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特開2022-51458雰囲気遮断浄化装置、エアロゾル浄化方法、フィットネスクラブ、医療設備、及びイベント会場
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051458
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】雰囲気遮断浄化装置、エアロゾル浄化方法、フィットネスクラブ、医療設備、及びイベント会場
(51)【国際特許分類】
   F24F 9/00 20060101AFI20220324BHJP
   F24F 13/28 20060101ALI20220324BHJP
   F24F 7/003 20210101ALI20220324BHJP
   A61G 10/00 20060101ALI20220324BHJP
   A61G 1/04 20060101ALI20220324BHJP
   A61L 9/16 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
F24F9/00 F
F24F9/00 A
F24F13/28
F24F7/00 A
A61G10/00 C
A61G1/04
A61L9/16 F
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020157952
(22)【出願日】2020-09-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】512120801
【氏名又は名称】株式会社日本マシンサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100097548
【弁理士】
【氏名又は名称】保立 浩一
(72)【発明者】
【氏名】片桐 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】片桐 拓弥
【テーマコード(参考)】
4C180
4C341
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180CC01
4C180CC16
4C180DD09
4C180HH05
4C180MM10
4C341JJ01
4C341KK01
4C341KL07
4C341MS06
(57)【要約】
【課題】 人が発する飛沫やエアロゾルを十分に吸引し、ウイルスが含まれていたとしても無害化できる優れた浄化装置を提供し、またこのような装置を医療現場や各種業種に応用する。
【解決手段】 上下に向かい合って配置された複数の送風ファン2及び吸気ファン3により成るエアカーテン機構1により鉛直方向にエアカーテンFが形成されて雰囲気が遮断され、一方の側にいる人が発する飛沫やエアゾルEはエアカーテンFに乗って抗ウイルスHEPAフィルタ4を通して浄化されて放出される。エアカーテン機構1及び抗ウイルスHEPAフィルタ4を備えた雰囲気遮断浄化装置は、フィットネスクラブやイベント会場に配置されたり、病室において医療用ベッド6に配置されたり、ストレッチャー7に配置されり、車椅子8に配置されたりする。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定方向の面状の空気の流れであるエアカーテンを鉛直な面内に形成して当該鉛直な面の一方の側と他方の側とを遮断するエアカーテン機構を備えた雰囲気遮断浄化装置であって、
エアカーテン機構は、向かい合って配置された送風部及び吸気部とを備えており、
送風部は送風ファン又はコンプレッサを備えていて、吸気部に向けて送風する要素であり、
吸気部は、吸気ファンと、抗ウイルスHEPAフィルタとを備えており、
抗ウイルスHEPAフィルタは、吸気ファンにより吸い込まれた空気が通過して浄化された後に放出される位置に設けられていることを特徴とする雰囲気遮断浄化装置。
【請求項2】
前記送風部及び前記吸気部は、上下に向かい合って設けられており、
前記一定方向の面状の流れは、鉛直方向の流れであることを特徴とする請求項1記載の雰囲気遮断浄化装置。
【請求項3】
前記吸気部は、流入するエアカーテンをガイドする第一第二の吸気ガイドを有しており、
前記鉛直な面に垂直な方向を前後方向としたとき、第一の吸気ガイドは前記吸気部の前後方向の一方の側の縁から前記送風部の側に延びており、第二の吸気ガイドは他方の側の縁から前記送風部の側に延びており、
第一第二の吸気ガイドは、前記鉛直な面に沿った方向であって前記一定方向に垂直な方向に長いことを特徴とする請求項1又は2に記載の雰囲気遮断浄化システム。
【請求項4】
前記送風部と前記吸気部とは相互に連結されていて全体として人が手で持ち運べる可搬型であるか、又は前記送風部と前記吸気部は分離していてそれぞれ人が手で持ち運べる可搬型であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の雰囲気遮断浄化装置。
【請求項5】
人が発するエアゾルを請求項1乃至4いずれかに記載の雰囲気遮断浄化装置を使用して浄化するエアゾル浄化方法であって、
前記一方の側は、エアゾルを発する人がいる側であり、
人が発したエアゾルをエアカーテン機構によるエアカーテンに乗せて吸気ファンにより吸い込ませ、抗ウイルスHEPAフィルタにより浄化することを特徴とするエアゾル浄化方法。
【請求項6】
トレーニング室を有しており、請求項1乃至4いずれかに記載の雰囲気遮断浄化装置がトレーニング室に設置されており、
雰囲気遮断浄化装置における前記エアカーテン機構は、トレーニング室に設置されたフィットネスマシンを利用者が利用している際、当該利用者の正面の側において前記エアカーテンを作るよう設けられていることを特徴とするフィットネスクラブ。
【請求項7】
請求項1乃至3いずれかに記載の雰囲気遮断浄化装置を備えた医療設備であって、
前記エアカーテン機構における前記送風部及び前記吸気部は、患者を取り囲んで前記エアカーテンが形成されるよう平面視において患者がいる位置を取り囲む形状であることを特徴とする医療設備。
【請求項8】
前記医療設備は、医療用ベッドを備えた病室であり、
前記エアカーテン機構は、医療用ベッドの寝床部の上側の空間を取り囲んでエアカーテンが形成されるよう前記送風部と前記吸気部は平面視において寝床部を取り囲む形状を有しており、寝床部の周囲において向かい合って設けられていることを特徴とする請求項7記載の医療設備。
【請求項9】
前記医療設備は、ストレッチャー又は担架であり、
前記エアカーテン機構は、ストレッチャー又は担架の寝床部の上側の空間を取り囲んでエアカーテンが形成されるよう前記送風部と前記吸気部は平面視において寝床部を取り囲む形状を有しており、寝床部の周囲において向かい合って設けられていることを特徴とする請求項7記載の医療設備。
【請求項10】
前記医療設備は、座面部を備えた車椅子であり、
前記エアカーテン機構は、座面部の上側の空間を取り囲んでエアカーテンが形成されるよう前記送風部と前記吸気部は平面視において座面部を取り囲む形状を有しており、座面部の周囲において向かい合って設けられていることを特徴とする請求項7記載の医療設備。
【請求項11】
声又は息を吹き出す演者がいる演者エリアと、聴衆がいる聴衆エリアとを有するイベント会場であって、
請求項1乃至4いずれかに記載の雰囲気遮断浄化装置を備えており、
雰囲気遮断装置のエアカーテン機構は、演者エリアと聴衆エリアとの間において前記エアカーテンが形成されるよう、前記送風部と前記吸気部とは、演者エリアと聴衆エリアとの間において上下に向かい合っていることを特徴とするイベント会場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、ウイルス感染を防止するための雰囲気の遮断技術、及びその応用技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この出願が為される時点において、新型コロナウイルスの大流行が大きな社会問題となっている。特に影響を受けているのは、エアロゾル(エアゾルと表記されることもあるが、本願ではエアロゾルで統一する。)の問題が大きくなり易いフィットネスクラブ、劇場、ライブハウス、カラオケ店等の施設である。このような場所では、演じたり、歌を歌ったりする際に人がエアロゾルを発する。WHO(世界保健機関)は、新型コロナウイルスにエアロゾル感染があり得ることを認めている。即ち、エアロゾル中にウイルスが含まれていると、感染のリスクが非常に高くなる。したがって、エアロゾルを介した感染を十分に防止しなければ、これらの業種、業態では、経営が厳しい状況は改善されないと見込まれる。
また、院内感染の問題も深刻である。感染者の増大により多くの患者が一つの病院に殺到した場合、対策を余程厳重に取っておかないと、院内感染を防ぐことは難しい。現在、感染者がいるエリアと感染者がいないエリアとを厳格に区分し、感染者がいるエリアから医者や看護師が出てくるときは、マスクや防護服等を交換したり消毒を徹底したりする対策が採られているが、十分とは言いがたい。
