(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051562
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】耐振動性動作モードを有する超音波流量計
(51)【国際特許分類】
G01F 1/66 20220101AFI20220324BHJP
【FI】
G01F1/66 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152765
(22)【出願日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】17/025,877
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】チェン・ロンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】サイ・ビン
(72)【発明者】
【氏名】チェン・メイファ
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035DA09
2F035DA13
2F035DA14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐振性を持つ超音波流量計とその方法
【解決手段】超音波流量計は、第1及び第2の超音波トランスデューサと、超音波トランスデューサに結合されたコントローラと、パイプセクションの振動を感知するための及びコントローラに結合された出力信号を提供するための加速度計及び/又は音響センサ等の電子部品を含む。電子部品は、メータ本体に通信可能に結合され、ハウジングは、メータ本体に機械的に結合されている。コントローラは、出力信号を分析して1つ以上の振動周波数を識別し、振動周波数とUSMの所定の高感度周波数範囲とを比較する。振動周波数が所定の周波数範囲内にあると判定された場合に、流体の流れを測定するときの測定時間を増加させることによって、及び/又は追加的なデータ処理タスクを加えることによって、コントローラが、耐振動動作モードを実施する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
少なくとも第1及び第2の超音波トランスデューサ(T1、T2)を含む、流体を流すように構成されたパイプセクションを備えているメータ本体(220)と、ハウジング(218)、並びに送信機(311)及び受信機(312)のうちの少なくとも1つを通して前記超音波トランスデューサに結合された関連するメモリ(324)を有するコントローラ(330)を含む電子部品を備えているプリント回路基板(PCB)(340)を含む、トップワーク(210’)と、前記コントローラの入力に結合された、前記パイプセクション上の振動を検知するための、出力信号を提供するための、加速度計(310)及び音響センサ(320)のうちの少なくとも1つと、を含む、超音波流量計(USM)(300)を提供することであって、前記電子部品が、前記メータ本体に通信可能に結合され、前記ハウジングが、機械継手によって前記メータ本体に機械的に結合される、提供すること、を含み、
前記コントローラが、
前記出力信号を分析して、少なくとも1つの振動周波数を識別することと、
前記振動周波数と前記USMの所定の高感度周波数範囲とを比較することと、
前記振動周波数が前記所定の高感度周波数範囲内にあると判定された場合に、前記流体の流れを測定するときの測定時間を増加させること、及び追加的なデータ処理タスクを加えること、のうちの少なくとも1つを含む、耐振動動作モードを実施することと、を含む、方法。
【請求項2】
超音波流量計(USM)(300)であって、
少なくとも第1及び第2の超音波トランスデューサ(T1、T2)を含む、流体を流すためのパイプセクションを備えているメータ本体(220)と、
ハウジング(218)、並びに送信機(311)及び受信機(312)のうちの少なくとも1つを通して前記超音波トランスデューサに結合された関連するメモリ(324)を有するコントローラ(330)を含む電子部品を備えているプリント回路基板(PCB)(340)を含む、トップワーク(210’)と、前記パイプセクション上の振動を検知するための、及び前記コントローラの入力に結合された出力信号を提供するための、加速度計(310)及び音響センサ(320)のうちの少なくとも1つと、を備え、前記電子部品が、前記メータ本体に通信可能に結合されており、前記ハウジングが、機械継手によって前記メータ本体に機械的に結合されており、
前記コントローラが、
