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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051776
(43)【公開日】2022-04-01
(54)【発明の名称】賦形剤及び錠剤
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/06 20060101AFI20220325BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220325BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220325BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220325BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220325BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
C11D17/06
A61K47/36
A61K47/38
A61K9/20
A61K47/26
C11D7/26
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008665
(22)【出願日】2022-01-24
(62)【分割の表示】P 2018525160の分割
【原出願日】2017-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2016128150
(32)【優先日】2016-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】516194033
【氏名又は名称】株式会社日本抗菌総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100208889
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 教子
(72)【発明者】
【氏名】富士野 彰宏
(57)【要約】
【課題】本発明は、粉末状の洗剤、粉末状の薬剤などの機能性粉末を水又は体内において速やかに崩壊可能な錠剤とすることができる賦形剤を提供する。
【解決手段】本発明の賦形剤は、粉末を錠剤化するための賦形剤であって、でんぷんと、結晶セルロースと、マルチトール、イソマルト、マルトース及びラクトースからなる群から選ばれた一種以上の硬化剤とを含有することを特徴とするので、粉末を汎用の要領で容易に錠剤化することができ、得られた錠剤は、水に対する溶解性に優れ、錠剤を水中に投入後、速やかに溶解すると共に、優れた硬度を有しており、保管又は輸送時に加えられる外力によって欠けなどの損傷を生じることは殆どなく、所定の形状を概ね保持することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチトール、イソマルト、マルトース及びラクトースからなる群から選ばれた一種以上の硬化剤と、でんぷんと、結晶セルロースとを含有することを特徴とする賦形剤。
【請求項2】
でんぷん100質量部、結晶セルロース5~20質量部及び硬化剤0.2~10質量部を含有していることを特徴とする請求項1に記載の賦形剤。
【請求項3】
でんぷんがタピオカでんぷんであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の賦形剤。
【請求項4】
粉末の錠剤化に用いられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の賦形剤。
【請求項5】
請求項1に記載の賦形剤と、原料となる粉末とを含有していることを特徴とする錠剤。
【請求項6】
粉末の含有量と賦形剤の含有量との比(粉末の含有量/賦形剤の含有量)が6.4以下であることを特徴とする請求項5に記載の錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、賦形剤及び錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗浄剤を錠剤の形態とし、使用時に水に溶解させて用いる洗浄錠剤が提供されている。
【0003】
このような洗浄錠剤としては、例えば、特許文献1に、錠剤が:a)その中に少なくとも一つの型を有する成型体の形の第一相;及びb)前記型の中に接着して含まれる圧縮体の形の第二相からなり、錠剤組成物は主として第二相に濃縮されている一つ又はそれ以上の洗浄活性成分を含み、そして第二相は付加的にバインダーを含むものである、洗濯機での使用に適した多相洗浄錠剤が提案されている。
【0004】
また、医薬の分野において、粉末状の薬剤は、患者が薬剤を服用する時にこぼす虞れがあることや、処方箋で処方した量の薬剤を確実に患者が服用するように、薬剤を錠剤化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO00/04115
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の多相洗浄錠剤は、水への溶解が不十分であり、水への溶解に時間を要するという問題を有している。
【0007】
本発明は、粉末状の洗剤、粉末状の薬剤などの粉末を水又は体内において速やかに崩壊可能で且つ優れた硬度を有する錠剤とすることができる賦形剤及びこの賦形剤を用いて錠剤化された錠剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の賦形剤は、
