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特開2022-51696一体化されたバッフルを有する燃焼室部と、燃焼室部を製造する方法
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  • 特開-一体化されたバッフルを有する燃焼室部と、燃焼室部を製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051696
(43)【公開日】2022-04-01
(54)【発明の名称】一体化されたバッフルを有する燃焼室部と、燃焼室部を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   F02K 9/64 20060101AFI20220325BHJP
【FI】
F02K9/64
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021149894
(22)【出願日】2021-09-15
(31)【優先権主張番号】10 2020 124 530.0
(32)【優先日】2020-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】519171642
【氏名又は名称】アリアーネグループ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】クリス ウド メーディング
(57)【要約】
【課題】燃焼室内の横振動を低減する構造的により簡単な方法を提供する。
【解決手段】ロケットエンジン10用の燃焼室100用の燃焼室部110であって、燃焼室部110は、燃焼室の容積部を包囲しかつその内部に配置された冷却材流路130を有する燃焼室本体120と、燃焼室本体120と一体に形成されかつ燃焼室本体120から燃焼室の内部に突出する少なくとも1つのバッフル140とを備える、燃焼室部110が開示されている。少なくとも1つのバッフル140は、燃焼室本体120内の冷却材流路130の少なくとも1つに流体的に接続された、少なくとも1つの冷却材流路133~135を備える。さらに、上記の燃焼室部を製造するための付加層製造方法が開示されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロケットエンジン(10)用の燃焼室(100)用の燃焼室部(110)であって、前記燃焼室部(110)は、
燃焼室の容積部を包囲しかつ内部に冷却材流路(130)が配置される燃焼室本体(120)を備える、燃焼室部(110)において、
前記燃焼室部(110)は、
少なくとも1つのバッフル(140)が、前記燃焼室本体(120)と一体的に形成されかつ前記燃焼室本体(120)から前記燃焼室(100)の内部へ突出しており、
前記少なくとも1つのバッフル(140)は、前記燃焼室本体(120)の少なくとも1つの冷却材流路(133~135)の内の少なくとも1つの冷却材流路(130)に流体的に接続された、少なくとも1つの冷却材流路(133~135)を備える、ことを特徴とする、ロケットエンジン(10)用の燃焼室(100)用の燃焼室部(110)。
【請求項2】
前記少なくとも1つのバッフル(140)が、冷却材入口(136)と冷却材出口(137)とを備え、前記少なくとも1つのバッフル(140)の少なくとも1つの冷却材流路(133~135)が前記冷却材入口(136)と前記冷却材出口(137)との間に延びている、請求項1に記載のロケットエンジン(10)用の燃焼室(100)用の燃焼室部(110)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのバッフル(140)の前記冷却材入口(136)は、前記燃焼室本体(120)内の前記少なくとも1つの冷却材流路(130)の内の前記少なくとも1つの冷却材流路に流体的に接続されている、請求項2に記載のロケットエンジン(10)用の燃焼室(100)用の燃焼室部(110)。
【請求項4】
前記燃焼室本体(120)内の前記少なくとも1つの冷却材流路(130)の各々は、冷却材出口(138)を有し、
