(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051556
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】グラフェン系抗ウイルス性ポリマー
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20220324BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220324BHJP
C08K 3/015 20180101ALI20220324BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20220324BHJP
B60K 37/00 20060101ALI20220324BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220324BHJP
B29B 7/46 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/04
C08K3/015
B60R13/02 Z
B60K37/00 G
B32B27/18 F
B32B27/18 Z
B29B7/46
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152062
(22)【出願日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】63/080,417
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521082259
【氏名又は名称】シーピーケイ インテリオール プロダクツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ムラリ モハン レッディ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー ジェームス ファラー
【テーマコード(参考)】
3D023
3D344
4F100
4F201
4J002
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BB01
3D023BD27
3D023BE11
3D344AA08
3D344AC03
3D344AC04
4F100AA17A
4F100AA25A
4F100AD11A
4F100AK01A
4F100AK03A
4F100AK07A
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4F100AK45A
4F100AK51A
4F100AK74A
4F100AL09A
4F100AT00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100DE01A
4F100DJ01B
4F100GB08
4F100GB31
4F100GB41
4F100JB16A
4F100JC00A
4F201AB01
4F201AB16
4F201AC01
4F201AE10
4F201BA01
4F201BC01
4F201BC15
4F201BC37
4J002BD031
4J002BD041
4J002CK031
4J002CK041
4J002DA026
4J002DE097
4J002DE107
4J002FD186
4J002FD187
4J002GF00
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
4J002HA09
(57)【要約】
【課題】抗ウイルス性材料を提供すること。
【解決手段】抗ウイルス性材料は、高分子基質、および抗ウイルス性材料の総重量に対して約0.05重量%以上約10重量%以下の濃度で高分子基質内に分散されたグラフェン粒子を含む。抗ウイルス性材料は抗ウイルス活性を示す。抗ウイルス性材料の製造方法および抗ウイルス性材料の使用も提供する。
【選択図】
図42
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子基質、および、
抗ウイルス性材料の総重量に対して約0.05重量%以上約10重量%以下の濃度で前記高分子基質内に分散されたグラフェン粒子を含み、
抗ウイルス活性を示す、抗ウイルス性材料。
【請求項2】
前記グラフェン粒子が1以上10以下の層を有し、
各層が2次元格子に配置された炭素原子を含む、請求項1に記載の抗ウイルス性材料。
【請求項3】
前記グラフェン粒子が6以上10以下の層を有し、
各層が2次元格子に配置された炭素原子を含む、請求項1または2に記載の抗ウイルス性材料。
【請求項4】
約90重量%以上約99重量%以下の前記高分子基質、および、約0.05重量%以上約10重量%以下の前記グラフェン粒子を含み、
重量%は前記抗ウイルス性材料の総重量に基づく、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗ウイルス性材料。
【請求項5】
可塑性を有し、
前記高分子基質がポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性エラストマー(TPE)、またはそれらの組み合わせを含むポリマーを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗ウイルス性材料。
【請求項6】
前記TPEが、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、熱可塑性加硫物(TPV)、またはそれらの組み合わせを含む、請求項5に記載の抗ウイルス性材料。
【請求項7】
前記高分子基質を含む層と、発泡層とを含み、
前記高分子基質を含む層は前記発泡層上に配置されている、請求項5に記載の抗ウイルス性材料。
【請求項8】
剛性を有し、
前記高分子基質がポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネート(PC)、PC/ABS、PC/PP、熱可塑性エラストマー(TPE)、またはそれらの組み合わせを含むポリマーを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗ウイルス性材料。
【請求項9】
前記高分子基質に分散された金属酸化物粒子をさらに含み、
前記金属酸化物粒子は酸化第一銅(Cu2O)粒子または酸化亜鉛(ZnO)粒子のうち少なくとも一種を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の抗ウイルス性材料。
【請求項10】
約50重量%以上約98重量%以下の前記ポリマー、約0.05重量%以上約10重量%以下の前記グラフェン粒子、約0重量%以上約20重量%以下の前記Cu2O粒子、約0重量%以上約20重量%以下の前記ZnO粒子を含み、
ただし、前記Cu2O粒子または前記ZnO粒子のうち少なくとも一種が前記抗ウイルス性材料中に存在する、請求項9に記載の抗ウイルス性材料。
【請求項11】
約1時間以内で、約99%以上のウイルス性粒子を抗ウイルス性組成物と接触させて不活性化する、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗ウイルス性組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の抗ウイルス性材料を含む表面を有する、車両の内装パネル。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の抗ウイルス性材料を含む、自動車のクラスA内面。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載の抗ウイルス性材料を含む表面を有する、自動車のインストルメントパネル。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか1項に記載の抗ウイルス性材料を有する外面を含む、電子機器。
【請求項16】
請求項1~11のいずれか1項に記載の抗ウイルス性材料を含む表面を有する、調理台。
【請求項17】
抗ウイルス性材料を含む可塑性の外面と、
剛性の基質と、
前記可塑性の外面と前記剛性の基質との間に配置された圧縮可能な発泡体と、を含み、
前記抗ウイルス性材料は高分子基質、および、前記抗ウイルス性材料の総重量に対して約0.05重量%以上約10重量%以下の濃度で前記高分子基質内に分散されたグラフェン粒子を含み、
前記抗ウイルス性材料は抗ウイルス活性を示す、自動車の内装パネル。
