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特開2022-51969無線装置、および無線装置の無線通信方法、無線端末、および無線端末の無線通信方法、並びに無線基地局、および無線基地局の無線通信方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051969
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】無線装置、および無線装置の無線通信方法、無線端末、および無線端末の無線通信方法、並びに無線基地局、および無線基地局の無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 48/10 20090101AFI20220328BHJP
   H04W 88/12 20090101ALI20220328BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20220328BHJP
   H04W 48/20 20090101ALI20220328BHJP
【FI】
H04W48/10
H04W88/12
H04W84/12
H04W48/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019004039
(22)【出願日】2019-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082131
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(72)【発明者】
【氏名】相尾 浩介
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067BB37
5K067DD43
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE24
(57)【要約】
【課題】無線LANにおける通信環境の変動に対応して、安定した通信を実現できるようにする。
【解決手段】通信装置が、基地局との通信品質を判定し、直ちに基地局を切り替えるほどの信号品質にまで低下する前の段階で、周囲の基地局に対して通信品質の判断基準となる情報をBeaconに含めて送信するように、移行判断情報を要求し、移行判断要求に応じて送信されてくるBeaconに含まれる移行判断情報に基づいて、通信接続を確立すべき基地局を選択する。無線LANにおける通信システムに適用することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線端末と通信接続を確立して通信する無線基地局におけるBeacon信号に含まれる包含情報を制御する制御部
を備える無線装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記無線端末が、前記無線基地局の通信品質に基づいて、前記通信接続を確立して通信する無線基地局を選択するとき、前記無線基地局におけるBeacon信号に含まれる包含情報を制御する
請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記無線端末が、現在、前記通信接続が確立された前記無線基地局との通信品質に基づいて、前記通信接続を確立して通信する新たな無線基地局を選択するか否かを判定するように設定する情報を前記無線端末に送信する
請求項2に記載の無線装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記無線端末が、現在、前記通信接続が確立された前記無線基地局との通信品質のうちの、受信電力、パケット成功率、および待機時間のうちの少なくともいずれかに基づいて、前記通信接続を確立して通信する新たな無線基地局を選択するか否かを判定するように設定する情報を前記無線端末に送信する
請求項3に記載の無線装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記無線端末が、現在、前記通信接続が確立された前記無線基地局との通信品質のうちの、前記受信電力、前記パケット成功率、および前記待機時間の少なくともいずれかと、所定の閾値との比較に基づいて、前記通信接続を確立して通信する新たな無線基地局を選択するか否かを判定するように設定する情報を前記無線端末に送信する
請求項4に記載の無線装置。
【請求項6】
前記所定の閾値は、前記無線基地局を直ちに移行させるレベルよりも高い閾値であり、
前記制御部は、前記無線端末が、現在、前記通信接続が確立された前記無線基地局との通信品質のうちの、前記受信電力、前記パケット成功率、および前記待機時間の少なくともいずれかが、前記所定の閾値よりも低いとき、前記通信接続を確立して通信する新たな無線基地局を選択するか否かを判定するように設定する情報を前記無線端末に送信する
請求項5に記載の無線装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記無線端末において指定される情報に基づいて、前記Beacon信号に含まれる前記包含情報を制御する
請求項1に記載の無線装置。
【請求項8】
前記無線端末において指定される情報は、前記無線端末より通知される
請求項7に記載の無線装置。
【請求項9】
前記無線端末において指定される情報は、前記無線端末のサービス種別により特定される
請求項7に記載の無線装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記Beacon信号に含まれる前記包含情報をElement IDとして指定する制御通知を、前記無線基地局に送信し、前記無線基地局が前記制御通知における前記Element IDに基づいて、前記Beacon信号に含まれる前記包含情報を制御して、前記Beacon信号を送信する
請求項1に記載の無線装置。
【請求項11】
前記制御通知は、前記無線基地局が、前記Beacon信号に含まれる前記包含情報が包含される期間やタイミングを指定する情報をさらに含む
請求項10に記載の無線装置。
【請求項12】
無線端末と通信接続を確立して通信する無線基地局におけるBeacon信号に含まれる包含情報を制御する制御処理
を含む無線装置の無線通信方法。
【請求項13】
周囲の無線基地局より送信されるBeacon信号に含まれる包含情報に基づいて、通信接続を確立する新たな無線基地局を選択する制御部
を備える無線端末。
【請求項14】
前記制御部は、前記通信接続を確立する無線基地局を選択するための判断基準情報を、前記Beacon信号に含まれる包含情報を制御する無線装置に送信する
請求項13に記載の無線端末。
【請求項15】
前記判断基準情報は、複数の前記判断基準情報の優先度を示す情報を含む
請求項14に記載の無線端末。
【請求項16】
前記判断基準情報は、受信電力、BSS負荷、アクセス遅延、および信号品質を含む
請求項14に記載の無線端末。
【請求項17】
前記制御部は、周囲の無線基地局より送信されるBeacon信号に含まれる包含情報に基づいて、前記通信接続を確立する新たな無線基地局の候補を提示し、提示した候補への通信接続の確立を指示する操作がなされたとき、前記操作がなされた候補を、前記通信接続を確立する新たな無線基地局として選択する
請求項13に記載の無線端末。
【請求項18】
周囲の無線基地局より送信されるBeacon信号に含まれる包含情報に基づいて、通信接続を確立する新たな無線基地局を選択する制御処理
を含む無線端末の無線通信方法。
【請求項19】
Beacon信号に含める包含情報を通知する制御通知を受信し、前記制御通知に基づいて、前記包含情報を含めた前記Beacon信号を送信する制御部
を備えた無線基地局。
【請求項20】
Beacon信号に含める包含情報を通知する制御通知を受信し、前記制御通知に基づいて、前記包含情報を含めた前記Beacon信号を送信する制御処理
を含む無線基地局の無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線装置、および無線装置の無線通信方法、無線端末、および無線端末の無線通信方法、並びに無線基地局、および無線基地局の無線通信方法に関し、特に、無線LAN(Local Area Network)の通信環境の変動に対応して、安定した通信を実現できるようにした無線装置、および無線装置の無線通信方法、無線端末、および無線端末の無線通信方法、並びに無線基地局、および無線基地局の無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LAN(Local Area Network)サービス拡大のため、オフィスや家庭などの屋内に複数の無線基地局を設置するユースケースが増加している。
【0003】
そのため、無線LANサービスを開始する無線端末は、複数存在する無線基地局の中から最適な無線基地局を選択しなければならない。
【0004】
さらにノートパソコンやスマートフォンなどの移動しながら無線LANサービスを使用することが考えられる無線端末にとっても同様に、通信が途切れぬよう、その場その場で最適な無線基地局へ接続を切り替え、別のBSS(Basic Service Set)へ移行することが望ましい。
【0005】
そこで、安定した通信状態を維持しながらBSSを移行するための技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-158765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に無線端末は自身の通信品質(SINR(Signal to Interference plus Noise Ratio)、パケット成功率、遅延等)が悪くなってきて初めて、BSSを移行するか否かを決定する処理を始める。
【0008】
しかしながら、無線基地局が複数近くに設置されているような環境では、別の基地局の方がより良い通信品質を確保できるのであれば、積極的に移行処理を行うことが望ましい。
【0009】
ところが、現状において、無線端末が周囲の無線基地局から直接的に取得できるのは、その無線基地局が送信したBeacon信号内に含まれている情報だけであり、Beacon信号にどの情報を載せるのかは無線基地局に依存する。
【0010】
この為、無線端末が受信電力(RSSI)以外の情報からBSS移行の判断をする場合、その無線基地局から送信されたBeacon信号に必要な情報が含まれていないと、BSS移行判断を行えなくなる。
【0011】
例えば、先行文献1では周囲のAP(Access Point)のBeacon信号に載せられている接続端末数を比較し、BSS移行を行うか否かを判断する例が紹介されているが、周囲の無線基地局が接続端末数の情報をBeacon信号に載せていない場合、BSS移行を判断することができない。
【0012】
受信電力以外の判断基準を利用してBSS移行を行う例として、無線端末がProbe Requestを投げるといったアクティブスキャン方式、または、全無線基地局の情報収集や制御が可能な集中制御局に判断を委ねる方式が考えられる。
【0013】
しかしながら、これらの処理は無線でのやり取り等に時間を要する為、BSS移行に時間がかかってしまう。
【0014】
そのため、無線端末は、周囲の無線基地局から送信されたBeacon信号を取得するだけでは、どの無線基地局へ接続するのが望ましいかを判断できない。
【0015】
本開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、特に、周囲の無線基地局から送信されたBeacon信号に含まれる情報に基づいて、通信接続を確立すべき最適な無線基地局を選択することで、通信環境の変動に対応して、安定した通信を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示の第1の側面の無線装置は、無線端末と通信接続を確立して通信する無線基地局におけるBeacon信号に含まれる包含情報を制御する制御部を備える無線装置である。
【0017】
本開示の第1の側面の無線通信方法は、第1の無線装置に対応する。
【0018】
本開示の第1の側面においては、無線端末と通信接続を確立して通信する無線基地局におけるBeacon信号に含まれる包含情報が制御される。
【0019】
本開示の第2の側面の無線端末は、周囲の無線基地局より送信されるBeacon信号に含まれる包含情報に基づいて、通信接続を確立する新たな無線基地局を選択する制御部を備える無線端末である。
【0020】
本開示の第2の側面の無線通信方法は、第2の受信装置に対応する。
【0021】
本開示の第2の側面においては、周囲の無線基地局より送信されるBeacon信号に含まれる包含情報に基づいて、通信接続を確立する新たな無線基地局が選択される。
【0022】
本開示の第3の側面の無線基地局は、Beacon信号に含める包含情報を通知する制御通知を受信し、前記制御通知に基づいて、前記包含情報を含めた前記Beacon信号を送信する制御部を備えた無線基地局である。
【0023】
本開示の第3の側面の無線通信方法は、第3の無線基地局に対応する。
【0024】