マルチトール、イソマルト、マルトース及びラクトースからなる群から選ばれた一種以上の硬化剤と、
でんぷんと、
結晶セルロースとを含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の賦形剤によれば、粉末を汎用の要領で容易に錠剤化することができる。そして、得られた錠剤は、水に対する溶解性に優れ、錠剤を水中に投入後、速やかに溶解する。更に、得られた錠剤は、優れた硬度を有しており、保管又は輸送時に加えられる外力によって欠けなどの損傷を生じることは殆どなく、所定の形状を概ね保持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の賦形剤は、でんぷんと、結晶セルロースと、マルチトール、イソマルト、マルトース及びラクトースからなる群から選ばれた一種以上の硬化剤とを含有する。
【0011】
本発明の賦形剤は、粉末を錠剤化するための賦形剤であって、でんぷんと、結晶セルロースと、マルチトール、イソマルト、マルトース及びラクトースからなる群から選ばれた一種以上の硬化剤とを含有する。
【0012】
賦形剤にはでんぷんが含まれている。でんぷんとしては、特に限定されず、例えば、じゃがいもでんぷん、さつまいもでんぷん、とうもろこしでんぷん、タピオカでんぷん、小麦粉でんぷん、米でんぷん、豆でんぷん、葛でんぷん、わらびでんぷん、片栗粉でんぷんなどが挙げられ、タピオカでんぷんが好ましい。なお、でんぷんは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0013】
賦形剤には、結合剤として結晶セルロースが含有されている。「結晶セルロース」とは、天然セルロース系物質を酸で部分的に解重合して精製したものをいい、例えば、メトローズ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒプロメロース、カルメロースナトリウムなどが挙げられる。天然セルロース系物質としては、例えば、木材、竹、麦藁、稲藁、コットン、ラミー、バガス、ケナフ、ビートなどの植物から得られるセルロース、ホヤから得られるセルロース、酢酸菌などのバクテリアから得られるセルロースなどが挙げられる。天然セルロース系物質は、原料として単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。結晶セルロースは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0014】
結晶セルロースの平均重合度は、平均重合度が500以下であることが好ましい。結晶セルロースの平均重合度は、「第14改正日本薬局方」(廣川書店発行)の結晶セルロース確認試験(3)に規定される銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法により測定できる。結晶セルロースの平均重合度は、10~500が好ましく、10~300がより好ましい。結晶セルロースの平均重合度が上記範囲内であると、賦形剤を用いて得られた錠剤は、水中又は体内において優れた崩壊性を有する。
【0015】
結晶セルロースの平均重合度の制御方法としては、例えば、天然セルロース系物質の加水分解処理が挙げられる。加水分解処理によって、天然セルロース系物質内部の非晶質セルロースの解重合が進み、平均重合度が小さくなる。また同時に、加水分解処理により、上述の非晶質セルロースに加え、ヘミセルロース及びリグニンなどの不純物も取り除かれるため、天然セルロース系物質内部が多孔質化した結晶セルロースが得られる。
【0016】
加水分解の方法は、特に制限されないが、酸加水分解、熱水分解、スチームエクスプロージョン、マイクロ波分解などが挙げられる。
【0017】
結晶セルロースの粒子形状(L/D)は、20以下が好ましく、15以下がより好ましく、10以下が更に好ましく、5以下が更に好ましく、5未満が特に好ましく、4以下が最も好ましい。結晶セルロースの粒子形状(L/D)の下限はその定義より1である。
【0018】
結晶セルロースの粒子形状(L/D)は下記の要領で測定された値をいう。先ず、結晶セルロースを1質量%濃度の純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(例えば、日本精機社製の商品名「エクセルオートホモジナイザーED-7」)を用いて回転数15,000rpmで5分間に亘って攪拌して水分散体を作製する。水分散体を純水で希釈して0.1~0.5質量%の分散液とする。この分散液をマイカ上にキャストし、風乾されたものを高分解能走査型顕微鏡(SEM)、又は原子間力顕微鏡(AFM)で結晶セルロースを観察する。観察された結晶セルロースから任意に100個抽出し、各結晶セルロースの観察された方向における長径(L)及び短径(D)を測定して長径(L)/短径(D)を算出し、100個の結晶セルロースの長径(L)/短径(D)の相加平均値を結晶セルロースの粒子形状(L/D)とする。なお、結晶セルロースの長径(L)及び短径(D)は下記の要領で測定される。結晶セルロースを包囲することができる最小径の真円を描く。この真円の直径を長径とし且つ結晶セルロースを包囲し得る最小面積の楕円を描き、この楕円の長径及び短径をそれぞれ、結晶セルロースの長径(L)及び短径(D)とする。
【0019】
賦形剤中における結晶セルロースの含有量は、でんぷん100質量部に対して5~20質量部が好ましく、6~18質量部が更に好ましく、7~16質量部が更に好ましく、8~15質量部が特に好ましく、8~12質量部が最も好ましい。結晶セルロースの含有量が5質量部以上であると、賦形剤を用いて得られた錠剤の硬度が向上する。結晶セルロースの含有量が20質量部以下であると、賦形剤を用いて得られた錠剤の崩壊性が向上する。
【0020】
