(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052049
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 59/40 20060101AFI20220328BHJP
【FI】
C08G59/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020158204
(22)【出願日】2020-09-23
(71)【出願人】
【識別番号】000105648
【氏名又は名称】コニシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089152
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】藤野 直彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 剛
【テーマコード(参考)】
4J036
【Fターム(参考)】
4J036AA01
4J036DC32
4J036DC38
4J036EA06
4J036JA06
4J036JA07
(57)【要約】
【課題】 耐熱性に優れた硬化物を与える、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 常温液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂に、常温固形のビスフェノールA型シアネート樹脂及びP-d型ベンゾオキサジンを投入し、100℃で4時間加熱混合し、常温に冷却して、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得る。また、常温液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂に、常温固形の4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミドを投入し、150℃で3時間加熱混合し、冷却して相溶物を得る。この相溶物に、常温固形のビスフェノールA型シアネート樹脂及びP-d型ベンゾオキサジンを投入し、100℃で4時間加熱混合し、常温に冷却して、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得る。この熱硬化性組成物を150℃に加熱すると仮硬化し、その後、200℃に加熱すると本硬化して、耐熱性に優れた硬化物が得られる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物、多官能シアネート化合物及びベンゾオキサジン化合物が相溶されてなる、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物。
【請求項2】
常温液状のエポキシ化合物に、多官能シアネート化合物及びベンゾオキサジン化合物が相溶されてなる、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物。
【請求項3】
エポキシ化合物、多官能シアネート化合物及びベンゾオキサジン化合物の合計量に対し、該エポキシ化合物の含有量が10~70質量%であり、該多官能シアネート化合物の含有量が10~80質量%であり、該ベンゾオキサジン化合物の含有量が3~30質量%である請求項1又は2記載の無溶剤型熱硬化性組成物。
【請求項4】
さらに、多官能マレイミド化合物が相溶されてなる、請求項1又は2記載の無溶剤型熱硬化性組成物。
【請求項5】
エポキシ化合物、多官能シアネート化合物、ベンゾオキサジン化合物及び多官能マレイミド化合物の合計量に対し、該エポキシ化合物の含有量が10~70質量%であり、該多官能シアネート化合物の含有量が10~80質量%であり、該ベンゾオキサジン化合物の含有量が3~30質量%であり、該多官能マレイミド化合物が5~30質量%である請求項4記載の無溶剤型熱硬化性組成物。
【請求項6】
エポキシ当量とエポキシ化合物一分子が持っているエポキシ基の数との積が700以下である常温固形のエポキシ化合物、常温固形の多官能シアネート化合物及び常温固形のベンゾオキサジン化合物を、加熱し混合して均一な液状とした後、常温に冷却する、請求項1記載の無溶剤型熱硬化性組成物の製造方法。
【請求項7】
エポキシ当量とエポキシ化合物一分子が持っているエポキシ基の数との積が700以下である常温固形のエポキシ化合物と常温固形の多官能マレイミド化合物を、加熱し混合して均一な液状とした後、冷却して相溶物を得る第一工程、
前記相溶物に、常温固形の多官能シアネート化合物及び常温固形のベンゾオキサジン化合物を投入した後、前記第一工程の加熱時の温度よりも低い温度で加熱し混合して均一な液状とした後、常温に冷却する第二工程よりなる、請求項4記載の無溶剤型熱硬化性組成物の製造方法。
【請求項8】
常温液状のエポキシ化合物に、常温固形の多官能シアネート化合物及びベンゾオキサジン化合物を投入した後、加熱し混合して均一な液状とした後、常温に冷却する、請求項2記載の無溶剤型熱硬化性組成物の製造方法。
【請求項9】
常温液状のエポキシ化合物に、常温固形の多官能マレイミド化合物を投入した後、加熱し混合して均一な液状とした後、冷却して相溶物を得る第一工程、
