(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052149
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】切替バルブおよび局部洗浄装置
(51)【国際特許分類】
E03D 9/08 20060101AFI20220328BHJP
【FI】
E03D9/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020158350
(22)【出願日】2020-09-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小西 成
【テーマコード(参考)】
2D038
【Fターム(参考)】
2D038JA00
2D038JA01
2D038JA02
2D038JH00
(57)【要約】
【課題】部品数を減らして切替バルブの小型化を図りつつモータの絶縁構造を確保する。
【解決手段】水の流入口と複数の流出口とが設けられ内部に円筒状の空間を有するケースと、ケース内に固定された固定弁体および回転可能に配置された可動弁体と、ケースの一端に固定され可動弁体を回転させるモータと、を備え、固定弁体と可動弁体との相対回転により流入口と流出口との連通状態を切り替える切替バルブは、可動弁体が一端側の端面にモータの出力軸が嵌合する嵌合凹部が形成されると共に端面の外周縁から軸方向に延びる側壁面を有し、流入口および流出口よりも一端側で可動弁体の側壁面とケースの内壁面との間に配置された環状のシール部材を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の流入口と複数の流出口とが設けられ内部に円筒状の空間を有するケースと、
前記ケース内に固定された固定弁体および回転可能に配置された可動弁体と、
前記ケースの一端に固定され前記可動弁体を回転させるモータと、
を備え、前記固定弁体と前記可動弁体との相対回転により前記流入口と前記流出口との連通状態を切り替える切替バルブであって、
前記可動弁体は、前記一端側の端面に前記モータの出力軸が嵌合する嵌合凹部が形成されると共に前記端面の外周縁から軸方向に延びる側壁面を有し、
前記流入口および前記流出口よりも前記一端側で、前記可動弁体の前記側壁面と前記ケースの内壁面との間に配置された環状のシール部材を備える
切替バルブ。
【請求項2】
請求項1に記載の切替バルブであって、
前記ケースの一端と前記モータとの間に取り付けられ、前記出力軸が挿通可能な開口が内周部分に形成されたカバーと、
前記カバーの外周部分を受けとして前記可動弁体を前記固定弁体側に付勢するコイルスプリングと、
を備え、
前記可動弁体は、前記一端側の端面に前記嵌合凹部を囲み前記コイルスプリングを収容する収容溝が形成されている
切替バルブ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の切替バルブであって、
前記固定弁体は、前記流出口に水を導出する流路が形成され、
前記可動弁体は、前記流入口から流入した水を導入する流路が形成された小径部と、環状溝が形成された前記側壁面を有し前記小径部よりも大径の大径部とを有する段付き部材であり、
前記シール部材は、前記環状溝に配置されている
切替バルブ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の切替バルブであって、
前記シール部材は、Xリングである
切替バルブ。
【請求項5】
給水源から洗浄水が供給される給水路と、
人体局部に向けて洗浄水を噴射する洗浄ノズルと、
前記給水路から前記流入口を介して洗浄水が流入し、前記洗浄ノズルを含む複数の出力先のいずれかに前記流出口から洗浄水が流出するように前記連通状態を切り替える請求項1ないし4のいずれか1項に記載の切替バルブと、
