(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052250
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】導電性粉体及びその製造方法、塗料、並びに電極及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/12 20060101AFI20220328BHJP
C08L 25/18 20060101ALI20220328BHJP
C08L 65/00 20060101ALI20220328BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220328BHJP
C08G 61/12 20060101ALI20220328BHJP
H01B 1/12 20060101ALI20220328BHJP
H01B 1/20 20060101ALI20220328BHJP
H01B 1/24 20060101ALI20220328BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20220328BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20220328BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220328BHJP
B05D 5/12 20060101ALI20220328BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
C08L101/12
C08L25/18
C08L65/00
C08K3/04
C08G61/12
H01B1/12 F
H01B1/20 A
H01B1/24 A
H01B13/00 501Z
H01B13/00 503Z
C08J3/20 Z
B32B27/18 J
B05D5/12 B
B05D7/24 303B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020158518
(22)【出願日】2020-09-23
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】松林 総
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 裕美
【テーマコード(参考)】
4D075
4F070
4F100
4J002
4J032
5G301
5G323
【Fターム(参考)】
4D075BB46Z
4D075CA22
4D075DA04
4D075DB48
4D075EB13
4D075EB14
4D075EB33
4D075EC01
4D075EC23
4F070AA18
4F070AA41
4F070AB06
4F070AB11
4F070AC04
4F070AE06
4F070FA05
4F070FA17
4F070FB06
4F070FC03
4F100AA37A
4F100AK01A
4F100AK42B
4F100AK53A
4F100AK80A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100DE01A
4F100EH46
4F100EJ54
4F100GB41
4F100JG01A
4F100JG04
4J002AA031
4J002AA032
4J002AC022
4J002BC122
4J002BG012
4J002BG072
4J002BQ002
4J002CE001
4J002CM011
4J002DA016
4J002FD116
4J002GQ02
4J002HA09
4J032BA03
4J032BA04
4J032BA13
4J032BA14
4J032BB01
4J032BC03
4J032BC13
4J032BD02
4J032CG01
5G301DA19
5G301DA28
5G301DA42
5G301DD02
5G301DE01
5G323AA01
(57)【要約】
【課題】電池等のエネルギーデバイスの電極材料として有用な導電性粉体及びその製造方法、塗料、並びに電極及びその製造方法を提供する。
【解決手段】π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性高分子粉体と、グラフェンとを含み、前記導電性高分子粉体における前記π共役系導電性高分子:前記ポリアニオンの含有比が質量基準で、(1:0.5)~(1:1)である、導電性粉体。前記導電性高分子粉体:前記グラフェンの含有比が質量基準で、(6:4)~(1:9)であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性高分子粉体と、グラフェンとを含み、前記導電性高分子粉体における前記π共役系導電性高分子:前記ポリアニオンの含有比が質量基準で、(1:0.5)~(1:1)である、導電性粉体。
【請求項2】
前記導電性高分子粉体:前記グラフェンの含有比が質量基準で、(6:4)~(1:9)である、請求項1に記載の導電性粉体。
【請求項3】
前記導電性高分子粉体が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホン酸のうち、少なくとも一方を含む、請求項1又は2に記載の導電性粉体。
【請求項4】
前記ポリアニオンが有する一部のアニオン基が、アミン化合物と反応して修飾されている、請求項1~3の何れか一項に記載の導電性粉体。
【請求項5】
前記ポリアニオンが有する一部のアニオン基が、エポキシ化合物と反応して修飾されている、請求項1~3の何れか一項に記載の導電性粉体。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の導電性粉体と、バインダ成分と、を含む、塗料。
【請求項7】
請求項1~5の何れか一項に記載の導電性粉体を含む、電極。
【請求項8】
π共役系導電性高分子を形成し得るモノマーと、ポリアニオンと、水とを含む反応液に、触媒及び酸化剤を加えることにより、前記モノマーを酸化重合し、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性高分子粉体を形成する工程と、
前記反応液から前記導電性高分子粉体を分取する工程と、
分取した前記導電性高分子粉体と、グラフェンとを混合することにより、導電性粉体を得る工程と、を有し、
前記反応液における、前記モノマー:前記ポリアニオンの含有比が質量基準で、(1:0.5)~(1:1)である、導電性粉体の製造方法。
【請求項9】
π共役系導電性高分子を形成し得るモノマーと、ポリアニオンと、グラフェンと、水とを含む反応液に、触媒及び酸化剤を加えることにより、前記モノマーを酸化重合し、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性高分子粉体を形成する工程と、
前記反応液から前記導電性高分子粉体及び前記グラフェンを含む導電性粉体を分取する工程と、を有し、
前記反応液における、前記モノマー:前記ポリアニオンの含有比が質量基準で、(1:0.5)~(1:1)である、導電性粉体の製造方法。
【請求項10】
π共役系導電性高分子を形成し得るモノマーと、ポリアニオンと、グラフェンと、水とを含む反応液に、触媒及び酸化剤を加えることにより、前記モノマーを酸化重合し、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性高分子粉体を形成する工程と、
前記導電性高分子粉体及び前記グラフェンを含む前記反応液に、アミン化合物を添加して反応させることにより、修飾された前記導電性高分子粉体及び前記グラフェンを含む導電性粉体を析出させる工程と、
前記反応液から、前記導電性粉体を分取する工程と、を有し、
前記反応液における、前記モノマー:前記ポリアニオンの含有比が質量基準で、(1:0.5)~(1:1)である、導電性粉体の製造方法。
【請求項11】
π共役系導電性高分子を形成し得るモノマーと、ポリアニオンと、グラフェンと、水とを含む反応液に、触媒及び酸化剤を加えることにより、前記モノマーを酸化重合し、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性高分子粉体を形成する工程と、
前記導電性高分子粉体及び前記グラフェンを含む前記反応液に、エポキシ化合物を添加して反応させることにより、修飾された前記導電性高分子粉体及び前記グラフェンを含む導電性粉体を析出させる工程と、
前記反応液から、前記導電性粉体を分取する工程と、を有し、
前記反応液における、前記モノマー:前記ポリアニオンの含有比が質量基準で、(1:0.5)~(1:1)である、導電性粉体の製造方法。
【請求項12】
請求項6に記載の塗料を基材の少なくとも一部に塗工し、前記基材上に形成した塗膜を硬化させ、導電層を形成することにより、前記基材の少なくとも一部に前記導電層を備えた電極を得る、電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、π共役系導電性高分子を含む導電性粉体及びその製造方法、塗料、並びに電極及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主鎖がπ共役系で構成されているπ共役系導電性高分子は、基本的には水に溶け難いが、親水性のアニオン基を有するポリアニオンと複合体を形成することによって、水分散性の導電性複合体とする方法が知られている。この導電性複合体の形成により導電性が高められる。また、導電性複合体が有する水分散性のアニオン基にアミン化合物やエポキシ化合物を反応させて疎水化することにより、有機溶剤に分散させる方法が知られている(特許文献1~2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-032382号公報
【特許文献2】国際公開第2014/125827号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~2では、分散媒に対して導電性複合体を分子レベルで均一に分散又は溶解した塗料を得ることを目的としている。
ところで、導電性高分子を電池等のエネルギーデバイスの電極材料とする場合、導電性複合体が分子レベルで互いに分散している必要は無く、導電性複合体が凝集した粉体の状態である方が、扱いが容易な場合がある。そこで、本発明者らは、導電性複合体の粉体を得る方法を検討した。
【0005】
本発明は、電池等のエネルギーデバイスの電極材料として有用な導電性粉体及びその製造方法、塗料、並びに電極及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1] π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性高分子粉体と、グラフェンとを含み、前記導電性高分子粉体における前記π共役系導電性高分子:前記ポリアニオンの含有比が質量基準で、(1:0.5)~(1:1)である、導電性粉体。
[2] 前記導電性高分子粉体:前記グラフェンの含有比が質量基準で、(6:4)~(1:9)である、[1]に記載の導電性粉体。
[3] 前記導電性高分子粉体が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホン酸のうち、少なくとも一方を含む、[1]又は[2]に記載の導電性粉体。
[4] 前記ポリアニオンが有する一部のアニオン基が、アミン化合物と反応して修飾されている、[1]~[3]の何れか一項に記載の導電性粉体。
[5] 前記ポリアニオンが有する一部のアニオン基が、エポキシ化合物と反応して修飾されている、[1]~[3]の何れか一項に記載の導電性粉体。
[6] [1]~[5]の何れか一項に記載の導電性粉体と、バインダ成分と、を含む、塗料。
[7] [1]~[5]の何れか一項に記載の導電性粉体を含む、電極。
[8] π共役系導電性高分子を形成し得るモノマーと、ポリアニオンと、水とを含む反応液に、触媒及び酸化剤を加えることにより、前記モノマーを酸化重合し、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性高分子粉体を形成する工程と、前記反応液から前記導電性高分子粉体を分取する工程と、分取した前記導電性高分子粉体と、グラフェンとを混合することにより、導電性粉体を得る工程と、を有し、前記反応液における、前記モノマー:前記ポリアニオンの含有比が質量基準で、(1:0.5)~(1:1)である、導電性粉体の製造方法。
