(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051693
(43)【公開日】2022-04-01
(54)【発明の名称】PCVバルブ
(51)【国際特許分類】
F01M 13/00 20060101AFI20220325BHJP
【FI】
F01M13/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148689
(22)【出願日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】63/081,102
(32)【優先日】2020-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/412,709
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521403502
【氏名又は名称】マーレ フィルター システムズ ノース アメリカ インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スパダフォラ アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】マスィス エリック
(72)【発明者】
【氏名】コルシャッツ キャスリーン
(72)【発明者】
【氏名】ソールト マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ドレヴァニー ジェイスン
(72)【発明者】
【氏名】セイシャス トム
(72)【発明者】
【氏名】リブレクト タミー
【テーマコード(参考)】
3G015
【Fターム(参考)】
3G015BD28
3G015CA16
3G015DA05
3G015EA20
3G015EA30
(57)【要約】
【課題】PCVバルブがクランクケースから外れたことを検出する。
【解決手段】ポジティブクランクケースベンチレーション(PCV)バルブは、第1端部と第2端部との間で軸心に沿って延びる管状体であって該管状体を通って延びる中央通路の周りの壁を画定するとともに軸心に直交する外径及び内径を有する管状体と、中央通路内で第1端部に近接して固定される計量装置と、を有する。前記壁は、計量装置と前記第2端部との間にウィンドウを有し、ウィンドウは、クランクケースからPCVバルブが外れたことを検出するために前記壁を通って中央通路に入る空気流路を区画し、ウィンドウの総面積は、計量装置が最大流量の状態にあるときに計量装置内の軸方向の開放面積よりも大きい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポジティブクランクケースベンチレーション(PCV)バルブであって、
第1端部と第2端部との間で軸心に沿って延びる管状体であって該管状体を通って延びる中央通路の周りの壁を画定するとともに軸心に直交する外径及び内径を有する管状体と、
中央通路内で第1端部に近接して固定される計量装置と、を有し、
前記壁は、計量装置と前記第2端部との間にウィンドウを有し、ウィンドウが、クランクケースからPCVバルブが外れたことを検出するために前記壁を通って中央通路に入る空気流路を区画し、ウィンドウの総面積は、計量装置が最大流量の状態にあるときに計量装置内の軸方向の開放面積よりも大きい
ポジティブクランクケースベンチレーションバルブ。
【請求項2】
請求項1のPCVバルブにおいて、
ウィンドウは、複数、少なくとも2つの個別の開口部を有するPCVバルブ。
【請求項3】
請求項1のPCVバルブにおいて、
ウィンドウの形状が長方形であるPCVバルブ。
【請求項4】
請求項1のPCVバルブにおいて、
前記総面積が、第2端部の近傍の内径の断面積と同じまたはそれより大きいPCVバルブ。
【請求項5】
請求項4のPCVバルブにおいて、
ウィンドウは、管状体の軸方向の距離に沿って定められる1つの開口部のみを有し、開口部の総面積は、第2端部の近傍の内径の断面積よりも大きいPCVバルブ。
【請求項6】
請求項1のPCVバルブにおいて、
前記壁は、ウィンドウと第2端部との間に溝を有する外面を定めるPCVバルブ。
【請求項7】
請求項6のPCVバルブにおいて、
インテークマニホールドへの組み付け時にPCVバルブをシールするために、溝に着座するOリングをさらに有するPCVバルブ。
【請求項8】
ポジティブクランクケースベンチレーション(PCV)バルブの製造方法であって
第1端部と第2端部との間で軸心に沿って延びる管状体であって該管状体を通って延びる中央通路の周りの壁を画定するとともに軸心に直交する外径及び内径を有する管状体を準備するステップと、
中央通路内で第1端部に近接して計量装置を固定するステップと、
