(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051570
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】LYM-1およびLYM-2標的化CAR細胞免疫療法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220324BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220324BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220324BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20220324BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220324BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20220324BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220324BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220324BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20220324BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220324BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220324BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220324BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220324BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220324BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20220324BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220324BHJP
C12P 21/00 20060101ALI20220324BHJP
C07K 14/74 20060101ALN20220324BHJP
【FI】
C12N15/13
C12N15/12 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/867 Z
C12N5/10
C12N5/0783
C07K16/28
C07K19/00
C07K14/725
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K35/17 Z
A61K45/00
G01N33/574 A
C12P21/08
C12P21/00 C
C07K14/74
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182547
(22)【出願日】2021-11-09
(62)【分割の表示】P 2017562598の分割
【原出願日】2016-06-03
(31)【優先権主張番号】62/171,004
(32)【優先日】2015-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】504043048
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エプスタイン, アラン エル.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】がん処置の新規な方法として、ヒトHLA-DRを標的にするCAR細胞および抗体を提供する。
【解決手段】HLA-DR CAR細胞は患者において安全かつ有効であり、HLA-DRを発現するヒト腫瘍を処置するために使用し得ることが提案されている。上記CAR(キメラ抗原受容体)は、(a)抗HLA-DR抗体の抗原結合性ドメイン;(b)CD8αヒンジドメイン;(c)CD8α膜貫通ドメイン;(d)CD28同時刺激シグナル伝達領域および/または4-1BB同時刺激シグナル伝達領域;ならびに(e)CD3ゼータシグナル伝達ドメインを含み得る。
【選択図】
図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)抗HLA-DR抗体の抗原結合性ドメイン;(b)CD8αヒンジドメイン;(c)CD8α膜貫通ドメイン;(d)CD28同時刺激シグナル伝達領域および/または4-1BB同時刺激シグナル伝達領域;ならびに(e)CD3ゼータシグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項2】
前記抗HLA-DR抗体の抗原結合性ドメインを含む、抗HLA-DR重鎖可変領域および抗HLA-DR軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項3】
前記抗HLA-DR重鎖可変領域と前記抗HLA-DR軽鎖可変領域との間に位置するリンカーポリペプチドをさらに含む、請求項2に記載のCAR。
【請求項4】
前記抗HLA-DR重鎖可変領域が、配列番号1~6またはその各々の等価物のうちの1つまたは複数を含むCDR領域を含む、請求項2または3に記載のCAR。
【請求項5】
前記抗HLA-DR重鎖可変領域が、(i)配列番号7もしくは配列番号9によってコードされるポリペプチド、(ii)配列番号8もしくは配列番号10を含むポリペプチド、または(iii)その各々の等価物のうちの1つまたは複数を含む、請求項2または3に記載のCAR。
【請求項6】
前記抗HLA-DR軽鎖可変領域が、配列番号11~16、またはその各々の等価物のうちの1つまたは複数を含むCDR領域である、請求項2または3に記載のCAR。
【請求項7】
前記抗HLA-DR軽鎖可変領域が、(i)配列番号17もしくは19によってコードされるポリペプチド、(ii)配列番号18もしくは配列番号20を含むポリペプチド、または(iii)その各々の等価物のうちの1つまたは複数を含む、CDR領域である、請求項2または3に記載のCAR。
【請求項8】
前記抗HLA-DR重鎖可変領域および軽鎖可変領域が、リンカー、任意選択で、グリシン-セリンリンカーによって連結されている、請求項2から7のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項9】
検出可能なマーカーまたは精製マーカーをさらに含む、前記請求項のいずれかに記載のCAR。
【請求項10】
等価物が、ポリペプチドに対して少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド、または前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの相補体に対して高ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを含む、請求項2から9のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項11】
HLA-DRを発現する細胞に結合している、前記請求項のいずれかに記載のCARを含む複合体。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載のCARまたはその相補体もしくはその各々の等価物をコードする単離された核酸配列。
【請求項13】
前記抗HLA-DR抗体またはHLA-DRリガンドの前記抗原結合性ドメインの上流に位置するコザックコンセンサス配列をさらに含む、請求項12に記載の単離された核酸。
【請求項14】
抗生物質耐性ポリヌクレオチドをさらに含む、請求項12または13に記載の単離された核酸配列。
【請求項15】
請求項12から14のいずれか一項に記載の単離された核酸配列を含むベクター。
【請求項16】
プラスミドである、請求項15に記載のベクター。
【請求項17】
レンチウイルスベクターである、請求項15に記載のベクター。
【請求項18】
請求項1から10のいずれか一項に記載のCARを含む単離された細胞;および/または請求項12から14のいずれか一項に記載の単離された核酸;および/または請求項15から17のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項19】
T細胞またはNK細胞である、請求項18に記載の単離された細胞。
【請求項20】
検出可能な標識をさらに含む、請求項18から19のいずれかに記載の単離された細胞。
【請求項21】
HLA-DRを発現する細胞に結合している、請求項18から20のいずれかに記載の単離された細胞を含む複合体。
【請求項22】
担体と、請求項1から10のいずれか一項に記載のCARを含む単離された細胞;および/または請求項12から14のいずれか一項に記載の単離された核酸;および/または請求項15から17のいずれか一項に記載のベクター;および/または請求項18から20のいずれか一項に記載の単離された細胞のうちの1つまたは複数とを含む組成物。
【請求項23】
HLA-DR CAR発現細胞を産生する方法であって、
(i)単離された細胞の集団に、請求項1から10のいずれか一項に記載のCARをコードする核酸配列を形質導入するステップと、
(ii)ステップ(i)の前記核酸配列を形質導入することに成功した前記単離された細胞の小集団を選択するステップであって、それによってHLA-DR CAR発現細胞を産生するステップと
を含む方法。
【請求項24】
前記細胞がT細胞またはNK細胞である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
それを必要とする対象において腫瘍の増殖を阻害する方法であって、前記対象に有効量の請求項18から20に記載の単離された細胞を投与するステップを含む方法。
【請求項26】
前記単離された細胞が、処置される前記対象に対して自己由来または同種異系である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記腫瘍ががん性である、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記腫瘍が、正常な非がん性の対応細胞と比較してHLA-DRを過剰発現する、請求項25から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記対象が哺乳動物である、請求項25から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記腫瘍がB細胞リンパ腫腫瘍または白血病腫瘍である、請求項25から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記対象にHLA-DR CAR療法以外の抗腫瘍療法を施すステップをさらに含む、請求項25から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
それを必要とするがん患者を処置する方法であって、前記対象に有効量の請求項18から20に記載の単離された細胞を投与するステップを含む方法。
【請求項33】
前記単離された細胞が、処置される前記対象に対して自己由来または同種異系であり、任意選択で第1選択、第2選択、第3選択、第4選択または第5選択の療法である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記がんの細胞が、正常な非がん性の対応細胞と比較してHLA-DRを発現するか、または過剰発現する、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記対象が哺乳動物である、請求項32から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記がんがB細胞リンパ腫または白血病である、請求項32から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記対象にHLA-DR CAR療法以外の抗腫瘍療法を施すステップをさらに含む、請求項32から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
対象がHLA-DR CAR療法に応答する可能性が高いか否かを決定する方法であって、患者から単離された腫瘍またはがん試料をHLA-DRに選択的に結合する作用物質と接触させるステップを含み、前記腫瘍またはがん試料に結合した前記作用物質の存在によって、前記対象が前記HLA-DR CAR療法に応答する可能性が高いことが示され、前記腫瘍またはがん試料に結合した前記作用物質の非存在によって、前記対象が前記HLA-DR CAR療法に応答する可能性が低いことが示される、方法。
【請求項39】
HLA-DRに選択的に結合する前記作用物質が、抗HLA DR抗体またはその抗原結合性断片である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記作用物質または抗HLA DR抗体またはその抗原結合性断片が検出可能に標識される、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
対象がHLA-DR CAR療法に応答する可能性が高いか否かを決定する方法であって、前記対象から単離された腫瘍またはがん試料中のHLA-DRポリペプチドの発現レベルを決定するステップを含み、正常な対応試料と比較した前記HLA-DRポリペプチドの発現上昇によって、前記対象が前記HLA-DR CAR療法に応答する可能性が高いことが示され、発現の上昇がないことによって、前記対象が前記HLA-DR療法に応答する可能性が低いことが示される、方法。
【請求項42】
HLA-DRポリペプチドの前記発現レベルが、免疫組織化学またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む方法によって決定される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
HLA-DR CAR療法を受ける対象においてモニタリングHLA-DR CAR療法をモニタリングする方法であって、患者から単離された試料を、HLA-DRに選択的に結合する作用物質と接触させるステップと、前記試料に結合した任意の作用物質の存在を決定するステップとを含む方法。
【請求項44】
HLA-DRに選択的に結合する前記作用物質が、抗HLA DR抗体またはその抗原結合性断片である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記作用物質または抗HLA DR抗体またはその抗原結合性断片が、検出可能に標識される、請求項43または44に記載の方法。
【請求項46】
前記がんまたは腫瘍が、癌腫、肉腫または白血病の群から選択される、請求項38から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
したがって、前記試料が、痰、血清、血漿、リンパ液、嚢胞液、尿、糞便、脳脊髄液、腹水、血液、または組織のうちの1つまたは複数を含む、請求項38から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記HLA-DR CAR療法に応答する可能性が高いと判定された患者に有効量のHLA-DR CAR療法を施すステップをさらに含む、請求項38から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記療法が、第1選択、第2選択、第3選択、第4選択または第5選択の療法である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
HLA-DR CAR療法および指示書を備えるキット。
【請求項51】
対象から単離された試料におけるHLA-DRの存在を検出するための試薬および指示書をさらに備える、請求項50に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、米国特許法第119条(e)項の下、2015年6月4日に出願された米国仮出願番号第62/171,004号に基づく優先権を主張しており、この仮出願の内容は、その全体が参考として本明細書によって援用される。
【0002】
(配列表)
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含み、そしてその全体が参考として本明細書によって援用される。前記ASCIIのコピーは、2016年6月1日に作成され、064189-7202_SL.txtと命名され、そしてサイズは51,804バイトである。
【0003】
(背景)
本開示は概して、ヒト免疫学、特にがん免疫療法の分野に関する。
【背景技術】
【0004】
以下の背景の考察は、読者が本開示を理解するのを助けるために示しただけであり、本開示の先行技術を記載または構成するとは認められない。
【0005】
Lym-1およびLym-2は、ヒトB細胞、樹状細胞、ならびにB細胞由来リンパ腫および白血病の表面上に主に発現されるMHCクラスII HLA-DR分子に対するものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要旨)
新規ながん免疫療法キメラ抗原受容体(CAR)に関連する方法および組成物が提供される。本開示の態様は、(a)Lym-1および/またはLym-2抗体の抗原結合性ドメイン;(b)ヒンジドメイン;(c)膜貫通ドメイン;ならびに(d)細胞内ドメインを含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなるキメラ抗原受容体(CAR)に関する。本開示のさらなる態様は、(a)Lym-1および/またはLym-2抗体の抗原結合性ドメイン;(b)CD8αヒンジドメイン;(c)CD8α膜貫通ドメイン;(d)CD28同時刺激シグナル伝達領域および/または4-1BB同時刺激シグナル伝達領域;ならびに(e)CD3ゼータシグナル伝達ドメインを含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなるキメラ抗原受容体(CAR)に関する。
【0007】
本開示の態様は、Lym-1およびLym-2抗体に関する。
【0008】
本開示のいくつかの態様は、ヒトHLA-DR抗原に特異的な抗原結合性ドメイン、例えば、Lym-1およびLym-2抗体の抗原結合性ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)に関する。
【0009】
本開示のさらなる態様は、Lym1またはLym-2 CARをコードする単離された核酸配列およびこの単離された核酸配列を含むベクターに関する。
【0010】
本開示の他の態様は、Lym-1またはLym-2指向性CARを含む単離された細胞、およびそのような細胞を産生する方法に関する。本開示のさらに他の方法態様は、腫瘍の増殖を阻害し、がん患者を処置するための方法であって、それを必要とする組織または対象に有効量の単離された細胞を投与するステップを含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなる方法に関する。
【0011】
本開示のさらなる方法態様は、Lym-1またはLym-2抗体および/またはLym-1 CARまたはLym-2 CAR細胞のうちの1つまたは複数の使用を通じて、患者がLym-1 CARまたはLym-2 CAR療法に応答する可能性が高いかまたはそうでないか否かを判定する方法に関する。
【0012】
本開示のさらなる態様は、担体と、本明細書に開示される実施形態で記載される生成物
のうちの1つまたは複数とを含む組成物に関する。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
(a)抗HLA-DR抗体の抗原結合性ドメイン;(b)CD8αヒンジドメイン;(c)CD8α膜貫通ドメイン;(d)CD28同時刺激シグナル伝達領域および/または4-1BB同時刺激シグナル伝達領域;ならびに(e)CD3ゼータシグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)。
(項目2)
前記抗HLA-DR抗体の抗原結合性ドメインを含む、抗HLA-DR重鎖可変領域および抗HLA-DR軽鎖可変領域を含む、項目1に記載のCAR。
(項目3)
前記抗HLA-DR重鎖可変領域と前記抗HLA-DR軽鎖可変領域との間に位置するリンカーポリペプチドをさらに含む、項目2に記載のCAR。
(項目4)
前記抗HLA-DR重鎖可変領域が、配列番号1~6またはその各々の等価物のうちの1つまたは複数を含むCDR領域を含む、項目2または3に記載のCAR。
(項目5)
前記抗HLA-DR重鎖可変領域が、(i)配列番号7もしくは配列番号9によってコードされるポリペプチド、(ii)配列番号8もしくは配列番号10を含むポリペプチド、または(iii)その各々の等価物のうちの1つまたは複数を含む、項目2または3に記載のCAR。
(項目6)
前記抗HLA-DR軽鎖可変領域が、配列番号11~16、またはその各々の等価物のうちの1つまたは複数を含むCDR領域である、項目2または3に記載のCAR。
(項目7)
前記抗HLA-DR軽鎖可変領域が、(i)配列番号17もしくは19によってコードされるポリペプチド、(ii)配列番号18もしくは配列番号20を含むポリペプチド、または(iii)その各々の等価物のうちの1つまたは複数を含む、CDR領域である、項目2または3に記載のCAR。
(項目8)
前記抗HLA-DR重鎖可変領域および軽鎖可変領域が、リンカー、任意選択で、グリシン-セリンリンカーによって連結されている、項目2から7のいずれか一項に記載のCAR。
(項目9)
検出可能なマーカーまたは精製マーカーをさらに含む、前記項目のいずれかに記載のCAR。
(項目10)
等価物が、ポリペプチドに対して少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド、または前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの相補体に対して高ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを含む、項目2から9のいずれか一項に記載のCAR。
(項目11)
HLA-DRを発現する細胞に結合している、前記項目のいずれかに記載のCARを含む複合体。
(項目12)
項目1から10のいずれか一項に記載のCARまたはその相補体もしくはその各々の等価物をコードする単離された核酸配列。
(項目13)
前記抗HLA-DR抗体またはHLA-DRリガンドの前記抗原結合性ドメインの上流に位置するコザックコンセンサス配列をさらに含む、項目12に記載の単離された核酸。
(項目14)
抗生物質耐性ポリヌクレオチドをさらに含む、項目12または13に記載の単離された核酸配列。
(項目15)
項目12から14のいずれか一項に記載の単離された核酸配列を含むベクター。
(項目16)
プラスミドである、項目15に記載のベクター。
(項目17)
レンチウイルスベクターである、項目15に記載のベクター。
(項目18)
項目1から10のいずれか一項に記載のCARを含む単離された細胞;および/または項目12から14のいずれか一項に記載の単離された核酸;および/または項目15から17のいずれか一項に記載のベクター。
(項目19)
T細胞またはNK細胞である、項目18に記載の単離された細胞。
(項目20)
検出可能な標識をさらに含む、項目18から19のいずれかに記載の単離された細胞。
(項目21)
HLA-DRを発現する細胞に結合している、項目18から20のいずれかに記載の単離された細胞を含む複合体。
(項目22)
担体と、項目1から10のいずれか一項に記載のCARを含む単離された細胞;および/または項目12から14のいずれか一項に記載の単離された核酸;および/または項目15から17のいずれか一項に記載のベクター;および/または項目18から20のいずれか一項に記載の単離された細胞のうちの1つまたは複数とを含む組成物。
(項目23)
HLA-DR CAR発現細胞を産生する方法であって、
(i)単離された細胞の集団に、項目1から10のいずれか一項に記載のCARをコードする核酸配列を形質導入するステップと、
(ii)ステップ(i)の前記核酸配列を形質導入することに成功した前記単離された細胞の小集団を選択するステップであって、それによってHLA-DR CAR発現細胞を産生するステップと
を含む方法。
(項目24)
前記細胞がT細胞またはNK細胞である、項目23に記載の方法。
(項目25)
それを必要とする対象において腫瘍の増殖を阻害する方法であって、前記対象に有効量の項目18から20に記載の単離された細胞を投与するステップを含む方法。
(項目26)
前記単離された細胞が、処置される前記対象に対して自己由来または同種異系である、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記腫瘍ががん性である、項目25または26に記載の方法。
(項目28)
前記腫瘍が、正常な非がん性の対応細胞と比較してHLA-DRを過剰発現する、項目25から27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記対象が哺乳動物である、項目25から28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記腫瘍がB細胞リンパ腫腫瘍または白血病腫瘍である、項目25から29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記対象にHLA-DR CAR療法以外の抗腫瘍療法を施すステップをさらに含む、項目25から30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
それを必要とするがん患者を処置する方法であって、前記対象に有効量の項目18から20に記載の単離された細胞を投与するステップを含む方法。
(項目33)
前記単離された細胞が、処置される前記対象に対して自己由来または同種異系であり、任意選択で第1選択、第2選択、第3選択、第4選択または第5選択の療法である、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記がんの細胞が、正常な非がん性の対応細胞と比較してHLA-DRを発現するか、または過剰発現する、項目32または33に記載の方法。
(項目35)
前記対象が哺乳動物である、項目32から34のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記がんがB細胞リンパ腫または白血病である、項目32から35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記対象にHLA-DR CAR療法以外の抗腫瘍療法を施すステップをさらに含む、項目32から36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
対象がHLA-DR CAR療法に応答する可能性が高いか否かを決定する方法であって、患者から単離された腫瘍またはがん試料をHLA-DRに選択的に結合する作用物質と接触させるステップを含み、前記腫瘍またはがん試料に結合した前記作用物質の存在によって、前記対象が前記HLA-DR CAR療法に応答する可能性が高いことが示され、前記腫瘍またはがん試料に結合した前記作用物質の非存在によって、前記対象が前記HLA-DR CAR療法に応答する可能性が低いことが示される、方法。
(項目39)
HLA-DRに選択的に結合する前記作用物質が、抗HLA DR抗体またはその抗原結合性断片である、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記作用物質または抗HLA DR抗体またはその抗原結合性断片が検出可能に標識される、項目38または39に記載の方法。
(項目41)
対象がHLA-DR CAR療法に応答する可能性が高いか否かを決定する方法であって、前記対象から単離された腫瘍またはがん試料中のHLA-DRポリペプチドの発現レベルを決定するステップを含み、正常な対応試料と比較した前記HLA-DRポリペプチドの発現上昇によって、前記対象が前記HLA-DR CAR療法に応答する可能性が高いことが示され、発現の上昇がないことによって、前記対象が前記HLA-DR療法に応答する可能性が低いことが示される、方法。
(項目42)
HLA-DRポリペプチドの前記発現レベルが、免疫組織化学またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む方法によって決定される、項目41に記載の方法。
(項目43)
HLA-DR CAR療法を受ける対象においてモニタリングHLA-DR CAR療法をモニタリングする方法であって、患者から単離された試料を、HLA-DRに選択的に結合する作用物質と接触させるステップと、前記試料に結合した任意の作用物質の存在を決定するステップとを含む方法。
(項目44)