本開示の第3の側面においては、Beacon信号に含める包含情報を通知する制御通知が受信され、前記制御通知に基づいて、前記包含情報を含めた前記Beacon信号が送信される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一般的な通信システムを説明する図である。
図2】本開示の通信システムの構成例を説明する図である。
図3】本開示の通信システムの第1の実施の形態を説明する図である。
図4図3の通信システムのコントローラの構成例を説明する図である。
図5図3の通信システムの基地局の構成例を説明する図である。
図6図3の通信装置のコントローラの構成例を説明する図である。
図7図3の通信システムによる通信制御処理を説明するフローチャートである。
図8】コントローラから基地局に送信されるBSS移行config設定フレームの構成を説明する図である。
図9】基地局から通信装置に送信されるBSS移行config設定フレームの構成を説明する図である。
図10図3の通信装置による通信品質劣化判定処理を説明するフローチャートである。
図11図3の通信システムによるBSS移行問合せ処理を説明するフローチャートである。
図12図3の通信システムによるBSS移行判断情報要求処理を説明するフローチャートである。
図13】通信装置から基地局に送信されるBSS移行判断情報要求フレームの構成を説明する図である。
図14】Criteria IDとRequired Beacon Element IDとの対応を示すテーブルを説明する図である。
図15】基地局からコントローラに送信されるBSS移行判断情報要求フレームの構成を説明する図である。
図16】BeaconElement制御通知フレームの構成を説明する図である。
図17】Beaconフレームの構成を説明する図である。
図18図3の通信装置による通信品質比較処理を説明するフローチャートである。
図19図3の通信装置による基地局により信号品質判定処理を行う場合の通信制御処理を説明するフローチャートである。
図20】BeaconElement制御通知に含まれるRequired Beacon Element IDにおけるMandatory Element IDが通信装置におけるサービスに応じて予め設定される例を説明する図である。
図21図3の通信装置による信号品質判定処理の処理結果の表示例を説明する図である。
図22】信号品質判定処理の処理結果を表示する場合の通信品質比較処理を説明するフローチャートである。
図23】本開示の通信システムの第2の実施の形態を説明する図である。
図24図23の通信システムによる通信制御処理を説明するフローチャートである。
図25図23の通信システムにおけるBeaconElement制御通知フレームの構成を説明する図である。
図26】汎用のパーソナルコンピュータの構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0027】
以下、本技術を実施するための形態について説明する。説明は以下の順序で行う。
1.本開示の概要
2.第1の実施の形態
3.第1の実施の形態の第1の応用例
4.第1の実施の形態の第2の応用例
5.第1の実施の形態の第3の応用例
6.第2の実施の形態
7.ソフトウェアにより実行させる例
【0028】
<<1.本開示の概要>>
本開示は、IEEE802.11で規格化されている無線LAN(Wireless Local Area Network, Wave Local Area Network)における、受信環境の変動に対応する安定的な通信を実現するための通信システムである。
【0029】
本開示の概要について説明する。
【0030】
IEEE802.11で規格化されている通信システムは、一般に、コントローラC1、基地局(Access Point)AP1,AP2、および通信装置STA1から構成される。尚、図1においては、基地局AP1,AP2の2台である例が示されているが、それ以上の台数であってもよい。
【0031】
通信装置STA1は、例えば、ユーザにより使用されるスマートフォンやPC(Personal Computer)などであり、基地局AP1またはAP2との通信接続を確立し、基地局AP1またはAP2により運用されているBSS(Basic Service Set)に通信接続し、データやプログラムを送受信する。
【0032】
また、通信装置STA1は、現在通信接続が確立されている基地局AP1またはAP2との通信に係る通信状態を示すRSSI(受信電力)を監視し、所定の閾値よりもRSSIが低いとき、通信接続が確立されている基地局AP1またはAP2を介して、BSS移行問合せをコントローラC1に送信する。
【0033】
コントローラC1は、通信装置STA1からのBSS問合せに基づいて、通信装置STA1が接続すべき基地局を選択し、選択した基地局の情報をBSS移行要求として通信装置STAの情報を供給する。
【0034】
通信装置STA1は、BSS移行要求を受信するとコントローラC1に対してBSS移行応答を送信すると共に、BSS移行要求により指定された基地局への接続申請を行い、通信接続を確立させる。
【0035】
より具体的には、例えば、図1で示されるように、通信装置STA1と、基地局AP1との接続が確立した状態であることを想定する。すなわち、図1においては、実線の矢印で示されるように、通信装置STA1と、基地局AP1との通信接続が確立しており、通信装置STA1は、基地局AP1を介して各種のデータやプログラムが送受信できる状態であることを想定する。
【0036】
このとき、通信装置STA1は、基地局AP1を介して、データの送受信を行う中で、ダウンロード信号(以下、DL信号とも称する)の信号品質であるRSSI(受信信号強度)を測定し、所定の閾値よりも低くなったか否かを監視する。
【0037】
図1で示されるように、例えば、通信装置STA1が、基地局AP1より所定の距離だけ離れることにより、RSSIが所定の閾値thよりも低くなった場合、通信装置STA1は、接続が確立されている基地局AP1を介して、コントローラC1に対してBSS移行問合せを送信し、通信環境のより良いBSSを運営する基地局APを問い合わせる。
【0038】
尚、図1における閾値thの実線は、通信装置STA1が基地局AP1から離れるに従って生じる信号品質の劣化が、BSSの移行が必要とされる閾値thとなるときの、通信装置STA1と基地局AP1との距離を示している。
【0039】
このBSS移行問合せに応じて、コントローラC1は、通信環境のより良いBSSを運営する基地局として、図1における基地局AP2を選択するものとする。このとき、コントローラC1は、今現在接続が確立されている基地局AP1を介して、通信装置STAに対して、基地局AP2へと通信接続を移行するように要求するBSS移行要求を送信する。
【0040】
通信装置STA1は、BSS移行要求を受信すると、接続を確立している基地局AP1に対してBSS移行応答を送信すると共に、BSS移行要求に基づいて、基地局AP2に対して通信接続を申請し、通信接続を確立させることにより、以降において、基地局AP2により運営されるBSSにおいて通信を継続する。
【0041】
以上の処理が繰り返されることにより、通信装置STA1は、RSSIの状態に応じて基地局を切り換えて、BSSを移行させることにより、通信状態を維持して、通信接続が確立された基地局を介して通信を継続する。
【0042】
しかしながら、図1の場合、通信装置STA1はRSSIが所定の閾値thよりも低くなったとき、通信状況が劣化しているにもかかわらず、一度、基地局AP1を介してコントローラC1にBSS移行問合せを送信した上で、コントローラC1によりBSSの移行先が決定され、決定されたBSS移行要求を受信した上でなければBSSを移行させることができない。すなわち、通信状況の劣化がさらに進み、BSS移行問合せの送信やBSS移行要求の受信ができない状態になると、BSS移行ができず、通信を継続することができない状態となる恐れがある。
【0043】
そこで、本開示の通信システムにおいては、直ちに基地局を切り換えなければならない程通信品質が劣化する前の段階で、通信装置STA11(図2)が、他基地局の運用情報やLink情報を取得し、BSSを移行すべきか否か、または、移行する場合、どのBSSへと移行すべきかを独自に判断し、独自の判断に基づいてBSSを移行できるようにする。
【0044】
より具体的には、BSSの移行に関する閾値を、図2で示されるように、第1の閾値th1および第2の閾値th2の2種類設定することで、通信装置STA11自らがBSSを移行すべきか否か、または、移行する場合、どのBSSへと移行すべきかを独自に判断できるようにする。
【0045】
ここで、第1の閾値は、上述した図1の閾値thと同様の閾値であり、直ちに他のBSSへの移行が必要であり、どのBSSに移行すべきかについてはコントローラC1に委ねる閾値である。
【0046】
一方、第2の閾値th2は、通信装置STA11がBSS移行先の選択を開始するための閾値として、第1の閾値th1よりも、信号品質の劣化が進んでいない状態の第2の閾値th2(>第1の閾値th1)として設定する。すなわち、第2の閾値th2は、通信装置STA11と基地局AP11との通信品質が、第1の閾値th1よりも低くならない程度のレベルに設定される。
【0047】
また、信号品質が第2の閾値th2よりも低い状態となった場合、通信装置STA11は、BSS移行先を選択するための周囲の基地局の情報の収集を開始し、周囲の基地局に対して、自身のBSS移行先を選択するための周囲の基地局の情報をBeacon信号に載せて送信させ、周囲の基地局の情報に基づいて、新たな接続先を選択する。
【0048】
そして、通信装置STA11は、周囲の基地局から送信されてくるBeacon信号を取得して、現在よりも通信品質が良好な基地局が見つかったとき、通信接続が確立されている基地局AP11へとBSS移行問合せを送信することなく、現在よりも通信品質が良好な基地局AP2へ通信接続を移行する。
【0049】
尚、第1の閾値の示す境界線は、通信に係るサービスに影響が生じるほど通信品質が劣化する基地局AP11からの距離となる位置を表している。また、第2の閾値が示す境界線は、通信に係るサービスに影響が生じるほど通信品質が劣化してはいないが、他の基地局へと移行することにより通信品質がより良くなる可能性がある、基地局AP11からの距離となる位置を表している。
【0050】
以上のような、一連の動作により、通信に係るサービスに影響が生じるほどの通信品質の劣化が進む前の段階で、通信品質がより良くなる基地局を検索し、見つけられた時には、通信品質がより良い基地局にBSSを移行するようにする。これにより、無線LANの通信環境の変動に対応して、安定した通信を実現することが可能となる。尚、図2におけるコントローラC11、基地局AP11,AP12、および通信装置STA11は、それぞれ図1のコントローラC1、基地局AP1,AP2、および通信装置STA1に対応する構成である。
【0051】
<<2.第1の実施の形態>>
<本開示の通信システムの構成例>
次に、図3を参照して、本開示の通信システムの構成例について説明する。
【0052】
本開示の通信システム1は、コントローラ11、基地局12-1,12-2、および通信装置13より構成される。尚、以降において、基地局12-1,12-2を特に区別する必要がない場合、単に、基地局12と称するものとし、その他の構成についても同様に称する。また、図3においては、基地局12-1,12-2の2台のみが含まれる構成例が示されているが、通信装置13との通信接続が確立された基地局12-1以外の基地局12は、何台であってもよい。
【0053】
図3の通信システム1における、コントローラ11、基地局12-1,12-2、および通信装置13は、いずれも基本的に、図2のコントローラC1、基地局AP1,AP2、および通信装置STAに対応する構成である。
【0054】
尚、図3においては、通信装置13と基地局12-1との通信接続が確立された状態となっており、通信装置13は、基地局12-1からのDL信号により通信品質を検出して、図2を参照して説明した第1の閾値th1および第2の閾値th2との比較により、通信品質の劣化の程度を判定する。
【0055】
通信装置13は、通信品質が第1の閾値th1よりも劣化している場合、コントローラ11に対して通信接続を移行すべき基地局12の情報を求めるBSS移行問合せを、基地局12-1を介して送信する。
【0056】
コントローラ11は、BSS移行問合せに基づいて、通信装置13の周囲の基地局12のうち、通信接続を移行すべき基地局12の情報を決定し、決定した通信接続を移行すべき基地局12の情報を含むBSS接続移行要求を、基地局12-1を介して通信装置13に送信する。
【0057】
通信装置13は、BSS接続移行要求を受信して、BSS接続移行要求に含まれる通信接続を移行すべき基地局12の情報に基づいて、接続申請を行い、通信接続を移行する。
【0058】
また、通信装置13は、通信品質が第1の閾値th1ほど劣化していないが、第2の閾値th2よりも劣化している場合、通信接続を移行すべき基地局12を選択するための通信品質の比較に用いる判断基準であるBSS移行判断情報を、周囲の基地局12からのBeacon信号に含めて送信するように要求するBSS移行判断情報要求として、基地局12-1を介してコントローラ11に対して送信する。
【0059】