前記出力信号を分析して、少なくとも1つの振動周波数を識別することと、
前記振動周波数と前記USMの所定の高感度周波数範囲とを比較することと、
前記振動周波数が前記所定の周波数範囲内にあると判定された場合に、前記流体の前記流れを測定するときの測定時間を増加させること、及び/又は追加的なデータ処理タスクを加えること、のうちの少なくとも1つを含む、耐振動動作モードを実施することと、を行うように構成されている、USM(300)。
【請求項3】
前記USMが、加速度計(310)と、音響センサ(320)と、を含む、請求項2に記載のUSM(300)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示される態様は、超音波流量計(ultrasonic flow meter、USM)に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の流れが関係する様々な産業では、任意の所与の時点で流れている製品の量を正確に測定することを可能にすることが必要である。いくつかの異なる種類の既知の流量計が存在している。そのような既知の流量計としては、機械式流量計(例えば、ピストンメータ、Woltmannメータ、又はジェットメータ、これらはすべていくつかの機械的手段を通して流体の流れを測定する)、渦流量計(流体経路の一部を遮断することによって渦が生成され、電圧パルスを生成し、その周波数を測定することができ、したがって、流れを決定することができる)、磁気流量計(印加された磁場の結果として、導電性流体の電位差を測定し、流れを決定することができる)、タービン並びに回転式流量計が挙げられる。また、USMを含む静的(いかなる可動部品も有しないことを意味する)流量計も存在する。
【0003】
USMは、それらの広範囲にわたる異なる流量を測定する能力、最小限の圧力降下だけしか生じさせない能力のため、流体の流れに関して普及しつつあり、また、それらは、いかなる可動部品も有さず、したがって、大部分の種類の従来の流量計と比較して、より少ない機械的保守、かつより良好な信頼性を提供する。USM内の主要なハードウェア構成要素は、超音波センサとしても知られている超音波トランスデューサであり、これは、少なくとも圧電結晶又は圧電セラミックを含み、典型的にチタン酸ジルコン酸鉛(Lead Zirconate Titanate、PZT)を含む。物理学において知られているように、圧電効果は、特定の材料が、印加された機械的応力に応じて電荷を生成する、並びに逆のプロセスを行う能力である。USMは、単一の超音波トランスデューサを含むことができるが、USMは、概して、少なくとも1対の超音波トランスデューサを含み、これは、測定されている流体において送信及び方向付けられる超音波信号に受信される電気エネルギーを変換する超音波トランスデューサに送達されるパルス状電気駆動信号の形態で供給される電気エネルギーを変換することによって動作し、また、超音波受信機として使用される場合は、逆も可能である。
【0004】
そのようなUSMは、外側ハウジングを含み得、ハウジング内には、マイクロコントローラユニット(microcontroller unit、MCU)又はデジタル信号プロセッサなどのコントローラ、及び概して他の電子部品を含む、プリント回路基板(printed circuit board、PCB)が存在し得る。USMは、概して、電池式及び/又は線路給電のいずれかであり、また、送信機及び受信機を含む無線周波数(radio frequency、RF)ユニットと、無線通信のためのアンテナと、を含むことができる。超音波トランスデューサ対は、第1及び第2の超音波トランスデューサを含む。1つの従来の超音波トランスデューサ配設では、第1及び第2のトランスデューサは、測定される流体を通過した後にパイプラインから離れる単一の反射を使用するV字形状の超音波信号経路を生成するために、パイプラインの同じ側に構成されている。別の既知の超音波トランスデューサ配設は、いかなる信号反射も含まない、直接トランジットパス型である。複数の他の既知のトランスデューサ配設が存在しており、トランスデューサの数は、パイプ直径及びコスト制約に依存して、合計で最大約16個、更にはそれ以上になり得る。
【0005】
