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特開2022-51760医学的状態を非侵襲的に検出および監視するためのデバイス、システム、および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051760
(43)【公開日】2022-04-01
(54)【発明の名称】医学的状態を非侵襲的に検出および監視するためのデバイス、システム、および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0537 20210101AFI20220325BHJP
   A61B 5/318 20210101ALI20220325BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
A61B5/0537
A61B5/318
A61B5/02 350
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022004277
(22)【出願日】2022-01-14
(62)【分割の表示】P 2019539968の分割
【原出願日】2018-01-24
(31)【優先権主張番号】62/449,741
(32)【優先日】2017-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503062253
【氏名又は名称】アナログ ディヴァイスィズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トニー・ジョセフ・アクル
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・シー・ドッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェヌゴパル・ゴピナサン
(57)【要約】
【課題】複数の感知モダリティを使用して、非侵襲的に医学的状態を検出および監視するためのデバイス、システム、および方法を提供する。
【解決手段】デバイス、システム、および方法は、対象上に配置されるように構成された少なくとも2つの電極と、対象上に配置されるように構成された音響センサと、電極間の第1のインピーダンスを測定するための、電極に接続された胸部インピーダンス測定モジュールと、音響センサからの心音を検出および測定するための、音響センサに接続された心臓音響測定モジュールと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医学的状態を非侵襲的に検出および監視するためのデバイスであって、
対象上に配置される少なくとも2つの電極と、
前記対象上に配置される第2の電極対であって、第2ベクトルに沿って外乱を測定する、第2の電極対と、
前記デバイスの向きを判定するように構成されたセンサと、
前記少なくとも2つの電極に接続された胸部インピーダンス測定モジュールであって、前記デバイスが第1の方向を向いているときの第1のインピーダンスを測定し、前記デバイスが第2の方向を向いているときの第2のインピーダンスを測定するように構成された、胸部インピーダンス測定モジュールと
を備える、デバイス。
【請求項2】
前記デバイスが前記第1の方向を向いているときの前記第1のインピーダンスと前記デバイスが前記第2の方向を向いているときの前記第2のインピーダンスとの間の変化に基づいて、前記対象に対する生理学的情報を決定するようにさらに構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記少なくとも2つの電極が、ベクトルに沿って外乱を測定する電極対を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記少なくとも2つの電極が、第2のベクトルに沿って第2の外乱を測定する第2の電極対をさらに含む、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記センサが、前記対象の胴体に配置されるように構成され、前記デバイスの前記向きが、前記対象の前記胴体の向きを示す、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第1の方向は、前記デバイスが水平面に対してある角度にあることを示し、前記第2の方向は、前記デバイスがほぼ水平であることを示す、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第1の方向は、前記対象がファウラー位にあることを示す、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記対象上に配置される音響センサと、
前記音響センサに接続された心臓音響測定モジュールであって、前記音響センサからの心音を検出および測定する、心臓音響測定モジュールと
をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記少なくとも2つの電極に接続された心電図(ECG)測定モジュールであって、前記少なくとも2つの電極を利用してECG測定を実行する、ECG測定モジュールをさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
医学的状態を非侵襲的に検出および監視するための方法であって、
対象上に配置される少なくとも2つの電極を備えたデバイスにより、前記デバイスが水平面に対して第1の方向を向いているときの、前記対象に対する第1の胸部インピーダンスを決定するステップと、
前記デバイスにより、前記デバイスが前記水平面に対して第2の方向を向いているときの、前記対象に対する第2の胸部インピーダンスを決定するステップと、
前記デバイスまたは外部デバイスにより、前記デバイスが前記第1の方向を向いているときの前記第1の胸部インピーダンスと前記デバイスが前記第2の方向を向いているときの前記第2の胸部インピーダンスとの間の変化に基づいて、前記対象に対する生理学的情報を決定するステップであって、前記生理学的情報が前記対象の肺液に関する、ステップと
を有する、方法。
【請求項11】
方向センサにより、前記デバイスが前記第1の方向を向いていることを検出するステップと、
前記デバイスが前記第1の方向を向いていることに応答して前記第1の胸部インピーダンスを取得するステップと
をさらに有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記方向センサにより、前記デバイスが前記第2の方向を向いていることを検出するステップと、
前記デバイスが前記第2の方向を向いていることに応答して前記第2の胸部インピーダンスを取得するステップと
をさらに有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも2つの電極が、ベクトルに沿って外乱を測定する電極対を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記デバイスが、前記対象の胴体に配置される方向センサを備え、前記デバイスの向きが、前記対象の前記胴体の向きを示す、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の方向は、前記デバイスが前記水平面に対してある角度にあることを示し、前記第2の方向は、前記デバイスが前記水平面とほぼ平行に配置されていることを示す、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の方向は、前記対象がファウラー位にあることを示す、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
医学的状態を非侵襲的に検出および監視するための命令を格納した非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記命令は、プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
対象上に配置された少なくとも2つの電極から取得される第1の測定値に基づいて、前記少なくとも2つの電極を備えたデバイスが水平面に対して第1の方向を向いているときの、前記対象に対する第1の胸部インピーダンスを決定することと、
