(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052172
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】工具取付け装置
(51)【国際特許分類】
B23B 31/107 20060101AFI20220328BHJP
B23B 31/02 20060101ALI20220328BHJP
B23Q 3/12 20060101ALI20220328BHJP
B24B 45/00 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
B23B31/107 D
B23B31/02 601A
B23B31/107 A
B23Q3/12 C
B24B45/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020158385
(22)【出願日】2020-09-23
(71)【出願人】
【識別番号】000167222
【氏名又は名称】光洋機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001645
【氏名又は名称】特許業務法人谷藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武地 満博
【テーマコード(参考)】
3C016
3C032
3C034
【Fターム(参考)】
3C016FA03
3C016FA21
3C032BB02
3C032BB08
3C034AA20
3C034BB52
3C034DD20
(57)【要約】
【課題】 砥石支持強度を低下させることなく、砥石交換作業を容易且つ迅速にできるようにする。
【解決手段】 砥石4を砥石フランジ8を介して主軸3の砥石取付け台10に対して軸方向に着脱自在に取付けるに際し、主軸3の径方向に配置された締付け手段12をその外側から操作して、主軸3の周りに略等配に配置された各固定手段11を主軸3の径方向の内側へと締付ける。そして、この各固定手段11の楔作用により、砥石4を支持する砥石フランジ8を主軸3の砥石取付け台10側へと軸方向に締付けて固定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を工具フランジを介して主軸の工具取付け台に対して前記主軸の軸方向に着脱自在に取付けるようにした工具取付け装置において、
前記主軸の径方向の外側から操作して前記径方向の内側へと締付けたときに、楔作用により前記工具フランジを前記工具取付け台に対して前記軸方向に締付けて固定する固定手段を、前記主軸の周方向に略等配に複数備えた
ことを特徴とする工具取付け装置。
【請求項2】
工具を工具フランジを介して主軸の工具取付け台に対して前記主軸の軸方向に着脱自在に取付けるようにした工具取付け装置において、
前記主軸の周方向に略等配に配置され且つ前記主軸の径方向の内側へと締付けたときに、楔作用により前記工具フランジを前記工具取付け台側へと前記軸方向に締付けて固定する複数の固定手段と、
前記主軸の径方向に配置され且つ前記径方向の外側から操作して前記固定手段を前記径方向の内側へと締付ける複数の締付け手段とを備えた
ことを特徴とする工具取付け装置。
【請求項3】
前記固定手段は、
前記工具取付け台と前記工具フランジとの一方側に設けられた楔体受け部と、
前記工具取付け台と前記工具フランジとの他方側に設けられた楔作用部と、
前記径方向の外側で前記楔体受け部と前記楔作用部との間に配置され且つ前記楔作用部
に対応して楔作用を発生する楔体とを備え、
前記径方向の外側から操作可能に前記径方向に配置され且つ前記楔体を前記径方向の内
側に締付ける締付けボルトを備えた
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の工具取付け装置。
【請求項4】
前記各固定手段の前記楔体受け部と前記楔作用部は、前記周方向に交互に配置されており、
前記各固定手段の前記楔体は、前記楔体受け部と前記楔作用部との一方側から、この一方側の両側に配置された他方側に跨がって前記周方向に配置されている
ことを特徴とする請求項3記載の工具取付け装置。
【請求項5】
前記工具取付け台は、前記径方向の外方に突出する第1突出部の外端側に、前記楔体受け部と前記楔作用部との一方側を備え、
前記工具フランジは、隣り合う前記第1突出部間で前記軸方向に突出する第2突出部の外端側に、前記楔体受け部と前記楔作用部との他方側を備えた
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の工具取付け装置。
【請求項6】
前記各固定手段に跨がって前記楔体の外周に配置された脱落阻止リングを備え、
該脱落阻止リングは、前記楔体に対応して前記楔体の脱落を阻止する脱落阻止位置と、前記楔体から外れて前記楔体の取外しを許容する取出し許容位置との間で前記主軸の軸方向に移動可能である
ことを特徴とする請求項3~5の何れかに記載の工具取付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥石等の工具を工具フランジを介して主軸の工具取付け台に着脱自在に取付ける工具取付け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば総形研削加工を行う縦型研削盤においては、工作物の形状に合わせた各種形状の砥石を砥石フランジに組付けておき、段取替え時に工作物の形状に合わせた砥石を砥石フランジごと交換することがある。そのため研削盤、その他の加工機では、砥石、その他の工具を工具フランジを介して主軸の工具取付け台に取付けるようになっている。