HLA-DRに選択的に結合する前記作用物質が、抗HLA DR抗体またはその抗原結合性断片である、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記作用物質または抗HLA DR抗体またはその抗原結合性断片が、検出可能に標識される、項目43または44に記載の方法。
(項目46)
前記がんまたは腫瘍が、癌腫、肉腫または白血病の群から選択される、項目38から45のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
したがって、前記試料が、痰、血清、血漿、リンパ液、嚢胞液、尿、糞便、脳脊髄液、腹水、血液、または組織のうちの1つまたは複数を含む、項目38から46のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記HLA-DR CAR療法に応答する可能性が高いと判定された患者に有効量のHLA-DR CAR療法を施すステップをさらに含む、項目38から42のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
前記療法が、第1選択、第2選択、第3選択、第4選択または第5選択の療法である、項目48に記載の方法。
(項目50)
HLA-DR CAR療法および指示書を備えるキット。
(項目51)
対象から単離された試料におけるHLA-DRの存在を検出するための試薬および指示書をさらに備える、項目50に記載のキット。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1A~1Fは、(
図1A)陰性対照;(
図1B)Lym-1;(
図1C)Lym-1およびB1;(
図1D)B1のみ;(
図1E)Lym-2;および(
図1F)患者の正常な末梢血リンパ球とのLym-2およびB1染色反応性のフローサイトメトリー分析を示す図である。Lym-1およびLym-2の両方は、正常なヒト末梢性B細胞に対する結合の異なるプロファイルを有する。
【0014】
【
図2】
図2A~2Bは、B細胞胚中心において膜の陽性を実証する、正常なヒト扁桃のLym-1およびLym-2染色を示す図である。染色パターンにおける差は、Lym-1(
図2A)とLym-2(
図2B)の間で明らかである。散在性の濾胞間の樹状細胞のみが、T細胞ゾーン(IHC、凍結切片、×325)中で両方の抗体について陽性である。
【0015】
【
図3】
図3Aおよび3Bは、Lym-1およびLym-2モノクローナル抗体の免疫ペルオキシダーゼ染色であり、中間グレードの悪性B細胞リンパ腫を示す図である。Lym-1(
図3A)およびLym-2(
図3B)モノクローナル抗体の免疫ペルオキシダーゼ染色、中間グレードの悪性B細胞リンパ腫(凍結切片、×720)である。切片中の細胞の大多数の顕著な膜染色パターンに留意されたい。
【0016】
【
図4A】
図4A~4Cは、(
図4A)Raji細胞に対するLym-1モノクローナル抗体およびARH-77細胞に対するLym-2モノクローナル抗体の結合プロファイル;(
図4B)Lym-1モノクローナル抗体とRaji細胞のスキャッチャードプロット分析;(
図4C)Lym-2モノクローナル抗体とARH-77細胞のスキャッチャードプロット分析の結合プロファイルおよびスキャッチャードプロットを示す図である。
【
図4B】
図4A~4Cは、(
図4A)Raji細胞に対するLym-1モノクローナル抗体およびARH-77細胞に対するLym-2モノクローナル抗体の結合プロファイル;(
図4B)Lym-1モノクローナル抗体とRaji細胞のスキャッチャードプロット分析;(
図4C)Lym-2モノクローナル抗体とARH-77細胞のスキャッチャードプロット分析の結合プロファイルおよびスキャッチャードプロットを示す図である。
【
図4C】
図4A~4Cは、(
図4A)Raji細胞に対するLym-1モノクローナル抗体およびARH-77細胞に対するLym-2モノクローナル抗体の結合プロファイル;(
図4B)Lym-1モノクローナル抗体とRaji細胞のスキャッチャードプロット分析;(
図4C)Lym-2モノクローナル抗体とARH-77細胞のスキャッチャードプロット分析の結合プロファイルおよびスキャッチャードプロットを示す図である。
【0017】
【
図5】
図5Aおよび5Bは、Lym-1(
図5A)およびSC-2抗HLA-DR抗体(
図5B)による
35S-メチオニンおよび
14C-ロイシン-標識Rajiタンパク質の免疫沈降を示す図である。
【0018】
【
図6】
図6Aおよび6Bは、免疫療法のための、(
図6A)Lym-1および(
図6B)Lym-2 CAR T細胞の構築の概略を示す図である。
図6Aおよび6Bは、配列番号51を開示する。
【0019】
【
図7】
図7は、模式的な非限定の例示的なLym-1遺伝子移入ベクターおよび導入遺伝子を示す図である。遺伝子移入ベクターの骨格は、HIVベースで、2シストロン性のレンチウイルスベクターpLVX-IRES-ZsGreenであり、HIV-1 5’および3’長末端反復(LTR)、パッケージングシグナル(Ψ)、EF1αプロモーター、内部リボソームエントリー部位(IRES)、ZsGreen、緑色蛍光タンパク質、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、ならびにシミアンウイルス40オリジン(SV40)を含有する。CD8リーダー配列、Lym-1に特異的なscFV、CD8ヒンジおよび膜貫通領域および4-1BBおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む導入遺伝子の構成的な発現は、EF-1αプロモーターの存在によって保証される。検出タンパク質ZsGreenの発現は、IRES領域によって実施される。ベクターの組込みは、蛍光顕微鏡による、細胞中のZsGreenの存在によってアッセイすることができる。
【0020】
【
図8】
図8は、初代ヒトT細胞におけるLym-1 CARの発現を示す図である。T細胞はLym-1 CARが形質導入され、Biotein-Protein L、続いてストレプトアビジン-PEで染色された。細胞は、フローサイトメトリーによって分析された。
【0021】
【
図9】
図9は、Lym-1-CAR T細胞の細胞毒性を示す図である。Lym-1 CAR発現T細胞の細胞毒性は、方法に記載されるとおりLDH細胞毒性キットを使用して決定された。アッセイ前に、T細胞は、αCD3/CD8ビーズ(Stem Cell Technologies、2mlの培地に30ul)を使用して活性化された。活性化T細胞はLym-1 CARレンチウイルス粒子で形質導入され、その後にT細胞はαCD3/CD8ビーズを使用して活性化された。未形質導入の活性化T細胞は、対照として使用された。15,000個のRaji細胞を、ウェル当たりプレートした。Lym-1 CAR形質導入T細胞を、ウェルに20:1、10:1、5:1および1:1の比で添加した。各データポイントは、三連の測定の平均を表す。
【0022】
【
図10】
図10は、模式的な非限定の例示的なLym-2遺伝子移入ベクターおよび導入遺伝子を示す図である。遺伝子移入ベクターの骨格は、HIVベースで、2シストロン性のレンチウイルスベクターpLVX-IRES-ZsGreenであり、HIV-1 5’および3’長末端反復(LTR)、パッケージングシグナル(Ψ)、EF1αプロモーター、内部リボソームエントリー部位(IRES)、ZsGreen、緑色蛍光タンパク質、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、ならびにシミアンウイルス40オリジン(SV40)を含有する。CD8リーダー配列、Lym-2に特異的なscFV、CD8ヒンジおよび膜貫通領域およびCD28、4-1BBおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む導入遺伝子の構成的な発現は、EF-1αプロモーターの存在によって保証される。検出タンパク質ZsGreenの発現は、IRES領域によって実施される。ベクターの組込みは、蛍光顕微鏡による、細胞中のZsGreenの存在によってアッセイすることができる。
【0023】
【
図11】
図11は、初代ヒトT細胞におけるLym-2 CARの発現を示す図である。T細胞はLym-2 CARが形質導入され、Biotein-Protein L、続いてストレプトアビジン-PEで染色された。細胞は、フローサイトメトリーによって分析された。
【0024】
【
図12】
図12は、Lym-2-CAR T細胞の細胞毒性を示す図である。Lym-2 CAR発現T細胞の細胞毒性は、方法に記載されるとおりLDH細胞毒性キットを使用して決定された。アッセイ前に、T細胞は、αCD3/CD8ビーズ(Stem Cell Technologies、2mlの培地に30ul)を使用して活性化された。活性化T細胞はLym-2 CARレンチウイルス粒子で形質導入され、その後にT細胞はαCD3/CD8ビーズを使用して活性化された。未形質導入の活性化T細胞は、対照として使用された。15,000個のRaji細胞を、ウェル当たりプレートした。Lym-2 CAR形質導入T細胞を、ウェルに20:1、10:1、5:1および1:1の比で添加した。各データポイントは、三連の測定の平均を表す。
【0025】
【
図13】
図13は、Lym-1、Lym-2、およびCD19 CAR T細胞が、ヒトリンパ腫Raji細胞に対して高度に細胞傷害性であることを示す図である。Rajiバーキットリンパ腫細胞は、Lym-1およびLym-2によって標的されるHLA-DrとCD19の両方について陽性であり、CD19はCD19 CAR T細胞の陽性対照として作用する。陰性対照は、CD3+T細胞およびZsgreen細胞からなる。
【0026】
【
図14】
図14は、Lym-1、Lym-2がin vitroでHLA-Dr陽性であるが、CD19陰性であるTLBR-2ヒトTリンパ腫細胞に対して高度に細胞溶解性であるが、CD19 CARはそうではないことを示す図である。リンパ腫に関連する乳房移植片に由来するTLBR-2ヒトTリンパ腫細胞は、HLA-Drに関して陽性であるが、CD19に関してはそうではない(Lechnerら(2012年)Clin. Cancer Res.18巻(17号):4549~4559頁)。これらの結果は、Lym-1およびLym-2 CAR T細胞の特異性ならびにHLA-Dr陽性腫瘍の死滅におけるそれらの作用強度を示す。Lym-1 CAR TおよびCD19 CAR T陽性細胞のパーセンテージを、通常の未形質導入初代T細胞を使用して50%に調整した。Lym-2 CAR T細胞のパーセンテージは、24%であった。
【0027】
【
図15】
図15は、トランスフェクトされたNK細胞のFACs分析の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(詳細な説明)
本開示は、記載される特定の態様に限定されず、当然のことながら変化してもよいことが理解されるべきである。本明細書で使用する用語は、特定の態様のみを説明するためのものであり、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0029】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、この技術が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載された方法および材料と類似または等価な任意の方法および材料が、本技術の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法、デバイスおよび材料がここに記載される。本明細書で引用した全ての技術文献および特許公報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書中のいかなるものも、本技術が先行発明によってそのような開示よりも先行する資格がないという承認と解釈されるものはない。
【0030】
本技術の実施には、他に示さない限り、当技術分野の技術範囲内の組織培養、免疫学、分子生物学、微生物学、細胞生物学および組換えDNAの従来技術が使用される。例えば、SambrookおよびRussell編(2001年)Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第3版;Ausubelら編(2007年)Current Protocols in Molecular Biologyのシリーズ;Methods in Enzymology(Academic Press, Inc.、N.Y.)のシリーズ;MacPhersonら(1991年)PCR1: A Practical Approach(IRL Press、Oxford University Press);MacPhersonら(1995年)PCR2: A Practical Approach;HarlowおよびLane編(1999年)Antibodies, A Laboratory Manual;Freshney(2005年)Culture of Animal Cells: A Manual of Basic technique、第5版;Gait編(1984年)Oligonucleotide Synthesis;米国特許第4,683,195号;HamesおよびHiggins編(1984年)Nucleic Acid Hybridization;Anderson(1999年)Nucleic Acid Hybridization;HamesおよびHiggins編(1984年)Transcription and Translation; Immobilized Cells and Enzymes(IRL Press(1986年));Perbal(1984年)A Practical Guide to Molecular Cloning;MillerおよびCalos編(1987年)Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(Cold Spring Harbor Laboratory);Makrides編(2003年)Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells;MayerおよびWalker編(1987年)Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology(Academic Press、London);ならびにHerzenbergら編(1996年)Weir's Handbook of Experimental Immunologyを参照のこと。
【0031】
範囲を含む全ての数値指定、例えばpH、温度、時間、濃度および分子量は、適宜、1.0または0.1の増分で(+)もしくは(-)変化する近似であるか、そうでなければ+/-15%、あるいは10%、あるいは5%、あるいは2%の変動である。必ずしも明示的ではないが、全ての数値表示の前に「約」という用語が付されていることを理解されたい。また、必ずしも明示的ではないが、本明細書に記載の試薬は単なる例示であること、およびそのような等価物が当技術分野で公知であることも理解されるべきである。
【0032】
本技術がポリペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチドまたは抗体に関連する場合、等価物または生物学的に等価物は、本技術の範囲内であることが意図されていることは、明白な記載なしでかつ別段意図しない限り、推測されるべきである。
【0033】
定義
本明細書および特許請求の範囲において使用される単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の言及を含む。例えば、「細胞(a cell)」という用語は、その混合物を含む複数の細胞を含む。
【0034】
本明細書中で使用される場合、「動物」という用語は、例えば、哺乳動物および鳥類を含むカテゴリーである、生きている多細胞脊椎動物生物をいう。「哺乳動物」という用語は、ヒトおよび非ヒト哺乳類の両方を含む。
【0035】
「対象」、「宿主」、「個体」および「患者」という用語は、本明細書で交換可能に用いる場合、ヒトおよび動物の対象、例えば、ヒト、動物、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ヒツジ、マウス、ウマ、およびウシを指す。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「抗体」という用語は、例であって、限定するものではないが、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM、それらの組合せ、ならびに、任意の脊椎動物、例えばヒト、ヤギ、ウサギおよびマウスのような哺乳動物における免疫応答中に産生される同様の分子、ならびに非哺乳動物種における同様の分子、例えば、サメ免疫グロブリンを含む、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様分子を総称する。特に断りのない限り、「抗体」という用語は、他の分子(例えば、生物学的試料中の他の分子に対する結合定数よりも大きい少なくとも103M-1、少なくとも104M-1、または少なくとも105M-1の目的の分子に対する結合定数を有する抗体および抗体断片)に対する結合の実質的な除外に対して、インタクトな免疫グロブリンと、目的の分子(または目的の高度に類似した分子の群)に特異的に結合する「抗体断片」または「抗原結合性断片」を含む。「抗体」という用語はまた、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)、ヘテロコンジュゲート抗体(例えば、二重特異性抗体)などの遺伝子操作された形態も含む。Pierce Catalog and Handbook(1994~1995年)(Pierce Chemical Co.、Rockford、Ill);Kuby, J.(1997年)Immunology、第3版、W.H. Freeman & Co.、New Yorkも参照のこと。抗体の「抗原結合性断片」とは、抗体の標的抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の一部である。
【0037】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、Bリンパ球の単一クローンによって、または単一抗体の軽鎖遺伝子および重鎖遺伝子がトランスフェクトされた細胞によって、産生される抗体を指す。モノクローナル抗体は、例えば、ハイブリッド抗体形成細胞を骨髄腫細胞と免疫脾臓細胞との融合から作製することにより、当業者に公知の方法によって産生される。モノクローナル抗体としては、ヒト化モノクローナル抗体およびヒト抗体が挙げられる。
【0038】
抗体構造に関して、免疫グロブリンは、ジスルフィド結合によって相互連結された重鎖(H)および軽鎖(L)を有する。軽鎖にはラムダ(λ)とカッパ(κ)の2種類がある。抗体分子の機能活性を決定する、5つの主要な重鎖クラス(またはアイソタイプ)が存在する:IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgE。各重鎖および軽鎖は、定常領域および可変領域を含有する(この領域は「ドメイン」としても公知である)。組み合わせれば、重鎖および軽鎖可変領域は抗原に特異的に結合する。軽鎖および重鎖可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」とも呼ばれる3つの超可変領域によって中断された「フレームワーク」領域を含有する。フレームワーク領域およびCDRの範囲は規定されている(参照により本明細書に援用される、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、U.S. Department of Health and Human Services、1991年を参照のこと)。Kabatデータベースは、現在オンラインで管理されている。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内で比較的保存されている。抗体のフレームワーク領域、すなわち、構成軽鎖および重鎖の組み合わされたフレームワーク領域は、主にβシートコンフォメーションを採用し、CDRは、βシート構造を連結し、ある場合には、その一部を形成するループを形成する。したがって、フレームワーク領域は、鎖間非共有結合相互作用によって、CDRを正しい配向に位置付ける足場を形成するように機能する。
【0039】
CDRは、抗原のエピトープへの結合を主に担う。各鎖のCDRは、代表的には、N末端から順に番号が付けられてCDR1、CDR2およびCDR3と呼ばれ、代表的にはまた特定のCDRが位置する鎖(CDHRと名付けられた重鎖領域およびCDLRと名付けられた軽鎖領域)によっても特定される。したがって、CDHR3は、それが見出される抗体の重鎖の可変ドメイン由来のCDR3であり、一方で、CDLR1は、それが見出される抗体の軽鎖の可変ドメイン由来のCDR1である。TNT抗体は、TNT関連抗原に固有の特異的VH領域およびVL領域配列を有し、したがって特異的CDR配列を有する。異なる特異性(すなわち、異なる抗原に対する異なる結合部位)を有する抗体は、異なるCDRを有する。抗体から抗体まで変化するのはCDRであるが、CDR内の限られた数のアミノ酸位置のみが抗原結合に直接関与する。CDR内のこれらの位置は、特異性決定残基(SDR)と呼ばれる。
【0040】
本明細書中で使用される場合、「抗原」という用語は、抗体分子またはT細胞受容体のような特異的体液性または細胞性免疫の産物によって特異的に結合され得る化合物、組成物または物質を指す。抗原は、例えば、ハプテン、単純中間代謝産物、糖(例えば、オリゴ糖)、脂質、およびホルモン、ならびに複雑な炭水化物(例えば、多糖類)、リン脂質およびタンパク質などの高分子を含む任意の種類の分子であってもよい。抗原の一般的なカテゴリーとしては、限定するものではないが、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、原虫および他の寄生虫抗原、腫瘍抗原、自己免疫疾患に関与する抗原、アレルギーおよび移植片拒絶、毒素ならびにその他の雑多な抗原が挙げられる。
【0041】
本明細書で使用される「抗原結合性ドメイン」という用語は、抗原標的に特異的に結合することができる任意のタンパク質またはポリペプチドドメインを指す。
【0042】
本明細書で使用する「キメラ抗原受容体」(CAR)という用語は、抗原に結合することができる細胞外ドメイン、細胞外ドメインが由来するポリペプチドとは異なるポリペプチドに由来する膜貫通ドメイン、および少なくとも1つの細胞内ドメインを含む融合タンパク質を指す。「キメラ抗原受容体(CAR)」は、ある場合には、「キメラ受容体」、「T体」または「キメラ免疫受容体(CIR)」と呼ばれることもある。「抗原に結合することができる細胞外ドメイン」とは、特定の抗原に結合することができる任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドを意味する。「細胞内ドメイン」とは、細胞内の生物学的プロセスの活性化または阻害を引き起こすシグナルを伝達するドメインとして機能することが知られている任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドを意味する。特定の実施形態では、細胞内ドメインは、一次シグナル伝達ドメインに加えて、1つまたは複数の同時刺激シグナル伝達ドメインを含んでも、または代わりに本質的にそれからなっても、またはさらに含んでもよい。「膜貫通ドメイン」とは、細胞膜を貫通することが知られており、細胞外ドメインおよびシグナル伝達ドメインを連結するように機能し得る任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドを意味する。キメラ抗原受容体とは、任意選択で、細胞外ドメインと膜貫通ドメインとの間のリンカーとして働く「ヒンジドメイン」を含んでもよい。このようなドメインの非限定的な例は、本明細書に提供され、例えば、以下である:
ヒンジドメイン:IgG1重鎖ヒンジ配列、配列番号42:
CTCGAGCCCAAATCTTGTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCG
膜貫通ドメイン:CD28膜貫通領域配列番号43:
TTTTGGGTGCTGGTGGTGGTTGGTGGAGTCCTGGCTTGCTATAGCTTGCTAGTAACAGTGGCCTTTATTATTTTCTGGGTG
細胞内ドメイン:4-1BB同時刺激シグナル伝達領域、配列番号44:
AAACGGGGCAGAAAGAAACTCCTGTATATATTCAAACAACCATTTATGAGACCAGTACAAACTACTCAAGAGGAAGATGGCTGTAGCTGCCGATTTCCAGAAGAAGAAGAAGGAGGATGTGAACTG
細胞内ドメイン:CD28同時刺激シグナル伝達領域、配列番号45:
AGGAGTAAGAGGAGCAGGCTCCTGCACAGTGACTACATGAACATGACTCCCCGCCGCCCCGGGCCCACCCGCAAGCATTACCAGCCCTATGCCCCACCACGCGACTTCGCAGCCTATCGCTCC
細胞内ドメイン:CD3ゼータシグナル伝達領域、配列番号46:
AGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACCAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGAGAAGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGCTAA
【0043】
本明細書中で使用される場合、「HLA-DR」という用語は、この名称に関連するMHCクラスII細胞表面受容体、およびHLA-DRAとHLA-DRBハプロタイプとの組合せを含むHLA-DR血清型DR1~DR75を含むが、これに限定されない、いくつかの改変体のいずれか1つを含むが、これに限定されない任意のHLA-DR改変体と、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、好ましくは90%の配列同一性、または少なくとも95%の配列同一性を共有する類似の生物学的機能を有する任意の他の分子を指す。HLA-DR配列の例は当技術分野で公知であり、その限定されない例は、Rose, L.M.ら(1996年)Cancer Immunol. Immunother. 43巻:26~30頁において以下が開示される:
HLA-DRB1*1001[DR10]配列番号30
GDTRPRFLEEVKFECHFFNGTERVRLLERRVHNQEEYARYDSDVGEYRAVTELGRPDAEYWNSQKDLLERRRAAVDTYCRHNYGVGESFTVQRRVQPKVTVYPSKTQPLQHHNLLVCSVNGFYPGSIEVRWFRNGQEEKTGVVSTGLIQNGDWTFQTLVMLETVPQSGEVYTCQVEHPSVMSPLTVEWRARSESAQSKMLSGVGGFVLGLLFLGAGLFIYFRNQKGHSGLPPTGFLS;
HLA-DRB3*0201[DR52]配列番号31
GDTRPRFLELLKSECHFFNGTERVRFLERHFHNQEEYARFDSDVGEYRAVFELGRPDAEYWNSQKDLLEQKRGQVDNYCRHNYGVVESFTVQRRVHPQVTVYPAKTQPLQHHNLLVCSVSGFYPGSIEVRWFRNGQEEKAGVVSTGLIQNGDWTFQTLVMLETFPRSGEVYTCQVEHPSVTSPLTVEWSARSESAQSKMLSGVGGFVLGLLFLGAGLFIYFRNQKGHSGLQPTGFLS;
HLA-DRB1*0301[DR17(3)]配列番号32
GDTRPRFLEYSTSECHFFNGTERVRYLDRYFHNQEENVRFDSDVGEFRAVTELGRPDAEYWNSQKDLLEQKRGRVDNYCRHNYGVVESFTVQRRVHPKVTVYPSKTQPLQHHNLLVCSVSGFYPGSIEVRWFRNGQEEKTGVVSTGLIQNGDWTFQTLVMLETVPRSGEVYTCQVEHPSVTSPLTVEWRARSESAQSKMLSGVGGFVLGLLFLGAGLFIYFRNQKGHSGLQPRGFLS、およびその各々の等価物。
【0044】
Roseらはまた、HLA-DR特異的抗体が結合し得、したがって、追加の抗体、モノクローナル抗体およびその各々の抗原結合性断片の生成のための免疫原として役立ち得る例示的なエピトープを開示している。特定のHLA-DRサブタイプを含むがこれらに限定されない、HLA-DRという名称またはその等価物に対応する列挙された参照番号およびGenBank受託番号のそれぞれに関連する配列は、さらなる非限定的な例として参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
