(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051839
(43)【公開日】2022-04-01
(54)【発明の名称】改善されたエステルシンターゼ特性を有する酵素変種
(51)【国際特許分類】
C12N 9/16 20060101AFI20220325BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20220325BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
C12N9/16 Z ZNA
C12N15/10 200Z
C12N15/55
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016860
(22)【出願日】2022-02-07
(62)【分割の表示】P 2020021255の分割
【原出願日】2013-03-15
(31)【優先権主張番号】61/708,424
(32)【優先日】2012-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/701,191
(32)【優先日】2012-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510199890
【氏名又は名称】ジェノマティカ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】シューメイカー アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ダ コスタ バーナード エム.
(72)【発明者】
【氏名】ホールデン ケビン
(72)【発明者】
【氏名】ホム ルイス ジー.
(72)【発明者】
【氏名】バロン タラ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン ノア
(57)【要約】
【課題】脂肪酸エステルを産生するための改善されたエステルシンターゼ特性を有する酵素変種の提供。変種を発現する組換え宿主細胞、組換え宿主細胞を含む細胞培養物、及び組換え宿主細胞によって産生された脂肪酸エステル組成物の提供。
【解決手段】特定のアミノ酸位置において少なくとも1つの変異を有するように遺伝子操作された、対応する野生型ポリペプチドと比較して改善された脂肪酸メチルエステル活性を有する、変種エステルシンターゼポリペプチド。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:2を含む変種エステルシンターゼポリペプチドであって、アミノ酸4、5、7、15、24、30、33、39、40、41、43、44、58、73、76、77、78、80、98、99、101、102、111、122、131、146、147、149、150、155、157、162、164、166、170、171、172、173、177、179、182、184、185、186、187、188、190、192、193、195、197、201、202、203、206、207、212、216、219、234、239、242、243、244、246、255、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、285、288、289、293、294、301、302、303、304、306、307、309、310、311、313、314、315、316、317、319、320、323、328、334、348、349、351、352、353、356、357、360、366、375、381、393、394、395、409、411、413、420、424、442、443、447、454、455、457、458、461、466、468、および472からなる群より選択されるアミノ酸位置において少なくとも1つの変異を有するように遺伝子操作されており、対応する野生型ポリペプチドと比較して改善された脂肪酸メチルエステル活性を有する、変種エステルシンターゼポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2012年10月1日に出願された米国特許仮出願第61/708,424号および2012年9月14日に出願された米国特許仮出願第61/701,191号の恩典を主張する。これらの全開示が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表
本願は、EFS-Webを介してASCIIフォーマットで提出されており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる配列表を収録している。ASCIIコピーは2013年3月12日に作成され、LS00043-44PCT_SL.txtと命名され、サイズが164,228バイトである。
【0003】
分野
本開示は、脂肪エステルを産生するための改善されたエステルシンターゼ特性を有する酵素変種に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
石油は、液体、気体、または固体の形で地中に見られる限られた天然資源である。しかしながら、石油製品は経済的および環境的にかなりのコストをかけて開発される。地中から取り出された原油は天然の形では商業的用途がほとんどない。原油は、様々な長さおよび複雑さの炭化水素、例えば、パラフィン(またはアルカン)、オレフィン(またはアルケン)、アルキン、ナプテン(napthene)(またはシルコアルカン(cylcoalkane))、脂肪族化合物、芳香族化合物などの混合物である。さらに、原油は他の有機化合物(例えば、窒素、酸素、硫黄などを含有する有機化合物)および不純物(例えば、硫黄、塩、酸、金属など)を含有する。ほとんどの石油はエネルギー密度が高く、輸送が容易なために燃料、例えば、交通燃料(例えば、ガソリン、ディーゼル、航空燃料など)、暖房用オイル、液化石油ガスなどに精製される。
【0005】
石油化学製品を用いて、プラスチック、樹脂、繊維、エラストマー、薬、潤滑剤、またはゲルなどの特殊化学薬品を作ることができる。石油化学原材料から生産することができる特殊化学薬品の例には、脂肪酸、炭化水素(例えば、長鎖炭化水素、分枝鎖炭化水素、飽和炭化水素、不飽和炭化水素など)、脂肪アルコール、脂肪エステル、脂肪アルデヒド、ケトン、潤滑剤などが含まれる。特殊化学薬品には多くの商業用途がある。脂肪酸は界面活性剤として商業的に使用される。界面活性剤は洗剤およびセッケンの中に見られる。脂肪酸はまた、燃料、潤滑油、塗料、ラッカー、ろうそく、ショートニング、化粧品、および乳化剤の中の添加物として使用することもできる。さらに、脂肪酸はゴム製品の中の促進活性剤として使用される。脂肪酸はまた、メチルエステル、アミド、アミン、酸塩化物、無水物、ケテン二量体、ならびにペルオキシ酸およびエステルを生産するための供給材料として使用することもできる。
【0006】
エステルには多くの商業用途がある。例えば、代替燃料であるバイオディーゼルはエステル(例えば、脂肪酸メチルエステル、脂肪酸エチルエステルなど)からなる。一部の低分子量エステルは揮発性であり、芳香剤または着香剤として役立つ芳香がある。さらに、エステルはラッカー、塗料、およびワニス用の溶媒として用いられる。さらに、ワックス、脂肪、および油などの一部の天然物質はエステルからなる。エステルはまた樹脂およびプラスチックの中の柔軟剤、ガソリンおよび油の中の可塑剤、難燃剤、および添加物としても用いられる。さらに、エステルは、重合体、フィルム、布、色素、および薬の製造において使用することができる。
【0007】
現在、石油から得られている燃料および製品を作り出す代替経路が必要とされている。従って、微生物系は非常に多くのタイプのバイオ燃料および化学薬品を生物生産する可能性を持っている。遺伝子操作された生物(例えば、細菌、酵母、および藻類)から再生可能な燃料および化学薬品を得ることができる。操作された生物が再生可能な燃料および化学製品を合成できるように、天然生合成経路を遺伝的に変えることができる。さらに、燃料および化学製品を産生するための供給材料として様々な炭素源を利用するように微生物を合わせる、または代謝操作することができる。例えば、ワックスエステルシンターゼ、例えば、マリノバクター・ハイドロカルボノクラスティカス(Marinobacter hydrocarbonoclasticus)(「M.ハイドロカルボノクラスティカス」)に由来するワックスエステルシンターゼを発現する組換え宿主細胞の培養物にメタノールを添加することによってFAME(脂肪酸メチルエステル)を産生することができる。しかしながら、M.ハイドロカルボノクラスティカスに由来する野生型ワックスエステルシンターゼを発現させても多量のFAMEは産生されず、従って、改善されたワックスエステルシンターゼの開発が非常に望まれている。さらに、M.ハイドロカルボノクラスティカスに由来する野生型ワックスエステルシンターゼは、植物供給源に由来する燃料または化学薬品に典型的に見られない多量のβヒドロキシ(「β-OH」)エステルを産生する。例えば、参照により本明細書に組み入れられる、特許協力条約出願番号PCT/US12/31682(特許文献1)を参照されたい。従って、エステルシンターゼを操作して、高収率の脂肪エステル;および組換え宿主細胞内で発現された時に、多量のβ-OHエステルを産生することなく高収率の脂肪エステルを産生するエステルシンターゼを産生することが望ましいであろう。最後に、脂肪エステル産生の収率をさらに改善するために、エステルシンターゼ活性を有する他の酵素を操作することが望ましいであろう。
【0008】
この分野における進歩にもかかわらず、組換え宿主細胞の発酵によって関心対象の燃料および化学薬品を活発に、かつ費用対効果が高く生産するために、遺伝子組換えされた酵素、組換え宿主細胞、方法、および系の改善が依然として必要とされている。本開示は、脂肪エステルの収率を増やす多数のエステルシンターゼ酵素変種を提供することによって、このニーズに応える。本開示のエステルシンターゼ酵素変種の一部はまた、エステルシンターゼ酵素変種を発現する組換え宿主細胞の発酵によって産生された脂肪エステル組成物のβ-OHエステル含有率も変える(すなわち、上昇させる、または低下させる)。さらに、本開示は、高いエステルシンターゼ活性を有するように操作されている多数のチオエステラーゼ変種を提供し、それによって脂肪エステル産生をさらに強化することによって、このニーズに応える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許協力条約出願番号PCT/US12/31682
【発明の概要】
【0010】
概要
本開示の一局面は、SEQ ID NO:2を有する変種エステルシンターゼポリペプチドであって、アミノ酸4、5、7、15、24、30、33、39、40、41、43、44、58、73、76、77、78、80、98、99、101、102、111、122、131、146、147、149、150、155、157、162、164、166、170、171、172、173、177、179、182、184、185、186、187、188、190、192、193、195、197、201、202、203、206、207、212、216、219、234、239、242、243、244、246、255、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、285、288、289、293、294、301、302、303、304、306、307、309、310、311、313、314、315、316、317、319、320、323、328、334、348、349、351、352、353、356、357、360、366、375、381、393、394、395、409、411、413、420、424、442、443、447、454、455、457、458、461、466、468、および472を含むが、これに限定されないアミノ酸位置において少なくとも1つの変異を有するように遺伝子操作されており、対応する野生型ポリペプチドと比較して改善された脂肪酸メチルエステル活性を有する変種エステルシンターゼポリペプチドを提供する。関連する局面において、変種ポリペプチドは、マリノバクター・ハイドロカルボノクラスティカス(WS377)エステルシンターゼポリペプチドである。別の関連する局面において、組換え宿主細胞における変種エステルシンターゼポリペプチドの発現は、対応する野生型ポリペプチドを発現する組換え宿主細胞と比較してより高い力価の脂肪エステル組成物をもたらす。力価は少なくとも約5パーセント以上である、脂肪エステル組成物には、脂肪酸メチルエステル(FAME)、脂肪酸エチルエステル(FAEE)、脂肪酸プロピルエステル、脂肪酸イソプロピルエステル、脂肪酸ブチルエステル、モノグリセリド、脂肪酸イソブチルエステル、脂肪酸2-ブチルエステル、および脂肪酸tert-ブチルエステルが含まれるが、これに限定されない。変種エステルシンターゼは、改善されたエステルシンターゼ活性、特に、βヒドロキシエステルの増加、βヒドロキシエステルの減少、脂肪酸エステルの鎖長の伸長、および脂肪酸エステルの鎖長の短縮を含むが、これに限定されない改善された特性をもたらす改善された脂肪酸メチルエステル活性を有する。
【0011】
本開示の別の局面は、SEQ ID NO:2を有する変種エステルシンターゼポリペプチドであって、アミノ酸7、24、30、41、99、111、122、146、147、149、150、171、172、173、179、187、192、212、234、239、244、246、258、264、266、267、285、301、302、303、304、306、307、309、310、311、313、314、315、316、320、348、349、352、356、357、360、375、381、393、409、411、424、443、455、457、458、461、および472を含むが、これに限定されないアミノ酸位置において少なくとも1つの変異を有するように遺伝子操作されている変種エステルシンターゼポリペプチドを提供する。組換え宿主細胞における変種エステルシンターゼポリペプチドの発現は、対応する野生型エステルシンターゼポリペプチドを発現する組換え宿主細胞と比較してパーセンテージが変化したβヒドロキシエステルの産生をもたらす可能性があり、パーセンテージが変化したβヒドロキシエステルは、パーセンテージが上昇または低下したβヒドロキシエステルである。
【0012】
本開示の別の局面は、SEQ ID NO:2を有する変種エステルシンターゼポリペプチドであって、アミノ酸5、7、15、24、33、44、58、73、78、101、111、162、171、179、184、187、188、192、201、207、212、234、243、244、255、257、267、307、310、317、320、348、349、353、357、366、381、394、409、411、413、442、443、および461を含むが、これに限定されないアミノ酸位置において少なくとも1つの変異を有するように遺伝子操作されている変種エステルシンターゼポリペプチドを提供する。
【0013】
本開示の別の局面は、SEQ ID NO:2を有する変種エステルシンターゼポリペプチドであって、アミノ酸G4R、T5P、T5S、D7N、S15G、T24M、T24W、L30H、G33D、G33S、L39A、L39M、L39S、R40S、D41A、D41G、D41H、D41Y、V43K、V43S、T44A、T44F、T44K、Y58C、Y58L、A73Q、V76L、D77A、K78F、K78W、I80V、R98D、E99Q、G101L、I102R、P111D、P111G、P111S、H122S、R131M、I146K、I146L、I146R、S147A、V149L、R150P、V155G、T157S、R162E、N164D、N164R、P166S、T170R、T170S、V171E、V171F、V171H、V171R、V171W、R172S、R172W、P173W、R177V、A179S、A179V、D182G、E184F、E184G、E184L、E184R、E184S、A185L、A185M、S186T、V187G、V187R、P188R、A190P、A190R、A190W、S192A、S192L、S192V、Q193R、Q193S、M195G、A197T、A197V、Q201A、Q201V、Q201W、A202L、D203R、P206F、R207A、G212A、G212L、V216I、V219L、V234C、H239G、T242K、T242R、A243R、Q244G、R246A、R246G、R246L、R246Q、R246V、R246W、D255E、L257I、K258R、N259E、N259Q、L260V、H262Q、A263V、S264D、S264V、S264W、G265N、G266A、G266S、S267G、A285L、A285R、A285V、N288D、N289E、N289G、T293A、P294G、V301A、N302G、I303G、I303R、I303W、R304W、A306G、D307F、D307G、D307L、D307N、D307R、D307V、E309A、E309G、E309S、G310H、G310R、G310V、T311S、T313S、Q314G、I315F、S316G、F317W、I319G、A320C、A323G、D328F、Q334K、Q334S、Q348A、Q348R、K349A、K349C、K349H、K349Q、P351G、K352I、K352N、S353K、S353T、T356G、T356W、Q357V、M360Q、M360R、M360S、M360W、Y366G、Y366W、G375A、G375V、G375S、V381F、E393G、E393R、E393W、G394E、T395E、V409L、L411A、A413T、I420V、S424G、S424Q、S442E、S442G、M443G、A447C、A447I、A447L、L454V、D455E、L457Y、E458W、I461G、I461L、I461V、K466N、A468G、K472T、およびK472を含むが、これに限定されないアミノ酸位置において少なくとも1つの変異を有するように遺伝子操作されている変種エステルシンターゼポリペプチドを提供する。本開示の特定の局面において、変種エステルシンターゼポリペプチドは、変異D7N、A179V、およびV381F;D7N、A179V、Q348R、およびV381F;D7N、A179V、V187R、G212A、Q357V、V381F、およびM443G;T5S、S15G、P111S、V171R、P188R、F317W、S353T、V409L、およびS442G;T5S、S15G、K78F、P111S、V171R、P188R、S192V、A243R、F317W、K349H、S353T、V409L、およびS442G;T5S、S15G、V76L、P111S、V171R、P188R、K258R、S316G、F317W、S353T、M360R、V409L、およびS442G;T5S、S15G、P111S、V171R、P188R、Q244G、S267G、G310V、F317W、A320C、S353T、Y366W、V409L、およびS442G;S15G、P111S、V155G、P166S、V171R、P188R、F317W、Q348A、S353T、V381F、V409L、およびS442G;S15G、L39S、D77A、P111S、V171R、P188R、T313S、F317W、Q348A、S353T、V381F、V409L、I420V、およびS442G;T5S、S15G、T24W、T44F、P111S、I146L、V171R、P188R、D307N、F317W、S353T、V409L、およびS442G;T5S、S15G、K78F、P111S、V171R、P188R、S192V、R207A、A243R、D255E、L257I、N259Q、L260V、H262Q、G265N、A285V、N288D、N289G、F317W、Q348R、S353T、V381F、V409L、およびS442G;T5S、S15G、K78F、P111S、V171R、P188R、S192V、R207A、A243R、D255E、L257I、N259Q、L260V、H262Q、G265N、A285V、N288D、N289G、F317W、H349K、S353T、V381F、V409L、およびS442G;T5P、S15G、G33D、T44K、Y58L、P111S、R162E、V171R、P188R、R207A、V234C、Q244G、D255E、S267G、D307N、G310V、F317W、A320C、S353T、Y366W、G394E、V409L、S442G、およびI461V;T5P、S15G、G33D、T44K、Y58C、P111S、V171R、P188R、R207A、V234C、Q244G、L257I、S267G、D307N、G310V、F317W、A320C、S353T、Y366W、G394E、V409L、A413T、S442G、およびI461V;T5P、S15G、T44A、P111S、T157S、N164D、T170S、V171R、P188R、R207A、V216I、V234C、Q244G、L257I、S267G、D307N、G310V、F317W、A320C、Q334K、S353T、Y366W、G394E、V409L、S442G、およびI461V;または変異T5P、S15G、Y58L、P111S、R162E、T170S、V171R、A179S、P188R、R207A、V234C、Q244G、L257I、S267G、D307N、G310V、F317W、A320C、S353K、Y366W、G394E、V409L、S442G、およびI461Vを含む。
【0014】
本開示の別の局面は、変種エステルシンターゼポリペプチドを発現するように遺伝子操作された組換え宿主細胞を提供する。関連する局面において、本開示は、変種エステルシンターゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を有する培養された組換え宿主細胞であって、組換え宿主細胞が、変種エステルシンターゼポリペプチドを発現させるのに有効な条件下で炭素源を含有する培地中で培養された場合に、変種エステルシンターゼポリペプチドを発現すると、対応する野生型ポリペプチドを発現する宿主細胞と比較してより高い力価、より高い収率、および/またはより高い生産性の脂肪酸エステルを有する脂肪酸エステル組成物を産生する培養された組換え宿主細胞を提供する。力価は少なくとも約5パーセント以上である。関連する局面において、組換え宿主細胞は変種エステルシンターゼポリペプチドを発現すると、野生型エステルシンターゼポリペプチドを発現する宿主細胞と比較して、パーセンテージが変化したβヒドロキシエステルを有する脂肪エステル組成物を産生する。本明細書において、パーセンテージが変化したβヒドロキシエステルは、パーセンテージが上昇または低下したβヒドロキシエステルである。
【0015】
本発明のさらに別の局面は、組換え宿主細胞および脂肪エステル組成物を含む細胞培養物を提供する。脂肪エステル組成物は、C6、C8、C10、C12、C13、C14、C15、C16、C17またはC18脂肪エステルの1つまたは複数を含んでもよい。さらに、脂肪エステル組成物は、不飽和脂肪エステルおよび/または飽和脂肪エステルおよび/または分枝鎖脂肪エステルを含んでもよい。脂肪エステル組成物は、脂肪エステルの還元末端からC7とC8との間の炭素鎖における位置7に二重結合を有する脂肪エステルをさらに含んでもよい。
【0016】
本開示は、SEQ ID NO:2を有する変種マリノバクター・ハイドロカルボノクラスティカス(WS377)エステルシンターゼポリペプチドであって、変種WS377ポリペプチドが野生型WS377ポリペプチドと比較して改善された脂肪酸メチルエステル活性を有し、かつ変種WS377がアミノ酸4、5、7、15、24、30、33、39、40、41、43、44、58、73、76、77、78、80、98、99、101、102、111、122、131、146、147、149、150、155、157、162、164、166、170、171、172、173、177、179、182、184、185、186、187、188、190、192、193、195、197、201、202、203、206、207、212、216、219、234、239、242、243、244、246、255、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、285、288、289、293、294、301、302、303、304、306、307、309、310、311、313、314、315、316、317、319、320、323、328、334、348、349、351、352、353、356、357、360、366、375、381、393、394、395、409、411、413、420、424、442、443、447、454、455、457、458、461、466、468、および472を含むが、これに限定されないアミノ酸位置において少なくとも1つの変異を有する変種マリノバクター・ハイドロカルボノクラスティカス(WS377)エステルシンターゼポリペプチドをさらに意図する。
【0017】
本開示の別の局面は、SEQ ID NO:51と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む変種チオエステラーゼポリペプチドを提供し、変種エステルシンターゼポリペプチドは、アミノ酸32、33、34、38、45、46、48、49、51、52、76、81、82、84、88、112、115、116、118、119、148、149、156、159および164を含むが、これに限定されないアミノ酸位置において少なくとも1つの変異を有するように遺伝子操作されており、変種チオエステラーゼポリペプチドは対応する野生型ポリペプチドと比較してより高いエステルシンターゼ活性を有する。本開示の関連する局面において、変種ポリペプチドはフォトバクテリウム・プロファンダム(Photobacterium profundum)(Ppro)チオエステラーゼポリペプチドである。組換え宿主細胞における変種チオエステラーゼポリペプチドの発現は、対応する野生型ポリペプチドを発現する組換え宿主細胞と比較してより高い力価の脂肪エステル組成物をもたらし、前記力価は少なくとも約5パーセント以上である。関連する局面において、変種チオエステラーゼポリペプチドによって、脂肪酸メチルエステル、脂肪酸エチルエステル、脂肪酸プロピルエステル、脂肪酸イソプロピルエステル、脂肪酸ブチルエステル、モノグリセリド、脂肪酸イソブチルエステル、脂肪酸2-ブチルエステル、および脂肪酸tert-ブチルエステルを含むが、これに限定されない脂肪エステル組成物が産生される。別の関連する局面において、エステルシンターゼ活性が上昇すると、脂肪酸エステルの鎖長の伸長、脂肪酸エステルの鎖長の短縮、および脂肪酸種の脂肪エステルパーセンテージの変化を含むが、これに限定されない特性が生じる。
【0018】
本開示の別の局面は、アミノ酸K32M、Q33A、Q33R、Q34R、I38Y、I45R、S46K、S46V、S46W、D48E、D48F、D48L、D48M、T49D、T49L、T49V、T49W、G51R、N52C、N52F、N52K、N52L、N52R、N76I、N76L、N76V、G81C、F82G、F82I、F82R、Q84A、Q84L、Q84V、R88H、V112L、N115F、N115W、N115Y、Y116H、Y116N、Y116P、Y116R、Y116S、Y116T、K118Q、R119C、I148Y、L149F、L149M、L149T、N156K、N156R、N156Y、L159K、L159M、およびD164Tを含むが、これに限定されない少なくとも1つの変異を有する変種チオエステラーゼポリペプチドを提供する。本開示の関連する局面は、変異S46VおよびY116H;S46V、D48M、G51R、N76V、およびY116H;S46V、D48M、T49L、G51R、N76V、Y116H、およびI148Y;S46V、D48M、T49L、G51R、N76V、N115F、Y116H、およびI148Y;Q33R、Q34R、S46V、D48M、T49L、G51R、N52R、N76V、V112L、N115W、Y116H、およびI148Y;Q33R、S46V、D48M、T49L、G51R、N52K、N76V、V112L、N115W、Y116H、I148Y、およびL149M;または変異S46V、D48M、T49L、G51R、N52R、N76V、Q84A、V112L、N115W、Y116H、I148Y、およびL149Mを有する変種チオエステラーゼポリペプチドを提供する。
【0019】
本開示は、エステルシンターゼ活性を有する変種チオエステラーゼポリペプチドを発現するように遺伝子操作された組換え宿主細胞をさらに含む。変種チオエステラーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む培養された組換え宿主細胞が本開示によってさらに意図される。組換え宿主細胞は、変種チオエステラーゼポリペプチドを発現させるのに有効な条件下で炭素源を含有する培地中で培養された場合に、変種チオエステラーゼポリペプチドを発現すると、対応する野生型チオエステラーゼポリペプチドを発現する宿主細胞と比較してより高い力価、より高い収率、および/またはより高い生産性の脂肪酸エステルを有する脂肪酸エステル組成物を産生する。力価は少なくとも約5パーセント以上である。細胞培養物は組換え宿主細胞および脂肪エステル組成物をさらに含む。脂肪エステル組成物は、C6、C8、C10、C12、C13、C14、C15、C16、C17、またはC18脂肪エステルの1つまたは複数を含んでもよい。さらに、脂肪エステル組成物は、不飽和脂肪エステルおよび/または飽和脂肪エステルおよび/または分枝鎖脂肪エステルを含んでもよい。脂肪エステル組成物は、脂肪エステルの還元末端からC7とC8との間の炭素鎖における位置7に二重結合を有する脂肪エステルをさらに含んでもよい。
【0020】
本開示の別の局面は、以下のようにSEQ ID NO:51のアミノ酸73~81を含む、エステルシンターゼ活性を有する変種チオエステラーゼポリペプチドを提供する:
LG[AG][VIL]D[AG]LRG。
【0021】
それにもかかわらず、本開示の別の局面は、SEQ ID NO:51を有する対応する野生型Pproポリペプチド配列と少なくとも約90%の配列同一性を有する変種フォトバクテリウム・プロファンダム(Ppro)チオエステラーゼポリペプチドであって、変種Pproポリペプチドが、野生型Pproポリペプチドと比較してより高いエステルシンターゼ活性を有し、アミノ酸32、33、34、38、45、46、48、49、51、52、76、81、82、84、88、112、115、116、118、119、148、149、156、159、および164を含むが、これに限定されない少なくとも1つの変異を有する変種フォトバクテリウム・プロファンダム(Ppro)チオエステラーゼポリペプチドを提供する。
