IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オリンパス・ウィンター・アンド・イベ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特開2022-51686医療行為中の消耗品のモニタリング方法及び医用画像処理システム
<>
  • 特開-医療行為中の消耗品のモニタリング方法及び医用画像処理システム 図1
  • 特開-医療行為中の消耗品のモニタリング方法及び医用画像処理システム 図2
  • 特開-医療行為中の消耗品のモニタリング方法及び医用画像処理システム 図3
  • 特開-医療行為中の消耗品のモニタリング方法及び医用画像処理システム 図4
  • 特開-医療行為中の消耗品のモニタリング方法及び医用画像処理システム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051686
(43)【公開日】2022-04-01
(54)【発明の名称】医療行為中の消耗品のモニタリング方法及び医用画像処理システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 50/36 20160101AFI20220325BHJP
【FI】
A61B50/36
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021144219
(22)【出願日】2021-09-03
(31)【優先権主張番号】10 2020 124 551.3
(32)【優先日】2020-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510320416
【氏名又は名称】オリンパス・ウィンター・アンド・イベ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】特許業務法人森脇特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エンダース ボルグ
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲンス トルステン
(57)【要約】
【課題】消耗品が手術部位に忘れられるリスクを大幅に低減する方法及びシステムの提供
【解決手段】
未使用の消耗品が供給エリア(15)に提供され、消耗品が手術エリア(7)で使用され、使用済みの消耗品が回収エリア(20)に預けられる、医療処置中の消耗品を監視する方法が提示され、以下のステップを含むものである。少なくとも1つのカメラ(21、22)で供給エリア(15)と回収エリア(20)を観察するステップと、第1の自動画像処理手段によって、未使用の消耗品が供給エリア(15)から取り出されたときに登録するステップと、第2の自動画像処理手段によって、使用済みの消耗品が回収エリア(20)に預けられたときに登録するステップと、供給エリア(15)から取り出された消耗品と回収エリア(20)に預けられた消耗品のバランスをとるステップとを含む。さらに、医用画像処理システムが示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
未使用の消耗品が供給エリア(15)に提供され、消耗品が手術エリア(7)で使用され、使用済みの消耗品が回収エリア(20)に預けられる、医療処置中の消耗品をモニタリングする方法であって、以下のステップを含む。
少なくとも1つのカメラ(21、22)で供給エリア(15)及び回収エリア(20)を観察するステップと、
第1の自動画像処理手段によって、未使用の消耗品が供給エリア(15)から取り出されたときに登録するステップと、第2の自動画像処理手段によって、使用済みの消耗品が回収エリア(20)に預けられたときに登録するステップと、
供給エリア(15)から取り出された消耗品と回収エリア(20)に預けられた消耗品のバランスを取るステップ。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、さらに、手術領域(7)が少なくとも1つのカメラ(23)で監視され、第3の自動画像処理方法によって、手術領域(7)のどの位置に登録された消耗品が導入されたか、及び/又は、手術領域(7)のどの位置から登録された消耗品が除去されたかが判断されることを特徴とする方法。
【請求項3】
医療行為の開始時に0に設定され、供給エリア(15)からの消耗品の除去を登録すると増加し、回収エリア(20)への消耗品の預け入れを登録すると減少する、消耗品カウンターが維持されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
