(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051507
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォームとその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20220324BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20220324BHJP
C08K 3/015 20180101ALI20220324BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20220324BHJP
【FI】
C08G18/00 K
C08L75/04
C08K3/015
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125348
(22)【出願日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】P 2020157110
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098752
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 吏規夫
(72)【発明者】
【氏名】石井 裕子
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002CK021
4J002CK031
4J002CK041
4J002DE046
4J002DE146
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4J034RA02
4J034RA03
(57)【要約】
【課題】抗菌作用と抗ウイルス作用を有するポリウレタンフォームの提供を目的とする。
【解決手段】口および鼻孔を含む顔面の一部を覆い、左右両端側に耳掛け部13を有するポリウレタンフォーム製のマスク10に好適なポリウレタンフォームを、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒、添加剤が配合されたポリウレタンフォーム組成物から形成されたものとし、添加剤として抗菌剤が配合され、抗菌剤が、シリカ、アルミナ、金属酸化物から合成される多孔質珪酸塩鉱物であって、抗ウイルス性を有する抗ウイルス剤であり、ポリウレタンフォームは抗ウイルス作用を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒、添加剤を配合したポリウレタンフォーム組成物から形成されたポリウレタンフォームにおいて、
前記添加剤として抗菌剤が配合され、
前記抗菌剤が、金属酸化物、シリカ及びアルミナから合成される多孔質珪酸塩鉱物であることを特徴とするポリウレタンフォーム。
【請求項2】
前記添加剤として、酸化防止剤、紫外線防止剤、光変色防止剤、NOx変色防止剤の何れかが配合されていることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項3】
黄変性は、ΔYI値が50以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項4】
剥離強度は、4N以上であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項5】
前記抗菌剤は、抗ウイルス性を有する抗ウイルス剤であり、前記ポリウレタンフォームは、抗ウイルス作用を有することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項6】
ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒、添加剤を配合したポリウレタンフォーム組成物を発泡させることにより、ポリウレタンフォームを製造する方法において、
前記添加剤として酸化防止剤と抗菌剤が配合され、
前記抗菌・抗ウイルス剤が、金属酸化物、シリカ及びアルミナから合成される多孔質珪酸塩鉱物であることを特徴とするポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項7】
前記添加剤として、紫外線防止剤、光変色防止剤、NOx変色防止剤が配合されていることを特徴とする請求項6に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンフォームとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
口および鼻孔を含む顔面の一部を覆うマスクを、ポリウレタンフォームで形成したものが提案されている(特許文献1)。
【0003】
また、マスクは衛生的であるのみならず、色などにおいて清潔感を有するものが求められる。