【請求項18】
高分子基質、および抗ウイルス性材料の総重量に対して約0.05重量%以上約10重量%以下の濃度で前記高分子基質内に分散されたグラフェン粒子を含み、抗ウイルス活性を示す、抗ウイルス性材料を含む、車両のクラスA内面。
【請求項19】
抗ウイルス性材料を含む可塑性の外面と、
剛性の基質と、
前記可塑性の外面と前記剛性の基質との間に配置された圧縮可能な発泡体と、を含み、
前記抗ウイルス性材料は高分子基質、および、前記抗ウイルス性材料の総重量に対して約0.05重量%以上約10重量%以下の濃度で前記高分子基質内に分散されたグラフェン粒子を含み、
前記抗ウイルス性材料は抗菌活性を示す、自動車のインストルメントパネル。
【請求項20】
ポリマーを含むポリマー粒子と、グラフェン粒子および金属酸化物粒子とを混合させる工程であって、前記金属酸化物粒子は酸化銅(Cu2O)粒子、酸化亜鉛(ZnO)粒子、またはその組み合わせを含む、工程、および、
前記ポリマー粒子と前記グラフェン粒子とを溶融混練して押し出し、押出材料を形成させる工程、もしくは、
前記ポリマー粒子と前記グラフェン粒子とを乾式混合して粉末を形成させる工程、を含む、抗ウイルス性材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本開示は、高頻度接触表面(high touch surface)に好適な抗菌性粒子を含むポリマー材料に関する。
〔背景技術と要約〕
【0002】
本出願は一般に、抗菌性材料に関し、より詳細には、コロナウイルスを不活性化または破壊する抗ウイルス性材料に関する。
【0003】
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の流行により、公共スペースおよび他の共有スペースにおける衛生の管理および維持方法が変化した。コロナウイルス感染症2019(COVID-19)を引き起こすSARS-CoV-2および他の致命的な微生物は直接的なヒトとヒトとの接触によって、または車両内部等の汚染された表面との接触によってさえも、汚染された空中浮遊液滴の取り込みから伝播し得る。抗ウイルス性材料の使用は環境におけるウイルス粒子を不活性化させる効果的な方法であり、ウイルス伝播を防ぎ、感染リスクを低下させる。
【0004】
ポリマーは、多くの公共スペースおよび共有スペースの至るところに存在する材料である。ポリマーは、使い捨ての食卓用金物、車両、飛行機、巡航船、およびスタジアムにおいて多くの用途を有する。共有経済によって、異なる時間に同じ車両を使用する複数のユーザの増加をもたらしている。SARS-Covid-2と接触することで当該ウイルスは容易に伝播するため、レンタカーおよび他の共用車は当該ウイルスの影響を受ける。したがって、経時的に表面に存在するウイルスの量を有意に減少させることができる抗ウイルス性ポリマー材料が望まれている。
【0005】
本発明は、抗菌性材料を提供する。抗菌性材料は抗ウイルス活性を有し、高分子基質と、抗ウイルス性材料の総重量に対して約0.05重量%以上約10重量%以下の濃度で高分子基質中に分散されたグラフェン粒子とを含む。さらなる態様において、抗菌性材料は高分子基質中に分散された金属酸化物粒子を含み、金属酸化物粒子は酸化第一銅(Cu2O)粒子または酸化亜鉛(ZnO)粒子のうちの少なくとも1つを含む。別の態様において、抗ウイルス性材料は可撓性であり、高分子基質は可撓性および/または剛性ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性エラストマー(TPE)、またはそれらの組み合わせを含むポリマーを含み、TPEは熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、熱可塑性加硫物(TPV)、またはそれらの組み合わせを含む。さらに別の態様において、抗ウイルス性材料は剛性であり、高分子基質はポリプロピレン(PP)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネート(PC)、PC/ABS、PC/PP、熱可塑性エラストマー(TPE)、またはそれらの組み合わせを含むポリマーを含む。
【0006】
抗菌性材料は、Aピラー、Bピラー、Cピラー、インストルメントパネル、ステアリングホイールスキン、エアバッグカバー、ドアトリムパネル、センターコンソール、ニーボルスター、座席機構カバー、およびサンバイザーからなる群から選択される自動車の表面として有用である。抗菌性材料は、座席、ベンチ、エクササイズベンチ、自転車のハンドル、自動二輪車のハンドル、バイタルサインモニタ、病院機器、ドアハンドパネル、ドアフットパネル、ドアノブもしくはハンドル、ドア開放アクチュエータ、飛行機のキャビン壁、飛行機の収納ビン、飛行機の座席、飛行機のトレイテーブル、巡航船表面、調理台、フローリング、マット、電気装置、スキーリフト椅子もしくはレール、またはスポーツロッカー等の非自動車用途にも有用である。
【0007】
本発明の抗菌性材料は、従来の高分子材料よりも有利である。例えば、本発明の抗菌性材料は、従来のポリマー材料が使用される場所にはどこでも使用することができる可撓性または剛性を有する物品に鋳造または成形することができる。抗菌性材料は抗ウイルス活性を有するので、ヒト対象がしばしば触れる表面に特に有用である。したがって、抗菌性材料はコロナウイルスを含むウイルスを破壊し、一般的に遭遇するポリマー表面に接触したときのウイルス感染の危険性を減少させるのに有用である。
【0008】
〔図面〕
本明細書で説明する図面は選択された実施形態の例示のみを目的とし、可能な実施のすべてではなく、本開示の範囲を限定することを意図しない。
【0009】
図1は、本技術の様々な態様による、抗菌性表面を有する内装トリムパネルを示す斜視図である。
【0010】
図2は、内装トリムパネルを示す、
図1の線2-2に沿った断面図である。
【0011】
図3は、本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有する、Aピラー、ハンドル、およびドアスキンを示す斜視図である。
【0012】
図4は、Aピラーおよびハンドルを示す、
図3の線4-4に沿った断面図である。
【0013】
図5は、ドアスキンを示す、
図3の線5-5に沿った断面図である。
【0014】
図6は、本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有する椅子を示す斜視図である。
【0015】
図7は、椅子の背もたれ部分を示す、
図6の線7-7に沿った断面図である。
【0016】
図8は、椅子の着座面を示す、
図6の線8-8に沿った断面図である。
【0017】
図9は、本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有するエクササイズベンチを示す斜視図である。
【0018】
図10は、エクササイズベンチの外面を示す、
図9の線10-10に沿った断面図である。
【0019】
図11は、本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有する公共交通機関の座席を示す斜視図である。
【0020】
図12は、座席を示す、
図11の線12-12に沿った断面図である。
【0021】
図13は、本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有する自転車のハンドルを示す斜視図である。
【0022】
図14は、ハンドルを示す、
図13の線14-14に沿った断面図である。
【0023】
図15は、本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む露出部品を有するバイタルサインモニタを示す斜視図である。
【0024】
図16は、本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有するドアと、抗菌性材料を含むハンドルとを示す斜視図である。
【0025】
図17は、ドアのハンドプレートを示す、
図16の線17-17に沿った断面図である。
【0026】
図18は、本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有する飛行機のキャビンを示す斜視図である。
【0027】
図19は、飛行機のキャビン内に位置する座席の着座部を示す、
図18の線19-19に沿った断面図である。
【0028】
図20は、飛行機のキャビン内に位置する座席のアームレストを示す、
図18の線20-20に沿った断面図である。
【0029】
図21は、本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有する調理台を示す斜視図である。