医療行為の完了後、カウンタの値を出力することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の方法であって、手術領域(7)への消耗品の導入及び/又は除去が登録されたときに、静止画像が記録され保存されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項2から4のいずれか1項に記載の方法であって、手術領域(7)への、又は手術領域からの消耗品の導入及び/又は除去が登録されたときに、所定の、又は予め定められた長さのビデオシーケンスが記録され、保存されることを特徴とする方法。
【請求項7】
前述の請求項のいずれか1項に記載の方法であって、消耗品が1つ又は複数の外科用把持器具によって導入及び/又は除去され、消耗品を備えた又は備えていない外科用把持器具が手術領域(7)に導入されたか及び/又は手術領域(7)から除去されたかが、第3の自動画像処理手段によって検出されることを特徴とする方法。
【請求項8】
前述の請求項のいずれか1項に記載の方法であって、第1及び/又は第2の自動画像処理手段が、複数の計数可能な消耗品が供給エリア(15)から同時に取り出された場合、又は回収エリア(20)に預けられた場合に認識するように構成されていることを特徴とする方法。
【請求項9】
前記第1の自動画像処理手段は、特徴的な幾何学的データに基づいて消耗品の除去数を決定するように構成されていることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法であって、計数可能な消耗品が収集エリア(20)において手動で分離され、第2の自動画像処理手段が、分離後に預けられた消耗品の数を決定するように構成されていることを特徴とする方法。
【請求項11】
医用画像処理システムであって、以下のものを含む。
未使用の消耗品の供給エリア(15)、使用済みの消耗品の回収エリア(20)、及びオプションとして手術エリア(7)を撮影するように構成された1つ又は複数のカメラ(21、22、23)と、
1つ又は複数のカメラ(21、22、23)からビデオデータを受信するように構成されたコントローラ(601)と、を備え、
コントローラ(601)は、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療処置中の消耗品を監視する方法及び医用画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
消耗品は、多くの医療処置、特に外科処置において使用される。本発明の文脈では、消耗品は、それぞれの処置中に1回だけ使用するために提供され、使用後に廃棄される補助材料である。
【0003】
消耗品の代表例としては、外科手術の際に、術者の視界を確保するために手術部位の血液などの体液を採取するための手術用綿棒がある。
【0004】
処置中の液体の量に応じて、このようなスワブは、例えば、少量の血液を採取するために、より長い期間、手術部位に留まることができ、あるいは、例えば、大量の出血の場合には、短時間後に再び除去されてもよい。
【0005】
いずれにしても、手術終了時には、手術部位を閉じる際に誤って消耗品が残っていないことを確認する必要がある。消耗品が手術部位に残っていると、不快感が続いたり、傷の治癒が遅れたり、さらには感染症などの深刻な合併症を引き起こす可能性がある。
【0006】
調査によると、体腔内の外科手術における完全性管理のための厳格な規制にもかかわらず、意図せずに消耗品が手術部位に残ってしまう事故が10万件あたり約20件発生している(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「Every Swab Counts」https://www.aps-ev.de/wp-content/uploads/2016/09/Glossar_JTZ_Internet.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、消耗品が手術部位に忘れられるリスクを大幅に低減する方法及びシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、本発明の第1の側面によれば、未使用の消耗品が供給エリアに提供され、消耗品が手術エリアで使用され、使用済みの消耗品が回収エリアに預け入れられる(デポジットされる)医療処置中の消耗品を監視する方法であって、以下のステップを含む方法によって達成される。少なくとも1つのカメラで供給エリアと回収エリアを観察するステップと、第1の自動画像処理手段によって、未使用の消耗品が供給エリアから取り出されたときに登録するステップと、第2の自動画像処理手段によって、使用済みの消耗品が回収エリアに預けられたときに登録するステップと、供給エリアから取り出された消耗品と回収エリアに預けられた消耗品のバランスをとるステップとを含む。
【0010】
自動画像処理方法を使用することで、消耗品のバランス調整における人間のエラーの源を排除することができる。この点において、本発明によるエンド・ツー・エンドの監視は、それぞれの供給エリアと回収エリアが一般的にカメラで簡単に撮影できるため、特に信頼性が高い。カメラの視野内にいる人などが関連領域に重なることによる検出エラーを防ぐことができる。
