(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051911
(43)【公開日】2022-04-01
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20220325BHJP
【FI】
B41J2/175 141
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018885
(22)【出願日】2022-02-09
(62)【分割の表示】P 2017148637の分割
【原出願日】2017-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】林 雅洋
(72)【発明者】
【氏名】上田 敏郎
(57)【要約】
【課題】異物のヘッドへの進入を抑制しつつ、ヘッドへの大きなエアの流通を低減する。
【解決手段】複合機10は、インクの貯留室121からインクが流出する流出口122、及び流出口122から流出したインクが流通するインク流路126を有するタンク103と、貯留室121からインク流路126を通じて供給されたインクを吐出する記録ヘッド21とを備える。インク流路126は、流出口122から後方へ延びる第1流路191と、第2位置132から上方へ延びる第2流路192とを備える。第2位置132は流出口122より上方に位置する。第1流路191は、下面134、後面135、及び上面133によって区画されている。下面134は、第2位置132より下方において前後方向8へ延びている。後面135は、下面134から上方へ延びている。上面133は、前方へ向かうにしたがって下方へ向かうように傾斜している。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流入する流入口、上記流入口を通じて流入する液体を貯留する貯留室、上記貯留室を大気に連通させる大気連通部、上記貯留室から液体が流出する流出口、及び上記流出口から流出した液体が流通する液体流路を有するタンクと、
上記流出口と上記液体流路を介して連通しており、上記貯留室から上記液体流路を通じて供給された液体を吐出するノズルを有するヘッドと、を備え、
上記液体流路は、
上記流出口との連通位置である第1位置から水平方向へ延びる第1流路と、
上記第1流路の上記連通位置からの延出端部である第2位置から上方へ延びる第2流路と、を備え、
上記第2位置は、上記第1位置よりも上方に位置しており、
上記第1流路は、少なくとも第1面、第2面、及び第3面によって区画されており、
上記第1面は、上記第1流路の底部の少なくとも一部を区画しており、上記第2位置よりも下方において上記水平方向へ延びており、
上記第2面は、上記第1面から上方へ延びており、
上記第3面は、上記第1流路の上部の少なくとも一部を区画しており、上記第1流路における液体の流通方向に沿って上記第2位置から上記第1位置の方へ向けて斜め下方に傾斜しているインクジェット記録装置。
【請求項2】
上記第1流路は、上記タンクの底部に形成されている請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
上記流出口は、上記水平方向における上記タンクの一端部に形成されており、
上記第2流路は、上記水平方向における上記タンクの他端部に形成されている請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
上記第3面は、上記第1流路の上部の全てを区画している請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
上記第3面は、上記流出口よりも上方に位置する請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
上記大気連通部は、上記流出口よりも上方に位置する請求項1から5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
上記タンクは、上記水平方向に沿った第1方向に並んで複数設けられており、
複数の上記タンクの各々の上記第1流路は、上記第1方向と直交する第2方向に延びている請求項1から6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
液体を貯留可能であって上記タンクに接続可能なカートリッジを備え、
上記貯留室は、上記タンクに接続された上記カートリッジから上記流入口を通じて流入した液体を貯留するものである請求項1から7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を貯留可能なタンクを備えるインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを補充可能なタンクを有するインクジェット記録装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されたインクジェット記録装置では、タンク内のインクが消費されると、使用者はタンクの供給口からボトルなどに貯留されたインクを補充可能である。
【0003】
特許文献1に開示されたインクジェット記録装置では、タンクは、インクが貯留される貯留室から延びた流路を備えている。貯留室に貯留されたインクは、流路を介してノズルを有するヘッドに供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タンクを有するインクジェット記録装置では、タンクに貯留されたインクが消費された場合に、新たなインクが補充される。つまり、タンクに貯留されたインクが消費された場合であっても、タンクが新しい物に交換されない。そのため、タンク内に異物が溜まりやすい。そして、当該異物が流路を介してヘッドへ進入するおそれがある。
【0006】
そこで、異物のヘッドへの進入を低減するために、流路中に異物を溜めるための空間を形成することが考えられる。
【0007】
