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特開2022-51783パターン形成装置およびパターン形成方法
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  • 特開-パターン形成装置およびパターン形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051783
(43)【公開日】2022-04-01
(54)【発明の名称】パターン形成装置およびパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20220325BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20220325BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20220325BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20220325BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
G02B5/20 101
B05D1/26 Z
B05D3/06 Z
B05D3/12 E
B05D7/00 K
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009717
(22)【出願日】2022-01-25
(62)【分割の表示】P 2017187665の分割
【原出願日】2017-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】寺田 豊治
(57)【要約】
【課題】インクジェット法を用いて、所定の表面形状のパターンを精度よく形成することができるパターン形成装置およびパターン形成方法を提供する。
【解決手段】インクジェット法により基板Wに塗布液を塗布し、塗布パターンPを形成する塗布部2と、レーザを照射して塗布パターンPの表面を整形するレーザ加工部5と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に隔壁で仕切られて形成された塗布領域内にインクジェット法により塗布液を塗布し、塗布パターンを形成する塗布部と、
前記塗布部によって形成された前記塗布パターンを硬化させるパターン硬化部と、
レーザを照射して前記パターン硬化部によって硬化した前記塗布パターンの表面を蒸発させて除去することにより前記塗布パターンの表面を整形するレーザ加工部と、
を備え、
前記レーザ加工部は、整形後の前記塗布パターンの表面形状が平坦となるように整形することを特徴とする、パターン形成装置。
【請求項2】
前記塗布パターンの表面形状を測定する表面形状測定部をさらに有し、前記レーザ加工部は当該表面形状測定部によって得られた前記塗布パターンの表面形状の測定結果をもとに前記塗布パターンの表面を整形することを特徴とする、請求項1に記載のパターン形成装置。
【請求項3】
前記レーザ加工部は、前記表面形状測定部によって得られた前記塗布パターンの表面形状測定結果データをもとに前記塗布パターンの表面形状を平坦にするための前記塗布パターンの各位置における除去量を算出し、算出結果にしたがって前記塗布パターンにレーザを照射して前記塗布パターンの表面を整形することを特徴とする請求項2に記載のパターン形成装置。
【請求項4】
前記レーザ加工部は、所定の大きさの面に向けて一度にレーザを照射し、当該所定の大きさの面に向けて照射するレーザのエネルギーの分布を調節する照射エネルギー分布調節部をさらに有することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のパターン形成装置。
【請求項5】
前記隔壁が、撥液性または親液性を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のパターン形成装置。
【請求項6】
基板上に隔壁で仕切られて形成された塗布領域内にインクジェット法により塗布液を塗布し、塗布パターンを形成する塗布工程と、
前記塗布工程によって形成された前記塗布パターンを硬化させるパターン硬化工程と、
レーザを照射して前記パターン硬化工程によって硬化した前記塗布パターンの表面を蒸発させて除去することにより前記塗布パターンの表面形状が平坦となるよう前記塗布パターンの表面を整形するレーザ加工工程と、