「組成物」は、代表的には、活性な作用物質、例えばCAR T細胞またはCAR NK細胞、抗体、化合物と、天然に存在するかまたは天然には存在しない担体、不活性物質(例えば、検出剤、または標識)または活性物質、例えば、アジュバント、希釈剤、結合剤、安定剤、緩衝剤、塩、親油性溶媒、防腐剤、アジュバントなどとの組合せを意図しており、これは、薬学的に許容される担体を含む。担体としてはまた、薬学的賦形剤および添加のタンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、および炭水化物(例えば、糖類、例としては、単糖類、二糖、三糖、四糖のオリゴ糖類、およびオリゴ糖類;誘導体化糖類、例えば、アルジトール、アルドン酸類、エステル化糖類など;ならびに多糖類または糖重合体)が挙げられ、これは、単独で存在してもよく、または1~99.99重量%もしくは容積%で組み合わされて存在してもよい。例示的なタンパク質賦形剤としては、血清アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、組換えヒトアルブミン(rHA)、ゼラチン、カゼインなどが挙げられる。緩衝化能力としても機能し得る、代表的なアミノ酸/抗体成分としてはアラニン、アルギニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテームなどが挙げられる。炭水化物賦形剤もまた、この技術の範囲内で意図しており、その例としては、限定するものではないが、単糖類、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボースなど;二糖類、例えば、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなど;多糖類、例えば、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなど;ならびにアルジトール類、例えば、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトールソルビトール(グルシトール)およびミオイノシトールが挙げられる。
【0046】
本明細書で使用される「コンセンサス配列」という用語は、一連の複数の配列をアラインメントさせることによって決定され、多数の配列の対応するそれぞれの位置でのアミノ酸または塩基の優勢な選択を表す理想化された配列を定義する、アミノ酸または核酸配列を指す。一連の複数の配列の配列に依存して、そのシリーズのコンセンサス配列は、0個、1個、少数、またはそれ超の置換によって各配列と異なり得る。また、一連の複数の配列の配列に依存して、複数のコンセンサス配列をそのシリーズについて決定し得る。コンセンサス配列の生成は、集中的な数学的解析の対象となっている。様々なソフトウェアプログラムを用いてコンセンサス配列を決定してもよい。
【0047】
本明細書中で使用される場合、「CD8αヒンジドメイン」という用語は、この名称に関連する特定のタンパク質断片、および本明細書に示されるようなCD8αヒンジドメイン配列と少なくとも70%、あるいは少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも90%の配列同一性、あるいは少なくとも95%の配列同一性を共有する、類似の生物学的機能を有する任意の他の分子を指す。ヒト、マウスおよび他の種についてのCD8αヒンジドメインの例示的な配列は、Pinto, R.D.ら(2006年)Vet. Immunol. Immunopathol. 110巻:169~177頁に示される。CD8αヒンジドメインに関連する配列は、Pinto, R.D.ら(2006年)Vet. Immunol. Immunopathol. 110巻:169~177頁に示される。そのようなものの非限定的な例としては:
ヒトCD8アルファヒンジドメイン(配列番号33);
PAKPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIY
マウスCD8アルファヒンジドメイン(配列番号34);
KVNSTTTKPVLRTPSPVHPTGTSQPQRPEDCRPRGSVKGTGLDFACDIY
ネコCD8アルファヒンジドメイン(配列番号35);
PVKPTTTPAPRPPTQAPITTSQRVSLRPGTCQPSAGSTVEASGLDLSCDIY、およびその各々の等価物が挙げられる。
【0048】
本明細書中で使用される場合、「CD8α膜貫通ドメイン」という用語は、この名称に関連する特定のタンパク質断片、および本明細書に示されるようなCD8α膜貫通ドメイン配列と少なくとも70%、あるいは少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも90%の配列同一性、あるいは少なくとも95%の配列同一性を共有する、類似の生物学的機能を有する任意の他の分子を指す。ヒトT細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖のアミノ酸位置183~203(NCBI参照配列:NP_001759.3)、またはマウスT細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖のアミノ酸位置197~217(NCBI参照配列:NP_001074579.1)およびラットT細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖のアミノ酸位置190~210(NCBI参照配列:NP_113726.1)に関連する断片配列は、CD8α膜貫通ドメインのさらなる例の配列を提供する。列挙されたNCBIの各々に関連する配列は、以下のように提供される:
ヒトCD8アルファ膜貫通ドメイン(配列番号36):IYIWAPLAGTCGVLLLSLVIT;
マウスCD8アルファ膜貫通ドメイン(配列番号37):IWAPLAGICVALLLSLIITLI;
ラットCD8アルファ膜貫通ドメイン(配列番号38):IWAPLAGICAVLLLSLVITLI、およびその各々の等価物。
【0049】
本明細書中で使用される場合、「4-1BB同時刺激シグナル伝達領域」という用語は、この名称に関連する特定のタンパク質断片、および本明細書に示される4-1BB同時刺激シグナル伝達領域と少なくとも70%、あるいは少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、あるいは90%の配列同一性、あるいは少なくとも95%の配列同一性を共有する類似の生物学的機能を有する任意の他の分子を指す。4-1BB同時刺激シグナル伝達領域の例示的な配列は、米国特許出願公開第2013/0266551A1号(米国特許出願第13/826,258号として出願)に示されている。米国特許出願第13/826,258号に開示されている4-1BB同時刺激シグナル伝達領域の配列は、以下のように開示されている:
4-1BB同時刺激シグナル伝達領域(配列番号39):
KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL、およびその各々の等価物。
【0050】
本明細書で使用される場合、「CD28同時刺激シグナル伝達領域」という用語は、この名称に関連する特定のタンパク質断片、および本明細書に示されるCD28同時刺激シグナル伝達領域配列と少なくとも70%、あるいは少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、あるいは90%の配列同一性、あるいは少なくとも95%の配列同一性を共有する類似の生物学的機能を有する任意の他の分子を指す。CD28同時刺激領域は、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む。例示的な配列CD28同時刺激シグナル伝達ドメインは、米国特許第5,686,281号;Geiger, T.L.ら(2001年)Blood 98巻:2364~2371頁;Hombach, A.ら(2001年)J Immunol. 167巻:6123~6131頁;Maher, J.ら(2002年)Nat Biotechnol. 20巻:70~75頁;Haynes, N.M.ら(2002年)J Immunol. 169巻:5780~5786頁;Haynes, N.M.ら(2002年)Blood 100巻:3155~3163頁に示される。非限定的な例としては、下のCD28配列(配列番号40):MLRLLLALNL FPSIQVTGNK ILVKQSPMLV AYDNAVNLSC KYSYNLFSRE FRASLHKGLDSAVEVCVVYG NYSQQLQVYS KTGFNCDGKL GNESVTFYLQ NLYVNQTDIY FCKIEVMYPPPYLDNEKSNG TIIHVKGKHL CPSPLFPGPS KPFWVLVVVG GVLACYSLLVTVAFIIFWVR SKRSRLLHSD YMNMTPRRPG PTRKHYQPYA PPRDFAAYRSの残基114~220、およびその等価物が挙げられる。
【0051】
本明細書中で使用される場合、「ICOS同時刺激シグナル伝達領域」という用語は、この名称に関連する特定のタンパク質断片、および本明細書に示されるICOS同時刺激シグナル伝達領域配列と少なくとも70%、あるいは少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、好ましくは90%の配列同一性、さらに好ましくは少なくとも95%の配列同一性を共有する類似の生物学的機能を有する任意の他の分子を指す。ICOS同時刺激シグナル伝達領域の非限定的な例の配列は、下記に示す例示的なポリヌクレオチド配列である米国特許出願公開第2015/0017141A1号に提供される。
ICOS同時刺激シグナル伝達領域、配列番号47:
ACAAAAAAGA AGTATTCATC CAGTGTGCAC GACCCTAACG GTGAATACAT GTTCATGAGA GCAGTGAA CA CAGCCAAAAA ATCCAGACTC ACAGATGTGA CCCTA
【0052】
本明細書中で使用される場合、「OX40同時刺激シグナル伝達領域」という用語は、この名称に関連する特定のタンパク質断片、および本明細書に示されるOX40同時刺激シグナル伝達領域配列と少なくとも70%、あるいは少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、あるいは90%の配列同一性、あるいは少なくとも95%の配列同一性を共有する類似の生物学的機能を有する任意の他の分子を指す。OX40同時刺激シグナル伝達領域の非限定的な例の配列は、米国特許出願公開第2012/20148552A1号に開示されており、以下に提供される例示的な配列を含む。
OX40同時刺激シグナル伝達領域、配列番号48:
AGGGACCAG AGGCTGCCCC CCGATGCCCA CAAGCCCCCT GGGGGAGGCA GTTTCCGGAC CCCCATCCAA GAGGAGCAGG CCGACGCCCA CTCCACCCTG GCCAAGATC
【0053】
本明細書で使用される場合、「CD3ゼータシグナル伝達ドメイン」という用語は、この名称に関連する特定のタンパク質断片、および本明細書に示されるCD3ゼータシグナル伝達ドメイン配列と少なくとも70%、あるいは少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、あるいは90%の配列同一性、あるいは少なくとも95%の配列同一性を共有する類似の生物学的機能を有する任意の他の分子を指す。CD3ゼータシグナル伝達ドメインの例示的な配列は、米国出願第13/826,258号(米国特許出願公開第2013/0266551号として公開)に示されている。CD3ゼータシグナル伝達ドメインに関連する配列を以下のとおり列挙する(配列番号41):
RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR、およびその等価物。
【0054】
本明細書で使用される場合、「T細胞」という用語は、胸腺において成熟する種類のリンパ球を指す。T細胞は、細胞媒介免疫において重要な役割を果たし、細胞表面上のT細胞受容体の存在によって、B細胞などの他のリンパ球と識別される。
【0055】
本明細書で使用される場合、「NK細胞」という用語は、ナチュラルキラー細胞としても知られており、骨髄に由来し、かつ自然免疫系において重要な役割を果たすリンパ球の一種を指す。NK細胞は、抗体および主要組織適合性複合体が細胞表面に存在しない場合でも、ウイルス感染細胞、腫瘍細胞または他のストレス細胞に対して迅速な免疫応答を提供する。
【0056】
本明細書で使用される場合、「核酸配列」および「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかの任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指して交換可能に使用される。したがって、この用語には、限定するものではないが、一本鎖、二本鎖または複数鎖のDNAもしくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、またはプリンおよびピリミジン塩基を含むポリマー、または他の天然の、化学的にもしくは生化学的に修飾された、非天然の、または誘導体化されたヌクレオチド塩基が含まれる。
【0057】
核酸配列に適用される「コードする」という用語は、その天然の状態で、または当業者に周知の方法によって操作された場合にポリペプチドを「コードする」と言われ、ポリペプチドおよび/またはその断片のmRNAを産生するために転写および/または翻訳され得るポリヌクレオチドを指す。アンチセンス鎖はそのような核酸の相補鎖であり、コード配列はそこから推定され得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、シグナルペプチドまたはシグナルポリペプチドという用語は、新たに合成された分泌または膜ポリペプチドまたはタンパク質のN末端に通常存在するアミノ酸配列を意図する。それは、ポリペプチドを、細胞膜を横切ってまたは細胞膜の中に向けるように作用し、その後、除去される。そのような例は、当該技術分野において周知である。非限定的な例は、米国特許第8,853,381号および第5,958,736号に記載されているものである。
【0059】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、プラスミド、ウイルス、コスミド、ファージ、BAC、YACなどを含むがこれらに限定されない、異なる宿主間の移動のために設計された核酸構築物を指す。いくつかの実施形態において、プラスミドベクターは、市販のベクターから調製してもよい。他の実施形態では、ウイルスベクターは、当技術分野で公知の技術に従って、バキュロウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、AAVなどから産生され得る。一実施形態では、ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。
【0060】
本明細書で使用される場合、「単離された細胞」という用語は、一般に、組織の他の細胞から実質的に分離された細胞をいう。この用語には、原核細胞および真核細胞が含まれる。
【0061】
「免疫細胞」としては、例えば、骨髄で産生される造血幹細胞(HSC)に由来する白血球、リンパ球(T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞)および骨髄由来の細胞(好中球、好酸球、好塩基球、単球、マクロファージ、樹状細胞)が含まれる。「T細胞」は、Tヘルパー細胞(CD4+細胞)、細胞傷害性T細胞(CD8+細胞)、ナチュラルキラーT細胞、T調節細胞(Treg)およびガンマデルタT細胞を含むCD3を発現する全ての種類の免疫細胞を含む。「細胞傷害性細胞」としては、CD8+T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、および好中球(細胞は細胞傷害性応答を媒介し得る)を含む。
【0062】
キメラ抗原受容体細胞の産生に適用される「形質導入する」または「形質導入」という用語は、外来ヌクレオチド配列が細胞に導入されるプロセスを指す。いくつかの実施形態では、この形質導入はベクターを介して行われる。
【0063】
本明細書で使用される場合、細胞に関して「自己」という用語は、単離され、同じ対象(レシピエントまたは宿主)に注入して戻された細胞を指す。「同種異系」とは、非自己細胞を指す。
【0064】
「有効量」または「有効な量」とは、哺乳動物または他の対象の処置のために投与された場合、疾患のそのような治療を行うのに十分である作用物質(例えば、HLA-DR CAR細胞)の量または2つまたはそれ超の作用物質の組み合わせ量を指す。「有効量」とは、作用物質、疾患およびその重症度および処置される対象の年齢、体重などに依存して変化し得る。
【0065】
「固形腫瘍」とは、通常は嚢胞または液体領域を含有しない異常な塊の組織である。固形腫瘍は、良性であっても、または悪性であり得る。異なる種類の固形腫瘍は、それらを形成する種類の細胞に命名される。固形腫瘍の例としては、肉腫、癌腫、およびリンパ腫が挙げられる。
【0066】
「B細胞リンパ腫または白血病」という用語は、リンパ系または骨髄に関して形成される種類のがんを指し、悪性形質転換を受けて、がん内の細胞を、宿主生物に対して身体の他の部分に侵入または伝播する能力で異常にする。
【0067】
本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、組成物および方法が列挙された要素を含むが、他の要素を除外しないことを意味するものとする。組成物および方法を定義するために使用される場合、「から本質的になる」とは、意図された使用のために、任意の本質的に重要な意味の他の要素を組合せに含まないことを意味するものとする。例えば、本明細書で定義される要素から本質的になる組成物は、微量汚染物質を単離および精製方法ならびに薬学的に許容される担体、例えばリン酸緩衝食塩水、防腐剤などを除外しない。「からなる」とは、他の成分の微量元素より多くを排除すること、および本明細書に開示される組成物を投与するための実質的な方法ステップを排除することを意味する。これらの移行用語の各々によって定義される態様は、本開示の範囲内にある。
【0068】
本明細書で使用される場合、「検出可能なマーカー」という用語は、検出可能なシグナルを直接的または間接的に産生することができる少なくとも1つのマーカーを指す。このマーカーの非網羅的な列挙としては、検出可能なシグナルを、例えば比色、蛍光、発光、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、発色団、例えば蛍光性、発光性色素、電子顕微鏡によって検出される電子密度を有する基によって、またはそれらの電気的特性、例えば、伝導度、電流測定、電圧測定、インピーダンス、検出可能な基、例えばその分子が物理的および/または化学的性質における検出可能な修飾を誘導するのに十分な大きさであるような基によって、生じる酵素が挙げられ、このような検出は、光学的方法、例えば、回折、表面プラズモン共鳴、表面変動、接触角変化、あるいは物理的方法、例えば、原子力分光法、トンネル効果または32P、35Sもしくは125Iなどの放射性分子によって達成され得る。
【0069】
本明細書で使用される場合、「精製マーカー」という用語は、精製または識別に有用な少なくとも1つのマーカーを指す。このマーカーの非網羅的なリストとしては、His、lacZ、GST、マルトース結合タンパク質、NusA、BCCP、c-myc、CaM、FLAG、GFP、YFP、チェリー(cherry)、チオレドキシン、ポリ(NANP)、V5、Snap、HA、キチン結合タンパク質、Softag1、Softag3、Strep、またはSタンパク質が挙げられる。適切な直接的または間接的な蛍光マーカーは、FLAG、GFP、YFP、RFP、dTomato、チェリー、Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7、DNP、AMCA、ビオチン、ジゴキシゲニン、タムラ、テキサスレッド、ローダミン、Alexa fluor、FITC、TRITCまたは任意の他の蛍光色素またはハプテンを含む。
【0070】
本明細書で使用される場合、「発現」という用語は、ポリヌクレオチドがmRNAに転写されるプロセスおよび/または転写されたmRNAが続いてペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質に翻訳されるプロセスを指す。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現は、真核細胞におけるmRNAのスプライシングを含み得る。遺伝子の発現レベルは、細胞または組織試料中のmRNAまたはタンパク質の量を測定することによって決定され得る。一態様では、1つの試料由来の遺伝子の発現レベルは、対照または参照試料由来のその遺伝子の発現レベルと直接比較してもよい。別の態様では、ある試料からの遺伝子の発現レベルを、化合物の投与後の同じ試料からのその遺伝子の発現レベルと直接比較してもよい。
【0071】
本明細書で使用される場合、「相同性」または「同一」、パーセント「同一性」または「類似性」とは、2つまたはそれ超の核酸またはポリペプチド配列の文脈で使用される場合、2つまたはそれ超の配列または小配列であって、同一であるか、あるいは、特定の領域(例えば、本明細書に記載される抗体をコードするヌクレオチド配列または本明細書に記載の抗体のアミノ酸配列)に対して、同じ、例えば、少なくとも60%の同一性、好ましくは少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれより高い同一性であるヌクレオチドまたはアミノ酸残基の特定の割合を有する、2つまたはそれ超の配列または小配列を指す。相同性は、比較のためにアラインメントされ得る各配列の位置を比較することによって決定され得る。比較される配列中の位置が同じ塩基またはアミノ酸によって占有されるならば、その分子はその位置で相同である。配列間の相同性の程度は、配列によって共有される一致または相同位置の数の関数である。アラインメントおよびパーセント相同性または配列同一性は、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、1987年)補遺30巻、セクション7.7.18、表7.7.1に記載されているものなどの、当技術分野で公知のソフトウェアプログラムを使用して決定され得る。好ましくは、デフォルトパラメータを、アラインメントのために使用する。好ましいアラインメントプログラムは、デフォルトパラメータを使用するBLASTである。具体的には、好ましいプログラムは、以下のデフォルトパラメータを使用するBLASTNおよびBLASTPである:遺伝子コード(Genetic code)=標準(standard);フィルター(filter)=なし(none);鎖(strand)=両方(both);カットオフ(cutoff)=60;期待値(expect)=10;行列(Matrix)=BLOSUM62;表示(Descriptions)=50配列(50 sequences);並べ替え(sort by)=HIGH SCORE;データベース(Databases)=非冗長(non-redundant)、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+SwissProtein+SPupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、以下のインターネットアドレスで見ることができる:ncbi.nlm.nih.gov/cgi-bin/BLAST。「相同性」または「同一」、パーセント「同一性」または「類似性」という用語はまた、試験配列の相補性を指すか、またはそれに対して適用され得る。この用語はまた、欠失および/または付加を有する配列、ならびに置換を有する配列を含む。本明細書に記載されるように、好ましいアルゴリズムは、ギャップ等を説明し得る。好ましくは、同一性は、長さが少なくとも約25のアミノ酸もしくはヌクレオチドである領域か、またはより好ましくは長さが少なくとも50~100アミノ酸またはヌクレオチドである領域にわたって存在する。「無関係」または「非相同」配列は、本明細書中に開示される配列のうちの1つと40%未満の同一性または25%未満の同一性を共有する。
【0072】
「第1選択」または「第2選択」または「第3選択」という語句は、患者が受けた処置の順序を指す。第1選択療法のレジメンとは、第1に与えられる処置であるが、第2または第3選択療法は、それぞれ、第1選択療法後または第2選択療法後に与えられる。National Cancer Instituteは、第1選択療法を「疾患または状態の第1の処置」と定義している。がん患者では、一次処置は、外科手術、化学療法、放射線療法、またはこれらの療法の組合せであってもよい。第1選択療法はまた、当業者には「一次療法および一次処置」と呼ばれる。2008年5月1日に最後に訪れたNational Cancer Instituteのウェブサイトwww.cancer.govを参照のこと。代表的には、患者には、その患者が第1選択療法に対して陽性の臨床的応答示さなかったか、または無症状応答であるか、または第1選択療法を停止したので、引き続く化学療法レジメンを与えられる。
【0073】
一態様では、抗体の「等価物」または「生物学的等価物」という用語は、ELISAまたは他の適切な方法によって測定されるように、そのエピトープタンパク質またはその断片に選択的に結合する抗体の能力を意味する。生物学的に等価な抗体としては、限定するものではないが、参照抗体と同じエピトープに結合する抗体、ペプチド、抗体断片、抗体改変体、抗体誘導体および抗体模倣物が挙げられる。
【0074】
本開示がポリペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、抗体またはその断片に関連する場合、そのような等価物または生物学的に等価なものは、本開示の範囲内であるものとすることは、明白な記載がなく、他に意図されない限り推測されるべきである。本明細書で使用される場合、「その生物学的等価物」という用語は、参照タンパク質、抗体またはその断片、ポリペプチドまたは核酸を指す場合、「その等価物」と同義であることを意図しており、依然として所望の構造または機能性を維持している最小の相同性を有するものを意図する。本明細書に具体的に列挙されていない限り、上記のいずれもその等価物も含むことが考慮される。例えば、等価物とは、少なくとも約70%の相同性もしくは同一性、または少なくとも80%の相同性もしくは同一性、あるいは少なくとも約85%、あるいは少なくとも約90%、あるいは少なくとも約95%あるいは少なくとも98%の相同性または同一性を意図しており、参照のタンパク質、ポリペプチド、抗体またはその断片または核酸と実質的に等価な生物学的活性を示す。あるいは、ポリヌクレオチドに言及する場合、その等価物とは、ストリンジェントな条件下で参照ポリヌクレオチドまたはその相補体にハイブリダイズするポリヌクレオチドである。あるいは、ポリペプチドまたはタンパク質に言及する場合、その等価物は、ストリンジェントな条件下で、参照ポリペプチドまたはタンパク質をコードするポリヌクレオチドまたはその相補体にハイブリダイズするポリヌクレオチド由来の発現ポリペプチドまたはタンパク質である。
【0075】
別の配列に対する特定の割合(例えば、80%、85%、90%または95%)の「配列同一性」を有するポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド領域(またはポリペプチドまたはポリペプチド領域)とは、塩基(またはアミノ酸)の割合は、アラインメントされた場合、2つの配列を比較する際に同じであることを意味する。アラインメントおよびパーセント相同性または配列同一性は、当技術分野で公知のソフトウェアプログラム、例えばCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、1987年)補遺30巻、セクション7.7.18、表7.7.1に記載されるプログラムを用いて決定され得る。好ましくは、アラインメントのためにデフォルトパラメータを使用する。好ましいアライメントプログラムは、デフォルトパラメータを用いるBLASTである。具体的には、好ましいプログラムはBLASTNおよびBLASTPであり、以下のデフォルトパラメータを使用する:遺伝子コード=標準;フィルター=なし;鎖=両方;カットオフ=60;期待値=10;マトリックス=BLOSUM62;説明=50配列;並べ替え=ハイスコア(HIGH SCORE);データベース=非冗長、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+SwissProtein+SPupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、以下のインターネットアドレスで見ることができる:ncbi.nlm.nih.gov/cgi-bin/BLAST。
【0076】
「ハイブリダイゼーション」とは、1つまたは複数のポリヌクレオチドが反応して、ヌクレオチド残基の塩基間の水素結合を介して安定化される複合体を形成する反応を指す。水素結合は、ワトソン-クリック塩基対形成、フーグスティーン結合、または任意の他の配列特異的様式で起こり得る。その複合体は、二重鎖構造を形成する2本の鎖、複数鎖複合体を形成する3本またはそれ超の鎖、単一の自己ハイブリダイズ鎖、またはこれらの任意の組合せを含み得る。ハイブリダイゼーション反応は、PCR反応の開始、またはリボザイムによるポリヌクレオチドの酵素的切断のような、より広範なプロセスにおける一段階を構成し得る。