【0011】
自動画像処理方法としては、あらかじめ設定されたルールに基づいて対象物を認識する古典的な画像処理方法を用いることができる。また、人工知能を利用した画像処理方法を用いることもできる。
【0012】
本発明による方法のさらなる発展では、さらに、少なくとも1つのカメラで手術領域を監視し、第3の自動画像処理方法によって、手術領域のどの位置に登録された消耗品が導入されるか、及び/又は、手術領域のどの位置から登録された消耗品が除去されるかを決定することができる。これにより、消耗品の不足が検出された場合、手術エリアのどの位置に消耗品があると推定されるかを自動的に判断することができる。これにより、不足している消耗品の発見が早まる可能性がある。
【0013】
本発明による方法の特定の実施形態では、消耗品は計数可能な消耗品であってもよく、医療処置の開始時に0に設定され、供給エリアからの消耗品の除去を登録すると増加し、収集エリアに消耗品を積み上げることを登録すると減少する消耗品カウンタが維持されてもよい。このように、消耗品カウンタは、手術エリアに何個の消耗品が存在するかをいつでも示すことができる。
【0014】
同時に、医療処置の完了後、カウンタの値を出力してもよい。例えば、医療処置の完了後に、消耗品カウンタの値を明示した検証文書として、消耗品ログを生成してもよい。
【0015】
本発明による方法の別の実施形態では、手術領域への消耗品の導入及び/又は除去が登録されたときに、静止画像を記録して保存してもよい。このような静止画像を保存することにより、消耗品の数に不一致があった場合に手動で再確認することができる。
【0016】
同様に、手術領域への消耗品の導入及び/又は除去が登録されたときに、所定の長さ又は事前に決定可能な長さのビデオシーケンスを記録して保存してもよい。ビデオシーケンスは、消耗品の数を手動で再確認する場合にさらなる情報を提供したり、より正確な識別を可能にしたりする。
【0017】
本発明による方法の特定のさらなる発展では、消耗品は、1つ以上の外科用把持器具によって導入及び/又は除去され、消耗品を有する外科用把持器具が手術領域に導入されたか、又は手術領域から除去されたかが、第3の自動画像処理手段によって検出されてもよい。外科用把持器具を考慮に入れることで、自動画像処理手段に追加の情報を提供し、消耗品の検出率を高めることができる。
【0018】
第1及び/又は第2の自動画像処理手段は、好ましくは、複数の計数可能な消耗品が供給エリアから同時に取り出されたり、収集エリアに預けられたりした場合に、それを認識するように構成されてもよい。
【0019】
この文脈において、第1の自動画像処理方法は、特徴的な幾何学的データに基づいて、取り除かれた消耗品の数を決定するように構成されてもよい。これは、例えば、供給スタックの高さの変化や、消耗品が折り畳まれた状態で保持されている場合の折り目線の輪郭などであってもよい。
【0020】
また、回収エリアで消耗品を人手で分離し、分離後に第2の自動画像処理手段が預けられた消耗品の数を判定するように構成されていてもよい。このような分離は、回収エリアでは必須であることが多いため、各事例で預けられた消耗品の数の決定を大幅に簡素化することができる。
【0021】
本発明のさらなる態様によれば、その目的は、未使用の消耗品の供給エリア、使用済みの消耗品の回収エリア、及び任意に手術エリアを検出するように構成された1つ又は複数のカメラと、1つ又は複数のカメラからビデオデータを受信するように構成されたコントローラと、を備える医用画像処理システムによって達成され、コントローラは、先の実施形態による方法を実行するように構成されていることを特徴とする。それによって達成可能な効果及び利点に関しては、前述の内容を明示的に参照する。
【0022】
以下では、いくつかの例示的な実施形態を用いて本発明をより詳細に説明する。これに関連して、図示された実施形態は、本発明を限定することなく、本発明のより良い理解に寄与することを意図しているに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】簡略化して示した手術室の構造
図2】バランスをとるための方法
図3】3a、3b供給エリアでの光学的シナリオ
図4】4a、4b回収エリアにおける光学的シナリオ
図5】画像処理システム
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、手術室1の可能なレイアウトを非常に簡略化した上面図で示している。手術室1のほぼ中央には、手術を行うことができる手術台2が配置されている。手術台2の周囲には、実行される手術に直接関与する人の移動領域3、4、5、6が示されている。手術台2と移動エリア3、4、5、6は、手術エリア7を形成している。
【0025】
