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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051925
(43)【公開日】2022-04-01
(54)【発明の名称】履物用踵ばねデバイス
(51)【国際特許分類】
   A43B 11/00 20060101AFI20220325BHJP
   A43B 23/17 20060101ALI20220325BHJP
   A43B 23/02 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
A43B11/00
A43B23/17
A43B23/02 103
【審査請求】有
【請求項の数】29
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022019176
(22)【出願日】2022-02-10
(62)【分割の表示】P 2021152068の分割
【原出願日】2017-10-25
(31)【優先権主張番号】62/413,062
(32)【優先日】2016-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/532,449
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514144250
【氏名又は名称】ナイキ イノベイト シーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ビアーズ ティファニー エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ディモフ ジョン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】フラナガン ウェード
(72)【発明者】
【氏名】オランド オースティン
(72)【発明者】
【氏名】クサントス ジョージ エイ.
(57)【要約】
【課題】履物用踵ばねデバイスを提供する。
【解決手段】履物用踵ばねデバイスは、中央セグメント、第1のサイドアーム、及び第2のサイドアームを有するコントロールバーと、第1のサイドアーム及び第2のサイドアームの両方に接続されてコントロールバーを支持する連続的なベースと、を備え、中央セグメントは、第1のサイドアームと第2のサイドアームとの間に中央セグメントの内周縁へ向かって下降している傾斜面を有し、コントロールバーが荷重を受けない非荷重位置にまで付勢されているとき、中央セグメントは上記ベースから第1の距離だけ離れ、コントロールバーが力を受けて弾性変形して荷重位置にあるときに、中央セグメントは第1の距離よりも短い第2の距離だけベースから離れて、デバイスは力学的エネルギを蓄え、受けていた力が除かれると、その力学的エネルギが使われてコントロールバーが非荷重位置にまで戻される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
履物内への足の差し入れを用意にするための、前記履物の踵領域において足受けキャビティの一部を取り囲むように構成されたデバイスであって、前記デバイスは:
コントロールバーであって:
中央セグメントと;
前記中央セグメントから下方かつ前方に延びる内側方サイドアームであって、前記中央セグメントより前記内側方サイドアームの終端部において長手方向に広い、内側方サイドアームと;
前記中央セグメントから下方かつ前方に延びる外側方サイドアームであって、前記中央セグメントより前記外側方サイドアームの終端部において長手方向に広い、外側方サイドアームと;を有する、
コントロールバー、を有し、
前記デバイスは、内側方終端部及び外側方終端部を含み、前記デバイスは、
前記内側方終端部と前記外側方終端部との間にギャップを画定し、
荷重位置への加えられた力の下で、前記内側方サイドアーム及び前記外側方サイドアームは曲がり、前記中央セグメントは、前記内側方サイドアームの前記終端部及び前記外側方サイドアームの前記終端部に対して下方かつ後方に枢動し、前記加えられた力を取り除くと前記中央セグメントを応力のない位置に戻す位置エネルギを蓄える、
デバイス。
【請求項2】
前記デバイスは、単一のワンピースの構成要素である、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記デバイスの前記内側方終端部は、前方末端部及び後方末端部を含み;
前記内側方サイドアームの後縁の下方部分は、下方かつ後方に前記後方末端部に延びる、
請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記デバイスの前記外側方終端部は、前方末端部及び後方末端部を含み;
前記外側方サイドアームの後縁の下方部分は、下方かつ後方に前記後方末端部に延びる、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
履物内への足の差し入れを用意にするための、前記履物の踵領域において足受けキャビティの一部を取り囲むように構成されたデバイスであって、前記デバイスは:
コントロールバーであって:
中央セグメントと;
前記中央セグメントから下方かつ前方に延びる内側方サイドアームと;
前記中央セグメントから下方かつ前方に延びる外側方サイドアームと;を有する、
コントロールバー、を有し、
荷重位置への加えられた力の下で、前記内側方サイドアーム及び前記外側方サイドアームは曲がり、前記中央セグメントは、前記内側方サイドアームの端部及び前記外側方サイドアームの端部に対して下方かつ後方に枢動し、前記加えられた力を取り除くと前記中央セグメントを応力のない位置に戻す位置エネルギを蓄え、
前記外側方サイドアームは、前記コントロールバーの前記中央セグメントから前記外側方サイドアームの前記端部まで延びる途中に、下方かつ前方に、続いて後方に、続いて前方に延び、Z形状を確立する、
デバイス。
【請求項6】
前記外側方サイドアームは、前記中央セグメントから下方かつ前方に延びる最上位セグメントと、前記最上位セグメントから下方かつ後方に延びる中間セグメントと、前記外側方サイドアームの前記端部において前記中間セグメントから前方に延びる最下位セグメントとを有する、
請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記中央セグメントが、前記荷重位置への前記加えられた力の下で後方に枢動するとき、前記外側方サイドアームは、前記最上位セグメント及び前記中間セグメントの接合部において弾性的に曲がる、
請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記内側方サイドアームは、前記コントロールバーの前記中央セグメントから前記内側方サイドアームの前記端部まで延びる途中に、下方かつ前方に、続いて後方に、続いて前方に延び、Z形状を確立する、
請求項5乃至7のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記内側方サイドアームは、前記中央セグメントから下方かつ前方に延びる最上位セグメントと、前記最上位セグメントから下方かつ後方に延びる中間セグメントと、前記内側方サイドアームの前記端部において前記中間セグメントから前方に延びる最下位セグメントとを有する、
請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記中央セグメントが、前記荷重位置への前記加えられた力の下で後方に枢動するとき、前記内側方サイドアームは、前記最上位セグメント及び前記中間セグメントの接合部において弾性的に曲がる、
請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記デバイスは、単一のワンピースの構成要素である、
請求項5乃至10のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
足首の開口を画定する履物アッパーと;
前記履物アッパーに固定されるとともに前記履物アッパーの下方に横たわっているソール構造と;
コントロールバーを有する踵ばねデバイスであって、前記コントロールバーは:
前記足首の開口の前記履物アッパーに固定された中央セグメント;
前記中央セグメントから前記履物アッパーの内側側部に沿って下方かつ前方へ延びる内側方サイドアーム;
前記中央セグメントから前記履物アッパーの外側側部に沿って下方かつ前方へ延びる外側方サイドアーム;
前記ソール構造の内側側壁で終端しかつ前記内側側壁に固定された前記踵ばねデバイスの内側方終端部、前記ソール構造の外側側壁で終端しかつ前記外側側壁に固定された前記踵ばねデバイスの外側方終端部;を有し、
前記踵ばねデバイスは、前記踵ばねデバイスの前記内側方終端部と前記踵ばねデバイスの前記外側方終端部との間にギャップを画定する、
コントロールバーを有する踵ばねデバイスと;を有し、
前記コントロールバーは、荷重位置への加えられた力の下で、後方に枢動し、前記加えられた力を取り除くと前記コントロールバーを応力のない位置に戻す位置エネルギを蓄え、前記履物アッパーは前記コントロールバーとともに動く、
履物。
【請求項13】
前記踵ばねデバイスは、前記履物アッパー及び前記ソール構造の完全に外側にある、
請求項12に記載の履物。
【請求項14】
前記内側方サイドアームは、前記履物アッパーの前記内側側部に固定され、前記外側方サイドアームは、前記履物アッパーの前記外側側部に固定される、
請求項12又は13に記載の履物。
【請求項15】
前記踵ばねデバイスは、前記内側方サイドアームと前記外側方サイドアームとの間の前記履物の後部において、前記履物アッパーに沿ってかつ前記ソール構造に沿わずに延びる、
請求項12乃至14のいずれか1項に記載の履物。
【請求項16】
前記踵ばねデバイスは、前記履物の前記内側側部におけるより、前記ソール構造の前記内側側壁において、前記履物の長手方向において広く、前記踵ばねデバイスは、前記履物アッパーの前記外側側部におけるより、前記ソール構造の前記外側側壁において、前記履物の前記長手方向において広い、
請求項12乃至15のいずれか1項に記載の履物。
【請求項17】
前記内側方サイドアームは、前記コントロールバーの前記中央セグメントから前記ソール構造の前記内側側壁まで延びる途中に、下方かつ前方に、続いて後方に、続いて前方に延び、Z形状を確立する、
請求項12乃至16のいずれか1項に記載の履物。
【請求項18】
前記外側方サイドアームは、前記コントロールバーの前記中央セグメントから前記ソール構造の前記外側側壁まで延びる途中に、下方かつ前方に、続いて後方に、続いて前方に延び、Z形状を確立する、
請求項12乃至17のいずれか1項に記載の履物。
【請求項19】
前記内側方サイドアームは、前記中央セグメントから前記履物アッパーの前記内側側部に沿って下方かつ前方に延びる最上位セグメントと、前記最上位セグメントから下方かつ後方に延びる中間セグメントと、前記中間セグメントから前方に延びる最下位セグメントとを有する、
請求項12乃至18のいずれか1項に記載の履物。
【請求項20】
前記外側方サイドアームは、前記中央セグメントから前記履物アッパーの前記外側側部に沿って下方かつ前方に延びる最上位セグメントと、前記最上位セグメントから下方かつ後方に延びる中間セグメントと、前記中間セグメントから前方に延びる最下位セグメントとを有する、
請求項12乃至19のいずれか1項に記載の履物。
【請求項21】
前記ソール構造は、前記内側側壁に凹所を有し、前記踵ばねデバイスの前記内側方終端部は、前記内側側壁の前記凹所に入れ子状に収容される、
請求項12乃至20のいずれか1項に記載の履物。
【請求項22】
前記ソール構造及び前記履物アッパーは合流してバイトラインを定め;
前記踵ばねデバイスの前記内側方終端部は、前方末端部及び後方末端部を含み;
前記前方末端部及び前記後方末端部の両方は、前記ソール構造の前記内側側壁上で前記バイトラインの下にある、
請求項12乃至21のいずれか1項に記載の履物。
【請求項23】
前記内側方サイドアームの後縁部は、前記後方末端部に下方かつ後方に延びる、
請求項22に記載の履物。
【請求項24】
前記ソール構造は、前記内側側壁に凹所を有し、前記前方末端部及び前記後方末端部は両方、前記内側側壁の前記凹所に入れ子状に収容される、
請求項22に記載の履物。
【請求項25】
前記ソール構造及び前記履物アッパーは合流してバイトラインを定め;
前記踵ばねデバイスの前記外側方終端部は、前方末端部及び後方末端部を含み;
前記前方末端部及び前記後方末端部の両方は、前記ソール構造の前記外側側壁上で前記バイトラインの下にある、
請求項12乃至24のいずれか1項に記載の履物。
【請求項26】
前記外側方サイドアームの後縁部は、前記後方末端部に下方かつ後方に延びる、
請求項25に記載の履物。
【請求項27】
前記ソール構造は、前記外側側壁に凹所を有し、前記前方末端部及び前記後方末端部は両方、前記外側側壁の前記凹所に入れ子状に収容される、
請求項25に記載の履物。
【請求項28】
前記中央セグメントは、薄い部分を有し、
前記履物アッパーは、前記薄い部分で前記中央セグメントに固定される、
請求項12乃至27のいずれか1項に記載の履物。
【請求項29】
前記履物は、前記内側方サイドアームと前記外側方サイドアームとの間の前記履物の後部において、前記コントロールバーと前記ソール構造との間の踵カウンタの存在を不要とすることを特徴とする、
請求項12乃至28のいずれか1項に記載の履物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、履物用踵ばねデバイスに関する。
【0002】
なお、本願は、2016年10月26日に出願された米国仮特許出願第62/413,062号明細書、及び2017年7月14日に出願された米国仮特許出願第62/532,449号明細書(これらの全体が本願の参照となる)に基づく優先権の利益を主張とするものである。
【背景技術】
【0003】
従来、履物を履くときには、片手か両手を使って足首の開口(履き口)を伸ばして、足を滑り込ませるときに後側部を保持することが必要であり、これは、比較的柔らかいアッパーである場合や、足首の開口の後方において柔軟な布に固定された踵カウンタを有していないアッパーである場合に特に必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
履物用の踵ばねデバイスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】荷重位置にない履物用踵ばねデバイスを概略的に示す斜視図。
図2図1に示したデバイスの概略的な平面図であり、デバイスの荷重位置を破線で示している。
図3】ソール層に固定された図1に示したデバイスを概略的に示す平面図であり、荷重位置を破線で示している。
図4図3に示した線4-4に沿って切り出されたデバイスとソール層の断面の一部を概略的に示す図であり、デバイスに固定された履物アッパーの柔軟なカバーを示す図。
図5図4に示したデバイス(機器)、履物アッパー、及びソール層を含む履物の外側方の一部を概略的に示す側面図。
図6図5に示した履物の内側方の一部を概略的に示す側面図。
図7】他の実施例における代替的な踵ばねデバイスを含む履物の内側方の一部を概略的に示す側面図。
図8図7に示した履物の外側方の一部を概略的に示す側面図。
図9】他の実施例における代替的な踵ばねデバイスを含む履物を概略的に示す斜視図。
図10】他の実施例における代替的な踵ばねデバイスを含む履物の内側方を概略的に示す側面図。
図11】他の実施例における代替的な踵ばねデバイスを含む履物の外側方の一部を概略的に示す側面図。
図12図11に示した履物の背面側を概略的に示す図。
図13図11に示した履物の一部を概略的に示す平面図。
図14図13に示した線14-14に沿って切り出された履物の断面の一部を概略的に示す図。
図15】他の実施例における代替的な踵ばねデバイスを含む履物の外側方の一部を概略的に示す側面図。
図16】他の実施例における代替的な踵ばねデバイスを含む履物の外側方の一部を概略的に示す側面図。
図17】他の実施例における代替的な踵ばねデバイスを含む履物の外側方の一部を概略的に示す斜視図。
図18図17に示した履物を概略的に示す後方斜視図。
図19】他の実施例における代替的な踵ばねデバイスを含む履物の一部を概略的に示す斜視図。
図20】他の実施例における代替的な踵ばねデバイスを含む履物を概略的に示す斜視図。
図21図20に示した踵ばねデバイスを概略的に示す斜視図。
図22図21に示した踵ばねデバイスを概略的に示す他の斜視図であって、荷重位置を破線で示している。
図23】本願の教示の範囲内において、踵ばねデバイスが装着されているときと装着されていないときの変位(mm)に対する力(N)の大きさのプロットを示す図。
図24】他の実施例における代替的な踵ばねデバイスを含む履物を概略的に示す斜視図。
図25図24に示した踵ばねデバイスを概略的に示す斜視図。
図26】他の実施例における代替的な踵ばねデバイスを含む履物を概略的に示す斜視図。
図27図26に示した踵ばねデバイスを概略的に示す斜視図。
図28】他の実施例における履物用踵ばねデバイスの内側方を概略的に示す側面図。
図29図28に示した踵ばねデバイスの背面側を概略的に示す図。
図30】代替的な実施例における履物用踵ばねデバイスを概略的に示す斜視図。
図31図30に示した踵ばねデバイスの外側方を概略的に示す側面図。
図32】他の実施例における代替的な踵ばねデバイスを含む履物の外側方の一部を概略的に示す斜視図。
図33】他の実施例における代替的な踵ばねデバイスを含む履物の一部を概略的に示す斜視図。
図34】他の実施例における履物用踵ばねデバイスを概略的に示す斜視図。
図35】履物アッパーに固定された図34に示した踵ばねデバイスの背面側を概略的に示す図。
図36】他の実施例における履物用踵ばねデバイスを概略的に示す斜視図。
図37】荷重位置にない図36に示した踵ばねデバイスを有する履物を概略的に示す斜視図。
図38】荷重位置にある踵ばねデバイスを有する図37に示した履物を概略的に示す斜視図。
図39】他の実施例における荷重位置にない踵ばねデバイスを有する履物を概略的に示す斜視図。
図40】荷重位置にある踵ばねデバイスを有する図39に示した履物を概略的に示す斜視図。
図41】他の実施例における履物用踵ばねデバイスを概略的に示す斜視図。
図42】荷重位置にない図41に示した踵ばねデバイスを有する履物を概略的に示す斜視図。
図43】荷重位置にない踵ばねデバイスを有する図42に示した履物を概略的に示す図。
図44】他の実施例における履物用踵ばねデバイスを概略的に示す斜視図。
図45】荷重位置にない図44に示した踵ばねデバイスを有する履物の一部を概略的に示す斜視図。
図46】荷重位置にある踵ばねデバイスを有する図45に示した履物の一部を概略的に示す斜視図。
図47】他の実施例における履物用踵ばねデバイスの一部を概略的に示す斜視図。
図48】荷重位置にない図47に示した踵ばねデバイスを有する履物の一部を概略的に示す斜視図。
図49】他の実施例における荷重位置にない踵ばねデバイスを有する履物を概略的に示す斜視図であり、荷重位置を破線で示している。
図50】他の実施例における荷重位置にない踵ばねデバイスを有する履物の一部を概略的に示す図。
図51】荷重位置にある踵ばねデバイスを有する図50に示した履物の側面の一部を概略的に示す図。
図52】他の実施例における荷重位置にない踵ばねデバイスを概略的に示す斜視図であり、アッパーとソール構造体の一部を破線で示している。
図53】他の実施例における荷重位置にない踵ばねデバイスを有する履物の側面を概略的に示す図であり、荷重位置を破線で示している。
図54】他の実施例における荷重位置にない踵ばねデバイスを有する履物の一部を概略的に示す斜視図。
図55】荷重位置にない図54に示した踵ばねデバイスの外側方を概略的に示す斜視図。
図56】荷重位置にある図54に示した踵ばねデバイスの外側方を概略的に示す斜視図。
図57図54に示した踵ばねデバイスの前面側を概略的に示す図。
図58図57に示した線58-58に沿って切り出された踵ばねデバイスの断面を概略的に示す図。
図59】アッパーに固定されたストラップを含む図54に示した履物の一部を概略的に示す図。
図60図59に示したストラップの一部を概略的に示す図。
図61】他の実施例における踵ばねデバイスが非荷重位置にあるときの履物を概略的に示す斜視図。
図62A】非荷重位置にある図61に示した踵ばねデバイスを概略的に示す斜視図。
図62B】荷重位置にある図62Aに示した踵ばねデバイスを概略的に示す斜視図。
図63】荷重位置にない図61に示した踵ばねデバイスを概略的に示す後方斜視図であって、圧縮インサートが省略されている。
図64】荷重位置にない図61に示した踵ばねデバイスの圧縮可能なインサートの内側方を概略的に示す斜視図。
図65図66に示した線65-65に沿って切り出された踵ばねデバイスの断面を概略的に示す図。
図66図61に示した踵ばねデバイスの前面側を概略的に示す図。
図67】他の実施例における荷重位置にない踵ばねデバイスを有する履物の一部を概略的に示す斜視図。
図68】他の実施例における荷重位置にない踵ばねデバイスを有する履物を概略的に示す斜視図。
図69】荷重位置にない図68に示した踵ばねデバイスを概略的に示す斜視図。
図70図69に示した踵ばねデバイスの前面側を概略的に示す図。
図71A図70に示した線71A-71A線に沿って切り出された踵ばねデバイスの断面を概略的に示す図。
図71B図71Aに示した荷重位置にある踵ばねデバイスの断面を概略的に示す図。
図72】他の実施例における荷重位置にない踵ばねデバイスの背面側を概略的に示す斜視図。
図73】他の実施例における荷重位置にない踵ばねデバイスを概略的に示す後方斜視図。
図74】他の実施例における荷重位置にない踵ばねデバイスを有する履物を概略的に示す斜視図。
図75】荷重位置にない図74に示した踵ばねデバイスを概略的に示す斜視図。
図76図75に示した線76-76に沿って切り出された踵ばねデバイスの断面を概略的に示す図。
図77】荷重位置にない図74に示した踵ばねデバイスの側面を概略的に示す図。
図78】荷重位置にない図74に示した踵ばねデバイスの側面を概略的に示す図。
図79】荷重位置にない踵ばねデバイスの他の実施例を概略的に示す斜視図。
図80図79に示した踵ばねデバイスを有する履物の外側方を概略的に示す図。
図81図80に示した履物の内側方を概略的に示す図。
図82図80に示した履物の背面側を概略的に示す図。
図83図80に示した履物のミッドソールの平面図。
図84図83に示したミッドソールの平面図であって、該ミッドソールの凹所内に、図79に示した踵ばねデバイスが入れ子状に収容されている状態を示す図。
図85】他の実施例における荷重位置にない踵ばねデバイスを概略的に示す図。
図86図85に示した踵ばねデバイスを概略的に示す他の斜視図。
図87図85に示した踵ばね及びアッパーを有する履物を概略的に示す図であり、アッパーを破線で示している。
図88】履物アッパーの構成要素に接続されている図85に示した踵ばねデバイスのアームの一部を示す平面図。
図89図87に示した履物のミッドソールを概略的に示す平面図。
図90図89に示したミッドソールの凹所内に、図85に示した踵ばねデバイスが入れ子状に収容されている様子を概略的に示す平面図。
図91】踵ばねデバイスに形成された孔を貫くように延びているアッパーのタブを有する図85に示した踵ばねデバイスの一部の拡大図であり、ピンを示している。
図92図85に示した踵ばねデバイスの一部を示す図であり、ループ内に固定されたタブとループ内に挿入されたピンを有している。
図93】他の実施例における踵ばねデバイスを概略的に示す平面図。
図94図93に示した踵ばねデバイスを含む履物の背面側を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書においては、履物へ足を差し入れ易くする踵ばねデバイスについて開示する。種々の踵ばねデバイスの各々が、手を使うことなく足を差し入れることを可能とするが、これは、踵ばねデバイスに足の力を加えて、後方の位置から足受けキャビティへアクセスする足を前方下側の足受けキャビティ内へ滑り込ませることになどよる。
