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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051721
(43)【公開日】2022-04-01
(54)【発明の名称】拍動信号を評価するための医療機器
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20220325BHJP
   A61B 5/029 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
A61B5/02 A
A61B5/029
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021153113
(22)【出願日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】10 2020 124 582.3
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】308011030
【氏名又は名称】ドレーゲルヴェルク アクチェンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト アウフ アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Draegerwerk AG & Co.KGaA
【住所又は居所原語表記】Moislinger Allee 53-55,Luebeck,Germany
(71)【出願人】
【識別番号】509305321
【氏名又は名称】カールスルーアー・インスティトゥート・フュア・テヒノロギー
【氏名又は名称原語表記】Karlsruher Institut fuer Technologie
【住所又は居所原語表記】Kaiserstrasse 12, 76131 Karlsruhe, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ビアギート シュテンダー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル キアヒャー
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA03
4C017AA07
4C017AA08
4C017AA09
4C017AC01
4C017AC26
4C017AC40
4C017BC11
4C017EE15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】末梢血管抵抗を示す抵抗パラメータを簡単かつ迅速に決定するための、改善された医療機器を提供する。
【解決手段】治療されるべき患者の末梢血管抵抗を示す抵抗パラメータ107を決定するための医療機器100であって、受信モジュール110と、読み取りモジュール120と、計算モジュール130とを有する。受信モジュールは、患者の血圧推移114、動脈血圧推移、または血液量推移を示す拍動信号112を受信する。読み取りモジュールは、受信モジュールに接続され、受信した拍動信号から複数の所定の推移パラメータ124を読み取り、複数の所定の推移パラメータの対応する読み取られた測定値134を提供する。計算モジュールは、読み取りモジュールに接続され、読み取られた測定値と、患者の一回拍出量を示す既定のパラメータ135とに基づいて、所定の推定関数136を使用して、患者の抵抗パラメータを計算および出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療されるべき患者(404)の末梢血管抵抗を示す抵抗パラメータ(107)を決定するための医療機器(100)であって、
・当該医療機器(100)は、受信モジュール(110)を有し、前記受信モジュール(110)は、前記患者(404)の血圧推移(114)、とりわけ動脈血圧推移、または血液量推移を示す拍動信号(112)を受信するように構成されており、
・当該医療機器(100)は、読み取りモジュール(120)を有し、前記読み取りモジュール(120)は、前記受信モジュール(110)に信号技術的に接続されていて、受信した前記拍動信号(112)から複数の所定の推移パラメータ(124)を読み取り、前記複数の所定の推移パラメータ(124)についての対応する読み取られた測定値(134)を提供するように構成されており、
・当該医療機器(100)は、計算モジュール(130)を有し、前記計算モジュール(130)は、前記読み取りモジュール(120)に信号技術的に接続されていて、前記読み取られた測定値(134)と、前記患者の一回拍出量を示す既定のパラメータ(135)とに基づいて、所定の推定関数(136)を使用して、前記患者(404)の前記抵抗パラメータ(107)を計算および出力するように構成されている、
医療機器(100)。
【請求項2】
前記複数の所定の推移パラメータ(124)は、前記拍動信号(112)のそれぞれのパルス(150)の拡張終期の状態(152)、および/または前記拍動信号(112)のそれぞれのパルス(150)の収縮終期の状態(154)に基づく、請求項1記載の医療機器(100)。
【請求項3】
前記複数の所定の推移パラメータ(124)は、それぞれのパルス(150)の以下の推移パラメータのうちの少なくとも1つ、すなわち、収縮終期の値、拡張終期の値、収縮期での最大値、収縮期の持続時間、拡張期の持続時間のうちの少なくとも1つを含む、請求項2記載の医療機器(100)。
【請求項4】
前記所定の推定関数(136)は、前記収縮終期の値と前記拡張終期の値との間の差の関数であり、とりわけ線形の関数である、請求項3記載の医療機器(100)。
【請求項5】
前記複数の所定の推移パラメータ(124)は、前記拍動信号(112)の時定数を含み、
前記時定数は、少なくとも1回の拡張期の領域における前記拍動信号(112)の推移によって決定されている、
請求項1から4までの少なくとも1項記載の医療機器(100)。
【請求項6】
