(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051771
(43)【公開日】2022-04-01
(54)【発明の名称】TL1Aに特異的に結合する抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220325BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20220325BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20220325BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220325BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220325BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220325BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220325BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220325BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20220325BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20220325BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220325BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220325BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20220325BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220325BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/85 Z
C07K16/24
C12N5/10
A61K39/395 N
A61P11/00
A61P17/00
A61P19/02
A61P11/06
A61P11/02
A61P37/08
A61P1/04
A61P17/04
A61P43/00 111
A61P29/00 101
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005039
(22)【出願日】2022-01-17
(62)【分割の表示】P 2018512167の分割
【原出願日】2016-09-16
(31)【優先権主張番号】62/220,442
(32)【優先日】2015-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506423475
【氏名又は名称】セファロン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リン・ドロシー・ポールトン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ポラード
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・ジー・ドイル
(72)【発明者】
【氏名】ブリジット・アン・コックジー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンヤ・パンデ
(72)【発明者】
【氏名】アダム・ウィリアム・クラーク
(57)【要約】
【課題】TL1A活性を阻害する化合物は、例えば、それらの治療的、予防的、診断的及び予後的使用にとって望ましい。
【解決手段】TL1Aに対する親和性が増強され、それらの由来元の親抗体に比べて高い力価を有する組換え発現変異型抗体を提供する。この抗体は、TL1Aと細胞死受容体3(DR3)との間の相互作用を阻害する。前記抗体またはその組成物を使用して、喘息、COPD、肺線維症、嚢胞性線維症、炎症性腸疾患、嚢胞性線維症に関連する胃腸疾患、クローン病、大腸炎、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群、好酸球性食道炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、強皮症、関節炎、または関節リウマチの1つ以上を治療し得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載された発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2015年9月18日に出願された米国仮出願第62/220,442号の優先権を主張し、その内容は、あらゆる目的のためにその全体を参照として本明細書に援用する。
【0002】
配列表への参照
本願は、2015年9月18日に89,000バイトのサイズで作成したファイル名TL1A_ST25のテキストファイルとして電子的に提出した配列表を含む。この配列表は参照として本明細書に援用する。
【0003】
発明の分野
本開示は、一般に、抗体工学の分野に関する。より具体的には、本開示は、TL1Aに特異的に結合し、TL1Aと細胞死受容体3(DR3)との間の相互作用を阻害する変異型抗体に関する。いくつかの態様では、抗体はまた、TL1Aとデコイ受容体3(DcR3)との間の相互作用を阻害する。抗体は、変異体の由来元の親抗体に比べて力価が向上している。
【背景技術】
【0004】
特許、公開出願、受託番号、技術論文及び学術論文を含む様々な刊行物を、本明細書を通して引用する。引用するこれらの各刊行物は、あらゆる目的のためにその全体を参照として本明細書に援用する。
TNF様リガンド1A(TL1A、syn.TNFスーパーファミリーメンバー15(TNFSF15);TL1及びVEGI)は、抗原提示細胞(樹状細胞、B細胞及びマクロファージを含む)、CD4+及びCD8+T細胞、ならびに内皮細胞が発現する腫瘍壊死因子スーパーファミリーのメンバーである。TL1Aは、細胞表面上に発現するか、または可溶性サイトカインとして分泌され得る。CD4+及びCD8+T細胞、NK細胞、NKT細胞及びFOXP3+調節性T(Treg)細胞ならびに2型及び3型自然リンパ球系細胞(ILC2及びILC3)を含む様々な細胞が、TL1Aの受容体である細胞死受容体3(DR3)を発現する。
【0005】
TL1Aは、DR3の競合阻害剤であるデコイ受容体(DcR3)にも結合可能である。DcR3はまた、Fasリガンド(Fas‐L)及びリンホトキシン様誘導性タンパク質(LIGHT)のデコイ受容体としても作用し、T細胞上のヘルペスウイルス侵入メディエーターへの結合に対してグリコプロテインDと競合する。したがって、DcR3はいくつかのシグナル伝達経路の重要な調節因子である。
【0006】
TL1A/DR3シグナル伝達経路は、ヒトの疾患に関連するいくつかの生物学的システムに関与している。例えば、TL1Aは、関門組織の免疫、血管新生、及びホメオスタシスにおいて役割を果たすことが示されている。実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE;多発性硬化症のモデル)、大腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患、皮膚病、喘息及び関節炎などのいくつかの免疫介在性の病態において、TL1AとDR3との相互作用を阻害することが治療効果を促進することも示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,083,784号
【特許文献2】米国特許第7,217,797号
【特許文献3】国際特許公開第WO00/042072号
【特許文献4】米国特許公開第2009/0142340号
【特許文献5】米国特許公開第2009/0068175号
【特許文献6】米国特許公開第2009/0092599号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、TL1A活性を阻害する化合物は、例えば、それらの治療的、予防的、診断的及び予後的使用にとって望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書において、配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1、配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3、配列番号29のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2、及び配列番号30のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む組換え抗体であって、但し、重鎖可変領域が配列番号1のアミノ酸配列を有する場合、軽鎖可変領域が配列番号2のアミノ酸配列を有さない組換え抗体を提供する。
【0010】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号16のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、及び配列番号22のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号21のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、及び配列番号20のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号16のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号23のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、及び配列番号22のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号16のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号24のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、及び配列番号22のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号16のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号25のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、及び配列番号22のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号16のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号26のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、及び配列番号22のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号21のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、及び配列番号22のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号21のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号24のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、及び配列番号22のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号21のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号25のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、及び配列番号22のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号21のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号26のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、及び配列番号22のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号21のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、及び配列番号27のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0011】
本発明はまた、配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む組換え抗体であって、但し、重鎖可変領域が配列番号1のアミノ酸配列を有する場合、軽鎖可変領域が配列番号2のアミノ酸配列を有さない組換え抗体も提供する。いくつかの態様では、抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号7のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号7のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0012】
いくつかの態様では、抗体は、配列番号60のアミノ酸配列を有する重鎖を含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号61のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。いくつかの態様では、抗体は、配列番号60のアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号61のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
【0013】
そのような組換え抗体は完全長であることが好ましく、モノクローナル抗体であることが好ましい。そのような組換え抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体に比べて高い親和性でTL1Aに結合する。そのような組換え抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体に比べて高い力価を有する。高い力価は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体に比べて、少なくとも約10倍高い力価であり得る。高い力価は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体に比べて、少なくとも約12倍高い力価であり得る。高い力価は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体に比べて、少なくとも約13倍高い力価であり得る。高い力価は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体に比べて、少なくとも約15倍高い力価であり得る。高い力価は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体に比べて、少なくとも約20倍高い力価であり得る。高い力価は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体に比べて、少なくとも約25倍高い力価であり得る。高い力価は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体に比べて、少なくとも約27倍高い力価であり得る。高い力価は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体に比べて、少なくとも約40倍高い力価であり得る。力価の倍増率は、TF‐1細胞におけるTL1A誘導性カスパーゼ力価アッセイによって測定し得る。
【0014】