計量装置と第2端部との間の壁にウィンドウを配置するステップであって、ウィンドウが、クランクケースからPCVバルブが外れたことを検出するために壁を通って中央通路に入る空気流路を区画し、ウィンドウの総面積は、計量装置が最大流量の状態にあるときに計量装置内の軸方向の開放面積よりも大きいステップと、を有する方法。
【請求項9】
請求項8の方法において、
ウィンドウを配置するステップが、複数、少なくとも2つの個別の開口部を配置することを含む方法。
【請求項10】
請求項8の方法において、
ウィンドウを配置するステップが、長方形のウィンドウを配置することを含む方法。
【請求項11】
請求項8の方法において、ウィンドウを配置するステップは、総面積が、第2端部の近傍の内径の断面積と同じまたはそれよりも大きくなるように配置することを含む方法。
【請求項12】
請求項11の方法において、
開口部の総面積が第2端部の近傍の内径の断面積よりも大きくなるように、管状体の軸方向の距離に沿ってウィンドウを1つのみの開口部として定めることをさらに含む方法。
【請求項13】
請求項8の方法において、
さらに、ウィンドウと第2端部との間に溝を備えた外面を有する壁を画定するステップを含む方法。
【請求項14】
請求項13の方法において、
さらに、インテークマニホールドへの取り付け時にPCVバルブをシールするために、溝にOリングを配置するステップを含む方法。
【請求項15】
エンジンであって、
クランクケースと、
エアインテークと、
クランクケースとエアインテークとの間に流体的に連通して配置されるポジティブクランクケースベンチレーション(PCV)バルブとを有し、
PCVバルブは、
第1端部と第2端部との間で軸心に沿って延びる管状体であって該管状体を通って延びる中央通路の周りの壁を画定するとともに軸心に直交する外径及び内径を有する管状体と、
中央通路内で第1端部に近接して固定される計量装置と、
を有し、
前記壁が、計量装置と第2端部との間にウィンドウを有し、ウィンドウは、クランクケースからPCVバルブが外れたことを検出するために壁を通って中央通路に入る空気流路を区画し、ウィンドウの総面積は、計量装置が最大流量の状態にあるときに計量装置内の軸方向の開放面積よりも大きいエンジン。
【請求項16】
請求項15のエンジンにおいて、
ウィンドウは、複数、少なくとも2つの個別の開口部を有するエンジン。
【請求項17】
請求項15のエンジンにおいて、
ウィンドウが長方形の形状であるエンジン。
【請求項18】
請求項15のエンジンにおいて、
前記総面積が、第2端部の近傍の内径の断面積と同じまたはそれより大きいエンジン。
【請求項19】
請求項18のエンジンにおいて、
ウィンドウは、管状体の軸方向の距離に沿って定められた1つのみの開口部を有し、開口部の総面積が、第2端部の近傍の内径の断面積よりも大きいエンジン。
【請求項20】
請求項15に記載のエンジンにおいて、
前記壁は、ウィンドウと第2端部との間に溝を有する外面を定め、インテークマニホールドへの取り付け時にPCVバルブをシールするために溝に装着されるOリングをさらに有するエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の参照]
本出願は、2020年9月21日に提出された米国仮特許出願番号63/081,102の優先権を主張するものであり、その内容は全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本願で説明される例示的な図は、概して、PCVバルブを介してブローバイガスを戻し通路及びインテークマニホールド通路内に流すことを可能にすることによって、エンジンの燃焼室から漏れるブローバイガスを燃焼室に戻すためのブローバイガス戻し装置に関する。
【背景技術】
【0003】
自動車のエンジンは、有害な気体が大気中に漏れないようにするために、クローズドまたはポジティブクランクケースベンチレーション(PCV)システムを用いている。一般的なPCVシステムは、エンジンのクランクケースからインテークマニホールドへの直接的な空気の流れを確立して陽圧換気を確実にし、クランクケース内の圧力を低減して、ブローバイ燃焼ガスをエアインテークに戻せるようにしている。
【0004】
一般的に、エンジンの運転中に公知のPCVバルブを通過する流量は、(アイドリング時やエアインテークの高真空時の)無視できる程度から、高速運転時(且つエアインテークが高真空より低い時)に発生する最大限にまで拡がる。アイドリング中にエアインテークが高真空になると、PCVバルブのピントル軸がPCVバルブの内側の端部に着座し、ガスの流れがほぼ遮断される。エンジンの作動中は、エアインテークが高真空ではないため、ピントル軸の両側に圧力差が生じてピントル軸が移動し、クランクケースからインテークマニホールドへのガスの流れが生じる。
【0005】