を備えることを特徴とする、パターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット法を用いてパターンを形成するパターン形成装置およびパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには、色形成の中核を成す部材としてカラーフィルタが用いられている。カラーフィルタは、ガラス基板上に微細なR(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3色の画素が多数並べられて形成されている。
【0003】
このカラーフィルタを製造する方法として、従来は主にフォトリソグラフィ法が用いられてきた。具体的には、隔壁によって仕切られて形成された多数の微細な画素領域を有するガラス基板面の全体にスリットコーティングなどによりたとえばRの塗布液を塗布し、次に、Rの画素を配置すべき画素領域に塗布された部分のみを露光などにより硬化させることで画素を形成させる。この工程をRのほかにG、Bの塗布液を塗布する度に行うことで、3色の画素のカラーフィルタを製作する方法が用いられてきた。しかし、この方法は、硬化させた部分以外の塗布液は除去する必要があるため、カラーフィルタを製作するために必要な塗布液の量が画素を構成する量に比べて大量(3倍以上)となり、製作コストが高いといった欠点があった。
【0004】
それに対し、近年、特許文献1に示すように、その色の画素の配置が必要な画素領域にのみR、G、Bの各塗布液をインクジェットヘッドから吐出して塗布し、R、G、Bの色画素を形成するというインクジェット法が用いられるようになってきている。この方法では、無駄な塗布液を塗布する必要ないため、フォトリソグラフィ法と比較して製作コストの低減が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-000691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のようにインクジェット法を用いて色画素を形成した場合、画素の色調ムラや輝度の低下などが発生するおそれがあった。図4にフォトリソグラフィ法、およびインクジェット法で製作したカラーフィルタの概略図を示す。図4(a)はフォトリソグラフィ法によるもの、図4(b)はインクジェット法によるものであり、それぞれ、基板W上に隔壁Bで仕切られて形成された画素領域内に塗布液を塗布し、画素のパターンを形成したものを表している。ここで、図4(a)に示すフォトリソグラフィ法によるものであれば、表面が平坦となるように塗布液を塗布することは容易であり、その後露光し、不要な塗布液を除去することでパターンP1のような形状の画素を形成することが可能である。これに対し、図4(b)に示すインクジェット法によるものでは、通常、塗布液の塗布によって形成されるパターンP2は、中央部が盛り上がった、丸い形状を有する。これは、塗布液自身の表面張力の影響に加え、塗布液が隔壁Bを乗り越えて隣の画素領域に混入することを防ぐために、隔壁Bの上面が撥液性になっているためであり、塗布液は、この撥液性の影響を受けて収縮し、丸い形状をとる。このパターンP2のように中央と端とで厚みに差がある形状のままで最終的に画素が形成されると、画素の色調ムラや輝度の低下など、カラーフィルタの品質面での不具合が発生するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を鑑み、インクジェット法を用いて、所定の表面形状のパターンを精度よく形成することができるパターン形成装置およびパターン形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明のパターン形成装置は、基板上に隔壁で仕切られて形成された塗布領域内にインクジェット法により塗布液を塗布し、塗布パターンを形成する塗布部と、前記塗布部によって形成された前記塗布パターンを硬化させるパターン硬化部と、レーザを照射して前記パターン硬化部によって硬化した前記塗布パターンの表面を蒸発させて除去することにより前記塗布パターンの表面を整形するレーザ加工部と、を備え、前記レーザ加工部は、整形後の前記塗布パターンの表面形状が平坦となるように整形することを特徴とする。
【0009】