【0022】
本開示は、(a)エステルシンターゼ活性が上昇した変種ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、(b)活性化脂肪酸、および(c)アルコールを含み、変種ポリペプチドのエステルシンターゼ活性を発現させるのに有効な条件下で脂肪エステル組成物を産生する組換え宿主細胞をさらに含む。活性化脂肪酸はアシル-ACPまたはアシル-CoAである。組換え宿主細胞は炭素源をさらに利用してもよい。脂肪エステル組成物は少なくとも約5パーセント以上の力価で産生される。
【0023】
本開示の別の局面は、SEQ ID NO:1と少なくとも約85%の配列同一性を有し、ATG開始の前にSEQ ID NO:27をさらに含む、変種エステルシンターゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0024】
それにもかかわらず、本開示の別の局面は、少なくとも、SEQ ID NO:29と約95%の配列同一性;またはSEQ ID NO:33と約95%の配列同一性;またはSEQ ID NO:35と約95%の配列同一性;またはSEQ ID NO:37と約95%の配列同一性;またはSEQ ID NO:39と約95%の配列同一性;またはSEQ ID NO:41と約95%の配列同一性;またはSEQ ID NO:43と約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する変種エステルシンターゼポリペプチドを提供する。本明細書において、組換え宿主細胞における変種エステルシンターゼポリペプチドの発現は、野生型マリノバクター・ハイドロカルボノクラスティカス(WS377)エステルシンターゼポリペプチドを発現する組換え宿主細胞と比較してより高い力価、より高い収率、および/またはより高い生産性の脂肪酸エステルの産生をもたらす。力価は少なくとも約5%以上である。
[本発明1001]
SEQ ID NO:2を含む変種エステルシンターゼポリペプチドであって、アミノ酸4、5、7、15、24、30、33、39、40、41、43、44、58、73、76、77、78、80、98、99、101、102、111、122、131、146、147、149、150、155、157、162、164、166、170、171、172、173、177、179、182、184、185、186、187、188、190、192、193、195、197、201、202、203、206、207、212、216、219、234、239、242、243、244、246、255、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、285、288、289、293、294、301、302、303、304、306、307、309、310、311、313、314、315、316、317、319、320、323、328、334、348、349、351、352、353、356、357、360、366、375、381、393、394、395、409、411、413、420、424、442、443、447、454、455、457、458、461、466、468、および472からなる群より選択されるアミノ酸位置において少なくとも1つの変異を有するように遺伝子操作されており、対応する野生型ポリペプチドと比較して改善された脂肪酸メチルエステル活性を有する、変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1002]
前記ポリペプチドがマリノバクター・ハイドロカルボノクラスティカス(Marinobacter hydrocarbonoclasticus)(WS377)エステルシンターゼポリペプチドである、本発明1001の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1003]
組換え宿主細胞における前記変種エステルシンターゼポリペプチドの発現が、対応する野生型ポリペプチドを発現する組換え宿主細胞と比較してより高い力価の脂肪エステル組成物をもたらす、本発明1001の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1004]
前記力価が少なくとも約5%以上である、本発明1003の変種エステルシンターゼ。
[本発明1005]
前記脂肪エステル組成物が、脂肪酸メチルエステル、脂肪酸エチルエステル、脂肪酸プロピルエステル、脂肪酸イソプロピルエステル、脂肪酸ブチルエステル、モノグリセリド、脂肪酸イソブチルエステル、脂肪酸2-ブチルエステル、および脂肪酸tert-ブチルエステルからなる群より選択される、本発明1003の変種エステルシンターゼ。
[本発明1006]
前記改善された脂肪酸メチルエステル活性が、βヒドロキシエステルの増加、βヒドロキシエステルの減少、脂肪酸エステルの鎖長の伸長、および脂肪酸エステルの鎖長の短縮からなる群より選択される特性をもたらす、本発明1001の変種エステルシンターゼ。
[本発明1007]
アミノ酸7、24、30、41、99、111、122、146、147、149、150、171、172、173、179、187、192、212、234、239、244、246、258、264、266、267、285、301、302、303、304、306、307、309、310、311、313、314、315、316、320、348、349、352、356、357、360、375、381、393、409、411、424、443、455、457、458、461、および472からなる群より選択されるアミノ酸位置において変異を有する、本発明1001の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1008]
組換え宿主細胞における前記変種エステルシンターゼポリペプチドの発現が、対応する野生型エステルシンターゼポリペプチドを発現する組換え宿主細胞と比較してパーセンテージが変化したβヒドロキシエステルの産生をもたらす、本発明1007の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1009]
前記パーセンテージが変化したβヒドロキシエステルが、パーセンテージが上昇または低下したβヒドロキシエステルである、本発明1008の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1010]
アミノ酸5、7、15、24、33、44、58、73、78、101、111、162、171、179、184、187、188、192、201、207、212、234、243、244、255、257、267、307、310、317、320、348、349、353、357、366、381、394、409、411、413、442、443、および461からなる群より選択されるアミノ酸位置において変異を有する、本発明1001の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1011]
アミノ酸5において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1012]
アミノ酸7において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1013]
アミノ酸15において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1014]
アミノ酸24において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1015]
アミノ酸33において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1016]
アミノ酸44において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1017]
アミノ酸58において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1018]
アミノ酸73において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1019]
アミノ酸78において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1020]
アミノ酸101において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1021]
アミノ酸111において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1022]
アミノ酸162において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1023]
アミノ酸171において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1024]
アミノ酸179において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1025]
アミノ酸184において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1026]
アミノ酸187において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1027]
アミノ酸188において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1028]
アミノ酸192において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1029]
アミノ酸201において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1030]
アミノ酸207において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1031]
アミノ酸212において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1032]
アミノ酸234において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1033]
アミノ酸243において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1034]
アミノ酸244において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1035]
アミノ酸255において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1036]
アミノ酸257において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1037]
アミノ酸267において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1038]
アミノ酸307において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1039]
アミノ酸310において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1040]
アミノ酸317において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1041]
アミノ酸320において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1042]
アミノ酸348において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1043]
アミノ酸349において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1044]
アミノ酸353において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1045]
アミノ酸357において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1046]
アミノ酸366において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1047]
アミノ酸381において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1048]
アミノ酸394において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1049]
アミノ酸409において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1050]
アミノ酸411において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1051]
アミノ酸413において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1052]
アミノ酸442において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1053]
アミノ酸443において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1054]
アミノ酸461において変異を含む、本発明1010の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1055]
アミノ酸G4R、T5P、T5S、D7N、S15G、T24M、T24W、L30H、G33D、G33S、L39A、L39M、L39S、R40S、D41A、D41G、D41H、D41Y、V43K、V43S、T44A、T44F、T44K、Y58C、Y58L、A73Q、V76L、D77A、K78F、K78W、I80V、R98D、E99Q、G101L、I102R、P111D、P111G、P111S、H122S、R131M、I146K、I146L、I146R、S147A、V149L、R150P、V155G、T157S、R162E、N164D、N164R、P166S、T170R、T170S、V171E、V171F、V171H、V171R、V171W、R172S、R172W、P173W、R177V、A179S、A179V、D182G、E184F、E184G、E184L、E184R、E184S、A185L、A185M、S186T、V187G、V187R、P188R、A190P、A190R、A190W、S192A、S192L、S192V、Q193R、Q193S、M195G、A197T、A197V、Q201A、Q201V、Q201W、A202L、D203R、P206F、R207A、G212A、G212L、V216I、V219L、V234C、H239G、T242K、T242R、A243R、Q244G、R246A、R246G、R246L、R246Q、R246V、R246W、D255E、L257I、K258R、N259E、N259Q、L260V、H262Q、A263V、S264D、S264V、S264W、G265N、G266A、G266S、S267G、A285L、A285R、A285V、N288D、N289E、N289G、T293A、P294G、V301A、N302G、I303G、I303R、I303W、R304W、A306G、D307F、D307G、D307L、D307N、D307R、D307V、E309A、E309G、E309S、G310H、G310R、G310V、T311S、T313S、Q314G、I315F、S316G、F317W、I319G、A320C、A323G、D328F、Q334K、Q334S、Q348A、Q348R、K349A、K349C、K349H、K349Q、P351G、K352I、K352N、S353K、S353T、T356G、T356W、Q357V、M360Q、M360R、M360S、M360W、Y366G、Y366W、G375A、G375V、G375S、V381F、E393G、E393R、E393W、G394E、T395E、V409L、L411A、A413T、I420V、S424G、S424Q、S442E、S442G、M443G、A447C、A447I、A447L、L454V、D455E、L457Y、E458W、I461G、I461L、I461V、K466N、A468G、K472T、およびK472からなる群より選択される少なくとも1つの変異を含む、本発明1001の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1056]
前記エステルシンターゼポリペプチドが変異D7N、A179V、およびV381Fを含む、本発明1055の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1057]
前記エステルシンターゼポリペプチドが変異D7N、A179V、Q348R、およびV381Fを含む、本発明1055の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1058]
前記エステルシンターゼポリペプチドが変異D7N、A179V、V187R、G212A、Q357V、V381F、およびM443Gを含む、本発明1055の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1059]
前記エステルシンターゼポリペプチドが変異T5S、S15G、P111S、V171R、P188R、F317W、S353T、V409L、およびS442Gを含む、本発明1055の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1060]
前記エステルシンターゼポリペプチドが変異T5S、S15G、K78F、P111S、V171R、P188R、S192V、A243R、F317W、K349H、S353T、V409L、およびS442Gを含む、本発明1055の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1061]
前記エステルシンターゼポリペプチドが変異T5S、S15G、V76L、P111S、V171R、P188R、K258R、S316G、F317W、S353T、M360R、V409L、およびS442Gを含む、本発明1055の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1062]
前記エステルシンターゼポリペプチドが変異T5S、S15G、P111S、V171R、P188R、Q244G、S267G、G310V、F317W、A320C、S353T、Y366W、V409L、およびS442Gを含む、本発明1055の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1063]
前記エステルシンターゼポリペプチドが変異S15G、P111S、V155G、P166S、V171R、P188R、F317W、Q348A、S353T、V381F、V409L、およびS442Gを含む、本発明1055の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1064]
前記エステルシンターゼポリペプチドが変異S15G、L39S、D77A、P111S、V171R、P188R、T313S、F317W、Q348A、S353T、V381F、V409L、I420V、およびS442Gを含む、本発明1055の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1065]
前記エステルシンターゼポリペプチドが変異T5S、S15G、T24W、T44F、P111S、I146L、V171R、P188R、D307N、F317W、S353T、V409L、およびS442Gを含む、本発明1055の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1066]
前記エステルシンターゼポリペプチドが変異T5S、S15G、K78F、P111S、V171R、P188R、S192V、R207A、A243R、D255E、L257I、N259Q、L260V、H262Q、G265N、A285V、N288D、N289G、F317W、Q348R、S353T、V381F、V409L、およびS442Gを含む、本発明1055の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1067]
前記エステルシンターゼポリペプチドが変異T5S、S15G、K78F、P111S、V171R、P188R、S192V、R207A、A243R、D255E、L257I、N259Q、L260V、H262Q、G265N、A285V、N288D、N289G、F317W、H349K、S353T、V381F、V409L、およびS442Gを含む、本発明1055の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1068]
前記エステルシンターゼポリペプチドが変異T5P、S15G、G33D、T44K、Y58L、P111S、R162E、V171R、P188R、R207A、V234C、Q244G、D255E、S267G、D307N、G310V、F317W、A320C、S353T、Y366W、G394E、V409L、S442G、およびI461Vを含む、本発明1055の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1069]
前記エステルシンターゼポリペプチドが変異T5P、S15G、G33D、T44K、Y58C、P111S、V171R、P188R、R207A、V234C、Q244G、L257I、S267G、D307N、G310V、F317W、A320C、S353T、Y366W、G394E、V409L、A413T、S442G、およびI461Vを含む、本発明1055の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1070]
前記エステルシンターゼポリペプチドが変異T5P、S15G、T44A、P111S、T157S、N164D、T170S、V171R、P188R、R207A、V216I、V234C、Q244G、L257I、S267G、D307N、G310V、F317W、A320C、Q334K、S353T、Y366W、G394E、V409L、S442G、およびI461Vを含む、本発明1055の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1071]
前記エステルシンターゼポリペプチドが変異T5P、S15G、Y58L、P111S、R162E、T170S、V171R、A179S、P188R、R207A、V234C、Q244G、L257I、S267G、D307N、G310V、F317W、A320C、S353K、Y366W、G394E、V409L、S442G、およびI461Vを含む、本発明1055の変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1072]
本発明1001~1071のいずれかの変種エステルシンターゼポリペプチドを発現するように遺伝子操作された、組換え宿主細胞。
[本発明1073]
本発明1001~1071のいずれかの変種エステルシンターゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む培養された組換え宿主細胞であって、該組換え宿主細胞が、該変種エステルシンターゼポリペプチドを発現させるのに有効な条件下で炭素源を含有する培地中で培養された場合に、該変種エステルシンターゼポリペプチドを発現すると、対応する野生型ポリペプチドを発現する宿主細胞よりも高い力価、高い収率、および/または高い生産性の脂肪酸エステルを有する脂肪酸エステル組成物を産生する、培養された組換え宿主細胞。
[本発明1074]
前記力価が少なくとも約5%以上である、本発明1073の培養された組換え宿主細胞。
[本発明1075]
本発明1001~1071のいずれかの変種エステルシンターゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む、培養された組換え宿主細胞であって、該組換え宿主細胞が、該変種エステルシンターゼポリペプチドを発現すると、野生型エステルシンターゼポリペプチドを発現する宿主細胞と比較してパーセンテージが変化したβヒドロキシエステルを有する脂肪エステル組成物を産生する、培養された組換え宿主細胞。
[本発明1076]
前記パーセンテージが変化したβヒドロキシエステルが、パーセンテージが上昇したβヒドロキシエステルである、本発明1075の組換え宿主細胞。
[本発明1077]
前記パーセンテージが変化したβヒドロキシエステルが、パーセンテージが低下したβヒドロキシエステルである、本発明1075の組換え宿主細胞。
[本発明1078]
本発明1072~1077のいずれかの組換え宿主細胞および脂肪エステル組成物を含む、細胞培養物。
[本発明1079]
前記脂肪エステル組成物がC6、C8、C10、C12、C13、C14、C15、C16、C17、またはC18脂肪エステルの1つまたは複数を含む、本発明1078の細胞培養物。
[本発明1080]
前記脂肪エステル組成物が不飽和脂肪エステルを含む、本発明1078の細胞培養物。
[本発明1081]
前記脂肪エステル組成物が、脂肪エステルの還元末端からC7とC8との間の炭素鎖における位置7に二重結合を有する脂肪エステルを含む、本発明1078の細胞培養物。
[本発明1082]
前記脂肪エステル組成物が飽和脂肪エステルを含む、本発明1078の細胞培養物。
[本発明1083]
前記脂肪エステル組成物が分枝鎖脂肪エステルを含む、本発明1078の細胞培養物。
[本発明1084]
SEQ ID NO:2を含む変種マリノバクター・ハイドロカルボノクラスティカス(WS377)エステルシンターゼポリペプチドであって、該変種WS377ポリペプチドが野生型WS377ポリペプチドと比較して改善された脂肪酸メチルエステル活性を有し、かつ該変種WS377がアミノ酸4、5、7、15、24、30、33、39、40、41、43、44、58、73、76、77、78、80、98、99、101、102、111、122、131、146、147、149、150、155、157、162、164、166、170、171、172、173、177、179、182、184、185、186、187、188、190、192、193、195、197、201、202、203、206、207、212、216、219、234、239、242、243、244、246、255、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、285、288、289、293、294、301、302、303、304、306、307、309、310、311、313、314、315、316、317、319、320、323、328、334、348、349、351、352、353、356、357、360、366、375、381、393、394、395、409、411、413、420、424、442、443、447、454、455、457、458、461、466、468、および472からなる群より選択されるアミノ酸位置において少なくとも1つの変異を有する、変種マリノバクター・ハイドロカルボノクラスティカス(WS377)エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1085]
SEQ ID NO:51と少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む変種チオエステラーゼポリペプチドであって、変種エステルシンターゼポリペプチドが、アミノ酸32、33、34、38、45、46、48、49、51、52、76、81、82、84、88、112、115、116、118、119、148、149、156、159、および164からなる群より選択されるアミノ酸位置において少なくとも1つの変異を有するように遺伝子操作され、該変種チオエステラーゼポリペプチドが、対応する野生型ポリペプチドと比較してより高いエステルシンターゼ活性を有する、変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1086]
前記ポリペプチドがフォトバクテリウム・プロファンダム(Photobacterium profundum)(Ppro)チオエステラーゼポリペプチドである、本発明1085の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1087]
組換え宿主細胞における前記変種チオエステラーゼポリペプチドの発現が、対応する野生型ポリペプチドを発現する組換え宿主細胞と比較してより高い力価の脂肪エステル組成物をもたらす、本発明1085の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1088]
前記力価が少なくとも約5%以上である、本発明1087の変種エステルシンターゼ。
[本発明1089]
アミノ酸32において変異を含む、本発明1085の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1090]
アミノ酸33において変異を含む、本発明1085の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1091]
アミノ酸34において変異を含む、本発明1085の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1092]
アミノ酸46において変異を含む、本発明1085の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1093]
アミノ酸48において変異を含む、本発明1085の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1094]
アミノ酸49において変異を含む、本発明1085の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1095]
アミノ酸51において変異を含む、本発明1085の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1096]
