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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052208
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】沸騰冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20220328BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20220328BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
F28D15/02 101G
F28D15/02 101B
H01L23/46 A
H05K7/20 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020158452
(22)【出願日】2020-09-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】特許業務法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴郁
(72)【発明者】
【氏名】大野 雄一
(72)【発明者】
【氏名】大見 康光
(72)【発明者】
【氏名】義則 毅
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA05
5E322DB01
5E322DB06
5E322DC01
5E322FA01
5F136CC35
5F136CC37
5F136CC40
5F136DA27
(57)【要約】
【課題】熱媒体の循環量を増大させることができる沸騰冷却装置を提供する。
【解決手段】発熱体100と熱媒体との熱交換により熱媒体を沸騰気化させることで発熱体100を冷却する蒸発部10と、蒸発部10よりも上方側に配置されるとともに、熱媒体と外部媒体との熱交換により熱媒体を凝縮させることで熱媒体の熱を空気に放熱する凝縮部20と、蒸発部10よりも上方側かつ凝縮部20よりも下方側に配置されるとともに、蒸発部および凝縮部を連結する連結部30と、を備え、蒸発部10は、内部に熱媒体が流通する蒸発側熱媒体通路11を複数有する蒸発側多穴管12で構成されており、連結部30は、内部に熱媒体が流通する連結側熱媒体通路31を有しており、連結側熱媒体通路31の数は、蒸発側熱媒体通路11の数よりも少ない。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体(100)と熱媒体との熱交換により前記熱媒体を沸騰気化させることで前記発熱体を冷却する蒸発部(10)と、
前記蒸発部よりも上方側に配置されるとともに、前記熱媒体と外部媒体との熱交換により前記熱媒体を凝縮させることで前記熱媒体の熱を前記外部媒体に放熱する凝縮部(20)と、
前記蒸発部よりも上方側かつ前記凝縮部よりも下方側に配置されるとともに、前記蒸発部および前記凝縮部を連結する連結部(30)と、を備え、
前記蒸発部は、内部に前記熱媒体が流通する蒸発側熱媒体通路(11)を複数有する蒸発側多穴管(12)で構成されており、
前記連結部は、内部に前記熱媒体が流通する連結側熱媒体通路(31)を有しており、
前記連結側熱媒体通路の数は、前記蒸発側熱媒体通路の数よりも少ない沸騰冷却装置。
【請求項2】
さらに、前記蒸発側多穴管と前記連結部とを接続する蒸発側接続部(40)を備え、
前記蒸発側接続部は、内部に前記熱媒体が流通する蒸発接続通路(41)を有しており、
前記蒸発側多穴管における複数の前記蒸発側熱媒体通路の配置方向を、蒸発通路配置方向としたとき、
前記蒸発接続通路における前記蒸発通路配置方向の長さ寸法(Lc)は、前記蒸発側多穴管における前記蒸発通路配置方向の長さ寸法(Le)以上である請求項1に記載の沸騰冷却装置。
【請求項3】
前記凝縮部は、内部に前記熱媒体が流通する凝縮側熱媒体通路(21)を複数有する凝縮側多穴管(22)で構成されており、