[9] π共役系導電性高分子を形成し得るモノマーと、ポリアニオンと、グラフェンと、水とを含む反応液に、触媒及び酸化剤を加えることにより、前記モノマーを酸化重合し、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性高分子粉体を形成する工程と、前記反応液から前記導電性高分子粉体及び前記グラフェンを含む導電性粉体を分取する工程と、を有し、前記反応液における、前記モノマー:前記ポリアニオンの含有比が質量基準で、(1:0.5)~(1:1)である、導電性粉体の製造方法。
[10] π共役系導電性高分子を形成し得るモノマーと、ポリアニオンと、グラフェンと、水とを含む反応液に、触媒及び酸化剤を加えることにより、前記モノマーを酸化重合し、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性高分子粉体を形成する工程と、前記導電性高分子粉体及び前記グラフェンを含む前記反応液に、アミン化合物を添加して反応させることにより、修飾された前記導電性高分子粉体及び前記グラフェンを含む導電性粉体を析出させる工程と、前記反応液から、前記導電性粉体を分取する工程と、を有し、前記反応液における、前記モノマー:前記ポリアニオンの含有比が質量基準で、(1:0.5)~(1:1)である、導電性粉体の製造方法。
[11] π共役系導電性高分子を形成し得るモノマーと、ポリアニオンと、グラフェンと、水とを含む反応液に、触媒及び酸化剤を加えることにより、前記モノマーを酸化重合し、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性高分子粉体を形成する工程と、前記導電性高分子粉体及び前記グラフェンを含む前記反応液に、エポキシ化合物を添加して反応させることにより、修飾された前記導電性高分子粉体及び前記グラフェンを含む導電性粉体を析出させる工程と、前記反応液から、前記導電性粉体を分取する工程と、を有し、前記反応液における、前記モノマー:前記ポリアニオンの含有比が質量基準で、(1:0.5)~(1:1)である、導電性粉体の製造方法。
[12] [6]に記載の塗料を基材の少なくとも一部に塗工し、前記基材上に形成した塗膜を硬化させ、導電層を形成することにより、前記基材の少なくとも一部に前記導電層を備えた電極を得る、電極の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の導電性粉体及び塗料を用いて作製した導電層は、導電性に優れるので、電池等の電極として有用である。
【0008】
本発明はSDGs目標12「つくる責任 つかう責任」に資すると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び特許請求の範囲において、「~」で示す数値範囲の下限値及び上限値はその数値範囲に含まれるものとする。
【0010】
≪導電性粉体≫
本発明の第一態様は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性高分子粉体と、グラフェンとを含み、前記導電性高分子粉体における前記π共役系導電性高分子:前記ポリアニオンの含有比が質量基準で、(1:0.5)~(1:1)である、導電性粉体である。
【0011】
<導電性高分子粉体>
本態様の導電性高分子粉体は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを有する導電性複合体を含む導電性粒子の集合体である。
【0012】
[π共役系導電性高分子]
前記π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている導電性の有機高分子であればよく、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
【0013】
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-エチルチオフェン)、ポリ(3-プロピルチオフェン)、ポリ(3-ブチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、ポリ(3-ドデシルチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3-ブロモチオフェン)、ポリ(3-クロロチオフェン)、ポリ(3-ヨードチオフェン)、ポリ(3-シアノチオフェン)、ポリ(3-フェニルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェン)、ポリ(3-ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3-エトキシチオフェン)、ポリ(3-ブトキシチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェン)、ポリ(3-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-n-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3-オクチルピロール)、ポリ(3-デシルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)、ポリ(3-ヒドロキシピロール)、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、ポリ(3-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(3-イソブチルアニリン)、ポリ(2-アニリンスルホン酸)、ポリ(3-アニリンスルホン酸)が挙げられる。
これらのπ共役系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
前記導電性粒子に含まれるπ共役系導電性高分子は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0014】
(ポリアニオン)
前記ポリアニオンは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、スルホ基を有するポリアクリル酸エステル、スルホ基を有するポリメタクリル酸エステル(例えば、ポリ(4-スルホブチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリメタクリロイルオキシベンゼンスルホン酸)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸等のスルホ基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸等のカルボキシ基を有する高分子が挙げられる。ポリアニオンは、単一のモノマーが重合した単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーが重合した共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホ基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万以上100万以下であることが好ましく、10万以上50万以下であることがより好ましい。質量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィを用いて測定し、ポリスチレン換算で求めた質量基準の平均分子量である。
【0015】
前記ポリアニオンは前記π共役系導電性高分子にドープして、導電性を有する導電性複合体を形成している。導電性複合体におけるπ共役系導電性高分子とポリアニオンの含有比が下記であることにより、導電性複合体は導電性高分子粉体を形成することができる。
【0016】
前記導電性複合体における前記π共役系導電性高分子:前記ポリアニオンの含有比は、質量基準で、(1:0.5)~(1:1)であり、(1:0.7)~(1:0.99)がより好ましく、(1:0.8)~(1:0.98)がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、ポリアニオンによるドープ効果が充分に発揮され、導電性複合体によって形成された導電性高分子粉体の導電性がより向上する。
上記範囲の上限値以下であると、ポリアニオンによるドープ効果を得つつ、水に対する分散性が低く、水中で容易に沈殿させることが可能な導電性高分子粉体となる。
【0017】
本態様の導電性高分子粉体のポリアニオンにおいては、アニオン基の大半又は殆ど全てがπ共役系導電性高分子にドープしており、ドープに関与しない余剰のアニオン基は少ない又は殆ど無いことが好ましい。π共役系導電性高分子:ポリアニオンの含有比を前述した好適な範囲とすることで、余剰のアニオン基を少なくする又は殆ど無くすことができる。
余剰のアニオン基が少ない又は殆ど無いことにより、導電性高分子粉体が水中で容易に沈殿する程の疎水性を呈する。また、導電性高分子粉体を含む導電性粉体は、優れた電池特性を発揮する電極を形成することができる。
【0018】
本態様の導電性高分子粉体中のポリアニオンの一部が、ドープに関与しない余剰のアニオン基を有する場合、これらの余剰のアニオン基は、アミン化合物又はエポキシ化合物と反応して疎水的に修飾されていることが好ましい。
【0019】
(置換基A)
前記余剰のアニオン基がエポキシ化合物と反応したことによって形成され得る置換基Aは、例えば次のような構造式で表される。
修飾された導電性複合体の詳細な分析は必ずしも容易ではないが、置換基(A)は下記式(A1)で示される基、又は下記式(A2)で表される基であると推測される。
【0020】
【化1】
[式(A1)中、R
11、R
12、R
13、及びR
14はそれぞれ独立に、水素原子、又は任意の置換基である。]
【0021】
【化2】
[式(A2)中、mは2以上の整数であり、複数のR
15、複数のR
16、複数のR
17、及び複数のR
18はそれぞれ独立に、水素原子、又は任意の置換基であり、複数のR
15は同一でも異なっていてもよく、複数のR
16は同一でも異なっていてもよく、複数のR
17は同一でも異なっていてもよく、複数のR
18は同一でも異なっていてもよい。]
【0022】
式(A1)及び式(A2)において、左端の結合手は、置換基(A)が、アニオン基のプロトンと置換していることを表す。置換されるプロトンを有するアニオン基として、例えば、「-SO3H」のように酸素原子に結合した活性なプロトンを有するアニオン基が挙げられる。
【0023】
式(A1)において、R11、R12、R13、及びR14の任意の置換基としては、置換基を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基等が挙げられる。R11とR13とは結合して置換基を有していてもよい環を形成していてもよい。例えば、R11とR13とが前記炭化水素基であり、R11の1価の炭化水素基の任意の1つの水素原子を除いた2価の炭化水素基と、R13の1価の炭化水素基の任意の1つの水素原子を除いた2価の炭化水素基とが、前記水素原子が除かれた炭素原子同士で結合して環を形成する場合が挙げられる。
なかでも、式(A1)において、R11が水素原子又は炭素数10~16のアルコキシアルキル基であり、R12が水素原子であり、R13が水素原子又は炭素数10~16のアルコキシアルキル基であり、R14が水素原子であることが好ましい。
【0024】
式(A2)において、R15、R16、R17、及びR18の任意の置換基としては、置換基を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基等が挙げられる。R15とR17とは結合して置換基を有していてもよい環を形成していてもよい。環を形成する例は、上記と同様である。
なかでも、式(A2)において、R15が水素原子又は炭素数10~16のアルコキシアルキル基であり、R16が水素原子であり、R17が水素原子又は炭素数10~16のアルコキシアルキル基であり、R18が水素原子であることが好ましい。