前記相溶物に、常温固形の多官能シアネート化合物及び常温固形のベンゾオキサジン化合物を投入した後、前記第一工程の加熱時の温度よりも低い温度で加熱し混合して均一な液状とした後、常温に冷却する第二工程よりなる、請求項4記載の無溶剤型熱硬化性組成物の製造方法。
【請求項10】
第一工程の加熱温度が150~200℃であり、第二工程の加熱温度が90~140℃である請求項7又は9記載の無溶剤型熱硬化性組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体又はプリント配線基板等の電気・電子材料の封止材、含浸材又は接着剤等として使用しうる熱硬化性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体等の電気・電子材料の封止材として、耐熱性に優れた硬化物が採用されている。かかる硬化物を得るための熱硬化性組成物として、エポキシ化合物、多官能シアネート化合物、ベンゾオキサジン化合物及び多官能マレイミド化合物よりなるものが知られている(特許文献1)。しかるに、各化合物は、一般的に常温で固形のものが多く、特許文献1記載の技術においては、シリカ等の充填剤を溶媒に分散させたスラリー中に、各化合物を溶解させて用いている。したがって、熱硬化性組成物が溶媒を含むスラリーの形態で提供されることになる。
【0003】
しかしながら、かかる熱硬化性組成物は、使用時に溶媒を蒸発させなければならず、作業環境が悪化するという欠点があった。また、溶媒の蒸発により、硬化物の体積が収縮したり、硬化物に割れが発生する恐れもあった。
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
エポキシ化合物と多官能性シアネート化合物とベンゾオキサジン化合物は、その形態を問わず、特定の条件で混合すると相互に良く相溶し、溶媒を用いることなく、常温で均一な液状を維持しうることを、本発明者等は発見した。たとえば、常温液状のエポキシ化合物に、固形の多官能シアネート化合物及び固形のベンゾオキサジン化合物を投入し、特定の条件で混合すると、固形の化合物がエポキシ化合物とよく相溶し、常温で液状となることを発見した。また、常温液状のエポキシ化合物に、固形の多官能マレイミド化合物を投入し、特定の条件で混合すると、固形の多官能マレイミド化合物がエポキシ化合物とよく相溶して常温で液状となることを発見した。本発明は、かかる発見に基づいてなされたものである。すなわち、本発明は、エポキシ化合物、多官能シアネート化合物及びベンゾオキサジン化合物が相溶されてなる、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物に関するものである。
【0007】
[用語の定義]
本発明において、「常温」とは、10~30℃の温度をいう。したがって、「常温液状」とは、温度10~30℃の全範囲において、液状となっているということである。
本発明において、「無溶剤型」とは、溶剤を用いて成分を溶解させていないことをいう。したがって、無溶剤型熱硬化性組成物とは、組成物中の有効成分が溶剤によって溶解されていない組成物のことである。
【0008】
本発明で用いるエポキシ化合物は常温で固形であっても液状であってもよい。本発明においては、特に常温液状のエポキシ化合物を用いるのが好ましい。常温液状のエポキシ化合物とは、エポキシ化合物固有の状態として常温液状となっているものである。すなわち、溶剤を用いることなく、常温液状となっているものである。かかる常温液状のエポキシ化合物としては、常温液状のビスフェノールA型エポキシ化合物又は常温液状のビスフェノールF型エポキシ化合物等が用いられる。常温液状のビスフェノールA型エポキシ化合物としては、DIC社製のEPICLON 850S、EPICLON 850、EPICLON 840、EPICLON 840S又はEPICLON 850LC等が単独で又は混合して用いられる。また、常温液状のビスフェノールF型エポキシ化合物としては、DIC社製のEPICLON 830S、EPICLON 830又はEPICLON 835LV等が単独で又は混合して用いられる。なお、常温液状のビスフェノールA型エポキシ化合物と常温液状のビスフェノールF型エポキシ化合物等を混合して用いても良い。
【0009】
本発明において、常温固形のエポキシ化合物を用いる場合、エポキシ当量とエポキシ化合物一分子が持っているエポキシ基の数(以下、単に「エポキシ基数」という。)との積が700以下、より好ましくは600以下であるものを採用するのが好ましい。かかるエポキシ化合物は、その分子量が約700以下となり、低分子量のものである。したがって、多官能性シアネート化合物とベンゾオキサジン化合物と混合し加熱して相溶状態となった後に、常温に冷却しても、エポキシ化合物の分子相互間の絡み合いが阻害され、固形物が生成されないのである。エポキシ当量とエポキシ基数の積が700を超えると、常温に冷却した場合、固形物が生成される傾向が生じる。常温固形のエポキシ化合物としては、エポキシ当量とエポキシ基数の積が約300である日産化学工業社製のTEPIC-Sや、エポキシ当量とエポキシ基数の積が約400であるDIC社製のEPICLON HP4770等が単独で又は混合して用いられる。
【0010】
多官能シアネート化合物は、一般的に常温固形のものが用いられる。常温固形の多官能シアネート化合物としては、トリアジン環を形成して硬化するビスフェノールA型シアネート化合物等が用いられる。
【0011】