【0030】
図22は、調理台を示す、
図21の線22-22に沿った断面図である。
【0031】
図23は、本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有するフローリングを示す斜視図である。
【0032】
図24は、調理台を示す、
図23の線24-24に沿った断面図である。
【0033】
図25は、本技術の様々な態様による、抗菌性材料から構成されるマットを示す斜視図である。
【0034】
図26は、マットを示す、
図25の線26-26に沿った断面図である。
【0035】
図27は、本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有するコンピュータを示す斜視図である。
【0036】
図28は、コンピュータのキーを示す、
図27の線28-28に沿った断面図である。
【0037】
図29は、本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有するクレジットカード装置を示す斜視図である。
【0038】
図30は、クレジットカード装置を示す、
図29の線30-30に沿った断面図である。
【0039】
図31は、本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有するスキーリフトを示す斜視図である。
【0040】
図32は、スキーリフトの座席面を示す、
図31の線32-32に沿った断面図である。
【0041】
図33は、本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有するスポーツロッカーを示す斜視図である。
【0042】
図34は、スポーツロッカーの壁を示す、
図33の線34-34に沿った断面図である。
【0043】
図35は、スポーツロッカーの引出しを示す、
図33の線35-35に沿った断面図である。
【0044】
図36は、本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有する剛性パイプを示す斜視図である。
【0045】
図37は、本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有する可撓性パイプを示す斜視図である。
【0046】
図38は、本技術の様々な態様による、第1の抗菌性材料を示す斜視図である。
【0047】
図39は、本技術の様々な態様による、第2の抗菌性材料を示す斜視図である。
【0048】
図40は、本技術の様々な態様による、第3の抗菌性材料を示す斜視図である。
【0049】
図41は、本技術の様々な態様による、少なくとも1つの層(sublayer)上に配置された抗菌性材料を示す斜視図である。
【0050】
図42は、本技術の様々な態様による、抗菌性材料を製造する方法を示す概略フローチャートである。
【0051】
対応する参照番号は、図面のいくつかの図を通して対応する部分を示す。
【0052】
〔詳細な説明〕
以下、添付の図面を参照して、例示的な実施形態をより詳細に説明する。
【0053】
本技術は、自動車の内装製品、合成皮革、ジム機器、フローリング、財布、医療機器または医療用プラスチック、電子機器(例えば、ハウジング、キーボード、ラップトップ等)、公共輸送機関の表面(例えば、自動車の内面、待機ベンチ、手すり等)、巡航船の内面、スポーツ機器、およびプラスチックドアハンドル/パッドを製造するために使用される抗菌性ポリマーを提供する。自動車の内装製品には、ソフトスキン、シート材、マップポケット、Aピラー、Bピラー、Cピラー、コンソール、ドア、インストルメントパネル等のクラスAハードトリム部品が含まれる。本技術はヒト対象が触れるように構成されたすべてのプラスチック表面に適用可能であることが理解されるので、上記の用途のすべては、例示的であり、非限定的である。
【0054】
また、本技術は、自動車および飛行機の内装部品ならびに他の高頻度接触表面にグラフェン系抗ウイルス性ポリマーを提供する。非限定的な実施例として、内装部品は、内装トリムパネル、自動車のインストルメントパネル、エアバッグカバー、ドアトリムパネル、センターコンソール、ニーボルスター、座席機構カバー、サンバイザー、ピラーカバー等であり得る。他の高頻度接触表面としては、合成皮革、フローリング、ジム機器、財布、医療機器または医療用プラスチック、病院、電子機器(例えば、キーボード、ラップトップクレジットカード装置等)、公共輸送機関の車両内部および地下鉄もしくは電車の駅のベンチ、手すり等を含む公共輸送機関での用途、巡航船の内部、スポーツ機器、ガスポンプ(ハウジング、キーパッド、およびポンプハンドルを含む)、ならびに高分子ドアハンドルおよびパッドが挙げられる。
【0055】
特定の態様において、本技術は、グラフェンまたはグラフェン-金属酸化物複合体が注入された、剛性および/または可撓性であるPVC、TPU、TPO、ならびに射出グレードであるPP、TPE、TPO、ABS、PC/ABS、およびPC/PVCを提供する。同様のポリマー、例えばPE、ナイロン等も考えられる。本明細書で使用するとき、「剛性」という用語は、「剛性」材料が実質的に非可撓性であることを意味する。換言すれば、剛性材料はわずかに曲がることができてもよいが、自動車の内装パネルによって示され得るように、曲げ限界に達した後に亀裂または破断の危険性がある。一方、「可撓性」材料は合成皮革によって示され得るように、亀裂または破断することなく、大きく曲がるまたは折り畳むことができる。
【0056】
〔抗菌性表面を有する物品〕
車輪付き自動車である陸上車両用の内装トリムパネルを
図1および
図2に示す。内装トリムパネルは好ましくはインストルメントパネル10であるが、センターコンソール12、セパレートエアバッグカバー、ドアトリムパネル、センターコンソール、ニーボルスター、座席機構カバー、サンバイザー、ピラーカバー等をかわるがわる含んでもよい。インストルメントパネル10は、アウタースキン14と、柔軟な中間発泡層16と、内側の剛性基材18とを含む。また、ステアリングホイール29がインストルメントパネル10から延びている。
【0057】
スキン14の部分は、シュート24を含むエアバッグアセンブリ22である一体型エアバッグドア20として後方に作用する。エアバッグドア20はヒンジで固定され、膨張したエアバッグがスキン14内の引裂き継ぎ目(tear seam)28を破裂させると、ほぼ水平方向に長く伸びた基材エッジ26に隣接する上下の曲げラインを中心にエアバッグドア20は回転する。「継ぎ目のない(シームレス)」または非表示型(hidden style)のスキン14が好ましく、それによって、引裂き継ぎ目28はその裏面上にあり、車両の乗員または使用者には見えない。引裂き継ぎ目28は好ましくはH字形を有するが、U字形およびX字形等の他の構成を採用し得る。インストルメントパネル10の上記構成要素のそれぞれは、本技術の抗菌性材料を含み得る。例えば、インストルメントパネル10、センターコンソール12、エアバッグカバー、ドアトリムパネル、センターコンソール、ニーボルスター、座席機構カバー、ピラーカバー、ステアリングホイール、およびエアバッグドア20の各々は、本技術の可撓性の抗菌性材料を含むか、または本技術の剛性の抗菌性材料から構成され得るアウタースキンを含み得る。
【0058】
ハンドル32および内装ドアトリムパネル34を含むAピラートリムパネル30を
図3~4に示す。Aピラートリムパネル30およびハンドル32は、本技術の抗菌性材料を含む外面を含む。最後に、Aピラートリムパネル30の裏側に1つの可撓性留め具が設けられ、Aピラートリムパネル30を下にある板金Aピラー構造に取り外し可能に保持する。
図3~
図4には示していないが、BピラートリムパネルおよびCピラートリムパネルはAピラートリムパネル30と同じ構成を有し得ることが理解される。
【0059】
ドアトリムパネル34は、可撓性であるアウタースキン36と、圧縮性である中間発泡層38と、内側の剛性基材40とを含む。内側の剛性基材40は、留め具によって座席の金属製ドア構造パネル42に取り外し可能に固定される。さらに、可撓性であるアウタースキン36は本技術の抗菌性材料を含み、内側の剛性基材40は、ポリマーまたはファイバー系複合材料から成形される。
【0060】
図6~8で観察することができるように、椅子50は、本技術の抗菌性材料を含む表面を有する。椅子50は、着座面52と背もたれ54とを含む。着座面52は、本技術の抗菌性材料を含む外側の抗菌性表面56を含む。外側の抗菌性表面56は圧縮性発泡層58上に配置され、圧縮性発泡層58は内側の剛性基材60上に配置される。背もたれ54は抗菌性材料のみを含んでもよいが、代わりに、着座面52と同じ成分を含み得る。
