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2022-51551イオン交換性層状珪酸塩粒子、オレフィン重合用触媒成分、オレフィン重合用触媒、オレフィン重合用触媒の製造方法およびそれを用いたオレフィン重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051551
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】イオン交換性層状珪酸塩粒子、オレフィン重合用触媒成分、オレフィン重合用触媒、オレフィン重合用触媒の製造方法およびそれを用いたオレフィン重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/38 20060101AFI20220324BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20220324BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20220324BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
C01B33/38
B01J31/22 Z
C08F10/00 510
C08F4/6592
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151624
(22)【出願日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】P 2020157473
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】596133485
【氏名又は名称】日本ポリプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】船谷 宗人
【テーマコード(参考)】
4G073
4G169
4J128
【Fターム(参考)】
4G073BA03
4G073BA63
4G073CM15
4G073CN01
4G073FA15
4G073FB29
4G073FC13
4G073FC16
4G073FD08
4G073FD20
4G073FD22
4G073FE02
4G073GA01
4G073GA03
4G073GA11
4G073GA12
4G073GA14
4G073GA26
4G073GB10
4G073UA01
4G073UB38
4G169BA10A
4G169BA10B
4G169BA12B
4G169BC04B
4G169BC16B
4G169BC51B
4G169BD02A
4G169BD02B
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4G169BE01B
4G169BE02B
4G169BE05B
4G169BE06B
4G169BE32B
4G169BE37B
4G169BE38B
4G169CB47
4G169DA08
4G169EA01Y
4J128AA01
4J128AB00
4J128AC28
4J128AD06
4J128AD11
4J128AD13
4J128BA01B
4J128BA03A
4J128BB01B
4J128BB03A
4J128BC15A
4J128BC15B
4J128CA22A
4J128CA30A
4J128CA32A
4J128CA49A
4J128DA02
4J128DB02A
4J128DB04A
4J128DB08A
4J128EA01
4J128EA02
4J128EB04
4J128EC01
4J128ED01
4J128ED02
4J128ED09
4J128EF01
4J128EF04
4J128EF06
4J128FA01
4J128FA04
4J128FA08
4J128FA09
4J128GA05
4J128GB01
(57)【要約】
【課題】触媒活性や、重合体の品質を向上する新規な細孔構造を有するイオン交換性層状珪酸塩粒子を提供する。
【解決手段】 下記特性(i)および(ii)を有するイオン交換性層状珪酸塩粒子。
特性(i):窒素吸脱着法により測定された脱着等温線からBJH法によって算出された細孔分布曲線において、直径2nm~10nmの細孔容積の総和が、全メソ孔容積に対して40%以上、93%以下である。
特性(ii):比表面積が300m/g以上、700m/g以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記特性(i)および(ii)を有するイオン交換性層状珪酸塩粒子。
特性(i):窒素吸脱着法により測定された脱着等温線からBJH法によって算出された細孔分布曲線において、直径2nm~10nmの細孔容積の総和が、全メソ孔容積に対して40%以上、93%以下である。
特性(ii):比表面積が300m/g以上、700m/g以下である。
【請求項2】
さらに、下記特性(iii)を有することを特徴とする請求項1に記載のイオン交換性層状珪酸塩粒子。
特性(iii):平均粒子径が2μm以上、500μm以下である。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のイオン交換性層状珪酸塩粒子を含む、オレフィン重合用触媒成分。
【請求項4】
下記成分[A]、成分[B]、及び成分[C]を含むことを特徴とする、オレフィン重合用触媒。
成分[A]:請求項1又は2に記載のイオン交換性層状珪酸塩粒子
成分[B]:遷移金属化合物
成分[C]:有機アルミニウム化合物
【請求項5】
下記成分[A]、成分[B]、及び成分[C]を混合させることを特徴とする、オレフィン重合用触媒の製造方法。
成分[A]:請求項1又は2に記載のイオン交換性層状珪酸塩粒子
成分[B]:遷移金属化合物
成分[C]:有機アルミニウム化合物
【請求項6】
請求項4に記載のオレフィン重合用触媒を用いて、オレフィン重合を行うことを特徴とする、オレフィン重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換性層状珪酸塩粒子、オレフィン重合用触媒成分、オレフィン重合用触媒、オレフィン重合用触媒の製造方法およびそれを用いたオレフィン重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン交換性層状珪酸塩、リン酸ジルコニウム及び粘土鉱物は、吸着材や触媒、触媒担体等に広く用いられている。これらの用途における性能に与える因子は様々なものがあるが、細孔容積や細孔分布、比表面積はとりわけ大きな影響を与える。例えば、特許文献1では、吸着材として、特定の細孔分布をもつ粘土鉱物が例示されている。
また、粘土又は粘土鉱物をオレフィン重合用触媒成分として利用した触媒の存在下に、オレフィンを重合してオレフィン重合体を製造することは公知である(例えば、特許文献2)。
【0003】
また、酸処理や塩類処理を行ったイオン交換性層状化合物を成分として含むオレフィン重合用触媒も知られている(例えば、特許文献3)。
特許文献4では、触媒担体として特定の細孔分布をもつイオン交換性層状珪酸塩、及びオレフィン重合用触媒が開示されている。しかしながら、当該特定の細孔分布をもつイオン交換性層状珪酸塩は、触媒や吸着材としての性能に大きく影響する比表面積が小さく、必ずしも十分とは言えない。
【0004】
一方、イオン交換性層状珪酸塩からなる固体の細孔分布を制御する方法として、例えば特許文献5では、粘土鉱物に含有されるSiO結晶成分を非晶化することにより、細孔構造を制御している。しかしながら、この方法では、触媒活性を持たないSiO成分を含有させることになり、触媒活性の低下が懸念される。
【0005】
特許文献6では、スラリー中で実質的に不溶性の塩である炭酸カルシウムや炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム等を含む状態で粘土鉱物の乾燥造粒を行った後、酸と反応させ炭酸ガスを発生させること等により活性白土粒子の細孔構造を制御している。特許文献6には、不溶性塩の粒度分布等に言及はなく、1μm以上の細孔容積が増大するとされている。しかしながら、特許文献6の方法では、10~50nmのメソ孔の容積には影響を与えていない。
【0006】
特許文献7では、酸化亜鉛やチタニアといった微粒子状固体化合物と、イオン交換性層状珪酸塩とを液体中で混合して乾燥造粒させた後、酸により微粒子状固体化合物の少なくとも一部を溶出させることで細孔構造を制御する方法が開示されている。使用されている微粒子状固体化合物の平均粒子径が2.25μmから2.98μmであることから、μmオーダーの細孔構造を制御する技術と推察される。また、特許文献7の技術で得られるイオン交換性層状珪酸塩は、触媒や触媒担体としての性能に重要な、比表面積が小さい。
【0007】
特許文献8では、特定の組成をもつイオン交換性層状珪酸塩を利用することで、特定の細孔構造を形成することが開示されている。
特許文献9では、特定の粒子径に造粒したイオン交換性層状珪酸塩のアルミニウム成分を溶出させ、特定の粒子強度に調整することで改善を図っている。
上記のようにイオン交換性層状珪酸塩からなる固体の細孔分布等を制御することにより、触媒活性や、濾過性やポリマー製造時の運転性、製品品質の向上を図っている。しかしながら、未だ十分とは言えず、更なる向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開2010/032568号公報
【特許文献2】特開平5-295022号公報
【特許文献3】特開平7-228621号公報
【特許文献4】特開2002-088114号公報
【特許文献5】特開2013-082607号公報
【特許文献6】特開2000-344513号公報
【特許文献7】特開2003-252923号公報
【特許文献8】特開2015-108138号公報
【特許文献9】特開2019-172958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる従来技術の状況に鑑み、触媒活性や、重合体の品質を向上する新規な細孔構造を有するイオン交換性層状珪酸塩粒子、及び当該イオン交換性層状珪酸塩粒子を含むオレフィン重合用触媒成分、オレフィン重合用触媒、オレフィン重合用触媒の製造方法、およびそれを用いたオレフィン重合体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、窒素吸脱着法により測定された脱着等温線からBJH法によって算出された細孔分布曲線において、直径2nm~10nmの細孔容積の総和が全メソ孔容積に対して特定の範囲を有する新規なイオン交換性層状珪酸塩粒子を見出した。すなわち直径10nm超過50nm以下の細孔容積の総和が全メソ孔容積に対して従来より多めで、且つ、比表面積が特定の範囲で大きい、新規な細孔構造を有するイオン交換性層状珪酸塩粒子が、触媒活性や重合体の品質を向上することを見出した。
【0011】
本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子は、下記特性(i)および(ii)を有することを特徴とする。
特性(i):窒素吸脱着法により測定された脱着等温線からBJH法によって算出された細孔分布曲線において、直径2nm~10nmの細孔容積の総和が、全メソ孔容積に対して40%以上、93%以下である。
特性(ii):比表面積が300m/g以上、700m/g以下である。
【0012】
本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子においては、さらに、下記特性(iii)を有することが、吸着材や触媒、触媒担体として利用する場合の操作性の点から好ましい。
特性(iii):平均粒子径が2μm以上、500μm以下である。
【0013】
本発明のオレフィン重合用触媒成分は、前記本発明に係るイオン交換性層状珪酸塩粒子を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明のオレフィン重合用触媒は、下記成分[A]、成分[B]、及び成分[C]を含むことを特徴とする。
成分[A]:前記本発明に係るイオン交換性層状珪酸塩粒子
成分[B]:遷移金属化合物
成分[C]:有機アルミニウム化合物
【0015】
本発明のオレフィン重合用触媒の製造方法は、下記成分[A]、成分[B]、及び成分[C]を混合させることを特徴とする。
成分[A]:前記本発明に係るイオン交換性層状珪酸塩粒子
成分[B]:遷移金属化合物
成分[C]:有機アルミニウム化合物
【0016】
本発明のオレフィン重合体の製造方法は、前記記載のオレフィン重合用触媒を用いて、オレフィン重合を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、触媒活性や重合体の品質を向上する新規な細孔構造を有するイオン交換性層状珪酸塩粒子、及び当該イオン交換性層状珪酸塩粒子を含むオレフィン重合用触媒成分、オレフィン重合用触媒、オレフィン重合用触媒の製造方法、およびそれを用いたオレフィン重合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施例および比較例に記載のイオン交換性層状珪酸塩粒子について、全メソ孔容積に対する直径2nm~10nmの細孔容積の総和の割合を、BET比表面積m/gに対してプロットした図である。
図2図2は、実施例および比較例に記載のオレフィン重合用触媒によるプロピレン単独重合の結果について、重合活性を、得られた重合体のMFRに対してプロットした図である。
図3図3は、実施例および比較例に記載のオレフィン重合用触媒によるプロピレン-エチレンの2段重合の結果について、シートに含まれるフィッシュアイ数を、得られた重合体の分子量比(2段目の重合体の分子量を1段目の重合体の分子量で割った値)に対してプロットした図である。
図4図4は、実施例および比較例に記載のイオン交換性層状珪酸塩粒子の圧壊強度測定の結果をプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.イオン交換性層状珪酸塩粒子
本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子は、下記特性(i)および(ii)を有することを特徴とする。
特性(i):窒素吸脱着法により測定された脱着等温線からBJH法によって算出された細孔分布曲線において、直径2nm~10nmの細孔容積の総和が、全メソ孔容積に対して40%以上、93%以下である。
特性(ii):比表面積が300m/g以上、700m/g以下である。
【0020】
多孔性触媒における細孔構造は、触媒の活性や強度等の性能、ひいては経済性や運転性、製品の品質に影響を及ぼす。
鋭意研究の中で、本発明者は、窒素吸脱着法により測定された脱着等温線からBJH法によって算出された細孔分布曲線において、直径2nm~10nmの細孔容積の総和が全メソ孔容積に対して前記特定の範囲を有する新規なイオン交換性装用珪酸塩粒子を見出した。すなわち直径10nm超過50nm以下の細孔容積の総和が全メソ孔容積に対して従来より多めで、且つ、比表面積が特定の範囲で大きい、新規な細孔構造を有するイオン交換性層状珪酸塩粒子が、触媒活性や重合体の品質を向上することを見出した。
より具体的には、本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子は、高い重合活性でオレフィン重合体を製造できるオレフィン重合用触媒成分とすることができる。また、本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子は、製品外観を悪化させる製品中のフィッシュアイ(非相溶成分やゲル、触媒残渣の分散不良)が少ないオレフィン重合体を製造できるオレフィン重合用触媒成分とすることもできる。本発明は、このような効果を奏する新規な細孔構造を有するイオン交換性層状珪酸塩粒子、及び当該イオン交換性層状珪酸塩粒子を含むオレフィン重合用触媒成分、オレフィン重合用触媒を提供することができる。
【0021】
従来のイオン交換性層状珪酸塩粒子では、直径の大きいメソ孔の割合が増えると、比表面積が小さくなることで活性低下を引き起こすという問題があった。直径の大きいメソ孔の割合が高く且つ比表面積が大きいイオン交換性層状珪酸塩粒子の製造は困難だったからである。それに対して、本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子は、直径10nm超過50nm以下の細孔容積の総和が全メソ孔容積に対して従来より多めで、且つ、比表面積が特定の範囲で大きい適度な細孔を有することにより、触媒の活性点が増加し、触媒活性が向上すると考えられる。また、本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子は、粒子内のモノマーの拡散も向上し、活性点の活性のばらつきが減少することにより、極端に高分子量な重合体を生成するような活性点が減少する等、均一な重合体が生成しやすくなり、製品中のフィッシュアイが少ないオレフィン重合体を製造できると考えている。
【0022】
以下、本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子、オレフィン重合用触媒成分、オレフィン重合用触媒、オレフィン重合用触媒の製造方法、およびそれを用いたオレフィン重合体の製造方法について、項目毎に詳細に説明する。
なお、本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、下記のイオン交換性層状珪酸塩粒子の特性は、単一粒子で測定する圧壊強度以外は、イオン交換性層状珪酸塩粒子の集合体としての特性である。
【0023】
1-1.イオン交換性層状珪酸塩粒子の特性
(1)細孔容積
本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子は、窒素吸脱着法により測定された脱着等温線からBJH法によって算出された細孔分布曲線において、直径2nm~10nmの細孔容積(PV(2-10))の総和が、全メソ孔容積(PV(2-50))に対して40%以上、93%以下である(特性(i))。
本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子において、全メソ孔容積(PV(2-50))に対する直径2nm~10nmの細孔容積(PV(2-10))の総和の割合(PV(2-10)/PV(2-50))は、下限値が好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上、よりさらに好ましくは65%以上、上限値が好ましくは92%以下、より好ましくは90%以下である。前記上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。
直径の小さい細孔の割合が増えると、比表面積が大きくなり、触媒の活性点数を増加させることができる。しかしながら、直径の小さい細孔の割合が増えすぎると、モノマー等の反応基質の拡散速度の低下や粒子強度の過度の上昇を招いてしまう。その結果,重合中に担体の崩壊過程が必要なオレフィン重合触媒では重合活性が低下する他、ポリマー製品中にフィッシュアイが現れるなど、品質に悪影響を及ぼす。一方で直径の大きい細孔の割合が増えることは反応基質の拡散については好ましい。しかしながら、直径の大きい細孔の割合が増えすぎると、比表面積が小さくなることで活性低下を引き起こすこと、または、粒子強度が低下することで微粉等が発生しやすくなり、運転性や製品品質に悪影響を及ぼすことが考えられる。これらの理由よりPV(2-10)/PV(2-50)を最適な範囲に保つことで、触媒活性や運転性、製品品質のバランスに優れた触媒または触媒成分となると考えられる。
【0024】
ここで、メソ孔とはIUPACでの定義と同様に、直径が2nm~50nmの細孔を表す。細孔径および細孔容積の測定方法には様々な方法が知られている。しかしながら、本発明における細孔径および細孔容積は、窒素を用いたガス吸脱着法により測定された脱着等温線のデータより、BJH法によって算出されたものを指す。
ガス吸脱着法による細孔容積測定については例えばJIS Z8831-2、ISO15901-2に解説されており、市販の装置による測定が可能である。本発明ではガスとして窒素を用い、試料を200℃、真空下(1.3Pa以下)で2時間減圧加熱した後、77Kで測定することによって得られた脱着等温線のデータを用いる。細孔容積は吸着等温線からも算出することができる。しかしながら、多孔性物質では、脱着等温線のデータから算出された細孔分布と吸着等温線のデータから算出された細孔分布が一致しないことが多い。これは実際の測定時間内では熱力学的平衡状態に達しないこと、キャビテーションやポアブロッキング等の影響と考えられている。インクボトル型の細孔を仮定した場合、脱着等温線から得られる細孔分布はボトルのネック部分の細孔径に影響されているとされる。
【0025】
多孔性物質を触媒または触媒成分として用いる場合を考えると、反応基質もこの“ネック部分”による影響を受けると推定される。したがって脱着等温線から得られる細孔分布は触媒の性能を間接的に表すものと考えられることから、本発明では脱着等温線から得られる細孔分布を基準とした。
脱着等温線データから細孔分布を算出する方法については、具体的には後述の実施例に記載の方法を採用することができる。
【0026】
また、本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子は、窒素吸脱着法により測定された脱着等温線からBJH法によって算出された細孔分布曲線において、直径が10nm超過50nm以下の細孔の細孔容積の総和{(PV(2-50)-PV(2-10)}が、0.020mL/g以上であってよく、より好ましくは0.030mL/g以上、さらに好ましくは0.040mL/g以上であってよい。また、上限値は0.230mL/g以下であってよい。前記上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。
【0027】
(2)比表面積
本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子は比表面積が300m/g以上、700m/g以下である(特性(ii))。
本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子において、比表面積は、下限値が好ましくは325m/g以上、より好ましくは340m/g以上、さらに好ましくは355m/g以上であり、上限値が好ましくは600m/g以下、より好ましくは500m/g以下である。前記上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。
一般的に比表面積が増大すると触媒の活性成分量、または活性成分を担持できる量が増大するため、活性が高くなる。一方で、比表面積が大きすぎると細孔径が小さくなることがある。これによって反応基質の拡散速度の低下等が引き起こされ、触媒としての活性や吸着材としての吸着性能の低下を招くことがある。