ベンゾオキサジン化合物も、一般的に常温固形のものが用いられる。常温固形のベンゾオキサジン化合物としては、四国化成工業社製のP-d型ベンゾオキサジン又はF-a型ベンゾオキサジン等の特開2014-141426号公報に記載されているものが用いられる。また、小西化学工業社製のBS-BXZやBF-BXZ等も用いられる。さらに、これらのベンゾオキサジン化合物を混合して用いても良い。
【0012】
組成物中における上記した各化合物の配合割合は、以下のとおりであるのが好ましい。すなわち、エポキシ化合物、多官能シアネート化合物及びベンゾオキサジン化合物の合計量に対し、エポキシ化合物の含有量は10~70質量%であり、多官能シアネート化合物の含有量は10~80質量%であり、ベンゾオキサジン化合物の含有量は3~30質量%、より好ましくは10~30質量%であるのが好ましい。エポキシ化合物の含有量が10質量%未満になると、固形の多官能性シアネート化合物及びベンゾオキサジン化合物を相溶させにくくなり、得られる組成物中に結晶が発生しやすくなる傾向が生じる。エポキシ化合物の含有量が70質量%を超えると、得られる硬化物の耐熱性が低下する傾向が生じる。多官能シアネート化合物の含有量が10質量%未満になると、得られる硬化物の耐熱性が低下する傾向が生じる。多官能シアネート化合物の含有量が80質量%を超えると、相対的にエポキシ化合物の含有量が少なくなり、得られる組成物中に結晶が発生しやすくなる傾向が生じる。ベンゾオキサジン化合物の含有量が3質量%未満になると、得られる硬化物の耐熱性が低下する傾向が生じる。ベンゾオキサジン化合物の含有量が30質量%を超えると、組成物が増粘しやすくなり、可使時間が低下する傾向が生じる。
【0013】
本発明に係る常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物中に、さらに、一般的に固形の多官能マレイミド化合物が相溶されて含有されているのが好ましい。多官能マレイミド化合物を含有させると、仮硬化の時間を短縮しうるからである。多官能マレイミド化合物としては、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス-(3エチル-5メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、フェニレンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド又は1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン等が単独で又は混合して用いられる。また、これらを重合させたポリマー(重合物)を用いてもよい。
【0014】
多官能マレイミド化合物は、組成物中に5~30質量%含有されているのが好ましい。多官能マレイミド化合物の含有量が5質量%未満になると、仮硬化の時間を短縮しにくくなる傾向が生じる。多官能マレイミド化合物の含有量が30質量%を超えると、組成物が高粘度となり、作業性が低下する傾向が生じる。
【0015】
本発明に係る常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物は、エポキシ化合物、多官能シアネート化合物並びにベンゾオキサジン化合物及び所望により多官能マレイミド化合物の各々を、融点以上に加熱して混合することにより製造することができる。特に、好ましい製造方法は以下のとおりである。すなわち、常温固形のエポキシ化合物、常温固形の多官能シアネート化合物及び常温固形のベンゾオキサジン化合物を、加熱し混合して均一な液状とした後、常温に冷却して、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得る方法である。この際、上記したように、常温固形のエポキシ化合物としては、エポキシ当量とエポキシ基数の積が700以下のものを採用するのが好ましい。加熱温度は90~140℃程度で加熱混合時間は10分~24時間程度で十分である。かかる方法により、エポキシ化合物、多官能シアネート化合物及びベンゾオキサジン化合物が、よく相溶し、冷却しても固形物が析出せずに、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物が得られるのである。
【0016】
また、常温液状のエポキシ化合物に、常温固形の多官能シアネート化合物と常温固形のベンゾオキサジン化合物を投入した後、加熱し混合して均一な液状とした後、常温に冷却して、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得る方法も好ましいものである。加熱温度や加熱混合時間は上記と同程度であり、加熱温度は90~140℃程度で加熱混合時間は10分~24時間程度で十分である。かかる方法により、常温固形の多官能シアネート化合物及び常温固形のベンゾオキサジン化合物が、常温液状のエポキシ化合物によく相溶し、冷却しても固形物が析出せずに、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物が得られるのである。
【0017】