【0061】
図9~
図10を参照すると、エクササイズまたはトレーニングベンチ70は、座るか、または横たわるように構成された表面72を含む。表面72は、本技術の抗菌性材料を含む外側の抗菌性表面74を含む。外側の抗菌性表面74は、内側の剛性基材78上に配置された圧縮性発泡層76上に配置されている。
【0062】
図11~12は、第1の露出面82と、第1の露出面82上に配置された第2の露出面84とを有する公共輸送機関の座席80を示す。第1の露出面82は剛性であるが、第2の露出面は剛性もしくは軟質および可撓性であり得る。露出面82、84の少なくとも一方は、本技術の抗菌性材料を含む。
図11は、座席80に隣接して位置する手すり86も示す。手すり86の外面も、本技術の抗菌性材料を含み得る。
【0063】
図13~14を参照すると、自転車のハンドル90は、本技術の抗菌性材料を含む外面92を有する。外面92は、剛性のポリマー、金属、もしくは鋼の基材94の上およびその周りに配置される。自動二輪車のハンドルは、同一または実質的に類似の構成を有し得る。
【0064】
外側、保護ハウジング、内側の電気回路、電源、ならびに、ボタン、ノブ、およびディスプレイスクリーン等のヒトが接触可能な表面を含む電子装置は、その外面に本技術の抗菌性材料を採用する。そのような電子装置の一例は
図15に示されるバイタルサインモニタ100である。バイタルサインモニタ100は、ハウジング102、ボタン104、ノブ106、およびスクリーン108を含む。ハウジング102、ボタン104、ノブ106、またはスクリーン108の少なくとも1つは、本技術の抗菌性材料を含む。
【0065】
図16~
図17を参照すると、ドア110は、ハンドル112、ハンドプレート114、およびキックプレート116を含む。ドア110は、定置式のドアジャムに連結された、住宅用、商業用、オフィス用、または製造工場用のドアである。ドア110をハンドル112とともに示しているが、ハンドル112は代替的にノブであり得る。ハンドル112、ハンドプレート114、およびキックプレート116のうちの少なくとも1つは、本技術の抗菌性材料を含む。ドアの隣りには、ドア110を開放するためのボタン120がある。ボタンは、電気スイッチおよび回路を内部に含む電子装置の一部である。ボタン120の外面は抗菌性材料を含む。
【0066】
図18~
図20は、飛行機のキャビン130の態様を示す。飛行機のキャビンは、荷物棚(storage bin)132と、壁134と、座席136とを含む。貯蔵ビン132および壁134は、本技術の抗菌性材料を含む。座席136は、着座部138と、背もたれ140と、アームレスト142とを含む。着座部138は、圧縮性発泡体基材146上に配置された、本技術の抗菌性材料を含むアウタースキン144を含む。背もたれ140は、同一または実質的に類似の構成を有し得る。アームレスト142は、剛性の金属もしくは鋼の基材150上に配置された第2のアウタースキン148を含む。図示しないが、飛行機のトレイテーブルも本技術の抗菌性材料を含む表面を有し得る。
【0067】
図21~22に示すように、調理台160は、本技術の抗菌性材料を含む外面162を有する。外面162は、剛性ポリマー、金属、鋼、もしくは木材を含む剛性基材164上に配置される。棚、引出し等は、調理台160の剛性基材164を支持するカウンター内に任意に配置されてもよい。
【0068】
図23~24は、本技術の抗菌性材料を含む外側の摩耗層172を有するフローリング170を示す。様々な設計(アーキテクチャー)が可能であるが、フローリング170において、摩耗層が紙もしくは印刷層174の上に配置され、この層は、発泡下層等の第2の下層178上に配置された高密度ファイバーボード等の第1の剛性下層176上に配置される。
【0069】
図25~
図26はマット180を示す。マット180は例えば、可撓性で(ユーザが手で持ち運ぶための)持ち運び可能なエクササイズマットまたはヨガマットであり得る。マット180は、本技術の抗菌性材料を含む。
【0070】
図27~28には、ノートブックまたはラップトップ等のコンピュータ190として、別の例示的な電気装置を示す。コンピュータ190は、本技術の抗菌性材料を含むハウジング192を含む。コンピュータ190はまた、複数のキー194を含み、複数の各キー194は、本技術の抗菌性材料を含む外面層196を含む。外面層196は、剛性基材198上に配置される。
【0071】
図29~
図30には、クレジットカードリーダであってもよいクレジットカード装置200として、さらなる例示的な電気装置を示す。クレジットカード装置200は、ハウジング202と、複数のボタン204とを含む。ハウジングおよびボタン204は、本技術の抗菌性材料を含む。
【0072】
図31~32は、手すり212を含むスキーリフト210を示す。手すりは、剛性の金属もしくは鋼の基材216の上およびその周りに配置された外面層214を含む。外面層214は、本技術の抗菌性材料を含む。スキーリフト210はまた、着座部220と背もたれ222とを含む座席218を含む。着座部220および背もたれは、本技術の抗菌性材料を含む。
【0073】
図33~
図35から分かるように、スポーツロッカー230は、壁232と、引出し234と、棚236とを含む。壁232は、剛性基材240上に配置された、本技術の抗菌性材料を含む外層238を有する。棚236はまた、本技術の抗菌性材料を含む外面を有する。引出し234は本技術の抗菌性材料を含む外側の引出し層242を有し、外側引出し層242は剛性引出し基材244上に配置される。
【0074】
図36は本技術の抗菌性材料を含む剛体もしくは外面252を含む剛性パイプ250を示す。剛体もしくは外面252は、中空内部コア254を画定する。非限定的な例として、剛体もしくは外面252は剛性PVCを含み得る。
図37は本技術の抗菌性材料を含む可撓体もしくは外面262を含む可撓性パイプ260を示す。可撓体もしくは外面262は、中空内部コア264を画定する。非限定的な例として、可撓体もしくは外面262は、可撓性PVCを含み得る。パイプ250、260は抗ウイルス活性を含む抗菌活性を示し、淡水パイプおよび下水パイプとしての配管用途に少なくとも有用である。例えば、剛体もしくは外面252である。配管250、260を製造するための基礎として役立つ例示的な材料および方法は米国特許第8,178,640号に見出すことができ、その全体が参考文献により本明細書に組み込まれる。例えば、米国特許第8,178,640号のPVC材料は抗菌活性を示すために、本技術に従って改変し得る。
【0075】
〔抗菌性材料〕
図38を参照すると、本技術は、抗菌性材料300を提供する。本明細書で使用するとき、用語「抗菌性(antimicrobial)」は抗菌性材料300が抗ウイルス性を有すること、すなわち、抗菌性材料300が抗ウイルス性材料であることを提供する。いくつかの態様では、用語「抗菌性」は、抗細菌性(antibacterial)も有すること、すなわち、抗菌性材料300が抗ウイルス性ならびに抗細菌性および/または抗真菌性(antifungal)であり得ること、すなわち、抗菌性材料300が抗ウイルス性材料ならびに抗細菌性材料および/または抗真菌性材料であり得ることを提供する。ウイルスがそのような抗菌性材料300に接触すると、ウイルスはもはや対象に感染する能力がなくなるように、無能になる、不活性化される、破壊される、または「殺滅される」。同様に、抗菌性材料が抗細菌性を有するとき、細菌が抗菌性材料300に接触すると、細菌は殺滅される。用語「抗ウイルス性」は、抗ウイルス性材料が少なくともSARS-CoV-2を無能にする、破壊する、または「殺滅する」ことを提供する。いくつかの態様では、用語「抗ウイルス性」は、他のコロナウイルスを含む他のウイルスをも殺滅することを提供する。抗菌性材料300は例えば、ウイルス表面のタンパク質構造を変性させることによりウイルス宿主細胞認識を妨害するという能力によって抗ウイルス活性を有し、ウイルスのエンベロープの存在にかかわらず、ウイルスの不活性化をもたらす。抗菌性材料300は、約90%以上、約95%以上、約98%以上、約99%以上、例えば、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約99.9%のSARS-CoV-2ウイルス粒子またはプラーク形成単位(PFU)を、約4時間以下、約3時間以下、約2時間以下、約2時間以下、約1時間以下、約45分以下、約30分以下または約15分以下において、無能にする、不活性化する、破壊する、または、「殺滅する」。
【0076】