そのような組換え抗体は、ヒトIgG1重鎖定常領域、ヒトIgG2重鎖定常領域、またはヒトIgG4重鎖定常領域、またはそれらの任意のアロタイプを有する場合がある。ヒトIgG1重鎖定常領域は、配列番号42、または配列番号43(ヒトIgG1ΔK)、または配列番号44(ヒトIgG1 YTE)、または配列番号64(ヒトIgG1 YTE及びΔK)または配列番号63(ヒトIgG1 L234A,L235A,G237A)または配列番号62(ヒトIgG1 L234A,L235A,G237A及びΔK)または配列番号65(ヒトIgG1 L235A及びG237A)または配列番号66(ヒトIgG1 L235A,G237A及びΔK)を有する場合がある。ヒトIgG2重鎖定常領域は、配列番号67、または配列番号70(ヒトIgG2ΔK)、または配列番号71(ヒトIgG2 A330S,P331S)または配列番号68(ヒトIgG2 A330S,P331S及びΔK)を有する場合がある。ヒトIgG4重鎖IgG4定常領域は、配列番号45、または配列番号46(ヒトIgG4 S228P及びΔK)、または配列番号47(ヒトIgG4 S228P及びYTE)、または配列番号69(ヒトIgG4 S228P,YTE及びΔK)を有する場合がある。IgG4重鎖は、安定化置換S228P(例えば、IgG4 YTEのみ、またはIgG4 YTE及びΔK、またはIgG4 ΔKのみ)を必要とせずに使用できることが理解されるだろう。
【0015】
組換え抗体は、ヒトλ軽鎖定常領域またはそのアロタイプを有する場合がある。ヒト軽鎖λ定常領域は、配列番号48を有する場合がある。
【0016】
そのような組換え抗体は、ヒトTL1Aに結合し、ヒト以外の霊長類のTL1A、またはマウス、ラット、モルモット、ネコ、イヌ、ウサギ、もしくはブタなどの非ヒト哺乳類のTL1Aに結合する可能性がある。
【0017】
そのような組換え抗体は、呼吸器疾患の治療方法、胃腸疾患の治療方法、皮膚疾患の治療方法、または関節炎の治療方法に用いてもよく、または、呼吸器疾患、胃腸疾患、皮膚疾患、または関節炎の治療に用いてもよく、または呼吸器疾患、胃腸疾患、皮膚疾患、または関節炎の治療用薬剤の製造に使用してもよい。呼吸器疾患として、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、肺サルコイドーシス、アレルギー性鼻炎、または嚢胞性線維症のうちの1つ以上が挙げられ得る。胃腸疾患として、炎症性腸疾患、クローン病、大腸炎、潰瘍性大腸炎、好酸球性食道炎、または過敏性腸症候群、または嚢胞性線維症に関連する胃腸疾患または病態の1つ以上が挙げられ得る。関節炎として、関節リウマチが挙げられ得る。皮膚疾患として、アトピー性皮膚炎、湿疹、及び強皮症の1つ以上が挙げられ得る。
【0018】
そのような治療を必要とするヒト被験体、非ヒト霊長類被験体、または非ヒト哺乳類被験体を、抗体または抗体を含む組成物を用いて、例えば抗体またはその組成物を被験体に投与することによって、治療してもよい。投与は、非経口、例えば、皮下及び/または静脈内であってもよい。
【0019】
そのような組換え抗体を、末梢血単核細胞(PBMC)表面上のTL1Aを検出する方法に用いてもよい。この方法は、本明細書に記載または例示するようなTL1Aに結合する抗体を、被験体から採取したPBMCに接触させ、PBMC表面上のTL1Aに結合した抗体を検出することを含む。この方法は、PBMC上のTL1Aのレベルを定量することをさらに含む場合がある。この方法は、被験体からPBMCを採取することをさらに含む場合がある。
【0020】
そのような組換え抗体を、血清中のTL1Aを検出する方法に用いてもよい。この方法は、本明細書に記載または例示するようなTL1Aに結合する抗体を、被験体から採取した血清と接触させ、血清中のTL1Aに結合した抗体を検出することを含む。この方法は、血清中のTL1Aのレベルを定量化することをさらに含む場合がある。この方法は、被験体から採取した血液から血清を採取することをさらに含む場合がある。この方法は、被験体から血液を採取することをさらに含む場合がある。
【0021】
そのような抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の1つ以上をコードするポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは、さらに重鎖定常領域及び/または軽鎖定常領域をコードする場合がある。
【0022】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号3のアミノ酸配列を有する抗体重鎖可変領域をコードする核酸配列、例えば配列番号51または配列番号58を有する核酸配列を有する。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号2のアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変領域をコードする核酸配列、例えば配列番号50を有する核酸配列を有する。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号4のアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変領域をコードする核酸配列、例えば、配列番号52または配列番号59を有する核酸配列を有する。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号6のアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変領域をコードする核酸配列、例えば配列番号54を有する核酸配列を有する。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号7のアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変領域をコードする核酸配列、例えば配列番号55を有する核酸配列を有する。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号8のアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変領域をコードする核酸配列、例えば配列番号56を有する核酸配列を有する。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号10のアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変領域をコードする核酸配列、例えば配列番号57を有する核酸配列を有する。
【0023】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号1のアミノ酸配列を有する抗体重鎖可変領域をコードする核酸配列、例えば配列番号49を有する核酸配列を有する。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号4のアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変領域をコードする核酸配列、例えば配列番号52を有する核酸配列を有する。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号5のアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変領域をコードする核酸配列、例えば配列番号53を有する核酸配列を有する。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号6のアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変領域をコードする核酸配列、例えば配列番号54を有する核酸配列を有する。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号7のアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変領域をコードする核酸配列、例えば配列番号55を有する核酸配列を有する。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号8のアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変領域をコードする核酸配列、例えば配列番号56を有する核酸配列を有する。
【0024】
1つ以上のそのようなポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。1つ以上のそのようなポリヌクレオチドまたはそのようなベクターで形質転換した細胞を提供する。形質転換細胞は哺乳類であってもよく、好ましくは哺乳類発現宿主細胞、例えばCHO細胞、NS0細胞、またはHEK293細胞である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】CDR1もしくはCDR2領域または親抗体(320‐179)可変重鎖のCDR2に隣接する選択したアミノ酸残基に対して行ったそれぞれの単一アミノ酸置換の位置及び同一性を示す。四角で囲んだ領域は、AbMナンバリングシステムによるCDRを表す。
【
図2】親抗体(320‐179)可変軽鎖のCDR1またはCDR3領域に対して行った単一のアミノ酸置換のそれぞれの位置及び同一性を示す。四角で囲んだ領域は、AbMナンバリングシステムによるCDRを表す。
【
図3】変異型抗TL1A抗体重鎖のアライメントを示す。
【
図4】変異型抗TL1A結合抗体軽鎖のアライメントを示す。
【
図5】SPRによって測定した変異型抗TL1A抗体のTL1A解離フェーズの比較を示す。
【
図6】変異型TL1A抗体を用いたTF‐1細胞カスパーゼ力価アッセイの結果を示す。
【
図7】様々なTL1A抗体を用いたTF‐1細胞カスパーゼ力価アッセイの結果を、親抗体320‐179と比較して示す。
【
図8】抗体320‐587が、TF‐1細胞カスパーゼ力価アッセイにおいて、いくつかの異なる実験にわたって他の公表されている抗TL1A抗体に比べて優れたTL1A力価を有することを示す。
【
図9】ELISAフォーマットで測定したアイソタイプ対照に比べて、DR3へのTL1Aの結合を阻害する様々な抗TL1A抗体を示す。
【
図10】親抗体320‐179がDcR3へのTL1Aの結合を阻害しないのに対し、変異型抗TL1A抗体がTL1A‐DcR3相互作用を阻害することを示す。
【
図11】抗体320‐587が異なる種のTL1Aに交差反応して結合することを示しており;抗体は、試験したすべての種に由来するTL1Aに結合した。
【
図12】ラットTNBS誘発性大腸炎モデルにおける抗体320‐587の投与の結果を示しており、抗体が大腸炎の症状を有意に寛解することを示す。
【
図13】免疫複合体で刺激したヒトPBMCから分泌されたヒトTL1Aを、抗体320‐587がELISA試験において検出することを示す。
【
図14】表面に膜TL1Aを発現するヒトPBMCの集団を、抗体320‐587がフローサイトメトリー試験において検出することを示す。
【
図15】急性OVA誘発性喘息に罹患しているラットに抗体320‐587を処置した結果、気管支肺胞洗浄液(BALF)中の好酸球が有意に減少したことを示す。
【
図16A】抗体320‐587を処置した急性OVA誘発性喘息に罹患しているモルモットの処置結果を示しており、BALF好酸球に改善が認められた。
【
図16B】抗体320‐587を処置した急性OVA誘発性喘息に罹患しているモルモットの処置結果を示しており、BALFマクロファージに改善が認められた。
【
図16C】抗体320‐587を処置した急性OVA誘発性喘息に罹患しているモルモットの処置結果を示しており、早期喘息反応後の気道過敏症に改善が認められた。
【
図16D】抗体320‐587を処置した急性OVA誘発性喘息に罹患しているモルモットの処置結果を示しており、早期喘息反応の重篤度に改善が認められた。
【
図17A】抗体320‐587を処置した急性OVA誘発性喘息に罹患しているラットの処置結果を示しており、BALFの好酸球に改善が認められた。
【
図17B】抗体320‐587を処置した急性OVA誘発性喘息に罹患しているラットの処置結果を示しており、BALFのマクロファージに改善が認められた。
【
図17C】抗体320‐587を処置した急性OVA誘発性喘息に罹患しているラットの処置結果を示しており、BALFのIL‐13に改善が認められた。
【
図17D】抗体320‐587を処置した急性OVA誘発性喘息に罹患しているラットの処置結果を示しており、PAS反応性によって評価した杯細胞過形成に改善が認められた。
【
図17E】抗体320‐587を処置した急性OVA誘発性喘息に罹患しているラットの処置結果を示しており、H&E染色切片をもとに評価した粘膜肥厚に改善が認められた。
【
図18】気道閉塞を2倍にするのに必要なオボアルブミンの用量を示す。
【
図19】抗体320‐587で処置したTNBS誘発性大腸炎に罹患しているラットの処置結果を示しており、潰瘍領域線維症に改善が認められた。
【
図20A】抗体320‐587で処置したTNBS誘発性大腸炎ならびにDNBS誘発性大腸炎に罹患しているラットの比較、及び7日目及び14日目における結腸重量/長さ比への効果を示す。
【
図20B】抗体320‐587で処置したTNBS誘発性大腸炎ならびにDNBS誘発性大腸炎に罹患しているラットの比較、及び7日目及び14日目における結腸線維症への効果を示す。
【
図20C】抗体320‐587で処置したTNBS誘発性大腸炎ならびにDNBS誘発性大腸炎に罹患しているラットの比較、及び7日目及び14日目における結腸浸潤への効果を示す。
【
図20D】抗体320‐587で処置したTNBS誘発性大腸炎ならびにDNBS誘発性大腸炎に罹患しているラットの比較、及び7日目及び14日目における結腸損傷への効果を示す。
【
図20E】7及び14日における潰瘍領域の代表的な切片を示す。
【
図21A】抗体320‐587で処置したDNBS誘発性大腸炎に罹患しているラットの治療結果を示しており、DSS投与中の体重変化に改善が認められた。
【
図21B】抗体320‐587で処置したDNBS誘発性大腸炎に罹患しているラットの治療結果を示しており、DSS投与中の臨床スコアに改善が認められた。
【
図21C】抗体320‐587で処置したDNBS誘発性大腸炎に罹患しているラットの治療結果を示しており、結腸重量/長さ比に改善が認められた。
【
図22】320‐587処置に応答したTL1A誘発性腹腔内サイトカインの変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、開示の態様に関する様々な用語を使用する。そのような用語は、他に特段の指示がない限り、当該分野における通常の意味を有するものとする。他の特別に定義する用語は、本明細書で提供する定義と一致するように解釈すべきである。
【0027】
用語「被験体」及び「患者」は同じ意味で使用し、任意の動物を含む。哺乳類が好ましく、これには、伴侶動物(例えば、ネコ、イヌ)及び家畜哺乳類(例えば、ブタ、ウマ、ウシ)、ならびにマウス、ウサギ、及びラットを含むげっ歯類、モルモット、ならびに他のげっ歯類が含まれる。カニクイザルなどの非ヒト霊長類がより好ましく、ヒトが非常に好ましい。
【0028】
抗体などの分子は、人間の手によって自然環境から改変及び/または除去される場合、「単離」されている。
【0029】
本明細書中で使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、他に明記されていない限り、複数の指示対象を含む。
【0030】
抗体‐抗原相互作用の文脈における「特異性」とは、必ずしも絶対的な指定ではなく、抗原陰性細胞と比較した抗原陽性細胞に対する抗体の選択性の程度を示す相対的な用語を構成する場合がある。抗原陽性細胞に対する抗体の特異性は、抗体の可変領域によって、そして通常は抗体の相補性決定領域(CDR)によって媒介される。構築物は、抗原陰性細胞と比較して抗原陽性細胞に対して約100~約1000倍の特異性を有する場合がある。
【0031】
本明細書中で使用する場合、用語「組換え」は、遺伝子改変または別の方法で実験室操作によって作製する遺伝子からの発現を含む。
【0032】
本開示は、TL1Aに特異的に結合する抗体320‐179の組換え改変した重鎖及び/または軽鎖可変領域を含む変異型抗TL1A抗体を提供する。これらの320‐179変異型抗体は、TL1AがDR3と相互作用する能力を阻害し、いくつかの態様ではDcR3との相互作用も阻害し、さらにTL1AとDR3との相互作用によって誘導されるシグナル伝達を阻害する。これらの抗体は、抗体320‐179に比べて高い力価を有する。これらの抗体は、抗体320‐179に比べてTL1Aに対して高い親和性を有する。
【0033】