前記対象上に配置された前記少なくとも2つの電極から取得される第2の測定値に基づいて、前記デバイスが前記水平面に対して第2の方向を向いているときの、前記対象に対する第2の胸部インピーダンスを決定することと、
前記デバイスが前記第1の方向を向いているときの前記第1の胸部インピーダンスと前記デバイスが前記第2の方向を向いているときの前記第2の胸部インピーダンスとの間の変化に基づいて、前記対象に対する生理学的情報を決定することであって、前記生理学的情報が前記対象の肺液に関する、ことと
を行わせる、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項18】
前記命令が、前記プロセッサに、
方向センサからの測定値に基づいて、前記デバイスが前記第2の方向を向いていると決定することと、
前記デバイスが前記第2の方向を向いていると決定したことに応答して前記第2の測定値を取得することと
をさらに行わせる、請求項17に記載のコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項19】
前記デバイスが、前記対象の胴体に配置される方向センサを備え、前記デバイスの向きが、前記対象の前記胴体の向きを示す、請求項17に記載のコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項20】
前記第1の方向は、前記デバイスが前記水平面に対してある角度にあることを示し、前記第2の方向は、前記デバイスが前記水平面とほぼ平行に配置されていることを示す、請求項17に記載のコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年1月24日に出願された「Congestive Heart Failure(CHF)Management:Multi-Sensor Modality」と題する米国特許出願第62/449,741号の米国特許法第119条の下での優先権の利益を主張する。先願の開示は、本出願の開示の一部とみなされ、参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本出願は、概して、ヒト対象における医学的状態または健康状態を管理するシステム、装置、および方法に関し、より具体的には、複数の感知モダリティを採用する、ヒト対象の鬱血性心不全(CHF)および慢性閉塞性肺疾患(COPD)のような医学的または健康状態を非侵襲的に検出および監視するためのシステム、装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒト対象において、鬱血性心不全(CHF)は、損傷を受けた心筋が身体の要求を満たすのに十分な量の血液を送り出す能力を失うことで知られている心臓病である。CHFの初期ステージでは、十分な量の血液を送り出すことができない機能低下は、ヒト対象が運動している間にのみ起こり得る。しかしながら、CHFのより進行したステージでは、そのように十分な量の血液を送り出すことができない機能低下は、ヒト対象が安静である間でさえも起こり得る。CHFは、65歳を超える入院患者において最も一般的に診断されている心臓状態の1つであり、そのような患者が30日以内に病院に再入院する最も一般的な理由の1つである。近年、CHFの30日間の病院再入院費用は年間18億ドルに増加し、25%の再入院率で再入院ごとに約13,000ドルの支払いがされている。そのような患者の病院への再入院の理由のいくつかには、(1)患者の食事および投薬に関する順守不良により、肺内の過剰な水分または極度の脱水症を引き起こした可能性、(2)投薬量の滴定が不完全であり、患者が病院の環境から患者の自宅に戻るときにしばしば修正される必要がある場合、(3)患者が退院した後に発症した心房細動などが含まれるが、これらに限定されない。
【0004】
退院後の患者におけるCHFの管理は、伝統的に、植込み型心臓除細動器(ICD)、心臓再同期療法-除細動器(CRT-D)、またはペースメーカーなどの植込み型心臓デバイスに組み込まれたセンサを用いた患者の体液貯留の監視に焦点を当ててきた。このような植え込み型心臓デバイスは、患者の胸部体液インピーダンスを測定することによって、患者の肺鬱血の進行を検出することができる。例えば、ICD、CRT-D、またはペースメーカーなどの植込み型心臓デバイスは、患者の肺に電流を流し、結果として生じる胸部インピーダンスを測定するように構成できる。患者の胸部体液が肺鬱血の間に蓄積するにつれて、患者の肺を横切るコンダクタンスが増加し、それに対応して胸部体液の蓄積のレベルを示すインピーダンスの減少が引き起こされる。このような植え込み型心臓デバイスは病院の臨床医によっても調査され、病院の臨床医が患者の体液状態を監視し、差し迫った体液過剰を知らせる可能性がある変化の早期警告を受けることが可能になる。次いで、患者の監視された体液状態に基づいて、病院の臨床医は、さらなる監視および/または治療のために患者を病院に再入院させることが適切であるかどうかを判定し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
非侵襲的に医学的状態を検出および監視するためのシステム、方法、およびデバイスが開示されている。医学的状態は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の1つであり得る。一実装態様によれば、複数の感知モダリティを使用して非侵襲的に医学的状態を検出および監視するためのデバイスは、対象上に配置されるように構成された少なくとも2つの電極と、対象上に配置されるように構成された音響センサと、少なくとも2つの電極間の第1のインピーダンスを測定するための、少なくとも2つの電極に接続された胸部インピーダンス測定モジュールと、音響センサからの心音を検出および測定するための、音響センサに接続された心臓音響測定モジュールと、を含む。いくつかの実装態様では、心音は、S3心音である。いくつかの実装態様では、心音は、S4心音である。様々な実装態様では、音響センサは、超音波センサおよび圧電マイクロフォンセンサのうちの少なくとも1つである。いくつかの実装態様では、少なくとも2つの電極は、2つの電極対を含み、各電極対は、力電極および感知電極を含む。力電極は、対象に電流を印加するように構成され、感知電極は、印加された電流によって引き起こされた変化を感知するように構成されている。変化は、測定電圧の変化を含み得る。
【0006】
いくつかの実装態様では、デバイスは、デバイスの配向を判定するためのセンサを含む。一実装態様では、胸部インピーダンス測定モジュールは、デバイスが第1の配向にあるときに第1のインピーダンスを測定し、デバイスが第2の配向にあるときに表面センサのうちの少なくとも2つの間の第2のインピーダンスを測定する。一例では、第1の配向は、デバイスがほぼ水平であることを示し、第2の配向は、デバイスがほぼ垂直であることを示す。別の例では、第1の配向は、デバイスがほぼ水平であることを示し、第2の配向は、デバイスが水平面に対して約30度~約90度の角度に配置されることを示す。別の例では、第1の配向は、デバイスがほぼ水平であることを示し、第2の配向は、デバイスが水平面に対して約30度を超える角度で配置されていることを示す。一例では、第2の配向は、デバイスがファウラー位にあることを示す。いくつかの実装態様では、胸部インピーダンス測定モジュールは、規則的な間隔で自動的に第1のインピーダンスを測定する。
【0007】
一実装態様では、デバイスは、電極間の電気的活動を測定するための電極に接続された心電図測定モジュールをさらに含む。
【0008】
一実装態様によれば、複数の感知モダリティを使用して非侵襲的に医学的状態を検出および監視するためのシステムは、複数の表面センサと、複数の表面センサに接続され、マルチモダリティ感知データを収集するように構成された複数の感知モジュールと、を有する、対象上に配置されたデバイスと、マルチモダリティ感知データのデータ分析、データ傾向分析、およびデータ整理のうちの少なくとも1つを実行するように動作するデータ分析器と、を含む。マルチモダリティ感知データは、表面センサのうちの少なくとも2つの間の第1のインピーダンスと、複数の表面センサのうちの少なくとも1つからの心音と、を含む。様々な実装態様では、表面センサは、電極、心音センサ、超音波センサ、およびフォトプレチスモグラフィセンサのうちの少なくとも1つを含む。
【0009】