アミノ酸52において変異を含む、本発明1085の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1097]
アミノ酸76において変異を含む、本発明1085の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1098]
アミノ酸82において変異を含む、本発明1085の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1099]
アミノ酸84において変異を含む、本発明1085の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1100]
アミノ酸112において変異を含む、本発明1085の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1101]
アミノ酸115において変異を含む、本発明1085の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1102]
アミノ酸116において変異を含む、本発明1085の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1103]
アミノ酸148において変異を含む、本発明1085の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1104]
アミノ酸149において変異を含む、本発明1085の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1105]
アミノ酸156において変異を含む、本発明1085の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1106]
アミノ酸159において変異を含む、本発明1085の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1107]
K32M、Q33A、Q33R、Q34R、I38Y、I45R、S46K、S46V、S46W、D48E、D48F、D48L、D48M、T49D、T49L、T49V、T49W、G51R、N52C、N52F、N52K、N52L、N52R、N76I、N76L、N76V、G81C、F82G、F82I、F82R、Q84A、Q84L、Q84V、R88H、V112L、N115F、N115W、N115Y、Y116H、Y116N、Y116P、Y116R、Y116S、Y116T、K118Q、R119C、I148Y、L149F、L149M、L149T、N156K、N156R、N156Y、L159K、L159M、およびD164Tからなる群より選択される少なくとも1つの変異を含む、本発明1085の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1108]
前記チオエステラーゼポリペプチドが変異S46VおよびY116Hを含む、本発明1107の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1109]
前記チオエステラーゼポリペプチドが変異S46V、D48M、G51R、N76V、およびY116Hを含む、本発明1107の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1110]
前記チオエステラーゼポリペプチドが変異S46V、D48M、T49L、G51R、N76V、Y116H、およびI148Yを含む、本発明1107の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1111]
前記チオエステラーゼポリペプチドが変異S46V、D48M、T49L、G51R、N76V、N115F、Y116H、およびI148Yを含む、本発明1107の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1112]
前記チオエステラーゼポリペプチドが変異Q33R、Q34R、S46V、D48M、T49L、G51R、N52R、N76V、V112L、N115W、Y116H、およびI148Yを含む、本発明1107の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1113]
前記チオエステラーゼポリペプチドが変異Q33R、S46V、D48M、T49L、G51R、N52K、N76V、V112L、N115W、Y116H、I148Y、およびL149Mを含む、本発明1107の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1114]
前記チオエステラーゼポリペプチドが変異S46V、D48M、T49L、G51R、N52R、N76V、Q84A、V112L、N115W、Y116H、I148Y、およびL149Mを含む、本発明1107の変種チオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1115]
本発明1085~1114のいずれかの変種チオエステラーゼポリペプチドを発現するように遺伝子操作された、組換え宿主細胞。
[本発明1116]
本発明1085~1114のいずれかの変種チオエステラーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む、培養された組換え宿主細胞であって、該組換え宿主細胞が、該変種チオエステラーゼポリペプチドを発現させるのに有効な条件下で炭素源を含有する培地中で培養された場合に、該変種チオエステラーゼポリペプチドを発現すると、対応する野生型チオエステラーゼポリペプチドを発現する宿主細胞と比較してより高い力価、より高い収率、および/またはより高い生産性の脂肪酸エステルを有する脂肪酸エステル組成物を産生する、培養された組換え宿主細胞。
[本発明1117]
前記力価が少なくとも約5%以上である、本発明1116の培養された組換え宿主細胞。
[本発明1118]
本発明1115~1117のいずれかの組換え宿主細胞および脂肪エステル組成物を含む、細胞培養物。
[本発明1119]
前記脂肪エステル組成物がC6、C8、C10、C12、C13、C14、C15、C16、C17、またはC18脂肪エステルの1つまたは複数を含む、本発明1118の細胞培養物。
[本発明1120]
前記脂肪エステル組成物が不飽和脂肪エステルを含む、本発明1118の細胞培養物。
[本発明1121]
前記脂肪エステル組成物が、脂肪エステルの還元末端からC7とC8との間の炭素鎖における位置7に二重結合を有する脂肪エステルを含む、本発明1118の細胞培養物。
[本発明1122]
前記脂肪エステル組成物が飽和脂肪エステルを含む、本発明1118の細胞培養物。
[本発明1123]
前記脂肪エステル組成物が分枝鎖脂肪エステルを含む、本発明1118の細胞培養物。
[本発明1124]
以下のようにSEQ ID NO:51のアミノ酸73~81を含む、本発明1085の変種チオエステラーゼポリペプチド:LG[AG][VIL]D[AG]LRG。
[本発明1125]
SEQ ID NO:51を含む対応する野生型Pproポリペプチド配列と少なくとも90%の配列同一性を有する変種フォトバクテリウム・プロファンダム(「Ppro」)チオエステラーゼポリペプチドであって、該変種Pproポリペプチドが、該野生型Pproポリペプチドと比較してより高いエステルシンターゼ活性を有し、かつ、32、33、34、38、45、46、48、49、51、52、76、81、82、84、88、112、115、116、118、119、148、149、156、159、および164からなる群より選択されるアミノ酸において少なくとも1つの変異を有する、変種フォトバクテリウム・プロファンダムチオエステラーゼポリペプチド。
[本発明1126]
(a)エステルシンターゼ活性が上昇した本発明1001~1071、1084~1114、または1124~1125のいずれかの変種ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(b)活性化脂肪酸;および
(c)アルコール
を含み、該変種ポリペプチドのエステルシンターゼ活性を発現させるのに有効な条件下で脂肪エステル組成物を産生する、組換え宿主細胞。
[本発明1127]
前記活性化脂肪酸がアシル-ACPまたはアシル-CoAである、本発明1126の組換え宿主細胞。
[本発明1128]
炭素源をさらに含む、本発明1126の組換え宿主細胞。
[本発明1129]
前記脂肪エステル組成物が少なくとも約5%以上の力価で産生される、本発明1126の組換え宿主細胞。
[本発明1130]
SEQ ID NO:1と少なくとも約85%の配列同一性を有し、ATG開始の前にSEQ ID NO:27をさらに含む、変種エステルシンターゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
[本発明1131]
SEQ ID NO:29と少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1132]
SEQ ID NO:33と少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1133]
SEQ ID NO:35と少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1134]
SEQ ID NO:37と少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1135]
SEQ ID NO:39と少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1136]
SEQ ID NO:41と少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1137]
SEQ ID NO:43と少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1138]
組換え宿主細胞における前記変種エステルシンターゼポリペプチドの発現が、野生型マリノバクター・ハイドロカルボノクラスティカス(WS377)エステルシンターゼポリペプチドを発現する組換え宿主細胞と比較してより高い力価、より高い収率、またはより高い生産性の脂肪酸エステルの産生をもたらす、本発明1131~1137のいずれかの変種エステルシンターゼポリペプチド。
[本発明1139]
前記力価が少なくとも約5%以上である、本発明1138の変種エステルシンターゼ。
[本発明1140]
前記脂肪エステル組成物が、脂肪酸メチルエステル、脂肪酸エチルエステル、脂肪酸プロピルエステル、脂肪酸イソプロピルエステル、脂肪酸ブチルエステル、モノグリセリド、脂肪酸イソブチルエステル、脂肪酸2-ブチルエステル、および脂肪酸tert-ブチルエステルからなる群より選択される、本発明1003、1005、1073、1075、1087、1116、および1126のいずれかの変種ポリペプチド。
[本発明1141]
前記改善された脂肪酸メチルエステル活性が、βヒドロキシエステルの増加、βヒドロキシエステルの減少、脂肪酸エステルの鎖長の伸長、および脂肪酸エステルの鎖長の短縮からなる群より選択される特性をもたらす、本発明1001~1071のいずれかの変種ポリペプチド。
[本発明1142]
前記エステルシンターゼ活性の上昇が、脂肪酸エステルの鎖長の伸長、脂肪酸エステルの鎖長の短縮、および脂肪酸種の脂肪エステルパーセンテージの変化からなる群より選択される特性をもたらす、本発明1085~1114のいずれかの変種ポリペプチド。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本開示は、好ましい態様を例示するのに役立つ添付の図と一緒に読んだ時に最も良く理解される。しかしながら、本開示は、図に開示される特定の態様に限定されないことが理解される。
【
図1】様々な鎖長の脂肪酸エステルを産生するために組換え宿主細胞に組み込まれ得る例示的な三遺伝子生合成経路の模式図である。使用した略語には、チオエステラーゼのTE、脂肪酸アシルCoAシンセターゼのFACS、およびアシルトランスフェラーゼのATが含まれる。
【
図2】チオエステラーゼによって触媒される提唱された無益回路の模式図である。
【
図3】アシル-ACPから出発して脂肪エステルを産生するための2種類の例示的な生合成経路の模式図である。この場合、脂肪エステルの産生は一酵素系または三酵素系によって達成される。
【
図4】組み合わせライブラリーヒットのプレート発酵からのGC-FIDスクリーニングの結果を示す。Group0プライマーおよびテンプレートとしてpKEV38を用いて組み合わせライブラリーを組み立て、形質転換によってBD64に導入した。
【
図5】野生型'377エステルシンターゼを含有する株と比較した、変異体KEV040株、KEV075株、およびKEV085株によって産生されたFAME力価および%β-OH FAMEを示す。
【
図6】メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、またはグリセロールが株に供給された時のKEV040(ワックス)およびbecos.128(Ppro)によって産生された全脂肪酸種の力価を示す。
【
図7】
図7Aおよび7Bは、Ppro変種がメタノールを用いてFAME(
図7A)を作る能力またはエタノールを用いてFAEE(
図7B)を作る能力を評価するために、組み立てられたPpro組み合わせライブラリーにメタノールが供給された時に産生されたFAME(
図7A)またはFAEE(
図7B)の力価および%を示す。
【
図8】(供給された)メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、またはグリセロールの存在下で培養された時のbecos.128によって産生された脂肪酸種の組成を示す。FFAは遊離脂肪酸種を指し、FAxEはエステル種を指す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
詳細な説明
概略
本開示は、脂肪エステルを産生するための改善されたエステルシンターゼ特性を有する変種酵素に関する。本明細書において、本開示は、改善されたエステルシンターゼ特性を有する変種エステルシンターゼ酵素およびエステルシンターゼ活性を有するように設計された変種チオエステラーゼ酵素などの酵素に関する。両タイプの酵素とも、単独で、または他のタンパク質と組み合わせて用いられた時に脂肪エステルの産生を改善するように操作されている。これを例示するために、本出願人らは、脂肪酸アシル-CoAシンセターゼまたは異なるチオエステラーゼを過剰発現させる必要なくインビボで脂肪エステルを産生するように、マリノバクター・ハイドロカルボノクラスティカスに由来するエステルシンターゼおよびフォトバクテリウム・プロファンダムに由来するチオエステラーゼを操作した。今までのところ、いかなる脂肪エステル産生もチオエステラーゼ、アシル-CoAシンセターゼ、およびエステルシンターゼの同時発現を必要とするので、脂肪エステルの高収率を生じるためには、少なくともアシル-CoAシンセターゼまたはチオエステラーゼ酵素をエステルシンターゼと同時に過剰発現しなければならないと考えられてきた。さらに、天然マリノバクター属(Marinobacter)エステルシンターゼおよび天然チオエステラーゼは短鎖アルコールを利用することは一般に知られていない。しかしながら、本出願人らは、これらの酵素がメタノールおよびエタノールを含む短鎖アルコールを利用し、それによって脂肪エステルを産生できるように、エステルシンターゼ活性を有する変種酵素を操作した。例えば、変種エステルシンターゼおよびエステルシンターゼ活性を有する変種チオエステラーゼは、脂肪酸メチルエステル(FAME)および/または脂肪酸エチルエステル(FAEE)を多量に産生することができる。従って、本出願人らは、インビボでエステルの高産生につながる変種酵素を操作した。
【0027】
本明細書では、本出願人らは、脂肪エステルを産生するために便利な一遺伝子系(
図3を参照されたい)を使用する。一遺伝子系は、典型的には、組換え宿主細胞において脂肪エステルを産生するために、アシル-ACPまたはアシル-CoAなどの活性化脂肪酸(すなわち、基質として)およびアルコールと組み合わせて、改善されたエステルシンターゼ活性を有する変種酵素をコードする遺伝子を使用する。脂肪エステルを産生するために一遺伝子系を使用する確かな(すなわち、多遺伝子系にはない)利点がある。例えば、このような利点の1つは系そのものが単純なことであり、このために系を速く実行し、容易にモニタリングすることができる。一遺伝子系は、いわゆる無益回路(すなわち、基質無益回路。2つの代謝経路が反対方向に同時に進み、全体の効果が無い)を迂回または回避する可能性が高く、それによってインビボでのエステル産生の効率が高くなるので細胞に対するエネルギー効率が高いことが別の利点である。
【0028】
さらに具体的には、大腸菌内での脂肪酸エステル産生は典型的にはチオエステラーゼ('tesA)、アシル-CoAシンセターゼ(fadD)、およびワックスまたはエステルシンターゼの同時発現に頼る。エステル産生を最大にするためには、遊離脂肪酸(「FFA」)の産生を最小にするように3種類の遺伝子のバランスを注意深く取る。チオエステラーゼはアシル-ACP(脂肪酸生合成の産物)およびアシル-CoA(アシル-CoAシンセターゼの産物)の両方に作用して、遊離脂肪酸(アシル-CoAシンセターゼの基質)を生成することができる。本開示は、マリノバクター・ハイドロカルボノクラスティカスDSM8798 GenBank: EF219377(本明細書において「'377」と呼ぶ)からクローニングされた、野生型酵素と比べて改善された特性を有する改変されたエステルシンターゼに関する。改変された'377はアシル-ACPおよびアシル-CoAの両方に作用して脂肪酸メチルエステル(「FAME」)などの脂肪酸エステルを生成することが示されている。
【0029】
さらに、生成された全アシル種(FAME+FFA)に対するFAMEのパーセンテージは、使用されているチオエステラーゼに応じて変化する。フォトバクテリウム・プロファンダム(「P.プロファンダム」または「Ppro」)の'tesAは天然では低パーセンテージのFAMEを産生する。高パーセンテージのFAMEを産生するように、フォトバクテリウム・プロファンダム'tesAを操作した。従って、本開示は、大腸菌などの宿主細胞内で他の任意の遺伝子を過剰発現させる必要なく高パーセンテージのFAMEを産生するように遺伝子操作された、フォトバクテリウム・プロファンダム(本明細書において「Ppro」と呼ぶ)に由来する改変されたチオエステラーゼ('tesA)にさらに関する。理論に拘束されたくはないが、アシル-ACP(脂肪酸生合成の産物)に直接作用するエステルシンターゼは、現行のバイオディーゼル経路に理論上存在する無益回路を除き、従って、細胞からの供給源を確保し、それによって、供給源を脂肪酸生合成に向けることができ、産生も改善するはずである。
【0030】
定義
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる場合、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「その(the)」は、文脈によってはっきりと示されていない限り複数の指示物を含む。従って、例えば、「組換え宿主細胞」への言及は2つ以上のこのような組換え宿主細胞を含み、「脂肪エステル」への言及は1つまたは複数の脂肪エステルまたはエステルの混合物を含み、「核酸コード配列」への言及は1つまたは複数の核酸コード配列を含み、「酵素」への言及は1つまたは複数の酵素などを含む。
【0031】
本説明書全体を通して配列アクセッション番号は、米国立衛生研究所によって維持されているNCBI(米国立バイオテクノロジー情報センター)によって提供されているデータベース(本明細書において「NCBIアクセッション番号」または「GenBankアクセッション番号」と特定される)、ならびにスイスバイオインフォマティクス研究所(Swiss Institute of Bioinformatics)によって提供されているUniProt Knowledgebase(UniProtKB)およびSwiss-Protデータベース(本明細書において「UniProtKBアクセッション番号」と特定される)から入手した。
【0032】
EC番号は国際生化学分子生物学連合(IUBMB)の命名法委員会(Nomenclature Committee)によって定められた。EC番号の説明はワールドワイドウェブ上にあるIUBMB Enzyme Nomenclatureウエブサイトから入手可能である。EC番号は、触媒される反応に従って酵素を分類する。
【0033】
本明細書で使用する「ヌクレオチド」という用語は、複素環式塩基、糖、および1つまたは複数のリン酸基からなるポリヌクレオチドの単量体単位を指す。天然塩基(グアニン、(G)、アデニン、(A)、シトシン、(C)、チミン、(T)、およびウラシル(U))は典型的にはプリンまたはピリミジンの誘導体であるが、天然および非天然の塩基類似体も含まれることが理解されるはずである。天然糖は五炭糖(五炭素糖)デオキシリボース(DNAを形成する)またはリボース(RNAを形成する)であるが、天然および非天然の糖類似体も含まれることが理解されるはずである。核酸は、典型的には、核酸またはポリヌクレオチドを形成するためにリン酸結合を介して連結されるが、他の多くの連結(例えば、ホスホロチオエート、ボラノホスフェートなど)が当技術分野において公知である。
【0034】
「ポリヌクレオチド」という用語は、一本鎖または二本鎖でもよく、非天然ヌクレオチドまたは変化したヌクレオチドを含有してもよい、リボヌクレオチド(RNA)またはデオキシリボヌクレオチド(DNA)の重合体を指す。「ポリヌクレオチド」、「核酸配列」、および「ヌクレオチド配列」という用語は、RNAまたはDNAいずれかの任意の長さのヌクレオチドの重合体型をいうために本明細書において同義に用いられる。これらの用語は分子の一次構造を指し、従って、二本鎖DNAおよび一本鎖DNAならびに二本鎖RNAおよび一本鎖RNAを含む。これらの用語は、等価物として、メチル化および/またはキャッピングされたポリヌクレオチドなどがあるが、これに限定されないヌクレオチド類似体および改変ポリヌクレオチドから作られたRNAまたはDNAの類似体を含む。ポリヌクレオチドは、プラスミド、ウイルス、染色体、EST、cDNA、mRNA、およびrRNAを含むが、これに限定されない任意の形をとってもよい。
【0035】
本明細書で使用する「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基の重合体をいうために同義に用いられる。「組換えポリペプチド」という用語は、組換え法によって産生されたポリペプチドを指し、一般的に、発現されたタンパク質をコードするDNAまたはRNAは適切な発現ベクターに挿入され、次に、ポリペプチドを産生するために、この発現ベクターを用いて宿主細胞を形質転換する。
【0036】
本明細書で使用する「ホモログ」および「相同の」という用語は、対応するポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列と少なくとも約50%同一の配列を含むポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。好ましくは、相同のポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、対応するアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の相同性を有するポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を有する。本明細書で使用する、配列「相同性」および配列「同一性」という用語は同義に用いられる。
【0037】
当業者は2つ以上の配列間の相同性を求める方法をよく知っている。簡単に述べると、2つの配列間の「相同性」の計算は以下の通りに行うことができる。最適に比較するために配列をアラインメントする(例えば、最適アラインメントのために第1および第2のアミノ酸配列または核酸配列の一方または両方にギャップが導入されてもよく、比較のために非相同配列が無視されてもよい)。1つの好ましい態様において、比較のためにアラインメントされる第1の配列の長さは、第2の配列の長さの少なくとも約30%、好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約50%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、さらにより好ましくは少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または約100%である。次いで、第1の配列および第2の配列の対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置にあるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められる場合、この分子はその位置において同一である。2つの配列間のパーセント相同性は、2つの配列の最適アラインメントのために導入される必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れた時の、これらの配列が共有する同一の位置の数の関数である。2つの配列間の配列の比較およびパーセント相同性の決定は、BLAST(Altschul et al., J. Mol. Biol, 215(3): 403-410 (1990))などの数学アルゴリズムを用いて達成することができる。2つのアミノ酸配列間のパーセント相同性も、GCGソフトウェアパッケージにあるGAPプログラムに組み込まれているNeedleman-Wunschアルゴリズムを用いて、Blossum62行列またはPAM250行列ならびに16、14、12、10、8、6、または4のギャップウエイトおよび1、2、3、4、5、または6のレングスウエイト(Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol., 48: 444-453 (1970))を用いて求めることができる。2つのヌクレオチド配列間のパーセント相同性も、GCGソフトウェアパッケージにあるGAPプログラムを用いて、NWSgapdna.CMP行列ならびに40、50、60、70、または80のギャップウエイトおよび1、2、3、4、5、または6のレングスウエイトを用いて求めることができる。当業者は初回相同性計算を行い、それに応じてアルゴリズムパラメータを調節することができる。好ましいパラメータセット(および分子がクレームの相同性制限の範囲内であるかどうかを確かめるために、どのパラメータを適用すべきか専門家がよく分からない場合に使用すべきパラメータセット)は、Blossum62スコアリング行列とギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ(gap extend penalty)4、およびフレームシフトギャップペナルティ5である。さらなる配列アラインメント法はバイオテクノロジー分野において公知である(例えば、Rosenberg, BMC Bioinformatics, 6: 278 (2005); Altschul, et al., FEBS J., 272(20): 5101-5109 (2005)を参照されたい)。
【0038】
「低ストリンジェンシー条件下、中ストリンジェンシー条件下、高ストリンジェンシー条件下、または非常に高いストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする」という用語はハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件について述べている。ハイブリダイゼーション反応を行うための手本は、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6において見られる。この参考文献には水性方法および非水性方法が記載されており、いずれの方法も使用することができる。本明細書において言及される特異的ハイブリダイゼーション条件は以下の通りである:1)低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件--6X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、約45℃に続いて、0.2XSSC、0.1%SDS、少なくとも50℃で2回洗浄(低ストリンジェンシー条件の場合、洗浄温度を55℃まで上げることができる);2)中ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件--6XSSC、約45℃に続いて、0.2XSSC、0.1%SDS、60℃で1回または複数回の洗浄;3)高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件--6XSSC、約45℃に続いて、0.2.XSSC、0.1%SDS、65℃で1回または複数回の洗浄;および4)非常に高いストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件--0.5Mリン酸ナトリウム、7%SDS、65℃に続いて、0.2XSSC、1%SDS、65℃で1回または複数回の洗浄。他で特定しない限り、非常に高いストリンジェンシー条件(4)が好ましい条件である。
【0039】
「内因性」ポリペプチドは、組換え細胞を操作する(または「得る」)のに使用した親微生物細胞(「宿主細胞」とも呼ばれる)のゲノムによってコードされるポリペプチドを指す。「外因性」ポリペプチドは、親微生物細胞ゲノムによってコードされないポリペプチドを指す。変種(すなわち、変異体)ポリペプチドは外因性ポリペプチドの一例である。
【0040】
本明細書で使用する「異種」という用語は、典型的には、所定の生物に天然で存在しないヌクレオチド配列、ポリペプチド配列、またはタンパク質配列を指す。例えば、植物に内在するポリヌクレオチド配列を組換え法によって宿主細胞に導入することができ、次いで、植物ポリヌクレオチドはその組換え宿主細胞にとって異種になる。「異種」という用語はまた、組換え宿主細胞内に非天然状態で存在するヌクレオチド配列、ポリペプチド配列、またはタンパク質配列に関して用いられることがある。例えば、「異種」ヌクレオチド配列、ポリペプチド配列、またはタンパク質配列は、対応する野生型宿主細胞に天然で存在する野生型配列と比べて改変されてもよく、例えば、ヌクレオチド、ポリペプチド、またはタンパク質の発現レベルまたは配列が改変されていてもよい。
【0041】