新型コロナウイルスを完全に撲滅するのは難しいのではないかとされており、ウイズコロナ、新しい生活様式といった考え方も広がってきている。したがって、上記以外であっても、感染防止対策を日常的に行うことが必須となってくる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-79697号公報
【特許文献2】特開2009-293862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の出願人は、上記のような昨今の状況を考慮し、換気構造や抗ウイルスHEPAフィルタを介した空気循環の構造について特許出願をしている(特願2020-067090、特願2020-075824)。これらの出願では、人が発するエアロゾルを換気扇で吸引して放出したり、HEPAフィルタを通して浄化したりしている。しかしながら、発明者らが行った実験では、単に換気扇で吸引しただけでは、エアロゾルを十分に浄化できない問題があることが判ってきた。
【0005】
発明者らは、スモーク(煙)をエアロゾルに見立てて換気扇による吸引試験を行った。そうしたところ、換気扇は空間的に広がるエアロゾルのうちの一部のみしか吸引せず、残りの多くのエアロゾルは四方八方に拡散してしまうことが判った。この原因は、市販されている換気扇は、文字通り換気が目的であるため、屋内の空間から広く空気を集めるよう設計されていることによる。換気扇は、背後(排気側)では空気の流れが直線的であるが、前方(吸引側)では広い角度から収束する流れである。即ち、吸引に指向性がない。このために一部のエアロゾルしか吸引できない状況となってしまう。
【0006】
吸引に指向性のある特別な換気扇を設計、製作して使用することも考えられるが、高コストとなってしまう問題がある。また、指向性が高くなると、人が顔を少し横に向けただけでもエアロゾルを吸引しなくなってしまうので、その懸念もある。
本願の発明は、このような課題を解決するために為されたものであり、人が発する飛沫やエアロゾルを十分に吸引し、ウイルスが含まれていたとしても無害化できる優れた浄化装置を提供することを目的としている。また、このような装置を医療現場や各種業種に応用することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この明細書において、雰囲気遮断浄化装置、エアロゾル浄化方法、フィットネスクラブ、医療設備、イベント会場の各発明が開示される。
開示された発明に係る雰囲気遮断浄化装置は、一定方向の面状の空気の流れであるエアカーテンを鉛直な面内に形成して当該鉛直な面の一方の側と他方の側とを遮断するエアカーテン機構を備えた雰囲気遮断浄化装置であって、
エアカーテン機構は、向かい合って配置された送風部及び吸気部とを備えており、
送風部は送風ファン又はコンプレッサを備えていて、吸気部に向けて送風する要素であり、
吸気部は、吸気ファンと、抗ウイルスHEPAフィルタとを備えており、
抗ウイルスHEPAフィルタは、吸気ファンにより吸い込まれた空気が通過して浄化された後に放出される位置に設けられている。
この雰囲気遮断浄化装置は、送風部及び吸気部が上下に向かい合って設けられており、一定方向の面状の流れは鉛直方向の流れであるという構成を持ち得る。
また、この雰囲気遮断浄化装置は、吸気部が流入するエアカーテンをガイドする第一第二の吸気ガイドを有しており、鉛直な面に垂直な方向を前後方向としたとき、第一の吸気ガイドは吸気部の前後方向の一方の側の縁から送風部の側に延びており、第二の吸気ガイドは他方の側の縁から送風部の側に延びており、第一第二の吸気ガイドは、鉛直な面に沿った方向であって一定方向に垂直な方向に長いという構成を持ち得る。
また、この雰囲気遮断浄化装置は、送風部と吸気部とは相互に連結されていて全体として人が手で持ち運べる可搬型であるか、又は送風部と吸気部は分離していてそれぞれ人が手で持ち運べる可搬型であるという構成を持ち得る。
また、開示された発明に係るエアロゾル浄化方法は、人が発するエアロゾルを上記いずれかの雰囲気遮断浄化装置を使用して浄化するエアロゾル浄化方法であって、一方の側は、エアロゾルを発する人がいる側であり、人が発したエアロゾルをエアカーテン機構によるエアカーテンに乗せて吸気ファンにより吸い込ませ、抗ウイルスHEPAフィルタにより浄化する方法である。
また、開示された発明に係るフィットネスクラブは、トレーニング室を有しており、上記いずれかの雰囲気遮断浄化装置がトレーニング室に設置されており、雰囲気遮断浄化装置におけるエアカーテン機構は、トレーニング室に設置されたフィットネスマシンを利用者が利用している際、当該利用者の正面の側においてエアカーテンを作るよう設けられている。
また、開示された発明に係る医療設備は、上記いずれかの雰囲気遮断浄化装置を備えた医療設備であり、エアカーテン機構における送風部及び吸気部は、患者を取り囲んでエアカーテンが形成されるよう平面視において患者がいる位置を取り囲む形状である。
この医療設備は、医療用ベッドを備えた病室であり、エアカーテン機構は、医療用ベッドの寝床部の上側の空間を取り囲んでエアカーテンが形成されるよう送風部と吸気部は平面視において寝床部を取り囲む形状を有しており、寝床部の周囲において向かい合って設けられているという構成を持ち得る。
また、この医療設備は、ストレッチャー又は担架であり、エアカーテン機構は、ストレッチャー又は担架の寝床部の上側の空間を取り囲んでエアカーテンが形成されるよう送風部と吸気部が平面視において寝床部を取り囲む形状を有しており、寝床部の周囲において向かい合って設けられているという構成を持ち得る。
また、この医療設備は、座面部を備えた車椅子であり、エアカーテン機構は、座面部の上側の空間を取り囲んでエアカーテンが形成されるよう送風部と吸気部が平面視において座面部を取り囲む形状を有しており、座面部の周囲において向かい合って設けられているという構成を持ち得る。
開示された発明に係るイベント会場は、声又は息を吹き出す演者がいる演者エリアと、聴衆がいる聴衆エリアとを有するイベント会場であって、上記いずれかの雰囲気遮断浄化装置を備えており、雰囲気遮断装置のエアカーテン機構は、演者エリアと聴衆エリアとの間においてエアカーテンが形成されるよう、送風部と吸気部とは、演者エリアと聴衆エリアとの境間において上下に向かい合っている。
【発明の効果】
【0008】
以下に説明する通り、開示された発明に係る雰囲気遮断浄化装置によれば、人が発する飛沫やエアロゾルは、エアカーテンに乗って吸気ファンに向かい、吸気ファンから吸気されて抗ウイルスHEPAフィルタを通して室内に再放出される。このため、放出される飛沫やエアロゾルが十分に無害化される。このため、エアカーテンで遮断された一方の側にウイルス感染者がいたとしても、他方の側にいる人が感染してしまうことがなくなる。
また、鉛直面に垂直な水平方向の前後に吸気ガイドが設けられている構成では、エアロゾルの流れが跳ね返されてしまうのがさらに抑制されるという効果が得られる。
また、可搬型の雰囲気遮断浄化装置の場合、必要な場所に持っていって簡便にウイルス感染防止対策を行うことができ、この点で特に好適となる。
また、開示された発明に係るエアロゾル浄化方法によれば、人の発するエアロゾルがエアカーテンに乗って吸気ファンに向かい、吸気ファンから吸気されて抗ウイルスHEPAフィルタを通して室内に再放出される。このため、エアロゾルが十分に浄化される。
また、開示された発明に係るフィットネスクラブによれば、雰囲気遮断浄化装置が設置されているので、利用者が発する飛沫やエアロゾルが十分に浄化される。このため、利用者が新型コロナウイルスのような感染症に万が一感染していても、トレーニング室にいる他の利用者にうつしてしまうことが抑制される。さらに、循環型のシステムを採用するので、冷暖房のコストが高くなる問題もない。そして、エアカーテン機構が、トレーニング室に設置されたフィットネスマシンを利用者が利用している際、当該利用者の正面の側においてエアカーテンを作る位置に設けられているので、飛沫やエアロゾルが多く放出される状況において当該飛沫やエアロゾルを十分に無害化できるようになり、この点で特に好適となる。
また、開示された発明に係る医療設備によれば、患者を取り囲んだ状態のエアカーテンがエアカーテン機構によって形成されるので、患者がウイルスの感染源になってしまったり、逆に患者が別の人からウイルスに感染してしまったりすることが防止される。
また、開示された発明に係るイベント会場によれば、演者エリアと聴衆エリアとを遮断してエアカーテンが形成されるので、演者が万が一ウイルスに感染していても、抗ウイルスHEPAフィルタによって無害化され、聴衆が感染してしまうことはない。また、エアカーテンという空気の流れが存在するだけであるので、聴衆にとって違和感はなく、イベントの状況が損なわれてしまうことはない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第一の実施形態の雰囲気遮断浄化装置の斜視概略図である。