複数の前記凝縮側熱媒体通路は、水平方向に対して傾斜する方向に並んで配置されており、
前記複数の凝縮側熱媒体通路は、前記凝縮側多穴管内の上方側に配置された上方側通路(211)と、前記上方側通路よりも下方側に配置された下方側通路(212)とを含んでおり、
前記上方側通路における前記蒸発部側の端部(211a)は、前記下方側通路における前記蒸発部側の端部(212a)よりも前記蒸発部側に突出している請求項1または2に記載の沸騰冷却装置。
【請求項4】
前記凝縮部は、内部に前記熱媒体が流通する凝縮側熱媒体通路(21)を複数有する凝縮側多穴管(22)で構成されており、
さらに、前記凝縮側多穴管と前記連結部とを接続する凝縮側接続部(50)を備え、
前記凝縮側接続部は、前記凝縮側熱媒体通路から流入した液相の前記熱媒体を拡散させる拡散部(52)を有している請求項1または2に記載の沸騰冷却装置。
【請求項5】
前記凝縮部は、内部に前記熱媒体が流通する凝縮側熱媒体通路(21)を複数有する凝縮側多穴管(22)で構成されており、
複数の前記凝縮側熱媒体通路は、水平方向に配置されており、
前記凝縮側熱媒体通路の前記蒸発部側の端部における下端部(21a)は、前記連結側熱媒体通路の前記凝縮部側の端部における下端部(31a)よりも上方側に配置されている請求項1ないし4のいずれか1つに記載の沸騰冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発熱体で発生する熱により熱媒体を沸騰させて発熱体から吸熱する沸騰冷却装置が開示されている。例えば、特許文献1には、沸騰冷却装置として、複数の穴が並列する偏平多穴管構造のコンテナを使用した板型ヒートパイプが開示されている。
【0003】
特許文献1の板型ヒートパイプでは、コンテナの両端又は片端を連通させた構造を有し、一方の端部付近を蒸発部とし、他方の端部付近を凝縮部としている。そして、コンテナの複数の穴のうちの一部にウィック部材を挿入配置して、液相熱媒体の還流のための流路としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-35292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の沸騰冷却装置では、例えば発熱体の発熱量が多い場合や、吸熱部と放熱部との距離が長い場合に、液相熱媒体の還流量が不足する可能性がある。その結果、蒸発部の下端部まで液相熱媒体が行き届かず、冷却性能が低下してしまう。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、熱媒体の循環量を増大させることができる沸騰冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の沸騰冷却装置は、発熱体(100)と熱媒体との熱交換により熱媒体を沸騰気化させることで発熱体を冷却する蒸発部(10)と、
蒸発部よりも上方側に配置されるとともに、熱媒体と外部媒体との熱交換により熱媒体を凝縮させることで熱媒体の熱を外部媒体に放熱する凝縮部(20)と、
蒸発部よりも上方側かつ凝縮部よりも下方側に配置されるとともに、蒸発部および凝縮部を連結する連結部(30)と、を備え、
蒸発部は、内部に熱媒体が流通する蒸発側熱媒体通路(11)を複数有する蒸発側多穴管(12)で構成されており、
連結部は、内部に熱媒体が流通する連結側熱媒体通路(31)を有しており、
連結側熱媒体通路の数は、蒸発側熱媒体通路の数よりも少ない。
【0008】
これによれば、蒸発部(10)を、複数の蒸発側熱媒体通路(11)を有する蒸発側多穴管(12)で構成することで、蒸発側熱媒体通路(11)において、熱媒体がスラグ流となり、気相熱媒体と液相熱媒体とが交互に流れる。すなわち、蒸発側熱媒体通路(11)において、気相熱媒体の流れ方向と液相熱媒体の流れ方向とが同一方向となる。その結果、気相熱媒体流れと液相熱媒体流れが対向流となる場合と比較して流路抵抗を低減することができるので、熱媒体の循環量を増大させることができる。
【0009】