本発明における比表面積とは、ガス吸着法において窒素ガスを用いて測定した吸着等温線データより、BET多点法解析(Rouquerol変換)によって算出された値を指す。ガス吸着法による比表面積の測定方法については、例えばJIS Z8830に解説されている。具体的には後述の実施例に記載の測定方法を採用することができる。
【0028】
(3)粒子径
本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子の粒子径については特に制限はない。好ましくは平均粒子径が2μm以上、500μm以下である(特性(iii))。
本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子において、平均粒子径は、下限値がより好ましくは3μm以上、さらに好ましくは8μm以上、特に好ましくは10μm以上であり、上限値が好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは70μm以下、よりさらに好ましくは60μm以下、特に好ましくは55μm以下である。前記上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。
一般的に粒子径が小さすぎると吸着材や脱色剤として使用した際に濾過などの固液分離時の効率低下の原因や、触媒担体として用いた場合には反応器内への付着や配管、フィルターの閉塞原因となることがある。一方で、粒子径が大きすぎると吸着材や脱色剤として用いた場合や、触媒担体として用いた場合に、液中(スラリー状態)や気相反応時の分散不良等を引き起こすことがある。
ここで、本発明の平均粒子径は、球等価粒子径分布から求められる体積基準のメジアン径のことをいう。本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子の平均粒子径の測定方法は、具体的には後述の実施例に記載の測定方法を採用することができる。
【0029】
(4)圧壊強度
本発明におけるイオン交換性層状珪酸塩粒子の圧壊強度については特に制限はない。しかしながら、触媒担体としての用途を鑑みると、圧壊強度は適切な範囲に保つことが好ましい。
単一粒子の圧壊強度の測定方法としては、JIS R 1639-5:2007 単一か粒圧壊強さ等に記載の方法で測定することができ、具体的には後述の実施例に記載の測定方法で測定することができる。
本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子集合体の平均圧壊強度は、好ましくは3.0MPa以上、25.0MPa以下であり、下限値がより好ましくは4.0MPa以上、さらに好ましくは5.0MPa以上、上限値がより好ましくは20.0MPa以下、さらに好ましくは15.0MPa以下である。前記上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。
平均圧壊強度が低すぎると、触媒調製時などの好ましくない場面で粒子の破壊が起こり、微粉などを生じることがある。一方で平均圧壊強度が高すぎると、オレフィン重合触媒用担体として用いた場合に、触媒粒子上でポリマーが円滑に生成することを妨げることがある。
【0030】
また、本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子のような無機脆性材料の強度は、いわゆる寸法効果があることが知られている。すなわちサイズの大きなものほど破壊の起因となりやすい大きな欠陥を含む確率が高く、小さなものほど強度が増大する。このことより、粒子の圧壊強度Sは一般的に下記式(1)で表すことができる(化学工学論文集 1984年 P108~112)。
S=(S・V 1/m)・V-1/m ・・・式(1)
(式(1)において、Sは、イオン交換性層状珪酸塩粒子の圧壊強度(MPa)、Sは、単位体積Vにおける圧壊強度、Vはイオン交換性層状珪酸塩粒子の体積(μm)、mは、Weibullの均一性係数)
圧壊強度Sの測定値は、前記測定方法で求めることができる。イオン交換性層状珪酸塩粒子の体積Vは、粒子の長軸径と短軸径の平均値(μm)を直径dとして、直径dの真球として算出(単位はμm)することができる。mは1より大きい数として定義されている。
(S・V 1/m)、及び1/mを求める方法としては、圧壊強度Sの測定値とイオン交換性層状珪酸塩粒子の体積Vの値の関係から、最小二乗法を用いて決定することができる。
【0031】
上式(1)において、mの値が大きい、すなわち1/mの値が小さいほど材料は均一であり、圧壊強度のサイズ(粒子径)への依存性が小さくなる。したがって1/mが小さいほど、触媒担体として安定した性質を示し、また幅広いサイズ(粒子径)で使用することが可能となり、好ましい。
上式(1)において、(S・V 1/m)の値は、単位体積当たりの強度を表す。圧壊強度のサイズ依存性が十分に小さい場合は、圧壊強度の測定値Sの平均値と同等の値となる。
本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子において、前記(S・V 1/m)、及び1/mに特に制限はない。1/mは好ましくは0.035以下、より好ましくは0.020以下、さらに好ましくは0.010以下であり、小さいほど好ましく下限値は0.000である。
また、前記(S・V 1/m)は、好ましくは3.0以上25.0以下であり、下限値がより好ましくは4.0以上、さらに好ましくは5.0以上であり、上限値がより好ましくは20.0以下、さらに好ましくは15.0以下である。前記上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。
本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子において、圧壊強度の測定値Sの平均値である平均圧壊強度の値と、前記(S・V 1/m)との差の絶対値は、好ましくは8以下、より好ましくは5以下である。
【0032】
(5)金属元素比
本発明におけるイオン交換性層状珪酸塩粒子は、イオン交換性層状珪酸塩を形成する八面体シートの一部が風化や酸処理、塩処理等によって、欠損した構造であることが好ましい。このような構造をもつものは、例えばイオン交換性層状珪酸塩がモンモリロナイト、バイデライト型である場合、酸性白土、活性白土として知られている。
本発明におけるイオン交換性層状珪酸塩としては、好ましくはモンモリロナイト、バイデライト型の層状珪酸塩である。モンモリロナイトの八面体シートはアルミニウム、マグネシウム等の金属原子から構成されている。これらの八面体シート構成成分は、酸処理等の化学処理前の含有量に対して、15%~75%溶出されているものであることが好ましい。さらに好ましくは15%~70%、さらに好ましくは17%~65%、特に好ましくは20%~60%溶出されているものであることが好ましい。
また八面体シートの主構成金属元素がアルミニウム、四面体シートの主構成金属元素がケイ素である場合、ケイ素に対するアルミニウムのモル比は、好ましくは0.05~0.40、より好ましくは0.08~0.30、さらに好ましくは0.10~0.25、よりさらに好ましくは0.12~0.20である。
アルミニウムがケイ素に対し多すぎると、細孔容積、比表面積が小さくなる傾向がある。一方、アルミニウムがケイ素に対し少なすぎると活性を示すサイトの量が減少する傾向がある。そのため、触媒や触媒担体としての活性低下や、製品の品質に悪影響を与えることがある。
また、ケイ素に対する鉄のモル比は、イオン交換性の点から、好ましくは0~0.20、より好ましくは0.0005~0.10、さらに好ましくは0.001~0.08、よりさらに好ましくは0.005~0.05である。
また、ケイ素に対するマグネシウムのモル比は、イオン交換性の点から、好ましくは0~0.30、より好ましくは0.001~0.30、さらに好ましくは0.01~0.20、よりさらに好ましくは0.02~0.10である。
【0033】
1-2.イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法
前記本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子を製造する方法としては、前記特性を有するイオン交換性層状珪酸塩粒子を得ることができれば特に限定されるものではない。
細孔構造を制御しやすく、本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子の特性を得やすい点から、本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法としては、下記工程1、2および3を含むことを特徴とするイオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法であることが好ましい。
工程1:イオン交換性層状珪酸塩、溶媒、および、20℃で固体であってスラリー中の液体に対して溶解性を有する溶解性化合物を含むスラリーを調製する工程であり、前記溶解性化合物が、20℃スラリー中の前記イオン交換性層状珪酸塩を含む固体成分に対して10質量%~150質量%含まれる
工程2:前記工程1で調製した前記スラリーを造粒し、前記イオン交換性層状珪酸塩と前記溶解性化合物とを含むイオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得る工程
工程3:前記工程2から得られた前記イオン交換性層状珪酸塩複合粒子から、前記溶解性化合物を溶解する工程
【0034】
イオン交換性層状珪酸塩スラリーに特定量の溶解性化合物を含ませて造粒すると、得られる複合粒子における珪酸塩の1次粒子は、乾燥により固体になった溶解性化合物によって結合が疎になると考えられる。その後、化学処理等により当該複合粒子から前記溶解性化合物を溶媒中に溶出させると、その結果、粒子内に適度な空隙が生じ、珪酸塩粒子の細孔径を制御することができると考えられる。制御できる細孔径は、溶解性化合物が溶解した時の大きさであることから、従来の不溶の微粒子固体を添加して細孔を制御する場合よりも小さい細孔径の量を制御できる。
【0035】
(1)工程1
工程1は、イオン交換性層状珪酸塩、溶媒、および、前記溶解性化合物を含むスラリーを調製する工程である。
【0036】
(1-1)イオン交換性層状珪酸塩
本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子は、イオン交換性層状珪酸塩からなる。
本発明におけるイオン交換性層状珪酸塩とは、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる珪酸塩化合物の一種である。本発明におけるイオン交換性層状珪酸塩は、天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。
具体例としては、例えば、白水晴雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)等に記載されているように、
i)1:1層が主要な構成層であるデッカイト、ナクライト、カオリナイト、ナクライト等のカオリン族、クリソタイル、リザーダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、アメサイト、Alリザーダイト等の蛇紋石類縁鉱物等。
ii)2:1層が主要な構成層であるモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族珪酸塩、バーミキュライト等のバーミキュライト族珪酸塩、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族珪酸塩、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、緑泥石群等が挙げられる。これらは混合層を形成していてもよい。多くのスメクタイトは、天然には、粘土鉱物の混合物として産出されるため、不純物(石英やクリストバライト、オパール、炭酸塩等が挙げられる)が含まれることが多いが、それらを含んでいてもよい。このような例としてはモンモリロナイトを主成分として含む粘土であるベントナイトや酸性白土が挙げられる。本発明のイオン交換性層状珪酸塩は、2:1型構造を有する層状珪酸塩が好ましい。
より好ましくは、スメクタイト族珪酸塩であり、さらに好ましくは、モンモリロナイトである。
これらのイオン交換性層状珪酸塩は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
本発明において、イオン交換性層状珪酸塩、及び、イオン交換性層状珪酸塩粒子の組成分析はJIS R2212に準拠して検量線を作成し、蛍光X線測定にて定量する。蛍光X線の測定方法は、具体的には後述の実施例に記載の方法を採用することができる。
【0038】
また、これらの天然物を水簸や風簸により精製することがより好ましい。水簸や風簸を行うことで、比重の大きな石英や長石などの不純物が取り除かれる他、膨潤しない珪酸塩も取り除くことができ、好ましいイオン交換性層状珪酸塩を得ることができる。水簸や風簸方法としては、通常用いられる方法を用いることができる。精製の前に乾燥や粉砕を行ってもよい。粉砕様式としては、乾式粉砕、湿式粉砕等が挙げられる。粉砕機としては、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、ロールクラッシャー、エッジランナー、ハンマーミル、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル等が上げられる。
【0039】
また、例えば予めごく少量の炭酸ソーダ等を用いてのイオン交換処理を行ってもよい。
このような例として、例えばCa型ベントナイトをNa型の活性化ベントナイトに転換させたものなどが挙げられる(関税中央分析所報 第56号 P85、粘土科学第21巻第1号1~13(1981))総説)。これにより、水簸に際し、スメクタイトが分散し易くなり粗大な石英等を粒子径差によって速やかに沈降分離することができる。また分散剤として公知の物質を加えてもよく、例えばケイ酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0040】
本発明で用いられるイオン交換性層状珪酸塩は後述する造粒及び化学処理が行われる。
また本発明においては、化学処理を加える前段階でイオン交換性を有していれば、該処理によって物理的、化学的な性質が変化し、イオン交換性や層構造がなくなった珪酸塩もイオン交換性層状珪酸塩であるとして取り扱う。
【0041】
本発明のイオン交換性層状珪酸塩の層間カチオン(イオン交換性層状珪酸塩の層間に含有される陽イオン)の種類としては、特に限定されない。前記層間カチオンは、主成分として、リチウム、ナトリウム等の周期律表第1族のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等の周期律表第2族のアルカリ土類金属、アルミニウム、及びケイ素からなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよい。あるいは前記層間カチオンは、鉄、コバルト、銅、ニッケル、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金、金等の遷移金属などを含んでもよい。このようなイオン交換性層状珪酸塩もしくはイオン交換処理に要する原料は、工業原料として比較的容易に入手可能である点で好ましい。
【0042】
(1-2)原料スラリー
イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法においては、イオン交換性層状珪酸塩、溶媒、および、20℃で固体であってスラリー中の液体に対して溶解性を有する溶解性化合物を含むスラリー(以下、原料スラリーと称することがある)を原料とする。
【0043】
造粒前のイオン交換性層状珪酸塩の形状については、特に制限はなく、天然に産出する形状、人工的に合成した時点の形状でもよい。そして、粉砕、造粒、分級などの操作によって形状を加工したイオン交換性層状珪酸塩を用いてもよい。さらに、水簸等の精製操作によって得られたスラリーをそのまま用いてもよい。また不純物(石英やクリストバライト、オパール、炭酸塩等が挙げられる)を含んでいてもよい。
スラリー中のイオン交換性層状珪酸塩の濃度は、特に制限はない。前記濃度は、好ましくは0.5質量%~60質量%、より好ましくは0.7質量%~40質量%、さらに好ましくは0.8質量%~20質量%、もっとも好ましくは1質量%~10質量%である。
【0044】
本発明に用いるイオン交換性層状珪酸塩を溶媒中に分散させて測定した原料イオン交換性層状珪酸塩の粒子径は2μm以下であってもよく、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下である。
ここでの粒子径とは、次の方法で測定する円相当径のことを示す。
イオン交換性層状珪酸塩(原料)の粒子径の測定方法は、具体的には後述の実施例に記載の方法を採用することができる。
【0045】
スラリーを構成する溶媒の種類に特に制限はない。溶媒としては、好ましくは水、あるいはメタノール、エタノール、クロロホルム、塩化メチレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の有機溶媒が挙げられ、さらに好ましくは水である。またこれらの溶媒を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記溶解性化合物とは、20℃で固体であって、且つ、造粒時の温度、好ましくは20℃でスラリー中の液体に対して溶解性を有する添加物である。ここで、溶解性を有するとは、スラリー中の液体に対して、濃度が0.3質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.8質量%以上となることを指す。
溶解性化合物は単独で20℃で固体であり、原料スラリー中の液体に対して溶解性を有し、且つ、後述の工程3において、化学処理により、溶解すれば特に制限はない。溶解性化合物は、細孔を制御しやすい点から、塩類が好ましい。
塩類としては、有機陽イオン、及び、金属イオンを含む無機陽イオンからなる群から選ばれる陽イオンと、有機陰イオン、及び、ハロゲン化物イオンを含む無機陰イオンからなる群から選ばれる陰イオンとから構成される塩類が例示される。塩類としては、例えば、周期律表第1~14族から選択される少なくとも1種の原子を含む陽イオンと、ハロゲンの陰イオン、無機ブレンステッド酸の陰イオン、及び有機ブレンステッド酸の陰イオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の陰イオンとから構成される化合物が好ましい例として挙げられる。塩類としては、さらに好ましくは、無機ブレンステッド酸の陰イオン及びハロゲンの陰イオンから選ばれる少なくとも1種の陰イオンから構成される化合物である無機塩であり、より好ましくは水に溶解する無機塩である。
【0047】
このような無機塩を構成する陽イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、ストロンチウムイオン、コバルトイオン、銅イオン、ニッケルイオン、亜鉛イオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン、銀イオン、イリジウムイオン、白金イオン、アンモニウムイオン等が挙げられる。陰イオンとしては、硫酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン、臭化水素酸イオン、ヨウ化水素酸イオン、リン酸イオン、ピロリン酸イオン、過塩素酸塩イオン、モリブデン酸イオン、ヘキサフルオロケイ酸イオン、炭酸イオンなどの無機酸イオン、及び、酢酸イオン、クエン酸イオン、シュウ酸イオン、ギ酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、タウリンイオン等の有機酸イオン、並びに酸素イオン(酸化物イオン)、水酸化物イオン等が挙げられる。
【0048】
溶解性化合物としては、適切に溶出しやすく、且つ、工業的に廃液処理が容易な点から、より好ましくは、陽イオンがリチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、及び鉄イオンからなる群から選択される少なくとも1種の塩が挙げられる。さらに好ましくは、陽イオンがリチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、及び鉄イオンからなる群から選択される少なくとも1種で、陰イオンが硫酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン、及びリン酸イオンからなる群から選択される少なくとも1種である塩が挙げられる。よりさらに好ましくは、陽イオンがリチウムイオン、ナトリウムイオン、及びマグネシウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種で、陰イオンが硫酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン、及びリン酸イオンからなる群から選択される少なくとも1種である塩が挙げられる。特に好ましくは硫酸リチウムである。
【0049】
これらの溶解性化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記溶解性化合物は、20℃スラリー中の前記イオン交換性層状珪酸塩を含む固体成分に対して10質量%~150質量%含まれるように添加することが、前記本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子の特性が得られやすい点から好ましい。
すなわち、溶解性化合物の添加量は、20℃スラリー中の、イオン交換性層状珪酸塩と非溶解性固体成分(イオン交換性層状珪酸塩及び前記溶解性化合物とは異なる固体成分)の総和に対し、10質量%~150質量%であることが好ましい。溶解性化合物の添加量は、細孔分布を制御するように、前記範囲において適宜選択されればよい。下限値は、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、よりさらに好ましくは25質量%以上であり、上限値は、より好ましくは130質量%以下、さらに好ましくは110質量%以下、よりさらに好ましくは100質量%以下である。前記上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。
前記上限値が150質量%を超えると、造粒固体の強度が下がり、微粉などが発生しやすくなる恐れがある。一方10質量%を下回ると、前記本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子の特性が得られない恐れがある。
前記溶解性化合物は、スラリーにおいて、前記イオン交換性層状珪酸塩に対して10質量%~150質量%含まれるように添加することが、所望の細孔構造が得られやすい点から好ましい。下限値は、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、よりさらに好ましくは25質量%以上であり、上限値は、より好ましくは130質量%以下、さらに好ましくは110質量%以下、よりさらに好ましくは100質量%以下である。前記上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。