【0025】
本明細書において、「置換基を有していてもよい」とは、水素原子(-H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(-CH2-)を2価の基で置換する場合との両方を含む。
置換基としての1価の基としては、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、トリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基等)、等が挙げられる。
置換基としての2価の基としては、酸素原子(-O-)、-C(=O)-、-C(=O)-O-等が挙げられる。ただし、2つの酸素原子同士が隣接する場合を除く。
【0026】
式(A2)において、mは2以上の整数であり、2~100が好ましく、2~50がより好ましく、2~25がさらに好ましい。mが上記下限値以上であると、導電性複合体の疎水性が充分に高くなる。mが前記上限値以下であると、疎水性が高くなりすぎたり、導電性が低下したりするのを抑制することができる。
【0027】
前記エポキシ基含有化合物(エポキシ化合物)は、1分子中にエポキシ基を1つ以上有する化合物である。導電性複合体を修飾する際の凝集又はゲル化を防止する点では、エポキシ化合物は、1分子中にエポキシ基を1つ有する化合物が好ましい。
エポキシ化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
1分子中にエポキシ基を1つ有する単官能エポキシ化合物としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、2,3-ブチレンオキサイド、イソブチレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシヘプタン、1,2-エポキシペンタン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシデカン、1,3-ブタジエンモノオキサイド、1,2-エポキシテトラデカン、グリシジルメチルエーテル、1,2-エポキシオクタデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、エチルグリシジルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテル、tert-ブチルグリシジルエーテル、1,2-エポキシエイコサン、2-(クロロメチル)-1,2-エポキシプロパン、グリシドール、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、ブチルグリシジルエーテル、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシ-9-デカン、2-(クロロメチル)-1,2-エポキシブタン、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-1H,1H,2H,2H,3H,3H-トリフルオロブタン、アリルグリシジルエーテル、テトラシアノエチレンオキサイド、グリシジルブチレート、1,2-エポキシシクロオクタン、グリシジルメタクリレート、1,2-エポキシシクロドデカン、1-メチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシシクロペンタデカン、1,2-エポキシシクロペンタン、1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシ-1H,1H,2H,2H,3H,3H-ヘプタデカフルオロブタン、3,4-エポキシテトラヒドロフラン、グリシジルステアレート、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、エポキシコハク酸、グリシジルフェニルエーテル、イソホロンオキサイド、α-ピネンオキサイド、2,3-エポキシノルボルネン、ベンジルグリシジルエーテル、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3-[2-(パーフルオロヘキシル)エトキシ]-1,2-エポキシプロパン、1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチル-3-(3-グリシジルオキシプロピル)トリシロキサン、9,10-エポキシ-1,5-シクロドデカジエン、4-tert-ブチル安息香酸グリシジル、2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン、2-tert-ブチル-2-[2-(4-クロロフェニル)]エチルオキシラン、スチレンオキサイド、グリシジルトリチルエーテル、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-フェニルプロピレンオキサイド、コレステロール-5α,6α-エポキシド、スチルベンオキサイド、p-トルエンスルホン酸グリシジル、3-メチル-3-フェニルグリシド酸エチル、N-プロピル-N-(2,3-エポキシプロピル)ペルフルオロ-n-オクチルスルホンアミド、(2S,3S)-1,2-エポキシ-3-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-4-フェニルブタン、3-ニトロベンゼンスルホン酸(R)-グリシジル、3-ニトロベンゼンスルホン酸-グリシジル、パルテノリド、N-グリシジルフタルイミド、エンドリン、デイルドリン、4-グリシジルオキシカルバゾール、7,7-ジメチルオクタン酸[オキシラニルメチル]、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、炭素数10~16の高級アルコールグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0029】
前記高級アルコールグリシジルエーテルとしては、炭素数10~16の高級アルコールグリシジルエーテルの1種以上が好ましく、炭素数12~14の高級アルコールグリシジルエーテルの1種以上がより好ましく、C12(炭素数12)高級アルコールグリシジルエーテル及びC13(炭素数13)高級アルコールグリシジルエーテルのうち少なくとも1種がさらに好ましく、C12,C13混合高級アルコールグリシジルエーテルが特に好ましい。
【0030】
1分子中にエポキシ基を2つ以上有する多官能エポキシ化合物としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,7-オクタジエンジエポキシド、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2:3,4-ジエポキシブタン、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、イソシアヌル酸トリグリシジルネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,2:3,4-ジエポキシブタン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトール系ポリグリシジルエーテル、エチレンオキシドラウリルアルコールグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0031】
エポキシ化合物は、余剰のアニオン基に対する反応性が良好であることから、分子量が50以上2000以下であることが好ましい。また、同様の観点から、エポキシ化合物は、炭素数が2以上100以下のものが好ましく、5以上80以下のものがより好ましく、10以上50以下のものがさらに好ましい。
【0032】
(置換基B)
前記余剰のアニオン基がアミン化合物と反応したことによって形成され得る置換基Bは、例えば次のような構造式で表される。
導電性複合体の詳細な分析は必ずしも容易ではないが、置換基(B)は下記式(B)で表される基であると推測される。
【0033】
-HN+R21R22R23 ・・・(B)
[式(B)中、R21~R23はそれぞれ独立に、水素原子、又は置換基を有してもよい炭化水素基であり、ただし、R21~R23のうち少なくとも1つは置換基を有してもよい炭化水素基である。]
【0034】
置換基(B)において、左端の結合手は、アニオン基の負電荷と、アミン化合物の正電荷とが結合していることを表す。負に荷電し得るアニオン基として、例えば「-SO3
-」のように、活性なプロトンが結合し得る酸素原子を有するアニオン基が挙げられる。
【0035】
式(B)におけるR21~R23は水素原子、又は置換基を有していてもよい炭化水素基である。式(B)におけるR21~R23はアミン化合物に由来する置換基である。
式(B)における炭化水素基は、置換基を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。
脂肪族炭化水素基の水素を置換してもよい置換基としては、フェニル基、水酸基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基の水素を置換してもよい置換基としては、炭素数1~5のアルキル基、水酸基等が挙げられる。
【0036】
前記アミン化合物は、第一級アミン(1級アミン)、第二級アミン(2級アミン)及び第三級アミン(3級アミン)よりなる群から選ばれる少なくとも1種である。アミン化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
第一級アミンとしては、例えば、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン、エタノールアミン等が挙げられる。
第二級アミンとしては、例えば、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、ジナフチルアミン等が挙げられる。
第三級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリナフチルアミン等が挙げられる。
前記アミン化合物のうち、導電性複合体を容易に疎水化できることから、第三級アミンが好ましく、トリオクチルアミン及びトリブチルアミンの少なくとも一方がより好ましい。
【0037】
前記アミン化合物は、窒素原子上に炭素数が4以上の置換基を有することが好ましく、窒素原子上に炭素数が6以上の置換基を有することがより好ましい。
【0038】
(置換基C)
前記余剰のアニオン基と反応したアミン化合物が、複素環式芳香族アミンである場合、これと反応したことによって形成された置換基Cは、例えば次のような構造式で表される。
【0039】
-HN+R24 ・・・(C)
[式(C)中、N+R24は、プロトンが付加したことにより正に帯電した窒素原子を含む、複素環式芳香族アミンを表す。]
ここで、複素環式芳香族アミンとは、芳香環を構成する窒素原子を含む環式のアミン化合物を意味し、そのアミン化合物に結合する水素原子は任意に置換されていてもよい。
【0040】
式(C)において、左端の結合手は、アニオン基の負電荷と、複素環式芳香族アミンの正電荷とが結合していることを表す。負に荷電し得るアニオン基として、例えば「-SO3
-」のように、活性なプロトンが結合し得る酸素原子を有するアニオン基が挙げられる。
【0041】
複素環式芳香族アミンの塩基性が強すぎると、修飾された導電性複合体の導電性が低下することがあるため、複素環式芳香族アミンのうち、塩基性が弱い、イミダゾール系アミンが好ましい。ここで、イミダゾール系アミンとは、イミダゾール環を有する化合物を意味し、そのイミダゾール環に結合する水素原子は任意に置換されていてもよい。
【0042】
イミダゾール環の水素原子を任意に置換してもよい置換基としては、例えば、水酸基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基が挙げられる。これらの置換基を構成する水素原子は水酸基又はシアノ基によって置換されていてもよい。また、これらの置換基を構成する2価又は3価の基は、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-N=、等に置換されていてもよい。また、イミダゾール環の水素原子を置換する置換基を2つ以上有する場合、これらの置換基同士が結合して環を形成していてもよい。