さらに、蒸発部(10)の蒸発側多穴管(12)と連結部30とを接続するとともに、連結部(30)における連結側熱媒体通路(31)の数を、蒸発側多穴管(12)における蒸発側熱媒体通路(11)の数よりも少なくすることで、蒸発側多穴管(12)と連結部(30)との合流部において、液相熱媒体が拡散し、重力により落下する。このため、蒸発側多穴管(12)と連結部(30)との合流部において、蒸発側多穴管(12)で発生していた熱媒体のスラグ流が終了する。したがって、気相熱媒体が液相熱媒体を押し上げる必要がなくなるため、気相熱媒体の流速が速くなる。その結果、熱媒体の循環量を増大することが可能となる。
【0010】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る沸騰冷却装置を示す全体構成図である。
図2図1のII部を示す拡大断面図である。
図3図2のIII-III断面図である。
図4図1のIV部を示す拡大断面図である。
図5図3に示された構成に対する比較例を示した断面図である。
図6】第2実施形態における凝縮部と連結部との接続部周辺を示す拡大断面図である。
図7図6のVII-VII断面図である。
図8】第3実施形態に係る沸騰冷却装置を示す全体構成図である。
図9図8のIX部を示す拡大断面図である。
図10図9のX-X断面図である。
図11】他の実施形態(1)における蒸発側接続部周辺を示す断面図である。
図12】他の実施形態(1)における蒸発側接続部周辺を示す断面図である。
図13】他の実施形態(2)における凝縮側接続部周辺を示す断面図である。
図14】他の実施形態(2)における凝縮側接続部周辺を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0013】
(第1実施形態)
本開示の第1実施形態について図1図5に基づいて説明する。本実施形態の沸騰冷却装置は、車両に搭載された発熱体を冷却する装置である。以下の各図における上下を示す矢印は、車両が水平面に位置する際の上下方向を示している。なお、本明細書において、「上方側」とは「重力方向上方側」を意味し、「下方側」とは「重力方向下方側」を意味している。
【0014】
また、本明細書において、「重力方向」とは、沸騰冷却装置が水平面に配置された状態における重力方向を意味している。したがって、「重力方向上方側」とは、沸騰冷却装置が水平面に配置された状態における重力方向上方側を示している。同様に、「重力方向下方側」とは、沸騰冷却装置が水平面に配置された状態における重力方向下方側を示している。また、「水平方向」とは、沸騰冷却装置が水平面に配置された状態における水平方向を意味している。
【0015】
より詳細には、「重力方向」とは、水平面に位置する車両に沸騰冷却装置が搭載された状態における重力方向を意味している。したがって、「重力方向上方側」とは、水平面に位置する車両に沸騰冷却装置が搭載された状態における重力方向上方側を示している。同様に、「重力方向下方側」とは、水平面に位置する車両に沸騰冷却装置が搭載された状態における重力方向下方側を示している。また、「水平方向」とは、水平面に位置する車両に沸騰冷却装置が搭載された状態における水平方向を意味している。
【0016】
まず、沸騰冷却装置1の全体構成について、図1を参照しつつ説明する。なお、図1においては、各部の構成を容易に理解できるように、発熱体100を破線で示す。
【0017】
図1に示すように、沸騰冷却装置1は、蒸発部10と、凝縮部20と、連結部30とを備えている。
【0018】
蒸発部10は、冷却対象物である発熱体100と熱媒体との熱交換により熱媒体を沸騰気化させることで発熱体100を冷却する熱交換器である。発熱体100としては、充放電可能な二次電池やパワー素子を採用することができる。充放電可能な二次電池としては、例えば、リチウムイオン電池や鉛蓄電池を採用することができる。
【0019】
凝縮部20は、熱媒体と外部媒体である空気との熱交換により熱媒体を凝縮させることで熱媒体の熱を空気に放熱する熱交換器である。連結部30は、蒸発部10と凝縮部20とを連結して、蒸発部10と凝縮部20との間で熱媒体を循環させる通路である。
【0020】