図1では、手術エリア7の右側にサプライテーブル10、11が示されている。補給テーブル10上には様々な手術器具が配置されており、補給テーブル11上には医療用消耗品を収納した複数の補給スタックが配置されている。補給テーブル10、11と手術エリア7との間には、補給テーブル10、11から手術器具及び/又は消耗品を取り出して、手術に直接関与する者に手渡すアシスタントの移動エリア12が示されている。補給テーブル10、11と移動エリア12は、補給エリア15を形成している。
【0026】
図1において、手術エリア7の左側には、デポジットテーブル16、17と、排出容器18がある。使用済みの手術器具は、デポジットテーブル16に預けることができる。使用済みの消耗品は、デポジットテーブル17に置かれ、バランスを取るために分離されることがある。分離してバランスを取った後、消耗品は排出容器18に入れてもよい。原則として、消耗品は、バランシング中に不整合が生じた場合に再集計を可能にするために、操作が完了するまで排出容器18に置かれない。一方のデポジットテーブル16、17及び排出容器18と、他方の手術エリア7との間には、使用済みの手術器具や消耗品を受け取る、さらなるアシスタントの移動エリア19が示されている。デポジットテーブル16、17、排出容器18、及び移動エリア19は、収集エリア20を形成する。
【0027】
手術エリア7に対する供給エリア15及び回収エリア20の位置は、手術の種類によって異なる可能性があり、示された構成は、各機能を説明するための単なる1つの可能な例である。多くの場合、供給テーブル10、11は、単一のテーブルとして設計される。また、供給エリア15と回収エリア20を組み合わせて、供給と回収を一人のアシスタントで行えるようにすることも珍しくない。
【0028】
手術後、特に患者の体腔内での開腹手術後に、手術器具や消耗品が意図せずに患者内に残されることがないようにするために、手術器具や消耗品のバランスを取る、すなわち、供給エリア15から取り出されたすべての器具や消耗品についても回収エリア20に払い出されるように監視する。このバランス調整は、通常、手動で行われ、したがって、エラーが発生しやすい。特に、緊急手術、手術手順の予定外の変更、又は手術中の担当者の変更などの場合には、バランシングエラーが発生し、その結果、手術器具や消耗品などの物体が意図せずに患者の中に残ってしまうことがある。手術器具は視覚的に容易に認識できるため、このような事態が発生するリスクは低いが、綿棒などの消耗品は体腔内で、特に血液と接触した後は容易に認識できないため、リスクが高まる。
【0029】
消耗品のバランス調整を人為的な影響から独立させるために、供給エリア15と回収エリア20にはカメラ21、22が配置されており、それぞれのエリアを監視したり、対応するエリアのビデオ画像を図1に示されていない制御システムに送ったりする。
【0030】
制御システムでは、複数の自動画像処理手順が互いに並行して実行され、供給エリア15からの消耗品の取り出しや回収エリアへの消耗品の投入を登録するために、カメラ21、22から供給されるビデオ画像を評価する。
【0031】
別のカメラ23が手術エリアに設けられ、同様に手術エリアからコントローラにビデオ画像を送信してもよい。そこでは、追加の自動画像処理手順により、手術領域のどの位置に消耗品が置かれたか及び/又は取り出されたかを評価してもよい。
さらに、制御システムは、図2に示す3つの独立したサブプロセスに分割された消耗品のバランシング手順を実行する。このバランス調整手順では、1つの消耗品カウンタを使用する。このカウンタは、コントローラ内で変数として定義され、手順の開始時に0に設定される。
【0032】
第1のサブプロセス100は、供給エリア15からの情報を処理する。第1のステップ101では、カメラ21からビデオ画像又は短いビデオシーケンスを受け取る。さらなるステップ102では、ビデオ画像又はビデオシーケンスが、供給エリア15から消耗品が取り出されている様子を示しているかどうかが照会される。 これが事実でない場合、サブプロセス100は、別の画像又はビデオシーケンスを受信するためにステップ101から再び開始する。
【0033】
一方、ステップ102で、消耗品が取り除かれたと判断された場合、ステップ103で、カウント可能な消耗品が何個取り除かれたかが判断される。そして、ステップ104では、消耗品カウンタを対応する数だけインクリメント(加算)する。これは、問題の数の消耗品が供給領域から取り除かれたことを示しており、したがって、患者の体内に潜在的に存在する可能性がある。その後、サブプロセス100は、ステップ101から再び始まる。
【0034】
第2のサブプロセス200は、収集エリア20からの情報を処理する。第1のステップ201では、カメラ22からビデオ画像又は短いビデオシーケンスが受信される。さらなるステップ202では、ビデオ画像又はビデオシーケンスが、収集エリア20に消耗品が預けられている様子を示しているかどうかが照会される。これが事実でない場合、サブプロセス200は、別の画像又はビデオシーケンスを受信するために、ステップ201から再び開始する。