高い力価は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体に比べて、少なくとも約10倍高い力価であり得る。高い力価は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体に比べて、少なくとも約12倍高い力価であり得る。高い力価は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体に比べて、少なくとも約13倍高い力価であり得る。高い力価は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体に比べて少なくとも約15倍高い力価であり得る。高い力価は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体に比べて、少なくとも約20倍高い力価であり得る。高い力価は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体に比べて、少なくとも約25倍高い力価であり得る。高い力価は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体に比べて、少なくとも約27倍高い力価であり得る。高い力価は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体に比べて、少なくとも約40倍高い力価であり得る。力価の倍増率は、例えば、TF‐1細胞アッセイにおけるTL1A誘発性アポトーシスでのカスパーゼ放出を測定することによって決定してもよい。
【0034】
320‐179変異型抗体を組換え発現させ、TL1Aに特異的に結合させる。親抗体320‐179は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの態様では、320‐179変異型抗体は、配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含むが、但し、重鎖可変領域が配列番号1のアミノ酸配列を有する場合、軽鎖可変領域が配列番号2のアミノ酸配列を有さない。320‐179変異型抗体は、TL1AとDR3との相互作用を阻害することができる。320‐179変異型抗体は、抗体320‐179に比べて高い力価を有し、及び/または抗体320‐179に比べてTL1Aに対する高い親和性を有する。
【0035】
いくつかの態様では、重鎖可変領域は配列番号1のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域は配列番号4のアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、重鎖可変領域は配列番号3のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域は配列番号2のアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、重鎖可変領域は配列番号1のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域は配列番号5のアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、重鎖可変領域は配列番号1のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域は配列番号6のアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、重鎖可変領域は配列番号1のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域は配列番号7のアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、重鎖可変領域は配列番号1のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域は配列番号8のアミノ酸配列を有する。いくつかの非常に好ましい態様では、重鎖可変領域は配列番号3のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域は配列番号4のアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、重鎖可変領域は配列番号3のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域は配列番号6のアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、重鎖可変領域は配列番号3のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域は配列番号7のアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、重鎖可変領域は配列番号3のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域は配列番号8のアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、重鎖可変領域は配列番号3のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域は配列番号10のアミノ酸配列を有する。
【0036】
非常に好ましい態様では、320‐179変異型抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含み、TL1Aに特異的に結合する。いくつかの態様では、重鎖が配列番号60を有するようにするために、配列番号3の重鎖可変領域をヒトIgG1(ΔK)重鎖定常領域(例えば、配列番号43)に連結する。いくつかの態様では、軽鎖が配列番号61を有するようにするために、配列番号4の軽鎖可変領域をλヒト軽鎖定常領域(例えば、配列番号48)に連結する。320‐179変異型抗体は、TL1AとDR3との相互作用を阻害することができる。変異型抗体は、抗体320‐179に比べて高い力価を有し、及び/または抗体320‐179に比べてTL1Aに対する高い親和性を有する。
【0037】
いくつかの態様では、320‐179変異型抗体を組換え発現させ、前記抗体は、TL1Aに特異的に結合し、また、配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1、配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、及び配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3を含む。前記抗体は、配列番号29のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2、及び配列番号30のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む場合がある。重鎖可変領域が配列番号1のアミノ酸配列を有する態様では、軽鎖可変領域は好ましくは配列番号2のアミノ酸配列を有さない。これらの320‐179変異型抗体は、TL1AとDR3との相互作用を阻害することができる。これらの320‐179変異型抗体は、抗体320‐179に比べて高い力価を有し、及び/または抗体320‐179に比べてTL1Aに対する高い親和性を有する。
【0038】
いくつかの態様では、抗体はTL1Aに特異的に結合し、また、配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1、配列番号16のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3、配列番号18のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2、及び配列番号22のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0039】
いくつかの態様では、抗体はTL1Aに特異的に結合し、また、配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1、配列番号16のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3、配列番号23のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2、及び配列番号22のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0040】
いくつかの態様では、抗体はTL1Aに特異的に結合し、また、配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1、配列番号16のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3、配列番号24のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2、及び配列番号22のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0041】
いくつかの態様では、抗体はTL1Aに特異的に結合し、また、配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1、配列番号16のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3、配列番号25のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2、及び配列番号22のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0042】
いくつかの態様では、抗体はTL1Aに特異的に結合し、また、配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1、配列番号21のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3、配列番号18のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2、及び配列番号20のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0043】
いくつかの態様では、抗体はTL1Aに特異的に結合し、また、配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1、配列番号16のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3、配列番号26のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2、及び配列番号22のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0044】
いくつかの態様では、抗体はTL1Aに特異的に結合し、また、配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1、配列番号21のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3、配列番号18のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2、及び配列番号22のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0045】
いくつかの態様では、抗体はTL1Aに特異的に結合し、また、配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1、配列番号21のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3、配列番号24のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2、及び配列番号22のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0046】
いくつかの態様では、抗体はTL1Aに特異的に結合し、また、配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1、配列番号21のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3、配列番号25のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2、及び配列番号22のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0047】
いくつかの態様では、抗体はTL1Aに特異的に結合し、また、配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1、配列番号21のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3、配列番号26のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2、及び配列番号22のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0048】
いくつかの態様では、抗体はTL1Aに特異的に結合し、また、配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1、配列番号21のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3、配列番号18のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2、及び配列番号27のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0049】
いくつかの態様では、抗体はTL1Aに特異的に結合し、また、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び軽鎖可変領域を含むが、但し、軽鎖可変領域は配列番号2のアミノ酸配列を有さない。いくつかの態様では、抗体はTL1Aに特異的に結合し、また、配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び軽鎖可変領域または軽鎖を含む。軽鎖可変領域は、さらにλ定常領域を含む場合がある。
【0050】
いくつかの態様では、抗体はTL1Aに特異的に結合し、また、配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、及び重鎖可変領域を含むが、但し、重鎖可変領域は、配列番号1のアミノ酸配列を含まない。いくつかの態様では、抗体はTL1Aに特異的に結合し、また、配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、及び重鎖可変領域を含む。いくつかの態様では、抗体はTL1Aに特異的に結合し、また、配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、及び重鎖可変領域を含む。いくつかの態様では、抗体はTL1Aに特異的に結合し、また、配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、及び重鎖可変領域を含む。いくつかの態様では、抗体はTL1Aに特異的に結合し、また、配列番号7のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、及び重鎖可変領域を含む。いくつかの態様では、抗体はTL1Aに特異的に結合し、また、配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、及び重鎖可変領域を含む。いくつかの態様では、抗体はTL1Aに特異的に結合し、また、配列番号9のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、及び重鎖可変領域を含む。いくつかの態様では、抗体はTL1Aに特異的に結合し、また、配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、及び重鎖可変領域を含む。いくつかの態様では、抗体はTL1Aに特異的に結合し、また、配列番号11のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、及び重鎖可変領域を含む。いくつかの態様では、抗体はTL1Aに特異的に結合し、また、配列番号12のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、及び重鎖可変領域を含む。いくつかの態様では、抗体はTL1Aに特異的に結合し、また、配列番号13のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、及び重鎖可変領域を含む。いくつかの態様では、抗体はTL1Aに特異的に結合し、また、配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、及び重鎖可変領域を含むが、但し、軽鎖可変領域が配列番号2のアミノ酸配列を有する場合、重鎖可変領域は、配列番号1のアミノ酸配列を有さない。重鎖可変領域は、さらに、本明細書に記載または例示する任意のIgG1、IgG2、またはIgG4重鎖定常領域アミノ酸配列を有する重鎖定常領域を含む場合がある。