しかしながら、この場合、上記空間にエアが溜まり大きく成長するおそれがある。そして、大きく成長したエアがヘッドへ流通すると、ヘッドからインクが吐出されずに印刷される画像に抜けが発生してしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、異物のヘッドへの進入を抑制しつつ、ヘッドへの大きなエアの流通を低減することができるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明に係るインクジェット記録装置は、液体が流入する流入口、上記流入口を通じて流入する液体を貯留する貯留室、上記貯留室を大気に連通させる大気連通部、上記貯留室から液体が流出する流出口、及び上記流出口から流出した液体が流通する液体流路を有するタンクと、上記流出口と上記液体流路を介して連通しており、上記貯留室から上記液体流路を通じて供給された液体を吐出するノズルを有するヘッドと、を備える。上記液体流路は、上記流出口との連通位置である第1位置から水平方向へ延びる第1流路と、上記第1流路の上記連通位置からの延出端部である第2位置から上方へ延びる第2流路と、を備える。上記第2位置は、上記第1位置よりも上方に位置している。上記第1流路は、少なくとも第1面、第2面、及び第3面によって区画されている。上記第1面は、上記第1流路の底部の少なくとも一部を区画しており、上記第2位置よりも下方において上記水平方向へ延びている。上記第2面は、上記第1面から上方へ延びている。上記第3面は、上記第1流路の上部の少なくとも一部を区画しており、上記第1流路における液体の流通方向に沿って上記第2位置から上記第1位置の方へ向けて斜め下方に傾斜している。
【0010】
本構成によれば、第1流路における第2位置よりも下方に、第1面及び第2面によって区画された空間が形成される。そして、この空間に、貯留室から流出口を介して移動してきた異物を溜めることができる。これにより、異物のヘッドへの進入を低減することができる。
【0011】
また、本構成によれば、第3面の少なくとも一部が、第1流路における液体の流通方向に沿って第2位置から第1位置の方へ向けて斜め下方に傾斜している。そして、貯留室から流出口を介して第1流路に流通してきたエアは、大きく成長する前に、この傾斜に沿って第1位置から第2位置へ円滑に流通される。これにより、エアが第1流路に溜まって大きく成長することを低減できる。その結果、ヘッドへの大きなエアの流通を低減することができる。
【0012】
(2) 上記第1流路は、上記タンクの底部に形成されている。
【0013】
通常、貯留室に貯留された液体中のエアは、上方へ移動する。本構成によれば、第1流路は、タンクの底部に形成されている。そのため、第1流路へのエアの進入を少なくすることができる。
【0014】
(3) 上記流出口は、上記水平方向における上記タンクの一端部に形成されている。上記第2流路は、上記水平方向における上記タンクの他端部に形成されている。
【0015】
本構成によれば、第1流路を水平方向に長くすることができる。これにより、第1流路に溜めることが可能な異物の量を多くすることができる。
【0016】
(4) 上記第3面は、上記第1流路の上部の全てを区画している。
【0017】
本構成によれば、貯留室から流出口を介して第1流路に流通してきたエアの第2位置への流通を促進することができる。
【0018】
(5) 上記第3面は、上記流出口よりも上方に位置する。
【0019】
本構成によれば、貯留室から流出口を介して移動してきた異物が、第3面に到達することを抑制できる。その結果、当該異物を第1流路内に溜めることが容易となる。
【0020】
(6) 上記大気連通部は、上記流出口よりも上方に位置する。
【0021】
通常、貯留室に貯留された液体中のエアは、上方へ移動する。本構成によれば、大気連通部は、流出口よりも上方に位置する。そのため、エアの多くを第1流路ではなく大気連通部へ流通させることができる。
【0022】
(7) 例えば、上記タンクは、上記水平方向に沿った第1方向に並んで複数設けられている。複数の上記タンクの各々の上記第1流路は、上記第1方向と直交する第2方向に延びている。
【0023】
(8) 例えば、本発明に係るインクジェット記録装置は、液体を貯留可能であって上記タンクに接続可能なカートリッジを備える。上記貯留室は、上記タンクに接続された上記カートリッジから上記流入口を通じて流入した液体を貯留するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、異物のヘッドへの進入を抑制しつつ、ヘッドへの大きなエアの流通を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、複合機10の外観斜視図であって、(A)はカバー87が閉塞位置である状態、(B)はカバー87が開放位置である状態を示す。
【
図2】
図2は、プリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、キャリッジ22及びプラテン26の配置を示す平面図である。
【
図4】
図4は、カートリッジケース101及びタンク103の前方斜視図である。
【
図5】
図5は、カートリッジケース101及びタンク103の後方斜視図である。
【
図6】
図6は、インクカートリッジ30の後方斜視図である。
【
図9】
図9は、インクカートリッジ30がカートリッジケース101に装着されてタンク103と接続された状態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、複合機10が使用可能に水平面に設置された姿勢(
図1の姿勢であって、「使用姿勢」と表記することがある。)を基準として上下方向7が定義され、複合機10の開口13が設けられている面を前面として前後方向8が定義され、複合機10を前面から見て左右方向9が定義される。本実施形態では、使用姿勢において、上下方向7が鉛直方向に相当し、前後方向8及び左右方向9が水平方向に相当する。前後方向8及び左右方向9は、直交している。
【0027】
[複合機10の全体構成]
図1に示されるように、複合機10(インクジェット記録装置の一例)は、概ね直方体形状である。複合機10は、インクジェット記録方式で用紙12(
図2参照)に画像を記録するプリンタ部11を下部に備えている。プリンタ部11は、前面14Aに開口13が形成された筐体14を備えている。
【0028】
図2に示されるように、筐体14の内部には、給送ローラ23と、給送トレイ15と、排出トレイ16と、搬送ローラ対25と、記録部24と、排出ローラ対27と、プラテン26と、カートリッジケース101(
図1(B)参照)と、が配置されている。複合機10は、ファクシミリ機能及びプリント機能などの各種の機能を有している。なお、
図1に示される状態が、複合機10の使用姿勢である。
【0029】
[給送トレイ15、排出トレイ16、給送ローラ23]
図1に示されるように、給送トレイ15は、開口13を通じて前後方向8に沿ってユーザによって複合機10に対して挿抜される。開口13は、筐体14の前面14Aにおける左右方向9の中央部に位置する。
図2に示されるように、給送トレイ15は、積層された複数の用紙12を支持可能である。
【0030】
排出トレイ16は、給送トレイ15の上方に位置している。排出トレイ16は、排出ローラ対27によって排出された用紙12を支持する。
【0031】
給送ローラ23は、給送トレイ15に支持された用紙12を搬送路17へ給送する。給送ローラ23は、給送用モータ(不図示)によって駆動される。
【0032】
[搬送路17]