【0043】
前記イミダゾール系アミンとしては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-プロピルイミダゾール、N-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、1-アセチルイミダゾール、2-アミノベンズイミダゾール、2-アミノ-1-メチルベンズイミダゾール、2-ヒドロキシベンズイミダゾール、2-(2-ピリジル)ベンズイミダゾール等が挙げられる。
なかでも、導電性複合体のアニオン基との反応性が良好であり、安価であることから、イミダゾールが好ましい。
【0044】
本態様の導電性高分子粉体の電気伝導度(単位:S/cm)は、0.1以上100以下が好ましく、0.3以上100以下がより好ましく、1以上100以下がさらに好ましく、2以上100以下が特に好ましく、3以上100以下が最も好ましい。
電気伝導度が高いほど、導電性高分子粉体の導電性が高まるので好ましい。
電気伝導度の上限値は特に制限されず、上記範囲の100以下という値は目安である。
本態様の導電性高分子粉体の電気伝導度は、導電性高分子粉体を押し固めて得た成形体を試料として測定したものである。
【0045】
本態様の導電性高分子粉体の数平均粒子径は、0.1μm以上100μm以下が好ましく、0.5μm以上50μm以下がより好ましく、1μm以上10μm以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、粉体としての取り扱いがより容易になる。
上記範囲の上限値以下であると、導電性粉体における導電性高分子粉体の分散性がより向上する。
本態様の導電性高分子粉体の数平均粒子径は、動的光散乱粒度分布測定装置を用いて測定した個数基準の平均粒子径である。
【0046】
本態様の導電性高分子粉体は、Fe(鉄)原子が含まれていても構わない。導電性高分子粉体の総質量に対するFeの含有量は、例えば、0.5質量%以下が好ましく、0.2質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。Feの含有量は、実質的に0質量%であることが最も好ましい。
上記範囲の上限値以下であると、不純物であるFeが少ないため、当該導電性高分子粉体を含む導電性粉体は、優れた電池特性を発揮する電極を形成することができる。
前記導電性高分子粉体に含まれるFeの含有量は、蛍光X線分析により測定された値である。
【0047】
本態様の導電性高分子粉体は、水を含んでもよいが、水の含有量は少ない程好ましい。導電性高分子粉体の総質量に対する水の含有量は、例えば、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。水の含有量は、実質的に0質量%であることが最も好ましい。
上記範囲の上限値以下であると、非水系の材料、例えばバインダ成分と混合する場合に、導電性高分子粉体の凝集を抑制することができる。
前記導電性高分子粉体に含まれる水の含有量は、カールフィッシャー法により測定された値である。
【0048】
本態様の導電性粉体における導電性高分子粉体の含有量としては、例えば、前記導電性高分子粉体及び前記グラフェンの合計質量を100質量%とした場合、5~90質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましく、10~30質量%がさらに好ましい。
上記範囲であると、電極材料としたときに、導電性及び電池特性に優れた電極を形成することができる。
【0049】
[グラフェン]
本態様の導電性粉体に含まれるグラフェンは、公知の導電性炭素材料であり、市販品を入手することができる。グラフェンは、炭素原子以外の原子を含む官能基を有していてもよい。このような官能基としては、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基、水酸基等が知られている。導電性に優れた導電性粉体を得る観点から、グラフェンは前記官能基の1種類以上を有することが好ましい。
本態様に含まれるグラフェンは、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0050】
本態様の導電性粉体に含まれるグラフェンは、グラフェン-導電性高分子粉体-前記アミン化合物又は前記エポキシ化合物の三元系反応生成物を形成していてもよい。三元系反応生成物は、後述する製造方法(2)で得ることができ、後述する実施例で示すように、導電性に優れる。三元系反応生成物を構成するグラフェンが、上記の炭素原子以外の原子を含む官能基を有すると、導電性がより一層優れるので好ましい。
【0051】
本態様の導電性粉体におけるグラフェンの含有量としては、例えば、前記導電性高分子粉体及び前記グラフェンの合計質量を100質量%とした場合、10質量%以上95質量%以下が好ましく、60質量%以上90質量%以下がより好ましく、70質量%以上90質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲であると、電極材料としたときに、導電性及び電池特性に優れた電極を形成することができる。
【0052】
<各成分の含有比>
本態様の導電性粉体における前記導電性高分子粉体:前記グラフェンの含有比は、質量基準で、(6:4)~(1:9)が好ましく、(5:5)~(1:9)がより好ましく、(4:6)~(1:9)がさらに好ましく、(1:7)~(1:9)が特に好ましく、(1:8)~(1:9)が最も好ましい。
上記範囲であると、電極材料としたときに、導電性に優れた電極を形成することができる。
【0053】
本態様の導電性粉体の総質量に対する、前記導電性高分子粉体及び前記グラフェンの合計質量は、70質量%以上100質量%以下が好ましく、80質量%以上100質量%以下がより好ましく、90質量%以上100質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲であると、電極材料としたときに、導電性に優れた電極を形成することができる。
【0054】
[導電助剤]
本態様の導電性粉体は、前述した導電性高分子粉体及びグラフェン以外の導電助剤を含んでいてもよい。
導電助剤としては、例えば、公知のリチウムイオン二次電池の電極活物質に添加される導電助剤が挙げられる。具体的には、例えば、炭素材料、金属粒子等が挙げられる。
炭素材料としては、カーボンブラック、黒鉛、気相成長炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等が例示できる。
金属粒子としては、銀粒子、銅粒子、金粒子、アルミニウム粒子等が例示できる。
本態様に含まれる導電助剤は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0055】
本態様の粉体組成物の総質量に対する前記導電助剤の含有量は、例えば、0質量%以上10質量%以下とすることができる。
【0056】
(その他の任意成分)
本態様の導電性粉体は、前述した導電性高分子粉体、グラフェン、導電助剤以外の任意成分を含んでいてもよい。具体的には、例えば、無機化合物(但し、炭素材料及び金属粒子を除く。)が挙げられる。
無機化合物としては、例えば、シリカ、シリカ-アルミナ、ガラス、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、タルク、アルミナ、チタニア、ジルコニア、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト、マイカ等が挙げられる。
【0057】
本態様の粉体組成物の総質量に対する前記その他の任意成分の含有量は、例えば、0質量%以上10質量%以下とすることができる。
【0058】
≪塗料≫
本発明の第二態様は、第一態様の導電性粉体と、バインダ成分と、を含む塗料である。
【0059】
(バインダ成分)
バインダ成分は、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオン以外の樹脂又はその前駆体であり、熱可塑性樹脂、又は、導電層形成時に硬化する硬化性のモノマー又はオリゴマーである。熱可塑性樹脂はそのままバインダ樹脂となり、硬化性のモノマー又はオリゴマーは硬化により形成した樹脂がバインダ樹脂となる。
本態様の塗料に含まれるバインダ成分は1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0060】
バインダ成分由来のバインダ樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂(アクリル化合物)、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン等が挙げられる。
【0061】
硬化性のモノマー又はオリゴマーは、熱硬化性のモノマー又はオリゴマーであってもよいし、光硬化性のモノマー又はオリゴマーであってもよい。ここで、オリゴマーは、質量平均分子量が1万未満の重合体のことである。
硬化性のモノマーとしては、例えば、アクリルモノマー(アクリル化合物)、エポキシモノマー、オルガノシロキサン等が挙げられる。硬化性のオリゴマーとしては、例えば、アクリルオリゴマー(アクリル化合物)、エポキシオリゴマー、シリコーンオリゴマー(硬化型シリコーン)等が挙げられる。
バインダ成分としてアクリルモノマー又はアクリルオリゴマーを用いた場合には、加熱又は光照射により容易に硬化させることができる。
【0062】
硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、さらに硬化触媒を含むことが好ましい。例えば、熱硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、加熱によりラジカルを発生させる熱重合開始剤を含むことが好ましく、光硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、光照射によりラジカルを発生させる光重合開始剤を含むことが好ましい。
【0063】
本態様の塗料におけるバインダ成分の含有割合は、導電性高分子粉体100質量部に対して、例えば、10質量部以上10000質量部以下とすることができ、100質量部以上5000質量部以下が好ましく、200質量部以上3000質量部以下がより好ましく、300質量部以上1500質量部以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であれば、本態様の塗料をフィルム基材等に塗工する際の製膜性と膜強度を向上させることができる。
上記範囲の上限値以下であれば、導電性高分子粉体の含有割合の低下による導電性の低下を抑制することができる。
【0064】
本態様の塗料は、希釈のための分散媒を含んでいてもよい。前記分散媒は、水、有機溶剤、又は水と有機溶剤の混合液の何れであってもよい。
【0065】
前記有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤(アルコール類)、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、窒素原子含有溶剤等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロパノール)、2-メチル-2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、アリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
窒素原子含有溶剤としては、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
本態様の塗料に含まれる有機溶剤は、1種類でもよいし、2種以上でもよい。
【0066】
(その他の添加剤)
本態様の塗料には、バインダ成分及び分散媒以外のその他の添加剤が含まれてもよい。
添加剤としては、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