蒸発部10は、凝縮部20より下方側に配置されている。連結部30は、蒸発部10の上方側、かつ、凝縮部20の下方側に配置されている。すなわち、蒸発部10、凝縮部20および連結部30は、下方側から蒸発部10、連結部30、凝縮部20の順に配置されている。
【0021】
熱媒体としては、蒸発および凝縮可能な流体を採用することができる。具体的には、熱媒体として、水またはアルコールを採用することができる。また、熱媒体として、蒸気圧縮式の冷凍サイクルで利用されるフロン系冷媒(例えば、R134a、R1234yf等)を用いることができる。また、熱媒体としては、フロン系冷媒だけでなく、二酸化炭素等の他の冷媒や不凍液等を用いることも可能である。
【0022】
続いて、本実施形態に係る蒸発部10の構成について説明する。図1図2および図3に示すように、蒸発部10は、蒸発側多穴管12で構成されている。蒸発側多穴管12は、内部に熱媒体が流通する蒸発側熱媒体通路11を複数有している。
【0023】
本実施形態では、蒸発部10は、1つの蒸発側多穴管12で構成されており、いわゆるタンクアンドチューブ型の熱交換器ではない。蒸発側多穴管12における熱媒体流れ方向の一端部は封止されており、他端部は開放されている。以下、蒸発側多穴管12において、封止された一端部を蒸発封止側端部12aといい、開放された他端部を蒸発開放側端部12bという。
【0024】
蒸発側多穴管12は、蒸発封止側端部12aが蒸発開放側端部12bよりも下方側に位置するように、水平方向に対して傾斜して配置されている。
【0025】
ここで、蒸発側多穴管12における複数の蒸発側熱媒体通路11の配置方向を、蒸発通路配置方向とする。蒸発通路配置方向は、水平方向および上下方向の双方に対して傾斜している。すなわち、蒸発側多穴管12において、複数の蒸発側熱媒体通路11は、水平方向および上下方向の双方に対して傾斜した方向に配置されている。
【0026】
続いて、本実施形態に係る凝縮部20の構成について説明する。図1および図4に示すように、凝縮部20は、凝縮側多穴管22で構成されている。凝縮側多穴管22は、内部に熱媒体が流通する凝縮側熱媒体通路21を複数有している。
【0027】
本実施形態では、凝縮部20は、1つの凝縮側多穴管22で構成されており、いわゆるタンクアンドチューブ型の熱交換器ではない。凝縮側多穴管22における熱媒体流れ方向の一端部は封止されており、他端部は開放されている。以下、凝縮側多穴管22において、封止された一端部を凝縮封止側端部22aといい、開放された他端部を凝縮開放側端部22bという。
【0028】
凝縮側多穴管22は、凝縮封止側端部22aが凝縮開放側端部22bよりも上方側に位置するように、水平方向に対して傾斜して配置されている。
【0029】
ここで、凝縮側多穴管22における複数の凝縮側熱媒体通路21の配置方向を、凝縮通路配置方向とする。凝縮通路配置方向は、水平方向および上下方向の双方に対して傾斜している。すなわち、凝縮側多穴管22において、複数の凝縮側熱媒体通路21は、水平方向および上下方向の双方に対して傾斜した方向に配置されている。
【0030】
続いて、本実施形態に係る連結部30の構成について説明する。図1図2および図4に示すように、連結部30は、内部に熱媒体が流通する連結側熱媒体通路31を有している。本実施形態の連結部30は、円筒状に形成されており、1つの連結側熱媒体通路31を有している。したがって、連結側熱媒体通路31の数は、蒸発側熱媒体通路11の数よりも少ない。また、連結側熱媒体通路31の数は、凝縮側熱媒体通路21の数よりも少ない。
【0031】
ところで、図2および図3に示すように、沸騰冷却装置1は、蒸発側多穴管12と連結部30とを接続する蒸発側接続部40を備えている。蒸発側接続部40は、内部に熱媒体が流通する蒸発接続通路41を有している。蒸発側多穴管12の蒸発側熱媒体通路11は、蒸発接続通路41を介して、連結部30の連結側熱媒体通路31と連通している。
【0032】
図3に示すように、蒸発接続通路41における蒸発通路配置方向の長さ寸法Lcは、蒸発側多穴管12における蒸発通路配置方向の長さ寸法Le以上である。本実施形態では、蒸発接続通路41における蒸発通路配置方向の長さ寸法Lcは、蒸発側多穴管12における蒸発通路配置方向の長さ寸法Leと同等である。
【0033】