図2に示されるように、搬送路17は、その一部がプリンタ部11の内部において、所定間隔で対向する外側ガイド部材18及び内側ガイド部材19によって形成される空間を指す。搬送路17は、給送トレイ15の後端部から後方に延びる経路である。搬送路17は、プリンタ部11の後部において上方に延びつつ前方にUターンし、記録部24とプラテン26との間の空間を経て排出トレイ16に至る経路である。搬送ローラ対25及び排出ローラ対27の間における搬送路17は、左右方向9における複合機10の概ね中央部に設けられており、且つ前後方向8に延びている。搬送路17内における用紙12の搬送向きは、
図2において一点鎖線の矢印で示されている。
【0033】
[搬送ローラ対25]
図2に示されるように、搬送ローラ対25は、搬送路17に配置されている。搬送ローラ対25は、互いに対向する搬送ローラ25A及びピンチローラ25Bを有する。搬送ローラ25Aは、搬送用モータ(不図示)によって駆動される。ピンチローラ25Bは、搬送ローラ25Aの回転に伴って連れ回る。用紙12は、搬送用モータの正転によって正回転する搬送ローラ25A及びピンチローラ25Bに挟持されて搬送向き(前向き)に搬送される。
【0034】
[排出ローラ対27]
図2に示されるように、排出ローラ対27は、搬送路17における搬送ローラ対25より搬送向きの下流に配置されている。排出ローラ対27は、互いに対向する排出ローラ27A及び拍車27Bを有する。排出ローラ27Aは、搬送用モータ(不図示)によって駆動される。拍車27Bは、排出ローラ27Aの回転に伴って連れ回る。用紙12は、搬送用モータの正転によって正回転する排出ローラ27A及び拍車27Bに挟持されて搬送向き(前向き)に搬送される。
【0035】
[記録部24]
図2に示されるように、記録部24は、搬送路17における搬送ローラ対25及び排出ローラ対27の間に位置している。記録部24は、搬送路17を挟んでプラテン26と上下方向7に対向配置されている。記録部24は搬送路17の上方に位置し、プラテン26は搬送路17の下方に位置している。記録部24は、キャリッジ22と、記録ヘッド21とを備えている。
【0036】
図3に示されるように、キャリッジ22は、前後方向8に離間する位置において各々が左右方向9に延設されたガイドレール82、83に支持されている。ガイドレール82、83は、プリンタ部11のフレーム(不図示)に支持されている。キャリッジ22は、ガイドレール83に設けられた公知のベルト機構に連結されている。ベルト機構は、キャリッジ駆動用モータ(不図示)によって駆動される。ベルト機構に連結されたキャリッジ22は、キャリッジ駆動用モータの駆動によって左右方向9に沿って往復移動する。キャリッジ22の移動領域は、
図3の一点鎖線で示されるように、搬送路17より右方及び左方にまで及ぶ。
【0037】
キャリッジ22からは、インクチューブ20が延出されている。インクチューブ20は、タンク103(
図5参照)と記録ヘッド21とを接続するものである。インクチューブ20は、カートリッジケース101に装着された各インクカートリッジ30(カートリッジの一例、
図4参照)に貯留されたインク(液体の一例)をタンク103(
図5参照)を介して記録ヘッド21に供給する。各色(ブラック、マゼンタ、シアン、イエロー)のインクが流通する4本のインクチューブ20が、各インクカートリッジ30に対応して設けられており、これらが束ねられた状態でキャリッジ22と接続されている。
【0038】
図2に示されるように、キャリッジ22は、記録ヘッド21(ヘッドの一例)を搭載している。記録ヘッド21の下面(プラテン26に対向する面)には、複数のノズル29が形成されている。記録ヘッド21には、インクカートリッジ30(
図4参照)からインクが供給される。記録ヘッド21は、ノズル29からインクを微小なインク滴として吐出する。キャリッジ22が左右方向9へ往復移動しているときに、ノズル29からプラテン26へ向けてインク滴が吐出される。これにより、搬送ローラ対25に搬送されてプラテン26に支持されている用紙12にインク滴が着弾し、用紙12に画像が記録される。
【0039】
[プラテン26]
図2に示されるように、プラテン26は、搬送路17における搬送ローラ対25及び排出ローラ対27の間に配置されている。プラテン26は、搬送路17を挟んで記録部24と上下方向7に対向配置されている。プラテン26は、搬送ローラ対25によって搬送される用紙12を下方から支持する。
【0040】
[カバー87]
図1に示されるように、筐体14の前面14Aの右部に、開口85が形成されている。開口85の後方には、カートリッジケース101及びタンク103を収容可能な収容空間86が形成されている。筐体14には、カバー87が、開口85を覆うようにして取り付けられている。カバー87は、開口85を閉塞する閉塞位置(
図1(A)に示される位置)と、開口85を開放する開放位置(
図1(B)に示される位置)との間を、左右方向9に延びる回動軸線87A(回動中心)周りに回動可能である。
【0041】
[カートリッジケース101]
図4及び
図5に示されるように、カートリッジケース101は、内部空間を有する箱形状である。カートリッジケース101は、内部空間の天部を確定している天面と、内部空間の底部を確定している底面と、天部と底部とをつないでいる後面と、後面と前後方向8に対向する位置に設けられた開口112とを有する。開口112は、ユーザが複合機10を使用するときに対面する面である筐体14の前面14A(
図1参照)に露出し得る。
【0042】
筐体14の開口85(
図1参照)及びカートリッジケース101の開口112を通じて、インクカートリッジ30がカートリッジケース101へ挿抜される。
図4に示されるように、インクカートリッジ30は、カートリッジケース101の底面に設けられたガイド溝109に、インクカートリッジ30の下端部が挿入されることによって、前後方向8へ案内される。
【0043】
カートリッジケース101には、内部空間を上下方向7に長い4つの空間に仕切り分ける3つのプレート104が設けられている。プレート104によって仕切り分けられた各空間それぞれにインクカートリッジ30が収容される。本実施形態では、4つの空間のうち、最も右に位置する空間は、他の3つの空間よりも左右方向9に長い。この最も右に位置する空間に、ブラックのインクが貯留されたインクカートリッジ30が収容される。他の3つの空間の各々に、マゼンタのインクが貯留されたインクカートリッジ30、シアンのインクが貯留されたインクカートリッジ30、及びイエローのインクが貯留されたインクカートリッジ30が収容される。なお、各空間の大きさ、各空間に収容されるインクカートリッジ30の大きさ、各空間に収容されるインクカートリッジ30に貯留されたインクの色は、上述した大きさ、色に限らない。
【0044】
[ロックシャフト145]