いくつかの実装態様では、システムは、マルチモダリティ感知データのうちの少なくともいくつかを組み合わせるように構成されたデータ決定エンジンをさらに含み、組み合わされたモダリティ感知データは、対象の医学的状態状況を示す。いくつかの実装態様では、システムは、さらに処理するために、組み合わされたモダリティ感知データを、少なくとも1つのワイヤレス通信経路を介してクラウドに送信するように構成された送信機をさらに含む。
【0010】
いくつかの実装態様では、システム内のデバイスは、デバイスの配向を判定するためのセンサをさらに含む。いくつかの実装態様では、デバイスが第1の配向にあるときに第1のインピーダンスを測定し、デバイスが第2の配向にあるときに表面センサのうちの少なくとも2つの間の第2のインピーダンスを測定するように構成された胸部インピーダンス測定モジュールを含む。いくつかの実装態様では、システム内のデバイスは、表面センサのうちの少なくとも2つの間の電気的活動を測定するための、複数の表面センサに接続された、心電図測定モジュールをさらに含む。
【0011】
いくつかの実装態様によれば、複数の感知モダリティを使用して非侵襲的に医学的状態を検出および監視するための方法は、対象上に配置された第1の電極から経皮的に電流を伝達することと、対象上に配置された第2の電極で経皮的に電流を受け取ることと、第1の電極と第2の電極との間の電圧を測定することと、少なくともその電圧に基づいて、胸部インピーダンスを判定することと、音響センサから音響信号を受信することと、音響センサから心音を測定することと、胸部インピーダンスデータおよび心音測定値のデータ分析、データ傾向分析、およびデータ整理のうちの少なくとも1つを実行するように構成されたデータ分析器に、胸部インピーダンスデータおよび心音測定値を送信することと、を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、第1の電極と第2の電極との間の電気的活動を測定することと、心電図を生成することと、をさらに含む。
【0012】
いくつかの実装態様では、本方法は、デバイスの配向を判定することをさらに含む。いくつかの実装態様では、胸部インピーダンスは、デバイスが第1の配向にあるときに判定され、本方法は、バイスが第2の配向にあるときに、第1の電極と第2の電極との間の第2のインピーダンス測定値を判定することをさらに含む。
【0013】
本出願によれば、これに限定されるものではないが、胸部インピーダンス感知、心電図(ECG)感知、呼吸数感知、一回換気量感知、心音感知、パルスオキシメトリ感知、血圧(収縮期、拡張期)感知、心拍出量感知などを含む複数の感知モダリティを使用してヒト対象における鬱血性心不全(CHF)状態などの医学的または健康状態を非侵襲的に検出および監視するためのシステム、装置および方法が開示される。開示されたシステム、装置、および方法は、感知の各モダリティからデータを非侵襲的に収集し、少なくとも部分的に分析、傾向分析、および/または整理し、ヒト対象におけるCHFの発症を検出することおよび/またはその重症度を監視することにおいて有用なキュレーションされたデータを得るために、マルチモダリティ感知データのいくつかまたはすべてに対してデータ融合を実行することができる。開示されたシステム、装置、および方法はまた、そのようなマルチモダリティ感知データ(ヒト対象のCHFの発症および/または重症度に関するその他の情報も同様に)を、通信ネットワークを介して直接「クラウド」に、またはスマートフォンや他の通信デバイスに送信し、次に、通信ネットワークを介してマルチモダリティ感知データおよび/またはその他の情報をクラウドに送信できる。マルチモダリティ感知データはまた、開示されたシステム、装置、および方法によって実行されるデータ分析、傾向分析、整理、および/または融合を増強または少なくとも部分的に置き換えるために、クラウドで分析、傾向分析、整理および/または融合することができる。その結果得たキュレーションされたマルチモダリティ感知データおよび/または他の情報は、その後、監視および/または追跡目的のために病院の臨床医によってクラウドから遠隔でダウンロードされてもよい。開示されるシステム、装置、および方法は、CHFの発症を検出するために複数の感知モダリティからデータを非侵襲的に収集および分析すること、および/またはヒト対象におけるその重症度を監視することによって、偽陽性を減少させながら潜在的に問題のあるCHF状態の陽性検出を高めることができ、不必要な病院への再入院の回数を減らし、入院期間を短縮し、病院費を削減できる。
【0014】
特定の実施形態において、複数の感知モダリティを使用して、ヒト対象における鬱血性心不全(CHF)状態などの医学的または健康状態を非侵襲的に検出および監視する方法は、ヒト対象上に非侵襲的CHF検出および監視デバイスを、少なくとも複数の表面電極および/または心音センサ、超音波センサ、フォトプレチスモグラフィ(PPG)センサなどの1つ以上のセンサを介して、ヒト対象の胴体、胸部上部、頸部領域、または身体の他の好適な部分と接触するように配置することを含む。CHF検出および監視デバイスがヒト対象の胴体および胸部上部および頸部領域と接触して配置されると、CHF検出および監視デバイスに含まれる複数のマルチモダリティ感知および測定モジュールが起動してマルチモダリティ感知データがヒト対象から得られる。マルチモダリティ感知データは、胸部インピーダンス感知データ、心電図(ECG)感知データ、呼吸数および一回換気量感知データ、心拍数変動性/心音ベースの感知データ、およびパルスオキシメトリ感知データのうちの1つ以上を含むことができる。マルチモダリティ感知データは、少なくとも部分的にデータを分析、傾向分析、および/または整理するために、CHF検出および監視デバイスに含まれるデータ分析器に提供される。次に、分析されたマルチモダリティ感知データは、CHF検出および監視デバイスに含まれるデータ融合/決定エンジンによって少なくとも部分的に融合または組み合わされて、ヒト対象のCHF状態についての1つ以上の推論を行うために使用される。少なくとも部分的に融合または組み合わされたモダリティ感知データは、その後、可能なさらなるデータ分析、傾向分析、整理および/または、融合のため、ならびに監視および/または追跡目的のため病院の臨床医によるその後の遠隔ダウンロードは、1つ以上の無線通信経路を介してCHF検出および監視デバイスに含まれる送信機/受信機によって送信される。
【0015】
特定のさらなる実施形態においては、複数の感知モダリティを使用して、ヒト対象における鬱血性心不全(CHF)状態などの医学的または健康状態を非侵襲的に検出および監視するための装置は、少なくとも複数の表面電極および/または心音センサ、超音波センサ、フォトプレチスモグラフィ(PPG)センサなどの1つ以上のセンサを介して、ヒト対象の胴体、胸部上部、頸部領域、または身体の他の好適な部分と接触することによって、ヒト対象上に配置するよう構成された、非侵襲的CHF検出および監視デバイスを含む。CHF検出および監視デバイスは、複数の感知マルチモダリティおよび測定モジュールと、データ分析器と、データ融合/決定エンジンと、送信機/受信機と、を含む。複数のマルチモダリティ感知および測定モジュールは、胸部インピーダンス感知データ、ECG感知データ、呼吸数および一回換気量感知データ、心拍数変動性/心音ベースの感知データ、ならびにパルスオキシメトリ感知データのうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない、マルチモダリティ感知データをヒト対象から取得するように動作する。データ分析器は、マルチモダリティ感知データに対して少なくとも部分的にデータ分析、データ傾向分析、および/またはデータ整理を実行するように動作する。データ融合/決定エンジンは、ヒト対象のCHF状態についての1つ以上の推論を行う際、後で使用するために、分析されたマルチモダリティ感知データを少なくとも部分的に融合または組み合わせるように動作する。送信機/受信機は、可能なさらなるデータ分析、傾向分析、整理および/または、融合のため、ならびに監視および/または追跡目的のための病院の臨床医によるその後の遠隔ダウンロードは、少なくとも部分的に融合または組み合わされたマルチモダリティ感知データを、1つ以上の無線通信経路を介してクラウドに送信するように動作する。
【0016】
本発明の他の特徴、機能、および態様は、以下の詳細な説明から明らかになろう。
【0017】