【0003】
この工具の取付け形態には、従来、主軸と平行に配置された周方向に複数のボルトを使用する複数ボルト式(特許文献1)と、主軸の中心に配置されたセンターナットを使用するセンターナット式(特許文献2)とがある。
【0004】
複数ボルト式は、主軸の下端側の工具取付け台と、工具が組付けられた工具フランジとを上下に重ねて、その外周側に主軸と平行に配置された周方向に複数のボルトにより、工具取付け台と工具フランジとを上下方向に締付けて工具を主軸に取付けるようになっている。
【0005】
またセンターナット式は、主軸の下端側の工具取付け台のねじ部の外周に、工具フランジの外周に装着されたナットを螺合して、そのナットを締付けて工具を主軸に取付けるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-152605号公報
【特許文献2】特開平6-210504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の工具の取付け形態では、複数ボルト式、センターナット式の何れの場合にも、工具支持剛性が低下し、また工具を交換する際の段取替えが煩雑で作業能率が低下する等の問題がある。
【0008】
すなわち、複数ボルト式は、工具取付け台の外周側に配置されたボルト孔に対して主軸の軸方向のボルトを上側から挿入して、そのボルトの頭部側にスパナ等の締付け工具を掛け直しながらボルトを締付けるため、複数のボルトの締付け作業に時間を要すると云う問題がある。
【0009】
特に工具取付け台の上側の隙間が小さい場合には、工具取付け台の通孔に上側からボルトを挿入した後、その工具取付け台から下方に工具フランジを離した状態で各ボルトの下端を工具フランジのねじ孔にねじ込みながら締付けなければならないので、ボルトのねじ込み量に合わせて主軸と工具との芯合わせを行う必要があり、ボルトの締付け作業に時間を要する上に、主軸と工具との芯合わせ作業が加わり作業能率が極端に低下すると云う問題がある。
【0010】
一方、工具取付け台の上側の隙間が大きい場合には、六角レンチによりボルトを締付けることが可能となるが、工具取付け台の上側に六角レンチを使用できるだけの隙間を確保する必要があり、それに伴って主軸の長さが大になるため、主軸の曲げ剛性が低くなり加工精度が低下すると云う欠点がある。
【0011】
センターナット式は、主軸の中心部の1個のナットにより工具フランジを主軸の工具取付け台に固定するため、工具が大きい砥石等の場合には、工具、工具フランジを下側から支えながらナットを締付ける必要から、工具等を下側から受ける工具交換台が大型化してしまい、機内に作業スペースを確保することが困難になると云う問題もある。
【0012】
更に複数ボルト式、センターナット式では、ボルト、ナットを締付ける際に、その操作力により主軸が連れ回りして回転するため、主軸の回転を確実に止めた状態でボルト、ナットを操作する必要があり、そのボルト、ナットの締付けが煩わしくなると云う欠点がある。
【0013】
本発明は、このような従来の課題に鑑み、工具支持強度を低下させることなく、工具交換作業を容易且つ迅速にできる工具取付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、工具を工具フランジを介して主軸の工具取付け台に対して前記主軸の軸方向に着脱自在に取付けるようにした工具取付け装置において、前記主軸の径方向の外側から操作して前記径方向の内側へと締付けたときに、楔作用により前記工具フランジを前記工具取付け台に対して前記軸方向に締付けて固定する固定手段を、前記主軸の周方向に略等配に複数備えたものである。
【0015】
また別の本発明は、工具を工具フランジを介して主軸の工具取付け台に対して前記主軸の軸方向に着脱自在に取付けるようにした工具取付け装置において、前記主軸の周方向に略等配に配置され且つ前記主軸の径方向の内側へと締付けたときに、楔作用により前記工具フランジを前記工具取付け台側へと前記軸方向に締付けて固定する複数の固定手段と、前記主軸の径方向に配置され且つ前記径方向の外側から操作して前記固定手段を前記径方向の内側へと締付ける複数の締付け手段とを備えたものである。
【0016】
前記固定手段は、前記工具取付け台と前記工具フランジとの一方側に設けられた楔体受け部と、前記工具取付け台と前記工具フランジとの他方側に設けられた楔作用部と、前記径方向の外側で前記楔体受け部と前記楔作用部との間に配置され且つ前記楔作用部に対応して楔作用を発生する楔体とを備え、前記径方向の外側から操作可能に前記径方向に配置され且つ前記楔体を前記径方向の内側に締付ける締付けボルトを備えたものでもよい。
【0017】
前記各固定手段の前記楔体受け部と前記楔作用部は、前記周方向に交互に配置されており、前記各固定手段の前記楔体は、前記楔体受け部と前記楔作用部との一方側から、この一方側の両側に配置された他方側に跨がって前記周方向に配置されていることもある。
【0018】
前記工具取付け台は、前記径方向の外方に突出する第1突出部の外端側に、前記楔体受け部と前記楔作用部との一方側を備え、前記工具フランジは、隣り合う前記第1突出部間で前記軸方向に突出する第2突出部の外端側に、前記楔体受け部と前記楔作用部との他方側を備えたものでもよい。