【0051】
320‐179変異型抗体は、TL1Aに特異的に結合する。抗体は、ヒトTL1Aに結合し、カニクイザルTL1A、マウスTL1A、ラットTL1A、モルモットTL1A、ネコTL1A、イヌTL1A、ブタTL1A、またはウサギTL1Aの1つ以上に結合する場合がある。いくつかの態様では、抗体は、例えば、エピトープが共通の場合、複数の異なる種のTL1Aに結合し得る。いくつかの態様では、ヒトTL1Aは、配列番号31、配列番号32、または配列番号33のアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、カニクイザルTL1Aは、配列番号34のアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、マウスTL1Aは、配列番号35のアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、ラットTL1Aは、配列番号36のアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、モルモットTL1Aは、配列番号37のアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、ネコTL1Aは、配列番号38のアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、ブタTL1Aは、配列番号39のアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、ウサギTL1Aは、配列番号40のアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、イヌTL1Aは、配列番号41のアミノ酸配列を有する。
【0052】
320‐179変異型抗体は、TL1A上のエピトープに対して結合親和性を有しており、平衡解離定数(KD)を有し、これは、KINEXA(登録商標)アッセイ(Sapidyne Instruments Inc、ボイシ、アイダホ)などの結合平衡除外法によって測定可能である。
【0053】
結合平衡除外法により測定するTL1A結合のKDは、好ましくは約1000pM未満である。いくつかの態様では、結合平衡除外法により測定するTL1A結合のKDは、約500pM未満、または約400pM未満、または約300pM未満、または約200pM未満である。いくつかの好ましい態様では、結合平衡除外法により測定するTL1A結合のKDは、約100pM未満である。
【0054】
結合平衡除外法により測定するTL1A結合のKDは、約10pM~約100pMである場合がある。結合平衡除外法により測定するTL1A結合のKDは、約25pM~約75pMである場合がある。結合平衡除外法により測定するTL1A結合のKDは、約30pM~約60pMである場合がある。結合平衡除外法により測定するTL1A結合のKDは、約30pM~約50pMである場合がある。結合平衡除外法により測定するTL1A結合のKDは、約35pM~約50pMである場合がある。結合平衡除外法により測定するTL1A結合のKDは、約36pM~約46pMである場合がある。結合平衡除外法により測定するTL1A結合のKDは、約38pM~約44pMである場合がある。結合平衡除外法により測定するTL1A結合のKDは、約39pM~約43pMである場合がある。結合平衡除外法により測定するTL1A結合のKDは、約40pM~約45pMである場合がある。結合平衡除外法により測定するTL1A結合のKDは、約35pM~約42pMである場合がある。結合平衡除外法により測定するTL1A結合のKDは、約40pMである場合がある。結合平衡除外法により測定するTL1A結合のKDは、約41pMである場合がある。結合平衡除外法により測定するTL1A結合のKDは、約42pMである場合がある。結合平衡除外法において、抗体分子またはTL1A分子を定常結合パートナーとして用い、他の分子を滴定剤として用いてもよい。
【0055】
320‐179変異型抗TL1A抗体は、好ましくはTL1A陽性細胞に結合することができる。抗体は、約100nM未満のEC50値でTL1A陽性細胞に結合する場合がある。抗体は、約75nM未満のEC50値でTL1A陽性細胞に結合する場合がある。抗体は、約50nM未満のEC50値でTL1A陽性細胞に結合する場合がある。抗体は、約30nM未満のEC50値でTL1A陽性細胞に結合する場合がある。抗体は、約25nM未満のEC50値でTL1A陽性細胞に結合する場合がある。抗体は、約20nM未満のEC50値でTL1A陽性細胞に結合する場合がある。抗体は、約18nM未満のEC50値でTL1A陽性細胞に結合する場合がある。抗体は、約15nM未満のEC50値でTL1A陽性細胞に結合する場合がある。抗体は、約13nM未満のEC50値でTL1A陽性細胞に結合する場合がある。抗体は、約10nM未満のEC50値でTL1A陽性細胞に結合する場合がある。
【0056】
320‐179変異型抗体は、好ましくはモノクローナルであり、より好ましくは、2つの重鎖及び2つの軽鎖を含む完全長抗体である。いくつかの態様では、抗体は、抗原結合特異性を保持するとともに好ましくは(例えば、TL1Aに対する)320‐179親抗体分子の親和性の大部分またはすべてを保持する抗体の誘導体または断片または部分を含む。例えば、誘導体は、少なくとも1つの可変領域(重鎖または軽鎖可変領域のいずれか)を含む場合がある。適切な抗体誘導体及び断片の他の例としては、ポリエピトープ特異性を有する抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、二特異性抗体、一本鎖分子、ならびにFAb、F(Ab′)2、Fd、Fabc、及びFv分子、一本鎖(Sc)抗体、一本鎖Fv抗体(scFv)、個別の抗体軽鎖、個別の抗体重鎖、抗体鎖と他の分子との間の融合体、重鎖単量体または二量体、軽鎖単量体または二量体、1つの重鎖及び1つの軽鎖からなる二量体、ならびに他の多量体が挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。一本鎖Fv抗体は、多価であってもよい。すべての抗体アイソタイプは、抗体誘導体、断片及び部分を産生するために使用してもよい。抗体の誘導体、断片、及び/または部分を、組換えにより産生し、任意の細胞型、原核生物または真核生物によって発現させてもよい。
【0057】
完全長抗体では、各重鎖は重鎖可変領域(本明細書中ではHCVRまたはVHと略記する)及び重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書中ではLCVRまたはVLと略記する)及び軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLからなる。VH及びVL領域は、より保存性の高いフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域と、そこに散在する相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域とに、さらに細分することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端にかけて、以下の順:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順で配置された3つのCDR及び4つのFRからなる。通常、抗体の抗原結合特性は、FR配列の変化よりも、CDR配列の変化により妨げられる可能性が高い。免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)またはサブクラスであり得る。
【0058】
320‐179変異型抗体は完全にヒト型である。完全ヒト抗体は、分子全体がヒト型であるか、またはヒト由来であるか、またはヒト形態の抗体と同一のアミノ酸配列を有する抗体である。完全ヒト抗体は、ヒトV遺伝子ライブラリーから取得した抗体を含み、そこでは、例えば、抗体の可変領域をコードするヒト遺伝子を組換えにより発現させる。ヒト抗体をコードする遺伝子で形質転換した他の生物(例えば、マウス及びゼノマウス技術)または他の生物由来の細胞中で、完全ヒト抗体を発現させてもよい。それにもかかわらず、完全なヒト抗体は、ヒト配列によってコードされていないアミノ酸残基、例えば、ランダムまたは部位特異的突然変異によって導入した突然変異を含む場合がある。
【0059】
いくつかの態様では、320‐179変異型抗体は、非免疫グロブリン由来タンパク質骨格を含む場合がある。例えば、(Ku&Schutz,1995,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:6552‐6556)を参照してもよく、前記文献は、2つのループをランダム化してCDRを作製し、それらを抗原結合に関して選択した4ヘリックスバンドルタンパク質チトクロムb562について記載している。
【0060】
320‐179変異型抗体は、抗体活性または安定性に影響を与え得る翻訳後修飾または部分を含む場合がある。これらの修飾または部分として、メチル化、アセチル化、グリコシル化、硫酸化、リン酸化、カルボキシル化、及びアミド化部分ならびに当該技術分野で周知の他の部分が挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。部分は、本質的に免疫グロブリン分子上に一般に見出されるか、または原核及び真核発現系を含む組換え発現系によって抗体に付加する任意の化学基または基の組合せを含む。
【0061】
本開示によって企図する側鎖修飾の例として、アミノ基の修飾、例えば、アルデヒドとの反応による還元的アルキル化とその後のNaBH4での還元;アセトイミド酸メチルによるアミド化;無水酢酸によるアシル化;シアン酸によるアミノ基のカルバモイル化;2,4,6‐トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンジル化;無水コハク酸及び無水テトラヒドロフタル酸によるアミノ基のアシル化;ならびにピリドキサール‐5‐リン酸によるリジンのピリドキシル化とその後のNaBH4による還元が挙げられる。
【0062】
アルギニン残基のグアニジン基は、2,3‐ブタンジオン、フェニルグリオキサール及びグリオキサールなどの試薬を用いた複素環式縮合生成物の形成によって修飾してもよい。カルボキシル基は、O‐アシルイソウレア形成を介したカルボジイミド活性化とその後の、例えば対応するアミドへの誘導によって修飾してもよい。スルフヒドリル基は、ヨード酢酸またはヨードアセトアミドによるカルボキシメチル化;過蟻酸からシステイン酸への酸化;他のチオール化合物との混合ジスルフィドの形成;マレイミド、無水マレイン酸または他の置換マレイミドとの反応;4‐クロロメルクリ安息香酸、4‐クロロメルクリフェニルスルホン酸、塩化フェニル水銀、2‐クロルメルクリ‐4‐ニトロフェノール及び他の水銀を用いた水銀誘導体の形成;アルカリ性pHでのシアン酸を用いたカルバモイル化などの方法によって修飾してもよい。トリプトファン残基は、例えば、N‐ブロモスクシンイミドによる酸化、または2‐ヒドロキシ‐5‐ニトロベンジルブロミドまたはスルフェニルハライドによるインドール環のアルキル化によって修飾してもよい。一方、チロシン残基は、テトラニトロメタンによるニトロ化によって改変し、3‐ニトロチロシン誘導体を形成してもよい。ヒスチジン残基のイミダゾール環の修飾は、ヨード酢酸誘導体によるアルキル化またはジエチルピロカルボネートによるN‐カルベトキシル化によって達成してもよい。
【0063】
320‐179変異型抗体は、血清半減期及び生体内分布を調節する修飾を含む場合があり、これには、必ずしも限定するものではないが、異化作用からのIgGの保護及び高い血清抗体濃度の維持に重要な役割を果たす受容体である新生児Fc受容体(FcRn)と抗体との相互作用を調節する修飾が含まれる。血清半減期を調節する修飾は、IgG1、IgG2、またはIgG4のFc領域で生じる場合があり、米国特許第7,083,784号に記載されているように、M252Y/S254T/T256Eの三重置換(「YTE」置換、ナンバリングは、EUナンバリングシステム(Edelman,G.M.et al.(1969)Proc.Natl.Acad.USA 63,78‐85)による)を含む。他の置換は、250位及び428位で生じる場合があり、例えば、米国特許第7,217,797号を参照されたく、ならびに307位、380位及び434位で生じる場合があり、例えば、国際特許公開第WO00/042072号を参照されたい。FcRn結合及び血清半減期を含む、Fc受容体への結合及びその後のこれらの受容体によって媒介される機能を調節する定常領域アミノ酸置換の例は、米国特許公開第2009/0142340号、第2009/0068175号、及び第2009/0092599号に記載されている。任意のクラスの抗体の重鎖C末端リジンを省略または除去し、異種性(ΔK)を減少させてもよい。ヒトIgG4におけるS228P(EUナンバリング)置換は、in vivoでの抗体のFabアーム交換を安定化させることができ(Labrin et al.(2009)Nature Biotechnology 27:8;767‐773)、この置換はYTE及び/またはΔKの修飾と同時に存在させてもよい。
【0064】
320‐179変異型抗体は、ヒト定常ドメインを含む。重鎖定常ドメインは、好ましくは、ヒトIgG1、IgG2、またはIgG4定常ドメインである。軽鎖定常ドメインは、好ましくはヒトλ定常ドメインである。適切なヒトλドメインは、配列番号48を有する。
【0065】
320‐179変異型抗体と共に使用してもよいヒト重鎖IgG1定常領域は、ヒトIgG1(配列番号42)、ヒトIgG1(ΔK)(配列番号43)、ヒトIgG1 252Y/254T/256E(配列番号44)、ヒトIgG1 252Y/254T/256E(ΔK)(配列番号64)、ヒトIgG1 L234A/L235A/G237A(配列番号63)、ヒトIgG1 L234A/L235A/G237A(ΔK)(配列番号62)、ヒトIgG1 L235A/G237A(配列番号65)、及びヒトIgG1 L235A/G237A(ΔK)(配列番号66)から選択してもよい。320‐179変異型抗体と共に使用してもよいヒト重鎖IgG2定常領域は、ΔKを有するかまたは有さないヒトIgG2(配列番号67及び配列番号70)、及び(ΔK)を有するかまたは有さないヒトIgG2 A330S/P331S(配列番号71及び配列番号68)から選択してもよい。320‐179変異型抗体とともに使用してもよいヒト重鎖IgG4定常領域は、ヒトIgG4 S228P(配列番号45)、ヒトIgG4 S228P(ΔK)(配列番号46)、ヒトIgG4 228P/252Y/254T/256E(配列番号47)、及びヒトIgG4 228P/252Y/254T/256E(ΔK)(配列番号69)から選択してもよい。
【0066】
320‐179変異型抗体は、任意の化学的または生体分子部分に標識し、結合させ、または複合体化してもよい。標識した抗体は、治療的、診断的、または基礎研究用途に用いてもよい。そのような標識/複合体は、検出可能な、蛍光色素、電気化学発光プローブ、量子ドット、放射性標識、酵素、蛍光タンパク質、発光タンパク質、及びビオチンなどであり得る。標識/複合体は、化学療法剤、毒素、同位体、及び例えば癌細胞の死滅など、病態を治療するために使用する他の薬剤であってもよい。化学療法剤は、抗体の使用目的に適したものであれば、いずれであってもよい。
【0067】
抗体を、公知の保護/遮断基によって誘導体化し、タンパク質分解切断を防止するか、または活性または安定性を促進してもよい。
【0068】
本開示において、抗体及びそのサブドメイン(例えば、FR及びCDR)をコードするポリヌクレオチド配列を特徴付ける。ポリヌクレオチドとして、RNA、DNA、cDNA、RNA及びDNAのハイブリッド、ならびに一本鎖、二本鎖、または三本鎖のRNA鎖、DNA鎖またはそれらのハイブリッドが挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。本明細書に記載または例示するように、ポリヌクレオチドは、320‐179変異型抗体の重鎖可変領域及び/または軽鎖可変領域をコードする核酸配列を有する場合がある。ポリヌクレオチド配列の相補配列もまた、本開示の範囲内である。
【0069】