以下、蒸発側熱媒体通路11における熱媒体の流れ方向および蒸発通路配置方向の双方に直交する方向を、多穴管幅方向という。本実施形態では、蒸発接続通路41における多穴管幅方向の長さ寸法Wcは、蒸発側多穴管12における多穴管幅方向の長さ寸法Weよりも大きい。
【0034】
図4に示すように、沸騰冷却装置1は、凝縮側多穴管22と連結部30とを接続する凝縮側接続部50を備えている。凝縮側接続部50は、内部に熱媒体が流通する凝縮接続通路51を有している。凝縮側多穴管22の凝縮側熱媒体通路21は、凝縮接続通路51を介して、連結部30の連結側熱媒体通路31と連通している。
【0035】
凝縮側多穴管22において、複数の凝縮側熱媒体通路21は、上方側通路211および下方側通路212を含んでいる。上方側通路211は、凝縮側多穴管22内の上方側に配置されている。下方側通路212は、上方側通路211よりも下方側に配置されている。
【0036】
上方側通路211における蒸発部10側の端部211aは、下方側通路212における蒸発部10側の端部212aよりも蒸発部10側に突出している。すなわち、上方側通路211における蒸発部10側の端部211aは、下方側通路212における蒸発部10側の端部212aよりも蒸発部10側に突出する突出部を構成している。
【0037】
上方側通路211における蒸発部10側の端部211aは、連結側熱媒体通路31内に配置されている。このため、上方側通路211は、連結側熱媒体通路31と連通している。一方、下方側通路212における蒸発部10側の端部は、凝縮接続通路51内に配置されている。このため、下方側通路212は、凝縮接続通路51と連通している。
【0038】
続いて、本実施形態に係る沸騰冷却装置1の作動を説明する。
【0039】
蒸発部10において、高温の発熱体100と蒸発側多穴管12内の液相熱媒体との間で、熱交換が行われる。すなわち、蒸発部10において、高温の発熱体100と蒸発側熱媒体通路11を流通する液相熱媒体との間で、熱交換が行われる。これにより、発熱体100の熱量が液相熱媒体に移動して、液相熱媒体が沸騰して気相熱媒体となり、発熱体100が冷却される。
【0040】
具体的には、蒸発部10では、蒸発側熱媒体通路11内の低温の液相熱媒体が、発熱体100の熱を受熱して沸騰して気相熱媒体となる。そして、気相熱媒体(すなわち気泡)と液相熱媒体とが交互に蒸発側熱媒体通路11を通過するスラグ流が発生する。
【0041】
スラグ流は蒸発側熱媒体通路11を上昇し、蒸発側接続部40の蒸発接続通路41に流入する。そして、蒸発接続通路41内の気相熱媒体は、連結部30の連結側熱媒体通路31および凝縮側接続部50の凝縮接続通路51を介して、凝縮部20の凝縮側熱媒体通路21に流入する。
【0042】
凝縮部20では、凝縮側熱媒体通路21内の気相熱媒体と空気との間で熱交換が行われる。これにより、気相熱媒体が凝縮して液相熱媒体となり、熱媒体の有する熱が空気に放出される。
【0043】
凝縮側熱媒体通路21内で凝縮した液相熱媒体は、凝縮側熱媒体通路21を下降して、凝縮接続通路51、連結側熱媒体通路31および蒸発接続通路41を介して、蒸発部10の蒸発側熱媒体通路11に流入する。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の沸騰冷却装置1では、蒸発部10を、複数の蒸発側熱媒体通路11を有する蒸発側多穴管12で構成している。これにより、蒸発側熱媒体通路11において、熱媒体がスラグ流となり、気相熱媒体と液相熱媒体とが交互に流れる。すなわち、蒸発側熱媒体通路11において、気相熱媒体の流れ方向と液相熱媒体の流れ方向とが同一方向となる。その結果、気相熱媒体流れと液相熱媒体流れが対向流となる場合と比較して流路抵抗を低減することができるので、熱媒体の循環量を増大させることができる。
【0045】
ここで、蒸発側熱媒体通路11において熱媒体流れがスラグ流となる場合、気泡(すなわち、気相熱媒体)が液相熱媒体を押し上げる仕事量により気泡の流速が低下し、熱媒体の循環が妨げられる可能性がある。
【0046】