【0019】
前記各固定手段に跨がって前記楔体の外周に配置された脱落阻止リングを備え、該脱落阻止リングは、前記楔体に対応して前記楔体の脱落を阻止する脱落阻止位置と、前記楔体から外れて前記楔体の取外しを許容する取出し許容位置との間で前記主軸の軸方向に移動可能であることが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、主軸の周方向に略等配に配置された複数の固定手段を、主軸の径方向に配置された各締付け手段を径方向の外側から操作して径方向の内側へと締付けることにより、各固定手段の楔作用により工具フランジを工具取付け台側へと主軸の軸方向に締付けて固定するため、工具支持強度を低下させることなく、工具交換作業を容易且つ迅速にできる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施形態を示す縦型研削盤の砥石取付け装置の正面断面図である。
【
図14】本発明の第2の実施形態を示す砥石取付け装置の要部断面図である。
【
図15】本発明の第3の実施形態を示す砥石取付け装置の要部断面図である。
【
図16】本発明の第4の実施形態を示す砥石取付け装置の一部分解斜視図である。
【
図21】本発明の第5の実施形態を示す砥石取付け装置の一部破断平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて詳述する。
図1~
図13は縦型研削盤に適用した本発明の砥石取付け装置1の第1の実施形態を例示する。
【0023】
縦型研削盤は、
図1~
図3に示すように、主軸ケース2により縦方向の軸心回りに回転自在に支持された主軸3と、この主軸3の下端部に着脱自在に装着された砥石4とを備え、主軸3とともに回転する砥石4により、工作物(図示省略)の研削加工を行うようになっている。主軸ケース2は、機枠(図示省略)により主軸3の軸方向(以下、「主軸3の軸方向」を「前記軸方向」と云う)に昇降自在に支持されている。また主軸ケース2の下端部には、主軸ケース2の外周を覆う主軸カバー5と、砥石4を覆う砥石カバー6とが設けられている。
【0024】
砥石4は砥石取付け装置1を介して主軸3の下端側に着脱自在に取付けられている。なお、本発明は、砥石4を対象とする砥石取付け装置1に限定されるものではなく、砥石4を含む各種工具を対象とする工具取付け装置全般に適用可能であることは云うまでもない。砥石4は砥石フランジ8と押えフランジ9との間に略同心円状に組付けられ、また主軸3の下端側にはボルト48により砥石取付け台10が装着されている。
【0025】
砥石取付け装置1は、砥石フランジ8を介して砥石4を砥石取付け台10に対して前記軸方向に着脱自在に取付けるためのものであり、その砥石フランジ8と砥石取付け台10との間には、
図1~
図3に示すように、主軸3の径方向(以下、「主軸3の径方向」を「前記径方向」と云う)の内側へと締付けたときの楔作用により、砥石フランジ8を砥石取付け台10側へと前記軸方向に締付けて所定の保持力で固定するための固定手段11と、前記径方向の外側から操作して固定手段11を前記径方向の内側へと締付けるための締付け手段12とが主軸3の周方向(以下、「主軸3の周方向」を「前記周方向」と云う)に略等配に複数配置されている。なお、この実施形態では、固定手段11と締付け手段12とが前記周方向に略等配に6組配置されているが、固定手段11、締付け手段12は2組以上の複数であればよい。
【0026】
砥石フランジ8は砥石4の中心孔13に挿通される円筒状の挿通部14を同心状に備え、その挿通部14の下端側に押えフランジ9が套嵌され、下側からボルト15により固定されている。そのため段取替え等で砥石4を交換する際には、砥石フランジ8等に組付けた状態のままで、その砥石フランジ8を介して砥石4を砥石取付け台10に着脱することになる。
【0027】
砥石取付け台10は、下側が砥石フランジ8の取付け面18となった円環部19を同心状に備え、その円環部19の内周側の芯出し孔20に主軸3の下端側に同心状に形成された芯出し凸部21が嵌合されている。したがって、砥石取付け台10は、円環部19の芯出し孔20と芯出し凸部21との嵌合により、主軸3に対して芯出しされている。
【0028】
円環部19の芯出し孔20には、芯出し凸部21が所定の嵌め合い公差で嵌合されている。砥石フランジ8には砥石取付け台10側に突出する芯出し凸部22が同心状に設けられており、砥石フランジ8を砥石取付け台10の取付け面18に当接させて取付けるときに、この芯出し凸部22が円環部19の芯出し孔20に所定の嵌め合い公差で嵌合されるようになっている。
【0029】
したがって、砥石フランジ8は、円環部19と芯出し凸部22との嵌合により砥石取付け台10に対して芯出しされるので、砥石4を砥石フランジ8を介して砥石取付け台10に取付けることにより、砥石4の中心を主軸3の中心に一致させて芯出しをすることが可能である。
【0030】
各固定手段11は、砥石取付け台10に設けられた楔体受け部23と、砥石フランジ8に設けられた第1楔作用部24と、楔体受け部23及び第1楔作用部24に対して前記径方向の外側で上下の楔体受け部23及び第1楔作用部24に対応して配置され且つ第1楔作用部24との間で楔作用を発生させる楔体25とを備えると共に、主軸3の中心回りに円弧状に構成されており、主軸3の中心回りの略同一円周上に配置されている。
【0031】