【0007】
本願の開示の範囲内において、履物の足受けキャビティ内へ足を差し入れ易くするように、履物の踵領域で足受けキャビティを取り囲むように構成されているデバイスが、コントロールバーを備え、このコントロールバーは、中央セグメント、該中央セグメントから延びている第1のサイドアーム、及び第1のサイドアームから離間して配置され、該中央セグメントから延びている第2のサイドアームを有する。また、連続的なベース(基部)が、コントロールバーを支持するとともに、第1のサイドアームと第2のサイドアームの両方に接続されている。コントロールバーが荷重を受けない位置である非荷重位置にまで付勢されているときに、中央セグメントは第1の距離だけベースから離れている一方で、コントロールバーが力を受けて弾性変形し荷重位置にあるときに、中央セグメントは第1の距離より短い第2の距離だけベースから離れている。デバイスは力学的エネルギを蓄え、受けていた荷重が除かれると、その力学的エネルギが使われてコントロールバーが非荷重位置にまで戻される。
【0008】
デバイスのいくつかの実施例においては、ベースは、第1の関節部において第1のサイドアームに接続されている一方で、第2の関節部において第2のサイドアームに接続されている。なお、本明細書において、これらの関節部は、「ヒンジ式関節部」又は「ヒンジ式接続部」とも呼ばれる。
【0009】
コントロールバーとベースを含むデバイスは、単一のワンピースの構成要素であり得る。例えば、いくつかの実施例においては、コントロールバーは、アーチ状の形状に形成されており、ベースもアーチ状の形状に形成されている。換言すると、コントロールバーとベースとが全体的に楕円形の形状の板ばねとして構成されている。
【0010】
デバイスのいくつかの実施例においては、ベースは、共通平面に配置された中央セグメント、第1のベースアーム及び第2のベースアームを有する。第1のベースアームは第2のベースアームから離間して配置され、これらの両者はベースの中央セグメントから延在する。第1のベースアームと第1のサイドアームは、第1の関節部において接続されている。第2のベースアームと第2のサイドアームは、第2の関節部において接続されている。コントロールバーが荷重位置にないときには、第1のサイドアームと第2のサイドアームはベースの共通平面に対して第1の鋭角をなす方向に延在する。コントロールバーが荷重位置にあるときに、第1のサイドアームと第2のサイドアームは上記ベースの共通平面に対して、第1の鋭角よりも小さい第2の鋭角をなす方向に延在する。
【0011】
デバイスのいくつかの実施例においては、コントロールバーが荷重位置になったときに、第1のサイドアームと第2のサイドアームとがしなって互いに離れる。サイドアームどうしがしなって分離するときに、これらのサイドアームに履物アッパーがくっ付いているとともに履物アッパーの足受けキャビティが大きく開口し、それによって、足受けキャビティ内へ足を差し入れることがさらに容易になる。
【0012】
デバイスのいくつかの実施例においては、コントロールバー及びベースのうちの一方が有する延出部が、コントロールバー及びベースのうちの他方へ向かって延在する。コントロールバーが非荷重位置にあるときに、延出部はコントロールバー及びベースのうちの上記他方から離れているが、コントロールバーが荷重位置にあるときに、延出部はコントロールバー及びベースのうちの他方と接触し、コントロールバーがさらに押圧されてしまうことを制限する。延出部はこうして第2の角度が小さくなり過ぎることを防ぎ、ひいては塑性変形を防ぐこと等により変形量を制限する。
【0013】
デバイスのいくつかの実施例においては、コントロールバーの中央セグメントは、ベースへ向かって延びている延出部を有し、ベースは凹所を有する。コントロールバーが非荷重位置にあるときに、延出部はベースから離れているが、コントロールバーが押圧されて荷重位置にあるときに、延出部は凹所内へ突出する。また、延出部と凹所を介してコントロールバーとベースとが相互接続することにより、ベースに対するコントロールバーの平行移動が制限される。
【0014】
デバイスのいくつかの実施例においては、コントロールバーの中央セグメントは傾斜面を有し、この傾斜面は、第1のサイドアームと第2のサイドアームとの間で中央セグメントの内周縁へ向かって下降している。この傾斜面は、コントロールバーに下向きの力が加わっているときに、足を下方前側の足受けキャビティ内へ導くことを助ける。
【0015】
デバイスのいくつかの実施例においては、第1のアームと第2のアームの各々がそれぞれの長手方向軸に沿ってベースからコントロールバーの中央セグメントまでにかけて外方へ捩れている。外方へ捩れていることにより、足によって荷重がかけられているときに、中央セグメントの下降しつつ後退する動きが促進される。
【0016】
デバイスのいくつかの実施例においては、第1のサイドアームと第2のサイドアームとは、上記ベースを貫くように第1のサイドアームと第2のサイドアームとの間に延びている長手向軸に関して非対称の関係にある。例えば、第1のサイドアームは内側方サイドアームであり、第2のサイドアームは外側方サイドアームである。内側方サイドアームは外側方サイドアームよりも短く、またその曲率が(典型的な足の踵領域の形状と同様に)、外側方サイドアームの曲率よりも大きくなるように形成され得る。
【0017】
デバイスのいくつかの実施例においては、ベースは、内方へ延びているフランジを有する。例えば、フランジは凹所内に着座し、該ソール構造体の踵領域において履物ソール構造体の足受け面に固定されている。
【0018】
デバイスのいくつかの実施例においては、履物ソール構造体が踵領域に凹所を有する外壁を有し得るとともに、該デバイスのベースの少なくとも一部が凹所内に入れ子状に収容され、ソール構造体の外壁に固定され得る。
【0019】
デバイスのいくつかの実施例においては、ベースがコントロールバーの下方に横たわっているとともに、足首の開口の少なくとも一部を画定している履物アッパーの内側方に第1のサイドアームがあり、第2のサイドアームが履物アッパーの外側方にあり、さらには、コントロールバーの中央セグメントが履物アッパーの足首の開口の後方にある。
【0020】
デバイスのいくつかの実施例においては、第1のサイドアームの内面の最前部が内側方の凹所を含み、該内側方の凹所の後方においてよりも該内側方の凹所において、第1のサイドアームが薄くつくられている一方で、第2のサイドアームの内面の最前部が外側方の凹所を含み、該外側方の凹所の後方においてよりも該外側方の凹所において、第2のサイドアームが薄くつくられている。アッパーは、内側方の凹所において第1のサイドアームに固定され得るとともに、外側方の凹所において第2のサイドアームに固定され得る。
【0021】
デバイスのいくつかの実施例においては、中央セグメントが孔を有し、履物アッパーは、この孔を貫通しているタブを含む。このタブは履物アッパーの後部に固定され得る。また、孔の後方においてタブにピンが固定されている。このピンを介してタブが中央セグメントに固定されるように、ピンが取り付けられたタブの幅が孔の幅よりも幅広となっている。
【0022】
デバイスのいくつかの実施例においては、コントロールバーから外方へレバーが延在する。このレバーを有することにより、コントロールバーが押圧され易くなっている。
【0023】
いくつかの実施例においては、踵デバイスは、1つ又は複数の内側キャビティを含むブラダエレメントを備える。流体で満たされた1つ又は複数の内側キャビティは、中央セグメントに沿って延びているキャビティを含み得る。中央セグメントに沿って延びているキャビティはまた、第1のサイドアーム及び第2のサイドアームのうちの一方又は両方に沿って延在し、管状の形状に形成されている場合もあれば、他の形状に形成されている場合もある。流体で満たされた1つ又は複数の内側キャビティは、第1のサイドアーム及び第2のサイドアームのうちの一方又は両方に配置された1つ又は複数の溜桝をさらに含むとともに、中央セグメントに沿って延びているキャビティと流体的に連通している場合がある。踵ばねデバイスが力を受けて弾性変形するときに、中央セグメントに沿って延びているキャビティから流体が移動して1つ又は複数の溜桝が膨張する。
【0024】
デバイスのベースが上記コントロールバーの下方に横たわるように、足首の開口の少なくとも一部を画定している柔軟な履物アッパーに該ベースが固定されているとともに、第1のサイドアームが履物アッパーの内側方にあり、第2のサイドアームが記履物アッパーの外側方にあり、さらには、コントロールバーの中央セグメントが足首の開口の後側にある。該ベースは、履物アッパーの最後部の周りに沿って外側方から内側方まで延在し得る。コントロールバーは、履物アッパー内に埋め込まれている場合がある。
【0025】
柔軟な履物アッパーは、足受けボイド(「足受けキャビティ」ともいう)を画定し、この足受けボイドの下方にベースが横たわっている。ベースは、第1のサイドアームと第2のサイドアームの最前部どうしを繋いでいる。ベースは、コントロールバーから後方へ延在する場合もあれば、コントロールバーから前方へ延在する場合もある。或いは、ベースは、コントロールバーから後方と前方のいずれにも延在する場合もある。
【0026】
いくつかの実施例においては、ベースは、履物アッパーの内側方に隣接する足受けボイドの下方に横たわっている前方突出部と、履物アッパーの外側方に沿って足受けボイドの下方に横たわっている後方突出部とを有する。
【0027】
いくつかの実施例においては、履物アッパーに固定されたソール構造体が、足受けボイドの下方に横たわっている。ソール構造体は、足に対面した凹所付き面を有し、ベースは主部と該主部から延びている突出部を有し、該突出部は凹所内に着座するように構成されている。
【0028】
デバイスのいくつかの実施例においては、コントロールバーの中央セグメントは孔を有する。履物アッパーの踵用プルタブは孔を貫通して、デバイスに履物アッパーをしっかり固定している。デバイスは薄い部分を有し、この薄い部分があることにより、この部分を介して該デバイスを履物アッパーに縫い付けることが可能となる。
【0029】
デバイスのいくつかの実施例においては、コントロールバーは、履物アッパー内に埋め込まれている。例えば、デバイスは、履物アッパーの柔軟なカバー層の層間に覆われている場合もある。
【0030】
デバイスのいくつかの実施例においては、デバイスのベースは、履物のソール構造体である。デバイスの他の実施例においては、ベースは柔軟な履物アッパーである。いくつかの実施例においては、アッパーは、コントロールバーとの接続部に柔軟な屈曲性をもたらす。
【0031】
デバイスの1つ又は複数の実施例においては、第1のサイドアームと第2のサイドアームの各々が、該アームを貫通している少なくとも1つのスロットを有する。いくつかの実施例においては、第1のサイドアームを貫通している少なくとも1つのスロットが第1のサイドアームの長さ方向に沿って第1のサイドアームを貫通しているとともに、第2のサイドアームを貫通している少なくとも1つのスロットが第2のサイドアームの長さ方向に沿って第2のサイドアームを貫通している場合がある。他の実施例においては、第1のサイドアームを貫通している少なくとも1つのスロットが、第1のサイドアームの長さ方向に対して直交する方向(横断方向)に延在するとともに、第2のサイドアームを貫通している少なくとも1つのスロットが、第2のサイドアームの長さ方向に対して直交する方向(横断方向)に延在する。
【0032】
本開示の範囲内において、履物内へ足を差し入れ易くする踵ばねデバイスが、履物の踵領域に足受けキャビティの一部を取り囲むように構成されているとともに、コントロールバーと、該コントロールバーの下方に横たわっているベースとを備える。いくつかの実施例においては、コントロールバーは、一連のスラット(細長い薄板、羽根板)を含む。スラットの各々が、中央セグメントと、ベースの内側方に接続された内側方端部まで該中央セグメントから延びている内側方サイドアームと、ベースの外側方に接続された外側方端部まで該中央セグメントから延びている外側方サイドアームと、を有する。コントロールバーは非荷重位置にまで付勢されていて、力を受けると、弾性的に屈曲して荷重位置になる。荷重位置においては、少なくとも1つの中央セグメントが非荷重位置にあるときよりもベースに接近して位置エネルギを蓄え、受けていた力が除かれると、その位置エネルギが使われてコントロールバーが非荷重位置にまで戻される。例えば、コントロールバーとベースとが、全体的に楕円形の形状の板ばねとして構成されている。
【0033】
デバイスは、弾性エネルギ及び/又はばねのエネルギなどの位置エネルギを蓄え、受けていた荷重が除かれると、その位置エネルギが使われてコントロールバーが非荷重位置にまで戻される。本明細書においては、弾性的な屈曲のことを、弾性変形ないし弾力変形を伴う弾性的な屈曲ともいう。例えば、足を差し入れるために手や道具を使って履物アッパーを調節する必要なく、足でコントロールバーを踏むだけで、装着された履物アッパーの足受けキャビティ内へ足を滑り込ませることができる。
【0034】
デバイスのいくつかの実施例においては、コントロールバーは、スラット間に延在するスロットを画定する。コントロールバーが非荷重位置にあるときに、スラットは、スロットを隔てて互いに離間している。荷重位置にあるときに、スラット間のスロットが閉塞して、1つ又は複数の互いに隣接した中央セグメントが互いに接触するようになる。一方で非荷重位置にあるときには、複数のスラットの外側面どうしが互いに面一となるように、複数のスロットは互いに平行となり得る。
【0035】
デバイスのいくつかの実施例においては、中央セグメントにおけるベースに最も近くてスラットのうちの最低位にあるスラットの方が、中央セグメントから最も遠くてスラットのうちの最高位のスラットよりも、内側方から外側方までの長さが短くつくられている。いくつかの実施例においては、複数のスラットのうちの最高位のスラットよりも、スラットのうちの最低位にあるスラットの方が薄くつくられている。デバイスのいくつかの実施例においては、複数のスラットのうちの最低位のスラットは、中央セグメントの下側エッジから延びているタブを有する。ベースの外面は、ベースの下側エッジから延在する周縁凹所を有し得る。例えば、この周縁凹所がソール構造体のフランジを受ける。
【0036】
デバイスのいくつかの実施例においては、弾性インサートがスロットの少なくとも一部を満たす。弾性インサートは、ゴム及び熱可塑性ポリウレタンのうちの少なくとも一方から、又は発泡体などの弾性的に圧縮可能な材料から形成され得るが、これらの材料に限定されない。弾性インサートは、スラットの内側に沿って延在するスリーブと、スリーブからスロット内まで延在する互いに離間した突起と、を含む。デバイスのいくつかの実施例においては、弾性インサートは、スラット間で該スラットの内側から外方へ延在するベロー(ふいご、蛇腹)として構成されている。
【0037】
本開示の範囲内において、履物内へ足を差し入れ易くする踵ばねデバイスが、履物の踵領域において足受けキャビティの一部を取り囲むように構成されており、中央セグメントを含む弾性のコルゲート状本体と、中央セグメントから前方へ延びている内側方サイドアームと、中央セグメントから前方へ延びている外側方サイドアームと、を備える。コルゲート状本体は、内側方サイドアーム、中央セグメント、及び外側方サイドアームの長さ方向に沿って交互に配置された尾根と溝を含み得る。コルゲート状本体は非荷重位置にまで付勢されているが、力を受けると、荷重位置にまで圧縮される。隣り合う尾根は非荷重位置よりも荷重位置において互いに接近して弾性エネルギを蓄え、受けていた荷重が除かれると、その弾性エネルギが使われてコルゲート状本体が非荷重位置にまで戻される。
【0038】
例えば、コルゲート状本体はベロー(ふいご)からなり得る。その場合、尾根はベローのプリーツ(ひだ)であり、溝はベローのフォールド(折り目)であり得る。コルゲート状本体は、ゴム及び熱可塑性ポリウレタンのうちの少なくとも一方から、又は発泡体(例えば、ポリマの発泡体材料等)などの弾性変形可能な材料から形成され得るが、これらの材料に限定されない。
【0039】
デバイスのいくつかの実施例においては、尾根と溝からなる第1のセットが内側方サイドアームから外側方のサードアームまで延在し、尾根と溝からなる第2のセットが中央セグメントのみに沿って延在する。
【0040】
デバイスは、中央セグメントにおいてコルゲート状本体の上側エッジに沿って延在する上側フランジを備え、さらには内側方サイドアーム、中央セグメント及び外側方サイドアームにおいてコルゲート状本体の下側エッジに沿って延在する下側フランジを備え得る。
【0041】
本願の教示の範囲内において、履物は、少なくとも足首の開口を画定しているアッパー、アッパーに固定されアッパーの下方に横たわっているソール構造体、及び踵ばねデバイスを備える。踵ばねデバイスは、足首の開口の後方のアッパーに固定された中央セグメント、中央セグメントから下方かつ前方へ延びている内側方サイドアーム、中央セグメントから下方かつ前方へ延びている外側方サイドアーム、及び内側方サイドアームと外側方サイドアームの両方に接続されたベースを備え得る。ベースは、ソール構造体に固定され得る。中央セグメントは、非荷重位置にまで付勢されており、踵ばねデバイスが力を受けると、弾性変形して荷重位置になる。その荷重位置においては、中央セグメントは、非荷重位置にあるときよりもベースに接近する。荷重が除かれると、踵ばねデバイスに蓄えられた弾性エネルギが使われて中央セグメントが非荷重位置にまで戻される。この中央セグメントと一緒に動くアッパーが、中央セグメントが非荷重位置にあるときよりも荷重位置にあるときに足首の開口がソール構造体に接近するように、動く。
【0042】
履物のいくつかの実施例においては、ソール構造体はミッドソールを含み、ベースの一部がミッドソール内へ凹んでいる。
【0043】
履物のいくつかの実施例においては、内側方サイドアームがアッパーの内側方に固定されている一方で、外側方サイドアームはアッパーの外側方に固定されている。中央セグメントが荷重位置にあって、足首の開口を拡開させるときには、内側方サイドアームと外側方サイドアームは互いに遠ざかるように横方向外側へ湾曲し得る。
【0044】
履物のいくつかの実施例においては、非荷重位置にあるときに、中央セグメントはベースから離間しており、本発明のデバイスは、内側方サイドアームとベースとの接続部よりも後方でかつ外側方サイドアームとベースとの接続部よりも後方において、中央セグメントとベースとの間に剛性の踵カウンタの存在を不要としていることを特徴としている。
【0045】
履物のいくつかの実施例においては、内側方サイドアームと外側方サイドアームの各々が、それぞれの長手方向軸に沿ってベースから中央セグメントまでにかけて外方へ捩れている。
【0046】
履物のいくつかの実施例においては、中央セグメントとベースのうちの一方の一部が延出部として、中央セグメントとベースのうちの他方へ向かって延びている。中央セグメントが非荷重位置にあるときに、延出部は、中央セグメントとベースのうちの他方から離間している。延出部の少なくとも一部が、中央セグメントからベースへ向かって延在し得る。ベースは凹所を有し得る。中央セグメントが非荷重位置にあるときに、延出部はベースから離れているが、中央セグメントが荷重位置にあるときに、延出部は凹所内へ突出する場合がある。
【0047】
履物のいくつかの実施例においては、延出部の少なくとも一部が中央セグメントからベースへ向かって延在し、履物は、近位端と遠位端を有するストラップをさらに備え、その近位端はアッパーに固定されており、その遠位端にはポケットが設けられている。延出部はポケット内に配置されている。そのストラップは、中央セグメントの外方にあり得る。
【0048】
履物のいくつかの実施例においては、ベースの外面に、ベースの下側エッジから延在する周縁凹所(周縁にある凹所)が形成されている。ソール構造体は、その周縁凹所内に着座したフランジを有する。
【0049】
履物のいくつかの実施例においては、踵ばねデバイスは、流体で満たされた1つ又は複数の内側キャビティを含むブラダエレメントを備える。流体で満たされた1つ又は複数の内側キャビティは、中央セグメントに沿って延びているキャビティを含み得る。中央セグメントに沿って延びているキャビティはまた、内側方サイドアーム及び外側方サイドアームのうちの一方又は両方に沿って延在しており、管状の形状に形成されている場合もあれば、他の形状に形成されている場合もある。流体で満たされた1つ又は複数の内側キャビティはまた、内側方サイドアーム及び外側方サイドアームのうちの一方又は両方に配置された1つ又は複数の溜桝を含むとともに、中央セグメントに沿って延びているキャビティと流体的に連通している。踵ばねデバイスが力を受けて弾性変形するときに、中央セグメントに沿って延びているキャビティから流体が移動して1つ又は複数の溜桝が膨張する。
【0050】
履物のいくつかの実施例においては、中央セグメントは、内側方サイドアームと外側方サイドアームとの間において中央セグメントの内周縁へ向かって下降している傾斜面を有する。いくつかの実施例においては、踵ばねデバイスは、単一のワンピースの構成要素である。
【0051】
いくつかの実施例においては、履物アッパーは、足首の開口の少なくとも一部を画定する柔軟なカバーを備える。履物アッパーに含まれる踵ばねデバイスは、コントロールバーを備え、このコントロールバーは、足首の開口の後方の柔軟なカバーに固定された中央セグメント、中央セグメントから延びて柔軟なカバーの内側方に固定されている内側方サイドアーム、及び中央セグメントから延びて柔軟なカバーの外側方に固定されている外側方サイドアームを有する。踵ばねデバイスは、内側方サイドアームと外側方サイドアームの両方に接続されコントロールバーを支持している連続的なベースをさらに備え得る。コントロールバーが非荷重位置にまで付勢されているときには、中央セグメントは第1の距離よりも短い第2の距離だけベースから離れて、コントロールバーが力を受けると弾性変形して荷重位置になる。荷重位置においては、ベースが弾性エネルギを蓄え、受けていた荷重が除かれると、その弾性エネルギが使われてコントロールバーが非荷重位置にまで戻される。
【0052】
履物のいくつかの実施例においては、柔軟なカバーが弾性的に伸縮可能な布であり、履物アッパーは、柔軟なカバーに固定されて足首の開口の前側部を画定するカラー(襟部)をさらに備える。このカラーは、弾性的に伸縮可能な布よりも剛性が高い。
【0053】
いくつかの実施例においては、履物アッパーは、柔軟なカバーに固定された踵用プルタブをさらに備える。コントロールバーの中央セグメントは孔を有し、この孔に踵用プルタブが貫通している。
【0054】
履物アッパーのいくつかの実施例においては、中央セグメントが荷重位置にあって、柔軟なカバーの足首の開口を拡開させているときに、内側のサイドアームと外側のサイドアームは互いに遠ざかるように横方向外側へ湾曲している。
【0055】
いくつかの実施例において、本発明における履物アッパーは、コントロールバーとベースとの間の接続部よりも後方において、コントロールバーとベースとの間に剛性の踵カウンタの存在を不要としていることを特徴としている。
【0056】
履物アッパーのいくつかの実施例においては、内側方サイドアームと外側方サイドアームの各々は、それぞれの長手方向軸に沿って、ベースからコントロールバーの中央セグメントまでにかけて外方へ捩れている。
【0057】
履物アッパーのいくつかの実施例においては、コントロールバーとベースのうちの少なくとも一方は、コントロールバーとベースのうちの他方へ向かって延在する延出部を有する。コントロールバーが非荷重位置にあるときに、延出部はコントロールバーとベースのうちの他方から離れているが、コントロールバーが荷重位置にあるときに、延出部はコントロールバーがさらに変形することが制限される。
【0058】