これに対し、本実施形態の沸騰冷却装置1では、蒸発部10の蒸発側多穴管12と連結部30とを接続するとともに、連結部30における連結側熱媒体通路31の数を、蒸発側多穴管12における蒸発側熱媒体通路11の数よりも少なくしている。これによれば、蒸発側多穴管12と連結部30との合流部において、液相熱媒体が拡散し、重力により落下するため、スラグ流が終了する。
【0047】
したがって、気相熱媒体が液相熱媒体を押し上げる必要がなくなるため、気相熱媒体の流速が速くなる。これにより、熱媒体の循環量を増大することができる。その結果、沸騰冷却装置1の冷却性能を向上できる。
【0048】
換言すると、本実施形態の沸騰冷却装置1は、熱媒体の通路のうち、発熱体100の上端部より上方側の部位では、スラグ流を強制的に終了させる。これにより、気泡の排出を促進することができるので、熱媒体の循環量を増大することが可能となる。
【0049】
ここで、沸騰冷却装置を車両に搭載した場合、発熱体100の発熱量が大きいため、蒸発部10から凝縮部20へ輸送する熱量が大きくなる。また、蒸発部10および凝縮部20間の距離が長くなるため、蒸発部10から凝縮部20への熱の輸送距離が長くなる。このため、従来の沸騰冷却装置を車両に搭載すると、熱媒体の循環量が不足する可能性がある。これに対し、本実施形態の沸騰冷却装置1では、上述したように熱媒体の循環量を増大させることができるので、車両に好適に搭載することができる。
【0050】
また、本実施形態の沸騰冷却装置1では、蒸発接続通路41における蒸発通路配置方向の長さ寸法Lcを、蒸発側多穴管12における蒸発通路配置方向の長さ寸法Leと同等としている。これによれば、蒸発側多穴管12における全ての蒸発側熱媒体通路11を、蒸発接続通路41と連通させることができるので、蒸発側熱媒体通路11および蒸発接続通路41間で熱媒体の循環が阻害されることを抑制できる。
【0051】
一方、図3の比較例として、図5に示されるように、蒸発接続通路41における蒸発通路配置方向の長さ寸法Lcを、蒸発側多穴管12における蒸発通路配置方向の長さ寸法Leより短くした場合、一部の蒸発側熱媒体通路11において熱媒体の循環が阻害される。
【0052】
ところで、沸騰冷却装置1が最大能力で動作している場合、凝縮部20で発生する液相熱媒体の量が増加するので、凝縮側多穴管22の入口(すなわち、凝縮開放側端部22b)が液相熱媒体によって閉塞されて、気相熱媒体の流入が妨げられる可能性がある。
【0053】
これに対し、本実施形態の沸騰冷却装置1では、凝縮側多穴管22において、上方側通路211における蒸発部10側の端部211aを、下方側通路212における蒸発部10側の端部212aよりも蒸発部10側に突出させている。
【0054】
これによれば、上方側通路211から流下した液相熱媒体が下方側通路212に流入し難くなるので、複数の凝縮側熱媒体通路21のうち少なくとも下方側通路212の入口が、液相熱媒体によって閉塞されることが抑制される。その結果、凝縮側多穴管22への気相熱媒体の流入が液相熱媒体により妨げられることを抑制できるので、熱媒体の循環量を増大させることができる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、本開示の第2実施形態について図6および図7に基づいて説明する。本実施形態は、上記第1実施形態と比較して、凝縮部20および凝縮側接続部50の構成が異なる。なお、図6は、第1実施形態で説明した図4に対応する図面である。
【0056】
図6および図7に示すように、本実施形態の沸騰冷却装置1では、凝縮側多穴管22の複数の凝縮側熱媒体通路21の各々における蒸発部10側の端部は、凝縮側熱媒体通路21における熱媒体の流れ方向に垂直な同一の仮想平面上に配置されている。
【0057】
凝縮側接続部50は、凝縮側熱媒体通路21から流入した液相熱媒体を拡散させる拡散部である溝部52を有している。具体的には、凝縮側接続部50には、複数の凝縮側熱媒体通路21の各々と連通する複数の溝部52が形成されている。溝部52は、蒸発部10に近づく程、下方側に位置するように傾斜している。
【0058】