前記計算モジュール(230)は、前記患者(404)の前記抵抗パラメータ(107)および前記時定数に基づいて、前記患者(404)の動脈コンプライアンス(208)を計算および出力するようにさらに構成されている、請求項5記載の医療機器(200)。
【請求項7】
前記計算モジュール(130)は、前記抵抗パラメータ(107)に基づいて、前記拍動信号(112)に関連する推定信号推移を計算および出力するようにさらに構成されている、請求項1から6までの少なくとも1項記載の医療機器(100)。
【請求項8】
前記患者の一回拍出量を示す既定のパラメータ(135)が繰り返し更新されて既定され、
前記計算モジュール(130)は、当該パラメータについての対応する更新された値(135’)を、前記抵抗パラメータ(107)の計算のために使用するように構成されている、
請求項1から7までの少なくとも1項記載の医療機器(300)。
【請求項9】
前記医療機器(300)は、前記患者の一回拍出量を示すパラメータ(135)についての前記更新された値(135’)を、受信した前記拍動信号(112)と、所定のモデル規則(377)とに基づいて計算するように構成されている、請求項8記載の医療機器(300)。
【請求項10】
前記患者の一回拍出量を示す既定のパラメータ(135)のために、一定の推定値が使用される、請求項1から7までの少なくとも1項記載の医療機器(100)。
【請求項11】
治療されるべき患者(404)の末梢血管抵抗を示す抵抗パラメータ(107)を決定するための医療システム(405)であって、
当該医療システム(405)は、
・請求項1から10までの少なくとも1項記載の医療機器(100)と、
・前記患者(404)の血圧推移(114)または血液量推移を示す測定値推移を測定して、拍動信号(112)として提供するように構成された測定装置(490)と
を有する、
医療システム(405)。
【請求項12】
前記測定装置(490)は、前記患者(404)の血圧推移(114)を測定するように構成されており、
提供される前記拍動信号(112)は、血圧信号である、
請求項11記載の医療システム(405)。
【請求項13】
前記測定装置(490)は、前記患者(404)の前記血圧推移(114)を非侵襲的に測定するように構成されている、請求項12記載の医療システム(405)。
【請求項14】
治療されるべき患者(404)の末梢血管抵抗を示す抵抗パラメータ(107)を決定するための方法(500)であって、
当該方法(500)は、
・前記患者の血圧推移(114)、とりわけ動脈血圧推移、または血液量推移を示す拍動信号(112)を受信するステップと、
・受信した前記拍動信号(112)から複数の所定の推移パラメータ(124)を読み取るステップと、
・前記複数の所定の推移パラメータ(124)についての読み取られた測定値(134)を提供するステップと、
・前記読み取られた測定値(134)と、前記患者の一回拍出量を示す既定のパラメータ(135)とに基づいて、所定の推定関数(136)を使用して、前記患者(404)の前記抵抗パラメータ(107)を計算するステップと、
・前記抵抗パラメータ(107)を出力するステップと
を有する、方法(500)。
【請求項15】
コンピュータ上、プロセッサ上、またはプログラミング可能なハードウェアコンポーネント上で実行された場合に、請求項14記載の方法(500)を実行するためのプログラムコードを有する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療されるべき患者の末梢血管抵抗を示す抵抗パラメータを決定するための医療機器に関する。本発明はさらに、末梢血管抵抗を示す抵抗パラメータを決定するための医療システムおよび方法、ならびにそのような方法を実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムに関する。
【0002】
心拍出量に加えて末梢血管抵抗および動脈血管系のコンプライアンスが、患者の集中治療での監視にとって重要であることが知られている。したがって、これらの生理学的変数は、適切な治療をできるだけ迅速に開始するためにショック状態を迅速かつ高信頼性に分類することを可能にする。さらに、これらの生理学的変数は、患者の血圧を安定させるための自動カテコールアミン療法のための高信頼性のパラメータである。
【0003】
末梢血管抵抗を決定するためには、平均動脈血圧および中心静脈血圧を測定して、ここから末梢血管抵抗を決定するという方法が臨床的に確立されている。
【0004】
本発明の課題は、末梢血管抵抗を示す抵抗パラメータを決定するための改善された医療機器を、とりわけこの抵抗パラメータを特に簡単かつ迅速に決定するために提供することである。
【0005】
本発明の第1の態様によれば、上記の課題を解決するために、治療されるべき患者の末梢血管抵抗を示す抵抗パラメータを決定するための医療機器であって、受信モジュールと、読み取りモジュールと、計算モジュールとを有する医療機器が提案される。
【0006】
受信モジュールは、患者の血圧推移、とりわけ動脈血圧推移、またはとりわけフォトプレチスモグラムとして測定される血液量推移を示す拍動信号を受信するように構成されている。
【0007】
読み取りモジュールは、受信モジュールに信号技術的に接続されていて、受信した拍動信号から複数の所定の推移パラメータを読み取り、複数の所定の推移パラメータについての対応する読み取られた測定値を提供するように構成されている。
【0008】
計算モジュールは、読み取りモジュールに信号技術的に接続されていて、読み取られた測定値と、患者の一回拍出量を示す既定のパラメータとに基づいて、所定の推定関数を使用して、患者の抵抗パラメータを計算および出力するように構成されている。
【0009】
本発明の枠内では、末梢血管抵抗または末梢血管抵抗を示す抵抗パラメータを非侵襲的に、かつそれでもなお高信頼性に決定することが、患者の集中治療での看護にとって有利であることが判明した。このために本発明によれば、受信した拍動信号の特徴と、一回拍出量、または一回拍出量を示すパラメータとに依存している所定の推定関数を使用することが提案される。
【0010】