コントローラ11は、BSS移行判断情報要求に基づいて、Beacon信号に含めて送信すべき判断基準となるBSS移行判断情報を決定し、決定した判断基準となるBSS移行判断情報をBeacon信号に含めて送信するためのBeaconElement制御通知を生成して、全基地局12(ここでは、基地局12-1,12-2)に対して送信する。
【0060】
基地局12は、BeaconElement制御通知を受信すると、BeaconElement制御通知に基づいて、通信装置13において通信品質の比較に用いる判断基準となるBSS移行判断情報を含めたBeacon信号を生成して、通信装置13に対して送信する。
【0061】
通信装置13は、周囲の基地局12から送信されるBeacon信号を受信すると、Beacon信号に含まれる判断基準となるBSS移行判断情報に基づいて、既に通信接続が確立された基地局12-1と、それ以外の基地局12-2との信号品質を比較する。
【0062】
そして、比較結果により、既に通信接続が確立された基地局12-1よりも、信号品質の高い基地局12が発見された場合、通信装置13は、新たに発見された基地局12(図3における基地局12-2)に対して接続申請を行い、通信接続を確立することにより、BSSを移行させる。
【0063】
一連の処理により、図3の通信システム1においては、通信接続が確立された基地局12-1との通信品質が、コントローラ11に対してBSS移行問合せを行う第1の閾値にまで劣化する前の、第2の閾値に劣化したタイミングにおいて、通信装置13が、BSS移行判断情報に基づいて、基地局12を選択して、BSS移行を実現させることが可能となる。
【0064】
すなわち、通信装置13は、通信接続が確立している基地局12-1との通信品質が大きく劣化する前の段階で、周囲の基地局12から送信されるBeacon信号に含まれるBSS移行判断情報を判断基準として比較した上で、自らが最適な通信品質を得られる基地局12-2を選択してBSS移行を実現することが可能となる。
【0065】
結果として、通信不能になるような通信品質の劣化が生じる前に、通信品質のよい基地局12へとBSS移行する処理が繰り返されることになるので、常に最適な基地局12との接続を継続し続けることが可能となり、安定した通信を実現することが可能となる。
【0066】
<コントローラの構成例>
次に、図4を参照して、コントローラ11の構成例について説明する。
【0067】
コントローラ11は、制御部31、データ処理部32、無線通信部33、有線通信部34、およびネットワーク制御部35を備えている。
【0068】
制御部31は、プロセッサやメモリなどから構成されており、コントローラ11の動作の全体を制御している。
【0069】
データ処理部32は、通信を行うデータ信号の処理を行う。具体的には、データ処理部32は、パケットに載せて送信するデータ信号を生成する処理や、復調した受信信号からデータ信号を抽出する処理を行う。ここで言うデータ信号は、基地局12との間でやり取りされる通信データ、および制御部31で決定された制御内容を含む制御データの両方を含む。
【0070】
無線通信部33は、アンテナ33aを備えており、データ処理部32で生成したデータ信号にアナログ変換処理、およびRF(Radio Frequency)処理を施し、アンテナ33aから出力される送信信号を生成する。
【0071】
また、無線通信部33は、アンテナ33aを介して受信した受信信号にRF処理、およびデジタル変換処理を施し、データ信号を抽出する。
【0072】
無線通信部33は、ネットワークを組む基地局12との通信に用いられる。
【0073】
無線通信部33は、アンテナ部33aを制御して、生成された無線パケットを、電磁波として放出する。また、無線通信部33は、アンテナ33aを制御して、受信した電磁波を無線パケットとして抽出する。
【0074】
有線通信部34は、データ処理部32で生成したデータ信号から有線ケーブルへ出力される送信信号を生成する。また、有線通信部34は、有線ケーブル経由で取得した受信信号からデータ信号を抽出する。
【0075】
有線通信部34は、主にバックホール回線との通信や、ネットワークを組む基地局12との通信に用いられる。
【0076】
尚、有線通信部34と無線通信部33は複数備えるようにしてもよい。例えば、有線通信部34を複数備えることで、バックホールとの接続と、基地局12との接続とを使い分けることが可能となる。また、無線通信部33においては、異なる周波数(2.4Ghz帯/5GHz帯)のそれぞれに対応したブロックを複数有しても良い。
【0077】
ネットワーク制御部35は、同じネットワークを組む他の基地局12からのLink情報などの情報を収集したり、周波数などを制御する。
【0078】
より詳細には、ネットワーク制御部35は、BSS移行config設定の内容や、基地局12がBeacon信号に載せて通信装置13に送信すべき情報を決定する。
【0079】
尚、コントローラ11の構成は、上述したネットワーク制御部35を備えている構成であればよく、無線通信部33、および有線通信部34のいずれかを備えてれば、必ずしも両方備えていることは必須ではない。また、コントローラ11が無線通信部33を有している場合、従来の基地局(アクセスポイント)として動作することもできる。
【0080】
<基地局の構成例>
次に、図5を参照して、基地局12の構成例について説明する。
【0081】
基地局12は、制御部51、データ処理部52、無線通信部53、有線通信部54、表示部55、および操作部56を備えている。
【0082】
制御部51は、プロセッサやメモリから構成されており、基地局12の動作の全体を制御する。
【0083】
制御部51は、データ処理部52を介して、無線通信部53および有線通信部54を制御して、コントローラ11から通知される信号に基づいて、各種の処理を実行する。また、制御部51は、コントローラ11や通信装置13へ通知する制御内容を決定する。
【0084】
データ処理部52は、通信を行うデータ信号を処理する。より具体的には、データ処理部52は、パケットに載せて送信するデータ信号の生成や、復調した受信信号からデータ信号を抽出する。
【0085】
無線通信部53では、アンテナ53aを制御して、データ処理部52で生成したデータ信号にアナログ変換処理、およびRF処理を施し、送信信号を生成して送信する。また、無線通信部53は、アンテナ53aを介して受信される受信信号にRF処理およびデジタル変換処理を施し、データ信号を抽出し、データ処理部52に出力する。
【0086】
無線通信部53は、通信接続が確立された配下となる通信装置13との通信を行うだけでなく、ネットワークを組むコントローラ11との通信にも用いられる。
【0087】
無線通信部53は、アンテナ部53aを制御して、生成された無線パケットを、電磁波として放出する。また、無線通信部53は、アンテナ53aを介し受信した電磁波を無線パケットとして取得する。
【0088】
有線通信部54では、データ処理部52で生成したデータ信号から有線ケーブルへ出力される送信信号を生成し、出力する。また、有線通信部54は、有線ケーブル経由で取得した受信信号からデータ信号を抽出する。
【0089】
有線通信部54は、主にバックホール回線との通信や、ネットワークを組むコントローラ11との通信に用いられる。
【0090】
尚、有線通信部54と無線通信部53は複数備えるようにしてもよい。例えば、有線通信部54を複数備えるようにし、バックホールとの接続やコントローラ11との接続を使い分けるようにしてもよい。また、無線通信部53においても異なる周波数(2.4Ghz帯/5GHz帯)のそれぞれに対応したブロックを複数備えるようにしてもよい。
【0091】
<通信装置の構成例>
次に、図6を参照して、通信装置13の構成例について説明する。
【0092】
通信装置13は、制御部71、データ処理部72、無線通信部73、および表示部74を備えている。
【0093】
制御部71は、プロセッサやメモリから構成されており、通信装置13の動作の全体を制御する。
【0094】
制御部71は、無線通信部73を制御して、通信接続が確立されている基地局12-1との通信における信号品質を検出し、第1の閾値や第2の閾値との比較により、BSS問合せやBSS移行判断情報要求の有無を決定する。
【0095】
データ処理部72は、通信を行うデータ信号を処理する。より具体的には、データ処理部72は、パケットに載せて送信するデータ信号の生成や、復調した受信信号からデータ信号を抽出する。
【0096】
無線通信部73では、アンテナ73aを制御して、データ処理部72で生成したデータ信号にアナログ変換処理、およびRF処理を施し、送信信号を生成して送信する。また、無線通信部73は、アンテナ73aを介して受信される受信信号にRF処理およびデジタル変換処理を施し、データ信号を抽出する。
【0097】
無線通信部73は、通信接続が確立された配下となる基地局12と通信する。
【0098】
無線通信部73は、アンテナ部73aを制御して、生成された無線パケットを、電磁波として放出する。また、無線通信部73は、アンテナ73aを介し受信した電磁波を無線パケットとして取得する。
【0099】
表示部74は、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)などからなり、制御部71により制御されて、データ処理部72の処理結果や、各種のデータを表示する。また、表示部74は、タッチパネルを備えており、操作部として機能する。すなわち、表示部74は、表示されるキーボードや操作ボタンなどに対する操作内容に応じた操作信号を発生して制御部71に出力する。
【0100】
<通信制御処理>
次に、図7のフローチャートを参照して、図3の通信システム1による第1の通信制御処理について説明する。なお、図7のフローチャートにおける通信制御処理においては、図3における基地局12-1と通信装置13との通信接続が確立された状態であることを前提とする。
【0101】
ステップS11において、コントローラ11の制御部31は、ネットワーク制御部35を制御して、BSS移行config設定の内容を決定させると共に、データ処理部32より、BSS移行config設定を生成させ、無線通信部33、および有線通信部34のいずれかを用いて基地局12-1,12-2に送信する。
【0102】
<コントローラから基地局に送信されるBSS移行config設定フレーム>
コントローラ11から基地局12-1,12-2に送信されるBSS移行config設定フレームは、例えば、図8で示されるような構成となる。
【0103】
図8のBSS移行config設定フレームは、図中上段左から、1OctetのtlvType、2OctetのtlvLength、1OctetのNum.of AP、および、それぞれ9OctetのAP#1 Steering Info.,・・・AP#N Steering Info.が格納されている。
【0104】
tlvTypeは、TLV形式のタイプの情報であり、tlvLengthは、TLV形式のデータ長の情報である。また、Num.of APは、基地局12の数(アクセスポイント(AP)の数)の情報である。さらに、AP#N Steering Info.は、それぞれ各基地局の情報が記録されており、図8の下段で示されるように、MAC Address,Policy,Threshold1,Threshold2が格納されている。
【0105】
MAC Addressは、基地局12のうちAP#Nで識別される基地局12の物理アドレスである。Policyは、BSS移行処理を開始できる装置と、判断基準となる情報の種別(判断パラメータ)を指定する為に用いられる情報である。
【0106】
Policyは、例えば、既存規格では、通信装置13がRSSI(受信電力)を判断基準としてBSS移行を判断することが可能か否か、基地局12がRSSI(受信電力)を判断基準としてBSS移行を判断することが可能か否かなどの情報が、それぞれ1bitの情報でON/OFFのいずれかとして表現される情報である。
【0107】
また、Policyについては既存規格に限らず、信号品質の判断基準となる情報の種別(判断パラメータ)を特定する情報が追加されても良く、従来からの判断基準であるRSSI(受信電力)に加えて、例えば、パケット成功率や待機時間などを判断基準となる情報の種別として追加するようにしてもよい。
【0108】
さらに、Policyについては、第1の閾値、および第2の閾値による判定のON/OFFが示されるよう拡張されても良い。また、Policyについては、1bitのON/OFF情報ではなく、どれか一つの方式を示す情報が格納されても良い。
【0109】
Threshold1,Threshold2は、それぞれ図2を参照して説明した、第1の閾値th1、第2の閾値th2に対応する情報を格納する。
【0110】
尚、図2においては、閾値が2値設定される例について説明してきたが、閾値の数については、3個以上であってもよい。例えば、3個である場合、Threshold1乃至Threshold3が設定されることになる。
【0111】
なお、図8で示されるBSS移行config設定フレームにおける各フィールドのサイズは、図中の各フィールドの下に表記されるOctet単位とされ、特に断りがない限り、以降においても同様とする。また、各フィールドのサイズは、図8に記載されるサイズのみならず、その他のサイズであってもよい。
【0112】
ここで、図7のフローチャートの説明に戻る。
【0113】