図4に示されるように、ロックシャフト145が、カートリッジケース101の天面付近且つ開口112付近において、カートリッジケース101の左右方向9に延出されている。ロックシャフト145は、左右方向9に沿って延びる棒状の部材である。ロックシャフト145は、例えば、金属の円柱である。ロックシャフト145の左右方向9の両端は、カートリッジケース101の左右方向9の両端を確定している壁に固定されている。ロックシャフト145は、4つのインクカートリッジ30が収納可能な4つの空間に渡って左右方向9に延びている。
【0045】
ロックシャフト145は、カートリッジケース101に装着されたインクカートリッジ30を装着位置に保持するためのものである。
図9に示されるように、インクカートリッジ30は、カートリッジケース101に装着された状態で、ロックシャフト145に係合される。これにより、ロックシャフト145は、インクカートリッジ30のコイルバネ78がインクカートリッジ30を前方へ押す力に抗してインクカートリッジ30をカートリッジケース101内に保持する。
【0046】
[インクカートリッジ30]
図6及び
図9に示されるインクカートリッジ30はインクが貯留される容器である。
図6及び
図9に示されているインクカートリッジ30の姿勢は、使用姿勢である。
【0047】
図6に示されるように、インクカートリッジ30は、略直方体形状の筐体31を有する。筐体31は、後壁40と、前壁41と、上壁39と、下壁42と、右壁37と、左壁38とを備えている。
【0048】
筐体31は、全体として、左右方向9に沿った寸法が細く、上下方向7及び前後方向8それぞれに沿った寸法が、左右方向9に沿った寸法よりも大きい扁平形状である。筐体31において、少なくとも前壁41が、貯留室32及び貯留室33(
図9参照)に貯留されたインクの液面を外部から視認可能な透光性を有するものである。
【0049】
筐体31は、下壁42より上方に位置しており、後壁40の下端と連続して前方へ延びるサブ下壁48を有する。本実施形態において、サブ下壁48の後端はインク供給部34の後端よりも後方に位置し、サブ下壁48の前端は、インク供給部34の後端より前方に位置する。下壁42とサブ下壁48とは段差面49によって連続している。インク供給部34は、サブ下壁48の下方、且つ下壁42の上方において、段差面49から後方へ延びている。
【0050】
上壁39の外面には、上方に突出する凸部43が設けられている。凸部43は、前後方向8に沿って延びている。凸部43において前方を向く面がロック面181である。ロック面181は、上壁39よりも上方に位置している。ロック面181は、カートリッジケース101にインクカートリッジ30が装着された状態において、ロックシャフト145と前方へ向かって接触し得る面である。
図9に示されるように、ロック面181がロックシャフト145と前方へ向かって接触することにより、インクカートリッジ30がコイルバネ78の付勢力に抗してカートリッジケース101に保持される。
【0051】
図6に示されるように、凸部43におけるロック面181の後方に、傾斜面185が形成されている。インクカートリッジ30がカートリッジケース101に装着される過程において、ロックシャフト145が傾斜面185に沿って案内される。これにより、ロックシャフト145は、ロック面181と接触する位置へ導かれる。
【0052】
上壁39におけるロック面181の前方に、操作部90が形成されている。インクカートリッジ30にカートリッジケース101装着された状態において、操作部90の操作面92が下方へ押されると、インクカートリッジ30が回動することでロック面181が下方へ移動する。これにより、ロック面181がロックシャフト145よりも下方に位置する。その結果、インクカートリッジ30がカートリッジケース101から脱抜可能となる。
【0053】
図9に示されるように、筐体31の内部に、貯留室32、貯留室33、インクバルブ室35、及び大気流路36が形成されている。貯留室32、貯留室33、インクバルブ室35は、インクを貯留する。大気流路36は、貯留室32、貯留室33、インクバルブ室35を大気に連通させる。貯留室32と貯留室33とは、不図示の貫通孔によって連通している。貯留室32と大気流路36とは、貫通孔46によって連通している。貯留室33とインクバルブ室35とは、貯留室33の下端に形成された貫通孔99によって連通している。
【0054】
大気流路36は、凸部43に形成された大気連通口96によって外部と連通している。つまり、貯留室32、貯留室33、インクバルブ室35は、大気流路36を介して外部と連通している。大気流路36における貫通孔46と大気連通口96との間は、半透膜(不図示)によって封止されている。半透膜は、液体の流通を閉塞し且つ大気の連通を許容する。
【0055】
図6及び
図9に示されるように、インク供給部34は、段差面49から後方へ突出している。インク供給部34は、筒形状の外形をなしている。インク供給部34の内部空間が、インクバルブ室35である。インク供給部34の後端は、インク供給口71によってインクカートリッジ30の外部に開口している。これにより、インクバルブ室35は、インクカートリッジ30の外部と連通している。インク供給部34の後端部には、シール部材76が位置している。インクバルブ室35の前端は、上述したように、貫通孔99によって貯留室33の下端と連通している。
【0056】
図9に示されるように、インクバルブ室35には、バルブ77及びコイルバネ78が収容されている。バルブ77は、前後方向8に沿って移動することにより、シール部材76の中央に貫通されたインク供給口71を開閉する。コイルバネ78はバルブ77を後方へ付勢している。したがって、外力が付与されていない状態において、バルブ77は、シール部材76のインク供給口71を閉じている。
【0057】
シール部材76は、中央に貫通孔が形成された円盤形状の部材である。シール部材76は、例えば、ゴムやエラストマのような弾性材料で形成されている。シール部材76の中央が前後方向8に貫通されて筒状の内周面が形成され、その内周面によりインク供給口71が形成されている。インク供給口71の内径は、インクニードル102の外径より若干小さい。
【0058】
[タンク103]
図7及び
図8に示されるように、タンク103は、本体151と、フィルム152A、152Bとを備える。本体151は、箱形状であり、内部にインクが貯留される貯留室121を備える。フィルム152Aは、本体151の後面に溶着される。フィルム152Bは、本体151の前面に溶着される。
【0059】
本体151は、その右下端部及び左下端部に開口161を備えている。一方、カートリッジケース101は、その後面の右下端部及び左下端部に、ねじ切りされた孔(不図示)を備えている。
図5に示されるように、ネジ162が、後方から開口161を貫通して、当該孔に螺合される。これにより、タンク103は、カートリッジケース101に固定される。カートリッジケース101に固定されたタンク103は、カートリッジケース101及びカートリッジケース101に装着されたインクカートリッジ30の後方に位置する。