図2】第一の実施形態の雰囲気遮断浄化装置の正面概略図である。
図3】第一の実施形態の雰囲気遮断浄化装置の使用状態の一例を示す側面断面概略図である。
図4】第二の実施形態の雰囲気遮断浄化装置の主要部の側面断面概略図である。
図5】第二の実施形態における各吸気ガイドの効果について説明するための参考図であり、吸気ガイドがない場合のエアカーテン及びエアロゾルの流れについて示した概略図である。
図6】他の実施形態に係るフィットネスクラブの平面概略図である。
図7】医療設備の一実施形態である病室の主要部の斜視概略図である。
図8】医療設備の別の一実施形態であるストレッチャーの斜視概略図である。
図9】医療設備のさらに別の一実施形態である車椅子の斜視概略図である。
図10】イベント会場の発明の実施形態について主要部を示した概略図である。
図11】第三の実施形態の雰囲気遮断浄化装置の正面断面概略図である。
図12】第四の実施形態の雰囲気遮断浄化装置の正面断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、開示された各発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。
図1図3は、第一の実施形態に係る雰囲気遮断浄化装置の概略図であり、図2は斜視概略図、図2は正面概略図、図3は側面断面概略図である。図1図3に示す雰囲気遮断浄化装置は、エアカーテンによって雰囲気を遮断しつつ浄化する装置である。
以下に説明するする実施形態の雰囲気遮断浄化装置は、エアロゾルを浄化するものでもある。したがって、以下の説明は、エアロゾル浄化方法の発明の実施形態の説明でもある。
【0011】
実施形態の雰囲気遮断浄化装置は、鉛直面内の一定方向の空気の流れであるエアカーテンFを作るエアカーテン機構1を備えている。エアカーテンFは、鉛直面内での一定方向の空気の流れが当該一定方向に垂直な方向であって鉛直面に沿った方向に分布している空気の流れである。説明の都合上、当該一定方向に垂直な方向であって鉛直面に沿った方向を、以下、分布方向という。この実施形態では、空気の流れは鉛直方向であるので、分布方向は水平方向である。
【0012】
この実施形態において、エアカーテン機構1は、向かい合って配置された送風部及び吸気部を備えている。この実施形態では、送風部は送風ファン2であり、吸気部は吸気ファン3である。これら一対のファン2,3でエアカーテンFが形成されることが、実施形態の雰囲気遮断浄化装置の特徴点の一つとなっている。
この実施形態では、送風ファン2は下方に設置されており、吸気ファン3は送風ファン2の真上に設置されている。したがって、エアカーテンFは、下から上への流れである。
【0013】
図1及び図2に示すように、この実施形態では複数の送風ファン2が設置されている。送風ファン2は、一方向に並んで設けられている。この方向はエアカーテンFにおける分布方向に一致している。この例では、送風ファン2は20cm角程度の小型のものであり、6個程度並べて設置されている。
図2に示すように、各送風ファン2は、室内の床面から少し高い位置に設けられている。例えば、10cm~100cm程度の高さの空間が下側にできるよう各送風ファン2は設けられている。各送風ファン2は、床に固定されたフレーム21によって保持されている。
【0014】
吸気ファン3も、この実施形態では複数設けられており、例えば2個程度設けられている。各吸気ファン3は、各送風ファン2より少し大きく例えば40cm角程度の大きさである。各吸気ファン3も分布方向に並べられている。
二つの吸気ファン3は、吸気ユニット30の一要素となっている。吸気ユニット30は、二つの吸気ファン3と、抗ウイルスHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ4と、ユニットボックス300とを備えており、ユニットボックス300内に吸気ファン3と抗ウイルスHEPAフィルタ4が収容された構造のユニットである。この例では、抗ウイルスHEPAフィルタ4は、吸気ファン3の排気側(上側)に設けられている。
【0015】
ユニットボックス300は、骨格状のフレーム301と、フレーム301に取り付けたボード302等から成っている。フレーム301は例えばアルミ製であり、ボード302は例えば樹脂製である。二つの吸気ファン3は、ユニットボックス300の下面開口に取り付けられている。二つの吸気ファン3が占める水平方向の領域はユニットボックス300の下面開口より少し小さく、この部分を塞ぐ下面板(符号省略)が設けられている。
【0016】
抗ウイルスHEPAフィルタ4は、ユニットボックス300内の上側の領域を占める状態で取り付けられている。抗ウイルスHEPAフィルタ4の水平方向の断面の大きさは、ユニットボックス300の内部空間の水平方向断面の大きさとほぼ等しく、高さは、ユニットボックス300の内部空間よりも少し小さくなっている。このため、抗ウイルスHEPAフィルタ4の下側には、空間40が形成されている。この空間40は、抗ウイルスHEPAフィルタ4に入る流れをより均一にするためのバッファ空間である。尚、抗ウイルスHEPAフィルタ4は、フレーム301の一部であり梁部311に係止される状態で取り付けられている。梁部311をガイドレール状とし、抗ウイルスHEPAフィルタ4を引き出して交換する構造(交換容易な構造)としても良い。
【0017】
尚、抗ウイルスHEPAフィルタ4は、ウイルスを捕集して不活化するHEPAフィルタである。例えば、日本無機株式会社(本社:東京都台東区東上野)製のヴァニッシュフィルタ(商品名)がウイルスHEPAフィルタ4として使用できる。
ユニットボックス300の上面は開口となっており、抗ウイルスHEPAフィルタ4に達した流れは、抗ウイルスHEPAフィルタ4を抜けてそのまま上に放出されるようになっている。この際、抗ウイルスHEPAフィルタ4の作用により雰囲気の浄化が行われる。即ち、エアカーテンFの一方の側にウイルス感染者がいて飛沫やエアロゾルを放出したとしても、飛沫やエアロゾルに含まれ得るウイルスはエアカーテンFの流れに乗って抗ウイルスHEPAフィルタ4に達して無害化される。
【0018】
このような雰囲気遮断浄化装置は、フィットネスクラブのようなエアロゾルを盛んに発する人がいる室内環境において好適に使用される。この例が図3に示されている。従って、図3は、フィットネスクラブの発明の実施形態を示した図でもある。
フィットネスクラブには、エアロバイク(登録商標)のような有酸素系の運動を行うマシンや、各種筋力トレーニングを行うマシン(以下、これらをフィットネスマシンと総称する。)が設置されている。これらフィットネスマシンMを使用する利用者からは、使用中(トレーニング中)、飛沫やエアロゾルが盛んに放出される。特に、有酸素系のフィットネスマシンMを使用する利用者は、激しく呼吸を行うため、この傾向が顕著である。
【0019】
図3に示すように、飛沫やエアロゾルは、利用者の正面の側に向けて放出される。この際、実施形態の雰囲気遮断浄化装置は、利用者の正面の位置にエアカーテンFが形成されるよう設置される。利用者の顔とエアカーテンFとを結ぶ水平線がエアカーテンFに対して垂直となる状態が理想的である。
尚、エアカーテンFは、フィットネスマシンMを利用する利用者の顔から2m以内の位置に形成されることが好ましい。これは、ウイルスを含んだ飛沫の飛散は2mの範囲内とされているからであり、飛沫をエアカーテンFに乗せて捕集することを考慮すると、2m以内とすることが好ましい。尚、フィットネスマシンMを利用する利用者の位置は、フィットネスマシンにおいて通常定められている。エアロバイク等のように座って利用するマシンは、サドルの位置が利用位置であり、サドルの中央から水平方向に2m以内の位置にエアカーテンFが形成されることが好ましい。ランニングマシンの場合には、ベルトローラーにおいて利用者が位置する位置として推奨されている位置から水平方向に2m以内の位置である。
【0020】
利用者から放出される飛沫やエアロゾルは、エアカーテンFに達し、その流れに乗って上方に移動する。そして、吸気ファン3を通してユニットボックス300内に入り、バッファ空間10を経て抗ウイルスHEPAフィルタ4に達する。そして、流れに含まれる塵や埃は抗ウイルスHEPAフィルタ4で捕集される他、ウイルスが含まれている場合、抗ウイルスHEPAフィルタ4で無害かされる。そして、このように浄化された空気がユニットボックス300の上面開口から室内に放出される。
尚、飛沫のうち、粒子が大きいものは重いのでエアカーテンFに達する前に床に落ちる場合もある。一方、小さな軽い飛沫は、エアカーテンFに達すると、それに乗って上昇し、エアロゾルとともに抗ウイルスHEPAフィルタ4で捕集され、無害化される。
【0021】
このように、実施形態の雰囲気遮断浄化装置によれば、飛沫やエアロゾルを発する人の正面にエアカーテンFが形成され、そのエアカーテンFに乗って飛沫やエアロゾルは吸気ファン3に向かい、吸気ファン3から吸気されて抗ウイルスHEPAフィルタ4を通して室内に再放出される。このため、放出される飛沫やエアロゾルが十分に無害化される。