抗菌性材料300は、高分子基質312と、露出面315を含む、高分子基質312内に配置および/または埋め込まれたグラフェン粒子314とを含む。本明細書で使用するとき、「高分子基質」は、バルクポリマー系組成物または物質である。したがって、高分子基質312は、グラフェン粒子314等の抗菌性粒子を埋め込む少なくとも1つの凝固ポリマーもしくは硬化ポリマーを含む。所定の適用に応じて、抗菌性材料300は、可撓性かつ軟質であってもよく、または比較的剛性であってもよい。抗菌性材料300の硬さ、剛性、および可撓性は、ポリマーを含む高分子基質312によって提供される。例えば、非限定的な例として、合成皮革またはスキン等の、軟質である可撓性材料を必要とする用途では、高分子基質312のポリマーはポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性エラストマー(TPE)、またはそれらの組合せを含む。TPEは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、熱可塑性加硫物(TPV)、またはそれらの組み合わせを含む。TPUの非限定的な例には、芳香族もしくは脂肪族のイソシアネートと、ポリエーテルポリオールもしくはポリエステルポリオールとの反応生成物、例えば、TEXIN(登録商標)3042 TPU(Covestro)等が含まれる。TPOの非限定的な例としては、オレフィンブロック共重合体(OBC)、INFUSE(商標)オレフィンブロック共重合体樹脂(Dow)、ENGAGE(商標)ポリオレフィンエラストマー樹脂(Dow)、KRATON(商標)SEBSポリマー(Kraton)等のスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ポリマー、等が挙げられる。例えば、柱およびパネル等の剛性材料を必要とする用途の場合、非限定的な例として、高分子基質312のポリマーは、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネート(PC)、PC/ABS、PC/PP、TPE、またはそれらの組み合わせを含む。TPUの非限定的な例には、TEXIN(登録商標)TPU(Covestro)等の脂肪族および芳香族TPUが含まれる。硬質TPEの非限定的な例としては、OBC、INFUSE(商標)オレフィンブロック共重合体樹脂(Dow)、ENGAGE(商標)ポリオレフィンエラストマー樹脂(Dow)、KRATON(商標)SEBSポリマー(Kraton)等のスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ポリマー等が挙げられる。軟質抗菌性材料および硬質抗菌性材料のさらなる用途を以下に提供する。
【0077】
非限定的な例として、ポリマーにはポリ塩化ビニル(PVC)、スチレンアクリロニトリル(SAN)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ABS、スチレン-マレイン酸無水物(SMA)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリカーボネート(PC)、ポリフタレートカーボネート(PPC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリレート(PAR)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリアミドイミド(PAI)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド-4,6(PA-4,6)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(OCP)、ポリビニルジエンフルオリド(PVDF)、フルオロポリマー(FP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0078】
自動車の内装用ソフトスキンは、従来、コンソール、アームレスト、ドアアッパー、およびインストルメントパネルの用途に使用されている。自動車のソフトスキンは、可撓性PVC、TPU、TPO、およびTPEを含む様々なポリマー材料から作製される。これらのスキンは、スラッシュ回転成形、射出成形、熱成形等の方法によって、ならびに切断および縫製の適用から製造し得る。したがって、高分子基質312のポリマーはPVC、TPU、TPO、およびTPEを含み得る。そして、これらのポリマーは高分子基質312のポリマーとして使用し得る。
【0079】
自動車の内装のクラスAハードトリム材料は、従来、PP、TPO、TPE、およびガラス/タルク/鉱物充填PP/TPO/TPEを含む様々なポリマー材料から作製され、高分子基質312のポリマーを含み得る。これらのクラスAハードトリム材料は高分子基質312として、PP、TPO、TPE、およびガラス/タルク/鉱物充填PP/TPO/TPEを含むポリマーを使用して、射出成形および圧縮成形等の方法によって作製し得る。
【0080】
合成皮革は、可撓性PVC、TPU、TPV、およびTPOから構成され、溶融押出によるカレンダー加工プロセスにおいて従来製造され、自動車の内装および家具の装飾/A表面材料のための動物皮革の代替物として使用される。したがって、可撓性PVC、TPU、TPV、およびTPOを、高分子基質312のポリマーとして使用し得る。
【0081】
自動車内装用ポリマー、部品、パネル、トリム、およびスキンは、米国特許第10,358,159号、米国特許第10,328,881号、米国特許第10,232,755号、米国特許第10,093,268号、米国特許第9,713,972号、米国特許第9,539,745号、米国特許第9,440,385号、米国特許第5,824,738号、米国特許公開第2020/0139814号、米国特許公開第2019/0344689号、米国特許公開第2018/0044536号、米国特許公開第2017/0100992号、および米国特許公開第2015/0360597号に記載されている。これらすべては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0082】
本技術から利益を得ることができる他の高頻度接触表面には、合成皮革、ジム機器、フローリング、財布、医療機器または医療用プラスチック、電子機器(例えば、ハウジング、キーボード、ラップトップ、クレジットカード装置、等)、公共輸送機関の表面(例えば、自動車の内面、待機ベンチ、手すり、等)、巡航船の内面、スポーツ機器、およびプラスチックドアハンドル/パッドが含まれる。これらの高頻度接触表面の高分子基質312は、非限定的な例として、PP、TPE、TPO、TPV、ABS、PC/ABS、PC/PVC、およびそれらの組み合わせを含み得る。これらの製品は、回転成形、射出成形、カレンダー加工、押出成形、熱成形、切断および縫製の適用、ならびにこれらの組み合わせを用いて製造される。
【0083】
グラフェン粒子314は、少なくとも抗ウイルス活性を提供する、非限定的な例として酸化グラフェン等の、グラフェンまたはグラフェン誘導体を含む抗菌性粒子またはフレークである。グラフェン粒子314は、2次元ハニカム状の格子に配置された炭素原子を含む、1層以上10層以下、または6層以上10層以下の層を有する。様々な態様において、グラフェン粒子314は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10の層を有する。グラフェン粒子314は、約750nm以上約250μm以下、約1μm以上約100μm以下、または約1μm以上約50μm以下の直径を有する。
【0084】
理論に束縛されるものではないが、グラフェンおよびグラフェン誘導体(例えば、酸化グラフェン)の抗菌性は、微生物へのそれらの電子移動に起因する。この移動は細胞質排出を引き起こし、代謝を低下させ、脂質膜に影響を与え、酸化ストレスを誘導し、活性酸素種(ROS)を産生し、グルタチオンを消失させ、最後に菌の死を引き起こす。非限定的な例として、グラフェンを使用して、SARS-CoV株を含む様々なコロナウイルスを殺滅させることができる。
【0085】
いくつかの態様において、抗菌性材料300が抗菌剤をさらに含む。
図39および40は、高分子基質312およびグラフェン粒子314を含む抗菌性材料300a、300bを示す。しかしながら、抗菌剤300a、300bは金属酸化物粒子316をさらに含む。この金属酸化物粒子316はまた、グラフェン粒子314に関して上記で定義されるような抗ウイルス活性を少なくとも提供する。金属酸化物粒子316は、酸化第一銅(Cu
2O)粒子、酸化亜鉛(ZnO)粒子、酸化銀(Ag
2O)、またはそれらの組み合わせを含む。これらの金属酸化物粒子はCu