したがって、本発明による医療機器は、末梢血管抵抗および/または対応する抵抗パラメータを非侵襲的に決定することを可能にする。さらに、本発明による医療機器によって有利には、末梢血管抵抗および/または対応する抵抗パラメータを、患者の治療中に継続的に決定することが可能となる。
【0011】
本発明によれば、継続的な決定により、集中治療での治療中における患者の状態を特に高信頼性に監視することが可能となる。したがって、ショック状態を特に高信頼性に分類することができるか、または患者の介護の一元化を認識することができる。したがって、本発明による医療機器は、医療専門家が、例えば血圧推移および/または血液量推移のような測定された拍動信号を考慮して、患者の現在の状態に特に迅速かつ高信頼性に反応することを可能にする。
【0012】
最後に、本発明による医療機器は、末梢血管抵抗および/または対応する抵抗パラメータの特に高信頼性の決定、とりわけこれらの変数の自動決定を可能にする。有利には、医療機器は、ユーザ入力なしで、または少なくともわずかなユーザ入力で、所望の変数を決定することができる。
【0013】
本発明による医療機器は、例えば人工呼吸システムのような公知のターゲットシステムと有利に組み合わせ可能である。このために拍動信号と、本発明による医療機器との通信が必要である。
【0014】
あるパラメータがある変数を示すということは、本発明の意味では、このパラメータによってこの変数を直接的に推論することが可能であるということを意味する。したがって、抵抗パラメータは、場合により所定の定数および/または測定値を考慮して、患者の末梢血管抵抗を表す。一回拍出量を示すパラメータは、好ましくは患者の一回拍出量、心拍出量、一回拍出係数、および/または心係数である。これらのパラメータは、場合により定数および/または測定値を考慮して、一回拍出量の決定を直接的に可能にし、その意味において一回拍出量を示している。これらのパラメータは、患者の現在の状態を評価するための特に関連するパラメータである。これらのパラメータは、当業者にはその医学的な関連性が即座に理解できる一般的な医学的パラメータである。心臓の一回拍出係数は、患者の体表面積1平方メートル当たりの実際の一回拍出量である。さらに、心係数は、患者の体表面積1平方メートル当たりの心拍出量である。心拍出量は、例えば1分間のような特定の時間内に心臓が患者の体内に送り込む血液の量である。一回拍出量は、心臓が1回鼓動したときに心臓が患者の体内に送り込む血液の量である。これらの変数は、その限りにおいて一回拍出量と相関しているので、一回拍出量を示すパラメータである。
【0015】
拍動信号は、本発明の意味では、複数のパルスからなる測定値推移を示す信号である。本発明によれば、受信モジュールによって受信される拍動信号は、患者の血圧推移および/または血液量推移を示し、したがって、患者の複数の血圧パルスおよび/または血液量パルス、とりわけ現在の血圧パルスおよび/または現在の血液量パルスを示す。
【0016】
信号技術的な接続とは、信号の交換を可能にする接続である。この接続は、ケーブルレスまたはケーブルベースで実施可能である。この意味で、本発明による医療機器のそれぞれのモジュールは、少なくとも部分的に、別個の、とりわけ空間的に分離されたモジュールとして存在することができる。代替的または追加的に、本発明による医療機器のそれぞれのモジュールは、少なくとも部分的に、医療機器の1つの共通の構成要素としての1つの共通のハウジングの内部に存在することができる。本発明によれば、医療機器の複数の異なるモジュールは、少なくともソフトウェアレベルでは、別個のソフトウェアブロックとして互いに分離されている。
【0017】
本発明によれば、受信モジュールは、信号処理を決して実行せず、受信した拍動信号を読み取りモジュールに転送するだけのインターフェースであってよい。代替的に、受信モジュールを、拍動信号を処理するように構成してもよく、例えば拍動信号を、読み取りモジュールによってさらに処理することができる信号形式に変換するように構成してもよい。
【0018】
以下では、本発明による医療機器の好ましい実施形態について説明する。
【0019】
特に好ましい実施形態では、複数の所定の推移パラメータは、拍動信号のそれぞれのパルスの拡張終期の状態、および/または拍動信号のそれぞれのパルスの収縮終期の状態に基づく。収縮終期の状態は、この収縮終期の状態が、血圧パルスまたは血液量パルスの推移内における、ディクロティックノッチとも呼ばれるいわゆる重複切痕の領域にある点を表すことよって特徴付けられる。この重複切痕は、パルスの推移内において、心臓の大動脈弁の閉鎖とそれに伴う血圧の低下とに起因して発生する。この時点で収縮期が終了し、いわゆる拡張期が開始する。拡張期の間には、血液はもはや心臓の左主室から大動脈に流れなくなるが、収縮期の間に弾性の大動脈に構築された圧力は、患者の体循環の血管系に血圧流をもたらし続ける。収縮期の終了時における、すなわち重複切痕の領域におけるこの点は、対応する時間における実際の血圧または実際の血液量によって表される。この意味で、血圧推移または血液量推移とは、時間推移にわたって評価された血圧または血液量を意味すると理解されるべきである。それぞれのパルスの収縮終期の状態は、本発明の意味では、重複切痕の領域における収縮終期の血圧または血液量に基づく。
【0020】
先行する実施形態の有利な変形例では、複数の所定の推移パラメータは、それぞれのパルスの以下の推移パラメータのうちの1つ、すなわち、収縮終期の値、拡張終期の値、収縮期での最大値、収縮期の持続時間、拡張期の持続時間のうちの少なくとも1つを含む。この場合における値とは、好ましくは、血圧または血液量を意味すると理解されるべきである。これらの推移パラメータは、拍動信号にとって特に特徴的であるので、高信頼性に読み取ることができる。さらに、これらの所定の推移パラメータは、読み取られた測定値を計算モジュールに提供するために、これらの変数の特に迅速かつ高信頼性の自動読み取りを可能にする。収縮期での最大値を評価することにより、血圧および血液量の場合には典型的に例えば最大値の約60%である収縮終期の値を推定することができる。このことは、例えば、対応する圧力センサが信号の過減衰を引き起こす場合に、またはチューブ内に気泡が集まることにより、収縮終期の値の検出、すなわち例えば重複切痕の検出が特に困難になる場合に、特に有利である。
