によって測定されたKAM値を、学習データとして、推定モデル生成のための畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolution Neural Network)に入力し、KAM値を出力するように当該畳み込みニューラルネットワークを含む学習装置において学習が実行される(S612)。そして、S612の学習を繰り返すことによって、最終的にKAM値を推定するための学習済み推定モデルが生成される(S613)。なお、正解ラベルとしてのKAM値は、一例としてはモーションキャプチャを用いた方法によって測定される。
【0096】
ここで、得られた学習済み推定モデルに対して、検出装置200において出力値を検出する際に、他の方法を用いてKAM値を別途算出しておき、この出力値とKAM値とを用いて検証がなされてもよい(S614)。そして、その結果のフィードバックを受けて、畳み込みニューラルネットワークに用いられるパラメータ値を調整することが可能である。
【0097】
なお、本開示においては、上記のとおり出力や検証に用いるKAM値としては、KAMピーク値及びKAM面積値のいずれを用いることが可能である。また、上記においては畳み込みニューラルネットワークを用いた学習方法を例示したが、これに限らず他の深層学習方法を用いてもよいし、他の機械学習方法を用いることも可能である。例えば、あらかじめ検出装置200からの出力値とKAM値との対応関係が確認された出力値とKAM値との組み合わせを複数用意し、これらを教師データとして用いることで学習済み推定モデルを生成することも可能である。
【0098】
図18は、本開示の実施形態に係る処理装置100において実行される処理フローを示す図である。具体的には、
図18は、
図10のS315行われる推定処理のうち、KAM値を推定するまでの具体的な処理フローを示す。
【0099】
図18によると、プロセッサ111は、まず、メモリ112に記憶された加速度テーブルから、測定画面で入力又は選択された使用者ID情報に関連付けられた出力値を読み出す(S711)。なお、
図7Aでは加速度情報のみが記憶されているが、上記のとおり、角速度情報を含む6軸の出力値が記憶されていてもよい。したがって、S711で読み出される出力値としても、加速度情報のみならず、角速度情報を含め6軸の出力値を読み出すことが可能である。次に、プロセッサ111は、読み出された出力値を
図17で生成されたKAM値の推定のための学習済み推定モデルに適用する(S712)。そして、プロセッサ111は、推定モデルを用いたKAM値の推定を行う(S713)。プロセッサ111は、推定されたKAM値を使用者テーブルのKAM値情報として使用者ID情報に対応付けて記憶する。なお、KAM値の推定を行い記憶したのちの処理については、
図11のS416と同様の処理が行われる。
【0100】
このように、本実施形態においては、運動時の状態を推定、又は推定を補助する際に、使用者がより簡便に利用可能な処理装置、プログラム、方法及び処理システムを提供することができる。具体的には、検出装置200において検出された出力値を用いることで、膝の現在の状態、例えば変形性膝関節症の状態を推定又はその補助をしたり、変形性膝関節症の予後の推定又はその補助をしたりするのを、より簡便に実施することができる。
【0101】
7.他の実施形態
上記の実施形態においては、検出装置200として加速度センサを用いて、運動時の加速度を検出する場合について説明した。しかし、加速度センサに代えて、又は加速度センサと組み合わせて、ジャイロセンサ、地磁気センサ、伸縮センサなど、使用者10の運動、特に膝の曲げ伸ばしなどの動きが検出可能なセンサであればいずれでも用いることが可能である。
【0102】
8.出力値とKAM値との相関を示す実施例(図11のKAM値推定方法の例)
図19は、実際に測定された立脚期初期の加速度ピーク幅とKAM値との相関関係を示す図である。具体的には、
図19は、変形性膝関節症を有する22名を被検者として、両脚の膝下部に取り付けた検出装置200によって実際に測定された合計44個の出力値のうち、水平方向の加速度に基づいて算出された立脚期初期のピーク幅と、モーションキャプチャによって測定されたKAM値(KAMピーク値)との関係を示す図である。KAM値は、Qualisys社製のモーションキャプチャシステム「Oqus」(200フレーム/秒の8個のカメラを使用)とBertec社製の床反力計「AM6110」(2000Hz)を用いて、被検者の標準的な46個の骨性指標上に配置された反射マーカーの動きを検出することによって測定された。そして得られた反射マーカーの動きから、C-motion Company社製の「Visual 3D」を使用して膝の運動力学的挙動を算出することで、KAM値曲線を求め、KAMピーク値を算出した。他方、加速度は、ATR-Promotions社製の小型無線多機能センサ「TSND151」を被検者の両脚の膝下部に取り付け、歩行時の出力値(加速度)を得て、得られた出力値から立脚期を特定し、初期のピーク幅を算出した。それぞれ得られた値をもとにピアソン相関係数(p)を算出し、p<0.05の場合は両者間に相関ありと評価した。