前記燃焼室本体(120)の断面に沿った周方向において、少なくとも1つの前記冷却材出口(138)の1つの冷却材出口に隣接して、前記燃焼室本体(120)内の冷却材流路(130)の別の冷却材出口(138)又は前記少なくとも1つのバッフル(140)の前記冷却材出口(137)が配置されている、ことを特徴とする請求項2又は3記載のロケットエンジン(10)用の燃焼室(100)用の燃焼室部(110)。
【請求項5】
前記燃焼室本体(120)内の冷却材流路(130)は、前記燃焼室本体(120)の長手方向において、前記少なくとも1つのバッフル(140)の前記冷却材入口(136)の高さで終わっており、前記少なくとも1つのバッフル(140)の前記少なくとも1つの冷却材流路(133~135)に通じている、ことを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載のロケットエンジン(10)用の燃焼室(100)用の燃焼室部(110)。
【請求項6】
前記少なくとも1つのバッフル(140)内の第1冷却材流路(133)が、燃焼室本体(120)内の少なくとも1つの冷却材流路(130)に流体的に接続された冷却材供給流路であって、前記少なくとも1つのバッフル(140)の第1の側に延びている冷却材供給流路であり、前記少なくとも1つのバッフル(140)内の第2冷却材流路(134)が、前記少なくとも1つのバッフル(140)の第2の側に延びている冷却材排出流路であり、好ましくは、少なくとも1つの第3冷却材流路(135)が、前記冷却材供給流路(133)を前記冷却材排出流路(134)に流体的に接続する、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のロケットエンジン(10)用の燃焼室(100)用の燃焼室部(110)。
【請求項7】
複数のバッフル(140)が前記燃焼室の内部に突出し、前記複数のバッフル(140)の全てが、それらの内側端部において環状バッフル(150)によって接続されている、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のロケットエンジン(10)用の燃焼室(100)用の燃焼室部(110)。
【請求項8】
前記環状バッフル(150)が、前記複数のバッフル(140)の少なくとも1つの冷却材流路(133~135)に流体的に連結された少なくとも1つの冷却材流路(151)を備える、ことを特徴とする請求項7に記載のロケットエンジン(10)用の燃焼室(100)用の燃焼室部(110)。
【請求項9】
前記環状バッフル(150)の前記少なくとも1つの冷却材流路(151)は、好ましくは、前記燃焼室とは反対を向いている側又は前記燃焼室に面する側のいずれかに配置された、冷却材出口(152、153)を備える、請求項8に記載のロケットエンジン(10)用の燃焼室(100)用の燃焼室部(110)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の燃焼室部(110)を備える、ロケットエンジン(10)用の燃焼室(100)。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の燃焼室部(110)又は請求項10に記載の燃焼室(100)を備えるロケットエンジン(10)。
【請求項12】
前記燃焼室部(110)は付加層製造方法によって構築され、前記燃焼室本体(120)の前記冷却材流路(130)と前記少なくとも1つのバッフル(140)の前記少なくとも1つの冷却材流路(133~135)とが位置する位置において、前記付加層製造方法によって材料が共に接合されていないことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の燃焼室部(110)の製造方法。
【請求項13】
プロセッサ上で実行されるときに装置に請求項12に記載の付加層製造方法を実施させる命令を備える、コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体化されたバッフルを有する燃焼室部、燃焼室、並びに、上記燃焼室部を有するロケットエンジン、上記燃焼室部の製造方法、並びに、上記製造方法を実施するための命令を備えたコンピュータ可読媒体関する。特に、本発明は、燃焼室の内部に延びているバッフルと一体的に形成された燃焼室本体を有する燃焼室部に関する。更に、燃焼室部、燃焼室部を有するロケットエンジン、上記燃焼室部を製造するための付加層製造方法、並びに、付加層製造方法を実行するための命令を有するコンピュータ可読媒体についてさらに説明する。