本発明のパターン形成装置によれば、塗布液の塗布後に塗布パターンに変形が生じてもその後、パターン硬化部によって塗布パターンが硬化した後にレーザ加工部が塗布パターンの表面を蒸発させて除去することにより塗布パターンの整形を行うため、整形後の塗布パターンに再び変形を生じさせることなく所定の表面形状のパターンを精度よく形成することができる。そして、塗布パターンの表面形状が平坦となるよう塗布パターンを形成できるため、たとえば塗布パターンがカラーフィルタの色画素である場合に色調ムラや輝度の低下が少ない良好なパターンを得ることができる。
【0010】
また、前記塗布パターンの表面形状を測定する表面形状測定部をさらに有し、前記レーザ加工部は当該表面形状測定部によって得られた前記塗布パターンの表面形状の測定結果をもとに前記塗布パターンの表面を整形すると良い。
【0011】
こうすることにより、表面形状測定部によって得られた塗布パターンの表面形状の測定結果を反映してより精度良く塗布パターンを所定の形状に整形することができる。
【0012】
また、前記レーザ加工部は、前記表面形状測定部によって得られた前記塗布パターンの表面形状測定結果データをもとに前記塗布パターンの表面形状を平坦にするための前記塗布パターンの各位置における除去量を算出し、算出結果にしたがって前記塗布パターンにレーザを照射して前記塗布パターンの表面を整形すると良い。
【0013】
こうすることにより、塗布パターンの表面形状を平坦にするための塗布パターンの各位置における除去量を算出し、この算出結果にしたがって塗布パターン全体にレーザを照射することによって、塗布パターンの表明形状が平坦となるよう塗布パターンを形成することができる。そのため、形成する塗布パターンがたとえばカラーフィルタの色画素である場合に色調ムラや輝度の低下が少ない良好なパターンを得ることができる。
【0014】
また、前記レーザ加工部は、所定の大きさの面に向けて一度にレーザを照射し、当該所定の大きさの面に向けて照射するレーザのエネルギーの分布を調節する照射エネルギー分布調節部をさらに有すると良い。
【0015】
こうすることにより、短い時間でパターン全体を所定の表面形状に整形することができる。
【0016】
また、前記隔壁が、撥液性または親液性を有すると良い。
【0017】
こうすることにより、隔壁が撥液性を有する場合は、塗布領域内に形成される塗布パターン形状が上に凸の形状になり、隔壁が親液性を有する場合は、塗布領域内に形成される塗布パターン形状が下に凸の形状になる。これにより、たとえば、隔壁が撥液性を有する場合は、塗布領域内に塗布された塗布液が隔壁を乗り越えて隣の塗布領域に混入することを防ぐことができる。
【0018】
また、上記課題を解決するために本発明のパターン形成方法は、基板上に隔壁で仕切られて形成された塗布領域内にインクジェット法により塗布液を塗布し、塗布パターンを形成する塗布工程と、前記塗布工程によって形成された前記塗布パターンを硬化させるパターン硬化工程と、レーザを照射して前記パターン硬化工程によって硬化した前記塗布パターンの表面を蒸発させて除去することにより前記塗布パターンの表面形状が平坦となるよう前記塗布パターンの表面を整形するレーザ加工工程と、を備えることを特徴としている。
【0019】
本発明のパターン形成方法によれば、塗布工程後に塗布パターンに変形が生じてもその後、パターン硬化工程によって塗布パターンが硬化した後にレーザ加工工程において塗布パターンの表面を蒸発させて除去することにより塗布パターンの整形を行うため、整形後の塗布パターンに再び変形を生じさせることなく所定の表面形状のパターンを精度よく形成することができる。そして、塗布パターンの表面形状が平坦となるよう塗布パターンを形成できるため、たとえば塗布パターンがカラーフィルタの色画素である場合に色調ムラや輝度の低下が少ない良好なパターンを得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のパターン形成装置およびパターン形成方法によれば、インクジェット法を用いて、所定の表面形状のパターンを精度よく形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態におけるパターン形成装置を説明する概略図である。
図2】本発明におけるパターン形成方法の動作フロー図である。
図3】レーザ加工前の塗布パターンの形状と塗布パターン全体に向けて照射するレーザのエネルギー分布の関係について示した概略図である。