本明細書で使用する、ポリペプチドの「断片」という用語は、サイズが4アミノ酸残基から全アミノ酸配列マイナス1アミノ酸残基にわたる、完全長ポリペプチドまたはタンパク質の短い部分を指す。本開示のある特定の態様において、断片とは、ポリペプチドまたはタンパク質のドメイン(例えば、基質結合ドメインまたは触媒ドメイン)の全アミノ酸配列を指す。
【0042】
「変異誘発」という用語は、生物の遺伝情報が安定に変えられるプロセスを指す。核酸配列をコードするタンパク質の変異誘発によって変異体タンパク質が生じる。変異誘発はまた、タンパク質活性の改変をもたらす非コード核酸配列変化も指す。
【0043】
本明細書で使用する「変異」とは、遺伝子の核酸位置またはポリペプチドもしくはタンパク質のアミノ酸位置の恒久的変化を指す。変異には、置換、付加、挿入、および欠失が含まれる。例えば、アミノ酸位置の変異は、あるタイプのアミノ酸から別のタイプのアミノ酸への置換でもよい(例えば、セリン(S)はアラニン(A)で置換されてもよく、リジン(L)はT(スレオニン)で置換されてもよいなど)。従って、ポリペプチドまたはタンパク質は、あるアミノ酸が別のアミノ酸で置換されている1つまたは複数の変異を有してもよい。例えば、エステルシンターゼポリペプチドまたはタンパク質は、そのアミノ酸配列に1つまたは複数の変異を有してもよい。
【0044】
「エステルシンターゼ変種」は、そのアミノ酸配列に1つまたは複数の変異を有するエステルシンターゼポリペプチドまたはタンパク質である。一例では、アミノ酸配列は0(すなわち、ATG開始点に基づく最初のメチオニン(M))~473に及ぶ。このようなエステルシンターゼ変種は、アミノ酸位置1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、および/または473に1つまたは複数の変異を有し得る。特に、アミノ酸位置139および140は保存モチーフの一部であり、従って、酵素活性に重要である。1つの態様において、変異には、G4R、T5P、T5S、D7N、S15G、T24M、T24N、T24W、Q26T、L30H、G33D、G33N、G33S、L39A、L39M、L39S、R40S、D41A、D41G、D41H、D41Y、V43K、V43S、T44A、T44F、T44K、E48A、E48Q、A49D、A49T、Y58C、Y58L、I70L、I70V、A73G、A73Q、A73S、A73T、V76L、D77A、K78F、K78W、D79H、D79K、I80V、R98D、E99Q、G101L、I102R、P111D、P111G、P111S、H122S、V123I、V123M、R131M、I146K、I146L、I146R、S147A、V149L、R150P、V155G、T157S、T158E、T158K、R162E、R162K、C163I、C163R、N164D、N164R、P166L、P166S、T170R、T170S、V171E、V171F、V171H、V171R、V171W、R172S、R172W、P173W、H174E、Q175R、Q175S、R176T、R177V、A179K、A179S、A179V、D182G、K183S、E184F、E184G、E184L、E184R、E184S、A185L、A185M、S186T、V187G、V187R、P188R、A189G、A190P、A190R、A190W、V191I、V191L、S192A、S192L、S192V、Q193R、Q193S、M195G、D196E、A197T、A197V、Q201A、Q201V、Q201W、A202L、D203R、P206F、R207A、G212A、G212L、G212M、G212S、V216I、V219L、V234C、V236A、V236K、L237I、H239G、T242K、T242R、A243G、A243R、Q244G、R246A、R246G、R246L、R246Q、R246V、R246W、D255E、L257I、L257M、K258R、N259A、N259E、N259Q、L260M、L260V、H262Q、H262R、A263V、S264D、S264V、S264W、G265N、G266A、G266S、S267G、A285L、A285R、A285V、N288D、N289E、N289G、T293A、T293I、P294G、V301A、N302G、I303G、I303R、I303W、R304W、A306G、A306S、D307F、D307G、D307L、D307N、D307R、D307V、E309A、E309G、E309S、G310H、G310R、G310V、T311S、T313S、Q314G、I315F、S316G、F317W、I319G、A320C、A323G、D328F、N331I、N331K、N331T、Q334K、Q334S、Q335C、Q335N、Q335S、T338A、T338E、T338H、Q348A、Q348R、K349A、K349C、K349H、K349Q、P351G、K352I、K352N、S353K、S353T、T356G、T356W、Q357V、M360R、M360Q、M360S、M360W、Y366G、Y366W、G375A、G375V、G375S、V381F、E393G、E393R、E393W、G394E、G394R、T395E、R402K、V409L、L411A、A413T、I420V、S424G、S424Q、S442E、S442G、M443G、A447C、A447I、A447L、L454V、D455E、L457Y、E458W、I461G、I461L、I461V、K466N、A468G、K472T、およびK472が含まれる。
【0045】
「エステルシンターゼ活性を有するチオエステラーゼ変種」または「チオエステラーゼ変種」は本明細書において同義に用いられ、エステルシンターゼ活性を有し、そのアミノ酸配列に1つまたは複数の変異を有するチオエステラーゼポリペプチドまたはタンパク質を指す。一例では、アミノ酸配列は0(すなわち、ATG開始点に基づく最初のメチオニン(M))~182に及ぶ。このようなチオエステラーゼ変種は、アミノ酸位置1、2、3、4、5、6、7、8、9、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、158、159、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、および/または182に1つまたは複数の変異を有し得る。しかしながら、アミノ酸位置10、157、および160は触媒三連構造(catalytic triad)の一部であり、従って、酵素活性に重要である。1つの態様において、変異には、R18C、K32M、Q33A、Q33R、Q34R、E37D、I38Y、I45R、I45T、S46K、S46V、S46W、D48E、D48F、D48L、D48M、T49D、T49L、T49V、T49W、G51R、N52C、N52F、N52K、N52L、N52R、K65M、N76I、N76L、N76V、G81C、F82G、F82I、F82R、Q84A、Q84L、Q84V、R88H、D102V、V112L、N115F、N115W、N115Y、Y116H、Y116N、Y116P、Y116R、Y116S、Y116T、K118Q、R119C、I148Y、L149F、L149M、L149T、N156K、N156R、N156Y、L159K、L159M、およびD164Tが含まれる。
【0046】
本明細書で使用する「遺伝子」という用語は、RNA産物またはタンパク質産物をコードする核酸配列、ならびにRNAもしくはタンパク質の発現に影響を及ぼす機能的に連結された核酸配列(例えば、このような配列にはプロモーターもしくはエンハンサー配列が含まれるが、これに限定されない)、またはRNAもしくはタンパク質の発現に影響を及ぼす機能的に連結された核酸配列コード配列(例えば、このような配列にはリボソーム結合部位もしくは翻訳制御配列が含まれるが、これに限定されない)を指す。
【0047】
発現制御配列は当技術分野において公知であり、例えば、宿主細胞内でポリヌクレオチド配列の発現をもたらす、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、転写ターミネーター、配列内リボソーム進入部位(IRES)などを含む。発現制御配列は、転写に関与する細胞タンパク質と特異的に相互作用する(Maniatis et al., Science, 236: 1237-1245(1987))。例示的な発現制御配列 は、例えば、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology, Vol.185, Academic Press, San Diego, Calif.(1990)に記載されている。本開示の方法では、発現制御配列はポリヌクレオチド配列に機能的に連結される。「機能的に連結された」とは、適切な分子(例えば、転写活性化因子タンパク質)が発現制御配列に結合した時に遺伝子が発現されるようにポリヌクレオチド配列および発現制御配列が接続されていることを意味する。機能的に連結されたプロモーターは、転写および翻訳の方向に関して、選択されたポリヌクレオチド配列の上流に配置される。機能的に連結されたエンハンサーは、選択されたポリヌクレオチドの上流に配置されてもよく、内部に配置されてもよく、下流に配置されてもよい。
【0048】
本明細書で使用する「ベクター」という用語は、別の核酸、すなわち、ベクターに連結されているポリヌクレオチド配列を輸送することができる核酸分子を指す。あるタイプの有用なベクターはエピソーム(すなわち、染色体外複製が可能な核酸)である。有用なベクターは、自律複製および/またはベクターに連結されている核酸の発現が可能なベクターである。機能的に連結された遺伝子の発現を管理することができるベクターは本明細書において「発現ベクター」と呼ばれる。一般的に、組換えDNA法において有用な発現ベクターは、多くの場合、「プラスミド」の形をとることが多い。一般的に、「プラスミド」は、ベクターの形をとって染色体に結合されない環状二本鎖DNAループを指す。「プラスミド」および「ベクター」という用語は、プラスミドがベクターの形で最もよく用いられるので本明細書において同義に用いられる。しかしながら、等価な機能を果たし、かつ後に当技術分野において公知になる、このような他の形の発現ベクターも含まれる。一部の態様において、組換えベクターは、ポリヌクレオチド配列に機能的に連結されるプロモーターをさらに含む。一部の態様において、プロモーターは、発生により調節されるプロモーター、細胞小器官特異的プロモーター、組織特異的プロモーター、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、または細胞特異的プロモーターである。組換えベクターは、典型的には、ポリヌクレオチド配列に機能的に連結される発現制御配列;ポリヌクレオチド配列に機能的に連結される選択マーカー;ポリヌクレオチド配列に機能的に連結されるマーカー配列;ポリヌクレオチド配列に機能的に連結される精製部分;ポリヌクレオチド配列に機能的に連結される分泌配列;およびポリヌクレオチド配列に機能的に連結される標的化配列より選択される少なくとも1つの配列を含む。ある特定の態様において、ヌクレオチド配列は宿主細胞のゲノムDNAに安定に組み込まれ、ヌクレオチド配列の発現は調節性プロモーター領域の制御下にある。本明細書に記載の発現ベクターは、宿主細胞内でのポリヌクレオチド配列の発現に適した形をした本明細書に記載のポリヌクレオチド配列を含む。発現ベクターの設計は、形質転換しようとする宿主細胞の選択、望ましいポリペプチドの発現レベルなどのような要因に依存し得ることが当業者によって理解されるだろう。本明細書に記載のようにポリヌクレオチド配列によってコードされる、融合ポリペプチドを含むポリペプチドを産生するために、本明細書に記載の発現ベクターを宿主細胞に導入することができる。
【0049】
本明細書で使用する、組換え、または操作された「宿主細胞」は、脂肪酸誘導体の1つまたは複数を産生するために用いられる宿主細胞、例えば、微生物である。脂肪酸誘導体には、例えば、アシル-CoA、脂肪酸、脂肪アルデヒド、短鎖アルコールおよび長鎖アルコール、炭化水素、脂肪アルコール、脂肪エステル(例えば、ワックス、脂肪酸エステル、脂肪エステル、および/または脂肪脂肪エステル)、末端オレフィン、内部オレフィン、ならびにケトンが含まれる。一部の態様において、組換え宿主細胞は、それぞれのポリヌクレオチドが脂肪酸生シンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを含み、組換え宿主細胞は、ポリヌクレオチドを発現させるのに有効な条件下で炭素源の存在下で培養された時に脂肪エステル組成物を産生する。
【0050】
本明細書で使用する「アシル-ACP」は、アルキル鎖のカルボニル炭素と、アシルキャリアータンパク質(ACP)のホスホパンテテイニル部分のスルフヒドリル基との間で形成されたアシルチオエステルを指す。ホスホパンテテイニル部分は、ホロ-アシルキャリアータンパク質シンターゼ(ACPS)であるホスホパンテテイニルトランスフェラーゼの働きによってACP上の保存セリン残基に翻訳後に取り付けられる。一部の態様において、アシル-ACPは完全飽和アシル-ACPの合成における中間体である。他の態様において、アシル-ACPは不飽和アシル-ACPの合成における中間体である。一部の態様において、炭素鎖は、約5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、または26個の炭素を有する。これらのアシル-ACPはそれぞれ、アシル-ACPを脂肪酸誘導体に変換する酵素の基質である。
【0051】
本明細書で使用する「脂肪酸誘導体」という用語とは「脂肪酸」または「脂肪酸誘導体」を意味し、「脂肪酸またはその誘導体」と呼ばれることもある。「脂肪酸」という用語は、式RCOOHを有するカルボン酸を意味する。Rは脂肪族基、好ましくは、アルキル基を表す。Rは約4~約22個の炭素原子を含んでもよい。脂肪酸は分枝鎖または直鎖を有してもよく、飽和、一不飽和、または多価不飽和でもよい。「脂肪酸誘導体」は、部分的に、産生宿主生物の脂肪酸生合成経路から作られた産物である「脂肪酸誘導体」には、部分的に、アシル-ACPまたはアシル-ACP誘導体から作られた産物が含まれる。例示的な脂肪酸誘導体には、アシル-CoA、脂肪酸、脂肪アルデヒド、短鎖アルコールおよび長鎖アルコール、脂肪アルコール、炭化水素、エステル(例えば、ワックス、脂肪酸エステル、脂肪エステル)、末端オレフィン、内部オレフィン、ならびにケトンが含まれる。
【0052】
本明細書において言及される「脂肪酸誘導体組成物」は組換え宿主細胞によって産生され、典型的には、脂肪酸誘導体の混合物を含む。場合によっては、混合物は複数のタイプの脂肪酸誘導体産物(例えば、脂肪酸、脂肪エステル、脂肪アルコール、脂肪アルデヒド、脂肪ケトン、炭化水素など)を含む。他の場合、脂肪酸誘導体組成物は、例えば、異なる鎖長、飽和、および/または分枝特徴を有する脂肪エステル(または別の脂肪酸誘導体)の混合物を含んでもよい。さらに他の場合、脂肪酸誘導体組成物は、異なる鎖長、飽和、および/または分枝特徴を有する複数のタイプの脂肪酸誘導体産物および脂肪酸誘導体の混合物を含んでもよい。さらに他の場合、脂肪酸誘導体組成物は、例えば、脂肪エステルおよびβヒドロキシエステルの混合物を含んでもよい。
【0053】
本明細書で使用する「脂肪酸生合成経路」という用語は、脂肪酸誘導体を産生する生合成経路を意味する。脂肪酸生合成経路は、望ましい特徴を有する脂肪酸誘導体を産生する、さらなる酵素を含んでもよい。
【0054】
本明細書で使用する「脂肪エステル」とは、式RCOOR'を有するエステルを意味する。本明細書において言及される脂肪エステルは、脂肪酸から作られる任意のエステル、例えば、脂肪酸エステルでもよい。一部の態様において、R基は、長さが少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、または少なくとも19個の炭素である。または、もしくはさらに、R基は、長さが20個以下、19個以下、18個以下、17個以下、16個以下、15個以下、14個以下、13個以下、12個以下、11個以下、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、または6個以下の炭素である。従って、R基は、前記終点のいずれか2つによって定められるR基を有してもよい。例えば、R基は、長さが6~16個の炭素、長さが10~14個の炭素、または長さが12~18個の炭素でもよい。一部の態様において、脂肪エステル組成物は、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、C24、C25、およびC26脂肪エステルの1つまたは複数を含む。他の態様において、脂肪エステル組成物は、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、およびC18脂肪エステルの1つまたは複数を含む。さらに他の態様において、脂肪エステル組成物は、C12、C14、C16、およびC18脂肪エステル;C12、C14、およびC16脂肪エステル;C14、C16、およびC18脂肪エステル;またはC12およびC14脂肪エステルを含む。
【0055】
脂肪酸誘導体、例えば、脂肪エステルのR基は直鎖または分枝鎖でもよい。分枝鎖は複数の分岐点を有してもよく、環式分枝を含んでもよい。一部の態様において、分枝脂肪酸、分枝脂肪アルデヒド、または分枝脂肪エステルは、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、C24、C25、またはC26分枝脂肪酸、分枝脂肪アルデヒド、または分枝脂肪エステルである。特定の態様において、分枝脂肪酸、分枝脂肪アルデヒド、または分枝脂肪エステルは、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、またはC18分枝脂肪酸または分枝脂肪エステルである。本開示の脂肪エステルはA側およびB側を含有すると呼ばれることがある。本明細書で使用するエステルの「A側」とは、エステルのカルボン酸酸素に取り付けられている炭素鎖を指す。本明細書で使用するエステルの「B側」とは、エステルの親カルボン酸を含む炭素鎖を指す。脂肪エステルが脂肪酸生合成経路から得られた場合、A側は典型的にはアルコールによって付与され、B側は脂肪酸によって付与される。
【0056】
脂肪エステルのA側を形成するために任意のアルコールを使用することができる。例えば、アルコールは脂肪酸生合成経路、例えば、本明細書に記載の脂肪酸生合成経路から得られてもよい。または、アルコールは非脂肪酸生合成経路を介して産生されてもよい。さらに、アルコールは外因的に提供されてもよい。例えば、脂肪エステルが生物によって産生される場合、アルコールは発酵ブロス中に供給されてもよい。または、アルコールも産生することができる生物によって脂肪エステルが産生される場合、脂肪酸または酢酸などのカルボン酸が外因的に供給されてもよい。
【0057】
エステルのA側またはB側を含む炭素鎖は任意の長さでもよい。1つの態様において、エステルのA側は長さが少なくとも約1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、10個、12個、14個、16個、または18個の炭素である。脂肪エステルが脂肪酸メチルエステルである場合、エステルのA側は長さが1個の炭素である。脂肪エステルが脂肪酸エチルエステルである場合、エステルのA側は長さが2個の炭素である。エステルのB側は長さが少なくとも約4個、6個、8個、10個、12個、14個、16個、18個、20個、22個、24個、または26個の炭素でもよい。A側および/またはB側は直鎖または分枝鎖でもよい。分枝鎖は1つまたは複数の分岐点を有してもよい。さらに、分枝鎖は環式分枝を含んでもよい。さらに、A側および/またはB側は飽和または不飽和でもよい。不飽和であれば、A側および/またはB側は1つまたは複数の不飽和点を有してもよい。さらに、本開示に従って産生される脂肪エステルのアルコール基は1(C1)位にある必要はない。1つの態様において、脂肪エステルは生合成により産生される。この態様において、最初に、脂肪酸は「活性化」される。「活性化された」脂肪酸の非限定的な例は、アシル-CoA、アシルACP、およびアシルリン酸である。アシル-CoAは脂肪酸生合成または分解の直接的な産物でもよい。さらに、アシル-CoAは遊離脂肪酸、CoA、およびアデノシンヌクレオチド三リン酸(ATP)から合成されてもよい。アシル-CoAを産生する酵素の一例はアシル-CoAシンターゼである。
【0058】
ある特定の態様において、分枝脂肪酸誘導体は、イソ-脂肪酸誘導体、例えば、イソ-脂肪エステル、またはアンテイソ(anteiso)-脂肪酸誘導体、例えば、アンテイソ-脂肪エステルである。例示的な態様において、分枝脂肪酸誘導体は、イソ-C7:0、イソ-C8:0、イソ-C9:0、イソ-C10:0、イソ-C11:0、イソ-C12:0、イソ-C13:0、イソ-C14:0、イソ-C15:0、イソ-C16:0、イソ-C17:0、イソ-C18:0、イソC19:0、アンテイソ-C7:0、アンテイソ-C8:0、アンテイソ-C9:0、アンテイソ-C10:0、アンテイソ-C11:0、アンテイソ-C12:0、アンテイソ-C13:0、アンテイソ-C14:0、アンテイソ-C15:0、アンテイソ-C16:0、アンテイソ-C17:0、アンテイソ-C18:0、およびアンテイソ-C19:0分枝脂肪エステルより選択される。
【0059】
分枝脂肪酸誘導体または非分枝脂肪酸誘導体のR基は飽和または不飽和でもよい。不飽和であれば、R基は1つまたは複数の不飽和点を有してもよい。一部の態様において、不飽和脂肪酸誘導体は一不飽和脂肪酸誘導体である。ある特定の態様において、不飽和脂肪酸誘導体は、C6:1、C7:1、C8:1、C9:1、C10:1、C11:1、C12:1、C13:1、C14:1、C15:1、C16:1、C17:1、C18:1、C19:1、C20:1、C21:1、C22:1、C23:1、C24:1、C25:1、またはC26:1不飽和脂肪酸誘導体である。ある特定の態様において、不飽和脂肪酸誘導体は、C10:1、C12:1、C14:1、C16:1、またはC18:1不飽和脂肪酸誘導体である。他の態様において、不飽和脂肪酸誘導体はω-7位において不飽和している。ある特定の態様において、不飽和脂肪酸誘導体はcis二重結合を含む。
【0060】
本明細書で使用する「クローン」という用語は、典型的には、1個の共通祖先に由来し、かつ1個の共通祖先と本質的に遺伝的に同一である細胞または細胞群、例えば、1個の細菌細胞から生じたクローン化細菌コロニーの細菌を指す。
【0061】
本明細書で使用する「培養物」という用語は、典型的には、生細胞を含む液体培地を指す。1つの態様において、培養物は、管理された条件下で、予め決められた培養培地中で複製している細胞、例えば、選択された炭素源および窒素を含む液体培地中で増殖された組換え宿主細胞の培養物を含む。「培養する(culturing)」または「培養(cultivation)」とは、液体培地中または固体培地中で適切な条件下で組換え宿主細胞集団を増殖させることを指す。特定の態様において、培養するとは、基質から最終産物の発酵性生物変換を指す。培養培地は周知であり、このような培養培地の個々の成分は商業的供給業者から入手可能であり、例えば、Difco(商標)培地およびBBL(商標)培地がある。1つの非限定的な例では、水性栄養培地は、窒素、塩、および炭素の複合供給源を含む「リッチ培地」、例えば、このような培地の10g/Lペプトンおよび10g/L酵母エキスを含むYP培地である。
【0062】
本明細書で使用する「異種ヌクレオチド配列を発現させるのに有効な条件下で」という用語は、宿主細胞が望ましい脂肪酸誘導体を産生するのを可能にする任意の条件を意味する。適切な条件には、例えば、発酵条件が含まれる。
【0063】
本明細書で使用する、組換え宿主細胞内でのタンパク質、例えば、酵素の活性の「改変された」または「変化したレベル」は、親または天然の宿主細胞と比べて求められた活性の1つまたは複数の特徴の差を指す。典型的に、活性の差は、改変された活性を有する組換え宿主細胞と対応する野生型宿主細胞との間(例えば、組換え宿主細胞の培養物と対応する野生型宿主細胞との比較)で求められる。改変された活性は、例えば、組換え宿主細胞によって発現されたタンパク質の量の改変(例えば、タンパク質をコードするDNA配列のコピー数の増加もしくは減少、タンパク質をコードするmRNA転写物の数の増加もしくは減少、および/またはmRNAからのタンパク質のタンパク質翻訳の量の増加もしくは減少の結果として);タンパク質の構造の変化(例えば、一次構造に対する変化、例えば、基質特異性の変化をもたらす、タンパク質コード配列に対する変化、観察されたキネティックパラメータの変化);ならびにタンパク質安定性の変化(例えば、タンパク質の分解の増加または減少)の結果でもよい。一部の態様において、ポリペプチドは、本明細書に記載のポリペプチドのいずれか、例えば、WS377(「'377」)、Pproの変異体または変種である。ある特定の場合において、本明細書に記載のポリペプチドのコード配列は、ある特定の宿主細胞における発現のためにコドン最適化される。例えば、大腸菌における発現の場合、1つまたは複数のコドンを、例えば、Grosjean et al., Gene 18: 199-209 (1982)に記載のように最適化することができる。
【0064】
本明細書で使用する「制御配列」という用語は、典型的には、タンパク質をコードするDNA配列に機能的に連結され、このタンパク質の発現を最終的に制御するDNA中の塩基配列を指す。制御配列の例には、RNAプロモーター配列、転写因子結合配列、転写終結配列、転写モジュレーター(例えば、エンハンサーエレメント)、RNA安定性に影響を及ぼすヌクレオチド配列、および翻訳制御配列(例えば、リボソーム結合部位(例えば、原核生物におけるシャイン・ダルガノ配列または真核生物におけるコザック配列)、開始コドン、終止コドン)が含まれるが、これに限定されない。本明細書で使用する「ヌクレオチド配列の発現が野生型ヌクレオチド配列と比べて改変される」という句は、内因性ヌクレオチド配列の発現および/もしくは活性または異種ポリペプチドもしくは非天然ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の発現および/もしくは活性のレベルの上昇もしくは低下を意味する。「変化した発現レベル」および「改変された発現レベル」という用語は同義に用いられ、操作された宿主細胞の中のポリヌクレオチド、ポリペプチド、または炭化水素が、同じ条件下の対応する野生型細胞の中の濃度と比較して異なる濃度で存在することを意味する。本明細書で使用する、ポリヌクレオチドに関して「発現させる」という用語は、ポリヌクレオチドが機能するようにすることである。ポリペプチド(またはタンパク質)をコードするポリヌクレオチドは発現された時に、そのポリペプチド(またはタンパク質)を産生するように転写および翻訳される。本明細書で使用する「過剰発現させる」という用語は、同じ条件下の対応する野生型細胞の中で通常発現される濃度より高い濃度で細胞内でポリヌクレオチドもしくはポリペプチドを発現させる、またはポリヌクレオチドもしくはポリペプチドの発現を引き起こすことを意味する。
【0065】
本明細書で使用する「力価」という用語は、宿主細胞培養物の体積単位あたりの産生された脂肪酸誘導体の量を指す。本明細書に記載の組成物および方法の任意の局面において、脂肪酸誘導体は、約25mg/L、約50mg/L、約75mg/L、約100mg/L、約125mg/L、約150mg/L、約175mg/L、約200mg/L、約225mg/L、約250mg/L、約275mg/L、約300mg/L、約325mg/L、約350mg/L、約375mg/L、約400mg/L、約425mg/L、約450mg/L、約475mg/L、約500mg/L、約525mg/L、約550mg/L、約575mg/L、約600mg/L、約625mg/L、約650mg/L、約675mg/L、約700mg/L、約725mg/L、約750mg/L、約775mg/L、約800mg/L、約825mg/L、約850mg/L、約875mg/L、約900mg/L、約925mg/L、約950mg/L、約975mg/L、約1000mg/L、約1050mg/L、約1075mg/L、約1100mg/L、約1125mg/L、約1150mg/L、約1175mg/L、約1200mg/L、約1225mg/L、約1250mg/L、約1275mg/L、約1300mg/L、約1325mg/L、約1350mg/L、約1375mg/L、約1400mg/L、約1425mg/L、約1450mg/L、約1475mg/L、約1500mg/L、約1525mg/L、約1550mg/L、約1575mg/L、約1600mg/L、約1625mg/L、約1650mg/L、約1675mg/L、約1700mg/L、約1725mg/L、約1750mg/L、約1775mg/L、約1800mg/L、約1825mg/L、約1850mg/L、約1875mg/L、約1900mg/L、約1925mg/L、約1950mg/L、約1975mg/L、約2000mg/L(2g/L)、3g/L、5g/L、10g/L、20g/L、30g/L、40g/L、50g/L、60g/L、70g/L、80g/L、90g/L、100g/L、または前述の値のいずれか2つによって定められる範囲の力価で産生される。他の態様において、脂肪酸誘導体は100g/L超、200g/L超、または300g/L超の力価で産生される。本開示の方法に従って組換え宿主細胞によって産生された脂肪酸誘導体の1つの好ましい力価は、5g/L~200g/L、10g/L~150g/L、20g/L~120g/L、および30g/L~100g/Lである。力価は、所定の組換え宿主細胞培養物によって産生された、ある特定の脂肪酸誘導体または脂肪酸誘導体の組み合わせを指すことがある。例えば、大腸菌などの組換え宿主細胞におけるエステルシンターゼ活性を有する変種ポリペプチドの発現は、対応する野生型ポリペプチドを発現する組換え宿主細胞と比較してより高い力価の産生をもたらす。1つの態様において、高い力価は少なくとも約5g/L~約200g/Lである。
【0066】