多官能マレイミド化合物を含有する常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物は、以下の方法で製造するのが好ましい。すなわち、常温固形のエポキシ化合物と常温固形の多官能マレイミド化合物を、加熱し混合して均一な液状とした後、冷却して相溶物を得る第一工程、前記相溶物に、常温固形の多官能シアネート化合物及び常温固形のベンゾオキサジン化合物を投入した後、前記第一工程の加熱時の温度よりも低い温度で加熱し混合して均一な液状とした後、常温に冷却する第二工程よりなる方法である。この際、常温固形のエポキシ化合物としては、エポキシ当量とエポキシ基数の積が700以下のものを採用するのが好ましいことは、前述したとおりである。第一工程における加熱温度は150~200℃程度であり、加熱混合時間は10分~24時間程度で十分である。第二工程における加熱温度は90~140℃程度で加熱混合時間は10分~24時間程度で十分である。
【0018】
また、常温液状のエポキシ化合物に、常温固形の多官能マレイミド化合物を投入した後、加熱し混合して均一な液状とした後、冷却して相溶物を得る第一工程、前記相溶物に、常温固形の多官能シアネート化合物及び常温固形のベンゾオキサジン化合物を投入した後、前記第一工程の加熱時の温度よりも低い温度に加熱し混合し、常温に冷却する第二工程よりなる方法である。第一工程及び第二工程における加熱温度及び加熱混合時間は、上記と同程度である。
【0019】
これらの方法において、第一工程と第二工程に分けているのは、エポキシ化合物に対する相溶性が、多官能マレイミド化合物と多官能シアネート化合物及びベンゾオキサジン化合物との間に差異があるからである。すなわち、多官能マレイミド化合物を、エポキシ化合物に相溶させるには、加熱温度を150℃以上としなければならない。一方、多官能シアネート化合物及びベンゾオキサジン化合物は、エポキシ化合物に、加熱温度150℃未満で相溶するからである。多官能マレイミド化合物、多官能シアネート化合物及びベンゾオキサジン化合物を、エポキシ化合物に一挙に混合して、150℃以上に加熱すると、硬化反応が生じやすくなり、常温液状の組成物が得られにくくなる。
【0020】
本発明に係る熱硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、種々の添加剤を添加してもよい。たとえば、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、ガラス、タルク、クレー、マイカ、炭酸カルシウム又はカーボン等の充填剤;ガラス繊維又はカーボン繊維等の繊維状強化剤;染料や顔料等の着色剤;シリコーンやフッ素系化合物等の離型剤等を添加してもよい。
【0021】
本発明に係る熱硬化性組成物は、130~170℃で10分~2時間程度の条件で予備硬化させ、その後、180~270℃で2~7時間程度の条件で本硬化させることにより、電気・電子材料等の封止材として又は回路基板等の含浸材として、用いることができる。本硬化した後の硬化物は耐熱性に優れたものである。
【0022】
本発明に係る無溶剤型熱硬化性組成物は、電子部品の封止材料、注型材料、回路基板の含浸材、積層材料、塗料、接着剤又はレジストインク等として用いられる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る無溶剤型熱硬化性組成物は、常温液状の溶剤を含んでいないため、作業環境が悪化させず、溶媒の蒸発による硬化物の体積収縮や割れが発生しにくくなるという効果を奏する。したがって、本発明に係る無溶剤型熱硬化性組成物を用いれば、耐熱性が要求される電子部品等を効率良く、生産しうるのである。
【実施例0024】
実施例1
常温液状のビスフェノールA型エポキシ化合物(DIC社製:製品名EPICLON850S)14g中に、常温固形のビスフェノールA型シアネート化合物[三菱ガス化学社製:製品名トリアジン(TA)]28g及び常温固形のジアミノジフェニルメタン型ベンゾオキサジン(四国化成社製:製品名P-d型ベンゾオキサジン)13.8gを投入し、100℃に加熱しながら4時間混合し、その後、23℃に冷却した。この結果、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールA型シアネート化合物及びジアミノジフェニルメタン型ベンゾオキサジンが相溶した常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物が得られた。
【0025】
実施例2
常温固形のジアミノジフェニルメタン型ベンゾオキサジン(四国化成社製:製品名P-d型ベンゾオキサジン)の投入量を8gに変更した他は、実施例1と同一の方法で常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得た。
【0026】
実施例3
常温固形のビスフェノールA型シアネート化合物[三菱ガス化学社製:製品名トリアジン(TA)]28gに代えて、常温固形のビスフェノールA型シアネート化合物[三菱ガス化学社製:製品名トリアジン(TA)]21gと常温液状のジアリルビスフェノールA型シアネート化合物[三菱ガス化学社製:製品名A211]7gの混合物を用いた他は、実施例2と同一の方法で常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得た。
【0027】
実施例4
常温固形のビスフェノールA型シアネート化合物[三菱ガス化学社製:製品名トリアジン(TA)]28gに代えて、常温固形のビスフェノールA型シアネート化合物[三菱ガス化学社製:製品名トリアジン(TA)]14gと常温液状のジアリルビスフェノールA型シアネート化合物[三菱ガス化学社製:製品名A211]14gの混合物を用いた他は、実施例2と同一の方法で常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得た。