を備える局部洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切替バルブおよび局部洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の局部洗浄装置としては、人体局部に洗浄水を吐出する洗浄ノズルと、供給された洗浄水を洗浄ノズルを含む複数の出力先のいずれに出力するかを切り替える切替バルブとを備えるものが提案されている。例えば、特許文献1には、切替バルブとして、複数の出力先のそれぞれに連通する複数の排出路が形成されケース内に固定された固定ディスクと、洗浄水の供給路が形成されケース内で回転可能な可動ディスクとが盤面が重なり合うように同軸に配置され、モータで可動ディスクを回転させることで供給路と複数の排出路との連通状態を切り替えるものが記載されている。また、この切替バルブでは、モータの出力軸と可動ディスクとが、軸支持部材を介して相対回転不能に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した切替バルブでは、軸支持部材を介してモータの出力軸と可動ディスクとが連結されることにより、モータの出力軸が水に接するのを防止して絶縁構造を確保している。しかし、軸支持部材を設ける必要があるため、部品数が増加するだけでなく出力軸方向における切替バルブの全長が長くなって切替バルブが大型化してしまう。
【0005】
本発明は、部品数を減らして切替バルブの小型化を図りつつモータの絶縁構造を確保することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の切替バルブは、
水の流入口と複数の流出口とが設けられ内部に円筒状の空間を有するケースと、
前記ケース内に固定された固定弁体および回転可能に配置された可動弁体と、
前記ケースの一端に固定され前記可動弁体を回転させるモータと、
を備え、前記固定弁体と前記可動弁体との相対回転により前記流入口と前記流出口との連通状態を切り替える切替バルブであって、
前記可動弁体は、前記一端側の端面に前記モータの出力軸が嵌合する嵌合凹部が形成されると共に前記端面の外周縁から軸方向に延びる側壁面を有し、
前記流入口および前記流出口よりも前記一端側で、前記可動弁体の前記側壁面と前記ケースの内壁面との間に配置された環状のシール部材を備えることを要旨とする。
【0008】
本発明の切替バルブは、ケースと、固定弁体および可動弁体と、モータとを備え、可動弁体は、ケースの一端側の端面にモータの出力軸が嵌合する嵌合凹部が形成されると共に端面の外周縁から軸方向に延びる側壁面を有する。また、流入口および複数の流出口よりも一端側で、可動弁体の側壁面とケースの内壁面との間に配置された環状のシール部材を備える。これにより、モータの出力軸が可動弁体の嵌合凹部に直接連結されるから、別部材を介して連結されるものに比して、部品数を減らして切替バルブの全長が長くなるのを抑制することができる。また、モータの出力軸が嵌合凹部に連結されて、可動弁体の側壁面とケースの内壁面との間から一端側に水が浸入するのをシール部材で防ぐから、モータおよびその出力軸が水に触れるのを防止することができる。したがって、部品数を減らして切替バルブの小型化を図りつつモータの絶縁構造を確保することができる。
【0009】
本発明の切替バルブにおいて、前記ケースの一端と前記モータとの間に取り付けられ、前記出力軸が挿通可能な開口が内周部分に形成されたカバーと、前記カバーの外周部分を受けとして前記可動弁体を前記固定弁体側に付勢するコイルスプリングと、を備え、前記可動弁体は、前記一端側の端面に前記嵌合凹部を囲み前記コイルスプリングを収容する収容溝が形成されているものとしてもよい。こうすれば、コイルスプリングが可動弁体に収容されずに可動弁体の一端側の端面を付勢するものに比して、切替バルブの全長が長くなるのを抑制することができる。
【0010】
本発明の切替バルブにおいて、前記固定弁体は、前記流出口に水を導出する流路が形成され、前記可動弁体は、前記流入口から流入した水を導入する流路が形成された小径部と、環状溝が形成された前記側壁面を有し前記小径部よりも大径の大径部とを有する段付き部材であり、前記シール部材は、前記環状溝に配置されているものとしてもよい。こうすれば、小径部を流路の形成に適した外径としつつ、大径部をシール部材によるシールに適した外径としてシール性を高めることができる。
【0011】
本発明の切替バルブにおいて、前記シール部材は、Xリングであるものとしてもよい。こうすれば、可動弁体を回転させる際のケースの内壁との摺動抵抗を抑えて、連通状態をスムーズに切り替えることができる。
【0012】
本発明の洗浄便座装置は、給水源から洗浄水が供給される給水路と、人体局部に向けて洗浄水を噴射する洗浄ノズルと、前記給水路から前記流入口を介して洗浄水が流入し、前記洗浄ノズルを含む複数の出力先のいずれかに前記流出口から洗浄水が流出するように前記連通状態を切り替える上述したいずれかの切替バルブと、を備えることを要旨とする。
【0013】