尚、室内の空気が循環される点は、エネルギー効率の点で良好であり、全体のランニングコストが安くできるという効果をもたらす。エアロゾルによる影響を無くす構成としては、吸気して集めたエアロゾルをダクトで屋外に放出する構成もあり得る。しかしながら、この構成では、冷暖房の際のエネルギー効率が非常に悪くなり、冷暖房の費用も含めた全体のランニングコストが膨大なものとなってしまう。抗ウイルスHEPAフィルタ4により無害化しながら循環させる構成では、このような問題はない。
【0022】
また、人の正面にエアカーテンFを形成して飛沫やエアロゾルを除去する構成は、視界が遮られないという点で別の顕著な効果をもたらす。例えば、人の正面に換気扇を設け、それに排気ダクトをつなげてダクト中に抗ウイルスHEPAフィルタ4を設ける構成も考えられる。このような構成でも良いのであるが、正面に換気扇やダクトがあるため、視界が遮られ、見栄えが悪いという問題がある。
【0023】
エアカーテンFの場合、空気の流れであるから、そこを通して反対側を視認することができ、見栄えも悪くならない。フィットネスクラブの場合、フィットネスマシンMの正面側にテレビモニタTMを設け、利用者がテレビを見ながらフィットネスマシンMを利用できるようにしている場合が多い。この場合、図3に示すように、テレビモニタTMとフィットネスマシンMとの間にエアカーテンFが形成されるように雰囲気遮断浄化装置を設置すれば、テレビモニタTMの視認が阻害されることはない。テレビモニタTMではなく、外の景色を見ながら運動ができるようにフィットネスマシンMが設置されている場合も多いが、この場合も、それが阻害されることはなく、開放感を感じながら運動を行うことができる。
【0024】
次に、第二の実施形態の雰囲気遮断浄化装置について説明する。図4は、第二の実施形態の雰囲気遮断浄化装置の主要部の側面断面概略図である。
図4に示すように、第二の実施形態の雰囲気遮断浄化装置は、吸気ファン3に対して吸気ガイド31、32を取り付けた構成となっている。以下、説明の都合上、エアカーテンFが形成される鉛直面に垂直な水平方向を前後方向とし、飛沫やエアロゾルを発する人がいる側を手前側、これとは反対側を奥側とする。
【0025】
図4に示すように、この実施形態では二つの吸気ガイド31,32が設けられている。第一の吸気ガイド31は、吸気ファン3の手前側の縁に取り付けられて下方に延びている。第二の吸気ガイド32は吸気ファン3の奥側の縁に取り付けられて下方に延びている。各吸気ガイド31,32とも、エアカーテンFの分布方向(図4の紙面垂直方向)に長いものであり、帯板状である。
【0026】
第二の吸気ガイド31,32は、単純な帯板状であるが、第一の吸気ガイド31は、図4に示すように、下端が奥側斜め上方に折り曲げられた状態となっている。
これら各吸気ガイド31、32は、人が発するエアロゾルの跳ね返りを抑制し、浄化作用をより高める効果を有している。この点について、図5を参照して説明する。図5は、第二の実施形態における各吸気ガイド31,32の効果について説明するための参考図であり、吸気ガイドがない場合のエアカーテンF及びエアロゾルEの流れについて示した概略図である。
【0027】
エアカーテンFは人の正面に形成されるため、図5に示すように、人が発するエアロゾルEは、大まかにはエアカーテンFに垂直に衝突する状態となる。この場合、多くのエアロゾルEは、エアカーテンFに乗って上昇して吸引ファンに吸引されるのであるが、図5に示すように、衝突によって跳ね返り、手前側(人の側)に戻ってしまうエアロゾルE’も少なからず生じる。
エアロゾルE’の跳ね返りは、斜め上に流れてエアカーテンFに衝突する際に生じ易い。斜め下に流れてエアカーテンFに衝突するエアロゾルについては、送風ファン2の流れに対して比較的正面からぶつかる状態になるため、跳ね返りにくく、エアカーテンFに乗り易い。しかし、斜め上に流れるエアロゾルE’については、エアカーテンFの方向に対して同じ方向の流れ成分が多いため、跳ね返り易い。
【0028】
第二の実施形態の雰囲気遮断浄化装置は、このような点を考慮し、第一の吸気ガイド31を設け、跳ね返りを防止している。図4に示すように、第一の吸気ガイド31は、跳ね返ろうとするエアロゾルE’を奥側に戻し、吸気ファン3によって吸引されるようにする。
第二の吸気ガイド32は、第一の吸気ガイド31による戻りによってエアカーテンFが乱れるのを防止するものである。第一の吸気ガイド31のみであると、第一の吸気ガイド31が奥側に押し戻す流れを形成するため、エアカーテンFが奥側に逸れた状態で吸気ファン3に達し易い。第二の吸気ガイド32は、これを抑制する。尚、第一の吸気ガイド31は、下端が奥側に折り曲げられているのがより効果的であるが、折り曲げられていなくても、効果はある。
各吸気ガイド31,32は、エアカーテンFを分布方向においてカバーすることが好ましい。即ち、二つの吸気ファン3の分布方向の全体の長さ又はそれ以上の長さであることが好ましい。
【0029】
次に、フィットネスクラブの発明の他の実施形態について説明する。図6は、他の実施形態に係るフィットネスクラブの平面概略図である。
フィットネスクラブは、トレーニング室を有しており、図6はトレーニング室の平面概略図である。図6に示すように、トレーニング室には複数のフィットネスマシンM,M’が設置されている。これらフィットネスマシンM,M’は、横に並べて設置されている。
【0030】
これらフィットネスマシンにおいては、マシン自体について正面の概念があるものがある。正面の概念とは、利用中の人の顔が向く側である。例えば、エアロバイク(登録商標)については、利用者はサドルに座ってペダルをこぐが、その利用者にとっての正面の側がエアロバイク(登録商標)にとっての正面の側である。ランニングマシンについても、ベルトローラーに乗って走る動作をするが、その際の利用者の向く側が正面の側である。利用者が同じ場所でステップを踏むステップ式マシンについても、利用者が向く側が正面の側である。これらとは反対側が、背後ということになる。以下、正面-背後を前後方向という。
【0031】
図6に示すように、この実施形態のフィットネスクラブは、各フィットネスマシンMの間に遮蔽シート51を設けている。遮蔽シート51は、透明なビニールシートである。遮蔽シート51は、各フィットネスマシンM,M’が設置された空間を前後方向に仕切っている。
この実施形態においても、雰囲気遮断浄化装置10が設置されている。雰囲気遮断浄化装置10は、1台のフィットネスマシンM,M’に対して1セット設けられている。各雰囲気遮断浄化装置10は、各フィットネスマシンM,M’の正面の側にエアカーテンFが形成されるよう設置されている。したがって、分布方向は、各フィットネスマシンM,M’の前後方向に対して垂直な方向である。
【0032】
このような実施形態のフィットネスクラブにおいて、幾つかのフィットネスマシンM’の背後には、補助送風ファン52が設けられている。この点は、フィットネスマシンM’のタイプを考慮したものである。
エアロバイクやランニングマシン、ステップ式マシンとったフィットネスマシンMは、利用者が顔を上げた状態(下を向かない状態)では顔は常に一定の側に向いており、これが正面の側である。しかしながら、上半身のひねり運動を行うマシン(ロータリマシン)の場合、左右に顔が振られるため、右を向いたり、左を向いたりする。このため、飛沫やエアロゾルが放出される方向も、左右に振られることになる。
【0033】
また、1台のマシンで複数の異なる運動が行えるマルチタイプのフィットネスマシン(マルチマシン)についても、特に正面-背後の概念はなく、利用中の人の顔の向きは、幾つかの異なる向きとなり、一定ではない。
実施形態のフィットネスクラブは、この点を考慮し、このように飛沫やエアロゾルの放出方向が一定でないフィットネスマシン(以下、不定方向マシンという。)M’が設置されたエリアについては、補助送風ファン52を設置している。
【0034】
不定方向マシンM’についても、図6に示すように他のフィットネスマシンM,M’との境界部分に遮蔽シート51が設けられている。1台の不定方向マシンM’について見ると、一対の互いに平行な遮蔽シート51に挟まれた状態である。
不定方向マシンM’については、一対の遮蔽シート51が延びる方向が前後方向ということになる。図6に示すように、不定方向マシンM’の前後方向の一方の側に雰囲気遮断浄化装置10が設置され、他方の側に補助送風ファン52が設置されている。マルチマシンは、どちらの側でも良いが、ロータリーマシンについては、体をひねっていない状態の利用者の顔が向いている側が前(正面)側とし、この側に雰囲気遮断浄化装置が設置されている。尚、フィットネスマシンM,M’が設けられたエリアのサイズに応じて、各雰囲気遮断浄化装置は、エアカーテンFの分布方向に適宜の長さを有している。即ち、送風ファン2や吸気ファン3の台数や抗ウイルスHEPAフィルタ4のサイズ等が適宜選定されている。
【0035】