砥石取付け台10には、各第1突出部26を介して各固定手段11の楔体受け部23が主軸3に対して放射状に設けられている。第1突出部26は円環部19の外周から前記径方向の外方へと突出している。楔体受け部23は偏平状であって、第1突出部26の外周の前記軸方向の一端側である砥石フランジ8側の縁部から前記径方向の外方へと突出している。第1突出部26、楔体受け部23は、前記周方向に所定の間隔をおいて放射状に配置されている。砥石取付け台10は、円環部19、第1突出部26、楔体受け部23を含む下面側が砥石フランジ8用の取付け面18となっており、この取付け面18に砥石フランジ8の上面が当接している。
【0032】
砥石フランジ8の上面には、第2突出部27を介して固定手段11の第1楔作用部24が設けられている。第2突出部27は主軸3を中心とする平面視略円弧状であって、前記周方向に隣り合う第1突出部26間で砥石フランジ8の上面に配置され、ボルト29により砥石フランジ8に固定されている。第2突出部27と第1突出部26との間には所定の間隔があり、砥石4の交換時に第2突出部27が第1突出部26間に進入可能になっている。第2突出部27は砥石フランジ8の上面から前記軸方向へと上向きに突出している。なお、第2突出部27の突出高さは、砥石取付け台10の円環部19等と略同程度であるが、円環部19等よりも若干高いか低くてもよい。
【0033】
第2突出部27には、前記径方向の内側に三角形状の補強部30が、前記径方向の外端側に第1楔作用部24が夫々設けられている。補強部30は楔体25から第1楔作用部24に加わる押圧力に十分に抗するように、ボルト29よりも円環部19側に離れた位置で砥石フランジ8の上面に当接している。なお、円環部19には補強部30との干渉を避けるように凹部31が設けられている。
【0034】
第1楔作用部24は前記周方向に円弧状であって、第2突出部27の外周の前記軸方向の他端側である主軸3側の縁部から前記径方向の外方へと突出している。この第1楔作用部24は、外周に向かって楔体受け部23から離れるように傾斜する円錐面状のテーパ面により構成されている。なお、各第1楔作用部24はその全体で主軸3を中心とする円錐状になり、外周側が楔体受け部23から離れるように傾斜している。
【0035】
第1楔作用部24は、各第2突出部27を砥石フランジ8の同一円周上に固定した後、その状態で各第2突出部27に跨がって一体的に円錐状のテーパ面に仕上げ加工されており、これによって第1楔作用部24の個々のバラツキを防止することができる。そのため各固定手段11において、略均等に楔作用を得ることが可能である。
【0036】
各固定手段11の楔体受け部23と第1楔作用部24は、前記軸方向に所定の間隔をおいて配置され、また楔体受け部23に対して前記周方向の両側に第1楔作用部24が配置されている。一方、楔体25は前記周方向に長い円弧状であって、
図2、
図3に示すように、中央部が第1突出部26及び楔体受け部23に対応し、両端部がその両側の第2突出部27及び第1楔作用部24の前記周方向の略半分に対応する長さを有し、楔体受け部23及び第1楔作用部24の外側で上下の楔体受け部23と第1楔作用部24との間に配置されている。
【0037】
この楔体25には、
図3、
図4に示すように、楔体受け部23上に当接する当接面33が下側に、第1楔作用部24と対応する第2楔作用部34が上側に夫々設けられている。下側の当接面33は前記軸方向に対して略直角の平坦面であり、また上側の第2楔作用部34は第1楔作用部24と面接触可能に略同一角度で傾斜する円錐面状のテーパ面により構成されている。したがって、当接面33と第2楔作用部34とを上下に有する楔体25は、内周側の上下寸法が小さくなる楔状になっている。
【0038】
第2楔作用部34は、
図4に示すように、第1楔作用部24と略同一角度のテーパ面であるため、楔体25を前記径方向の内側へと締付けたときに、第1楔作用部24との間で発生する楔作用により砥石フランジ8を砥石取付け台10側に締付けることができる。なお、第1楔作用部24、第2楔作用部34は、両者間で楔作用が生じる組合せであればよく、異なる角度の傾斜面でもよいし、傾斜面と傾斜面以外の円弧面等との組合せでもよい。
【0039】
締付け手段12は締付けボルト35により構成されている。締付けボルト35は前記径方向に配置されており、前記径方向の外端側に操作部36を有する頭部37が設けられ、ねじ部38が楔体25の円弧方向の略中央に形成された挿通孔39を貫通して第1突出部26のねじ孔40に螺合され、頭部37側の操作部36を操作することにより、楔体25を第1突出部26側へと締付けるようになっている。操作部36は六角レンチ等の締結工具41を挿入可能な凹部であり、その締結工具41で締付けボルト35を正逆方向に操作するようになっている。
【0040】
楔体25は楔体受け部23上を前記径方向に平行に摺動自在であるため、その摺動により締付けボルト35、楔体25の挿通孔39、砥石取付け台10のねじ孔40との位置関係が変化しないので、各固定手段11に楔体25を容易に組込むことができる。また締付けボルト35は外側から前記径方向に挿脱するため、前記軸方向のスペースに影響されることなく組込むことができる。
【0041】
固定手段11の外周側には、
図1~
図4に示すように、各固定手段11に跨がって脱落阻止リング42が設けられている。脱落阻止リング42は砥石取付け台10上の脱落阻止板43の外周に主軸3と略同心状に設けられている。脱落阻止板43は、外周側の脱落阻止リング42を支持する環状支持部44と、この環状支持部44から内側に突出して砥石取付け台10の第1突出部26上にボルト49により取付けられた取付け部45とを有し、環状支持部44の内側の各取付け部45間に第2突出部27に対応する切欠き部46が設けられている。