本発明の洗浄便座装置は、上述したいずれかの切替バルブを備えるから、本発明の切替バルブが奏する効果、即ち部品数を減らして切替バルブの小型化を図りつつモータの絶縁構造を確保する効果を奏するものとなる。このため、洗浄便座装置が大型化するのを抑制してコンパクトな構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】洗浄便座装置10の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態について説明する。
【0016】
図1は、洗浄便座装置10の外観斜視図であり、
図2は、洗浄便座装置10の構成の概略を示す構成図である。洗浄便座装置10は、
図1に示すように、便器1の上面に取り付けられ、便座装置本体12と、便座装置本体12に対して開閉可能に支持された便座14および便蓋16と、使用者による各種操作が可能な操作パネル18と、洗浄便座装置10の全体を制御する制御装置19(
図2参照)とを備える。
【0017】
便座装置本体12は、
図2に示すように、人体局部に向けて洗浄水を噴射して局部洗浄を行う局部洗浄ユニット20を備える。局部洗浄ユニット20は、洗浄水を供給するための給水路21と、供給された洗浄水を人体局部に噴出するおしり洗浄ノズル30およびビデ洗浄ノズル32と、各洗浄ノズルを洗浄するノズル洗浄器38と、洗浄水の供給先を切り替えるディスクバルブ40と、を備える。また、局部洗浄ユニット20は、モータ34aと図示しないギヤ機構によりおしり洗浄ノズル30を進退移動させるおしり洗浄ノズル駆動部34と、モータ36aと図示しないギヤ機構によりビデ洗浄ノズル32を進退移動させるビデ洗浄ノズル駆動部36とを備える。
【0018】
給水路21には、給水源から止水電磁弁22を介して供給される洗浄水を所定圧に減圧する減圧弁23や洗浄水を加温する熱交換ユニット24、洗浄水の温度を検出する水温センサ25、洗浄水の流量を検出する流量センサ26、洗浄の強さを調整する脈動ポンプ27、バキュームブレーカ28などが設けられている。なお、熱交換ユニット24は、本実施形態では、例えば1200W程度の定格出力を有するセラミックヒータ等を内蔵し、洗浄水を瞬間的に加温可能な瞬間式の熱交換ユニットとして構成されている。
【0019】
おしり洗浄ノズル30およびビデ洗浄ノズル32は、それぞれ、おしり洗浄ノズル駆動部34およびビデ洗浄ノズル駆動部36により、図示しないノズルケースに格納された格納位置(待機位置)と、ノズルケースから進出して洗浄水を噴出する洗浄位置との間で進退移動が可能となっている。ノズル洗浄器38は、例えば格納位置にあるおしり洗浄ノズル30およびビデ洗浄ノズル32の先端側の上方に設けられており、おしり洗浄ノズル30およびビデ洗浄ノズル32に向けて洗浄水を噴射してこれらを洗浄する。なお、おしり洗浄ノズル30やビデ洗浄ノズル32に、強い水流で洗浄水を噴射するパワフル洗浄用の噴射口や、弱い水流で洗浄水を噴射したり比較的広範囲に洗浄水を噴射したりするマイルド洗浄用の噴射口など、複数種類の噴射口が形成されていてもよい。また、局部洗浄ユニット20が、便器1の鉢内にミスト状の洗浄水を噴出する鉢内噴出用のノズルなどを備えてもよい。
【0020】
ディスクバルブ(ロータリーディスクバルブ)40は、脈動ポンプ27から吐出された洗浄水をおしり洗浄ノズル30やビデ洗浄ノズル32の各噴射口やノズル洗浄器38の噴射口などの複数の出力先のうちいずれに出力するかを切り替える切替バルブとして構成されている。
【0021】
操作パネル18には、おしり洗浄を指示するおしり洗浄スイッチやビデ洗浄を指示するビデ洗浄スイッチ、洗浄の停止を指示する停止スイッチ、洗浄水の温度を調整する温度調整スイッチ、洗浄の強さ(勢い)を調整する水勢調整スイッチなどが設けられている。
【0022】
制御装置19は、図示しないCPUやROM、RAMを備えるマイクロプロセッサとして構成されている。制御装置19には、便座14への使用者の着座を検知する着座センサ17や操作パネル18からの操作信号、水温センサ25からの検出水温、流量センサ26からの検出流量などが入力される。また、制御装置19は、止水電磁弁22への駆動信号や熱交換ユニット24への制御信号、脈動ポンプ27への駆動信号、ディスクバルブ40への駆動信号、おしり洗浄ノズル駆動部34のモータ34aへの駆動信号、ビデ洗浄ノズル駆動部36のモータ36aへの駆動信号などを出力する。
【0023】
以下、ディスクバルブ40の構成の詳細を説明する。