図6及び上記説明から解るように、不定方向マシンM’が設置されたエリアについては、他方の側から補助送風ファン52により風が送られ、利用者が飛沫やエアロゾルはこの風に乗って雰囲気遮断浄化装置におけるエアカーテンFに衝突することになる。このため、飛沫やエアロゾルの初期の向きが前後方向ではなかったとしても、補助送風ファン52のよる流れにより迅速にエアカーテンFに向かい、吸気ファン3によって吸い込まれて抗ウイルスHEPAフィルタ4に達する。このため、不定方向マシンM’についても、飛沫やエアロゾルを十分に無害化できるようになっている。
尚、正面の概念のあるフィットネスマシンMが設置されたエリアについても、背後から風を送る補助送風ファンを設けても良く、その方が無害化の効果が高まる。この点は、フィットネスクラブ以外の利用例でも同様である。エアカーテンFに向けて水平に風を送る補助送風ファンを設置すると、飛沫やエアロゾルがエアカーテンFに向かって迅速に送られるので、無害化の効果が高くなる。
【0036】
上述した各実施形態の雰囲気遮断浄化装置において、エアカーテンFを形成するエアカーテン機構1は、下側が送風ファン2、上側が吸気ファン3であったが、この関係は逆であっても良い。この場合には、抗ウイルスHEPAフィルタ4を含む吸気ユニット30も下側に設けられることになり、エアカーテンFは上から下への流れとなる。
【0037】
但し、抗ウイルスHEPAフィルタ4を含む吸気ユニット30は、送風ファン2に比べて占有スペースが大きくなる傾向があり、これを考慮すると、上側が吸気ファン3の方が有利である。即ち、下側の空間は種々の機器が設置されていたり、人が通るスペースを確保する必要があったりするので、大きさ占有スペースの機器を新たに設置することが難しい場合が多い。一方、上側の空間は、比較的大きな空きスペースがあり、大きな占有スペースの機器が天井吊り下げ等によって容易に設置できる。このため、上側が吸気ファン3である構造の方が設置が容易な場合が多い。
一方、メンテナンス性という点では、下側が吸気ファン3である構造の方が有利である。抗ウイルスHEPAフィルタ4は、上記のように定期的に交換される。その頻度は高くはないが、交換の際、抗ウイルスHEPAフィルタ4が高い位置にあると、交換作業に手間がかかる可能性もある。この点では、下側が吸気ファン3の構造の方が有利である。
【0038】
また、重量の大きな飛沫を取り込みを考慮した場合にも、下側が吸気ファン3の方が有利である。重量の大きな飛沫の場合、斜め下方に落下しながらエアカーテンFに到達する場合があり得るが、下から上への流れであると、この飛沫を上昇させることができず、抗ウイルスHEPAフィルタ4に取り込めないことがあり得る。下側が吸気ファン3であると、上から下へのエアカーテンFとなるので、重量の大きな飛沫であっても抗ウイルスHEPAフィルタ4に取り込める可能性が高い。
【0039】
尚、雰囲気遮断浄化装置においては、エアカーテンFの方向が水平方向であっても良い。たとえば、右から左に流れるエアカーテンFであっても良い。但し、水平方向のエアカーテンFの場合、送風ファン2及び吸気ファン3を左右に配して上下に延びるようにするので、構造的に煩雑になったり、人の通行の邪魔になったりすることがあり得る。これを考慮すると、上下方向のエアカーテンFの構成の方が好ましい。
尚、水平方向のエアカーテンを形成するカーテン機構を採用する構成としては、例えば、ドアのない部屋の出入り口に設置する構成が考えられる。例えば、フィットネスクラブにおいてトレーニング室の出入り口に水平方向のエアカーテンが形成されるよう雰囲気遮断浄化装置を設置しても良い。
【0040】
また、抗ウイルスHEPAフィルタ4の位置は、吸気ファン3に対して吸気側であっても良い。この場合は、吸気ファン3を、抗ウイルスHEPAフィルタ4を通して吸気し、この際に浄化を行うことになる。
さらに、送風ファン2や吸気ファン3は、いわゆる軸流ファンであったが、クロスフローファンのような長尺な送風口/吸気口を有するファンであっても良い。
【0041】
また、送風ファン2や吸気ファン3については、人感センサを設けて人がいる時のみ動作する構成であっても良いし、常時(24時間)動作する構成であっても良い。また、フィットネスクラブのトレーニング室に設けられる構成の場合、フィットネスマシンM,M’の動作開始と連動して動作が開始され、フィットネスマシンM,M’の動作停止と連動して動作が停止する構成であって良い。
【0042】
上記各実施形態では、送風部は送風ファン2であり、吸気部は吸気ファン3であったが、送風部は、送風を行う装置の要素という程度の意味であり、送風ファン自体である必要はない。別の場所に送風ファンが設けられていて送風ダクトで接続されており、その送風ダクトの終端部に設けられたスリット状の送風口であっても良い。送風口の長さ方向は、上記分布方向に向くよう設置される。吸気部についても、吸気ファンが別の場所に設けられていて、吸引ダクトや吸引管のような部材が吸気ファンに接続されており、この部材に設けられた吸気口が送風部と向かい合っていても良い。
送風部が、送風口を備えた要素とされる構成では、送風部は、コンプレッサを備えていても良い。コンプレッサで圧縮された空気をチューブ又はダクト等で送り、送風口から送風する構成を採用し得る。
尚、吸引に指向性のある特別な換気扇についてのコスト上の問題について前述したが、本願発明の実施に際しては、吸引に指向性のある特別な換気扇を吸気ファン3として使用することを排除するものではない。送風ファン2についても同様である。
【0043】
次に、上記のような雰囲気遮断浄化装置を応用した各発明について説明する。
まず、医療設備の発明の実施形態について説明する。以下の説明において、医療設備とは、医療に用いられる設備であり、建物等に固定されている設備の他、移動式の設備や可搬式の設備の場合もある。
【0044】
図7は、医療設備の一実施形態である病室の主要部の斜視概略図である。
この病室は、雰囲気遮断浄化装置を備えたものとなっている。雰囲気遮断浄化装置は、同様に、送風部と吸気部とを含むエアカーテン機構1を備えており、エアカーテン機構1が形成するエアカーテンにより雰囲気を遮断して浄化する装置である。
この実施形態では、遮断される一方の雰囲気は、患者がいる側の雰囲気である。この例では、患者は医療用ベッド6にいるので、エアカーテン機構1により形成されるエアカーテンの一方の側は医療用ベッド6の寝床部61の上側の空間である。したがって、図7に示すように、医療用ベッド6の寝床部61の周囲に、送風部が設けられている。
【0045】
エアカーテン機構1によるエアカーテンは、寝床部61の上側の空間を取り囲む必要があるため、送風部は、寝床部61の周囲に切れ目なく延びている。この例では、送風部は並べられた多数の送風ファン2で形成されている。即ち、図7に示すように、各送風ファン2は、ロ状に詰めて並べられて設けられている。
吸気部は、同様に、送風部と向かい合って設けられている。送風部がロ状を成しているので、吸気部もロ状を成している。吸気部は、同様に、吸気ファン3と、抗ウイルスHEPAフィルタ4とを備えている。この例では、1個の吸気ファン3の上側に1個の抗ウイルスHEPAフィルタ4が設けられて1個の吸気ユニット30が形成されており、この吸気ユニット30がロ状に並べてられて相互に連結されて吸気部が構成されている。
【0046】
また、吸気部において、各吸気ユニット30が並ぶロ状の内側には、閉鎖シート33が設けられている。閉鎖シート33は、この内側を通ってウイルスが飛散しないように閉鎖するものである。閉鎖シート33については、例えば塩ビ製の透明なシートを採用し得る。尚、閉鎖シート33は念のための部材であり、必須ではない。
このような吸気部は、不図示の吊り下げ棒により天井に固定されている。吊り下げ棒は、吸気部の幅方向に2本、ロ状の輪郭方向に6~8本程度設けられている。
【0047】
このような構成の雰囲気遮断浄化装置が設けられた病室においては、患者が医療用ベッド6で寝ている際、患者を取り囲んだ状態のエアカーテンがエアカーテン機構1によって形成される。このため、患者がウイルス感染者であった場合でも、患者が出す飛沫やエアロゾルは各吸気ユニット30内の抗ウイルスHEPAフィルタ4によって無害化される。逆に、エアカーテンの外の雰囲気にウイルスが存在していた場合でも、同様にエアカーテンによって吸い上げられて抗ウイルスHEPAフィルタ4によって無害化される。例えば、自分がウイルス感染者であることを知らずにお見舞いに来てしまった者がいたとしても、その者が発する飛沫やエアロゾルは、エアカーテンによって吸い上げられて抗ウイルスHEPAフィルタ4によって無害化される。
【0048】
この実施形態では、エアカーテン機構1を構成する送風部が医療用ベッド6に固定されていて、医療用ベッド6と一緒に移動可能となっており、吸気部は天井に固定である。したがって、吸気部は、病室において各医療用ベッド6を置く位置の上方にそれぞれ設置されている。医療用ベッド6の移動の際には、移動後の位置において送風部と吸気部とが上下に向かい合うよう状態とされる。
尚、通常、送風部の送風ファン2の動作スイッチと吸気部の吸気ファン3の動作スイッチは別々となるので、動作開始の際にはそれぞれスイッチをオンにする。
【0049】