【0042】
脱落阻止リング42は、脱落阻止板43の環状支持部44により支持されており、楔体25の脱落を阻止する脱落阻止位置Aと、楔体25の取出しを許容する取出し許容位置Bとの間で前記軸方向に沿って上下方向に移動可能である。脱落阻止位置Aでは、脱落阻止リング42が締付けボルト35の頭部37に上側から係合して楔体25の外周側に対応する位置に保持され、また取出し許容位置Bでは、脱落阻止リング42が楔体25から上側に外れて楔体25の取外しを許容するようになっている。
【0043】
脱落阻止リング42には、
図5に示すように回止め用の係合部47が切欠き状に形成されている。この係合部47は、脱落阻止リング42が脱落阻止位置Aにあるときに締付けボルト35の頭部37に上側から係合して、脱落阻止位置Aの脱落阻止リング42が主軸3回りに回転しないように保持している。
【0044】
脱落阻止リング42は内周側の上下両側に断面円弧状、その他の摩擦保持部42a,42bを有し、脱落阻止位置Aから取出し許容位置Bへと上昇したときには、下側の摩擦保持部42bと脱落阻止板43の環状支持部44との間の摩擦力により、脱落阻止板43に対してその取出し許容位置Bに保持できるようになっている。各ボルト15,29,48、49は、締付けボルト35と同様に六角レンチ等の締結工具により操作するようになっている。
【0045】
砥石4を交換する際には、次のような手順により、砥石4を砥石フランジ8に組付けたままの状態で砥石フランジ8ごと交換する。先ず
図5に示すように、機内に砥石交換台50を設置する。次に
図6に示すように、交換前の砥石4が取付けられた主軸3をa矢示方向に下降させて、その砥石フランジ8を砥石交換台50上に載せた後、締付けボルト35の頭部37側に締結工具41をセットして、この締付けボルト35を外側から順次操作して緩めて行く。そして、各締付けボルト35を緩めた後、
図7に示すように、脱落阻止リング42を取外し許容位置Bへとb矢示方向に上昇させて、締付けボルト35及び楔体25をc矢示方向へと取外す。
【0046】
これによって固定手段11の楔作用による砥石フランジ8の砥石取付け台10側への締付け力を解除でき、固定手段11が上下の砥石取付け台10と砥石フランジ8とに分離可能になる。次に
図8に示すように、主軸3をd矢示方向に上昇させると、砥石取付け台10が主軸3と一体に上昇して、主軸3側の砥石取付け台10から砥石交換台50上の砥石フランジ8を取外すことができる。そして、砥石交換台50上の砥石4を砥石フランジ8ごと新しいものと入替える。
【0047】
砥石交換台50上の砥石4を入替えた後、主軸3側の砥石取付け台10側の第1突出部26及び楔体受け部23が、砥石交換台50上の砥石フランジ8の第2突出部27及び第1楔作用部24間に配置されるように、砥石交換台50上の砥石フランジ8に対して主軸3側の砥石取付け台10の相対位置を合わせながら、
図9に示すように、主軸3をe矢示方向に下降させて行く。すると
図10に示すように、各固定手段11の砥石取付け台10側の第1突出部26及び楔体受け部23が、砥石交換台50上の砥石フランジ8側の前記周方向に隣り合う第2突出部27及び第1楔作用部24間に進入するため、各固定手段11の第1突出部26及び楔体受け部23と、第2突出部27及び第1楔作用部24とを前記周方向に交互に組合わすことができる。
【0048】
各固定手段11ごとに砥石取付け台10側の第1突出部26及び楔体受け部23と、砥石交換台50上の砥石フランジ8の第2突出部27及び第1楔作用部24とを組合せた後、
図11に示すように、各固定手段11ごとに楔体受け部23と第1楔作用部24に対して外側から楔体25を当接させて、楔体25の挿通孔39に挿通された状態の締付けボルト35を六角レンチ等の締結工具41により外側から操作して、各固定手段11ごとに締付けボルト35を前記径方向の内側へとf矢示方向に締付けて行く。
【0049】
各固定手段11では、締付けボルト35の締付けにより、
図12に示すように、楔体25が第1楔作用部24と楔体受け部23との間でf矢示方向に進入するため、第1楔作用部24と楔体25の第2楔作用部34との間での楔作用により力f1が発生する。この楔作用により発生する力f1は、
図12に示すように前記軸方向の力(締付け力)f2と、これに直角な方向の前記径方向の力f3とに分けることができる。そして、各固定手段11が締付け力f2で砥石フランジ8を砥石取付け台10に対して前記軸方向に締付けるので、各固定手段11の締付け力f2の総和分に相当する所定の保持力により、砥石フランジ8を砥石取付け台10に固定することができる。
【0050】
すなわち、楔体25が楔体受け部23に沿って前記径方向の内側へと移動すれば、楔体25の第2楔作用部34から第1楔作用部24にその傾斜面に対して垂直に力f1が加わり、この楔体25の第2楔作用部34と第1楔作用部24との間の楔作用により傾斜角度に応じた締付け力f2が前記軸方向に発生する。
【0051】
この楔作用により発生する締付け力f2は、楔体25の第2楔作用部34から第1楔作用部24に対して前記軸方向の上向きに加わり、また楔体25から楔体受け部23に対して前記軸方向の下向きに加わる。
【0052】