【0021】
実施形態の上記の変形例では、所定の推定関数は、例えば、収縮終期の値と拡張終期の値との間の差に依存し、とりわけ線形に依存する。好ましくは、推定関数は、収縮終期の血圧と拡張終期の血圧との間の差、および/または収縮終期の血液量と拡張終期の血液量との間の差に依存する。差を決定することにより、所定の推移パラメータを決定する際における体系的な不正確さを、推定関数の結果から取り除くことができる。なぜなら、差の場合には、2つの計算値の相違だけが推定関数の結果に含まれるからである。したがって、患者の抵抗パラメータを、測定誤差に対して特にロバストに決定することができる。
【0022】
好ましい実施形態では、複数の所定の推移パラメータは、拍動信号の時定数を含み、時定数は、少なくとも1回の拡張期の領域における拍動信号の推移によって決定されている。このような決定は、例えばロジスティック回帰によって実施可能である。時間推移からこの変数を決定するための数値的方法は既知であるので、以下では説明しない。所定の推移パラメータとしての時定数は、特に簡単かつ高信頼性に数値的に決定可能である。
【0023】
先行する実施形態の特に好ましい変形例では、計算モジュールは、患者の抵抗パラメータおよび時定数に基づいて、患者の動脈コンプライアンスを計算および出力するようにさらに構成されている。このために例えば、拍動信号の時定数が末梢血管抵抗と動脈コンプライアンスとの積から得られるという既知の生理学的関係を利用することができる。動脈コンプライアンスは、結果として生じる血圧に対する動脈血管の弾性抵抗の寄与を表す。この変数は、種々の公知の診断方法に関連しているので、この変数を決定することは、集中治療で治療されている患者を監視するために有利である。
【0024】
さらなる実施形態では、計算モジュールは、抵抗パラメータに基づいて、拍動信号に関連する推定信号推移を計算および出力するようにさらに構成されている。例えば、動脈コンプライアンスに関する圧力の推定された信号推移を計算して、それぞれの心臓の鼓動ごとに出力することができる。この実施形態の変形例では、この推定された信号推移が、拍動信号、とりわけ動脈血圧または受信した血液量と比較される。この比較の枠内で認識された差を、光学的または音響的に出力することができ、これにより、心エコー検査の特に簡単かつロバストな実施が可能になる。推定信号推移の決定は、好ましくは、患者の一回拍出量を示す既定のパラメータに基づいても実施される。そのような推定信号推移の一例は、正弦半波形の関数であり、この関数の開始点は、受信した拍動信号に基づいて規定され、この関数の振幅は、一回拍出量と動脈コンプライアンスとの商に比例し、この関数の周期期間自体は、拍動信号からの収縮期および拡張期の持続時間から得られる。
【0025】
特に好ましい実施形態では、患者の一回拍出量を示す既定のパラメータが繰り返し更新されて既定され、計算モジュールは、当該パラメータについての対応する更新された値を、抵抗パラメータの計算のために使用するように構成されている。好ましくは、パラメータについてのそれぞれの更新された値は、医療機器によって受信され、計算モジュールに出力されて、そのパラメータの従前の値が、このパラメータについての更新された値によって置き換えられる。これにより、一回拍出量を示す計算されたパラメータは、特に高信頼性となる。なぜなら、計算の際に考慮される値は、実際に治療されるべき患者との関連において測定または決定されたものだからである。
【0026】
先行する実施形態の特に有利な変形例では、医療機器は、患者の一回拍出量を示すパラメータについての更新された値を、受信した拍動信号と、所定のモデル規則とに基づいて計算するように構成されている。この場合、好ましくは、拍動信号は、所定の推移パラメータに関しても評価され、所定の推移パラメータは、特に好ましくは、拍動信号のそれぞれのパルスの収縮終期の値および拡張終期の値に関連する。その後、読み取られた推移パラメータは、所定のモデル規則に基づいて、例えば一回拍出量または心拍出量などのような患者の一回拍出量を示すパラメータについての更新された値に一義的に対応付けられる。この変形例では有利には、医療機器は、抵抗パラメータに加えて一回拍出量を示すパラメータも決定する。一回拍出量または心拍出量などは、集中治療で治療されている患者の監視にとって重要なパラメータであるので、医療機器は、有利には、受信した拍動信号から複数の臨床的に関連するパラメータを決定することができる。
【0027】
一回拍出量と一回拍出係数との間、または心拍出量と心係数との間の変換のために、医療機器は、一実施形態では、患者の身体測定的特徴を決定して、ここから患者の体表面積を推定するように構成された患者モニタリングモジュールを追加的に有する。一回拍出量を示す計算されたパラメータの出力値は、患者の推定された体表面積に基づいてさらに処理され、とりわけ、患者の推定された体表面積に基づいて患者モニタリングモジュールによってさらに処理される。この意味で、患者モニタリングモジュールによって体表面積を考慮することにより、医療機器による拍動信号、とりわけ血圧推移および/または血液量推移の、患者に適合された特に高信頼性の評価が可能となる。読み取りモジュールによる拍動信号の評価が計算モジュールを比較的不正確な結果へと導くほど、受信した拍動信号の品質が非常に低い場合には、そのような追加的な情報によって医療機器の出力の品質を改善することができる。さらに、患者モニタリングモジュールは、特に小さいまたは特に大きい体表面積を有する患者が検査される場合に、とりわけ有利である。なぜなら、そのような患者の場合には、体表面積に関して正規化されていない血圧推移または血液量推移の評価により、患者の生理的状態に関して不正確な結論しか得られないからである。身体測定的特徴は、例えば、患者の推定された腹部体積、推定された腹囲、推定された身長、推定された腕の長さ、および/または推定された腕の幅である。
【0028】
先行する実施形態の特に有利な変形例では、患者モニタリングモジュールは、患者の身体測定的特徴を検出するための光学的なセンサシステムを含む。そのような光学的なセンサシステムによって、好ましくはカメラシステムによって、患者の体表面積、または少なくとも体表面積に関する尺度を、身体測定的特徴に基づいて特に簡単に自動的に推定することができる。