1つの既知のUSM配設は、説明的に概してトップワークと称されるものを備え、これは、ハウジングと、MCUなどのプロセッサを含む電子部品を有するPCBと、電池パックと、ディスプレイと、を含み、第1及び少なくとも第2の超音波トランスデューサを有するパイプの一部を備えるメータ本体に機械的及び電気的に結合されている。トップワークのハウジングとメータ本体との間の接続は、通信のためのワイヤ、及び物理的接続のための金属継手を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本概要は、提示される図面を含む以下の「発明を実施するための形態」で更に詳述される、簡潔に選定された開示の概念を単純な形態で紹介するために提供される。本概要は、特許請求される主題の範囲を限定することを意図するものではない。
【0007】
開示される態様は、USMが外部からの機械的振動又は超音波トランスデューサの動作周波数範囲内の周波数のノイズによって生じる干渉の影響を受けやすいという、USMに関する問題を認識している。この干渉の影響は、USMの流量測定精度を低下させ得る。本技術分野におけるUSMの適用では、しばしば、USMに近接して設置されたガス調節器及び/又はボール弁、グローブ弁、バタフライ弁、又はポペット弁などの弁が存在する。ガス調節器は、典型的に数百キロヘルツ(kHz)未満の周波数で振動を生じさせる場合があり、USMに近接して位置した場合、典型的に80kHz~300kHzで作動するUSMのトランスデューサによって拾われる場合がある。本明細書では、そのような振動が超音波検知信号にノイズを加える場合があり、USMの測定精度の低下をもたらし、更には、USMが極めて不正確な測定ガス容積を提供するようになることによって金融処理に影響を及ぼすことを含む、問題を生じさせる場合もあることを認識している。
【0008】
1つの開示される態様は、第1及び第2の超音波トランスデューサを含む、そこを通して流体を流すように構成されたパイプセクションを含むメータ本体と、ハウジング、並びに送信機及び/又は受信機を通して超音波トランスデューサに結合されたコントローラを含む電子部品を備えているPCBを含むトップワークと、を含む、USMを備える。PCBはまた、コントローラに結合された、パイプセクションの振動を検知するための、及び出力信号を提供するための加速度計及び/又は音響センサも含む。電子部品は、メータ本体に、及び機械継手によってメータ本体に機械的に結合されたハウジングに、通信可能に結合されている。コントローラは、加速度計及び/又は音響センサからの信号を分析して、少なくとも1つの振動周波数を識別し、振動周波数とUSMの所定の高感度周波数範囲とを比較する。振動周波数が所定の周波数範囲内にあると判定された場合に、コントローラは、流体の流れを測定するときの測定及び処理時間を増加させることによって、及び/又は追加的なデータ処理タスクを加えることによって、耐振動動作モードを実施して、振動に対処する。
【0009】
加速度計は、概して、そのPCBへの装着を容易にするために複数のリード又はリード端子を有する、微小電気機械システム(micro-electromechanical system、MEMS)パッケージの形態であり、音響センサは、概して、同様に概してPCBに装着するように構成されたパッケージ内に構成されている高周波マイクロフォンなどの、高周波音響センサである。加速度計及び音響センサは、どちらも提供された場合に、振動源がUSMに近接して位置付けられたときに存在し得る周波数の範囲にわたる、振動源からの外部の振動を検知することができる。コントローラは、概して、ファームウェアの形態のアルゴリズムを実行し、該アルゴリズムは、必要なときに、耐振動動作モードに自動的に切り替えて、そうでない場合にはUSMの精度及び再現性能に影響を及ぼす周波数範囲内の振動の存在にもかかわらず、大きな影響を受けないUSMの測定精度をレンダリングすることによって、振動ノイズの影響を監視及び抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、USMの所定の高感度周波数範囲内の振動を検知することに応答する耐振動動作モードを実施するUSMを動作させる例示的な方法のためのステップを示すフローチャートである。
【0011】
【
図2AB】
図2Aは、
図2Bに示すUSMに近接したときに、USMのメータ本体に固定された超音波トランスデューサ(T
1及びT
2)によって検知される信号に影響を及ぼす結果となる、ガス調節器を一例として示す、振動源を表す。
【
図2C】
図2Cは、有用な(検知)信号を、更には
図2Aに示すガス調節器又は弁などの外部の振動源によって生じる有用な信号に重なっている外部の振動源からの振動を示す、(任意の単位(arbitrary unit、au)での)振幅対時間の例示的なプロットである。
【
図2D】
図2Dは、外部の振動源によって生じた振動が除去された後の、又は開示される耐振動動作モードによって大幅に抑制された後の、
図2Cに示す有用な信号だけを示す、振幅対時間の例示的なプロットを示す。