【0060】
図7及び
図8に示されるように、本体151は、上壁153と、下壁154と、右壁155と、左壁156と、前壁157と、3つの内壁158とを備える。上壁153は、前後方向8及び左右方向9に延びており、貯留室121の天面を区画している。下壁154は、前後方向8及び左右方向9に延びており、貯留室121の底面を区画している。右壁155は、上下方向7及び前後方向8に延びており、貯留室121の右面を区画している。左壁156は、上下方向7及び前後方向8に延びており、貯留室121の左面を区画している。前壁157は、上下方向7及び左右方向9に延びており、貯留室121の前面を区画している。本体151は、貯留室121の後面以外を区画している。
【0061】
図7に示されるように、3つの内壁158は、貯留室121を4つに仕切り分けている。4つの貯留室121の各々は、カートリッジケース101の4つの空間の各々に対応して設けられている。4つの貯留室121は、左右方向9(第1方向の一例)に並んで形成されている。
【0062】
図7に示されるフィルム152Aは、本体151の後面、つまり前壁157と前後方向8に対向する位置に溶着されている。本体151の後面に溶着されたフィルム152Aは、上下方向7及び前後方向8に延びており、貯留室121の後面を区画している。
【0063】
図8に示されるフィルム152Bは、前壁157に形成されたリブ111の突出端面に溶着されている。
【0064】
4つの貯留室121の各々に対応して、インク流路126、インクニードル102、及び大気連通部124が設けられている。そして、各貯留室121と、当該各貯留室121に対応して設けられたインク流路126、インクニードル102、及び大気連通部124とによって、本発明のタンク(以下、タンク103とは区別して符号のない「タンク」と称される。)が構成されている。つまり、本実施形態において、タンクが左右方向9に4つ並んで配置され、この4つのタンクが一体化されたものが、タンク103である。
【0065】
以下、4つの貯留室121の各々に対応して設けられているインク流路126、インクニードル102、及び大気連通部124が説明される。ここで、各貯留室121に対応したインク流路126、インクニードル102、及び大気連通部124は、概ね同構成である。よって、以下では、4つの貯留室121のうち最も右に位置する貯留室121に対応したインク流路126、インクニードル102、及び大気連通部124の構成が説明される。一方、他の3つの貯留室121に対応したインク流路126、インクニードル102、及び大気連通部124の構成の説明は、省略される。
【0066】
図7に示されるように、本体151は、4つのインク流路126(液体流路の一例)を備える。4つのインク流路126の各々は、4つの貯留室121の各々に対応して設けられている。
図10(A)及び
図11に示されるように、インク流路126の一端は、流出口122を介して貯留室121と連通している。
図7に示されるように、インク流路126の他端は、インク流出ポート127と連続している。インク流出ポート127には、インクチューブ20が接続されている。これにより、貯留室121に貯留されたインクが、流出口122から流出して、インク流路126及びインクチューブ20を通じて記録ヘッド21へ供給される。インク流路126の構成については、後に詳細に説明される。
【0067】
図8に示されるように、本体151の前壁157の下部には、前方へ突出した4つの突部200が形成されている。
図9に示されるように、各突部200には、中空のインクニードル102が取り付けられている。つまり、インクニードル102は、4本形成されている。4つのインクニードル102の各々は、4つの貯留室121の各々に対応して設けられている。インクニードル102の内部空間は、流入口123(
図9参照)を介して貯留室121と連通している。
図9に示されるように、流入口123は、本体151の前壁157に形成されている。流入口123は、流出口122よりも上方に位置する。
【0068】
図9に示されるように、インクニードル102は、前壁157から前方へ突出している。カートリッジケース101の後面には、貫通孔105が形成されている。インクニードル102は、貫通孔105を貫通してカートリッジケース101の内部空間に突出している。
【0069】
インクニードル102の内部空間117には、バルブ114及びコイルバネ115が収容されている。バルブ114は、前後方向8に沿って移動することにより、インクニードル102の先端部に形成された開口116を開閉する。コイルバネ115はバルブ114を前方へ付勢している。したがって、外力が付与されていない状態(インクカートリッジ30がカートリッジケース101に装着されていない状態)において、バルブ114は開口116を閉じている。また、外力が付与されていない状態において、コイルバネ115に付勢されたバルブ114の前端部は、開口116よりも前方へ突出している。
【0070】
図7及び
図8に示されるように、本体151は、4つの大気連通部124を備える。4つの大気連通部124の各々は、4つの貯留室121の各々に対応して設けられている。大気連通部124は、貯留室121を大気に連通させるものである。
【0071】
大気連通部124は、連通口119と、半透膜118(
図5参照)と、ラビリンス流路120と、大気開放口129とを備える。
【0072】
連通口119は、前壁157に形成されている。連通口119は、前壁157を前後方向8に貫通している。連通口119は、貯留室121の上部に位置する。
【0073】
半透膜118は、液体の流通を閉塞し且つ大気の連通を許容する。
図5に示されるように、半透膜118は、連通口119(
図7参照)を覆うように、前壁157(詳細には前壁157に形成されたリブ171(
図7参照))に溶着されている。
【0074】
図8に示されるように、ラビリンス流路120は、前壁157の前面157Aと、前面157Aに形成されたリブ111と、リブ111の突出端面に溶着されたフィルム152Bとによって区画されている。ラビリンス流路120は、ラビリンス形状であり、一端から他端へ向けて屈曲しつつ延びている。ラビリンス流路120の一端は、連通口119と連通している。ラビリンス流路120の他端は、大気開放口129と連通している。以上より、貯留室121は、大気連通部124を介して大気開放されている。
【0075】
[インクの供給]
以下、
図9が参照されつつ、インクカートリッジ30からタンク103及び記録ヘッド21へのインクの供給が説明される。
【0076】