ただし、添加剤は、前述したπ共役系導電性高分子、ポリアニオン、グラフェン、導電助剤以外のものである。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0067】
本態様の塗料が前記その他の添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、導電性粉体100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下の範囲とすることができる。
【0068】
≪電極≫
本発明の第三態様は、第一態様の導電性粉体を含む電極である。
電極の形状は特に制限されず、例えば、板状、シート状、膜状、棒状、柱状等の公知の電極の形状が挙げられる。
板状、シート状及び膜状の電極の平均厚さは、電気抵抗の低減、電極の薄型化を両立する観点から、例えば、0.01μm以上1000μm以下が好ましく、0.1μm以上100μm以下がより好ましい。
板状、シート状及び膜状の電極の平均厚さは、電極の断面を、測定顕微鏡等の拡大観察手段を用いて観察し、無作為に選択される10箇所以上の厚さを測定した値の平均値である。
本態様の電極は、フィルム又は基板等の基材によって支持されていてもよいし、独立した電極であってもよい。
本態様の電極をリチウムイオン二次電池の電極として用いる場合、正極であってもよいし、負極であってもよい。
【0069】
<電極の製造方法>
本態様の電極の製造方法としては、例えば、第一態様の導電性粉体を所望の形状の電極に成形する方法、第二態様の塗料を所望の基材に塗布して乾燥し、前記基材の表面に第一態様の導電性粉体を含む電極層(導電層)を形成する方法等が挙げられる。
第一態様の導電性粉体を成形する方法は特に制限されず、例えば、公知のリチウムイオン二次電池の電極活物質に含まれるバインダと、第一態様の導電性粉体を混錬し、ペレットを得て、このペレットを用いて、成形型等で成型してもよいし、押出成形してもよい。或いは、導電性粉体を型枠に充填し、押し固めることにより、型枠の形状が反映された立体形状の電極を形成してもよい。
第二態様の塗料を塗布する基材としては、公知の電池の電極活物質層を支持する基材が適用でき、例えば、金属箔、金属板等の金属材が挙げられる。例えば、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス板等が挙げられる。また、公知の樹脂フィルムや樹脂板を基材として用いてもよい。塗布方法は特に制限されず、常法を適用すればよい。
【0070】
<電池>
本態様の電極を備えた電池やキャパシタを製造することもできる。
前記電池は、一次電池でもよいし、二次電池でもよい。電池の形態は特に制限されず、例えば、乾電池、電極積層型ラミネート電池、ボタン電池等の公知の電池形態が挙げられる。
前記電池は、通常、正極、負極、電解質を有する。本態様の電極は、正極であってもよいし、負極であってもよい。電池における正極と負極とは不織布等のセパレータによって絶縁されていることが好ましい。
前記電池は、リチウムイオン二次電池であることが好ましい。
【0071】
<導電性フィルムの製造方法>
本発明に関連する別の態様は、第二態様の塗料をフィルム基材の少なくとも一方の面に塗工し、前記フィルム基材上に形成した塗膜を硬化させ、導電層を形成することにより、前記基材の少なくとも一部に前記導電層を形成した導電性フィルムを得る、導電性フィルムの製造方法である。
前記導電層は電極層であってもよく、前記導電性フィルムは、フィルム基材に支持された電極であってもよい。
【0072】
(フィルム基材)
前記フィルム基材としては、例えば、プラスチックフィルムが挙げられる。
プラスチックフィルムを構成するフィルム基材用樹脂としては、例えば、エチレン-メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。これらのフィルム基材用樹脂のなかでも、安価で機械的強度に優れる点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0073】
フィルム基材用の樹脂は、非晶性でもよいし、結晶性でもよい。
フィルム基材は、未延伸のものでもよいし、延伸されたものでもよい。
フィルム基材には、導電性高分子含有液から形成される導電層の密着性をさらに向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面処理が施されてもよい。
【0074】
フィルム基材の平均厚みとしては、5μm以上500μm以下であることが好ましく、20μm以上200μm以下であることがより好ましい。フィルム基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破断しにくくなり、前記上限値以下であれば、フィルムとして充分な可撓性を確保できる。
フィルム基材の厚さは、任意の10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
【0075】
前記塗料をフィルム基材に塗工(塗布)する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
【0076】
フィルム基材上に塗工した前記塗料からなる塗膜を乾燥させ、硬化させることにより、導電層が形成された導電性フィルムを得ることができる。
塗膜を乾燥する方法としては、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。
加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定されるが、通常は、50℃以上150℃以下の範囲内である。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。
【0077】
前記塗料が、バインダ成分として熱硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、塗膜を加熱して、バインダ成分を硬化させることにより、導電層が形成された導電性フィルムを得ることができる。
前記塗料が、バインダ成分として光硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、塗膜に紫外線又は電子線を照射して、バインダ成分を硬化させることにより、導電層が形成された導電性フィルムを得ることができる。
【0078】
<導電性フィルム>
本発明に関連する別の態様は、フィルム基材と、前記フィルム基材の少なくとも一方の面に設けられた導電層とを有する導電性フィルムであり、前記導電層に第一態様の導電性高分子粉体が含まれる、導電性フィルムである。本態様の導電性フィルムは上述の製造方法により製造することができる。
前記導電層は電極層であってもよく、前記導電性フィルムは、フィルム基材に支持された電極であってもよい。
【0079】
(導電層)
フィルム基材の少なくとも一方の面に備えられた前記導電層の平均厚みとしては、例えば、1μm以上50μm以下が好ましく、2μm以上10μm以下がより好ましい。
前記導電層の平均厚さが前記下限値以上であれば、充分に高い導電性を発揮でき、前記上限値以下であれば、導電層を容易に形成できる。
【0080】
前記導電層は、良好な導電性の目安として、例えば、1×104Ω/□以上1×1010Ω/□以下の表面抵抗値を有することが好ましく、1×104Ω/□以上1×109Ω/□以下の表面抵抗値を有することがより好ましく、1×104Ω/□以上1×108Ω/□以下の表面抵抗値を有することがさらに好ましい。
【0081】
≪導電性高分子粉体の製造方法(1)≫
本発明の第四態様は、π共役系導電性高分子を形成し得るモノマーと、ポリアニオンと、水とを含む反応液に、触媒及び酸化剤を加えることにより、前記モノマーを酸化重合し、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性高分子粉体を形成する工程(重合工程)と、前記反応液から前記導電性高分子粉体を分取する工程(分取工程)と、分取した前記導電性高分子粉体と、グラフェンとを混合することにより、導電性粉体を得る工程(混合工程)と、を有する、導電性粉体の製造方法である。
前記反応液における、前記モノマー:前記ポリアニオンの含有比は質量基準で、(1:0.5)~(1:1)である。
【0082】
(重合工程)
本工程において、前記モノマーと、前記ポリアニオンとを特定の含有比で含む水溶液(反応液)を調製し、前記モノマーを重合させることにより、π共役系導電性高分子を形成する。前記反応液において、π共役系導電性高分子にポリアニオンが自然にドープされ、π共役系導電性高分子とポリアニオンからなる導電性複合体を含む導電性高分子粉体が形成される。形成された導電性複合体に含まれる、π共役系導電性高分子:ポリアニオンの含有比(質量基準)は、前記水溶液中に重合開始直前に含まれていた前記モノマーの含有量と、前記ポリアニオンの含有量の比率と同じである。つまり、前記反応液中に配合したモノマーとポリアニオンの含有比が、形成した導電性複合体及び導電性高分子粉体におけるπ共役系導電性高分子とポリアニオンの含有比に反映される。
【0083】
重合開始直前の前記反応液に含まれる前記モノマー:前記ポリアニオンの含有比は、質量基準で、(1:0.5)~(1:1)であり、(1:0.7)~(1:0.99)がより好ましく、(1:0.8)~(1:0.98)がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、ポリアニオンによるドープ効果が充分に発揮され、より導電性に優れた導電性高分子粉体が得られる。
上記範囲の上限値以下であると、ポリアニオンによるドープ効果を得つつ、水に対する分散性が低く、容易に沈殿させることが可能な導電性高分子粉体を形成することができる。
【0084】
本工程において、前記反応液に含有させる触媒は、前記モノマーを重合させるものであれば特に制限されず、例えば、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。
前記触媒とともに、酸化剤を含有させることが好ましい。酸化剤は、還元された触媒を元の酸化状態に戻すことができる。酸化剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩が挙げられる。
触媒としてFe(鉄)を含む触媒を用いると、導電性高分子粉体に触媒由来のFeが含まれることがある。
【0085】
重合開始直前の前記反応液に含まれる前記モノマーの含有量は、例えば、前記反応液の総質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.3質量%以上10質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上5質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、形成される導電性高分子粉体を容易に分取することができる。
上記範囲の上限値以下であると、重合反応を安定に進められるので、反応系に存在するポリアニオンとの複合化が安定に進み、導電性の高い良質な導電性高分子粉体を容易に得ることができる。
【0086】
重合開始直前の前記反応液に含まれる前記ポリアニオンの含有量は、前記モノマーに対する前記含有比に基づいて設定されることが好ましい。
【0087】
重合開始直前の前記反応液に含まれる前記触媒の含有量は、例えば、前記反応液の総質量に対して、0.01質量%以上3質量%以下が好ましく、0.1質量%以上2質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上1質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、導電性高分子粉体を容易に形成することができる。
上記範囲の上限値以下であると、重合反応を安定に進められるので、反応系に存在するポリアニオンとの複合化が安定に進み、導電性の高い良質な導電性高分子粉体を容易に得ることができる。
【0088】
上記重合反応を促進する観点から、前記反応液を加熱して撹拌しながら反応させてもよい。前記反応液の加熱温度は、例えば、60~100℃とすることができる。
上記範囲の下限値以上であると、重合反応を充分に促進できる。
上記範囲の上限値以下であると、π共役系導電性高分子の熱による劣化を抑制できる。