時には、PCVバルブがクランクケースから外れてしまうことがある。このことが生じると、PCVバルブのエアインテーク側の圧力は、どのような条件設定下でも高真空ではなくなり、ピントル軸が着座しないためにPCVバルブが少なくとも多少のガスの流れを許容する。この外れた状況では、PCVバルブを通じた外気の流れが生じ、PCVバルブを通る流量を、通常の運転中に発生する空気質量流量と区別できないことがある。そのため、エンジンの質量流量センサではPCVバルブが外れたことを検知できず、車両のコンピュータや運転者に警告が発されないことがある。PCVバルブが外れた状態で車両を運転すると、不燃ガスが大気中に直接放出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
排出ガス規制はますます厳しくなってきており、クランクケースから外れたPCVバルブを迅速に検知する機能が車両に求められている。現状のPCVバルブでは、ピントル軸のアセンブリを通る流路に制限があり、インテークマニホールド及びエンジンコントローラの現状のエアセンサでは、一般に空気の量が検出できない。PCVバルブの本体に小さな穴を設け、PCVバルブが外れたときに空気を通せるようにしたPCVバルブが知られている。しかし、PCVバルブの標準的な動作では多少のガスは流れるため、PCVバルブが外れたことを質量流量センサが検知できない状況が発生することがある。
【0007】
したがって、PCVバルブがクランクケースから外れたことを検出できる、改良されたPCVバルブの必要性は依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、PCVバルブがクランクケースから外れたことを検出できる、改良されたPCVバルブの装置と方法に関する。
【0009】
一態様によれば、ポジティブクランクケースベンチレーション(PCV)バルブは、第1端部と第2端部との間で軸心に沿って延びる管状体であって該管状体を通って延びる中央通路の周りの壁を画定するとともに軸心に直交する外径及び内径を有する管状体と、中央通路内で第1端部に近接して固定される計量装置と、を有する。前記壁は、計量装置と前記第2端部との間にウィンドウを有し、ウィンドウは、クランクケースからPCVバルブが外れたことを検出するために前記壁を通って中央通路に入る空気流路を区画し、ウィンドウの総面積は、計量装置が最大流量の状態にあるときに計量装置内の軸方向の開放面積よりも大きい。
【0010】
ポジティブクランクケースベンチレーション(PCV)バルブの製造方法は、第1端部と第2端部との間で軸心に沿って延びる管状体であって該管状体を通って延びる中央通路の周りの壁を画定するとともに軸心に直交する外径及び内径を有する管状体を準備するステップと、中央通路内で第1端部に近接して計量装置を固定するステップと、計量装置と第2端部との間の壁にウィンドウを配置するステップであって、ウィンドウが、クランクケースからPCVバルブが外れたことを検出するために壁を通って中央通路に入る空気流路を区画し、ウィンドウの総面積が、計量装置が最大流量の状態にあるときに計量装置内の軸方向の開放面積よりも大きいステップと、を有する。
【0011】
エンジンは、クランクケースと、エアインテークと、クランクケースとエアインテークとの間に流体的に連通して配置されるポジティブクランクケースベンチレーション(PCV)バルブとを有する。PCVバルブは、第1端部と第2端部との間で軸心に沿って延びる管状体であって該管状体を通って延びる中央通路の周りの壁を画定するとともに軸心に直交する外径及び内径を有する管状体と、中央通路内で第1端部に近接して固定される計量装置とを有する。前記壁は、計量装置と前記第2端部との間にウィンドウを有し、ウィンドウは、クランクケースからPCVバルブが外れたことを検出するために壁を通って中央通路に入る空気流路を区画し、ウィンドウの総面積は、計量装置が最大流量の状態にあるときに計量装置内の軸方向の開放面積よりも大きい。
【0012】
特許請求の範囲は特定の図に限定されるものではないが、様々な例の説明によりその様々な態様を最大限に理解できる。ここで、図面には典型的な例が詳細に示されている。図面は例を示しているが、図面は必ずしも縮尺通りではなく、実施例の新しい態様をよりよく説明するために特定の特徴を誇張している場合がある。さらに、本願で説明される典型的な例は、図面に示されるとともに以下の詳細な説明に開示されている正確な形態及び構成を網羅することを意図するものでなく、限定ないし制限することを意図するものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、PCVバルブを備えたエンジンの概略を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、例示的なPCVバルブを流量が最小のアイドリング状態で示す図である。
【
図2B】
図2Bは、例示的なPCVバルブを流量が最大の動作状態で示す図である。