図8は、医療設備の別の一実施形態であるストレッチャーの斜視概略図である。
ストレッチャー7は、寝床部71を備えており、寝床部71に救急患者を寝かせて搬送する器具である。図8に示すように、この実施形態におけるストレッチャー7は、雰囲気遮断浄化装置を備えたものとなっている。
寝床部71は、略長方形の枠状の主フレーム72の内側に設けられている。主フレーム72には、不図示のベース板が固定されており、寝床部71はベース板の上に固定されている。主フレーム72には、前後左右に四本の脚部73が固定されており、各脚部73の下端には車輪74が設けられている。
【0050】
そして、主フレーム72には、送風部と吸気部とが取り付けられている。図7と同様、送風部は、寝床部71を取り囲むロ状の形状であり、複数の送風ファン2をロ状に繋げた構造となっている。詳細の図示は省略するが、ロ状のファンフレームを主フレーム72に対して固定し、ファンフレームに各送風ファン2を固定する構成が採用できる。
また、図8に示すように、主フレーム72には、前後左右に四本の支柱34が固定されている。これら支柱34は、上方に設けられた吸気部を固定して支持する部材である。
【0051】
吸気部も、図7と同様に、1個の吸気ファン3と1個の抗ウイルスHEPAフィルタ4とから成る吸気ユニット30をロ状に連ねた構造のものである。吸気部についても、ロ状のユニットフレームが支柱34の上端に固定されて支柱34に支持されており、ユニットフレームに対して各吸気ユニット30が固定された構造を採用し得る。また、同様に、各吸気ユニット30が並ぶロ状の内側は、閉鎖シート33で閉鎖されている。
【0052】
尚、ストレッチャーには、不図示のバッテリーが取り付けられている。送風部の各送風ファン2と吸気部の各吸気ファン3は、バッテリーに結線されており、バッテリーから給電される。バッテリーは、例えばベース板の下面に固定される。
ストレッチャー7は折り畳み式の場合が多いが、これを考慮して、雰囲気遮断浄化装置も着脱式とし得る。例えば、送風部のファンフレームを主フレーム72にフックで引っ掛ける構造とし、吸気部を固定した各支柱34は主フレーム72に差し込み固定する構造とされ得る。
【0053】
この実施形態においても、寝床部71で寝ている救急患者を取り囲んでエアカーテンが形成されて雰囲気が遮断される。このため、救急患者が発する飛沫やエアロゾルはエアカーテンによって吸気部に吸気され、抗ウイルスHEPAフィルタ4で無害化される。このため、救急患者がウイルス感染者であったとしても、救急隊員等を感染させてしまうことが防止される。
【0054】
ストレッチャーと同様に使用されるものとして、担架がある。担架とストレッチャーの違いは、後者が伸縮自在であり、前者がそうではないものと捉えることができるが、担架についても同様に実施できる。即ち、寝床部の上側の空間を取り囲んでエアカーテンが形成されるようにエアカーテン機構を設け、吸気ファンが吸い込んだウイルスを抗ウイルスHEPAフィルタが無害化するようにする。
【0055】
図9は、医療設備のさらに別の一実施形態である車椅子の斜視概略図である。
図9に示す車椅子8は、医療設備としての車椅子であるので、患者が座って使用することが想定されたものである。この車椅子8も、雰囲気遮断浄化装置が搭載されている。
図9に示すように、車椅子8は、座面部81と、座面部81を固定した主フレーム82とを備えている。そして、主フレーム82には、エアカーテン機構1を構成する送風部と吸気部とが固定されている。
【0056】
この実施形態では、送風部は、コンプレッサ22を備えており、コンプレッサ22で風を送ってエアカーテンを形成する要素となっている。具体的には、送風部は、コンプレッサ22と、コンプレッサ22に接続されたパイプ23とを備えている。
パイプ23は、図9に示すように、ロ状であり、座面部81の周囲を取り囲んだ状態で設けられている。コンプレッサ22は、座面部81の下に取り付けられており、車輪等を取り付けた下側フレーム83に固定されている。
図9に示すように、パイプ23には、長手方向に延びるスリット24が形成されている。スリット24は、スリット24は、短い間隔をおいて長手方向に多数設けられており、全周に亘っている。
【0057】
一方、吸気部は、図7図8と同様に、1個の吸気ファン3と1個の抗ウイルスHEPAフィルタ4から成る吸気ユニット30が多数並べられてロ状を成した構成を有する。各吸気ユニット30は、下方の送風部と向かい合っている。各吸気ユニット30は、不図示のユニットフレームに固定され、ユニットフレームは、四本の支柱34によって支持、固定されている。前側の二本の支柱34は主フレーム82に固定され、後ろ側の二本の支柱34は、介助者が握るハンドルアーム84に固定されている。尚、多数の吸気ユニット30が連なるロ状の内部には、同様に閉鎖シート33が設けられている。
【0058】
尚、座面部81の下方には、不図示のバッテリーが搭載されている。コンプレッサ22及び各吸気ファン3は、給電のためバッテリーに結線されており、給電線上にはスイッチが設けられている。バッテリーは、電動の車椅子の場合、車輪の駆動用のものと兼用されることもあり得る。
【0059】
図9に示す車椅子では、コンプレッサ22から供給される圧縮空気が各スリット24から噴出され、上方の各吸気ファン3に向けて流れてエアカーテンを形成する。エアカーテンは、座面部81に座っている患者の周囲を取り囲んだ状態となる。このため、患者がウイルスに感染してしても、周囲にウイルスが拡散してしまうことがなくなる。逆に、周囲にウイルスに感染した者がいても、座面部81に座っている患者が感染してしまうことがなくなる。
【0060】
図9に示す実施形態においても、スリット24を有してコンプレッサ22につながるパイプ23に代え、送風ファン2を並べた構成を採用することができる。また、図7図8に示す実施形態において、送風ファン2を並べた構成に代えてスリットを有するパイプを設け、コンプレッサをつなげても良い。尚、パイプに設ける送風口はスリットでなくとも良く、小さな円形の噴射口を直線上に多数設けた構成であっても良い。噴射される空気が面状の流れ(エアカーテン)を形成できれば、どのような構成でも良い。また、各実施形態の医療設備において、送風部と吸気部とは上下が逆であっても良い。
【0061】
また、エアカーテン機構1については、エアカーテンが患者を完全に(360°)取り囲む構成に限られず、取り囲んでいない部分があっても良い。例えば、医療用ベッド6が病室の壁に接触して設置されている場合、この壁の部分については取り囲んでいない構造であっても良い。
尚、医療設備の他の例として、救急車が挙げられる。救急車においても、例えばストレッチャーが運び込まれて設置されるエリアを取り囲んでエアカーテンを形成するエアカーテン機構1を備えた雰囲気遮断浄化装置を設けても良い。また、家族等が同乗するエリアと患者を乗せるエリアとを遮断するようにエアカーテンを形成しても良い。
【0062】
次に、雰囲気遮断浄化装置の応用例として、イベント会場の発明の実施形態について説明する。図10は、イベント会場の発明の実施形態について主要部を示した概略図である。
この発明におけるイベント会場とは、声又は息を吹き出す演者がいて、それを聴く聴衆がいる会場である。演者は例えば歌手であり、聴衆をその歌を聴く者である。この例におけるイベント会場は、コンサート会場やライブハウス、カラオケ店等であり得る。息を吹き出す演者とは、典型的には管楽器を演奏する者である。したがって、吹奏楽が行われるコンサート会場、管楽器を含む楽団、グループによるジャズ演奏が行われるライブハウス等が、この場合のイベント会場の例である。
【0063】
声を出す演者は、音楽を奏する者には限らない。演劇や話芸(落語や漫才)を行うものも、声を出す演者である。したがって、これらが行われる劇場、芝居小屋、演芸場等も、イベント会場に該当する。
さらに、声を出す演者は、スピーチや会見を行う者であっても良い。したがって、講演会場や記者会見場も、イベント会場の例である。通常の会議室であっても、スピーカーのエリアと聴衆のエリアに分かれている場合、イベント会場に該当する。
【0064】
これらイベント会場に共通するのは、声又は息を出す演者がいる演者エリアと、それを聴く聴衆がいる聴衆エリアとに分かれている点である。コンサート会場におけるステージは演者エリアの典型例であり、観客席は聴衆エリアの典型例である。演者エリアと聴衆エリアが同じ高さであっても、両者の間に境界がある限り、イベント会場である。
【0065】
実施形態のイベント会場は、このような演者エリアと聴衆エリアの境界に雰囲気遮断浄化装置を設けた構成となっている。即ち、雰囲気遮断浄化装置は、演者エリアと聴衆エリアの間においてエアカーテンが形成されるよう設置されている。
図10では、コンサート会場の例が示されている。図10に示すように、このコンサート会場は、ステージ9の前縁部分に送風部が設置されている。この例では、送風部は、多数の送風ファン2を一列に並べた構成である。各送風ファンは、不図示のファンフレームによって保持されており、各ファンフレームの下側には不図示の脚部が設けられている。したがって、各送風ファン2はステージ9から浮いており、下側に空間が形成されている。もしくは、ステージ9の前縁から聴衆エリアに延びるアームを設置し、このアームによって各送風ファン2を保持することで下方の空間を確保しても良い。