したがって、各締付けボルト35により各固定手段11を均等に締付けて行けば、その締付け力f2によって砥石フランジ8を砥石取付け台10の取付け面18に対して略均等に押付けて固定することができる。
【0053】
締付けボルト35による各固定手段11の締付けが完了すると、
図13に示すように、脱落阻止リング42を脱落阻止位置Aまで下げて、その脱落阻止リング42により各固定手段11の楔体25を外周側から取囲む。このようにすれば、楔体25の外側に脱落阻止リング42があるため、締付けボルト35の折損等があっても、その脱落阻止リング42によって各楔体25の脱落を阻止することができる。最後に主軸3を上昇させて、砥石交換台50上の砥石4と一体に砥石フランジ8を持上げた後、砥石交換台50を機外に取出せばよい。
【0054】
この実施形態に例示するように、砥石4を砥石フランジ8を介して主軸3の砥石取付け台10に着脱自在に取付けるに際して、前記周方向に略等配に配置され且つ前記径方向の内側へと締付けたときに、楔作用により砥石フランジ8を砥石取付け台10側へと前記軸方向に締付けて固定する複数の固定手段11と、前記径方向の外側から操作して固定手段11を前記径方向の内側へと締付ける複数の締付け手段12とを備えることにより、砥石支持強度を低下させることなく、砥石4の交換作業を迅速にできる利点がある。
【0055】
すなわち、このような固定手段11及び締付け手段12を採用することにより、砥石取付け台10から砥石フランジ8までの主軸3の長さを短くできるので、主軸3の曲げ剛性の低下、加工精度の低下を防止できると共に、締付け手段12の操作が容易であり、砥石交換作業を迅速にできる。また固定手段11は楔作用を利用して締付けるようになっているので、小さい締付けトルクで大きな保持力を確保できる。
【0056】
更に締付けボルト35等の締付け手段12は、前記径方向の外側から操作すればよいので、その締付け手段12を少ない操作スペースで無理なく容易に操作できる。しかも締付け手段12の操作方向が主軸3の回転方向と異なるため、作業時に主軸3が連れ回りにより回転するようなことがなく、作業を容易且つ迅速に行うことができる。
【0057】
また締結工具41としてトルクレンチを用いて、締付けボルト35のトルクを管理することもできる。更に脱落阻止リング42を設けることにより、締付けボルト35の損傷による楔体25の脱落も防止できる。締付けボルト35を六角レンチ等の締結工具41で操作可能にすれば、締結工具41を締付けボルト35から外さずに作業ができ、交換作業の効率を更に改善することができる。
【0058】
図14は本発明の第2の実施形態を例示する。この実施形態では、
図14に示すように、砥石取付け台10の第1突出部26の砥石フランジ8寄りの下端部に第1楔作用部24が設けられ、砥石フランジ8に固定された第2突出部27の第1楔作用部24と反対の上端部に楔体受け部23が設けられている。楔体25は、上面が楔体受け部23と平行であり、下側に第2楔作用部34が設けられている。この実施形態では、固定手段11が第1の実施形態と上下反対に構成されている。その他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0059】
このように砥石取付け台10に第1楔作用部24を設け、砥石フランジ8に楔体受け部23を設けても、第1の実施形態と同様に砥石支持強度を低下させることなく、砥石4の交換作業を迅速にできる。
【0060】
図15は本発明の第3の実施形態を例示する。この実施形態では、
図15に示すように、砥石取付け台10の第1突出部26の上端側と、砥石フランジ8に固定された第2突出部27の下端側とに上下逆向きに第1楔作用部24が設けられている。一方、楔体25には上下両側に第2楔作用部34が設けられている。この実施形態では、上下逆向きの第1楔作用部24が楔作用として機能すると同時に楔体受け部として機能することになる。したがって、上下の第1楔作用部24、第2楔作用部34は締付けボルト35を中心に上下対称に構成されている。その他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0061】
このように楔体25の上下両側で砥石取付け台10と砥石フランジ8とに上下に相対向するように第1楔作用部24を設けておき、その上下の第1楔作用部24間に楔体25を配置しても、第1の実施形態と同様に砥石4の支持強度を低下させることなく、砥石4の交換作業を迅速にできる。
【0062】
図16~
図20は本発明の第4の実施形態を例示する。この実施形態の楔体25には、
図16、
図17に示すように、その内周側の円弧方向の両端部に面取り部53が設けられている。この面取り部53は、第1の実施形態の場合に第2楔作用部34の円弧方向の両端側に形成されていた内周側両端角部52を除去するもので、楔体25の内周側両端部55を前記軸方向の全体にわたって緩やかに面取りすることにより形成されている。なお、面取り部53は第2楔作用部34の少なくとも内周側両端角部52を除去できるものであればよい。
【0063】
この面取り部53は、例えば次のように形成すればよい。
図17に示すように、楔体25の内周面54と第1楔作用部24の端面24aとの交差位置54a又はその近傍を通る内周面54の接線方向に楔体25の内周側両端部55を除去する。
【0064】