【
図2C】
図2Cは、例示的なPCVバルブをバックファイア状態で示す図である。
【
図3】
図3は、例示的なPCVバルブを示す斜視図である。
【
図4】
図4は、例示的なPCVバルブを示す横断面図である。
【
図5】
図5は、クランクケースに完全に固定されたPCVバルブの側面図である。
【
図6】
図6は、クランクケースから一部が完全に外れたPCVバルブの側面図である。
【
図7】
図7は、例示的なPCVバルブの装飾デザインを示す斜視図である。
【
図8】
図8は、例示的なPCVバルブの装飾デザインを示す正面図である。
【
図9】
図9は、例示的なPCVバルブの装飾デザインを示す背面図である。
【
図10】
図10は、例示的なPCVバルブの装飾デザインを示す左側面図である。
【
図11】
図11は、例示的なPCVバルブの装飾デザインを示す右側面図である。
【
図12】
図12は、例示的なPCVバルブの装飾デザインを示す平面図である。
【
図13】
図13は、例示的なPCVバルブの装飾デザインを示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
特許請求の範囲は特定の図に限定されるものではないが、様々な例の説明によりその様々な態様を最大限に理解できる。ここで、図面には典型的な例が詳細に示されている。図面は例を示しているが、図面は必ずしも縮尺通りではなく、実施例の新しい態様をよりよく説明するために特定の特徴を誇張している場合がある。さらに、本願で説明される典型的な例は、図面に示されるとともに以下の詳細な説明に開示されている正確な形態及び構成を網羅することを意図するものでなく、限定ないし制限することを意図するものでもない。
【0015】
以下は、本開示に係る例示的なPCVバルブの図及び説明である。
【0016】
図1は、PCVバルブを備えたエンジンの概略図であり、
図2Aから
図2Cは、流量が最小のアイドリング状態(
図2A)、流量が最大の動作状態(
図2B)、及びバックファイア状態(
図2C)におけるPCVバルブの例示的な動作状態を示す。
【0017】
図1において、エンジン100は、計量された空気をインテークマニホールドまたはエアインレットライン104及びブリーザライン106へ通過させる空気質量流量センサ102を有する。エアインレットライン104は、スロットルボディプレート108により絞られて燃焼室110へ通じる。燃焼室110には、エアインレットライン104を介して空気が供給され、燃焼プロセス中には燃料(ラインは図示せず)も供給される。燃焼中は、ピストン112がピストン壁114に対して往復動作をし、既に知られているように、ブローバイガス116は、ピストン112とピストン壁114(ピストンの溝にはピストンリングが配置され、リング及び溝は図示せず)との間をブローバイガス118として通過し、エンジン100のクランクケース120に流入し得る。ブローバイガス118は、クランクケース120内の圧力を高める原因となるだけでなく、一般に、燃焼機関の空気品質の基準と要件を超える過剰な排出ガスになり得る不燃の燃料/空気を含む。
【0018】
従来、エアインテーク内の空気質量センサに対する車両センサの検出と、エアインテークを通る空気の混合量を制御及び監視する車両のエンジンコントローラとが原因で、既存のセンサでは、PCVバルブが外れたか緩んだかを確実には判断できない。これは、公知のPCVバルブが、確実に接続されている状態と、外れた状態のときに大気がPCVバルブを通過する状態のどちらでも、空気の流れを同じように制限するからである。そして、PCVバルブが外れると、炭化水素及び燃焼ガスが、クランクケースまたはエンジンブロックの開いたポートや接続開口を通って大気中へ放出される。このことによって、調整されていない燃焼ガス及び炭化水素が、排出ガスフィルタなしで自由に流れることになり、自動車の排出ガスが増加する。
【0019】
CARBで要求される排出ガス規制が強化されてきているため、このような状況は、PCVバルブが外れたときに気体や燃焼副生成物がクランクケースの開いたポートまたは開口部から大気中に放出されるので問題となる。例えば、CARBは、Cal.Code Regs.Tit.13Section 1968.2において、2024年に発売される車両の排出ガスのモニタリングに、PCVバルブとクランクケースの接続部/シールの監視と検出を含ませることを要求している。これは、そして国際的に同様の排出ガス規制は、PCVバルブを通って排出される空気をインテークエアに取り込んで、車両の排出ガスから炭化水素や燃焼ガスをさらに削減するために、PCVバルブが固定されて機能していることを検出できる診断方法を車両に要求するものである。
【0020】