【0050】
一方で炭酸塩は酸と反応させたときに発生するガスが細孔構造に影響を与える。そのため、溶解性化合物としての炭酸塩の添加量は好ましくは0質量%~75質量%、より好ましくは0質量%~50質量%、さらに好ましくは0質量%~30質量%とする。溶解性化合物の添加量が不足する場合は他の溶解性化合物で補うことが好ましい。
不純物として炭酸塩を含むイオン交換性層状珪酸塩や、炭酸ナトリウム等と処理することによりNa型の活性化を施されたイオン交換性層状珪酸塩を使用する場合は、炭酸塩の総量が上述の含有量であることが好ましい。
【0051】
なおこれらの添加量を算出するにあたり、水和水などの単独で液体となる付加物を含む塩の場合は無水物等、付加物のないものとして計算する。
【0052】
溶解性化合物は、溶媒を含むスラリー中では溶解していて固体として存在していないが、スラリーを乾燥して溶媒を含まない場合には固体となる物質である。溶解性化合物は、特に好ましくは、造粒された状態において結晶性を有する物質である。
結晶性を有する物質とは何等かの構造秩序をもつ物質である。それはすなわちX線・粒子線による回折パターンが離散的な回折スポットを示す物質である。乾燥や造粒後に結晶性を有する物質を溶解性化合物として用いると、結晶のサイズをコントロールすることで細孔構造を調整することができる点から、好ましい。ただし、用いた溶解性化合物のすべてが結晶となる必要はなく、一部が結晶性を有していてもよい。
結晶性の有無は、X線・粒子線による回折パターンの有無によって確認でき、一般的にはX線の散乱または回折現象によって確認することができる。
【0053】
造粒時の形状を改善する目的等でバインダーを添加してもよい。バインダーとしては、例えば砂糖、デキストローズ、コーンシロップ、ゼラチン、グルー、カルボキシメチルセルロース類、ポリビニルアルコール、水ガラス、アルコール類、グリコール、澱粉、カゼイン、ラテックス、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、タール、ピッチ、アルミナゾル、シリカゲル、アラビアゴム、アルギン酸ソーダ等が挙げられる。
またスラリーのpH、粘度等を調整する目的で、粘度調整剤を加えてもよい。イオン交換性層状珪酸塩スラリーのpHがスラリーの粘度に影響することは公知である。これらを調整する目的で先に挙げたバインダーの他、硫酸、硝酸、塩酸等の酸や、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基を加えてもよい。
また分散剤や凝集剤として公知の物質を加えてもよい。分散剤としては、例えばケイ酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム等が挙げられる。
これらのバインダー、粘度調整剤、分散剤、凝集剤等が、前記溶解性化合物の特性を満たす場合は、溶解性化合物として取り扱い、20℃スラリー中の前記イオン交換性層状珪酸塩を含む固体成分に対する添加量等を調整することが好ましい。
【0054】
イオン交換性層状珪酸塩、溶解性化合物、溶媒を混合する順序に特に制限はない。しかしながら、混合順序がスラリーの粘度等の物性に影響することがあり、乾燥、造粒工程やイオン交換性層状珪酸塩粒子の物性に影響を及ぼすことがある。
混合順序としては、溶媒に、イオン交換性層状珪酸塩および溶解性化合物を、逐次または同時に添加してもよい。イオン交換性層状珪酸塩および溶解性化合物をそれぞれ溶媒に分散または溶解させた後に混合してもよい。最も好ましくは、溶解性化合物を溶媒に溶解させ、この溶液にイオン交換性層状珪酸塩を溶媒に分散したスラリーを添加する方法である。バインダーや分散剤、凝集剤、粘度調整剤を加える場合も混合順序に制限はない。
【0055】
混合時の温度についても特に制限はないが、溶媒の沸点未満の温度が好ましい。水を用いる場合は0℃~80℃、さらに好ましくは10℃~70℃、より好ましくは20℃~60℃である。
混合方法についても特に制限はない。公知の方法を用いることができる。混合方法は、撹拌や、スタティックミキサー等の方法が挙げられる。さらに特に分散性を向上させるため、高速撹拌機、メディアミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、薄膜旋回式高速撹拌機等を用いることができる。前記方法を複数組み合わせてもよい。撹拌、高速撹拌機、ビーズミル、高圧ホモジナイザーは特に好ましい。
【0056】
スラリー粘度は5Pa・s~5,000Pa・sであることが好ましく、さらに好ましくは8Pa・s~3,000Pa・sである。ここでの粘度は、B型粘度計(BROOKFIELD製DV-I Viscometer)にてLV-3型スピンドルを用い、12rpm、20℃にて測定することができる。
【0057】
(2)工程2
工程2は、前記工程1で調製した前記スラリーを造粒し、前記イオン交換性層状珪酸塩と前記溶解性化合物とを含むイオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得る工程である。
工程2においては、工程1により得られた原料スラリーを用いて、造粒及び必要に応じ乾燥、濃縮、濾過、またはデカンテーション等の固液分離を行うことにより、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子を製造する。
造粒と溶媒との分離はそれぞれ別に行ってもよく、また同時に行ってもよい。造粒や溶媒との分離の方法や順序において特に制限されない。しかしながら、造粒後の粒子内に溶解性化合物を含有させる必要がある。好ましい造粒体の製造方法としては、撹拌造粒法、噴霧造粒法、転動造粒法、ブリケッティング、コンパクティング、押出造粒法、流動層造粒法、噴流層造粒法、乳化造粒法、液中造粒法、圧縮成型造粒法等が挙げられる。より好ましくは、噴霧乾燥造粒法や噴霧冷却造粒法、流動層造粒法、噴流層造粒法、液中造粒法、乳化造粒法等が挙げられ、特に好ましくは噴霧乾燥造粒法や噴霧冷却造粒法が挙げられる。
【0058】
噴霧造粒を行う場合、噴霧方式について特に制限はない。ロータリーアトマイザーや1流体ノズル、2流体ノズル、または超音波ノズル等を用いることができる。乾燥媒体についても特に制限はない。乾燥媒体の例としては窒素やアルゴン、空気が挙げられる。
噴霧乾燥造粒の乾燥媒体の供給時の温度についても制限はない。前記温度は分散媒により異なるが、水を例にとると、70℃~300℃、好ましくは80℃~280℃が挙げられる。
【0059】
製造するイオン交換性層状珪酸塩複合粒子の粒子径分布は、アトマイザーや乾燥媒体温度、流量等の製造条件によって調整することもできる。また篩や風力分級等の公知の分級技術を用いて調整してもよい。
【0060】
イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の平均粒子径は、好ましくは2μm~500μm、より好ましくは3μm~200μm、さらに好ましくは8μm~100μm、最も好ましくは20μm~70μmである。なお、ここでの平均粒子径は、前記本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子の平均粒子径と同様、レーザー回折法で測定される、球等価粒子径分布から求められる体積基準のメジアン径を指す。
【0061】
イオン交換性層状珪酸塩複合粒子は、イオン交換性層状珪酸塩と溶解性化合物とを含む粒子である。イオン交換性層状珪酸塩複合粒子中において溶解性化合物は固体、好ましくは結晶性を示す固体である。結晶性の有無はX線・粒子線による回折パターンの有無によって確認でき、一般的にはX線の散乱または回折現象によって確認することができる。
【0062】
(3)工程3
工程3は、前記工程2から得られた前記イオン交換性層状珪酸塩複合粒子から、前記溶解性化合物を溶解する工程である。
前記イオン交換性層状珪酸塩複合粒子に対して適宜化学処理を行うことによって、前記イオン交換性層状珪酸塩複合粒子から、前記溶解性化合物の一部または全てを溶解させ、イオン交換性層状珪酸塩粒子外に取り除く。
化学処理としては、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子から、前記溶解性化合物を溶解することができる処理方法を適宜選択して用いればよい。例えば、酸類と接触させる酸処理、塩基類と接触させる塩基処理、塩類と接触させる塩処理、前記溶解性化合物が溶解する適切な溶媒(例えば、アルコールと水の混合溶媒)による溶出処理(洗浄)、その他の化学処理等が挙げられる。処理はそれぞれを複数回行ってもよい。複数の処理を組み合わせてもよい。
以下、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子と、溶解性化合物を溶解する工程を経たイオン交換性層状珪酸塩粒子を合わせて、イオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子ということがある。イオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子は、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子またはイオン交換性層状珪酸塩粒子を意味する。
中でも、粒子の強度や触媒活性、吸着性能等に影響する比表面積を向上させる点から、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子を酸類と接触させる酸処理を行うことが好ましい。イオン交換性層状珪酸塩複合粒子を酸類と接触させる酸処理を行った後に、イオン交換性層状珪酸塩粒子を塩基類と接触させる塩基処理または塩類と接触させる塩処理を行うことがより好ましい。
【0063】
(3-1)酸処理
本発明においては、イオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子を酸類と接触させる酸処理を行うことが好ましい。
酸処理は、溶解性化合物や不純物を溶解させたり、イオン交換性層状珪酸塩の層間に存在する陽イオンの交換を行う。また酸処理は、イオン交換性層状珪酸塩の結晶構造を構成するAl、Fe、Mg等の陽イオンの一部又は全部を溶出させることによって、細孔構造の特性を変化させることができ、比表面積を増大させることができる。これは、イオン交換性層状珪酸塩粒子の酸強度を増大させ、また単位質量当たりの酸点量を増大させることに寄与する。
【0064】
酸処理によって、八面体シートを構成する金属陽イオンを、酸処理前の含有量に対して、15%~75%溶出させることが好ましく、より好ましくは15%~70%、さらに好ましくは17%~65%、特に好ましくは20%~60%溶出させる。溶出する金属陽イオンの割合(%)は、例えば、金属陽イオンがアルミニウムの場合では、以下の式で、表される。
[化学処理前のアルミニウム/珪素(モル比)-化学処理後のアルミニウム/珪素(モル比)]÷化学処理前のアルミニウム/珪素(モル比)×100
溶出率が上記範囲であると、比表面積が向上し、吸着性能や触媒活性が向上する。さらに、オレフィン重合触媒成分として使用した場合の製品中のフィッシュアイが減少しやすい。
【0065】
酸処理で用いられる酸類としては、塩酸、硫酸、硝酸、シュウ酸、安息香酸、ステアリン酸、プロピリオン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸などの無機酸および有機酸が例示される。その中でも、無機酸が好ましく、塩酸、硝酸、硫酸が好ましい。さらに好ましくは塩酸、硫酸であり、特に好ましくは硫酸である。
【0066】
イオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子と酸類との接触は、効率よく均一に反応させる点から、イオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子のスラリー下で行うことが好ましい。
スラリー化のための溶媒としては、特に制限はない。酸処理中に反応を起こさない溶媒が好ましく、水あるいはメタノール、エタノール、クロロホルム、塩化メチレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の有機溶媒が好ましい。さらに好ましくは水である。またこれらの溶媒を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
本発明の酸処理時の酸濃度(反応系全体質量に対する酸の質量百分率)について特に制限はない。前記酸濃度は、好ましくは3質量%~50質量%であり、より好ましくは4質量%~40質量%、さらに好ましくは5質量%~20質量%である。
また、酸処理時の温度についても制限はない。前記温度は、好ましくは30℃~102℃、より好ましくは40℃~100℃、さらに好ましくは50℃~95℃である。
酸処理時の溶媒中の固形分濃度についても特に制限はない。前記濃度は、好ましくは3質量%~50質量%、より好ましくは5質量%~30質量%、さらに好ましくは8質量%~20質量%である。
酸処理の時間についても制限はない。前記時間は、好ましくは5分~3000分、より好ましくは10分~1500分、さらに好ましくは30分~750分である。
溶解性化合物、不純物、陽イオン等が溶出する程度は、酸類の種類、酸類の濃度、処理温度、処理時間等を適宜選択して調整することができる。
また、酸処理は、複数回に分けて行うことも、可能である。
【0068】
(3-2)塩基処理
本発明においては、イオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子を塩基類と接触させる塩基処理を行ってもよい。
イオン交換性層状珪酸塩複合粒子は前記酸処理を行った後、さらに塩基類と接触させる塩基処理を行ってもよい。
塩基処理は、溶解性化合物や不純物を溶解させたり、イオン交換性層状珪酸塩の層間に存在する陽イオンの交換を行う。また塩基処理は、イオン交換性層状珪酸塩の結晶構造を構成するAl、Fe、Mg、さらにはSi等の陽イオンの一部又は全部を溶出させることによって、細孔構造の特性を変化させることができ、比表面積を増大させることができる。
【0069】
塩基処理で用いられる塩基類とは、ブレンステッド塩基として働く物質である。塩基類は、プロトンと反応して水を発生する(中和反応)性質を持つ物質である。好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第3~14族の金属からなる群から選ばれる金属の水酸化物が挙げられる。より好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Al、Sn、Pbの水酸化物である。さらに好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属、Mg、Zn、Alの水酸化物である。
塩基類は、以下に限定されるわけではない。具体例としては、LiOH、NaOH、KOH、CsOH、RbOH、Be(OH)、Mg(OH)、Ca(OH)、Sr(OH)、Mn(OH)、Cu(OH)、Cu(OH)、Zn(OH)、Al(OH)、Sn(OH)、Pb(OH)、Ni(OH)、LiCO、NaCO、KCO、CsCO、RbCO、BeCO、MgCO、CaCO、MnCO、CuCO、Al(CO)、ZnCO、PbCO、LiHCO、NaHCO、RpHCO、CsHCO、Ca(HCO、Mg(HCOなどが挙げられる。
塩基類は、単独で用いても複数で用いてもよい。使用方法には、特に制限はない。
イオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子と接触させる際の塩基類の状態は、溶媒に溶解させていても、固体のままでもよい。溶媒に溶解させて接触させる場合は、その濃度に、制限はなく、上限としては、飽和する濃度以下であることが好ましい。
【0070】
塩基処理は、効率よく均一に反応させる点から、イオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子スラリー下で行うことが好ましい。
スラリー化のための溶媒としては、水、またはアルコール等の有機溶媒などが挙げられる。好ましくはエタノール、メタノール、エチレングリコール、グリセリン、または水で、より好ましくは水である。またこれらの溶媒を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
塩基類の使用量は、塩基類との接触前のイオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子スラリーが含有している酸の量や、その処理目的によっても異なる。
溶媒として水を用いた酸処理後のイオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子スラリーを用いる場合には、塩基類の使用量は、塩基処理工程中pHが8以下となり、かつ塩基処理工程を終了するときにpHが4.5~8となる量であることが好ましい。
【0072】
また、塩基処理時の温度についても制限はない。前記温度は、好ましくは-20℃~120℃、より好ましくは0℃~105℃、さらに好ましくは10℃~80℃である。
塩基処理時の溶媒中の固形分濃度に特に制限はない。前記濃度は、好ましくは1質量%~50質量%、より好ましくは2質量%~30質量%、さらに好ましくは3質量%~20質量%である。
塩基処理の時間についても制限はない。前記時間は、好ましくは1分~600分、より好ましくは5分~300分、さらに好ましくは10分~120分である。
溶解性化合物、不純物、陽イオン等が溶出する程度は、塩基類の種類、塩基類の濃度、処理温度、処理時間等を適宜選択して調整することができる。
また、塩基処理は、複数回に分けて行うことも、可能である。
【0073】
(3-3)その他の化学処理
本発明においては、イオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子に、酸処理、塩基処理の他に、その他の化学処理を行ってもよい。
イオン交換性層状珪酸塩複合粒子は前記酸処理又は前記塩基処理を行った後、さらにその他の化学処理を行ってもよい。
【0074】
その他の化学処理としては、塩類、酸化剤、還元剤、あるいはイオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子の層間にインターカレーションし得る化合物などを含有する処理剤との接触や溶媒による洗浄などが挙げられる。
インターカレーションとは、層状物質の層間に別の物質を導入することをいう。導入される物質はゲスト化合物という。
また、インターカレーションや塩処理、酸処理、または塩基処理では、イオン複合体、分子複合体、または有機誘導体等を形成し、表面積や層間距離を変えることができる。
イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと置換することにより、層間が拡大した状態の層状物質を得ることもできる。すなわち、嵩高いイオンが層状構造を支える支柱的な役割を担っており、ピラーと呼ばれる。以下に、処理剤の具体例を示す。
【0075】
塩類としては、有機陽イオン、および、金属イオンを含む無機陽イオンからなる群から選ばれる陽イオンと、有機陰イオン、および、ハロゲン化物イオンを含む無機陰イオンからなる群から選ばれる陰イオンとから構成される塩類が例示される。例えば、周期律表第1~14族から選択される少なくとも1種の原子を含む陽イオンと、ハロゲンの陰イオン、無機ブレンステッド酸及び有機ブレンステッド酸の陰イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種の陰イオンとから構成される化合物が好ましい例として挙げられる。特に好ましくは、アニオンが無機ブレンステッド酸やハロゲンからなる化合物である。
【0076】
このような塩類の具体例としては、LiCl、LiBr、LiSO、Li(PO)、LiNO、Li(OOCCH)、NaCl、NaBr、NaSO、Na(PO)、NaNO、Na(OOCCH)、KCl、KBr、KSO、K(PO)、KNO、K(OOCCH)、CaCl、CaSO、Ca(NO、Ca(C、Ti(OOCCH、Ti(CO、Ti(NO、Ti(SO、TiF、TiCl、TiBr、TiI、Zr(OOCCH、Zr(CO、Zr(NO、Zr(SO、ZrF、ZrCl、ZrBr、ZrI、ZrOCl、ZrO(NO、ZrO(ClO、ZrO(SO)、Hf(OOCCH、Hf(CO、Hf(NO、Hf(SO、HfOCl、HfF、HfCl、HfBr、HfI、CuCl、CuBr、Cu(NO、CuC、Cu(ClO、CuSO、Cu(OOCCH、Zn(OOCH、Zn(CHCOCHCOCH、ZnCO、Zn(NO、Zn(ClO、Zn(PO、ZnSO、ZnF、ZnCl、nBr、ZnI、AlF、AlCl、AlBr、AlI、Al(SO、Al(C、Al(CHCOCHCOCH、Al(NO、AlPO、GeCl、Sn(OOCCH、Sn(SO、SnF、SnCl等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
有機陽イオンの例としては、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、N,N-ジメチルアニリニウム、N,N-ジエチルアニリニウム、N,N-2,4,5-ペンタメチルアニリニウム、N,N-ジメチルオクタデシルアンモニウム、オクタドデシルアンモニウム、N,N-2,4,5-ペンタメチルアニリニウム、N,N-ジメチル-p-n-ブチルアニリニウム、N,N-ジメチル-p-トリメチルシリルアニリニウム、N,N-ジメチル-1-ナフチルアニリニウム、N,N,2-トリメチルアニリニウム、2,6-ジメチルアニリニウム等のアンモニウム化合物、ピリジニウム、キノリニウム、N-メチルピペリジニウム、2,6-ジメチルピリジニウム、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニウム等の含窒素芳香族化合物、ジメチルオキソニウム、ジエチルオキソニウム、ジフェニルオキソニウム、フラニウム、オキソラニウム等のオキソニウム化合物、トリフェニルホスホニウム、トリ-o-トリルホスホニウム、トリ-p-トリルホスホニウム、トリメシチルホスホニウム等のホスホニウム化合物、ホスファベンゾニウム、ホスファナフタレニウム等の含リン芳香族化合物等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
陰イオンの例としては、上に例示した陰イオン以外にも、ホウ素化合物、リン化合物からなる陰イオン、例えばヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレートなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
また、これらの塩類は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