【0077】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例としては:約25℃~約37℃のインキュベーション温度;約6×SSC~約10×SSCのハイブリダイゼーション緩衝液濃度;約0%~約25%のホルムアミド濃度;約4×SSC~約8×SSCの洗浄溶液が挙げられる。中程度のハイブリダイゼーション条件の例としては、約40℃~約50℃のインキュベーション温度;約9×SSC~約2×SSCの緩衝液濃度;約30%~約50%のホルムアミド濃度;約5×SSC~約2×SSCの洗浄溶液が挙げられる。高ストリンジェンシー条件の例としては:約55℃~約68℃のインキュベーション温度;約1×SSC~約0.1×SSCの緩衝液濃度;約55%~約75%のホルムアミド濃度;約1×SSC、0.1×SSCの洗浄溶液、または脱イオン水が挙げられる。一般に、ハイブリダイゼーションのインキュベーション時間は、5分から24時間、1、2またはそれ超の洗浄ステップであり、洗浄インキュベーション時間は、約1、2または15分である。SSCは、0.15MのNaClおよび15mMのクエン酸緩衝液である。他の緩衝系を使用するSSCの等価物を使用してもよいことが理解される。
【0078】
「腫瘍組織型に対応する正常細胞」とは、腫瘍組織と同じ組織型由来の正常細胞をいう。非限定的な例は、肺腫瘍を有する患者由来の正常肺細胞、または結腸腫瘍を有する患者由来の正常結腸細胞である。
【0079】
本明細書で使用される「単離された」という用語は、他の物質を実質的に含まない分子または生物学的物質または細胞物質を指す。一態様では、「単離された」という用語は、天然の供給源に存在する、それぞれ、他のDNAもしくはRNAまたはタンパク質もしくはポリペプチド、または細胞もしくは細胞オルガネラ、または組織もしくは器官から分離された、核酸、例えばDNAもしくはRNA、またはタンパク質もしくはポリペプチド(例えば、抗体またはその誘導体)、または細胞もしくは細胞小器官、または組織もしくは器官を意味する。「単離された」という用語はまた、組換えDNA技術によって生成された時の細胞材料、ウイルス材料、または培養培地も、または化学的に合成されたときの化学的前駆体もしくは他の化学物質も実質的に含まない核酸またはペプチドを指す。さらに、「単離された核酸」とは、断片として天然に存在しない核酸断片を含み、天然の状態では見出されない核酸断片を含むことを意味する。「単離された」という用語はまた、本明細書において、他の細胞タンパク質から単離されたポリペプチドを指し、精製ポリペプチドおよび組換えポリペプチドの両方を包含することを意味する。「単離された」という用語はまた、本明細書では、他の細胞または組織から単離されている細胞または組織を指し、培養および操作された細胞または組織の両方を包含することを意味する。
【0080】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、Bリンパ球の単一クローンによって、または単一抗体の軽鎖および重鎖遺伝子がトランスフェクトされた細胞によって産生される抗体を指す。モノクローナル抗体は、例えばハイブリッド抗体形成細胞を骨髄腫細胞と免疫脾臓細胞との融合から作製することにより、当業者に公知の方法によって産生される。モノクローナル抗体には、ヒト化モノクローナル抗体が含まれる。
【0081】
「タンパク質」、「ペプチド」および「ポリペプチド」という用語は、2つまたはそれ超のサブユニットアミノ酸、アミノ酸類似体またはペプチド模倣体の化合物を指して、交換可能に、そしてそれらの最も広い意味で使用される。サブユニットは、ペプチド結合によって連結されていてもよい。別の態様では、サブユニットは、他の結合、例えばエステル、エーテルなどによって連結されていてもよい。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含有しなければならず、タンパク質またはペプチドの配列を含み得るアミノ酸の最大数に制限はない。本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、グリシンならびにDおよびL光学異性体、アミノ酸類似体およびペプチド模倣体の両方を含む天然および/または非天然または合成アミノ酸のいずれかを指す。
【0082】
「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドまたはその類似体のいずれかの任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有することができ、既知または未知の任意の機能を果たし得る。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子断片(例えば、プローブ、プライマー、ESTまたはSAGEタグ)、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、RNAi、リボザイム、cDNA、組み換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブおよびプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体などの修飾ヌクレオチドを含んでもよい。存在する場合、ヌクレオチド構造の改変は、ポリヌクレオチドのアセンブリの前に付与されても、または後に付与されてもよい。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断されてもよい。ポリヌクレオチドは、重合の後、例えば標識成分とのコンジュゲーションによりさらに修飾されてもよい。この用語はまた、二本鎖および一本鎖分子の両方を指す。特に明記されるか、または必要でない限り、ポリヌクレオチドであるこの技術の任意の態様は、二本鎖形態および二本鎖形態を構成することが公知であるかまたは予測される二つの相補的一本鎖形態の両方を包含する。
【0083】
本明細書で使用される場合、「精製された」という用語は、絶対純度を必要としない;そうではなく、それは相対的な用語として意図されている。したがって、例えば、精製された核酸、ペプチド、タンパク質、生物学的複合体または他の活性化合物は、タンパク質または他の汚染物質から全体的または部分的に単離されたものである。一般に、本開示内で使用するための実質的に精製されたペプチド、タンパク質、生物学的複合体または他の活性化合物は、ペプチド、タンパク質、生物学的複合体または他の活性化合物と、薬学的担体、賦形剤、緩衝液、吸収促進剤、安定剤、防腐剤、アジュバントまたは他の補助成分との混合または製剤化の前に調製物中に存在する全ての高分子種の80%超を、治療的投与のための完全な医薬製剤中に含む。より代表的には、ペプチド、タンパク質、生物学的複合体または他の活性化合物は、他の製剤成分と混合する前に、精製調製物中に存在する全ての高分子種の90%超、しばしば95%超に相当するように精製される。他の場合には、精製された調製物は本質的に均一であってもよく、他の高分子種は従来の技術によって検出可能ではない。
【0084】
本明細書で使用される場合、「特異的結合」という用語は、少なくとも10-6Mの結合親和性を有する抗体と抗原との間の接触を意味する。特定の態様において、抗体は、少なくとも約10-7M、好ましくは10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、または10-12Mの親和性で結合する。
【0085】
本明細書で使用される場合、「組換えタンパク質」という用語は、組換えDNA技術によって産生されるポリペプチドであって、一般に、ポリペプチドをコードするDNAが、適切な発現ベクターに挿入され、これらが次に用いられて、異種タンパク質を産生するために宿主細胞を形質転換する、ポリペプチドを指す。
【0086】
本明細書で使用される場合、対象における疾患の「処置する」または「処置」という用語は、(1)疾患の素因があるか、またはその疾患の症状がまだ示されていない対象において、その症状または疾患を予防すること;(2)疾患を阻害するか、もしくはその発症を阻止すること;または(3)疾患または疾患の症状を緩和するかまたは退行させることを指す。当技術分野で理解されているように、「処置」という用語は、臨床結果を含む有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチである。本発明の技術の目的のために、有益なまたは所望の結果としては、限定するものではないが、検出可能であっても検出不能であっても、1つまたは複数の症状の軽減または緩和、状態(疾患を含む)の程度の低減、ある状態(疾患を含む)の安定化された(すなわち、悪化していない)状態、状態(疾患を含む)の遅延または緩徐化、状態(疾患を含む)の進行、緩和または寛解、状態および寛解(部分的であろうと全体的であろうと)の1つまたは複数を含み得る。疾患ががんである場合、以下の臨床エンドポイントは、処置の非限定的な例である:腫瘍負荷の減少、腫瘍成長の遅延、全生存期間の延長、腫瘍進行までのより長い時間、転移の阻害または腫瘍の転移の減少。
【0087】
本明細書で使用される場合、細胞、組織、または器官に関する「過剰発現」という用語は、対照細胞、対照の組織または器官において産生される量よりも多い量のタンパク質を発現する。過剰発現されるタンパク質は、宿主細胞に対して内在性であっても宿主細胞に対して外因性であってもよい。
【0088】
本明細書で使用される場合、「リンカー配列」という用語は、1~10個、あるいは8個のアミノ酸、あるいは6個のアミノ酸、あるいは5個のアミノ酸を含む任意のアミノ酸配列であって、これが、1~10回、あるいは約8回、あるいは約6回、あるいは約5回、または4回、あるいは3回、または代わりに2回反復され得るアミノ酸配列に関する。例えば、リンカーは3回繰り返すペンタペプチドからなる15個までのアミノ酸残基を含んでもよい。リンカー配列の非限定的な例は、当技術分野で公知であり、例えば、GGGGSGGGGSGGGG(およびその等価物)(配列番号49);トリペプチドEFM;またはGlu-Phe-Gly-Ala-Gly-Leu-Val-Leu-Gly-Gly-Gln-Phe-Met(配列番号50)およびその各々の等価物である。一態様では、リンカー配列は、gly-gly-gly-gly-ser(配列番号52)の3つのコピーおよびその等価物を含む(グリシン4セリン)3可撓性ポリペプチドリンカー(配列番号51)である。
【0089】
本明細書で使用される場合、「エンハンサー」という本明細書に用いられる用語は、発現される核酸配列に関連して核酸配列の位置および配向に関係なく核酸配列の転写を増強、改善または改良する配列エレメントを示す。エンハンサーは、単一のプロモーターからの転写を増強しても、または同時に複数のプロモーターからの転写を増強してもよい。転写を改善するこの機能性が保持されるか、または実質的に保持されている限り(例えば、野生型活性の、すなわち全長配列の活性の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%)、野生型エンハンサー配列の任意の短縮型、突然変異型、または他の改変された改変体もまた、上記の定義内にある。
【0090】
本明細書で使用される「プロモーター」という用語は、遺伝子などのコード配列の発現を調節する任意の配列を指す。プロモーターは、例えば、構成的であっても、誘導性であっても、抑制性であっても、または組織特異的であってもよい。「プロモーター」とは、開始および転写速度が制御される、ポリヌクレオチド配列の領域である制御配列である。それは、RNAポリメラーゼおよび他の転写因子などの調節タンパク質および分子が結合し得る遺伝的エレメントを含有してもよい。
【0091】
本明細書で使用する場合、「WPRE」または「ウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後調節エレメント」という用語は、この名称、および本明細書に示されるWPRE配列と少なくとも70%、あるいは少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、好ましくは90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を共有する類似の生物学的機能を有する任意の他の分子に関連する特定のヌクレオチド断片を指す。例えば、WPREは、ウッドチャック肝炎ウイルスゲノム配列(GenBank受託番号J04514)に存在するヒトB型肝炎ウイルス転写後調節エレメント(HBVPRE)と類似の領域であって、このゲノム配列の1093位から1684位までの592個のヌクレオチドが転写後調節領域に対応する領域を指す(Donello, J.E.ら(1998年)Journal of Virology 72巻:5085~5092頁)。レトロウイルスベクターを用いた分析によって、目的の遺伝子の3’末端非翻訳領域に挿入されたWPREが、産生されるタンパク質の量を5~8倍増大させることが明らかになった。WPREの導入はmRNA分解を抑制することも報告されている(Zufferey, R.ら(1999年)Journal of Virology 73巻:2886~2892頁)。広義には、mRNAを安定化することによってアミノ酸翻訳の効率を高めるWPREのようなエレメントもエンハンサーであると考えられる。
略語の列挙
CAR:キメラ抗原受容体
HLA:組織適合性リンパ球抗原
Ip:腹腔内
IRES:内部リボソーム侵入部位
MFI:平均蛍光強度
MOI:感染多重度
PBMC:末梢血単核細胞
PBS:リン酸緩衝食塩水
scFv:一本鎖可変断片
WPRE:ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント
【0092】
開示を実施するための形態
遺伝子操作されたキメラ抗原受容体(CAR)T細胞による自己治療を用いるB細胞リンパ腫および白血病において最近、前例のない結果が得られたことから(Maude, S.L.ら(2014年)New Engl. J. Med. 371巻:1507~1517頁;Porter, D.L.ら(2011年)New Engl. J. Med. 365巻:725~733頁)、多くの研究所が、卵巣がん、前立腺がんおよび膵臓腫瘍を含む固形腫瘍にこのアプローチを適用し始めている。CAR修飾T細胞は、モノクローナル抗体のHLA非依存性標的特異性と、活性化T細胞の細胞溶解活性、増殖およびホーミング特性とを組み合わせるが、チェックポイント抑制に応答しない。抗原を発現する標的を直接殺すそれらの能力のために、CAR T細胞は、任意の抗原陽性細胞または組織に対して極めて毒性であり、そのため高度に腫瘍特異的抗体を有するCARを構築することが必要となる。今日まで、α-葉酸受容体、メソテリン、およびMUC-CD、PSMAおよび他の標的に対して、ヒト固形腫瘍に対するCAR修飾T細胞が構築されてきたが、ほとんどの場合、正常組織において抗原のある程度のオフターゲット発現がある。これらの構築物は、固形腫瘍に対して使用され得るCAR T細胞構築の新しい標的および方法を識別するためのさらなる研究の必要性が強調される患者では、同じ例外的結果は示さなかった。
【0093】
したがって、本開示は、HLA-DRに特異的な抗体、ならびにその使用および産生に関連する方法および組成物を提供する。加えて、本開示は、HLA-DRに特異的な抗原結合性ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)として提供され、いくつかの態様では、Lym-1およびLym-2抗体の抗原結合性ドメイン、ならびにその使用および産生に関連する方法および組成物である。
【0094】
抗体およびその使用
I.組成物
抗体の一般的な構造は当技術分野で公知であり、ここでは簡単に要約する。免疫グロブリンモノマーは、ジスルフィド結合によって連結された2つの重鎖および2つの軽鎖を含む。各重鎖は、ジスルフィド結合を介して直接結合している軽鎖の1つと対になっている。各重鎖は、定常領域(抗体のアイソタイプに依存して変化する)および可変領域を含む。可変領域は、CDRH1、CDRH2およびCDRH3と称され、かつフレームワーク領域内で支持される3つの超可変領域(または相補性決定領域)を含む。各軽鎖は、定常領域および可変領域を含み、可変領域は、重鎖の可変領域と類似の様式でフレームワーク領域によって支持された3つの超可変領域(CDRL1、CDRL2およびCDRL3と称される)を含む。
【0095】
重鎖および軽鎖の各対の超可変領域は互いに協働して、標的抗原に結合することができる抗原結合部位を提供する。重鎖および軽鎖の対の結合特異性は、重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3の配列によって定義される。したがって、特定の結合特異性を生じる一組のCDR配列(すなわち、重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3の配列)が一旦決定されれば、CDR配列のセットは、原則として、同一の抗原結合特異性を有する異なる抗体を提供するために、任意の抗体定常領域と連結された任意の他の抗体フレームワーク領域内の適切な位置に挿入され得る。
【0096】
一態様では、本開示は、重鎖(HC)免疫グロブリン可変ドメイン配列および軽鎖(LC)免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む単離抗体を提供し、ここで重鎖および軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は、ヒトHLA-DRのエピトープに結合する抗原結合部位を形成する。
【0097】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、以下の配列(i)GFSLTSYG(配列番号1)、(ii)GFTFSNYW(配列番号2)、またはその各々の等価物のいずれか1つで開始し、カルボキシ末端の追加の50アミノ酸、あるいは約40アミノ酸、あるいは約30アミノ酸、あるいは約20アミノ酸、あるいは約10個のアミノ酸、あるいは約5個のアミノ酸、あるいは約4個または3個、または2個または1個のアミノ酸が続くアミノ酸配列を含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなるCDRH1配列を含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、以下の配列(i)IWSDGST(配列番号3)、(ii)IRFKSHNYAT(配列番号4)、またはその各々の等価物のいずれか1つで開始し、カルボキシ末端の追加の50アミノ酸、あるいは約40アミノ酸、あるいは約30アミノ酸、あるいは約20アミノ酸、あるいは約10個のアミノ酸、あるいは約5個のアミノ酸、あるいは約4個または3個、または2個または1個のアミノ酸が続くアミノ酸配列を含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなるCDRH2配列を含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、以下の配列(i)ASHYGSTLAFAS(配列番号5)、(ii)TRRIGNSDYDWWYFDV(配列番号6)、またはその各々の等価物のいずれか1つで開始し、カルボキシ末端の追加の50アミノ酸、あるいは約40アミノ酸、あるいは約30アミノ酸、あるいは約20アミノ酸、あるいは約10個のアミノ酸、あるいは約5個のアミノ酸、あるいは約4個または3個、または2個または1個のアミノ酸が続くアミノ酸配列を含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなるCDRH3配列を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、以下に記載のポリヌクレオチド配列:
CAGGTGCAGCTGAAGGAGTCAGGACCTGGCCTGGTGGCGCCCTCACAGAGCCTGTCCATCACATGCACCATCTCAGGGTTCTCATTAACCAGCTATGGTGTACACTGGGTTCGCCAGCCTCCAGGAAAGGGTCTGGAGTGGCTGGTAGTGATATGGAGTGATGGAAGCACAACCTATAATTCAGCTCTCAAATCCAGACTGAGCATCAGCAAGGACAACTCCAAGAGCCAAGTTTTCTTAAAAATGAACAGTCTCCAAACTGATGACACAGCCATATACTACTGTGCCAGTCACTACGGTAGTACCCTTGCCTTTGCTTCCTGGGGCCACGGGACTCTGGTCACTGTCTCTGCA(配列番号7)によってコードされるポリペプチドまたはその抗原結合断片またはその各々の等価物を含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなる。
【0101】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、アミノ酸配列:
QLKESGPGLVAPSQSLSITCTISGFSLTSYGVHWVRQPPGKGLEWLVVIWSDGSTTYNSALKSRLSISKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTAIYYCASHYGSTLAFASWGHGTLVTVSA(配列番号8)、またはその抗原結合性断片、またはその各々の等価物を含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなる。
【0102】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、以下に記載のポリヌクレオチド配列:
GAAGTGCAGCTTGAGGAGTCTGGAGGAGGCTTGGTGCAACCTGGAGGCTCCATGAAACTCTCCTGTGTTGCCTCTGGATTCACTTTCAGTAACTATTGGATGAACTGGGTCCGCCAGTCTCCAGAGAAGGGGCTTGAGTGGGTTGCTGAAATTAGATTTAAATCTCATAATTATGCAACACATTTTGCGGAGTCTGTGAAAGGGAGGTTCACCATCTCAAGAGATGATTCCAAAAGTAGTGTCTACCTGCAAATGAACAACTTAAGAGCTGAAGACACTGGCATTTATTACTGTACCAGGAGGATAGGAAACTCTGATTACGACTGGTGGTACTTCGATGTCTGGGGCGCAGGGACCTCAGTCACCGTCTCCTCAGCTAGC(配列番号9)によってコードされるポリペプチド、またはその抗原結合性断片またはその各々の等価物を含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなる。
【0103】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、アミノ酸配列:
EVQLEESGGGLVQPGGSMKLSCVASGFTFSNYWMNWVRQSPEKGLEWVAEIRFKSHNYATHFAESVKGRFTISRDDSKSSVYLQMNNLRAEDTGIYYCTRRIGNSDYDWWYFDVWGAGTSVTVSSAS(配列番号10)、またはその抗原結合性断片、またはその各々の等価物を含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなる。
【0104】
いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、以下の配列(i)VNIYSY(配列番号11)、(ii)QNVGNN(配列番号12)、またはその各々の等価物のいずれか1つで開始し、カルボキシ末端の追加の50アミノ酸、あるいは約40アミノ酸、あるいは約30アミノ酸、あるいは約20アミノ酸、あるいは約10個のアミノ酸、あるいは約5個のアミノ酸、あるいは約4個または3個、または2個または1個のアミノ酸が続くアミノ酸配列を含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなるCDRL1配列を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、(i)NAK(配列番号13)、(ii)SAS(配列番号14)、またはその各々の等価物で開始し、カルボキシ末端の追加の50アミノ酸、あるいは約40アミノ酸、あるいは約30アミノ酸、あるいは約20アミノ酸、あるいは約10個のアミノ酸、あるいは約5個のアミノ酸、あるいは約4個または3個、または2個または1個のアミノ酸が続くアミノ酸配列を含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなるCDRL2配列を含む。
【0106】
他の実施形態では、軽鎖可変領域は、(i)QHHYGTFT(配列番号15)、(ii)QQYNTYPFT(配列番号16)、またはその各々の等価物を開始し、カルボキシ末端の追加の50アミノ酸、あるいは約40アミノ酸、あるいは約30アミノ酸、あるいは約20アミノ酸、あるいは約10個のアミノ酸、あるいは約5個のアミノ酸、あるいは約4個または3個、または2個または1個のアミノ酸が続くアミノ酸配列を含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなるCDRL3配列を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、ポリヌクレオチド配列:
GACATCCAGATGACTCAGTCTCCAGCCTCCCTATCTGCATCTGTGGGAGAAACTGTCACCATCATATGTCGAGCAAGTGTGAATATTTACAGTTATTTAGCATGGTATCAGCAGAAACAGGGAAAATCTCCTCAGCTCCTGGTCTATAATGCCAAAATCTTAGCAGAAGGTGTGCCATCAAGGTTCAGTGGCAGTGGATCAGGCACACAGTTTTCTCTGAAGATCAACAGCCTGCAGCCTGAAGATTTTGGGAGTTATTACTGTCAACATCATTATGGTACATTCACGTTCGGCTCGGGGACAAAGTTGGAAATAAAA(配列番号17)によってコードされるポリペプチド、またはその抗原結合性断片、またはその各々の等価物を含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなる。
【0108】
いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列:
DIQMTQSPASLSASVGETVTIICRASVNIYSYLAWYQQKQGKSPQLLVYNAKILAEGVPSRFSGSGSGTQFSLKINSLQPEDFGSYYCQHHYGTFTFGSGTKLEIK(配列番号18)、またはその抗原結合性断片またはその各々の等価物を含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなる。
【0109】
いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、ポリヌクレオチド配列:
GACATTGTGATGACCCAGTCTCACAAATTCATGTCCACATCAGTAGGAGACAGGGTCAGCGTCACCTGCAAGGCCAGTCAGAATGTGGGTAATAATGTAGCCTGGTATCAACAGAAACCAGGGCAATCTCCTAAAGTACTGATTTACTCGGCATCCTACCGGTACAGTGGAGTCCCTGATCGCTTCACAGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGTAATGTGCAGTCTGAAGACTTGGCAGAGTATTTCTGTCAGCAATATAACACCTATCCATTCACGTTCGGCTCGGGGACAAAGTTGGAAATAAAA(配列番号19)によってコードされるポリペプチド、またはその抗原結合性断片、またはその各々の等価物を含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれらからなる。
【0110】
いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、アミノ酸配列:
DIVMTQSHKFMSTSVGDRVSVTCKASQNVGNNVAWYQQKPGQSPKVLIYSASYRYSGVPDRFTGSGSGTDFTLTISNVQSEDLAEYFCQQYNTYPFTFGSGTKLEIK(配列番号20)、またはその抗原結合性断片またはその各々の等価物を含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなる。
【0111】
本発明の技術の別の態様において、単離された抗体は、以下の特徴:
(a)軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は、開示される軽鎖配列のいずれかの軽鎖可変ドメインのCDRと少なくとも85%同一である1つまたは複数のCDRを含む;
(b)重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は、開示された重鎖配列のいずれかの重鎖可変ドメインのCDRと少なくとも85%同一である1つまたは複数のCDRを含む;
(c)軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は、開示された軽鎖配列のいずれかの軽鎖可変ドメインと少なくとも85%同一である;