ステップS31,S71において、基地局12-1,12-2のそれぞれの制御部51は、データ処理部52を制御して、無線通信部53、または、有線通信部54により送信されてくる、図8を参照して説明したBSS移行config設定フレームからなるBSS移行config設定を受信させる。
【0114】
そして、制御部51は、受信したBSS移行config設定に基づいて、通信装置13におけるBSS移行問合せやBSS移行判断情報要求の要否を判断するための信号品質の判断基準となる情報の種別と、BSS移行問合せを行うための閾値(図2の第1の閾値に対応する)、および、BSS移行判断情報要求を行うための閾値(図2の第2の閾値に対応する)を設定する。
【0115】
ステップS32において、基地局12-1の制御部51は、データ処理部52を制御して、受信したBSS移行config設定に基づいて、通信装置13向けのBSS移行config設定を生成させて、無線通信部53より通信装置13に送信させる。
【0116】
<基地局から通信装置に送信されるBSS移行config設定フレーム>
基地局12-1から通信装置13に送信されるBSS移行config設定フレームは、例えば、図9で示されるような構成となる。
【0117】
図9のBSS移行config設定フレームは、図中上段左から、1OctetのElement ID、1OctetのLength、1OctetのElement ID Extention、および3OctetのSteering Info.が格納されている。
【0118】
Element IDは、BSS移行config設定フレームを識別する識別子の情報であり、Lengthは、データ長の情報である。
【0119】
また、Element ID Extentionは、BSS移行config設定フレームを識別する識別子の拡張子である。
【0120】
Steering Info.は、図9の下段で示されるように、図8を参照して説明したBSS移行config設定フレームにおけるAP#N Steering Info.のMAC Address以降のPolicy,Threshold1,Threshold2と同様の情報が格納される。
【0121】
ステップS51において、通信装置13の制御部71は、データ処理部72を制御して、無線通信部73により、基地局12-1より送信されてくるBSS移行config設定を受信させる。
【0122】
ここで、制御部71は、受信したBSS移行config設定に基づいて、通信接続が確立した基地局12-1の通信品質の判断基準となる情報や閾値を設定する。
【0123】
ステップS33において、基地局12-1の制御部51は、データ処理部52を制御して、通信装置13向けて、無線通信部53よりDL(DownLoad)信号を送信させる。
【0124】
ステップS52において、通信装置13の制御部71は、基地局12-1より送信されてきた、BSS移行config設定に基づいて、DL信号を受信して、通信品質劣化判定処理を実行し、通信品質の劣化を判定する。
【0125】
<通信品質劣化判定処理>
ここで、図10のフローチャートを参照して、通信品質劣化判定処理について説明する。
【0126】
ステップS91において、通信装置13の制御部71は、データ処理部72を制御して、無線通信部73により、基地局12-1より送信されてくるDL信号を受信させる。
【0127】
ステップS92において、制御部71は、DL信号を受信する際、BSS移行config設定に基づいて、例えば、RSSI等の信号品質を確認する。
【0128】
ステップS93において、制御部71は、BSS移行config設定に基づいて、信号品質が第1の閾値よりも低いか否か、すなわち、直ちに、BSS移行問合せの送信が必要であるか否かを判定する。
【0129】
ステップS93において、通信品質が第1の閾値よりも低いとみなされた場合、処理は、ステップS94に進む。
【0130】
ステップS94において、制御部71は、BSS移行問合せの送信が必要であると判定する。
【0131】
また、ステップS93において、信号品質が第1の閾値よりも低くないとみなされた場合、処理は、ステップS95に進む。
【0132】
ステップS95において、制御部71は、信号品質が第2の閾値よりも低いか否か、すなわち、直ちにBSS移行問合せの必要はないが、信号品質が高いBSSがあればBSS移行を判断するためのBSS移行判断情報を要求する必要があるか否かを判定する。
【0133】
ステップS95において、通信品質が第2の閾値よりも低いとみなされた場合、処理は、ステップS96に進む。
【0134】
ステップS96において、制御部71は、BSS移行判断情報要求の送信が必要であると判定する。
【0135】
すなわち、通信品質劣化判定処理により、通信品質に応じて、直ちにBSSを移行するための問合せであるBSS移行問合せを送信するか、信号品質が高いBSSがあればBSS移行を判断するためのBSS移行判断情報要求を送信するかが判定される。
【0136】
ここで、図7のフローチャートの説明に戻る。
【0137】
ステップS53において、制御部71は、通信品質劣化判定処理によりBSS移行問合せの送信が必要であると判定されたか否かを判定する。
【0138】
ステップS53において、BSS移行問合せの送信が必要であると判定された場合、処理は、ステップS54に進む。
【0139】
ステップS54において、制御部71は、BSS移行問合せ処理を実行して、BSS移行問合せを、基地局12-1を介してコントローラ11に送信し、移行先となるBSSの情報を取得してBSSを移行する。
【0140】
尚、BSS移行問合せ処理については、図11のフローチャートを参照して詳細を後述する。
【0141】
また、ステップS53において、通信装置13により、BSS移行問合せの送信が必要であると判定された場合、ステップS54の処理によりBSS移行問合せが、基地局12-1を介してコントローラ11に送信され、移行先となるBSS(基地局12)の情報がコントローラ11から基地局12-1を介して送信される。
【0142】
このため、以降においては、基地局12-1におけるステップS34の処理においても、コントローラ11におけるステップS12の処理においても、BSS移行問合せありとみなされて、それぞれ処理は、ステップS35,S13に進み、コントローラ11および基地局12-1のそれぞれにおいてもBSS移行問合せ処理がなされる。
【0143】
そこで、BSS移行問合せ処理については、図11のフローチャートを参照して、コントローラ11、基地局12-1,12-2、および通信装置13のそれぞれの処理も併せて詳細を後述する。
【0144】
一方、ステップS53において、BSS移行問合せの送信が必要ではないと判定された場合、処理は、ステップS55に進む。
【0145】
ステップS55において、制御部71は、通信品質劣化判定処理によりBSS移行判断情報要求の送信が必要であると判定されたか否かを判定する。
【0146】
ステップS55において、BSS移行判断情報要求の送信が必要であると判定された場合、処理は、ステップS56に進む。
【0147】
ステップS56において、制御部71は、BSS移行判断情報要求処理を実行して、BSS移行判断情報要求を、基地局12-1を介してコントローラ11に送信し、周囲の基地局12から送信されるBeacon信号に含まれるBSS移行判断情報に基づいて、周囲の基地局12の通信品質と、現在、通信接続が確立された基地局12-1との通信品質とを比較し、必要に応じてBSSを移行する。
【0148】
尚、BSS移行判断情報要求処理については、図12のフローチャートを参照して詳細を後述する。
【0149】
また、ステップS55において、通信装置13により、BSS移行判断情報要求の送信が必要であると判定された場合、ステップS56の処理によりBSS移行判断情報要求が、基地局12-1を介してコントローラ11に送信される。
【0150】
このため、以降においては、ステップS34,S12においても、BSS移行判断情報要求が供給された上での処理となるため、それぞれ処理は、ステップS36,S14に進み、さらに、BSS移行判断情報要求処理がなされることにより、ステップS37,S15の処理により、コントローラ11および基地局12-1のそれぞれにおいてもBSS移行判断情報要求処理がなされる。
【0151】
そこで、BSS移行判断情報要求処理については、図12のフローチャートを参照して、コントローラ11、基地局12-1,12-2、および通信装置13のそれぞれの処理も併せて詳細を後述する。
【0152】
尚、図7における基地局12-2のステップS72以降の処理については、図11図12のフローチャートにおいても同様のフローチャートを付しており、対応付けて説明する。
【0153】
そして、ステップS55において、BSS移行判断情報要求が必要ではないとみなされた場合、処理は、終了する。
【0154】
したがって、コントローラ11、および基地局12-1においても、同様の処理とされ、ステップS14,S36のそれぞれにおいて、BSS問合せ、およびBSS移行判断情報要求のいずれもがないものとみなされて、処理は終了する。
【0155】
以上の一連の処理により、図2を参照して説明したように第1の閾値よりも信号品質が低下した場合は、BSS問合せが送信されて、コントローラ11により決定されるBSS移行要求に応じてBSS移行がなされる。また、第1の閾値よりも劣化の程度が低い、第2の閾値よりも信号品質が低下した場合は、BSS移行判断情報要求が送信されて、Beacon信号に含まれるBSS移行判断情報に基づいて、通信接続が確立された基地局12-1と、周囲の基地局12-2との信号品質との比較がなされ、比較結果に応じたBSS移行がなされる。
【0156】
これにより、直ちにBSSの移行が必要な状況になってからBSS移行を問い合わせるよりも通信品質が低下していない状態で、BSS移行判断情報に基づいて、周囲の基地局12のうち、現在の基地局12よりも通信品質の良い基地局12を見つけた段階で、BSSを移行させることが可能となる。
【0157】
結果として、直ちにBSSの移行が必要なほど通信品質が低下してしまってから、BSS移行問合せにより、BSS移行を行うような場合に、BSS移行問合せができなくなり、適切なBSS移行ができなくなるような事態を防止することが可能となり、無線LANの通信環境の変動に対応して、安定した通信を実現することが可能となる。
【0158】
<BSS移行問合せ処理>
次に、図11のフローチャートを参照して、BSS移行問合せ処理について説明する。
【0159】
ステップS121において、通信装置13の制御部71は、データ処理部72を制御して、無線通信部73より、基地局12-1に対して、BSS移行問合せを送信させる。
【0160】
ステップS111において、基地局12-1の制御部51は、データ処理部52を制御して、無線通信部53により、通信装置13からのBSS移行問合せを受信させる。
【0161】
より詳細には、基地局12-1の制御部51は、ここで受信されるBSS移行問合せにより、ステップS34(図7)において、BSS移行問合せがあることを認識して、処理が、ステップS35(図7)に進み、BSS移行問合せ処理が開始される。
【0162】
ステップS112において、基地局12-1の制御部51は、データ処理部52を制御して、無線通信部53、または、有線通信部54により、通信装置13からのBSS移行問合せをコントローラ11に送信させる。
【0163】
ステップS101において、コントローラ11の制御部31は、データ処理部32を制御して、無線通信部33、または、有線通信部34により、基地局12-1を介して、通信装置13からのBSS移行問合せを受信させる。
【0164】
より詳細には、コントローラ11の制御部31は、ここで受信されるBSS移行問合せにより、ステップS12(図7)において、BSS移行問合せがあることを認識して、処理が、ステップS13(図7)に進み、BSS移行問合せ処理が開始される。
【0165】
ステップS102において、制御部31は、ネットワーク制御部35を制御して、BSS移行問合せを送信してきた通信装置13が通信接続を移行して確立すべき基地局12を移行先として決定させる。
【0166】
ステップS103において、制御部31は、データ処理部32を制御して、無線通信部33、または、有線通信部34より、通信装置13が通信接続を移行して確立すべき基地局12の情報である、移行先の情報を、現在通信装置13が通信接続を確立している基地局12-1に送信させる。
【0167】
ステップS113において、基地局12-1の制御部51は、データ処理部52を制御して、無線通信部53、または有線通信部54により、コントローラ11より送信されてくる通信装置13が移行して通信接続を確立すべき基地局12の情報である、移行先の情報を受信させる。
【0168】
ステップS114において、基地局12-1の制御部51は、データ処理部52を制御して、通信装置13が移行して通信を確立すべき基地局12の情報を含む、BSS移行先要求を生成させて、無線通信部53により、通信装置13に送信させる。
【0169】
ステップS122において、通信装置13の制御部71は、データ処理部72を制御して、無線通信部73より、基地局12-1より送信されてくるBSS移行要求を受信させる。
【0170】
ステップS123において、通信装置13の制御部71は、データ処理部72を制御して、基地局12-1より送信されてくるBSS移行要求に対応するBSS移行応答を生成させ、無線通信部73より、基地局12-1に送信させる。
【0171】