塩類は、さらに酸類、塩基類、酸化剤、還元剤、またはイオン交換性層状珪酸塩の層間にインターカレーションする化合物等と組み合わせて用いてもよい。
これらの組み合わせは処理開始時に添加する処理剤について組み合わせて用いてもよい。また、処理の途中で添加する処理剤について組み合わせて用いてもよい。
【0079】
上述の塩処理は、適当な溶剤を使用し、そこに処理剤を溶解させて処理剤溶液として用いてもよい。また、処理剤自身を溶媒として用いてもよい。
使用できる溶媒としては、水、アルコール類、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル類、エーテル類、ケトン類、アルデヒド類、フラン類、アミン類、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。好ましくは、水、アルコール類、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル類、エーテル類、より好ましくは水、アルコール類、脂肪族炭化水素、エーテル類、特に好ましくは水、アルコール類である。
また、処理剤溶液中の処理剤濃度は0.1質量%~100質量%程度が好ましく、より好ましくは5質量%~50質量%程度である。処理剤濃度がこの範囲内であれば処理に要する時間が短くなり効率的に生産が可能になるという利点がある。
【0080】
また化学処理として、溶媒による洗浄を行うことは好ましい。洗浄は、溶解性化合物や不純物の溶解、および、イオン交換性層状珪酸塩の層間に存在する陽イオンの交換を行う。また洗浄は、上述の酸類、塩基類、塩類での処理時に残存する酸類、塩基類、塩類や溶媒を取り除くことができる。
【0081】
洗浄に使用する溶媒は、水、アルコール類、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル類、エーテル類、ケトン類、アルデヒド類、フラン類、アミン類、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。これらは2種以上を混合して用いてもよい。好ましくは、水、アルコール類、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル類、エーテル類であり、より好ましくは水、アルコール類、脂肪族炭化水素、エーテル類であり、より好ましくは水、アルコール類及びこれらの混合溶媒、特に好ましくは水である。
また、洗浄時の温度についても制限はない。前記温度は、好ましくは0℃~100℃、より好ましく50℃~95℃、さらに好ましくは10℃~60℃である。
洗浄時の溶媒中の固形分濃度に特に制限はない。前記濃度は、好ましくは3質量%~50質量%、より好ましくは5質量%~40質量%、さらに好ましくは8質量%~30質量%である。
洗浄の時間についても制限はない。前記時間は、好ましくは1分~3000分、より好ましくは3分~1500分、さらに好ましくは5分~750分である。
【0082】
溶媒とイオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子を分離する固液分離の方法についても特に制限はない。沈降分離や濾過分離、遠心力を利用した遠心沈降分離や遠心濾過等が挙げられる。これらは複数回行ってもよく、また複数の方法を組み合わせてもよい。
洗浄率としては、好ましくは1/5~1/10000、より好ましくは1/10~1/1000である。ここで洗浄率とは洗浄開始時における溶媒の残存比率を表す。例えば、100Lの溶媒をイオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子と接触させ、その後90Lの溶媒を取り除くことにより洗浄を行った場合、洗浄率は(100-90)/100=1/10となる。
また残存するイオン量を示す上澄み液の電気伝導度が好ましくは1000mS/cm以下、より好ましくは100mS/cm以下、さらに好ましくは10mS/cm以下、最も好ましくは1mS/cm以下になるまで洗浄することができる。
【0083】
(4)その他の工程
工程3を含む化学処理を行った後は、得られたイオン交換性層状珪酸塩粒子の乾燥を行うことが好ましい。
乾燥方法に関しては、特に限定されず、各種方法で乾燥を実施可能である。乾燥は、イオン交換性層状珪酸塩粒子の構造破壊を起こさないように行うことが好ましい。
乾燥温度は、一般的には、100℃~800℃、好ましくは120℃~600℃で実施可能であり、特に好ましくは150℃~300℃で実施することが好ましい。
乾燥時間は、通常1分~24時間、好ましくは5分~4時間である。
乾燥時の雰囲気は、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、又は減圧下であることが好ましい。
【0084】
これらのイオン交換性層状珪酸塩粒子は、構造破壊されなくとも乾燥温度により特性が変化するために、用途に応じて乾燥温度を変えることが好ましい。
オレフィン重合触媒の成分として用いる場合は、除去した後の水分含有率が、温度200℃、圧力1mmHgの条件下で2時間脱水した場合の水分含有率を0質量%とした時、3質量%以下、好ましくは1質量%以下であることが好ましい。
【0085】
1-3.イオン交換性層状珪酸塩粒子の用途
本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子は、前記特定の細孔分布及び比表面積を有する。そのため、本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子は、オレフィン重合触媒の担体、有機化学反応の触媒、石油や油脂類の脱水、脱色、精製や、乾燥材、吸着材、漂白剤等に広く用いられる。
【0086】
2.オレフィン重合用触媒成分
本発明のオレフィン重合用触媒成分は、前記本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子を含むことを特徴とする。
本発明の1実施形態においては、前記本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子を、オレフィン重合または共重合の触媒成分として使用することができる。本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子は、触媒担体、助触媒等として機能する。
イオン交換性層状珪酸塩粒子における細孔構造は、触媒の活性や強度等の性能に影響を及ぼす。それだけではなく前記細孔構造はさらに、経済性や運転性、製品の品質に影響を及ぼす。
前記本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子は、窒素吸脱着法により測定された脱着等温線からBJH法によって算出された細孔分布曲線において、直径2nm~10nmの細孔容積の総和が全メソ孔容積に対して前記特定の範囲を有する。すなわち直径10nm超過50nm以下の細孔容積の総和が全メソ孔容積に対して従来より多め、且つ、比表面積が特定の範囲で大きい、新規な細孔構造を有することから、前記本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子は、触媒活性や重合体の品質を向上する。
より具体的には、本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子をオレフィン重合用触媒成分として用いると、高い重合活性でオレフィン重合体を製造できる。また、本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子をオレフィン重合用触媒成分として用いると、製品外観を悪化させる製品中のフィッシュアイが少ないオレフィン重合体を製造することもできる。
【0087】
本発明のオレフィン重合用触媒成分の使用方法は、特に限定されるものではない。例えば、特開2002-053611号公報、特開2009-280443号公報等に記載の方法が挙げられる。
中でも、後述するオレフィン重合用触媒のように用いることが、向上した触媒性能が得られやすい点から好ましい。
【0088】
3.オレフィン重合用触媒
本発明のオレフィン重合用触媒は、下記成分[A]、成分[B]、及び成分[C]を含むことを特徴とする。
成分[A]:前記本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子
成分[B]:周期表第4族の遷移金属化合物
成分[C]:有機アルミニウム化合物
【0089】
3-1.オレフィン重合用触媒の各成分
<成分[A]>
成分[A]は、前記本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子である。前記本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子は、前述と同様であってよいので、ここでの説明を省略する。
【0090】
<成分[B]>
本発明で使用する成分[B]の好ましい周期表第4族の遷移金属化合物は、共役五員環配位子を少なくとも一個有するメタロセン化合物である。かかる遷移金属化合物として好ましいものは、下記一般式(1)~(4)で表される化合物である。
【0091】
【化1】
[上記一般式(1)~(4)中、AおよびA’は、置換基を有してもよい共役五員環配位子(同一化合物内においてAおよびA’は同一でも異なっていてもよい)を示し、
Qは、二つの共役五員環配位子を任意の位置で架橋する結合性基を示し、Zは、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子、水素原子、ハロゲン原子、又は炭化水素基を示し、Z’は、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子、又は炭化水素基を示す。
Q’は、共役五員環配位子の任意の位置とZを架橋する結合性基を示し、Mは、周期表第4族から選ばれる金属原子を示し、XおよびYは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、リン含有炭化水素基または珪素含有炭化水素基(同一化合物内においてX及びYは、同一でも異なっていてもよい。)を示す。]
【0092】
AおよびA’の共役五員環配位子としては、例えば、シクロペンタジエンやインデン、テトラヒドロインデン、フルオレン、アズレン、テトラヒドロアズレンから誘導される置換基が挙げられる。これらは非置換でもよく、置換されていてもよい。この中で、特に好ましいものは、置換または非置換のインデニル基またはアズレニル基である。
【0093】
共役五員環配位子上の置換基としては、前記の炭素数1~40、好ましくは炭素数1~30の炭化水素基に加え、フッ素、塩素、臭素等のハロゲンが置換した炭素数1~30の炭化水素基、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子基、炭素数1~12のアルコキシ基、例えば、-Si(R)(R)(R)で示される珪素含有炭化水素基、-P(R)(R)で示されるリン含有炭化水素基、または-B(R)(R)で示されるホウ素含有炭化水素基が挙げられる。これらの置換基が複数ある場合、それぞれの置換基は同一でも異なっていてもよい。
上述のR、R、Rは、同一でも異なっていてもよく、炭素数1~24、好ましくは炭素数1~18のアルキル基を示す。
また、共役五員環配位子上の置換基は、少なくとも1つの第15~16族元素(すなわち、ヘテロ元素)を有してもよい。このような置換基として好ましくは、5員又は6員環中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子、及びリン原子よりなる群から選択される少なくとも1種のヘテロ原子を含有する単環式又は多環式置換基が挙げられる。さらに好ましくは置換していてもよいヘテロ芳香族化合物から誘導される置換基であり、特に好ましくは置換していてもよいフリル基、置換していてもよいチエニル基が挙げられる。一般式(2)または(4)で表される架橋基をもつ化合物の場合、これらの置換基は、特に制限は無いが、共役五員環配位子上のα位(架橋基との結合部位を基準とする)にあることが好ましい。
【0094】
Qは、二つの共役五員環配位子間を任意の位置で架橋する結合性基を、Q’は、共役五員環配位子の任意の位置とZで示される基を架橋する結合性基を表す。
QおよびQ’の具体例としては、次の基が挙げられる。
(イ)メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基、フェニルメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、シクロヘキシレン基等のアルキレン基類
(ロ)ジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジプロピルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルエチルシリレン基、メチルフェニルシリレン基、メチル-t-ブチルシリレン基、ジシリレン基、テトラメチルジシリレン基、シラシクロブチレン基等のシリレン基類
(ハ)ゲルマニウム、リン、窒素、ホウ素あるいはアルミニウムを含む炭化水素基類
【0095】
さらに、具体的には、(CHGe、(CGe、(CH)P、(C)P、(C)N、(C)N、(C)B、(C)B、(C)Al、(CO)Alで示される基等である。好ましいものは、アルキレン基類、又は、シリレン基類である。
【0096】
また、Mは、金属原子のことで、特に周期表第4族から選ばれる遷移金属原子を示す。Mの例を挙げるならば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム等である。特に、ジルコニウム、ハフニウムが好ましい。
さらに、Zは、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子、水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基を示し、Z’は、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子、又は炭化水素基を示す。
Z及びZ’の好ましい具体例としては、炭素数1~40、好ましくは炭素数1~18の酸素含有炭化水素基、炭素数1~40、好ましくは炭素数1~18のイオウ含有炭化水素基、炭素数1~40、好ましくは炭素数1~18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1~40、好ましくは炭素数1~18の窒素含有炭化水素基、炭素数1~40、好ましくは炭素数1~18のリン含有炭化水素基、炭素数1~20の炭化水素基が挙げられる。Zの好ましい具体例としては、水素原子、塩素原子、臭素原子が更に追加される。
【0097】
XおよびYは、各々水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10のアルコキシ基、アミノ基、ジフェニルフォスフィノ基等の炭素数1~20、好ましくは炭素数1~12のリン含有炭化水素基、またはトリメチルシリル基、ビス(トリメチルシリル)メチル基等の炭素数1~20、好ましくは炭素数1~12のケイ素含有炭化水素基である。
XとYは同一でも異なってもよい。これらのうちハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、および炭素数1~12のアミノ基が特に好ましい。
【0098】
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、
(1)ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(2)ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(3)ビス(1、3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(4)ビス(1-n-ブチル-3-メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(5)ビス(1-メチル-3-トリフルオロメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(6)ビス(1-メチル-3-トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(7)ビス(1-メチル-3-フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(8)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
(9)ビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
(10)ビス(2-メチル-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
等が挙げられる。
【0099】
一般式(2)で表される化合物としては、例えば、
(1)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4-イソプロピル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(2)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(3)ジメチルシリレンビス〔1-{2-メチル-4-(4-フルオロフェニル)-4H-アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、
(4)ジメチルシリレンビス[1-{2-メチル-4-(2,6-ジメチルフェニル)-4H-アズレニル}]ジルコニウムジクロリド、
(5)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4,6-ジイソプロピル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(6)ジフェニルシリレンビス{1-(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(7)ジメチルシリレンビス{1-(2-エチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(8)エチレンビス{1-[2-メチル-4-(4-ビフェニリル)-4H-アズレニル]}ジルコニウムジクロリド、
(9)ジメチルシリレンビス{1-[2-エチル-4-(2-フルオロ-4-ビフェニリル)-4H-アズレニル]}ジルコニウムジクロリド、
(10)ジメチルシリレンビス{1-[2-メチル-4-(2’,6’-ジメチル-4-ビフェニリル)-4H-アズレニル]}ジルコニウムジクロリド、
(11)ジメチルシリレン{1-[2-メチル-4-(4-ビフェニリル)-4H-アズレニル]}{1-[2-メチル-4-(4-ビフェニリル)インデニル]}ジルコニウムジクロリド、
(12)ジメチルシリレン{1-(2-エチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}{1-(2-メチル-4,5-ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(13)ジメチルシリレンビス{1-(2-エチル-4-フェニル-7-フルオロ-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(14)ジメチルシリレンビス{1-(2-エチル-4-インドリル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(15)ジメチルシリレンビス[1-{2-エチル-4-(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)-4H-アズレニル}]ジルコニウムジクロリド、
(16)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホン酸)、
(17)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(18)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4,5-ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(19)ジメチルシリレンビス〔1-{2-メチル-4-(1-ナフチル)インデニル}〕ジルコニウムジクロリド、
(20)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4,6-ジイソプロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
【0100】
(21)ジメチルシリレンビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(22)エチレン-1,2-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(23)エチレン-1,2-ビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(24)イソプロピリデンビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(25)エチレン-1,2-ビス{1-(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(26)イソプロピリデンビス{1-(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(27)ジメチルゲルミレンビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(28)ジメチルゲルミレンビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(29)フェニルホスフィノビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(30)ジメチルシリレンビス[3-(2-フリル)-2,5-ジメチル-シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(31)ジメチルシリレンビス[2-(2-フリル)-3,5-ジメチル-シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(32)ジメチルシリレンビス[2-(2-フリル)-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(33)ジメチルシリレンビス[2-(2-(5-メチル)フリル)-4,5-ジメチル-シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(34)ジメチルシリレンビス[2-(2-(5-トリメチルシリル)フリル)-4,5-ジメチル-シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(35)ジメチルシリレンビス[2-(2-チエニル)-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(36)ジメチルシリレン[2-(2-(5-メチル)フリル)-4-フェニルインデニル][2-メチル-4-フェニルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