ポリヌクレオチドは、配列番号3のアミノ酸配列を有する抗体重鎖可変領域をコードする核酸配列を有する場合がある。配列番号3のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号51のヌクレオチド配列を有する場合がある。
【0070】
ポリヌクレオチドは、配列番号1のアミノ酸配列を有する抗体重鎖可変領域をコードする核酸配列を有する場合がある。配列番号1のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号49のヌクレオチド配列を有する場合がある。
【0071】
ポリヌクレオチドは、配列番号2のアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変領域をコードする核酸配列を有する場合がある。配列番号2のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号50をコードする核酸配列を有する場合がある。
【0072】
ポリヌクレオチドは、配列番号4のアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変領域をコードする核酸配列を有する場合がある。配列番号4のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号52をコードする核酸配列を有する場合がある。
【0073】
ポリヌクレオチドは、配列番号5のアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変領域をコードする核酸配列を有する場合がある。配列番号5のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号53をコードする核酸配列を有する場合がある。
【0074】
ポリヌクレオチドは、配列番号6のアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変領域をコードする核酸配列を有する場合がある。配列番号6のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号54をコードする核酸配列を有する場合がある。
【0075】
ポリヌクレオチドは、配列番号7のアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変領域をコードする核酸配列を有する場合がある。配列番号7のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号55をコードする核酸配列を有する場合がある。
【0076】
ポリヌクレオチドは、配列番号8のアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変領域をコードする核酸配列を有する場合がある。配列番号8のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号56をコードする核酸配列を有する場合がある。
【0077】
ポリヌクレオチドは、配列番号10のアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変領域をコードする核酸配列を有する場合がある。配列番号10のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号57をコードする核酸配列を有する場合がある。
【0078】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、抗体重鎖可変領域をコードする第一の核酸配列及び抗体軽鎖可変領域をコードする第二の核酸配列を有する。第一の核酸配列は、配列番号3のアミノ酸配列を有する抗体重鎖可変領域及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をコードする場合がある。配列番号3のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号51の核酸配列を有する場合があり、配列番号2のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号50の核酸配列を有する場合がある。
【0079】
第一の核酸配列は、配列番号3のアミノ酸配列を有する抗体重鎖可変領域及び配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をコードする場合がある。配列番号3のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号51の核酸配列を有する場合があり、配列番号4のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号52の核酸配列を有する場合がある。
【0080】
第一の核酸配列は、配列番号3のアミノ酸配列を有する抗体重鎖可変領域及び配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をコードする場合がある。配列番号3のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号51の核酸配列を有する場合があり、配列番号6のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号54の核酸配列を有する場合がある。
【0081】
第一の核酸配列は、配列番号3のアミノ酸配列を有する抗体重鎖可変領域及び配列番号7のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をコードする場合がある。配列番号3のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号51の核酸配列を有する場合があり、配列番号7のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号55の核酸配列を有する場合がある。
【0082】
第一の核酸配列は、配列番号3のアミノ酸配列を有する抗体重鎖可変領域及び配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をコードする場合がある。配列番号3のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号51の核酸配列を有する場合があり、配列番号8のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号56の核酸配列を有する場合がある。
【0083】
第一の核酸配列は、配列番号3のアミノ酸配列を有する抗体重鎖可変領域及び配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をコードする場合がある。配列番号3のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号51の核酸配列を有する場合があり、配列番号10のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号57の核酸配列を有する場合がある。
【0084】
第一の核酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列を有する抗体重鎖可変領域及び配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をコードする場合がある。配列番号1のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号49の核酸配列を有する場合があり、配列番号4のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号52の核酸配列を有する場合がある。
【0085】
第一の核酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列を有する抗体重鎖可変領域及び配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をコードする場合がある。配列番号1のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号49の核酸配列を有する場合があり、配列番号5のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号53の核酸配列を有する場合がある。
【0086】
第一の核酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列を有する抗体重鎖可変領域及び配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をコードする場合がある。配列番号1のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号49の核酸配列を有する場合があり、配列番号6のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号54の核酸配列を有する場合がある。
【0087】
第一の核酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列を有する抗体重鎖可変領域及び配列番号7のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をコードする場合がある。配列番号1のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号49の核酸配列を有する場合があり、配列番号7のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号55の核酸配列を有する場合がある。
【0088】
第一の核酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列を有する抗体重鎖可変領域及び配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をコードする場合がある。配列番号1のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号49の核酸配列を有する場合があり、配列番号8のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号56の核酸配列を有する場合がある。
【0089】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、抗体重鎖可変領域をコードする第一の核酸配列及び重鎖定常領域をコードする第二の核酸配列を有する。好ましい態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号3のアミノ酸配列を有する抗体重鎖可変領域をコードする第一の核酸配列、及び配列番号43のIgG1(ΔK)重鎖定常領域をコードする第二の核酸配列を有する、例えば、配列番号58の核酸配列を有するポリヌクレオチドである。
【0090】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、抗体軽鎖可変領域をコードする第一の核酸配列及び軽鎖定常領域をコードする第二の核酸配列を有する。好ましい態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号4のアミノ酸配列を有する抗体軽鎖可変領域をコードする第一の核酸配列、及び配列番号48のλ軽鎖定常領域をコードする第二の核酸配列を有する、例えば、配列番号59の核酸配列を有するポリヌクレオチドである。
【0091】
本明細書に記載または例示する任意のポリヌクレオチドを、ベクター内に組み込んでもよい。したがって、ポリヌクレオチドを組み込んだベクターを、本開示の一部として提供する。ベクターは発現ベクターであってもよい。したがって、関心対象のポリペプチドをコードする配列を含む組換え発現ベクターを提供する。発現ベクターには、必ずしも限定するものではないが、調節配列、選択マーカー、精製タグ、またはポリアデニル化シグナルなどの1つ以上のさらなる配列を組み込んでもよい。そのような調節エレメントとして、転写プロモーター、エンハンサー、mRNAリボソーム結合部位、または転写及び翻訳の終結を調節する配列が挙げられ得る。
【0092】
発現ベクター、特に哺乳類の発現ベクターは、複製起点、発現させる遺伝子に連結させた適切なプロモーター及びエンハンサー、他の5′もしくは3′隣接非転写配列、5′もしくは3′非翻訳配列(必要なリボソーム結合部位など)、ポリアデニル化部位、スプライスドナー及びアクセプター部位、または転写終結配列などの1つ以上の非転写エレメントを含む場合がある。特定の宿主内で複製する能力を付与する複製起点もまた、組み込んでもよい。
【0093】
ベクターを使用して、当業者に周知の広範な宿主細胞のいずれか、及び好ましくは抗体を発現可能な宿主細胞のいずれかを形質転換してもよい。ベクターとして、限定するものではないが、プラスミド、ファージミド、コスミド、バクミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、及びバキュロウイルス、ならびに他の細菌、真核生物、酵母及びウイルスベクターが挙げられる。適切な宿主細胞として、限定するものではないが、CHO細胞、NS0細胞、HEK293細胞、または公知のまたは製造された任意の真核生物安定細胞株が挙げられ、また、細菌、酵母、及び昆虫細胞も含まれる。
【0094】
抗体は、ハイブリドーマ細胞によって産生してもよい。ハイブリドーマの産生方法は当該分野で周知であり、確立されている。
【0095】
本開示はまた、320‐179変異型抗体を含む組成物も提供する。組成物は、本明細書に記載及び/または例示する抗体のいずれか、ならびに許容可能な担体、例えば薬学的に許容可能な担体を含み得る。適切な担体としては、抗体の生物学的活性を妨害せず、好ましくは、それを投与する宿主に対して毒性を有さない任意の媒質が挙げられる。任意の適切な剤形で被験体に投与するために、組成物を製剤化してもよい。
【0096】
320‐179変異型抗体を用いて、被験体の呼吸器疾患、胃腸疾患、関節炎、または皮膚疾患を治療してもよい。したがって、本開示は治療方法を特徴とする。一般的に、方法は、呼吸器疾患、胃腸疾患、関節炎、または皮膚疾患の治療を必要とする被験体に、320‐179変異型抗体またはその組成物を投与することを含み、それによって、呼吸器疾患、胃腸疾患 、関節炎、または皮膚疾患を治療する。320‐179変異型抗体は、本明細書に記載または例示する任意の抗体を含み得る。投与は、抗体を皮下投与することを含み得る。投与は、抗体を静脈内投与することを含み得る。被験体は好ましくはヒトである。被験体は、カニクイザルなどの非ヒト霊長類であってもよく、またはマウス、ラット、モルモット、ネコ、ブタ、ウサギ、またはイヌなどの哺乳類であってもよい。
【0097】
呼吸器疾患を治療する態様では、本方法は、呼吸器疾患の治療を必要とする被験体に、320‐179変異型抗体またはその組成物を投与することを含む。呼吸器疾患として、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、肺サルコイドーシス、アレルギー性鼻炎、または嚢胞性線維症のうちの1つ以上が挙げられ得る。したがって、例えば、いくつかの態様では、本方法は、喘息の治療を必要とする被験体に320‐179変異型抗体、またはその組成物を投与し、それによって被験体における喘息を治療することを含む。いくつかの態様では、本方法は、COPDの治療を必要とする被験体に、320‐179変異型抗体またはその組成物を投与し、それによって被験体におけるCOPDを治療することを含む。いくつかの態様では、本方法は、肺線維症の治療を必要とする被験体に320‐179変異型抗体またはその組成物を投与し、それによって被験体における肺線維症を治療することを含む。いくつかの態様では、本方法は、肺サルコイドーシスの治療を必要とする被験体に320‐179変異型抗体またはその組成物を投与し、それによって被験体における肺サルコイドーシスを治療することを含む。いくつかの態様では、本方法は、アレルギー性鼻炎の治療を必要とする被験体に320‐179変異型抗体またはその組成物を投与し、それによって被験体におけるアレルギー性鼻炎を治療することを含む。いくつかの態様では、本方法は、嚢胞性線維症の治療を必要とする被験体に320‐179変異型抗体またはその組成物を投与し、それによって被験体における嚢胞性線維症を治療することを含む。
【0098】