しかし、従来のマスクに使用されているポリウレタンフォームは、抗菌作用、抗ウイルス作用について考慮されてなく、しかも紫外線等により変色し易いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、抗菌作用と抗ウイルス作用を有し、例えば、マスク等の衛生用途やブラパッド等の衣料用途、あるいはフィルター等の用途に好適なポリウレタンフォームの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒、添加剤を配合したポリウレタンフォーム組成物から形成されたポリウレタンフォームにおいて、前記添加剤として抗菌剤が配合され、前記抗菌剤が、金属酸化物、シリカ及びアルミナから合成される多孔質珪酸塩鉱物であることを特徴とする。
【0007】
第2の態様は、第1の態様において、前記添加剤として、酸化防止剤、紫外線防止剤、光変色防止剤、NOx変色防止剤の何れかが配合されていることを特徴とする。
【0008】
第3の態様は、第1または第2の態様において、黄変性は、ΔYI値が50以下であることを特徴とする。
【0009】
第4の態様は、第1から第3の態様の何れか一の態様において、剥離強度は、4N以上であることを特徴とする。
【0010】
第5の態様は、第1から第4の態様の何れか一の態様において、前記抗菌剤は、抗ウイルス性を有する抗ウイルス剤であり、前記ポリウレタンフォームは、抗ウイルス作用を有することを特徴とする。
【0011】
第6の態様は、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒、添加剤を配合したポリウレタンフォーム組成物を発泡させることにより、ポリウレタンフォームを製造する方法において、前記添加剤として抗菌剤が配合され、前記抗菌剤が、金属酸化物、シリカ及びアルミナから合成される多孔質珪酸塩鉱物であることを特徴とする。
【0012】
第7の態様は、第6の態様において、前記添加剤として、酸化防止剤、紫外線防止剤、光変色防止剤、NOx変色防止剤の何れかが配合されていることを特徴とする。
【0013】
第8の態様は、第6または第7の態様において、前記抗菌剤は抗ウイルス性を有する抗ウイルス剤であり、前記ポリウレタンフォームは抗ウイルス作用を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、単一素材で抗菌作用と抗ウイルス作用を有するポリウレタンフォームが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態のマスクを示す図である。
【
図2】各比較例と各実施例の配合及び物性等を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のポリウレタンフォームの実施形態について説明する。
図1の(1-A)に示す打ち抜き体10Aは、本発明のポリウレタンフォームからマスク形状に打ち抜き形成されたものである。符号13は、耳掛け用の開口部である。
打ち抜き体10Aは、顔の左右中心となる中央部15で左右が折り重ねられ、
図1の(1-B)に示すように、中央部15に沿って所定幅で溶着されてマスク10が形成される。符号16で示す斜線線部分は溶着部分である。
中央部15の溶着部分16は、マスク10が左右に拡げられて使用される際に、中央部15が外方へ膨らんで鼻の盛り上がりに対応した立体形状となるように溶着範囲が決められる。なお、本発明のポリウレタンフォームから形成されるマスクは、
図1に示すマスクの形態に限られない。
【0017】
本発明のポリウレタンフォームは、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒、添加剤を配合したポリウレタンフォーム組成物から発泡形成されたものである。
【0018】
ポリオールは、多価アルコール、又はこれらにエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)等のアルキレンオキサイドが付加されたものであり、軟質ポリウレタンフォーム用のポリオールを使用することができ、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオールの何れでもよく、それらの一種類あるいは複数種類を使用してもよい。
【0019】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコールにエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを挙げることができる。
【0020】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族グリコール等とから重縮合して得られたポリエステルポリオールを挙げることできる。
また、ポリエーテルエステルポリオールとしては、前記ポリエーテルポリオールと多塩基酸を反応させてポリエステル化したもの、あるいは1分子内にポリーエーテルとポリエステルの両セグメントを有するものを挙げることができる。
【0021】
ポリオールについては、水酸基価(OHV)が30~80mgKOH/g、官能基数が2~4、重量平均分子量が1500~5000であるポリオールを単独または複数用いることが好ましい。特にポリエステルポリオール又はエステル成分が含まれるポリオールを用いた場合は、溶着による接着性が高く、剥離強度を高くすることができる。一方ポリエーテルポリオールを用いた場合は、耐湿熱老化性が優れており、繰り返し洗えるマスクに使用するには好ましい。