図3は、ディスクバルブ40の分解斜視図であり、
図4は、固定ディスク51の上面図であり、
図5は、可動ディスク53の下面図であり、
図6は、可動ディスク53の上面図である。また、
図7は、ディスクバルブ40の上面図であり、
図8は、
図7のA-C断面図であり、
図9は、
図7のB-C断面図である。
【0024】
ディスクバルブ40は、
図3,
図7~
図9に示すように、ケース41と、カバー45と、モータ47と、固定ディスク51と、スペーサディスク52と、可動ディスク53と、シールリング57と、コイルスプリング59とを備える。
【0025】
ケース41は、断面が円形状の内壁面42により形成され、上端(軸方向の一端)が開口した円筒状の内部空間Sを有する。ケース41には、脈動ポンプ27から吐出された洗浄水が供給される1の流入口(入水口)43が上部側に設けられ、複数の出力先のそれぞれに洗浄水を出力する複数(例えば5つ)の流出口(出水口)44が下部側に設けられている。なお、流入口43が設けられた継手や流出口44が設けられた継手がケース41に取り付けられる構造でもよい。カバー45は、ケース41の上端に取り付けられ、内周部分に貫通孔45aが形成されると共に、ケース41の雌ネジ孔41aに連通する連通孔45bが形成されている。モータ47は、可動ディスク53を回転させるものであり、例えばステッピングモータとして構成されている。モータ47は、出力軸47aがカバー45の貫通孔45aに挿通されるように出力軸47aを下方に向けた状態でケース41の上端に取り付けられる。モータ47の取り付けは、モータ47のネジ孔47bと、カバー45の連通孔45bとに挿通されたネジ49を、ケース41の雌ネジ孔41aに締め付けることにより行われ、モータ47とカバー45とケース41とが一体に固定(締結)される。
【0026】
固定ディスク51と、スペーサディスク52と、可動ディスク53とは、ケース41内(内部空間S)に下方からスペーサディスク52、固定ディスク51、可動ディスク53の順で配置されている。また、固定ディスク51と可動ディスク53は、同軸に相対回転するように盤面が重なり合って摺動可能な状態で、ケース41内に配置されている。
【0027】
固定ディスク51は、
図4に示すように、外周に径方向内側に窪んだ窪み部51aが設けられており、ケース41の内壁面42に形成された図示しない突部が窪み部51aに係合することでケース41内に固定される。また、固定ディスク51には、スペーサディスク52を介して複数の流出口44にそれぞれ連通する複数(例えば5つ)の導出路51bが周方向に沿って設けられ、これらの導出路51bよりも中心側に凹状に形成された連絡路51cが設けられている。なお、導出路51bは、下方のスペーサディスク52と連通するために貫通する箇所以外で、深さが段階的に深くなる溝状に形成されており、洗浄水が導入される位置によって通過流量が変化する。スペーサディスク52は、詳細な図示は省略するが、固定ディスク51と同様に、外周に形成された窪み部が、ケース41の突部に係合することでケース41内に固定される。また、スペーサディスク52は、固定ディスク51の各導出路51bと、各流出口44とをそれぞれ連通するように貫通した複数の連通路が形成されている。なお、スペーサディスク52が固定ディスク51と一体に形成されていてもよい。
【0028】
可動ディスク53は、固定ディスク51よりも若干小さな外径に形成され、固定ディスク51の盤面と重なり合う小径部54と、小径部54よりも大きな外径に形成された大径部55とを有する段付き状の部材である。可動ディスク53は、小径部54を下側とした状態でケース41内に配置される。このため、
図5の下面図は、小径部54の下面を示し、
図6の上面図は、大径部55の上面を示すものとなる。
図5に示すように、可動ディスク53の小径部54には、外周の一部から切り欠くように形成され流入口43からケース41内に流入した洗浄水を径方向内側に導入する導入路54aと、導入路54aから離間した位置に径方向に凹状に形成された連絡路54bとが設けられている。ディスクバルブ40は、モータ47の駆動により可動ディスク53を固定ディスク51に対して回転させ、導入路54aと固定ディスク51の各導出路51bとの連通状態や、導入路54aと固定ディスク51の連絡路51cと連絡路54bとの連通状態を切り替えたりすることで、洗浄水の出力先や出力流量を変更する。即ち、流入口43と複数の流出口44との連通状態を切り替える。