胃腸疾患を治療する態様では、本方法は、胃腸疾患の治療を必要とする被験体に、320‐179変異型抗体またはその組成物を投与することを含む。胃腸疾患として、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、大腸炎、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群(IBS)、好酸球性食道炎、または嚢胞性線維症に関連する胃腸疾患もしくは病態の1つ以上が挙げられ得る。したがって、例えば、いくつかの態様では、本方法は、IBDの治療を必要とする被験体に320‐179変異型抗体またはその組成物を投与し、それによって被験体におけるIBDを治療することを含む。いくつかの態様では、本方法は、クローン病の治療を必要とする被験体に320‐179変異型抗体またはその組成物を投与し、それによって被験体におけるクローン病を治療することを含む。いくつかの態様では、本方法は、大腸炎の治療を必要とする被験体に320‐179変異型抗体またはその組成物を投与し、それによって被験体における大腸炎を治療することを含む。いくつかの態様では、本方法は、潰瘍性大腸炎の治療を必要とする被験体に320‐179変異型抗体またはその組成物を投与し、それによって被験体における潰瘍性大腸炎を治療することを含む。いくつかの態様では、本方法は、IBSの治療を必要とする被験体に320‐179変異型抗体またはその組成物を投与し、それによって被験体におけるIBSを治療することを含む。いくつかの態様では、本方法は、好酸球性食道炎の治療を必要とする被験体に320‐179変異型抗体またはその組成物を投与し、それによって被験体における好酸球性食道炎を治療することを含む。いくつかの態様では、本方法は、嚢胞性線維症に関連する胃腸疾患もしくは病態の治療を必要とする被験体に320‐179変異型抗体またはその組成物を投与し、それによって被験体における嚢胞性線維症に関連する胃腸疾患もしくは病態を治療することを含む。
【0099】
関節炎を治療する態様では、本方法は、関節炎の治療を必要とする被験体に320‐179変異型抗体またはその組成物を投与することを含む。関節炎は、関節リウマチを含み得る。したがって、例えば、いくつかの態様では、本方法は、関節リウマチの治療を必要とする被験体に320‐179変異型抗体またはその組成物を投与し、それによって被験体における関節リウマチを治療することを含む。
【0100】
皮膚疾患を治療する態様では、本方法は、皮膚疾患の治療を必要とする被験体に320‐179変異型抗体またはその組成物を投与することを含む。皮膚疾患は、アトピー性皮膚炎、湿疹、または強皮症の1つ以上を含み得る。したがって、例えば、いくつかの態様では、本方法は、アトピー性皮膚炎の治療を必要とする被験体に320‐179変異体抗体またはその組成物を投与し、それによって被験体におけるアトピー性皮膚炎を治療することを含む。いくつかの態様では、本方法は、湿疹の治療を必要とする被験体に320‐179変異体抗体またはその組成物を投与し、それによって被験体における湿疹を治療することを含む。いくつかの態様では、本方法は、強皮症の治療を必要とする被験体に320‐179変異体抗体またはその組成物を投与し、それによって被験体における強皮症を治療することを含む。
【0101】
本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体を、呼吸器疾患の治療に使用するための医薬品の調製に使用してもよい。本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体を、胃腸疾患の治療に使用するための医薬品の調製に使用してもよい。本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体を、関節炎の治療に使用するための医薬品の調製に使用してもよい。本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体を、皮膚疾患の治療に使用するための医薬品の調製に使用してもよい。本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体を、喘息、COPD、肺線維症、肺サルコイドーシス、アレルギー性鼻炎、嚢胞性線維症、炎症性腸疾患、クローン病、大腸炎、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群、好酸球性食道炎、嚢胞性線維症、関節炎、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、湿疹または強皮症に関連する胃腸疾患もしくは病態のいずれか1つの治療に使用するための薬剤の調製に使用してもよい。
【0102】
本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体を、呼吸器疾患の治療に使用してもよい。本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体を、胃腸疾患の治療に使用してもよい。本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体を、喘息の治療に使用してもよい。本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体を、皮膚疾患の治療に使用してもよい。本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体を、COPDの治療に使用してもよい。本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体を、肺線維症の治療に使用してもよい。本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体を、肺サルコイドーシスの治療に使用してもよい。本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体を、アレルギー性鼻炎の治療に使用してもよい。本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体を、嚢胞性線維症の治療に使用してもよい。本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体を、炎症性腸疾患の治療に使用してもよい。本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体を、クローン病の治療に使用してもよい。本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体を、大腸炎の治療に使用してもよい。本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体を、潰瘍性大腸炎の治療に使用してもよい。本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体を、好酸球性食道炎の治療に使用してもよい。本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体を、嚢胞性線維症に関連する胃腸疾患または病態の治療に使用してもよい。本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体を、過敏性腸症候群の治療に使用してもよい。本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体を、関節リウマチの治療に使用してもよい。本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体を、アトピー性皮膚炎の治療に使用してもよい。本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体を、湿疹の治療に使用してもよい。本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体を、強皮症の治療に使用してもよい。
【0103】
また、請求項1~19のいずれか一項に記載の抗体を、被験体から単離した組織試料に接触させて抗体‐TL1A複合体を形成し、組織試料中の複合体を検出することを含む、被験体から単離した組織試料中のTL1Aのin vitro検出方法も提供する。
【0104】
例えば、320‐179変異型抗体を用いて、被験体から採取した組織試料中のTL1A陽性細胞を検出してもよい。抗体を用いて、TL1A陽性末梢血単核細胞(PBMC)、例えば被験体から採取したPBMCを検出してもよい。抗体を用いて、血清中のTL1Aを検出してもよい。そのような方法は、in vivo、ex vivo、in vitro、またはin situで行ってもよい。一般的に、本方法は、本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体のいずれかを、被験体から単離した組織または細胞、例えばPBMCに接触させて抗体‐TL1A複合体を形成し、組織中または細胞上の複合体を検出することを含む。抗体を、検出可能な標識で標識してもよい。抗体を、検出可能な標識で標識した二次抗体で検出してもよい。組織は、血液または血清などの生物学的液体を含んでいてもよく、またはそのような生物学的液体であってもよい。組織は、肺組織などの呼吸器系組織、痰、気管支肺胞洗浄液、胃腸組織、または胃腸洗浄液を含んでいてもよく、またはそれらであってもよい。組織は、皮膚または真皮組織を含んでいてもよく、またはそれらであってもよい。組織は、体内の任意の関節を含んでいてもよく、またはそれらであってもよい。本方法は、被験体から組織を単離することをさらに含んでいてもよい。そのような方法は、例えば、組織中のTL1Aのレベルを定量すること、TL1A陽性細胞のレベルを定量すること、または細胞上のTL1Aのレベルを定量すること、または血清中のTL1Aのレベルを定量することにより、定量的であり得る。
【0105】
本開示はまた、本明細書に記載及び例示する320‐179変異型抗体のいずれかを含むキットを特徴とする。本キットを用いて、とりわけ、診断、基礎研究、または治療法で使用するための抗体及び他の薬剤を供給してもよい。いくつかの態様では、キットは、本明細書に記載または例示する320‐179変異型抗体のいずれか1つ以上、及び呼吸器疾患の治療方法において、胃腸疾患の治療方法において、または関節炎の治療方法において1つ以上の抗体を使用するための指示書を含む。
【0106】
以下の実施例を、本開示をより詳細に説明するために提供する。それらは、本開示を例示することを意図するものであって、限定するものではない。
【実施例0107】
実施例1
材料及び方法
これらの実施例のアミノ酸位置は、Kabatナンバリングシステムに従って番号付けしている。CDRは、本明細書を通してCDR定義システムのAbM法に従って定義している。
【0108】
1.1. 変異体集団の生成。抗体320‐179(それぞれ配列番号1及び2)の重鎖及び軽鎖の可変領域アミノ酸配列を、点突然変異体の設計のための鋳型として用いた。320‐179は、以前に、米国特許出願公開第2014/0255302号(その刊行物中、VHは配列番号186であり、VLは配列番号199である)において、320‐179として記載されている(C320‐179としても記載されている)。この抗体は、好ましい生物物理学的特性を有し、TL1Aの強力な阻害剤であり、予測される低い免疫原性特性を有していた。
【0109】
320‐179の抗体変異体は、9つの代表的アミノ酸である、A、S、Q、D、H、K、L、W、Yのグループの1つを、軽鎖CDR1(CDR‐L1)、軽鎖CDR3(CDR‐L3)、重鎖CDR1(CDR‐H1)及び重鎖CDR2(CDR‐H2)における各CDRアミノ酸位置(AbM命名法で定義するような)の1か所に対し、一回につき1残基を置換することによって作製した。A、S、Q、D、H、K、L、W、Yを組み込んだ抗体変異体は、可変重鎖の位置59及び60ならびに可変軽鎖の位置79においても作製した。生成したすべての単一置換抗体変異体の完全なリストを
図1(可変重鎖)及び2(可変軽鎖)にそれぞれ示す。
【0110】
1.2. 抗体発現ベクターの構築。アミノ酸配列からDNA配列への逆翻訳によって可変領域変異体を生成し、その後、合成オリゴヌクレオチドを組み立てることによって新規合成した。VH変異体を、ヒト定常領域を含む哺乳類発現ベクターにサブクローニングして、完全長抗体重鎖(ヒトIgG1重鎖CH1、ヒンジ、CH2及びCH3ドメイン)を作製した(例えばUniProt No.P01857)。同様に、VL変異体を、ヒトλ軽鎖定常領域を含む哺乳類発現ベクターにサブクローニングして、完全長抗体λ鎖を作製した(SwissProt No.P0CG05.1)。いくつかの例では、完全長重鎖、及び別個に軽鎖をDNA配列に逆翻訳し、その後、合成オリゴヌクレオチドを組み立てることによって新規合成した。
【0111】
1.3. 抗体変異体の発現。抗体重鎖及び軽鎖をEXPI293(登録商標)細胞(Life Technologies、カールスバッド、カリフォルニア)に同時形質移入することにより、抗体を産生した。形質移入の前日に、実験に必要な細胞数を決定した。各20mLの形質移入に対し、20mLのEXPI293(登録商標)発現培地中に3.6×107個の細胞が必要であった。形質移入の前の日に、細胞を0.9×106生存細胞/mLの密度で播種し、200rpmで回転するオービタルシェーカー上で、空気中8%CO2の加湿雰囲気下で37℃、一晩インキュベートした。形質移入の日に、細胞数及び生存率を、自動細胞カウンターを用いて測定した。98%を上回る生存細胞を含む培養物のみを使用した。各20mLの形質移入に対し、OPTI‐MEM(登録商標)(Life Technologies、カールスバッド、カリフォルニア)I還元血清培地(カタログ番号31985‐062)中の10μgの重鎖DNA及び10μgの軽鎖DNAを全量1.0mLになるまで希釈することにより、脂質‐DNA複合体を調製した。54μLのEXPIFECTAMINE(登録商標)293試薬(Life Technologies、カールスバッド、カリフォルニア)をOPTI‐MEM(登録商標)I培地中で全量1.0mLに希釈した。両方のバイアルを穏やかに混合し、室温で5分間インキュベートした。インキュベーション後、希釈したDNAを希釈したEXPIFECTAMINE(登録商標)293試薬及びDNA‐EXPIFECTAMINE(登録商標)293試薬混合物と混合し、室温でさらに20分間インキュベートしてDNA‐EXPIFECTAMINE(登録商標)293試薬複合体を形成できるようにした。インキュベーション後、2mLのDNA‐EXPIFECTAMINE(登録商標)293試薬複合体を、各50mLのバイオリアクターチューブ(TPP Techno Plastic Products AG)に添加した。陰性対照チューブに、DNA‐EXPIFECTAMINE(登録商標)293試薬複合体の代わりに2mLのOPTI‐MEM(Life Technologies、カールスバッド、カリフォルニア)I培地を加えた。細胞を、37℃インキュベーター内において、空気中8%CO2の加湿雰囲気下、200rpmで回転するオービタルシェーカー上でインキュベートした。形質移入のおよそ16~18時間後、100μLのEXPIFECTAMINE(登録商標)293 Transfection Enhancer 1及び1.0mLのEXPIFECTAMINE(登録商標)293 Transfection Enhancer 2を各バイオリアクターに加えた。形質移入のおよそ72時間後に抗体を回収した。
【0112】
1.4. 抗体変異体の精製。各抗体変異体を、20mLの細胞培養物中のEXPI293(登録商標)細胞で発現させた。培養物を50mLのファルコンチューブ中で3000×gで20分間スピンダウンし、上清を、0.22μmフィルター(Corning)を用いて濾過した。Gilson ASPEC GX274ロボットを用いて上清を精製した。簡潔に述べると、1.2mLのMABSELECT SURE(登録商標)プロテインA(GE Healthcare Bio‐Sciences AB ウプサラ、スウェーデン)樹脂を充填したSPEカートリッジ(Agilent、12131014)を3カラム容量の1×PBSで予め平衡化した。18mLの上清をカラム上に流し、続いて4mLの1×PBS洗浄を行った。各カラムを0.9mLの0.1Mクエン酸(pH2.9)で予備溶出した。精製した抗体を2mLの0.1Mクエン酸(pH2.9)で溶出した。PD‐10カラム(GE Healthcare)を用いて、抗体をSorensens PBS(59.5mM KH2PO4、7.3mM Na2HPO4・2H2O、145.4mM NaCl(pH約5.8))中へ脱塩した。
【0113】