ステップS115において、基地局12-1の制御部51は、データ処理部52を制御して、無線通信部53により、通信装置13より送信されてくるBSS移行応答を受信させる。
【0172】
ステップS124において、通信装置13の制御部71は、データ処理部72を制御して、BSS移行要求に含まれる、移行先となる基地局12の情報に基づいて、対応する基地局12-2に対して、無線通信部73より、接続申請を送信させる。
【0173】
ステップS75において、基地局12-2の制御部51は、データ処理部52を制御して、無線通信部53により、通信装置13から送信されてきた接続申請が受信されたか否かを判定し、接続申請が受信されてきた場合、処理は、ステップS76に進む。
【0174】
ステップS76において、基地局12-2の制御部51は、データ処理部52を制御して、無線通信部53により受信された接続申請に基づいて、接続の申請を受け付けて、通信装置13との接続通信を確立する。
【0175】
以上の処理により、通信装置13は、通信品質が第1の閾値よりも低い、直ちに基地局12を移行させる必要がある場合には、接続通信が確立されている基地局12-1を介して、BSS移行問合せがコントローラ11に送信される。コントローラ11により、移行先が決定されて、移行先に基づいて、BSS移行要求情報が生成されて、通信装置13に送信される。そして、通信装置13は、BSS移行要求情報を受信して、BSS移行要求情報に含まれる通信品質の高い新たな基地局12-2へのBSS移行が実現される。
【0176】
尚、ステップS72乃至S74の処理については、図12のフローチャートを参照して詳細を後述する。
【0177】
<BSS移行判断情報要求処理>
次に、図12のフローチャートを参照して、BSS移行判断情報要求処理について説明する。
【0178】
ステップS151において、通信装置13の制御部71は、データ処理部72を制御して、BSS移行判断情報要求を生成させて、無線通信部73より、基地局12-1に通信装置13に送信させる。
【0179】
<通信装置から基地局に送信されるBSS移行判断情報要求フレーム>
通信装置13から基地局12-1に送信されるBSS移行判断情報要求フレームは、例えば、図13で示されるような構成となる。
【0180】
図13のBSS移行判断情報要求フレームは、図中上段左から、1OctetのElement ID、1OctetのLength、1OctetのElement ID Extention、およびNOctetのBSS Transition Criteriaが格納されている。
【0181】
Element IDは、BSS移行判断情報要求フレームを識別する識別子の情報であり、Lengthは、データ長の情報である。
【0182】
また、Element ID Extentionは、BSS移行判断情報要求フレームの識別子の拡張子であり、BSS Transition Criteriaが格納されているか否かを示す情報を格納する。
【0183】
BSS Transition Criteriaは、図13の下段で示されるように、BSS移行先となる基地局12を選択するために用いる判断基準として、基地局12から送信されるBeacon信号に載せて(含ませて)送信することが要求される情報を指定する識別子を、優先度の順に格納している。図13においては、左から優先度が上位となり、判断基準となる情報の識別子としてCriteria IDが1OctetずつCriteria ID(Priority 1)、Criteria ID(Priority 2)・・・に対応付けられて格納され、図13においては、N個分格納されている。
【0184】
すなわち、BSS移行判断情報要求フレームは、通信装置13がBSS移行判断をするのに必要とする、Beacon信号に載せて送信することを要求する判断基準と、その優先度を特定する情報である。尚、Beacon信号に載せて送信することを要求する判断基準と、その優先度については、送信装置13を使用するユーザが任意に設定できるようにしてもよい。
【0185】
ステップS141において、基地局12-1の制御部51は、データ処理部52を制御して、無線通信部53により、通信装置13からのBSS移行判断情報要求を受信させる。
【0186】
より詳細には、基地局12-1の制御部51は、ここで受信されるBSS移行判断情報要求により、ステップS36(図7)において、BSS移行判断情報要求があることを認識して、処理が、ステップS37(図7)に進み、BSS移行判断情報要求処理が開始される。
【0187】
ステップS142において、基地局12-1の制御部51は、データ処理部52を制御して、通信装置13からのBSS移行判断情報要求に基づいて、コントローラ11に向けたBSS移行判断情報要求を生成し、無線通信部53、または、有線通信部54により、コントローラ11に送信させる。
【0188】
<基地局からコントローラに送信されるBSS移行判断情報要求フレーム>
基地局12-1からコントローラ11に送信されるBSS移行判断情報要求フレームは、例えば、図14で示されるような構成例となる。
【0189】
図14のBSS移行判断情報要求フレームは、図中上段左から、1OctetのtlvType、2OctetのtlvLength、NOctetのBSS Transition Criteriaが格納されている。
【0190】
tlvTypeは、TLV形式のタイプの情報であり、tlvLengthは、TLV形式のデータ長の情報である。なお、NOctetのBSS Transition Criteriaについては、図13の通信装置13から基地局12-1に送信されるBSS移行判断情報要求フレームにおけるBSS Transition Criteriaと同様であるので、その説明は省略する。
【0191】
ステップS131において、コントローラ11の制御部31は、データ処理部32を制御して、無線通信部33、または、有線通信部34により、基地局12-1からのBSS移行判断情報要求を受信させる。
【0192】
より詳細には、コントローラ11の制御部31は、ここで受信されるBSS移行判断情報要求により、ステップS14(図7)において、BSS移行判断情報要求があることを認識して、処理が、ステップS15(図7)に進み、BSS移行判断情報要求処理が開始される。
【0193】
ステップS132において、制御部31は、ネットワーク制御部35を制御して、BSS移行判断情報要求に基づいて、通信装置13に対してBeaconに載せて送信すべきBSS移行判断情報、すなわち、BSS移行を判断するための判断基準を決定させる。
【0194】
ステップS133において、制御部31は、データ処理部32を制御して、決定したBSS移行判断情報に基づいて、BeaconElement制御通知を生成させ、無線通信部33、または、有線通信部34より、全ての基地局12-1,12-2に送信させる。
【0195】
<BeaconElement制御通知フレーム>
コントローラ11から基地局12-1,12-2に送信されるBeaconElement制御通知フレームは、例えば、図15で示されるような構成例となる。
【0196】
図15のBeaconElement制御通知フレームは、図中上段左から、1OctetのtlvType、2OctetのtlvLength、および、NOctetのRequired Beacon Element IDが格納されている。
【0197】
Required Beacon Element IDは、BSS移行判断情報となる判断基準を特定する識別子を格納しており、図15の図中下段左から、Policy,Mandatory Element ID #1,Mandatory Element ID #2,…が格納されている。
【0198】
Policyは、制御方針の情報が格納されている。制御方針としては、Beacon信号にRequired Beacon Element IDを含むタイミングや期間が設定される。タイミングや期間は、例えば、「Required Beacon Element IDが常に含まれ続ける」、「Required Beacon Element IDが所定の期間中だけ含まれる」、「Required Beacon Element IDが所定の間隔でのみ含まれる」などのように設定される。
【0199】
Mandatory Element ID #Nは、BSS移行判断情報要求におけるBSS Transition CriteriaにおけるCriteria IDに対応する、Beacon信号における識別子の情報である。
【0200】
すなわち、BSS移行判断情報要求には、BSS移行判断情報である判断基準を識別する識別子としてCriteria IDが設定されている。一方で、Beacon信号に含ませる情報についての識別子については、Element ID(Required Beacon Element ID)が設定されている。
【0201】
このため、ネットワーク制御部35は、例えば、図16で示されるようにCriteria IDと、Element ID(Required Beacon Element ID)とを対応付けたBeacon Element決定テーブルを格納しており、BeaconElement制御通知フレームを生成する際、参照して、BSS移行判断情報要求のCriteria IDに対応するRequired Beacon Element IDを読み出してMandatory Element ID #Nとして格納する。
【0202】
すなわち、図16のBeacon Element決定テーブルにおいては、Criteria ID=1は、判断基準(Criteria)がRSSI(受信電力)であることを示すが、対応するBeacon信号に格納される判断基準の情報を識別する識別子(Required Beacon Element ID)は特にないことが示されている。すなわち、Beacon信号においては、RSSI(受信電力)は、信号受信時にデフォルトで測定されるため、特に識別子が設定されていない。
【0203】
また、Criteria ID=2は、判断基準(Criteria)となる情報がBSS Load(BSS負荷)であることを示すが、対応するBeacon信号に格納される判断基準としての識別子(Required Beacon Element ID)は28とされ、判断基準となる情報がBSS Loadとされていることが示されている。
【0204】
さらに、Criteria ID=3は、判断基準(Criteria)がAccess Delay(アクセス遅延)であるが、対応するBeacon信号に格納される判断基準としての識別子(Required Beacon Element ID)は39とされ、判断基準となる情報がBSS Average Access Delayであることが示されている。
【0205】
また、Criteria ID=4は、判断基準(Criteria)がQoS(信号品質)であるが、対応するBeacon信号に格納される判断基準としての識別子(Required Beacon Element ID)は35とされ、判断基準となる情報がQoS Capabilityであることが示されている。
【0206】
また、Mandatory Element ID #1,Mandatory Element ID #2,…は、図13を参照して説明した通信装置13から基地局12-2に送信されるBSS移行判断情報要求フレームにおけるCriteria ID(Priority 1)、Criteria ID(Priority 2)・・・と同様に優先度に応じた順序で、判断基準の情報を識別する識別子(Required Beacon Element ID)が配置される。この結果、例えば、図15においては、Mandatory Element ID #1で特定される判断基準となる情報は、最も優先度が高く、Mandatory Element ID #2で特定される判断基準となる情報は、2番目に優先度が高い。すなわち、Mandatory Element ID #Nの情報は、Nの大きさが小さい程優先度が高く大きい程優先度が低い。
【0207】
すなわち、BeaconElement制御通知を受信した基地局12は、Required Beacon Element IDに含まれるMandatory Element ID #Nを確認することで、自らが送信するBeacon信号において、BSS移行判断情報のうちのいずれを、どのような優先度で含めて送信するのかを認識することができる。
【0208】
ステップS143において、基地局12-1の制御部51は、データ処理部52を制御して、無線通信部53、または有線通信部54により、コントローラ11より送信されてくるBeaconElement制御通知を受信させる。
【0209】
ステップS144において、基地局12-1の制御部51は、データ処理部52を制御して、BeaconElement制御通知に基づいて、Beaconフレームを生成させて、無線通信部53により、Beacon信号として通信装置13に送信させる。
【0210】
<Beaconフレーム>
基地局12から通信装置13に送信されるBeaconフレームは、例えば、図17で示されるような構成となる。
【0211】
図17のBeaconフレームは、図中上段左から、3OctetのMAC header、可変長(V)のFrame Body、および4OctetのFCSが格納されている。
【0212】
MAC headerには、フレームの種別、送信タイミング、受信先アドレス、送信先アドレス等の情報が格納されている。