【0035】
一方、ステップ202で、消耗品が預けられたと判断された場合、ステップ203で、カウント可能な消耗品が何個預けられたかが判断される。そして、ステップ204では、消耗品カウンタを対応する数だけ減少させる。これは、問題となっている数の消耗品が手術領域から取り除かれ、したがって、もはや患者の体内に潜在的に存在することができないことを示している。その後、サブプロセス200は、ステップ201から再び始まる。
【0036】
第3のサブプロセス300は、手術領域7からの情報を処理し、ここでも第1のステップ301において、カメラ23からビデオ画像又は短いビデオシーケンスが受信される。さらなるステップ302では、ビデオ画像又はビデオシーケンスが、手術エリア7への、又は手術エリアからの消耗品の導入又は除去を示しているかどうかが照会される。そうでない場合には、サブプロセス300もステップ301で再び開始し、別の画像又はビデオシーケンスを受信する。
【0037】
サブプロセス100、200とは異なり、サブプロセス300は、ステップ303において、手術領域のどの位置に消耗品が挿入又は除去されたかを判断する。この目的のために、手術領域を覆う仮想位置グリッドが定義され、グリッドの各フィールドに個別の消耗品カウンタが設けられる。
【0038】
ステップ304では、消耗品が何個導入されたか、又は除去されたかが再度判断される。ステップ305では、ステップ303で決定された位置に関連付けられた消耗品カウンタを、ステップ304で決定された数だけインクリメント又はデクリメント(減算)して、手術領域の各位置に現在どれだけの数の消耗品があるかを示す。
【0039】
手順の完了後、例えば入力装置を介して手動で制御装置に指示された場合、消耗品カウンタの値を適切な出力装置(モニタやその他のディスプレイ)を介して出力することができる。操作が完了したときに消耗品カウンタの値が0でない場合、エラー信号及び/又はアラームを出力することもできる。
【0040】
サブプロセス100、200、300が単一の画像ではなくビデオシーケンスを扱う場合、これらのシーケンスの長さは、一方では処理されるデータ量が管理可能なままであり、他方では軌跡に関する意味のある声明が可能なままであるような方法で選択することができる。適切なシーケンスの長さは、例えば、1秒から5秒の間である。シーケンスが長すぎると、1つのシーケンス内に複数の関連イベントが存在し、それらのすべてが認識されない可能性がある。
【0041】
個々のサブプロセス100、200、300に必要な画像処理手順は、異なる要件のために複雑さが異なる。原則として、既知の画像処理操作が使用され、当業者はそれぞれの要求に応じて専門的な知識から選択する。決定論的アルゴリズムの他に、「人工知能」(AI)という用語で一般的に要約される非決定論的手法も、画像処理手順のサブタスク又はすべてに使用することができる。その中でも、物体認識や物体分類などの画像処理には、畳み込みニューラルネットワークなどのニューラルネットワークが適していると言われている。このようなニューラルネットワークは、手動による分類で事前に評価された、未使用又は使用済みの消耗品の除去又は預けられることを示すビデオ画像又はビデオシーケンスの形でトレーニングデータを用いて学習することができる。
【0042】
消耗品が取り除かれたか、又は預けられたかを判断するために、ステップ102及び202でそれぞれ実行される検査は、比較的簡単なものである。未使用及び使用済みの綿棒や同様の消耗品は、例えばステンレス製のテーブルなどの背景に対して視覚的に容易に識別することができ、この目的のために既知の物体認識アルゴリズムを使用することができる。ビデオシーケンスを評価する際には、識別された物体の軌跡をさらに決定することができる。例えば、識別された物体の軌跡が所定の境界線(例えば、それぞれのテーブルの縁)を横切る場合には、除去又は預けられたことが確実に識別されると考えられる。
【0043】
図3a、3bは、供給エリア15で起こりうる2つのシナリオを示している。図3aは、消耗品のスタック400が、例えばアクセスを容易にするために、供給テーブル11上でどのように移動されるかを示している。その際、スタック400はデマケーションライン401を横切らず、その結果、材料の除去は検出されない。
【0044】
しかし、図3bでは、スタック400から部品402が取り出され、デマケーションライン401を越えて移動している。したがって、コントローラは、消耗品の除去を登録する。実際に除去された消耗品の数は、例えば、斜めに記録された画像から除去前と除去後のスタック400の高さを決定することにより、比較的容易に決定することができる。代わりに、消耗品の幾何学的特徴、例えば、折り畳まれた材料の特徴的な折り目の棘(とげ)などを評価してもよい。
【0045】