【0028】
実施例5
常温固形のジアミノジフェニルメタン型ベンゾオキサジン(四国化成社製:製品名P-d型ベンゾオキサジン)の投入量を2gに変更し、かつ、混合時間を24時間に変更した他は、実施例1と同一の方法で常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得た。
【0029】
実施例6
常温液状のビスフェノールA型エポキシ化合物(DIC社製:製品名EPICLON850S)に代えて、常温液状のビスフェノールF型エポキシ化合物(DIC社製:製品名EPICLON830S)を用いた他は、実施例2と同一の方法で常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得た。
【0030】
実施例7
常温液状のビスフェノールA型エポキシ化合物(DIC社製:製品名EPICLON850S)14g中に、常温液状のビスフェノールE型シアネート化合物(三菱ガス化学社製:製品名P201)28g及び常温液状のベンゾオキサジン化合物(四国化成社性:製品名ALP-d型ベンゾオキサジン)8gを投入混合して、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得た。
【0031】
比較例1
常温液状のビスフェノールA型エポキシ化合物(DIC社製:製品名EPICLON850S)に代えて、常温固形のエポキシ化合物(三菱ケミカル社製:製品名jER1002。エポキシ当量とエポキシ基数の積:約1300)を用いる他は、実施例2と同一の方法により無溶剤型熱硬化性組成物を得た。この組成物は、常温固形の状態であった。
【0032】
比較例2
常温液状のビスフェノールA型エポキシ化合物(DIC社製:製品名EPICLON850S)に代えて、常温固形のエポキシ化合物(三菱ケミカル社製:製品名jER1004。エポキシ当量とエポキシ基数の積:約1850)を用いる他は、実施例2と同一の方法により無溶剤型熱硬化性組成物を得た。この組成物は、常温固形の状態であった。
【0033】
実施例1~7で得られた無溶剤型熱硬化性組成物を150℃で1時間の条件で仮硬化させた後、200℃で5時間の条件で本硬化を行って、硬化物を得た。この硬化物を動的粘弾性測定機(AntonPaar社製:製品名MCR302)に掛けて、周波数1Hz、剪断歪0.05%及び昇温速度2℃/分の測定条件で、tanδのピークトップでみたガラス転移点(℃)(以下、単に「tanδガラス転移点(℃)」という。)を測定した。その結果を表1に示した。なお、比較例1及び2で得られた組成物は常温固形であるため、硬化物を得ていない。
[表1]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
tanδガラス転移点(℃)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例1 221.8
実施例2 220.2
実施例3 211.5
実施例4 200.1
実施例5 232.5
実施例6 210.1
実施例7 206.0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0034】
表1から明らかなように、実施例1~7に係る常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を硬化させた硬化物は、ガラス転移点が高く、耐熱性に優れていることが分かる。
【0035】
実施例8
常温液状のビスフェノールA型エポキシ化合物(DIC社製:製品名EPICLON850S)14g中に、常温固形の4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド(ケイ・アイ化成社製:製品名BMI)6gを投入し、150℃に加熱しながら3時間混合した後、100℃に冷却し、ビスフェノールA型エポキシ化合物と4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミドとが相溶した液状の相溶物を得た(第一工程)。この相溶物の温度を100℃に維持した状態で、相溶物中に、常温固形のビスフェノールA型シアネート化合物[三菱ガス化学社製:製品名トリアジン(TA)]28g及び常温固形のジアミノジフェニルメタン型ベンゾオキサジン(四国化成社製:製品名P-d型ベンゾオキサジン)8gを投入し、4時間混合し、その後、23℃に冷却した(第二工程)。この結果、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールA型シアネート化合物、ジアミノジフェニルメタン型ベンゾオキサジン及び4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミドが相溶した常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物が得られた。
【0036】
実施例9
常温固形の4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド(ケイ・アイ化成社製:製品名BMI)の投入量を3gに変更した他は、実施例8と同一の方法で、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得た。