本開示に組み込まれその一部を構成する添付の図面は、本明細書に記載の1つ以上の実施形態を示し、詳細な説明と共にこれらの実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示のいくつかの実施形態による、複数のモダリティを使用して対象の医学的または健康状態を非侵襲的に検出および監視するための例示的なシステムを含む環境を示す図である。
図2】本開示のいくつかの実施形態による、図1のシステムの例示的な機能構成要素を示す図である。
図3A】本開示のいくつかの実施形態による、対象における健康状態を検出および監視するためのデバイスを示す図である。
図3B】本開示のいくつかの実施形態による、対象における健康状態を検出および監視するためのデバイスを示す図である。
図3C】本開示のいくつかの実施形態による、対象における健康状態を検出および監視するためのデバイスを示す図である。
図4】本開示のいくつかの実施形態による、対象における健康状態を検出および監視するための別のデバイスを示す図である。
図5】本開示のいくつかの実施形態による、対象における健康状態を検出および監視するための別のデバイスを示す図である。
図6】本開示のいくつかの実施形態による、医学的または健康状態の発症を検出するおよび/またはその重症度を監視する例示的な方法を示すフロー図である。
図7】本開示のいくつかの実施形態による、対象における健康状態を検出および監視するための別のデバイスを示す図である。
図8A】本開示のいくつかの実施形態による、対象の健康状態を検出および監視するための胴体に配置する電極およびセンサの様々な例を示す図である。
図8B】本開示のいくつかの実施形態による、対象の健康状態を検出および監視するための胴体に配置する電極およびセンサの様々な例を示す図である。
図8C】本開示のいくつかの実施形態による、対象の健康状態を検出および監視するための胴体に配置する電極およびセンサの様々な例を示す図である。
図8D】本開示のいくつかの実施形態による、対象の健康状態を検出および監視するための胴体に配置する電極およびセンサの様々な例を示す図である。
図8E】本開示のいくつかの実施形態による、対象の健康状態を検出および監視するための胴体に配置する電極およびセンサの様々な例を示す図である。
図9A】例示的な心血管系フィードバックループを示す図である。
図9B】例示的な心血管系フィードバックループを示す図である。
図10】心不全の医学的分類を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
複数の感知モダリティを使用して、ヒト対象における鬱血性心不全(CHF)状態および慢性閉塞性肺疾患(COPD)状態などの医学的または健康状態を非侵襲的に検出および監視するためのシステム、装置、および方法が開示される。具体的には、各モダリティ感知からのデータを非侵襲的に収集および分析し、傾向分析し、および/または整理するためのデバイスが開示される。デバイスは、マルチモダリティ感知データのいくつかまたはすべてに対してデータ融合を実行して、ヒト対象における健康状態の発症を検出すること、および/またはその重症度を監視することにおいて有用なキュレーションされたデータを取得し、そのようなマルチモダリティ感知データ(ヒト対象の健康状態の発症や重症度に関するその他の情報と同様に)を送信することができる。データは、通信ネットワークを介して「クラウド」に直接送信することも、スマートフォンや他の通信機器に送信することもできる。スマートフォンもしくは他の通信デバイスは、データをローカルで分析することができ、また、スマートフォンもしくは他の通信デバイスは、マルチモダリティ感知データおよび/または他の情報を通信ネットワークを介してクラウドに送信することができる。クラウドに送信されたデータは、開示されたシステム、装置、および方法によって実行されるデータ分析、傾向分析、整理、および/または融合を増強または少なくとも部分的に置き換えるために、遠隔で分析、傾向分析、整理および/または融合することができる。いくつかの例では、病院の臨床医は、得たキュレーションされたマルチモダリティ感知データおよび/または他の情報をクラウドから遠隔でダウンロードして、ヒト対象の健康状態を監視および/または追跡することができる。
【0020】
複数の感知モダリティを使用してヒト対象のCHF状態を非侵襲的に検出および監視するための開示されたシステム、装置、および方法は、ヒト対象のCHFを管理するための従来の植込み型心臓デバイス、植え込み型心臓除細動器(ICD)、心臓再同期療法-除細動器(CRT-D)、ペースメーカーなどに対する改良を提供することができる。例えば、そのような従来の植込み型心臓デバイスは、典型的には、ヒト対象の体液貯留を検出するためのモダリティなどの単一または限定された数の感知モダリティを提供するように構成された1つ以上のセンサを含む。しかしながら、単一または限られた数の感知モダリティに基づいてヒト対象のCHF状態を監視および/または追跡することは、しばしば偽陽性を招き、不必要な再入院を招き、病院費を増大させる可能性がある。さらに、そのような従来の植込み型心臓デバイスは、一般に、マルチモダリティ感知データの相互関係を分析して、ヒト対象における潜在的に問題のあるCHF状態の陽性検出を得ることができない。さらに、そのような従来の植込み型心臓デバイスの性質は、外科的リスクおよび感染の発生率を増大させる可能性がある。加えて、このような従来の植込み型心臓デバイスの性質は、インプラントを挿入するための外科手術に適格な患者のみがデバイスを享受できるので、デバイスの利用可能性を患者のみに限定してしまう。
【0021】
ヒト対象におけるCHFおよびCOPD状態などの医学的または健康状態を非侵襲的に検出および監視するための開示されたシステム、装置、および方法は、非侵襲的にデータを収集し、複数の感知モダリティから少なくとも部分的にデータを分析、傾向分析および/または整理することができる。加えて、システム、装置、および方法は、マルチモダリティ感知データのいくつかまたはすべてに対してデータ融合を実行し、CHFおよび/またはCOPDの発症を検出するのに有用なキュレーションされたデータを得ることが可能であり、また、ヒト対象におけるCHFおよび/またはCOPDの重症度を監視するのにも有用である。開示されたシステム、装置、および方法は、それによって、偽陽性を減少させながら潜在的に問題のあるCHFおよびCOPD状態の陽性検出を増加させ、それは不必要な病院再入院の数を減らし、入院期間を短縮し、病院費を減らすことができる。さらに、CHFおよびCOPD状態を非侵襲的に検出および監視するための開示されたシステム、装置、および方法は、外部デバイスで実施することができ、退院後のヒト対象によって便利に使用されることが可能であり、ヒト対象ならびに病院の臨床医は、外科手術および/または感染によるリスクを低減しながら、対象のCHFおよび/またはCOPD状態を監視することを可能にする。
【0022】
心不全の悪化は、本明細書に開示されている非侵襲的システム、装置、および方法を使用して収集することができる複数の測定値における経時的な変化と相関している。特に、心不全の悪化は、S3心音の振幅の増加、安静時の急速で浅い呼吸、相対一回換気量の減少(肺の容積は、安静時における吸入と呼気の間に移動した空気の量で表す)、および胸部インピーダンスの減少と相関している。
【0023】
図1は、本開示のいくつかの実施形態による、複数の感知モダリティを使用して、ヒト対象における鬱血性心不全(CHF)状態などの医学的または健康状態を非侵襲的に検出および監視するための例示的システム102の例示的実施形態が使用され得る典型的な環境100を示す。図1に示すように、システム102は、複数のマルチモダリティ感知および測定モジュール112(図2も参照)と、複数の表面電極/センサ114a~114d(例えば、4つの表面電極/センサ、または任意の他の好適な数の表面電極/センサ)と、を含む。例えば、表面電極のうちの1つ以上は、固体ゲル表面電極、または任意の他の好適な表面電極として実施され得る。さらに、センサのうちの1つ以上は、心音センサ、超音波センサ、フォトプレチスモグラフィ(PPG)センサ、または他の任意の好適なセンサとして実施することができる。システム102は、少なくとも複数の表面電極/センサ114a~114dを介して、ヒト対象104の胴体、胸部上部、頸部領域、または体の任意の他の好適な部分もしくは身領域のうちの1つ以上と接触するように動作可能な、略三角形状のデバイス、または他の任意の好適な形状のデバイスとして構成することができる。