【背景技術】
【0002】
液体ロケットエンジンの燃焼室は、酸化剤と燃料からなるそれぞれの燃料の組み合わせの効率的な燃焼のために使用される。このため、燃料成分は特別な噴射システムを介して燃焼室内に供給される。燃焼室内では、それぞれの運転条件、蒸発、混合、化学変換、運動エネルギーへの初期変換に応じて、その主な増加は、亜音速及び超音速ノズル領域の領域にある。燃焼室の領域における流れは、乱流混合で特徴づけられる。ロケットエンジンの確実な作動のためには、高い燃焼安定性が望ましい。
【0003】
さらに、特に高温ガス壁(燃焼室及びスラストノズルの内側壁)の領域で冷却が必要である。例えば、再生冷却の場合、高熱の発生は、少なくとも1つの燃料成分が流れる高温ガス壁内の冷却材流路を介して減衰させることができる。
【0004】
球形、ナシ形、円錐形、筒形、又は、環状燃焼室の形態などの、燃焼室の種々の形状から、筒形の燃焼室形態が確立されている。筒形の燃焼室は、特に製造においていくつかの利点を有する。しかし、丸い断面を有する燃焼室は、これらの設計の固有振動数に対応する、特に横振動モードなどの高周波振動の影響をより受けやすい。これらの横振動、即ち、丸い燃焼室の半径方向への振動伝播によって、関連する過熱に伴う燃焼室内での付加的なエネルギーの放出をもたらす。さらに、強い圧力変動がある。
【0005】
これらの振動を打ち消したり回避したりするために、燃焼室の面板(又は噴射板)上にバッフルが配置されている。特許文献1(独国特許出願公開第102016209650号明細書)では、バッフルの代わりに、面板から燃焼室の内部に他の噴射要素よりもさらに突出する中央スリーブ本体を備えた面板上に、一定数の同軸噴射要素を設けることが提案されている。このようにして達成された燃焼室内の火炎前面の軸線方向の千鳥状配置は、バッフルと同様に振動の形成及び/又は伝播を低減又は防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102016209650号明細書
【0007】
このような背景から、本発明の目的は、燃焼室内の横振動を低減する構造的により簡単な方法を提供することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、請求項1に記載の特徴を有する燃焼室部、請求項10に記載の特徴を有する燃焼室、請求項11に記載の特徴を有するロケットエンジン、並びに、請求項12に記載の特徴を有する方法、並びに、請求項13に記載の命令を有する対応するデータ媒体によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示をより良く理解するための第1の態様によれば、ロケットエンジン用の燃焼室用の燃焼室部は、燃焼室容積部を包囲しかつ冷却材流路が配置された、燃焼室本体を備える。燃焼室本体は、外側シェルと内側シェルとから成ることができ、これらシェルの間においてウェブ又は同様の分離要素が配置され、これら2つのシェルの間の中間空間をいくつかの冷却材流路に分割する。例えば、燃料が冷却材流路を通って流れることができ、燃料は、その流れる過程において、その後の燃焼のために有利に加熱され、同時に、燃焼室本体、特に内側シェルを冷却する。
【0010】
燃焼室部は、任意の断面形状を有しうる。例えば、筒形(円筒状)の燃焼室本体を使用することができる。当然のことながら、燃焼室本体は、(三角形、四角形、五角形、又はさらに多くの角及び辺を有する)多角形又は楕円形の断面を有することもできる。
【0011】
燃焼室部は、燃焼室本体と一体に形成されおりかつ燃焼室本体から燃焼室の内部(燃焼空間)に突出する、少なくとも1つのバッフルをさらに備える。燃焼室本体の内側に少なくとも1つのバッフルを配置することにより、噴射ヘッドの構造、特に、燃焼室用の噴射板の構造を著しく単純化する。噴射板には多数の噴射要素が設けられており、これには少なくとも2つの燃料成分が供給されなければならないので、噴射板の製造は、通常、かなり複雑で時間がかかる。従来の噴射板のように、バッフル又は部分的な数の特別に整形された噴射要素を付加的に配置することによって、関連の作業量を増し、ひいては、関連する製造コストを増す。一方、本明細書で説明する燃焼室本体は、噴射ヘッド及び燃焼室全体の製造をより簡単にすることができる。