【0012】
【
図3A】
図3Aは、例示的な態様による、メータ本体の上部のPCB、並びに開示される加速度計及び開示される音響センサを含むPCB上のいくつかの例示的な構成要素を備えている例示的なUSMを示す。
【0013】
【
図3B】
図3Bは、トップワークのPCBの例示的な構成要素を示す、メータ本体にトップワークを伴う例示的なUSMである。
【0014】
【
図4】
図4は、例示的な態様による、例示的な振動ノイズ除去システムのための検知ハードウェアモジュールの概略図を表す。
【0015】
【
図5】
図5は、例示的な態様による、USMのためのノイズ検出及び除去の例示的な方法の例示的な信号処理フローチャートを表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付の図面を参照して、開示される態様を説明するが、類似又は同等の要素を示すために、図面全体にわたって同じ参照番号を使用する。図面は、縮尺どおりに描かれておらず、それらは、特定の開示される態様を単に例証するために提供される。いくつかの開示される態様は、例証のための例示的な用途に言及しながら以下に記載される。開示される態様の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細、関係、及び方法が記載されることを理解するべきである。
【0017】
図1は、USMの所定の高感度周波数範囲内の振動を検知することに応答する耐振動(又は振動抵抗)動作モードを実施するようにUSMを動作させる例示的な方法100のためのステップを示すフローチャートである。所定の高感度周波数範囲は、超音波トランスデューサの共振周波数から決定することができる。例えば、超音波トランスデューサの共振周波数は、音波トランスデューサの最大位相及び/又は最小インピーダンスのうちの少なくとも1つを使用して決定することができる。一実施例では、所定の高感度周波数範囲は、80kHz~300kHzである。
【0018】
ステップ101は、少なくとも第1及び第2の超音波トランスデューサを含む、流体を流すように構成されたパイプセクションを備えているメータ本体と、送信機及び受信機のうちの少なくとも1つを通して超音波トランスデューサに結合された関連するメモリを有するコントローラ(例えば、MCU)を含む電子部品を備えているPCBを含むトップワークと、を含む、USMを提供することを含む。コントローラの入力に結合された、パイプセクション上の振動を検知するための、及び振動を表す出力信号を提供するための、加速度計及び音響センサのうちの少なくとも1つが存在する。PCBはまた、リチウムイオン電池パックなどの概して電池パックを備えている、電池も含み得る。パイプ内の流体は、天然ガス又はプロパンなどの炭化水素ガスを含むことができ、又は水素を含むこともできる。
【0019】
開示される方法の利点は、入口パイプ(例えば、通常はUSMの前に、かつ調節器の後に設置されたスプール)の長さが、ガス調節器などの外部の振動源からUSMを分離するために通常必要である最小長さに限定されないことである。入口パイプが長くなるほど、分離が大きくなるほど、USMの振動源によるノイズの影響が小さくなるが、必要とされる空間がより大きくなり、これは、実際の設備において一般的に利用可能でない。大部分のUSM設備では、振動源は、一般的に、USMに対して近接して位置する。
【0020】
加速度計に関して、振動構造物に装着された場合、加速度計は、機械的エネルギーを電気エネルギーに比例的に変換する。加速度計は、概して、10mV/g又は100mV/gのいずれかを生成する2つのカテゴリのうちの1つに分類され、ここで、gは、重力定数であり、1g=9.81m/s2である。加速度計によって提供される出力電圧の周波数は、振動の周波数に一致する。加速度計からの信号の出力レベルは、振動の振幅と比例する。
【0021】
音波センサは、高周波マイクロフォン又は超音波センサを備えることができる。音波センサは、音量レベルを測定することができる電子デバイスであることが知られている。トップワークは、ディスプレイも含み得る。トップワークのPCB上の電子部品は、有線接続によって、又は無線接続によってメータ本体に通信可能に結合される。トップワークのハウジングは、概して金属継手である機械継手によって、メータ本体に機械的に結合される。コントローラは、下で説明するステップ102~ステップ104を実施するためのものである。
【0022】
