(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052224
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】空調機構を備えた雨具用ズボン
(51)【国際特許分類】
A41D 1/06 20060101AFI20220328BHJP
A41D 13/002 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
A41D1/06 501B
A41D13/002 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020158478
(22)【出願日】2020-09-23
(71)【出願人】
【識別番号】593161375
【氏名又は名称】山真製鋸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA05
3B011AB00
3B011AC03
3B011AC08
3B011AC21
(57)【要約】
【課題】空調機構を備えた雨具用ズボンの提供。
【解決手段】ズボン本体3に嵌着されたファン7を外側から覆うようにファンフード19が取付けられている。この布基材21の上下方向中間部と下側の辺縁部には剛性のワイヤー25が取付けられており、ワイヤー25の適度な剛性により布基材21が立体的に張り出して幌状に保持されている。また、ワイヤー25が弾性変形することで、幌状部分19aが弾性変形するような挙動を示す。従って、雨水がズボン本体3の内側に侵入するのが防止される。また、足の動きに対応してズボン本体3が引っ張られたりする場合にはそのズボン本体3の動きにファンフード19は自ら変形しつつ追従することができるので、足の動きの邪魔になることが抑えられる。更には、ファンフード19は周囲にある物に当たっても破損することを防止できる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機構のファンが嵌着される嵌着用穴が形成されたズボン本体と、前記ズボン本体に取付けられ、前記嵌着用穴を外側から幌状に覆って下側が通風口として開口したファンフードと、前記嵌着用穴に嵌着されたファンを備え、
前記ファンフードは、防水性素材で構成されており、適度な腰を有して幌状に保形されつつ外力を受けると弾性変形可能にもなっていることを特徴とする空調機構を備えた雨具用ズボン。
【請求項2】
請求項1に記載した空調機構を備えた雨具用ズボンにおいて、
ファンフードは防水性の布で構成された布基材と、前記布基材を立体的に支持して幌状に保持する支持部材で構成されていることを特徴とする雨具用ズボン。
【請求項3】
請求項2に記載した空調機構を備えた雨具用ズボンにおいて、
支持部材は弾性変形可能な剛性ワイヤーで構成されていることを特徴とする雨具用ズボン。
【請求項4】
請求項1に記載した空調機構を備えた雨具用ズボンにおいて、
ファンフードは防水性の弾性変形可能な剛性シート材が幌状に立体成形されたもので構成されていることを特徴とする雨具用ズボン。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載した空調機構を備えた雨具用ズボンにおいて、
嵌着用穴とファンフードは左右いずれか一方の股下部分の後側に設けられていることを特徴とする雨具用ズボン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨具用ズボンに係り、特にファンの回転で空気を吹き付けて身体を冷やす空調機構を備えた雨具用ズボンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空調機構を備えた衣服、すなわち空調服が市販されているが、この種の空調服は、ファンの回転で空気を取込み、身体と衣服との間に気流を形成することにより、身体の表面から出る汗を気化させて身体から熱を奪うことで冷却する原理に基づいている。
工事現場等で働く作業員は安全性を考慮して厚手の作業服を着なければならず、夏場には大量の汗をかき易い。この場合、身体と衣服との間に熱が籠って熱中症になり易い。このような問題を解消するために空調服が開発され、その実用性の高さから広く普及している。
ところで、屋外で雨の中を作業する場合も当然ながらあり、その場合には雨具仕様の上下の作業服を着用することになるが、これに対応して、特許文献1には雨具仕様にした上着が開示されている。この上着は、雨水がファンの吸引口から上着内へ浸入してしまうことを防止するためにファンフードの利用が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これを雨具仕様にしたズボンに適用することは難しい。特許文献1のファンフードはファンに連結するものであり、しかも硬質プラスチックによって構成されているため、ファンとファンフードが常に一体的に動くことになるが、ズボンは足の激しい動きに対応して絶えず種々の方向に引っ張られたり押されたり折り曲げられたりするので、外側に突出したファンフードが足の動作の邪魔になったり、更にはファンフードが周囲にある物にぶつかって破損してしまう恐れが十分にある。