そのために、PCVバルブ122は、クランクケース120からエアインレットライン104に流体的に連結された戻りラインに配置されている。一般に、空気流は空気質量流量センサ102によって計測されるので、エアインレットライン104へ戻るのは空気質量流量センサ102の後になる。
【0021】
エンジン100は、アイドリング状態からフルスロットルの状態まで、その間のどこでも動作することができる。また、時には、エンジン100においてエンジンバックファイアが発生することがあり、したがってPCVバルブ122は、これらの変化中の条件または変化し得る条件に基づいてその動作を調整する。
【0022】
例えば、
図2A、
図2B、及び
図2Cには、PCVバルブ200と称する、PCVバルブを極めて一般化した例が示されている。PCVバルブ200は、入口202と、出口204と、ピントル軸206と、圧縮ばね208とを有する。ピントル軸206は、この例では、テーパ状または円錐状の表面210を有し、PCVバルブ200は、テーパ状または円錐状の表面210に対してシールないし「着座」するように構成されたテーパ状または円錐状の内側表面214を有するハウジング212を備える。図から分かるように、表面210と表面214との間のテーパ状または円錐状の構成により、ピントル軸206がハウジング212内で移動すると、表面210と214との間の開口部の断面積が変化し、PCVバルブ200を通る質量流量を制御できる。
【0023】
図示されているように、ピントル軸206は、圧縮ばね208が押し付けられるリップ216を有する。
図1のPCVバルブ122に対応するPCVバルブ200は、出口204が第1位置126に対応するかその方向を向き、入口202が第2位置128に対応するかその方向を向くように配置される。
【0024】
ピントル軸206の位置は、動作中のエンジン100の動作条件に応じて調整されるようになっている。例えば
図2Aは、エンジン100のアイドリング動作に対応し、その間はエアインレットライン104が高真空状態になる。高真空状態であると、その高真空状態が位置126及び出口204に対応することにより、ピントル軸206が圧縮ばね208に抗して引っ張られてピントル軸が出口204に向かって移動し、表面210及び214が互いに強制的に引き寄せられる。このように、最小の流れ218(
図2A)が生じることがあり、特定の条件下では流れが完全に遮断され得る。
【0025】
エンジン100にスロットルが適用され、アイドリング状態よりもエンジンの往復動作の速度が大きくなると、エアインテークライン104がもはや十分な真空にならず、圧縮ばね208に対抗する圧力が低下する。ピントル軸206に作用する圧力差の変化によって、ピントル軸206が入口202に向かって移動し、その結果、表面210と214の間のクリアランス量が大きくなる。エンジン速度が上昇してブローバイガス116がクランクケース120に通じる傾向が大きくなると、それによってPCVバルブが開き、増加した流れ220が許容されるようになる(
図2B)。このように、エンジンの動作条件、特にエアインテークライン104の真空状態(これ自体はエンジン速度に依存する)により、エンジン速度と協調して、そしてエアインテークライン104の真空状態に基づいて、PCVバルブが開閉する。
【0026】
図2Cは、エンジン100のバックファイアが発生した場合に起こり得る偶発的な状態を示している。このような状態では、バックファイアに起因してインテークライン104に急激な圧力のバーストが発生することにより、突然且つ爆発的に生じた高圧圧力222がピントル軸206を押すことでピントル軸206が入口202に向かって急速に移動することを強いられ、リップ216がハウジング212の端部224に係合して、クランクケース120へ、損傷が生じる可能性のある圧力が伝達されるのが防止される。
【0027】
以上は、PCVバルブ200の動作に関して一般的な説明であり、他の構成及び配置も同様に考えられる。例えば、表面210/214は、円錐形またはテーパ状でなくてもよいが、概略の動作は、PCVバルブの動作のために、インテークマニホールドまたはエアインテークラインの真空状態に応じて断面積を可変に形成することによって達成される。
【0028】
図3は、本開示に係るPCVバルブ300の斜視図を示し、
図4は、PCVバルブ300の断面図を示す。PCVバルブは、出口302及び入口305を有し、これらは、エンジン100における入口202及び出口204並びに位置128及び126と概ね一致する。計量装置308内にはピントル軸306が配置され、圧縮バネ310がピントル軸306のリップ312に対して配置されている。ここで開示された例では、ピントル軸306は、それ自体が溝に配置されて収容されているワッシャまたはシールリング316に押し付けることのできるテーパ状または円錐状の表面314を有する。したがって、上述したような条件下で、PCVバルブ300がエンジン100内に適切に組み込まれると、エアインテークライン104の真空状態によって、ピントル軸304に対して様々な真空度が形成され、その結果、真空に依存する圧力がピントル軸304に形成されて、PCVバルブの動作が前述した動作に適するようになる。