図4】フォトリソグラフィ法により形成される塗布パターンの形状とインクジェット法により形成される塗布パターンの形状との比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る実施の形態を図面を用いて説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態におけるパターン形成装置の概略図である。パターン形成装置1は、塗布部2、パターン硬化部3、表面形状測定部4、レーザ加工部5、および制御部6を備えており、塗布部2によって基板W上に塗布パターンPが形成され、パターン硬化部3によって塗布パターンPが硬化する。硬化した塗布パターンPの表面形状が表面形状測定部4によって測定され、その結果をもとにレーザ加工部5はレーザの出力を調節しながら塗布パターンPの表面を除去し、所定の表面形状を有するパターンとなるよう整形する。また、制御部6には塗布部2、表面形状測定部4で使用する塗布データ、表面形状測定部4で測定した結果データが格納される。また、塗布部2、パターン硬化部3、表面形状測定部4、レーザ加工部5それぞれの間の基板Wの搬送は、図示しないロボットハンド、コンベアなどによって行われる。
【0024】
塗布部2は、塗布ヘッド21を有しており、塗布ヘッド21が有するノズル22の先端から塗布パターンPの材料となる塗布液をインクジェット法により液滴として吐出し、基板W上に塗布パターンPを形成する。
【0025】
塗布ヘッド21により液滴として吐出を行う段階では、塗布パターンPの材料の粘度は低い。塗布パターンPの材料は、本実施形態ではたとえば固形材料が揮発性の溶媒に溶解した形態をとっており、溶媒が揮発するにしたがって粘度が高くなりやがて硬化する。このほか、塗布パターンPの材料はたとえば熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂であっても良く、この場合、硬化する前はインクジェット法で吐出が可能な程度の粘度を有し、熱や光を与えることにより硬化する。
【0026】
ここで、本実施形態では基板Wはカラーフィルタ用の基板であり、塗布パターンPはたとえばR、G、Bの色画素である。基板Wの表面(塗布パターンPが形成される側の面)にはマトリクス状に隔壁Bが設けられており、この隔壁Bに囲まれた基板W上の塗布領域に塗布パターンPの材料(液滴)が吐出される。
【0027】
また、塗布部2は、塗布ヘッド21と基板Wとを少なくとも図1のX軸方向およびY軸方向に相対移動させる図示しない移動機構を有しており、基板Wの上方を塗布ヘッド21がたとえばX軸方向に走査しながらX軸方向に並ぶ塗布領域に対して連続して液滴を吐出し、塗布パターンPを形成する。そして、X軸方向において基板Wの端から端まで走査が完了すると、塗布ヘッド21は基板Wに対してY軸方向にシフトし、またX軸方向の走査および液滴の吐出を行う。これが繰り返されることにより、基板W上に設けられた多数の塗布領域上に塗布パターンPが形成される。
【0028】
また、塗布ヘッド21にはY軸方向に複数のノズル22が並んで配置されており、一度のX軸方向の走査の間にY軸方向に並ぶ複数の塗布領域へ液滴を吐出することが可能である。
【0029】
なお、基板W上の塗布領域の位置、塗布すべき分量などのデータを含む塗布データは、制御部6にあらかじめ格納されており、塗布部2はこの塗布データを読みこんだ後、塗布動作を実施する。
【0030】
パターン硬化部3は、本実施形態ではヒータプレート31を備えている。ヒータプレート31は、基板W全体を載置することが可能な大きさを有しており、ヒータプレート31が作動することにより基板Wが加熱される。本実施形態のように固形材料が揮発性の溶媒に溶解した形態を塗布パターンPの材料が有していた場合、基板Wが加熱されて塗布パターンPが加熱されることにより溶媒の揮発が促進し、塗布パターンPが硬化する。
【0031】
なお、本実施形態ではパターン硬化部3はヒータプレート31を有しているが、それに加え基板Wを囲んで加熱するオーブン機構を備えていても良い。
【0032】
また、塗布パターンPの材料が熱硬化性樹脂であった場合でも、上記の通りヒータプレート31やオーブン機構によって塗布パターンPが加熱されることにより、塗布パターンPは硬化する。また、塗布パターンPの材料が光硬化性樹脂であった場合は、パターン硬化部3にはヒータプレート31の代わりにランプ機構が設けられ、塗布パターンPを硬化させる波長の光がこのランプ機構から塗布パターンPに向かって発せられる。
【0033】