【0012】
一体的に形成されるということは、本明細書では、少なくとも1つのバッフル及び燃焼室本体が連続した材料からなることを意味する。例えば、燃焼室部、すなわち、少なくとも1つの一体化されたバッフルを有する燃焼室本体は、(3D印刷又はALMとも呼ばれる)付加層製造方法(additive layer manufacturing method)を用いて製造することができる。また、燃焼室本体及び/又はバッフルの一部分のみが、付加層製造方法を用いて製造することができ、他の場所で製造される燃焼室本体及び/又はバッフルの一部の上部に構築され得る。付加層製造方法において、異なる材料を使用することもできる。例えば、燃焼室本体の外側よりも少なくとも1つのバッフルの半径方向内側及び端部において、より耐熱性の高い材料を使用することができる。
【0013】
燃焼室本体とバッフルは、互いに別個に製造し、次いで互いに取り付けることもできる。これは、例えば、溶接、はんだ付け、及び/又は、(層毎の)溶融によって行うことができる。
【0014】
さらに、少なくとも1つのバッフルは、燃焼室本体内のいくつかの冷却材流路の内の少なくとも1つに流体的に接続された少なくとも1つの冷却材流路を有しうる。少なくとも1つのバッフル内に冷却材流路を設けることによって、少なくとも1つのバッフルを能動的に冷却することができ、バッフルの寿命を大幅に延ばすことができる。燃焼室本体を冷却するために、ほとんどの燃焼室には既に冷却材流路が設けられているので、バッフルの冷却材流路との流体接続は確立し易い。例えば、燃焼室の長手方向に延びる少なくとも1つの冷却材流路をバッフル内の少なくとも1つの冷却材流路に流体的に接続することができる。
【0015】
変形実施形態では、バッフルは、冷却材入口及び冷却材出口を有しうる。冷却材入口及び冷却材出口は、本明細書では、対応する冷却材流路がバッフルの断面側において開口部を形成することを意味する。バッフルは、燃焼室本体と一体的に製造されるので、本明細書でのバッフルの断面側は、例えば、バッフルが燃焼室本体から分離された場合における、燃焼室本体との境界におけるバッフルの仮想的なインタフェイスを意味する。
【0016】
さらに、バッフルの少なくとも1つの冷却材流路は、冷却材入口と冷却材出口との間に延びていてもよい。したがって、冷却材入口及び冷却材出口は、バッフル(及び/又は、燃焼室部)の異なる位置に配置されてもよく、一方、バッフルの少なくとも1つの冷却材流路は、バッフルの内側に延びていてもよい。
【0017】
さらなる変形実施形態では、バッフルの冷却材入口は、燃焼室本体内のいくつかの冷却材流路の内の少なくとも1つに流体的に接続することができる。例えば、付加層製造方法を用いて燃焼室部を製造する場合、バッフルに実際の開口部はない。
【0018】
むしろ、バッフル内の冷却材流路を形成するバッフルの内部に構築された容積部は、付加層製造方法の間、燃焼室本体内の冷却材流路を形成する容積部に遷移するであろう。換言すると、燃焼室本体内の冷却材流路はバッフルの冷却材流路に合流することができるので、冷却材は燃焼室本体を流れた後にバッフルの内部を流れ、能動的に冷却する。
【0019】
さらに別の変形実施形態では、燃焼室本体内のいくつかの冷却材流路の各々は、冷却材出口を有しうる。これは、燃焼室部で見た場合に、燃焼室本体を通過した後に冷却材がそこから流出しうる実際の開口部とすることができる。例えば、冷却材流路のさらなる冷却材出口が、燃焼室本体内で、燃焼室本体の断面に沿った周方向において、いくつかの冷却材出口の1つに隣接して配置することができる。
【0020】