【0022】
ポリイソシアネートは、イソシアネート基を2以上有する脂肪族系または芳香族系ポリイソシアネート、それらの混合物、およびそれらを変性して得られる変性ポリイソシアネートを使用することができる。脂肪族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキサメタンジイソシアネート等を挙げることができ、芳香族ポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメリックMDI(クルードMDI)等を挙げることができる。なお、その他プレポリマーも使用することができる。
【0023】
イソシアネートインデックス(INDEX)は、100以上が好ましく、より好ましくは103~120である。イソシアネートインデックスは、イソシアネートにおけるイソシアネート基のモル数をポリオールの水酸基などの活性水素基の合計モル数で割った値に100を掛けた値であり、[イソシアネートのNCO当量/活性水素当量×100]で計算される。
【0024】
発泡剤としては、水、代替フロンあるいはペンタンなどの炭化水素を、単独または組み合わせて使用できる。水の場合は、ポリオールとポリイソシアネートの反応時に炭酸ガスを発生し、その炭酸ガスによって発泡がなされる。発泡剤としての水の量は、ポリオール100重量部に対して1.0~4.0重量部が好ましい。
【0025】
触媒としては、公知のウレタン化触媒を併用することができる。例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノモルフォリン、N-エチルモルホリン、テトラメチルグアニジン等のアミン触媒や、スタナスオクトエートやジブチルチンジラウレート等のスズ触媒やフェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)を挙げることができ、アミン触媒と金属触媒の何れか一方のみ、あるいは両者の併用でもよい。アミン触媒の量は、ポリオール100重量部に対して0.1~3重量部が好ましい。金属触媒の量は、0~0.1重量部が好ましい。
【0026】
添加剤としては、抗菌剤が含まれる。さらに、添加剤として酸化防止剤、紫外線吸収剤、光変色防止剤、NOx変色防止剤の何れかが含まれることが好ましい。
【0027】
抗菌剤は、抗ウイルス作用を有する抗ウイルス剤であり、金属酸化物、シリカ及びアルミナから合成される多孔質珪酸塩鉱物が使用される。金属酸化物、シリカ及びアルミナから合成される多孔質珪酸塩鉱物としては、含アルミニウム珪酸金属塩、又は、その水和物が例示できる。金属酸化物としては酸化亜鉛が好ましい。シリカ、アルミナ、金属酸化物で合成された多孔質珪酸塩鉱物(含アルミニウム珪酸金属塩)は、銀系の抗菌剤よりも優れた抗菌効果と抗ウイルス効果が得られる。金属酸化物として酸化亜鉛を採用した多孔質珪酸塩鉱物における三成分の割合は、SiO2:5~80モル%、ZnO:5~65モル%、Al2O3:1~60モル%が好ましい。好適な多孔質珪酸塩鉱物におけるシリカ、アルミナ及び酸化亜鉛の組成式としては、aSiO2・Al2O3・bZnOを例示できる。上記組成式において、aは7≦a≦10、bは3≦b≦7を満足することが好ましく、aは8≦a≦9、bは4≦b≦6を満足することがより好ましい。
多孔質珪酸塩鉱物のコールターカウンター法により測定される平均粒子径は、1~10μmであり、2~5μmが好ましい。
抗菌剤(抗ウイルス作用を有する抗ウイルス剤)の量は、ポリオール100重量部に対して0.1~3重量部が好ましく、より好ましくは0.3~3重量部、さらに好ましくは0.4~2.0重量部であり、0.5~1.5重量部が特に好ましい。
【0028】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、特に、BHT(ジブチルクレゾール)、ヒンダードフェノール系等を挙げることができる。酸化防止剤をポリウレタンフォーム組成物に配合することにより、ポリウレタンフォームの変色防止効果が得られる。酸化防止剤の量は、ポリオール100重量部に対して0.1~3重量部が好ましく、より好ましくは0.5~1.0重量部である。
【0029】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0030】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-(1,1,3,3-テトラエチルブチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス(6-(2Hベンゾトリアゾール-2-イル)-4-1,1,3,3-(テトラメチルブチル)フェノール)、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-(t-ブチル)フェノール等を挙げることができる。