(37)ジメチルシリレンビス(2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(38)ジメチルシリレンビス(2,3-ジメチル-5-エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(39)ジメチルシリレンビス(2,5-ジメチル-3-フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(40)シラシクロブチレンビス[2-(2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
【0101】
(41)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(42)シラシクロブチレンビス[2-(4,5-ジメチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(43)シラシクロブチレンビス[2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(44)シラシクロブチレンビス[2-(5-フェニル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(45)シラシクロブチレンビス[2-(2-チエニル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(46)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-チエニル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(47)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-フルオロフェニル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(48)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-クロロフェニル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(49)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-メチルフェニル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(50)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-t-ブチルフェニル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(51)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(52)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(3,5-ジt-ブチルフェニル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(53)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(1-ナフチル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(54)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(2-ナフチル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(55)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-ビフェニリル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(56)シラシクロブチレンビス[2-(2-フリル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(57)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(58)シラシクロブチレンビス[2-(4,5-ジメチル-2-フリル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(59)シラシクロブチレンビス[2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(60)シラシクロブチレンビス[2-(5-フェニル-2-フリル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
【0102】
(61)シラシクロブチレンビス[2-(2-チエニル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(62)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-チエニル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(63)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-フルオロフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(64)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-クロロフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(65)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-メチルフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(66)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-t-ブチルフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(67)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(68)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(3,5-ジt-ブチルフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(69)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(1-ナフチル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(70)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(2-ナフチル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(71)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-ビフェニリル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(72)シラシクロブチレンビス[2-(2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(73)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(74)シラシクロブチレンビス[2-(4,5-ジメチル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(75)シラシクロブチレンビス[2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(76)シラシクロブチレンビス[2-(5-フェニル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(77)シラシクロブチレンビス[2-(2-チエニル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(78)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-チエニル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(79)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-フルオロフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(80)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-クロロフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
【0103】
(81)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-メチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(82)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-t-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(83)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(3,5-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(84)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(3,5-ジt-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(85)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(1-ナフチル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(86)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(2-ナフチル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(87)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-ビフェニリル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(88)シラシクロブチレンビス[2-(2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-5,5,7,7-テトラメチル-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(89)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-5,5,7,7-テトラメチル-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(90)シラシクロブチレン[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル][2,5-ジメチル-4-フェニル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(91)シラシクロブチレン[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル][2-(2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(92)シラシクロブチレン[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル][2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(93)シラシクロブチレン[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル][2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(94)シラシクロブチレン[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル][2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(95)シラシクロブチレン[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル][2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(96)シラシクロペンチレンビス[2-(2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(97)シラシクロペンチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(98)シラシクロペンチレンビス[2-(2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(99)シラシクロペンチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、等が挙げられる。
【0104】
一般式(3)で表される化合物としては、例えば、
(1)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ビスt-ブチルアミド)ジクロリド、
(2)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ビスイソプロピルアミド)ジクロリド、
(3)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ビスシクロドデシルアミド)ジクロリド、
(4)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム{ビス(トリメチルシリル)アミド)}ジクロリド、
(5)(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)チタニウム{ビス(トリメチルシリル)アミド}ジクロリド、
(6)(2-メチルインデニル)チタニウム(ビスt-ブチルアミド)ジクロリド、
(7)(フルオレニル)チタニウム(ビスt-ブチルアミド)ジクロリド、
(8)(3、6-ジイソプロピルフルオレニル)チタニウム(ビスt-ブチルアミド)ジクロリド、
(9)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(フェノキシド)ジクロリド、(10)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(2、6-ジイソプロピルフェノキシド)ジクロリド、
等が挙げられる。
【0105】
一般式(4)で表される化合物としては、例えば、
(1)ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(t-ブチルアミド)チタニウムジクロリド、
(2)ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロドデシルアミド)チタニウムジクロリド、
(3)ジメチルシランジイル(2-メチルインデニル)(t-ブチルアミド)チタニウムジクロリド、
(4)ジメチルシランジイル(フルオレニル)(t-ブチルアミド)チタニウムジクロリド、等が挙げられる。
【0106】
これらの例示化合物のジクロリドは、ジブロマイド、ジフルオライド、ジメチル、ジフェニル、ジベンジル、ビスジメチルアミド、ビスジエチルアミド等に置き換えた化合物も、同様に例示される。さらに、例示化合物中のジルコニウムは、ハフニウムまたはチタニウムに、チタニウムは、ハフニウムまたはジルコニウムに置き換えた化合物も、同様に、例示される。
【0107】
本発明で使用する遷移金属化合物としては、一般式(2)で示される化合物が好ましい。
なお、メタロセン化合物は、1種を用いることも、2種以上を併用して用いることもできる。
【0108】
2種以上を併用して用いる場合は、上記一般式(1)~(4)のうちいずれか一つの一般式に含まれる化合物群の中から2種以上を選ぶことができる。さらに、一つの一般式に含まれる化合物群の中から選ばれる1種または2種以上と他の一般式に含まれる化合物群の中から選ばれる1種または2種以上とを選ぶこともできる。
【0109】
<成分[C]>
成分[C]としては、一般式(AlR3-nで表される有機アルミニウム化合物が使用される。式中、Rは炭素数1~20のアルキル基を表し、Xはハロゲン、水素、アルコキシ基又はアミノ基を表し、nは1~3の、mは1~2の整数を各々表す。有機アルミニウム化合物は、単独であるいは複数種を組み合わせて使用することができる。
【0110】
有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、トリノルマルデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等が挙げられる。
これらのうち、好ましくは、m=1、n=3のトリアルキルアルミニウム及びアルキルアルミニウムヒドリドである。
さらに好ましくは、Rが炭素数1~8であるトリアルキルアルミニウムである。
【0111】
3-2.オレフィン重合用触媒の調製、予備重合
本発明のオレフィン重合用触媒の製造方法は、下記成分[A]、成分[B]、及び成分[C]を混合させることを特徴とする。
本発明のオレフィン重合用触媒は、成分[B]と成分[A]及び成分[C]を接触させて触媒とする。
接触方法は特に限定されないが、以下のような順序で接触させることができる。
また、この接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時またはオレフィンの重合時に行ってもよい。これらの接触において接触を充分に行うため溶媒を用いてもよい。
1)成分[B]と成分[A]を接触させる
2)成分[B]と成分[A]を接触させた後に成分[C]を添加する
3)成分[B]と成分[C]を接触させた後に成分[A]を添加する
4)成分[A]と成分[C]を接触させた後に成分[B]を添加する
その他、三成分を同時に接触させてもよい。
【0112】
好ましい接触方法は、上記4)の成分[A]と成分[C]を接触させた後、未反応の成分[C]を洗浄等で除去し、その後再度必要最小限の成分[C]を成分[A]に接触させ、その後成分[B]を接触させる方法である。
【0113】
成分[C]のAlと成分[B]の遷移金属のモル比は0.1~1,000、好ましくは1~100、さらに好ましくは4~50の範囲である。
【0114】
接触温度に特に制限はないが、0℃~100℃が好ましく、さらに好ましくは10℃~80℃、特に好ましくは20℃~60℃である。
【0115】
溶媒としては有機溶媒が好ましい。ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素、後述のオレフィンがより好ましい。これらは単独で用いても、複数を混合して用いてもよい。
溶媒中の成分[B]の濃度についても制限はないが、好ましくは3mmol/L~50mmol/L、より好ましくは4mmol/L~40mmol/L、さらに好ましくは6mmol/L~30mmol/Lである。
成分[B]の使用量は、成分[A]1gにつき、0.001mmol~10mmol、好ましくは0.001mmol~1mmolの範囲がより好ましい。
【0116】
本発明のオレフィン重合用触媒は、オレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理を行ってもよい。
使用するオレフィンは、特に限定はない。エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、ビニルシクロアルカン、またはスチレンなどを使用することが可能であり、特にエチレン、またはプロピレンを使用することが好ましい。
オレフィンの供給方法は、任意の方法が可能である。例えば、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなどの方法が挙げられる。
【0117】
予備重合時間は、特に限定されないが、5分~24時間の範囲であることが好ましい。
また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が成分[A]1部に対し、好ましくは0.01~100、さらに好ましくは0.1~50である。
予備重合温度は特に制限はないが、0℃~100℃が好ましく、より好ましくは10℃~70℃、特に好ましくは20℃~60℃、さらに好ましくは30℃~50℃である。
予備重合時には有機溶媒等の液体中で実施することも出来、かつこれが好ましい。
予備重合時の固体触媒の濃度には特に制限はないが、好ましくは10g/L~300g/L、より好ましくは20g/L~200g/L、特に好ましくは25g/L~150g/Lである。
【0118】
各成分の接触後に触媒を乾燥してもよい。
乾燥方法には特に制限はない。減圧乾燥や加熱乾燥、乾燥ガスを流通させることによる乾燥などが例示される。これらの方法を単独で用いてもよいし2つ以上の方法を組み合わせて用いてもよい。
乾燥工程において触媒を攪拌、振動、流動させてもよいし静置させてもよい。
【0119】
さらに、上記各成分の接触の際、もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。また各種の界面活性剤、帯電防止剤やオレフィン重合触媒においてドナーとして知られるアルコキシシラン、アミノシラン、エーテル、フタル酸エステル、カルボン酸エステル等を加えることもできる。
【0120】
4.オレフィン重合体の製造方法