【0066】
そして、送風部の上方に吸気部が設置されており、送付部と吸気部とがエアカーテン機構1を構成している。この例では、吸気部は、1個の吸気ファン3と1個の抗ウイルスHEPAフィルタ4とから成る複数の吸気ユニット30を一列に並べた構成である。吸気部は、不図示のフレームによって保持されており、フレームは照明機器等を設置するためのやぐらを利用して空中から吊り下げている。即ち、左右のやぐらの間に橋渡した不図示の梁に対してフレームが固定されており、これにより吸気部が保持されている。
【0067】
図10に示すイベント会場では、雰囲気遮断浄化装置が、演者エリアと聴衆エリアとを遮断してエアカーテンを形成する。このため、演者が発する飛沫やエアロゾルは、エアカーテンに乗って吸い上げられ、抗ウイルスHEPAフィルタ4に通される。このため、演者が万が一ウイルスに感染していても、抗ウイルスHEPAフィルタ4によって無害化され、聴衆が感染してしまうことはない。そして、見た目には、エアカーテンという空気の流れが存在するだけであるので、聴衆にとって違和感はなく、コンサートの状況が損なわれてしまうことはない。
【0068】
このような効果は、コンサート会場以外であっても同様であり、演劇や話芸、講演やスピーチ、記者会見等のイベントが開催されるイベント会場において、ウイルス感染を効果的に防止することができ、イベントの状況が損なわれてしまうことはない。
尚、イベント会場の発明の実施形態においても、送風部としてコンプレッサによって送風口から送風してエアカーテンを形成する構成を採用することが可能である。また、イベント会場の発明の実施形態においても、送風部と吸気部とは上下が逆であっても良い。
【0069】
次に、第三の実施形態の雰囲気遮断浄化装置について説明する。図11は、第三の実施形態の雰囲気遮断浄化装置の正面断面概略図である。
第三の実施形態の雰囲気遮断浄化装置は、可搬型の(ポータブルな)ものとなっている。図11には、二つの例が示されている。図11(1)では、卓上にて使用することを想定した可搬型の雰囲気遮断浄化装置が示されている。この例の雰囲気遮断浄化装置は、上下で向かい合っている送風部と吸気部とが支柱100で連結されている。支柱100は、左右に二本又は前後左右に四本設けられる。前後は、図11の紙面垂直方向である。
【0070】
送風部は、複数の送風ファン2が一列に並べられた構成であり、枠状のファンフレーム25に固定されて相互に連結されている。支柱100は、ファンフレーム25に下端が固定されている。二本の支柱100が設けられる場合、ファンフレーム25の幅方向(前後方向)の中央に各支柱100の下端が固定される。支柱100が四本設けられる場合、ファンフレーム25の四隅に下端が固定される。
尚、ファンフレーム25の下面には、左右に脚部26が固定されている。脚部26は、各送風ファン2の下側に空間を確保するための部材である。
【0071】
吸気部は、1個の吸気ファン3と1個の抗ウイルスHEPAフィルタ4とから成る吸気ユニット30を複数一列に並べた構成であり、枠状のユニットフレーム35の内側に固定、保持されている。尚、図11(1)の例では、ユニットユニットフレーム35の上面には、左右に取っ手36が設けられている。
図11(1)には不図示であるが、各送風ファン2及び各吸気ファン3に電力を供給する電源ケーブルが設けられている。吸気ファン3への電源ケーブルは、支柱100内に設けられている。
【0072】
図11(2)には、可搬型ではあるものの、天井から吊り下げて使用するタイプの雰囲気遮断浄化装置が示されている。この例は、送風部及び吸気部は図11(1)に示すものと同様であるが、吸気部のユニットフレーム35には、吊り下げ用のチェーン37の下端が左右に固定されている。
送風部は、吸気部に対してワイヤー101で吊り下げられている。ワイヤー101も、左右二本又は四隅に四本設けられる。ワイヤー101は金属製であっても良く、十分な強度のプラスチック製であっても良い。
【0073】
また、送風部において、ファンフレーム25の下面にはアジャスタ27が取り付けられている。アジャスタ27は、図11(1)に示す脚部と同様に左右に設けられて各送風ファン2の下側に空間を確保するためのものであるが、高さを調節可能なものである。アジャスタ27は、ねじ切りされた軸棒とこれがねじ込まれる受け皿とで構成されたものであり、テーブルの脚部の下端に設けるのと同様のものである。アジャスタ27も、左右に2個又は四隅に4個設けられる。
【0074】
図11(1)(2)に示す各雰囲気遮断浄化装置においても、送風部及び吸気部から成るエアカーテン機構1によりエアカーテンが形成されて雰囲気が遮断されるので、一方の側にウイルス感染者がいても他方の側にいる者が感染してしまうことが無くなる。そして、可搬型のコンパクトな装置であるので、必要な場所に持っていって簡便にウイルス感染防止対策を行うことができ、この点で特に好適となる。
【0075】
例えば、図11(1)に示すタイプのものは、飲食店におけるカウンターに設置し、客と店員との間を仕切ってウイルス感染防止対策とする場合に好適である。この場合も、エアカーテンを通して会話ができ、単なる風の流れであるので、ビニールシートで区切るのに比べて違和感なく接客ができる。別の例としては、官公署やホテル、各種施設における窓口カウンターに設置しても良く、同様の効果が得られる。
【0076】
図11(2)のタイプについても同じように使用できるが、比較的高さが高いエリアにおいて雰囲気遮断をする場合に用いると好適である。図11(1)に示すタイプの場合、高さが高くなると転倒し易くなるので、図11(2)に示すタイプのように天井と連結するようにすることが好ましい。天井との連結については、家具の転倒防止用のものと同様につっかえ棒状のものを採用することもできる。
【0077】
図11に示す各例の雰囲気遮断浄化装置は、全体として可搬型のものであったが、送風部と吸気部とが別々に持ち運べるものであっても良い。例えば、図11(1)に示す構成において、支柱は設けられておらず、送風部を卓上に設置し、吸気部を天井から吊り下げる構成であっても良い。この場合は、支柱やワイヤーのような連結部材が無くなるので、開放感があって見栄えが良くなるメリットがある。但し、一体持ち運び型と比べると、送風部と吸気部とを向かい合うよう正しい位置に配置しなければならず、設置に際しての簡便さという点では一体持ち運び型の方が優れている。
【0078】
次に、第四の実施形態の雰囲気遮断浄化装置について説明する。図12は、第四の実施形態の雰囲気遮断浄化装置の正面断面概略図である。図12において、(1)は正面断面概略図、(2)は側面概略図である。
第四の実施形態の雰囲気遮断浄化装置は、送風部の構成が上記各実施形態と異なっている。図12に示すように、第四の実施形態においても、送風部は脚部26を備えており、送風ファン2の下側の空間を確保している。
【0079】
この実施形態では、送風部における送風の際の吸気をより安定化させるため、脚部26を少し高くするとともに流入の安定化を図っている。エアカーテンの形成のためには、ある程度の風量で送風する必要があるが、軸流ファンである送風ファン2を一列に並べた構造では、両端に位置する送風ファン2の外側(隣接する送風ファンがない側)からの吸い込みが多くなり易く、この影響で送風動作が不安定化することがあることが判明している。これを考慮し、この実施形態では、脚部26を少し高くし、前後方向(図12に示す垂直方向)における脚部26の間の空間を通って流入する風を抑える制風部28を設けている。この例では、制風部28は、比較的粗い目の金網となっており、前後方向での脚部26の間の空間を塞ぐよう取り付けられている。この他、ジャロジー窓と同様の構造のルーバーを、制風部として設けても良い。
第四の実施形態の雰囲気遮断浄化装置によれば、送風部が、エアカーテンの分布方向の端部から流入する風を抑える制風部28を有しているので、送風動作がより安定化する。第四の実施形態における制風部28は、図11の実施形態等においても採用しても良いことは勿論である。
【符号の説明】
【0080】
1 エアカーテン機構
10 雰囲気遮断浄化装置
2 送風ファン
22 コンプレッサ
24 スリット
3 吸気ファン
30 吸気ユニット
31 吸気ガイド
32 吸気ガイド
4 抗ウイルスHEPAフィルタ
6 医療用ベッド
7 ストレッチャー
8 車椅子
9 ステージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2020-09-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項5
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項5】
人が発するエアロゾルを請求項1乃至4いずれかに記載の雰囲気遮断浄化装置を使用して浄化するエアロゾル浄化方法であって、