【0005】
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、空調機構を備えたズボンを雨具仕様にするのに適した雨水の侵入防止機構を提案し、この機構を取り入れた雨具用ズボンを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、空調機構のファンが嵌着される嵌着用穴が形成されたズボン本体と、前記ズボン本体に取付けられ、前記嵌着用穴を外側から幌状に覆って下側が通風口として開口したファンフードと、前記嵌着用穴に嵌着されたファンを備え、前記ファンフードは、防水性素材で構成されており、適度な腰を有して幌状に保形されつつ外力を受けると弾性変形可能にもなっていることを特徴とする空調機構を備えた雨具用ズボンである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載した空調機構を備えた雨具用ズボンにおいて、ファンフードは防水性の布で構成された布基材と、前記布基材を立体的に支持して幌状に保持する支持部材で構成されていることを特徴とする雨具用ズボンである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載した空調機構を備えた雨具用ズボンにおいて、支持部材は弾性変形可能な剛性ワイヤーで構成されていることを特徴とする雨具用ズボンである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1に記載した空調機構を備えた雨具用ズボンにおいて、ファンフードは防水性の弾性変形可能な剛性シート材が幌状に立体成形されたもので構成されていることを特徴とする雨具用ズボンである。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかに記載した空調機構を備えた雨具用ズボンにおいて、嵌着用穴とファンフードは左右いずれか一方の股下部分の後側に設けられていることを特徴とする雨具用ズボンである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の雨具用ズボンによれば、ファンを装着しても雨水が内部に浸入するのを防止できる。また、足の激しい動きに支障をきたすことがない。更には、通常の作業中に周囲にぶつかっても破損するような箇所はない。なお、最近は夏場に高温傾向が続くことから、空調服は日常の外出着としても利用されつつあるが、この雨具用ズボンも従来の雨具に代えて利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る空調機構を備えた雨具用ズボンの後面図である。
【
図2】
図1の雨具用ズボンのズボン本体に嵌着されるファンの斜視図である。
【
図3】
図2のファンの別方向から見た斜視図である。
【
図4】
図1の雨具用ズボンの空調機構に係る部位の拡大斜視図である。
【
図7】本発明の第2の実施の形態に係る空調機構を備えた雨具用ズボンの、
図4に対応する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の実施の形態に係る空調機構を備えた雨具用ズボン1を図面にしたがって説明する。
図1で、符号3はズボン本体を示す。このズボン本体3には、両足用の2つの股下部分の左右いずれか一方の後側に丸い嵌着用穴5(
図5)が設けられている。この嵌着用穴5にファン7が嵌着されている。
図2、
図3に示すように、このファン7は軸流タイプである。このファン7のガードは前後方向から見ると円形になっており、プラスチックで成形されている。気流が送出されてくるフロントガード9側は雌ネジ筒11から先の中心から放射状に骨が張られた部分が膨らんで立体的になっているのに対して、着用したときに外側に出るリアガード13側は扁平になっている。
【0014】
フロントガード9の雌ネジ筒11の筒内に、リアガード13の雄ネジ筒が螺進することで、フロントガード9とリアガード13が一体化される。フロントガード9側とリアガード13側にはそれぞれフランジが設けられているので、上記した螺進により一体化されたときには、フランジどうしが相対する。
フロントガード9側に羽根15、15、……とモータ(図示省略)が収容配置されている。フロントガード9とバッテリーケース17は一体にプラスチック成形されており、雌ネジ筒11の下側にバッテリーケース17が連なっている。バッテリーケース17は左右方向に長い横長の方形箱状をしており、雌ネジ筒11の開口側の筒縁はバッテリーケース17の外面とほぼ面一に連なっている。
【0015】
バッテリーケース17の内部に電池(図示省略)が収容配置されており、この電池からの給電を受けたモータの駆動により上記した羽根15、15、……に連結された回転軸が回転するようになっている。
バッテリーケース17の外面は操作面になっており、モータ起動/停止用のON/OFFボタンが設けられている。また、ON/OFFボタンの長押しに反応して空冷の強さを調整できるようになっており、空冷調整用のボタンとしても兼用されている。