1.5. SPRによって測定する抗体の発現及び抗原結合。CM5センサーチップ(GE Healthcare)を使用して、アミンカップリングキット(GE Healthcare)を使用してチップ表面にプロテインA(Pierce)をカップリングさせた。BIACORE(登録商標)T200を用いて、プロテインAをフローセル1及び2(あるいは、3及び4)に結合させた。抗体、あるいは(1.4に記載するように)精製抗体を含むEXPI‐293(登録商標)細胞由来の上清をフローセル2の表面に通し、一方、フローセル1には緩衝液(HBS‐EP)を通過させた。捕捉段階中に注入した上清または精製タンパク質の量(ならびに濃度)は、試行ごとに様々に異なり、それらは表3~11の見出しに記載されている。上清または精製抗体の注入終了時に、応答単位の変化を測定した。この値は、表3~11中に捕捉レベルとして報告した。抗体がTL1Aに結合したかどうかを判定するために、次いでTL1Aをフローセル1及び2に通し、応答単位をTL1Aの注射終了前に測定した(会合フェーズ)。この値は、表3~11中にTL1A結合レベル(早期)としてラベル付けしている。応答単位は、解離段階の終了前に測定した。この値は、表3~11中にTL1A結合レベル(後期)としてラベル付けしており、これはTL1A‐抗体複合体の解離の結果としてチップの表面から失われた抗体の量の尺度である。センサーグラムは二重に参照した(フローセル2をフローセル1及び緩衝液ブランクから差し引く)。スクリーニングする抗体変異体が多数存在するため、異なる実験でこれらをスクリーニングした(表3~11)。いずれの場合においても(実験3を除く)、比較のために親抗体320‐179を実験に含めた。各実験で使用する条件の概要は下記のとおりである:
【表1】
【0114】
異なる種のTL1Aに対する抗TL1Aの結合も、SPRを用いて測定した。抗TL1A抗体をプロテインAの表面に捕捉した。ヒト、ラット、マウス、ウサギ、モルモット、ブタ、イヌ、ネコまたはカニクイザルのいずれか由来のTL1Aを表面に流し、応答単位を測定した。
【0115】
1.6. TL1Aの産生。ヒトTL1Aは、N末端に位置するHIS及びFLAGタグを有するヒトTL1Aの細胞外ドメイン(ECD)をコードするDNA発現構築物を用いて、哺乳類EXPI293(登録商標)発現系で産生した。TL1Aの他の種の形態は、公表されているデータベースの配列表に基づいて生成した。これらを以下にまとめる:
【表2】
【0116】
分泌したTL1Aタンパク質を含有する培養上清を、2000×g、10分間の遠心分離によって回収し、細胞を除去した。TL1Aタンパク質を、HISTRAP(登録商標)HPカラム(GE Healthcare)を用いて上清から精製した。溶出したタンパク質を、HILOAD(登録商標)16/60 Superdex 200 prepグレードカラム(GE Healthcare)を用いてPBSにバッファー交換し、約70kDaの画分をHILOAD(登録商標)26/60 SUPERDEX(登録商標)200プレップグレードカラム(GE Healthcare)上でのゲル濾過によって分離した。
【0117】
1.7. TF‐1細胞株力価アッセイ。どの抗TL1A抗体がTL1Aの生物学的活性を機能的に中和するかを判定するために、TF‐1細胞株におけるTL1A誘発アポトーシスを中和する能力について、抗体を試験した。TF‐1ヒト赤白血病細胞株(ATCC:CRL‐2003)を標準条件下で培養した。TF‐1細胞(7.5×104個/ウェル)を、黒側面の96ウェルプレート(Greiner)中、100ng/mlのヒトTL1A及び10μg/mlのシクロヘキシミドの存在下でインキュベートして、アポトーシスを誘導した。10μg/mL(66.7nM)以下の濃度の試験抗体をプレートに添加し、4~5時間インキュベートした。その後、アポトーシスの誘導を、Homogeneous Caspases Kit(Roche)を用いて、製造元の指示書に従って評価した。
【0118】
データを、最大アポトーシス(抗TL1A抗体の非存在下で、ヒトTL1A+シクロヘキシミドにより達成するアポトーシスレベル)に対する割合として表現することによって正規化した。
【0119】
1.8. 鉛抗体の受容体選択性。TL1Aは、同族のシグナル伝達受容体DR3と、TNFファミリーメンバーFas‐L及びLIGHTのデコイ受容体としても働くデコイ受容体DcR3の両方に結合する。競合ELISAにおいてその受容体へのTL1Aの結合を阻害する能力について、抗体を評価した。96ウェルプレート(Maxisorp、Nunc)上にDR3/Fcキメラ(R&D Systems)またはDcR3/Fcキメラ(R&D Systems)を2μg/mlの濃度でコーティングした。系列希釈した試験抗体を、1μg/mlの単一部位ビオチン化ヒトTL1Aとともに30分間プレインキュベートし、次いで、DR3/FcまたはDcR3/Fcをコーティングしたウェルにこれらを添加した。結合したTL1Aを、1:2000希釈したストレプトアビジン‐西洋ワサビペルオキシダーゼ(BD Pharmingen)を用いて検出した。データは、抗TL1A抗体の非存在下でのTL1Aの受容体への最大結合の割合として表現することによって正規化した。
【0120】
1.9. 結合平衡除外法。本アッセイは、平衡を摂動させることなく、結合パートナーの1つの遊離濃度を測定する。溶液は、溶液中の未修飾タンパク質を用いてオフラインで調製することができ、混合してから後日、親和性測定値を読み取って、平衡に到達したことを確定できる。結合平衡除外法では、一方の相互作用物質(定常結合パートナー、またはCBPと呼ばれる)を一定の濃度に保持し、他方(滴定剤と呼ばれる)を系列希釈する。結合平衡除外法を用いて、抗体‐抗原相互作用の解離定数(KD)及び親和性を測定し得る。一般的な結合平衡除外法では、滴定剤をビーズ(例えば、セファロースまたはPMMAビーズ)に固定化し、これを用いて溶液中の遊離CBPを捕捉する。捕捉したCBPの量を、二次標識プローブを用いて定量する。結合平衡除外法は、Darling,RK et al.(2004)ASSAY and Drug Development Technol.2(6):647‐57に概説されている。
【0121】
成分を混合し、平衡へ到達可能にした。次に、結合平衡除外法を用いて、CBPの遊離画分を測定した。複数のCBP濃度を有する平衡曲線を、KinExA(登録商標)Proソフトウェア(バージョン4.1.11、Sapidyne)内のn曲線解析ツールを用いて解析して、ロバスト性の高いKD測定結果を得た。320‐587のヒトTL1Aに対する相互作用を、以下の2つの方向性から検討した:(1)CBPが320‐587であり、滴定剤がTL1Aである、及び(2)CBPがTL1Aであり、滴定剤が320‐587である。
【0122】
実施例2
実験結果
2.1. C320‐179に比べて解離速度が同等または向上したTL1A結合変異体の選択。抗体320‐179の変異体を構築し、上記のように発現させた。各変異体のEXPI293(登録商標)(Life Technologies Corp.)上清をBIACORE(登録商標)(GE Healthcare)により評価し、得られたデータを親抗体320‐179のデータと比較した。いくつかの実験では、抗体を、プロテインAクロマトグラフィー(1.4参照)を用いて精製し、精製抗体をBIACORE(登録商標)(GE Healthcare)実験で使用した。表3~11は、各変異体の発現レベルを、早期及び後期の時点でのTL1Aへの結合とともに示す。後の実験(表10及び11)では、2つ以上のアミノ酸置換を含む抗体変異体を試験した。
【表3】
【表4A】
【表4B】
【表5A】
【表5B】
【表6A】
【表6B】
【表7A】
【表7B】
【表8A】
【表8B】
【表9A】
【表9B】
【表9C】
【表10】
【表11】
【0123】
320‐179と同等か、またはより優れた捕捉レベル、ならびに同等範囲のTL1A結合レベル(早期)及びTL1A結合レベル(後期)値を有する抗体を、力価アッセイに進行させた。これらの変異体は、表3~11に陰影表示で示す。いくつかの抗体についてSPRによって測定した解離速度の比較を
図5に示す。抗体のいくつかは、親抗体320‐179の解離速度よりも遅い速度で解離した。
【0124】
2.2 細胞ベースのアッセイで力価が向上した抗TL1A抗体。解離速度の向上が、力価の向上した精製抗体と相関するかどうかを評価するために、変異体をTF‐1細胞におけるTL1A誘導カスパーゼ活性アッセイで試験した。強力な抗体は、TL1Aに結合し、DR3受容体のTL1A活性化を阻害することによって作用する。この受容体は、カスパーゼを活性化し、市販の試薬を用いて検出することができるアポトーシス経路を誘発する。各実験において、力価の倍増率について抗体変異体を320‐179と比較した。結果を表12に示す。
【表12A】
【表12B】
【0125】
**10倍以上の力価の倍増率を有する抗体のいくつかを、最大n=7のアッセイで実施した。結果はこの表に示すデータと一致した。
図7は、320‐179に比べて力価が向上したいくつかの抗体のn=4反復を示す。
【0126】
表12及び
図6に示すように、試験した単一置換抗体のいくつかは、320‐179に比べて優れた力価を有していた。試験したすべての単一置換抗体変異体のうち、2つは、320‐179と比較した場合に10倍を超える力価の向上を示した。これらの変異体は320‐331(可変軽鎖にY91W置換を含む)及び320‐547(可変重鎖にN56Y置換を含む)であった(
図6)。通常、抗体VHのCDR3は主に抗体結合に関与し、一方、対照的に、同定したN56Y置換は、抗体VHのCDR2に存在する結合に実質的な影響を及ぼすことから、この結果は予想外なものである。変異体が、VL由来のY91W、または別個のVH中のN56Yのいずれかを、力価を向上させる他の置換とともに組み入れて作製した場合、非常に強力な抗体が得られた。Y91W VL置換をN56Y VH置換と組み合わせて1つの抗体320‐587にした場合、320‐179に比べての向上した力価の倍増率は40であった。
図7は、4つの異なる反復実験を示し、4つの抗体320‐587、320‐591、320‐592、及び320‐601が320‐179に比べて力価が向上していることを示す。320‐179に比べて力価が向上したこれらの抗体の配列を
図3(可変重鎖)及び
図4(可変軽鎖)に示す。
【0127】
以前に記載した他の抗TL1A抗体に対する320‐587の力価の比較を行った。これらの以前に記載した抗体として、米国特許第8,642,741号に記載される抗体1681N(VHは配列番号18;VLは配列番号26)、米国特許公開第2014/0308271号の抗体VH5/VL1(VHは配列番号24;VLは配列番号17)、米国特許第8,263,743号に記載されるヒト化1B4(VHは配列番号74;VLは配列番号75)、及び米国特許公開第2014/0255302A1号に記載される320‐168(C320‐168とも呼ばれる)(VHは配列番号181;VLは配列番号194)が挙げられる。
図8は、細胞ベースのアッセイにおいて320.587が前述の抗体に比べて優れた力価を有し、最も強力な抗TL1A抗体であることを示している。
【0128】
2.3. DR3及びDcR3受容体競合アッセイ。320‐179に比べて向上した力価を示す抗体を、その同種シグナル伝達受容体DR3またはデコイ受容体DcR3へのTL1A結合を阻害する能力についてスクリーニングした。試験したすべての抗TL1A抗体は、アイソタイプ対照と比較した場合に、DR3へのTL1Aの結合の阻害を示した(
図9)。このことは、抗体がTL1A‐DR3相互作用をブロックすることによってTL1A活性を阻害することを裏付けている。
【0129】
米国特許公開2014/0255302A1号に記載される以前の実験(実施例4)では、受容体競合アッセイにおいて、抗体320‐179(320‐179)を試験し、DcR3ではなくDR3に対するTL1Aの結合を選択的に阻害することが示された(
図10)。本明細書の
図10に示す実験において、320‐179がTL1A‐DcR3相互作用を阻害しないことが再度示されている。これは、試験した改良した抗TL1A抗体とは対照的である。抗体320‐587を含む、TF‐1細胞アッセイ(2.2節に記載されるような)において力価の向上が認められた抗体は、一貫してTL1A‐DcR3相互作用を阻害した。
【0130】
まとめると、親抗体320‐179は、TL1A‐DR3相互作用を阻害することができたが、TL1A‐DcR3相互作用を阻害することはできなかった。320‐267(VHは配列番号1;VLは配列番号11)、320‐277(VHは配列番号1、VLは配列番号12)、320‐278(VHは配列番号1;VLは配列番号13)及び320‐591(VHは配列番号3、VLは配列番号9)などの向上した力価を有するいくつかの抗体は、TL1a‐DR3相互作用を阻害したが、TL1A‐DcR3相互作用は阻害しなかった。320‐331、320‐547、320‐583、320‐584、320‐585、320‐586、320‐587及びこれらの抗体の変異体などの向上した力価を有するいくつかの抗体は、TL1A‐DR3及びTL1A‐DcR3相互作用の両方を阻害することができる。
【0131】
2.4. 320‐587の種交差反応性を、異なる種から組換え産生したTL1Aに結合するその能力について試験した。抗体は、試験したすべての種由来のTL1Aに対して結合した(
図11)。ヒト、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、カニクイザルTL1Aへの320‐587の結合は、解離速度が遅く、高い親和性相互作用を示した。抗体は、マウス及びウサギTL1Aに結合し、速い解離速度を有していた。
【0132】
2.5. 以下の動物疾患モデルにおける抗TL1A抗体の試験用の前臨床有効性モデル:
喘息:アレルゲン誘発喘息―げっ歯類(マウス、ラットまたはモルモット)をオボアルブミン(OVA)、特にニワトリ卵由来のOVA、及びミョウバンを皮内注射により感作し、次いで少なくとも2週間後に、エアロゾル化したOVAによりチャレンジし、気道過敏、好酸球の流入及びサイトカイン産生の増加を含む喘息様症状を引き起こす(例えば、Hylkema et al.,2002,Clin.Exp.Immunol.129:390‐96)。そのようなモデルは、チャレンジを反復することで改変することができ、気道リモデリング及び線維化誘導の増加を伴う、より慢性の疾患特性を提示する(例えば、Bos et al.,2007,Eur.Respir.J.30:653‐661)。チリダニのような別のアレルゲンもまた、使用してもよい(例えば、Lambert et al.,1998,Am.J.Respir.Crit.Care Med.157:1991‐9)。あるいは、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)を、Ascaris suumなどの環境抗原で感作し、チャレンジして、気道過敏、好酸球の流入及びサイトカイン産生の増加を誘導してもよい(例えば、Wegner et al.,1991,J.Allergy Clin.Immunol.87:835‐41)。
【0133】
COPD:煙吸引誘発性気道炎症―げっ歯類(マウス、ラットまたはモルモット)を週3~7回、タバコ煙に少なくとも4週間曝露させ、好中球の肺蓄積、炎症性サイトカイン産生の増大、肺線維症及び肺高血圧症を特徴とするCOPDと同様の肺疾患を引き起こす(例えば、Davis et al.(2012)PLoS One 7:e33304)。煙への曝露中に肺への反復的な細菌またはウイルス感染を含めることによって、より深刻な形態の疾患を誘導してもよい(例えば、Li et al.(2012)Biol.Pharm.Bull.35:1752‐60)。煙誘発性COPDを有するげっ歯類を抗TL1A抗体で処置し、治療効果についてスクリーニングを行う。
【0134】
肺線維症:ブレオマイシン誘発性肺線維症―げっ歯類(マウス、ラットまたはモルモット)を、ブレオマイシンの気管内/鼻腔内点滴または静脈内注射のいずれかで週に1~2回、少なくとも3週間処置する。この処置は、有意かつ安定な肺線維症を誘発する(例えば、Pinart et al.(2009)Resp.Physiol.Neurobiol.166:41‐46)。ブレオマイシン誘発性肺線維症を有するげっ歯類を抗TL1A抗体で処置し、治療効果についてスクリーニングを行う。
【0135】
嚢胞性繊維症:CFTRノックアウトフェレットモデル―CFTR(嚢胞性線維症の原因遺伝子)の遺伝子ノックアウト、または公知の疾患関連変異に関してホモ接合性のフェレットは、気道の粘液閉塞、無気肺、間質性肺炎及び進行性の肺細菌のコロニー形成による反復肺感染を特徴とする嚢胞性繊維症様の疾患を自然発症的に発症した(例えば、Sun et al.(2014)Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.50:502‐12)。CFTR-/-フェレットを抗TL1a抗体で処置し、治療効果についてスクリーニングを行う。
【0136】
過敏性腸症候群:ストレス誘発性内臓過敏症―新生児‐母系分離(例えば、Coutinho et al.(2002)Am.J.Physiol.Gastrointest.Liver Physiol.282:G307‐16)または成体の拘束(例えば、Shen et al.(2010)J.Neurogastroenterol.Motil.16:281‐90)のいずれによってラットにストレスを誘導する。これはIBS患者で観察されたものと同様の結腸運動性の変化及び内臓過敏性を生じると予想される。ストレスを与えたラットを抗TL1A抗体で処置し、治療効果についてスクリーニングを行う。