【0031】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシベンゼンスルホニックアシッド2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0032】
ベンゾエート系紫外線吸収剤としては、2,4-t-ブチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等を挙げることができる。
【0033】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート等を挙げることができる。
【0034】
紫外線吸収剤を配合することにより、紫外線によるポリウレタンフォームの変色を抑える効果を高めることができる。紫外線吸収剤の量は、ポリオール100重量部に対して0.05~0.5重量部が好ましく、より好ましくは0.1~0.3重量部である。
【0035】
光変色防止剤(光安定剤)としては、ヒンダードアミン系を挙げることができる。光変色防止剤を配合することにより、太陽光・紫外線によるポリウレタンフォームの変色を抑える効果を高めることができる。
【0036】
ヒンダードアミン系光変色防止剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、ポリ((6-((1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ)-s-テトラジン-2,4-ジジル)(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)))、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート等を挙げることができる。
光変色防止剤の量は、ポリオール100重量部に対して0.05~0.5重量部が好ましく、より好ましくは0.05~0.3重量部である。
【0037】
NOx変色防止剤としては、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤を挙げることができる。NOx変色防止剤を配合することにより、大気に含まれるNOxによるポリウレタンフォームの変色を抑える効果が得られる。
リン系酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールジホスフェート、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト等を挙げることができる。
硫黄系酸化防止剤としては、ビス{2-メチル-4-〔3-n-アルキル(C12又はC14)チオプロピオニルオキシ〕-5-t-ブチルフェニル}スルフィド等を挙げることができる。
NOx変色防止剤の量は、ポリオール100重量部に対して0.5~2重量部が好ましく、より好ましくは0.7~1.5重量部である。
【0038】
ポリウレタンフォーム組成物には、その他の助剤等を加えてもよい。例えば、整泡剤、着色剤等を上げることができる。
整泡剤としては、軟質ポリウレタンフォーム用として公知のものを使用することができる。例えば、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤および公知の界面活性剤を挙げることができる。
着色剤は、マスクの使用者の好みに応じた色のものが適宜配合される。
【0039】
ポリウレタンフォーム組成物の発泡は、スラブ発泡が好ましい。スラブ発泡は、ポリウレタンフォーム組成物を混合させてベルトコンベア上に吐出し、大気圧下、常温で発泡させる方法である。
また、発泡形成したポリウレタンフォームから、
図1に示したマスク10の形成は、次のようにして行うことができる。
ポリウレタンフォームを、スキ加工によって例えば厚み2mm程度のシート状にし、得られたシート状のポリウレタンフォームをマスク形状の型面を有する打ち抜き用金型で打ち抜いて打ち抜き体を形成し、次に打ち抜き体を顔の左右中心となる中央部で折り重ね、溶着用金型に挟み、中央部に沿って所定幅を溶着してマスクを形成する。溶着は、例えば温度(金型温度)200~300℃で所定時間、折り重ねられた打ち抜き体をプレスすることにより行うことができる。
【実施例0040】
以下の成分から、
図2に示す各比較例及び各実施例における配合のポリウレタンフォーム組成物を作製し、作製したポリウレタンフォーム組成物を混合し、発泡させてポリウレタンフォームを作製した。
【0041】
・ポリオール;ポリエステルポリオール、分子量:2600、官能基数2.4、水酸基価51mgKOH/g、品名:N-101、日本ポリウレタン工業(株)社製
・アミン触媒;N-エチルモルホリン、品名:カオーライザーNo.22、花王(株)社製
・整泡剤;シリコーン整泡剤、品名:SE232、モメンティブ社製
・発泡剤;水
・酸化防止剤;ヒンダードフェノール系、ベンゼンプロパン酸,3,5-ビス(1,1-メチル-エチル)-4ヒドロキシ-,C7-C9側鎖アルキルエステル、品名:I-1135、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製
・紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール系、品名:T-571、BASF社製