【0029】
前述の2つの実施形態の代替的な実施形態では、患者の一回拍出量を示す既定のパラメータのために、一定の推定値が使用される。これによって本発明によれば、抵抗パラメータを、医療機器によって特に簡単かつ迅速に決定することができる。とりわけ、一回拍出量を示すパラメータを更新するための計算ステップまたは処理ステップが必要ない。これによって本発明によれば、例えば、末梢血管抵抗の変化に対する既知の交差感受性を考慮して、高血圧の簡単かつ非侵襲的な決定を提供することができる。とりわけ、出力された抵抗パラメータを、公知の診断方法をサポートするために使用することができる。この実施形態の枠内において心拍出量を一定であると仮定することは、計算されたパラメータの精度の制限につながる可能性があるが、例えばスマートウォッチおよび/または血圧計のような単純な移動式の機器内において、本発明による医療機器を使用することも可能にする。
【0030】
本発明の第2の態様によれば、上記の課題を解決するために、治療されるべき患者の末梢血管抵抗を示す抵抗パラメータを決定するための医療システムであって、当該医療システムは、先行する実施形態のうちの少なくとも1つによる医療機器と、患者の血圧推移または血液量推移を示す測定値推移を測定して、拍動信号として提供するように構成された測定装置とを有する、医療システムが提案される。
【0031】
本発明による医療システム内の医療機器は、本発明による医療機器と同じ実施形態で存在することができ、したがって、医療機器の対応する実施形態も有している全ての利点を有する。
【0032】
さらに、本発明による医療システムは、有利には、医療機器と測定装置とが信号技術的に互いに調整されることを可能にする。これによって特に有利には、拍動信号を簡単に評価すること、とりわけ迅速に評価することが可能となる。
【0033】
特に好ましい実施形態では、本発明による測定装置は、拍動信号と一緒に、拍動信号に関する品質インジケータを送信する。これにより、医療機器は、示された測定値推移のうちの、所定の閾値を超える拍動信号の信号品質を有するパルスのみを評価することが可能となる。
【0034】
さらなる好ましい実施形態では、測定装置は、患者の血圧推移を測定するように構成されており、提供される拍動信号は、血圧信号である。この実施形態の特に好ましい変形例では、測定装置は、患者の血圧推移を非侵襲的に測定するように構成されている。そのような非侵襲的な測定は、例えばフォトプレチスモグラムのような公知の非侵襲的方法のうちの1つによって実現可能である。
【0035】
本発明の第3の態様によれば、上記の課題を解決するために、治療されるべき患者の末梢血管抵抗を示す抵抗パラメータを決定するための方法であって、
当該方法は、
・患者の血圧推移、とりわけ動脈血圧推移、または血液量推移を示す拍動信号を受信するステップと、
・受信した拍動信号から複数の所定の推移パラメータを読み取るステップと、
・複数の所定の推移パラメータについての読み取られた測定値を提供するステップと、
・読み取られた測定値と、患者の一回拍出量を示す既定のパラメータとに基づいて、所定の推定関数を使用して、患者の抵抗パラメータを計算するステップと、
・抵抗パラメータを出力するステップと
を有する、方法が提案される。
【0036】
本発明による方法は、本発明による医療機器によって実施可能であり、したがって、医療機器の記載された実施形態に対応する複数の異なる実施形態で存在することができる。したがって、本発明による方法は、医療機器のそれぞれの提示された実施形態と同じ利点を有する。
【0037】
本発明による方法ステップは、記載された順序で実施される。したがって、拍動信号が、常に最初に受信され、その後、拍動信号から所定の推移パラメータを読み取ることができ、これらの所定の推移パラメータに基づいて、患者の抵抗パラメータが計算および出力される。好ましい実施形態では、全ての方法ステップは、抵抗パラメータの出力が実質的にリアルタイムで実施されるように、順次に実施される。拍動信号を受信してから抵抗パラメータを出力するまで、好ましくは20秒未満、とりわけ10秒未満、特に好ましくは5秒未満である。
【0038】
さらなる実施形態では、抵抗パラメータの計算および出力は、抵抗パラメータの問い合わせを示すユーザ入力によってトリガされる。そのような入力は、例えば、本発明による医療機器の入力モジュールを介して実施可能である。
【0039】
好ましくは、本発明による方法の方法ステップは、1つのデバイスによって、とりわけ単一のプロセッサによって実施される。代替的に、方法ステップは、少なくとも部分的に複数の異なるプロセッサによって実施される。
【0040】
本発明の第4の態様によれば、上記の課題を解決するために、コンピュータ上、プロセッサ上、またはプログラミング可能なハードウェアコンポーネント上で実行された場合に、本発明の第3の態様による方法を実行するためのプログラムコードを有する、コンピュータプログラムが提案される。好ましくは、本発明による方法の複数のステップは、1つの共通のコンピュータ、1つの共通のプロセッサ、または1つの共通のプログラミング可能なハードウェアコンポーネントによって実行される。好ましくは、個々のステップは、少なくともソフトウェアレベルでは、対応するソフトウェアブロックによって互いに分離されている。特に好ましくは、本発明による方法の全てのステップは、1つの共通のコンピュータ上で、1つの共通のプロセッサ上で、または1つの共通のプログラミング可能なハードウェアコンポーネント上で実行される。
【0041】
今から、図面に概略的に図示された有利な実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の第1の態様による医療機器の第1の実施例の概略図である。
図2】本発明の第1の態様による医療機器の第2の実施例の概略図である。
図3】本発明の第1の態様による医療機器の第3の実施例の概略図である。
図4】本発明の第2の態様による医療システムの一実施例の概略図である。