賦形剤には、硬化剤としてマルチトール、イソマルト、マルトース及びラクトースからなる群から選ばれた一種以上を含有している。硬化剤は、イソマルトを含むことが好ましい。なお、硬化剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0021】
硬化剤は、二種以上が併用される場合、マルチトール、マルトース及びラクトースからなる群から選ばれた一種以上の化合物と、イソマルトとを含むことが好ましい。
【0022】
賦形剤中における硬化剤の含有量は、でんぷん100質量部に対して0.2~10質量部が好ましく、0.3~8質量部が更に好ましく、0.5~5質量部が更に好ましく、0.6~3質量部が特に好ましく、0.7~2質量部が最も好ましい。硬化剤の含有量が0.2質量部以上であると、賦形剤を用いて得られた錠剤の硬度が向上する。硬化剤の含有量が10質量部以下であると、賦形剤を用いて得られた錠剤の崩壊性が向上する。
【0023】
なお、賦形剤には、その物性を損なわない範囲内において、滑沢剤、酵素などの添加剤が含有されていてもよい。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0024】
賦形剤の製造方法は、構成成分を均一に混合することができれば、特に限定されず、例えば、でんぷんと結晶セルロースと硬化剤とを汎用の混合装置を用いて均一に混合することによって製造することができる。
【0025】
賦形剤は、粉末を錠剤化するために用いられる。粉末としては、特に限定されず、例えば、粉末状の洗浄剤、粉末状の薬剤、粉末状の調味料、粉末状の食品、粉末状の健康食品及び粉末状の健康補助食品(サプリメント)などが挙げられる。
【0026】
賦形剤を用いて粉末を錠剤化する方法としては、例えば、原料となる粉末と賦形剤とを混合した後、錠剤化(打錠)すればよい。賦形剤を用いて粉末を錠剤化する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、直接打錠法、乾式顆粒圧縮法などが挙げられる。具体的には、(1)原料となる粉末及び賦形剤と、必要に応じて添加剤とを混合した後、打錠する方法(直接打錠法)、(2)原料となる粉末及び賦形剤と、必要に応じて添加剤とを混合して顆粒を作製し、この顆粒を打錠する方法(乾式顆粒圧縮法)などが挙げられる。このように、上記賦形剤によれば、各種粉末を公知の方法で容易に錠剤化することができる。賦形剤を用いて粉末を錠剤化して得られた錠剤中において、原料となる粉末の含有量と賦形剤の含有量との比(粉末の含有量/賦形剤の含有量)は、6.4以下が好ましい。賦形剤を用いて粉末を錠剤化して得られた錠剤中において、原料となる粉末の含有量と賦形剤の含有量との比(粉末の含有量/賦形剤の含有量)は0.1以上が好ましい。
【0027】
上記賦形剤を用いて得られた錠剤は、水に対して優れた崩壊性を有しているため、例えば、粉末が洗浄剤である場合には、錠剤を例えば、洗濯機に投入するだけで速やかに崩壊し、洗浄剤を水に溶解させることができるので、洗浄剤の洗浄効果を良好に発揮させることができる。
【0028】
また、粉末が薬剤である場合には、患者が錠剤を服用すると、錠剤は体内において体液によって速やかに崩壊し、薬剤を体内に円滑に吸収させて優れた薬効を発現させることができる。
【実施例0029】
以下に、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。
【0030】
(実施例1~24、比較例1~9、及び参考例1~2)
でんぷんとして、タピオカでんぷん、とうもろこしでんぷん、じゃがいもでんぷん及び米でんぷんと、結晶セルロースとして、結晶セルロース1(旭化成ケミカルズ社製 商品名「セオラス」)、結晶セルロース2(栄研商事社製 商品名「ヘヴァテン101」)及び結晶セルロース3(栄研商事社製 商品名「ヘヴァテン102」)と、硬化剤として、イソマルト、マルチトール、マルトース及びラクトースとを表1及び表2に示した所定量ずつを攪拌機に供給し、均一に混合して賦形剤を製造した。
【0031】
粉末として洗浄剤(花王社製 商品名「アタック」)又は調味料(味の素社製 商品名「クノールカップスープ」)60質量部と、賦形剤40質量部とを均一に混合して錠剤組成物を作製した。この錠剤組成物を打錠機に供給して直接打錠法によって打錠圧14kNにて錠剤(厚み:9mm、重量:3500mg)とした。
【0032】
得られた錠剤の崩壊性及び硬度を下記の要領で測定し、その結果を表1及び表2に示した。
【0033】
〔崩壊性〕
得られた錠剤を24.9℃の水1リットル中に投入した。錠剤を静止状態の水中に投入し、錠剤がその体積の2/3崩壊した時点から60rpmの回転数で水を攪拌し、錠剤が完全に崩壊するまで攪拌した。錠剤を静止状態の水中に投入してから錠剤が完全に崩壊するまでの時間を測定した。錠剤を静止状態の水中に投入してから300秒経過しても崩壊しなかった場合は「Bad」とした。
【0034】
〔硬度〕
得られた錠剤の硬度を硬度計(藤原製作所社製 商品名「木屋式硬度計」)を用いて測定した。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の賦形剤によれば、種々の用途に用いられる粉末[例えば、洗浄剤、薬剤、調味料、食品、健康食品、健康補助食品(サプリメント)など]を容易に錠剤にすることができる。得られた錠剤は、水又は体内において速やかに崩壊し且つ優れた硬度を有している。
【0038】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2016年6月28日に出願された日本国特許出願第2016-128150号に基づく優先権を主張し、この出願の開示はこれらの全体を参照することにより本明細書に組み込まれる。