1+、Ag
1+および/またはZn
2+等の抗菌性イオンを放出し、抗菌性表面を調製するために使用される。グラフェンおよび/または酸化グラフェンはこれらのイオンの抗菌活性をさらに促進し、有効性を改善することができる。金属酸化物粒子は、約100nm以上約100μm以下、約200nm以上約10μm以下、約250nm以上約5μm以下、または約250nm以上約1.8μm以下の直径を有する。
【0086】
図39に示されるように、抗菌剤300a内の高分子基質312全体を通して、グラフェン金属酸化物粒子316が個別に均一に分散されている。「個別に均一に分散される」とは、グラフェン粒子314および金属酸化物粒子316が互いに関係なく高分子基質312内で混合されることを意味する。いくつかのグラフェン粒子314および金属酸化物粒子316が互いに接触していてもよいことを考慮すると、接触はランダムであり、抗菌性材料300aの製造方法の混合工程の人工産物については後述する。したがって、グラフェン粒子314の一部と金属酸化物粒子316の一部との間の接触は意図されておらず、存在してもよい。
【0087】
図40に示すように、グラフェン粒子314および金属酸化物粒子316は、抗菌性材料10b中の高分子基質312全体に均一に分散されたグラフェン-金属酸化物粒子複合体314、316として存在する。したがって、グラフェン粒子314は、グラフェン-金属酸化物粒子複合体314、316中に金属酸化物粒子316を担持する。それにもかかわらず、グラフェン-金属酸化物粒子複合体314、316中ではなく、高分子基質312中に個々に存在する、いくつかの(すなわち、少数部分)のグラフェン粒子314および/または金属酸化物粒子316が存在してもよいことが理解される。以下で論じるように、グラフェン-金属酸化物粒子複合体314、316は、製造プロセス中に高分子基質312を画定するポリマーと混合する前に形成される。
【0088】
本明細書で提供する本技術の記載のすべてにおいて、抗ウイルス性材料300は代替的に、特に明記しない限り、
図39の抗ウイルス性材料300aまたは
図40の抗ウイルス性材料300bのいずれかであり得る。さらに、抗菌性材料300はまた、可塑剤、相溶化剤、衝撃改良剤(impact modifier)、光およびUV安定剤、熱安定剤、着色顔料、充填剤(例えば、グラスファイバー)、タルク、鉱物、ガラス、物理的または化学的発泡剤、およびそれらの組み合わせ等の補助剤を含み得る。
【0089】
図38の抗菌性材料300は、約50重量%以上約99重量%以下の濃度で高分子基質312、すなわちポリマーを含む。グラフェン粒子314は、約0.05重量%以上約10重量%以下、約0.1重量%以上約5重量%以下、もしくは、約0.25重量%以上約1重量%以下の濃度で、または、約0.05重量%、約0.1重量%、約0.15重量%、約0.2重量%、約0.25重量%、約0.3重量%、約0.35重量%、約0.4重量%、約0.45重量%、約0.5重量%、約0.55重量%、約0.6重量%、約0.65重量%、約0.7重量%、約0.75重量%、約0.8重量%、約0.85重量%、約0.9重量%、約0.95重量%、約1重量%、約1.5重量%、約2重量%、約2.5重量%、約3重量%、約3.5重量%、約4重量%、約4.5重量%、約5重量%、約5.5重量%、約6重量%、約6.5重量%、約7重量%、約7.5重量%、約8重量%、約8.5重量%、約9重量%、約9.5重量%、もしくは約10重量%の濃度で抗菌性材料300を有する。補助剤(または複数の補助剤)は約0重量%以上約50重量%以下の濃度で抗菌性材料300中に存在する。例えば、約0重量%以上約20重量%以下のタルク、約0重量%以上約20重量%以下のグラスファイバー、約0重量%以上約5重量%以下の相溶化剤、および約0重量%以上約5重量%以下の衝撃改良剤が抗菌性材料に存在する。重量%は抗菌性材料300の総重量に基づく。
【0090】
図39および40の抗菌性材料300a、300bは抗菌性材料300と同じ組成を有するが、Cu
2O粒子またはZnO粒子の少なくとも1つが抗ウイルス性材料300a、300b中に存在するという条件で、抗菌性材料それぞれは、0重量%以上約20重量%以下の金属酸化物粒子316をさらに含む。したがって、抗ウイルス性材料300a、300bは、Cu
2O粒子またはZnO粒子の少なくとも1つを0重量%超約20重量%以下含む。重量%は、抗ウイルス性材料300a、300bの総重量に基づく。
【0091】
図41を参照すると、いくつかの態様において、抗菌性材料300が第1の層もしくは基材318の上、周囲、および直接上に配置される。特に抗菌性材料300が軟質かつ可撓性であるときは、第1の層もしくは基材318は圧縮性発泡体であり得る。また、特に抗菌性材料300が剛性であるときは、第1の層もしくは基材318は剛性基材であり得る。さらに、第1の層もしくは基材18は、第2の層もしくは基材320の上に配置し得る。例えば、様々な態様において、抗ウイルス性材料300は、それ自体が剛性である第2の層もしくは基材320の上に配置される、圧縮性発泡体である第1の層もしくは基材318の上に配置される、合成皮革等の軟質である可撓性材料である。
【0092】
本明細書で説明する抗菌性材料300、300a、300bは、本明細書で説明する成分を少なくとも含んでいてもよい。しかしながら、抗菌性材料300、300a、300bは代替的に、本明細書に記載された成分に限定されていてもよく、また、本明細書に記載された成分の一部に限定されていてもよいことが理解される。例えば、抗菌性材料300は、グラフェンを含む、本質的にグラフェンからなる、またはグラフェンからなる抗菌剤を含み得る。「本質的に~からなる」とは抗菌性材料300が抗菌剤としてグラフェンのみを意図的に含み、他の抗菌剤を実質的に含まないことを意味する。「実質的に含まない」とはさらなる抗菌剤が不純物として微量、すなわち約5重量%以下、または約1重量%以下で含まれていてもよく、微量の他の抗菌剤はグラフェンによって提供される抗菌活性に影響を及ぼさないことを意味する。同様に、抗菌性材料300a、300bは、グラフェンおよびCu2O、ZnO、またはAgOのうちの少なくとも1つを含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる抗菌剤を含み得る。
【0093】
〔抗菌性材料および物品の製造方法〕
図42を参照すると、本技術はまた、抗菌性材料の製造方法350を提供し、抗菌性材料は、
図38~41を参照して上述した抗菌性材料300、300a、300bである。ブロック352において、方法350は、ポリマーを含むポリマー粒子と抗菌性粒子とを組み合わせることを含む。
図38の抗菌性組成物30を製造するとき、抗菌性粒子はグラフェン粒子を含む。
図39の抗菌性組成物300aを製造するとき、本方法350はポリマー粒子にグラフェン粒子および金属酸化物を別々に加えることを含む。
図40の組成物300bを製造するとき、方法350はグラフェン粒子と金属酸化物粒子とを混合すること、およびグラフェン粒子-金属粒子複合体を形成させることを含む。グラフェン粒子は、金属酸化物粒子を共有結合的または非共有結合的に担持する。次いで、グラフェン粒子-金属粒子複合体を、混合の間にポリマー粒子に添加する。
【0094】
ブロック354において、方法350は、抗菌性粒子を乾式混合して、抗菌性粉末または樹脂を形成させることを含む。乾式混合は、ポリマー、添加剤、および抗菌性粒子を高速において機械的に混合することによって行われる。高速混合は、温度を上昇させ、吸収を促進する高剪断環境を作り出す。ブロック356から分かるように、方法350は次に、スラッシュ成形によって抗菌性粉末から成形品を作成することを含み得る。
【0095】
ブロック358において、方法350は、ポリマー粒子とグラフェン粒子とを溶融混練して溶融物を形成し、溶融物を押し出して、ポリマー中に分散されたグラフェン粒子(および、任意に金属酸化物粒子)を含む押出材料を形成させることを含む。溶融混練および押し出しは例えば、二軸押出機を用いて行われる。押出材料は中実の単一の糸であり得、円筒またはパイプなどの中空の内部を有し得る。
【0096】
ブロック360において、方法350は、カレンダー加工または鋳造加工によって押出材料を加工して、抗菌性材料として圧延品またはキャストフィルムを形成させることを含む。ブロック362において、本方法は切断および縫製によって抗菌性材料から成形品を作成すること、および熱成形することを含む。熱成形は、真空成形、加圧成形、またはツインシート成形であり得る。
【0097】