【0024】
様々な実装態様では、システム102は、複数のパッチ状デバイス、または他の任意の好適な構造もしくはデバイスとして、着用可能なベスト状の構造内で実施できる構成を有することができる。デバイス構成の様々な例を図3~5および図7に示す。
【0025】
典型的な環境100では、システム102は、スマートフォン106と無線通信経路116を介して双方向通信を行うように動作し、次に、スマートフォン106は、通信ネットワーク108(例えばインターネット)と無線通信経路118を介して双方向通信を行うように動作する。スマートフォン106は、通信ネットワーク108を介して、クラウド110との無線通信経路120を介して双方向通信を行うようにさらに動作し、クラウドコンピューティング、データ処理、データ分析、データ傾向分析、データ整理、データ融合、データストレージ、およびその他の機能のためのリソースを含めることができる。システム102は、無線通信経路122を介してクラウド110と直接双方向通信を行うようにさらに動作する。
【0026】
図2は、本開示のいくつかの実施形態による、ヒト対象におけるCHFおよび/またはCOPD状態などの医学的状態または健康状態を非侵襲的に検出および監視するためのシステム102の詳細図を示す。図2に示すように、システム102は、複数のマルチモダリティ感知および測定モジュール112、プロセッサ202およびその関連メモリ208、マルチモダリティ感知データを記憶するためのデータ記憶デバイス206、および送信機/受信機204を含む。送信機/受信機204は、Bluetooth(登録商標)通信、WiFi通信、または任意の他の好適な近距離通信を、無線通信経路116を介してスマートフォン106(図1参照)と通信するために実行するよう構成され得る。送信機/受信機204は、無線通信経路122を介してクラウド110(図1参照)と通信するためにセルラ通信または他の任意の好適な長距離通信を実行するようにさらに構成され得る。
【0027】
いくつかの実装態様では、複数のマルチモダリティ感知および測定モジュール112は、これらに限定されないが、胸部インピーダンス測定モジュール212、心電図(ECG)測定モジュール214、呼吸数および一回換気量測定モジュール216、218、心音ベース測定モジュール220、およびパルスオキシメトリ測定モジュール222のうちの1つ以上を含むことができる。一実施形態では、システム102は、反射パルスオキシメトリ測定を実行するように構成することができる。別の実施形態では、システム102は、指でパルスオキシメトリ測定を実行するための指ポケットデバイス(図示せず)を含むことができる。複数のマルチモダリティ感知および測定モジュール112は、図1に示す複数の表面電極/センサ114a~114dと切り替え可能に接続するための電極/センサ接続切換回路224をさらに含む。
【0028】
プロセッサ202は、データ分析器226およびデータ融合/決定エンジン228などの複数の処理モジュールを含むことができる。送信機/受信機204は、無線通信経路116を介して、Bluetooth(登録商標)またはWiFi対応スマートフォンまたは他の任意の好適なスマートフォンであり得るスマートフォン106へ/からBluetooth(登録商標)またはWiFi信号などの無線信号を送信/受信するように動作する少なくとも1つのアンテナ210を含むことができる。アンテナ210は、無線通信経路122を介してクラウド110へ/からのセルラ信号などの無線信号を送信/受信するようにさらに動作する。
【0029】
複数の感知モダリティを使用して、ヒト対象におけるCHFおよびCOPD状態などの医学的または健康状態を非侵襲的に検出および監視するためのシステム102の動作は、図1および図2とともに以下の例示としての例を参照してさらに理解される。この例においては、ヒト対象104が仰臥位または直立姿勢にある間、所定の日数の間、毎日一定の時間に(例えば、1日に2回)、複数の表面電極/センサ114a~114dを介した、対象の胴体および胸部上部および頸部領域(または身体の他の任意の好適な部分もしくは領域)のうちの1つ以上と接触するように、ヒト対象104(図1参照)または助手が、略三角形状のデバイス(または他の好適な形状のデバイス)として構成されたシステム102を配置する。
【0030】
システム102をヒト対象の胴体および/または胸部上部および/または頸部領域と接触するように配置した後、複数のマルチモダリティ感知および測定モジュール112を起動して、収集、回収、感知、測定、またはその他の方法でヒト対象104からのマルチモダリティ感知データを取得することができる。例えば、胸部インピーダンス測定モジュール212は、複数のベクトルを使用して胸部インピーダンス感知を実行して、ヒト対象の胸部体液インピーダンスの測定値、および肺内の体液鬱血の局在化を得る傾向を取得することができる。そのために、胸部インピーダンス測定モジュール212は、電極/センサ接続切換回路224を介して、表面電極114a~114dのうちの2つ以上の間に好適な高周波低振幅電流を印加することができる。一例では、電流は、表面電極対114a、114bなどの、ヒト対象の頸部および胸部にある114a~114dのうちの2つの電極の間に印加される。胸部インピーダンス測定モジュール212は、電極/センサ接続切換回路224を介して、表面電極114a~114dのうちの2つの間の電位差を測定することによって胸部インピーダンス信号を取得する。いくつかの例では、表面電極114a~114dの間に印加される高周波低振幅電流は、約50kHz~約100kHzの周波数を有し、約1mArms~4mArmsの振幅を有する。他の例では、電流は、約50kHz以下または約100kHz以上の周波数を有する。いくつかの例では、電流は、約20kHz~約200kHz、または約20kHz~約1MHzの周波数を有する。
【0031】
いくつかの実装態様では、胸部インピーダンス測定モジュール212は、表面電極の2対から得られた測定値を使用する。一実装態様では、インピーダンス測定に4つの電極が使用される。4つの電極は、2つの力電極と、2つの感知電極と、を含み、各力電極は、感知電極と対になっている。4つの電極の各群は、観測された変化を局所化するために空間内のベクトルを分解することができる。4つの電極のうちの2つが、ベクトルの各側にある。特に、力電極および感知電極が、ベクトルの各側にある。力電極は、身体に電流を印加(または注入)する(または身体に注入された電流を受け取る)。感知電極は、力電極によって身体に印加された電流によって引き起こされる外乱を測定する。様々な実装態様において、ベクトルの感知電極は、電圧および/または電流の印加を介して力電極による身体への電流の注入によって引き起こされる電流および/または電圧降下を感知する。電圧および電流はインピーダンス(V=Z*i)に関連するので、インピーダンスZを測定するために、既知の電流iを印加し、その後の電圧降下Vを測定することができ、Zは、既知の電流iおよび測定された電圧Vの変化を使用して計算することができる。様々な実装態様によれば、電流を印加するための回路(力電極)の特性は、電圧を測定するための回路(感知電極)の特性とは異なる。様々な実装態様によれば、2組の異なる電極(力電極および感知電極)があり、各電極は、正および負の側面を有する。
【0032】
4つの電極を使用して、注入波形の周波数を調整することによって、組織の異なる部分、および様々な深さの組織を走査することができる。インピーダンスは空間分解能なしで単一のベクトルで測定される。いくつかの実装態様では、4つ以上の電極が使用され、追加の電極対が複数のベクトルを追加し、それが追加の組織走査を追加する。いくつかの実装態様では、各対の感知電極および力電極は、複数のベクトルの一方の側にある。例えば、2対の感知電極と力電極が1つのベクトルを形成し、3対の感知電極と力電極が3つのベクトルを形成する。他の例では、より多くの電極対が使用され、より多くのベクトルが形成される。そのように、各ベクトルは選択された空間領域を監視する。
【0033】
インピーダンスの測定は、呼吸数、一回換気量、および肺液を含む生理学的情報を判定するために使用することができる。インピーダンス測定値はまた、肺抵抗および肺液位置などの導出されたメトリックを判定するためにも使用され得る。呼吸数については、患者の呼吸によって空気が肺に入り込み、周囲の組織を圧迫する肺容量が増加する。これは、いくつかのベクトル(主に肺を横切るベクトル)上での増加および他のベクトル内での電流の出力先変更による他の減少と共にインピーダンスの変化をもたらす。呼吸数はインピーダンスの変化に基づいて判定され、それは呼吸と同じ周期性に従う。加えて、一回換気量は、一回換気量(肺容量の変化)に比例する変化の振幅を判定することによって監視することができる。波形の形状は呼吸パターンに関連しており、気道/肺抵抗を監視するために使用することができる。