【0029】
PCVバルブ200は、バルブとクランクケースまたはエンジンブロック(図示せず)との間で、様々なツイスト及びロック機構を含む公知の方法により固定することができる。例示的なPCVバルブ300は、クランクケースに固定するために、入口305に近接するねじ部と、固定用リップ318と一致するタブとを有する。
【0030】
図5は、クランクケース500に完全に固定されたPCVバルブ300の側面図である。PCVバルブ300の固定用リップ318は、それによってクランクケース500の外側ボア502に押し付けられる。圧縮装置として機能できるPCVバルブ300にチューブリップ320を任意に設けてもよく、ある構成においては、エアインレットライン104を可撓性チューブ(図示せず)にする。PCVバルブ300は、第1溝324内の第1Oリング322と、第2溝328内の第2Oリング326とを有する。
【0031】
このように、Oリング322,326を適切に取り付けることによって、外側ボア502の内面に対してガスシールが形成され、エンジンの動作中にPCVバルブ300を通過するガスの流れを制御できる。
【0032】
排出ガスのCARB(California Air Resources Board)の基準ないし規制の強化により、CARBの基準では、PCVバルブがクランクケースまたはエンジンブロックに適切に固定されていないかどうかを判断できるようにする車両診断が求められる。PCVバルブ300が適切に固定されていない場合、燃焼ガス、燃料ガス、そして一般的にはブローバイガスが大気中へ直接に通じ、排出ガスをバイパスして、許容できないレベルの炭化水素または燃焼ガスがクランクケースから大気中に放出されることがある。典型的には、例示的なPCVバルブ300及び
図1に示す構成により、PCVバルブを通るとともに計量装置308をバイパスして移動できる、調整されない空気を車両の診断のために検出できる。
【0033】
図6は、この例示的な状態を示し、PCVバルブの一部がクランクケースから完全に外れた状態の側面図である。図から分かるように、また上述の説明に基づいて、典型的なPCVバルブがクランクケースから部分的または完全に外れると、完全な大気圧がPCVバルブの入口に加えられることがあり、その結果、通常の動作条件中に圧縮ばねによりピントル軸がそのシール位置から少なくとも部分的に移動する。典型的なPCVバルブの動作により、クランクケース内に組み込まれているかどうか、PCVバルブを通る質量流量を互いに区別できない状態になることがある。
【0034】
本開示によれば、ここで開示されたPCVバルブ300は、
図6に示すように、PCVバルブ300がクランクケースから外れた場合に、比較的多量の空気またはガスをPCVバルブの本体に導入できるウィンドウ330を有する。つまり、PCVバルブ300がクランクケース500から少なくとも部分的に外れると、第2Oリング326も同様に外側ボア502の内周面に対するシール位置から外れ、空気流がPCVバルブ内に導入されるようにウィンドウ330が露出する。したがって、この状態では、エンジンの正常な動作中に生成されるブローバイガスはPCVバルブへ通じるが、PCVバルブの不適切な動作に起因して周囲へ抜けることがある。
【0035】
さらに悪いことに、PCVバルブ300がクランクケース500から完全に外れると、ブローバイガス及びその他のエンジンガスは、外側ボア502から周囲へ直接に通じて、PCVバルブ300を全く通過しない。しかし、ウィンドウ330が存在するため、このような動作は、少なくともある程度は測定できる空気がPCVバルブ330を通過するであろうことが原因で、やはり検出されないであろう。
【0036】
PCVバルブは、第1端部334と第2端部336との間で軸心334に沿って延びる管状体332を有し、管状体332は、管状体332を通って延びるとともに軸心334に直交する中央通路344の周りで壁342を画定する外径338及び内径340を有する。計量装置308は、第1端部334に隣接する中央通路344内に固定される。壁342は、計量装置308と第2端部336との間に1つまたは複数のウィンドウ330を含み、ウィンドウ330は、クランクケース500からPCVバルブ300が外れるのを検出するために、壁342を通って中央通路344に入る空気流路346を区画する。ウィンドウ330の総面積、またはすべてのウィンドウ330の合計面積は、計量装置308が最大流量の状態のときに、計量装置308内の軸方向の開放面積343よりも大きい。つまり、ウィンドウ330の総断面積が比較的大きいサイズであるため、本開示によれば、ウィンドウ330内に通じるか、ウィンドウ330を通過する空気の量が、計量装置308を通る気体の全流量を超える。