バッフルが設けられている場所では、バッフルの冷却材出口は、燃焼室本体内の冷却材流路のいくつかの冷却材出口の1つに隣接して配置されうる。換言すると、バッフルの冷却材出口は、この位置に自身の冷却材流路を備えたバッフルが設けられていなければ、周方向において、燃焼室本体内の冷却材流路の冷却材出口に対応するであろう位置に位置している。燃焼室本体及びバッフル内の冷却材流路は、燃焼室本体内の冷却材流路の整数個が周方向のバッフルの幅に対応するように、周方向に寸法決めすることができる。このように、燃焼室部は、冷却材出口を有する先端において、バッフルを一体的に形成することなく、従来の燃焼室のように設計することができる。このことは、燃焼室部は、従来の噴射ヘッド及び噴射板と共に使用することもできることを意味する。
【0021】
一変形実施形態では、燃焼室本体内の冷却材流路は、燃焼室本体の長手方向においてバッフルの冷却材入口の高さで終わり、バッフルの少なくとも1つの冷却材流路に通じうる。換言すると、バッフルが一体化された位置にある、燃焼室本体内の冷却材流路は、バッフルと重ならない燃焼室本体内の他の冷却材流路よりも、燃焼室本体の長手方向においてより短い設計を有しうる。これにより、バッフルを固定又は一体化するための追加材料を燃焼室本体上に設けることができる。バッフル自体が能動的に冷却されるので、バッフルが配置された位置での燃焼室本体の冷却は不要である。
【0022】
さらなる変形実施形態では、バッフル内の第1の冷却材流路は、燃焼室本体内の少なくとも1つの冷却材流路に流体的に接続された冷却材供給流路としうる。さらに、バッフル内の第1冷却材流路は、バッフルの第1の側に沿って延びていてもよい。さらに、バッフル内の第2冷却材流路は、バッフルの第2の側に延びている冷却材排出流路としうる。バッフルの第1の側と第2の側は、バッフルの反対側としうる。例えば、バッフルの第1の側と第2の側は、燃焼室部の長手方向で見てバッフルの実質的に反対側としうる。代替的に、バッフルの第1の側と第2の側は、燃焼室部の周方向から見てバッフルの実質的に反対側としうる。
【0023】
この場合、第1冷却材流路は、第1冷却材流路及び第2冷却材流路が連続した容積部を形成してバッフルの第1側及び第2側が冷却されるように、第2冷却材流路に通じ又は合流してもよい。
【0024】
代替的又は付加的に、少なくとも第3の冷却材流路が、冷却材供給流路を冷却材排出流路と流体的に接続することができる。第3の冷却材流路は、バッフルの第3の側も冷却されるようにバッフルの第3の側に配置することができる。バッフルの第3の側は、バッフルの第1の側と第2の側との間に位置するバッフルの側としうる。当然のことながら、第3冷却材流路は、例えばバッフルの中央などのバッフル内の任意の位置に配置されうる。第3冷却材流路が複数ある場合、バッフルの第3の側に沿った冷却材流路を含む、バッフル内の任意の位置で延びていてもよい。
【0025】
バッフルの一つの側に沿った冷却材流路の上記の説明では、バッフルの縁領域における冷却材流路の配置が意味される。換言すれば、冷却材流路は、バッフルの外側表面の比較的に直下に位置し、その結果、この表面は十分に冷却される。冷却材流路の内側表面を区画形成するバッフルの材料は、バッフルの安定性のためである。本明細書いう「外側表面の比較的に直下(Relatively just below an outer surface)」とは、燃焼室の内側に位置するのに十分な強度と耐熱性を有する、外側表面と冷却材流路との間のバッフルの肉厚を意味する。
【0026】
さらに別の変形実施形態では、複数のバッフルが、燃焼室本体と一体的に形成され、燃焼室の内部に突出するようにしてもよい。さらに、複数のバッフルの全ては、環状バッフル(又は、内側バッフルとも呼ばれる)によって、それらの内側端部で接続されうる。本明細書では、環状バッフルは、排他的に丸い形状を意味するものではない。むしろ、環状バッフルの形状は、バッフルの領域における燃焼室本体の断面形状に対応し得る。燃焼室本体の断面の内側に配置された上記のバッフルは、横振動を低減又は回避するのにも役立つ。
【0027】
一実施形態では、環状バッフルは、複数のバッフルの少なくとも1つの冷却材流路に流体的に連結された少なくとも1つの冷却材流路を有しうる。代替的に、環状バッフルの冷却材流路は、複数のバッフルの内の1つ又は複数のバッフルの1つ又は複数の冷却材流路に流体的に連結されうる。これにより、内側の環状バッフルを能動的に冷却することができる。
【0028】