バルブ77がインク供給口71を閉じており、且つバルブ114がインクニードル102の開口116を閉じている状態において、インクカートリッジ30がカートリッジケース101に装着されると、インク供給口71にインクニードル102が進入する。これにより、インクカートリッジ30は、タンク103と接続される。このとき、インクニードル102の外周面は、シール部材76を弾性変形しつつ、インク供給口71を画定する内周面に液密に接触する。インクニードル102の先端がシール部材76を通過してインクバルブ室35へ進入すると、バルブ77に当接する。さらにインクカートリッジ30がカートリッジケース101へ挿入されることにより、インクニードル102がバルブ77をコイルバネ78の付勢力に抗して後方へ移動させる。これにより、インク供給口71が開かれる。
【0077】
また、インクニードル102の先端がバルブ77に当接する一方で、バルブ77は前方からバルブ114と当接してこれを押す。すると、バルブ114は、コイルバネ115の付勢力に抗して後方へ移動する。これにより、開口116が開かれる。その結果、貯留室32、33に貯留されたインクが、インク供給部34のインクバルブ室35及びインクニードル102の内部空間117を介して、流入口123からタンク103の貯留室121へ流入することが可能となる。
【0078】
ここで、インクカートリッジ30の貯留室32、33は、大気流路36によって大気開放されている。また、タンク103の貯留室121は、大気連通部124によって大気開放されている。よって、インクカートリッジ30の貯留室32、33に貯留されたインクは、水頭差によって、インク供給部34のインクバルブ室35、インクニードル102の内部空間、及び流入口123を通じてタンク103の貯留室121へ供給される。貯留室121は、貯留室32、33から流入したインクを貯留する。貯留室121に貯留されたインクは、インク流路126を介してインクチューブ20へ流出し、記録ヘッド21へ供給される。つまり、記録ヘッド21は、インク流路126を介して流出口122と連通している。
【0079】
なお、上述した水頭差によるインクの供給は、インクカートリッジ30の貯留室32、33及びインクバルブ室35に貯留されたインクの液面と、タンク103の貯留室121に貯留されたインクの液面とが、上下方向7において同じ位置となるまで実行される。
【0080】
[インク流路126]
図7、
図10(A)、及び
図11に示されるように、インク流路126は、第1流路191と第2流路192と第3流路193とを備える。
【0081】
図10(A)及び
図11に示されるように、第1流路191は、タンク103の下端部(底部)に形成されている。第1流路191の一端部(インク流路126の一端部)は、流出口122を介して貯留室121と連通している。つまり、第1流路191の一端部である第1位置131は、流出口122と連通している。流出口122及び第1位置131は、タンク103の下端部に位置している。流出口122及び第1位置131は、大気連通部124(
図7及び
図8参照)よりも下方に位置している。流出口122及び第1位置131は、タンク103の前端部(一端部の一例)に位置している。
【0082】
第1流路191は、第1位置131から後方(水平方向の一例)へ延びている。つまり、本実施形態において、第1流路191は、前後方向8(第2方向の一例)に延びている。
【0083】
第1流路191の他端部(第1位置131からの延出端部)である第2位置132は、第2流路192と連通している。第2位置132は、タンク103の下端部に位置している。第2位置132は、第1位置131よりも上方に位置している。第2位置132は、タンク103の後端部に位置している。
【0084】
図7及び
図10(A)に示されるように、第2流路192は、タンク103の後端部(他端部の一例)に形成されている。第2流路192は、第2位置132から上下方向7に沿って上方へ延びている。
【0085】
第2流路192における第2位置132と反対側の端部195は、第3流路193と連続している。
【0086】
図7に示されるように、第3流路193は、第2流路192の端部195から、概ね左方へ延びている。第3流路193の延出端は、本体151の左端部において、インク流出ポート127と連続している。インク流出ポート127には、インクチューブ20が接続されている。これにより、貯留室121に貯留されたインクが、流出口122から流出して、インク流路126及びインクチューブ20を通じて記録ヘッド21へ供給される。
【0087】
図10(A)及び
図11に示されるように、第1流路191は、少なくとも、上面133(第3面の一例)、下面134(第1面の一例)、後面135(第2面の一例)、前面136、右面137、及び左面138によって区画されている。
【0088】
図10(A)に示されるように、上面133は、第1流路191の上部の全てを区画している。上面133は、第1流路191におけるインクの流通方向に沿って第2位置132から第1位置131の方へ向けて斜め下方に傾斜している。本実施形態において、第1流路191は、第2位置132から前方へ向かうにしたがって下方へ向かうように傾斜している。ここで、インクの流通方向は、流出口122を介して貯留室121から第1流路191へ流入してきたインクが第2流路192に向けて流れる方向である。例えば、第1流路191が湾曲したり屈曲したりしている場合、インクの流通方向も第1流路191に沿って湾曲したり屈曲したりする。
【0089】
下面134は、第1流路191の底部を区画している。下面134は、第2位置132より下方に位置する。下面134は、前後方向8及び左右方向9に拡がっている。つまり、下面134は、水平方向に延びている。
【0090】
後面135は、第1流路191の後部を区画している。後面135は、下面134の後端部から上方へ延びている。後面135は、上下方向7及び左右方向9に拡がっている。つまり、後面135は、上下方向7に延びている。
【0091】
前面136は、第1流路191の前部を区画している。前面136の上端は、上面133の前端と繋がっている。前面136の下端は、下面134の前端と繋がっている。
【0092】
図11に示されるように、右面137は、第1流路191の右部を区画している。左面138は、第1流路191の左部を区画している。右面137及び左面138は、左右方向9に対向している。
【0093】
図7及び
図10(A)に示されるように、第2流路192及び第3流路193は、本体151の後端部に形成された4つの溝と、本体151の後面に溶着されたフィルム152Aとによって形成されている。
【0094】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、第1流路191における第2位置132よりも下方に、下面134及び後面135によって区画された空間が形成される。そして、この空間に、貯留室121から流出口122を介して移動してきた異物を溜めることができる。これにより、異物の記録ヘッド21への進入を低減することができる。