このように、PCVバルブ300を通る質量流量が、エンジンの正常な動作条件で発生してPCVバルブ300を通る任意の質量流量を超えると検出された場合、そのような流れは、明らかに検出可能で且つ区別可能であるだけでなく、ウィンドウ300を通ったことが分かり、PCVバルブがクランクケースに適切に装着されずに完全に外れている可能性があるという確証になる。したがって、この例では、軸方向の開放面積343は、動作中に流体が流れる軸方向面積に対応し、本実施例では、ピントル軸304の外面341と、ワッシャまたはシールリング316の内面345との間にある面積の総計である。しかしながら、本開示によれば、外面341と内面345との間の面積は単に一例であり、他のPCVバルブの構成では、PCVバルブの開状態での開放面積の量を異なるように定めてもよい。したがって、本開示によれば、ウィンドウ330の総断面積は、PCVバルブがクランクケースから外れたり、壊れたり、またはそれ以外でクランクケースにシールされない状態になったりすると、適切に機能しているPCVバルブの最大流量での面積を超えて、過剰な量のガスの流れがそこを通過して過剰な質量流量として検出できる。
【0037】
計量装置308は、計量装置15のピントル軸304とピントルシート32を流れて通過する空気の量を制限して制御する。スプリング36は、エアインテークとクランクケースとの間の圧力差から、その圧力差の力でスプリング36がピントル軸38の動きを規制してエアインテークに対してエンジン及びクランクケース内の計量装置15を開閉するときに必要な力を定める。図示されたPCVバルブ10における計量装置15は、管状体16の第1端部18に隣接して配置されている。第1端部18の近くに配置された追加のスナップリング40または他の既知の方法または留め具により、計量装置15内のピントル軸38及びスプリング36を固定できる。
【0038】
このように、脱落状態の
図6では、ウィンドウ330により、計量されず規制されていない空気が流れることが可能になり、その空気は、現在のOBDII及びエアインテーク内のエンジンコントローラの空気センサが問題を検出して運転者に通知するのに十分に多い量である。規制されていない空気の流れに起因するOBDII及びエンジンコントローラは、PCVバルブの接続の診断及び検出に関するCARB基準に従うために、確実にエラーを警告し、空気の遮断または漏れを警告できる。
【0039】
本開示によれば、ウィンドウ330は、任意の数の開口部を有することができ、一実施例では、少なくとも2つの別々の、複数の開口部を有する。一つの例によれば、各ウィンドウ330は形状が長方形である。長方形の形状は、ウィンドウ330の軸方向領域で利用可能な空間の量が限られていて、開放された空間の量が最大になることによって、欠陥のあるPCVバルブの取り付けを最も効率的に示すことができるために有利である。さらに、円形、長円形、または楕円形のウィンドウは、PCVバルブへの流量を制限することがあり、軸方向に無駄なスペースが生じる可能性がある。言い換えると、ウィンドウスペースを最大限の量にするために、1つの例では、形状が長方形のウィンドウを用いることが望ましく、その理由は、1つのウィンドウと次のウィンドウとの間の壁のスペースを最小限にでき、それによってPCVバルブで利用可能な所定の軸方向のスペースにおいて、ウィンドウの開口部の合計量を最大にすることができるからである。
【0040】
一例では、ウィンドウの総面積は、第2端部336の近傍の内径の断面積と同じかそれより大きい。この態様では、空気の通過のために露出したウィンドウの面積が大きすぎることに起因してこの最大の空気流れが検出された場合に、取り付けが適切でないPCVバルブが検出システムに容易に検出されるように、検出システムを明確かつ容易に較正できる。
【0041】
一例では、ウィンドウ330は、開口部346の総面積が第2端部336の近傍の内径の断面積よりも大きくなるように、管状体の軸方向の距離に沿って定められた1つの開口部346のみを有する。したがって、
図3のPCVバルブ300の斜視図では複数のウィンドウ330が示されているのに対し、一例では
図4のように1つのウィンドウ346のみが示されている。例えば、特定のエンジンの適用における各ウィンドウ330は、軸334に沿った高さ331を7.85mmまでにし、軸334に直角に且つ管状体332の外面335に沿って測定される幅333を7.83mmまでにすることができる。この例の管状体332は、管状体332を貫通し、軸方向の開口部343において内径が11.5mmの中央通路344を有する。この例では、各ウィンドウ330の開口面積は、61.47mm
2(すなわち、7.85mm×7.83mm)である。中央通路344は、直径が11.5mm、断面積が103.87mm
2(すなわち、A=π・X・(11.5/2)
2mm