履物アッパーのいくつかの実施例においては、コントロールバーの中央セグメントは、ベースへ向かって延在する延出部を有し、ベースは凹所を有する。コントロールバーが力を受けていないときに、延出部はベースから離れているが、コントロールバーが荷重位置にあるときに、延出部は凹所内へ突出し得る。
【0059】
いくつかの実施例においては、履物アッパーは、流体で満たされた1つ又は複数の内側キャビティを含むブラダエレメントを備える。流体で満たされた1つ又は複数の内側キャビティは、中央セグメントに沿って延在するキャビティを含み得る。中央セグメントに沿って延在するキャビティはまた、内側方サイドアーム及び外側方サイドアームの一方又は両方に沿って延在し得るとともに、管状の形状又は他の形状に形成され得る。流体で満たされた1つ又は複数の内側キャビティはまた、内側方サイドアーム及び外側方サイドアームのうちの一方又は両方に配置された溜桝であって、中央セグメントに沿って延在するキャビティと流体的に連通している1つ又は複数の溜桝を含み得る。踵ばねデバイスが力を受けて弾性変形するときに、中央セグメントに沿って延びているキャビティから流体が移動して1つ又は複数の溜桝が膨張する。
【0060】
履物アッパーのいくつかの実施例においては、コントロールバーの中央セグメントは、内側方サイドアームと外側方サイドアームとの間において、中央セグメントの内周縁へ向かって下降している傾斜面を有する。
【0061】
履物アッパーのいくつかの実施例においては、踵ばねデバイスは、単一のワンピースの構成要素である。
【0062】
いくつかの実施例においては、履物は、足首の開口の少なくとも一部を画定する柔軟なカバーを含む履物アッパーを備える。履物は、履物アッパーに固定されて履物アッパーの下方に横たわっているソール構造体と、踵ばねデバイスとをさらに備える。踵ばねデバイスは、足首の開口の後方の柔軟なカバーに固定された中央セグメントを有するコントロールバーと、中央セグメントから下方かつ前方へ延びている内側方サイドアームと、中央セグメントから下方かつ前方へ延びている外側方サイドアームとを備える。踵ばねデバイスは、内側方サイドアームと外側方サイドアームの両方に接続されコントロールバーを支持している連続的なベースをさらに含み得る。ベースは、ソール構造体に固定され得る。コントロールバーが非荷重位置にまで付勢されているときには、中央セグメントは第1の距離だけベースから離れているが、コントロールバーが力を受けて弾性変形し荷重位置になったときには、中央セグメントは第1の距離よりも短い第2の距離だけベースから離れている。荷重位置において、ベースは弾性エネルギを蓄え、受けていた荷重が除かれると、その弾性エネルギが使われてコントロールバーが非荷重位置にまで戻される。
【0063】
履物のいくつかの実施例においては、ソール構造体はミッドソールを含み、ベースの一部がミッドソール内へ凹んでいる。履物のいくつかの実施例においては、内側方サイドアームは柔軟なカバーの内側方に固定され、外側方サイドアームは柔軟なカバーの外側方に固定されている。履物のいくつかの実施例においては、中央セグメントが荷重位置にあって、柔軟なカバーの足首の開口を拡開させているときに、内側方サイドアームと外側方サイドアームは互いに横方向外側へ湾曲している。履物のいくつかの実施例において、履物は、コントロールバーとベースとの間の接続部よりも後方において、コントロールバーとベースとの間に剛性の踵カウンタの存在を不要としていることを特徴としている。
【0064】
履物のいくつかの実施例において、内側方サイドアームと外側方サイドアームの各々は、それぞれの長手方向軸に沿ってベースからコントロールバーの中央セグメントまでにかけて外方へ捩れている。履物のいくつかの実施例においては、コントロールバー及びベースのくちの一方は、コントロールバー及びベースのうちの他方へ向けて延在する延出部を有する。コントロールバーが非荷重位置にあるときに、延出部はコントロールバー及びベースのうちの他方から離れているが、コントロールバーが荷重位置にあるときに、延出部はコントロールバー及びベースのうちの他方に接触し、コントロールバーがさらに押圧されることを制限する。
【0065】
履物のいくつかの実施例においては、コントロールバーが非荷重位置にあるとき、延出部はコントロールバーの中央セグメントからベースへ向かって延在し、ベースが凹所を有し、延出部はベースから離れているが、コントロールバーが荷重位置にあるときに、延出部は凹所内へ突出している。履物のいくつかの実施例においては、コントロールバーの中央セグメントは、内側方サイドアームと外側方サイドアームとの間の中央セグメントの内周縁へ向かって下降している傾斜面を有する。履物のいくつかの実施例においては、デバイスは、単一のワンピースの構成要素である。
【0066】
いくつかの実施例においては、履物は、足首の開口の少なくとも一部を画定する柔軟なカバーを含む履物アッパーと、履物アッパーに固定されて履物アッパーの下方に横たわっているソール構造体と、踵ばねデバイスとを備える。踵ばねデバイスはコントロールバーを備え、このコントロールバーは、足首の開口の後方の柔軟なカバーに固定された中央セグメント、中央セグメントから履物アッパーの内側方に沿って下方かつ前方へ延びている内側方サイドアーム、及び中央セグメントから履物アッパーの外側方に沿って下方かつ前方へ延びている外側方サイドアームを有する。踵ばねデバイスは、作動可能となるようにコントロールバーに接続されかつコントロールバーを非荷重位置にまで付勢する機械式ばねをさらに備え得る。コントロールバーは力を受けると、荷重位置にまで後退するように枢動して、ばねに位置エネルギが蓄えられ、受けていた荷重が除かれると、その位置エネルギが使われてコントロールバーが非荷重位置にまで戻される(コントロールバーと一緒に柔軟なカバーも動く)。
【0067】
履物のいくつかの実施例においては、内側方サイドアームと外側方サイドアームの両方に接続されたピンが、ソール構造体を貫通している。ピンの周囲にばねが巻かれており、そのばねの一端部が、コントロールバーと一緒に枢動可能となるように固定されているとともに、そのばねの他端部がコントロールバーに固定されている。
【0068】
いくつかの実施例においては、履物は、足首の開口の少なくとも一部を画定する柔軟なカバーを含む履物アッパーと、履物アッパーに固定されて履物アッパーの下方に横たわっているソール構造体と、を備える。履物は、踵ばねデバイスをさらに備え得る。踵ばねデバイスは後方のコントロールバーを備え、この後方のコントロールバーは、足首の開口の後方の柔軟なカバーに固定された中央セグメント、該中央セグメントから履物アッパーの内側方に沿って下方かつ前方へ延びている内側方サイドアーム、及び該中央セグメントから履物アッパーの外側方に沿って下方かつ前方へ延びている外側方サイドアームを有する。踵ばねデバイスは前方のバーをさらに備え、この前方のバーは、足首の開口の前側において柔軟なカバーに固定された中央セグメント、該中央セグメントから履物アッパーの内側方に沿って下方かつ前方へ延びている内側方サイドアーム、及び該中央セグメントから履物アッパーの外側方に沿って下方かつ前方へ延びている外側方サイドアームを有する。前方のバーと後方のコントロールバーとは互いに、履物アッパーの内側方と外側方において交差した状態に固定され得る。後方のコントロールバーは力を受けると、荷重位置にまで後退するように枢動して、ばねに位置エネルギが蓄えられ、受けていた荷重が除かれると、その位置エネルギが使われて前方のバーが非荷重位置にまで戻される(後方のコントロールバーと一緒に柔軟なカバーも動く)。
【0069】
本願の教示の範囲から逸脱することなく、履物は、足首の開口の少なくとも一部を画定する柔軟なカバーを含む履物アッパーと、履物アッパーに固定されて履物アッパーの下方に横たわっているソール構造体と、踵ばねデバイスとを備える。踵ばねデバイスは、コントロールバーと連続的なベースを備え得る。コントロールバーは、足首の開口の後方の柔軟なカバーに固定された中央セグメント、中央セグメントから延びて柔軟なカバーの内側方に固定された内側方サイドアーム、及び中央セグメントから延びて柔軟なカバーの外側方に固定された外側方サイドアームを有し得る。ベースは、コントロールバーを支持し得るとともに、ソール構造体に固定され、内側方サイドアームと外側方サイドアームの両方に接続され得る。コントロールバーが非荷重位置にまで付勢されているときには、中央セグメントは第1の距離だけベースから離れているが、コントロールバーが力を受けて弾性変形して荷重位置にあるときに、中央セグメントは第1の距離よりも短い第2の距離だけベースから離れている。デバイスは、弾性エネルギ及び/又はばねのエネルギ等の位置エネルギを蓄え、受けていた荷重が除かれると、弾性エネルギ及び/又はばねのエネルギ等の位置エネルギが使われてコントロールバーが非荷重位置にまで戻される(コントロールバーと一緒に柔軟なカバーも動く)。
【0070】
各図を参照すると、同様の参照符号は同様の構成要素を示している。図1は、図5及び図6に示される履物12内へ足を差し入れ易くするデバイス10を示す。本明細書において、履物は、レジャー用靴及び運動用靴として図示されているが、本願の教示は、ドレスシューズ、ビジネスシューズ、サンダル、スリッパ、ブーツ、又は他のカテゴリの靴も含む。
【0071】
図5に示されるように、デバイス10は、履物12の踵領域13において足受けキャビティ47の一部を取り囲むように構成されている。踵領域13は、概して、人間の足が足受けキャビティ47内のソール構造体32に支持されるときに、人間の足の踵骨を含む後側部に対応する履物12の部分を含むとともに、履物12に応じた寸法を有する。履物12の前足領域15(図10図80及び図87において履物312,3212,3312に関して最もよく示されている)は、概して、人間の足のつま先、及び中足骨と指骨とを繋いでいる関節(「中足骨(metatarsal)―指骨(phalangeal)関節(joints)」つまり「MPJ」関節ともいう)に対応する履物12の部分を含む。履物12の中足領域17(図10図80及び図87における履物312,3212,3312に最もよく示されている)は、踵領域13と前足領域15との間に配置され、概して、人間の足の船状骨の関節を含む土踏まずの領域に対応する履物12の部分を含む。
【0072】
デバイス10はコントロールバー14を備え、このコントロールバー14は、中央セグメント16、中央セグメント16から下方前側へ延びている第1のサイドアーム18、及び第1のサイドアーム18から離間して配置されかつ中央セグメント16から下方前側へ延びている第2のサイドアーム20を有する。第1のサイドアーム18は内側方サイドアームであり、第2のサイドアーム20は外側方サイドアームである。
【0073】
デバイス10は、弾性的に屈曲可能な接合部24A,24Bにおいてコントロールバー14に接続されかつ該コントロールバー14を支持するベース22をさらに含む。ベース22は、第1のサイドアーム18と第2のサイドアーム20との間に連続的に延在してこれらを繋いでいる。ベース22は、第1のサイドアーム18から第2のサイドアーム20まで延びる途中で途切れることがないという意味において、或いは他の構成要素を介して接続してはいないという意味において連続的なものである。ベース22は、いずれも共通平面上に配置されている中央セグメント26、第1のベースアーム28、及び第2のベースアーム30を有する。この共通平面P(図3において、紙面に対して垂直な面を表す破線Pによって最も良く示されている)は、デバイス10のベース22が水平面上にあるときに水平面と平行になる。第1のベースアーム28が第2のベースアーム30から離間して配置されおり、これらの両方のアームがベース22の中央セグメント26から延在している。図2に示されるように、ベース22はコントロールバー14の少し下にあり、押圧されるときのデバイス10を安定させる。
【0074】
関節部24A,24Bは、ベース22と第1のサイドアーム18とが接続する位置である第1の関節部24A、及びベース22と第2のサイドアーム20とが接続する位置である第2の関節部24Bを含む。第1の関節部24Aは、第1のベースアーム28と第1のサイドアーム18との接続部である。第2の関節部24Bは、第2のベースアーム30と第2のサイドアーム20との接続部である。
【0075】
コントロールバー14は、第1の関節部24Aから第2の関節部24Bまでアーチ状の形状に形成されている。同様に、ベース22は、第1の関節部24Aから第2の関節部24Bまでアーチ状の形状に形成されている。この構成においては、コントロールバー14とベース22が、上述したように全体的に楕円形の形状の板ばねとして構成されている。かかるデバイスは踵ばねとも呼ばれる。加えて、デバイス10は単一のワンピースの構成要素である。例えば、デバイス10は単一のワンピースの構成要素として射出成形される。
【0076】
図1図2及び図3に示されるように、コントロールバー14は、非荷重位置にまで付勢されている。本明細書においては、非荷重位置は、負荷を受けていない位置ともいう。コントロールバー14は、その材料が本質的に備える弾性力によって非荷重位置にまで付勢されている。換言すれば、コントロールバー14の材料の剛性が充分に高いため、外部から負荷を受けない自然の状態にあるときには非荷重位置に留まり、弾性的に曲げられても、材料自体の弾性によって非荷重位置にまで戻る。非荷重位置においては、中央セグメント16がベース22から第1の距離D1だけ離れている(図3において、中央セグメント16の天部からベース22の底部までの距離D1として示されている)。非荷重位置とは、デバイス10が弛緩して、負荷を受けていない状態(すなわち、コントロールバー14に垂直(鉛直)方向の力が加わっていない状態)にある位置である。コントロールバー14は、図4に示される力Fを受けると押圧され得る。図4は、履物12の足受けキャビティ(図5及び図6を参照)内へ足46を差し入れる時に足46が加える力を表している。コントロールバー14がこのような力を受けると、弾性的に屈曲して荷重位置になり、荷重位置においては、中央セグメント16がベース22から第2の距離D2だけ離れている。図3において、荷重位置にあるときのデバイス10が破線10Aで示されている。第2の距離D2は第1の距離D1よりも短い。距離D1とD2との間の差はデバイス10の撓みであり、一例においては30mmの撓みであるが、これに限定されない。デバイス10は、力を受けて押圧されると荷重位置D2まで移動し、関節部24A,24Bで弾性的に屈曲して、弾性エネルギを蓄える。力Fが除かれると、蓄えられたエネルギが使われてコントロールバー14が非荷重位置にまで戻される。図3においては、デバイス10とソール構造体32のみが示されている。ここではデバイス10,10Aの位置を明示することを重視して、上述したアッパー38については省略されている。
【0077】
図5及び図6に示されるように、履物12は、ソール構造体32と、該ソール構造体32に固定されたアッパー38を含む。ソール構造体32は、1つ又は複数のソール構成要素を含む。このソール構成要素としては、アウトソール、ミッドソールなどのソール層34や、アウトソールとミッドソールとの単一の組合せ(ユニソールともいう)がある。図5及び図6においては、ソール層34は、ミッドソール若しくはユニソールであり得る。ソール層34はアッパー38の下方に横たわっている。履物アッパー38の低位部40が、接着剤や他の手段などを用いてソール層34に固定されている。ベース22は、接着剤、熱接合又は他の手段などを用いて結合させることにより、ソール層34に固定されている。ソール層34が、その外面に僅かな凹所を有することにより、その凹所内にベース22及び関節部24A,24Bの一部を入れ子式に収容することができ、これによって、ソール層34による追加的な支持がもたらされる。
【0078】
柔軟な履物アッパー38は、足首の開口39の少なくとも一部を画定する。履物アッパー38に固定されたベース22が、コントロールバー14の下方に横たわっているとともに、履物アッパー38の内側方41に第1のサイドアーム18が固定されている一方で、履物アッパー38の外側方43に第2のサイドアーム20が固定されている。図5及び図6に最もよく示されているように、ベース22は、履物アッパーの最後部の周りに沿って外側方43から内側方41まで延在する。コントロールバー14の中央セグメント16は、足首の開口39の後方において履物アッパー38に固定されている。デバイス10は、薄い部分45(図3に最もよく示されている)を有し、この薄い部分45において、該デバイスにアッパー38をミシン縫いすることが可能となる。
【0079】
アッパー38は、ソール層34に支持されるべき足46(図4に示されている)を受けてこれを覆う柔軟なカバー42(柔軟なカバー層ともいう)を含み得る。例えば、柔軟なカバー42は、4つの方向に伸縮するナイロンの布などの伸縮可能な布からなり、軽くて通気性の良い感触を呈する。本発明の履物12は、コントロールバー14とベース22との間の関節部24A,24Bよりも後方において、コントロールバー14とベース22との間に剛性の踵カウンタの存在を不要としていることを特徴としている。デバイス10は、少なくともある観点、すなわちソール構造体の踵部上に着用者の踵を保持することを支援し、履いているときの内側方又は外側方のズレを防ぐという観点において、踵カウンタとして機能する。デバイス10は柔軟なカバー42に固定されているので、アッパー38の柔軟なカバー42と一体化したデバイス10は、履物アッパーとも呼ばれる。換言すれば、デバイス10は、履物の柔軟なカバー42と他の構成要素も含むマルチ構成要素の履物アッパーの構成要素であるともいえる。そのようなマルチ構成要素の履物アッパーは、履物アッパーアセンブリとも呼ばれる。
【0080】
従来、アッパー内へ足を滑り込ませて履物を履くときには、片手か両手を使って足首の開口を伸ばして、後側部を保持することが必要であり、これは、比較的柔らかいアッパーである場合や、足首の開口の後方において柔軟な布に固定された踵カウンタを有していないアッパーである場合に特に必要となる。本発明のデバイス10は、これらの課題を解決するものであり、手や他の道具を使用することなく、アッパー38によって形成された足受けキャビティ47内へ足46を差し入れることを可能とするものである。つまり、足46だけで履くことができるものである。詳しくは、図4に示されるように、足46の裏からコントロールバー14を押す力Fが加わると、関節部24A,24Bにおいてデバイスが弾性的に屈曲し、コントロールバー14が非荷重位置から荷重位置(符号14Aの位置にあるコントロールバーで表されている)にまで動かされる。アッパー38は、コントロールバー14と一緒に下方へ動くように中央セグメント16に取り付けられている。足46全体が足受けキャビティ47内へ動かされると、デバイス10のバイアスによって蓄えられた弾性エネルギが使われてデバイス10が非荷重位置にまで自動的に戻され、これによってアッパー38が自動的に引っ張り上げられて足46の後側を覆うようになる。図5に、足を差し入れる前の時点における伸縮可能な柔軟なカバー42の位置が示されている。デバイス10が非荷重位置にまで戻されると、柔軟なカバー42は図5において破線で示される位置42Aまで伸張して、足46の踵の後側を覆う。
【0081】
アッパー38の足受けキャビティ47内へ足46をさらに入れ易くするために、コントロールバー14の中央セグメント16は、該中央セグメント16の内周縁52へ向かって下降している傾斜面50(図2及び図4を参照)を有する。コントロールバー14の足の接触面の上側部54と傾斜面50との間における遷移ライン(線)51の位置で、中央セグメント16の傾きが変化する。傾斜面50は、上側面54よりも急に下降している傾斜面を有し、足46を下方内側へ滑り込ませることを支援する。
【0082】
図5及び図6を参照すると、コントロールバー14が非荷重位置にあるときに、第1のサイドアーム18と第2のサイドアーム20は、ベース22の共通平面Pに対して鋭角A1をなす方向に延在する。なお、角度A1は、各サイドアームの長手方向軸を使って測定され得る。第1のサイドアーム18と第2のサイドアーム20の各々は、同じ角度A1として図示されているが、互いに異なる第1の鋭角を有する場合もある。デバイス10が図3の位置10Aとなるようにコントロールバー14が押圧されたときには、第1のサイドアーム18と第2のサイドアーム20は、ベース22の共通平面Pに対して第2の鋭角A2をなす方向に延在する。なお、角度A2は、各サイドアームの長手方向軸を使って測定され得る。第2の鋭角Aは、第1の鋭角A1よりも小さい。同じ大きさの角度A2で示されているが、第1のサイドアーム18と第2のサイドアーム20の各々が互いに異なる大きさの第2の鋭角を有する場合もある。
【0083】
デバイス10の材料として選択されるのは、上述したような弾性的な屈曲性により弾性変形をする能力があるものであり、弾性エネルギ等の位置エネルギを蓄え、その位置エネルギを使ってデバイス10を非荷重位置にまで戻すことができるものである。材料の例としては、(熱可塑性材料などの)プラスチック、複合材料、及びナイロンがある。他の材料の例としては、米国ペンシルベニア州プロイセン王国所在のArkema社から調達可能なPEBAX(登録商標)などのポリエーテル・ブロック・アミドがある。他の材料の例としては、ガラス繊維強化型ポリアミドがある。ガラス繊維強化型ポリアミドの例としては、米国ペンシルベニア州プロイセン王国所在のArkema社から調達可能なRISLAN(登録商標)BZM70TLがある。そのようなガラス繊維強化型ポリアミドは、ISO1183の試験方法で1.07g/cm3の密度、ISO868の試験方法でショアDスケールの瞬時の硬度75、ISO527の試験方法で(温度23℃、相対湿度50%の条件下に15日間置かれたサンプルを使って)1800MPaの引張係数、及びISO178試験方法で(温度23℃、相対湿度50%の条件下に15日間置かれたサンプルを使って)1500MPaの屈曲係数を有し得る。
【0084】
加えて、関節部の位置とサイドアーム18,20の位置におけるデバイスの相対的な寸法と形状が、ばねで付勢されるデバイス10の性質、所望の大きさの荷重がかけられたときに弾性変形すること、さらには元の非荷重位置にまで戻る能力を付与することに役立つ。デバイス10は、最大で160Nの力を受けて弾性的に屈曲するように構成され得る。例えば、図1を参照すると、第1のサイドアーム18と第2のサイドアーム20の各々が、それぞれの関節部24A,24Bにおいて幅W1よりも大きな厚さT1を有する。なお、厚さT1は、履物12の前後方向(長手方向)に測定される。幅W1は、履物12の内側方から外側方まで延びる方向(横断方向)に測定される。もっと厚さT1が大きければ、デバイス10を荷重位置にまで弾性的に屈曲させるためにもっと大きな力が要求される。
【0085】
加えて、サイドアーム18,20の各々がそれぞれの長手方向軸23A,23Bに沿って、ベースにおける関節部24A,24Bから中央セグメント16までにかけて外方へ捻じれている。換言すれば、図2に最もよく示されているように、サイドアーム18,20に沿った尾根(リッジ)64が、上方へ向かって延在する尾根から、その一部が中央セグメント16の後側において後方へ向かって延在する尾根へと変化することにより、サイドアーム18,20の内方を向いている面60が、少しだけ上を向く面62となるように連続的に変化する。同様に、図1に最もよく示されているように、アーム18,20の側面66は、中央セグメント16における尾根64の下方において少しだけ下を向く面68となるように変化する。このようにサイドアーム18,20が捻じれていることにより、中央セグメント16が足46の荷重を受けると、下方かつ後方へ動くことが促進される。
【0086】
デバイス10はまた、非荷重位置から荷重位置にまで動かされるときに拡大するように構成されている。こうしてコントロールバー14が押圧されて、内方を向いている面60に取り付けられたアッパー38を上方へ引っ張るときに、第1のサイドアーム18と第2のサイドアーム20が互いに遠ざかる方向へ湾曲することにより、柔軟なアッパー38内へ足46を差し入れ易くなる。荷重位置10Aにおいてデバイス10が湾曲することは、図2の平面図に示されている。