(d)HC免疫グロブリン可変ドメイン配列は、開示された軽鎖配列のいずれかの重鎖可変ドメインと少なくとも85%同一である;および
(e)抗体は、開示された配列のいずれかによって結合されたエピトープと重複するエピトープに結合する
のうちの1つまたは複数を含む。
【0112】
開示されたCDR配列および重鎖可変配列および軽鎖可変配列を含む例示的な抗体は、それぞれ表1および表2に開示される。
【表1】
【表2】
【0113】
一態様では、本開示は、Lym-1およびLym-2からなる群より選択される抗体と少なくとも85%同一である単離抗体を提供する。
【0114】
一態様では、本開示は、Lym-1のCDRを含む単離された抗体を提供する。一態様では、本開示は、Lym-1と少なくとも85%同一である単離された抗体を提供する。
【0115】
一態様では、本開示は、Lym-2のCDRを含む単離された抗体を提供する。一態様では、本開示は、Lym-2と少なくとも85%同一である単離された抗体を提供する。
【0116】
本明細書で提供される抗体のいくつかの態様では、HC可変ドメイン配列は、Lym-1の可変ドメイン配列を含むか、それから本質的になるか、またはさらにそれからなり、LC可変ドメイン配列は、Lym-1の可変ドメイン配列を含むか、それから本質的になるか、またはさらにそれからなる。
【0117】
本明細書で提供される抗体のいくつかの態様では、HC可変ドメイン配列は、Lym-2の可変ドメイン配列を含むか、それから本質的になるか、またはさらにそれからなり、LC可変ドメイン配列は、Lym-2の可変ドメイン配列を含むか、それから本質的になるか、またはさらにそれからなる。
【0118】
本明細書で提供される抗体のいくつかの態様において、抗体は、10-4M、10-5M、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、または10-12M未満の解離定数(KD)でヒトHLA-DRに結合する。本明細書で提供される抗体のいくつかの態様において、抗原結合部位は、ヒトHLA-DRに特異的に結合する。
【0119】
本明細書で提供される抗体のいくつかの態様において、抗体は可溶性Fabである。
【0120】
本明細書で提供される抗体のいくつかの態様において、HCおよびLC可変ドメイン配列は、同じポリペプチド鎖の構成要素である。本明細書で提供される抗体のいくつかの態様において、HCおよびLC可変ドメイン配列は、異なるポリペプチド鎖の構成要素である。
【0121】
本明細書で提供される抗体のいくつかの態様において、抗体は全長抗体である。
【0122】
本明細書で提供される抗体のいくつかの態様において、抗体はモノクローナル抗体である。
【0123】
本明細書で提供される抗体のいくつかの態様において、抗体は、キメラまたはヒト化されている。
【0124】
本明細書で提供される抗体のいくつかの態様では、抗体は、Fab、F(ab)’2、Fab’、scFv、およびFvからなる群より選択される。
【0125】
本明細書で提供される抗体のいくつかの態様において、抗体はFcドメインを含む。本明細書で提供される抗体のいくつかの態様において、抗体はウサギ抗体である。本明細書で提供される抗体のいくつかの態様では、抗体はヒトもしくはヒト化抗体であるか、またはヒトにおいて非免疫原性である。
【0126】
本明細書に提供される抗体のいくつかの態様において、抗体はヒト抗体フレームワーク領域を含む。
【0127】
他の態様では、本明細書で提供される抗体のCDR中の1つまたは複数のアミノ酸残基が別のアミノ酸で置換される。置換は、アミノ酸の同じファミリー内の置換であるという意味において、「保存的」であり得る。天然に存在するアミノ酸は、以下の4つのファミリーに分けられ、それらのファミリー内で保存的置換が起こる。
【0128】
1)塩基性側鎖を有するアミノ酸:リシン、アルギニン、ヒスチジン。
【0129】
2)酸性側鎖を有するアミノ酸:アスパラギン酸、グルタミン酸
【0130】
3)非荷電極性側鎖を有するアミノ酸:アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン。
【0131】
4)非極性側鎖を有するアミノ酸:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、システイン。
【0132】
別の態様では、1つまたは複数のアミノ酸残基が、抗体の1つまたは複数のCDRに付加されているかまたは欠失されている。そのような付加または欠失は、CDRのN末端もしくはC末端またはCDR内の位置で生じる。
【0133】
抗体のCDRのアミノ酸配列をアミノ酸の付加、欠失または置換によって変化させるステップにより、標的抗原に対する結合親和性の増加などの様々な効果を得てもよい。
【0134】
このような変化したCDR配列を含む本開示の抗体は、開示された抗体と類似の特異性および感度プロフィールでHLA-DRになお結合することが理解されるべきである。これは、当業者に公知であり、本明細書に簡単に記載されている結合アッセイによって試験してもよい。
【0135】
抗体の定常領域も変化されてもよい。例えば、抗体には、IgA(IgA1、IgA2)、IgD、IgE、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)またはIgMのいずれかのアイソタイプのFc領域が提供される。定常領域配列の非限定的な例としては、以下が挙げられる。
【0136】
ヒトIgD定常領域、Uniprot:P01880(配列番号21)
APTKAPDVFPIISGCRHPKDNSPVVLACLITGYHPTSVTVTWYMGTQSQPQRTFPEIQRRDSYYMTSSQLSTPLQQWRQGEYKCVVQHTASKSKKEIFRWPESPKAQASSVPTAQPQAEGSLAKATTAPATTRNTGRGGEEKKKEKEKEEQEERETKTPECPSHTQPLGVYLLTPAVQDLWLRDKATFTCFVVGSDLKDAHLTWEVAGKVPTGGVEEGLLERHSNGSQSQHSRLTLPRSLWNAGTSVTCTLNHPSLPPQRLMALREPAAQAPVKLSLNLLASSDPPEAASWLLCEVSGFSPPNILLMWLEDQREVNTSGFAPARPPPQPGSTTFWAWSVLRVPAPPSPQPATYTCVVSHEDSRTLLNASRSLEVSYVTDHGPMK、およびその等価物。
【0137】
ヒトIgG1定常領域、Uniprot:P01857(配列番号22)
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK、およびその等価物。
【0138】
ヒトIgG2定常領域、Uniprot:P01859(配列番号23)
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDISVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK、およびその等価物。
【0139】
ヒトIgG3定常領域、Uniprot:P01860(配列番号24)
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYTCNVNHKPSNTKVDKRVELKTPLGDTTHTCPRCPEPKSCDTPPPCPRCPEPKSCDTPPPCPRCPEPKSCDTPPPCPRCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFKWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTFRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESSGQPENNYNTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNIFSCSVMHEALHNRFTQKSLSLSPGK、およびその等価物。
【0140】
ヒトIgM定常領域、Uniprot:P01871(配列番号25)
GSASAPTLFPLVSCENSPSDTSSVAVGCLAQDFLPDSITLSWKYKNNSDISSTRGFPSVLRGGKYAATSQVLLPSKDVMQGTDEHVVCKVQHPNGNKEKNVPLPVIAELPPKVSVFVPPRDGFFGNPRKSKLICQATGFSPRQIQVSWLREGKQVGSGVTTDQVQAEAKESGPTTYKVTSTLTIKESDWLGQSMFTCRVDHRGLTFQQNASSMCVPDQDTAIRVFAIPPSFASIFLTKSTKLTCLVTDLTTYDSVTISWTRQNGEAVKTHTNISESHPNATFSAVGEASICEDDWNSGERFTCTVTHTDLPSPLKQTISRPKGVALHRPDVYLLPPAREQLNLRESATITCLVTGFSPADVFVQWMQRGQPLSPEKYVTSAPMPEPQAPGRYFAHSILTVSEEEWNTGETYTCVAHEALPNRVTERTVDKSTGKPTLYNVSLVMSDTAGTCY、およびその等価物。
【0141】
ヒトIgG4定常領域、Uniprot:P01861(配列番号26)
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK、およびその等価物。
【0142】
ヒトIgA1定常領域、Uniprot:P01876(配列番号27)
ASPTSPKVFPLSLCSTQPDGNVVIACLVQGFFPQEPLSVTWSESGQGVTARNFPPSQDASGDLYTTSSQLTLPATQCLAGKSVTCHVKHYTNPSQDVTVPCPVPSTPPTPSPSTPPTPSPSCCHPRLSLHRPALEDLLLGSEANLTCTLTGLRDASGVTFTWTPSSGKSAVQGPPERDLCGCYSVSSVLPGCAEPWNHGKTFTCTAAYPESKTPLTATLSKSGNTFRPEVHLLPPPSEELALNELVTLTCLARGFSPKDVLVRWLQGSQELPREKYLTWASRQEPSQGTTTFAVTSILRVAAEDWKKGDTFSCMVGHEALPLAFTQKTIDRLAGKPTHVNVSVVMAEVDGTCY、およびその等価物。
【0143】
ヒトIgA2定常領域、Uniprot:P01877(配列番号28)
ASPTSPKVFPLSLDSTPQDGNVVVACLVQGFFPQEPLSVTWSESGQNVTARNFPPSQDASGDLYTTSSQLTLPATQCPDGKSVTCHVKHYTNPSQDVTVPCPVPPPPPCCHPRLSLHRPALEDLLLGSEANLTCTLTGLRDASGATFTWTPSSGKSAVQGPPERDLCGCYSVSSVLPGCAQPWNHGETFTCTAAHPELKTPLTANITKSGNTFRPEVHLLPPPSEELALNELVTLTCLARGFSPKDVLVRWLQGSQELPREKYLTWASRQEPSQGTTTFAVTSILRVAAEDWKKGDTFSCMVGHEALPLAFTQKTIDRMAGKPTHVNVSVVMAEVDGTCY、およびその等価物。
【0144】
ヒトIgカッパ定常領域、Uniprot:P01834(配列番号29)
TVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC、およびその等価物。
【0145】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号7~10のいずれか1つと少なくとも80%同一である重鎖定常領域を含む。
【0146】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号17~20のいずれか1つと少なくとも80%同一である軽鎖定常領域を含む。
【0147】
本明細書で提供される抗体のいくつかの態様において、抗体は、Lym-1およびLym-2抗体によって結合されるエピトープに結合する。
【0148】
本明細書で提供される抗体のいくつかの態様において、HLA-DR特異的抗体は、ヒトHLA-DRとLym-1およびLym-2との結合について競合する。
【0149】
本明細書に提供される抗体のいくつかの態様では、抗体は、急速な結合および細胞取り込みおよび/または徐放を促進するための構造改変を含有する。いくつかの態様において、HLA-DR抗体は、迅速な結合および細胞取り込みおよび/または徐放を促進するために、抗体のCH2定常重鎖領域に欠失を含有する。いくつかの態様では、迅速な結合および細胞取り込みおよび/または徐放を促進するためにFab断片が使用される。いくつかの態様では、迅速な結合および細胞取り込みおよび/または徐放を促進するためにF(ab)’2断片が使用される。
【0150】
抗体、断片、およびその等価物は、担体、例えば、薬学的に許容される担体または他の作用物質と組み合わせて、使用および/または保存のための製剤を提供してもよい。
【0151】
HLA-DRに結合する抗体を生成するのに有用な、HLA-DRまたはその断片のアミノ酸配列を含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなる単離されたポリペプチドがさらに提供され、それらをコードする単離されたポリヌクレオチドも同様に提供される。一態様では、単離されたポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、標識および/または連続ポリペプチド配列(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)キャリアタンパク質)またはポリヌクレオチドの場合、ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドに作動可能に結合された配列をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、種々の担体、例えばリン酸緩衝化生理食塩水と組み合わされてもよい。単離されたポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含む、宿主細胞、例えば、原核細胞または真核細胞、例えば細菌、酵母、哺乳類(ラット、サル、ハムスターまたはヒト)がさらに提供される。宿主細胞は担体と組み合わされてもよい。
【0152】
II.組成物を調製するためのプロセス
抗体、その製造および使用は周知であり、例えばHarlow, E.およびLane, D.(1999年)Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.に開示される。抗体は、当技術分野で公知の標準的な方法を用いて生成され得る。抗体の例としては(限定するものではないが)、抗体のモノクローナル、一本鎖、および機能的断片が含まれる。そのような抗体を産生するための方法は、当技術分野で公知である;例えば、Collariniら(2009年)J. Immunol. 183巻(10号):6338~6345頁を参照のこと。
【0153】
抗体は、様々な宿主、例えば、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、ヒト、および他のものにおいて産生され得る。それらは、HLA-DRのC末端断片または単離されたポリペプチドのような、免疫原性特性を有する標的抗原またはその断片もしくはオリゴペプチドを注射することによって免疫され得る。宿主種に依存して、様々なアジュバントを加えて、これを用いて、免疫学的応答を増大させてもよい。そのようなアジュバントとしては、限定するものではないが、フロイント、水酸化アルミニウムのような鉱物ゲル、および界面活性剤、例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、およびジニトロフェノールが挙げられる。ヒトで使用されるアジュバントの中で、BCG(Bacille Calmette-Guerin)およびCorynebacterium parvumが特に有用である。この本開示はまた、単離されたポリペプチドおよびアジュバントを提供する。
【0154】
特定の態様において、本開示の抗体は、ポリクローナル、すなわち、異なるアミノ酸配列を有する複数の種類の抗HLA-DR抗体の混合物である。一態様では、ポリクローナル抗体は、異なるCDRを有する複数の種類の抗HLA-DR抗体の混合物を含む。このように、異なる抗体を産生する細胞の混合物を培養し、得られた培養物から精製された抗体を用いてもよい(国際公開第WO2004/061104号を参照のこと)。
【0155】
モノクローナル抗体産生。HLA-DRに対するモノクローナル抗体は、培養中の連続細胞株による抗体分子の産生を提供する任意の技術を用いて調製してもよい。そのような技術としては、限定するものではないが、ハイブリドーマ技術(例えば、Kohler, G.ら(1975年)Nature 256巻:495~497頁を参照のこと);トリオーマ技術;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(例えば、Kozbor, D.ら(1983年)Immunol. Today 4巻:72頁を参照のこと)およびヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBVハイブリドーマ技術(例えば、Coleら(1985年)、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss, Inc.、77~96頁を参照のこと)。ヒトモノクローナル抗体は、本技術の実施に利用されてもよく、ヒトハイブリドーマ(例えば、Cote, R.J.ら(1983年)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80巻:2026~2030頁を参照のこと)によって、またはヒトB細胞をin vitroでEpstein Barr Virusで形質転換することによって(例えば、Coleら(1985年)、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss, Inc.、77~96頁を参照のこと)産生され得る。例えば、抗体の領域をコードする核酸集団を単離してもよい。抗体の保存領域をコードする配列から誘導されたプライマーを利用するPCRを用いて、集団から抗体の一部をコードする配列を増幅し、次いで、増幅された配列から抗体またはその断片、例えば可変ドメインをコードするDNAを再構築する。このような増幅された配列はまた、ファージまたは細菌上での融合ポリペプチドの発現および提示のために、他のタンパク質(例えばバクテリオファージコートまたは細菌細胞表面タンパク質)をコードするDNAに融合してもよい。次いで、例えば、HLA-DRポリペプチド上に存在する抗原またはエピトープに対する発現された抗体またはその断片の親和性に基づいて、増幅された配列を発現させ、さらに選択または単離してもよい。あるいは、抗HLA-DRモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマは、例えば、HLA-DRのアミノ酸配列またはその断片を含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなる、単離されたポリペプチドを用いて対象を免疫すること、次いで慣用的な方法を用いてこの対象の脾臓からハイブリドーマを単離することによって調製され得る。例えば、Galfre, G.ら(1981年)Methods Enzymol. 73巻:3~46頁を参照のこと。標準的な方法を用いてハイブリドーマをスクリーニングすることは、種々の特異性(すなわち、異なるエピトープに関して)および親和性のモノクローナル抗体を生成する。所望の特性、例えばHLA-DR結合を有する選択されたモノクローナル抗体は、(i)ハイブリドーマによって発現されるように使用されてもよく、(ii)ポリエチレングリコール(PEG)のような分子に結合してその性質を変えてもよく、または(iii)モノクローナル抗体をコードするcDNAを単離し、配列決定し、種々の方法で操作してもよい。一態様では、抗HLA-DRモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合された、ヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウスから得られたB細胞を含むハイブリドーマによって産生される。ハイブリドーマ技術には、当技術分野で公知であり、Harlowら(1988年)Antibodies: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y. 349巻;Hammerlingら(1981年)Monoclonal Antibodies And T-Cell Hybridomas、563~681頁に教示される。
【0156】
ファージディスプレイ技術。上記のように、本開示の抗体は、組換えDNAおよびファージディスプレイ技術の適用によって産生され得る。例えば、抗HLA-DR抗体は、当技術分野で公知の様々なファージディスプレイ法を用いて調製してもよい。ファージディスプレイ法では、機能的抗体ドメインが、それらをコードするポリヌクレオチド配列を有するファージ粒子の表面上に提示される。所望の結合特性を有するファージは、抗原、代表的には固体表面またはビーズに結合または捕捉された抗原で直接選択することにより、レパートリーまたはコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒトまたはマウス)から選択される。これらの方法で使用されるファージは、代表的にはfdを含む繊維状ファージであり、Fab、Fvまたはジスルフィド安定化Fv抗体ドメインを有するM13は、ファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIタンパク質のいずれかに組換えにより融合される。さらに、方法は、HLA-DRポリペプチド、例えば、ポリペプチドまたはその誘導体、断片、類似体または相同体に所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速かつ効果的な識別を可能にするFab発現ライブラリーの構築に適合されてもよい(例えば、Huse, W.D.ら(1989年)Science 246巻:1275~1281頁を参照のこと)。本開示の単離された抗体を作製するために使用され得るファージディスプレイ法の他の例としては、Huston, J.S.ら(1988年)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85巻:5879~5883頁;Chaudhary, V.K.ら(1990年)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、87巻:1066~1070頁;Brinkmanら、J. Immunol. Methods 182巻:41~50頁(1995年);Ames, R.S.ら(1995年)J.Immunol.Methods 184巻:177~186頁;Kettleboroughら、Eur.J.Immunol.24巻:952~958頁(1994年);Persic, L.ら(1997年)Gene 187巻:9~18頁;Burton, D.R.ら(1994年)Advances in Immunology 57巻:191~280頁;国際特許出願番号PCT/GB91/01134;国際特許出願公開番号WO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982;WO95/20401;WO96/06213;WO92/01047(Medical Research Councilら);WO97/08320(Morphosys);WO92/01047(CAT/MRC);WO91/17271(Affymax);ならびに米国特許第5,698,426号;同第5,223,409号;同第5,403,484号;同第5,580,717号;同第5,427,908号;同第5,750,753号;同第5,821,047号;同第5,571,698号;同第5,427,908号;同第5,516,637号;同第5,780,225号;同第5,658,727号および同第5,733,743号に開示されるものが挙げられる。
【0157】
ポリペプチドを、ジスルフィド結合を介して付着させることによってバクテリオファージ粒子の表面にポリペプチドを提示するために有用な方法は、Lohningの米国特許第6,753,136号に記載されている。上記の参考文献に記載されているように、ファージ選択後、ファージからの抗体コード領域を単離し、ヒト抗体または任意の他の所望の抗原結合性断片を含む全抗体を生成するために使用し、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母および細菌を含む任意の所望の宿主中で発現する。例えば、国際特許出願公開番号WO92/22324号;Mullinax, R.L.ら(1992年)BioTechniques 12巻:864~869頁;Sawai, H.ら(1995年)AJRI 34巻:26~34頁;ならびにBetter, M.ら(1988年)Science 240巻:1041~1043頁に開示されているような当技術分野で公知の方法を用いて、Fab、Fab’およびF(ab’)2断片を組換え的に産生する技術を使用してもよい。
【0158】
一般に、抗体または抗体断片は、ファージまたはファージミド粒子の表面に存在するので、ディスプレイベクターにクローニングされるハイブリッド抗体またはハイブリッド抗体断片は、良好な結合活性を維持する改変体を識別するために、適切な抗原に対して選択され得る。例えば、Barbas IIIら、Phage Display, A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、2001年)を参照のこと。しかし、選択および/またはスクリーニングのために抗体断片ライブラリーを溶菌ファージベクター(改変T7またはラムダザップシステム)にクローニングするなど、このプロセスには他のベクターフォーマットを使用してもよい。
【0159】
抗体産生の代替方法。抗体はまた、リンパ球集団におけるin vivo産生を誘導することにより、または組換え免疫グロブリンライブラリーもしくは高度に特異的な結合試薬のパネルをスクリーニングすることによって産生され得る(Orlandi, R.ら(1989年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86巻:3833~3837頁;Winter, G.ら(1991年)Nature 349巻:293~299頁)。
【0160】
あるいは、単鎖抗体の産生のための技術を使用してもよい。単鎖抗体(scFv)は、リンカーペプチド(代表的には約5~25アミノ酸長)に連結された重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。scFvにおいて、重鎖および軽鎖の可変領域は、同じ抗体に由来しても、または異なる抗体に由来してもよい。scFvは、組換え技術を用いて、例えばE.coliのような宿主生物におけるscFvをコードするベクターの発現によって合成してもよい。scFvをコードするDNAは、上記抗体の重鎖または重鎖の可変領域をコードするDNA、およびその軽鎖または軽鎖の可変領域をコードするDNAから選択されるDNAの全部または所望のアミノ酸配列をコードする部分DNAを、鋳型として用いて増幅を行うことにより、それらの両方の末端を規定するプライマー対を用いるPCRにより、ならびにさらに、ポリペプチドリンカー部分をコードするDNAとその両端を規定するプライマー対とを組み合わせた増幅を行うことによって得て、それによってリンカーの両端をそれぞれ重鎖および軽鎖に連結してもよい。scFvをコードするDNAを含有する発現ベクターおよび発現ベクターによって形質転換された宿主は、当技術分野で公知の従来の方法に従って得てもよい。
【0161】
抗原結合性断片、例えば、抗体分子のペプシン消化によって産生され得るF(ab’)2断片、およびF(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元することによって生成され得るFab断片も生成され得る。あるいは、Fab発現ライブラリーを構築して、所望の特異性を有するモノクローナルFab断片を迅速かつ容易に識別してもよい(Huse, W.D.ら(1989年)Science 256巻:1275~1281頁)。
【0162】
抗体修飾。本開示の抗体は、抗原に対する親和性を増大させるために多量体化されてもよい。多量体化されるべき抗体は、同じ抗原の複数のエピトープを認識する抗体の1種であってもまたは複数の抗体であってもよい。抗体の多量体化の方法としては、2つのscFv分子へのIgG CH3ドメインの結合、ストレプトアビジンへの結合、ヘリックス-ターン-ヘリックスモチーフの導入などが挙げられ得る。
【0163】
本明細書中に開示される抗体組成物は、これらの抗体のいずれかと別の作用物質(免疫複合体)との間で形成されるコンジュゲートの形態であってもよい。一態様において、本明細書に開示される抗体は、放射性物質にコンジュゲートされる。別の態様では、本明細書中に開示される抗体は、ポリエチレングリコール(PEG)などの様々な種類の分子に結合され得る。
【0164】