【0016】
図4~
図6に示すように、フロントガード9の雌ネジ筒11の開口側の筒縁の周囲に形成されたフランジをズボン本体3の布地の裏面側から嵌着用穴5の穴縁に重ね合せ、リアガード13を表面側から向い合せてその雄ネジ筒を嵌着用穴5に通して雌ネジ筒11に対して螺進させると、雄ネジ筒側のフランジも布地の表面側の嵌着用穴5の穴縁に重なり合い、布地を介してフロントガード9とリアガード13が螺合により嵌着された状態となる。すなわち、ファン7がズボン本体3に取付られた状態となる。このときバッテリーケース17はフロントガード9と共に裏面側にある。
この状態で、バッテリーケース17の操作面のON/OFFボタンを押せば、モータが起動して送風を開始する。
【0017】
リアガード13はズボン本体3の外側に出ているが、このリアガード13を覆うように、ファンフード19がズボン本体3に対して外側から取付けられている。
図4に示すように、このファンフード19の布基材21は合成樹脂製で防水仕様の布で構成されている。この布基材21は、上側と左右両側の辺縁部23が縫着によりズボン本体3に対して取付けられている。なお、下側の辺縁部は縫着されずに、ズボン本体3の表面とは離れている。
この布基材21の上下方向中間部と下側の辺縁部には剛性のワイヤー25が横方向に延びた状態で取付けられている。
【0018】
布基材21の上下方向中間部には、布基材21と同じ素材で構成された細長い帯状のカバー布が外側から横長になるように重ねられている。カバー布の上下左右の辺縁部がそれぞれ布基材21に対して縫着されており、袋体27になって内部が閉じられている。この内部にワイヤー25が収容されている。
また、布基材21の下側の辺縁部は折り返されており、折り返し部分の上側と左右両側の縁が布基材21に対して縫着されており、同様に袋体29になって内部が閉じられている。この内部にもワイヤー25が収容されている。
【0019】
上記のようにワイヤー25、25が通されており、ワイヤー25の剛性により布基材21が立体的に張り出して幌状に保持されている。
この幌状部分19aは、嵌着用穴5を外側から間隔をあけて覆うようになっており、下側の辺縁部を兼ねる袋体29とズボン本体3の表面との間は大きく開いて通風口31になっている。
ワイヤー25は適度な剛性で弾性変形可能になっており、ワイヤー25が弾性変形することで、幌状部分19aが弾性変形する。
【0020】
ファンフード19は上記したように構成されており、雨水がファン7のリアガード13に向かうのを遮っている。リアガード13側は外部から直接空気を取り入れるのではなく、通風口31を介してファンフード19内に流入した空気を取り入れており、雨水がズボン本体3の内側に侵入するのが防止される。また、片方の股下部分にファン7が取付けられているので、
図1の矢印に示すような空気の流れがスムーズに実現され、熱がこもる尻側に空気を確実に送り込むことができる。
【0021】
ファンフード19は、ワイヤー25の剛性により適度な腰を有して幌状部分19aが保持されており、モータの駆動程度ではリアガード13に張り付き難くなっているので、通風口31が狭まって空気の取込みに支障をきたすことはない。
また、足の激しい動きに対応してズボン本体3が引っ張られたり押されたり折り曲げられたりするような場合にはそのズボン本体3の動きに幌状部分19aは自ら変形しつつ追従することができ、足の動きの邪魔にならない。
更には、幌状部分19aは周囲にある物に当たっても自ら凹んで逃げるので破損したりすることはない。
【0022】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る空調機構を備えた雨具用ズボン33を図面にしたがって説明する。
図7に示すように、第1の実施の形態に係る雨具用ズボン1とは、ファンフード35の構成が異なるだけであり、同じ構成は同じ符号を付すことで説明を省略する。
このファンフード35は、合成樹脂製で防水仕様のシート材37で構成されている。幌状に立体成形されており、その縁にはフランジ39が連設されている。このフランジ39がズボン本体3に対して接着剤を介して取付けられており、幌状部分35aは第1の実施の形態の幌状部分19aと同じ形状になっている。
シート材37は素材として適度な剛性及び弾性変形能をバランス良く備えており、幌状部分35aはこのシート材37で構成されているので、第1の実施の形態に係る布基材21とワイヤー25との併用による場合と同様な効果を得られる。
【0023】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、ファンフードはズボン本体に対して着脱自在にすることも考えられる。
【符号の説明】
【0024】
1…雨具用ズボン(第1の実施の形態) 3…ズボン本体 5…嵌着用穴
7…ファン 9…フロントガード 11…雌ネジ筒 13…リアガード
15…羽根 17…バッテリーケース 19…ファンフード 19a…幌状部分
21…布基材 23…辺縁部 25…ワイヤー 27…袋体
29…袋体 31…通風口
33…雨具用ズボン(第2の実施の形態) 35…ファンフード 35a…幌状部分
37…シート材 39…フランジ