この結果、第2楔作用部34には、楔体25の円弧方向の中央側にテーパ方向の略全幅にわたる広幅部34aができ、この広幅部34aから楔体25の円弧方向の端部側に近づくに連れて順次幅が狭くなる狭幅部34bができる。これによって、第2楔作用部34が第1楔作用部24の下側に進入する際には、広幅部34a及び狭幅部34bの端縁側の全体が第1楔作用部24に対して略同時に当接することになり、局部的な当接を防止することができる。
【0065】
楔体25の内周面54に対してその接線方向に面取り部53を設けることにより、楔体25の面取り時の機械加工を容易に行うことができる。しかし、この面取り部53は内周面54の接線方向である必要はないし、また接線方向に形成する場合でも、内周面54の交差位置54aから円弧方向に離れた位置を基準に設けることも可能である。他の構成は各実施形態と同様である。
【0066】
このように楔体25の内周側両端部55に面取り部53を設けることにより、第1楔作用部24と第2楔作用部34との損傷を防止できるとともに、両楔作用部24,34の面圧を略均等にして充分な締付け力を確保することができる。
【0067】
砥石フランジ8を主軸3に取付ける際には、砥石交換台50上の砥石フランジ8の第2突出部27間に主軸3の砥石取付け台10の第1突出部26が進入すべく、砥石フランジ8と砥石取付け台10とを位置合わせしながら主軸3を下降させる。このとき砥石取付け台10の下面と砥石フランジ8の上面との衝突を防止するため、
図18に示すように、砥石取付け台10の下面と砥石フランジ8の上面との間に若干の隙間sができる状態で位置決めする。
【0068】
次に砥石取付け台10側の楔体受け部23上に楔体25を配置して、その第2楔作用部34を砥石フランジ8側の第1楔作用部24と対向させた後、この楔体25を締付けボルト35により前記径方向へと締付けて、第1楔作用部24と第2楔作用部34との間で発生する楔作用により、砥石フランジ8を隙間s分だけ持上げながら砥石フランジ8を砥石取付け台10に固定する。固定の完了時点では、
図19に示すように第1楔作用部24と第2楔作用部34とが対応して、その両者間に発生する楔作用により砥石フランジ8を砥石取付け台10に締付けて固定する。
【0069】
固定の完了時点での楔体25の高さが
図19に示す位置であるとすれば、
図18に示すように、砥石取付け台10と砥石フランジ8との間に隙間sがある状態では、楔体25が固定完了時点に比較して隙間s分だけ上側へとずれるため、楔体25の第2楔作用部34が砥石フランジ8側の第1楔作用部24に当接し始める当接開始位置52aも隙間s分だけ上側へとずれた位置となる。
【0070】
なお、第2楔作用部34の第1楔作用部24に対する当接開始位置52aは隙間sの大小によってバラツキがあるが、その隙間sは第2楔作用部34の内周側下端が第1楔作用部24の外周側上端よりも下側であって、楔体25の締付けにより第2楔作用部34が第1楔作用部24の下側に進入可能な範囲であればよい。当接開始位置52aは当接開始時に面当たりする場合には、その面当たりの範囲内であればよい。
【0071】
楔体受け部23上の楔体25の高さが隙間s分だけ高くなった場合には、第1楔作用部24に対して第2楔作用部34が当接を開始する当接開始位置52aは、第1楔作用部24の傾斜角度に従って隙間s分だけ上昇する。そのため当接開始位置52aにおける第1楔作用部24と第2楔作用部34の主軸3に垂直な断面を考えると、
図20に示すように、第1楔作用部24の当接位置半径r1は、楔体25の内周面54側の当接位置半径r2よりも大きくなる。
【0072】
これは、楔体25を
図19に示す固定完了状態まで締付けたときに、楔体25の第2楔作用部34が砥石フランジ8側の第1楔作用部24に略全面で当接するように、第1楔作用部24と第2楔作用部34とを略同一円錐状のテーパ面に設計しているためである。
【0073】
このように設計された第1楔作用部24と第2楔作用部34では、
図18に示すように、第2楔作用部34の第1楔作用部24に対する当接開始位置52aが上になるほど第1楔作用部24の当接位置半径r1が大きくなり、その当接位置半径r1の大きい第1楔作用部24に対して楔体25側の当接位置半径r2の小さい第2楔作用部34が下側から当接する。
【0074】
そのため内周側両端角部52を有する楔体25を使用した場合には、
図20に示すように、楔体25の第2楔作用部34の内、その円弧方向の両端の内周側両端角部52が当接開始位置52aとなって第1楔作用部24の当接位置半径r1の高さで最初に当接し、その後、楔体25の締付けに伴って第2楔作用部34が第1楔作用部24の下側に進入しながら当接領域が広がって行く。
【0075】
したがって、内周側両端角部52が第1楔作用部24に当接した状態のままで楔体25を締付けると、楔体25の内周側両端角部52に対応する部分での第1楔作用部24と第2作用部34との面圧が非常に高くなって、その面圧によって第1楔作用部24が傷付いたり、楔体25の内周側両端角部52が変形したりする他、そのような状況が度々繰返されると、第1楔作用部24と第2楔作用部34とが密着しなくなって充分な締付け力を確保できなくなるおそれがある。
【0076】
しかし、この実施形態に示すように楔体25の内周側両端に、楔体25の内周側両端角部52を逃がすように緩やかな面取り部53を設けることにより、その内周側両端角部52による弊害を未然に防止することができる。
【0077】
何故ならば、楔体25の内周側両端部55に面取り部53を設けることにより、砥石フランジ8の上面と砥石取付け台10の下面との間に隙間sがある状態で楔体25を締付けた場合でも、砥石フランジ8側の第1楔作用部24に対して楔体25の第2楔作用部34の略全面を均等に当接させることができる。そのため第1楔作用部24の損傷、楔体25の変形等を防止でき、また第1楔作用部24と第2楔作用部34との密着により必要な締付け力を確保できる利点がある。