【0095】
また、本実施形態によれば、上面133の少なくとも一部が、第1流路191におけるインクの流通方向に沿って第2位置132から第1位置131の方へ向けて斜め下方に傾斜している。そして、貯留室121から流出口122を介して第1流路191に流通してきたエアは、大きく成長する前に、この傾斜に沿って第1位置131から第2位置132へ円滑に流通される。これにより、エアが第1流路191に溜まって大きく成長することを低減できる。その結果、記録ヘッド21への大きなエアの流通を低減することができる。
【0096】
また、通常、貯留室121に貯留されたインク中のエアは、上方へ移動する。本実施形態によれば、第1流路191は、タンク103の底部に形成されている。そのため、第1流路191へのエアの進入を少なくすることができる。
【0097】
また、本実施形態によれば、流出口122がタンク103の前端部に形成されており。第2流路192がタンク103の後端部に形成されている。そのため、第1流路191を前後方向8に長くすることができる。これにより、第1流路191に溜めることが可能な異物の量を多くすることができる。
【0098】
また、本実施形態によれば、傾斜した上面133が第1流路191の上部の全てを区画している。そのため、貯留室121から流出口122を介して第1流路191に流通してきたエアの第2位置132への流通を促進することができる。
【0099】
また、通常、貯留室121に貯留されたインク中のエアは、上方へ移動する。本実施形態によれば、大気連通部124は、流出口122よりも上方に位置する。そのため、エアの多くを第1流路191ではなく大気連通部124へ流通させることができる。
【0100】
[変形例]
図10(A)に示される第1流路191において、上面133の前端部は、流出口122の上端と同じ高さであった。しかし、
図10(B)に示されるように、第1流路191は、上面133の前端部が流出口122の上端よりも上方に位置するように構成されていてもよい。なお、
図10(A)には、4つの貯留室121のうち最も右に位置する貯留室121に対応したインク流路126(第1流路191及び第2流路192)が示されており、
図10(B)には、4つの貯留室121のうち最も左に位置する貯留室121に対応したインク流路126(第1流路191)が示されている。
【0101】
図10(B)の構成によれば、上面133の前端部が流出口122の上端よりも上方に位置している。そのため、貯留室121から流出口122を介して移動してきた異物が、上面133に到達することを抑制できる。その結果、当該異物を第1流路191内に溜めることが容易となる。
【0102】
上記実施形態では、
図10(A)に示されるように、第3面(上面133)が第1流路191の上部の全てを区画していた。しかし、第3面は、第1流路191の上部の一部のみを区画していてもよい。例えば、
図12(A)に示されるように、第1流路191の上部は、第1上面141(第3面の一例)と第2上面142とによって区画されていてもよい。第1上面141は、上記実施形態における上面133と同様に、第1流路191におけるインクの流通方向に沿って第2位置132から第1位置131の方へ向けて斜め下方に傾斜している。但し、第1上面141は、第1位置131まで達していない。第2上面142は、水平方向に拡がる面である。第2上面142の後端は、第1上面141の前端と連続している。第2上面142の前端は、前面136の上端と連続している。
【0103】
なお、第2上面142は、水平方向に対して傾斜していてもよい。例えば、
図12(B)に示されるように、第2上面142は、前方へ向かうにしたがって下方へ向かうように傾斜していてもよい。
【0104】
上記実施形態では、
図10(A)に示されるように、第1面(下面134)が第1流路191の下部の全てを区画していた。しかし、第1面は、第1流路191の下部の一部のみを区画していてもよい。
【0105】
例えば、
図12(B)に示されるように、第1流路191の下部は、第1下面143(第1面の一例)と第2下面144と段差面140とによって区画されていてもよい。
【0106】
第1下面143及び第2下面144は、共に前後方向8及び左右方向9に拡がっている。つまり、第1下面143及び第2下面144は、共に水平方向に延びている。
【0107】
第1下面143は、第2下面144よりも前方且つ下方に位置する。第1下面143の前端は、前面136の下端と繋がっている。第1下面143の後端は、段差面140(第2面の一例)と繋がっている。
【0108】
段差面140は、第1下面143の後端から上方へ延びている。後面135は、上下方向7及び左右方向9に拡がっている。つまり、段差面140は、上下方向7に延びている。
【0109】
第2下面144の前端は、段差面140の上端と繋がっている。第2下面144は、段差面140の上端から後方へ延びている。第2下面144の後端は、タンク103の後端部に位置している。
【0110】
上記実施形態では、第1流路191を区画する各面(例えば、上面133(または、第1上面141及び第2上面142)、下面134(または、第1下面143、第2下面144、及び段差面140)、後面135、前面136、右面137、及び左面138)は、いずれも平面で構成されていた。
【0111】
しかし、これら各面の少なくとも1つの面が、曲面で構成されていてもよい。例えば、下面134が曲面で構成され、後面135が平面で構成されていてもよい。また、これら各面の少なくとも一部が、曲面で構成されていてもよい。例えば、下面134の前部が曲面で構成され、下面134の後部が平面で構成されていてもよい。
【0112】
上記実施形態では、第1流路191はタンク103の下端部(底部)に形成されていたが、第1流路191はタンク103の下端部以外、例えばタンク103における上下方向7の中央部に形成されていてもよい。
【0113】
上記実施形態では、流出口122はタンク103の前端部に位置していたが、流出口122はタンク103の前端部以外、例えばタンク103の後端部に位置していてもよい。この場合、タンク103の後端部が一端部の一例である。
【0114】
上記実施形態では、第2流路192はタンク103の後端部に位置していたが、第2流路192はタンク103の後端部以外、例えばタンク103の前端部に位置していてもよい。この場合、タンク103の前端部が他端部の一例である。
【0115】
上記実施形態では、第1流路191は前後方向8に延びていたが、第1流路191が延びる方向は水平方向であれば前後方向8以外でもよく、例えば左右方向9に延びていてもよい。
【0116】
上記実施形態では、第1流路191は水平方向に沿って延びており、下面134、第1下面143、及び第2下面144は、水平方向に拡がっていた。この場合の水平方向は、水平方向に対して傾斜した方向も含む。