本明細書で使用する「宿主細胞によって産生された脂肪酸誘導体の収率」とは、宿主細胞内で投入炭素源が産物(すなわち、脂肪エステル)に変換される効率を指す。本開示の方法に従って脂肪酸誘導体を産生するように操作された宿主細胞の収率は、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約16%、少なくとも約17%、少なくとも約18%、少なくとも約19%、少なくとも約20%、少なくとも約21%、少なくとも約22%、少なくとも約23%、少なくとも約24%、少なくとも約25%、少なくとも約26%、少なくとも約27%、少なくとも約28%、少なくとも約29%、もしくは少なくとも約30%、または前述の値のいずれか2つによって定められる範囲である。他の態様において、脂肪酸誘導体は、約30%超、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、約90%、またはそれより高い収率で産生される。または、もしくはさらに、収率は約30%以下、約27%以下、約25%以下、または約22%以下である。従って、収率は前記終点のいずれか2つによって定められてもよい。例えば、本開示の方法に従って組換え宿主細胞によって産生された脂肪酸誘導体の収率は、約5%~約15%、約10%~約25%、約10%~約22%、約15%~約27%、約18%~約22%、約20%~約28%、または約20%~約30%でもよい。収率は、所定の組換え宿主細胞培養物によって産生された、ある特定の脂肪酸誘導体または脂肪酸誘導体の組み合わせを指すことがある。例えば、大腸菌などの組換え宿主細胞におけるエステルシンターゼ活性を有する変種ポリペプチドの発現は、対応する野生型ポリペプチドを発現する組換え宿主細胞と比較して脂肪酸エステルのより高い収率の産生をもたらす。1つの態様において、高い収率は理論収率の約10%~約100%である。
【0067】
本明細書で使用する「生産性」という用語は、宿主細胞培養物の体積単位あたりの単位時間あたりの産生された脂肪酸誘導体の量を指す。本明細書に記載の組成物および方法の任意の局面において、組換え宿主細胞によって産生された脂肪酸誘導体の生産性は、(細胞量に応じて)少なくとも100mg/L/時間、少なくとも200mg/L/時間、少なくとも300mg/L/時間、少なくとも400mg/L/時間、少なくとも500mg/L/時間、少なくとも600mg/L/時間、少なくとも700mg/L/時間、少なくとも800mg/L/時間、少なくとも900mg/L/時間、少なくとも1000mg/L/時間、少なくとも1100mg/L/時間、少なくとも1200mg/L/時間、少なくとも1300mg/L/時間、少なくとも1400mg/L/時間、少なくとも1500mg/L/時間、少なくとも1600mg/L/時間、少なくとも1700mg/L/時間、少なくとも1800mg/L/時間、少なくとも1900mg/L/時間、少なくとも2000mg/L/時間、少なくとも2100mg/L/時間、少なくとも2200mg/L/時間、少なくとも2300mg/L/時間、少なくとも2400mg/L/時間、2500mg/L/時間であるか、または10g/L/hrと高い。例えば、前記方法に従って組換え宿主細胞によって産生された脂肪酸誘導体の生産性は500mg/L/時間~2500mg/L/時間または700mg/L/時間~2000mg/L/時間でもよい。生産性は、所定の組換え宿主細胞培養物によって産生された、ある特定の脂肪酸誘導体または脂肪酸誘導体の組み合わせを指すことがある。例えば、大腸菌などの組換え宿主細胞におけるエステルシンターゼ活性を有する変種ポリペプチドの発現は、対応する野生型ポリペプチドを発現する組換え宿主細胞と比較してより高い生産性の脂肪酸エステルの産生をもたらす。1つの態様において、高い生産性は約0.3g/L/h~約3g/L/hである。
【0068】
本明細書で使用する「全脂肪酸種」および「全脂肪酸産物」という用語は、GC-FIDによって評価された時に、脂肪エステルおよび脂肪酸の量に関して本明細書において同義に用いられることがある。脂肪アルコール分析について言及している時に、脂肪アルコール、脂肪アルデヒド、および遊離脂肪酸を意味するために同じ用語が用いられることがある。
【0069】
本明細書で使用する「グルコース利用率」という用語は、グラム/リットル/時間(g/L/hr)で報告される、単位時間あたりの培養物が使用したグルコースの量を意味する。
【0070】
本明細書で使用する「野生型ポリペプチドと比較して高いエステルシンターゼ活性」という用語は、対応する野生型酵素より高い力価、高い収率、および/または高い生産性を有するエステルシンターゼまたはエステルシンターゼ活性を有するチオエステラーゼに関して用いられる。1つの好ましい態様において、力価、収率、または生産性は、野生型ポリペプチドの力価、収率、または生産性の少なくとも2倍である。他の好ましい態様において、力価、収率、または生産性は、野生型ポリペプチドの力価、収率、または生産性の少なくとも3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍である。ある特定の態様において、力価は少なくとも約5%以上である。場合によっては、「野生型ポリペプチドと比較して高いエステルシンターゼ活性」はまた、エステルシンターゼが、対応する野生型エステルシンターゼ酵素より高い力価、収率、および/または生産性に加えて、低い、または対応する野生型エステルシンターゼ酵素より低いパーセンテージ(例えば、1~5%)のβヒドロキシエステルを産生することも意味する(実施例、下記を参照されたい)。他の場合、「野生型ポリペプチドと比較して高いエステルシンターゼ活性」はまた、エステルシンターゼが、対応する野生型エステルシンターゼ酵素より高い力価、収率、および/または生産性に加えて、対応する野生型エステルシンターゼ酵素より高いパーセンテージのβヒドロキシエステルを産生することも意味する(実施例、下記を参照されたい)。
【0071】
「改善された脂肪酸メチルエステル活性」という用語は、変種ポリペプチドまたは酵素が脂肪酸メチルエステル、脂肪酸エチルエステル、脂肪酸プロピルエステル、脂肪酸イソプロピルエステル、脂肪酸ブチルエステル、モノグリセリド、脂肪酸イソブチルエステル、脂肪酸2-ブチルエステル、および脂肪酸tert-ブチルエステルなどを産生できることを意味する。改善された脂肪酸メチルエステル活性を有する変種ポリペプチドまたは酵素は、βヒドロキシエステルの増加、βヒドロキシエステルの減少、脂肪酸エステルの鎖長の伸長、および脂肪酸エステルの鎖長の短縮を含むが、これに限定されない改善された特性を有する。改善された脂肪酸メチルエステル活性を有する変種エステルシンターゼポリペプチドは、変種ポリペプチドが組換え微生物内で発現された時に少なくとも約5%以上の力価を生じる。
【0072】
本明細書で使用する「炭素源」という用語は、原核生物細胞または単純真核細胞の増殖のための炭素源として使用するのに適した基質または化合物を指す。炭素源は、重合体、糖質、酸、アルコール、アルデヒド、ケトン、アミノ酸、ペプチド、および気体(例えば、COおよびCO2)を含むが、これに限定されない様々な形をとってもよい。例示的な炭素源には、単糖、例えば、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、キシロース、およびアラビノース;オリゴ糖、例えば、フルクト-オリゴ糖およびガラクト-オリゴ糖;多糖、例えば、デンプン、セルロース、ペクチン、およびキシラン;二糖、例えば、スクロース、マルトース、セロビオース、およびツラノース;セルロース材料および変種、例えば、ヘミセルロース、メチルセルロース、およびナトリウムカルボキシメチルセルロース;飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸、コハク酸塩、乳酸塩、および酢酸塩;アルコール、例えば、エタノール、メタノール、およびグリセロール、またはその混合物が含まれるが、これに限定されない。炭素源はまたグルコースなどの光合成産物でもよい。ある特定の好ましい態様において、炭素源はバイオマスである。他の好ましい態様において、炭素源はグルコースである。他の好ましい態様において、炭素源はスクロースである。他の態様において、炭素源はグリセロールである。
【0073】
本明細書で使用する「バイオマス」という用語は、炭素源を得るのに使用した任意の生物学的材料を指す。一部の態様において、バイオマスは、生物変換に適した炭素源に処理される。他の態様において、バイオマスは、炭素源へのさらなる処理を必要としない。炭素源は、脂肪エステルを含む組成物に変換することができる。脂肪エステルは、界面活性剤、重合体、フィルム、布、色素、薬、芳香剤および着香剤、ラッカー、塗料、ワニス、樹脂およびプラスチックの中の柔軟剤、ガソリンおよび油の中の可塑剤、難燃剤、および添加物を含むが、これに限定されない多数の製品において有用である。
【0074】
バイオマスの例示的な供給源は、植物物体または植物、例えば、トウモロコシ、サトウキビ、またはスイッチグラスである。バイオマスの別の例示的な供給源は、代謝廃棄物、例えば、動物物体(例えば、牛ふん肥料)である。バイオマスのさらに例示的な供給源には藻類および他の海洋植物が含まれる。バイオマスにはまた、グリセロール、発酵廃棄物、生牧草、わら、木材、下水、ごみ、セルロース性都市廃棄物、および残飯(例えば、セッケン、油、および脂肪酸)を含むが、これに限定されない工業、農業、林業、および家庭からの廃棄物が含まれる。「バイオマス」という用語はまた炭素源、例えば、糖質(例えば、単糖、二糖、または多糖)を指すことがある。
【0075】
産物(例えば、脂肪酸およびその誘導体)に関して本明細書で使用する「単離された」という用語は、細胞成分、細胞培養培地、または化学前駆体もしくは合成前駆体から分離された産物を指す。本明細書に記載の方法によって産生された脂肪酸およびその誘導体は発酵ブロスならびに細胞質に比較的混合しない場合がある。従って、脂肪酸およびその誘導体は細胞内または細胞外で有機相中に集まる場合がある。
【0076】
本明細書で使用する「精製する」、「精製された」、または「精製」という用語は、例えば、単離または分離によって、分子が分子環境から取り出される、または単離されることを意味する。「実質的に精製された」分子は、その分子に関連する他の成分の少なくとも約60%を含まない(例えば、少なくとも約70%を含まない、少なくとも約75%を含まない、少なくとも約85%を含まない、少なくとも約90%を含まない、少なくとも約95%を含まない、少なくとも約97%を含まない、少なくとも約99%を含まない)。本明細書で使用する、これらの用語はまた、試料から汚染物質が除去されることも指す。例えば、汚染物質が除去されると、試料中の脂肪酸誘導体のパーセンテージを増やすことができる。例えば、脂肪酸誘導体は組換え宿主細胞内で産生された時に、宿主細胞タンパク質の除去によって精製することができる。精製後に、試料中の脂肪酸誘導体のパーセンテージは上昇する。「精製する」、「精製された」、および「精製」という用語は、絶対的な純度を必要としない相対的な用語である。従って、例えば、脂肪酸誘導体が組換え宿主細胞内で産生された時に、精製された脂肪酸誘導体は、他の細胞の成分(例えば、核酸、ポリペプチド、脂質、糖質、または他の炭化水素)から実質的に分離された脂肪酸誘導体である。本明細書で使用する、「低減する」という用語は、弱める、低下させる、または減らすことを意味する。例えば、ポリペプチドの活性を低減するようにポリペプチドを改変することによって(例えば、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を改変することによって)ポリペプチドを低減することができる。
【0077】
エステルシンターゼ変種
本開示は、特に、改善された特性を有する変種エステルシンターゼ酵素、このような変種のポリペプチド配列およびその機能断片;変種エステルシンターゼポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド;改善されたエステルシンターゼポリペプチドをコードする核酸を含む組換え微生物;改善されたエステルシンターゼポリペプチドを発現することができる微生物;このような微生物の培養物;脂肪酸エステルを産生するためのプロセス;改善されたエステルシンターゼポリペプチドを用いて前記から得られた脂肪酸エステル組成物および他の組成物;ならびに結果として得られた組成物に関する。
【0078】
特に、改善された特性を有するエステルシンターゼポリペプチドおよびこれらのポリペプチドを発現する微生物が本明細書において提供される。マリノバクター・ハイドロカルボノクラスティカスDSM8798株に由来する野生型エステルシンターゼポリペプチドは、Holtzapple et al.(J Bacteriol. (2007) 189(10):3804-3812を参照されたい)および米国特許第7,897,369号に記載されている。SEQ ID NO:2は、本開示を例示するために(下記の実施例を参照されたい)、改善されたエステルシンターゼ酵素を作製するためにテンプレートとして用いられた、野生型エステルシンターゼのアミノ酸配列、すなわち、マリノバクター・ハイドロカルボノクラスティカス(M.ハイドロカルボノクラスティカス;GenBankアクセッション番号ABO21021)に由来するES9/DSM8798である。好ましいエステルシンターゼ変種は、SEQ ID NO:2の野生型M.ハイドロカルボノクラスティカスエステルシンターゼ酵素(本明細書において「WS377」または「'377」と呼ばれる)のアミノ酸配列と少なくとも約90%の配列同一性を有する。さらに、SEQ ID NO:1は、SEQ ID NO:2をコードするポリヌクレオチド配列である。本明細書に記載のエステルシンターゼポリペプチド配列に関して、「M」(ATG)はアミノ酸「0」とみなされる。ATGの後ろの最初のアミノ酸はアミノ酸「1」と指定される。
【0079】
1つの局面において、本開示は、強化されたエステルシンターゼ活性を有する改善されたエステルシンターゼポリペプチドおよびこれをコードするヌクレオチド配列を提供する。別の局面において、SEQ ID NO:2の野生型'377ポリペプチド内の非常に多くの異なるアミノ酸位置(本明細書において「残基」とも呼ばれる)に導入された置換は、野生型'377と比べて増加した脂肪エステル産生を触媒することができる改善された'377ポリペプチドをもたらすことが分かる。変異位置に応じて、所定の位置における一アミノ酸変化は脂肪エステル産生を増加または減少させる。所定の位置における一アミノ酸変化はまたβヒドロキシ(β-OH)エステル産生の増加または減少も生じる場合がある。1つの態様において、一アミノ酸変化は脂肪エステル産生を増加させ、β-OHエステル産生を減少させる。別の態様において、一アミノ酸変化は脂肪エステル産生を増加させ、β-OHエステル産生を変えない。さらに別の態様において、一アミノ酸変化は脂肪エステル産生を増加させ、β-OHエステル産生を増加させる。一アミノ酸変化はまた脂肪エステル産生を減少させ、β-OHエステル産生を増加させる、減少させる、または変えない場合がある。他の態様において、1つまたは複数のアミノ酸変化は脂肪エステル産生を増加させる。さらに他の態様において、1つまたは複数のアミノ酸変化はβ-OH産生を増加または減少させる。
【0080】
従って、所定の位置における2つ以上のアミノ酸変化の組み合わせが脂肪エステルおよび/または遊離脂肪酸の産生を増加または減少させる場合がある。脂肪エステルおよび遊離脂肪酸の産生に及ぼす1つ1つのアミノ酸変化の影響は、脂肪エステルおよび遊離脂肪酸の産生に及ぼす他の1つ1つのアミノ酸変化の影響に相加的でもよく、相加的でなくてもよい。一部の好ましい態様において、所定の位置における2つ以上のアミノ酸変化の組み合わせは脂肪エステル産生を増加させ、遊離脂肪酸産生を減少させる。従って、所定の位置における複数のアミノ酸変化は脂肪エステル産生を増加または減少させる。従って、所定の位置における複数のアミノ酸変化はβ-OHエステル産生を減少させる場合がある。一部の態様において、複数のアミノ酸変化は脂肪エステル産生を増加させ、β-OHエステル産生を減少させる。他の態様において、複数のアミノ酸変化は脂肪エステル産生を増加させ、β-OHエステル産生を変えない。さらに他の態様において、複数のアミノ酸変化は脂肪エステル産生を増加させ、β-OHエステル産生を増加させる。複数のアミノ酸変化はまた脂肪エステル産生を減少させ、β-OHエステル産生を増加させる、減少させる、または変えない場合がある。
【0081】
実施例1(下記)に記載のように、テンプレートとしてWS377エステルシンターゼを用いて完全飽和ライブラリー(full saturation library)が調製された。脂肪エステルの力価の上昇および/または産生されたβヒドロキシエステルのパーセンテージの低下に基づいて200個以上の有益な変異が特定された。実施例2および実施例5に詳述したように、飽和ライブラリーからの「ヒット(hit)」に基づいて組み合わせライブラリーが調製された。1つの局面において、本開示は、SEQ ID NO:2と少なくとも約70%の配列同一性を有する改善されたエステルシンターゼポリペプチドに関する。一部の態様において、改善されたエステルシンターゼポリペプチドは、SEQ ID NO:2の野生型'377配列と少なくとも約75%(例えば、少なくとも76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも99%)の配列同一性を示し、本明細書に記載のように有用な特徴および/または特性をもたらす1つまたは複数の置換も含む。本開示の1つの局面において、改善されたエステルシンターゼポリペプチドはSEQ ID NO:4と約100%の配列同一性を有する。本開示の別の局面において、改善されたエステルシンターゼポリペプチドは、以下のSEQ ID NO:6、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:35、SEQ ID NO:37、SEQ ID NO:39、SEQ ID NO:41、およびSEQ ID NO:43を含むが、これに限定されないSEQ ID NOのいずれか1つと約100%の配列同一性を有する。
【0082】
関連する局面において、改善されたエステルシンターゼポリペプチドは、SEQ ID NO:3またはSEQ ID NO:7と100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。別の関連する局面において、改善されたエステルシンターゼポリペプチドは、以下のSEQ ID NO:5、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:36、SEQ ID NO:38、SEQ ID NO:40、およびSEQ ID NO:42を含むが、これに限定されないSEQ ID NOのいずれか1つと約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。
【0083】
別の局面において、本開示は、SEQ ID NO:4と少なくとも約70%の配列同一性を有する改善されたエステルシンターゼポリペプチドに関する。一部の態様において、改善されたエステルシンターゼポリペプチドは、SEQ ID NO:4のエステルシンターゼ配列と少なくとも約75%(例えば、少なくとも76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも99%)の配列同一性を有し、本明細書に記載のように、改善された特徴および/または特性をもたらす1つまたは複数の置換も含む。別の局面において、本開示は、以下のSEQ ID NO:6、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:35、SEQ ID NO:37、SEQ ID NO:39、SEQ ID NO:41、およびSEQ ID NO:43を含むが、これに限定されないSEQ ID NOのいずれか1つと少なくとも約70%の配列同一性を有する改善されたエステルシンターゼポリペプチドに関する。一部の態様において、改善されたエステルシンターゼポリペプチドは、以下のSEQ ID NO:6、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:35、SEQ ID NO:37、SEQ ID NO:39、SEQ ID NO:41、およびSEQ ID NO:43を含むが、これに限定されないSEQ ID NOのいずれか1つのエステルシンターゼ配列と少なくとも約75%(例えば、少なくとも76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも99%)の配列同一性を有し、本明細書に記載のように、改善された特徴および/または特性をもたらす1つまたは複数の置換も含む。
【0084】
別の局面において、本開示は、SEQ ID NO:5のエステルシンターゼ配列と少なくとも約75%(例えば、少なくとも76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または/および少なくとも99%)の配列同一性を有する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む改善されたエステルシンターゼポリペプチドに関する。一部の態様において、核酸配列は、本明細書に記載のように、改善された特徴および/または特性をもたらす1つまたは複数の置換を有するエステルシンターゼ変種をコードする。他の態様において、改善されたまたは変種エステルシンターゼ核酸配列はマリノバクター・ハイドロカルボノクラスティカス以外の種に由来する。別の局面において、本開示は、以下のSEQ ID NO:7、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:36、SEQ ID NO:38、SEQ ID NO:40、およびSEQ ID NO:42を含むが、これに限定されないSEQ ID NOのいずれか1つのエステルシンターゼ配列と少なくとも約75%(例えば、少なくとも76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または/および少なくとも99%)の配列同一性を有する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む改善されたエステルシンターゼポリペプチドに関する。一部の態様において、核酸配列は、本明細書に記載のように、改善された特徴および/または特性をもたらす1つまたは複数の置換を有するエステルシンターゼ変種をコードする。他の態様において、改善されたまたは変種エステルシンターゼ核酸配列はマリノバクター・ハイドロカルボノクラスティカス以外の種に由来する。
【0085】
別の局面において、本開示は、以下のSEQ ID NO:7、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:36、SEQ ID NO:38、SEQ ID NO:40、およびSEQ ID NO:42を含むが、これに限定されないSEQ ID NOのいずれか1つに対応する核酸の実質的に全ての長さにわたってストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によってコードされるアミノ酸配列を含むエステルシンターゼポリペプチドに関する。一部の態様において、核酸配列は、マリノバクター・ハイドロカルボノクラスティカス以外の種に由来する改善されたまたは変種エステルシンターゼ核酸配列をコードする。関連する局面において、本開示は、SEQ ID NO:1と少なくとも約70%(例えば、少なくとも71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも99%)の配列同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされるエステルシンターゼを提供し、本明細書において開示された置換の1つまたは複数を含む。
【0086】
エステルシンターゼ変種の改善された特性
例示的なモデルとして大腸菌内での発現を用いて他の任意の遺伝子を過剰発現させる必要なく高いパーセンテージの脂肪エステルを産生するように、マリノバクター・ハイドロカルボノクラスティカスDSM8798に由来する野生型エステルシンターゼ(「'377」)を操作した。さらに、大腸菌などの組換え宿主細胞内で発現された時に、高い力価、収率、または生産性をもたらす野生型エステルシンターゼ酵素変種は、約20%超、25%超、30%超、35%超、40%超、45%超、50%超、またはそれより多いβ-OHエステルも産生する。1つの局面において、本開示は、野生型エステルシンターゼより高い力価、収率、または生産性を有するエステルシンターゼの改善された変種を提供し、野生型酵素より低いパーセンテージのβ-OHエステルも産生する。好ましい態様において、本開示の変種エステルシンターゼ酵素は、約20%未満、18%未満、16%未満、14%未満、12%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満のβ-OHエステルを産生する。従って、本開示のエステルシンターゼ変種は、本明細書に記載のように、改善された特徴および/または特性、例えば、脂肪酸エステルの力価、収率、および/もしくは生産性の上昇;ならびに/またはβヒドロキシエステルの力価、収率、もしくは生産性の低下を示す。従って、高い力価、収率、および/または生産性を有するようにエステルシンターゼを操作すると、大腸菌は、無益回路において供給源を本質的に使用できないと同時に(
図2を参照されたい)、例えば、バイオディーゼルとしてまたは界面活性剤製造において使用するための脂肪酸エステルの高レベル産生を可能にする。
【0087】
フォトバクテリウム・プロファンダム変種
本開示は、特に、エステルシンターゼ活性が上昇した変種チオエステラーゼ酵素;改善された特性を有する、このような変種のポリペプチド配列およびその機能断片;エステルシンターゼ活性が上昇した変種チオエステラーゼポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド;エステルシンターゼ活性が上昇した改善されたチオエステラーゼポリペプチドをコードする核酸を含む組換え微生物;エステルシンターゼ活性が上昇した改善されたチオエステラーゼポリペプチド配列を発現することができる微生物;このような微生物の培養物;脂肪酸エステルを産生するためのプロセス;エステルシンターゼ活性が上昇した改善されたチオエステラーゼポリペプチド配列を用いて前記から得られた脂肪酸エステル組成物および他の組成物;ならびに結果として得られた組成物に関する。
【0088】
特に、改善された特性、例えば、エステルシンターゼ活性が上昇したチオエステラーゼポリペプチドおよびこれらのポリペプチドを発現する微生物が本明細書において提供される。野生型フォトバクテリウム・プロファンダム(Ppro)ポリペプチドは、Vezzi et al.(Science (2005) 307: 1459-1461を参照されたい)に記載されている。SEQ ID NO:51は、フォトバクテリウム・プロファンダムに由来するチオエステラーゼの野生型アミノ酸配列である。SEQ ID NO:50は、SEQ ID NO:51をコードするポリヌクレオチド配列である。チオエステラーゼをペリプラズムに向けるリーダー配列がSEQ ID NO:50から除去された。改善されたチオエステラーゼポリペプチド、例えば、変種Pproポリペプチドはエステルシンターゼ活性が強化されている。本明細書に記載のPproポリペプチド配列に関して、「M」(ATG)はアミノ酸「0」とみなされる。ATGの後ろの最初のアミノ酸はアミノ酸「1」と指定される。
【0089】
1つの局面において、本開示は、エステルシンターゼ活性が強化された改善されたPproポリペプチドおよびそれをコードするヌクレオチド配列を提供する。改善されたPproポリペプチドは、エステルシンターゼ活性が上昇した、または強化された変種チオエステラーゼポリペプチドの例である。別の局面において、SEQ ID NO:51の野生型Ppro内の非常に多くの異なるアミノ酸位置(本明細書において「残基」位置とも呼ばれる)に導入された置換は、野生型Pproと比べて増加した脂肪エステル産生を触媒することができる改善されたPproポリペプチドをもたらすことが分かる。変異位置に応じて、所定の位置における一アミノ酸変化は脂肪エステル産生を増加または減少させる。所定の位置における一アミノ酸変化はまた遊離脂肪酸産生の増加または減少も生じる場合がある。一部の好ましい態様において、一アミノ酸変化は脂肪エステル産生を増加させ、遊離脂肪酸産生を減少させる。他の態様において、一アミノ酸変化は脂肪エステル産生を増加させ、遊離脂肪酸産生を変えない。さらに他の態様において、一アミノ酸変化は脂肪エステル産生を増加させ、遊離脂肪酸産生を増加させる。一アミノ酸変化はまた脂肪エステル産生を減少させ、遊離脂肪酸産生を増加させる、減少させる、または変えない場合がある。所定の位置における2つ以上のアミノ酸変化の組み合わせが脂肪エステルおよび/または遊離脂肪酸の産生を増加または減少させる場合がある。脂肪エステルおよび遊離脂肪酸の産生に及ぼす1つ1つのアミノ酸変化の影響は、脂肪エステルおよび遊離脂肪酸の産生に及ぼす他の1つ1つのアミノ酸変化の影響に相加的でもよく、相加的でなくてもよい。一部の好ましい態様において、所定の位置における2つ以上のアミノ酸変化の組み合わせは脂肪エステル産生を増加させ、遊離脂肪酸産生を減少させる。
【0090】
1つの局面において、本開示は、SEQ ID NO:51と少なくとも約70%の配列同一性を有するPproポリペプチドに関する。一部の態様において、Pproポリペプチドは、SEQ ID NO:51の野生型Ppro配列と少なくとも約75%(例えば、少なくとも76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または/および少なくとも99%)の配列同一性を示し、本明細書に記載のように、改善された特徴および/または特性をもたらす1つまたは複数の置換も含む。関連する局面において、PproポリペプチドはSEQ ID NO:51と100%の配列同一性を有する。他の関連する局面において、Pproポリペプチドは、SEQ ID NO:53、SEQ ID NO:55、SEQ ID NO:58、SEQ ID NO:61、SEQ ID NO:63、SEQ ID NO:65、またはSEQ ID NO:31と100%の配列同一性を有する。
【0091】
1つの局面において、本開示は、SEQ ID NO:61と少なくとも約70%の配列同一性を有するPproポリペプチドに関する。一部の態様において、Pproポリペプチドは、SEQ ID NO:61の野生型Ppro配列と少なくとも約75%(例えば、少なくとも76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または/および少なくとも99%)の配列同一性を有し、本明細書に記載のように、改善された特徴および/または特性をもたらす1つまたは複数の置換も含む。
【0092】
別の局面において、本開示は、SEQ ID NO:31と少なくとも約70%の配列同一性を有するPproポリペプチドに関する。一部の態様において、Pproポリペプチドは、SEQ ID NO:31の野生型Ppro配列と少なくとも約75%(例えば、少なくとも76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または/および少なくとも99%)の配列同一性を有し、本明細書に記載のように、改善された特徴および/または特性をもたらす1つまたは複数の置換も含む。
【0093】