図4a、4bは、回収エリア20における2つの可能なシナリオを示している。図4aは、消耗品の塊500がデマケーションライン501を介してデポジットテーブル17に置かれる様子を示している。制御装置は、これを消耗品の預けること(デポジット)と分類する。図4bは、その後、消耗品の塊500が2つのピース500’、500’’に分離される様子を示している。ここでは、消耗品は区画線501を越えて移動していないので、新たに預けられた載置物は登録されない。しかし、制御システムは、分離から、2つの消耗品のピースが実際に以前に預けられたことを認識し、これに応じて処理することができる。
【0046】
なお、サブプロセス200では、消耗品の預けられた個数を正確に把握するために、他の方法を用いてもよい。例えば、カメラ22は、この目的のために、ステレオカメラやTOFカメラであってもよく、そうすることで、消耗品の塊500の体積が、映像データから追加的に推定されてもよい。消耗品の1つのピースの体積は知られているので、実際の体積を用いて、塊500に存在する消耗品のピースの数を推測することもできる。
【0047】
サブプロセス300において処理されるビデオデータは、基本的に、サブプロセス100、200で処理されるデータよりも評価が難しい。一つには、これは、手術領域では、カメラ23を、その視野が処置に関与する人によって時折妨げられないように配置することはほとんど不可能であるという事実に起因する。他方で、画像の背景には、例えば開いた体腔が描かれているため、使用済みの消耗品の破片とのコントラストがはっきりしない。それでも、消耗品の分布に関する合理的に信頼できる情報を抽出するために、追加の画像要素を評価することができる。例えば、消耗品は通常、把持具を使って出し入れされるが、この把持具は画像処理法を使って比較的容易に見つけることができる。
【0048】
把持具が検出された場合、さらに画像解析を行って、その把持具に消耗品が入っているかどうかを簡単に判断することもできる。この情報を評価することで、消耗品の位置を間接的に知ることができる。
【0049】
消耗品の導入又は除去のそれぞれの数を決定するために、サブプロセス300は、サブプロセス100、200からの情報に依存してもよく、これは、図2において、破線310、320によって示されている。
【0050】
消耗品のバランスをとるという主な機能は、サブプロセス100、200で実現されている。これらのサブプロセスでは、良好な光学的条件により高い検出信頼性が確保されているため、自動バランシングの精度は手動バランシングの精度を容易に上回ることができる。
【0051】
サブプロセス300については、光学的条件が悪いため、検出エラーが発生する確率が高くなる。そのため、このサブプロセスの結果はバランシングには直接使用されず、バランシング中に偏差が生じた場合に不足している消耗品をより迅速に見つけるためにのみ使用される。
【0052】
トラッキングのために、カメラ21、22、23からのビデオデータの全部又は一部を保存することができる。操作が完了した後、正しいバランスに疑問が生じた場合は、保存されたビデオデータを使用して手動又は自動で確認することができる。保存されるデータの量を減らすために、例えば、除去、預けること、又は分離が認識できるビデオ画像又はビデオシーケンスのみを保存することができる。
【0053】
図5は、医用画像処理システム600を示す図である。画像処理システム600は、カメラ21、22、23と、コントローラ601と、モニタ602とを備えている。
【0054】
コントローラ601は、プロセッサ605と、プログラムメモリ606と、ワーキングメモリ607とを含む。
【0055】
プログラムメモリ606には、プロセッサ605が読み込んで実行することにより、上述した手順を実行するプログラム情報が格納されている。この点において、プロセッサ605は、標準的なプロセッサであってもよい。可能な限り高い処理速度を実現するために、プロセッサ605は、サブプロセス100、200、300の全部又は一部を並列に実行可能なマルチコアプロセッサであってもよい。また、複数のCPUを有するマルチプロセッサシステムを用いてもよい。また、AIを利用した処理を適用する場合には、そのような処理に特化して最適化されたGPU(Graphics Processing Unit)を用いてもよい。カメラ21、22、23からの映像データは、処理中にメインメモリ607に格納される。
【0056】
モニター602は、操作終了後にバランス結果を出力するためのものである。
【0057】
以上の説明は、本発明の可能な一実施形態を示すに過ぎず、添付の請求項の範囲内で変更することができる。例えば、手術エリア7、供給エリア15、及び収集エリア20が好適に配置されている場合、3つ以下のカメラが必要となる場合があり、最も好ましい場合には、1つのカメラで十分である。手術エリアのために提供されるカメラは、とにかく現代の手術室に存在するルームカメラであってもよい。
【0058】
ここでは、本発明を開腹手術に関連してのみ説明しているが、内視鏡器具を用いた低侵襲手術にも同様に使用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】