抗体スクリーニング。種々のイムノアッセイを、所望の特異性を有する抗体を識別するスクリーニングに使用してもよい。確立された特異性を有するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれかを用いる競合結合または免疫放射線測定アッセイのための多数のプロトコールが当技術分野で周知である。このようなイムノアッセイは、代表的には、HLA-DRまたはその任意の断片もしくはオリゴペプチドとその特異的抗体との間の複合体形成の測定を含む。2つの非干渉性HLA-DRエピトープに特異的なモノクローナル抗体を利用する2部位モノクローナルベースのイムノアッセイを使用してもよいが、競合的結合アッセイも使用してもよい(Maddox, D.E.ら(1983年)J. Exp. Med. 158巻:1211~1216頁)。
【0165】
抗体精製。本明細書に開示される抗体は、均一性まで精製され得る。抗体の分離および精製は、従来のタンパク質分離および精製法を使用して行ってもよい。
【0166】
ごく一例として、クロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析、分取用ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動などの使用を適切に選択し組み合わせることにより、抗体を分離して精製してもよい。Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratory Course Manual、Marshak, D.R.ら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1996年);Antibodies: A Laboratory Manual. Ed HarlowおよびDavid Lane, Cold Spring Harbor Laboratory(1988年)。
【0167】
クロマトグラフィーの例としては、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、および吸着クロマトグラフィーが挙げられる。一態様において、クロマトグラフィーは、HPLCまたはFPLCなどの液体クロマトグラフィーを使用することによって実施してもよい。
【0168】
一態様では、プロテインAカラムまたはプロテインGカラムを、アフィニティークロマトグラフィーに使用してもよい。他の例示的なカラムとしては、プロテインAカラム、Hyper D、POROS、Sepharose F.F.(Pharmacia)などが挙げられる。
【0169】
使用方法
一般。本明細書中に開示される抗体は、HLA-DRポリペプチドの局在化および/または定量に関する(例えば、適切な生理学的試料中のHLA-DRポリペプチドのレベルの測定に使用するための、診断方法における使用のため、ポリペプチドの画像化に使用するためなど)当技術分野で公知の方法において有用である。本明細書中に開示される抗体は、アフィニティークロマトグラフィーまたは免疫沈降などの標準的技術によってHLA-DRポリペプチドを単離する際に有用である。本明細書中に開示されるHLA-DR抗体は、生物学的試料、例えば哺乳類の血清または細胞、ならびに宿主系において発現される組換え産生HLA-DRポリペプチドからの天然のHLA-DRポリペプチドの精製を促進し得る。さらに、HLA-DR抗体を使用して、ポリペプチドの発現の量およびパターンを評価するために、HLA-DRポリペプチド(例えば、血漿、細胞溶解物または細胞上清中)を検出してもよい。本明細書中に開示されるHLA-DR抗体は、例えば、所与の治療レジメンの有効性を決定するために、臨床試験手順の一部として組織におけるHLA-DRレベルをモニタリングするために診断的に使用してもよい。検出は、本明細書に開示されるHLA-DR抗体を検出可能な物質にカップリングする(すなわち、物理的に連結する)ことによって促進され得る。
【0170】
別の態様では、例えば、ヒトHLA-DRタンパク質またはその断片を含むペプチドに結合する、本明細書に開示される抗体または抗原結合性断片を含む組成物が、本明細書で提供される。一態様では、ペプチドは細胞と会合している。例えば、組成物は、本明細書に開示される抗体または抗体断片で標識された脱凝集細胞試料を含んでもよく、この組成物は、例えば細胞を単離するためのアフィニティークロマトグラフィー法またはフローサイトメトリーに基づく細胞分析もしくは細胞選別に有用である。別の例として、例えば、免疫組織化学または細胞学分析において組成物が有用である、本明細書に開示される抗体または抗体断片で標識された固定組織試料または細胞スミアを含んでもよい。別の態様では、抗体または抗体断片は、固体支持体に結合され、これは例えば以下において有用である:ELISA;HLA-DRタンパク質またはその断片、HLA-DR陽性細胞、またはHLA-DRおよび他の細胞成分を含有する複合体を単離するためのアフィニティークロマトグラフィーまたは免疫沈降法。別の態様において、ペプチドは固体支持体に結合される。例えば、ペプチドは、ペプチドに特異的な二次抗体を介して固体支持体に結合されてもよく、これは、例えば、サンドイッチELISAにおいて有用である。別の例として、ペプチドはクロマトグラフィーカラムに結合されてもよく、これは、本技術による抗体の例えば、単離または精製に有用である。別の態様では、ペプチドは、分画された細胞の細胞下画分を含有する溶解溶液または溶液などの溶液中に入れられ、ここで、HLA-DRタンパク質もしくはその断片、またはHLA-DRおよび他の細胞成分を含有する複合体を単離する、例えば、ELISAおよびアフィニティークロマトグラフィー、または免疫沈降法に有用である。別の態様では、ペプチドは、例えばゲル電気泳動ゲルまたはウェスタンブロッティングに一般的に使用されるマトリックス(ニトロセルロースまたはポリビニリデンジフルオリドからなる膜など)などのマトリックスと会合され、この組成物は、電気泳動および/またはウェスタンブロッティングなどのイムノブロッティング技術に有用である。
【0171】
HLA-DRポリペプチドの検出。生物学的試料中のHLA-DRポリペプチドのレベルを検出するための例示的な方法は、対象から生物学的試料を取得するステップと、その生物学的試料をHLA-DR結合作用物質、例えば本明細書中に開示されるか、または当技術分野で公知であり、HLA-DRポリペプチドを検出することができる抗体と接触させるステップとを含む。
【0172】
一態様において、HLA-DR抗体Lym-1もしくはLym-2、またはその断片は、検出可能に標識される。抗体に関して「標識された」という用語は、抗体に検出可能な物質をカップリング(すなわち、物理的に連結)させるステップによる、抗体の直接標識、ならびに直接標識されている別の化合物との反応性による抗体の間接的な標識を包含するものとする。間接的標識の非限定的な例としては、蛍光標識二次抗体を用いた一次抗体の検出、および蛍光標識ストレプトアビジンで検出できるようなビオチンによるDNAプローブの末端標識が挙げられる。
【0173】
本開示の検出方法は、in vitroおよびin vivoで生物学的試料中のHLA-DRポリペプチドの発現レベルを検出するために使用してもよい。HLA-DRポリペプチドの検出のためのin vitro技術としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット、フローサイトメトリー、免疫沈降、ラジオイムノアッセイ、および免疫蛍光(例えば、IHC)が挙げられる。さらに、HLA-DRポリペプチドの検出のためのin vivo技術には、対象に標識抗HLA-DR抗体を導入することを含む。単なる一例であるが、抗体は、検出可能なマーカー、例えば、対象におけるその存在および位置が標準的な画像化技術によって検出され得る放射性マーカーを用いて標識され得る。一態様では、生物学的試料は、対象由来のポリペプチド分子を含有する。
【0174】
イムノアッセイおよび画像化。本明細書に開示されるHLA-DR抗体は、抗体ベースの技術を用いて生物学的試料(例えば、ヒト血漿)中のHLA-DRポリペプチドレベルをアッセイするために使用され得る。例えば、組織におけるタンパク質発現は、古典的な免疫組織化学(IHC)染色法で研究してもよい。Jalkanen, M.ら(1985年)J. Cell. Biol. 101巻:976~985頁;Jalkanen, M.ら(1987年)J. Cell. Biol. 105巻:3087~3096頁。タンパク質遺伝子発現の検出に有用な他の抗体ベースの方法としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)およびラジオイムノアッセイ(RIA)のようなイムノアッセイが挙げられる。適切な抗体アッセイ標識は、当技術分野で公知であり、グルコースオキシダーゼなどの酵素標識、ならびに放射性同位体、または他の放射性剤、例えば、ヨウ素(125I、121I、131I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(112In)、およびテクネチウム(99mTc)、ならびに蛍光標識、例えばフルオレセインおよびローダミン、ならびにビオチンが挙げられる。
【0175】
生体試料中のHLA-DRポリペプチドレベルをアッセイすることに加えて、HLA-DRポリペプチドレベルはまた、画像化によってin vivoで検出してもよい。HLA-DRポリペプチドレベルのin vivo画像化のために抗HLA-DR抗体に組み込み得る標識としては、X線撮影、NMRまたはESRによって検出可能なものが挙げられる。X線撮影では、適切な標識としては、バリウムやセシウムなどの放射性同位体であって、検出可能な放射線を放出するが、対象にはあまり有害ではない放射性同位体が挙げられる。NMRおよびESRに適したマーカーとしては、関連scFvクローンの栄養素を標識することによってHLA-DR抗体に組み込むことができる重水素などの検出可能な特徴的なスピンを有するマーカーが挙げられる。
【0176】
放射性同位元素(例えば、131I、112In、99mTc)、放射性不透明物質、または核磁気共鳴によって検出可能な物質などの適切な検出可能な画像化部分で標識されたHLA-DR抗体が、対象に導入される(例えば、非経口、皮下、または腹腔内で)。対象のサイズおよび使用される画像化システムは、診断画像を生成するために必要な画像化部分の量を決定するであろうことは、当技術分野において理解され得る。放射性同位体部分の場合、ヒト対象に関しては、注入される放射能の量は、通常、99mTcの約5~20ミリキュリーの範囲である。次いで、標識されたHLA-DR抗体は、特異的標的ポリペプチドを含有する細胞の位置に優先的に蓄積する。例えば、in vivoの腫瘍画像化は、Burchiel, S.W.ら(1982年)Tumor Imaging: The Radiochemical Detection of Cancer 13巻に記載される。
【0177】
いくつかの態様において、迅速な結合および細胞取り込みおよび/または徐放を促進する構造改変を含有するHLA-DR抗体は、in vivo画像化検出方法において有用である。いくつかの態様において、HLA-DR抗体は、迅速な結合および細胞取り込みおよび/または徐放を促進するために、抗体のCH2定常重鎖領域に欠失を含有する。いくつかの態様では、Fab断片を使用して迅速な結合および細胞取り込みおよび/または徐放を促進する。いくつかの態様では、F(ab)’2断片を使用して、迅速な結合および細胞取り込みおよび/または徐放を促進する。
【0178】
HLA-DR抗体の診断的使用。本明細書に開示されるHLA-DR抗体組成物は、診断および予後予測の方法において有用である。このように、本開示は、対象におけるHLA-DR関連医学的状態の診断において本明細書に開示される抗体を使用するための方法を提供する。本明細書に開示される抗体は、それらがHLA-DRポリペプチドに対する高レベルのエピトープ結合特異性および高い結合親和性を有するように選択され得る。一般に、抗体の結合親和性が高いほど、標的ポリペプチドを除去することなく非特異的に結合した物質を除去するためにはイムノアッセイにおいてよりストリンジェントな洗浄条件を実施し得る。したがって、診断アッセイに有用な本技術のHLA-DR抗体は、通常、少なくとも10-6、10-7、10-8、10-9、10-10、10-11または10-12Mの結合親和性を有する。ある態様では、診断試薬として使用されるHLA-DR抗体は、少なくとも12時間、少なくとも5時間、少なくとも1時間、または少なくとも30分間、標準条件下で平衡に達するのに十分な動力学オンレートを有する。
【0179】
本技術のいくつかの方法は、診断試薬として抗HLA-DR抗体およびポリクローナル抗HLA-DR抗体組成物のポリクローナル調製物を使用し、他の方法はモノクローナル単離物を用いる。上述の方法に従って調製されたポリクローナルヒト抗HLA-DR抗体を用いる方法では、調製には、代表的には、HLA-DR抗体、例えば、標的ポリペプチドに対して異なるエピトープ特異性を有する抗体の仕分けを含有する。本開示のモノクローナル抗HLA-DR抗体は、密接に関連する抗原の存在または潜在的存在における単一の抗原の検出に有用である。
【0180】
本開示のHLA-DR抗体は、任意の種類の生物学的試料の診断試薬として使用してもよい。一態様では、本明細書に開示されるHLA-DR抗体は、ヒト生物学的試料の診断試薬として有用である。HLA-DR抗体を使用して、様々な標準アッセイ形式でHLA-DRポリペプチドを検出してもよい。そのようなフォーマットには、免疫沈降、ウェスタンブロッティング、ELISA、ラジオイムノアッセイ、フローサイトメトリー、IHCおよびイムノメトリックアッセイが挙げられる。HarlowおよびLane、Antibodies、A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Publications、New York、1988年);米国特許第3,791,932号;同第3,839,153号;同第3,850,752号;同第3,879,262号;同第4,034,074号、同第3,791,932号;同第3,817,837号;同第3,839,153号;同第3,850,752号;同第3,850,578号;同第3,853,987号;同第3,867,517号;同第3,879,262号;同第3,901,654号;同第3,935,074号;同第3,984,533号;同第3,996,345号;同第4,034,074号および同第4,098,876号を参照のこと。生物学的試料は、対象の任意の組織(生検を含む)、細胞または体液から得てもよい。
【0181】
別の態様では、本開示は、対象が本明細書に記載のCAR T細胞またはCAR NK細胞組成物で効果的に処置され得るか否かを決定するための方法を提供する。この方法は、任意の適切な方法、例えば、HLA-DR抗体またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いる免疫組織化学を使用して、HLA-DRタンパク質またはポリペプチド発現について患者から単離されたがんまたは腫瘍の試料をアッセイするステップを含む。一態様では、対象から得られた生物学的試料中のHLA-DRポリペプチドの発現レベルを決定し、対象または疾患のない患者の集団から得られた生物学的試料中に見出されるHLA-DR発現レベルと比較する。疾患のない患者由来の患者試料中のポリペプチドまたはタンパク質の発現レベルと比較して、HLA-DRポリペプチドの発現の増大は、その患者が本開示のCAR T細胞またはCAR NK細胞に対して応答性である可能性が高いことを示し、発現の上昇がないことは、その患者がCAR T細胞またはCAR NK細胞療法に応答する可能性が低いことを示す。試料の非限定的な例としては、例えば、痰、血清、血漿、リンパ液、嚢胞液、尿、糞便、脳脊髄液、腹水または血液を含むがこれらに限定されない任意の体液および体組織の生検試料が挙げられる。試料はまた、腫瘍細胞でもある。上記の方法で使用される試験試料は、アッセイフォーマット、検出方法の性質、およびアッセイされるべき試料として使用される組織、細胞または抽出物に基づいて変化する。さらなる態様では、有効量のHLA-DR CAR療法が対象または患者に施される。
【0182】
特定の態様において、本開示は、患者がHLA-DR CAR療法に応答する可能性が高いか、否かを決定するための方法に関する。特定の実施形態では、この方法は、患者から単離した腫瘍試料を有効量のHLA-DR結合作用物質、例えばHLA-DR抗体と接触させるステップと、腫瘍試料に結合した任意の作用物質または抗体の存在を検出するステップとを含む。さらなる実施形態では、腫瘍試料に結合した作用物質または抗体の存在は、その患者がHLA-DR CAR療法に応答する可能性が高いことを示し、腫瘍試料に結合した抗体が存在しないことは、その患者がHLA-DR療法に応答する可能性が低いことを示す。試料の非限定的な例としては、例えば、痰、血清、血漿、リンパ液、嚢胞液、尿、糞便、脳脊髄液、腹水または血液を含むがこれらに限定されない任意の体液が挙げられ、および体の組織の生検試料を含む。試料はまた、腫瘍細胞でもある。上記の方法で使用される試験試料は、アッセイフォーマット、検出方法の性質、およびアッセイされるべき試料として使用される組織、細胞または抽出物に基づいて変化する。いくつかの実施形態では、この方法は、HLA-DR CAR療法に応答する可能性が高いと判定された患者に有効量のHLA-DR CAR療法を施すという追加のステップを含む。いくつかの実施形態において、患者は、HLA-DR発現腫瘍および/またはがんを有する。
【0183】
HLA-DRポリペプチドの上昇した発現レベルが、疾患を有する対象が特定の種類の療法または処置に応答する可能性が高いか否かを示すことが知られている多くの疾患状態がある。このような疾患状態の非限定的な例としては、がん、例えば、癌腫、肉腫または白血病が挙げられる。したがって、生物学的試料中のHLA-DRポリペプチドを検出する方法は、例えば、対象が療法または治療に応答する可能性を評価するための予後予測の方法として使用してもよい。対象由来の適切な組織または体液試料中のHLA-DRポリペプチドのレベルを決定し、適切な対照、例えば、同じ疾患を有するが処置に好都合に応答した対象におけるレベルと比較する。試料の非限定的な例としては、例えば、痰、血清、血漿、リンパ液、嚢胞液、尿、糞便、脳脊髄液、腹水または血液を含むがこれらに限定されない任意の体液が挙げられ、および体の組織の生検試料が含まれる。試料はまた、腫瘍細胞でもある。上記の方法で使用される試験試料は、アッセイフォーマット、検出方法の性質、およびアッセイされるべき試料として使用される組織、細胞または抽出物に基づいて変化する。細胞のタンパク質抽出物または膜抽出物を調製するための方法は、当技術分野で公知であり、利用される系と適合する試料を得るために容易に適合され得る。
【0184】
一態様では、本開示は、HLA-DRポリペプチドの発現に対する作用物質(例えば、本開示のCAR T細胞またはCAR NK細胞組成物、薬物、化合物、または低分子)の影響をモニタリングする方法を提供する。そのようなアッセイは、基本的な薬物スクリーニングおよび臨床試験に適用することができる。例えば、HLA-DRポリペプチドレベルを低下させる作用物質の有効性は、HLA-DRの発現の上昇を示す対象、例えばがんと診断された患者の臨床試験においてモニターしてもよい。HLA-DRポリペプチドの発現に影響を及ぼす作用物質は、その作用物質を投与し、応答を観察することによって識別し得る。このようにして、HLA-DRポリペプチドの発現パターンは、その作用物質に対する対象の生理学的反応を示すマーカーとしての役割を果たすことができる。したがって、この応答状態は、その作用物質による対象の処置の前、およびその間の様々な時点で決定されてもよい。いくつかの実施形態では、この方法は、HLA-DR CAR療法の有効量を追加の療法を必要とすると判定された患者に投与するという追加のステップをさらに含む。
【0185】
本開示のさらなる方法態様は、患者がHLA-DR CAR療法に応答する可能性が高いか否かを決定するための方法に関する。特定の実施形態では、この方法は、患者から単離した腫瘍試料を有効量のHLA-DR抗体と接触させるステップと、腫瘍試料に結合した任意の抗体の存在を検出するステップとを含む。さらなる実施形態では、腫瘍試料に結合した抗体の存在によって、患者がHLA-DR CAR療法に応答する可能性が高いことが示され、腫瘍試料に結合した抗体がないことは、患者がHLA-DR療法に応答する可能性が低いことを示す。いくつかの実施形態では、この方法は、HLA-DR CAR療法に応答する可能性が高いと判定された患者に有効量のHLA-DR CAR療法を投与する追加のステップを含む。いくつかの実施形態において、患者は、HLA-DR発現腫瘍および/またはがんを有する。
【0186】
III.キット
本明細書に記載されるように、本開示は、HLA-DRの発現レベルを決定するための診断方法を提供する。1つの特定の態様において、本開示は、これらの方法を実施するためのキット、ならびに組織の収集および/またはスクリーニングの実施および/または結果の分析のような本開示の方法を実施するための指示書を提供する。
【0187】
キットは、本明細書中に開示されるHLA-DR抗体組成物(例えば、モノクローナル抗体)および指示書を含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなる。このキットは、生物学的試料、例えば、任意の体液、例としては、限定するものではないが、例えば、痰、血清、血漿、リンパ液、嚢胞液、尿、糞便、脳脊髄液、腹水(acitic fluid)または血液、そして体組織の生検サンプルを含む生物学的試料中のHLA-DRポリペプチドの存在を検出するのに有用である。試験試料は、腫瘍細胞、腫瘍に隣接する正常細胞、腫瘍組織型に対応する正常細胞、血液細胞、末梢血リンパ球、またはそれらの組合せであってもよい。上記の方法で使用される試験試料は、アッセイフォーマット、検出方法の性質、およびアッセイされるべき試料として使用される組織、細胞または抽出物に基づいて変化する。細胞のタンパク質抽出物または膜抽出物を調製するための方法は、当技術分野で公知であり、利用される系と適合する試料を得るために容易に適合され得る。
【0188】
いくつかの態様では、キットは;生物学的試料(例えば、抗体またはその抗原結合性断片であって、HLA-DR抗体Lym-1またはLym-2の同じ抗原結合特異性を有するもの)中のHLA-DRポリペプチドに結合可能であり、結合する1つまたは複数のHLA-DR抗体と;この試料中のHLA-DRポリペプチドの量を測定するための手段と;この試料中のHLA-DRポリペプチドの量を標準と比較する手段とを備えてもよい。1つまたは複数のHLA-DR抗体を標識してもよい。キットの構成要素(例えば、試薬)は、適切な容器にパッケージングされてもよい。キットは、HLA-DRポリペプチドを検出するためのキットの指示書をさらに備えてもよい。特定の態様では、キットは、HLA-DRポリペプチドに結合する、例えば固体支持体に結合した第1の抗体;任意選択で;2)HLA-DRポリペプチドまたは第1抗体のいずれかに結合し、検出可能な標識にコンジュゲートされている第2の異なる抗体を備える。
【0189】
キットはまた、例えば、緩衝剤、防腐剤またはタンパク質安定化剤を含んでもよい。キットは、検出可能な標識、例えば、酵素または基質を検出するために必要な構成要素をさらに備えてもよい。このキットはまた、対照試料または一連の対照試料を備えてもよく、これをアッセイして試験試料と比較してもよい。キットの各構成要素は、個々の容器内に封入してもよく、様々な容器のすべてを、キットを用いて実施したアッセイの結果を解釈するための指示とともに、単一のパッケージ内に入れてもよい。本開示のキットは、キット容器上またはキット容器内に書類を備えてもよい。この書類によって、キットに含まれている試薬の使用方法が記載されている。
【0190】
受け入れやすいように、これらの示唆されたキット構成要素は、当業者が使用するために慣習的な様式でパッケージングされてもよい。例えば、これらの示唆されたキットの構成要素は、溶液中または液体分散物などとして提供されてもよい。
【0191】
IV.担体
抗体はまた、多くの異なる担体に結合されてもよい。したがって、本開示はまた、抗体および活性または不活性の別の物質を含有する組成物も提供する。周知の担体の例としては、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロースおよび磁鉄鉱が挙げられる。担体の性質は、本開示の目的のために可溶性であっても不溶性であってもよい。当業者は、抗体に結合するための他の適切な担体を承知しているか、または慣用的な実験を用いてそのようなものを確認し得る。
【0192】
キメラ抗原受容体およびその使用
I.組成物
本開示は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む細胞活性化部分を含むか、またはそれから本質的になるHLA-DRに結合するキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。細胞外ドメインは、抗原結合性ドメインとも呼ばれる標的特異的結合エレメントを含む。別様に細胞内ドメインまたは細胞質ドメインは、同時刺激シグナル伝達領域およびゼータ鎖部分を含む。CARは任意選択で、300アミノ酸まで、好ましくは10~100アミノ酸、より好ましくは25~50アミノ酸のスペーサードメインをさらに含んでもよい。
【0193】
抗原結合性ドメイン。特定の態様では、本開示は、HLA-DRに特異的な抗原結合性ドメインを含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなるCARを提供する。いくつかの実施形態では、抗原結合性ドメインは、抗HLA-DR抗体の抗原結合性ドメインを含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなる。さらなる実施形態では、抗HLA-DR抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、抗HLA-DR抗体の抗原結合性ドメインを含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなる。
【0194】
いくつかの実施形態では、抗体の重鎖可変領域は、配列番号7~10またはその各々の等価物を含むか、もしくはそれから本質的になるか、もしくはそれからなる、および/または配列番号1~6またはその各々の等価物を含む1つまたは複数のCDR領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体の軽鎖可変領域は、配列番号17~20またはその等価物を含むか、もしくはそれから本質的になるか、もしくはそれからなる、および/または配列番号11~16を含む1つまたは複数のCDR領域またはその等価物を含む。
【0195】
膜貫通ドメイン。膜貫通ドメインは、天然の供給源または合成供給源のいずれから誘導されてもよい。供給源が天然である場合、ドメインは、任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来し得る。本開示において特に使用される膜貫通領域は、CD8、CD28、CD3、CD45、CD4、CD5、CDS、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、TCR由来であり得る。あるいは、膜貫通ドメインは合成であってもよく、その場合、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を主に含み得る。好ましくは、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンのトリプレットが合成膜貫通ドメインの各末端に見出され得る。任意選択で、短いオリゴ-またはポリペプチドリンカー、好ましくは2~10アミノ酸の長さが、膜貫通ドメインとCARの細胞質シグナル伝達ドメインとの間の連結を形成し得る。グリシン-セリンのダブレットは、特に適切なリンカーを提供する。
【0196】
細胞質ドメイン。CARの細胞質ドメインまたは細胞内シグナル伝達ドメインは、CARが配置された免疫細胞の伝統的なエフェクター機能の少なくとも1つの活性化に関与する。細胞内シグナル伝達ドメインとは、エフェクター機能シグナルを伝達し、免疫細胞にその特異的機能を行わせるタンパク質の一部を指す。短縮された部分がエフェクター機能シグナルを伝達するのに十分である限り、シグナル伝達ドメイン全体を使用しても、またはその短縮された部分を使用してもよい。TCRおよび共働受容体ならびにそれらの誘導体または改変体の細胞質配列は、CARにおける使用のための細胞内シグナル伝達ドメインとして機能し得る。本開示における特定の用途の細胞内シグナル伝達ドメインは、FcR、TCR、CD3、CDS、CD22、CD79a、CD79b、CD66dに由来し得る。TCRを通じて生成されたシグナルは、T細胞の完全な活性化のために単独では不十分であるため、二次的または同時刺激性のシグナルもまた必要とされ得る。したがって、CD27、CD28、4-IBB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、またはCD83と特異的に結合するリガンドを含むがこれらに限定されない同時刺激シグナル伝達分子の細胞内領域もまた、CARの細胞質ドメインに含まれてもよい。
【0197】
いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体の細胞活性化部分は、CD8タンパク質、CD28タンパク質、4-1BBタンパク質、およびCD3-ゼータタンパク質からなる群より選択される、1つまたは複数のタンパク質またはその断片を含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなる、T細胞シグナル伝達ドメインである。
【0198】
特定の実施形態では、CARは、抗HLA-DR抗体の抗原結合性ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、同時刺激シグナル伝達領域、およびCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなる。さらなる実施形態では、同時刺激シグナル伝達領域は、CD28同時刺激シグナル伝達領域および4-1BB同時刺激シグナル伝達領域のいずれかまたは両方を含む。
【0199】
いくつかの実施形態において、CARは、検出可能なマーカーまたは精製マーカーをさらに含み得る。
【0200】
さらなる態様において、本開示は、その標的細胞に結合したHLA-DR CAR細胞を含む複合体を提供する。さらなる態様において、この複合体は検出可能に標識される。検出可能な標識は、当技術分野で公知であり、本明細書中で簡単に説明される。
【0201】
II.CARを調製するプロセス
本開示の態様は、HLA-DR CARを含む単離された細胞、およびそのような細胞を産生する方法に関する。細胞は、原核細胞または真核細胞である。一態様では、細胞は、T細胞またはNK細胞である。真核細胞は、任意の好ましい種、例えば、動物細胞、ヒト、ネコまたはイヌ細胞などの哺乳動物細胞由来であってもよい。
【0202】
特定の実施形態では、単離された細胞は、抗HLA-DR抗体の抗原結合性ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD28同時刺激シグナル伝達領域および/または4-1BB同時刺激シグナル伝達領域、およびCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなる外因性CARを含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなる。特定の実施形態において、単離された細胞は、T細胞、例えば動物T細胞、哺乳動物T細胞、ネコT細胞、イヌT細胞またはヒトT細胞である。特定の実施形態において、単離された細胞は、NK細胞、例えば、動物NK細胞、哺乳動物NK細胞、ネコNK細胞、イヌNK細胞またはヒトNK細胞である。
【0203】
特定の実施形態では、HLA-DR CAR発現細胞を産生する方法が開示されており、この方法は、(i)単離された細胞の集団に、HLA-DR CARをコードする核酸配列を形質導入するステップと、(ii)ステップ(i)の上記核酸配列を形質導入することに成功した細胞の小集団を選択するステップを含むか、または代わりにそれから本質的になる。いくつかの実施形態において、単離された細胞は、T細胞、動物T細胞、哺乳動物T細胞、ネコT細胞、イヌT細胞またはヒトT細胞であり、それによってHLA-DR CAR T細胞が産生される。特定の実施形態において、単離された細胞は、NK細胞、例えば、動物NK細胞、哺乳動物NK細胞、ネコNK細胞、イヌNK細胞またはヒトNK細胞であり、それによりHLA-DR CAR NK細胞が産生される。
【0204】
単離された細胞の供給源。本明細書に開示される細胞の増殖および遺伝子改変に先立って、細胞は、対象から(例えば、自家(autologous)療法を含む実施形態において)得てもよいし、または市販の培養物から得てもよい。
【0205】
細胞は、対象における多数の供給源から得られてもよく、この供給源としては、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織および腫瘍が挙げられる。
【0206】
関連細胞を単離する方法は、当技術分野で周知であり、本出願に容易に適合させられ得る;例示的な方法は、以下の実施例に記載する。本開示に関連して用いるための単離方法としては、限定するものではないが、Life Technologies Dynabeads(登録商標)システム;STEMcell Technologies EasySep(商標)、RoboSep(商標)、RosetteSep(商標)、SepMate(商標);Miltenyi Biotec MACS(商標)細胞分離キット、ならびに他の市販の細胞分離および単離キットが挙げられる。免疫細胞の特定の小集団は、固有の細胞表面マーカーに特異的なそのようなキットにおいて利用可能なビーズまたは他の結合剤の使用によって、単離され得る。例えば、MACS(商標)CD4+およびCD8+MicroBeadsが、CD4+およびCD8+T細胞を単離するために使用され得る。
【0207】
あるいは、T細胞に関しては、限定するものではないが、市販の細胞培養物、株BCL2(AAA)Jurkat(ATCC(登録商標) CRL-2902(商標))、BCL2(S70A)Jurkat(ATCC(登録商標)CRL-2900(商標))、BCL2(S87A)Jurkat(ATCC(登録商標)CRL-2901(商標))、BCL2Jurkat(ATCC(登録商標)CRL-2899(商標))、Neo Jurkat(ATCC(登録商標)CRL-2898(商標));NK細胞に関しては、株NK-92(ATCC(登録商標)CRL-2407(商標))、NK-92MI(ATCC(登録商標)CRL-2408(商標))を通じて得てもよい。
【0208】
ベクター。CARは、ベクターを用いて調製してもよい。本開示の態様は、HLA-DR CARをコードする単離された核酸配列、ならびにCARおよびその相補体およびその各々の等価物をコードする単離された核酸配列を含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなるベクターに関する。
【0209】
いくつかの実施形態では、単離された核酸配列は、抗HLA-DR抗体の抗原結合性ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD28同時刺激シグナル伝達領域および/または4-1BB同時刺激シグナル伝達領域、ならびにCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含むか、または代わりに本質的にそれから本質的になるか、またはさらにそれらからなるCARをコードする。特定の実施形態では、単離された核酸配列は、(a)抗HLA-DR抗体の抗原結合性ドメインに続いて(b)CD8αヒンジドメイン、(c)CD8α膜貫通ドメインに続いて(d)CD28同時刺激シグナル伝達領域および/または4-1BB同時刺激シグナル伝達領域に続いて(e)CD3ゼータシグナル伝達ドメインをコードする配列を含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなる。
【0210】
いくつかの実施形態では、単離された核酸配列は、抗HLA-DR抗体の抗原結合性ドメインをコードする配列の上流にコザックコンセンサス配列を含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなる。いくつかの実施形態において、単離された核酸は、抗生物質耐性を付与するポリヌクレオチドを含む。
【0211】
いくつかの実施形態では、単離された核酸配列はベクターに含まれる。特定の実施形態では、ベクターはプラスミドである。他の実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。特定の実施形態では、ベクターはレンチウイルスベクターである。
【0212】
例示的ベクターの調製および上記ベクターを用いたCAR発現細胞の生成は、以下の実施例において詳細に考察される。要約すると、CARをコードする天然または合成の核酸の発現は、代表的には、CARポリペプチドまたはその一部をコードする核酸をプロモーターに作動可能に連結し、その構築物を発現ベクターに組み込むことによって達成される。このベクターは、複製および組込み真核生物に適切であり得る。ベクターおよび/または外因性核酸を含む細胞を産生するための方法は、当技術分野で周知である。例えば、Sambrookら(2001年)Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New Yorkを参照のこと)。
【0213】
一態様において、「ベクター」という用語は、非分裂細胞および/またはゆっくりと分裂する細胞に感染および形質導入し、標的細胞のゲノムに組み込む能力を保持する組換えベクターを意図する。いくつかの態様において、ベクターは、野生型ウイルスに由来するか、または野生型ウイルスに基づく。さらなる態様において、ベクターは、野生型レンチウイルスに由来するか、または野生型レンチウイルスに基づく。このような例としては、限定するものではないが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)およびネコ免疫不全ウイルス(FIV)が挙げられる。あるいは、他のレトロウイルスが、マウス白血病ウイルス(MLV)などのベクター骨格の基礎として使用され得ることが企図される。本開示によるウイルスベクターは、特定のウイルスの構成要素に限定される必要はないことは明らかである。ウイルスベクターは、2つまたはそれ超の異なるウイルスに由来する構成要素を含んでもよく、合成の構成要素を含んでもよい。ベクター成分は、標的細胞特異性のような所望の特性を得るために操作してもよい。
【0214】
本開示の組換えベクターは、霊長類および非霊長類に由来する。霊長類レンチウイルスの例としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒト後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因因子、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられる。非霊長類レンチウイルス群には、プロトタイプ「スローウイルス」ビスナ/マエディウイルス(VMV)、ならびに関連のヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、さらに最近記載されたネコ免疫不全ウイルス(FIV)およびウシ免疫不全ウイルス(BIV)が挙げられる。先行技術の組換えレンチウイルスベクターは当技術分野で公知であり、例えば、参照によって本明細書に援用される、米国特許第6,924,123号;同第7,056,699号;同第7,07,993号;同第7,419,829号および同第7,442,551号を参照されたい。
【0215】
米国特許第6,924,123号は、特定のレトロウイルス配列が標的細胞ゲノムへの組込みを促進することを開示している。この特許は、各レトロウイルスゲノムが、ビリオンタンパク質および酵素をコードするgag、polおよびenvと呼ばれる遺伝子を含むことを教示している。これらの遺伝子には、両端に、長い末端反復(LTR)と呼ばれる領域が隣接している。LTRは、プロウイルスの組込みおよび転写を担う。それらは、エンハンサー-プロモーター配列としても機能する。換言すれば、LTRは、ウイルス遺伝子の発現を制御し得る。レトロウイルスRNAのカプセル化は、ウイルスゲノムの5’末端に位置するpsi配列によって起こる。LTR自体は、U3、RおよびU5と呼ばれる3つのエレメントに分けることができる同一の配列である。U3は、RNAの3’末端に特有の配列に由来する。Rは、RNAの両端で繰り返される配列に由来し、U5は、RNAの5’末端に特有の配列に由来する。3つのエレメントのサイズは、異なるレトロウイルス間でかなり異なる場合がある。ウイルスゲノムの場合、ポリ(A)付加(停止)の部位は、右側のLTRのRとU5との境界にある。U3は、プロウイルスの転写制御エレメントの大部分を含有し、これには、細胞の、ある場合にはウイルス転写アクチベータータンパク質に応答するプロモーターおよび複数のエンハンサー配列が含まれる。
【0216】
構造遺伝子gag、polおよびenv自体に関して、gagは、ウイルスの内部構造タンパク質をコードする。gagタンパク質は、成熟タンパク質MA(マトリックス)、CA(カプシド)およびNC(ヌクレオカプシド)へ、タンパク質分解によりプロセシングされる。pol遺伝子は、ゲノムの複製を媒介する、DNAポリメラーゼ、関連するRNアーゼHおよびインテグラーゼ(IN)を含有する逆転写酵素(RT)をコードする。
【0217】
ウイルスベクター粒子の産生のために、ベクターRNAゲノムは、それをコードするDNA構築物から、宿主細胞中で発現される。ベクターゲノムによってコードされていない粒子の構成要素は、宿主細胞中で発現される追加の核酸配列(通常、gag/polおよびenv遺伝子のいずれかまたは両方を含む「パッケージングシステム」)によってトランスで提供される。ウイルスベクター粒子の産生に必要とされる一連の配列は、一過性トランスフェクションによって宿主細胞に導入されてもよいし、またはそれらは宿主細胞ゲノムに組み込まれてもよいし、またはそれらは複数の混合方法で提供されてもよい。関与する技術は、当業者に公知である。
【0218】
本開示における使用のためのレトロウイルスベクターとしては、限定するものではないが、InvitrogenのpLentiシリーズのバージョン4、6および6.2「ViraPower」システム(Lentigen Corp.が製造);pHIV-7-GFP(実験室生成およびCity of Hope Research Instituteが使用);「Lenti-X」レンチウイルスベクター、pLVX(Clontechが製造);pLKO.1-puro(Sigma-Aldrich製造);pLemiR(Open Biosystems製造);ならびにpLV(実験室生成およびCharite Medical School、Institute of Virology (CBF)、Berlin、Germanyが使用)が挙げられる。
【0219】
宿主細胞に外因性核酸を導入するか、そうでなければ本開示の阻害剤に細胞を曝露するために使用される方法にかかわらず、宿主細胞における組換えDNA配列の存在を確認するために、様々なアッセイ実施してもよい。このようなアッセイとしては、例えば、当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ、例えば、サザンブロッティングおよびノーザンブロッティング、RT-PCRおよびPCR;「生化学的」アッセイ、例えば、免疫学的手段(ELISAおよびウェスタンブロット)によって、または本開示の範囲内にある作用物質を識別するための本明細書に記載のアッセイによって、特定のペプチドの有無を検出することが挙げられる。
【0220】
細胞の活性化および増殖。所望のCARを発現するための細胞の遺伝子改変の前後にかかわらず、細胞は、米国特許第6,352,694号;同第6,534,055号;同第6,905,680号;同第6,692,964号;同第5,858,358号;同第6,887,466号;同第6,905,681号;同第7,144,575号;同第7,067,318号;同第7,172,869号;同第7,232,566号;同第7,175,843号;同第5,883,223号;同第6,905,874号;同第6,797,514号および同第6,867,041号に記載されているような一般的に公知の方法を用いて活性化され、増殖され得る。HLA-DR抗原でのex vivoの刺激は、選択されたCAR発現細胞小集団を活性化し、かつ増殖し得る。あるいは、その細胞は、HLA-DR抗原との相互作用によってin vitroで活性化され得る。
【0221】
関連する細胞を活性化する方法は、当技術分野で周知であり、本出願に容易に適合され得る;例示的な方法を以下の実施例に記載する。この開示に関連して使用される単離方法としては、限定するものではないが、Life Technologies Dynabeads(登録商標)システムの活性化および増殖キット;BD Biosciences Phosflow(商標)活性化キット、Miltenyi Biotec MACS(商標)活性化/増殖キット、ならびに関連する細胞の活性化部分に特有の他の市販の細胞キットが挙げられる。免疫細胞の特定の小集団は、そのようなキットで利用可能なビーズまたは他の作用物質の使用によって活性化または増殖され得る。例えば、α-CD3/α-CD28 Dynabeads(登録商標)は、単離されたT細胞の集団を活性化および増殖するために使用され得る。
【0222】
III.使用方法
治療的適用。本開示の方法態様は、それを必要とする対象において腫瘍の増殖を阻害する方法、および/またはそれを必要とするがん患者を処置する方法に関する。いくつかの実施形態では、腫瘍/がんは、B細胞リンパ腫または白血病腫瘍/がんである。いくつかの実施形態では、腫瘍は固形腫瘍、例えば、癌腫である。いくつかの実施形態では、腫瘍またはがんは、HLA-DRを発現する。特定の実施形態では、これらの方法は、対象または患者に有効量の単離された細胞を投与するステップを含むか、または代わりにそれから本質的になるか、またはさらにそれからなる。さらなる実施形態では、この単離された細胞はHLA-DR CARを含む。さらなる実施形態では、単離された細胞は、T細胞またはNK細胞である。いくつかの実施形態において、単離された細胞は、処置される対象または患者に対して自己由来である。さらなる態様において、腫瘍は、HLA-DR抗原を発現し、対象は、本明細書に記載のものなどの診断によって療法のために選択されている。療法は、第1選択療法であっても、第2選択療法であっても、第3選択療法であっても、もしくは第4選択療法であっても、または処置する医師によって決定される任意のさらなる療法であってもよい。それらは、他の療法と組み合わされて、順次投与されても、または同時に投与されてもよい。
【0223】
本明細書に開示されるCAR細胞は、単独で投与されてもよく、あるいは希釈剤、CAR細胞以外の他の抗がん治療剤、および/または免疫刺激性であるサイトカインもしくは他の細胞集団などの他の成分と組み合わせて投与されてもよい。
【0224】
本明細書中に開示される医薬組成物は、治療または予防される疾患に適切な様式で投与されてもよい。投与の量および頻度は、臨床試験によって適切な用量を決定することができるが、患者の状態ならびに患者の疾患の種類および重症度などの要因によって決定される。
【0225】
IV.担体
本開示のさらなる態様は、担体と、本明細書に開示される実施形態に記載される生成物、例えば、HLA-DR CARを含む単離された細胞、単離された核酸、ベクター、任意の抗HLA-DR抗体の単離された細胞またはCAR細胞、抗HLA-DRのうちの1つまたは複数とを含む組成物に関する。
【0226】
簡潔には、特許請求の範囲に記載の組成物のいずれか1つを含むが、これに限定されない本明細書に開示される医薬組成物は、1つまたは複数の薬学的または生理学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて、本明細書に記載される標的細胞集団を含んでもよい。そのような組成物は、緩衝液、例えば、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝食塩水など;炭水化物、例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトール;タンパク質;ポリペプチドまたはアミノ酸、例えばグリシン;抗酸化剤;キレート剤、例えば、EDTAまたはグルタチオン;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);および防腐剤を含んでもよい。本開示の組成物は、経口、静脈内、局所、経腸および/または非経口投与のために製剤化されてもよい。特定の実施形態において、本開示の組成物は、静脈内投与のために製剤化される。
【実施例0227】
以下の実施例は、開示を実際に実施する様々な例において使用することができる手順の例示である。
(実施例1)
マウス抗ヒトHLA-DRモノクローナル抗体の生成
抗原
【0228】
Rajiアフリカバーキットリンパ腫細胞核を、Lym-1抗体を産生させるための抗原として使用した。CLLバイオプシー細胞核を、Lym-2抗体を産生させるための抗原として使用した。
免疫手順
【0229】
Harlan Laboratoriesから購入した4週齡雌性BALB/cマウスを、完全フロイントアジュバント(第1および第2の免疫)または不完全フロイントアジュバント(第3および第4の免疫)で乳化した107個の核で2週間ごと4回免疫した。マウスを、免疫当たりマウスの背中に3つの分離したスポットに分けて合計107個の核/アジュバントを皮内に注射した。最終免疫の10日後、血液試料を得て、抗原被覆プレートでELISA手順によって力価を調べた。次に、最高の力価を示すマウスを、アジュバントなしで静脈内に5回目の追加免疫を行って、106個の核を無菌リン酸緩衝生理食塩水の100μl溶液において側尾静脈を介して注射した。
ハイブリドーマの生成
【0230】
4日後、これらのマウスを屠殺し、脾臓をハイブリドーマ手順のため除去した。Pen/Strep抗生物質を含有するRPMI-1640培地の溶液中に脾細胞を分散させた後、PEG(Hybri MAX、分子量1450、カタログ番号:p7181、Sigma)を使用して脾細胞をマウスNSO細胞と融合した。次に、HAT選択を使用して、融合させた細胞のみが成長することを可能にした。次に、成長しているハイブリドーマ細胞を有するウェルからの上清を、最初に抗原被覆プレートに対するELISAおよび二番目にHLA-DR陽性(Raji)および陰性ヒト腫瘍細胞株(CEM T細胞白血病)におけるフローサイトメトリーによってスクリーニングした。陽性かつ高い平均蛍光指数(MFI)を示すハイブリドーマを、限界希釈法によってサブクローニングのため選択した。次に、サブクローンをフローサイトメトリーによって再試験し、液体窒素中で凍結し、2L容器中に拡大増殖させ、抗体をタンドン(tandon)プロテインAまたはGおよびイオン交換クロマトグラフィー法によって精製した。次に、精製された抗体をバイアルに入れ、使用するまで-20℃で貯蔵した。
フローサイトメトリー手順およびデータ
【0231】
フローサイトメトリーを使用するスクリーニング方法を、抗原被覆プレートに対するELISAによって陽性であることが見出されたハイブリドーマからの上清を使用してHLA-DR陽性(Raji)および陰性(CEM)細胞株で行った。次に、高い平均蛍光指数(MFI)を産生するハイブリドーマを、サブクローニングし、HLA-DRに対する選択的な陽性に関して再スクリーニングした。以下の
図1A~1Fに示されるとおり、Lym-1およびLym-2は、B1抗体とは異なるプロファイルでHLA-DR発現Raji細胞株に対して高いMFIを産生した。これらのデータから、Lym-1およびLym-2を選択して、以下に記載されるとおりCAR-T細胞を生成した。
選択した抗体での免疫組織化学
【0232】
抗体Lym-1およびLym-2は、
図2A~2Bに記載されるとおり、標準的な免疫組織化学手順および抗原回復法を使用してヒト扁桃組織の胚中心においてHLA-DR陽性細胞を染色することが見出された。胸腺、脾臓および骨髄における染色性は、HLA-DR抗原を発現するB細胞または樹状細胞に限定されていた(表3)。
【表3】
【0233】
図3A~3Bに示されるとおり、HLA-DR陽性は、抗原陽性腫瘍、例えば、中間グレードB細胞リンパ腫の細胞膜に見られた。最終的に、正常な組織および器官からの組織切片は、皮膚のリンパ様B細胞およびマクロファージに対する限定的な反応性を示した(表4)。免疫組織化学を使用してHLA-DRに対するコンパニオン診断抗体の利用可能性により、来たるべき臨床試験におけるHLA-DR CAR T細胞療法から利益が得られそうな患者の識別が可能となる。
【表4】
生細胞ラジオイムノアッセイ
【0234】
Lym-1またはLym-2を使用して、一連のヒトリンパ腫および固形腫瘍細胞株を、生細胞ラジオイムノアッセイ手順を使用して、結合性に関してスクリーニングした。このアッセイのために、懸濁液培養およびEDTA-トリプシンでフラスコから取り外した固形腫瘍細胞株を、PBS、ウシ血清アルブミン(1mg/ml)、および0.02%アジ化ナトリウムからなる冷緩衝液中で2回洗浄した。100μlの洗浄緩衝液中に再懸濁された細胞(5×10
5)を、PBS中のBSA(10mg/ml)で一晩前処理してウェルへの抗体結合を防止した、マイクロウェルにピペットで移した。次に、Lym-1またはLym-2上清を、室温で96ウェルプレートのためのマイクロシェーカー装置を使用して連続的に振盪して、30分間のインキュベーション期間添加した。4回洗浄後、次に100,000cpmのI-125ヤギ抗マウスIgGを100μl中に添加し、追加の30分間インキュベーションを連続的に振盪して細胞とインキュベートした。4回の最終的な洗浄後、ウェルを、ガンマカウンター中でカウントして、各細胞調製物への抗体結合を決定した。これらの研究の結果は、より大規模な一連のヒトリンパ腫および白血病バイオプシーに関して、Lym-1およびLym-2の反応性が、B細胞の腫瘍に限定的であるが、T細胞起源には限定的ではないことを示した(表5)。
【表5】
【0235】
これらの結果と一致して、Lym-1およびLym-2は、表6に示されているとおり、選択された数のヒトリンパ腫および白血病細胞株と結合することが見出された。
【表6A-1】
【表6A-2】
【0236】
対照的に、Lym-1およびLym-2は、上記の生細胞ラジオイムノアッセイ手順を使用して、35種のヒト固形腫瘍細胞株に結合することは見出されなかった(表7)。
【表7-1】
【表7-2】
Lym-1およびLym-2抗体の結合プロファイルならびにLym-1抗原の識別
【0237】
Raji細胞と結合するLym-1の結合プロファイルおよびスキャッチャードプロット分析が、
図4Aに示される。同様に、ARH-77骨髄腫細胞株と結合するLym-2のスキャッチャードプロット分析が、
図4Bに示される。これらのデータは、両方の抗体が、抗原陽性腫瘍細胞株に対して10
8M
-1の結合親和性を有することを示す。表8に示されているとおり、正常な末梢血B細胞と比較する場合、腫瘍細胞で見られたものと比較して、結合親和性において2~4倍の減少があった。加えて、Raji細胞の
35S-メチオニンおよび
14C-ロイシンでの代謝性標識化は、HLA-DRに関して見られた特徴的なバンド形成パターンを示した(
図5A~5B)。対照として、SC-1抗HLA-DR抗体を並行して使用して、SDS-ゲル電気泳動によって同一のタンパク質分子量で同じバンド形成パターンを得た。
【表6B】
(実施例2)
HLA-DR CAR T細胞の生成
単鎖HLA-DR抗体遺伝子の構築および合成
【0238】
研究室において生成された2つの高い結合抗HLA-DR抗体(Lym-1およびLym-2)についてのDNA配列が、MCLAB(South San Francisco、CA)から得られた。両方の抗体を試験して、どちらが以下に記載されるアッセイにおいて最も有効にCARを産生するかを決定した。以下に示されているとおり、第2または第3(
図6)世代CARベクターが、以下のタンデム遺伝子からなるよう構築した:コザックコンセンサス配列;CD8シグナルペプチド;抗HLA-DR重鎖可変領域;(グリシン4セリン)3可動性ポリペプチドリンカー(配列番号51);それぞれの抗HLA-DR軽鎖可変領域;CD8ヒンジおよび膜貫通ドメイン;ならびにCD28、4-1BB、およびCD3ζ細胞内同時刺激性シグナル伝達ドメイン。ヒンジ、膜貫通、およびシグナル伝達ドメインDNA配列は、Carl Juneによる特許(米国特許出願公開第2013/0287748A1号を参照されたい)から確認された。抗HLA-DR CAR遺伝子は、ベクター宿主にアンピシリン耐性を付与する、bla遺伝子を含有するpUC57ベクター骨格内にGenewiz,Inc.(South Plainfield、NJ)によって合成された。
レンチウイルスプラスミドへのCAR遺伝子のサブクローニング
【0239】
NovaBlue Singles(商標)化学的コンピテントE.coli細胞は、抗HLA-DRプラスミドcDNAで形質転換された。形質転換されたE.coli細胞の成長後、CARプラスミドは、精製され、適切な制限酵素で消化されて、HIV-1長末端反復(LTR)、パッケージングシグナル(Ψ)、EF1αプロモーター、内部リボソームエントリー部位(IRES)、およびウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を含有する、HIV-1ベースレンチウイルスベクター中に、一晩のT4 DNAリガーゼ反応(New England Biosciences; Ipswich、MA)を介して挿入された。次に、NovaBlue Singles(商標)化学的コンピテントE.coli細胞は、生じた抗HLA-DR含有レンチウイルスプラスミドで形質転換された。
レンチウイルス粒子の産生
【0240】
トランスフェクション前に、HEK293T細胞は、10mL完全-Tet-DMEM中の4.0×106細胞/100mm組織-培養-処理プレートに播種し、加湿5%CO2インキュベーター中に37℃で一晩インキュベートされた。80~90%コンフルエントに達したら、HEK293T細胞は、CAR-遺伝子レンチウイルスプラスミドおよびレンチウイルスエンベロープ&カプシド成分を形成するため必要な遺伝子を含有するレンチウイルスパッケージングプラスミド、加えて、独自の反応緩衝液およびHEK293T細胞に結合するプラスミド含有ナノ粒子の形成を促進するためのポリマーで同時トランスフェクトされた。