【0037】
実施例10
常温固形の4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド(ケイ・アイ化成社製:製品名BMI)の投入量を12gに変更した他は、実施例8と同一の方法で、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得た。
【0038】
実施例11
常温液状のビスフェノールA型エポキシ化合物(DIC社製:製品名EPICLON850S)の使用量を8gに変更した他は、実施例8と同一の方法で、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得た。
【0039】
実施例12
常温液状のビスフェノールA型エポキシ化合物(DIC社製:製品名EPICLON850S)の使用量を28gに変更した他は、実施例8と同一の方法で、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得た。
【0040】
実施例13
常温液状のビスフェノールA型エポキシ化合物(DIC社製:製品名EPICLON850S)の使用量を42gに変更した他は、実施例8と同一の方法で、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得た。
【0041】
実施例14
常温液状のビスフェノールA型エポキシ化合物(DIC社製:製品名EPICLON850S)の使用量を56gに変更した他は、実施例8と同一の方法で、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得た。
【0042】
実施例15
常温固形のビスフェノールA型シアネート化合物[三菱ガス化学社製:製品名トリアジン(TA)]の投入量を14gに変更した他は、実施例8と同一の方法で、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得た。
【0043】
実施例16
常温固形のビスフェノールA型シアネート化合物[三菱ガス化学社製:製品名トリアジン(TA)]の投入量を56gに変更し、かつ、第二工程での混合時間を18時間に変更した他は、実施例8と同一の方法で、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得た。
【0044】
実施例17
常温固形のビスフェノールA型シアネート化合物[三菱ガス化学社製:製品名トリアジン(TA)]の投入量を65gに変更し、かつ、第二工程での混合時間を24時間に変更した他は、実施例8と同一の方法で、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得た。
【0045】
実施例18
常温固形の4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド(ケイ・アイ化成社製:製品名BMI)6gに代えて、常温固形の4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド(ケイ・アイ化成社製:製品名BMI)4.2g及び常温固形のビス-(3エチル-5メチル-4-マレイミドフェニル)メタン(ケイ・アイ化成社製:製品名BMI-70)1.8gを投入する他は、実施例8と同一の方法で、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得た。
【0046】
実施例19
常温固形のビスフェノールA型シアネート化合物[三菱ガス化学社製:製品名トリアジン(TA)]28gに代えて、常温固形のビスフェノールA型シアネート化合物[三菱ガス化学社製:製品名トリアジン(TA)]21g及び常温液状のジアリルビスフェノールA型シアネート化合物(三菱ガス化学社製:製品名A211)7gを投入する他は、実施例18と同一の方法で、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得た。
【0047】
実施例20
常温固形のビスフェノールA型シアネート化合物[三菱ガス化学社製:製品名トリアジン(TA)]28gに代えて、常温固形のビスフェノールA型シアネート化合物[三菱ガス化学社製:製品名トリアジン(TA)]14g及び常温液状のジアリルビスフェノールA型シアネート化合物(三菱ガス化学社製:製品名A211)14gを投入する他は、実施例18と同一の方法で、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得た。
【0048】
実施例21
常温固形のビスフェノールA型シアネート化合物[三菱ガス化学社製:製品名トリアジン(TA)]28gに代えて、常温固形のビスフェノールA型シアネート化合物[三菱ガス化学社製:製品名トリアジン(TA)]14g及び常温液状のビスフェノールE型シアネート化合物(三菱ガス化学社製:製品名P201)14gを投入する他は、実施例18と同一の方法で、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得た。
【0049】
実施例22