【0213】
Frame Bodyは、送信される実データであり、図中下段左から8bitのTimestamp、2bitのBeacon Interval、2bitのCapability Information、可変長のSSID、可変長のSupported Rates and BSS Membership Selectors、および可変長のElement#1,…Element#nを含む。
【0214】
Timestampには、基地局12と通信装置13間で通信中の同期を取るために用いられる時刻情報が格納されている。
【0215】
また、Beacon Intervalには、Beacon信号が送信される時間間隔が格納されている。
【0216】
Capability Informationには、基地局12の基本的なCapability情報が格納されている。SSIDには、基地局12を識別する情報が格納されている。
【0217】
Supported Rates and BSS Membership Selectorsには、サポートされている通信レートの情報が格納されている。
【0218】
Element#nには、BeaconElement制御通知におけるRequired Beacon Element IDにおける、Mandatory Element ID #Nに対応する情報が格納されており、Nが小さい程優先度が高く設定される。
【0219】
FCS(Frame Check Sequence)には、誤り訂正符号が格納されている。
【0220】
尚、現在、通信接続が確立されてない基地局12-2においては、ステップS72において、制御部51が、データ処理部52を制御して、無線通信部53、または有線通信部54により、コントローラ11よりBeaconElement制御通知が送信されてきたか否かを判定する。ステップS72において、BeaconElement制御通知が送信されてきたとみなされた場合、処理は、ステップS73に進む。
【0221】
ステップS73において、基地局12-2の制御部51は、データ処理部52を制御して、無線通信部53、または有線通信部54により、コントローラ11より送信されてくるBeaconElement制御通知を受信させる。
【0222】
ステップS74において、基地局12-2の制御部51は、データ処理部52を制御して、BeaconElement制御通知に基づいて、Beaconフレームを生成させて、無線通信部53により、Beacon信号として通信装置13に送信させる。
【0223】
すなわち、ここまでの処理により、通信装置13からのBSS移行判断情報要求に基づいて、通信装置13から要求されたCriteria IDにより特定されたBSS移行判断情報となる判断基準となる情報を含むBeacon信号が周囲の基地局12-1,12-2から通信装置13に向けて送信される。
【0224】
ステップS152において、通信装置13の制御部71は、データ処理部72を制御して、基地局12-1,12-2より送信されてくるBeacon信号を無線通信部73により受信させ、受信したBeacon信号に基づいて、通信品質比較処理を実行する。
【0225】
<通信品質比較処理>
ここで、図18のフローチャートを参照して、通信品質比較処理について説明する。
【0226】
ステップS201において、通信装置13の制御部71は、データ処理部72を制御して、周囲の基地局12より送信されてくるBeacon信号を、無線通信部73により受信させる。
【0227】
ステップS202において、制御部71は、データ処理部72を制御して、2つ以上の基地局12からBeacon信号が受信されたか否かを判定する。すなわち、現在通信が確立された基地局12-1を含めて、少なくとももう1つ以上の基地局12からのBeacon信号が受信されない場合、比較することができないので、比較が可能であるか否かが判定される。
【0228】
ステップS202において、2つ以上の基地局12からBeacon信号が受信されていないとみなされた場合、処理は、終了し、現状の基地局12との通信接続が確立された状態が継続される。
【0229】
一方、ステップS202において、2つ以上の基地局12からBeacon信号が受信されたとみなされた場合、処理は、ステップS203に進む。
【0230】
ステップS203において、制御部71は、データ処理部72を制御して、優先度のカウンタPを1に初期化させる。
【0231】
ステップS204において、制御部71は、データ処理部72を制御して、優先度P位となる判断基準について、周囲の基地局12と、現在通信接続が確立された基地局12との通信品質を比較させる。
【0232】
ステップS205において、制御部71は、データ処理部72を制御して、優先度P位となる判断基準について、現在通信接続が確立された基地局12の通信品質と周囲の基地局12の通信品質が略同一であるか否かを判定させる。
【0233】
ステップS205において、優先度P位となる判断基準について、現在通信接続が確立された基地局12の通信品質と周囲の基地局12の通信品質が略同一ではないと判定された場合、処理は、ステップS206に進む。
【0234】
ステップS206において、制御部71は、データ処理部72を制御して、優先度P位となる判断基準について、現在通信が確立された基地局12の通信品質よりも、周囲の基地局12-1のうちのいずれかの通信品質の方が高いか否かを判定させる。
【0235】
ステップS206において、優先度P位となる判断基準について、現在通信接続が確立された基地局12の通信品質よりも、周囲の基地局12のうちのいずれかの通信品質の方が高いと判定された場合、処理は、ステップS207に進む。
【0236】
ステップS207において、制御部71は、優先度P位となる判断基準について、周囲の基地局12のうち、現在通信接続が確立された基地局12の通信品質より高い基地局12に移行して通信を確立させる必要があると判断し、処理は終了する。
【0237】
また、ステップS206において、優先度P位となる判断基準について、現在通信接続が確立された基地局12の通信品質よりも、周囲の基地局12のうちのいずれかの通信品質の方が高くないと判定された場合、ステップS207の処理がスキップされて、処理が終了する。
【0238】
一方、ステップS205において、優先度P位となる判断基準について、現在通信が確立された基地局12の通信品質と周囲の基地局12の通信品質が略同一であると判定された場合、処理は、ステップS208に進む。
【0239】
ステップS208において、制御部71は、カウンタPが最大値、すなわち、優先度Pが最下位であるか否かを判定し、カウンタPが最大値ではない、すなわち、最下位ではないか否かを判定する
【0240】
ステップS208において、カウンタPが最大値ではない場合、処理は、ステップS209に進む。
【0241】
ステップS209において、制御部71は、データ処理部72を制御して、カウンタPを1インクリメントして、処理は、ステップS204に戻る。
【0242】
すなわち、優先度P位となる判断基準について、現在通信接続が確立された基地局12の通信品質と周囲の基地局12の通信品質が略同一ではないと判定されるか、または、優先度が最下位となる判断基準になるまで、順次判断基準の優先度を下げながら、通信品質の比較を繰り返す。
【0243】
そして、ステップS208において、カウンタPが最大値となり、優先度が最下位となる判断基準になるまで通信品質を比較しても、いずれも略同一である場合、処理は終了する。
【0244】
すなわち、判断基準として優先度の高いものから通信品質を比較し、いずれかの基地局12が優れている場合であって、その基地局12が、現在通信接続が確立されていない基地局12であるようなときは、通信接続を申請すべきであると判定され、それ以外の場合、現在通信接続が確立されている基地局12との通信が継続されるべきであると判定される。
【0245】
ここで、図12のフローチャートの説明に戻る。
【0246】
ステップS153において、通信装置13の制御部71は、データ処理部72を制御して、基地局12を移行して通信接続を新たに申請する必要があるか否かを判定する。すなわち、今の場合、通信品質比較処理により、優先度の高い判断基準について、現在通信接続が確立された基地局12-1よりも基地局12-2の方が、通信品質が高く、移行して通信接続の申請をすべきであると判定されたか否かが判定される。
【0247】
そして、ステップS153において、基地局12を移行して通信接続を新たに申請する必要があると判定された場合、処理は、ステップS154に進む。
【0248】
ステップS154において、通信装置13の制御部71は、データ処理部72を制御して、通信品質比較処理により通信品質が現状の基地局12よりも高いとみなされた、移行先となる基地局12-2に対して、無線通信部73より、通信接続申請を送信させる。
【0249】
ステップS75において、基地局12-2の制御部51は、データ処理部52を制御して、無線通信部53により、通信装置13から送信されてきた通信接続申請が受信されたか否かを判定し、通信接続申請が受信された場合、処理は、ステップS76に進む。
【0250】
ステップS76において、基地局12-2の制御部51は、データ処理部52を制御して、無線通信部53により受信された通信接続申請に基づいて、通信接続申請を受け付けて、通信装置13との通信接続を確立する。
【0251】
また、ステップS153において、基地局12を移行して通信接続を新たに申請する必要があると判定されない場合、ステップS154の処理は、スキップされる。
【0252】
対応して、ステップS75においては、接続申請がないとみなされるので、ステップS76の処理がスキップされる。
【0253】
以上の処理により、通信装置13は、通信品質が第2の閾値よりも低い場合には、周囲の基地局12に対してBeacon信号に載せて判断基準となる情報を送信させるように要求し、Beacon信号を受信して、判断基準を優先度の高い順に順次比較して、周囲の基地局12の方が優れているとみなされたとき、通信品質の高い新たな基地局12-2への移行が実現される。
【0254】
これにより、通信装置13はコントローラ11や基地局12へ最適な移行先を問合せしなくとも、周囲の基地局12からのBeacon信号によりBSS移行判断に必要な情報を取得することで最適な移行先を自らで決定することが可能となり、BSS移行の高度化かつ短縮化が実現可能となる。
【0255】
結果として、優先度の高い判断基準に基づいて、通信接続を確立すべき基地局12が選択されることになるので、無線LANの通信環境の変動に対応して、安定した通信を実現することが可能となる。
【0256】
尚、以上においては、図3の通信システム1における通信装置13が、通信接続が確立された基地局12-1から、通信品質の高い基地局12-2にBSS移行をする際に、コントローラ11や基地局12がBeacon信号に含める情報を制御する方法について説明してきたが、その他の処理においても、Beacon信号に含まれる情報を制御するようにしてもよい。
【0257】
例えば、基地局12がチャネルを切替える際、基地局12がBeacon信号内にChannel Switch Announcementを含めるように制御するBeacon信号を送信するようにすることで、通信装置13はチャネル切替えが行われることを予め知ることができる。このため、通信装置13は、Channel Switch Announcementに基づいて、基地局12がチャネル切替を実行するタイミングに合わせて、チャネルを切り替えることができるので、チャネルが切り替わっても通信を継続することが可能となる。
【0258】
また、新たに接続してきた通信装置13が、基地局12の実装依存によりBeacon信号内に含まれない情報を必要とする場合でも、BSS移行判断情報要求を送信するときと同様に、Criteria IDで情報を指定して、Beacon信号に載せて送信させるようにすることが可能である。
【0259】
<<3.第1の実施の形態の第1の応用例>>
以上においては、通信装置13が、基地局12-1からのDL信号を受信する際に通信品質判定処理を実行する例について説明してきたが、基地局12-1が、通信装置13からのUL(UpLoad)信号に基づいて、信号品質判定処理を行うようにして、BSS移行問合せや、BSS移行判断情報要求を送信するようにしてもよい。
【0260】
このようにすることで、通信装置13から信号品質判定処理による判定結果を送る必要がなくなるので、通信システム1全体の通信データ量を低減させることができる。
【0261】
<基地局により信号品質判定処理を行う場合の通信制御処理>
次に、図19のフローチャートを参照して、基地局12-1により信号品質判定処理を行う場合の通信制御処理について説明する。
【0262】
尚、図19のフローチャートにおけるステップS211乃至S215の処理、ステップS231乃至S232,S234乃至S237の処理、ステップS251,S253乃至S256の処理、およびステップS271乃至S276の処理は、図7のフローチャートにおけるステップS11乃至S15の処理、ステップS31乃至S32,S34乃至S37の処理、ステップS51,S53乃至S56の処理、およびステップS71乃至S76の処理と同様であるので、その説明は省略する。
【0263】
すなわち、図19のフローチャートにおいて、図7のフローチャートと異なる点は、ステップS233、およびステップS252の処理である。