【0034】
肺内の体液と他の体液とを区別するために使用される複数の周波数および/または複数の空間ベクトルを走査することによって、肺内の体液を検出および/または監視することができる。肺液と他の体液との間の分離の特異性を追加するための別の方法は、姿勢によるインピーダンス変化を測定することである。姿勢の変化は、重力で肺液を移動させる可能性がある。体液中の動きは、様々なベクトル測定によって検出され、移動する肺液を他の体液から分離するのに役立つ。一例では、インピーダンスのベクトルは、50KHzの単一周波数を使用して肺の底部で測定される。例えば、図1の電極114cと114dとの間のインピーダンスベクトルを測定することができる。人が仰向けになったとき(水平位置)にインピーダンスベクトルが測定され、その後患者が標準ファウラー位に移動した後に再び測定された場合、1オーム以上のインピーダンスの変化は肺内の流体の存在を示すことができる。鬱血性心不全患者においては、患者が症状をおぼえ始めるとき、典型的には、インピーダンスの変化は5オームを超える。
【0035】
医学の分野では、ファウラー位は、患者が胴体を水平面に対して斜めにして半直立の座位で座る標準的な患者の位置である。様々な例において、ファウラー位は、患者の胴体が約15度~30度の角度、患者の胴体が約30度~約45度の角度、患者の胴体が約45度~約60度の角度、および患者の胴体が約60度~約90度の角度であることが含まれる。標準的なファウラー位では、患者の胴体は約45度~約60度である。
【0036】
様々な実装態様において、デバイスは、デバイスの位置を判定することができ、それによって患者が直立しているか仰向けであるかを含む患者の水平位置を示すことができるセンサを含む。デバイスは、患者の直立と仰向け位置の両方において胸部インピーダンスを自動的に測定し、これら2つの測定値を使用してCHFを監視および/または検出する。
【0037】
上述のように、デバイスは心電図(ECG)測定モジュール214も含み、ヒト対象104の胴体、胸部上部、および/または頸部領域の皮膚と接触する複数の表面電極114a~114dのうちのいくつかまたはすべてにおいてECG測定を実行することができる。一実施形態では、パルスオキシメトリ測定モジュール222(または指によるパルスオキシメトリ測定を実行するための指ポケットデバイス)をECG測定モジュール214と連携して採用し、さらなる測定値を得ることができる。呼吸活動は、測定された胸部インピーダンスに対応する変化を引き起こす可能性があるので、呼吸数測定モジュール216および一回換気量測定モジュール218のそれぞれは、胸部インピーダンス測定モジュール212と連携して動作し、ヒト対象の呼吸数/呼吸数の変動性および一回換気量の測定値をそれぞれ取得する。
【0038】
心音ベース測定モジュール220は、心音変動データを取得し、心音(例えば、S1心音「lub」、S2心音「dub」)を取得してデータ分析器226によって、その後アルゴリズム的に分析することができる感知データに変換するための電子聴診器、聴診器、または任意の他の好適なデバイスを含み得、心室が急速に充填している間に、心拡張期の初期に聞こえ得るS3心音(別名プロト拡張期または心室ギャロップ)、および心拡張期の後期に聞こえ得るS4心音(別名心房ギャロップ)に関する情報を得る。一実装態様では、心音ベース測定モジュール220は、可聴以下の心音(約40Hz未満の心音)を測定し、それによって、医師または他の健康管理専門家が聴診器を使用して聞くことができないS3およびS4心音を測定する。S3およびS4心音は病理学的なものであり、心不全を示す。可聴以下のS3およびS4心音に関する情報を使用して、CHFを検出および監視できる。心音は、心臓領域の上に置かれたセンサによって測定することができる。センサは音や振動を検出する。センサは、心臓の様々な領域に対するセンサ配置の位置に応じて異なる心音を検出する。例えば、S3に関連する信号を検出する可能性を最大にするために、センサは、第5肋間腔内にある心尖の上に配置される。心ポンプが危険にさらされると、異常なS3心音が発生する。S3心音は、心臓の問題の初期の指標であり、他の測定可能な心臓信号よりも先に変化する可能性がある。S3心音は、人間の耳には聞こえない低周波数で多くのエネルギーを持っており、S3心音は、医師では最初に検出不能である。自動化されたアルゴリズムと連結された低周波数に敏感な感知システムは、より早くS3心音を検出することができる。成人患者におけるS3またはS4心音の存在は、異常であり、S3またはS4と判定されたエネルギーの検出は、潜在的な問題にフラグを立てるために使用することができる。様々なセンサからのフラグをより高いレベルのロジックで組み合わせることにより、個々の測定値よりも具体的かつ高感度になるように設計することができる単一のメトリックを生成できる。
【0039】
一実施形態では、パルスオキシメトリ測定モジュール222(または指によるパルスオキシメトリ測定を実行するための指ポケットデバイス)を心音ベース測定モジュール220と連携して採用し、さらなる測定値を得ることができる。パルスオキシメトリ測定モジュール222は、反射型または指によるパルスオキシメトリ測定を実行できることに留意されたい。一実施形態では、パルスオキシメトリ測定モジュール222は、脈拍数センサ、および血中酸素レベル(SpO)センサを含むことができる。
【0040】
胸部インピーダンス測定、ECG測定、呼吸数および一回換気量測定、心拍数変動性/心音ベースに基づく測定、ならびにパルスオキシメトリ測定を行った後、胸部インピーダンス測定モジュール212、心電図(ECG)測定モジュール214、呼吸数および一回換気量測定モジュール216、218、心音ベース測定モジュール220、ならびにパルスオキシメトリ測定モジュール222は、少なくとも部分的なデータ分析、データ傾向分析、および/またはデータ整理のために、対応するマルチモダリティ感知データをデータ分析器226に提供する。一実施形態では、そのようなマルチモダリティ感知データはまた、「クラウド内」で分析、傾向分析、および/または整理され、様々なレベルの臨床介入で使用するための事前設定アラートと共にクラウドベースのデータストレージ110で利用可能にすることができる。例えば、データ分析器226は、(1)胸部インピーダンス測定データを分析して、ヒト対象の肺鬱血に関する情報を得て、(2)呼吸数および一回換気量測定データを分析して、ヒト対象の息切れに関する情報(例えば、呼吸困難、発作性夜間呼吸困難)を取得し、(3)心電図測定データおよび心拍数変動データを複数(例えば3)の投影で分析して、ヒト対象104において起こり得る心房細動および局在化に関する情報を取得し、(4)心音に基づく測定データを分析して、S3心音の増加可能性に関する情報を得る(拡張されたCHF状態に起因する、左心室の機能不全を示すことができる)。
【0041】
データ分析器226は、少なくとも部分的に分析されたマルチモダリティ感知データをデータ融合/決定エンジン228に提供し、ヒト対象104のCHF状態について1つ以上の推論を行う際に、後で使用するための、1つ以上のアルゴリズムおよび/または判定基準に従って、マルチモダリティ感知データを少なくとも部分的に効果的に融合または組み合わせる。例えば、組み合わされたマルチモダリティ感知データは、ほぼ同時に、S3心音の増加、ヒト対象104が静止している間の急速な浅い呼吸の増加、相対一回換気量の減少、および胸部インピーダンスの減少を示し、これはヒト対象104における潜在的に問題のあるCHF状態の強力な予測因子であり得る。一実施形態では、データ融合/決定エンジン228において実施される、そのようなアルゴリズムおよび/または判定基準は、ヒト対象のCHF状態に関してデータ融合/決定エンジン228によってなされる推論を強化するための1つ以上の臨床試験を通して証明および/または改良され得る。プロセッサ202は次に、少なくとも部分的に組み合わされたマルチモダリティ感知データを送信機/受信機204に提供し、無線通信経路122を介してクラウド110に直接、または無線通信経路116を介してスマートフォン106に、連結されたマルチモダリティ感知データを送信する。次に、スマートフォン106は、通信ネットワーク108を介して、無線通信経路118、120を介して組み合わされたマルチモダリティ感知データをクラウド110に送信することができ、そこでさらに分析、傾向分析、整理、および/または融合することができる。得られたキュレーションされたマルチモダリティ感知データは、その後、監視および/または追跡目的のために病院の臨床医によって遠隔的にダウンロードされ得る。