【0078】
更に楔体25の内周側両端に面取り部53があるので、楔体25を着脱する際に、除去された内周側両端角部52が他の部位に引っ掛かるなどの問題もなく、楔体25を容易に着脱することもできる。また面取り部53は楔体25の内周側両端部55に内周面54の接線方向に形成しているので、楔体25に対する面取り部53の機械加工も容易にできる。
【0079】
図21、
図22は本発明の第5の実施形態を例示する。この実施形態では、
図21、
図22(a)(b)に示すように、砥石フランジ8側の第2突出部27の第1楔作用部24と、楔体25の長手方向の両側の第2楔作用部34は、平面視形状が略真っ直ぐに構成されている。第1楔作用部24と第2楔作用部34は、各固定手段11ごとに平面視略くの字状を呈するように配置され、楔体25を締付けボルト35により前記径方向に締付けたときに、楔体25側の第2楔作用部34が前記径方向に平行に移動して砥石フランジ8側の第1楔作用部24に平行に当接するように構成されている。
【0080】
砥石フランジ8側の第2突出部27には、平面視略くの字状に第1楔作用部24が設けられ、また楔体25には中間の締付けボルト35を挟んで長手方向の両側に、第1楔作用部24に対応する第2楔作用部34が各第1楔作用部24と略平行に設けられている。第1楔作用部24及び第2楔作用部34は略同一角度の傾斜面であり、楔体25を締付けボルト35により前記径方向に締付けたときに、第1楔作用部24と第2楔作用部34との間の楔作用により、砥石フランジ8を砥石取付け台10側に締付けるようになっている。他の構成は各実施形態と同様である。
【0081】
この実施形態の場合にも、
図18に示す場合と同様に、砥石取付け台10の下面と砥石フランジ8の上面との間に若干の隙間sがある状態で位置決めすれば、楔体25の位置が隙間s分だけ高くなる。そのため楔体25を締付けボルト35により前記径方向へと締付けたときに、楔体25は高い位置を保ったままで楔体受け部23上を前記径方向に移動して、その第2楔作用部34が砥石フランジ8側の第1楔作用部24に対して下側から当接した後、楔体25が略平行状態を保ちながら第1楔作用部24の下側に進入する。そして、第1楔作用部24と第2楔作用部34との間で発生する楔作用によって砥石フランジ8を隙間s分だけ持上げて、砥石フランジ8を砥石取付け台10に固定する。
【0082】
楔体25の第2楔作用部34は砥石フランジ8側の第1楔作用部24に近い側から当接してその下側に進入するが、楔体24は前記径方向に平行移動するため、第2楔作用部34は第1楔作用部24に対して略平行状態を保ちながら下側へと進入して、砥石フランジ8を砥石取付け台10に固定した時点では、第1楔作用部24と第2楔作用部34との対応領域が略均等な面圧で当接する。したがって、楔体25の内周側両端角部52の損傷、楔体25の変形等もなく、第1楔作用部24と第2楔作用部34との間の楔作用によって充分な保持力を確保することができる。
【0083】
以上、本発明の実施形態として縦型研削盤における砥石4の交換作業を例示して詳述したが、本発明はこの実施形態に例示の砥石4の交換等に限定されるものではなく、砥石4の他に、各種形状、構造の工具フランジを使用する各種の加工工具の取付けにも応用可能であることは云うまでもない。
【0084】
また単に砥石4、その他の工具に採用可能であるだけでなく、機構的にも種々の変更が可能である。例えば、実施形態では、円弧状の固定手段11を主軸3の中心周りに略同一円周上に6等配に配置しているが、固定手段11の数は砥石フランジ8を砥石取付け台10に固定するに必要な保持力により決定すればよく、2以上の固定手段11を略等配に配置するものであれば十分である。
【0085】
その場合、各固定手段11は主軸3の中心回りに略円弧状に構成する他、直線状に構成された固定手段11を主軸3の周辺に三角形、四角形又は五角形に配置することも可能である。また主軸3は縦方向に配置するだけでなく、斜め方向に傾斜状に配置してもよいし、前後、左右等の水平方向に配置してもよい。楔体25は円弧状の他、直線状であってもよい。
【0086】
実施形態の固定手段11は、楔体受け部23に対して前記周方向の両側に配置される第1楔作用部24に跨がって楔体25を配置するように構成しているが、固定手段11ごとに楔体受け部23と楔作用部24と楔体25とが独立して、その楔体受け部23と楔作用部24との間に楔体25が配置されるように構成してもよい。
【0087】
脱落阻止リング42は、実施形態に例示するように脱落阻止位置Aでは締付けボルト35の頭部37により下側から支持し、取出し許容位置Bでは脱落阻止板43の環状支持部44との間の摩擦力により保持する他、適宜位置決め手段によって脱落阻止位置Aと取出し許容位置Bとの何れかに位置決めするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0088】
3 主軸
4 砥石(工具)
8 砥石フランジ(工具フランジ)
10 砥石取付け台(工具取付け台)
11 固定手段
12 締付け手段
23 楔体受け部
24 第1楔作用部
25 楔体
26 第1突出部
27 第2突出部
34 第2楔作用部
35 締付けボルト
42 脱落阻止リング
A 脱落阻止位置
B 取出し許容位置