図5】本発明の第3の態様による方法の一実施例のフローチャートである。
【0043】
図1は、本発明の第1の態様による医療機器100の第1の実施例の概略図を示す。
【0044】
医療機器100は、治療されるべき患者の末梢血管抵抗を示す抵抗パラメータ107を決定するように構成されている。このために医療機器100は、受信モジュール110、読み取りモジュール120、および計算モジュール130を含む。
【0045】
受信モジュール110は、患者の血圧推移114、とりわけ動脈血圧推移、または血液量推移を示す拍動信号112を受信するように構成されている。図示の実施例の枠内では簡単にするために、拍動信号112は、常に、収縮期の終了時に重複切痕(dicrotic notch)を有する典型的な血圧推移である。しかしながら、拍動信号112に関する全ての説明は、血液量推移の場合にも同様に当てはまる。受信モジュール110は、拍動信号112を受信するために、拍動信号112が含まれた入力データ111のための図示されていない通信インターフェースを有する。この通信インターフェースは、図示の実施例では、拍動信号112を有する入力データ111をケーブルベースで受信するように構成されている。図示されていない実施例では、通信インターフェースは、拍動信号をケーブルレスで受信するように構成されている。受信モジュール110により、拍動信号112は、読み取りモジュール120によって読み取ることができる信号フォーマットに変換される。これに関し、この実施例の変形例において、受信モジュールが受信した信号フォーマットを読み取りモジュールが既に読み取ることができる場合には、受信モジュールが、拍動信号を変更することなく読み取りモジュールに出力するようにしてもよい。
【0046】
読み取りモジュール120は、受信モジュール110に信号技術的に接続されている。本実施例では、ケーブルベースの信号接続122である。図示されていない実施例では、この接続が、ケーブルレスに構成されている。さらに、読み取りモジュール120は、
受信した拍動信号112から複数の所定の推移パラメータ124、とりわけ血圧推移パラメータを読み取り、複数の所定の推移パラメータについての対応する読み取られた測定値134を提供するように構成されている。これらの測定値134は、1つの共通の測定値信号132を介して計算モジュール130に出力される。代替的な実施例では、これらの測定値が、それぞれ別個の信号を介して計算モジュールに出力される。
【0047】
計算モジュール130は、測定値信号132を提供するための読み取りモジュール120に信号技術的に接続されている。この接続は、ケーブルベースまたはケーブルレスで実施可能である。さらに、計算モジュール130は、読み取られた測定値134と、患者の一回拍出量を示す既定のパラメータ135とに基づいて、所定の推定関数136を使用して、患者の抵抗パラメータ107を計算するように構成されている。所定の推定関数136は、計算モジュール130内に格納されている。好ましくは、推定関数136は、一度格納された後には、例えば医療機器100の製造中にはもはや変更されない。患者の一回拍出量を示すパラメータ135は、計算モジュール130の別個のメモリ領域131内に格納されている。図示の実施例では、格納されたパラメータ135は、少なくとも医療機器100による患者の治療中には変更されない一定に保持される推定値である。好ましくは、この一定に保持される推定値は、医療機器100の動作中には変更されない。このパラメータ135の変更が許容されている実施例は、例えば、図2図3、および図4に図示されている。
【0048】
最後に、計算モジュール130は、計算された抵抗パラメータ107を示す出力信号140を出力するようにも構成されている。図示の実施例では、出力信号140は、図示されていない外部機器にケーブルベースで出力される。さらなる実施例では、出力信号の出力がケーブルレスで実施される。この出力のために医療機器100は、図示されていない通信インターフェースを有する。例えば、この通信インターフェースは、例えばバスシステム、USBインターフェース、またはイーサネットインターフェースのようなケーブルベースのインターフェースであってもよいし、または例えばWLANインターフェース、Bluetooth(登録商標)インターフェース、ZigBeeインターフェース、BLEインターフェースのようなケーブルレスのインターフェースであってもよい。
【0049】
複数の所定の推移パラメータ124は、本実施例では、少なくとも部分的に拍動信号112のそれぞれのパルス150の拡張終期の状態152、および/または拍動信号112のそれぞれのパルス150の収縮終期の状態154に基づく5つのパラメータである。したがって、推移パラメータ124は、収縮終期の血圧、拡張終期の血圧、収縮期の持続時間、および拡張期の持続時間を含む。さらに、拍動信号112の時定数は、少なくとも1つの拡張期の領域においてロジスティック回帰によって決定される所定の推移パラメータ124である。そのようなロジスティック回帰の数値的な実装についての詳細は、当業者には周知であるので、以下ではこれ以上説明しない。
【0050】
推定関数136として、図示の実施例では具体的に、推移パラメータ124と抵抗パラメータ107との間の以下の対応関係:
【数1】
が使用される。
【0051】
ここで、Rは、患者の末梢血管抵抗を表し、Tsysは、収縮期の持続時間を表し、Tdiaは、拡張期の持続時間を表し、Pa,esは、収縮期の終了時の血圧を表し、Pa,edは、拡張期の終了時の血圧を表し、SVは、患者の一回拍出量を表し、τは、受信した拍動信号の時定数を表す。したがって、計算された抵抗パラメータは、収縮終期の値、すなわち収縮終期の血圧と、拡張終期の値、すなわち拡張終期の血圧との間の差に線形に依存する。1つの変形例では、拍動信号の複数のパルスが評価されて、例えば、この際に読み取られた既定のパラメータのうちの少なくとも一部の平均値に基づいて、抵抗パラメータが計算される。
【0052】