【0087】
こうして、デバイス10は、履物に足を差し入れ易くするとともに弾性変形して弾性エネルギを蓄える能力を有するように構成され、さらにはその変形量を制限して塑性変形を回避するように構成されている。詳しくは、コントロールバー14は、概してベース22に向かって延びている延出部70を有する。延出部70は、図1に示した非荷重位置にコントロールバー14があるときにはベース22から離間しており、コントロールバー14が押圧されてデバイスが荷重位置10Aにあるときにはベース22に接触する。図3においては、デバイス10は荷重位置にあって、延出部70が参照符号70Aで示されている。延出部70とベース22とが接触すると、コントロールバー14がそれ以上変形することが制限される。代替的な実施例においては、コントロールバー14の代わりに或いはコントロールバー14に追加して、ベース22が延出部を有し、このベース上の延出部は、コントロールバー14へ向かって延びている。
【0088】
図1~6に示される実施例においては、コントロールバー14とベース22は、コントロールバー14が押圧されているときのデバイスの動きを制限するように相互作用する相補的な特徴部を有する。例えば、延出部70はベース22と相互作用して、コントロールバー14の押圧を制限するとともに、コントロールバー14が荷重を受けて外側方又は内側方へ傾かないように制限する。詳しくは、ベース22が凹所72を有し、コントロールバー14が押圧されてデバイス10が荷重位置10Aまで弾性変形するときに、延出部70が凹所72内へ突出してベース22に接触する。凹所内にあるときに、凹所の両側方の突起74が、延出部70の横方向の動きを制限する。関節部24A,24Bが屈曲するときに、コントロールバー14が概ね円弧の形状を描くように下降するので、そのような円弧の形状を描くように該延出部70が下降するときに、延出部70は凹所22内のベース22と相互作用するように配置されている。
【0089】
図7及び図8は、他の実施例における踵ばねデバイス110を有する履物112を示す。踵ばねデバイス110は、踵ばねデバイス10と同様の特徴と機能部を有する。関節部124A,124Bが、関節部24A,24Bの厚さT1よりも大きな厚さT2を有することによって、コントロールバー14が押圧されたときにも大きな抵抗力が生じるので、屈曲の大きさを制限するための延出部70の必要性は低くなる。中央セグメント16は孔145を有し、アッパー38はこの孔145を貫通している踵用プルタブ149を有し、これによって、デバイス110にアッパー38がさらに固定される。踵用プルタブ149は、孔145を貫通した後、デバイス110の周囲を覆って、緩く掛かっているままにされるか、或いはアッパー38若しくは踵用プルタブ149自身に縫い付けられ又は固定されることにより、アッパー38をデバイス10に固定している。
【0090】
図9は、他の実施例における履物212を示し、この履物212は、ソール層234に固定された踵ばねデバイス210を有している。踵ばねデバイス210は、踵ばねデバイス10と同じ機能と特徴部を有する。アッパーは、図示されていないが、デバイス10に関して説明したように、ソール層234とデバイス210に固定され得る。
【0091】
図10は、他の実施例における履物312を示し、この履物312は踵領域において、ミッドソールとしてのソール構造体334と、弾性的に伸縮可能な材料でつくられた柔軟なカバー層を有するアッパー338と、に固定された踵ばねデバイス310を有する。踵ばねデバイス310は、踵ばねデバイス10と同じ機能と特徴部を有する。踵ばねデバイス310は、ベース22と同様であるがソール構造体334を貫通しているベース322を含み得る。或いは、ベースのアームはソール構造体334上で終端してソール構造体334に充分に固定されていることにより、ソール構造体334がベースとして機能する。デバイス310がアッパー338の固定システムに一体化されているときに、該デバイス310はループ339を有し、このループ339は、固定ケーブル343用の重りとして機能するサイドアームに固定されている。
【0092】
図11図14に示される他の実施例における履物412は、踵ばねデバイス10と同じ機能と特徴部を有する踵ばねデバイス410を有する。踵ばねデバイス10は、ソール層434とアッパー438に固定されており、このアッパー238は、踵領域においてソール層434に支持された足を受けて覆うために弾性的に伸縮可能な材料でつくられた柔軟なカバー442を有する。例えば、柔軟なカバー442は、四方へ伸縮するナイロンの布などの弾性的に伸縮可能な布であり得る。柔軟なカバー442に固定された発泡体のカラー(襟体)435が、アッパー438の足首の開口439の前側部を画定する。発泡体のカラーは、柔軟なカバー442の弾性的に伸縮可能な布よりも堅い。カラー435は、発泡体パッド435Aを含み得る。カラーの後側部における発泡体パッド435Aは、足首の開口439の内方へ突出し得る。この発泡体が圧縮可能につくられているため、様々な足首周りの寸法に応じて開口の寸法を調節することができる。
【0093】
デバイス410のコントロールバー414の中央セグメントが薄い部分445を有し、この薄い部分445において、アッパー438の柔軟なカバー442がデバイス410に縫い付けられている。図14に示されるように、この薄くなった部分445において、発泡体のカバー435もデバイス410に縫い付けられている。図12に示されるように、デバイス410の追加的な薄い延出部441は、サイドアーム418,420に沿って延びており、この薄い延出部441を介してデバイス410にアッパー438lを縫い付けることができるほど充分に薄い。図13及び図14に、薄い部分445を介しているとともに延出部441を介した縫合437が示されている。本発明におけるアッパー438は、剛性の踵カウンタの存在を不要としていることに特徴がある。デバイス410は、ある観点すなわちソール構造体の踵部分の上の所定の位置に着用者の踵を保持することを支援し、履いているときに内側方又は外側方のずれを防ぐという観点において、踵カウンタとして機能する。デバイス10と同様に、デバイス410は、履物に足を差し入れ易くする傾斜面450を有する。
【0094】
図15に示される他の実施例における履物512は、踵ばねデバイス10と同じ機能と特徴部を有する踵ばねデバイス510を有する。踵ばねデバイス510は、ソール層534とアッパー538とに固定されており、このアッパー538は、踵領域においてソール層534に支持された足を受けて覆うために弾性的に伸縮可能な材料でつくられた柔軟なカバー542を有する。履物を履くときに、カバー542は所定の位置にまで伸びる。例えば、柔軟なカバー542は、四方へ伸縮するナイロンの布などの弾性的に伸縮可能な布であり得る。デバイス510は、前方へ延在する支持体511を含む。デバイス510の関節部は、他の実施例と比較して高い位置にある(図に示されるように、ソール層534よりも高い位置にあるアッパー538の側方に関節部がある)。
【0095】
図16に示される他の実施例における履物612は、踵ばねデバイス10と同じ機能と特徴部を有する踵ばねデバイス610を有する。踵ばねデバイス610は、ソール層634と、踵領域においてソール層634上に支持された足を受けて覆うために弾性的に伸縮可能な材料でつくられた柔軟なカバーを有するアッパー638と、に固定されている。例えば、柔軟なカバーは、四方へ伸縮するナイロンの布などの弾性的に伸縮可能な布であり得る。ソール層634は、型成形された凹所を内側方と外側方に有し、その凹所内に、デバイス710のベース及び関節部(関節部624Bなど)の一部が入れ子状に収容される。
【0096】
図17及び図18に示される他の実施例の履物712は、踵ばねデバイス10と同じ機能と特徴部を有する踵ばねデバイス710を含む。踵ばねデバイス710は、アッパー738の柔軟なカバー内に埋め込まれ、それのベースの位置においてソール層734に接着剤その他の結合手段を用いて固定される場合もあれば、ミッドソールと、ストローベルつまりアッパー材料との間に単に捕捉されて接着剤をあまり必要としない場合もある。
【0097】
図19に示される他の実施例にける履物812は、踵ばねデバイス10と同じ機能と特徴部を有する踵ばねデバイス810を含む。踵ばねデバイス810は、それのベースの位置においてソール層834に固定されているとともに、アッパー838の柔軟なカバーに固定されている。アッパーに固定された踵用プルタブ849はループを形成し、このループを貫通しているデバイス810が足首の開口の後方へ延びていることは、デバイス810と一緒に動くようにアッパー838を固定することを支援する。
【0098】
図20図22に示される他の実施例における履物912は、踵ばねデバイス10と同じ機能と特徴部を有する踵ばねデバイス910を含む。踵ばねデバイス910は、ソール層(図示せず)にそれのベースの位置で固定されているとともに、アッパー938の柔軟なカバーに固定されている。デバイス910は、サイドアーム918,920を有するコントロールバー914と、サイドアーム918,920に接続しかつコントロールバー914の下に位置するベース922とを備える。ベース922は、コントロールバー914の関節部924A,924Bから後方へ延在するとともに、支持体として機能する。ベース922は、アッパー内の足受けボイドの下に横たわり、このアッパーに固定された踵ばねデバイス910は、履物912のストローベルの下に横たわり得る。ベース922は、接着剤又は他の手段を用いた結合によりソール層に固定される場合もあれば、ミッドソールと、ストローベルつまりアッパー材料との間に単に捕捉されて接着剤をあまり必要としない場合もある。荷重位置910Aにあるデバイス910によって示されているように、コントロールバー914が押圧されると、デバイス910は横方向外側へ拡大する。
【0099】
図23に示されるグラフの一例においては、横軸の変位の大きさ[mm]に対する縦軸の力F[N]の大きさによって、本明細書中に開示される種々の踵ばねデバイスが弾性的に屈曲する挙動と、弾性エネルギを解放する挙動とが概略的に表されている。変位Dは例えば、図3における距離D1とD2との差である。踵ばねデバイスの挙動を示す第1の代表例が、荷重曲線1003(図4においてデバイスのコントロールバーに加わる力Fの変位(その力の垂直方向成分がプロットされている))と、これに続く非荷重曲線1002(力Fが除かれたときの挙動)によって示されている。踵ばねデバイスの挙動を示す第2の代表例が、荷重曲線1005と、これに続く非荷重曲線1004によって示されている。
【0100】
図24及び図25は、他の実施例における履物1012を示し、この履物1012は、踵ばねデバイス10と同じ機能と特徴部を有する踵ばねデバイス1010を含む。踵ばねデバイス1010は、それのベースの位置においてソール層(図示せず)に固定されているとともに、アッパー1038の柔軟なカバーに固定されている。デバイス1010は、サイドアーム1018,1020を有するコントロールバー1014と、該サイドアーム1018,1020を接続しかつ該コントロールバー1014の下方に横たわっているベース1022と、を備える。ベース1022は、該ベース1022がサポートとして機能するように、コントロールバー1014の接続部から下方へ延在する。ベース1022は、履物1012内のストローベルの下方に横たわっている場合もあれば、接着剤その他の結合手段によりソール層に固定される場合もあれば、ソール層と、ストローベルつまりアッパー材料との間に単に捕捉されて接着剤をあまり必要としない場合もある。デバイス1010のサイドアーム1018,1020はデバイス910のサイドアーム918,920と同様であるが、サイドアーム918,920は、ベース922からコントロールバー914の中央セグメントまで次第に下降する傾斜面を有するものとして図21に示されている一方で、サイドアーム1018,1020は、ベース1022からコントロールバー1014の中央セグメントまで次第に上昇する傾斜を有するものとして図25に示されている。
【0101】
図26及び図27は、踵ばねデバイス10と同じ機能と特徴部を有する踵ばねデバイス1110を含む履物1112の他の実施例を示す。踵ばねデバイス1110は、それのベースの位置においてソール層(図示せず)に固定されているとともに、アッパー1138の柔軟カバーに固定されている。ベース1122は、履物1112内のストローベルの下方に横たわっている場合もあれば、接着剤その他の結合手段によりソール層に固定される場合もあれば、ソール層と、ストローベルつまりアッパー材料との間に単に捕捉されて接着剤をあまり必要としない場合もある。デバイス1110は、サイドアーム1118,1120を有するコントロールバー1114と、ベース1122とを備え、このベース1122は、サイドアーム1118,1120を繋いでいるとともに、コントロールバー1114の下方に横たわっている。図27に示されるように、第1のサイドアーム1118と第2のサイドアーム1120の各々は、Z字形の形状に形成されている。すなわち、関節部1124A,1124Bからコントロールバー1114の中央セグメントまでに延びる途中で、最初に後方へ延在し、続いて前方へ延在してから、再び後方へ延在している。サイドアーム1118,1120の後方へ延びている部分(後方延出部)の接続部は、前方へ延びている部分(前方延出部)の接続部とともに、コントロールバー1114の中央セグメントに下向きの力が加わることによりデバイス1110に荷重が与えられている時に弾性的に屈曲するための追加的な接続部として働き得る。ベース1122は、該ベース1122がサポートとして機能するように、コントロールバー1114の接続部から後方へ延在する。
【0102】
図28及び図29は、履物用踵ばねデバイス1210の他の実施例を示す。踵ばねデバイス1210は、内側方サイドアーム1218と外側方サイドアーム1220を含むコントロールバー1214を有する。コントロールバー1214は、柔軟な履物アッパーに取付け可能に構成されている。ベース1222は、コントロールバー1214から延在してこれを支持する。本明細書に開示されている踵ばねデバイスの他の実施例とは異なり、ベース1222がコントロールバー1214の中央セグメントから延在しており、接続部は、ベース1222の概ね垂直部分と概ね水平部分との間にある。
【0103】
図30及び図31は、履物用踵ばねデバイス1310の他の実施例を示す。デバイス1310は、コントロールバー1314の中央セグメントから延びている内側方サイドアーム1318と外側方サイドアーム1320を含むコントロールバー1314を有する。コントロールバー1314は、柔軟なアッパーを取付け可能に構成されている。中央セグメントは、柔軟な履物アッパーの踵ブルタブを受けるため、或いは履物アッパーにコントロールバー1314を縫い付けるための孔1345を有する。サイドアーム1318,1320の端部が長手方向に拡大し、これらが接続されているべきソール層とともに、デバイス1310のベース及び関節部1324A,1324Bとして機能する。
【0104】
図32は、踵ばねデバイス10と同じ機能と特徴部を有する踵ばねデバイス1410を含む履物1412の他の実施例を示す。踵ばねデバイス1410は、履物アッパー1438の柔軟なカバーに固定されたコントロールバー1414を有する。コントロールバー1414は、内側方サイドアームと外側方サイドアーム(一方のサイドアーム1420が図示されている)を含む。デバイス1410は、サイドアームを繋いでいるベース(図示せず)であって、ソール層1434に形成された開口1436を貫通しかつソール層1434に固定されているか或いは埋め込まれたベースを含む。ベースは、履物1412内のストローベルの下方に横たわっている場合もあれば、接着剤その他の結合手段によりソール層に固定される場合もあれば、ソール層1434と、ストローベルつまりアッパー材料との間に単に捕捉されて接着剤をあまり必要としない場合もある。こうして、ソール層1434の一部が、ベースとして機能し、また、コントロールアーム1314との接続部として機能する。
【0105】
図33は、踵ばねデバイス10と同じ機能と特徴部を有する踵ばねデバイス1510を含む履物1512の他の実施例を示す。踵ばねデバイス1510は、履物アッパー1538の柔軟なカバーに縫い付けられたコントロールバー1514を有する。コントロールバー1514は、内側方及び外側方サイドアーム(一方のサイドアーム1520が図示されている)を含む。デバイス1510は、サイドアームと接続するベース(図示せず)であって、ソール層1534に形成された開口を貫通しかつソール層1534に埋め込まれているか或いは固定されているベースを含む。ベースは、履物1512内のストローベルの下方に横たわっている場合もあれば、接着剤その他の結合手段によりソール層1534に固定される場合もあれば、ソール層1534と、ストローベルつまりアッパー材料との間に単に捕捉されて接着剤をあまり必要としない場合もある。こうして、ソール層1534の一部が、コントロールアーム用のベースとして機能し、またコントロールアームとの接続部1524として機能する。
【0106】
図34及び図35は、履物用踵ばねデバイス1610の他の実施例を示す。デバイス1610は、コントロールバー1614を有し、このコントロールバー1614は、該コントロールバー1614の中央セグメント1616から延びている内側方及び外側方サイドアーム1618,1620を含む。コントロールバー1614は、柔軟な履物アッパーに取り付けることができるように構成されている。中央セグメント1616と両側方のサイドアーム1618,1620は、足を差し入れる際に踵タブが内方へ折れてしまうことを防ぐために、足首の開口の後方(足首開口の後側カラーの位置等)における柔軟な履物アッパーにデバイス1610を縫い付けるための開口1645を有する。デバイス1610は、ベースを有しない。しかし、両側方のサイドアーム1618,1620は、これらの遠位端付近をアッパー1638の一部(図35に示されるように少し固いが、4-ウェイ伸縮布1642の前方の弾性を有し柔軟な部分1635)に固定し得る。このように、アッパーの比較的固い部分1635がデバイス1610用のベースとして効果的に機能し、両側方のサイドアーム1618,1620との関節部を形成していることにより、履物に足を差し入れる際に下向きの力が加わるときにデバイス1610を非荷重位置にまで弾性的に復帰させる。
【0107】
図36は、図37及び図38に示される履物1712用の踵ばねデバイス1710の他の実施例を示す。踵ばねデバイス1710は、踵ばねデバイス10と同じ機能と特徴部を有する。デバイス1710はコントロールバー1714を備え、このコントロールバー1714は、中央セグメント1716、内側方サイドアーム1718、及び外側方サイドアーム1720を有する。デバイス1710は、両側方のサイドアーム1718,1720を接続するベース1722であって、コントロールバー1714と該ベース1722との接続部から前方へ延在する。
【0108】
図37に示されるように、踵ばねデバイス1710は、これのベース1722の位置に置いてソール構造体1732に固定されるとともに、履物アッパー1738の(破線で示した)柔軟なカバーに固定される。アッパー1738は、足首の開口1739と足受けボイド1747の少なくとも一部を画定する。ベース1722は、履物1712内のストローベルの下方に横たわっている場合もあれば、接着剤その他の結合手段によりソール構造体1732に固定される場合もあれば、ソール構造体1732と、ストローベルつまりアッパー材料との間に単に捕捉されて接着剤をあまり必要としない場合もある。ベース1722は、コントロールバー1714との接続部から少し後方へ延びているとともに、コントロールバーがサポートとして機能するように接続部から前方へも延びている。ベース1722は、履物アッパーの内側方1741に隣接した足受けボイドの下方に横たわっている前方延出部1727と、履物アッパーの外側方1743に沿った足受けボイドの下方に横たわっている後方延出部1729とを有する。
【0109】
図37は、非荷重位置にまで付勢されたコントロールバー1714を示す。図38は、力を受けて荷重位置にまで弾性的に屈曲し、足首の開口1739を拡開させているコントロールバー1714を示す。デバイス1710は、弾性エネルギを蓄え、受けていた荷重が除かれると、その弾性エネルギが使われてコントロールバー1714が非荷重位置にまで戻される。
【0110】
図39及び図40は、踵ばねデバイス1810を有する履物1812を示す。履物1812と踵ばねデバイス1810は多くの点で履物1712と踵ばねデバイス1710と似ており、同様の構成要素には同様の参照符号が付されている。踵ばねデバイス1810は、該踵ばねデバイス1810が連続的なベース1822を有すること以外のすべての点で踵ばねデバイス1710と同様であり、この連続的なベース1822は、主要部1831、該主要部からソール構造体1732の足に対面した面1837に形成された凹所1835内まで下方へ延在する突起1833を有する。突起1833は、凹所1835内に着座するように構成されている。突起1833の壁が、凹所1835においてソール構造体1732の壁と相互作用して、ベース1822を安定させることに寄与する。加えて、突起1833によって凹所1835内にキャビティ1839が形成され、このキャビティ1839は、様々な履物構成要素つまり電子的付属品等の付属品を取り囲むように使用され得る。
【0111】
図41は、図42及び図43に示される履物1912用の踵ばねデバイス1910の他の実施例を示す。踵ばねデバイス1910は、踵ばねデバイス10と同じ機能と特徴部を有する。デバイス1910はコントロールバー1914を備え、このコントロールバー1914は、内側方サイドアーム1918と外側方サイドアーム1920を有する。デバイス1910は連続的なベース1922をさらに備え、この連続的なベース1922は、両側方のサイドアーム1918,1920を繋いでコントロールバー1914と該ベース1922との接続部から前方へも後方へも延びている。
【0112】
図42に示されるように、踵ばねデバイス1910は、ベース1922の位置においてソール構造体1732に固定されているとともに、履物アッパー1738の(破線で示した)柔軟なカバー(これらについては図37を参照しつつ説明した)に固定されている。ベース1922は,足受けボイド(足受け空所)1747の下方に横たわっている場合もあれば、履物1912内のストローベルの下方に横たわっている場合もある。また、接着剤その他の結合手段によりソール構造体1732に固定される場合もあれば、ソール構造体1732と、ストローベルつまりアッパー材料との間に単に捕捉されて接着剤をあまり必要としない場合もある。
【0113】
内側方サイドアーム1918と外側方サイドアーム1920の各々に少なくとも1つのスロット1980が穿孔されており、図示した実施例においては、複数のスロット1980が形成されている。スロット198は、第1のサイドアーム1918を貫通するように該内側方のアーム1918の長手方向軸に沿って(すなわち、サイドアーム1918の長さ方向に沿って)延びている。別々のスロット1980が、外側方サイドアーム1920を貫通するように該外側方サイドアーム1920の長手方向軸に沿って(すなわち、サイドアーム1920の長さ方向に沿って)延びている。スロット1980の形成により、サイドアーム1918,1920の厚さが薄くなり、サイドアーム1918,1920を屈曲させるのに必要な力が小さくなる。詳しくは、スロット1980を有することにより、各サイドアームがスロットの位置において複数のスラットに分かれる。これらのスラット1981は、スロット1980の領域において、これらの長さに沿って屈曲する複数の薄いサイドアームとして機能する。図42は、非荷重位置にまで付勢されたコントロールバー1914を示す。図43に示されるように、コントロールバー1914が力を受けると、弾性的に屈曲して荷重位置となり、非荷重位置にあるときよりも荷重位置においては、足首の開口1739が後方へ下傾して足首の開口1739が拡開する。図43に示されるように、荷重位置にあるときにスロット1980の少なくとも一部が閉じるように、サイドアーム1918,1920は構成されている。この構成を有することにより、複数のスラット1981が互いに接触して剛性と抵抗力が増し、更に屈曲できるようになる。デバイス1910は弾性エネルギを蓄積し、受けていた荷重が除かれると、その弾性エネルギが使われてコントロールバー1914が非荷重位置にまで戻される。