さらなる変形実施形態では、環状バッフルの少なくとも1つの冷却材流路は、燃焼室とは反対を向いている側、又は、燃焼室に面している側のいずれかに配置された、冷却材排出口を備えることができる。代替的に、それぞれの冷却材出口を、燃焼室とは反対を向いている側と、燃焼室に向いている側とに設けることもできる。冷却材出口が燃焼室とは反対を向いている側にある場合、内側バッフルは、噴射ヘッドの噴射板に対して当接するように設計することができる。これにより、内側バッフルの冷却材出口を、燃焼室ヘッドへの(通常は冷却材である)燃料の供給ラインとして使用することができる。冷却材出口が燃焼室に面する側にある場合、冷却材出口は、噴射要素として設計することも、噴射要素をその内部に配置するように設計することもできる。このようにして、内側バッフルは、燃焼室内に突出する噴射要素として設計することもできる。
【0029】
本開示をより良く理解するための第2の態様によれば、ロケットエンジン用の燃焼室は、第1の態様又はそれに関して記載される変形実施形態のいずれかによる燃焼室部を備える。
【0030】
本開示をより良く理解するための第3の態様によれば、ロケットエンジンは、第1の態様又はそれに関して記載された変形実施形態のいずれかによる燃焼室部、又は、第2の態様による燃焼室を備える。
【0031】
本開示をより良く理解するための第4の態様によれば、第1の態様又はその変形実施形態の1つによる燃焼室部の製造方法は、燃焼室部を構築する、付加層製造方法を備える。特に、この点に関し、燃焼室本体の冷却材流路とバッフルの少なくとも1つの冷却材流路とが位置する位置では、付加層製造方法によって材料を共に接合することはできない。
【0032】
本開示をより良く理解するための第5の態様によれば、コンピュータ可読媒体は、プロセッサ上で実行されるときに装置に第4の態様による付加層製造方法を実行させる命令を備える。これらの命令は、特に装置が燃焼室部及び/又は燃焼室部を層毎に形成できるように、第1の態様による燃焼室部及び/又は第2の態様による燃焼室の形状を記述する又は定義するCADデータ又は同様のデータとしうる。
【0033】
上述の変形実施形態及び実施例は、当然のことながら、これを明示的に説明することなく組み合わせることができる。従って、記載された変形実施形態の各々は、任意の変形実施形態又は既にそれらの組み合わせに対して選択的である。したがって、本開示は、記載された順序における個々の変形実施形態及び実施例や、態様及び変形実施形態の任意の特定の組み合わせに限定されない。
【0034】
以下において、本発明の好ましい実施形態を、添付の模式図を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は燃焼室の斜視図を概略的に示す。
図2図2は燃焼室部の一部分を概略的に示す。
図3図3は、環状バッフルを有する燃焼室部の詳細を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、例えばロケットエンジン10に使用できる燃焼室100の斜視図を概略的に示す。ロケットエンジン10のノズルは、破線のみによって図1に示されている。燃焼室100は、図1において単純化されるように、推進剤の成分の混合及び燃焼の大部分が行われる燃焼室部110を有する。燃焼室部110の(燃焼ガスの流れの方向における)下流側には、燃焼ガスは加速される亜音速ノズル部112があり、次いでノズル超音速セグメント114が追従する。
【0037】
ノズル超音速セグメント114の領域には、(分配マニホールドとも呼ばれる)分配リング132に通じている、冷却材用の接続部131がある。分配リング132は、周方向に延び、連続した環状容積部を形成する。冷却材流路130は、この容積部内に通じているか、又は、(図1の破線矢印で示す)冷却材の流れ方向から見ると、複数の冷却材流路130が分配リング132内で始まる。
【0038】
燃焼室部110は、燃焼室容積部を包囲しかつ冷却材流路130も配置される、燃焼室本体120を備える。図1に筒状に示されている燃焼室部110は、燃料成分を効率的に燃焼させる役割を果たす任意の断面形状を取ることができる。燃焼室部110は、燃焼室本体120と一体的に形成されておりかつ燃焼室本体120から燃焼室の内部に突出する、少なくとも1つのバッフル140をさらに備える。
【0039】