一回拍出量を示すパラメータおよび推移パラメータと、患者の抵抗パラメータとの間の対応関係を正確に記述している場合には、そのような他の推定関数も、まさに本発明による推定関数である。とりわけ、例えば指数関数を1次、2次、または3次まで拡張することにより、指数関数の代わりに、時定数に依存する積を利用することができる。したがって、本発明の対象は、特定の推定関数または同様の推定関数の使用に限定されているわけではない。
【0053】
図示の実施例では、医療機器100の全てのモジュールは、医療機器100の1つの共通のハウジング102内に配置されている。とりわけ、全てのモジュールは、1つの共通のプロセッサ(図示せず)によって実行され、これらのモジュールは、それぞれ少なくともソフトウェアレベルでは、互いに分離されている。
【0054】
提示された実施例に即して、一回拍出量を示す固定的に既定されたパラメータを使用することにより、医療機器100の構造を特に簡単かつコンパクトにすることが可能となる。特に有利な実施例では、医療機器100は、スマートウォッチ、移動式の血圧計、または例えば人工呼吸器等のような別の医療機器と組み合わせられて動作する携帯型の機器である。
【0055】
図示されていない実施例では、医療機器の複数のモジュールは、少なくとも部分的に互いに離間されて構成されており、それぞれ異なるハードウェアコンポーネントによって実装される。
【0056】
図2は、本発明の第1の態様による医療機器200の第2の実施例の概略図を示す。
【0057】
医療機器200は、一回拍出量を示すパラメータ135が一定の推定値ではなく、繰り返し更新されて既定されるという点で、図1に示されている医療機器100とは異なる。このために医療機器200は、入力モジュール260を有し、この入力モジュール260は、入力インターフェース264を介してユーザ入力262を受信し、対応する入力情報266を提供するように構成されている。さらに、医療機器200は、一回拍出量を示すパラメータ135が格納されている別個のメモリモジュール270を含む。メモリモジュール270は、入力情報266を受信し、入力情報266から一回拍出量を示すパラメータについての更新された値135’を決定して、既定のパラメータとして計算モジュール230に出力するように構成されている。好ましくは、入力インターフェース264は、一回拍出量を示すパラメータ135についての更新された値135’を提供する外部機器とのケーブルレスでの通信のために構成されている。図示されていない実施例では、入力インターフェースとの通信が、ケーブルベースで実施される。
【0058】
さらに、医療機器200は、4つのそれぞれ異なる所定の推移パラメータ124のみが読み取られて、抵抗パラメータを計算するために使用されるという点で、医療機器100とは異なる。
【0059】
最後に、医療機器200は、計算モジュールが、抵抗パラメータ107および時定数に基づいて、患者の動脈コンプライアンス208を計算および出力するようにさらに構成されているという点でも、医療機器100とは異なる。好ましくは、動脈コンプライアンス208は、時定数を動脈血管抵抗によって除算することによって計算される。本実施例では、動脈コンプライアンスの値は、抵抗パラメータ107を出力するための出力信号140とは異なる別個の出力信号242を介して出力される。図示されていない実施例では、例えば動脈コンプライアンスおよび動脈血管抵抗のような複数の出力値が、1つの共通の出力信号を介して出力される。
【0060】
図示されていない実施例では、計算モジュールは、抵抗パラメータに基づいて、拍動信号に関連する推定信号推移を計算および出力するようにさらに構成されている。推定信号推移は、好ましくは血圧推移または血液量推移に関連している。
【0061】
図3は、本発明の第1の態様による医療機器300の第3の実施例の概略図を示す。
【0062】
医療機器300は、一回拍出量を示すパラメータについての更新された値135’が、医療機器300の別個の評価モジュール375によって決定されるという点で、医療機器200とは異なる。このために3つの所定の推移パラメータ124が、読み取りモジュール320から評価モジュール375に転送される。さらに、3つの所定の推移パラメータ124が、読み取りモジュール320から計算モジュール330に転送され、この場合、拍動信号112からは、合計4つの異なる所定の推移パラメータ124が、読み取りモジュール320によって読み取られる。
【0063】
一回拍出量の決定、とりわけ一回拍出量の、または一回拍出量を示すパラメータの自動決定は、所定のモデル規則377によって実施され、この所定のモデル規則377は、評価ユニット375のこの結果のために所定の推移パラメータがどのように計算されるかを記述するものである。そのようなモデル規則は、好ましくは較正情報に基づくか、または医療機器によって過去に検出されたデータに基づく。そのようなデータ量に基づいて、例えば当業者に公知の方法での多次元回帰のような数値的方法により、そのようなモデル規則377を決定して、評価モジュール375による処理のために提供することができる。更新された値135’は、今度は、一回拍出量を示す既定のパラメータ135として計算モジュール330によって受信され、推定関数136による抵抗パラメータの計算のために使用される。
【0064】
さらに、医療機器300は、本発明に即して計算された抵抗パラメータ107を示す視覚的な出力384を、ディスプレイ382を介して提供する出力モジュール380を有するという点で、先行する実施例の医療機器とは異なる。
【0065】
図示の実施例では、出力モジュール380は、本発明による医療機器の構成要素である。図4に示されている実施例では、出力モジュールは、医療機器に含まれていない外部機器の一部である。
【0066】
図4は、本発明の第2の態様による医療システム405の一実施例の概略図を示す。
【0067】
医療システム405は、治療されるべき患者404の末梢血管抵抗を示す抵抗パラメータ107を決定するように構成されている。このために医療システム405は、本発明の第1の態様による医療機器400と、患者404の血圧推移または血液量推移を示す測定値推移を測定して、拍動信号112として提供するように構成された測定装置490とを含む。
【0068】