【0117】
上記実施形態では、第2流路191は上下方向7に沿って延びており、後面135及び段差面140は上下方向7に拡がっていた。この場合の上下方向7は、上下方向7に対して傾斜した方向も含む。
【0118】
上記実施形態では、第1流路191は、前後方向8に沿って真っ直ぐ延びていた。しかし、第1流路191は、第1位置131から第2位置132の途中の少なくとも一箇所において屈曲または湾曲していてもよい。例えば、第1流路191は、第1位置131から後方へ延び、当該後方への延出端部において屈曲して右方へ延びて第2位置132へ到達するように延びていてもよい。
【0119】
上記実施形態では、4つのタンクは左右方向9に並んで形成されていたが、4つのタンクは左右方向9以外、例えば前後方向8に並んで形成されていてもよい。
【0120】
上記実施形態では、複合機10は、4色のインク(ブラック、マゼンタ、シアン、イエロー)に対応していた。つまり、複合機10に装着可能なインクカートリッジ30の数は4つであり、複合機10はタンクを4つ備えていた。しかし、複合機10は、4色以外、例えば単色や6色に対応していてもよい。つまり、複合機10に装着可能なインクカートリッジ30の数や、複合機10が備えるタンクの数は、4つ以外、例えば1つや6つであってもよい。複合機10が単色に対応している場合、インクカートリッジ30やタンクには、例えばブラックのインクが貯留される。また、複合機10が6色に対応している場合、6つのインクカートリッジ30や6つのタンクの各々には、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、グレー、顔料のブラック、染料のブラックのいずれかのインクが貯留される。
【0121】
上記実施形態では、タンクが左右方向9に4つ並んで配置され、この4つのタンクが一体化されたものが、タンク103であった。しかし、タンクが複数設けられている場合に、これら複数のタンクは一体化されていなくてもよい。つまり、これら複数のタンクは、互いに離間しており、個々に独立したタンクであってもよい。
【0122】
上記実施形態では、複合機10がインクカートリッジ30を装着可能に構成されていた。そして、インクカートリッジ30が交換されることによって、インクが複合機10(タンク103や記録ヘッド21)に補充されていた。しかし、複合機10は、インクカートリッジ30を備えていなくてもよい。この場合、タンク103は、上部に注入口を備える。注入口は、貯留室121とタンク103の外部とを連通している。そして、貯留室121に貯留されたインクが少なくなると、新たなインクが注入口から注入される。なお、この場合、タンク103は、上記実施形態よりも大きく構成されることが好ましい。
【0123】
上記実施形態では、インクを液体の一例として説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、インクに代えて、印刷時にインクに先立って用紙に吐出される前処理液、或いは記録ヘッド21のノズル29の乾燥を防止するために記録ヘッド21のノズル29近傍に噴霧される水等が、液体の一例であってもよい。
【符号の説明】
【0124】
10・・・複合機(インクジェット記録装置)
21・・・記録ヘッド(ヘッド)
29・・・ノズル
103・・・タンク
121・・・貯留室
122・・・流出口
123・・・流入口
124・・・大気連通部
126・・・インク流路(液体流路)
131・・・第1位置
132・・・第2位置
133・・・上面(第3面)
134・・・下面(第1面)
135・・・後面(第2面)
191・・・第1流路
192・・・第2流路
【手続補正書】
【提出日】2022-03-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流入する流入口、上記流入口を通じて流入する液体を貯留する貯留室、上記貯留室を大気に連通させる大気連通部、上記貯留室から液体が流出する流出口、及び上記流出口から流出した液体が流通する液体流路を有するタンクと、
上記流出口と上記液体流路を介して連通しており、上記貯留室から上記液体流路を通じて供給された液体を吐出するノズルを有するヘッドと、を備え、
上記液体流路は、
上記流入口よりも低い第1位置において上記流出口と連通し、上記第1位置から水平方向へ延びる第1流路と、
上記第1位置よりも上方にある第2位置において上記第1流路と連通し、上記第2位置から上方へ延びる第2流路と、を備え、
上記第1流路は、上記第1流路の上部の少なくとも一部を区画しており、上記第1流路における液体の流通方向に沿って上記第2位置から上記第1位置の方へ向けて斜め下方に傾斜する傾斜面を有しているインクジェット記録装置。
【請求項2】
上記第1流路は、少なくとも第1面、第2面、及び第3面によって区画されており、
上記第1面は、上記第1流路の底部の少なくとも一部を区画しており、上記第2位置よりも下方において上記水平方向へ延びており、
上記第2面は、上記第1面から上方へ延びており、
上記第3面は、上記傾斜面を含む請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
上記第1流路は、上記タンクの底部に形成されている請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
上記流出口は、上記水平方向における上記タンクの一端部に形成されており、
上記第2流路は、上記水平方向における上記タンクの他端部に形成されている請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
上記第3面は、上記第1流路の上部の全てを区画している請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
上記第3面は、上記流出口よりも上方に位置する請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
上記大気連通部は、上記流出口よりも上方に位置する請求項1から6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
上記タンクは、上記水平方向に沿った第1方向に並んで複数設けられており、
複数の上記タンクの各々の上記第1流路は、上記第1方向と直交する第2方向に延びている請求項1から7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
液体を貯留可能であって上記タンクに接続可能なカートリッジを備え、
上記貯留室は、上記タンクに接続された上記カートリッジから上記流入口を通じて流入した液体を貯留するものである請求項1から8のいずれかに記載のインクジェット記録装置。