【0114】
図44は、図45及び図46に示される履物2012用の踵ばねデバイス2010の他の実施例を示す。踵ばねデバイス2010は、踵ばねデバイス10と同じ機能と特徴部を有する。デバイス2010はコントロールバー2014を備え、このコントロールバー2014は、内側方サイドアーム2018と外側方サイドアーム2020を有する。デバイス2010は、連続的なベース2022を備え、この連続的なベース2022は、両側方のサイドアーム2018,2020を繋いでいるとともに、コントロールバー2014と該ベース2022との接続部から前方へも後方へも延びている。
【0115】
図45に示されるように、踵ばねデバイス2010は、それのベース(根元)2022の位置においてソール構造体2032に固定されているとともに、アッパー1738の(破線で示した)柔軟なカバーに固定されている(2つとも図37を参照しつつ説明した)。ベース2022は、足受けボイド1747の下方に横たわっている場合もあれば、履物2012内のストローベルの下方に横たわっている場合もある。また、接着剤その他の結合手段によりソール構造体2032に固定される場合もあれば、ソール構造体2032と、ストローベルつまりアッパー材料との間に単に捕捉されて接着剤をあまり必要としない場合もある。
【0116】
スロット2080は、内側方サイドアーム2018の長手方向軸23A(すなわち、サイドアーム2018の長さ方向)を横切るように内側方サイドアーム2018を貫通している。また、別々のスロット2080が、外側方サイドアーム2020の長手方向軸23B(サイドアーム2020の長さ方向)を横切るように外側方サイドアーム2020を貫通している。スロット2080の形成により、サイドアーム2018,2020の厚さが薄くなり、サイドアーム2018,2020を屈曲させるのに必要な力が小さくなる。詳しくは、スロット2080が形成されることにより、各サイドアームがスロット2080の位置において複数のフィンガ2081に分離される。これらのフィンガ2081があることにより、サイドアームの上面2085から下面2087までの厚さ全体ではなく、各スロット2080の端部2083と各サイドアーム2018,2020の上面2085との間の厚さの総計にまで、サイドアーム2018,2020の屈曲部の厚さが薄くなる。図44においては、外側方サイドアーム2020に関するものとして、フィンガ2081、端部2083、及び面2085,2087の参照符号を付しているが、同様の特徴部が内側方サイドアーム2018にも等しく施される。図45は、非荷重位置にまで付勢されているコントロールバー2014を示す。図46は、コントロールバー2014が応力を受けて弾性的に屈曲し荷重位置となったときを示している。非荷重位置にあるときよりも荷重位置にあるときに、足首の開口1739が拡開している。図46に示されるように、荷重位置にあるときに、サイドアーム2018,2020はスロット2080の少なくとも一部が閉じるように構成されており、これによって、複数のフィンガ2081が互いに接触し、ひいては剛性と抵抗力が増して更に屈曲できるようになる。デバイス2010は弾性エネルギを蓄積し、受けていた荷重が除かれると、弾性エネルギが使われてコントロールバー2014が非荷重位置にまで戻される。
【0117】
図47及び図48は、踵ばねデバイス10及ぶ図27に示した踵ばねデバイスと同じ機能と特徴部を有する踵ばねデバイス2110の他の実施例を示す。図48においては、デバイス2110は、ソール構造体2132に固定されているとともに、履物2138の(破線で示した)柔軟なカバー(これらは図37を参照しつつ説明したものと同様である)に固定された履物2112内に示されている。踵ばねデバイス2110は、該踵ばねデバイス2110が連続的なベース2122を有すること以外はすべての点で踵ばねデバイス1110と同様であり、この連続的なベース1822は(ベース1122が後方のみへ延在するのとは異なり)、コントロールバー1114のサイドアーム1118,1120から前方へも後方へも延びている。
【0118】
図49は、他の実施例における踵ばねデバイス2210を有する履物2212を示す。踵ばねデバイス2210は、踵ばねデバイス10と同じ機能と特徴部を有する。デバイス2210はコントロールバー2214を備え、このコントロールバー2214は、内側方サイドアーム218、外側方サイドアーム2220、及び両側方のサイドアーム2218,2220を繋いでいる中央セグメント2216を有し、該中央セグメント2216から両サイドアームが概ね下方かつ前方へ延びている。デバイス2210は、柔軟な履物アッパー2238に固定されているとともに、履物12のデバイス10に関して説明したものと同様のソール構造体2232に固定されている。
【0119】
図49に示した位置にある履物2212がソール構造体上にあるときに、ピン2290がほぼ水平に配置されている。ピン2290は、ソール構造体2232を貫くように延在し、連続的なベースとして働いて、第1及び第2の関節部においてサイドアーム2218,2220と接続している。ピン2290は、内側方サイドアーム2218及び外側方サイドアーム2220と、これらがソール構造体2232と相互作用する位置において接続されている。ピン2290は、該ピン2290の長さ方向に沿って(ソール構造体2232を横切る)回動軸を確立し、この回動軸を中心として非荷重位置と荷重位置との間で変化するようにコントロールアーム2214が回動する。トーション(ねじり)ばね2291のような付勢エレメントは、その一方の端部がピン2290に固定されるとともに他方の端部がソール構造体2232に固定されつつ、ピン2290の周囲で覆われる。例えば、ピン2290は、ソール構造体の内側方に固定された第1の端部2292と、ピン2290に固定された第2の端部2294を有する。コントロールバー2214を回動させて荷重位置にすることによりトーションばね2291が巻かれて、位置エネルギが蓄えられる。
【0120】
コントロールバー2214は、非荷重位置(実線で示されている)へ向けて付勢されている。コントロールバー1714(破線2214Aで示されている)は、デバイス2210が力を受けて荷重位置にまで回動したときのものであり、荷重位置におけるデバイスは、参照符号2210Aで示されている。非荷重位置と比較して荷重位置においては、足首の開口2739が拡開して、後方へ下傾し得る。柔軟なカバー2442(柔軟なカバー層ともいう)がコントロールバー2214に固定されていて、該コントロールバー2214とともに下方へ動くからである。ばね2291は弾性エネルギを蓄え、受けていた荷重が除かれると、弾性エネルギが使われてコントロールバー2214が非荷重位置にまで戻される。
【0121】
図50及び図51は、他の実施例における踵ばねデバイス2310を有する履物2312を示す。踵ばねデバイス2310は、踵ばねデバイス10と同じ機能と特徴部を有する。デバイス2310は、内側方サイドアーム2318と外側方サイドアーム(図示していないが、内側方サイドアーム2318を鏡写しにしたもの)を有するコントロールバー2314を備える。デバイス2310は連続的なベース2322を備え、この連続的なサイドアーム2322は、両サイドアームを繋いで、図1に示したベース22と同様のベース2322を有するコントロールバー2314の接続部から前方へも後方へも延びている。
【0122】
図50及び図51に示されるように、踵ばねデバイス2310は、それのベース2322の位置においてソール構造体32に固定されているとともに、履物アッパー38の柔軟なカバー(これらについては図5及び図6を参照しつつ説明した)に固定されている。
【0123】
コントロールバー2314には少なくとも1つのスロット2380が形成されており、このスロット2380は、第1のサイドアーム2318から、中央セグメント2316を横切るように第2のサイドアームまで連続的に延在する。すなわち、第1のサイドアーム2318を通り、中央セグメント2316を通り、(図示したスロットに関して鏡写しの)第2のサイドアームを貫通している。図示した実施例においては、複数のスロット2380が形成されている。第1のサイドアーム2318を貫くように延在し、第1のサイドアーム2318の長手方向軸に沿って(すなわち、サイドアーム2318の長さ方向に沿って)延在する同じスロット2380が、第2のサイドアームを貫通するように、第2のサイドアームの長手方向軸に沿って(すなわち、第2のサイドアームの長さ方向に沿って)延在もする。スロット2380は、サイドアームの厚さを薄くして、サイドアームを屈曲させるのに要求させる力の大きさを小さくする。詳しくは、スロット2380を有することで、各サイドアームは、スロットの位置において複数のスラット2381に分けられる。スラット2381は、スロット2380の領域で長さ方向に沿って屈曲する複数のさらに薄いサイドアームとして機能する。
【0124】
図50は、力を受けていない位置にまで付勢されたコントロールバー2314を示す。図51に示されるように、コントロールバー2314が力を受けると、荷重位置にまで弾性的に屈曲して荷重位置とあり、非荷重位置にあるときよりも荷重位置において、足首の開口39は下方下側へ傾いて足首の開口39が拡開する。図51に示されるように、荷重位置においては、サイドアーム2318(及び図示されていない第2のサイドアーム)は、スロット2380の少なくとも一部が閉じることにより、スラット2381が互いに接触し、これにより剛性が増す。しかし、スロット2380が閉じて、複数のスラット2381が互いに接触すると、該複数のスラット2381は互いに対して滑動(スライド)することができる。この滑動があることによって、コントロールバー2314と同様ではあるがスロットのないコントロールバーと比較して、剛性の小さい位置でさらに屈曲し続けることが可能となる。図51は、積み重ねられたスラット2381の後側に僅かな段違いが生じていることを示す図であり、各スラット2381が互いに対して滑動するように、スロットが閉塞している。デバイス2310は、弾性エネルギを蓄え、受けていた荷重が除かれると、その弾性エネルギが使われてコントロールバー2314が非荷重位置にまで戻される。
【0125】
図52は、他の実施例における踵ばねデバイス2410を有する履物2412を示す。踵ばねデバイス2410は、踵ばねデバイス10と同じ機能と特徴を有する。デバイス2410はコントロールバー2414を備え、このコントロールバー2414は、内側方サイドアーム18、外側方サイドアーム20、及びこれらのサイドアーム18,20を繋いでいる中央セグメント16を有し、該中央セグメント16から両サイドアームが概ね下方かつ前方へ延びている。デバイス2410は、連続的なベース22を備え、この連続的なベース22は、第1及び第2の関節部24A,24B(図1を参照しつつ説明した)において両サイドアーム18,20を繋いている。デバイス2410は、柔軟な履物アッパー2438に固定されているとともに、ソール構造体2432(デバイス10に関して説明したものと同様)に接続されている。
【0126】
中央セグメント16に孔2445が形成されており、アッパー2438が、その孔2445を貫通している踵用プルタブ2449を有することにより、該アッパー2438がデバイス2410にさらにしっかり固定されるようになる。中央セグメント16は、該中央セグメント16から下方へ延在する延出部2470であって、ベース22(延出部70に関して説明したものと同様)と干渉することによりデバイス10の屈曲を制限し得る延出部2470をさらに有する。延出部2470には、スタッド、留め金及びボタン等の固定具を使って、延出部2470に踵用プルタブ2449を固定するために使用され得るスタッド(図示せず)を受ける固定具用開口2451が形成されている。代替的に或いは追加的に、踵用プルタブ2449は、接着剤又は他の手段を用いて延出部2470の設置面2472に固定される場合もある。
【0127】
図53は、他の実施例における踵ばねデバイス2510を有する履物2512を示す。踵ばねデバイス2510はコントロールバー2514を備え、このコントロールバー2514は、履物の内側方に固定された内側方サイドアーム2518、及び内側方サイドアーム2518を鏡写しにした形状で履物2512の外側方に固定された外側方サイドアーム(図示せず)を有する。後方のコントロールバー2514は、内側方サイドアームと外側方サイドアームとを繋いでいる中央セグメント2516をさらに備え、この中央セグメント2516から両サイドアームが概ね下方かつ前方へ延びている。デバイスは、同様に内側方サイドアーム、外側方サイドアーム、及び内側方サイドアームと外側方サイドアームとを繋いでいる中央セグメント2516を有する前方のバー2515を備える。柔軟な履物アッパー2538が、前方のバー2515の中央セグメント2516に固定されているとともに、後方のコントロールバー2514の中央セグメント2416に固定されており、さらには、後方のコントロールバー2514の内側方サイドアームと外側方サイドアーム、及び前方のバー2515に固定されている。よって、中央セグメント2416,2516の相対的な位置が、アッパー2538によって形成される足首の開口2539の前後方向への拡開を決める。
【0128】
ソール構造体2532に、バー2514,2515がその端部の位置でしっかり固定され得る。バー2514,2515は互いに、内側方と外側方で交差するように配置され、これらが外側方と内側方の両方で交差する接続部2590(そのうち1つが示されている)において互いに回動可能に固定されている。接続部2590は、ピン式関節部であり得る。接続部に、トーション(ねじり)ばね2591が動作可能に固定され得る。アッパー2538へ足を差し入れるときの力などが中央セグメント2416に加わったときに該中央セグメント2416,2516が互いに離れる方向へ動くように、バー2514,1515の天部が弾性的に屈曲するように構成されている。力を受けたときの中央セグメント2416,2416の位置が、破線2416A,2516Aで示されている。デバイス2510は、弾性エネルギ及び/又はばねのエネルギなどの位置エネルギを蓄え、受けていた荷重が除かれると(すなわち、アッパー2538の足受けキャビティ内へ足を滑り込ませた後には)、その位置エネルギが使われて後方のコントロールバー2514が非荷重位置にまで戻される。
【0129】
図54は、他の実施例における踵ばねデバイス2610を備えた履物2612を示す。踵ばねデバイス2610は、踵ばねデバイス2310と同じ機能と特徴部を有する。デバイス2610はコントロールバー2614を備え、このコントロールバー2614は、一連のスラット2681と、複数のスロット(図55に最もよく示されている)を有する。各スラット2681は、中央セグメント2616、内側方サイドアーム2618(図57に最もよく示されている)、及び外側方サイドアーム2620を有する。いくつかの実施例においては、外側方サイドアーム2620と内側方サイドアーム2618は互いに鏡写しの関係となる形状に構成されている。デバイス2610は、連続したベース2622を備え、この連続したベース2622は、コントロールバー2614の下方に横たわり、このコントロールバー2614は、両サイドアーム2618,2610を繋いでいるとともに、該コントロールバー2614と(図1に示したベース22と同様の)ベース2622との接続部から前方へも後方へも延びている。図57及び図58に示されるように、デバイス2610は、内側方と外側方を結ぶ方向(水平方向)と、垂直方向(鉛直方向)との両方向に延在する凹面を有する陥没した内面2611を有する。
【0130】
履物2612は、ソール構造体2632と、(図5及び図6を参照しつつ説明した)柔軟なカバーを有する履物アッパー38とを含む。踵ばねデバイス2610は、(図59及び図60を参照しつつ説明した)ポケット2635を有するストラップ2633を介して、履物アッパー38の柔軟なカバーに固定されている。
【0131】
図54に示されるように、踵ばねデバイス2610はまた、該踵ばねデバイス2610のベース2622の位置でソール構造体2632に固定されている。図55及び図56に示されるように、デバイス2610のベース2622の外面に周縁凹所2622Aが形成されており、この周縁凹所2622Aは、該ベース2622の下側エッジ2622Bから延びている。図55及び図56において、周縁凹所2622Aは、ベース2622の外側方の位置に示されているが、この外側方を鏡写しにしたベース2622の内側方まで廻り込む位置にも延在する。周縁凹所2622Aは、図54に示したソール構造体2632のフランジ2632Aを受ける形状及び寸法となるように形作られている。フランジ2632Aは、周縁凹所2622A内において、ベース2622に接着され或いは熱接合され得る。これにより、ソール構造体2632は、横断方向にベース2622を支持する。
【0132】
図55に示される非荷重位置にまで付勢されているコントロールバー2614は、力Fを受けると、図56に示される荷重位置にまで弾性的に屈曲し、その荷重位置において各中央セグメント2616は、非荷重位置にあったときよりもベース2622に接近して位置エネルギを蓄え、受けていた力Fが除かれると、その位置エネルギが使われてコントロールバー2614が非荷重位置にまで戻される。コントロールバー1614とベース2622とが全体的に楕円形の形状の板ばねとして構成されている。デバイス2610は、弾性的に屈曲可能なナイロン又は他の弾性的に屈曲可能な材料から形成され得る。中央セグメント2616はベース2622から離間しており、デバイス2610は、内側方サイドアーム2618とベース2622との接続部2624A(図57に示されており、これの鏡写しが接続部2624B)の後方において、かつ外側方サイドアーム2620とベース2622との間の接続部2624Bの後方において、中央セグメント2616とベース2622との間に剛性の踵カウンタの存在を不要としていることを特徴とする。デバイス2610は、少なくともある観点すなわち、ソール構造体の踵位置の上方の位置に着用者の踵を保持し、履いているときに内側方又は外側方のずれを防ぐという観点において、踵カウンタとして機能する。
【0133】
スロット2680の形成により、複数のスラットの最高位のスラット2681Bと、図55に示されるサイドアームの位置におけるスラットの最低位のスラット2681Aとの間の材料の量が減り、サイドアームを屈曲させるのに必要な力が小さくなる。詳しくは、スロット2680が形成されている場合、スロット2680の領域において、複数のスラット2681がその長さ方向に沿って屈曲する複数の薄いサイドアームとして機能する。中央セグメント2616の位置において、スラット2681のうちベース2622に最も近い最低位のスラット2681Aの内側方端部2682Aから外側方端部2683Aまでの寸法の方が、スラット2681のうちベース2622から最も遠い最高位のスラット2681Bの内側方端部2682Bから外側方端部2683Bまでの寸法よりも短い。図57には、内側方端部2682A,2682Bが示されているが、これを鏡写しにした外側方端部2683A,2683Bは、図55に示されている。
【0134】
図55に示される実施例においては、最高位のスラット2681Bの厚さT4に対する最低位のスラット2681Aの厚さT3が示されているように、いくつかの実施例においては、内側方端部と外側方端部との間の長さ方向に沿っての任意の位置において、最低位のスラット2681Aの方が、最高位のスラット2681Bよりも薄くつくられている。換言すれば、スラット2681Aの内側方端部と外側方端部との間の任意の位置において、スラット2681Aの厚さがそれの内側方端部からそれの外側方端部まで変化し、スラット2681Bの厚さがそれの内側方端部からそれの外側方端部まで変化し得るが、スラット2681Aの長手方向軸に対して直交する線に沿ったスラット2681Aの厚さは、スラット2681Bの厚さよりも短い。
【0135】
図54及び図55に示される非荷重位置にコントロールバー2614があるときに、複数のスラット2681は、スロット2680を隔てて互いに離間している。図56に示される荷重位置においては、隣り合う中央セグメント2616が互いに接触するように、スラット2681間でスロット2680の少なくとも一部が閉じる。図示された実施例において、スロット2680は、荷重位置にある中央セグメント2616の付近では閉じているが、サイドアーム2618,2620の付近では開いたままとなっている。複数のスロット2680は、互いに平行に延在し、図55に示される非荷重位置において、スラット2681の外側2644が互いに面一となっている。複数のスロット2680の形成により、最高位のスラット2681Bから最低位のスラット2681Aまでの複数のスラット2681の総厚さと同じ厚さを有するコントロールバー2614とする場合よりも、弱い抵抗力(つまり、低い剛性)でコントロールバー2614を屈曲させることが可能となる。図55に示される典型的な実施例においては、スロット2680が閉じることに起因して複数のスラット2681が互いに接触するときに、複数のスラット2681は互いに(すれ違うことなく)、滑動することができる。この滑動があることによって、コントロールバー2614と同様であってもスロットのないコントロールバーと比較して、小さい剛性の位置でもさらなる屈曲が続くことが可能となる。図56は、積み重ねられたスラット2681の後側における僅かな段違いを示す図であり、スロット2680が閉じられているとともにスラット2681が互いに対して滑った状態を示している。
【0136】
図55は、非荷重位置(すなわち、非荷重位置)へ向けて付勢されたコントロールバー2614を示す。図56は、付与された力F(履物を履くときの足の力など)を受けて弾性的に変化し、荷重位置へ移ったコントロールバー2614を示し、この荷重位置においてはアッパー38がコントロールバー2614とともに踵領域で動くので、非荷重位置にあるときと比較して、図54に示したアッパー38の足首の開口39を拡大する。足首の開口39の後方にあるアッパー38の踵領域は力Fを受けると、コントロールバーの中央セクション2616とともに、ベース2622の付近まで動き、これによって足首の開口39が拡開するか、或いは少なくとも足首の開口の位置を変化させ、その開口が非荷重位置にあるときと比較して後方へ下傾するようにする。これにより、図55に示した足首の開口39の位置に対する図56に示した足首の開口39の位置の比較で最もよく示されるように、後方から下方かつ前方(下方のみでなく)へ足を差し入れることが可能となる。
【0137】
詳しくは、アッパー38は延出部2684を介して踵ばねデバイス2610に繋がっており、ストラップはポケット2635を有する。図55を参照すると、最低位のスラット2681Aは、中央セグメント2616の下側エッジ2685から延びている延出部2684を有する。延出部2684はその少なくとも一部がベース2622へ向かうように、中央セグメント2616から下方へ延びている。図55に示されるように、コントロールアーム2614が非荷重位置にあるときに、延出部2684は下方かつ後方へ延びている。図56に示した荷重位置においては、延出部は、非荷重位置にあるときよりも真下を向く。加えて、コントロールバー2614と延出部2684は、該コントロールバー2614が荷重位置にあるときにベース2622の後方に位置するように、ベース2622から離間する方向へ動くように構成されている。このような実施例においては、ベース2622内に凹所は必要とされない。
【0138】