【0029】
大径部55は、
図3,
図8,
図9に示すように、断面円形状の側壁面56を有する。側壁面56には、流入口43よりも上方側(ケース41の上端側)の位置に環状溝56aが形成されており、環状溝56aにシールリング57が配設されている。シールリング57は、断面がX字状に形成されたXリングであり、流入口43よりも上方側で、大径部55の側壁面56とケース41の内壁面42との隙間をシールする。これにより、流入口43からケース41内に流入した洗浄水が、可動ディスク53(大径部55)とケース41との隙間からモータ47側に浸入するのを防止することができる。また、シールリング57がXリングであるため、Oリングよりも接触圧を分散させて小さくするから、可動ディスク53が回転する際のケース41の内壁面42との摺動抵抗を低減することができる。
【0030】
また、大径部55は、
図6,
図8に示すように、モータ47側の端面である上端面(一端側の端面)55uの中心に嵌合凹部55aが形成されている。なお、側壁面56は、上端面55uの外周縁から可動ディスク53の軸方向に延びるものとなる。嵌合凹部55aは、モータ47の出力軸47aを嵌め込み可能な寸法に形成されており、出力軸47aが嵌合されている。これにより、可動ディスク53は、モータ47の駆動によりケース41内で軸回りに回転する。なお、出力軸47aが嵌合するのは、凹状の嵌合凹部55aであり、小径部54の下面まで貫通するものではない。このため、可動ディスク53(小径部54)の下面と固定ディスク51の上面との間に存在する洗浄水と、出力軸47aの先端とは、嵌合凹部55aの底面から小径部54の下面までの厚みt(
図8参照)を介して絶縁されるから、出力軸47aの先端に洗浄水がかかることはない。
【0031】
さらに、大径部55の上端面55uには、嵌合凹部55aを囲み、コイルスプリング59を収容する環状の収容溝55bが形成されている。このコイルスプリング59は、カバー45の下面のうち貫通孔45aの周囲の外周部分をスプリング受けとして、収容溝55bの底面を下方に付勢する。これにより、可動ディスク53が下方に付勢されるから、可動ディスク53は、小径部54の下面(盤面)を固定ディスク51の上面(盤面)に摺動させながら回転することになる。
【0032】
以上説明した洗浄便座装置10のディスクバルブ40では、可動ディスク53の嵌合凹部55aにモータ47の出力軸47aが嵌合することで出力軸47aを可動ディスク53に直接連結することができる。このため、別部材を介して出力軸47aを連結するものに比して、ディスクバルブ40の全長が長くなるのを抑制することができる。また、出力軸47aは嵌合凹部55aに嵌合するために洗浄水がかかることがなく、流入口43よりも上方側で可動ディスク53の側壁面56とケース41の内壁面42との隙間をシールリング57でシールするから、モータ47側に洗浄水が浸入するのを防止することができる。したがって、ディスクバルブ40の大型化を抑制しつつモータ47の絶縁構造を確保することができる。また、ディスクバルブ40は便座装置本体12に収容されるから、洗浄便座装置10(便座装置本体12)が大型化するのを抑制してコンパクトな構造とすることができる。
【0033】
また、可動ディスク53は、上端面55uにコイルスプリング59を収容する収容溝55bが形成されており、コイルスプリング59を可動ディスク53の軸長内に収めることができるから、ディスクバルブ40の全長が長くなるのをさらに抑制することができる。
【0034】
また、可動ディスク53は、導入路54aや連絡路54bなどの流路が形成された小径部54と、側壁面56を有し小径部54よりも大径の大径部55とを有する段付き部材であり、側壁面56の環状溝56aにシールリング57が配置されている。このため、小径部54を流路形成に適した形状としつつ、大径部55をシールリング57によるシールに適した外径としてシール性を高めることができる。
【0035】
また、シールリング57は、Xリングであるから、可動ディスク53を回転させる際の摺動抵抗を抑えつつ絶縁構造を適切に確保することができる。
【0036】
上述した実施形態では、シールリング57をXリングとしたが、これに限られず、Oリング等の他の断面形状のシール部材としてもよい。
【0037】
実施形態では、可動ディスク53を小径部54と大径部55とを有する段付き状に形成したが、これに限られず、略一定の外径で円盤状(円柱状)に形成されていてもよい。
【0038】