2)であり、その結果、全てのウィンドウ330を合計した開口部346の総面積の比率は、この例4では245.88mm
2(すなわち、61.47mm
2×4)であり、これは第2端部336の近傍の中央通路344の断面積よりも大きく、面積比で2.37(すなわち、245.88mm
2/103.87mm
2)となる。管状体332の周囲に間隔をあけたウィンドウ330を有するPCVバルブは、PCVバルブのどれかが外れてしまったことを判断するために空気センサの各用途と感度に応じて比率を調整できる。他の用途及び本開示によれば、面積比は、2とほぼ同じかそれよりも大きく、それによって、オペレータに解決すべきエラーまたは問題として警告するための検出システムによって検出可能な、PCVバルブを通る十分かつスムーズな流れを確保している。
【0042】
本開示によれば、ポジティブクランクケースベンチレーション(PCV)バルブの製造方法は、第1端部と第2端部との間で軸心に沿って延びる管状体であって該管状体を通って延びる中央通路の周りの壁を画定するとともに軸心に直交する外径及び内径を有する管状体を準備するステップと、中央通路内で第1端部に近接して計量装置を固定するステップと、計量装置と第2端部との間の壁にウィンドウを配置するステップであって、ウィンドウが、クランクケースからPCVバルブが外れたことを検出するために壁を通って中央通路に入る空気流路を区画し、ウィンドウの総面積が、計量装置が最大流量の状態にあるときに計量装置内の軸方向の開放面積よりも大きいステップとを有する。
【0043】
図7~13は、例示的なPCVバルブ及びクランクケース内のPCVバルブに固有のデザイン、形状、及び装飾的な外観を明確にするものである。
図7は、例示的なPCVバルブの装飾的なデザインの斜視図である。
図8は、例示的なPCVバルブの装飾的なデザインを示す正面図である。
図9は、例示的なPCVバルブの装飾的なデザインを示す背面図である。
図10は、例示的なPCVバルブの装飾的なデザインを示す左側面図である。
図11は、例示的なPCVバルブの装飾的なデザインを示す右側面図である。
図12は、例示的なPCVバルブの装飾的なデザインを示す平面図である。
図13は、例示的なPCVバルブの装飾的なデザインを示す底面図である。
【0044】
例示的な図は、先に説明した例に限定されない。むしろ、例示的な図のアイデアを用いることにより保護範囲に含まれる複数の変更や修正が可能である。このように、上記の説明は例示を目的としたものであり、制限的なものではないことを理解されたい。例示的なバルブ、ウィンドウ、シール、及び空気流量は、バルブの外れの検出が動作に重要である他の車両、排気ガス、及び空気または真空システムに使用できる。バルブ本体とウィンドウの配置により、空気が計量されずに通過して検出された量になるか、またはウィンドウを通る調節されていない空気の流れをエンジンコントローラが補正できないためにエラーコードが発生する可能性がある。上記の例では流体は空気であるが、このようなバルブは、他の媒体、流体、及び気体で使用でき、エンジンブロックからのパージ空気は、バルブ内の計量装置をバイパスするためのバルブ本体とウィンドウの通路構成の1つの適用例に過ぎない。
【0045】
本明細書に記載されたプロセス、システム、方法、経験則などに関し、これらのプロセスなどのステップは、特定順序のシーケンスにより生じるものとして説明したが、そのようなプロセスは、記載されたステップを本明細書に記載された順序以外の順序で実行しても実施できる。さらに、特定のステップを同時に実行でき、他のステップを追加でき、または本明細書に記載された特定のステップを省略できる。言い換えると、本明細書のプロセスの記述は、特定の実施形態を説明するために用いられており、特許請求の範囲に記載された発明を限定する解釈をしてはならない。
【0046】
このように、上記の説明は例示であり、制限的ではないことを理解されたい。示された例以外の多くの実施形態及び応用は、上記の説明を読むことで理解されるであろう。本発明の範囲は、上記の説明を参照するのではなく、むしろ添付の特許請求の範囲に準拠して、そのような特許請求の範囲に権利が与えられる均等物の全ての範囲と共に定められるべきである。本明細書で論じた技術が将来的に発展して、開示されたシステム及び方法がそのような将来の実施形態に組み込まれることが見込まれるとともに意図されている。要するに、本発明は修正及び変形が可能であり、特許請求の範囲によってのみ制限されることを理解されたい。
【0047】
特許請求の範囲で使用されるすべての用語は、本明細書で明確な逆の記載がない限り、最も広い合理的な解釈であると当業者に理解される通常の意味を表すためのものである。特に、英文明細書における「a」、「the」などの単数形の冠詞の使用は、請求項に明確な逆の限定が記載されていない限り、示された要素の1つまたは複数を表すと読むべきである。