【0042】
図3Aは、本開示のいくつかの実施形態による、対象における健康状態を検出および監視するためのデバイス300を示す図である。特に、デバイス300は、ヒト対象におけるCHF状態を非侵襲的に検出および監視する。デバイス300は、第1の電極対302a~302b、第2の電極対304a~304b、第3の電極306、および第4の電極308を含む。第1の電極対302a~302bは、上述のように、1つの力電極と1つの感知電極とを含む。同様に、第2の電極対304a~304bは、1つの力電極と1つの感知電極とを含む。第3の電極306および第4の電極308は、例えば、心音センサ、力電極、および感知電極のうちの1つを含む、任意の種類の電極であり得る。デバイス300は、第1の端部に配置された第1の電極対302a~302bと第2の端部に配置された第2の電極対304a~304bとを含む細長い長方形の基部310を有する。様々な例において、細長い基部310の幅は、約10cmから約20cmの間、および約2cmから約6cmの間である。いくつかの例では、細長い基部310の厚さは、約1cmから約4cmの間である。長方形の基部310の長さの中央部分に沿って、湾曲した尾部312が長方形の基部310と同じ平面内に延在し、第1の電極対302a~302bの方向に向かって弧を描く。湾曲した尾部312は、第3電極306と第4電極308とを含む。第3の電極306は湾曲した尾部312の端部に配置され、第4の電極308は湾曲した尾部312の中央に配置されている。様々な実装態様によれば、デバイス300は、電極302a~302b、304a~304b、306、308が対象の皮膚と接触した状態で対象の胴体上に置かれる。
【0043】
図3Bは、対象の胴体に配置されたデバイス300を示す。細長い基部310は第6肋間腔の周囲に配置され、湾曲した尾部312は上向きに延在し、胴体の正中線に向かって内向きに湾曲する。いくつかの実装態様では、第4の電極308は、胴体の左側の第5肋間腔内に配置され、S3音を検出するために最適に配置される。他の実装態様では、湾曲した尾部312は胴体の正中線から離れるように外向きに湾曲する。
【0044】
図3Cは、対象の胴体に配置されたデバイス300を示す。細長い基部310は肩の高さより下に配置され、湾曲した尾部312は心臓の上で下方に延在し、胴体の正中線に向かって内側に湾曲する。他の実装態様では、湾曲した尾部312は胴体の正中線から離れるように外向きに湾曲する。
【0045】
図4は、本開示のいくつかの実施形態による、対象における健康状態を検出および監視するためのデバイス400を示す図である。特に、デバイス400は、ヒト対象におけるCHF状態を非侵襲的に検出および監視する。デバイス400は、第1の電極対402a~402b、第2の電極対404a~404b、およびセンサ406を含む。第1の電極対402a~402bは、力電極と感知電極とを含む。同様に、第2の電極対404a~404bは、力電極と感知電極とを含む。加えて、第1の電極対402a~402bのうちの1つ、および第2の電極対404a~404bのうちの1つが、ECGを測定する。センサ406は、音の振動を検出するための心音センサである。一実装態様では、センサ406は、圧電マイクロフォンである。突出したマイクロフォンの膜は、胴体に接触し、心音を検出する。第1の電極対402a~402bは、第1の細長要素408を介して第2の電極対404a~404bに接続されている。第2の電極対404a~404bは、第2の細長要素410を介してセンサ406に接続されている。図4に示されるように、デバイス400において、第1の細長要素408および第2の細長要素410は互いにほぼ垂直である。他の実装態様では、第1の細長要素408および第2の細長要素410は、互いに対して任意の選択された位置に配向することができる。デバイス400は、電極402a~402bおよび404a~404b、ならびにセンサ406が対象の皮膚と接触した状態で、対象の胴体上に置かれる。いくつかの実装態様では、電極402a~402bおよび404a~404bは、第6肋間腔に沿って配置され、センサ406は、心臓の心尖で第5肋間腔に沿って配置される。
【0046】
図5は、本開示のいくつかの実施形態による、対象における健康状態を検出および監視するためのデバイス500を示す図である。デバイス500は、長方形の箱510から延在する3本の長い可撓性アーム508を含む。可撓性アーム508のそれぞれの先端には、一対の電極、すなわち第1の電極対502a~502b、第2の電極対504a~504b、および第3の電極対506a~506bがある。電極対502a~502b、504a~504b、506a~506bは、対象の身体に合うように配向されるように移動され、および適所に固定され得る。デバイス500は、対象が身体上に置く携帯デバイスである。いくつかの例では、対象は、1日に2回以上など、定期的に身体上にデバイス500を配置し、測定値を記録する。いくつかの実装態様によれば、デバイス500は心音を記録するためのセンサを含む。心音センサはまた、長い可撓性アームを介してデバイスに取り付けられてもよい。心音センサは、マイクロフォンであり得、いくつかの例では、それは圧電マイクロフォンである。
【0047】
他の実装態様では、電極および/または他のセンサは対象の皮下に配置される。皮下センサは長期間適所に留まることができ、測定のために外部デバイスに接続することができる。他の実装態様では、電極および/または他のセンサは、対象の皮膚に付着するパッチ内に配置されている。パッチは測定のために外部デバイスに接続される。
【0048】
複数の感知モダリティを使用して、ヒト対象における医学的または健康状態を非侵襲的に検出および監視する例示的な方法が、図1および図2、ならびに図6を参照して以下に説明される。ブロック602において、好適に成形されたデバイスとして構成されたシステム102(図1および2参照)は、少なくとも複数の表面電極/センサ114a~114dを介して身体の好適な部分または領域と接触するようにヒト対象104上に配置される。ブロック604において、システム102が身体の好適な部分または領域と接触して配置されると、複数のマルチモダリティ感知および測定モジュール112は、胸部インピーダンス感知データ、ECG感知データ、呼吸数および一回換気量感知データ、心拍数変動性/心音ベースの感知データ、およびパルスオキシメトリ感知データのうちの1つ以上を含み、これらに限定されない、マルチモダリティ感知データをヒト対象104から取得するように起動する。ブロック306において、マルチモダリティ感知データは、少なくとも部分的なデータ分析、データ傾向分析、および/またはデータ整理のためにデータ分析器226に提供される。ブロック608において、分析されたマルチモダリティ感知データはデータ融合/決定エンジン228に提供され、ヒト対象104の医学的または健康状態についての1つ以上の推論を行う際に、後で使用するために、マルチモダリティ感知データを少なくとも部分的に効果的に融合または組み合わせる。ブロック610で、組み合わされたマルチモダリティ感知データは送信機/受信機204に提供され、可能なさらなるデータ分析、傾向分析、整理、および/または融合のために、少なくとも部分的に組み合わされたマルチモダリティ感知データを無線通信経路122を介してクラウド110に送信する。部分的に組み合わされたマルチモダリティ感知データはまた、監視および/または追跡目的で病院の臨床医による遠隔ダウンロードのために無線通信経路122を介してクラウド110に送信され得る。
【0049】