【0241】
トランスフェクトされたHEK293T細胞培養を4時間、37℃でインキュベート後、トランスフェクション培地は、10mLの新鮮な完全Tet DMEMで置きかえられた。次に、HEK293T細胞は追加の48時間インキュベートされ、その後に細胞上清は収穫され、主なレンチウイルスカプシドタンパク質であるp24に対してサンドイッチELISAでレンチウイルス粒子について試験された。レンチウイルス含有上清はアリコートにされ、標的CD4+およびCD8+T細胞の形質導入のための使用まで-80℃で貯蔵された。
ヒトCD4+およびCD8+末梢血T細胞の精製、活性化、および富化
【0242】
末梢血単核球(PBMC)は、Ficoll-Paque Plus(GE Healthcare; Little Chalfont、Buckinghamshire、UK)で密度勾配遠心分離によって富化され、回収され、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)および2mM EDTAを含有するPBSと共に遠心分離によって洗浄された。MACS CD4+およびCD8+マイクロビーズ(Miltenyi Biotec; San Diego、CA)キットが使用されて、これらのヒトT細胞サブセットは単離され、磁力活性化されたLSカラムを使用して、CD4+およびCD8+ T細胞に関して陽性選択された。次に、磁力で結合されたT細胞は、磁気MACSセパレーターから除去され、LSカラムからフラッシュされ、新鮮な完全培地中で洗浄された。CD4+およびCD8+ T細胞集団の純度は、Life Technologies Acoustic Attune(登録商標)Cytometerを使用するフローサイトメトリーによって評価され、必要な場合、USCのフローサイトメトリーコア施設で行った蛍光活性化セルソーティングによって富化された。CD4+およびCD8+ T細胞は、適切な細胞培養容器中で100IU/mL IL-2で補充した完全培地中に1.0×106個細胞/mLの密度に維持され、そこにα-CD3/α-CD28ヒトT細胞Dynabeads(Life Technologies;Carslbad、CA)を添加して、培養されたT細胞が活性化された。T細胞は、CAR-レンチウイルス粒子で形質導入する前に2日間、5%CO2インキュベーター中で37℃でインキュベートされた。
CD4+CD8+ T細胞のレンチウイルス形質導入
【0243】
活性化T細胞が収集され、死細胞がFicoll-Hypaque密度勾配遠心分離またはMACS死細胞除去キット(Miltenyi Biotec; San Diego、CA)の使用によって除去された。6-ウェルプレートにおいて、活性化T細胞は、1.0×106個細胞/mL完全培地の濃度でプレートされた。HLA-DR CAR含有レンチウイルス粒子は、様々なウェルに、1、5、10、および50などの感染多重度(MOI)で細胞懸濁物に添加された。レンチウイルス粒子と標的細胞表面の間の相互作用を促進することによって形質導入を助ける陽イオン性ポリマーであるポリブレンは、4μg/mLの最終濃度で添加された。プレートは、800×gで1時間、32℃で遠心分離された。遠心分離後、レンチウイルス含有培地は吸引され、細胞ペレットは100IU/mL IL-2を有する新鮮な完全培地中で再懸濁された。細胞は、5%CO2加湿インキュベーター中に37℃で一晩置かれた。形質導入3日後に、細胞はペレットにされ、IL-2および400μg/mLジェネテシン(G418硫酸塩)(Life Technologies; Carlsbad、CA)を有する新鮮な完全培地中に再懸濁された。HLA-DR CAR修飾T細胞は、形質導入手順の成功を実証するため、フローサイトメトリーおよびサザンブロット分析によって評価された。in vitroおよびin vivoアッセイ前に、HLA-DR CAR T細胞は、FACSによって富化され、in vivo研究のために1:1に混合された。
カルセイン放出細胞毒性アッセイによるCAR有効性のin vitro評価
【0244】
HLA-DR抗原陽性および陰性のヒト細胞株は、収集され、洗浄され、1.0×106個細胞/mLの濃度で完全培地中に再懸濁された。カルセイン-アセトキシメチル(AM)は、15μMで標的細胞試料に添加され、次にこれは37℃で5%CO2加湿インキュベーター中で30分間インキュベートされた。染色された陽性および陰性の標的細胞は、2回洗浄され、遠心分離によって完全培地中に再懸濁され、96-ウェルプレートに1.0×104個細胞/ウェルで添加された。HLA-DR CAR T細胞は、完全培地においてプレートにエフェクター対標的細胞比(effector-to-target cell ratio)50:1、5:1、および1:1で添加された。完全培地および2%トリトンX-100を有する完全培地中に懸濁された染色された標的細胞は、それぞれ自発性および最大放出対照として貢献する。プレートは365xgおよび20℃で2分間で遠心分離され、その後にインキュベーターに3時間戻された。次に、プレートは10分間遠心分離され、細胞上清が黒色ポリスチレン96-ウェルプレート上のそれぞれのウェルにアリコートとされ、励起および発光をそれぞれ485/20nmおよび528/20nmで、Bio-Tek(登録商標)Synergy(商標)HTマイクロプレートリーダーにおいて蛍光に関して評価された。
Luminex Bioassayによるヒトサイトカインの定量
【0245】
HLA-DR CAR修飾T細胞およびHLA-DR陽性および陰性の腫瘍細胞株の上清は、研究室においてルーチンで行われる標準手順を使用してCAR T細胞活性化の尺度としてサイトカイン分泌について測定された。データを、培地単独とおよび非活性化ヒトT細胞を使用する培養物と比較して、バックグラウンド放射能を識別した。IL-2、IFN-g、IL-12、および他の妥当なサイトカインの濃度は、インキュベーションプロセスの間に経時的に測定された。
2種の異種移植片HLA-DR陽性がんモデルにおけるCAR T細胞有効性のin vivo評価
【0246】
HLA-DR CAR T細胞は、2種の異なるヒト腫瘍細胞株異種移植片腫瘍モデルを使用してin vivoでさらに評価付けられた。両方について、固形腫瘍は、5×106個のHLA-DR陽性またはHLA-DR陰性固形腫瘍細胞株の注射によって6~8週齡雌性ヌードマウスにおいて皮下で確立された。腫瘍が直径0.5cmに達すると、マウス(n=5)の群は、1もしくは3×107個の陰性対照としてのヒトT細胞またはin vitro研究結果に基づき最も活性なHLA-DR抗体から構築されたHLA-DR CAR T細胞で静脈内に処置された。次に、腫瘍体積は週当たり3回キャリパーによって測定され、体積成長曲線は、対照に対する実験処置の有効性を実証するため生成された。
【0247】
HLA-DRは、CAR T細胞開発についての優れた標的であることが見出された。
(実施例3)
Lym-1 CAR細胞
CARレンチウイルス構築物の構築
【0248】
Lym-1 CARベクターは、CD8リーダー配列、続いて細胞外抗原結合部分またはscFV(これは特異的にLym-1抗原に結合する)を含有する。scFVは、CD8ヒンジ領域を介して細胞質シグナル伝達ドメインに連結し、これはCD8膜貫通領域、ならびに4-1BBおよびCD3ζからのシグナル伝達ドメインを含む(
図7)。シグナル伝達ドメインを含むCAR配列を、Genewiz Gene Synthesisサービス(Piscataway、NJ)によって合成的に合成した。プラスミドは、精製され、適切な制限酵素で消化されて、HIV-1 5’および3’長末端反復(LTR)、パッケージングシグナル(Ψ)、EF1αプロモーター、内部リボソームエントリー部位(IRES)、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)ならびにシミアンウイルス40オリジン(SV40)を含有するHIV-1ベースレンチウイルスベクター(pLVX-IRES-ZsGreen、Clontech、Signal Hill、CA)中に、一晩T4 DNAリガーゼ反応(New England Biosciences; Ipswich、MA)、続いて制限酵素消化を使用するIRES-ZsGreenの欠失およびT4 DNAリガーゼでのライゲーションを介して挿入された。次に、NovaBlue Singles(商標)化学的コンピテントE.coli細胞は、生じたCAR含有レンチウイルスプラスミドで形質転換された。
レンチウイルス粒子の産生
【0249】
トランスフェクション前に、HEK293T細胞は、10%透析FCSで補充した20mL DMEM中で150cm2組織培養処理フラスコ中で4.0×106個細胞で播種され、一晩37℃で加湿5%CO2インキュベーター中でインキュベートされた。80~90%コンフルエントに達したら、HEK293T細胞は、ペニシリン/ストレプトマイシン(streptamycin)なしで1%透析FCSで補充した20ml DMEM中で、2時間37℃で加湿5%CO2インキュベーター中でインキュベートされた。HEK293T細胞は、CARプラスミドおよびレンチウイルスエンベロープ&カプシド成分を形成するため必要な遺伝子を含有するレンチウイルスパッケージングプラスミドで同時トランスフェクトされた。独自の反応緩衝液およびHEK293T細胞に結合するプラスミド含有ナノ粒子の形成を促進するためのポリマーも、添加された。トランスフェクトされたHEK293T細胞培養を24時間、37℃でインキュベート後、トランスフェクション培地は、20mLの新鮮な完全DMEMで置きかえられた。レンチウイルス上清は24時間毎に3日間収集され、上清は1,250rpmで5分4℃で遠心分離され、続いてフィルター滅菌および20,000gで2時間4℃で遠心分離された。濃縮されたレンチウイルスは、7%トレハロースおよび1%BSAを含有するPBA中に再懸濁された。次に、レンチウイルスは、アリコートにされ、標的CD4+およびCD8+T細胞の形質導入のための使用まで-80℃で貯蔵された。24時間後に収穫された細胞上清は、主なレンチウイルスカプシドタンパク質であるp24に対してサンドイッチELISAでレンチウイルス粒子について試験された。トランスフェクション効率は、ビオチン標識タンパク質L抗体(Genscript、Piscataway、NJ)での染色、その後PEにコンジュゲートされたストレプトアビジンでインキュベーションされるFACS分析によって20%~50%の間と推定され検出された。
ヒトCD4+およびCD8+末梢血T細胞の精製、活性化、および富化
【0250】
末梢血単核球(PBMC)はFicoll-Paque Plus(GE Healthcare; Little Chalfont、Buckinghamshire、UK)で密度勾配遠心分離によって富化され、回収され、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)および2mM EDTAを含有するPBSと共に遠心分離によって洗浄された。T細胞濃縮キット(Stem Cell Technologies)が使用されて、CD4+およびCD8+ T細胞に関する陰性選択を使用してこれらのヒトT細胞サブセットが磁力的に単離された。CD4+およびCD8+ T細胞集団の純度は、Life Technologies Acoustic Attune(登録商標)Cytometerを使用するフローサイトメトリーによって評価され、蛍光活性化セルソーティングによって富化された。1:1に混合されたCD4+およびCD8+ T細胞は、適切な細胞培養容器中で100IU/mL IL-2で補充した完全50%クリック培地/50%RPMI-1640培地中に1.0×106個細胞/mLの密度に維持され、そこにα-CD3/α-CD28ヒトT細胞アクチベータビーズ(Stem Cell Technologies)を添加して、培養されたT細胞が活性化された。次に、T細胞は、CARレンチウイルス粒子を形質導入する前に2日間、5%CO2インキュベーター中で37℃でインキュベートされた。
CD4+CD8+ T細胞のレンチウイルス形質導入
【0251】
活性化T細胞が収集され、死細胞がFicoll-Hypaque密度勾配遠心分離またはMACS死細胞除去キット(Miltenyi Biotec; San Diego、CA)の使用によって除去された。6-ウェルプレートにおいて、活性化T細胞は、完全培地中に1.0×106個細胞/mLの濃度でプレートされる。細胞は、細胞に対するトランスフェクション援助剤(Oz Biosciences、San Diego、CA)であるLentiblastで補充したレンチウイルス粒子で形質導入される。形質導入した細胞を、24時間37℃で加湿5%CO2インキュベーター中でインキュベートした。細胞は、スピンダウンされ、培地は交換され、続いてT細胞アクチベータビーズ(Stem Cell Technologies、San Diego、CA)が追加された。
フローサイトメトリーによるLym-1 CAR発現の検出
【0252】
レンチウイルス形質導入の7日後、初代T細胞は、洗浄緩衝液(PBS中の4%BSA)を使用して3回洗浄された。細胞は、Biotein-Protein L(2ug、Genscript、Piscataway、NJ)で4℃で45分インキュベートされた。再び、細胞は、洗浄緩衝液で3回洗浄され、続いて2ulのストレプトアビジン-PE(BD Sciences、La Jolla、CA)で4℃で45分インキュベートされた。細胞は、3回洗浄され、フローサイトメトリー(Attune Cytometer、Applied Biosciences、Carlsbad、CA)を使用して分析された。
細胞毒性アッセイ
【0253】
Lym-1 CAR T細胞の細胞毒性は、乳酸脱水素酵素(LDH)細胞毒性キット(Thermo Scientific、Carlsbad、CA)を使用して決定された。活性化T細胞は収集され、1×106個細胞は、上記のとおりLym-1 CARレンチウイルス構築物で形質導入された。細胞は、細胞毒性アッセイ前2日間T細胞アクチベータビーズ(Stem Cell Technologies、San Diego、CA)を使用して活性化された。標的細胞の至適な数は、製造者のプロトコールのように決定された。アッセイに関して、適切な標的細胞は、96ウェルプレートで24時間37℃で5%CO2インキュベーター中で三通りにプレートされ、続いて活性化CAR T細胞を20:1、10:1、5:1および1:1の比で追加し、24時間37℃で5%CO2インキュベーター中でインキュベートされた。細胞は、37℃で45分溶解され、1,250rpmで5分間スピンダウンされた。上清は、新しい96ウェルプレートに移され、続いて反応混合物が30分間追加された。反応は、停止液を使用して停止され、プレートは450nmで読み取られ650nmで吸光度補正された。
in vivo腫瘍退縮アッセイ
【0254】
Foxn1ヌルマウスは、Lym-1抗原を発現する、不死化Bリンパ腫細胞株Rajiを注射された。200ulのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の2×106個Raji細胞と共に1×106個ヒト繊維芽細胞が、循環NK細胞の数が低下され、高頻度で異種移植の移植を可能にする、前照射マウス(400rads)の左脇腹に注射された。T細胞は、αCD3/CD28アクチベータ複合体(Stem Cell Technologies、San Diego、CA)で2日間活性化された。次に、活性化T細胞は、Lym-1 CARレンチウイルス粒子で形質導入され、続いてαCD3/CD28アクチベータ複合体で追加の2日間活性化された。Lym-1 CAR(2.5×106)を発現する活性化T細胞は、腫瘍接種の7日後に側尾静脈を介してマウスの静脈内に注射された。腫瘍サイズがノギスを使用して週当たり3回評価され、腫瘍体積が計算された。
Lym-1 CAR発現の検出
【0255】
Lym-1 CARの発現についてLym-1 CAR T細胞の分析は、Lym-1について陽性の62.5%の形質導入T細胞を示した(
図8中央パネル)。対照的に、対照として使用される未形質導入T細胞の僅か1%が、CAR発現に関して陽性であった(
図8左パネル)。CD19形質導入T細胞は、陽性対照として使用され、CD19 CARの52%発現が示された(
図8右パネル)。
Lym-1 CAR T細胞についての細胞毒性
【0256】
Lym-1 CAR T細胞の細胞溶解活性を、B細胞リンパ腫細胞株であるRajiを使用して検査した。Rajiは、FACS分析によって決定されたとおり、Lym-1抗原(HLA-Dr10)を発現する。Lym-1 CAR T細胞を、20:1、10:1、5:1および1:1のエフェクター対標的細胞比でRaji細胞に添加した。Lym-1 CAR T細胞は、5:1、10:1および20:1の比で22%の溶解比で標的Raji細胞の溶解の増加を示した。それに対し、未形質導入T細胞は、試験されたいずれの比でもRaji細胞を溶解しなかった。
(実施例4)
Lym-2 CAR細胞
CARレンチウイルス構築物の構築
【0257】
Lym-2 CARベクターは、CD8リーダー配列、続いて細胞外抗原結合部分またはscFV(これは特異的にLym-2抗原(HLA-Dr)に結合する)を含有する。scFVは、CD8ヒンジ領域を介して細胞質シグナル伝達ドメインに連結し、これはCD8膜貫通領域、ならびに4-1BBおよびCD3ζからのシグナル伝達ドメインを含む。シグナル伝達ドメインを含むCAR配列を、Genewiz Gene Synthesisサービス(Piscataway、NJ)によって合成的に合成した。プラスミドは、精製され、適切な制限酵素で消化されて、HIV-1 5’および3’長末端反復(LTR)、パッケージングシグナル(Ψ)、EF1αプロモーター、内部リボソームエントリー部位(IRES)、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)ならびにシミアンウイルス40オリジン(SV40)を含有するHIV-1ベースレンチウイルスベクター(pLVX-IRES-ZsGreen、Clontech、Signal Hill、CA)中に、一晩T4 DNAリガーゼ反応(New England Biosciences; Ipswich、MA)、続いて制限酵素消化を使用するIRES-ZsGreenの欠失およびT4 DNAリガーゼでのライゲーションを介して挿入された。次に、NovaBlue Singles(商標)化学的コンピテントE.coli細胞は、生じたCAR含有レンチウイルスプラスミドで形質転換される。
レンチウイルス粒子の産生
【0258】
トランスフェクション前に、HEK293T細胞は、10%透析FCSで補充した20mL DMEM中で150cm2組織培養処理フラスコ中で4.0×106個細胞で播種され、一晩37℃で加湿5%CO2インキュベーター中でインキュベートされた。80~90%コンフルエントに達したら、HEK293T細胞は、ペニシリン/ストレプトマイシンなしで1%透析FCSで補充した20ml DMEM中で、2時間37℃加湿5%CO2インキュベーター中でインキュベートされた。HEK293T細胞は、CARプラスミドおよびレンチウイルスエンベロープ&カプシド成分を形成するため必要な遺伝子を含有するレンチウイルスパッケージングプラスミドで同時トランスフェクトされた。独自の反応緩衝液およびHEK293T細胞に結合するプラスミド含有ナノ粒子の形成を促進するためのポリマーも、添加された。トランスフェクトされたHEK293T細胞培養を24時間、37℃でインキュベート後、トランスフェクション培地は、20mLの新鮮な完全DMEMで置きかえられた。レンチウイルス上清は24時間毎に3日間収集され、上清は1,250rpmで5分4℃で遠心分離され、続いてフィルター滅菌および20,000gで2時間4℃で遠心分離された。濃縮されたレンチウイルスは、7%トレハロースおよび1%BSAを含有するPBA中に再懸濁された。レンチウイルスは、アリコートにされ、標的CD4+およびCD8+T細胞の形質導入のための使用まで-80℃で貯蔵された。24時間後に収穫された細胞上清は、主なレンチウイルスカプシドタンパク質であるp24に対してサンドイッチELISAでレンチウイルス粒子について試験された。トランスフェクション効率は、ビオチン標識タンパク質L抗体(Genscript、Piscataway、NJ)での染色、続いてPEにコンジュゲートされたストレプトアビジンでインキュベーションされ、FACS分析によって検出されて20%~50%の間と推定された。
ヒトCD4+およびCD8+末梢血T細胞の精製、活性化、および富化
【0259】
末梢血単核球(PBMC)はFicoll-Paque Plus(GE Healthcare; Little Chalfont、Buckinghamshire、UK)で密度勾配遠心分離によって富化され、回収され、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)および2mM EDTAを含有するPBSと共に遠心分離によって洗浄された。T細胞濃縮キット(Stem Cell Technologies)が使用されて、CD4+およびCD8+ T細胞に関する陰性選択を使用してこれらのヒトT細胞サブセットが磁力的に単離された。CD4+およびCD8+ T細胞集団の純度は、Life Technologies Acoustic Attune(登録商標)Cytometerを使用するフローサイトメトリーによって評価され、蛍光活性化セルソーティングによって富化される。1:1に混合されたCD4+およびCD8+ T細胞は、適切な細胞培養容器中で100IU/mL IL-2で補充した完全50%クリック培地/50%RPMI-1640培地中に1.0×106個細胞/mLの密度に維持され、そこにα-CD3/α-CD28ヒトT細胞アクチベータビーズ(Stem Cell Technologies)を添加して、培養されたT細胞が活性化された。次に、T細胞は、CARレンチウイルス粒子を形質導入する前に2日間、5%CO2加湿インキュベーター中で37℃でインキュベートされた。
CD4+CD8+ T細胞のレンチウイルス形質導入
【0260】
活性化T細胞が収集され、死細胞がFicoll-Hypaque密度勾配遠心分離またはMACS死細胞除去キット(Miltenyi Biotec; San Diego、CA)の使用によって除去された。6-ウェルプレートにおいて、活性化T細胞は、完全培地中に1.0×106個細胞/mLの濃度でプレートされた。細胞は、細胞に対するトランスフェクション援助剤(Oz Biosciences、San Diego、CA)であるLentiblastで補充したレンチウイルス粒子で形質導入された。形質導入した細胞は、24時間37℃加湿5%CO2インキュベーター中で37℃でインキュベートされた。細胞は、スピンダウンされ、培地は交換され、続いてT細胞アクチベータビーズ(Stem Cell Technologies、San Diego、CA)が追加された。
細胞毒性アッセイ
【0261】
Lym-2 CAR T細胞の細胞毒性は、乳酸脱水素酵素(LDH)細胞毒性キット(Thermo Scientific、Carlsbad、CA)を使用して決定された。活性化T細胞は収集され、1×106個細胞は、上記のとおりLym-2 CARレンチウイルス構築物で形質導入された。細胞は、細胞毒性アッセイ前2日間T細胞アクチベータビーズ(Stem Cell Technologies、San Diego、CA)を使用して活性化された。標的細胞の至適な数は、製造者のプロトコールのように決定される。アッセイに関して、適切な標的細胞が、96ウェルプレートで24時間37℃で37℃加湿5%CO2インキュベーター中で三通りにプレートされ、続いて活性化CAR T細胞を20:1、10:1、5:1および1:1の比で追加し、上記のとおり24時間インキュベートされる。細胞は37℃で45分溶解され、1,250rpmで5分間遠心分離される。上清は、新しい96ウェルプレートに移され、続いて反応混合物が30分間追加された。反応は、停止液を使用して停止され、プレートは450nmで読み取られ650nmで吸光度補正された。
in vivo腫瘍退縮アッセイ
【0262】
Foxn1ヌルマウスは、Lym-2抗原を発現する、不死化Bリンパ腫細胞株Rajiを注射された。200ulのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の2×106個Raji細胞と共に1×106個ヒト繊維芽細胞が、高摂取比(high take rate)の腫瘍を保証して、前照射(400rads)BALB/cマウスの左脇腹に注射された。T細胞は、αCD3/CD28アクチベータ複合体(Stem Cell Technologies、San Diego、CA)で2日間活性化された。次に、活性化T細胞は、Lym-2 CARレンチウイルス粒子で形質導入され、続いてαCD3/CD28アクチベータ複合体で追加の2日間活性化された。Lym-2 CAR(2.5×106)を発現する活性化T細胞は、腫瘍接種の7日後にマウスの静脈内に注射された。腫瘍サイズがノギスを使用して週当たり3回評価され、腫瘍体積が計算された。
Lym-2 CAR発現の検出
【0263】
Lym-1 CARの発現についてLym-2 CAR T細胞の分析は、Lym-2について陽性の28%の形質導入されたT細胞を示した(
図11中央パネル)。対照的に、対照として使用される未形質導入T細胞の僅か1%が、CAR発現に関して陽性であった(
図11左パネル)。CD19形質導入T細胞は、陽性対照として使用され、CD19 CARの52%発現が示された(
図11右パネル)。
Lym-2 CAR T細胞についての細胞毒性
【0264】
Lym-2 CAR T細胞の細胞溶解活性を、B細胞リンパ腫細胞株であるRajiを使用して決定した。Rajiは、FACS分析によって決定されたとおり、Lym-2抗原を発現する。Lym-2 CAR T細胞を、20:1、10:1、5:1および1:1のエフェクター対標的細胞比でRaji細胞に添加した。Lym-2 CAR T細胞は、5:1および10:1の比で22%の溶解比で標的Raji細胞の溶解の増加を示す。それに対し、未形質導入T細胞は、試験されたいずれの比でもRaji細胞を溶解しなかった。
(実施例5)
NK細胞形質導入
NK-92MI形質導入
【0265】
NK-92Mi細胞株を、ATCC(CRL-2408)から購入し、10%FBSを有するRPMI-1640中に維持した。形質導入前に、非組織処理24-ウェルを、300μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で室温で2時間、10μgのRetroNectin(Clontech T100A)とインキュベートした。100万個のNK-92Mi細胞およびレンチウイルス(MOI=5)を、混合し、RetroNectin被覆プレートに添加した。次に、プレートを、28℃、800gで90分遠心分離した。遠心分離後、細胞を、細胞培養インキュベーター中に一晩維持した。インキュベーション後、細胞を、PBSで3回洗浄し、次に翌朝、形質導入NK-92Mi細胞を、拡大増殖のために24ウェルG-Rex(Wilson Wolf)プレートに移した。レンチウイルス形質導入7日後、細胞を、洗浄緩衝液(PBS中4%BSA)中で3回洗浄し、Biotein-Protein L(1ug/100万個細胞、Genscript)で4℃で45分染色し、洗浄緩衝液で3回洗浄し、2ulストレプトアビジン-APC(BD science)で4℃で45分添加した。洗浄緩衝液中での最終的な3洗浄後、細胞をFACs(Attune)によって分析した(
図15)。
均等物
【0266】
他で定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術的および科学的用語は、本技術が属する技術分野の当業者に通常理解されるのと同じ意味を有する。
【0267】
本明細書中に例示的に記載される本技術は、本明細書中に特定的に開示されない、何らかの要素、制限の非存在下で適切に実施され得る。したがって、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」などの用語は、開放的に(expansively)かつ限定されることなく、読み取られるものとする。追加的に、本明細書中に用いられる用語および表現は、説明の用語として使用されており、限定することはない、示されかつ記載される特性またはその一部の任意の均等物を除外する用語および表現の使用に意図はないが、様々な改変が、請求される本技術の範囲内で可能であることが認識される。
【0268】
したがって、本明細書中に提供される材料、方法、および例は、好ましい態様の代表であり、例示的であり、本技術の範囲における限定として意図されないことが理解されるべきである。
【0269】
本技術は、広範かつ総称的に本明細書中に記載される。属の開示内のより狭い種および亜属の分類の各々も本技術の一部を構成する。これは本技術の属の説明を含み、取り除かれるものが本明細書中に具体的に列記されるか否かに関わらず、属からの何らかの主題を除く条件または負の限定を伴う。
【0270】
加えて、本技術の特性または態様が、マーカッシュ群の条件で記載される場合に、当業者は、本技術も、それにより、マーカッシュ群のメンバーの任意の個々のメンバーまたはサブグループの条件で記載されることを認識する。
【0271】
本明細書中で言及される全ての刊行物、特許出願および特許、ならびに他の参照は、個々の参照によって各々が組み込まれたのと同程度まで、その全体を参照によって明示的に組み込まれる。矛盾がある場合は、定義を含む本明細書が優先する。
【0272】
他の態様は、以下の特許請求の範囲内に記載される。