図54図59及び図60を参照すると、ストラップ2633は、アッパー38の後方の足首の開口39付近で該アッパー38に縫い付けられ、一体的に形成され、或いは他の方法を用いて繋げられた遠位端2633Aを有する。ストラップ2633は、遠位端2633Bの位置にポケット2635を有する。ポケット2635は、例えば、遠位端2633Bにおいて、ストラップ2633がそれ自体の上に折り返され、折り返された部分がストラップ2633の残りの部分に縫い付けられることにより形成されている。ストラップ2633は、アッパー38から下方へ延在する。ストラップ2633は、コントロールバー2614の上かつ後方に配置され、延出部2684は、中央セグメント2616を覆うストラップ2633を使ってポケット2635内に配置される。こうして、延出部2684とストラップ2633は、アッパー38とコントロールバー2614とを作動可能に接続するように使用される。これにより、コントロールバー2614が荷重位置へ移るとともに、足首の開口39の後方のアッパー38の部分は下方へ動き、足首の開口39を通してアッパー38の足受けキャビティ内で足を差し入れ易くなり、そして力が除かれるとコントロールバーが非荷重位置にまで変位するとともに、足首の開口39の後方のアッパー38の部分は後方かつ上方へ動き、足受けキャビティ内へ入れられた足の後方を取り囲むようにアッパー38を配置する。
【0139】
図61は、他の実施例における踵ばねデバイス2710を有する履物2712を示す。なお、履物2612及び踵ばねデバイス2610に関して説明したのと同様の参照符号は、同様の構成要素を示す。踵ばねデバイス2710は、踵ばねデバイス2610と同じ機能と特徴部を有する。デバイス2710は、一連のスラット2781と複数のスロット2780(図63に最もよく示されている)を有するコントロールバー2714を備えている。各スラット2781は中央セグメント2716、内側方サイドアーム2718(図62Aに最もよく示されている)及び外側方サイドアーム2720(図61に最もよく示されている)を有する。外側方サイドアーム2720と内側方サイドアーム2718とは、互いに鏡写しの関係にある。デバイス2710は、図54及び図5に関して説明したような連続的なベース2622を有し、このベース2622は、コントロールバー2714の下方に横たわり、両サイドアームを繋いで、コントロールバー2714とベース2622との接続部から後方へ延在する。図65及び図66に示されるように、デバイス2710は、内側方と外側方と結ぶ方向と、垂直(鉛直)方向との両方向に延在する凹面を有する陥没した内面2711を有する。
【0140】
スロット2780の形成により、スラットの最高位のスラット2781Bとサイドアームの位置にあるスラットの最低位のスラット2781Aとの間の材料の量が減り、中央セグメント2616に力Fを加えてサイドアームを屈曲させるのに必要な力が小さくなる。詳しくは、スロット2780が形成されることにより、該スロット2780の領域において、複数のスラット2781がその長さ方向に沿って屈曲する複数のさらに薄いサイドアームとして機能する。図61及び図63に示されるように、中央セグメント2716の位置において、スラット2781のうちベース2622に最も近い最低位のスラット2781Aの内側方端部2782Aからそれの外側方端部2783Aまでの寸法の方が、スラット2681のうちベース2622から最も遠い最高位のスラット2781Bの内側方端部2682Bから外側方端部283Bまでの寸法よりも短い。図62Aに、内側方端部2782A,2782Bが示されている一方で、これを鏡写しにした外側方端部2783A,2783Bが示されている。
【0141】
図63に最もよく示されているように、スラット2781Aのうちの最低位のスラットに沿った任意の点において、複数のスラット2781Aのうちの最低位のスラットは、これに対応する点において(例えば、複数のスラットのうちの最低位のスラットに沿った点の上に直接的に並べられた点において)、他の複数のスラットのうちのどの1つよりも薄い。スラットの厚さは、それの長手方向軸に沿って測定される。スラット2781Aの内側方端部から外側方端部までの間のどの所定の点においても、スラット2781Aの厚さが長手方向に沿って内側方端部から外側方端部までの途中で変化する一方で、スラット2781Bの厚さも長手方向軸に沿って内側方端部から外側方端部までの途中で変化し、スラット2781Aの厚さは、該スラット2781Aの真上に並んだスラット2781Bの厚さよりも薄くなる。
【0142】
図61図62Aに示される非荷重位置にコントロールバー2714があるときに、複数のスラット2781は互いに、スロット2780を隔てて離間する。踵ばねデバイス2710は、スロット2780の少なくとも一部を埋める弾性インサート2790を含む。弾性インサート2790は、ゴム、熱可塑性ポリウレタンのうちの少なくとも一方から、又は発泡体などの弾性的に圧縮可能な材料から形成され得るが、これらの材料に限定されない。図示した実施例においては、弾性インサート2790は、圧縮剛性と伸縮弾性をもたらす熱可塑性ポリウレタンである。図64に最もよく示されるように、弾性インサート2790スリーブ2791を含み、スリーブ2791の外面2793から、互いに離間した複数の突起2792が外方へ延びている。図65に最もよく示されるように、スリーブ2791は、スラット2781の内側に沿って、スラット2781のうちの最高位のスラット2781Bからベース2622のもっと低い位置の周縁まで延在するように構成されている。スリーブ2791の外周囲は、スラット2781及びベース2622の外周囲と一致している。
【0143】
互いに離間した突起2792は、スラット2781間において、スリーブ2791からスロット2780内へ延在する。図61及び図62Aに示される位置にデバイス2710があるときに、互いに離間した複数の突起2792は、スロット2780の少なくとも一部を完全に埋めるように形作られかつ寸法付けられている。他の実施例においては、互いに離間した複数の突起2792は、複数のスロット2780よりも狭くつくられている。互いに離間した複数の突起2792は、スラット2781の外面と面一である場合もあれば、スラット2781の外面を過ぎた外方の位置にまで延在する場合もある。スラット2781とベース2622は、インサート2790を支持するケージともいう。
【0144】
コントロールバー2714に下向きの力Fが加えられるときに、スロット2780の一部が閉じて、図62Bに示される荷重位置にまでコントロールバー2714を動かすことにより、互いに隣接する中央セグメント2716が互いに接近する方向へ動いて、複数の突起2792の一部がスラット2781間で圧縮されるようにする。スリーブ2791はまた、コントロールバー2714と一緒に下方へ動くことに伴って、圧縮される。足首の開口39の後方において、スリーブ2791及び/又はスラット2781がアッパー38の柔軟なカバーの踵部分に動作可能に固定されているので、アッパー38は、スリーブ2791及びコントロールバー2714と一緒に、荷重位置にまで下方へ動く。よって、デバイス2710を非荷重位置から荷重位置にまで動かすために要求される力の大きさは、コントロールアーム2714の屈曲剛性と、スロット2780内の弾性インサート2790の圧縮剛性との両方に応じて変化する。インサート2790の圧縮剛性は、スラット2781の屈曲剛性よりも小さいので、コントロールバー2714が、最高位のスラット2781Bから最低位のスラット2781Aまでの複数のスラット2781と同じ全体の厚さを有するものとした場合、コントロールバー2714は、もっと弱い力Fを受けただけでも屈曲し得る。
【0145】
履物2712は、ソール構造体2632と、柔軟なカバーを有する履物アッパー38を含む。足首の開口39の後方でアッパー38の後側部が踵ばねデバイス2710と一緒に動くように、踵ばねデバイス2710は、接着剤、縫合、熱接合又は他の手段を用いて、履物アッパー38の柔軟なカバーに結合されている。踵ばねデバイス2710はまた、それのベース2622の位置において、周囲の凹所2622A内に固定されたソール構造体2632のフランジ2632Aを介して、ソール構造体2632に固定されている。
【0146】
コントロールバー2714は、図62Aに示される非荷重位置にまで付勢されており、力Fを受けると、図62Bに示される荷重位置にまで弾性的に屈曲する。荷重位置においては、各中央セグメント2716は、非荷重位置にあったときよりもベース2622に接近する。このような動作は、アーム2718,2720が屈曲して位置エネルギを蓄え、加えられていた力Fが除かれたときに、その位置エネルギが使われてコントロールバー2714を非荷重位置にまで戻すことによる。コントロールバー2714とベース2622とが全体的に楕円形の形状の板ばねとして構成されている。スラット2781とベース2622は、ナイロン又は他の弾性的に屈曲可能な材料から形成され得る。
【0147】
図62Aは、非荷重位置(すなわち、非荷重位置)まで付勢されている。図62Bに示されるコントロールバー2714は、力F(履物内へ摺動する足の力など)を受けると荷重位置にまで弾性的に屈曲し、図61に示されるアッパー38の足首の開口39を、非荷重位置にあったときよりも拡大させる(アッパー38が踵領域においてコントロールバー2714と一緒に動くので)。力Fが加えられ、足首の開口39の後方のアッパー38を下げることによって足首の開口39が拡大し或いは少なくとも位置を変えるときに、足首の開口39の後方のアッパー38の踵領域が、スラット2781の中央セクション2716と一緒に動いてベース2622に近づき、非荷重位置にあるときよりも足首の開口39が後方へ下傾するので、後方から下方かつ前方へ足だけを動かして足を差し入れることによるアクセスが可能となる。
【0148】
スラット2781とベース2622は射出成形され得る。スラット2781とベース2622は、型成形された後には、単一のワンピースの構成要素である。発泡体インサート2790の材料はその後、型成形されたスラット2781とベース2622を含むモールドキャビティ内へ投入され得る。図66は、孔2794(そのうちのいくつかだけに参照符号が付されている)を示しており、この孔2794において、ピンがモールドの表面にスラット2781とベース2622を押しつけるように保持する一方で、インサート2790の材料が投入される。インサート2790は、スラット2781とベース2622との接続部付近におけるベース2622のリブ2795の周りに型形成される(図64において、インサート2790に形成されたスロット2796が示されている)。
【0149】
図67は、他の実施例における踵ばねデバイス2710Aを有する履物2712Aを示す。踵ばねデバイス2710Aは、ほぼすべての面において踵ばねデバイス2710と同じであるが、違いは、インサート2790が複数の突起2792Aを有し、これらの突起2792Aが外方へ延びてスラット2781の内側からスラット2781間のスロットを埋めるベローのように構成されていることである。スラット2781とベース2622は、半剛性ないし剛性の熱可塑性ポリウレタンから形成される一方で、突起2792Aを有するインサート2790は、スラット2781とベース2622よりも柔らかい熱可塑性ポリウレタンから形成され得る。
【0150】
図68は、他の実施例における踵ばねデバイス2810を有する履物2812を示す。履物2612と踵ばねデバイス2610に関して説明したのと同様の参照符号は、同様の構成要素を示している。踵ばねデバイス2810は、踵ばねデバイス2710と同じ機能を有するが、弾性のコルゲート状本体2815からなり、この本体2815は、中央セグメント2816、該中央セグメント2816から下方かつ前方へ延在する内側方サイドアーム2818(図69に最もよく示されている)、及び該中央セグメント2816から下方かつ前方へ延びている外側方サイドアーム2820(図68に最もよく示されている)を含む。コルゲート状本体2815は、内側方サイドアーム2818、中央セグメント2816、及び外側方サイドアーム2820の長さ方向に沿って交番する尾根2881と溝2880を含む。図70及び図71Aに示されるように、デバイス2810は内面の位置に、内側方と外側方を結ぶ方向と、垂直(鉛直)方向との両方向に延在する凹面を有する。
【0151】
図68図69図70及び図71Aに示されるように、コルゲート状本体2815は、非荷重位置にまで付勢されている。コルゲート状本体2815は、力Fを受けると、図71Bに示される荷重位置にまで圧縮される。荷重位置においては、コルゲート状本体2815が圧縮されて(例えば、折り畳まれることにより)、交番する尾根2881のうちの隣り合う尾根が非荷重位置にあるときよりも互いに接近して(特には中央セグメント2816において)、弾性エネルギを蓄え、加えられていた力Fが除かれると、その弾性エネルギが使われてコルゲート状本体2815が非荷重位置にまで戻される。この際に、踵ばねデバイス2810が非荷重位置にあるときよりも荷重位置にあるときに足首の開口39が後方へ向かって下傾するように、中央セグメント2816と一緒にアッパー38が動く。
【0152】
図68に示されるように、尾根2881Aと溝2880Aからなる第1のセットが内側方サイドアーム2818から外側方サイドアーム2820まで延在するとともに、尾根2881Bと溝2880Bからなる第2のセットが中央セグメント2816のみに沿って延在する。尾根と溝が足首の開口39の後方でアッパー38の輪郭をなぞるようにアッパー38全体に沿って延在する一方で、いくつかの溝と尾根(すなわち、第1のセット)が下方かつ前方へ延在し続けることを可能とするように、第1のセットと第2のセットが構成されている。
【0153】
図69を参照すると、デバイス2810は、中央セグメント2816の位置において、コルゲート状本体2815のアッパーのエッジ2825に沿って延在するアッパーフランジ2823を含み、内側方サイドアーム2818、中央セグメント2816、及び外側方サイドアーム2820の位置において、コルゲート状本体2815の下側エッジ2827に沿って延在する下側フランジ2822をさらに備える。
【0154】
下側フランジ2822は、ベースとも呼ばれる。図68に示されるように、ソール構造体2632は、接着剤、縫合、熱接合又は他の手段を用いて、下側フランジ2822に固定され、アッパー38と踵ばねデバイス2810の概ね下方に横たわっている。図69に最もよく示されるように、ベース2822の外面は、該ベース2822の下側エッジ2822Bから延びている周囲の凹所2822Aを有する。ソール構造体2632は、周囲の凹所2822A内に着座するように構成されたフランジ2632Aを有する。フランジ2632Aは、踵ばねデバイス2810を横断方向に支持する。
【0155】
図68のスティッチ(縫い目)2829によって示される足首の開口の後方に、アッパー38が縫合されている。代替的に、アッパーフランジ2823は、アッパー38に接着され、或いは熱接合される場合もある。踵ばねデバイス2810が上側フランジ2823を介してアッパー38に連結されていることにより、踵ばねデバイス2810と一緒に動くアッパー38は、荷重位置と非荷重位置との間で変化するように動くことが可能となる。
【0156】
尾根2881と溝2880からなるコルゲート状本体2815は、ベロー(蛇腹)とも呼ばれる。尾根2881はベローのプリーツであり、溝2880はベローのフォールドである。デバイス2810は、コルゲート状本体2815とフランジ2822,2823を含む単一のワンピース構成要素である。デバイス2810は、ゴム又は熱可塑性ポリウレタンのうちの少なくとも一方などの弾性変形可能な材料が射出成形されたものであるか、或いは弾性の発泡体(例えば、ポリマ発泡体材料等)から形成されたものであるが、これらの材料に限定されない。
【0157】
図72は、本発明の教示の範囲に含まれる、他の実施例における踵ばねデバイス2910を示す。踵ばねデバイス2710に関して説明したように、踵ばねデバイス2910は、互いに離間した複数のスラット2781と、ベース2622とを備え、図72に示される非荷重位置にまで付勢されているが、荷重を受けると応答して、荷重位置(図示せず)まで弾性的に屈曲する。踵ばねデバイス2710に関して説明したように、この屈曲は、アッパーの足首の開口が拡開することを支援し、ひいては履物に足を差し入れることを容易にする。踵ばねデバイス2910は、中央セグメント2716の一部のみに沿ってスロット2780内に配置された(例えば、サイドアームのスロット内にはない)別々の弾性インサート2990を含む。スロット2780内の所定の位置にインサート2990を保持するために、ストラップ2991が、インサート2990とスラット2781に接着され或いは別の手段を用いて接続されている。或いは、ストラップ2991は、弾性インサート2990と一体となった部分であり、弾性インサート2990が単一の構成要素として一体化されている。
【0158】
図73は、踵ばねデバイス3010の他の実施例を示す。踵ばねデバイス2710に関して説明したように、踵ばねデバイス3010は、互いに離間した複数のスラット2781と、ベース2622とを備えるとともに、図73に示される非荷重位置にまで付勢されているが、荷重位置(図示せず)まで弾性的に屈曲する。踵ばねデバイス2710に関して説明したように、この屈曲によって、アッパーの足首の開口が拡開し、足を差し入れ易くなる。踵ばねデバイス3010は、ベース2622と、複数のスラット2781のうちの1つ中間スラットとの間の楕円形のばねとして配置された一対の中間部スラット3083を備え、この一対の中間部スラット3083の各々がベース2622と中間スラット2781に接続されている。踵ばねデバイス3010もまた、最高位のスラットと、複数のスラットのうちの1つの中間スラットとの間の楕円形のばねとして配置された一対の中間部スラット3085を備え、この一対の中間部スラット3085の各々が、最高位のスラットと中間のスラットに接続されている。中間部スラット3083,3085は、屈曲に対して抵抗する力を大きくし、荷重が除かれたときに踵ばねデバイス3010を非荷重位置にまで戻すために蓄えられる弾性エネルギを増加させる。スラット2781と中間部スラット3083,3085とによるこのような配置は、「格子」とも呼ばれる。
【0159】
図74は、他の実施例における踵ばねデバイス3110を有する履物3112を示す。なお、履物2612及び踵ばねデバイス2610に関して説明したときと同様の参照符号は、同様の構成要素を示している。踵ばねデバイス3110は、踵ばねデバイス2610と同じ機能を有するが、中央セグメント3116、該中央セグメント3116から下方かつ前方へ延びている内側方サイドアーム3118(図75に示されている)、及び該中央セグメント3116から下方かつ前方へ延びている外側方サイドアーム3120を含む流体充填ブラダ(流体で満たされたブラダ)3115からなる。ソール構造体2632は、接着剤、熱接合又は他の手段を用いて、ブラダエレメント3115の下側フランジ3122に固定され、図74に示されるように、アッパー38と踵ばねデバイス3110の概ね下方に横たわっている。
【0160】
中央セグメント3116に下向きの力Fが加わることにより、ブラダエレメント3115が非荷重位置(図77)から荷重位置(図78)まで動く。なお、非荷重位置は「伸張した位置」とも呼ばれ、荷重位置は「畳まれた位置」ないし「圧縮位置」とも呼ばれる。中央セグメント3116は、コントロールバーとも呼ばれる。
【0161】
ブラダエレメント3115は、第1のポリマシート3117と第2のポリマシート3119(図76に最もよく示されており、それぞれ、内側シートと外側シート、又は内側層と外側層とも呼ばれる)から熱形成され得る。或いは、ブラダエレメント3115は、ポリマ材料のプリフォームからブロー(中空・吹き込み)成形され得る。或いは、ブラダエレメント3115は、所定の圧力の下で、空気、窒素又は他のガスなどの気体である流体を保持する種々のポリマ材料から形成され得る。本明細書における「流体」とは、空気、並びに窒素及び他のガスからなる不活性ガス等の気体を含む。従って、「流体で満たされた」との文言は、「気体で満たされた」の意味を含む。
【0162】
ブラダエレメント3115は、例えば、TPU(熱可塑性ウレタン)材料、ウレタン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステル・ポリウレタン、及び/又はポリエーテル・ポリウレタンであり得る。さらなる実施例においては、ブラダエレメント3115は、互いに異なる材料からなる層を有するシートから形成される場合もある。シート3117,3119は、熱可塑性ポリウレタンの層であって、1つ又は複数の第2の層と交互に延在する1つ又は複数の第1の層(本明細書においては、バリア層、ガスバリアポリマ、又はガスバリア層ともいう)を有する薄いフィルムからなる層状膜であり得る。Bonkらに付与された米国特許第6,082,025号明細書(これの全体が本願の参照となる)に開示されているように、第2の層は、当該層に含有されている圧縮流体を浸透させないエチレンとビニルアルコール(EVOH)のコポリマからなる場合がある。第1の層は、ポリマシートの外面を形成するように配置されている。すなわち、最外層の第1の層は、ブラダエレメント3115の外面であり得る。Mitchellらに付与された米国特許第5,713,141号明細書及び米国特許第5,952,065号明細書に開示されているように、ブラダエレメント3115は、交互に延在する熱可塑性ポリウレタンとエチレン-ビニルアルコール・コポリマの層を含む材料から形成され得る。或いは、これらの層は、エチレン-ビニルアルコール・コポリマ、熱可塑性ポリウレタン、及びエチレン-ビニルアルコール・コポリマと熱可塑性ポリウレタンの粉砕再生材料(リグラインド)を含む場合がある。シート3117,3119は、交互に配置された熱可塑性ウレタン(TPU)とガスバリア材料の層を有し得る。図示した実施例においては、シート3117,3119は透明である。
【0163】
シート3117,3119は互いに、ブラダエレメント3115の周囲(例えば、上側フランジ3123と下側フランジ3122など)において結合されており、これらのフランジは、ベースとも呼ばれる。下側フランジ3122は連続的なものであり、内側方サイドアーム3118、中央セグメント3116及び外側方サイドアーム3120に接続されてこれらを支持している。シート3117,3119はまた、様々な中間の結合箇所3124(ウェビングともいう)において、互いに結合されている。図74に示されるように、上側フランジ3123は、足首の開口39の後方でアッパー38に熱接合され、接着され、或いは他の手段を用いて固定されている。アッパー38は、上側フランジ3123と下側フランジ3122との間で第1のポリマシート3117の内面に固定されている場合もある。踵ばねデバイス3110が上側フランジ3123を介してアッパー38に接続されていることにより、踵ばねデバイス3110と一緒に動くアッパー38は、荷重位置と非荷重位置との間で変化するように動くことができる。詳しくは、踵ばねデバイス3110が非荷重位置にあるときよりも荷重位置にあるときに、足首の開口39が後方へ下傾するように、中央セグメント3116と一緒にアッパー38が動くことによって、手を使うことなく足を差し入れることが可能となる。
【0164】
結合されたシート3117,3119によって、様々な流体で満たされた内側キャビティ3181A,3181B,3181C,3183A,3183Bが形成され、これらのキャビティは、水密につくられており、圧縮され或いは圧縮解除される。図示した実施例においては、流体で満たされた内側キャビティ3181A,3181B,3181C,3183A及び3183Bは、該流体で満たされたキャビティが封止された時の周囲の圧力のままとなる。或いは、流体で満たされた内側キャビティ3181A,3181B,3181C,3183A及び3183Bは、1つ又は複数の注入ポート(図示せず)を通してこれらのキャビティ内へ導入されその後封止される流体によって加圧される場合もある。
【0165】