【0137】
リウマチ様関節炎:コラーゲン誘発性関節炎―げっ歯類(マウス、ラットまたはモルモット)を免疫化し、アジュバント中のコラーゲンで追加免疫する。動物は、両側の足の腫脹及び紅斑、関節領域への炎症性浸潤、ならびに関節損壊を生じる(例えば、Bendele et al.(1999)Toxicol.Pathol.27:134‐42)。コラーゲン誘発性関節炎を有するげっ歯類を、抗TL1A抗体で処置し、治療効果についてスクリーニンを行う。
【0138】
好酸球性食道炎:鼻腔内Aspergillus fumigatus誘発性好酸球性食道炎。A.fumigatisの反復的な鼻腔内点滴に曝露したマウスは、顕著な食道好酸球増加症、上皮異形成及び過形成、ならびに遊離好酸性顆粒を生じる(例えば、Mishra et al.(2001)J.Clin.Invest.107:83‐90)。同様に、感作モルモットにおけるオボアルブミンへのエアロゾル曝露を2週間にわたり繰り返すことにより、好酸球及び肥満細胞の両方が上皮層に浸潤した食道好酸球増加症を引き起こす(例えば、Liu et al.(2015)Am.J.Physiol.Gastrointest.Liver Physiol.308:G482‐488)。好酸球性食道炎のマウスまたはモルモットを、抗TL1A抗体で処置し、治療効果についてスクリーニングを行う。
【0139】
2.6. 本開示のTL1A抗体を含有する試料を検出する際に、TL1A抗体を用いてヒト試料中のTL1Aを検出することができる。免疫複合体で刺激したヒトPBMCから分泌されたヒトTL1Aを、ELISAフォーマットにおいて320‐587を用いて検出した(
図13)。また、表面上に膜TL1Aを発現するヒトPBMCの集団を、フローサイトメトリー実験において320‐587を用いて検出した(
図14)。
【0140】
2.7. 結合平衡除外法によるヒトTL1Aに結合する抗TL1A抗体の親和性測定。CBPとして320‐587を用いた場合の平衡到達時間:まず、320‐587/TL1A相互作用のKon速度を測定した。簡潔に述べると、320‐587及びTL1Aを混合することによって溶液を調製し、3時間にわたって様々な時点でアリコートを除去した。20μg/mLのTL1Aでコーティングしたセファロースビーズを充填したカラムに溶液を通すことにより、遊離の320‐587を捕捉した。捕捉した320‐587を、Alexa Fluor(登録商標)647結合抗ヒト抗体(0.5μg/mL)で検出した。このアッセイを2回繰り返して、8.35×105Ms‐1及び7.45×105Ms‐1のKon速度が得られ、平均Kon速度は7.90×105Ms‐1であった。次いで、このKon速度を使用して、Sapidyneウェブサイト(www.Sapidyne.com)に提供される理論的結合曲線ツールを用いて、様々な濃度の320‐587が平衡に達するのに必要な時間量を推定した。
【0141】
CBPとして320‐587を用いたKD測定。CBPである320‐587を、アッセイ緩衝液(1mg/mlのBSAを補充したDPBS)中で、15、50及び150pMの最終濃度に希釈した。滴定剤であるヒトTL1Aをアッセイ緩衝液中に希釈して、0.1、0.3、1、3、10、30、100、300、1000及び3000pMの濃度系列を作成した。上記で測定した平衡に到達するまでの時間を用いて、320‐587を50または150pMのいずれかの濃度で含む場合の曲線を、25℃のインキュベーター内で2日間経過させることにより平衡化した。15pMの320‐587を含む場合の曲線は、25℃のインキュベーター内に3日間で平衡に到達した。平衡化期間の後、各反応における320‐587の遊離画分を上記のように定量した。15、50及び150pMの320‐587で生成した平衡曲線のn曲線解析を用いて、KD値を決定した。
【0142】
CBPとしてTL1Aを用いた場合の平衡到達時間:この方向での平衡に到達するまでの時間を、上記の2.8に記載のように測定した320‐587/TL1A相互作用のKonを用いて推定した。このフォーマットにおいて、30μg/mLの320‐587でコーティングしたPMMAビーズを充填したカラムに溶液を通すことによって、TL1Aの遊離画分を捕捉した。捕捉したTL1Aを、抗6×his DyLight650抗体(0.75μg/mL)で検出した。このアッセイを2回繰り返し、Kon速度6.11×105Ms‐1及び5.74×105Ms‐1が得られ、平均Kon速度は5.93×105Ms‐1であった。
【0143】
CBPとしてTL1Aを用いたKD測定:CBPであるヒトTL1Aをアッセイ緩衝液中において、30、100及び300pMの最終濃度に希釈した。滴定剤320‐587をアッセイ緩衝液中で希釈して、0.05、0.15、0.5、1.5、5、15、50、150、500、1500及び5000pMの濃度系列を作成した。
【0144】
上記の平衡に到達するまでの時間を用いることにより、25℃のインキュベーター内に3日間で、すべての曲線が平衡状態に到達することができた。平衡化期間後、各反応におけるTL1Aの遊離画分を上記のように定量した。30、100及び300pMのTL1Aを用いて生成した平衡曲線のn曲線解析を用いて、KD値を決定した。
【0145】
2つのKinExA法の間に良好な一致が観察されただけでなく、相対的に低い誤差率も観察された。CBPとして320‐587を用いて測定したTL1Aと320‐587との相互作用のK
D値は40.97±8.33pMであり(表13)、一方、TL1AをCBPとして用いて得られたK
Dは41.52±13.5pMであった(表14)。
【表13】
【表14】
【0146】
3.0. 抗TL1a抗体を試験するための前臨床効果モデル
3.0.1. 喘息
ラットの急性オボアルブミン誘発性喘息。Brown‐Norwayラットを、OVAを用いて0日目に腹腔内注射で感作し、次いで35~42日目にOVAエアロゾルを用いて毎日チャレンジした。抗体320‐587またはビヒクルを用いて、14、21、28及び35日目にラットを静脈内注射で処置した。43日目の全細胞及び差分の細胞について、気管支肺胞洗浄液(BALF)を評価した。処置により、BALFの好酸球が有意に減少することが判明した(
図15)。
【0147】
ラットの慢性卵白アルブミン誘発性喘息。ラットに、OVA+ミョウバンを0日目及び7日目に腹腔内注射で感作させ、次いで、14日目~31日目に開始して3週間にわたって週2回、及び37日目から42日目まで5日間連続で、OVAエアロゾルでチャレンジした。24、29、34及び39日目に静脈内投与により、動物を抗体320‐587またはビヒクルで処置した。43日目の全細胞及び差分の細胞、ならびにサイトカインのパネルについてBALFを評価した。肺切片をヘマトキシリン及びエオシン(H&E)、ならびに過ヨウ素酸シッフ(PAS)で染色し、病変の範囲について評価した。320‐587を用いた処置により、BALF好酸球及びマクロファージ(
図17A及び17B)、BALF IL‐4及びIL‐13(
図17C)、杯細胞過形成(
図17D)ならびに気管支上皮層の厚さ(
図17E)が、ビヒクルに比べて有意に減少した。
【0148】
モルモットにおける急性オボアルブミン誘発性喘息。雄のDunkin Hartleyモルモットをオボアルブミンに感作させ、その後、バルーンカテーテルを設置する手術を施し、肺機能及び早期及び遅発型喘息反応を測定した。16、20、24及び28日目に、動物を抗体320‐587またはビヒクルを用いて腹腔内投与により処置した。最後の処置から30分後に、オボアルブミン(0.05~0.1%)エアロゾルによるチャレンジを実施した。チャレンジの24時間前、チャレンジの6時間後(早期喘息反応の直後)及びチャレンジの24時間後(遅発型喘息の直後)に、ヒスタミンへの気道反応性(AHR)を測定した。早期喘息反応及び遅発型喘息反応の性質及び大きさは、全24時間にわたる肺機能のオンライン登録によっても記録した。チャレンジの25時間後に動物を屠殺し、気管支肺胞洗浄を行った。全細胞及び差分の細胞についてBALFを評価した。320‐587の処置により、ビヒクルに比べて、BALF中の好酸球及びマクロファージの両方が有意に減少し(
図16A及び16B)、ならびに早期喘息反応後のAHR(
図16C)、及び早期喘息反応の全体的な強度が改善した(
図16D)。
【0149】
モルモットにおける慢性卵白アルブミン誘発性喘息。雄のDunkin Hartleyモルモットをオボアルブミンに感作させ、その4週間後に、オボアルブミンを12週間にわたってチャレンジした。オボアルブミンによるチャレンジ(0.05~0.5%)は、エアロゾル化した溶液の吸入によって気道閉塞が観察されるまで実施した。オボアルブミン曝露から8週目に開始して5日ごとに、動物を、抗体320‐587またはビヒクルの腹腔内投与によって処置した。最初のチャレンジの前、最後のチャレンジの24時間前、及び最後のチャレンジの6時間後に、気道機能を、ヒスタミンに対する気道応答性によって測定した。ヒスタミンチャレンジによって誘導したAHRに対する効果は観察されなかったが、気道閉塞を誘発するために漸増用量のOVAが必要であったため、抗体320‐587はOVAに対するアレルギー応答を有意に減少させた(
図18)。
【0150】
モルモットにおける急性及び慢性喘息モデルで観察される抗体治療効果の相違は、モデル自体の機能であると考えられる。慢性モデルでは、AHRの程度は経時的に減少し、したがって、治療に対して応答性が低下すると考えられている。当該技術分野では、急性モデルは一般に気道反応性に対する化合物の影響を観察するために使用され、慢性モデルは一般に気道リモデリングに対する化合物の影響を観察するために使用される。リモデリングの評価は進行中である。それにもかかわらず、アレルゲンに対する応答に影響を及ぼす抗体を観察したことは驚くべきことであった―抗体は、この段階で絶対的なAHR(ヒスタミンに対する応答)に実質的に影響を与えなかったものの、抗原に対する直接アレルギー応答を有意に減少させた。
【0151】
3.0.2. 炎症性腸疾患
ラットにおけるTNBS誘発性大腸炎:エタノール中のトリニトロベンゼンスルホン酸の直腸内注入量の単回投与により、ラットを処置した。対照動物には等量のエタノールのみを与えた。7日間の間隔にわたって、動物は、炎症性浸潤及び様々な程度の線維症を伴う結腸の潰瘍形成を特徴とする局所性大腸炎を発症した(例えばWirtz et al.(2007)Nat.Protoc.2:541‐546)。320‐587を投与することにより、結腸の厚さ(
図12A)、癒着の数及び重症度(
図12B)、ならびに狭窄の数及び重症度(
図12C)を含む多発性疾患の指標が有意に低下し、ビヒクル、またはアイソタイプが一致する無関係の抗体のいずれかで処置した動物に比べて、疾患の発症は有意に軽度であった(
図12D)。結腸線維症の軽減(
図19)も、320.587処置動物において観察された。
【0152】
ラットのDNBS誘発性大腸炎における7及び14日後の疾患の比較。TNBSの代わりにジニトロベンゼンスルホン酸(DNBS)を用いて上記のように大腸炎を誘導し、また、DNBS実験に用いたラットはWistarラットであった。1及び8日目に静脈内投与により、動物を抗体320‐587またはビヒクルで処置した。DNBS後7及び14日目に大腸炎について群を評価し、疾患の重篤度について2つの時点の間で比較した。抗体320‐587による処置は、7日目においては限定された効果を示すに過ぎなかったが、14日目までに、抗体320‐587で処置した動物は、結腸の重量及び長さ(
図20A)、線維症(
図20B)、炎症浸潤物(
図20C)ならびに結腸の損傷(
図20D)において有意な改善を示した。潰瘍領域の結腸の代表的な切片(
図20E)は、損傷修復の程度及び14日間における線維症の減少を示している。7及び14日目の両方で、ビヒクル処置動物は広範な炎症性浸潤及び線維症を示し、腸構造の有意な喪失を示した。対照的に、320‐587処置動物は、7日間で有意な炎症性浸潤、線維症及び腸構造の喪失を示したが、これらの効果は、14日目までに大きく逆転した。
【0153】
TNBS及びDNBSモデルで観察した抗体治療効果で観察した相違は、異なる系統のラットの使用から生じると考えられる(TNBSについてはSprague‐Dawley、それに対し、DNBSについてはWistar)。各ラット系統は、免疫学的チャレンジに対する応答において差異を有し、その結果、これらのモデルにおける応答の反応速度は異なると考えられる。同様に、TNBS及びDNBSは構造的に異なっており、異なる疾患状態を誘発すると考えられる。
【0154】
ラットにおける慢性(21日)DSS誘発大腸炎。デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を5%w/vの濃度で含む飲料水をラットに7日間与え、次いで2%w/vの濃度で含む飲料水をさらに14日間与えた。動物は、下痢、びまん性結腸炎症、杯細胞過形成、ならびに陰窩上皮損傷及び潰瘍を発症した(例えば、Randhawa et al.(2014)Korean J.Physiol.Pharmacol.18:279‐88)。5、12及び19日目に静脈注射により抗体320‐587またはビヒクルでラットを処置した。毎日、動物を秤量し、臨床的疾患(下痢及び潜血)について評価し、21日目に結腸重量及び長さを評価した。抗体320‐587処置は、体重増加に対するDSS誘発性減速を有意に逆転させ(
図21A)、疾患の臨床的徴候を有意に寛解し(
図21B)、結腸の重量及び長さを有意に改善した(
図21C)。
【0155】
組換えヒトTL1Aによる腹腔内サイトカインの誘導。組換えマウスTL1Aの腹腔内注射により、IL‐5などの炎症性サイトカインの産生を誘導することができる。この試験では、抗体320‐587またはビヒクルのいずれかを単回投与したマウスを、その1時間後に、40μg/マウスの組換えヒトTL1A(rhTL1A)で処置した。rhTL1A投与の6時間後に、腹腔洗浄を行い、多重アッセイによってサイトカイン及びケモカインについて腹腔液を評価した。抗体320‐587による処置は、サイトカインG‐CSF、IL‐1b、IL‐5、IL‐6、IL‐17、及びケモカインIP‐10、KC、MCP‐1、MIP‐1a、MIP‐1b、MIP‐2の腹膜濃度を有意に低下させた(
図22)。
【0156】
本開示は、上記に記載及び例示する実施例に限定するものではなく、添付の特許請求の範囲内において、変形及び改変が可能である。
皮下に投与することを含む、被験体における呼吸器疾患、胃腸疾患、関節炎、または皮膚疾患の治療における使用のための、配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR1、配列番号21のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR2、配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3、配列番号18のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR1、配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR2、及び配列番号22のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む、TNF様リガンド1A(TL1A)に特異的に結合する組換え抗体であって、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体に比べて、少なくとも10倍高い力価の向上した力価を有し、前記力価は、TF‐1細胞(7.5×104個/ウェル)を、100ng/mlのヒトTL1A及び10μg/mlのシクロヘキシミドと共にインキュベートする、TF‐1細胞におけるTL1A誘導性カスパーゼ力価アッセイによって測定される、組換え抗体。
配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する抗体に比べて、少なくとも約40倍高い力価の向上した力価を有し、前記力価は、TF‐1細胞におけるTL1A誘導性カスパーゼ力価アッセイによって測定される、請求項1に記載の組換え抗体。
前記ヒトIgG1重鎖定常領域が、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、または配列番号66を有する、請求項3に記載の組換え抗体。
呼吸器疾患、喘息、COPD、肺サルコイドーシス、アレルギー性鼻炎、肺線維症、嚢胞性線維症、胃腸疾患、炎症性腸疾患、大腸炎、潰瘍性大腸炎、好酸球性食道炎、嚢胞性線維症に関連する胃腸疾患、過敏性腸症候群、クローン病、関節炎、関節リウマチ、皮膚疾患、アトピー性皮膚炎、湿疹、または強皮症の治療における使用のための、請求項1から11のいずれか一項に記載の組換え抗体。