燃焼ガスの流れ方向から見て燃焼室部110の上流側端部には、フランジ125が設けられている。このフランジ125は、噴射ヘッド(図示せず)を接続するために使用される。図1の詳細図に示すように、複数の冷却材出口138がフランジ125の領域に配置されており、燃焼室本体120内の冷却材流路130の各々は、1つの冷却材出口138を有する。複数の冷却材出口138が、燃焼室本体120の断面に沿って周方向に互いに隣接して配置されている。冷却材出口138は、燃焼室100の他端において分配リング132に対応して設けられた図示しない分配リング又はコレクタリングに通じていてもよい。
【0040】
図1の詳細図から特に分かるように、複数のバッフル140の少なくとも1つは、バッフル140を冷却するための冷却材流路133~135を有する。冷却材流路133~135は、燃焼室本体120内のいくつかの冷却材流路130の少なくとも1つに流体的に接続されている。
【0041】
図2は、燃焼室部110の詳細を概略的に示しており、特に、燃焼室本体120内の冷却材流路130と、バッフル140内の冷却材流路133~135が見られる。バッフル140は、単なる例示で台形状として示されているが、燃焼室部110内の振動を減衰させるために任意の形状をとりうる。バッフル140により、燃焼室容積部を異なる部分に分割し、それによって、振動を抑制又は少なくとも減衰させる。燃料の種類によっては、振動は異なるパラメータを有することがあり、その結果、バッフル140は、さもなければ発生するであろう振動を減衰又は抑制するために、燃焼室部110の長手方向及び/又は周方向に対応して寸法決めされなければならない。
【0042】
一例として図2に示すバッフル140は、冷却材入口136と冷却材出口137とを有する。バッフル140の少なくとも1つの冷却材流路133~135は、冷却材入口136と冷却材出口137との間に延びている。例えば、バッフル140の冷却材入口136は、燃焼室本体120内のいくつかの冷却材流路130の内の少なくとも1つに流体的に接続することができる。単純な実施形態では、図2に示すように、バッフルは、燃焼室本体120内の冷却材流路130の幅よりもわずかに大きな、燃焼室本体120の周方向の幅を有する。したがって、バッフル140内の冷却材流路133~135は、燃焼室本体120内の冷却材流路130の幅にほぼ等しい、燃焼室本体120の周方向の幅を有しうる。特に、燃焼室本体120内の冷却材流路130の断面積は、バッフル140内の冷却材流路133又は冷却材入口136の断面積に対応し得る。
【0043】
バッフル140の冷却材入口136は、燃焼室本体120内のいくつかの冷却材流路130の内の少なくとも1つに流体的に接続されうる。図2から分かるように、燃焼室本体120内の冷却材流路130は、燃焼室本体120の長手方向から見てバッフル140の冷却材入口136の高さで終わり、これにより、燃焼室本体120内の冷却材流路130は、バッフル140内の冷却材流路133に通じている。対照的に、燃焼室本体120の長手方向で見ると、燃焼室本体120内の隣接する冷却材流路130はより長い。
【0044】
燃焼室本体120内の各々の冷却材流路130の冷却材出口138は、冷却材本体120の周方向において互いに隣接している。燃焼室本体120内の冷却材流路130がより短いバッフル140の領域では、バッフル140の冷却材出口137は、燃焼室本体120内で冷却材出口138に隣接して配置される。その結果、燃焼室本体120内の全ての冷却材流路130と、バッフル140内の冷却材流路133~135も、バッフル140なしで燃焼室本体120内の複数の冷却材流路130と同様に、コレクタリング(図示せず)に通じている。従って、コレクタリング及びそれに隣接する構成要素は、修正される必要はない。
【0045】
バッフル140の十分な冷却を達成するために、図2に示すバッフル140は、冷却材供給流路である第1冷却材流路133を提供する。冷却材供給流路133は、燃焼室本体120内の(より短い)冷却材流路130に流体的に接続される。バッフル140内の第2冷却材流路134は、冷却材排出流路を形成し、バッフル140の冷却材出口137に通じている。冷却材供給流路133と冷却材排出流路134は、互いに流体的に接続されている。例えば、冷却材供給流路133と冷却材排出流路134は、少なくとも1つの第3冷却材流路135を介して互いに接続されうる。少なくとも1つの第3冷却材流路135の数が大きいほど、冷却材がバッフル140をより均一に流れることができ、より均一に冷却される。