ステップ102は、出力信号を分析して、少なくとも1つの振動周波数を識別することを含む。ステップ103は、振動周波数とUSMの所定の高感度周波数範囲とを比較することを含む。ステップ104は、振動周波数が所定の高感度周波数範囲内にあると判定された場合に、流体の流れを測定するときの測定時間を増加させること、及び追加的なデータ処理タスクを加えること、のうちの少なくとも1つを含む、耐振動動作モードを実施することを含む。
【0023】
図2Aは、
図2Bに示すUSM200に近接し得るガス調節器207として示す振動源を表し、
図2Cは、有用な(検知)信号、更には外部の振動源として機能するガス調節器207によって生じる振動を示す、振幅対時間のプロットを示す。USM200は、トランスデューサT
1及びT
2を含むメータ本体220と、メータ本体220の上部にハウジング218を含むトップワーク210と、を備える。ガス調節器207によって生成された振動を
図2Cに示すが、振動は、有用な信号の周波数範囲内にあることによって、USMのメータ本体に固定された超音波トランスデューサによって検知される信号に影響を及ぼす。
図2C及び
図2Dに示す時系列信号は、高速フーリエ変換(FFT)を使用して周波数ドメインに変換して、信号スペクトルを取得することができる。
【0024】
本明細書で使用するとき、「近接する」という用語は、USMが設置されるパイプセクションの内径(D)の3倍以下の距離を意味する。例えば、D=2インチである場合、近接は、USMまで6インチの入口距離に対応する。ガス調節器又は弁などの振動源に対するUSMの分離距離が長くなるほど、振動の影響が小さくなることに留意されたい。
図2Dは、外部の振動源によって生じた振動が除去された後の、又は開示される耐振動動作モードによって大幅に抑制された後の、
図2Cに示す有用な信号だけを示す、振幅対時間の例示的なプロットを示す。一例として、有用な信号は、200kHzの中心周波数で動作する超音波トランスデューサの圧電素子の場合、180kHz~220kHzの周波数範囲内とすることができる。
【0025】
したがって、開示されるUSMは、トップワークのPCB上に加速度計及び高周波(high-frequency、HF)マイクロフォンなどの音響センサを含むことができ、PCBは、USMに近接した外部の振動源によって生じる振動を受容するために、メータ本体と密に物理的に接触している。USMが同じパイプ上のガス調節器などの振動源に近接して設置された場合、
図2Cに示す振動源によって生じた振動が、有用な信号の超音波スペクトル内にノイズ様の信号を作成し、信号は、パイプに沿ってUSMのメータ本体まで、したがって、トップワークまで進行し、加速度計及び/又は音響センサを含むPCBは、ハウジングに一体化された金属固定具を介して、概して強固に固定されている。
【0026】
超音波トランスデューサ、並びに加速度計は、相互集積回路(Inter-Integrated Circuit、I2C)、シリアル周辺機器インターフェース(serial peripheral interface、SPI)、又は汎用非同期レシーバ/トランスミッタ(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter、UART)を使用して、コントローラと通信することができる。MCUなどを備えるコントローラは、検知データを分析し、振動周波数スペクトルを検出し、USMを耐振動モードに切り替えるべきであるかどうかを判定するように構成されている。開示される耐振動モードは、概して、下で更に詳細に説明する、より長い測定時間及び/又は追加のデータ処理タスクを使用することによってノイズの影響を低減させるように構成されたプログラムコードを含む、ファームウェア(firmware、FW)ベースのアルゴリズムによって実施される。
【0027】
図3Aは、
図2に示す例示的なUSM200を示し、ハウジング218を開くことによってハウジング218のPCB340の例示的な構成要素を示す。示す構成要素は、高周波マイクロフォンセンサを備えることができる3D加速度計と、音響センサ320を備えることができる加速度計310と、を含む。加速度計310及び音響センサ320はどちらも、PCB340に装着されて示されている。
【0028】
図3Bは、ハウジング218を備えているトップワーク210’を有する例示的なUSM300を示し、トップワーク210’がメータ本体220上にあり、これは、示すように、トランスデューサT
1及びT
2を含み、これらは、前部カバーの背面にあり得るので外部から視認不可能であり、
図3Aに示すトップワークのPCB340の例示的な構成要素を示す。ここでも、加速度計310及び音響センサ320が示されているが、コントローラ330に結合されて示されておらず、どちらも両方コントローラ330に通信可能に結合されている。