ブロック364において、方法350は押出材料をペレット化して、高分子ペレット中に分散されるグラフェン粒子(任意に金属酸化物粒子)を含む抗菌性ペレットを形成させることを含む。ペレット化は、押出材料を切断または粉砕して抗菌性ペレットにすることによって行われる。次いで、抗菌性ペレットは、様々な加工方法に供することができる。例えば、第1の加工方法はブロック366において始まり、抗菌性ペレットを用いて射出成形することによって成形品を作成することを含む。射出成形方法は、当技術分野で知られている。第2の加工方法はブロック368において始まり、抗菌性ペレットを粉砕してスラッシュ粉末を形成することを含む。次に、ブロック370において、方法350は、スラッシュ粉末をスラッシュ成形することによって成形品を作成することを含む。第3の加工方法はブロック372において始まり、押し出し、カレンダー加工、または鋳造加工によって抗菌性ペレットを加工して、抗菌性材料として圧延品またはキャストフィルムを作成することを含む。圧延品またはキャストフィルムは上述のように、切断および縫製、および/または熱成形によって加工し得る。
【0098】
非限定的な例として、抗菌性材料が合成皮革である場合等、抗菌性材料が可撓性かつ軟質であるとき、本方法はまた、圧縮可能な発泡体基材の周りに抗菌性フィルムを配置することを含んでいてもよい。
【0099】
成形品の作成方法は、ポリマーの種類および意図される用途に依存する。スラッシュ成形は所望の粒径を必要とするが、射出成形は所望のメルトフロー(メルトフローインデックス(MFI)によって決定される)を必要とする。本技術の抗菌性を有する可塑化PVCは、乾式混合/合金化技術を使用して調製する一方、TPU/TPO抗菌性ソフトスキン材料は所望の粒径および嵩密度を達成するために、規定されたスクリュープロフィールを有する二軸スクリュー押出成形、続いてハイドログラインディング(hydrogrinding)を使用して調製する。これらの材料(例えば、PVC、TPU、およびTPO)からの最終生成物は、スラッシュ成形または熱成形技術を使用して作製し得る。
【0100】
カレンダー加工および/またはキャストフィルム加工は圧延品/キャストフィルム/カレンダーロールを製造するために使用され、これらの製品は自動車および飛行機の内装、家具、電子ハウジング、オフィス家具等におけるラップアップ用途に使用される。カレンダー加工品を製造する方法は押出混合の主要なプロセスからペレットを得ることから始まる。すなわち、可塑化PVC、TPU、TPO、PE、PP(または他のポリマー)を、二軸押出で抗菌性添加剤(例えば、グラフェン、グラフェン誘導体、金属酸化物)と混合して、ペレットを得るか、または直接カレンダー加工して圧延フィルム/キャストフィルムを形成させる。ペレットが押出工程で得られる場合、ペレットはカレンダー加工/キャストフィルム押出機に供給されて、圧延品を得る。カレンダー加工された物品/シートは例えば、熱成形または真空成形(真空による熱成形)において使用されて、所望の形状および用途を生成する。
【0101】
Cu2OはCu1+イオンの供給源であり、ZnOはZn2+の供給源であり、AgOはAg1+の供給源である。これらは、H1N1、ヒトコロナウイルス(SARS-CoV-1およびSARS-CoV-2を含む)、並びにさまざまな種類の細菌および真菌に対して、抗菌剤として機能する。Cu2Oに関しては、銅は完全には酸化されず、活性を存続し、非常に不安定である。この不安定性は銅が引き続き高い反応性のままでいることを可能にし、これは、ウイルスエンベロープの有無にかかわらず、ウイルス内のRNAおよび/またはDNA細胞を変性させ得る遊離基の形成をもたらし得る。不活性化方法は、本技術の抗菌性材料の表面上の銅の直接接触によって媒介される。グラフェンは、抗菌剤として、および、金属酸化物に由来する抗菌性イオンを固定化するために使用され、標的ウイルスに対する抗菌性材料の有効性を増大させる。グラフェンは6~10の層を有し得る。これらの層は分散混合および分配混合を改善するために特別に設計されたスクリューを用いた二重押出中に、単一層、二重層、および/または三重層に剥離される。
【0102】
一例において、抗菌性材料は、80~95重量%のTPU樹脂と、0.05~10重量%のグラフェンに固定化された1~20重量%のCu2Oとを有するTPUスキン材料である。TPUスキン材料を製造するために使用される原料グラフェン粉末は、最大10層を有し得る。別の例において、乾式混合した抗菌性PVCは、80~95重量%の可塑化PVC樹脂と、0.05~10重量%のグラフェンに固定化された1~20重量%のCu2Oとを含む。乾式混合した抗菌性PVCを製造するために使用される原料グラフェン粉末は、最大10層を有し得る。さらに別の例において、抗菌性TPOスキン材料は、80~95重量%のTPO樹脂と、0.05~10重量%のグラフェンに固定化された1~20重量%のCu2Oとを有する。例示的な抗菌性クラスA材料(例えば、PP、TPO、および/またはTPEを含む)は、70~95重量%のTPO樹脂、5~20重量%のタルク、および0.05~10重量%のグラフェンに固定化された1~10重量%のCu2Oを含む。
【0103】
上述のように、ZnOも抗菌活性を有する。Znがウイルス複製サイクルを妨害する多くのメカニズムがある。これらのメカニズムには、遊離ウイルス不活性化、ウイルス脱殻の阻害、ウイルスゲノム転写、およびウイルスタンパク質の翻訳とポリタンパク質のプロセシングが含まれる。
【0104】
抗ウイルス性クラスA材料(例えば、PP、TPO、および/またはTPEを含む)の例には、70~95重量%のTPO樹脂、5~20重量%のタルク、および1~10重量%のZnOが含まれる。別の例において、抗菌性TPUスキン材料が80~95重量%のTPU樹脂と、0.05~10重量%のグラフェンに固定化された1~20重量%の酸化亜鉛とを有する。抗菌性TPUスキン材料を製造するために使用される原料グラフェン粉末は、最大10層を有し得る。さらに別の例において、乾式混合した抗菌性PVCが80~95重量%の可塑化PVC樹脂と、0.05~10重量%のグラフェンに固定化された1~20重量%のZnOとを含む。乾式混合した抗菌性PVCを製造するために使用される原料グラフェン粉末は、最大10層を有し得る。例示的な抗菌性TPOスキン材料は、80~95重量%のTPO樹脂と、0.05~10重量%のグラフェンに固定化された1~20重量%のZnOとを有する。
【0105】
抗菌性材料の抗ウイルス活性はISO 21702によって提供されるものと同様に、SARS-Covid-2に、例えば、約15分間、約30分間、約45分間、約1時間、約6時間、約12時間、および約24時間暴露することによって決定することができる。
【0106】
本技術の実施形態は、以下の非限定的な例によってさらに例示される。
【0107】
〔実施例〕
本技術の様々な態様による典型的な抗菌性ソフトスキン材料を表1に示す。抗菌性ソフトスキン材料を、予熱のためにヘンシェルミキサーにすべての固体成分を投入して低速で3分間混合することによって調製する。3分後、70%のポリオールエステル可塑剤をミキサーに加え低速で撹拌する。ミキサーの速度を上げ、温度が約190°Fになるまで材料を混合する。190°Fにおいて、残り30%のポリオールエステル可塑剤を熱安定剤および光安定剤とともに加え低速で混合する。このとき、第2のエステル可塑剤も加えることができる。次に、ミキサーの速度を高速に変え、最低温度が235°Fになるまで混合する。その後材料を120°Fまで冷却し、乾燥剤を加え、さらに約105°Fまで冷却する期間に充填剤を添加することができる。
【0108】
【0109】
本技術の様々な態様による典型的な抗菌性ソフトスキン材料を表2に示す。グラフェン、TPUもしくはTPO、および/または金属酸化物を、二軸押出機へ投入し、溶融混練後粉砕することによってスラッシュグレード(slush grade)の粉末を得ることによって抗菌性ソフトスキン材料を調製する。光およびUV安定剤、相溶化剤、着色顔料等の任意の添加剤も加えてもよい。この配合物によって抗ウイルス性を有する高性能のTPUまたはTPOが作製される。
【0110】
【0111】
本技術の様々な態様による典型的な抗菌性硬質材料を表3に示す。グラフェン、TPU、および/または金属酸化物を、二軸押出機へ投入し、溶融混練後粉砕することによってスラッシュグレード(slush grade)の粉末を得ることによって抗菌性硬質材料を調製する。光およびUV安定剤、相溶化剤、着色顔料等の任意の添加剤も加えてもよい。この配合物によって抗ウイルス性を有する高性能のPP、TPO、ABS、PC、およびPVCが作製される。
【0112】
【0113】