本発明のオレフィン重合体の製造方法は、前記本発明のオレフィン重合用触媒を用いて、オレフィン重合を行うことを特徴とする。
オレフィン(共)重合体の製造方法は、前記本発明のオレフィン重合用触媒の存在下、炭素数2~20のα-オレフィンを単独重合または共重合する。すなわち、この製造方法では、1種類のα-オレフィンを重合、又は2種類以上のα-オレフィンを共重合させる。なお、本明細書において(共)重合体とは、単独重合体及び共重合体の少なくとも一方を意味する。
【0121】
共重合の場合、反応系中の各モノマーの量比は、経時的に一定である必要はなく、各モノマーを一定の混合比で供給することも可能である。また、供給するモノマーの混合比を経時的に変化させることも可能である。また、共重合反応比を考慮してモノマーのいずれかを分割添加することもできる。
【0122】
重合し得るα-オレフィンとしては、炭素数2~20が好ましく、具体的にはエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、スチレン、ジビニルベンゼン、7-メチル-1、7-オクタジエン、シクロペンテン、ノルボルネン、エチリデンノルボルネン等が挙げられる。好ましくは炭素数2~8のα-オレフィンであり、さらに好ましくはエチレン、またはプロピレンである。
【0123】
共重合の場合、用いられるコモノマーの種類は、前記α-オレフィンとして挙げられるものの中から、主成分となるもの以外のα-オレフィンを1種、又は2種以上選択して用いることができる。好ましいコモノマーの主成分はプロピレンである。
【0124】
重合様式は、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用しうる。具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に使用せずにプロピレンなどのモノマーを溶媒として用いる方法、溶液重合法あるいは実質的に液体溶媒を使用せず各モノマーをガス状に保つ気相法などが採用できる。また、連続重合、回分式重合、又は予備重合を行う方法も適用される。
【0125】
スラリー重合の場合は、重合溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素の単独又は混合物が用いられる。
重合温度は、通常、0℃~150℃である。
【0126】
また、分子量調節剤として水素を用いることができる。また反応量を調節するために、酸素やアルコール等の触媒を失活させる作用のある化合物を供給してもよい。運転性を改善する等の目的で、酸素、アルコール、アルコキシシラン、界面活性剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
重合圧力は0kg/cm~2000kg/cmG(≒0MPaG~196.14MPaG)、好ましくは0kg/cm~60kg/cmG(≒0MPaG~5.88MPaG)が適当である。
【0127】
オレフィン(共)重合体の製造方法によって得られるオレフィン(共)重合体としては、特に限定されない。例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン/エチレン-α-オレフィン系共重合体などが好適に挙げられる。
【0128】
本発明の製造方法で得られるオレフィン重合体は、製品外観を悪化させるフィッシュアイが少ない。
本発明の製造方法で得られるオレフィン重合体は、フィッシュアイ数が少なければ少ないほどよい。フィッシュアイ数は、0個/900mm~100個/900mmであってもよく、好ましくは0個/900mm~70個/900mmであってもよい。
非相溶性のポリマーの混合物は、いわゆるインパクトコポリマー、ブロックコポリマーと呼ばれる。これは、多段重合やポリマーの混錬によって得られる。この混合物におけるフィッシュアイは、ポリマーの相溶性(組成)や混合比、分子量差(粘度差)によって生じる分散不良によって生じることがある。一般に相溶性が低い場合や、各成分の分子量差、粘度差が大きい場合にはフィッシュアイは増加する傾向にある。
なお、上記各特性の測定方法は、後述するためここでの記載は省略する。
【実施例0129】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限りこれらの実施例によって制約を受けるものではない。なお、本実施例における測定法は次の通りである。
【0130】
(各種物性測定法)
[イオン交換性層状珪酸塩及びイオン交換性層状珪酸塩粒子の組成分析]
JIS R2212に準拠して検量線を作成し、蛍光X線測定にてイオン交換性層状珪酸塩及びイオン交換性層状珪酸塩粒子の組成を定量した。
装置は、リガク社製ZSX Primus IVを使用した。
試料は、1050℃で1時間焼成後、0.4gを分け取り、融剤(Li)4g、50%LiBr水溶液(離型剤)15μLと混合し、ガラスビードを作成することで調製した。
【0131】
[Alの溶出率(ΔAl量)の計算方法]
Alの溶出率(%)={[(化学処理前のアルミニウム/珪素(モル比))-(化学処理後のアルミニウム/珪素(モル比))]÷(化学処理前のアルミニウム/珪素(モル比))}×100。
【0132】
[イオン交換性層状珪酸塩(原料)の粒子径]
次の方法で測定する円相当径を粒子径とした。
SCANNING VOL.26,131-134(2004)に記載の方法に従い行った。高分解黒鉛表面をポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドにて処理し、基板とした。この基板に、0.001wt%に調整し、30分間超音波を照射して十分に分散させたイオン交換性層状珪酸塩の水スラリーを塗布した。その後、水分を濾紙で吸着し、空気を吹き付けることにより試料を調製した。この基板上のイオン交換性珪酸塩をSEMによって2次電子像を撮影した。撮影後、画像処理により2値化し、各粒子の面積を求めた。粒子数が10000個以上になるまで撮影を行った後、円相当径に対する面積積算値が50%になる径を粒子径とした。
なお、SEMの撮影条件は以下の通りである。
使用装置 日立ハイテクノロジーズ社製 SU8020 電界放出型走査電子顕微鏡 測定条件 DataSize:1280x960
加速電圧:800 Volt
workingdistance:3mm
装置倍率:10K
【0133】
[細孔分布測定および比表面積測定]
窒素吸着法によって、イオン交換性層状珪酸塩粒子の吸着及び脱着等温線を測定した。
得られた吸着等温線を用いてBET多点法解析(Rouquerol変換)を実施し、イオン交換性層状珪酸塩粒子の比表面積を求めた。
また、脱着等温線を用いて、BJH(Barrett,Joyner,Hallender、J.Am.Chem. Soc.1951、P373)法解析により細孔分布を算出した。c値は一定とせず、測定値ごとに計算を行った。吸着層の厚みt(Å)はde Boerの式により求めた。
t(Å)=[13.99/(log(P/P)+0.034)]1/2
具体的な測定条件は下記の通りとした。
装置:Anton-Paar社製ガス吸着量測定装置Autosorb-iQ3
測定手法:窒素ガス吸着法
前処理条件:試料を200℃、真空下(1.3Pa以下)で2時間減圧加熱
試料量:約0.2g
ガス液化温度:77K
【0134】
[平均粒子径の測定]
平均粒子径は、堀場製作所社製レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置LA-960を用い、分散溶媒をエタノール、屈折率実数項1.490、虚数項0.000、分散溶媒屈折率実数項1.360の条件で、超音波分散を行った後に測定した。平均粒子径は、体積基準のメジアン径のことをいう。
【0135】
[X線回折(XRD)]
以下の条件により大気下にてX線回折測定を実施した。・装置:リガク社製X-ray Diffractometer Smartlab・X線源:Cu-Kα線(Kβ吸収板使用)、管電圧40kV、管電流30mA・光学系:集中法・発散スリット2/3度、散乱スリット2/3度、受光スリット0.300mm・スキャンモード:2θ/θスキャン・2θスキャン範囲:1.0000度~70.0000度・角度ステップ幅:0.0200度・スキャン速度:4.0000度/分・検出器:シンチレーションカウンタ・サンプルホルダ:深さ0.2mmのガラス製ホルダ
【0136】
[圧壊強度]
島津製作所(株)製の圧壊試験器「MCT-210」を用いて、JIS R 1639-5:2007を参考に、温度23℃、湿度35%で、負荷速度1.9mN/secにて、大きさに偏りが生じないように選んだ20個の粒子を測定し、以下の式に従い粒子の圧壊強度を計算した。
S = 2.48・P/(π・d
(S:圧壊強度(MPa)、P:破壊時の試験圧力(N)、d:直径=粒子の長軸径と短軸径の平均値(μm))
なお、dは、光学顕微鏡を用いて測定した。
得られた20個の粒子の圧壊強度の平均値を平均圧壊強度とした。
さらに、得られた20個の粒子について、圧壊強度S(MPa)と体積V(体積は、前記直径dの真球として算出した。単位はμm)の結果から、最小二乗法により下式(1)の係数1/mと、S・V 1/mを算出した。
S=(S・V 1/m)・V-1/m ・・・式(1)
(式(1)において、Sは、イオン交換性層状珪酸塩粒子の圧壊強度(MPa)、Sは、単位体積Vにおける圧壊強度、Vはイオン交換性層状珪酸塩粒子の体積(μm)、mは、Weibullの均一性係数)
【0137】
[MFR(メルトマスフローレート)]
タカラ社製メルトインデクサーを用い、JIS K7210の「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレート(MFR)及びメルトボリュームフローレート(MVR)の試験方法」の試験条件:230℃、2.16kg荷重に準拠して測定した。
【0138】
[フィッシュアイ数の測定]
ポリマー20gに対し、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ステアリン酸カルシウムを各10mgずつ加え、Xplore microcompounder(DSM社製)を用いて混練(200℃、50rpm、2min)を行った後、0.2mm厚にプレス(190℃、10MPa)してシートを得た。
シートをキャノン製Cano Scan 9000F Mark2で1200dpi、8bit-グレイスケールの画像として取り込み、画像を二値化した。この二値化した画像について、30mm×30mmの領域(正方形の範囲:900mm)におけるフィッシュアイ数を3箇所計測し、3箇所の平均値をフィッシュアイ数として採用した(単位は、個/900mm)。なお3ピクセル以下の点はノイズとみなし、計測の対象外とした。
【0139】
[エチレン・プロピレン共重合体を含む重合体の分析方法]
特開2015-193605に記載のクロス分別法とFT-IR法の組み合わせの手法により決定した。
【0140】
(合成例1)
シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-t-ブチルフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリドの合成は、特開2015-193605号公報の実施例7に記載の方法と同様に、合成した。
【0141】
[実施例a1:イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造]
(a1-1)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の製造
イオン交換性層状珪酸塩として、水澤化学工業社製「ベンクレイKK」(主成分は、2:1型層構造のスメクタイト族モンモリロナイト)の水スラリー(5.0wt%)を使用した。イオン交換性層状珪酸塩の粒子径は0.287μmであった。
5Lビーカーに硫酸リチウム・1水和物30.0g、蒸留水500gを加えて攪拌し、溶液とした。この溶液へ、ベンクレイKKの水スラリー(5.0wt%)2,000gを撹拌しながらゆっくりと加えた。10分間撹拌した後、混合物をさらに高速撹拌機を用いて、15分間撹拌した。以上の操作を2回行った。得られた2バッチ分のスラリーを用いて、噴霧乾燥造粒装置(大川原化工機社「L-8」)を使用し、次の条件下で噴霧乾燥造粒を行った。
・アトマイザー形式:M type ロータリーディスク
・アトマイザー回転数:28000rpm
・サイクロン差圧:1.05kPa
・乾燥空気入口温度:110℃
スラリーの供給時間は202分であった。サイクロン下部及び本体下部に得られた造粒物は255gであった。これを目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、229gのイオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得た。
XRDによる分析を行ったところ、イオン交換性層状珪酸塩(モンモリロナイト)由来のピークの他に、硫酸リチウム・1水和物結晶に由来するピークが観測された。
【0142】
(a1-2)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(1)
撹拌翼と還流装置を取り付けた1Lフラスコに、蒸留水350gを投入し、96%硫酸88gを滴下した。この硫酸水溶液を内温が95℃になるまでオイルバスで加熱した。95℃で、上記(a1-1)のイオン交換性層状珪酸塩複合粒子70gを添加した。その後、95℃を保ちながら240分反応させた。
この反応溶液を500mLの蒸留水に注ぐことで反応を停止した。得られたスラリーを吸引濾過し、残った固体分151.3gを得た。
【0143】
(a1-3)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(2)
上記(a1-2)から得られた固体分と蒸留水234.7gを500mLフラスコに加え、撹拌した。このスラリーを40℃まで昇温し、ここに4.43wt%水酸化リチウム水溶液を105.1g滴下した。その後、90分間撹拌を継続し、反応させた。
90分経過後のスラリーpHは、5.8であった。
反応スラリーを450mLの蒸留水に注いだ後、吸引濾過した。回収した固体分を450mLの蒸留水で3回洗浄した。洗浄後、固体分を110℃で1晩乾燥し、目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、イオン交換性層状珪酸塩粒子38.6gを得た。各種分析を行った結果を表1に示す。
【0144】
[実施例a2:イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造]
(a2-1)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の製造
イオン交換性層状珪酸塩として、水澤化学工業社製「ベンクレイKK」(主成分は、2:1型層構造のスメクタイト族モンモリロナイト)の水スラリー(5.0wt%)を使用した。
5Lビーカーに硫酸リチウム・1水和物50.0g、蒸留水500gを加えて攪拌し、溶液とした。この溶液へ、ベンクレイKKの水スラリー(5.0wt%)2,000gを撹拌しながらゆっくりと加えた。10分間撹拌した後、混合物をさらに高速撹拌機を用いて、15分間撹拌した。以上の操作を2回行った。得られた2バッチ分のスラリーを用いて、噴霧乾燥造粒装置(大川原化工機社「L-8」)を使用し、次の条件下で噴霧乾燥造粒を行った。
・アトマイザー形式:M type ロータリーディスク
・アトマイザー回転数:28000rpm
・サイクロン差圧:1.05kPa
・乾燥空気入口温度:150℃
スラリーの供給時間は195分であった。サイクロン下部及び本体下部に得られた造粒物は304gであった。これを目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、255gのイオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得た。
XRDによる分析を行ったところ、イオン交換性層状珪酸塩(モンモリロナイト)由来のピークの他に、硫酸リチウム・1水和物結晶に由来するピークが観測された。
【0145】
(a2-2)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(1)
撹拌翼と還流装置を取り付けた1Lフラスコに、蒸留水350gを投入し、96%硫酸88gを滴下した。この硫酸水溶液を内温が95℃になるまでオイルバスで加熱した。95℃で、上記(a2-1)のイオン交換性層状珪酸塩複合粒子70gを添加した。その後、95℃を保ちながら240分反応させた。
この反応溶液を800mLの蒸留水に注ぐことで反応を停止した。得られたスラリーを吸引濾過し、残った固体分を蒸留水400mLで洗浄した。
【0146】
(a2-3)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(2)
上記(a2-2)で得られた固体分123.7gと蒸留水262.3gを1Lフラスコに加え、撹拌した。このスラリーを40℃まで昇温し、ここに4.43wt%水酸化リチウム水溶液を9.7g滴下した。その後、90分間撹拌を継続し、反応させた。
90分経過後のスラリーpHは、5.81であった。
反応スラリーを450mLの蒸留水に注いだ後、吸引濾過した。回収した固体分を300mLの蒸留水で3回洗浄した。洗浄後、固体分を110℃で1晩乾燥し、目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、イオン交換性層状珪酸塩粒子34.6gを得た。各種分析を行った結果を表1に示す。
【0147】
[実施例a3:イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造]
(a3-1)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の製造
イオン交換性層状珪酸塩として、水澤化学工業社製「ベンクレイKK」(主成分は、2:1型層構造のスメクタイト族モンモリロナイト)の水スラリー(5.0wt%)を使用した。
5Lビーカーに硫酸リチウム・1水和物30.6g、蒸留水240gを加えて攪拌し、溶液とした。この溶液へ、ベンクレイKKの水スラリー(5.0wt%)2,100gを撹拌しながらゆっくりと加えた。10分間撹拌した後、混合物をさらに高速撹拌機を用いて、15分間撹拌した。以上の操作を2回行った。得られた2バッチ分のスラリーを用いて、噴霧乾燥造粒装置(大川原化工機社「L-8」)を使用し、次の条件下で噴霧乾燥造粒を行った。
・アトマイザー形式:M type ロータリーディスク
・アトマイザー回転数:8000rpm
・サイクロン差圧:1.05kPa
・乾燥空気入口温度:110℃
供給したスラリー量は4657g、供給時間は371分であった。サイクロン下部及び本体下部に得られた造粒物は214gであった。その内、本体下部に得られた造粒物を目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、94.5gのイオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得た。
【0148】
(a3-2)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(1)
撹拌翼と還流装置を取り付けた500mLフラスコに、蒸留水225gを投入し、96%硫酸57gを滴下した。この硫酸水溶液を内温が95℃になるまでオイルバスで加熱した。95℃で、上記(a3-1)のイオン交換性層状珪酸塩複合粒子45gを添加した。その後95℃を保ちながら240分反応させた。
この反応溶液を500mLの蒸留水に注ぐことで反応を停止した。得られたスラリーを吸引濾過し、残った固体分を500mLの蒸留水で2回洗浄した。
【0149】
(a3-3)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(2)
上記(a3-2)の固体分66.6gと蒸留水181.4gを500mLフラスコに加え、撹拌した。このスラリーを40℃まで昇温し、ここに4.43wt%水酸化リチウム水溶液を4.7g滴下した後、90分間撹拌を継続し、反応させた。
90分経過後のスラリーpHは、5.57であった。
反応スラリーを450mLの蒸留水に注いだ後、吸引濾過した。回収した固体分を300mLの蒸留水で3回洗浄した。洗浄後、固体分を110℃で1晩乾燥し、目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、イオン交換性層状珪酸塩粒子23.8gを得た。各種分析を行った結果を表1に示す。
【0150】
[実施例a4:イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造]
(a4-1)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の製造
イオン交換性層状珪酸塩として、水澤化学工業社製「ベンクレイKK」(主成分は、2:1型層構造のスメクタイト族モンモリロナイト)の水スラリー(5.0wt%)を使用した。
5Lビーカーに硫酸リチウム・1水和物58.0g、蒸留水440gを加えて攪拌し、溶液とした。この溶液へ、ベンクレイKKの水スラリー(5.0wt%)2,000gを撹拌しながらゆっくりと加えた。10分間撹拌した後、混合物をさらに高速撹拌機を用いて、15分間撹拌した。以上の操作を2回行った。得られた2バッチ分のスラリーを用いて、噴霧乾燥造粒装置(大川原化工機社「L-8」)を使用し、次の条件下で噴霧乾燥造粒を行った。
・アトマイザー形式:M type ロータリーディスク
・アトマイザー回転数:8000rpm
・サイクロン差圧:1.05kPa
・乾燥空気入口温度:110℃
供給したスラリー量は4857g、供給時間は392分であった。サイクロン下部及び本体下部に得られた造粒物は258gであった。その内、本体下部に得られた造粒物を目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、166.3gのイオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得た。
【0151】
(a4-2)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(1)
撹拌翼と還流装置を取り付けた1Lフラスコに、蒸留水350gを投入し、96%硫酸88gを滴下した。この硫酸水溶液を内温が95℃になるまでオイルバスで加熱した。95℃で、上記(a4-2)のイオン交換性層状珪酸塩複合粒子70gを添加した。その後95℃を保ちながら240分反応させた。
この反応溶液を800mLの蒸留水に注ぐことで反応を停止した。得られたスラリーを吸引濾過し、残った固体分を400mLの蒸留水で洗浄した。
【0152】
(a4-3)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(2)
上記(a4-2)の固体分46.2gと蒸留水236.0gを500mLフラスコに加え、撹拌した。このスラリーを40℃まで昇温し、ここに4.43wt%水酸化リチウム水溶液を10.1g滴下した後、90分間撹拌を継続し、反応させた。