図示した実施例においては、流体で満たされた内側キャビティ3181A,3181B,3181Cの各々が、概ね管状の形状に形成されており、内側方サイドアーム3118、中央セグメント3116及び外側方セグメント3120に沿って長さ方向に延びている。いくつかの実施例においては、キャビティ3181A,3181B,3181Cだけが中央セグメント3116に沿って延在する。以下、キャビティ3181A,3181B,3181Cのことを長細いキャビティ又は管状キャビティともいう。或いは、他の形状に形成された流体充填キャビティが、中央セグメント3116に沿って延在するとともに、内側方サイドアームと外側方サイドアームの一方又は両方に沿って延在する場合もある。例えば、キャビティ3181A,3181B,3181Cよりも短い管状の形状又は他の形状に形成された複数の別々のキャビティが、中央セグメント3116に沿って延在する場合もあれば、シートから形成されたチャネルを介して互いに流体的に連通するように接続されている場合もある。
【0166】
管状キャビティ3181A,3181B,3181Cは、流体で満たされた内側キャビティ3183A及び3183B(内側方溜桝3183Aと外側方溜桝3183Bともいう)と流体的に連通するように接続されている。このように管状キャビティ3181A,3181B,3181Cは互いに非直接的に、溜桝3183A,3183Bを介して流体的に連通している。いくつかの実施例においては、管状キャビティ3181A,3181B,3181Cが互いに直接的に流体的に連通するように、管状キャビティ3181A,3181B,3181Cのうちの隣り合うキャビティ間を直接結ぶように延びているチャネルが設けられる場合もある。いくつかの実施例においては、溜桝3183A,3183Bのうちの一方だけが設けられる場合もあれば、1つも溜桝が設けられることなく、溜桝を有しないサイドアーム上で管状キャビティ3181A,3181B,3181Cが単に終端している場合もある。さらに他の実施例においては、管状キャビティの各々は、それ自身の個別の溜桝をサイドアームの一方又は両方に有する場合がある。溜桝3183A,3183Bは、管状キャビティ3181A,3181B,3181Cの内側方の先端及び外側方の先端において第1のポリマシート3117及び第2のポリマシート3119で形成されている。図74及び図75から明らかなように、デバイス3110は、第1のポリマシートの内面において、内側方と外側方を結ぶ方向と、垂直(鉛直)方向との両方向に延在する凹面を有する。
【0167】
内側キャビティ3181A,3181B,3181C,3183A,3183Bを有する形成済みのシート3117,3119は、図74図77に示される非荷重位置にまで踵ばねデバイス3110を付勢している。踵ばねデバイス3110は、応力Fを受けると、図78に示される荷重位置にまで圧縮され、弾性エネルギを蓄える。例えば、応力Fは、履物3112の足首の開口39内へ足を差し入れるときの足の力であり得る。中央セグメント3116の天部が非荷重位置よりも荷重位置において、フランジ3122に接近するように、荷重位置において、管状キャビティ3181A,3181B,3181Cの中央セグメント3116のほぼ一面に力Fが加わったときに、ブラダエレメント3115は弾性変形する。
【0168】
流体で満たされた内側キャビティ3181A,3181B,3181C内の流体のいくらかは、管状キャビティ3181A,3181B,3181Cが圧縮されたときに、溜桝3183A,3183Bへ移され、(図78の溜桝3183Aに示されているように)該溜桝を外方へ膨らませる。加えられていた力Fが除かれると、移されていた流体が溜桝3183A,3183Bから管状キャビティ3181A,3181B,3181Cへ戻るので、弾性変形していたブラダエレメント3115が図77に示した非荷重位置にまで戻る。これにより、管状キャビティ3181A,3181B,3181Cが膨張して元の形状に戻る一方で、溜桝3183A,3183Bの寸法が縮小して元の形状に戻る。
【0169】
図79は、図80図82に示される履物3212用の踵ばねデバイス3210の他の実施例を示す。踵ばねデバイス3210は、踵ばねデバイス10と同じ機能と特徴を有する。例えば、デバイス3210は、内側方サイドアーム18と外側方サイドアーム20を有するコントロールバー14を備える。デバイス3210は連続的なベース22を備え、この連続的なベース22は、両側方のサイドアーム18,20を繋ぐとともに、コントロールバー14と該ベース22との接続部から後方へ延在する。ベース22がコントロールバー14の下方に横たわっているとともに、第1のサイドアーム18が履物38の内側方41にあり、第2のサイドアーム20が履物38の外側方43にあり、さらには、コントロールバー14の中央セグメント16が履物38の足首の開口39の後方にある。
【0170】
ベース22は、弾性的に屈曲可能な関節部3324A,3324Bにおいてコントロールバー14に接続され、コントロールバー14を支持している。ベース22は、連続的なものとして形成されており、第1のサイドアーム18と第2のサイドアーム20とを繋いでこれらの間に延在する。ベース22は、第1のサイドアーム18から第2のサイドアーム20まで延びる途中で途切れていないという意味において、或いは他の構成要素を介して接続してはいないという意味において、連続的なものである。図3のデバイス10に関して説明したように、ベース22は、共通平面上に配置された中央セグメント26、第1のベースアーム28及び第2のベースアーム30を有する。第1のベースアーム28は第2のベースアーム30から離間しており、両方ともにベース22の中央セグメント26から延在する。
【0171】
関節部3224A,3224Bは、ベース22と第1のサイドアーム18とが接続する第1の関節部3224Aを含むとともに、ベース22と第2のサイドアーム20とが接続する第2の関節部3224Bを含む。第1の関節部3224Aは、第1のベースアーム28から第1のサイドアーム18までを繋ぐものである。第2の関節部3224Bは、第2雄ベース30から第2のサイドアーム20までを繋ぐものである。本明細書において、関節部3224A,3224Bは、ヒンジ式関節部又はヒンジ式接続部とも呼ばれる。
【0172】
コントロールバー14が、第1の関節部3224Aから第2の関節部3224Bまで円弧状の形状に形成されている。同様に、ベース22が、第1の関節部3224Aから第2の関節部3224Bまで円弧状の形状に形成されている。この構成においては、上述したように、コントロールバー14とベース22とが全体的に楕円形の形状の板として構成されている。デバイス3210は踵ばねとも呼ばれる。加えて、デバイス3210は、単一のワンピースの構成要素である。例えば、デバイス3210は、単一のワンピースの構成要素として射出成形される。
【0173】
コントロールバー14の中央セグメント16は、第1のサイドアーム18と第2のサイドアーム20との間で中央セグメント16の内周縁へ向かって下降している傾斜面50を有し、これは、デバイス10に関して説明したように、コントロールバー16に下向きの力が加わっているときに下方かつ前方の足受けキャビティ47内へ足を導くことに寄与する。加えて、第1のサイドアーム18と第2のサイドアーム20とは互いに、それぞれの長手方向軸に沿ってベース22付近の関節部3224A,3224Bからコントロールバー14の中央セグメント16までにかけて外方へ捩れている。外方へ捩れていることにより、足から荷重を受けたときに、中央セグメント16が下側後方へ動くように促される。
【0174】
履物3212は、ソール構造体3232を含み、柔軟な履物アッパー38は、履物12に関して説明したように、内側方41と外側方43を有するとともに、足首の開口39と足受けキャビティ47を画定する。ソール構造体3232は、1つ又は複数のソール構成要素を含み、該ソール構成要素は、アウトソール、ミッドソール、又はアウトソールとミッドソールとの単一の組合せ(ユニソールともいう)などからなるソール層であり得る。ソール層3234は、アッパー38と、該アッパー38によって画定された足受けキャビティ47との下に延在する。足受けアッパー38の低位部40は、接着剤や他の手段を用いてソール構造体3234に固定されている。ベース22は、接着剤、熱結合や他の手段を用いてソール層3234に固定されている。
【0175】
図83に最もよく示されているように、ソール層3234は、該ソール層3234の外壁3217(つまり、ソール層3234の踵領域における外方の側壁と後方の壁)に僅かな凹所3219を有する。この凹所3219は、ベース22と関節部3224A,3224Bの一部が凹所3219内へ入れ子状に収容されることを可能にする形状に形成されている。凹所3219内に入れ子状に収容されたベース22と関節部3224A,3224Bの一部が、凹所3219内において、ソール層3234の外壁3217に固定される。こうしてデバイス3210は、凹所3219内においてソール層3234に支持される。
【0176】
コントロールバー14は、図80及び図82に示される非荷重位置にまで付勢されている。非荷重位置は、本明細書においては、力を受けない位置とも呼ばれる。コントロールバー14は、形成済み状態の材料自体の付勢力によって非荷重位置にまで付勢されている。換言すれば、コントロールバー14の材料は外界から荷重を受けることなく自然な状態で非荷重位置にあり続けるほど充分に剛性があり、弾性的に屈曲してもそれ自体の弾性力によって非荷重位置にまで戻る。非荷重位置においては、中央セグメント16は、ベース22の中央セグメント26の底から第1の距離D1にあり、この第1の距離D1は、図80において、コントロールバー14の中央セグメント16の天部からベース22の中央セグメント26の底までの距離D1として示されている。非荷重位置とは、弛緩した、荷重を受けていない(すなわち、コントロールバー14が垂直方向の力を受けていない)状態の位置である。履物3212の足受けキャビティ47(図5及び図6を参照)内へ足を差し入れるときの足の力を示している図80に示されるように、コントロールバー14は、力Fを受けると押し下げられ得るものである。コントロールバー14はこのように荷重を受けると、弾性的に屈曲して荷重位置になり、この荷重位置においては、中央セグメント16の天部がベース22の中央セグメント26の底から第2の距離D2だけ離れている。荷重位置におけるコントロールバー14と中央セグメント16が破線で示されている図80において、中央セグメントは参照符号16Aで示されている。第2の距離D2は、第1の距離D1よりも短い。距離D1と距離Dとの差は、デバイス3210の撓みによるものであり、30mmの撓みであり得るが、この寸法に限定されない。デバイス3210は、力Fを受けて荷重位置D2にまで押し下げられるときに、関節部3224A,3224Bの位置で弾性的に屈曲して弾性エネルギを蓄えるように、構成されている。力Fが除かれると、蓄えられた弾性エネルギが使われてコントロールバー14が非荷重位置にまで戻される。デバイス10と同様に、第1のサイドアーム18と第2のサイドアーム20は、コントロールバー14が非荷重位置にあるときに、ベース22の共通平面Pに対して第1の鋭角A1をなすように延在する。コントロールバー14が押し下げられているときには、第1のサイドアーム18と第2のサイドアーム20は、ベース22の共通平面Pに対して第2の鋭角をなす方向に延在する。この第2の鋭角A2は、第1の鋭角よりも小さい。
【0177】
図82に最もよく示されているように、ベース22は、履物アッパー38の最後部の周りに沿って外側方43から内側方41まで延在する。図82に示されるように、デバイス3210は、内側方41においても外側方43においてもアッパー38に固定されていない。デバイス3210は、中央セグメント16に形成された孔3245を貫通している踵タブ3249を介してアッパー38に固定されているだけである。そしてタブ3249は、アッパー38の後側部3247のスティッチ(縫い目)3241に縫い付けられている。このタブ3249に、装飾済みの留め金3243が固定され得る。しかし、図示した実施例においては、装飾済みの留め金3243は単なる装飾であり、つまりアッパー38に留められていないし固定もされていない。
【0178】
図84に最もよく示されている内側方サイドアーム18と外側方サイドアーム20は、内側方サイドアーム18と外側方サイドアーム20との間でベース22を貫くように延びている長手方向軸Lに関して非対称の関係にある。本明細書において、内側方サイドアーム18のことを第1のサイドアームともいい、外側方サイドアーム20のことを第2のサイドアームともいう。典型的な足の踵領域の形状と同様に、内側方サイドアーム18は、外側方サイドアーム20よりも短く、外側方サイドアームの曲率よりも外側方へ大きな曲率の曲線を描いている。踵デバイス3210が、典型的な足の形状に沿ってこのように非対称の形状に形成されていることにより、履いているときに足の両側方に加わる踵デバイス3210の圧力が最小限に抑えられる。
【0179】
図85及び図86は、踵ばねデバイス10,3210と同じ特徴部を多く有する踵ばねデバイス3310の他の実施例を示す図であり、同様の参照符号は同様の特徴部を示している。これに加え、ベース22は内方へ延在するフランジ3221を有し、このフランジ3221は、概ねU字形の形状を描くように、内側方ベースサイドアーム28から中央セグメント26の周りに沿って外側方ベースサイドアーム30まで連続的に延在している。
【0180】
図87を参照すると、踵ばねデバイス3310は、アッパー38とソール構造体3332を有する履物3312に含まれている。踵ばねデバイス10に関して説明したアッパー38は、図87において破線だけで示されている。ソール構造体3332はアウトソール層3334を含み、このアウトソール層3334は、一体的なアウトソール及びミッドソールとして提供され得る。ソール構造体3332はまた、ソール層3334の上方を覆う内側ソール層(インソールともいう)3345を含む。図89においては、内側ソール層3345が省略されてソール層3334だけが示されている。ソール層3334は、上面3347内に凹所3349を有する。凹所3349の形状は、フランジ3221の少なくとも一部がこの凹所3349内に着座して入れ子状に収容され該フランジ3221がソール構造体3332の踵領域においてアッパーの表面3347に固定され得るような形状に形成されている。図90は、凹所3349内に着座しているフランジ3221を示す。踵ばねデバイス3310は、熱接合、接着剤又は他の手段を用いて凹所3349内のソール層334のアッパー面3347にフランジ3221が固定されることにより、ソール層3334に固定されている。そして、内側ソール層3345は、アッパー38内へ挿入され、フランジ3221を覆うようにソール層3334上に位置するように、ソール層3334の天面3347に配置される。
【0181】
図90に最もよく示されるように、踵ばねデバイス3310は長手方向軸Lに関して非対称の形状に形成されている。詳しくは、内側方サイドアーム18は、外側方サイドアーム20よりも外側方へ大きく湾曲しており、また外側方サイドアーム20よりも前後方向(長手方向軸Lに沿った方向)に長く延びている。踵ばねデバイス3210に関して説明したように、この形状は、対称的な形状の踵ばねデバイスとするよりも生体学的に正しく、足と密着したサイドアーム18,20からの望ましくない摩擦力や圧力を回避できる形状である。
【0182】
踵ばねデバイス3310は、サイドアーム18,20の最前部において、中央セグメント16の孔3245を貫通している踵タブを介してアッパー38(図87において破線で示されているアッパー38を参照)に固定されるように構成されている。詳しくは、第1のサイドアーム18が内側方の凹所3374の後方においてよりも内側方の凹所3374において薄くなるように、第1のサイドアーム18の内面3373の最前部3371が内側方凹所3374を含む。第2のサイドアーム20が外側方の凹所3376の後方の位置よりも外側方の凹所3376の位置において薄くなるように、第2のサイドアーム20の内面3377の最前部3375が外側方凹所3376を含む。アッパー38は、内側方凹所3374において第1のサイドアーム18に固定されるとともに、外側方凹所3376において第2のサイドアーム20に固定され得る。例えば、アッパー38は、凹所3374,3376において、サイドアーム18,20に結合され得る。いくつかの実施例においては、図88に示されるように、アッパーは、内側部38Bと外側部38Aを含む。そのような実施例においては、外側部38Aは、後方へ延在するフランジ38Cを含み、このフランジ38Cは、該外側部38Aの前方へ延在する部分よりも薄くつくられている。フランジ38Cは、凹所3374,3376内でサイドアーム18,20の内面3373,3377にフィットして固定される。外側部38Aは、内側部38Bよりも曲がりが小さいため、仮に内側部38Bを用いるとした場合よりも、アーム18,20の位置でデバイス3310をしっかり支持する。
【0183】
最前部3371,3375においてアッパー38(又は外側部38A)をしっかり固定することに加え、アッパー38は、踵タブ3249(図87及び図91を参照)を介して、踵ばねデバイス3310に固定され得る。踵タブ3249は、中央セグメント16に形成された孔3245を貫通している。タブ3249は、孔3245に通されてから、ループ状に折り畳まれ、図92に示されるように、縫製部3285の位置で縫い付けられている。そして、タブ3249でつくられたループの開口3281内にピン3283が通される。このピン3283は、開口3281内へ接着剤を注入するなどの処置で、孔3245の後方の開口3281内においてタブ3249に固定され得る。ピン3283を有するタブ3249は、孔3245よりも幅広になり得る。例えば、ピン3283の幅3286(図91を参照)の方が、孔3245の幅3287よりも広い。ループ状のタブ3249にピン3283が挿入されていることにより、孔3245を通過しているタブ3249が引っ張られた後にも、ピン3283によって、孔3245を通過した所定の位置にタブ3249が留められるように、アッパー38がタブ3249を介してデバイス3310に固定される。こうして、タブ3249はピン3283で、中央セグメント16にしっかり固定されている。
【0184】
図93及び図94は、踵ばねデバイス10,3210と同じ特徴部を多く有する踵ばねデバイス3410を示す図であり、同様の参照符号は同様の特徴部を示す。デバイス3410は、コントロールバー14から横断方向外側へ延在するレバー3489を含む。レバー3489は棚延出部や棚部とも呼ばれる。レバー3489の一部が、内側方サイドアーム18に沿うとともに、中央セグメント16に沿って配置されている。本開示の範囲内において、レバー3489は、コントロールバー14に沿った様々な位置に配置され得る。レバー3489は上方を向いている面3491を有し、この面3491は、図80の中央セグメント16に加わる力Fに関して説明したのと同様に、下方へ押し下げられ得る。レバー3489を押し下げることによって、非荷重位置から荷重を受ける位置にまでコントロールバー14を押し下げることが容易となる。滑りにくい面3491とするために、面3491に窪んだ溝3493が形成されており、レバー3489を押し下げるときに面3491が掴み易いものとされている。図94は、ソール層3434とアッパー38に固定されたデバイス3410を含む履物3412の背面図である。
【0185】
本明細書において示される踵ばねデバイスの様々な実施例は、履物に足を差し入れ易く、すなわち手を使うことなく履物を履くことを可能とするものである。
【0186】
以下の項目は、本願における履物、デバイス及び履物アッパーの構成を例示する。
【0187】
項目1:履物の踵領域において足受けキャビティの一部を取り囲むように構成されたデバイスが、中央セグメント、該中央セグメントから延びている第1のサイドアーム、及び第1のサイドアームから離間して配置され該中央セグメントから延びている第2のサイドアームを有するコントロールバーと、第1のサイドアームと第2のサイドアームの両方に接続され、コントロールバーを支持している連続的なベースと、を備え、コントロールバーが負荷のない非荷重位置にまで付勢されているときには、中央セグメントはベースから第1の距離だけ離れているが、コントロールバーが力を受けて弾性変形し、荷重位置にあるときに、中央セグメントは第1の距離よりも短い第2の距離だけベースから離れて、該デバイスは力学的エネルギを蓄え、受けていた荷重が除かれると、その力学的エネルギが使われてコントロールバーが非荷重位置にまで戻されるように構成されていることを特徴とする。
【0188】
項目2:ベースは、第1の関節部において第1のサイドアームに接続されている一方で、第2の関節部において第2のサイドアームに接続されていることを特徴とする、項目1に記載のデバイス。
【0189】
項目3:コントロールバーは、第1の関節部から第2の関節部までにかけてアーチ状の形状に形成されており、ベース部は、第1の関節部から第2の関節部までにかけてアーチ状の形状に形成されており、コントロールバーとベースとが全体的に楕円形の形状の板ばねとして構成されていることを特徴とする、項目2に記載のデバイス。
【0190】
項目4:ベースは、共通平面に配置された中央セグメント、第1のベースアーム及び第2のベースアームを有し、第1のベースアームは第2のベースアームから離間しており、これらの両方がベースの中央セグメントから延在し、第1のベースアームと第1のサイドアームとが第1の関節部で接続されている一方で、第2のベースアームと第2のサイドアームとが第2の関節部で接続されており、コントロールバーが荷重位置にないときには、第1のサイドアームと第2のサイドアームはベースの共通平面に対して第1の鋭角をなす方向に延在するが、コントロールバーが荷重位置にあるときに、第1のサイドアームと第2のサイドアームはベースの共通平面に対して、第1の鋭角よりも小さい第2の鋭角をなす方向に延在することを特徴とする、項目2又は項目3に記載のデバイス。
【0191】
項目5:コントロールバーの中央セグメントは、第1のサイドアームと第2のサイドアームとの間で中央セグメントの内周縁へ向かって下降している傾斜面を有することを特徴とする、項目1~4のいずれかに記載のデバイス。
【0192】
項目6:第1のアームと第2のアームの各々がそれぞれの長手方向軸に沿ってベースからコントロールバーの中央セグメントまでにかけて外方へ捩れていることを特徴とする、項目1~5のいずれかに記載のデバイス。
【0193】
項目7:第1のサイドアームと第2のサイドアームとは、ベースを貫くように第1のサイドアームと第2のサイドアームとの間に延びている長手向軸に関して非対称の関係にあることを特徴とする、項目1~6のいずれかに記載のデバイス。
【0194】
項目8:ベースは、内方へ延びているフランジを有することを特徴とする、項目1~7のいずれかに記載のデバイス。
【0195】
項目9:踵領域に形成された凹所を有する足受け面を有する履物ソール構造体と組み合わされており、フランジは、凹所内に着座して足受け面に固定されていることを特徴とする、項目8に記載のデバイス。
【0196】
項目10:踵領域に形成された凹所を有する外壁を有する履物ソール構造体との組合わせで用いられる項目1~7のいずれかに記載のデバイスであって、該デバイスのベースの少なくとも一部が凹所内に入れ子状に収容され、ソール構造体の外壁に固定されていることを特徴とする、デバイス。
【0197】
項目11:足首の開口の少なくとも一部を画定する履物アッパーとの組合せで用いられる項目1~10のいずれかに記載のデバイスであって、第1のサイドアームが履物アッパーの内側方にあり、第2のサイドアームが履物アッパーの外側方にあり、さらにはコントロールバーの中央セグメントが足首の開口の後方にあるとともに、ベースは、コントロールバーの下方に横たわっていることを特徴とする、デバイス。
【0198】