・光変色防止剤;ヒンダードアミン系、品名:T-765、BASF社製
・NOx変色防止剤;リン系酸化防止剤、品名:CS-22LF、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製
・抗菌剤;銀系、品名:ゼオミックAW10N、シナネンゼオミック社製
・抗菌・抗ウイルス剤:本発明の抗菌剤(抗ウイルス性を有する抗ウイルス剤)、酸化亜鉛/二酸化ケイ素/酸化アルミニウムの多孔質珪酸塩鉱物、平均粒子径2.5~4.5μm、品名:ラオナイトSF、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、シリカ、アルミナ及び酸化亜鉛の組成式:8.6SiO2・Al2O3・4.8ZnO
・イソシアネート;T-65、2,4-TDI/2,6-TDI=65/35
【0042】
ポリウレタンフォームの発泡性の評価を行った。発泡性の評価は、パンク、ダウン、シュリンクがなく、良好に発泡した場合に「〇」とし、良好に発泡しなかった場合に「×」とした。評価結果は
図2に示す。
【0043】
作製したポリウレタンフォームの物性として、密度(JIS K6400)、セル数(JIS K 6400)、引張強度(JIS K 6400-5)、伸び(JIS K 6400-5)、通気性(JIS L 1096 A法)を測定し、測定結果に基づいてポリウレタンフォームの物性を評価した。物性の評価は、現行同等・製品規格を満たす場合に「〇」、顕著な劣化・低下がある場合に「×」とした。測定結果は
図2に示す。
【0044】
ポリウレタンフォームについて花粉捕集、抗菌性及び抗ウイルス性を測定した。
花粉捕集は、一般社団法人日本衛生材料工業連合会 全国マスク工業会における「花粉粒子捕集(ろ過)効率試験方法」に準じて行った。具体的には、粒径がスギ花粉と同等の約30μmである天然粒子を試験粒子として用い、これを一定流量で厚さ2mmのシート状のポリウレタンフォームに均一分散落下させた。規定量の試験粒子がポリウレタンフォームを通過した量を計測し、捕集効率(%)を算出した。測定結果は
図2に示す。捕集効率は99%以上が好ましい。
【0045】
抗菌性は、黄色ブドウ球菌と大腸菌について、JIS K6400-9:2019に基づいて、抗菌活性値を測定した。生菌数の常用対数につき、対象区(空振とう)の24時間振とう培養後数値は、5.02であった。測定結果は
図2に示す。黄色ブドウ球菌と大腸菌に対する測定結果は、何れも抗菌活性値が2.0以上であるのが好ましく、3.0以上がさらに好ましく、4.0以上が、特に好ましい。
【0046】
抗ウイルス性は、A型インフルエンザウイルスについて、JIS L 1922 プラーク法に基づいて、宿主細胞:A型インフルザとして、活性値を測定した。活性値が1以上~2未満で死滅率90%以上、活性値が2以上~3未満で致死率が99%以上、活性値が3以上で致死率99.9%以上である。抗ウイルス性は、活性値が2.0以上であるのが好ましく、3.0以上がさらに好ましく、4.0以上が、特に好ましい。
【0047】
ポリウレタンフォームについて難黄変性を測定して評価した。難黄変性の測定は、ポリウレタンフォームの試験片(t10mm×50mm×150mm)を、フェードメーターにより、63℃で10時間の照射を行い、照射前後の色差ΔYIを測定した。測定結果は
図2に示す。難黄変性は、ΔYI値が50未満が好ましく、20未満がさらに好ましい。
【0048】
ポリウレタンフォームから、次のようにしてマスクを作製し、剥離強度を測定した。
マスクの作製は、ポリウレタンフォームを、スキ加工と裁断によって厚み2mm×200mm×150mmのシート状にし、得られたシート状のポリウレタンフォームをマスク形状に打ち抜いて、
図1の(1-A)に示す打ち抜き体10Aを形成し、打ち抜き体10Aの中央部15で折り重ねて溶着用金型に挟み、溶着温度(金型温度)220℃、プレス時間1.5秒でプレスすることにより、中央部に沿って溶着し、
図1の(1-B)に示すマスク10を作製した。
【0049】
剥離強度の測定は、マスク10の作製後、マスク10を1日間常温で放置し、マスク10の中央部15が中央となるようにして幅25mmでカットして試験片を作製し、試験片を溶着部分が中央となるようにしてテンシロン試験機のチャックにセットし、チャック間を35mmとし、引張速度200mm/minで180度剥離を行うことにより、剥離強度(単位:N)を測定した。測定結果は
図2に示す。剥離強度は4N以上が好ましく、6N以上がさらに好ましい。
【0050】
各比較例と各実施例の結果について以下に示す。
・比較例1
比較例1は、ポリウレタンフォーム組成物が、ポリオール100重量部、アミン触媒2.00重量部、整泡剤1.51重量部、発泡剤1.40重量部、酸化防止剤0.50重量部、イソシアネートインデックス105.6からなり、紫外線吸収剤、光変色防止剤、NOx変色防止剤及び抗菌剤と抗菌・ウイルス剤(本発明の抗菌剤)の何れも配合されていない例である。
【0051】