図19によると、当該測定においては、両数値間の相関係数p<0.001が示されており、KAM値と加速度のピーク幅との間に高い相関があることが確認された。つまり、検出装置200において立脚期初期の加速度のピーク幅を検出することによって、KAM値の推定が可能であることが確認された。
【0103】
9.出力値とKAM値との相関を示す実施例(図18のKAM値推定方法の例)
また、上記
図17の例で用いた変形性膝関節症を有する22名を被検者として、両脚の膝下部に取り付けた検出装置200によって実際に測定された合計44個の出力値のうち、水平方向の加速度、垂直方向の加速度、奥行き方向の加速度、水平方向の軸に対する角速度、垂直方向の軸に対する角速度及び奥行き方向の軸に対する角速度の合計6軸の出力値を用いた場合について説明する。まず、22名の被験者の出力値のうち無作為に抽出した18名の出力値と、正解ラベルとして用意したKAM面積値又はKAMピーク値を用いて学習済み推定モデルの生成を行った。なお、正解ラベルのKAM面積値又はKAMピーク値は、同じ18名においてモーションキャプチャを使った上記同様の方法によりKAM値曲線を求め、当該曲線からそれぞれ算出した。次に、生成された推定モデルの検証のために、残り4名の出力値を生成された推定モデルに適用してKAM値の推定を行った。そして、推定モデルにより推定されたKAM値は、上記同様のモーションキャプチャを使った方法により求められたKAM値曲線から算出されたKAM面積値又はKAMピーク値と比較することで検証した。
【0104】
図20は、生成された推定モデルに対して4名の出力値を適用して推定されたKAM面積値と、モーションキャプチャによって算出されたKAM面積値との相関を示す図である。具体的には、
図20は横軸に推定モデルにおいて学習を繰り返した回数(0回~239回)が、縦軸に当該推定モデルを適用して得られたKAM面積値とモーションキャプチャを利用して得られたKAM面積値との相関係数がそれぞれ割り当てられたグラフが示されている。
図20によれば、一般的に「相関あり」と評価される0.4以上の相関係数が、47回目以降のステップにおいて安定して得られた。特に、239回の学習ステップにおいて最大で0.934という極めて高い相関係数が得られた。これは、当該推定モデルを用いて推定されたKAM面積値は、モーションキャプチャによって求めたKAM面積値と同様に、変形性膝関節症等の評価に十分に用いることが可能であることを示した。
【0105】
図21は、生成された推定モデルに対して4名の出力値を適用して推定されたKAMピーク値と、モーションキャプチャによって算出されたKAMピーク値との相関を示す図である。具体的には、
図21は横軸に推定モデルにおいて学習を繰り返した回数(0回~239回)が、縦軸に当該推定モデルを適用して得られたKAMピーク値とモーションキャプチャを利用して得られたKAMピーク値との相関係数がそれぞれ割り当てられたグラフが示されている。
図21によれば、一般的に「相関あり」と評価される0.4以上の相関係数が、29回目以降のステップにおいて安定して得られた。特に、218回の学習ステップにおいて最大で0.633という極めて高い相関係数が得られた。これは、当該推定モデルを用いて推定されたKAMピーク値は、モーションキャプチャによって求めたKAMピーク値と同様に、変形性膝関節症等の評価に十分に用いることが可能であることを示した。
【0106】
各実施形態で説明した各要素を適宜組み合わせるか、それらを置き換えてシステムを構成することも可能である。
【0107】
本明細書で説明される処理及び手順は、実施形態において明示的に説明されたものによってのみならず、ソフトウェア、ハードウェア又はこれらの組み合わせによっても実現可能である。具体的には、本明細書で説明された処理及び手順は、集積回路、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、磁気ディスク、光ストレージ等の媒体に、当該処理に相当するロジックを実装することによって実現される。また、本明細書で説明される処理及び手順は、それらの処理・手順をコンピュータプログラムとして実装し、処理装置やサーバ装置を含む各種のコンピュータに実行させることが可能である。
【0108】
本明細書中で説明される処理及び手順が単一の装置、ソフトウェア、コンポーネント、モジュールによって実行される旨が説明されたとしても、そのような処理又は手順は、複数の装置、複数のソフトウェア、複数のコンポーネント、及び/又は、複数のモジュールによって実行されるものとすることができる。また、本明細書中で説明される各種情報が単一のメモリや記憶部に格納される旨が説明されたとしても、そのような情報は、単一の装置に備えられた複数のメモリ又は複数の装置に分散して配置された複数のメモリに分散して格納されるものとすることができる。さらに、本明細書において説明されるソフトウェア及びハードウェアの要素は、それらをより少ない構成要素に統合して、又は、より多い構成要素に分解することによって実現されるものとすることができる。
【符号の説明】
【0109】
1 処理システム
100 処理装置
200 検出装置
300 サーバ装置
400 補助具