別の局面において、本開示は、SEQ ID NO:50、SEQ ID NO:52、SEQ ID NO:54、SEQ ID NO:56、SEQ ID NO:57、SEQ ID NO:59、SEQ ID NO:60、SEQ ID NO:62、SEQ ID NO:64、またはSEQ ID NO:30の野生型Ppro配列と少なくとも約75%(例えば、少なくとも76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または/および少なくとも99%)の配列同一性を有する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含むPproポリペプチドに関する。一部の態様において、核酸配列は、本明細書に記載のように、改善された特徴および/または特性をもたらす1つまたは複数の置換を有するPpro変種をコードする。他の態様において、Ppro核酸配列はフォトバクテリウム・プロファンダム以外の種に由来する。
【0094】
別の局面において、本開示は、SEQ ID NO:50、SEQ ID NO:52、SEQ ID NO:54、SEQ ID NO:56、SEQ ID NO:57、SEQ ID NO:59、SEQ ID NO:60、SEQ ID NO:62、SEQ ID NO:64、またはSEQ ID NO:30に対応する核酸の実質的に全ての長さにわたってストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によってコードされるアミノ酸配列を含むPproポリペプチドに関する。一部の態様において、核酸配列は、フォトバクテリウム・プロファンダム以外の種に由来するPpro変種をコードする。関連する局面において、本開示は、SEQ ID NO:50と少なくとも約70%(例えば、少なくとも71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも99%)の配列同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされるPproを提供し、本明細書において開示された置換(例えば、表13を参照されたい)を含む。
【0095】
Ppro変種の改善された特性
本開示を例示するために、大腸菌内で他の任意の遺伝子を過剰発現させる必要なく高いパーセンテージのFAMEを産生するように、P.プロファンダムに由来する'tesAを操作した。アシル-ACP(脂肪酸生合成の産物)に直接作用するエステルシンターゼがエステル産生の増加に向けられ、この経路を脂肪酸生合成から直接引き寄せることができ、それによって、産生が改善されるはずである。さらに、ライブラリーの1つをFAEE産生について試験した。FAMEについて操作されたP.プロファンダム由来'tesAは野生型株より高いレベルのFAEEを産生することも観察された。これらのPpro変種は、本明細書に記載のように、改善された特徴および/または特性、例えば、脂肪酸エステルの力価、収率、および/もしくは生産性の増加;ならびに/または遊離脂肪酸の力価、収率、および/もしくは生産性の低下を示す。一例として、エステルシンターゼ活性を有するようにP.プロファンダム(Ppro)のtesAを操作した。言い換えると、エステルシンターゼとして作用するようにPproのtesAを操作した。プレート中でスクリーニングされた時に、野生型tesA Ppro遺伝子は全アシル産物(FAME+遊離脂肪酸(「FFA」))に対して約15~18%のFAMEを産生した。プレート上で試験された時に、FAME産生を42~44%増加した変異体が特定された。これらの同じ変異体が振盪フラスコ中で試験された時に30%のFAMEしか産生しない野生型tesA Pproと比較して62~65%のFAMEを産生した(実施例7、下記を参照されたい)。
【0096】
エステルシンターゼまたはPpro変種を作る方法
本開示の方法の実施では、スクリーニング用の組換え宿主細胞グループを調製するために変異誘発が用いられる。典型的には、組換え宿主細胞は、機能的に連結された制御配列と共に、エステルシンターゼまたはPproポリペプチド、例えば、エステルシンターゼ変種またはチオエステラーゼ変種(例えば、Ppro)のオープンリーディングフレームを含む1つまたは複数のポリヌクレオチド配列を含む。本開示の方法の実施において有用な変種エステルシンターゼポリペプチドおよび変種チオエステラーゼポリペプチド非常に多くの例が本明細書において説明される。本開示の方法の実施において有用な制御配列の例も本明細書において説明される。このようなポリヌクレオチド配列の変異誘発は、遺伝子工学的技法、例えば、部位特異的変異誘発、ランダム化学変異誘発、エキソヌクレアーゼIII欠失法、または標準的なクローニング法を用いて行うことができる。または、ポリヌクレオチド配列中の変異は化学合成または改変手順を用いて作り出すことができる。
【0097】
変異誘発法は当技術分野において周知であり、例えば、以下の変異誘発法を含む。エラープローンPCR(例えば、Leung et al., Technique 1: 11-15, 1989;およびCaldwell et al., PCR Methods Applic. 2:28-33, 1992を参照されたい)では、PCRは、PCR産物の全長に沿って高い点変異率が得られるようにDNAポリメラーゼのコピー忠実度が低い条件下で行われる。簡単に述べると、このような手順では、PCR産物の全長に沿って高い点変異率を実現するために、変異誘発しようとするポリヌクレオチドを、PCRプライマー、反応緩衝液、MgCl2、MnCl2、Taqポリメラーゼ、および適切な濃度のdNTPと混合する。例えば、反応は、20fmoleの変異誘発しようとする核酸、30pmoleの各PCRプライマー、50mM KCl、10mM Tris HCl(pH8.3)、ならびに0.01%ゼラチン、7mM MgCl2、0.5mM MnCl2、5ユニットのTaqポリメラーゼ、0.2mM dGTP、0.2mM dATP、1mM dCTP、および1mM dTTPを含む反応緩衝液を用いて行うことができる。PCRは、94℃1分、45℃1分、および72℃1分の30サイクルで行うことができる。これらのパラメータは適宜変更できることが理解されるだろう。次いで、変異誘発ポリヌクレオチドをクローニングして適切なベクターに入れ、変異誘発ポリヌクレオチドによってコードされる影響を受けたポリペプチドの活性を評価する。変異誘発はまた、関心対象の任意のクローニングDNAに部位特異的変異を作製するためにオリゴヌクレオチド指定突然変異(例えば、Reidhaar-Olson et al., Science 241 :53-57, 1988を参照されたい)を用いて行うこともできる。簡単に述べると、このような手順では、クローニングDNAに導入しようとする1つまたは複数の変異を有する複数の二本鎖オリゴヌクレオチドを合成および集合して、変異誘発しようとするクローニングDNAにする。変異誘発DNAを含有するクローンを回収し、影響を受けたポリペプチドの活性を評価する。ポリヌクレオチド配列変種を作製するための別の変異誘発法はアセンブリ(assembly)PCRである。アセンブリPCRは、小さなDNA断片の混合物からPCR産物を構築することを伴う。ある反応の産物が別の反応の産物をプライミングして、多数の異なるPCR反応が同じバイアル中で同時に行われる。アセンブリPCRは、例えば、米国特許第5,965,408号に記載されている。ポリヌクレオチド配列変種を作製するためのさらに別の変異誘発法は、セクシャル(sexual)PCR変異誘発(Stemmer, PNAS, USA 91: 10747-10751, 1994)である。セクシャルPCR変異誘発では、強制的な相同組換えが、配列相同性に基づくDNA分子のランダム断片化の結果として、異なるが非常に関連性のあるDNA配列のDNA分子間でインビトロで発生する。この後に、PCR反応におけるプライマー伸長によってクロスオーバーが固定される。
【0098】
インビボ変異誘発によって、エステルシンターゼ(例えば、'377)またはチオエステラーゼ(例えば、Ppro)配列変種を作り出すこともできる。一部の態様において、DNA修復経路の1つまたは複数に変異を有する細菌株、例えば、大腸菌株の中でポリヌクレオチド配列を増殖させることによって核酸配列中にランダム変異を生じさせる。このような「ミューテーター(mutator)」株のランダム変異率は野生型株のランダム変異率より高い。これらの株の1つにおいてDNA配列を増殖させると最終的にDNAにランダム変異が生じる。インビボ変異誘発に使用するのに適したミューテーター株は、例えば、PCT国際公報番号WO91/16427に記載されている。
【0099】
カセット変異誘発を用いて、エステルシンターゼ(例えば、'377)またはチオエステラーゼ(例えば、Ppro)配列変種を作製することもできる。カセット変異誘発では、二本鎖DNA分子の小さな領域が、開始ポリヌクレオチド配列と異なる合成オリゴヌクレオチド「カセット」で置換される。このオリゴヌクレオチドは、多くの場合、開始ポリヌクレオチド配列の完全および/または部分的にランダム化されたバージョンを含有する。カセット変異誘発には多くの用途、例えば、カセット変異誘発による変異体タンパク質の調製(例えば、Richards, J. H., Nature 323, 187 (1986); Ecker, D.J., et al, J. Biol. Chem. 262:3524-3527 (1987)を参照されたい);1つ1つのコドンを挿入または置換するためのコドンカセット変異誘発(例えば、Kegler-Ebo, D.M., et al., Nucleic Acids Res. 22(9): 1593-1599 (1994)を参照されたい);制御配列(例えば、リボソーム結合部位)を含む非コードポリヌクレオチド配列のランダム化による変種ポリヌクレオチド配列の調製(例えば、Barrick, D., et al., Nucleic Acids Res. 22(7): 1287-1295 (1994); Wilson, B.S., et al., Biotechniques 17:944-953 (1994)を参照されたい)がある。
【0100】
再帰的アンサンブル変異誘発(recursive ensemble mutagenesis)(例えば、Arkin et al., PNAS, USA 89:7811-7815, 1992を参照されたい)を用いてポリヌクレオチド配列変種を作製することもできる。再帰的アンサンブル変異誘発は、アミノ酸配列が異なるメンバーを有する表現型的に関連する変異体の多様な集団を作製するために開発されたタンパク質工学(すなわち、タンパク質変異誘発)用のアルゴリズムである。この方法では、連続した回のコンビナトリアルカセット変異誘発を制御するためにフィードバック機構が用いられる。ポリヌクレオチド配列変種を作製するために、指数関数的アンサンブル変異誘発(例えば、Delegrave et al., Biotech. Res. 11: 1548-1552, 1993を参照されたい)も使用することができる。指数関数的アンサンブル変異誘発は、高いパーセンテージのユニークかつ機能的な変異体を含むコンビナトリアルライブラリーを作製するためのプロセスであり、それぞれの変化した位置にある、機能的タンパク質につながるアミノ酸を特定するために小さな残基グループが同時にランダム化される。ランダム変異誘発および部位特異的変異誘発も使用することができる(例えば、Arnold, Curr. Opin. Biotech. 4:450-455, 1993を参照されたい)。
【0101】
さらに、標準的なインビボ変異誘発法を使用することができる。例えば、エステルシンターゼ(例えば、'377)またはチオエステラーゼ(例えば、Ppro)ポリペプチドのオープンリーディングフレームを含む1つまたは複数のポリヌクレオチド配列ならびに機能的に連結された制御配列を含む宿主細胞を放射線(例えば、UV光もしくはX線)への曝露または化学薬品(例えば、エチル化剤、アルキル化剤、もしくは核酸類似体)への曝露を介して変異誘発することができる。一部の宿主細胞タイプ、例えば、細菌、酵母、および植物では、インビボ変異誘発のために転位エレメントも使用することができる。
【0102】
'377変種などのエステルシンターゼ変種をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチド配列が変異誘発されると、一般的に、改変および改善された生物学的機能を示すエステルシンターゼポリペプチド産物が発現される。同様に、Ppro変種をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチド配列が変異誘発されると、一般的に、改変および改善された生物学的機能、例えば、強化されたエステルシンターゼ活性を示すPproポリペプチド産物が発現される。例えば、'377ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームおよび機能的に連結された制御配列を含む1つまたは複数のポリヌクレオチド配列の変異誘発によって組換え微生物グループが調製された時に、結果として生じた変異誘発ポリヌクレオチド配列から発現されたタンパク質は'377エステルシンターゼの生物学的機能を維持し得るが、変異体'377ポリヌクレオチドを発現させるのに有効な条件下で組換え微生物が培養された時に、脂肪エステルの収率の改善、βヒドロキシエステルの収率の低下、および/または(鎖長、飽和などの点で)脂肪エステル産物の改変された混合物を含む組成物の改善が観察される。同様に、Pproポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームおよび機能的に連結された制御配列を含む1つまたは複数のポリヌクレオチド配列の変異誘発によって組換え微生物グループが調製された時に、結果として生じた変異誘発ポリヌクレオチド配列から発現されたタンパク質はPproチオエステラーゼの生物学的機能を維持し得るが、組換え微生物においてエステルシンターゼ活性が観察される。エステルシンターゼ活性のために、変異体Pproポリヌクレオチドを発現させるのに有効な条件下で組換え微生物が培養された時に、脂肪エステルの収率の改善、(鎖長、飽和などの点で)改変された脂肪エステル産物の混合物を含む組成物の改善が観察される。別の態様において、1つまたは複数のPproポリヌクレオチド配列が変異誘発されると、一般的に、変異体Pproポリペプチドは改変された生物学的機能を示すが、野生型または親Pproポリペプチドと同じ生物学的機能を保持し得るPproポリペプチド産物が発現される。例えば、Pproポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームおよび機能的に連結された制御配列を含む1つまたは複数のポリヌクレオチド配列の変異誘発によって組換え微生物グループが調製された時に、結果として生じた変異誘発ポリヌクレオチド配列から発現されたタンパク質はPproチオエステラーゼの生物学的機能を維持し得るが、組換え微生物においてエステルシンターゼ活性が観察される。
【0103】
ホットスポット
本開示はまた、少なくとも部分的に、'377ポリペプチドなどの変種エステルシンターゼポリペプチドの中にある、ある特定の構造的に保存された「ホットスポット」の特定に基づく。ホットスポットは、'377ポリペプチドにおける脂肪エステル産物の高力価および/またはβヒドロキシエステルの低産生につながる多数の変異が観察された領域である。特に、このような領域は、これらのホットスポットを欠く野生型ポリペプチドと比較して高いエステルシンターゼ活性を示す変種エステルシンターゼポリペプチドにおいて見られる。ホットスポットには、アミノ酸領域39~44;76~80;98~102;146~150;170~207、特に、182~207(例えば、最多数の変異を示す);242~246;300~320;348~357;および454~458が含まれる。
【0104】
モチーフ
本開示はまた、少なくとも部分的に、エステルシンターゼ活性が強化されたチオエステラーゼポリペプチドの中にある、ある特定の構造的に保存されたモチーフの特定に基づき、これらのモチーフの1つを含むチオエステラーゼポリペプチド、例えば、Pproは、モチーフを欠く野生型チオエステラーゼポリペプチドと比較して高いエステルシンターゼ活性を有する。従って、本開示は、以下に示された置換を有する、SEQ ID NO:51のアミノ酸領域73~81にあるモチーフを含む変種チオエステラーゼポリペプチド、例えば、Pproを特徴とする。
【0105】
潜在的な置換には、アミノ酸位置75のアラニン(A)またはグリシン(G);アミノ酸位置76のバリン(V)、イソロイシン(I)、またはロイシン(L);およびアミノ酸位置78のアラニン(A)またはグリシン(G)が含まれる。
【0106】
組換え宿主細胞および組換え宿主細胞培養物
本開示の組換え宿主細胞は、組換え宿主細胞内でのエステルシンターゼ活性を有するポリペプチドの発現を容易にする機能的に連結された制御配列と共に、エステルシンターゼ活性を有するポリペプチド、例えば、アシル-チオエステルから脂肪エステルへの変換を触媒する任意のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む1つまたは複数のポリヌクレオチド配列を含む。1つの好ましい態様において、改善されたエステルシンターゼ活性を有するポリペプチドは'377の変種または変異体である。別の好ましい態様において、改善されたエステルシンターゼ活性を有するポリペプチドはPproの変種または変異体である。本開示の組換え宿主細胞内において、オープンリーディングフレームコード配列および/または制御配列は'377またはPproポリペプチドの対応する野生型コード配列と比べて改変されてもよい。脂肪エステル組成物は、変種エステルシンターゼポリペプチド(例えば、'377)またはエステルシンターゼ活性を有する変種チオエステラーゼポリペプチド(例えば、Ppro)を発現させるのに有効な条件下で炭素源の存在下で組換え宿主細胞を培養することによって産生される。変異体または変種'377ポリペプチドが発現されると、脂肪エステルの収率が上昇し、βヒドロキシエステルの収率が低下した脂肪エステル組成物が産生される。変異体または変種Pproポリペプチドが発現されると、脂肪エステルの収率が上昇した脂肪エステル組成物が産生される。
【0107】
本開示を例示するために、本出願人らは、変種エステルシンターゼポリペプチド配列を発現する宿主株を構築した(実施例、下記を参照されたい)。組換え宿主細胞内で発現された時に高力価の脂肪エステルをもたらす変種エステルシンターゼポリペプチド配列の例には、宿主株9B12(SEQ ID NO:4)、pKEV022(SEQ ID NO:10)、KASH008(SEQ ID NO:16)、KASH280(SEQ ID NO:33)、およびKASH281(SEQ ID NO:35)において発現された配列が含まれるが、これに限定されない。組換え宿主細胞内で発現された時に、高力価の脂肪エステルおよびβ-OHエステル産生の減少をもたらす変種エステルシンターゼポリペプチド配列の例には、宿主株pKEV28(SEQ ID NO:12)、およびKASH008(SEQ ID NO:16)、KASH285(SEQ ID NO:37)、KASH286(SEQ ID NO:39)、KASH288(SEQ ID NO:41)、およびKASH289(SEQ ID NO:43)において発現されたポリペプチド配列が含まれる。
【0108】
組換え宿主細胞内で発現された時に高力価の脂肪エステルをもたらす変種Pproポリペプチド配列の例には、宿主株PROF1(SEQ ID NO:53)、PROF2(SEQ ID NO:55)、P1B9(SEQ ID NO:58)、N115F(SEQ ID NO:61)、Vc7P4H5(SEQ ID NO:63)、Vc7P5H9(SEQ ID NO:65)、およびVc7P6F9(SEQ ID NO:31)において発現された配列が含まれるが、これに限定されない。
【0109】
組換え宿主細胞は、脂肪酸メチルエステル(FAME)、脂肪酸エチルエステル(FAEE)、ワックスエステルなどの脂肪エステルを産生することができる。脂肪酸エステルは典型的には培養培地から回収される。特定の脂肪酸エステルの分布ならびに脂肪エステル組成物の成分の鎖長および飽和の程度を求めるために、当技術分野において公知の方法、例えば、GC-FIDを用いて、組換え宿主細胞によって産生された脂肪酸エステル組成物を分析することができる。
【0110】
組換え宿主細胞および培養物を作る方法
当技術分野において周知の様々な方法を用いて、脂肪エステルおよび/または脂肪エステル組成物を産生するように宿主細胞を遺伝的に操作することができる。前記方法は、本明細書に記載のように、変異体または変種'377エステルシンターゼまたはエステルシンターゼ活性を有するPproチオエステラーゼをコードする核酸を含むベクター、好ましくは、発現ベクターの使用を含んでもよい。当業者であれば、本明細書に記載の方法において様々なウイルスベクターおよび非ウイルスベクターを使用できることを理解するだろう。
【0111】
本開示の一部の態様において、ある特定の組成物中の「高い」力価の脂肪エステルは、対応する野生型宿主細胞の対照培養物によって産生された同じ脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステルの組み合わせの力価と比べて高い力価の、組換え宿主細胞培養物によって産生された、ある特定のタイプの脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステルの組み合わせである。一部の態様において、変異体もしくは変種'377エステルシンターゼポリヌクレオチド(もしくは遺伝子)配列または変異体もしくは変種Pproポリヌクレオチド(もしくは遺伝子)配列は、ポリヌクレオチド配列に機能的に連結されるプロモーターを含む組換えベクターを経由して宿主細胞に提供される。ある特定の態様において、プロモーターは、発生により調節されるプロモーター、細胞小器官特異的プロモーター、組織特異的プロモーター、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、または細胞特異的プロモーターである。組換えベクターは、典型的には、ポリヌクレオチド配列に機能的に連結される発現制御配列;ポリヌクレオチド配列に機能的に連結される選択マーカー;ポリヌクレオチド配列に機能的に連結されるマーカー配列;ポリヌクレオチド配列に機能的に連結される精製部分;ポリヌクレオチド配列に機能的に連結される分泌配列;およびポリヌクレオチド配列に機能的に連結される標的化配列より選択される少なくとも1つの配列を含む。タンパク質をコードするオープンリーディングフレームおよび機能的に連結される制御配列を含む1つまたは複数のポリヌクレオチド配列は組換え宿主細胞の染色体に組み込まれてもよく、組換え宿主細胞に存在する1つまたは複数のプラスミド発現系に組み込まれてもよく、その両方でもよい。
【0112】
本明細書に記載の発現ベクターは、宿主細胞内でのポリヌクレオチド配列発現に適した形で本明細書に記載のポリヌクレオチド配列を含む。発現ベクターの設計は、形質転換しようとする宿主細胞の選択、望ましいポリペプチドの発現レベルなどのような要因に依存し得ることが当業者により理解されるだろう。本明細書に記載のようにポリヌクレオチド配列によってコードされる、融合ポリペプチドを含むポリペプチドを産生するために、本明細書に記載の発現ベクターを宿主細胞に導入することができる。原核生物、例えば、大腸菌におけるポリペプチドをコードする遺伝子の発現は、ほとんどの場合、融合ポリペプチドまたは非融合ポリペプチドの発現を管理する構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターを含有するベクターを用いて行われる。原核生物および真核細胞の両方に適した発現系は当技術分野において周知であり、例えば、Sambrook et al., 「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」, second edition, Cold Spring Harbor Laboratory, (1989)を参照されたい。ある特定の態様において、本開示のポリヌクレオチド配列は、バクテリオファージT5に由来するプロモーターに機能的に連結される。1つの態様において、宿主細胞は酵母細胞である。この態様において、発現ベクターは酵母発現ベクターである。外来核酸(例えば、DNA)を宿主細胞を導入するための当技術分野において認められている様々な技法を介して、ベクターを原核生物または真核細胞に導入することができる。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクションするための適切な方法は、例えば、Sambrook et al. (前記)に見られる。
【0113】
細菌細胞の安定形質転換のために、使用される発現ベクターおよび形質転換法に応じて、ごくわずかな細胞が発現ベクターを吸収および複製することが公知である。これらの形質転換体を特定および選択するために、選択マーカー(例えば、抗生物質耐性)をコードする遺伝子を関心対象の遺伝子と一緒に宿主細胞に導入することができる。選択マーカーには、アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール、またはテトラサイクリンなどがあるが、これに限定されない薬物に対する耐性を付与する選択マーカーが含まれる。選択マーカーをコードする核酸は、本明細書に記載のポリペプチドをコードする核酸と同じベクターにのせて宿主細胞に導入されてもよく、別個のベクターにのせて導入されてもよい。導入された核酸によって安定に形質転換された細胞は、適切な選択薬物の存在下での増殖によって特定することができる。
【0114】
微生物である宿主細胞の例には、エシェリキア属(Escherichia)、バチルス属(Bacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ザイモモナス属(Zymomonas)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、アスペルギルス属(Aspergillus)、トリコデルマ属(Trichoderma)、ニューロスポラ属(Neurospora)、フザリウム属(Fusarium)、フミコラ属(Humicola)、リゾムコール属(Rhizomucor)、クリベロマイセス属(Kluyveromyces)、ピキア属(Pichia)、ムコール属(Mucor)、ミセリオフトラ属(Myceliophtora)、ペニシリウム属(Penicillium)、ファネロカエテ属(Phanerochaete)、ヒラタケ属(Pleurotus)、ホウロクタケ属(Trametes)、クリソスポリウム属(Chrysosporium)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ステノトロファモナス属(Stenotrophamonas)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、ヤロウイア属(Yarrowia)、またはストレプトマイセス属(Streptomyces)からの細胞が含まれるが、これに限定されない。一部の態様において、宿主細胞はグラム陽性細菌細胞である。他の態様において、宿主細胞はグラム陰性細菌細胞である。一部の態様において、宿主細胞は大腸菌細胞である。他の態様において、宿主細胞は、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)細胞、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)細胞、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)細胞、バチルス・リシェノフォルミス(Bacillus lichenoformis)細胞、バチルス・アルカロフィラス(Bacillus alkalophilus)細胞、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)細胞、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)細胞、バチルス・プミリス(Bacillus pumilis)細胞、バチルス・サリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)細胞、バチルス・クラウシ(Bacillus clausii)細胞、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)細胞、および枯草菌(Bacillus subtilis)細胞、またはバチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)細胞である。
【0115】
さらに他の態様において、宿主細胞は、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)細胞、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)細胞、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)細胞、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)細胞、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)細胞、アスペルギルス・フミガーテス(Aspergillus fumigates)細胞、アスペルギルス・フォエティダス(Aspergillus foetidus)細胞、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)細胞、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)細胞、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)細胞、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)細胞、フミコラ・ラヌギノセ(Humicola lanuginose)細胞、ロドコッカス・オパカス(Rhodococcus opacus)細胞、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)細胞、またはムコール・ミエシェイ(Mucor michei)細胞である。さらに他の態様では、宿主細胞は、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)細胞またはストレプトマイセス・ムリナス(Streptomyces murinus)細胞である。さらに他の態様では、宿主細胞は放線菌類細胞である。一部の態様において、宿主細胞はサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)細胞である。