測定装置490は、患者の血圧推移114を測定するように構成されており、提供される入力データ111は、拍動信号112を示し、これによってさらなる処理のために提供する。本実施例では、示される拍動信号は、血圧信号である。代替的または追加的に、拍動信号は、血液量信号を含むことができる。この場合、測定装置490は、患者404の血圧推移114を非侵襲的に測定するように構成されている。そのような非侵襲的な測定は、例えば、光学的な測定、超音波ベースの測定、または圧力センサによる測定であってよい。図示の実施例では、公知のように光学的な測定を実施するフォトプレチスモグラフィである。
【0069】
測定システム405の内部の医療機器400は、既に図2に図示されているように、ユーザ入力262を受信するための入力モジュール260を有し、ユーザ入力262自体は、入力情報266を含む。この場合、入力情報266は、一回拍出量を示す所定数の所定のパラメータ値から、患者404の現在の状態に適したパラメータ値を示す。このためにユーザ入力262は、例えば、このパラメータについての使用されるべき値、このパラメータについての所定の値への対応付けを可能にする分類情報、またはグラフィカルユーザインターフェースを介して提供される、所定の複数の適切な値からのパラメータ値の選択肢を明示的に含む。
【0070】
図示の実施例では、別個のメモリモジュール470は、3つのそれぞれ異なる患者状態を区別し、これによって3つのパラメータ値のうちの1つを、一回拍出量を示すパラメータについての現在の既定値として提供するように構成されている。ユーザ入力は、外部機器によって提供される、患者の状態を示す信号が含まれたワイヤレスのユーザ入力である。患者の状態から、とりわけ呼吸情報および/またはEKG情報から、一回拍出量についての更新された値135’が決定され、計算モジュール430に出力される。図示されていない実施例では、それぞれ異なる患者カテゴリごとに、とりわけ患者のそれぞれ異なる年齢クラスごとに、かつ/または患者のそれぞれ異なる疾患グループごとに、それぞれ異なるパラメータ値がメモリモジュール内に格納されている。
【0071】
さらに、医療機器400は、出力モジュール480が、医療システム405に含まれていない外部機器であるという点で、医療機器300とは異なる。出力モジュール480は、計算モジュール430にケーブルベースまたはケーブルレスで接続されており、視覚的な出力484を出力するためのディスプレイ482を含む。
【0072】
図5は、本発明の第3の態様による方法500の一実施例のフローチャートを示す。
【0073】
本発明による方法500は、治療されるべき患者の末梢血管抵抗を示す抵抗パラメータを決定するように構成されている。このために方法500は、以下に説明する方法ステップを有する。
【0074】
第1のステップ510は、患者の血圧推移、とりわけ動脈血圧推移、または血液量推移を示す拍動信号を受信することを含む。
【0075】
後続のステップ520は、受信した拍動信号から複数の所定の推移パラメータを読み取ることを含む。
【0076】
次のステップ530は、複数の所定の推移パラメータについての読み取られた測定値を提供することを含む。
【0077】
さらなるステップ540は、読み取られた測定値と、患者の一回拍出量を示す既定のパラメータとに基づいて、所定の推定関数を使用して、患者の抵抗パラメータを計算することを含む。
【0078】
最後のステップ550は、抵抗パラメータを出力することを含む。
【0079】
これらのステップ510~550は、好ましくは図示された順序で実施される。したがって、ステップ510で拍動信号が受信された後、ステップ520および530の枠内で、この拍動信号から関連情報、すなわち所定の推移パラメータが読み取られて提供され、これにより、ステップ540および550の枠内で、患者の抵抗パラメータを計算して出力することができる。
【0080】
好ましくは、本発明による方法500全体が、実質的にリアルタイムで実施される。この場合、拍動信号を受信してから抵抗パラメータを出力するまでに、好ましくは20秒未満、とりわけ10秒未満、特に好ましくは5秒未満が経過する。
【0081】
図示されていない実施形態では、ステップ540および550による抵抗パラメータの計算および出力は、抵抗パラメータの計算および出力を実施すべきであることを示すユーザ入力が受信された後にのみ、実施される。
【0082】
図示されていないさらなる実施例では、本方法は、患者の一回拍出量を示すパラメータを受信する追加的なステップを含む。図示されていない代替的または追加的な実施例では、本方法は、さらなる複数の所定の推移パラメータと、所定のモデル規則とに基づいて、患者の一回拍出量を示すパラメータについての現在の値を計算および提供する追加的なステップを有する。
【0083】
好ましくは、本発明による方法の全てのステップは、1つの共通のプロセッサ上で実行される。代替的に、本発明による方法の1つまたは複数のステップを、少なくとも部分的に、例えば別個のプロセッサのような別個のハードウェアコンポーネント上で実行してもよい。
【符号の説明】
【0084】
100,200,300,400 医療機器
102 ハウジング
107 抵抗パラメータ
110 受信モジュール
111 入力データ
112 拍動信号
114 血圧推移
120,320 読み取りモジュール
122 信号接続
124 所定の推移パラメータ
130,230,330,430 計算モジュール
131 メモリ領域
132 測定値信号
134 読み取られた測定値
135 一回拍出量を示すパラメータ
135’ 更新された、一回拍出量を示すパラメータ
136 推定関数
140 出力信号
150 パルス
152 拡張終期の状態
154 収縮終期の状態
208 動脈コンプライアンス
242 別個の出力信号
260 入力モジュール
262 ユーザ入力
264 入力インターフェース
266 入力情報
270,470 メモリモジュール
375 評価モジュール
377 所定のモデル規則
380,480 出力モジュール
382,482 ディスプレイ
384,484 視覚的な出力
404 患者
490 測定装置
500 方法
510,520,530,540,550 方法ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】