図3Bに示す電池309は、随意にPCB340に装着される。
【0029】
USM300などの開示されるUSMは、概して、低電力、低コスト、かつ高性能なUSMを備えている。上述のように、コントローラ330は、MCUを備えることができ、メモリ324は、フラッシュメモリを備えることができ、高周波(RF)通信ユニットは、ハウジング218の外側に示されているアンテナ376に結合された送信機(Tx)311及び受信機(Rx)312を含んで示されている。ハウジング218は、概して、金属又は金属合金で構成されている。
【0030】
メータ本体220と関連付けられたT1及びT2として示す超音波トランスデューサは、圧電結晶又は圧電セラミックを含み、これらは、パルス状電圧信号(Tx311から受信)がそれらの圧電素子に印加されたときに振動し始め、それによって、超音波を生成する。動作中に、超音波パルスは、代替的に、超音波トランスデューサ対の圧電素子の一方によって、コントローラ330によって制御されるデジタル制御マルチプレクサ(MUX)315によって有効にされて送信され、ガスの流れを測定するために必要とされる超音波トランスデューサ対の他方の圧電素子によって受信される。
【0031】
コントローラ330と関連付けられたメモリは、流量測定を実施するための、及び開示される耐振動モード動作を実施するためのコードを記憶することができる、「MEM」324として示されている。しかしながら、当技術分野で知られているように、コントローラ330によって実行されるアルゴリズムは、ハードウェアによって実施され得、及び/又はソフトウェアによって実施され得る。ハードウェアベースの実装に関して、アルゴリズム方程式をVHDL(Hardware Description Language、ハードウェア記述言語)などを使用してデジタルの論理ゲートパターンに変換することができ、この実装は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field-programmable gate array、FPGA)若しくは複合プログラマブル論理回路(complex programmable logic device、CPLD)、又は専用の特定用途向け集積回路(application-specific integrated circuit、ASIC)などのプログラマブル素子を使用して実現され、論理ゲートパターンを実装することができる。ソフトウェアに基づく実装形態に関して、アルゴリズムのコードは、概して、コントローラ330によって実装することができるメモリ324などのメモリに記憶されている。
【0032】
メータ本体220は、流体を受容するための入口221と、流量測定の後に流体を放出するための出口222と、を含む。上述のように、T1及びT2は、直線状の対面トランスデューサ配設であるように示されているが、超音波トランスデューサは、反射ベースのV字配設などの他の配設で構成することができる。更に、上述のように、2つを超える超音波トランスデューサを存在させることができる。
【0033】
図4は、例示的な態様による、例示的なノイズ除去システムのための検知ハードウェアモジュールの概略
図400を表す。加速度計310によって検知されている20kHz以下のノイズ周波数、及び同じく超音波センサであり得るマイクロフォン320’として示す音響センサによって検知されている20kHz以上のノイズ周波数を示す。上で説明したように、このノイズは、USMに近接して位置付けられたガス調節器又は弁に由来し得る。加速度計310及びマイクロフォン320’からの出力は、315’で示す2対1のデジタル制御マルチプレクサに結合されて示しており、これは、概して帯域通過フィルタリング及び低ノイズ増幅を含む、信号調整回路420に結合されたその出力を有する。信号調整回路420の出力は、高速アナログ-デジタル変換器(ADC)425に結合されており、これは、シリアル周辺機器インターフェース(SPI)によって、開示されるノイズ除去を実施する処理MCU120’として示すコントローラと通信する。
【0034】
図5は、例示的な態様による、USMのためのノイズ検出及び除去の例示的な方法500の信号処理フローチャートである。ステップ501は、USMに近接して位置付けられたガス調節器又は弁などの振動源からの振動を検出し、それに応じて、振動データを生成する、加速度計及び/又は音響センサを備える。ステップ502は、振動データを、MCU120’として
図4に示すコントローラに通信することを含む。示していないが、概して、信号調整のための信号調整回路420、及びADC機能を行うためのADC425として