90分経過後のスラリーpHは、5.63であった。
反応スラリーを800mLの蒸留水に注いだ後、吸引濾過した。回収した固体分を450mLの蒸留水で3回洗浄した。洗浄後、固体分を110℃で1晩乾燥し、目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、イオン交換性層状珪酸塩粒子33.0gを得た。各種分析を行った結果を表1に示す。
【0153】
[実施例a5:イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造]
(a5-1)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の製造
実施例a4と同様にして、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子を調製した。
(a5-2)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(1)
撹拌翼と還流装置を取り付けた1Lフラスコに、蒸留水350gを投入し、96%硫酸69gを滴下した。
内温が95℃になるまでオイルバスで加熱した。95℃で、上記(a5-1)のイオン交換性層状珪酸塩複合粒子70gを添加後し、95℃を保ちながら480分反応させた。
この反応溶液を800mLの蒸留水に注ぐことで反応を停止した。得られたスラリーを吸引濾過し、残った固体分を400mLの蒸留水で洗浄した。
【0154】
(a5-3)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(2)
上記(a5-2)の固体分146.2gと蒸留水229.2gを500mLフラスコに加え、撹拌した。このスラリーを40℃まで昇温し、ここに4.43wt%水酸化リチウム水溶液を8.9g滴下した後、90分間撹拌を継続し、反応させた。
90分経過後のスラリーpHは、5.48であった。
反応スラリーを800mLの蒸留水に注いだ後、吸引濾過した。回収した固体分を450mLの蒸留水で3回洗浄した。洗浄後、固体分を110℃で1晩乾燥し、目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、イオン交換性層状珪酸塩粒子31.6gを得た。各種分析を行った結果を表1に示す。
【0155】
[実施例a6:イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造]
(a6-1)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の製造
イオン交換性層状珪酸塩として、水澤化学工業製の、新潟県中条産の粘土鉱物を水簸、遠心分離を用いて精製した精製物の水スラリー(主成分は、2:1型層構造のスメクタイト族モンモリロナイト、固体分4.0wt%)を使用した。イオン交換性珪酸塩の粒子径は0.314μmであった。
5Lビーカーに硫酸リチウム・1水和物47.0g、蒸留水360gを加えて攪拌し、溶液とした。この溶液へ、上述の水スラリー(4.0wt%)2,000gを撹拌しながらゆっくりと加えた。10分間撹拌した後、混合物をさらに高速撹拌機を用いて、15分間撹拌した。以上の操作を2回行った。得られた2バッチ分のスラリーを用いて、噴霧乾燥造粒装置(大川原化工機社「L-8」)を使用し、次の条件下で噴霧乾燥造粒を行った。
・アトマイザー形式:M type ロータリーディスク
・アトマイザー回転数:8000rpm
・サイクロン差圧:1.05kPa
・乾燥空気入口温度:110℃
供給したスラリー量は4422g、スラリーの供給時間は333分であった。本体下部に得られた造粒物は、164gであった。この造粒物を目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、113.1gのイオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得た。
【0156】
(a6-2)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(1)
撹拌翼と還流装置を取り付けた1Lフラスコに、蒸留水350gを投入し、96%硫酸88gを滴下した。この硫酸水溶液を内温が95℃になるまでオイルバスで加熱した。95℃で、上記(a6-1)のイオン交換性層状珪酸塩複合粒子100gを添加した。その後95℃を保ちながら240分反応させた。
この反応溶液を800mLの蒸留水に注ぐことで反応を停止した。得られたスラリーを吸引濾過し、残った固体分を450mLの蒸留水で3回洗浄した。
【0157】
(a6-3)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(2)
上記(a6-2)の固体分110.7gと蒸留水265.5gを500mLフラスコに加え、撹拌した。このスラリーを40℃まで昇温し、ここに4.43wt%水酸化リチウム水溶液を7.5g滴下した後、90分間撹拌を継続し、反応させた。
90分経過後のスラリーpHは、5.52であった。
反応スラリーを800mLの蒸留水に注いだ後、吸引濾過した。回収した固体分を450mLの蒸留水で3回洗浄した。洗浄後、固体分を110℃で1晩乾燥し、目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、イオン交換性層状珪酸塩粒子33.7gを得た。各種分析を行った結果を表1に示す。
【0158】
[実施例a7:イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造]
(a7-1)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の製造
イオン交換性層状珪酸塩として、水澤化学工業製の、新潟県中条産の粘土鉱物に3wt%の炭酸ナトリウムを混錬後、水簸、遠心分離を用いて精製した精製物の水スラリー(主成分は、2:1型層構造のスメクタイト族モンモリロナイト、固体分3.8wt%)を使用した。イオン交換性珪酸塩の粒子径は0.184μmであった。
5Lビーカーに硫酸リチウム・1水和物55.0g、蒸留水333gを加えて攪拌し、溶液とした。この溶液へ、上述の水スラリー(3.8wt%)2,500gを撹拌しながらゆっくりと加えた。10分間撹拌した後、混合物をさらに高速撹拌機を用いて、15分間撹拌した。以上の操作を2回行った。得られた2バッチ分のスラリーを用いて、噴霧乾燥造粒装置(大川原化工機社「L-8」)を使用し、次の条件下で噴霧乾燥造粒を行った。
・アトマイザー形式:M type ロータリーディスク
・アトマイザー回転数:8000rpm
・サイクロン差圧:1.05kPa
・乾燥空気入口温度:110℃
供給したスラリー量は5769g、スラリーの供給時間は317分であった。本体下部に得られた造粒物は、176gであった。この造粒物を目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、122.6gのイオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得た。
XRDによる分析を行ったところ、イオン交換性層状珪酸塩(モンモリロナイト)由来のピークの他に、硫酸リチウム・1水和物結晶に由来するピークが観測された。
【0159】
(a7-2)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(1)
撹拌翼と還流装置を取り付けた1Lフラスコに、蒸留水350gを投入し、96%硫酸88gを滴下した。この硫酸水溶液を内温が95℃になるまでオイルバスで加熱した。95℃で、上記(a7-1)のイオン交換性層状珪酸塩複合粒子100gを添加した。その後95℃を保ちながら240分反応させた。
この反応溶液を800mLの蒸留水に注ぐことで反応を停止した。得られたスラリーを吸引濾過し、残った固体分を450mLの蒸留水で3回洗浄した。
【0160】
(a7-3)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(2)
上記(a7-2)の固体分123.4gと蒸留水252.8gを500mLフラスコに加え、撹拌した。このスラリーを40℃まで昇温し、ここに4.43wt%水酸化リチウム水溶液を6.8g滴下した後、90分間撹拌を継続し、反応させた。
90分経過後のスラリーpHは、5.49であった。
反応スラリーを800mLの蒸留水に注いだ後、吸引濾過した。回収した固体分を450mLの蒸留水で3回洗浄した。洗浄後、固体分を110℃で1晩乾燥し、目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、イオン交換性層状珪酸塩粒子30.9gを得た。各種分析を行った結果を表1に示す。
【0161】
[実施例a8:イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造]
(a8-1)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の製造
イオン交換性層状珪酸塩として、水澤化学工業製の、新潟県中条産の粘土鉱物に3wt%の炭酸ナトリウムを混錬後、水簸、遠心分離を用いて精製した精製物の水スラリー(主成分は、2:1型層構造のスメクタイト族モンモリロナイト、固体分3.8wt%)を使用した。
5Lビーカーに硫酸リチウム・1水和物75.0g、蒸留水333gを加えて攪拌し、溶液とした。この溶液へ、上述の水スラリー(3.8wt%)2,500gを撹拌しながらゆっくりと加えた。10分間撹拌した後、混合物をさらに高速撹拌機を用いて、15分間撹拌した。以上の操作を2回行った。得られた2バッチ分のスラリーを用いて、噴霧乾燥造粒装置(大川原化工機社「L-8」)を使用し、次の条件下で噴霧乾燥造粒を行った。
・アトマイザー形式:M type ロータリーディスク
・アトマイザー回転数:8000rpm
・サイクロン差圧:1.05kPa
・乾燥空気入口温度:110℃
供給したスラリー量は5703g、スラリーの供給時間は320分であった。本体下部に得られた造粒物は、200gであった。この造粒物を目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、115.5gのイオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得た。
XRDによる分析を行ったところ、イオン交換性層状珪酸塩(モンモリロナイト)由来のピークの他に、硫酸リチウム・1水和物結晶に由来するピークが観測された。
【0162】
(a8-2)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(1)
撹拌翼と還流装置を取り付けた1Lフラスコに、蒸留水350gを投入し、96%硫酸93gを滴下した。この硫酸水溶液を内温が95℃になるまでオイルバスで加熱した。95℃で、上記(a8-1)のイオン交換性層状珪酸塩複合粒子70gを添加した。その後95℃を保ちながら240分反応させた。
この反応溶液を800mLの蒸留水に注ぐことで反応を停止した。得られたスラリーを吸引濾過し、残った固体分を450mLの蒸留水で3回洗浄した。
【0163】
(a8-3)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(2)
上記(a8-2)の固体分113.2gと蒸留水263.0gを500mLフラスコに加え、撹拌した。このスラリーを40℃まで昇温し、ここに4.43wt%水酸化リチウム水溶液を6.6g滴下した後、90分間撹拌を継続し、反応させた。
90分経過後のスラリーpHは、5.51であった。
反応スラリーを800mLの蒸留水に注いだ後、吸引濾過した。回収した固体分を450mLの蒸留水で3回洗浄した。洗浄後、固体分を110℃で1晩乾燥し、目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、イオン交換性層状珪酸塩粒子23.2gを得た。各種分析を行った結果を表1に示す。
【0164】
[実施例a9:イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造]
(a9-1)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の製造
イオン交換性層状珪酸塩として、水澤化学工業製の、新潟県中条産の粘土鉱物に3wt%の炭酸ナトリウムを混錬後、水簸、遠心分離を用いて精製した精製物の水スラリー(主成分は、2:1型層構造のスメクタイト族モンモリロナイト、固体分3.8wt%)を使用した。
5Lビーカーに硫酸リチウム・1水和物37.0g、蒸留水225gを加えて攪拌し、溶液とした。この溶液へ、上述の水スラリー(3.8wt%)2,500gを撹拌しながらゆっくりと加えた。10分間撹拌した後、混合物をさらに高速撹拌機を用いて、15分間撹拌した。以上の操作を2回行った。得られた2バッチ分のスラリーを用いて、噴霧乾燥造粒装置(大川原化工機社「L-8」)を使用し、次の条件下で噴霧乾燥造粒を行った。
・アトマイザー形式:M type ロータリーディスク
・アトマイザー回転数:8000rpm
・サイクロン差圧:1.05kPa
・乾燥空気入口温度:110℃
供給したスラリー量は5422g、スラリーの供給時間は350分であった。本体下部に得られた造粒物は、163gであった。この造粒物を目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、110.2gのイオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得た。
【0165】
(a9-2)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(1)
撹拌翼と還流装置を取り付けた1Lフラスコに、蒸留水350gを投入し、96%硫酸80gを滴下した。この硫酸水溶液を内温が95℃になるまでオイルバスで加熱した。95℃で、上記(a9-1)のイオン交換性層状珪酸塩複合粒子65gを添加した。その後95℃を保ちながら240分反応させた。
この反応溶液を800mLの蒸留水に注ぐことで反応を停止した。得られたスラリーを吸引濾過し、残った固体分を450mLの蒸留水で3回洗浄した。
【0166】
(a9-3)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(2)
上記(a9-2)の固体分97.5gと蒸留水279.3gを500mLフラスコに加え、撹拌した。このスラリーを40℃まで昇温し、ここに4.43wt%水酸化リチウム水溶液を8.1g滴下した後、90分間撹拌を継続し、反応させた。
90分経過後のスラリーpHは、5.44であった。
反応スラリーを800mLの蒸留水に注いだ後、吸引濾過した。回収した固体分を450mLの蒸留水で3回洗浄した。洗浄後、固体分を110℃で1晩乾燥し、目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、イオン交換性層状珪酸塩粒子28.9gを得た。各種分析を行った結果を表1に示す。
【0167】
[実施例a10:イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造]
(a10-1)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の製造
イオン交換性層状珪酸塩として、水澤化学工業製の、新潟県中条産の粘土鉱物に3wt%の炭酸ナトリウムを混錬後、水簸、遠心分離を用いて精製した精製物の水スラリー(主成分は、2:1型層構造のスメクタイト族モンモリロナイト、固体分3.8wt%)を使用した。
5Lビーカーに硫酸リチウム・1水和物25.5g、蒸留水155gを加えて攪拌し、溶液とした。この溶液へ、上述の水スラリー(3.8wt%)2,500gを撹拌しながらゆっくりと加えた。10分間撹拌した後、混合物をさらに高速撹拌機を用いて、15分間撹拌した。以上の操作を2回行った。得られたスラリーを用いて、噴霧乾燥造粒装置(大川原化工機社「L-8」)を使用し、次の条件下で噴霧乾燥造粒を行った。
・アトマイザー形式:M type ロータリーディスク
・アトマイザー回転数:8000rpm
・サイクロン差圧:1.05kPa
・乾燥空気入口温度:110℃
供給したスラリー量は5239g、スラリーの供給時間は340分であった。本体下部に得られた造粒物は、153gであった。この造粒物を目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、81.8gのイオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得た。
【0168】
(a10-2)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(1)
撹拌翼と還流装置を取り付けた1Lフラスコに、蒸留水350gを投入し、96%硫酸75gを滴下した。この硫酸水溶液を内温が95℃になるまでオイルバスで加熱した。95℃で、上記(a10-1)のイオン交換性層状珪酸塩複合粒子60gを添加した。その後95℃を保ちながら240分反応させた。
この反応溶液を800mLの蒸留水に注ぐことで反応を停止した。得られたスラリーを吸引濾過し、残った固体分を450mLの蒸留水で3回洗浄した。
【0169】
(a10-3)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(2)
上記(a10-2)の固体分136.6gと蒸留水240.8gを500mLフラスコに加え、撹拌した。このスラリーを40℃まで昇温し、ここに4.43wt%水酸化リチウム水溶液を7.1g滴下した後、90分間撹拌を継続し、反応させた。
90分経過後のスラリーpHは、5.68であった。
反応スラリーを800mLの蒸留水に注いだ後、吸引濾過した。回収した固体分を450mLの蒸留水で3回洗浄した。洗浄後、固体分を110℃で1晩乾燥し、目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、イオン交換性層状珪酸塩粒子29.5gを得た。各種分析を行った結果を表1に示す。
【0170】
[実施例a11:イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造]
(a11-1)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の製造
イオン交換性層状珪酸塩として、水澤化学工業社製「ベンクレイKK」(主成分は、2:1型層構造のスメクタイト族モンモリロナイト)の水スラリー(4.5wt%)を使用した。
5Lビーカーに硫酸リチウム94.0g、蒸留水800gを加えて攪拌し、溶液とした。この溶液へ、ベンクレイKKの水スラリー(4.5wt%)1,800gを撹拌しながらゆっくりと加えた。10分間撹拌した後、混合物をさらに高速撹拌機を用いて、10分間撹拌した。以上の操作を2回行った。得られた2バッチ分のスラリーを用いて、噴霧乾燥造粒装置(大川原化工機社「L-8」)を使用し、次の条件下で噴霧乾燥造粒を行った。
・アトマイザー形式:M type ロータリーディスク
・アトマイザー回転数:8000rpm
・サイクロン差圧:1.10kPa
・乾燥空気入口温度:110℃
スラリーの供給時間は307分であった。本体下部に得られた造粒物は、214gであった。この造粒物を目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、93.7gのイオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得た。
【0171】
(a11-2)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(1)
撹拌翼と還流装置を取り付けた500mLフラスコに、蒸留水200gを投入し、96%硫酸70gを滴下した。この硫酸水溶液を内温が95℃になるまでオイルバスで加熱した。95℃で、上記(a11-1)のイオン交換性層状珪酸塩複合粒子70gを添加した。その後95℃を保ちながら240分反応させた。
この反応溶液を800mLの蒸留水に注ぐことで反応を停止した。得られたスラリーを吸引濾過し、残った固体分を450mLの蒸留水で3回洗浄した。
【0172】
(a11-3)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(2)
上記(a11-2)の固体分138.3gと蒸留水146.7gを500mLフラスコに加え、撹拌した。このスラリーを40℃まで昇温し、ここに4.43wt%水酸化リチウム水溶液を5.8g滴下した後、90分間撹拌を継続し、反応させた。
90分経過後のスラリーpHは、5.91であった。
反応スラリーを800mLの蒸留水に注いだ後、吸引濾過した。回収した固体分を450mLの蒸留水で3回洗浄した。洗浄後、固体分を110℃で1晩乾燥し、目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、イオン交換性層状珪酸塩粒子23.1gを得た。各種分析を行った結果を表1に示す。
【0173】
[実施例a12:イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造]
(a12-1)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の製造
イオン交換性層状珪酸塩として、水澤化学工業社製「ベンクレイKK」(主成分は、2:1型層構造のスメクタイト族モンモリロナイト)の水スラリー(5.0wt%)を使用した。
5Lビーカーに硫酸リチウム・1水和物30.0g、蒸留水500gを加えて攪拌し、溶液とした。この溶液へ、ベンクレイKKの水スラリー(5.0wt%)2,000gを撹拌しながらゆっくりと加えた。10分間撹拌した後、混合物をさらに高速撹拌機を用いて、15分間撹拌した。以上の操作を2回行った。得られた2バッチ分のスラリーを用いて、噴霧乾燥造粒装置(大川原化工機社「L-8」)を使用し、次の条件下で噴霧乾燥造粒を行った。
・アトマイザー形式:M type ロータリーディスク
・アトマイザー回転数:28000rpm
・サイクロン差圧:1.05kPa
・乾燥空気入口温度:110℃
スラリーの供給時間は202分であった。サイクロン下部及び本体下部に得られた造粒物は255gであった。この造粒物を目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、229gのイオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得た。
XRDによる分析を行ったところ、イオン交換性層状珪酸塩(モンモリロナイト)由来のピークの他に、硫酸リチウム・1水和物結晶に由来するピークが観測された。
【0174】
(a12-2)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(1)