上記範囲の加熱温度で行う反応時間は、例えば1~10時間程度とすることができる。
【0089】
(析出工程)
重合工程と回収工程の間に析出工程を設けてもよい。本工程において、前記モノマーの重合反応後の前記反応液中に導電性高分子粉体を析出させる方法は特に制限されず、例えば、反応後の反応液を静置する方法、反応後の反応液をゆっくり撹拌する方法、反応後の反応液を-20℃~4℃程度に冷却する方法、反応液にアミン化合物又はエポキシ化合物を添加する方法等が挙げられる。いずれの方法においても、導電性高分子粉体の水に溶解し難い性質により、自然に析出させることができる。
【0090】
重合反応後の前記反応液にアミン化合物又はエポキシ化合物を添加することにより、重合反応後に形成された前記導電性複合体が有する余剰のアニオン基にアミン化合物又はエポキシ化合物を反応させ、前記余剰のアニオン基を修飾することにより、前記導電性複合体の疎水性を高め、前記反応液中に前記導電性複合体を析出させることがより一層容易となる。
【0091】
前記反応液に添加するアミン化合物及びエポキシ化合物の説明は、第一態様の説明と同様であるので重複する説明は省略する。前記反応液に添加するアミン化合物又はエポキシ化合物の種類は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0092】
前記反応液に添加するアミン化合物の添加量は、導電性複合体100質量部に対して、100質量部以上10000質量部以下であることが好ましく、200質量部以上6000質量部以下であることがより好ましく、300質量部以上3000質量部以下であることがさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、導電性複合体の疎水性が充分に向上し、析出した導電性複合体が前記反応液の上層に浮遊するので、導電性高分子粉体として収率良く回収することができる。上記範囲の上限値以下であると、導電性複合体が修飾されることによる導電性の低下を抑制することができる。
【0093】
前記反応液に添加するエポキシ化合物の添加量は、導電性複合体100質量部に対して、100質量部以上10000質量部以下であることが好ましく、200質量部以上6000質量部以下であることがより好ましく、300質量部以上3000質量部以下であることがさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、導電性複合体の疎水性が充分に向上し、析出した導電性複合体が前記反応液の下層に沈降するので、導電性高分子粉体として収率良く回収することができる。上記範囲の上限値以下であると、導電性複合体が修飾されることによる導電性の低下を抑制することができる。
【0094】
前記反応液にアミン化合物又はエポキシ化合物を添加する前、添加と同時又は添加した後には、有機溶剤を添加してもよい。有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が挙げられる。添加する水溶性有機溶剤は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0095】
(分取工程)
分取工程は、前記反応液に形成した導電性複合体を含む導電性高分子粉体を、前記反応液から分取し、回収する工程である。分取する方法としては、例えば、前記反応液を入れた容器の底に導電性高分子粉体を自然に沈殿させて上澄み液を除去する方法、前記反応液の上層に浮遊した導電性高分子粉体を吸引して回収する方法、前記反応液を濾過してフィルター上に導電性高分子粉体を得る方法、遠心分離により前記反応液を入れた容器の底に導電性高分子粉体のペレットを形成する方法、前記反応液を気体中に噴霧して乾燥させ、乾燥した導電性高分子粉体を得る方法、等が挙げられる。
これらの回収方法の中でも、自然に沈殿又は浮遊させて回収する方法は、不純物が少なく、導電性に優れ、流動性に優れた導電性高分子粉体を容易に得られるので、好ましい。
【0096】
前記反応液から回収した直後の導電性高分子粉体は、触媒や酸化剤等を含む反応液が付着しているので、導電性高分子粉体を水または有機溶剤により洗浄することが好ましい。具体的には、例えば、水または有機溶剤からなる洗浄液に導電性高分子粉体を添加し、攪拌した後、再度、沈殿させる等の方法により、導電性高分子粉体を洗浄液から回収する方法が挙げられる。
前記有機溶剤としては、例えば、導電性高分子粉体を溶解し難く、洗浄力に優れることから、イソプロピルアルコール、メタノール、及びアセトンから選択される1種以上が好ましい。
【0097】
本工程で得られた導電性高分子粉体は、乾燥することにより、取り扱いが容易な乾燥粉体とすることができる。乾燥方法は特に制限されず、粉体を乾燥する公知方法が適用される。
【0098】
本工程で得られた導電性高分子粉体は、所望の粒子径となるように、粉砕してもよい。粉砕方法は特に制限されず、例えば、乳鉢を用いてすり潰して粉砕する方法、粉砕機を用いて粉砕する方法等が挙げられる。粉砕機としては、例えば、ホモジナイザー、ボールミル、ビーズミル、ローラーミル、ジェットミル、ハンマーミル等が挙げられる。
【0099】
導電性高分子粉体を粉砕する方式は、分散媒中で粉砕する湿式でもよいし、分散媒を含まない状態で粉砕する乾式でもよい。導電性高分子粉体の数平均粒子径が0.1μm以上100μm以下の範囲の導電性高分子粉体を容易に製造できる点では、湿式が好ましい。湿式を適用した場合には、導電性高分子粉体は、分散媒中に分散した状態で得られる。湿式粉砕に使用する分散媒としては、例えば、イソプロピルアルコール、メタノール、及びアセトンから選択される1種以上を含むことが好ましい。これら好ましい分散媒を使用すると、導電性高分子粉体の導電性を損なわずに、数平均粒子径が0.1μm以上100μm以下の範囲の導電性高分子粉体をより容易に製造できる。
【0100】
以上で説明した各工程により、第一態様の導電性粉体に含まれる導電性高分子粉体を容易に製造することができる。
【0101】
(混合工程)
本工程では、上記の各工程で得た導電性高分子粉体と、グラフェンと、必要に応じてその他の任意成分とを所望の割合で混合することにより、導電性粉体を得る。
混合方法は特に制限されず、公知の粉体組成物を構成する材料を混合する公知方法を適用すればよい。
【0102】
≪導電性高分子粉体の製造方法(2)≫
本発明の第五態様は、π共役系導電性高分子を形成し得るモノマーと、ポリアニオンと、グラフェンと、水とを含む反応液に、触媒及び酸化剤を加えることにより、前記モノマーを酸化重合し、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオンを含む導電性高分子粉体を形成する工程(重合工程)と、前記反応液から前記導電性高分子粉体及び前記グラフェンを含む前記導電性粉体を分取する工程(分取工程)と、を有する、導電性粉体の製造方法である。
【0103】
重合開始直前の前記反応液における、前記モノマー:前記ポリアニオンの含有比は質量基準で、(1:0.5)~(1:1)であり、(1:0.7)~(1:0.99)がより好ましく、(1:0.8)~(1:0.98)がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、ポリアニオンによるドープ効果が充分に発揮され、より導電性に優れた導電性高分子粉体が得られる。
上記範囲の上限値以下であると、ポリアニオンによるドープ効果を得つつ、水に対する分散性が低く、容易に沈殿させることが可能な導電性高分子粉体を形成することができる。
【0104】
本態様の重合工程は、前記反応液にグラフェンが含まれること以外は、第四態様の重合工程と同様に行うことができる。
前記反応液に含まれるグラフェンの量は特に制限されず、例えば、前記モノマー、前記ポリアニオン及び前記グラフェンの合計質量を100質量%とした場合、10質量%以上95質量%以下が好ましく、60質量%以上90質量%以下がより好ましく、70質量%以上90質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲であると、重合反応後に形成された導電性高分子粉体とグラフェンとを含む導電性粉体におけるグラフェンの含有量を、前述した第一態様の好適な範囲にすることができる。つまり、前記反応液に含まれる前記モノマー及び前記ポリアニオンの含有量は、製造する導電性粉体に含まれる導電性高分子粉体の含有量に相当し、前記反応液に含まれるグラフェンの含有量は、製造する導電性粉体に含まれるグラフェンの含有量に相当する。
【0105】
前記重合工程と前記分取工程の間には、第四態様と同様の析出工程を有していてもよい。析出工程において、重合反応後の反応液にアミン化合物又はエポキシ化合物を添加し、導電性高分子粉体を修飾してもよい。修飾された導電性高分子粉体及びグラフェンを含む導電性粉体は反応液中で浮遊(アミン化合物を添加した場合)又は沈降(エポキシ化合物を添加した場合)するので、分取が容易となる。
上記のように反応後に導電性高分子粉体の比重が変化することから、グラフェン存在下で導電性高分子粉体にアミン化合物又はエポキシ化合物を反応させると、グラフェンも反応に関与し、グラフェン-導電性高分子粉体-アミン化合物又はエポキシ化合物の三元系反応生成物が生じると考えられる。三元系反応生成物は、後述する実施例で示すように、導電性に優れる。三元系反応生成物を構成するグラフェンが、前述した炭素原子以外の原子を含む官能基を有すると、導電性がより一層優れるので好ましい。
【0106】
本態様のグラフェンの説明は第一態様のグラフェンの説明と同じであるので、重複する説明を省略する。
【実施例0107】
(製造例1)ポリスチレンスルホン酸の製造
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたポリスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に、10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、得られたポリスチレンスルホン酸含有溶液の1000mlの溶媒を限外ろ過法により除去した。次いで、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去して、ポリスチレンスルホン酸を水洗した。この水洗操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
【0108】
(製造例2)π共役系導電性高分子とポリアニオンを含む導電性高分子粉体の合成
5.0gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと、5.0gのポリスチレンスルホン酸を995.0mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、89mlのイオン交換水に溶かした11gの過硫酸アンモニウムと49.7mlのイオン交換水に溶かした0.3gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、24時間攪拌して反応させた。
得られた反応液を濾過し、ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT-PSS)を含む導電性高分子粉体10.0gを得た。
【0109】
(製造例3)π共役系導電性高分子とポリアニオンを含む導電性高分子粉体の合成
5.0gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと、2.5gのポリスチレンスルホン酸を997.5mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
ここで得た混合溶液を用いたこと以外は、製造例2と同様にして、PEDOT-PSSを含む導電性高分子粉体7.5gを得た。
【0110】
(製造例4)π共役系導電性高分子とポリアニオンとグラフェンを含む導電性粉体の合成
5.0gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと、2.5gのポリスチレンスルホン酸とグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XZ、無修飾)7.5gを997.5mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、89mlのイオン交換水に溶かした11gの過硫酸アンモニウムと49.7mlのイオン交換水に溶かした0.3gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、24時間攪拌して反応させた。