【0264】
すなわち、ステップS252において、通信装置13の制御部71は、BSS移行config設定に基づいて、データ処理部72を制御して、無線通信部73よりUL信号を基地局12-1に対して送信する。
【0265】
これに応じて、ステップS233において、基地局12-1の制御部51は、BSS移行config設定に基づいて、通信装置13より送信されてきた、UL信号を受信して、通信品質劣化判定処理を実行し、通信品質の劣化を判定する。
【0266】
以降の処理については、通信品質劣化判定処理の判定結果に基づいて、BSS移行問合せ処理、BSS移行判断情報要求処理、およびいずれの処理もなされないかのいずれかとされる。
【0267】
図19の通信制御処理においては、通信品質劣化判定処理が基地局12-1によりなされることにより、通信品質劣化判定処理の判定結果が通信装置13から基地局12-1に送信される処理が不要となるため、通信システム1の全体における通信データ量を低減させることが可能となる。
【0268】
<<4.第1の実施の形態の第2の応用例>>
以上においては、BeaconElement制御通知に含まれるRequired Beacon Element IDにおけるMandatory Element IDは、通信装置13から送信されるBSS移行判断情報要求に含まれている、BSS Transition Criteriaに基づいて決定されていたが、通信装置13におけるサービス内容に応じて予め設定するようにしてもよい。
【0269】
すなわち、例えば、図20で示されるように、サービス内容に応じて優先度(Priority)と、判断基準(Criteria)を設定し、通信装置13からは、BSS移行判断情報要求を送信する際、BSS Transition Criteriaに代えて、サービスの内容の情報を送信するようにしてもよい。
【0270】
図20においては、優先度(Priority)が、図中最左部で示されるように、上から0,1,2・・・と設定され、それぞれサービス内容として、File DownLoad、Video Call、およびReal-Time Gaming・・・が示されている。
【0271】
図20においては、優先度が0となり、最も低いFile DownLoadについては、判断基準(Criteria)としてRSSI(受信電力)が設定され、対応するBeacon信号における識別子であるRequired Beacon Element IDとしての設定がなされていないことが示されている。すなわち、デフォルトでRSSIは測定される。
【0272】
また、優先度が1となるVideo Callについては、判断基準(Criteria)としてRSSI(受信電力)とBSS Load(BSS負荷)が設定され、Beacon信号における識別子であるRequired Beacon Element IDとして、BSS Load(BSS負荷)に対応する28が設定されることが示されている。
【0273】
さらに、優先度が2となるReal-Time Gamingについては、判断基準(Criteria)として、Accesses Delay(アクセス遅延)、RSSI(受信電力)、およびBSS Load(BSS負荷)が設定され、Beacon信号における識別子であるRequired Beacon Element IDとして、BSS Load(BSS負荷)に対応する28、およびBSS Average Access Delayに対応する39が設定されることが示されている。
【0274】
コントローラ11のネットワーク制御部35は、図20で示されるようなテーブルを格納しており、通信装置13からのBSS移行判断情報要求に含まれるサービス内容の情報に応じて、図20のテーブルにおけるRequired Beacon Element IDを読みだして、Beacon Element制御通知フレームを生成して、全基地局12に送信する。
【0275】
また、サービスに対応するRequired Beacon Element IDのみを予め設定しておき、各サービスの優先度については、通信装置13からのBSS移行判断情報要求に含まれるようにしてもよい。この場合、優先度の情報は、Priority Code Point(PCP)やAccess Category(AC)等の情報から判断するようにしてもよい。
【0276】
また、図20で示されるような、サービス内容とRequired Beacon Element IDとの対応関係を示すテーブルについては、例えば、図7のフローチャートにおけるステップS76の処理により、新たに基地局12と通信装置13との通信接続が確立されるときの手続の一部として、通信装置13から新たに通信接続が確立された基地局12を介してコントローラ11に供給されるようにすることで、通信装置13により指定された情報とするようにしてもよい。
【0277】
尚、処理については、図12のステップS132の処理において、図20を参照してBSS移行判断情報の内容を決定する点が異なるのみであるので、その説明は省略する。
【0278】
<<5.第1の実施の形態の第3の応用例>>
以上においては、通信品質劣化判定処理の判定結果に基づいて、ユーザの意思とは無関係に基地局12の移行が判断される例について説明してきたが、通信品質劣化判定処理の判定結果をユーザに提示して、ユーザの判断により基地局12を移行するようにしてもよい。
【0279】
すなわち、例えば、通信品質比較処理により、比較結果として周囲の基地局12の方が、通信品質が高く、移行先の候補とみなせる場合、図21の左部で示されるように、制御部71が、表示部74を制御して、通常画面上に、例えば、「AP切替候補を発見しました」と表記したポップアップ101を表示する。ユーザは、ポップアップ101が表示されることにより、移行先の後方が発見されたことを認識することができる。
【0280】
ポップアップ101は、ユーザが、移行先の候補となる基地局12の情報を確認して、基地局12の移行、すなわち、BSS移行を検討するとき操作されるものであり、例えば、タップされることにより、表示部74の表示が切り換えられて、例えば、図21の右部で示されるような比較結果102が表示されるようにする。
【0281】
図21の右部の比較結果102においては、最上段に「接続する方を選択してください」と表記され、その下に上から現在接続されている基地局12における判断基準毎の比較結果が提示された表示欄111が表示される。また、表示欄111の下には、移行先の候補、すなわち、切り替え先の候補となる基地局12における判断基準毎の比較結果が提示された表示欄112が表示される。
【0282】
図21においては、表示欄111には、最上段において「現在接続しているAP」と表記され、現在接続が確立された基地局12の情報が表示されていることが表されている。そして、表示欄111においては、上から、現在接続が確立されている基地局12のSSIDがXXXであり、RSSIが二重丸で表記されて、良好な状態であり、BSS負荷が三角印で表記されて、やや悪い状態であり、平均遅延が三角印で表記されて、やや悪い状態であることが表されている。
【0283】
一方、表示欄112には、上から「切替候補AP」と表記され、移行先の候補となる基地局12の情報が表示されていることが表されている。そして、表示欄112においては、上から、切替候補となる基地局12のSSIDがYYYであり、RSSIが丸で表記されて、普通の状態であり、BSS負荷が三角印で表記されて、やや悪い状態であり、平均遅延が三角印で表記されて、やや悪い状態であることが表されている。
【0284】
尚、図21の比較結果102が表示される場合、判断基準としては、BSS負荷や平均遅延がRSSIよりも優先順位が高いことが前提となる。すなわち、図21の比較結果102においては、表示欄111,112で示されるように、BSS負荷や平均遅延について、現在接続が確立された基地局12よりも、切替候補となる移行先の基地局12の通信品質の方が優れている。これにより、切替候補が発見されたものとみなされている。
【0285】
ユーザは、この表示欄111,112における判断基準の情報に基づいて、いずれの基地局12との接続を確立するかについて判断し、表示欄111,112のいずれかをタップすることで接続先を選択することができる。
【0286】
すなわち、図21の場合、表示欄111がタップされると、現在接続されている基地局12との接続が継続され、表示欄112がタップされると、移行先の候補となる基地局12との接続が申請されて、接続が切り換えられる。
【0287】
<第1の実施の形態の第3の応用例における通信品質比較処理>
次に、図22のフローチャートを参照して、第1の実施の形態の第3の応用例における通信品質比較処理について説明する。尚、図22のフローチャートにおけるステップS281乃至S286,S291乃至S293の処理については、図18のフローチャートにおけるステップS201乃至S209の処理と同様であるので、その説明は適宜省略する。
【0288】
すなわち、ステップS286において、優先度P位となる判断基準について、現在通信が確立された基地局12の通信品質よりも、周囲の基地局12のうちのいずれかの通信品質の方が高いと判定されると、処理は、ステップS287に進む。
【0289】
ステップS287において、制御部71は、優先度P位となる判断基準について、周囲の基地局12のうち、現在通信が確立された基地局12の通信品質より高い切替候補となる基地局12があることを示す、例えば、図21で示されるようなポップアップ101を表示部74に表示されている通常画像上に表示する。
【0290】
ステップS288において、制御部71は、表示部74がタッチパネルとして操作されて、ポップアップ101がタップされたか否かを判定し、タップされた場合、処理は、ステップS289に進む。
【0291】
ステップS289において、制御部71は、優先度P位となる判断基準について、周囲の基地局12のうち、現在通信が確立された基地局12の通信品質より高い基地局12と、現在接続が確立された基地局12のそれぞれの通信品質の情報からなる表示欄111,112を生成して、表示部74を制御して、比較結果102として表示させる。
【0292】
ステップS290において、制御部71は、表示部74がタッチパネルとして操作されて、表示欄112がタップされて、切替が指示されたか否かを判定し、切替が指示された場合、処理は、ステップS291に進む。
【0293】
ステップS291において、制御部71は、優先度P位となる判断基準について、周囲の基地局12のうち、現在通信接続が確立された基地局12の通信品質より高い基地局12に移行して通信を確立させる必要があると判断する。
【0294】
尚、ステップS288において、ポップアップ101がタップされない、または、ステップS290において、表示欄111がタップされて基地局12の切り替えが指示されない場合、処理は終了し、基地局12の切り替えはなされない。
【0295】
以上の処理により、通信品質劣化判定処理の判定結果をユーザに提示して、ユーザの判断により基地局12を移行させるようにすることが可能となる。
【0296】
これにより、例えば、所定の位置から別の位置に移動したことにより切替候補となる基地局12が発見された場合でも、短時間で元の所定の位置に戻るような場合、ユーザの意思で、基地局12の移行を選択しないようにすることで、基地局12の移行に伴った遅延などを発生させないようにすることができる。
【0297】
<<6.第2の実施の形態>>
以上においては、通信システム1が、コントローラ11、基地局12-1,12-2、および通信装置13からなる構成である場合について説明してきたが、通信システム1は、基地局12-1,12-2、および通信装置13からなる構成としてもよい。
【0298】
すなわち、図23で示されるように、通信システム1は、基地局12-1,12-2、および通信装置13からなる構成としてもよい。
【0299】
尚、図23の通信システム1においても、通信装置13は、基地局12-1により通信の接続が確立されていることを前提として説明を進めるものとする。
【0300】
すなわち、この場合については、通信装置13との通信が確立された基地局12-1が、図1におけるコントローラ11と基地局12-1との機能を兼ねる。
【0301】
すなわち、通信装置13が通信品質劣化判定処理を実行して、判定結果を基地局12-1に送信する。これに応じて、基地局12-1は、通信品質劣化判定処理の判定結果に基づいて、図1におけるコントローラ11および基地局12-1のBSS移行問合せ処理、およびBSS移行判断情報要求処理のいずれかを実行する。
【0302】
<基地局および通信装置からなる通信システムにおける通信制御処理>
次に、図24のフローチャートを参照して、基地局12-1,12-2および通信装置13からなる通信システムにおける通信制御処理について説明する。
【0303】
尚、図24のフローチャートにおけるステップS331乃至S334,S336の処理、S351乃至S356,S371乃至S373,S375乃至S377の処理については、図7のステップS11,S32乃至S34,S36、ステップS51乃至S56、およびステップS71乃至S76の処理と同様であるので、その説明は省略する。
【0304】
すなわち、ステップS335の処理においては、基地局12-1により、図11のステップS111,S102,S114の処理がなされ、BSS移行問合せが受信されて、移行先が決定され、BSS移行要求が生成されて、通信装置13に送信される。