【0116】
他の態様において、宿主細胞は、真核生物の植物、藻類、シアノバクテリア、緑色硫黄細菌、緑色非硫黄細菌、紅色硫黄細菌、紅色非硫黄細菌、好極限性細菌、酵母、菌類、その操作された生物、または合成生物に由来する細胞である。一部の態様において、宿主細胞は光依存性であるか、または炭素を固定する。一部の態様において、宿主細胞は独立栄養活性を有する。
【0117】
一部の態様において、宿主細胞は、例えば、光の存在下で、光独立栄養活性を有する。一部の態様において、宿主細胞は光の非存在下で従属栄養または混合栄養である。ある特定の態様において、宿主細胞は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、パニカム・ビルガタム(Panicum virgatum)、ミスカンサス・ギガンテウス(Miscanthus giganteus)、トウモロコシ(Zea mays)、ボトリオコッカセ・ブラウニ(Botryococcuse braunii)、クラミドモナス・レインハードティ(Chlamydomonas reinhardtii)、ドナリエラ・サリナ(Dunaliela salina)、シネココッカス(Synechococcus)種PCC7002、シネココッカス種PCC7942、シネコシスティス(Synechocystis)種PCC6803、サーモシネコココカッス・エロンガテス(Thermosynechococcus elongates)BP-1、クロロビウム・テピダム(Chlorobium tepidum)、クロロジレキサス・アウランチカス(Chlorojlexus auranticus)、クロマチウム・ビノサム(Chromatiumm vinosum)、ロドスピリルム・ラブラム(Rhodospirillum rubrum)、ロドバクター・カプスラタス(Rhodobacter capsulatus)、ロドシュードモナス・パラスリス(Rhodopseudomonas palusris)、クロストリジウム・リジュンダリ(Clostridium ljungdahlii)、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、またはザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)に由来する細胞である。
【0118】
遺伝子操作された宿主細胞の培養および発酵
本明細書で使用する「発酵」という用語は、炭素源を含む培地中で組換え宿主細胞培養物を増殖させることによる、宿主細胞による有機材料から標的物質への変換、例えば、組換え宿主細胞による炭素源から脂肪酸またはその誘導体への変換を大まかに指す。本明細書で使用する「産生を許容する条件」という用語は、宿主細胞が脂肪酸エステル組成物などの望ましい産物を産生するのを可能にする任意の条件を意味する。同様に、「ベクターのポリヌクレオチド配列が発現される条件」という用語は、宿主細胞がポリペプチドを合成するのを可能にする任意の条件を意味する。適切な条件には、例えば、発酵条件が含まれる。発酵条件は、温度範囲、エアレーション速度、供給速度、および培地組成を含むが、これに限定されない多くのパラメータを含んでもよい。これらの条件はそれぞれ、個々におよび組み合わせて、宿主細胞が増殖するのを可能にする。発酵は、好気性、嫌気性、またはそのバリエーション(例えば、微好気性)でもよい。例示的な培養培地にはブロスまたはゲルが含まれる。一般的に、培地は、宿主細胞が直接代謝することができる炭素源を含む。さらに、炭素源の動態化(例えば、デンプンまたはセルロースから発酵性糖への解重合)およびその後の代謝を容易にするために培地中に酵素を使用することができる。
【0119】
小規模生産の場合、操作された宿主細胞を、例えば、約100μL、200μL、300μL、400μL、500μL、1mL、5mL、10mL、15mL、25mL、50mL、75mL、100mL、500mL、1L、2L、5L、または10Lのバッチで増殖させ、発酵させ、望ましいポリヌクレオチド配列、例えば、エステルシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を発現するように誘導することができる。大規模生産の場合、操作された宿主細胞を、約10L、100L、1000L、10,000L、100,000L、1,000,000Lまたはそれより多い体積バッチを有する培養中で増殖させ、発酵させ、望ましいポリヌクレオチド配列を発現するように誘導することができる。本明細書に記載の脂肪エステル組成物は組換え宿主細胞培養物の細胞外環境に見られ、培養培地から容易に単離することができる。脂肪酸誘導体は組換え宿主細胞によって分泌されてもよく、細胞外環境に輸送されてもよく、組換え宿主細胞培養物の細胞外環境に受動的に移動されてもよい。脂肪エステル組成物は、当技術分野において公知の日常的な方法を用いて組換え宿主細胞培養物から単離されてもよい。
【0120】
遺伝子操作された宿主細胞のスクリーニング
本開示の1つの態様において、変異体または変種'377エステルシンターゼポリペプチドの活性は、組換え宿主細胞('377ポリヌクレオチド配列などの1つまたは複数の変異誘発エステルシンターゼを含む)を培養し、その後に、組換え宿主細胞によって産生された脂肪酸エステル組成物の特徴、例えば、脂肪酸エステルの力価、収率、および生産性;ならびにパーセントβヒドロキシエステルを特定するためにスクリーニングすることによって確かめられる。別の態様において、変異体または変種Pproポリペプチドの活性は、(Pproポリヌクレオチド配列などの1つまたは複数の変異誘発チオエステラーゼを含む)組換え宿主細胞を培養し、その後に、組換え宿主細胞によって産生された脂肪酸エステル組成物の特徴、例えば、脂肪酸エステルおよび遊離脂肪酸の力価、収率、および生産性を特定するためにスクリーニングことによって確かめられる。変異体もしくは変種'377エステルシンターゼポリペプチドまたは変異体もしくは変種Pproポリペプチドおよびその断片は日常的な方法を用いてエステルシンターゼ活性についてアッセイすることができる。例えば、変異体もしくは変種'377エステルシンターゼポリペプチドもしくはPproポリペプチドまたはその断片は、ポリペプチドが機能できる条件下で基質(例えば、アシル-CoA、アシル-ACP、遊離脂肪酸、またはアルコール)と接触される。基質のレベルの低下または脂肪エステルもしくは脂肪エステル組成物のレベルの上昇を測定して、エステルシンターゼ活性を確かめることができる。
【0121】
組換え宿主細胞に由来する産物
本明細書で使用する「現代炭素比(fraction of modem carbon)」すなわちfMは、米国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology)(NIST)標準物質(Standard Reference Materials)(SRM 4990Bおよび4990C、それぞれ、シュウ酸標準HOxIおよびHOxIIと知られる、によって定義されたものと同じ意味を有する。基本的定義は、HOxIの14C/12C同位体比(AD1950を基準とする)の0.95倍に関するものである。これは、減衰補正した産業革命前の木材にほぼ相当する。現在の生物圏(植物材料)の場合、fMは約1.1である。
【0122】
生物学的に産生された有機化合物、特に、本明細書中の脂肪酸生合成経路を用いて産生された脂肪エステル組成物を含むバイオプロダクト(例えば、本開示に従って産生された脂肪エステル組成物)は再生可能な供給源から産生されており、従って、新たな組成物である。これらの新たなバイオプロダクトは、二重炭素同位体フィンガープリント法(dual carbon-isotopic fingerprinting)または14C年代測定法に基づいて石油化学炭素に由来する有機化合物と区別することができる。さらに、二重炭素同位体フィンガープリント法(例えば、米国特許第7,169,588号を参照されたい)によって、生物由来炭素の特定の供給源(例えば、グルコース対グリセロール)を確かめることができる。バイオプロダクトと石油に基づく有機化合物を区別できることは、商業において、これらの材料の追跡する際に有益である。例えば、生物に基づく炭素同位体プロファイルおよび石油に基づく炭素同位体プロファイルの両方を含む有機化合物または化学薬品は石油に基づく材料のみで作られた有機化合物および化学薬品と区別される場合がある。従って、本明細書中のバイオプロダクトは、商業において、ユニークな炭素同位体プロファイルに基づいて追う、または追跡することができる。バイオプロダクトは、各試料中の安定炭素同位体比(13C/12C)を比較することによって石油に基づく有機化合物と区別することができる。所定のバイオプロダクト中の13C/12C比は、二酸化炭素が固定された時の大気二酸化炭素中の13C/12C比の結果である。これは正確な代謝経路も反映している。地域によるばらつきも発生する。石油、C3植物(広葉)、C4植物(イネ科草本)、および海成炭酸塩は全て13C/12Cの有意な差および対応するδ13C値を示す。C4植物およびC3植物はいずれも、ある範囲の13C/12C同位体比を示すが、典型的な値はC4植物については約-7~約-13パーミルであり、C3植物については約-19~約-27パーミルである(例えば、Stuiver et al., Radiocarbon 19:355(1977)を参照されたい)。一般的に、石炭および石油は後者の範囲内におさまる。
δ13C(‰)=[(13C/12C)試料-(13C/12C)標準]/(13C/12C)標準×1000
【0123】
IAEA、USGS、NIST、および他の選ばれた国際同位体研究所と協力して一連の代替RMが開発されている。PDBからのパーミル逸脱の表記はδ13Cである。質量44、45、および46の分子イオンに対する高精度安定比質量分析法(high precision stable ratio mass spectrometry)(IRMS)によってCO2を測定する。本明細書に記載の組成物には、本明細書に記載の任意の方法によって産生された脂肪エステル組成物および産物が含まれる。具体的には、脂肪エステル組成物または産物のδ13Cは約-28以上、約-27以上、-20以上、-18以上、-15以上、-13以上、-10以上、または-8以上であり得る。例えば、脂肪エステル組成物または産物のδ13Cは約-30~約-15、約-27~約-19、約-25~約-21、約-15~約-5、約-13~約-7、または約-13~約-10であり得る。他の場合では、脂肪エステル組成物または産物のδ13Cは約-10、-11、-12、または-12.3であり得る。本明細書中の本開示に従って産生された脂肪エステル組成物および産物は、各化合物中の14C量を比較することによって石油に基づく有機化合物と区別することもできる。14Cの核半減期は5730年であるので、「年代の古い」炭素を含有する石油に基づく燃料は「年代の新しい」炭素を含有する脂肪エステル組成物およびバイオプロダクトと区別することができる(例えば、Currie, 「Source Apportionment of Atmospheric Particles」, Characterization of Environmental Particles, J. Buffle and H. P. van Leeuwen, Eds., 1 of Vol. I of the IUPAC Environmental Analytical Chemistry Series (Lewis Publishers, Inc.) 3-74, (1992)を参照されたい)。
【0124】
放射性炭素年代測定法における基本前提は、大気中の14C濃度が不変であることにより生体中の14Cが不変であるということである。しかしながら、1950年以降の大気圏核実験および1850年以降の化石燃料の燃焼によって、14Cの地球化学的時間特性(geochemical time characteristic)は異なるものになった。大気CO2、従って、生物圏中の14C濃度は1960年代半ばの核実験のピーク時にはほぼ2倍になった。それ以降は、14C濃度は概算緩和「半減期」7~10年で定常状態の宇宙線生成(大気中)ベースライン同位体比(14C/12C)である約1.2x10-12に徐々に戻りつつある(この半減期は文字通りに解釈してはならない;もっと正確に言うと、核時代が始まってからの大気中および生物圏における14C変動を追跡するためには、詳細な大気核投入/壊変関数(atmospheric nuclear input/decay function)を用いなければならない)。最近の生物圏炭素の年代測定の可能性を示唆するのが、この後者の生物圏14C時間特性である。14Cは加速器質量分析(AMS)によって測定することができ、その結果は「現代炭素比」(fM)という単位で示される。本明細書に記載の脂肪エステル組成物および産物には、少なくとも約1のfM14Cを有し得るバイオプロダクトが含まれる。例えば、本開示のバイオプロダクトは、少なくとも約1.01のfM14C、約1~約1.5のfM14C、約1.04~約1.18のfM14C、または約1.111~約1.124のfM14Cを有し得る。
【0125】
14Cの別の測定法は現代炭素パーセント(pMC)として知られる。14C年代を使用する考古学者または地質学者にとってAD1950は「0年」に等しい。これはまた100pMCに相当する。大気中の「核実験起源の炭素(bomb carbon)」は1963年の熱核兵器のピーク時には正常値のほぼ2倍に達した。14C大気中分布は14Cが出現してから概算されており、AD1950以降から生きている植物および動物については100pMCを上回る値を示す。14Cは時間が経つにつれて徐々に減少しており、現在の値は約107.5pMCである。このことは、トウモロコシなどの新鮮なバイオマス材料の14Cシグネチャが約107.5pMCであることを意味する。石油に基づく化合物のpMC値は0である。化石炭素と現在の炭素(present day carbon)が組み合わされると、現在のpMC含有率は希釈される。107.5pMCが現在のバイオマス材料の14C含有率に相当し、0pMCが石油に基づく製品の14C含有率に相当すると考えることによって、この材料のpMC測定値は2種類の成分タイプの比率を反映している。例えば、現在のダイズに100%由来する材料の放射性炭素シグネチャは約107.5pMCになるだろう。この材料を石油に基づく製品で50%に希釈したら、その放射性炭素シグネチャは約54pMCになるだろう。生物に基づく炭素含有率は、「100%」を107.5pMCに対応させ、「0%」を0pMCに対応させることによって得られる。例えば、99pMCと測定された試料の対応する生物に基づく炭素含有率は93%である。この値は、生物に基づく炭素の結果の平均と呼ばれ、現在の生物学的材料または石油に基づく材料のいずれかから生じた分析材料の中にある全成分を想定する。本明細書に記載のように1種類または複数種類の脂肪エステルを含むバイオプロダクトのpMCは少なくとも約50、60、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、または100になり得る。他の場合では、本明細書に記載の脂肪エステル組成物のpMCは約50~約100;約60~約100;約70~約100;約80~約100;約85~約100;約87~約98;または約90~約95になり得る。さらに他の場合において、本明細書に記載の脂肪エステル組成物のpMCは約90、91、92、93、94、または94.2になり得る。
【0126】
脂肪エステル組成物
脂肪エステルの例には、脂肪酸エステル、例えば、FAEEおよびFAMEを含む短鎖アルコールに由来する脂肪酸エステルおよび長鎖脂肪アルコールに由来する脂肪酸エステルが含まれる。産生された脂肪エステルおよび/または脂肪エステル組成物は個々に、または適切な組み合わせで、バイオ燃料(例えば、バイオディーゼル)、工業化学薬品、あるいはバイオ燃料もしくは工業化学薬品の成分またはバイオ燃料もしくは工業化学薬品のための供給材料として使用することができる。一部の局面において、本開示は、例えば、FAEE、FAME、および/または長鎖アルコールの他の脂肪酸エステル誘導体を含む1種類または複数種類の脂肪酸エステルを含む脂肪エステル組成物を産生する方法に関する。関連する局面において、前記方法は、FAME、FAEE、脂肪酸プロピルエステル、脂肪酸イソプロピルエステル、脂肪酸ブチルエステル、モノグリセリド、脂肪酸イソブチルエステル、脂肪酸2-ブチルエステル、および脂肪酸tert-ブチルエステルなどを含むが、これに限定されない脂肪エステルおよび脂肪エステル組成物を作るのに適した遺伝子操作された産生宿主を含む。
【0127】
従って、1つの局面において、本開示は、'377などの野生型エステルシンターゼ酵素によって産生された脂肪エステル組成物と比べてパーセンテージが低下したβヒドロキシエステルおよび遊離脂肪酸を含み得る脂肪エステル組成物を作る方法を特徴とする。脂肪酸メチルエステル活性が改善された変種'377ポリペプチドまたは酵素は、βヒドロキシエステルの増加、βヒドロキシエステルの減少、脂肪酸エステルの鎖長の伸長、および脂肪酸エステルの鎖長の短縮を含むが、これに限定されない改善された特性を有する。前記方法は、宿主細胞内でエステルシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子を発現させる工程を含む。別の局面において、本開示は、遊離脂肪酸を含んでもよく、遊離脂肪酸を含まなくてもよい脂肪エステル組成物を作る方法であって、宿主細胞内でエステルシンターゼ活性を有するPproポリペプチドをコードする遺伝子を発現させる工程を含む。一部の態様において、エステルシンターゼポリペプチドまたはエステルシンターゼ活性を有するチオエステラーゼポリペプチドをコードする遺伝子は、それぞれ、EC2.3.1.75またはEC3.1.2として分類された酵素、およびチオエステラーゼ、エステルシンターゼ、アシル-CoA:アルコールトランスアシラーゼ、アルコールO-脂肪酸-アシル-トランスフェラーゼ、アシルトランスフェラーゼ、および脂肪酸アシル-coA:脂肪アルコールアシルトランスフェラーゼ、またはその適切な変種を含むが、それに限定されるわけではない、アシルチオエステルから脂肪エステルの変換を触媒することができる他の任意のポリペプチドより選択される。
【0128】
ある特定の態様では、宿主細胞の内因性チオエステラーゼは存在しても改変されない。ある特定の他の態様では、宿主細胞はレベルが低減したチオエステラーゼ活性を発現するか、またはチオエステラーゼは機能的に欠失される。一部の態様において、宿主細胞には、検出可能なチオエステラーゼ活性がない。本明細書で使用する「検出可能な」という用語は、実存または存在を確かめることができることを意味する。例えば、反応物からの産物の産生(例えば、ある特定のタイプの脂肪酸エステルの産生)は、当技術分野において公知の方法または本明細書において提供される方法を用いて検出可能である。ある特定の態様において、宿主細胞は、レベルが低減した脂肪酸分解酵素、例えば、アシル-CoAシンターゼを発現するか、または脂肪酸分解酵素は機能的に欠失される。一部の態様において、宿主細胞には、検出可能な脂肪酸分解酵素活性がない。特定の態様において、宿主細胞は、レベルが低減したチオエステレラーゼ(thioesterease)、脂肪酸分解酵素、またはその両方を発現する。他の態様において、チオエステラーゼ、脂肪酸分解酵素、またはその両方は機能的に欠失される。一部の態様において、宿主細胞は、チオエステラーゼ、脂肪酸誘導体酵素、またはその両方の非存在下でアシル-ACPまたはアシル-CoAを脂肪酸および/またはその誘導体、例えば、エステルに変換することができる。または、宿主細胞は、チオエステラーゼ、脂肪酸誘導体酵素、またはその両方の非存在下で遊離脂肪酸を脂肪エステルに変換することができる。ある特定の態様において、前記方法は、宿主細胞または宿主細胞培養物から脂肪エステル組成物、脂肪エステル、または遊離脂肪酸を単離する工程をさらに含む。本開示の好ましい態様において、脂肪酸誘導体組成物は高いパーセンテージの脂肪エステルを含む。ある特定の態様において、脂肪エステルまたは脂肪エステル組成物は短鎖アルコールまたは長鎖アルコールなどの適切なアルコール基質に由来する。
【0129】
一般的に、脂肪エステルまたは脂肪エステル組成物は宿主細胞の細胞外環境から単離される。一部の態様において、脂肪エステルまたは脂肪エステル組成物は部分的または完全に宿主細胞から自発的に分泌される。別の態様では、脂肪エステルまたは脂肪エステル組成物は任意で1種類または複数種類の輸送タンパク質の助けを借りて細胞外環境に輸送される。さらに他の態様において、脂肪エステルまたは脂肪エステル組成物は細胞外環境に受動的に輸送される。
【0130】
一部の態様において、本開示は、変異体または変種'377ポリペプチドの発現または過剰発現を可能にする条件下で、遺伝子操作された宿主細胞を培養することによって脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステル組成物を産生する方法であって、前記組成物が、パーセンテージが低下したβヒドロキシエステルおよび/または遊離脂肪酸を含み得る方法を含む。別の態様では、本開示は、変異体または変種'377ポリペプチドの発現または過剰発現を可能にする条件下で、遺伝子操作された宿主細胞を培養することによって脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステル組成物を産生する方法であって、前記組成物が、パーセンテージが上昇したβヒドロキシエステルおよび/または遊離脂肪酸を含み得る方法を含む。一部の態様において、前記方法は、パーセンテージが上昇または低下したβヒドロキシエステルおよび/または遊離脂肪酸を含み得る、脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステル組成物の産生を可能にする条件下で、遺伝子操作された宿主細胞を炭素源(例えば、糖質)を含む培地中で培養する工程をさらに含む。他の態様において、本開示は、エステルシンターゼ活性を有するPproポリペプチドの発現または過剰発現を可能にする条件下で、遺伝子操作された宿主細胞を培養することによって脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステル組成物を産生する方法であって、前記組成物が遊離脂肪酸を含み得る方法を含む。一部の態様において、前記方法は、遊離脂肪酸を含み得る、脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステル組成物の産生を可能にする条件下で、遺伝子操作された宿主細胞を糖質などの炭素源を含む培地中で培養する工程をさらに含む。
【0131】
一部の態様において、本開示は、1つまたは複数のアミノ酸置換、付加、挿入、または欠失を有するSEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含み、エステルシンターゼ活性を有するエステルシンターゼポリペプチドを提供する。変異体または変種'377ポリペプチドのエステルシンターゼ活性は対応する野生型'377ポリペプチドより高い。例えば、変異体または変種'377ポリペプチドは、チオエステル、例えば、脂肪酸アシル-CoAもしくは脂肪酸アシル-ACPから脂肪酸および/もしくは脂肪酸誘導体への変換を触媒することができるか、またはチオエステル、例えば、脂肪酸アシル-CoAもしくは脂肪酸アシル-ACPから脂肪酸および/もしくは脂肪酸誘導体への変換を触媒する改善された能力を有する。特定の態様において、変異体または変種'377ポリペプチドは、チオエステラーゼ活性、脂肪酸分解酵素活性、またはその両方の非存在下でチオエステル基質から脂肪酸および/もしくはその誘導体、例えば、脂肪エステルへの変換を触媒することができるか、またはチオエステル基質から脂肪酸および/もしくはその誘導体、例えば、脂肪エステルへの変換を触媒する改善された能力を有する。例えば、変異体または変種'377ポリペプチドはチオエステラーゼまたはアシル-CoAシンターゼ活性の非存在下で、インビボで脂肪酸アシル-ACPおよび/または脂肪酸アシル-CoAから脂肪エステルに変換することができる。
【0132】
他の態様において、本開示は、1つまたは複数のアミノ酸置換、付加、挿入、または欠失を有するSEQ ID NO:51のアミノ酸配列を含み、エステルシンターゼ活性を有するPproポリペプチドを提供する。ある特定の態様において、本開示のPproポリペプチドは対応する野生型Pproポリペプチドより高いエステルシンターゼ活性を有する。例えば、エステルシンターゼ活性を有する本開示のPproポリペプチドは、チオエステル、例えば、脂肪酸アシル-CoAもしくは脂肪酸アシル-ACPから脂肪酸および/もしくは脂肪酸誘導体への変換を触媒することができるか、または脂肪酸アシル-CoAもしくは脂肪酸アシル-ACPから脂肪酸および/もしくは脂肪酸誘導体への変換を触媒する改善された能力を有する。特定の態様において、エステルシンターゼ活性を有するPproポリペプチドは、チオエステラーゼ活性、脂肪酸分解酵素活性、またはその両方の非存在下で、チオエステル基質から脂肪酸および/もしくはその誘導体、例えば、脂肪エステルへの変換を触媒することができるか、またはチオエステル基質から脂肪酸および/もしくはその誘導体、例えば、脂肪酸エステルへの変換を触媒する改善された能力を有する。例えば、エステルシンターゼ活性を有するPproポリペプチドは、チオエステラーゼまたはアシル-CoAシンセターゼ活性の非存在下で、インビボで脂肪酸アシル-ACPおよび/または脂肪酸アシル-CoAを脂肪エステルに変換することができる。
【0133】
一部の態様において、変異体もしくは変種'377ポリペプチドまたは変異体もしくは変種Pproポリペプチドは、以下の保存的アミノ酸置換:脂肪族アミノ酸、例えば、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンと別の脂肪族アミノ酸との交換;セリンとスレオニンとの交換;スレオニンとセリンとの交換;酸性残基、例えば、アスパラギン酸およびグルタミン酸と別の酸性残基との交換;アミド基を有する残基の交換;塩基性残基、例えば、リジンおよびアルギニンと別の塩基性残基との交換;ならびに芳香族残基、例えば、フェニルアラニンおよびチロシンと別の芳香族残基との交換の1つまたは複数を含む。一部の態様において、変異体もしくは変種'377ポリペプチドまたはエステルシンターゼ活性を有する変異体もしくは変種Pproポリペプチドは、約1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、またはそれより多いアミノ酸置換、付加、挿入、または欠失を有する。一部の態様において、ポリペプチド変種はエステルシンターゼおよび/またはアシルトランスフェラーゼ活性を有する。例えば、変異体もしくは変種'377ポリペプチドポリペプチドまたは変異体もしくは変種Pproポリペプチドは、基質としてアルコールを用いてチオエステルから脂肪酸および/または脂肪酸誘導体への変換を触媒することができる。非限定的な例では、変異体もしくは変種'377ポリペプチドポリペプチドまたは変異体もしくは変種Pproポリペプチドは、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、またはヘキサデカノールなどの適切なアルコール基質を用いて、脂肪酸アシル-CoAおよび/または脂肪酸アシル-ACPから脂肪酸および/または脂肪酸エステルへの変換を触媒することができる。
【実施例0134】
以下の特定の実施例は本開示を例示することを目的とし、特許請求の範囲を限定すると解釈すべきでない。本出願人らは、組換え宿主細胞内で脂肪酸エステルを産生するために一遺伝子系を使用した。これは、脂肪エステル組成物を高い力価および収率で産生するために、適切な宿主細胞内で、改善されたエステルシンターゼ活性を有するように操作されている変異体または変種'377ポリペプチドを発現させる工程を含む。得られた脂肪エステル組成物にはFAMEならびに増加および減少した量のβヒドロキシエステルが含まれる。脂肪エステルを高い力価および収率で産生するために、エステルシンターゼ活性が強化されたPproポリペプチドを作るために同じ戦略を使用した。
【0135】
プロトコール:
全てのプロトコールにおいて、培養物を増殖する場合には96ウェルプレート、マスターブロック(master block), 2mL(Greiner Bio-One, Monroe, NCまたはCorning, Amsterdam, The Netherlands)、培養ブロスから脂肪酸種を抽出する場合にはCostarプレートを使用する。以下のプロトコールは発酵条件を含み、脂肪酸種産生を評価するために使用することができる。脂肪酸種産生を評価するために別のプロトコールも使用することができる。
【0136】
プロトコール1(FA4P、32℃):
96ウェルプレート中で培養しているLB培養物から、30μLのLB培養物を用いて270μLのFA2P(表4)に接種し、次いで、32℃シェーカーにおいて約16時間インキュベートした。次いで、一晩シードのうち30μLを用いて、300μLのFA4P+2%MeOH+1mM IPTG(表4)に接種した。次いで、培養物を32℃シェーカーにおいて24時間インキュベートし、その後に、以下で詳述される標準抽出プロトコール(プロトコール5)に従って抽出した。
【0137】
プロトコール2(BP3G2P、32℃):
ライブラリーグリセロールストックを解凍し、10μLを96シャローウェルプレートに入っている150μLのLB+100μg/mLスペクチノマイシンに移し、32℃で20時間インキュベートした。この培養物のうち20μLを用いて280μLのBS1G4P培地に接種し(表4)、250rpmで振盪しながら32℃で20時間インキュベートした。この培養物のうち20μLを用いて380μLのBP3G2P培地に接種した(表4)。培養物を振盪しながら32℃で24時間インキュベートし、その後に、以下で詳述される標準プロトコールに従ってナイルレッドアッセイに供したか、または以下で詳述される標準抽出プロトコール(プロトコール5)に従って抽出した。
【0138】
プロトコール3(FA2、32℃):
96ウェルプレート中で培養しているLB培養物から、30μLのLB培養物を用いて270μLのFA2に接種し、次いで、シェーカー上で32℃で約16時間インキュベートした。次いで、一晩シードのうち30μLを用いて、300μLのFA2+2%MeOH+1mM IPTGに接種した。次いで、培養物をシェーカー上で32℃で24時間インキュベートし、その後に、以下で詳述される標準抽出プロトコール(プロトコール5)に従って抽出した。
【0139】
プロトコール4(FA2P、32℃):