表面形状測定部4は、本実施形態では測定ヘッド41を有している。測定ヘッド41は、いわゆる共焦点方式を採用しており、測定対象である塗布パターンPの表面に接触することなく測定を行っている。この方式では、投光部42から出射して塗布パターンPの表面で反射させたレーザ光をハーフミラー43を通して受光部44が受光する。そして、測定ヘッド41をZ軸方向に動かしながら複数の受光パターンを採取し、これら受光パターンをもとに塗布パターンPの表面形状が算出、測定される。なお、投光部42から出射されるレーザ光は、後述のレーザ加工部5で用いるレーザのように塗布パターンPを蒸発させるほどの出力は有していない。
【0034】
また、表面形状測定部4は、測定ヘッド41と基板WとをX軸方向およびY軸方向に相対移動させる図示しない移動機構も有しており、基板Wの上方を測定ヘッド41がたとえばX軸方向に走査しながらX軸方向に並ぶ塗布パターンPに対して連続して表面形状の測定を行う。そして、X軸方向において基板Wの端から端まで走査が完了すると、測定ヘッド41は基板Wに対してY軸方向にシフトし、またX軸方向の走査および表面形状の測定を行う。これが繰り返されることにより、基板W上の全ての塗布パターンPの表面形状を測定することができる。そしてこのように基板W上の全ての塗布パターンPの表面形状を測定した結果、表面形状測定部4は表面形状測定結果データを取得する。
【0035】
なお、塗布パターンPの表面形状が全ての塗布パターンPにおいて略均一なのであれば、基板W上の全ての塗布パターンPの表面形状を測定する必要はなく、1つの塗布パターンPにおいて表面形状を測定してその結果を取得し、この結果を基板W上の全ての塗布パターンPに当てはめて表面形状測定結果データが作成されても良い。
【0036】
ここで、基板W上の測定位置は、制御部6に格納されている塗布データから認識することが可能であり、表面形状測定部4はこの塗布データを読みこんだ後、測定動作を実施すると良い。
【0037】
そして、表面形状測定部4よって取得された表面形状測定結果データは、制御部6に格納される。
【0038】
なお、本実施形態では表面形状測定部4は共焦点方式を採用し、塗布パターンPの表面形状を測定しているが、その方式に限らず、どのような方式であっても良い。たとえばプローブを塗布パターンPの表面に直接接触させて塗布パターンPの表面高さを測定する、いわゆる触針方式であっても良い。
【0039】
レーザ加工部5は、加工ヘッド51を有し、加工ヘッド51から加工対象である塗布パターンPに向けてレーザを出射する。塗布パターンPにおいてレーザと接触した部分は蒸発して除去され、これにより塗布パターンPの形状を調節することができる。
【0040】
加工ヘッドは投光部52を有している。投光部52は本実施形態では近紫外線レーザであり、数ナノ秒~数十ナノ秒のパルス幅にて発振し、レーザを出射する。
【0041】
投光部52から出射されたレーザは、ミラー53で反射されて塗布パターンPに向かう。ミラー53は、本実施形態では2枚のガルバノミラーであり、これらガルバノミラーの角度を制御することにより、塗布パターンP上でレーザが到達する位置を制御することができる。これによって、レーザ加工部5は、所定の大きさの面(本実施形態では各塗布パターンPの表面全体)に向けて一度にレーザを照射することが可能である。
【0042】
ここで、レーザ加工部5は、表面形状測定部4によって取得された表面形状測定結果データをあらかじめ読み込むことにより、塗布パターンPの形状を所定の形状にするための塗布パターンPの各位置における除去量を算出することができ、この算出結果にしたがって塗布パターンP全体にレーザを照射することによって、塗布パターンPの形状を所定の形状にすることができる。
【0043】
また、レーザ加工部5は、加工ヘッド51と基板WとをX軸方向およびY軸方向に相対移動させる図示しない移動機構も有しており、基板Wの上方を加工ヘッド51がたとえばX軸方向に並ぶ塗布パターンPに対して連続して表面の整形を行う。そして、X軸方向において基板Wの端から端まで整形が完了すると、加工ヘッド51は基板Wに対してY軸方向にシフトし、またX軸方向に連続した塗布パターンPへの加工を行う。これが繰り返されることにより、基板W上の全ての塗布パターンPに対して整形を行うことができる。
【0044】
制御部6は、CPUおよびRAMやROMを有するコンピュータであり、塗布部2による塗布動作、パターン硬化部3による加熱動作、表面形状測定部4による表面測定動作、およびレーザ加工部5によるレーザ加工動作の制御を行うほか、基板Wの搬送の制御も行う。