【0305】
また、ステップS337の処理においては、基地局12-1により、図12のS141,S132,S133(BeaconElement制御通知が生成されるのみ),S144の処理がなされ、BSS移行判断情報要求が受信されて、BSS移行判断情報が決定され、BeaconElement制御通知が生成されて、全基地局12に送信される。
【0306】
この際、基地局12-2において、BeaconElement制御通知が受信されると、ステップS374において、基地局12-2の制御部51が、データ処理部52を制御して、BeaconElement制御通知の応答信号を生成させて、無線通信部53により、BeaconElement制御通知を送信してきた基地局12-1に送信させる。
【0307】
これに応じて、ステップS338において、基地局12-2の制御部51は、データ処理部52を制御して、無線通信部53により、BeaconElement制御通知の応答信号を受信させる。
【0308】
そして、ステップS339において、基地局12-2の制御部51は、データ処理部52を制御して、BeaconElement制御通知に応じたBeaconを生成させて、無線通信部53より通信装置13に送信させる。
【0309】
図23の通信システムにおけるBeaconElement制御通知フレーム>
基地局12-1から基地局12-2に送信される図23の通信システムにおけるBeaconElement制御通知フレームは、例えば、図25で示されるような構成例となる。
【0310】
図25のBeaconElement制御通知フレームは、図中上段左から、1OctetのElement ID、1OctetのLength、1OctetのElement ID Extention、およびNOctetのRequired Beacon Element IDが格納されている。
【0311】
Element IDは、BeaconElement制御通知の識別子の情報であり、Lengthは、データ長の情報である。
【0312】
また、Element ID Extentionは、BeaconElement制御通知の識別子の拡張子であり、Steering Info.が格納されているか否かを示す情報を格納する。
【0313】
尚、Required Beacon Element IDについては、図16を参照して説明したBeaconElement制御通知フレームと同様であるので、その説明は省略する。
【0314】
すなわち、図25のBeaconElement制御通知フレームについては、tlv形式とされる。
【0315】
以上の構成においても、図3の通信システム1と同様に、無線LAN(Local Area Network)の通信環境の変動に対応して、安定した通信を実現することが可能となる。
【0316】
<<7.ソフトウェアにより実行させる例>>
ところで、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるが、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のコンピュータなどに、記録媒体からインストールされる。
【0317】
図26は、汎用のコンピュータの構成例を示している。このパーソナルコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)1001を内蔵している。CPU1001にはバス1004を介して、入出力インタフェース1005が接続されている。バス1004には、ROM(Read Only Memory)1002およびRAM(Random Access Memory)1003が接続されている。
【0318】
入出力インタフェース1005には、ユーザが操作コマンドを入力するキーボード、マウスなどの入力デバイスよりなる入力部1006、処理操作画面や処理結果の画像を表示デバイスに出力する出力部1007、プログラムや各種データを格納するハードディスクドライブなどよりなる記憶部1008、LAN(Local Area Network)アダプタなどよりなり、インターネットに代表されるネットワークを介した通信処理を実行する通信部1009が接続されている。また、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini Disc)を含む)、もしくは半導体メモリなどのリムーバブル記憶媒体1011に対してデータを読み書きするドライブ1010が接続されている。
【0319】
CPU1001は、ROM1002に記憶されているプログラム、または磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリ等のリムーバブル記憶媒体1011ら読み出されて記憶部1008にインストールされ、記憶部1008からRAM1003にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM1003にはまた、CPU1001が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0320】
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU1001が、例えば、記憶部1008に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース1005及びバス1004を介して、RAM1003にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
【0321】
コンピュータ(CPU1001)が実行するプログラムは、例えば、パッケージメディア等としてのリムーバブル記憶媒体1011に記録して提供することができる。また、プログラムは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供することができる。
【0322】
コンピュータでは、プログラムは、リムーバブル記憶媒体1011をドライブ1010に装着することにより、入出力インタフェース1005を介して、記憶部1008にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部1009で受信し、記憶部1008にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM1002や記憶部1008に、あらかじめインストールしておくことができる。
【0323】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0324】
尚、図26におけるCPU1001が、図4の制御部31、図5の制御部51、図6の制御部71の機能を実現させる。
【0325】
また、本明細書において、システムとは、複数の構成要素(装置、モジュール(部品)等)の集合を意味し、すべての構成要素が同一筐体中にあるか否かは問わない。したがって、別個の筐体に収納され、ネットワークを介して接続されている複数の装置、及び、1つの筐体の中に複数のモジュールが収納されている1つの装置は、いずれも、システムである。
【0326】
なお、本開示の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0327】
例えば、本開示は、1つの機能をネットワークを介して複数の装置で分担、共同して処理するクラウドコンピューティングの構成をとることができる。
【0328】
また、上述のフローチャートで説明した各ステップは、1つの装置で実行する他、複数の装置で分担して実行することができる。
【0329】
さらに、1つのステップに複数の処理が含まれる場合には、その1つのステップに含まれる複数の処理は、1つの装置で実行する他、複数の装置で分担して実行することができる。
【0330】
尚、本開示は、以下のような構成も取ることができる。
【0331】
<1> 無線端末と通信接続を確立して通信する無線基地局におけるBeacon信号に含まれる包含情報を制御する制御部
を備える無線装置。
<2> 前記制御部は、前記無線端末が、前記無線基地局の通信品質に基づいて、前記通信接続を確立して通信する無線基地局を選択するとき、前記無線基地局におけるBeacon信号に含まれる包含情報を制御する
<1>に記載の無線装置。
<3> 前記制御部は、前記無線端末が、現在、前記通信接続が確立された前記無線基地局との通信品質に基づいて、前記通信接続を確立して通信する新たな無線基地局を選択するか否かを判定するように設定する情報を前記無線端末に送信する
<2>に記載の無線装置。
<4> 前記制御部は、前記無線端末が、現在、前記通信接続が確立された前記無線基地局との通信品質のうちの、受信電力、パケット成功率、および待機時間のうちの少なくともいずれかに基づいて、前記通信接続を確立して通信する新たな無線基地局を選択するか否かを判定するように設定する情報を前記無線端末に送信する
<3>に記載の無線装置。
<5> 前記制御部は、前記無線端末が、現在、前記通信接続が確立された前記無線基地局との通信品質のうちの、前記受信電力、前記パケット成功率、および前記待機時間の少なくともいずれかと、所定の閾値との比較に基づいて、前記通信接続を確立して通信する新たな無線基地局を選択するか否かを判定するように設定する情報を前記無線端末に送信する
<4>に記載の無線装置。
<6> 前記所定の閾値は、前記無線基地局を直ちに移行させるレベルよりも高い閾値であり、
前記制御部は、前記無線端末が、現在、前記通信接続が確立された前記無線基地局との通信品質のうちの、前記受信電力、前記パケット成功率、および前記待機時間の少なくともいずれかが、前記所定の閾値よりも低いとき、前記通信接続を確立して通信する新たな無線基地局を選択するか否かを判定するように設定する情報を前記無線端末に送信する
<5>に記載の無線装置。
<7> 前記制御部は、前記無線端末において指定される情報に基づいて、前記Beacon信号に含まれる前記包含情報を制御する
<1>に記載の無線装置。
<8> 前記無線端末において指定される情報は、前記無線端末より通知される
<7>に記載の無線装置。
<9> 前記無線端末において指定される情報は、前記無線端末のサービス種別により特定される
<7>に記載の無線装置。
<10> 前記制御部は、前記Beacon信号に含まれる前記包含情報をElement IDとして指定する制御通知を、前記無線基地局に送信し、前記無線基地局が前記制御通知における前記Element IDに基づいて、前記Beacon信号に含まれる前記包含情報を制御して、前記Beacon信号を送信する
<1>乃至<9>のいずれかに記載の無線装置。
<11> 前記制御通知は、前記無線基地局が、前記Beacon信号に含まれる前記包含情報が包含される期間やタイミングを指定する情報をさらに含む
<10>に記載の無線装置。
<12> 無線端末と通信接続を確立して通信する無線基地局におけるBeacon信号に含まれる包含情報を制御する制御処理
を含む無線装置の無線通信方法。
<13> 周囲の無線基地局より送信されるBeacon信号に含まれる包含情報に基づいて、通信接続を確立する新たな無線基地局を選択する制御部
を備える無線端末。
<14> 前記制御部は、前記通信接続を確立する無線基地局を選択するための判断基準情報を、前記Beacon信号に含まれる包含情報を制御する無線装置に送信する
<13>に記載の無線端末。
<15> 前記判断基準情報は、複数の前記判断基準情報の優先度を示す情報を含む
<14>に記載の無線端末。
<16> 前記判断基準情報は、受信電力、BSS負荷、アクセス遅延、および信号品質を含む
<14>に記載の無線端末。
<17> 前記制御部は、周囲の無線基地局より送信されるBeacon信号に含まれる包含情報に基づいて、前記通信接続を確立する新たな無線基地局の候補を提示し、提示した候補への通信接続の確立を指示する操作がなされたとき、前記操作がなされた候補を、前記通信接続を確立する新たな無線基地局として選択する
<13>に記載の無線端末。
<18> 周囲の無線基地局より送信されるBeacon信号に含まれる包含情報に基づいて、通信接続を確立する新たな無線基地局を選択する制御処理
を含む無線端末の無線通信方法。
<19> Beacon信号に含める包含情報を通知する制御通知を受信し、前記制御通知に基づいて、前記包含情報を含めた前記Beacon信号を送信する制御部
を備えた無線基地局。
<20> Beacon信号に含める包含情報を通知する制御通知を受信し、前記制御通知に基づいて、前記包含情報を含めた前記Beacon信号を送信する制御処理
を含む無線基地局の無線通信方法。
【符号の説明】
【0332】
11 コントローラ, 12,12-1,12-2 基地局, 13 通信装置, 31 制御部, 32 データ処理部, 33 無線通信部, 34 有線通信部, 35 ネットワーク制御部, 51 制御部, 52 データ処理部, 53 無線通信部, 54 有線通信部, 55 表示部, 56 操作部, 71 制御部, 72 データ処理部, 73 無線通信部, 74 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
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