図7は、本開示のいくつかの実施形態による、対象における健康状態を検出および監視するためのデバイス700を示す図である。特に、デバイス700は、ヒト対象におけるCOPD状態を非侵襲的に検出および監視する。デバイス700は、細長い長方形の要素704であり、第1の電極702a、第2の電極702b、および第3の電極702cを含む。第1の電極702aは、細長い長方形要素704の第1の端部に配置され、第2の電極702bは、細長い長方形要素704のほぼ中央に配置され、第3の電極702cは、細長い長方形の要素704の第2の端部に配置されている。使用中、デバイス700は、電極702a~702cが対象の皮膚と接触して配置された状態で対象の胴体上に配置される。図1のシステム102に関して上述したように、電極702a~702cからのデータは、複数のマルチモダリティ感知および測定モジュール(図2に示すモジュール112など)に接続されており、対象からマルチモダリティ感知データを収集、回収、感知、測定、または他の方法で取得するために起動され得る。
【0050】
COPDを検出および/または監視するために、心音センサは、肺音をよりよく検出するために胴体のより高い位置に配置される。COPDの測定値は、呼吸数を判定するためのインピーダンス、必要に応じてECG、一回換気量を判定するためのインピーダンス、肺音(異常な肺レールの検出のため)、および肺容量変化の形状を測定するためのインピーダンスを含む。特に、インピーダンス変動の形状の変化は、肺/気道抵抗を示し、これはCOPDの存在を判定するために使用することができる。
【0051】
図8A~8Eは、本開示のいくつかの実施形態による、対象の健康状態を検出および監視するための胴体に配置する電極およびセンサの様々な例を示す図である。図8Aでは、4つの要素802a~802dが、概して対象の心臓の上の、対象の胴体上に配置されている。一方の要素802aは、第5肋間腔内の心尖に配置されている。いくつかの例によれば、第5肋間腔内の心尖における802aの配置は、S3およびS4心音の検出に概して最適である。
【0052】
図8Bでは、要素804a~804dは、胴体の両側にまたがって配置され、それによって、両肺にまたがってインピーダンスを測定するように配置されている。要素806は心音を検出するためのマイクロフォンである。要素804a~804dを含むデバイスは胴体の幅を横切って延在する。いくつかの実装態様では、胴体の周りのストラップで適所に固定されてもよい。要素804a~804dはまた、ECGを測定するために使用され得る。
【0053】
図8Cでは、要素808a~808dが胴体の片側に配置され、片肺を横切るインピーダンスを測定する。要素806は心音を検出するためのマイクロフォンである。要素808a~808dを含むデバイスは、胴体の一側面を横切って延在する。一例では、図3Aのデバイス300などのデバイスは、要素808a~808dおよび806を含むことができる。要素808a~808dはまた、ECGを測定するために使用され得る。
【0054】
図8Dは、図8Cの要素808a~808dと806、および追加の要素810を示す。要素810は、ECGを測定するために要素808a~808dのいずれかと共に使用することができる。
【0055】
図8Eは、要素812a~812d、814a~814b、および806を示す。要素812a~812dおよび814a~814bは、インピーダンスを測定し、およびECGを測定するために使用され得る。要素812a~812d、814a~814bおよび806の構成は、ベストまたはシャツのようなデバイス内で実施することができる。
【0056】
複数の感知モダリティを使用してヒト対象におけるCHF状態などの医学的または健康状態を非侵襲的に検出および監視するシステム、装置、および方法の上記の例示的な実施形態を説明した後、他の代替的な実施形態および/または変形形態を作製および/または実施し得る。例えば、本明細書で説明された、胸部インピーダンス測定モジュール212、ECG測定モジュール214、呼吸数および一回換気量測定モジュール216、218、心音ベース測定モジュール220、およびパルスオキシメトリ測定モジュール222は、対応するマルチモダリティ感知データを、その後のデータ分析、データ傾向分析、および/またはデータ整理のためにデータ分析器226に提供できる。代替的な実施形態では、複数のマルチモダリティ感知および測定モジュール112のうちの1つ以上は、ヒト対象の胸部と指の間の非侵襲的な圧力波速度(PWV)ベースの収縮期血圧および/または拡張期血圧、例えば、および/または少なくとも心臓収縮性の直接測定に基づく心拍出量データに関するマルチモダリティ感知データをさらに取得することができ、さらなるデータ分析、データ傾向分析、および/またはデータ整理のために、これらの追加の感知モダリティデータをデータ分析器226に提供できる。
【0057】
本明細書に開示された発明の概念から逸脱することなく、上述のシステム、装置、および方法に対する修正および変形がなされてもよいことが当業者によって理解されるであろう。したがって、本出願は、重要な態様である付属の要約の範囲および趣旨によって、限定されるとみなされるべきではない。
【0058】
付属書類
心血管フィードバックループ(図9Aおよび図9B参照)。
神経系は、血圧が下がっているという信号を受信する。生存確保のため、脳は、心臓、腎臓、および動脈に信号を送り、それぞれが主要な臓器への血流の方向転換と血圧の維持に役割を果たしている。脳からの信号に反応して、心臓は、より速く、より強く鼓動する。これにより、身体への循環血圧が高まる。次に、脳にフィードバックを送り、変化がなされたことを知らせ、神経系の介入を止める。脳からの信号は、副腎(各腎臓の上にある内分泌系の一員)を刺激して、エピネフリン(一般にアドレナリンとして知られている)およびノルエピネフリンを血流に分泌させる。標的器官に到達すると、それらの活動が変わる。動脈は、脳からの信号に応答して、流れに対する動脈抵抗を変えることによって体内の血圧を助ける。血管の緊張の変化は、その健康状態が最も直接的に生存に影響を与えるので、血液を筋肉から内臓に移す。動脈は、脳にフィードバックを送り、変化を知らせる。
【0059】
「心不全」とは何か。(図10参照)
2013年ACCF/AHA心不全ガイドラインは、心不全を「心室充満または血液排出の構造的または機能的障害から生じる複雑な臨床症候群」と定義した。症状をもたらす心ポンプの機能障害については、以下の通りである。
【0060】
心臓:臨床的心不全のいかなる発生も、心臓の一次的または二次的関与を含まなければならないことが不可欠である。これが明白でない場合、我々の精査が十分でなかったか、心不全ではないかのどちらかである。
【0061】
ポンプ:心臓の完全な説明は、電気的、ホルモン的、および構造的要素を含む複数の機能を含む。しかしながら、心不全が存在するということには、心臓が循環中に血液を移動させる能力に明白な影響がなければならない。
【0062】
障害:障害は、一般的に完全な補充療法を必要としない程度の機能不全を意味する。活動またはストレスによって正体を現し得る。文字階級が与えられている場合、多くの患者の心機能は、FではなくC+を評価する。それにもかかわらず、ある程度の機能低下は、個人が心不全を有するためには存在しなければならない。
【0063】
結果:心臓への初期の障害は、心ポンプの機能障害への即時の深刻なまたは微妙な進行を経時的にのみもたらし得る。神経ホルモンメカニズムが活性化され、この症候群の一因となる可能性がある。これは、有害な構造的および生化学的リモデリングを含み得る。心臓に影響を与えるプロセスは、心不全を引き起こす個人の状態と因果関係がある必要がある。
【0064】
ステージ:心不全のACC/AHA分類は、(1)心不全の危険因子、(2)無症候性心不全、(3)症候性心不全、および(4)進行性心不全から始まる4ステージの心不全を定義する。
【符号の説明】
【0065】
100 典型的な環境
102 システム
104 ヒト対象
106 スマートフォン
108 通信ネットワーク
110 クラウド
112 マルチモダリティ感知および測定モジュール
114a,114b,114c,114d 表面電極/センサ
116,118,120,122 無線通信経路
202 プロセッサ
204 送信機/受信機
206 データ記憶デバイス
208 メモリ
210 アンテナ
212 胸部インピーダンス測定モジュール
214 心電図(ECG)測定モジュール
216 呼吸数測定モジュール
218 一回換気量測定モジュール
220 心音ベース測定モジュール
222 パルスオキシメトリ測定モジュール
224 電極/センサ接続切換回路
226 データ分析器
228 データ融合/決定エンジン
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9A
図9B
図10
【外国語明細書】