図4に示すような、振動データをMCU120’に通信する前に行われる信号調整及びADC動作の両方が存在する。ADC425は、1億サンプル/秒(sample per second、SPS)を超えるサンプリング速度で動作させることができる。
【0035】
ステップ503は、処理された振動データにFFTを行って、時間対周波数のドメイン変換関数を行うために、MCU120’を備える。当技術分野で知られているように、FFTは、シーケンスの離散フーリエ変換(discrete Fourier transform、DFT)又はその逆(inverse discrete Fourier transform、IDFT)を計算するアルゴリズムである。フーリエ解析は、その元のドメインからの時間又は空間信号(ここでは、上で説明した
図2Cに示すような、振幅対時間データ)を、離散周波数ドメイン振動データに変換する。ステップ504は、周波数ドメイン振動データとUSMの動作の既知の周波数範囲とのスペクトル及び信号対ノイズ比(signal-to-noise ratio、SNR)の閾値の比較を行うことを含み、既知の周波数範囲データは、ブロック507のUSMによって提供されるように示す。ブロック507のUSMブロックによって提供される同じ既知の周波数範囲データはまた、ステップ508にも提供され、これは、既知の周波数範囲データを使用して、SNR閾値を指定した精度で生成することを含む。
【0036】
ステップ504及びステップ508からのデータは、振動ノイズが閾値を超えることによってUSMのSNRに大きな影響を及ぼしたかどうかを判定することを含むステップ509を実施するための入力データとして提供される。ステップ508は、SNRが、USMの精度を大体において決定することを認識し、異なる用途は、SNRの比較に関して異なる精度要件を有し、したがって、異なる閾値を有し得る。SNRは、デシベルで、又は線形スケールで表すことができる。閾値と比較したときに、SNRが低すぎると判定された場合、低いSNRは、開示する方法によって除去又は抑制することができる振動ノイズによって生じ得、該方法は、例えば流量測定のために飛行時間(ToF)検出を利用するときの、USMの超音波検出の、したがって、その精度性能の信頼性をより高くする。
【0037】
ステップ509の結果に基づいて、この方法は、ステップ512に移動し、該ステップは、開示される耐振動動作モードを実施するかどうかを決定する、決定ステップを含む。ステップ509の結果が、閾値を超えていることによって振動ノイズがSNRに影響を及ぼしていると判定した場合、開示される耐振動動作モードを実施することを含むステップ513に到達する。ステップ509の結果が、閾値を超えていないことによって振動ノイズがSNRに影響を及ぼさないと判定した場合、通常のUSM信号処理モードを利用するUSMを含むステップ514に到達する。
【0038】
開示される耐振動動作モード(ステップ513)が実施された場合、この方法は、どちらも周波数ドメイン処理を含むステップ515及び516に移動する。ステップ515は、ステップ504で生成されたスペクトル及びSNR閾値の比較を利用してFFT(ステップ503)によって提供された周波数ドメイン振動データを利用する、信号解析を含む。ステップ515によるデコンボリューション信号出力は、逆FFTブロック(inverse FFT、IFFT)516によって処理される。IFFTは、逆(又は後方)フーリエ変換を行う逆高速アルゴリズムであることが知られており、これは、上で説明した
図2Dに示すように、FFTのプロセスを元に戻して、周波数信号を時間ドメイン系列に変換する。ブロック516に続いて、この方法は、上で説明したように、通常のUSM信号処理モードを利用するUSMを含むステップ514に到達する。
【0039】
開示される態様は、概して、多種多様なUSMに適用することができる。例えば、開示されるUSMは、3バールの圧力を超えるなどの概して相対的に高い圧力下で動作する商業用若しくは産業用USM、又は概してより低い圧力で動作する住宅用USMに適用することができる。
【0040】
様々な開示される態様を上で説明してきたが、それらは、単なる一例として提示されており、限定するものではないことを理解するべきである。本開示に開示される主題に対する多くの変更は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱せずに、本開示に従ってなされ得る。加えて、特定の特徴はいくつかの実施例のうちの1つのみに関して開示されている場合があるが、かかる特徴は、任意の所定の又は特定の用途にとって望ましく、有利であり得るため、他の実施例のうちの1つ以上の他の特徴と組み合わされてもよい。