撹拌翼と還流装置を取り付けた1Lフラスコに、蒸留水350gを投入し、96%硫酸88gを滴下した。この硫酸水溶液を内温が95℃になるまでオイルバスで加熱した。95℃で、上記(a12-1)のイオン交換性層状珪酸塩複合粒子70gを添加した。その後95℃を保ちながら240分反応させた。
この反応溶液を500mLの蒸留水に注ぐことで反応を停止した。得られたスラリーを吸引濾過し、残った固体分を500mLの蒸留水で3回洗浄した。洗浄後、固体分を110℃で1晩乾燥し、目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、イオン交換性層状珪酸塩粒子39.0gを得た。各種分析を行った結果を表1に示す。
【0175】
[実施例a13:イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造]
(a13-1)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の製造
イオン交換性層状珪酸塩として、水澤化学工業社製「ベンクレイKK」(主成分は、2:1型層構造のスメクタイト族モンモリロナイト)の水スラリー(5.0wt%)を使用した。
5Lビーカーに硫酸マグネシウム・7水和物77.0g、蒸留水420gを加えて攪拌し、溶液とした。この溶液へ、ベンクレイKKの水スラリー(5.0wt%)2,000gを撹拌しながらゆっくりと加えた。10分間撹拌した後、混合物をさらに高速撹拌機を用いて、15分間撹拌した。以上の操作を2回行った。得られた2バッチ分のスラリーを用いて、噴霧乾燥造粒装置(大川原化工機社「L-8」)を使用し、次の条件下で噴霧乾燥造粒を行った。
・アトマイザー形式:M type ロータリーディスク
・アトマイザー回転数:28000rpm
・サイクロン差圧:1.05kPa
・乾燥空気入口温度:110℃
スラリーの供給時間は221分であった。サイクロン下部及び本体下部に得られた造粒物は、298gであった。この造粒物を目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、250.3gのイオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得た。
XRDによる分析を行ったところ、イオン交換性層状珪酸塩(モンモリロナイト)由来のピークの他に、硫酸マグネシウム・6水和物結晶に由来するピークが観測された。
【0176】
(a13-2)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(1)
撹拌翼と還流装置を取り付けた1Lフラスコに、蒸留水500gを投入し、96%硫酸126gを滴下した。この硫酸水溶液を内温が95℃になるまでオイルバスで加熱した。95℃で、上記(a13-1)のイオン交換性層状珪酸塩複合粒子100gを添加した。その後95℃を保ちながら240分反応させた。
この反応溶液を800mLの蒸留水に注ぐことで反応を停止した。得られたスラリーを吸引濾過し、残った固体分を半分に当たる109g取り除き、残った固体分を400mLの蒸留水で3回洗浄した。洗浄後、固体分を110℃で1晩乾燥し、目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、イオン交換性層状珪酸塩粒子24.4gを得た。各種分析を行った結果を表1に示す。
【0177】
[実施例a14:イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造]
(a14-1)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の製造
イオン交換性層状珪酸塩として、水澤化学工業社製「ベンクレイKK」(主成分は、2:1型層構造のスメクタイト族モンモリロナイト)の水スラリー(5.0wt%)を使用した。
5Lビーカーに硫酸ナトリウム38.0g、蒸留水460gを加えて攪拌し、溶液とした。この溶液へ、ベンクレイKKの水スラリー(5.0wt%)2,000gを撹拌しながらゆっくりと加えた。10分間撹拌した後、混合物をさらに高速撹拌機を用いて、15分間撹拌した。以上の操作を2回行った。得られた2バッチ分のスラリーを用いて、噴霧乾燥造粒装置(大川原化工機社「L-8」)を使用し、次の条件下で噴霧乾燥造粒を行った。
・アトマイザー形式:M type ロータリーディスク
・アトマイザー回転数:28000rpm
・サイクロン差圧:1.05kPa
・乾燥空気入口温度:110℃
スラリーの供給時間は192分であった。サイクロン下部及び本体下部に得られた造粒物は、292gであった。この造粒物を目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、247.1gのイオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得た。
XRDによる分析を行ったところ、イオン交換性層状珪酸塩(モンモリロナイト)由来のピークの他に、硫酸ナトリウム結晶に由来するピークが観測された。
【0178】
(a14-2)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(1)
撹拌翼と還流装置を取り付けた1Lフラスコに、蒸留水500gを投入し、96%硫酸126gを滴下した。この硫酸水溶液を内温が95℃になるまでオイルバスで加熱した。95で、上記(a14-1)のイオン交換性層状珪酸塩複合粒子100gを添加した。その後95℃を保ちながら240分反応させた。
この反応溶液を800mLの蒸留水に注ぐことで反応を停止した。得られたスラリーを吸引濾過し、残った固体分を半分に当たる102.9g取り除き、残った固体分を400mLの蒸留水で3回洗浄した。洗浄後、固体分を110℃で1晩乾燥し、目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、イオン交換性層状珪酸塩粒子24.2gを得た。各種分析を行った結果を表1に示す。
【0179】
【表1】
m.r.はモル比を表す。
【0180】
[比較例a1:比較イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造]
(a1-i)
イオン交換性層状珪酸塩として、水澤化学工業社製「ベンクレイKK」(主成分は、2:1型層構造のスメクタイト族モンモリロナイトを用いた。その造粒品(メジアン径33.0μm)をイオン交換性層状珪酸塩粒子として準備した。
(a1-ii)イオン交換性層状珪酸塩粒子の化学処理(1)
撹拌翼と還流装置を取り付けた1Lフラスコに、蒸留水585gを投入し、96%硫酸75gを滴下した。この硫酸水溶液を内温が95℃になるまでオイルバスで加熱した。95℃で、上述のイオン交換性層状珪酸塩粒子90gを添加した。その後95℃を保ちながら505分反応させた。
この反応溶液を900mLの蒸留水に注ぐことで反応を停止した。得られたスラリーを吸引濾過し、残った固体分を450mLの蒸留水で洗浄した。
(a1-iii)イオン交換性層状珪酸塩粒子の化学処理(2)
上記(a1-ii)の固体分268.6gと蒸留水357.6gを1Lフラスコに加え、撹拌した。このスラリーを40℃まで昇温し、ここに4.43wt%水酸化リチウム水溶液を22.1g滴下した後、90分間撹拌を継続し、反応させた。
90分経過後のスラリーpHは、5.50であった。
反応スラリーを900mLの蒸留水に注いだ後、吸引濾過した。回収した固体分を900mLの蒸留水で3回洗浄した。洗浄後、固体分を110℃で1晩乾燥し、目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、イオン交換性層状珪酸塩粒子59.9gを得た。各種分析を行った結果を表2に示す。
【0181】
[比較例a2:比較イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造]
(a2-i)
イオン交換性層状珪酸塩として、水澤化学工業製の、新潟県中条産の粘土鉱物を水簸、遠心分離を用いて精製した精製物の水スラリー(主成分は、2:1型層構造のスメクタイト族モンモリロナイト)を用いた。その造粒品(メジアン径33.3μm)をイオン交換性層状珪酸塩粒子として準備した。
(a2-ii)イオン交換性層状珪酸塩粒子の化学処理(1)
撹拌翼と還流装置を取り付けた1Lフラスコに、蒸留水585gを投入し、96%硫酸76gを滴下した。この硫酸水溶液を内温が95℃になるまでオイルバスで加熱した。95℃で、上述のイオン交換性層状珪酸塩粒子90gを添加した。その後95℃を保ちながら360分反応させた。
この反応溶液を900mLの蒸留水に注ぐことで反応を停止した。得られたスラリーを吸引濾過し、残った固体分を450mLの蒸留水で3回洗浄した。
(a2-iii)イオン交換性層状珪酸塩粒子の化学処理(2)
上記(a2-ii)の固体分270.9gと蒸留水355.1gを1Lフラスコに加え、撹拌した。このスラリーを40℃まで昇温し、ここに4.43wt%水酸化リチウム水溶液を20.6g滴下した後、90分間撹拌を継続し、反応させた。
90分経過後のスラリーpHは、5.51であった。
反応スラリーを800mLの蒸留水に注いだ後、吸引濾過した。回収した固体分を900mLの蒸留水で3回洗浄した。洗浄後、固体分を110℃で1晩乾燥し、目開き75μmの篩を通して粗大物を取り除いた。篩通過分を200℃、減圧下で2時間乾燥して、イオン交換性層状珪酸塩粒子68.8gを得た。各種分析を行った結果を表2に示す。
【0182】
[比較例a3:比較イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造]
特開2019-172958号公報の実施例3と同様にして、比較イオン交換性層状珪酸塩粒子を製造した。各種分析を行った結果を表2に示す。
【0183】
[比較例a4:比較イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造]
イオン交換性層状珪酸塩として、水澤化学工業社製「ベンクレイKK」(主成分は、2:1型層構造のスメクタイト族モンモリロナイト)を用い、特開2015-108138公報の実施例5の1.に従い化学処理を行い、イオン交換性層状珪酸塩粒子を得た。各種分析を行った結果を表2に示す。
【0184】
[比較例a5:比較イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造]
イオン交換性層状珪酸塩として、水澤化学工業社製「ベンクレイKK」(主成分は、2:1型層構造のスメクタイト族モンモリロナイト)を用い、特開2015-108138公報の実施例4の1.に従い化学処理を行い、イオン交換性層状珪酸塩粒子を得た。各種分析を行った結果を表2に示す。
【0185】
[比較例a6:比較イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造]
特開2002-088114 比較例3と同様にして、比較イオン交換性層状珪酸塩粒子を製造した。各種分析を行った結果を表2に示す。
【0186】
【表2】
表中、m.r.はモル比を表し、「-」は未測定を表す。
【0187】
[実施例b1:オレフィン重合用触媒の製造]
内容積1000mLのフラスコに実施例a1で得たイオン交換性層状珪酸塩粒子10.0g、ヘプタン66mLを加え撹拌した。そこへトリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液34mL(24.5mmol-Al)を加え、混合物を室温で1時間撹拌した。
その後、得られたスラリーをヘプタンで残液率1/100まで洗浄し、最後にスラリー量を50mLに調製した。ここへトリノルマルオクチルアルミニウムのヘプタン溶液31mL(12.2mmol)を加え、イオン交換性層状珪酸塩粒子スラリーとした。
別のフラスコ(容積200mL)中で、(r)-シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-t-ブチルフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド287μmolとトルエン30mLを混合した溶液を調製した。当該混合溶液を前記イオン交換性層状珪酸塩粒子スラリーに添加し、40℃で60分間撹拌した。
上記反応後、ヘプタンを加え全量を300mLに調製し、当該スラリーを、充分に窒素置換を行った内容積1Lの撹拌式オートクレーブに移送した。
スラリーの温度を40℃とし、プロピレンを10g/時間の速度で2時間供給した。
プロピレンの供給を停止した後、圧力が0.025MPaGとなるまで反応を行った。
その後、残存モノマーをパージして予備重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。
回収した予備重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を抜き出した。トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液8.5mL(6mmol)を室温にて加えた。その後、予備重合触媒スラリーを減圧乾燥して、オレフィン重合用触媒を得た。
予備重合倍率(触媒収量÷(イオン交換性層状珪酸塩粒子+メタロセン錯体量)-1)は2.43g/g-触媒であった。
【0188】
[実施例b2:オレフィン重合用触媒の製造]
実施例a2で得たイオン交換性層状珪酸塩粒子を使用した以外は実施例b1と同様にオレフィン重合用触媒の製造を行った。
予備重合倍率は2.37g/g-触媒であった。
【0189】
[実施例b3:オレフィン重合用触媒の製造]
実施例a3で得たイオン交換性層状珪酸塩粒子を使用した以外は実施例b1と同様にオレフィン重合用触媒の製造を行った。
予備重合倍率は2.31g/g-触媒であった。
【0190】
[実施例b4:オレフィン重合用触媒の製造]
実施例a4で得たイオン交換性層状珪酸塩粒子を使用した以外は実施例b1と同様にオレフィン重合用触媒の製造を行った。
予備重合倍率は2.31g/g-触媒であった。
【0191】
[実施例b5:オレフィン重合用触媒の製造]
実施例a5で得たイオン交換性層状珪酸塩粒子を使用した以外は実施例b1と同様にオレフィン重合用触媒の製造を行った。
予備重合倍率は2.37g/g-触媒であった。
【0192】
[実施例b6:オレフィン重合用触媒の製造]
実施例a6で得たイオン交換性層状珪酸塩粒子を使用した以外は実施例b1と同様にオレフィン重合用触媒の製造を行った。
予備重合倍率は2.39g/g-触媒であった。
【0193】
[実施例b7:オレフィン重合用触媒の製造]
実施例a7で得たイオン交換性層状珪酸塩粒子を使用した以外は実施例b1と同様にオレフィン重合用触媒の製造を行った。
予備重合倍率は2.40g/g-触媒であった。
【0194】
[実施例b8:オレフィン重合用触媒の製造]
実施例a8で得たイオン交換性層状珪酸塩粒子を使用した以外は実施例b1と同様にオレフィン重合用触媒の製造を行った。
予備重合倍率は2.40g/g-触媒であった。
【0195】
[実施例b9:オレフィン重合用触媒の製造]
実施例a9で得たイオン交換性層状珪酸塩粒子を使用した以外は実施例b1と同様にオレフィン重合用触媒の製造を行った。
予備重合倍率は2.33g/g-触媒であった。
【0196】
[実施例b10:オレフィン重合用触媒の製造]
実施例a10で得たイオン交換性層状珪酸塩粒子を使用した以外は実施例b1と同様にオレフィン重合用触媒の製造を行った。
予備重合倍率は2.36g/g-触媒であった。
【0197】
[実施例b11:オレフィン重合用触媒の製造]
実施例a11で得たイオン交換性層状珪酸塩粒子を使用した以外は実施例b1と同様にオレフィン重合用触媒の製造を行った。
予備重合倍率は2.31g/g-触媒であった。
【0198】
[比較例b1:オレフィン重合用触媒の製造]
比較例b1で得たイオン交換性層状珪酸塩粒子を使用した以外は実施例b1と同様にオレフィン重合用触媒の製造を行った。
予備重合倍率は2.36g/g-触媒であった。
【0199】
[比較例b2:オレフィン重合用触媒の製造]
比較例b2で得たイオン交換性層状珪酸塩粒子を使用した以外は実施例b1と同様にオレフィン重合用触媒の製造を行った。ただし、プロピレン供給停止後の圧力低下速度が小さかったため、プロピレン供給停止後150分、圧力0.075MPaGで反応を停止した。
予備重合倍率は2.06g/g-触媒であった。
【0200】
[比較例b3:オレフィン重合用触媒の製造]
比較例b3で得たイオン交換性層状珪酸塩粒子を使用した以外は実施例b1と同様にオレフィン重合用触媒の製造を行った。
予備重合倍率は2.36g/g-触媒であった。
【0201】
[実施例P1:プロピレンホモ重合]
内容積3Lの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分置換した。その後、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液5.6mL(4.04mmol)を加えた。次に、水素352mL、液体プロピレン750mLを導入し、65℃に昇温した。
上記実施例b1で得られたオレフィン重合用触媒をヘプタンにスラリー化した。このスラリーを固体触媒として(イオン交換性層状珪酸塩粒子量とメタロセン錯体量の和)11.1mgを圧入し重合を開始した。
65℃で1時間重合した後、エタノール5mLを加え重合反応を停止させた。
残存したプロピレンをパージ後、ポリマーを回収し、90℃で1時間乾燥した。
結果を表3に示す。
【0202】
[実施例P2~P26:プロピレンホモ重合]
オレフィン重合用触媒の種類,触媒量および水素添加量を表3に記載の条件とした以外は、実施例P1と同様の方法で重合を行った。結果を表3に示す。
【0203】
[比較例P1~P9:プロピレンホモ重合]
オレフィン重合用触媒の種類,触媒量および水素添加量を表3に記載の条件とした以外は、実施例P1と同様の方法で重合を行った。結果を表3に示す。
【0204】
【表3】
【0205】
[実施例P27:1段目-プロピレンホモ重合、2段目-エチレン-プロピレン共重合の2段重合]
内容積3Lの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分置換した。その後、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液5.6mL(4.04mmol)を加えた。次に、水素528mL、液体プロピレン750mLを導入し、65℃に昇温した。
上記実施例b3で得られたオレフィン重合用触媒をヘプタンにスラリー化した。このスラリーを固体触媒として(イオン交換性層状珪酸塩粒子量とメタロセン錯体量の和)12.7mgを圧入し重合を開始した。
65℃で1時間重合した後、オートクレーブ内に残る未反応のプロピレンをパージした。ここへエチレンとプロピレンの混合ガスをオートクレーブ内のガス組成でモル比1:1になるように供給し、80℃、1.9MPaGで0.52時間重合した。エタノール5mLを圧入することで反応を停止し、残存モノマーをパージした。得られたポリマーを90℃で1時間乾燥した。結果を表4に示す。
【0206】
[実施例P28~P41:1段目-プロピレンホモ重合、2段目-エチレン-プロピレン共重合の2段重合]
オレフィン重合用触媒の種類、触媒量、水素添加量およびエチレンとプロピレンの共重合時間を表4に記載の条件とした以外は、実施例P27と同様の方法で重合を行った。結果を表4に示す。
【0207】
[比較例P10~P16:1段目-プロピレンホモ重合、2段目-エチレン-プロピレン共重合の2段重合]
オレフィン重合用触媒の種類、触媒量、水素添加量およびエチレンとプロピレンの共重合時間を表4に記載の条件とした以外は、実施例P27と同様の方法で重合を行った。結果を表4に示す。
【0208】
【表4】
【0209】
[実施例と比較例の対比]
図1は、実施例a1~a14および比較例a1~a6に記載のイオン交換性層状珪酸塩粒子について、全メソ孔容積に対する直径2nm~10nmの細孔容積の総和の割合を、BET比表面積m/gに対してプロットした図である。図1から、本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子は、比表面積を保ったまま、大きなメソ孔(10nmを超え、50nm以下)の割合を増加させることができ、従来なかったような細孔容積と比表面積の関係を実現できることが分かる。
図2は、実施例b1~b11および比較例b1~b3に記載のオレフィン重合用触媒によるプロピレン単独重合の結果について、重合活性を、得られた重合体のMFRに対してプロットした図である。図2から、本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子を用いた触媒は、MFR見合いで、比較例の触媒よりも高い触媒活性を示していることが分かる。
図3は、実施例b3、b4、b6~b8、b11及び比較例b1~b3に記載のオレフィン重合用触媒によるプロピレン-エチレンの2段重合の結果について、シートに含まれるフィッシュアイ数を、得られた重合体の分子量比(2段目の重合体の分子量を1段目の重合体の分子量で割った値)に対してプロットした図である。図3から、本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子を用いた触媒は、分子量比見合いで、比較例の触媒よりもフィッシュアイ数が減少することが分かる。
図4は、実施例a1、a13及び比較例a1、a3に記載のイオン交換性層状珪酸塩粒子の圧壊強度測定の結果をプロットした図である。表5にイオン交換性層状珪酸塩粒子の圧壊強度測定の結果を示す。図4から、本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子は、比較例のイオン交換性層状珪酸塩粒子よりも、同じ体積でも圧壊強度のばらつきが小さく、均一性が高い粒子集合体であることが分かる。
表6に、実施例a1、a13及び比較例a1、a3に記載のイオン交換性層状珪酸塩粒子の平均圧壊強度、S・V 1/m、1/mをそれぞれ示す。表6によれば、本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子は、1/mがいずれも0.000と小さい。これは粒子がより均一であることを示している。また、本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子は、圧壊強度のサイズ(粒子径)への依存性が小さい。これは触媒担体として安定した性質を示している。さらに、本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子は、幅広いサイズ(粒子径)で使用することが可能であることが示された。
【0210】
【表5】
【0211】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0212】
本発明によれば、触媒活性や、重合体の品質を向上する新規な細孔構造を有するイオン交換性層状珪酸塩粒子、及び当該イオン交換性層状珪酸塩粒子を含むオレフィン重合用触媒成分、オレフィン重合用触媒、オレフィン重合用触媒の製造方法、およびそれを用いたオレフィン重合体の製造方法を提供でき、産業上、利用可能性が高いものである。
図1
図2
図3
図4