【0045】
また、制御部6は、ハードディスクや、RAMまたはROMなどのメモリからなる、各種情報を記憶する記憶装置を有しており、基板Wに塗布部2が塗布パターンPを形成するための位置情報などの塗布データがこの記憶装置に記憶される。また、この記憶装置には、表面形状測定部4によって測定された結果である表面形状測定結果データも一時的に記憶され、この記憶された表面形状測定結果データをもとにレーザ加工部5を動作させることができる。
【0046】
次に、本発明の一実施形態におけるパターン形成方法の動作フロー図を図2に示す。
【0047】
まず、図示しないロボットハンドなどにより基板Wが搬送されることにより、塗布部2へ基板Wが移動する(ステップS1)。塗布部2は、制御部6から塗布データを受け取り、その塗布データをもとにインクジェット法により基板Wへ塗布パターンPの材料である塗布液を塗布し、基板W上に塗布パターンPを形成させる(ステップS2)。本説明では、このステップS2に示される工程を塗布工程と呼ぶ。
【0048】
この塗布工程の直後は塗布パターンPの粘度は低いため、仮に平坦な形状となるように塗布液を塗布した場合であっても塗布液の表面張力が影響して変形する可能性がある。特に、この塗布工程がカラーフィルタの製造工程の一部であり撥液性を有する隔壁で囲まれた場所に塗布液を塗布する工程であれば、この隔壁の撥液性も作用し、塗布パターンPは図4(b)に示すような上に凸の形状に変形する。
【0049】
次に、図示しないロボットハンドなどにより基板Wが搬送されることにより、パターン硬化部3へ基板Wが移動する(ステップS3)。パターン硬化部3は、たとえば塗布パターンPを加熱して塗布パターンP内の溶媒を揮発させることにより塗布パターンPを硬化させる(ステップS4)。本説明では、このステップS4に示される工程をパターン硬化工程と呼ぶ。このパターン硬化工程により塗布パターンPが硬化した後も、塗布工程後に塗布パターンPが変形した影響は残存する。
【0050】
次に、図示しないロボットハンドなどにより基板Wが搬送されることにより、表面形状測定部4へ基板Wが移動する(ステップS5)。表面形状測定部4は、制御部6から受け取った塗布データをもとに塗布パターンPの位置を認識し、基板W上の各塗布パターンPの表面形状を測定する(ステップS6)。本説明では、このステップS6に示される工程を表面形状測定工程と呼ぶ。この表面形状の測定の結果である表面形状測定結果データは、制御部6に格納される。
【0051】
次に、図示しないロボットハンドなどにより基板Wが搬送されることにより、レーザ加工部5へ基板Wが移動する(ステップS7)。レーザ加工部5は、表面形状測定工程によって得られた表面形状測定結果データを制御部6から受け取り、この表面形状測定結果データをもとに塗布パターンPの表面をレーザ加工し、塗布パターンPを整形する(ステップS8)。本説明では、このステップS8に示される工程をレーザ加工工程と呼ぶ。
【0052】
レーザ加工工程では、塗布パターンPが硬化した後に塗布パターンPの整形を行うため、レーザ照射により塗布パターンPの表面上のある一点の除去作業を行ってもその影響はその点の周囲に及びにくく、その結果、所定の形状に整形することが容易となる。仮に塗布パターンPがまだ軟らかいうちに加工を行った場合、塗布パターンPの材料自身の表面張力などにより加工後に再び変形が生じ、加工後の塗布パターンPの表面形状を所定の形状にすることが困難となる。
【0053】
ここで、本実施形態では、レーザ加工部5ではミラー53によって塗布パターンP上でレーザが到達する位置を制御すると同時に、それぞれの到達位置におけるレーザのパルス幅などを投光部52が調節することによってレーザのエネルギーを調節することにより、塗布パターンPの表面に対して照射するレーザのエネルギーに分布を持たせ、塗布パターンPの整形を行っている。すなわち、投光部52およびミラー53は、所定の大きさの面に向けて一度にレーザを照射し、当該所定の大きさの面に向けて照射するレーザのエネルギーの分布を調節する照射エネルギー分布調節部として働いている。
【0054】
図3は、レーザ加工前の塗布パターンPの形状と塗布パターンP全体に向けて照射するレーザのエネルギー分布の関係について示した概略図である。単位時間に塗布パターンPの表面上の1点に与えるレーザのエネルギーを大きくすると、図3におけるZ軸方向の塗布パターンPの除去量が大きくなる。