グラフェン-金属酸化物複合体の生産方法について以下に示す。グラフェン-金属酸化物複合体は機械的な混合方法を用いて調製した。Cu2OおよびZnOのそれぞれ粒子径が約100μmおよび約50μmである。グラフェンブラックをアルコール中で約1:10の重量比でCu2OおよびZnOとそれぞれ別々に、均一に混合した。6時間の撹拌および60℃未満のオーブンでの3時間の乾燥によって、グラフェン/Cu2O複合体およびグラフェン/ZnO複合体が得られた。
【0114】
実験材料の調製について以下に示す。CpKの抗ウイルス性材料は2つのタイプの材料が提供された。タイプ1は柔軟性を有する軟質プラスチック材料であり、タイプ2は硬質プラスチックディスクであった。実験準備にあたり、滅菌バイオセーフティキャビネット(BSC)内のCpK抗ウイルス性材料の上部および下部を70%エタノールに5分間接触させることで消毒した。滅菌後、材料を100mmの滅菌ポリスチレン皿に保存した。すべての材料を一辺0.5cm以下の正方形にカットし、1.5mlの滅菌チューブへ移した。
【0115】
SARS-CoV-2の調製およびCpK処置について以下に示す。105.8感染単位(IU)/mlの力価のSARS-CoV-2ウイルスストックを、102.9(IU)/mlに希釈した。容量850μlの希釈ウイルスストックを、正方形のCpKの抗ウイルス性材料を含む1.5mlチューブに添加した。ウイルスおよびCpKの抗ウイルス性材料を含むチューブを、220℃において24時間チューブ回転装置上に置き、100μlのサンプルを1時間、3時間、6時間、12時間、および24時間で回収した。これらの時点からのウイルス上清を、通常のTCID50試験において培養し、ウイルス力価の減少を測定した。陽性対照として、ウイルスを同じ濃度で1.5mlチューブに1~24時間添加した。陰性対照として、および材料毒性を決定するために、ウイルスを含まない培地を、1~24時間各材料に添加した。回収した上清を100倍に希釈して、インキュベーション中にCpKの抗ウイルス性材料から放出されたかもしれない任意の化学物質/物質を希釈した。回収した上清をさらに、1:100~1:100000で連続的に100倍希釈し、次いで96ウェル平底プレート中に20,000個のVeroE6細胞を添加した。20,000細胞に感染するウイルスストックの1:100希釈液は、0.5のMOIを表す。VeroE6細胞の感染をウイルス細胞毒性によりモニターした。ウイルスの非存在下での上清由来物質の細胞毒性(1:100に希釈)を視覚的に測定した。結果を表4に示す。
【0116】
【0117】
【0118】
実施形態の前述の説明は、例示および説明の目的で提供されている。これは、網羅的であることも、本開示を限定することも意図していない。特定の実施形態の個々の要素または特徴は一般に、その特定の実施形態に限定されないが、適用可能な場合、交換可能であり、たとえ具体的に図示または説明されていなくても、選択された実施形態において使用し得る。同じことは、多くの方法で変形してもよい。そのような変形は本開示からの逸脱と見なされるべきではなく、そのようなすべての改変は本開示の範囲内に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【
図1】本技術の様々な態様による、抗菌性表面を有する内装トリムパネルを示す斜視図である。
【
図2】内装トリムパネルを示す、
図1の線2-2に沿った断面図である。
【
図3】本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有する、Aピラー、ハンドル、およびドアスキンを示す斜視図である。
【
図4】Aピラーおよびハンドルを示す、
図3の線4-4に沿った断面図である。
【
図5】ドアスキンを示す、
図3の線5-5に沿った断面図である。
【
図6】本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有する椅子を示す斜視図である。
【
図7】椅子の背もたれ部分を示す、
図6の線7-7に沿った断面図である。
【
図8】椅子の着座面を示す、
図6の線8-8に沿った断面図である。
【
図9】本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有するエクササイズベンチを示す斜視図である。
【
図10】エクササイズベンチの外面を示す、
図9の線10-10に沿った断面図である。
【
図11】本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有する公共交通機関の座席を示す斜視図である。
【
図12】座席を示す、
図11の線12-12に沿った断面図である。
【
図13】本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有する自転車のハンドルを示す斜視図である。
【
図14】ハンドルを示す、
図13の線14-14に沿った断面図である。
【
図15】本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む露出部品を有するバイタルサインモニタを示す斜視図である。
【
図16】本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有するドアと、抗菌性材料を含むハンドルとを示す斜視図である。
【
図17】ドアのハンドプレートを示す、
図16の線17-17に沿った断面図である。
【
図18】本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有する飛行機のキャビンを示す斜視図である。
【
図19】飛行機のキャビン内に位置する座席の着座部を示す、
図18の線19-19に沿った断面図である。
【
図20】飛行機のキャビン内に位置する座席のアームレストを示す、
図18の線20-20に沿った断面図である。
【
図21】本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有する調理台を示す斜視図である。
【
図22】調理台を示す、
図21の線22-22に沿った断面図である。
【
図23】本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有するフローリングを示す斜視図である。
【
図24】調理台を示す、
図23の線24-24に沿った断面図である。
【
図25】本技術の様々な態様による、抗菌性材料から構成されるマットを示す斜視図である。
【
図26】マットを示す、
図25の線26-26に沿った断面図である。
【
図27】本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有するコンピュータを示す斜視図である。
【
図28】コンピュータのキーボードのキーを示す、
図27の線28-28に沿った断面図である。
【
図29】本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有するクレジットカード装置を示す斜視図である。
【
図30】本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有するクレジットカード装置を示す斜視図である。
【
図31】本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有するスキーリフトを示す斜視図である。
【
図32】スキーリフトの座席面を示す、
図31の線32~32に沿った断面図である。
【
図33-1】本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有するスポーツロッカーを示す斜視図である。
【
図33-2】本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有するスポーツロッカーを示す斜視図である。
【
図34】スポーツロッカーの壁を示す、
図33の線34-34に沿った断面図である。
【
図35】スポーツロッカーの引出しを示す、
図33の線35-35に沿った断面図である。
【
図36】本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有する剛性パイプを示す斜視図である。
【
図37】本技術の様々な態様による、抗菌性材料を含む表面を有する可撓性パイプを示す斜視図である。
【
図38】本技術の様々な態様による、第1の抗菌性材料を示す斜視図である。
【
図39】本技術の様々な態様による、第2の抗菌性材料を示す斜視図である。
【
図40】本技術の様々な態様による、第3の抗菌性材料を示す斜視図である。
【
図41】本技術の様々な態様による、少なくとも1つの層上に配置された抗菌性材料を示す斜視図である。
【
図42】本技術の様々な態様による、抗菌性材料を製造する方法を示す概略フローチャートである。