得られた反応液を濾過し、PEDOT-PSSを含む導電性高分子粉体とグラフェンを含む導電性粉体15.0gを得た。
【0111】
(製造例5)π共役系導電性高分子とポリアニオンとグラフェンを含む導電性粉体の合成
5.0gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと、2.5gのポリスチレンスルホン酸とグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XXX、カルボキシ基/アミノ基修飾)7.5gを997.5mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
ここで得た混合溶液を用いたこと以外は、製造例4と同様にして、PEDOT-PSSを含む導電性高分子粉体とグラフェンを含む導電性粉体15.0gを得た。
【0112】
(製造例6)π共役系導電性高分子とポリアニオンとグラフェンとアミン化合物を含む導電性粉体の合成
5.0gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと、2.5gのポリスチレンスルホン酸とグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XZ、無修飾)7.5gを997.5mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、89mlのイオン交換水に溶かした11gの過硫酸アンモニウムと49.7mlのイオン交換水に溶かした0.3gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、24時間攪拌して反応させた。
次に、イソプロパノール500gとトリオクチルアミン100gを添加し1時間攪拌した。ここで、析出したπ共役系導電性高分子とポリアニオンとグラフェンとトリオクチルアミンの反応物がすべて溶液上層に浮遊したことを確認した。
得られた反応液を濾過し、PEDOT-PSSを含む導電性高分子粉体とグラフェンとトリオクチルアミンの反応物を含む導電性粉体15.2gを得た。
【0113】
(製造例7)π共役系導電性高分子とポリアニオンとグラフェンとアミン化合物を含む導電性粉体の合成
5.0gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと、2.5gのポリスチレンスルホン酸とグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XXX、カルボキシ基/アミノ基修飾)7.5gを997.5mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
ここで得た混合溶液を用いたこと以外は、製造例6と同様にして、PEDOT-PSSを含む導電性高分子粉体とグラフェンとトリオクチルアミンの反応物を含む導電性粉体15.2gを得た。
【0114】
(製造例8)π共役系導電性高分子とポリアニオンとグラフェンとエポキシ化合物を含む導電性粉体の合成
5.0gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと、2.5gのポリスチレンスルホン酸とグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XZ、無修飾)7.5gを997.5mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、89mlのイオン交換水に溶かした11gの過硫酸アンモニウムと49.7mlのイオン交換水に溶かした0.3gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、24時間攪拌して反応させた。
次に、ブチルグリシジルエーテル100gを添加し1時間攪拌した。ここで、析出したπ共役系導電性高分子とポリアニオンとグラフェンとブチルグリシジルエーテルの反応物がすべて溶液下層に沈降したことを確認した。
得られた反応液を濾過し、PEDOT-PSSを含む導電性高分子粉体とグラフェンとブチルグリシジルエーテルの反応物を含む導電性粉体15.3gを得た。
【0115】
(製造例9)π共役系導電性高分子とポリアニオンとグラフェンとエポキシ化合物を含む導電性粉体の合成
5.0gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと、2.5gのポリスチレンスルホン酸とグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XXX、カルボキシ基/アミノ基修飾)7.5gを997.5mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
ここで得た混合溶液を用いたこと以外は、製造例8と同様にして、PEDOT-PSSを含む導電性高分子粉体とグラフェンとブチルグリシジルエーテルの反応物を含む導電性粉体15.3gを得た。
【0116】
(製造例10)π共役系導電性高分子のみを含む粉体の合成
5.0gの3,4-エチレンジオキシチオフェンを1000mlのイオン交換水に溶かした溶液を得た。
得られた溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、89mlのイオン交換水に溶かした11gの過硫酸アンモニウムと49.7mlのイオン交換水に溶かした0.3gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、24時間攪拌して反応させた。
得られた反応液を濾過し、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)の粉体5.0gを得た。
【0117】
(製造例11)π共役系導電性高分子とポリアニオンを含む導電性複合体の合成
5.0gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと、10.0gのポリスチレンスルホン酸を990.0mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、89mlのイオン交換水に溶かした11gの過硫酸アンモニウムと49.7mlのイオン交換水に溶かした0.3gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、24時間攪拌して反応させた。
得られた反応液を濾過し、PEDOT-PSSの粉体を得ようとしたが、すべてのPEDOT-PSSが濾紙を通過したため、粉体の分取を中止した。
【0118】
(製造例12)
ペンタエリスリトール1000gとイルガキュア184(BASF社製、光重合開始剤)40gを混合しアクリル樹脂溶液を得た。
【0119】
(実施例1)
製造例2のPEDOT-PSSの粉体0.2gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XZ、無修飾)の粉体1.8gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
得られた塗料を#4のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、400mJの紫外線照射を行い、PETフィルム上に導電層を形成することにより、導電性フィルムを得た。得られた導電性フィルムの導電層の表面抵抗値を測定した結果を表1に示す。
【0120】
以下の実施例及び比較例で得た塗料をそれぞれ使用し、実施例1と同様にして、導電性フィルムを形成し、その導電層の表面抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。表1において、「1.0E+11」は、「1.0×1011」を意味し、その他も同様である。
【0121】
(実施例2)
製造例2のPEDOT-PSSの粉体0.4gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XZ、無修飾)の粉体1.6gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0122】
(実施例3)
製造例2のPEDOT-PSSの粉体0.6gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XZ、無修飾)の粉体1.4gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0123】
(実施例4)
製造例2のPEDOT-PSSの粉体0.8gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XZ、無修飾)の粉体1.2gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0124】
(実施例5)
製造例2のPEDOT-PSSの粉体1.0gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XZ、無修飾)の粉体1.0gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0125】
(実施例6)
製造例2のPEDOT-PSSの粉体1.2gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XZ、無修飾)の粉体0.8gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0126】
(実施例7)
製造例2のPEDOT-PSSの粉体1.4gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XZ、無修飾)の粉体0.6gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0127】
(実施例8)
製造例2のPEDOT-PSSの粉体1.6gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XZ、無修飾)の粉体0.4gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0128】
(実施例9)
製造例2のPEDOT-PSSの粉体1.8gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XZ、無修飾)の粉体0.2gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0129】
(実施例10)
製造例2のPEDOT-PSSの粉体0.2gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XXX、カルボキシ基及びアミノ基修飾)の粉体1.8gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0130】
(実施例11)
製造例2のPEDOT-PSSの粉体0.4gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XXX、カルボキシ基及びアミノ基修飾)の粉体1.6gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0131】
(実施例12)
製造例2のPEDOT-PSSの粉体0.6gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XXX、カルボキシ基及びアミノ基修飾)の粉体1.4gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0132】
(実施例13)
製造例2のPEDOT-PSSの粉体0.8gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XXX、カルボキシ基及びアミノ基修飾)の粉体1.2gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0133】