比較例1は、密度71.2kg/m3、セル数70個/25mm、引張強度266kPa、伸び439%、通気性60.5ml/cm2/s、発泡性「〇」、物性「〇」である。また、花粉捕集は99.6%、剥離強度は6.9N、抗菌性は黄色ブドウ球菌について抗菌活性値が0.0、大腸菌について抗菌活性値が0.0、抗ウイルス性について活性値が0.0、難黄変性はΔYIが50.1であった。
【0052】
・比較例2
比較例2は、比較例1において抗菌剤として銀系の抗菌剤を0.20重量部配合した以外、比較例1と同様の配合からなる。
比較例2は、密度73.6kg/m3、セル数70個/25mm、引張強度348kPa、伸び491%、通気性69ml/cm2/s、発泡性「〇」、物性「〇」である。また、花粉捕集は99.6%、剥離強度は10.0N、抗菌性は黄色ブドウ球菌について抗菌活性値が4.0より多く、大腸菌については抗菌活性値が7.3より多く、抗ウイルス性については活性値が0.0、難黄変性はΔYIが59.2であった。
比較例2は、比較例1と比べ、抗菌剤として銀系の抗菌剤が配合されたことにより、抗菌性については向上したが、抗ウイルス性については効果が得られず、また、難黄変性については比較例1から悪化した。
【0053】
・実施例1
実施例1は、比較例2における銀系の抗菌剤の0.20重量部に代えて、酸化亜鉛/二酸化ケイ素/酸化アルミニウムの多孔質珪酸塩鉱物からなる抗菌・抗ウイルス剤(本発明の抗菌剤)を0.50重量部配合した以外、比較例2と同様の配合からなる。
実施例1は、密度71.0kg/m3、セル数76個/25mm、引張強度270kPa、伸び421%、通気性75ml/cm2/s、発泡性「〇」、物性「〇」である。また、花粉捕集は99.1%、剥離強度は11.0N、抗菌性は黄色ブドウ球菌については抗菌活性値が3.8より多く、大腸菌については抗菌活性値が5.4、抗ウイルス性については活性値が4.0、難黄変性はΔYIが47.3であった。
実施例1は、比較例2と比べ、銀系の抗菌剤に代えて酸化亜鉛/二酸化ケイ素/酸化アルミニウムの多孔質珪酸塩鉱物からなる抗菌・抗ウイルス剤(本発明の抗菌剤)が配合されたことにより、抗菌作用が向上すると共に抗ウイルス作用が得られ、難黄変性が向上した。
【0054】
・実施例2
実施例2は、実施例1の配合に、紫外線吸収剤0.21重量部、光変色防止剤0.11重量部、NOx変色防止剤0.98重量部を配合した以外、実施例1と同様の配合からなる。
実施例2は、密度73.8kg/m3、セル数78個/25mm、引張強度264kPa、伸び379%、通気性50ml/cm2/s、発泡性「〇」、物性「〇」である。また、花粉捕集は99.5%、剥離強度は4.2N、抗菌性は黄色ブドウ球菌について抗菌活性値が4.0、大腸菌については抗菌活性値が5.7、抗ウイルス性については活性値が4.0、難黄変性はΔYIが17.6であった。
実施例2は、実施例1と同様に抗菌作用及び抗ウイルス作用を有する。また、実施例2は、実施例1と比べ、紫外線吸収剤、光変色防止剤、NOx変色防止剤が配合されていることにより、難黄変性が実施例1から向上した。
【0055】
・実施例3
実施例3は、実施例2の配合における紫外線吸収剤を0.21重量部から0.16重量部に、光変色防止剤を0.11重量部から0.08重量部に、NOx変色防止剤を0.98重量部から0.73重量部にそれぞれ減量した以外、実施例2と同様の配合からなる。
実施例3は、密度76.1kg/m3、セル数70個/25mm、引張強度339kPa、伸び528%、通気性65ml/cm2/s、発泡性「〇」、物性「〇」である。また、花粉捕集は99.1%、剥離強度は11.2N、抗菌性は黄色ブドウ球菌について抗菌活性値が4.3、大腸菌について抗菌活性値が4.7、抗ウイルス性については活性値が4.0、難黄変性はΔYIが25.6であった。
実施例3は、実施例2と同様に抗菌作用及び抗ウイルス作用を有する。また、実施例3は、実施例2と比べ、紫外線吸収剤、光変色防止剤、NOx変色防止剤を減量したことにより、剥離強度が実施例2から向上し、難黄変性が実施例2から幾分下がった。
【0056】
・実施例4
実施例4は、実施例3の配合における抗菌・抗ウイルス剤(本発明の抗菌剤)を0.50重量部から1.00重量部に増量した以外、実施例3と同様の配合からなる。
実施例4は、密度76.8kg/m3、セル数70個/25mm、引張強度305kPa、伸び440%、通気性66ml/cm2/s、発泡性「〇」、物性「〇」である。また、花粉捕集は99.5%、剥離強度は11.0N、抗菌性は黄色ブドウ球菌について抗菌活性値が3.8より大、大腸菌について抗菌活性値が6.4、抗ウイルス性については活性値が4.2、難黄変性はΔYIが25.6であった。
実施例4は、実施例3と比べ、抗菌・抗ウイルス剤(本発明の抗菌剤)を増量したことにより、抗菌作用と抗ウイルス作用が向上した。
【0057】
このように、本発明のポリウレタンフォームは、金属酸化物、シリカ及びアルミナから合成される多孔質珪酸塩鉱物(酸化亜鉛/二酸化ケイ素/酸化アルミニウムの多孔質珪酸塩鉱物)からなる抗菌剤(抗ウイルス性を有する抗ウイルス剤)を含むことにより、抗菌作用及び抗ウイルス作用を有するため、衛生的であり、例えば、顔面の口及び鼻孔を覆うマスク等の衛生用途やブラパッド等の衣料用途、あるいはフィルター等の用途に好適なものである。また、単一素材で抗菌作用と抗ウイルス作用が得られる。