【0055】
この除去量とレーザ座標とで作られる図形(図3において除去図形Qと定義する図形)に関し、図3の例では塗布パターンPが上に凸の形状であるのに対し、除去図形Qは塗布パターンPの表面と同等の曲面を有する下に凸の図形となっている。このような場合を、除去図形Qの形状が塗布パターンPの表面近傍の形状と反対の形状であると呼び、このように除去図形Qの形状が塗布パターンPの表面近傍の形状と反対の形状となっていた場合、このエネルギー分布にもとづいて塗布パターンPの整形を行った結果、塗布パターンPの表面形状は図3に二点鎖線で示すように平坦となる。このように塗布パターンPの表面形状を平坦にすることにより、カラーフィルタにおけるR、G、Bの色画素として働く塗布パターンPは、色調ムラや輝度の低下が少ない良好なパターンとなる。
【0056】
ここで、レーザ加工部5は、表面形状測定部4によって取得した表面形状測定結果データを制御部6から受け取ることにより、塗布パターンPの表面形状を所定の形状にするためのレーザのエネルギー分布を算出することができ、この算出結果にしたがって塗布パターンP全体にレーザを照射することによって、塗布パターンPの表面形状を所定の形状にすることができる。
【0057】
以上の工程を経て、基板W上に所定の形状のパターンが形成される。
【0058】
以上のパターン形成装置およびパターン形成方法により、インクジェット法を用いて、所定の表面形状のパターンを精度よく形成することが可能である。
【0059】
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0060】
たとえば、上記の説明では塗布パターンは隔壁に囲まれた色画素であるが、それに限らず基板上の配線パターンであっても良い。配線パターンをインクジェット法により形成する場合であっても、配線パターンが硬化するまでにたとえば配線の中央部が高くなるというような変形が生じる可能性があり、本発明が好適に用いられうる。そのほかにも、たとえば有機EL、QDCF(量子ドットカラーフィルタ)、QLED(量子ドットLED)などのパターン形成にも本発明が好適に用いられうる。
【0061】
また、塗布パターンの整形後の形状は必ずしも平坦面でなくても良い。
【0062】
また、パターン硬化工程後の塗布パターンの表面形状は必ずしも上に凸の形状である必要はなく、たとえば下に凸の形状であっても良い。仮に隔壁部が親液性であり、この隔壁部に囲まれた場所に塗布液を塗布する場合、塗布パターンの形状は下に凸となり、このような塗布パターンに対しても、本発明が好適に用いられうる。
【0063】
また、上記の説明ではパターン形成装置1は加熱機構やランプ機構を有するパターン硬化部を備えているが、それに限らない。たとえば、塗布液が溶媒を含有するものであり、たとえば室温で所定時間放置することにより溶媒の揮発が進んで塗布パターンが硬化するものであれば、特にパターン硬化部を必要としない。
【0064】
また、上記の説明ではパターン形成装置1は表面形状測定部4を備えており、塗布パターンが形成された基板を作成するたびに表面形状測定工程を実施しているが、塗布液が塗布された後の塗布パターンが変形する挙動が常に同じなのであれば、その変形挙動に応じたレーザ加工を全ての塗布パターンに実施すれば良く、表面形状測定工程を必要としない。
【0065】
また、上記の説明では、図示しないロボットハンド、コンベアなどによって塗布部、パターン硬化部、表面形状測定部、レーザ加工部それぞれの間の基板の搬送が行われているが、それに限らず、基板は1つのステージに固定され、その基板の上方を塗布部、パターン硬化部、表面形状測定部、レーザ加工部が移動する形態であっても良い。
【0066】
また、上記の説明では、レーザ加工部は照射するレーザのエネルギー分布を調節することによって塗布パターン上の各位置での除去量を調節して塗布パターンの整形を行っているが、それに限らず、たとえば1回のレーザ照射のエネルギーは一定にして照射回数を調節することによって除去量を調節するようにしても良い。
【符号の説明】
【0067】
1 パターン形成装置
2 塗布部
3 パターン硬化部
4 表面形状測定部
5 レーザ加工部
21 塗布ヘッド
22 ノズル
31 ヒータプレート
41 測定ヘッド
42 投光部
43 受光部
51 加工ヘッド
52 投光部
53 ミラー
B 隔壁
P 塗布パターン
Q 除去図形
W 基材
図1
図2
図3
図4