96ウェルプレート中で培養しているLB培養物から、30μLのLB培養物を用いて270μLのFA2Pに接種し、次いで、32℃シェーカーにおいて約16時間インキュベートした。次いで、一晩シードのうち30μLを用いて300μLのFA2P+2%MeOH+1mM IPTGに接種した。次いで、培養物を32℃シェーカーにおいて24時間インキュベートし、その後に、以下で詳述される標準抽出プロトコール(プロトコール5)に従って抽出した。
【0140】
プロトコール5(脂肪酸種の標準的な抽出):
抽出しようとする各ウェルに、40μLの1M HCl、次いで、300μLの酢酸ブチルと内部標準として500mg/L C11-FAMEを添加した。次いで、96ウェルプレートをプレートシーラー(ALPS-300; Abgene, Thermo Scientific, Rockford, IL)を用いてヒートシールし、MixMate(Eppendorf, Hamburg, Germany)を用いて2000rpmで15分間、振盪した。振盪後、プレートを4500rpmで室温で10分間、遠心分離して(Allegra X-15R, ローターSX4750A, Beckman Coulter, Brea, CA)、水層および有機層を分離した。50μLの有機層を96ウェルプレート(96ウェルプレート, ポリプロピレン, Corning, Amsterdam, The Netherlands)に移した。プレートをヒートシールし、次いで、標準的な自動化方法を用いることによってGC-FIDで評価するまで-20℃で保管した。
【0141】
プロトコール6(脂肪酸種の標準的なナイルレッドアッセイ):
24時間の発酵後に、発酵ブロス70μLをGreiner MicrolonFluotrac 200プレートの中にある84.6%水および15.4%アセトニトリル溶液に溶解した1.54μg/mLナイルレッド130μL(最終アッセイ濃度は1μg/mLナイルレッド)に添加することによってナイルレッドアッセイを行い、上下にピペッティングすることによって混合した。相対蛍光単位をSpectraMax M2を用いて励起540nmおよび発光630nmで測定した。
【0142】
プロトコール7(飽和ライブラリーの組み立て):
当業者に公知の標準的な技法を用いて飽和ライブラリーを調製した。例えば、ベクターバックボーンは制限エンドヌクレアーゼを用いてベクター中に調製することができるのに対して、DNAインサート中の多様性は縮重プライマーを用いて作製することができる。例えば、ベクターバックボーンおよび多様性を有するDNAインサートのクローニングはInFusion Cloning System(Clontech Laboratories, Inc., Mountain View, CA)を用いて製造業者のプロトコールに従って行うことができる。
【0143】
プロトコール8(組み合わせライブラリーの組み立て):
脂肪酸種またはFAMEの産生がさらに改善されたPpro変種または377変種を提供するために、有益であると特定された変異を組み合わせた。当業者に公知の標準的な技法を用いて組み合わせライブラリーを調製した。例えば、ベクターバックボーンは制限エンドヌクレアーゼを用いてベクター中に調製することができるのに対して、DNAインサート中の多様性は、望ましい変異を導入するプライマーを用いて作製することができる。例えば、ベクターバックボーンおよび多様性を有するDNAインサートのクローニングはInFusion Cloning System(Clontech Laboratories, Inc., Mountain View, CA)を用いて製造業者のプロトコールに従って行うことができる。例えば、組み合わせライブラリーはトランスファー(transfer)PCR(tPCR)プロトコール(Erijman et al., 2011. J Structural Bio.175, 171-177)を用いて作製することができる。
【0144】
プロトコール9(ライブラリースクリーニング):
飽和ライブラリーまたは組み合わせライブラリーの中にライブラリー多様性を作製したら、前記の方法の1つ(プロトコール1~4)を用いてスクリーニングした。エステルシンターゼ変種のスクリーニング時に、3つのタイプのヒット:(1)脂肪酸エステル種力価(「FAS」力価)の上昇;(2)産生されたFAME、例えば、C14-FAMEの量の増加;および/または(3)産生されたβヒドロキシエステルの量の減少が特定された。各ヒットの中の'377変種の変異は、当業者により日常的に用いられる標準的な技法を用いた配列決定によって特定された。各ヒットの中の'377変種の変異は、当業者により日常的に用いられる標準的な技法を用いた配列決定によって特定された。表1および表2は、飽和ライブラリーにおいて有益であると特定された変異(「ヒット」)を列挙している。表5は、組み合わせライブラリーにおいて有益であると特定された変異(「ヒット」)を列挙している。Ppro変種のスクリーニング時に、2つのタイプのヒット:(1)脂肪酸エステル種の増加;(2)産生されたFAMEの量の増加が特定された。各ヒットの中のPpro変種の変異は、配列決定によって、および関連分野の当業者により日常的に用いられる標準的な技法を用いて特定された。表8~表11は、飽和ライブラリーにおいて有益であると特定された変異(「ヒット」)を列挙している。表12および表14は、組み合わせライブラリーにおいて有益であると特定された変異(「ヒット」)を列挙している。
【0145】
実施例1
テンプレートとしてWS377を用いて調製された飽和ライブラリー
マリノバクター・ハイドロカルボノクラスティカス(「'377」)に由来する完全飽和ライブラリーエステルシンターゼを組み立て、野生型WS377と比べて改善を示す変種についてスクリーニングした(プロトコール7)。完全飽和ライブラリーを作るために使用したプラスミドを、SEQ ID NO:1(すなわち、WS377の野生型核酸配列)を発現するpKEV027と呼んだ。完全飽和ライブラリーを、標準的な操作法によって、(FadEの欠失を介して)β酸化をブロックし、多数の脂肪酸生合成経路酵素(例えば、FabA、FabB、FabF、FabG、FabI、FabH、FabV、FabZ、accABCD)を過剰発現するように操作された大腸菌株(BD64)においてスクリーニングした。ライブラリーを前記の標準プロトコールのうちの1つ(プロトコール1~2)を用いてスクリーニングした。改善は、最初に、FAME力価の改善、または必ずしもFAME力価に影響を及ぶとは限らない、βヒドロキシエステル(本明細書において「β-OHエステル」または「β-OH FAME」または「β-OH」または「β-ヒドロキシ」と呼ぶ)の画分の低下と分類された。飽和ライブラリーのスクリーニングからの結果を以下の表1および表2に示した。表1は変異の結果を示し、これらの全てが、テンプレートとして'377(SEQ ID NO:1)を使用した時に脂肪エステル力価の上昇を示した。表2は、テンプレートとして'377を使用した時に%β-OH FAMEの低下につながった変異の結果を示す。特に、一部の変異体は、改善されたFAME力価、ならびに望ましい最終産物が主にFAMEであれば有益なβ-OH FAMEの減少を両方とも示した。一部の変異体はFAME力価の改善ならびにβ-OH FAMEの増加を示した。さらに、一部の変異体は短鎖エステルを増加または減少させた。
【0146】
以下の表1から明らかなように、'377飽和ライブラリーからの変異は全ての変異体において脂肪エステル力価の改善と相関関係にあったのに対して、β-OHエステルおよび短鎖長エステルの産生は変異体ごとに異なった。例えば、位置15にあるアミノ酸の置換(セリン→グリシン)によって全FAME力価はベースライン1から2.402に変化した。従って、力価はベースライン(すなわち、野生型)と比較して2.4倍上昇した。この特定の変異体において、β-OHエステルは約2.66倍増加した。16の炭素鎖長を有するエステルに対する14の炭素鎖長を有するエステルの産生はベースライン(すなわち、野生型)と比べて1.48倍増加した。他方で、アミノ酸位置393の置換(グルタミン酸からグリシンへの置換)はFAME力価を2.3倍上昇させ、β-OHエステルを対照の70%まで減少させたのに対して、C14/C16エステル産生はほぼ同じままであった。
【0147】
【0148】
表中の一部の変異には星印、例えば、*474Yがある。星印は、その位置に終止コドンがあることを意味する。
【0149】
本出願人らは、変種変異体核酸配列の1つ(すなわち、SEQ ID NO:28)において24bpリピートを発見した。24bpリピートは核酸領域
の重複であり、遺伝子開始点にあるATG開始コドンの前に位置する。従って、SEQ ID NO:28はSEQ ID NO:29のアミノ酸配列をコードする変種'377核酸配列である(この配列は、さらなる変異が無く、SEQ ID NO:27およびSEQ ID NO:1を組み合わせた結果である)。驚いたことに、表1に示したようにSEQ ID NO:29は良好な力価を示した。しかしながら、テンプレート配列としてSEQ ID NO:29を含み、その中にさらなる変異がある2つのさらなる変異体が検出された。これらの変異は力価をさらに上昇させた(表1を参照されたい)。(変異のナンバリングは24bpリピートを含まない)。特に、宿主株内でSEQ ID NO:29を発現させた時に得られる力価を示した表1から分かるように、24bpリピートはFAS力価および%β-OH FAMEの上昇につながった。
【0150】
以下の表2から明らかなように、'377飽和ライブラリーに由来する変異の一部は%β-OH FAMEの低下と相関関係にありながら、依然として、表1(前記)と比較して少ない程度で、しっかりと全FAMEを増加させた。しかしながら、一部の変異体は%β-OH FAMEを大きく低下させながら、依然として全FAME力価を大きく上昇させた。
【0151】
【0152】
実施例2
テンプレートとしてWS377を用いて調製された組み合わせライブラリー
標準的な技法を用いて組み合わせライブラリーを調製した(プロトコール8)。組み合わせライブラリーにおいて試験される変異(表3Aおよび3B)は、最初に、(実施例1に記載のように)'377の完全飽和ライブラリーにおいて特定された。組み合わせライブラリーを作るために使用したプラスミドは、pKEV027からaccABCD_birAを除去することによって構築したpKEV38であった。理論に拘束されたくはないが、accABCD_birAを除去することによって、基質に対する変異体酵素の親和性がさらに容易に検出可能になるように生合成経路における中間レベルの脂肪酸が低下すると考えられている。細胞を2NBT+ナイルレッド寒天にプレーティングした(表4)。コロニーは、400nm~500nmの励起範囲のDark Reader DR88X Transilluminatorおよび580~620nmで許容されるアンバーフィルター(amber filter)を用いて観察された。コロニーを注意深く選んでLB+100μg/mLスペクチノマイシンに入れ、一晩増殖させ、前記の標準プロトコールのうちの1つ(プロトコール1~2)を用いてスクリーニングした。
図4に示したように、このライブラリーに由来する変種のうちの1つは対照(BD64/pKEV038、SEQ ID NO:2)と比べてFASの劇的な増加を示した。
図4は、組み合わせライブラリーヒットのプレート発酵の結果を示す。いくつかのライブラリーヒットは対照(すなわち、BD64/pKEV038)より性能が優れていた。このことから、'377変種は多量のFAS産生を支持できることが分かった。pSHU10と名付けた、最も多量に産生する変種のプラスミド(SEQ ID NO:14の変種'377を発現する)を単離し、後の組み合わせライブラリーのテンプレートとして使用した。
【0153】
組み合わせライブラリーを、BD64株(前記)において標準プロトコールのうちの1つ(プロトコール1~2, 前記)を用いることによってスクリーニングした。 '377組み合わせライブラリーのスクリーニングからの結果を表5に示した。
【0154】
以下の表3Aは、1回目の組み合わせライブラリーに導入されたアミノ酸置換アミノ酸置換を示す。
【0155】
【0156】
以下の表3Bは、2回目の組み合わせライブラリーに導入されたアミノ酸置換を示す。
【0157】
【0158】
以下の表4は、使用した培地名および配合を示す。
【0159】
【0160】
以下の表5は、pSHU10上の変異(変異T5S、S15G、P111S、V171R、P188R、F317W、S353T、V409L、S442Gを含有する)を示した二次スクリーニングおよび標準化されたGC-FID結果を示す。示した結果は対照(すなわち、pSHU10、SEQ ID NO:14)と比べたものである。表にある各行は、作られた異なる組み合わせ変異体を表している。全ての変異体が、産生された全FAME、産生された全FAS、産生されたパーセントFAME、もしくは(C12/C14鎖長もしくはC14/C16鎖長を有する)最終組成物中のエステル種、またはこれらの特性の組み合わせに影響を及ぼした点で独特の特性を有することが測定された。表5から明らかなように、一部の変異体はこれらの特性の点で他の変異体と同様にふるまった。
【0161】
例えば、以下の表5の最初の行に示したように、変異A190P、N302G、T313S、およびQ348Rを含有する変異体は高いパーセントのFAME(およびβ-OH FAMEの低下)を生じ、最終産物中にC16エステルよりC14エステルを多く産生したことを意味するC14/C16鎖長エステル産生も増加させた。このことは、バイオディーゼルを含む多くの製品に短鎖エステルを使用することができるので望ましい。この結果から、本出願人らは、最終産物中のエステル種の最終鎖長も変えることができたことが分かる。
【0162】
変異の以下の組み合わせは、本明細書において示された結果に関する。これらの性能は対照(pSHU10;SEQ ID NO:14)と比べたものである。KASH008(SEQ ID NO:16)は%FAMEを1.4倍上昇させたのに対して、力価を1.06倍上昇させた。KASH032(SEQ ID NO:18)は%FAMEを1.29倍上昇させたのに対して、力価に影響を及ぼした。KASH040(SEQ ID NO:20)は%FAMEを1.16倍上昇させたのに対して、力価は対照の0.91倍まで低下した。KASH078(SEQ ID NO:26)は%FAMEを1.25倍上昇させたのに対して、力価を対照の0.76まで低下させた。KASH060(SEQ ID NO:22)およびKASH061(SEQ ID NO:24)は%FAMEに影響を及ぼしただけでなく、C12/C14の増加(KASH060については6.8倍、KASH061については3.1倍)およびC14/C16の増加(KASH060については4.0倍、KASH061については3.2倍)によって示されたように著しく短いエステル鎖産物も産生したので特に興味深い。
【0163】
【0164】
実施例3
有益な特性を有するエステルシンターゼ変異体株
実施例1および実施例2に記載のように、多数の変種型または変異体型の'377が有益な特性をもつと特定された。本実験では、野生型377上で3つの異なる変異(D7N、A179V、V381F)を含有する、本明細書において9B12(SEQ ID NO:4)と呼ぶ、ある特定の'377変異体をクローニングしてpKEV027に入れ、野生型'377ポリペプチド(SEQ ID NO:2)をコードする野生型'377遺伝子(SEQ ID NO:1)と交換し、pKEV018を作り出した。形質転換によってBD64株(前記)に導入した時に、KEV040株を作り出した。遺伝子のコドン348(開始コドン=0)における飽和変異誘発を用いてプラスミドpKEV018をさらに変異させて、野生型'377上に4つの異なる変異(D7N、A179V、Q348R、V381F)を含有するプラスミドpKEV022を作製した。別々に、以前に特定されたいくつかの変異をpKEV018プラスミドと組み合わせて、プラスミドpKEV028(野生型'377上に8つの変異(D7N、R87R「サイレント変異」、A179V、V187R、G212A、Q357V、V381F、M443Gを含有する)を作製した。pKEV022およびpKEV028を形質転換によりBD64株に導入して、それぞれ、KEV075(SEQ ID NO:10)およびKEV085(SEQ ID NO:12)と名付けた株を得た。これらの変異体株は、FAME力価の有意な上昇、または「β-OH」FAMEのパーセンテージの低下、またはその両方(例えば、変異体株9B12およびKEV085は両方を実現した)を生じることが見出された。
【0165】
前記の標準プロトコールのうちの1つ(プロトコール1~2)を用いて、KEV080株(BD64/pKEV027);KEV040株;KEV075株およびKEV085株をスクリーニングした。
図5は、野生型'377エステルシンターゼを含有する株と比較した変異体KEV040株、KEV075株、およびKEV085株の相対FAME力価および%β-OH FAMEを示す。本明細書において
図5は、これらの3つの変種が対照(野生型)より著しく高い力価FAMEを有することが観察され、%β-OH FAMEが変種ごとに異なり、9B12株(KEV040)およびKEV085株が対照(野生型)より低い%β-OH FAMEを産生したことを示す。
【0166】
実施例4
変種'377エステルシンターゼおよび変種Pproを発現するように操作された組換え宿主細胞によるエステル産生
実施例1、2、および3において証明されたように、高いレベルの脂肪酸エステルおよび低いパーセンテージのβ-OHエステルを産生するようにマリノバクター・ハイドロカルボノクラスティカス(WS377)に由来するエステルシンターゼを操作した。本開示の実施では、野生型WS377(SEQ ID NO:1)を操作して、直接、アシル-ACPから高いレベルのFAMEを産生する新たな株、例えば、9B12を得た。
【0167】
エステルシンターゼ活性を有するようにフォトバクテリウム・プロファンダム(Ppro)の'tesAを操作した。プラスミドpBD207の中にあるPpro Vc7P6F9の1つの変種(SEQ ID NO:31)をBD64において試験した(本明細書においてbecos.128と呼ぶ)。同様に、pKEV18の中にある'377の9B12変種(SEQ ID NO:4)をBD64において試験した(本明細書においてKEV040と呼ぶ)。becos.128(BD64/pBD207)およびKEV040(BD64/pKEV018)の培養物を2%アルコールを含む最少培地中で試験した。約24時間の産生後に、これらを抽出し、脂肪酸アシルエステルを特定するために(前記で列挙したプロトコールに従って)GC/FIDまたはGC/MSによって分析した。
【0168】
図6は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、またはグリセロールが供給された時の、KEV040(M.ハイドロカルボノクラスティカスに由来するエステルシンターゼ)からの脂肪酸アシルエステル(
図6にワックスと示した)の産生およびbecos.128(P.プロファンダムに由来する'tesA)からの脂肪酸種(
図6にPproと示した)の産生を示す。負の対照として、水を添加した(外因性アルコールが無いことは、全てのエステル産生が大腸菌による内因性アルコール産生に頼ることを意味する)。KEV040によって遊離脂肪酸は産生されなかったが、becos.128は脂肪酸エステルおよび脂肪酸の混合物を産生した。
図8は、becos.128によって産生された脂肪酸エステルおよび脂肪酸の量を示す。HoltzappleおよびSchmidt-Dannert(Journal of Bacteriology (2007) 189(10):3804-3812を参照されたい)において示されたインビトロ結果から、M.ハイドロカルボノクラスティカス('377)に由来するエステルシンターゼは長鎖アルコールの方を優先し、主にワックスを産生することが分かったことに留意しなければならない。Holtzappleのデータは、'377が短鎖アルコールを使用できないことを示唆している。対照的に、本出願人らの研究はインビボで行われ、変種'377酵素が短鎖アルコール(C1、C2、C3、およびC4)を利用することができ、これによって、様々な価値のある製品(例えば、バイオディーゼル、界面活性剤など)のために使用することができる短鎖エステルが得られることを立証した。本出願人らは、無益回路のかかわりを少なくする(すなわち、細胞のエネルギー効率を高める)と考えられているアシル-ACPを基質として使用した。さらに、本出願人らは、全てのアルコールが、1位にOH基をもつ必要があるとは限らず、例えば、プロパノールのOH基が1位または2位にあってもよいことを示した。
図6は、1種類の変種'377エステルシンターゼを発現するように遺伝子組換えされた組換え宿主細胞を用いた様々な鎖長を有する脂肪酸アシルエステルの産生を示す。この結果は、P.プロファンダム(Ppro)のtesAの変種および'377エステルシンターゼの変種の両方の操作された型について観察された。操作された変異体は一級アルコールだけでなく二級アルコールもFAME、FAEE、脂肪酸アシルモノグリセリド、およびその他を含む様々な異なる産物に変換できるということは注目に値する。脂肪エステルを産生するために、組換え細菌、酵母、藻類、または他の宿主細胞を使用することができる。
【0169】
実施例5
組み合わせ変異体を発現するエステルシンターゼ変異体株
当業者に公知の標準的な技法を用いて組み合わせライブラリーを調製した(プロトコール8)。組み合わせライブラリーにおいて試験された変異(表3Aおよび3B)は、最初に、(実施例1に記載のように)'377の完全飽和ライブラリーにおいて特定された。
【0170】
組み合わせライブラリーを、BD64に似ているが、わずかに異なるレベルの生合成経路酵素(前記)を発現するGLPH077株において標準プロトコールのうちの1つ(プロトコール1~2)(前記)を用いてスクリーニングした。pKASH008(SEQ ID NO:16)組み合わせライブラリーのスクリーニングからの結果を表6に示した。表6から明らかなように、結果として得られた'377エステルシンターゼ変種には野生型377と比較して24個の変異があった。2つの株、KASH280(SEQ ID NO:33)およびKASH281(SEQ ID NO:35)を用いて変種'377を試験した。しかしながら、KASH280はKASH280において発現されたものと一置換変異だけ異なる'377変種を発現した。KASH280は、位置348にあるグルタミンがアルギニンと交換(Q348R)された'377変種を発現し、それによって、この株は高力価のFAMEおよび多数の短鎖エステルを産生することが可能になった。逆に、KASH281は位置349にあるリジンがヒスチジンと交換(K349H)された'377変種を発現し、それによって、この株はKASH008と比較して低力価のFAMEを産生した。さらに、KASH281はKASH280と比較して低力価のFAMEおよび少ない数の短鎖エステルを産生した。全体的に見て、比較は、pSHU10より優れており、野生型より優れているKASH008と比べたものである(上記の実施例を参照されたい)。
【0171】
【0172】
実施例6
天然多様性に由来する有益な特性を有するエステルシンターゼ変異体株
実施例1および2に記載のように、多数の変種型または変異体型の'377が有益な特性をもつと特定された。標準的なアラインメント手順を用いた、異なるマリノバクター属生物、例えば、マリノバクター・アドハエレンス(Marinobacter adhaerens)HP15(YP_005886638.1、SEQ ID NO:45)、マリノバクター・アルギコラ(Marinobacter algicola)DG893(ZP_01893763.1、SEQ ID NO:47)、マリノバクター種ELB17(ZP_01736818.1、SEQ ID NO:49)に由来するエステルシンターゼポリペプチドとマリノバクター・ハイドロカルボノクラスティカスDSM8798(SEQ ID NO:2)に由来するエステルシンターゼポリペプチドとのアラインメントを用いて、自然界に既に存在している変異を特定した。なぜなら、これにより、天然で多様性を有し、従って、変種タンパク質を安定化するのに使用することができる特定の変異ならびにアミノ酸位置が明らかになるからである。アラインメントを行い、分析によって、エステルシンターゼホモログポリペプチド内の天然多様性が特定された。以下の表7は、このような変異グループの概要を示す。これらの変異が、マリノバクター・ハイドロカルボノクラスティカスに由来する操作されたエステルシンターゼと組み合わせられた時に、前記の標準プロトコールのうちの1つ(プロトコール1~2)を用いてスクリーニングされれば、有益な変種を観察することができる。このような変種の例をSEQ ID NO:37、39、41、および43と呼ぶ。
【0173】
以下の表7は、マリノバクター・ハイドロカルボノクラスティカス、M.アドハエレンス、M.アルギコラ、およびマリノバクター種ELB17をアラインメントすることによって観察された天然多様性のリストを示す。
【0174】
【0175】
実施例7
P.プロファンダム(Ppro)の'tesAの操作
エステルシンターゼとして作用するようにP.プロファンダム(Ppro)の'tesAを操作した。96ウェルプレート中でスクリーニングした時に、野生型Pproは全アシル産物(FAME+遊離脂肪酸)に対して約15~18%のFAMEを産生した。変種を96ウェルプレート上で試験した時に、FAME含有率を42~44%に上昇させる変異が特定された。同じ変異体を振盪フラスコ中で試験した時に、野生型酵素によって産生される30%のFAMEと比較して62~65%のFAMEを産生した。PproのエラープローンPCRまたは飽和ライブラリーなどの標準的な技法に基づいて変異が特定された(プロトコール7)。特定された変異を組み合わせて組み合わせライブラリーを作製し、これらも試験した。次いで、ライブラリーを、前記の標準プロトコールのうちの1つ(プロトコール1~4)を用いてスクリーニングした。
【0176】
組み合わせライブラリーのスクリーニングに基づいて、変異は、(1)次回の組み合わせライブラリースクリーニング用に固定されるように;(2)次回の組み合わせライブラリースクリーニングにおいて再試験されるように;または(3)その時に、これ以上試験されないように選択された。有益であると特定された変異を将来のライブラリー用に固定した。このプロセスは、96ウェルプレートを用いたスクリーニング、96ウェルプレート中での検証、および振盪フラスコ中でのフォローアップ検証によって行うことができる。
【0177】
次いで、スケールアップと両立する操作されたPproの改善があることを検証するために、振盪フラスコ中で最も性能の優れたものを発酵槽中で試験することができる。Ppro変種が96ウェルプレートより大きな規模で改善された性能を有することを確認するために、組み合わせライブラリーからのトップヒットのうちいくつかを振盪フラスコ中で試験することができる。振盪フラスコ検証は以下の通りに行うことができる。シングルコロニーを得るために望ましい変異体をLB+スペクチノマイシン寒天上に画線し、37℃で一晩インキュベートした。各変異体から3個のシングルコロニーをつついて4mL LB+スペクチノマイシンに入れ、37℃シェーカーにおいて約6時間インキュベートした。1.5mL のLB培養物を用いて、バッフル付125mLフラスコの中にある15mL FA2(2g/L NH4Cl)+0.05%TritonX-100+スペクチノマイシンに接種し、32℃で一晩インキュベートした。3mLの一晩培養物を用いて、バッフル付125mLフラスコの中にある15mL FA2(2g/L NH4Cl)+0.05%TritonX-100+1mM IPTG、2%メタノール+スペクチノマイシンに接種し、32℃で約24時間インキュベートした。抽出時に、フラスコから300μLの培養物をサンプリングして96ウェルプレートに入れ、標準的な抽出プロトコール(プロトコール5)を用いて抽出した。
【0178】
標準的な抽出プロトコールを前記(プロトコール5)のように行った。飽和ライブラリーのスクリーニングからの結果を表8~11に示した。表8は、テンプレートとして野生型、すなわち、SEQ ID NO:51を用いて見出された有益な単一変異の結果を表す。表9は、テンプレートとして野生型を用いて見出された組み合わせ変異体の結果を表す。表10は、テンプレートとしてSEQ ID NO:53(PROF1と呼ぶ)を用いて見出された有益な単一変異の結果を表す(SEQ ID NO:53は既にその配列中に、S46VおよびY116H変異を含む2つの有益な変異を含んでいた)。PROF1の場合、S46V変異およびY116H変異は、将来の回の飽和/組み合わせが野生型配列ではなく、この変種から開始するように、テンプレートに「固定」された。表11は、テンプレートとしてPROF1を用いて有益だと見出された二重変異の結果を表す。表12は、テンプレートとして野生型を用いて見出された組み合わせ変異体の結果を表す。表13は、BD64においてテンプレートとしてP1B9v2.0(SEQ ID NO:58)を用いて見出された組み合わせ変異体の結果を表す。以下の表8は、テンプレートとしてPpro野生型(SEQ ID NO:51)を用いて見出された有益な単一変異のリストを示す。
【0179】
【0180】
以下の表9は、テンプレートとしてPpro野生型(SEQ ID NO:51)を用いて見出された組み合わせ変異体のリストを示す。
【0181】
【0182】
以下の表10は、テンプレートとしてPROF1(SEQ ID NO:53)を用いて見出された有益な単一変異のリストを示す。
【0183】
【0184】
以下の表11は、テンプレートとしてPROF1(SEQ ID NO:53)を用いて有益だと見出された二重変異のリストを示す。
【0185】
【0186】
Pproライブラリーの1つにエタノールを供給した結果が本明細書において議論された。メタノールを用いた時に改善されたエステルシンターゼ活性を有する遺伝子が、エタノールの存在下で改善されたエステルシンターゼ活性も示すかどうか試験するために、組み合わせライブラリーの1つにメタノールまたはエタノールを供給した。
図7Aおよび7Bから明らかなように、改善されたエステルシンターゼ活性は、メタノールまたはエタノールの供給を用いて観察されたが、高いパーセンテージのエステルはメタノールを用いて得られた。表12は、テンプレートとしてPpro野生型(SEQ ID NO:51)を用いて見出された組み合わせ変異体のリストを示す。
【0187】
【0188】
表13は、BD64においてテンプレートとしてP1B9v2.0(SEQ ID NO:58)を用いて見出された組み合わせ変異体のリストを示す。
【0189】
【0190】
当業者に明らかなように、本開示の精神および範囲から逸脱することなく上記の局面および態様の様々な変更および変化を加えることができる。このような変更および変化は本開示の範囲内である。