実施形態では、コイルスプリング59の略全長が可動ディスク53の収容溝55bに収容されるものとしたが、これに限られず、コイルスプリング59の少なくとも一部が収容溝55bに収容されるものであればよい。あるいは、このような構成に限られず、可動ディスク53に収容溝55bが形成されずに、コイルスプリング59の略全長が可動ディスク53から露出して可動ディスク53の上端面55uを付勢する構成としてもよい。
【0039】
実施形態では、固定ディスク51に例えば5つの導出路51bが形成されたものを例示したが、これに限られず、2以上の複数の導出路51bが形成されていればよい。また、ディスクバルブ40は、いずれか1の導出路51bのみを選択して洗浄水を出力するものに限られず、2つの導出路51bから洗浄水を同時に出力可能としてもよい。
【0040】
実施形態では、流入口43から流入した洗浄水の導入路(導入路54aなど)が可動ディスク53に形成されると共に洗浄水を導出して流出口44から流出させる導出路(導出路51bなど)が固定ディスク51に形成されたが、これに限られるものではない。導入路が固定ディスク51に形成されると共に導出路が可動ディスク53に形成されてもよい。あるいは、固定ディスク51および可動ディスク53の一方に導入路と導出路が形成され、固定ディスク51および可動ディスク53の他方に導入路と導出路とを連絡させる連絡路が形成されてもよい。
【0041】
実施形態では、ケース41の一端が上端となるようにディスクバルブ40の軸方向が上下方向に沿って配置されるものを例示したが、これに限られず、ディスクバルブの軸方向が上下方向以外の方向(例えば左右方向など)に沿って配置されてもよい。
【0042】
実施形態では、ディスクバルブ40(切替バルブ)が洗浄便座装置10に用いられるものを例示したが、これに限られず、洗浄便座装置10以外の他の用途に用いられるものでもよい。即ち、ディスクバルブ40は、人体局部の洗浄に用いられる洗浄水に限られず、他の用途に用いられる水の流路(連通状態)を切り替えるものであればよい。
【0043】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、ケース41が「ケース」に相当し、モータ47が「モータ」に相当し、固定ディスク51が「固定弁体」に相当し、可動ディスク53が「可動弁体」に相当し、嵌合凹部55aが「嵌合凹部」に相当し、シールリング57が「シール部材」に相当する。カバー45が「カバー」に相当し、コイルスプリング59が「コイルスプリング」に相当し、収容溝55bが「収容溝」に相当する。小径部54が「小径部」に相当し、大径部55が「大径部」に相当する。給水路21が「給水路」に相当し、おしり洗浄ノズル30やビデ洗浄ノズル32が「洗浄ノズル」に相当し、ディスクバルブ40が「切替バルブ」に相当する。
【0044】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行われるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0045】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、切替バルブや洗浄便座装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 便器、10 洗浄便座装置、12 便座装置本体、14 便座、16 便蓋、17 着座センサ、18 操作パネル、19 制御装置、20 局部洗浄ユニット、21 給水路、22 止水電磁弁、23 減圧弁、24 熱交換ユニット、25 水温センサ、26 流量センサ、27 脈動ポンプ、28 バキュームブレーカ、30 おしり洗浄ノズル、32 ビデ洗浄ノズル、34 おしり洗浄ノズル駆動部、34a,36a モータ、36 ビデ洗浄ノズル駆動部、38 ノズル洗浄器、40 ディスクバルブ、41 ケース、41a 雌ネジ孔、42 内壁面、43 流入口、44 流出口、45 カバー、45a 貫通孔、45b 連通孔、47 モータ(ステッピングモータ)、47a 出力軸、47b ネジ孔、49 ネジ、51 固定ディスク、51a 窪み部、51b 導出路、51c 連絡路、52 スペーサディスク、53 可動ディスク、54 小径部、54a 導入路、54b 連絡路、55 大径部、55a 嵌合凹部、55b 収容溝、55u 上端面、56 側壁面、56a 環状溝、57 シールリング(Xリング)、59 コイルスプリング、S 内部空間。