【0046】
燃焼室本体120から最も離間しているバッフル140の自由先端は、燃焼室内に最も遠くに延びているので、この先端も最高の熱負荷にさらされる。均一な冷却を達成し続けることができるようにするために、2つの第3冷却材流路135の間の距離は、燃焼室本体120からの距離が増加するにつれてより小さくなり得る。
【0047】
(燃焼ガスの流れの方向で見て)バッフル140の外側も冷却するために、冷却材供給流路133はバッフル140の第1の側に沿って延び、冷却材排出流路134はバッフル140の第2の側に沿って延びることができる。当然のことながら、冷却材ダクト133~135の配置及びコースは、可能な限り冷たい冷却材が予想されるバッフル140の最高温の地点を過ぎて案内されるように示されるコースから逸脱して選択することができる。
【0048】
図3は、環状ガイド150を有する燃焼室部110の一部分を概略的に示す。燃焼室部110及び環状ガイド150はいずれも円形に示されている。当然のことながら、環状バッフル150は、例えば多角形形状などの別の形状をとることもできる。この環状バッフル150は、また、燃焼室容積部を分割し、それによって、振動を減衰又は回避する。
【0049】
環状バッフル150は、また、少なくとも1つの冷却材流路151を有しうるが、図3は、環状バッフル150の(燃焼ガスの流れの方向で見た)互いに反対側にある2つの冷却材流路151の例を示す。環状バッフル150内のこの少なくとも1つの冷却材流路151は、冷却材がいくつかのバッフル140の少なくとも1つから環状バッフル150内に流れて環状バッフル150を冷却するように、いくつかのバッフル140の少なくとも1つの内の少なくとも1つの冷却材流路133~135に流体的に連結されうる。
【0050】
選択的に、環状バッフル150のいくつかの冷却材流路151の内の少なくとも1つは、冷却材出口152、153を備えうる。環状バッフル150のこのような冷却材出口152、153は、燃焼室100とは反対を向いている側又は燃焼室100に面している側のいずれかに配置することができる。燃焼室100とは反対を向いている冷却材出口152は、冷却材を噴射ヘッドに向けるための冷却材ポートとして使用することができる。一方、燃焼室100に面するバッフル150の側に配置された冷却材出口153を噴射要素として用いることができる。例えば、噴射要素を冷却材出口153に組み込む又は一体化することができ、これにより、冷却材(この場合、燃料成分)を噴射板(図示せず)から離間した領域で燃焼室100内に向けることができる。
【0051】
また、選択的に、いくつかの冷却材出口(図示せず)をバッフル140内に配置することもできる。この場合、これらの冷却材出口は、燃焼室100とは反対を向いている側、又は、燃焼室100に面している側に配置することもでき、冷却材出口152、153と同じ機能を果たしうる。
【0052】
図2及び図3から、付加層製造方法(3D印刷又はALM)を使用して、燃焼室部110(又は、燃焼室100全体)を極めて迅速かつ容易に作製することができることが分かる。バッフル140及び/又は環状バッフル150を形成する材料は、燃焼室本体120と共に層状にすることができ、燃焼室部110全体を層状にすることができる。冷却材流路130、133、134、135、151の全ては、それによって、材料の接合を省略し、かくしてキャビティを生成することによって作製することができる。付加層製造方法は、冷却材流路130、133、134、135、151及び冷却材出口137、138、152、153を形成する、異なる、場合によっては分岐したキャビティを簡単な方法で製造することを可能にする。その結果、これは他の製造工程では不可能であろう、特にバッフル140、150の領域において複雑な構造を実現することができる。したがって、良好に冷却することができるバッフル140、150を、単純な製造工程で提供することができ、特に、冷却材流路130、133、134、135、151の複雑なコースに関係なく、良好に振動減衰も達成することができる。
図1
図2
図3
【外国語明細書】