以上説明したように、本実施形態の沸騰冷却装置1では、凝縮側接続部50に、凝縮側熱媒体通路21と連通する溝部52を設けている。これによれば、凝縮側熱媒体通路21から流入した液相熱媒体を溝部52の壁面に添って拡散させることができる。したがって、凝縮側多穴管22の入口が液相熱媒体によって閉塞されることを抑制できる。その結果、凝縮側多穴管22への気相熱媒体の流入が液相熱媒体により妨げられることを抑制できるので、熱媒体の循環量を増大させることができる。
【0059】
(第3実施形態)
次に、本開示の第3実施形態について図8図10に基づいて説明する。本実施形態は、上記第1実施形態と比較して、凝縮部20および凝縮側接続部50の構成が異なる。
【0060】
図8図9および図10に示すように、本実施形態の沸騰冷却装置1では、凝縮側多穴管22において、複数の凝縮側熱媒体通路21は水平方向に配置されている。すなわち、本実施形態では、凝縮通路配置方向は水平方向に平行である。
【0061】
図10に示すように、凝縮側熱媒体通路21の蒸発部10側の端部における下端部21aは、連結側熱媒体通路31の凝縮部20側の端部における下端部31aよりも上方側に配置されている。また、本実施形態では、凝縮接続通路51の下端面は、上下方向に直交する平面状に形成されている。
【0062】
以上説明したように、本実施形態の沸騰冷却装置1では、凝縮側熱媒体通路21の蒸発部10側の端部における下端部21aを、連結側熱媒体通路31の凝縮部20側の端部における下端部31aよりも上方側に配置している。これによれば、凝縮側多穴管22から流出した液相熱媒体は、高低差によって連結側熱媒体通路31に流下する。したがって、連結部30から凝縮部20に液相熱媒体が逆流することを抑制できる。また、連結側熱媒体通路31の入口が液相熱媒体により閉塞されることを抑制できる。
【0063】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、例えば以下のように種々変形可能である。また、上記各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。
【0064】
(1)上記実施形態では、蒸発側接続部40の蒸発接続通路41における蒸発通路配置方向の長さ寸法Lcを、蒸発側多穴管12における蒸発通路配置方向の長さ寸法Leと同等とした。さらに、蒸発接続通路41における多穴管幅方向の長さ寸法Wcを、蒸発側多穴管12における多穴管幅方向の長さ寸法Weよりも大きくした。しかしながら、蒸発側接続部40および蒸発側多穴管12の構成は、この態様に限定されるものではない。
【0065】
例えば、図11および図12に示すように、蒸発接続通路41における蒸発通路配置方向の長さ寸法Lcを、蒸発側多穴管12における蒸発通路配置方向の長さ寸法Leより大きくしてもよい。また、図12に示すように、蒸発接続通路41における多穴管幅方向の長さ寸法Wcを、蒸発側多穴管12における多穴管幅方向の長さ寸法Weより小さくしてもよい。なお、図11および図12の各々は、第1実施形態で説明した図3に対応する図面である。
【0066】
(2)上記第3実施形態では、凝縮側接続部50における凝縮接続通路51の下端面を上下方向に直交する平面状に形成したが、この態様に限定されるものではない。
【0067】
例えば、図13に示すように、凝縮接続通路51の下端面を、凝縮通路配置方向の中央部に向かうに伴って下方に位置するように傾斜させてもよい。また、図14に示すように、凝縮接続通路51の下端面を、凝縮通路配置方向の一端部に向かうに伴って下方に位置するように傾斜させてもよい。なお、図13および図14は、第3実施形態で説明した図10に対応する図面である。
【0068】
(3)上記実施形態では、外部媒体として空気を採用したが、この態様に限定されるものではない。例えば、外部媒体として、冷凍サイクルの冷媒を採用してもよいし、ペルチェ素子を採用してもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 蒸発部
11 蒸発側熱媒体通路
12 蒸発側多穴管
20 凝縮部
30 連結部
31 連結側熱媒体通路
100 発熱体
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