常温固形のジアミノジフェニルメタン型ベンゾオキサジン(四国化成社製:製品名P-d型ベンゾオキサジン)の投入量を4gに変更し、かつ、第二工程における混合時間を18時間に変更した他は、実施例8と同一の方法で常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得た。
【0050】
実施例23
常温液状のビスフェノールA型エポキシ化合物(DIC社製:製品名EPICLON850S)に代えて、常温液状のビスフェノールF型エポキシ化合物(DIC社製:製品名EPICLON830S)を用いた他は、実施例8と同一の方法で常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得た。
【0051】
実施例24
実施例8の第一工程と同一の方法で液状の相溶物を得た。この相溶物に、常温液状のビスフェノールE型シアネート化合物(三菱ガス化学社製:製品名P201)28g及び常温液状のベンゾオキサジン化合物(四国化成社性:製品名ALP-d型ベンゾオキサジン)8gを投入混合して、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得た。
【0052】
実施例25
常温液状のビスフェノールA型エポキシ化合物(DIC社製:製品名EPICLON850S)に代えて、常温液状のエポキシ化合物(三菱ケミカル社製:製品名jER630)を用いる他は、実施例20と同一の方法で、無溶剤型熱硬化性組成物を得た。
【0053】
実施例26
常温液状のビスフェノールA型エポキシ化合物(DIC社製:製品名EPICLON850S)に代えて、常温固形のエポキシ化合物(日産化学工業社製:製品名TEPIC-S。エポキシ当量とエポキシ基数の積:約300)を用いる他は、実施例20と同一の方法で、無溶剤型熱硬化性組成物を得た。
【0054】
実施例27
常温液状のビスフェノールA型エポキシ化合物(DIC社製:製品名EPICLON850S)に代えて、常温固形のエポキシ化合物(DIC社製:製品名EPICLON HP4770、エポキシ当量とエポキシ基数の積:約400)を用いる他は、実施例20と同一の方法で、無溶剤型熱硬化性組成物を得た。
【0055】
比較例3
常温固形のジアミノジフェニルメタン型ベンゾオキサジン(四国化成社製:製品名P-d型ベンゾオキサジン)を投入せず、かつ、第二工程における混合時間を24時間に変更した他は、実施例8と同一の方法で、無溶剤型熱硬化性組成物を得た。この組成物には、固形物が残存していた。
【0056】
比較例4
常温固形のビスフェノールA型シアネート化合物[三菱ガス化学社製:製品名トリアジン(TA)]を投入しない他は、実施例8と同一の方法で、常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を得た。
【0057】
比較例5
常温液状のビスフェノールA型エポキシ化合物(DIC社製:製品名EPICLON850S)に代えて、常温固形のエポキシ化合物(三菱ケミカル社製:製品名jER1002、エポキシ当量とエポキシ基数の積:約1300)を用いる他は、実施例8と同一の方法により無溶剤型熱硬化性組成物を得た。この組成物は、常温固形の状態であった。
【0058】
比較例6
常温液状のビスフェノールA型エポキシ化合物(DIC社製:製品名EPICLON850S)に代えて、常温固形のエポキシ化合物(三菱ケミカル社製:製品名jER1031S、エポキシ当量とエポキシ基数の積:約800)を用いる他は、実施例20と同一の方法により無溶剤型熱硬化性組成物を得た。この組成物は、常温固形の状態であった。
【0059】
実施例8~27で得られた無溶剤型熱硬化性組成物及び比較例4で得られた無溶剤型熱硬化性組成物を、150℃で1時間の条件で仮硬化させた後、200℃で5時間の条件で本硬化を行って、硬化物を得た。この硬化物を動的粘弾性測定機(AntonPaar社製:製品名MCR302)に掛けて、周波数1Hz、剪断歪0.05%及び昇温速度2℃/分の測定条件で、tanδガラス転移点(℃)を測定した。その結果を表2に示した。なお、比較例3で得られた組成物は固形物が残存しているため、並びに比較例5及び6で得られた組成物は常温固形であるため、硬化物を得ていない。
[表2]
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tanδガラス転移点(℃)
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実施例8 228.6
実施例9 222.5
実施例10 235.2
実施例11 234.0
実施例12 224.1
実施例13 223.8
実施例14 212.4
実施例15 228.6
実施例16 242.4
実施例17 239.4
実施例18 236.5
実施例19 231.4
実施例20 228.5
実施例21 233.4
実施例22 231.4
実施例23 218.5
実施例24 227.2
実施例25 268.5
実施例26 280.1
実施例27 242.3
比較例4 193.4
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【0060】
表2から明らかなように、実施例8~27に係る常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を硬化させた硬化物は、比較例4に係る常温液状の無溶剤型熱硬化性組成物を硬化させた硬化物に比べて、ガラス転移点が高く、耐熱性に優れていることが分かる。