(実施例14)
製造例2のPEDOT-PSSの粉体1.0gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XXX、カルボキシ基及びアミノ基修飾)の粉体1.0gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0134】
(実施例15)
製造例2のPEDOT-PSSの粉体1.2gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XXX、カルボキシ基及びアミノ基修飾)の粉体0.8gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0135】
(実施例16)
製造例2のPEDOT-PSSの粉体1.4gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XXX、カルボキシ基及びアミノ基修飾)の粉体0.6gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0136】
(実施例17)
製造例2のPEDOT-PSSの粉体1.6gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XXX、カルボキシ基及びアミノ基修飾)の粉体0.4gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0137】
(実施例18)
製造例2のPEDOT-PSSの粉体1.8gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XXX、カルボキシ基及びアミノ基修飾)の粉体0.2gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0138】
(実施例19)
製造例3のPEDOT-PSSの粉体0.2gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XZ、無修飾)の粉体1.8gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0139】
(実施例20)
製造例3のPEDOT-PSSの粉体0.4gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XZ、無修飾)の粉体1.6gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0140】
(実施例21)
製造例3のPEDOT-PSSの粉体0.6gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XZ、無修飾)の粉体1.4gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0141】
(実施例22)
製造例3のPEDOT-PSSの粉体0.8gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XZ、無修飾)の粉体1.2gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0142】
(実施例23)
製造例3のPEDOT-PSSの粉体1.0gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XZ、無修飾)の粉体1.0gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0143】
(実施例24)
製造例3のPEDOT-PSSの粉体1.2gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XZ、無修飾)の粉体0.8gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0144】
(実施例25)
製造例3のPEDOT-PSSの粉体1.4gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XZ、無修飾)の粉体0.6gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0145】
(実施例26)
製造例3のPEDOT-PSSの粉体1.6gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XZ、無修飾)の粉体0.4gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0146】
(実施例27)
製造例3のPEDOT-PSSの粉体1.8gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XZ、無修飾)の粉体0.2gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0147】
(実施例28)
製造例3のPEDOT-PSSの粉体0.2gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XXX、カルボキシ基及びアミノ基修飾)の粉体1.8gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0148】
(実施例29)
製造例3のPEDOT-PSSの粉体0.4gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XXX、カルボキシ基及びアミノ基修飾)の粉体1.6gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0149】
(実施例30)
製造例3のPEDOT-PSSの粉体0.6gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XXX、カルボキシ基及びアミノ基修飾)の粉体1.4gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0150】
(実施例31)
製造例3のPEDOT-PSSの粉体0.8gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XXX、カルボキシ基及びアミノ基修飾)の粉体1.2gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0151】
(実施例32)
製造例3のPEDOT-PSSの粉体1.0gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XXX、カルボキシ基及びアミノ基修飾)の粉体1.0gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0152】
(実施例33)
製造例3のPEDOT-PSSの粉体1.2gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XXX、カルボキシ基及びアミノ基修飾)の粉体0.8gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0153】
(実施例34)
製造例3のPEDOT-PSSの粉体1.4gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XXX、カルボキシ基及びアミノ基修飾)の粉体0.6gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0154】
(実施例35)
製造例3のPEDOT-PSSの粉体1.6gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XXX、カルボキシ基及びアミノ基修飾)の粉体0.4gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0155】
(実施例36)
製造例3のPEDOT-PSSの粉体1.8gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XXX、カルボキシ基及びアミノ基修飾)の粉体0.2gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0156】
(実施例37)
製造例4の導電性粉体2.0gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0157】
(実施例38)
製造例5の導電性粉体2.0gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0158】
(実施例39)
製造例6の導電性粉体2.0gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0159】
(実施例40)
製造例7の導電性粉体2.0gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0160】
(実施例41)
製造例8の導電性粉体2.0gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0161】
(実施例42)
製造例9の導電性粉体2.0gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0162】
(比較例1)
製造例2のPEDOT-PSSの粉体2.0gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0163】
(比較例2)
製造例3のPEDOT-PSSの粉体2.0gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0164】
(比較例3)
グラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XZ、無修飾)の粉体2.0gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0165】
(比較例4)
グラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XXX、カルボキシ基及びアミノ基修飾)の粉体2.0gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0166】
(比較例5)
製造例10のPEDOTの粉体1.0gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XZ、無修飾)の粉体1.0gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0167】
(比較例6)
製造例10のPEDOTの粉体1.0gとグラフェン(グラフェンプラットホーム社製、GNH-XXX、カルボキシ基及びアミノ基修飾)の粉体1.0gと製造例12のアクリル樹脂溶液18.0gとを混合して塗料を得た。
【0168】
【0169】
【0170】
<結果>
導電性高分子粉体及びグラフェンを含む各実施例の導電層は、優れた導電性を示し、電極として有用であることが分かった。また、前記導電性高分子粉体:前記グラフェンの含有比が質量基準で、6:4~1:9である実施例の導電層は、その他の実施例よりも優れた導電性を示した。さらに、グラフェンがカルボキシ基及びアミノ基で修飾されていると、導電性がより優れることが分かった。一方、導電性高分子粉体を含まず、グラフェン単独で使用した場合(比較例3~6)には、グラフェンの修飾が導電性を向上させていない。つまり、本発明にかかる導電性高分子粉体とグラフェンとを組み合わせた場合に限り、グラフェンの修飾が導電性を向上させることが分かった。
【0171】
比較例1~2の導電層はグラフェンを含まないので、導電性に劣っていた。
比較例3~4の導電層は導電性高分子粉体を含まないので、導電性に劣っていた。
比較例5~6の導電層はPEDOTにPSSがドープされていないので、導電性に劣っていた。