前記一方の側は、エアロゾルを発する人がいる側であり、
人が発したエアロゾルをエアカーテン機構によるエアカーテンに乗せて吸気ファンにより吸い込ませ、抗ウイルスHEPAフィルタにより浄化することを特徴とするエアロゾル浄化方法。
【手続補正書】
【提出日】2021-01-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定方向の面状の空気の流れであるエアカーテンを鉛直な平面に沿って形成して当該鉛直な平面の一方の側と他方の側とを遮断するエアカーテン機構を備えた雰囲気遮断浄化装置であって、
エアカーテン機構は、向かい合って配置された送風部及び吸気部とを備えており、
送風部は送風ファン又はコンプレッサを備えていて、吸気部に向けて送風する要素であり、
吸気部は、吸気ファンと、ウイルスを不活化するHEPAフィルタである抗ウイルスHEPAフィルタとを備えており、
抗ウイルスHEPAフィルタは、吸気ファンにより吸い込まれた空気が通過して浄化された後に放出される位置に設けられていることを特徴とする雰囲気遮断浄化装置。
【請求項2】
前記送風部及び前記吸気部は、上下に向かい合って設けられており、
前記一定方向の面状の流れは、鉛直方向の流れであることを特徴とする請求項1記載の雰囲気遮断浄化装置。
【請求項3】
前記吸気部は、流入するエアカーテンをガイドする第一第二の吸気ガイドを有しており、
前記鉛直な面に垂直な方向を前後方向としたとき、第一の吸気ガイドは前記吸気部の前後方向の一方の側の縁から前記送風部の側に鉛直な平面に沿って延びており、第二の吸気ガイドは他方の側の縁から前記送風部の側に鉛直な平面に沿って延びており、
第一第二の吸気ガイドは、前記鉛直な面に沿った方向であって前記一定方向に垂直な方向に長いことを特徴とする請求項1又は2に記載の雰囲気遮断浄化システム。
【請求項4】
前記送風部と前記吸気部とは相互に連結されていて全体として人が手で持ち運べる可搬型であるか、又は前記送風部と前記吸気部は分離していてそれぞれ人が手で持ち運べる可搬型であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の雰囲気遮断浄化装置。
【請求項5】
人が発するエアロゾルを請求項1乃至4いずれかに記載の雰囲気遮断浄化装置を使用して浄化するエアロゾル浄化方法であって、
前記一方の側は、エアロゾルを発する人がいる側であり、
人が発したエアロゾルをエアカーテン機構によるエアカーテンに乗せて吸気ファンにより吸い込ませ、抗ウイルスHEPAフィルタにより浄化することを特徴とするエアロゾル浄化方法。
【請求項6】
トレーニング室を有しており、請求項1乃至4いずれかに記載の雰囲気遮断浄化装置がトレーニング室に設置されており、
雰囲気遮断浄化装置における前記エアカーテン機構は、トレーニング室に設置されたフィットネスマシンを利用者が利用している際、当該利用者の正面の側において前記エアカーテンを作るよう設けられていることを特徴とするフィットネスクラブ。
【請求項7】
請求項1乃至3いずれかに記載の雰囲気遮断浄化装置を備えた医療設備であって、
前記エアカーテン機構における前記送風部及び前記吸気部は、患者を取り囲んで前記エアカーテンが形成されるよう平面視において患者がいる位置を取り囲む形状であることを特徴とする医療設備。
【請求項8】
前記医療設備は、医療用ベッドを備えた病室であり、
前記エアカーテン機構は、医療用ベッドの寝床部の上側の空間を取り囲んでエアカーテンが形成されるよう前記送風部と前記吸気部は平面視において寝床部を取り囲む形状を有しており、寝床部の周囲において向かい合って設けられていることを特徴とする請求項7記載の医療設備。
【請求項9】
前記医療設備は、ストレッチャー又は担架であり、
前記エアカーテン機構は、ストレッチャー又は担架の寝床部の上側の空間を取り囲んでエアカーテンが形成されるよう前記送風部と前記吸気部は平面視において寝床部を取り囲む形状を有しており、寝床部の周囲において向かい合って設けられていることを特徴とする請求項7記載の医療設備。
【請求項10】
前記医療設備は、座面部を備えた車椅子であり、
前記エアカーテン機構は、座面部の上側の空間を取り囲んでエアカーテンが形成されるよう前記送風部と前記吸気部は平面視において座面部を取り囲む形状を有しており、座面部の周囲において向かい合って設けられていることを特徴とする請求項7記載の医療設備。
【請求項11】
声又は息を吹き出す演者がいる演者エリアと、聴衆がいる聴衆エリアとを有するイベント会場であって、
請求項1乃至4いずれかに記載の雰囲気遮断浄化装置を備えており、
雰囲気遮断装置のエアカーテン機構は、演者エリアと聴衆エリアとの間において前記エアカーテンが形成されるよう、前記送風部と前記吸気部とは、演者エリアと聴衆エリアとの間において上下に向かい合っていることを特徴とするイベント会場。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記課題を解決するため、この明細書において、雰囲気遮断浄化装置、エアロゾル浄化方法、フィットネスクラブ、医療設備、イベント会場の各発明が開示される。
開示された発明に係る雰囲気遮断浄化装置は、一定方向の面状の空気の流れであるエアカーテンを鉛直な平面に沿って形成して当該鉛直な平面の一方の側と他方の側とを遮断するエアカーテン機構を備えた雰囲気遮断浄化装置であって、
エアカーテン機構は、向かい合って配置された送風部及び吸気部とを備えており、
送風部は送風ファン又はコンプレッサを備えていて、吸気部に向けて送風する要素であり、
吸気部は、吸気ファンと、ウイルスを不活化するHEPAフィルタである抗ウイルスHEPAフィルタとを備えており、
抗ウイルスHEPAフィルタは、吸気ファンにより吸い込まれた空気が通過して浄化された後に放出される位置に設けられている。
この雰囲気遮断浄化装置は、送風部及び吸気部が上下に向かい合って設けられており、一定方向の面状の流れは鉛直方向の流れであるという構成を持ち得る。
また、この雰囲気遮断浄化装置は、吸気部が流入するエアカーテンをガイドする第一第二の吸気ガイドを有しており、鉛直な面に垂直な方向を前後方向としたとき、第一の吸気ガイドは吸気部の前後方向の一方の側の縁から送風部の側に鉛直な平面に沿って延びており、第二の吸気ガイドは他方の側の縁から送風部の側に鉛直な平面に沿って延びており、第一第二の吸気ガイドは、鉛直な面に沿った方向であって一定方向に垂直な方向に長いという構成を持ち得る。
また、この雰囲気遮断浄化装置は、送風部と吸気部とは相互に連結されていて全体として人が手で持ち運べる可搬型であるか、又は送風部と吸気部は分離していてそれぞれ人が手で持ち運べる可搬型であるという構成を持ち得る。
また、開示された発明に係るエアロゾル浄化方法は、人が発するエアロゾルを上記いずれかの雰囲気遮断浄化装置を使用して浄化するエアロゾル浄化方法であって、一方の側は、エアロゾルを発する人がいる側であり、人が発したエアロゾルをエアカーテン機構によるエアカーテンに乗せて吸気ファンにより吸い込ませ、抗ウイルスHEPAフィルタにより浄化する方法である。
また、開示された発明に係るフィットネスクラブは、トレーニング室を有しており、上記いずれかの雰囲気遮断浄化装置がトレーニング室に設置されており、雰囲気遮断浄化装置におけるエアカーテン機構は、トレーニング室に設置されたフィットネスマシンを利用者が利用している際、当該利用者の正面の側においてエアカーテンを作るよう設けられている。
また、開示された発明に係る医療設備は、上記いずれかの雰囲気遮断浄化装置を備えた医療設備であり、エアカーテン機構における送風部及び吸気部は、患者を取り囲んでエアカーテンが形成されるよう平面視において患者がいる位置を取り囲む形状である。
この医療設備は、医療用ベッドを備えた病室であり、エアカーテン機構は、医療用ベッドの寝床部の上側の空間を取り囲んでエアカーテンが形成されるよう送風部と吸気部は平面視において寝床部を取り囲む形状を有しており、寝床部の周囲において向かい合って設けられているという構成を持ち得る。
また、この医療設備は、ストレッチャー又は担架であり、エアカーテン機構は、ストレッチャー又は担架の寝床部の上側の空間を取り囲んでエアカーテンが形成されるよう送風部と吸気部が平面視において寝床部を取り囲む形状を有しており、寝床部の周囲において向かい合って設けられているという構成を持ち得る。
また、この医療設備は、座面部を備えた車椅子であり、エアカーテン機構は、座面部の上側の空間を取り囲んでエアカーテンが形成されるよう送風部と吸気部が平面視において座面部を取り囲む形状を有しており、座面部の周囲において向かい合って設けられているという構成を持ち得る。
開示された発明に係るイベント会場は、声又は息を吹き出す演者がいる演者エリアと、聴衆がいる聴衆エリアとを有するイベント会場であって、上記いずれかの雰囲気遮断浄化装置を備えており、雰囲気遮断装置のエアカーテン機構は、演者エリアと聴衆エリアとの間においてエアカーテンが形成されるよう、送風部と吸気部とは、演者エリアと聴衆エリアとの境間において上下に向かい合っている。