項目12:第1のサイドアームの内面の最前部が内側方の凹所を含み、該内側方の凹所の後方においてよりも該内側方の凹所において、第1のサイドアームが薄くつくられている一方で、第2のサイドアームの内面の最前部が外側方の凹所を含み、該外側方の凹所の後方においてよりも該外側方の凹所において、第2のサイドアームが薄くつくられており、アッパーは、外側方の凹所において第2のサイドアームに固定されて内側方の凹所において第1のサイドアームの固定されていることを特徴とする、項目11に記載のデバイス。
【0199】
項目13:中央セグメントは孔を有し、履物アッパーは孔を貫くように延在するタブを含むことを特徴とする、項目1~12のいずれかに記載のデバイス。
【0200】
項目14:タブは、履物アッパーの後側部に固定されていることを特徴とする、項目13に記載のデバイス。
【0201】
項目15:孔の後方で上記タブに固定されたピンをさらに備え、このピンを介して上記タブが上記中央セグメントに固定されるように、ピン付きのタブの幅が孔の幅よりも幅広となっていることを特徴とする、項目13に記載のデバイス。
【0202】
項目16:コントロールバーから外方へ延在するレバーをさらに備える、項目1~15のいずれかに記載のデバイス。
【0203】
項目17:第1のサイドアームと第2のサイドアームの各々に少なくとも1つのスロットが貫通するように形成されていることを特徴とする、項目1~16のいずれかに記載のデバイス。
【0204】
項目18:コントロールバーは、第1のサイドアーム、中央セグメント及び第2のサイドアームに沿って各々が延在する一連のスラットを含み、少なくとも1つのスロットは一連のスロットであり、該一連のスロットの各スロットが第1のサイドアーム、中央セグメント及び第2のサイドアームに沿って延在し、スラットの隣接し合うスラット間に配置されていることを特徴とする、項目17に記載のデバイス。
【0205】
項目19:該デバイスは、流体で満たされた1つ又は複数の内側キャビティを含むブラダエレメントを備える、項目1~16のいずれかに記載のデバイス。
【0206】
項目20:流体で満たされた1つ又は複数の内側キャビティは、中央セグメントに沿って延在するキャビティと、第1のサイドアームと第2のサイドアームのうちの一方又は両方の位置に配置され、中央セグメントに沿って延在するキャビティと流体的に連通する1つ又は複数の溜桝と、を含み、踵ばねデバイスが力を受けて弾性変形するときに、中央セグメントに沿って延在するキャビティから流体が移動して1つ又は複数の溜桝が膨張することを特徴とする、項目19に記載のデバイス。
【0207】
項目21:コントロールバーが荷重位置にあるときに、第1のサイドアームと第2のサイドアームが互いに遠ざかるように湾曲することを特徴とする、項目1~18のいずれかに記載のデバイス。
【0208】
項目22:コントローバー及びベースのうちの一方が、該コントロールバー及びベースのうちの他方へ向けて延びている延出部を有し、コントロールバーが非荷重位置にあるときに、延出部は、コントロールバー及びベースのうちの他方から離間しているが、コントロールバーが荷重位置にあるときに、延出部は、コントロールバー及びベースのうちの他方と接触して該コントロールバーがさらに押し下げられないように制限することを特徴とする、項目1~18のいずれかに記載のデバイス。
【0209】
項目23:延出部は、コントロールバーの中央セグメントからベースへ向かって延在し、ベースは凹所を有し、コントロールバーが非荷重位置にあるときに、延出部はベースから離間しているが、コントロールバーが荷重位置にあるときに、延出部は凹所内へ突出していることを特徴とする請求項、項目22に記載のデバイス。
【0210】
項目24:コントロールバーが履物アッパー内へ埋められていることを特徴とする項目11に記載のデバイス。
【0211】
項目25:ベースは、履物アッパーの内側方に隣接した足受けボイドの下方に横たわっている前方へ延出する突起と、履物アッパーの外側方に沿って足受けボイドの下方に横たわり後方へ延出する突起とを有することを特徴とする項目11に記載のデバイス。
【0212】
項目26:ベースは、第1のサイドアームと第2のサイドアームの最前部分と繋がっていることを特徴とする項目1の記載のデバイス。
【0213】
項目27:ベースは、コントロールバーから後方へ延在することを特徴とする項目1に記載のデバイス。
【0214】
項目28:ベースは、コントロールバーから前方へ延在することを特徴とする項目1に記載のデバイス。
【0215】
項目29:ベースは、履物のソール構造体であることを特徴とする項目1に記載のデバイス。
【0216】
項目30:ベースは、柔軟な履物アッパーであることを特徴とする項目1に記載のデバイス。
【0217】
項目31:デバイスは、単一のワンピースの構成要素であることを特徴とする項目1~30のいずれかに記載のデバイス。
【0218】
項目32:履物内へ足を差し入れ易くするデバイスが、履物の踵領域において足受けキャビティの部分を取り囲むように構成されており、コントロールバーと、該コントロールバーの下方に横たわっているベースとを備え、コントロールバーは一連のスラットを含み、各スラットが中央セグメント、該中央セグメントからベースの内側方に接続された内側方端部まで延びている内側方サイドアーム、及び該中央セグメントからベースの外側方に接続された外側方端部まで延びている外側方サイドアームを有し、コントロールバーは非荷重位置にまで付勢されていて、力を加えられたときに弾性的に曲がって荷重位置になり、この荷重位置においては少なくとも1つの中央セグメントが、非荷重位置にあったときよりもベースに近づき、位置エネルギを蓄え、受けていた荷重が除かれると位置エネルギが使われてコントロールバーが非荷重位置にまで戻されるように構成されていることを特徴とする。
【0219】
項目33:コントロールバーが全体的に楕円形の形状の板バネとして構成されていることを特徴とする項目32に記載のデバイス。
【0220】
項目34:コントロールバーは、スラット間に延びている複数のスロットを画定し、各スラットは、コントロールバーが非荷重位置にあるときにスロットを隔てて互いに離間している一方で、荷重位置にあるときにスラット間の1つ又は複数のスロットが閉じると、1つ又は複数の隣り合う中央セグメントが互いに接触することを特徴とする項目32又は項目33に記載のデバイス。
【0221】
項目35:複数のスラットは互いに平行に延在し、非荷重位置にあるときに、各スラットの外側が互いに面一であることを特徴とする項目34に記載のデバイス。
【0222】
項目36:中央セグメントから最も遠くにある最高位のスラットと比較して、中央セグメントにおけるベースと最も近くにある最低位のスラットの方が、内側方端部から外側方端部までの長さが短く、さらには最低位のスラットの方が最高位のスラットよりも薄くつくられていることを特徴とする項目32~35のいずれかに記載のデバイス。
【0223】
項目37:複数のスラットのうちの最低位のスラットは、中央セグメントの下側エッジから延びているタブを有することを特徴とする項目32~36のいずれかに記載のデバイス。
【0224】
項目38:ベースの外面が、ベースの下側エッジから延びている周縁凹所を有することを特徴とする項目32~37のいずれかに記載のデバイス。
【0225】
項目39:少なくともスロットの一部を埋めている弾性インサートをさらに備える、項目32~38のいずれかに記載のデバイス。
【0226】
項目40:弾性インサートは、スラットの内側に沿って延在するスリーブと、該スリーブからスロット内まで延在しかつ互いに離間した複数の突起と、を含むことを特徴とする項目39に記載のデバイス。
【0227】
項目41:弾性インサートは、スラットの内側方からスラット間の外方へ延在するベローのように構成されていることを特徴とする項目39に記載のデバイス。
【0228】
項目42:弾性インサートは、ゴム及び熱可塑性ポリウレタンのうちの少なくとも一方を含むることを特徴とする、項目39~41のいずれかに記載のデバイス。
【0229】
項目43:履物を履くときに足を差し入れ易くするデバイスが、履物の踵領域で足受けキャビティの一部を取り囲むように構成されており、該デバイスは、中央セグメント、該中央セグメントから前方へ延びている内側方サイドアーム、及び該中央セグメントから前方へ延びている外側方サイドアームを含む弾性のコルゲート状本体部を備え、コルゲート状本体部は、内側方サイドアーム、中央セグメント、及び外側方サイドアームの長さ方向に沿って交番する尾根と溝を含み、コルゲート状本体部は非荷重位置にまで付勢されているが、力を受けると、圧縮されて荷重位置になり、非荷重位置にあるときよりも荷重位置において、交互の尾根と溝のうちの1つ又は複数の隣り合うものが互いに接近して弾性エネルギを蓄え、荷重が除かれると、その弾性エネルギが使われてコルゲート状本体部が非荷重位置にまで戻されるように構成されていることを特徴とする。
【0230】
項目44:コルゲート状本体部はベローを備え、尾根はベローのプリーツであり、溝はベローのフォールドであることを特徴とする、項目43に記載のデバイス。
【0231】
項目45:尾根と溝からなる第1のセットが内側方サイドアームから外側方サイドアームまで延在する一方で、尾根と溝からなる第2のセットが中央セグメントのみから延在することを特徴とする、項目44に記載のデバイス。
【0232】
項目46:中央セグメントの位置においてコルゲート状本体部の上側エッジに沿って延在する上側フランジをさらに備えることを特徴とする、項目43~45に記載のデバイス。
【0233】
項目47:内側方アーム、中央セグメント及び外側方アームの位置においてコルゲート状本体部の下側エッジに沿って延在する下側フランジをさらに備える、項目43~46のいずれかに記載のデバイス。
【0234】
項目48:コルゲート状本体部は、ゴム及び熱可塑性ポリウレタンのうちの少なくとも一方であることを特徴とする、項目43~47のいずれかに記載のデバイス。
【0235】
項目49:履物が、少なくとも足首の開口の一部を画定するアッパーと、該アッパーに固定されて該アッパーの下方に横たわっているソール構造体と、踵ばねデバイスとを備え、踵ばねデバイスは、足首の開口の後方のアッパーに固定された中央セグメントと、該中央セグメントから下方かつ前方へ延びている内側方サイドアームと、該中央セグメントから下方かつ前方へ延びている外側方サイドアームと、内側方サイドアームと外側方サイドアームの両方に接続されたベースとを備え、ベースはソール構造体に固定されており、中央セグメントは非荷重位置にまで付勢されているが、踵ばねデバイスが力を受けると、踵ばねデバイスが弾性変形して荷重位置となり、中央セグメントは非荷重位置にあるときよりも荷重位置においてベースに接近して、踵ばねデバイスが弾性エネルギを蓄え、受けていた荷重が除かれると、その弾性エネルギが使われて中央セグメントが非荷重位置にまで戻され、このとき、中央セグメントと一緒に動くアッパーが、中央セグメントが非荷重位置にあるときよりも荷重位置にあるときに足首の開口がソール構造体に接近するように、動くことを特徴とする。
【0236】
項目50:ソール構造体はミッドソールを含み、ベースの一部がミッドソール内へ凹んでいることを特徴とする、項目49に記載の履物。
【0237】
項目51:内側方サイドアームはアッパーの内側方に固定されている一方で、外側方サイドアームはアッパーの外側方に固定されていることを特徴とする、項目49又は項目50に記載の履物。
【0238】
項目52:中央セグメントが荷重位置にあるときに、内側方サイドアームと外側方サイドアームが互いに遠ざかるように横方向外側へ湾曲し、足首の開口が拡大することを特徴とする、項目51に記載の履物。
【0239】
項目53:非荷重位置において中央セグメントはベースから離間しており、該デバイスは、内側方サイドアームとベースとの接続部の後方において、かつ外側方サイドアームとベースとの間の接続部の後方において、中央セグメントとベースとの間に剛性の踵カウンタの存在を不要としていることを特徴とする、項目49~52のいずれかに記載の履物。
【0240】
項目54:内側方サイドアームと外側方サイドアームの各々がそれぞれの長手方向軸に沿ってベースから中央セグメントまでにかけて外方へ捩れていることを特徴とする、項目49~53のいずれかい記載の履物。
【0241】
項目55:中央セグメント及びベースのうちの一方の少なくとも一部が、中央セグメント及びベースのうちの他方へ向けて延在する延出部を有し、中央セグメントが非荷重位置にあるときに、延出部が、中央セグメント及びベースのうちの他方から離れていることを特徴とする、項目49~54のいずれかに記載の履物。
【0242】
項目56:延出部の少なくとも一部が、中央セグメントからベースへ向けて延在し、ベースは凹所を有し、延出部は、中央セグメントが非荷重位置にあるときにベースから離れている一方で、中央セグメントが荷重位置にあるときに凹所内へ突出していることを特徴とする、項目55に記載の履物。
【0243】
項目57:延出部の少なくとも一部が中央セグメントからベースへ向けて延在しており、アッパーに固定されている近端部と、ポケットを有する遠位端を有するストラップをさらに備え、該ストラップが中央セグメントを覆うように横たわっているとともに、延出部は、ポケット内に配置されていることを特徴とする、項目55に記載の履物。
【0244】
項目58:ベースの外面が、該ベースの下側エッジから延びている周縁凹所を有し、ソール構造体は、周縁凹所に着座したフランジを有することを特徴とする、項目49~57のいずれかに記載の履物。
【0245】
項目59:中央セグメントは、内側方サイドアームと外側方サイドアームとの間で中央セグメントの内周縁へ向かって下降している傾斜面を有することを特徴とする、項目49~58のいずれかに記載の履物。
【0246】
項目60:踵ばねデバイスは、単一のワンピースの構成要素であることを特徴とする、項目49~59のいずれかに記載の履物。
【0247】
項目61:踵ばねデバイスは、1つ又は複数の流体で満たされた内側キャビティを含むブラダエレメントを備えることを特徴とする、項目49に記載の履物。
【0248】
項目62:1つ又は複数の流体で満たされた内側キャビティは、中央セグメントに沿って延びているキャビティと、内側方サイドアームと外側方サイドアームのうちの一方又は両方に配置された1つ又は複数の溜桝であって、中央セグメントに沿って延びているキャビティと流体的に連通する溜桝と、を含み、踵ばねデバイスが力を受けて弾性変形するときに、中央セグメントに沿って延びているキャビティから流体が移動して1つ又は複数の溜桝が拡張することを特徴とする、項目61に記載の履物。
【0249】
項目63:履物アッパーが、足首の開口の少なくとも一部を画定している柔軟なカバーと、踵ばねデバイスと、を備え、踵ばねデバイスは、足首の開口の後方の柔軟なカバーに固定された中央セグメント、中央セグメントから延在しかつ柔軟なカバーの内側方に固定された内側方サイドアーム、及び中央セグメントから延在し柔軟なカバーの外側方に固定された外側方サイドアームを有するコントロールバーと、内側方サイドアームと外側方サイドアームの両方に接続されコントロールバーを支持している連続的なベースと、を含み、コントロールバーが非荷重位置にまで付勢されているときに中央セグメントはベースから第1の距離だけ離れており、コントロールバーが力を受けて荷重位置にあるときに、中央セグメントは第1の距離よりも短い第2の距離だけベースから離れて、踵ばねデバイスが位置エネルギを蓄え、受けていた荷重が除かれると位置エネルギが使われて非荷重位置にまでコントロールバーが戻されるように構成されていることを特徴とする。
【0250】
項目64:柔軟なカバーは弾性的に伸縮可能な布であり、該履物アッパーは柔軟なカバーに固定されて足首の開口の前部分を画定するカラーをさらに備え、このカラーは弾性的に伸縮可能な布よりも剛性が高いことを特徴とする、項目63に記載の履物アッパー。
【0251】
項目65:柔軟なカバーに固定された踵用プルタブをさらに備え、コントロールバーの中央セグメントに孔が形成されており、この孔を通るように踵用プルタブが延びていることを特徴とする、項目63又は項目64に記載の履物アッパー。
【0252】
項目66:中央セグメントが荷重位置にあるときに、内側方サイドアームと外側方サイドアームとが互いに遠ざかるように横方向外側へ湾曲することにより、柔軟なカバーの足首の開口が拡大することを特徴とする、項目63~65のいずれかに記載の履物アッパー。
【0253】
項目67:コントロールバーとベースとの間の接続部の後方において、コントロールバーとベースとの間に剛性の踵カウンタの存在を不要としていることを特徴とする、項目63~66のいずれかに記載の履物アッパー。
【0254】
項目68:内側方サイドアームと外側方サイドアームの各々がそれぞれの長手方向軸に沿ってベースからコントロールバーの中央セグメントまでにかけて外方へ捩れていることを特徴とする、項目63~67のいずれかに記載の履物。
【0255】
項目69:コントロールバー及びベースのうちの一方がコントロールバー及びベースのうちの他方へ向かって延びている延出部を有し、コントロールバーが非荷重位置にあるときに、該延出部はコントロールバー及びベースのうちの他方から離れている一方で、コントロールバーが荷重位置にあるときに、該延出部はコントロールバー及びベースのうちの他方に接触していることを特徴とする、項目63~68のいずれかに記載の履物アッパー。
【0256】
項目70:コントロールバーの中央セグメントはベースへ向かって延びている延出部を有し、ベースは凹所を有し、コントロールバーが非荷重位置にあるときに、該延出部はベースから離れているが、コントロールバーが荷重位置にあるときに、該延出部は凹所内へ突出していることを特徴とする、項目69に記載の履物アッパー。
【0257】
項目71:コントロールバーの中央セグメントは、内側方サイドアームと外側方サイドアームとの間に、中央セグメントの内周縁へ向かって下降している傾斜面を有することを特徴とする、項目63~70のいずれかに記載の履物アッパー。
【0258】
項目72:踵ばねデバイスは、単一なワンピースの構成部品であることを特徴とする、項目63~71のいずれかに記載の履物アッパー。
【0259】
項目73:踵ばねデバイスは、1つ又は複数の流体で満たされた内側キャビティを含むブラダエレメントを備えることを特徴とする、項目63に記載の履物アッパー。
【0260】
項目74:1つ又は複数の流体で満たされた内側キャビティは、中央セグメントに沿って延びているキャビティと、内側方サイドアーム及び外側方サイドアームの一方又は両方に配置された溜桝であって、中央セグメントに沿って延びているキャビティと流体的に連通する1つ又は複数の溜桝と、を備え、踵ばねデバイスが力を受けて弾性変形するときに、中央セグメントに沿って延びているキャビティから流体が移動して1つ又は複数の溜桝が拡張することを特徴とする、項目73に記載の履物アッパー。
【0261】
項目75:履物が、足首の開口の少なくとも一部を画定する柔軟なカバーを含む履物アッパーと、該履物アッパーに固定されて該履物アッパーの下方に横たわっているソール構造体と、踵ばねデバイスと、を備え、踵ばねデバイスは、足首の開口の後方の柔軟なカバーに固定された中央セグメント、該中央セグメントから履物アッパーの内側方に沿って下方かつ前方へ延びている内側方サイドアーム、及び中央セグメントから履物アッパーの外側方に沿って下方かつ前方へ延びている外側方サイドアームを有するコントロールバーと、該コントロールバーに動作可能に接続され非荷重位置にまで該コントロールバーを付勢しているばねと、を備え、コントロールバーは力を受けると、荷重位置にまで後退するように枢動して、ばねに位置エネルギが蓄えられ、受けていた荷重が除かれると、そのエネルギが使われてコントロールバーが非荷重位置にまで戻されるように構成されていることを特徴とする。
【0262】
項目76:該履物は、内側方サイドアームと外側方サイドアームの両方に接続されソール構造体を貫通しているピンをさらに備え、このピンにばねが巻かれており、ばねの一端部がコントロールバーと一緒に枢動できるように固定されている一方で、ばねの他端部がコントロールバーに固定されていることを特徴とする、項目l75に記載の履物。
【0263】
項目77:履物が、足首の開口の少なくとも一部を画定する柔軟なカバーを含む履物アッパーと、履物アッパーの下方に横たわっているように履物アッパーに固定されたソール構造体と、踵ばねデバイスと、を備え、踵ばねデバイスは、足首の開口の後方の柔軟なカバーに固定された中央セグメント、履物アッパーの内側方に沿って該中央セグメントから下方かつ前方へ延びている内側方サイドアーム、及び履物アッパーの外側方に沿って該中央セグメントから下方かつ前方へ延びている外側方サイドアームを有する後方のコントロールバーと、足首の開口の前側の柔軟なカバーに固定された中央セグメント、履物アッパーの内側方に沿って該中央セグメントから下方かつ後方へ延びている内側方サイドアーム、及び履物アッパーの外側方に沿って該中央セグメントから下方かつ後方へ延びている外側方サイドアームを有する前方のバーと、を備え、前方のバーと後方のコントロールバーとは互いに、履物アッパーの外側方と内側方において交差するように固定されており、後方のコントロールバーは力を受けると、荷重位置にまで後退するように枢動して、位置エネルギが蓄えられ、受けていた荷重が除かれると、その位置エネルギが使われて後方のコントロールバーが非荷重位置にまで戻されるように構成されていることを特徴とする。
【0264】
なお、「1つの」、「少なくとも1つの」及び「1つ又は複数の」という語句は互換性があるものとして使用されており、少なくとも1つ該物品が存在することを意味する。別段の旨が明確に記載されていない限り、複数のこれらの物品が存在し得る。本明細書及び特許請求の範囲において、(例えば、量や条件の)パラメータのすべての数値は、数値の前に「約」という語句が実際にあるか否かに拘わらず、すべての状況において「約」という語句によって修飾され得るものとして理解されたい。「約」という語句は、記載した数値が若干正確でないこと(正確な値に近づいていること、理論的な値に近いこと、又は近似)があっても、これを許容し得ることを示す。或いは、「約」という語句によって与えられる不正確性が当技術分野で許容されない場合にも、本明細書中における「約」との語句は、通常の測定方法及び測定のパラメータを使用することに起因する変動が生じ得ることを示す。加えて、開示された範囲には、範囲内のすべての値及び更に分割された範囲が含まれ得る。本明細書において言及した文献のすべてが本願の参照となる。
【0265】
本発明の説明において、「備える」、「備えている」、「含む」及び「有する」の語句は包含することを意図し、従って、言及された物品が存在することを特定するが、他の物品の存在を除外するや、1つ又は複数の他の特徴部、ステップ、作動、エレメント又は構成要素の追加を除外することを意図していない。ステップ、プロセス、及び作動の順序は可能であれば変更され得るし、追加的又は代替的なステップが採用され得る。本明細書中で使用される「や」という語句は、1つ又は複数の列挙された種々の物品のすべての組合せを含み得る。「いずれかの」との語句は、言及されたアイテムの種々の可能な組合せ(言及されたアイテムのいずれか1つである場合を含む)を含むことが理解されよう。また、いずれかの」との語句は、言及された請求項の種々の可能な組合せ(言及された請求のうちのいずれか1つである場合を含む)を含むことが理解されよう。
【0266】
当技術分野における通常の知識を有するものであれば、「上に」、「下に」、「上方」、「下方」、「天部」、「底」等の語句は、形状を描写するために使用されており、特許請求の範囲と同様に本発明の技術的範囲を限定するために使用されてはいないことを理解されよう。
【0267】
本願の教示の態様を実施するためのいくつかの実施例に関して説明したが、当業者であれば、本願の特許請求の範囲を逸脱することなく、本願の教示の様々な代替的態様があり得ることを理解されよう。上述した発明の詳細な説明及び添付の図面に含まれるすべての事項は、例示するためのものであり、限定するためのものではない。
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【外国語明細書】