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特開2022-52278弾性繊維用処理剤及び弾性繊維
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052278
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】弾性繊維用処理剤及び弾性繊維
(51)【国際特許分類】
D06M 15/17 20060101AFI20220328BHJP
D06M 13/02 20060101ALI20220328BHJP
D06M 15/643 20060101ALI20220328BHJP
D06M 13/224 20060101ALI20220328BHJP
D06M 13/144 20060101ALI20220328BHJP
D06M 13/165 20060101ALI20220328BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
D06M15/17
D06M13/02
D06M15/643
D06M13/224
D06M13/144
D06M13/165
D06M15/53
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020158554
(22)【出願日】2020-09-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】西川 武志
(72)【発明者】
【氏名】大島 啓一郎
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA06
4L033AB01
4L033AC09
4L033BA01
4L033BA11
4L033BA14
4L033BA21
4L033CA09
4L033CA48
4L033CA59
(57)【要約】
【課題】飛散抑制効果を向上させる弾性繊維用処理剤及びかかる弾性繊維用処理剤が付着している弾性繊維を提供する。
【解決手段】本発明の弾性繊維用処理剤は、鉱物油、シリコーン油、及びエステル油から選ばれる少なくとも1つの平滑剤(A)、並びにロジン、ロジン誘導体、テルペン樹脂、及びテルペン樹脂誘導体から選ばれる少なくとも1つの天然由来成分(B)を含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱物油、シリコーン油、及びエステル油から選ばれる少なくとも1つの平滑剤(A)、並びにロジン、ロジン誘導体、テルペン樹脂、及びテルペン樹脂誘導体から選ばれる少なくとも1つの天然由来成分(B)を含有することを特徴とする弾性繊維用処理剤。
【請求項2】
前記天然由来成分(B)が、ロジン及びロジン誘導体から選ばれる少なくとも1つである請求項1に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項3】
前記平滑剤(A)が鉱物油を含み、前記平滑剤(A)中の鉱物油の含有割合が55~95質量%である請求項1又は2に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項4】
前記平滑剤(A)及び前記天然由来成分(B)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記天然由来成分(B)を0.1~30質量部の割合で含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項5】
更に、炭素数12~24の脂肪族アルコール、及び炭素数12~24の脂肪族アルコール1モルに対し、炭素数2~4のアルキレンオキサイドを1~100モルの割合で付加させた高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる少なくとも1つのヒドロキシ化合物(C)を含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項6】
前記平滑剤(A)、前記天然由来成分(B)、及びヒドロキシ化合物(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記天然由来成分(B)を0.1~30質量部の割合で含有する請求項5に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の弾性繊維用処理剤が付着していることを特徴とする弾性繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の天然由来成分を含有する弾性繊維用処理剤及びかかる弾性繊維用処理剤が付着している弾性繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばポリウレタン系弾性繊維等の弾性繊維は、他の合成繊維に比べて、繊維間の粘着性が強い。そのため、例えば弾性繊維を紡糸し、パッケージに巻き取った後、該パッケージから引き出して加工工程に供する際、パッケージから安定して解舒することが困難という問題があった。そのために、従来より弾性繊維の平滑性を向上させるため、炭化水素油等の平滑剤を含有する弾性繊維用処理剤が使用されることがある。
【0003】
従来、特許文献1に開示される弾性繊維用処理剤が知られている。特許文献1は、シリコーン油等のベース成分と、2族元素金属の二価カチオンの酸性リン酸エステル塩とを所定の比率で含有するポリウレタン弾性繊維用処理剤について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、弾性繊維用処理剤が付与された弾性繊維について、ワインダーで巻き取る際、処理剤の飛散抑制効果のさらなる向上が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、弾性繊維用処理剤において、所定の平滑剤(A)と、ロジン、ロジン誘導体、テルペン樹脂、及びテルペン樹脂誘導体から選ばれる少なくとも1つの天然由来成分(B)を配合した構成が好適であることを見出した。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様の弾性繊維用処理剤では、鉱物油、シリコーン油、及びエステル油から選ばれる少なくとも1つの平滑剤(A)、並びにロジン、ロジン誘導体、テルペン樹脂、及びテルペン樹脂誘導体から選ばれる少なくとも1つの天然由来成分(B)を含有することを特徴とする。
【0008】
上記弾性繊維用処理剤において、前記天然由来成分(B)が、ロジン及びロジン誘導体から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
上記弾性繊維用処理剤において、前記平滑剤(A)が鉱物油を含み、前記平滑剤(A)中の鉱物油の含有割合が55~95質量%であることが好ましい。
【0009】
上記弾性繊維用処理剤において、前記平滑剤(A)及び前記天然由来成分(B)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記天然由来成分(B)を0.1~30質量部の割合で含有することが好ましい。
【0010】
上記弾性繊維用処理剤において、更に、炭素数12~24の脂肪族アルコール、及び炭素数12~24の脂肪族アルコール1モルに対し、炭素数2~4のアルキレンオキサイドを1~100モルの割合で付加させた高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる少なくとも1つのヒドロキシ化合物(C)を含有することが好ましい。
【0011】
上記弾性繊維用処理剤において、前記平滑剤(A)、前記天然由来成分(B)、及びヒドロキシ化合物(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記天然由来成分(B)を0.1~30質量部の割合で含有することが好ましい。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の弾性繊維では、前記弾性繊維用処理剤が付着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、飛散抑制効果を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明の弾性繊維用処理剤(以下、処理剤ともいう)を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の処理剤は、所定の平滑剤(A)及び天然由来成分(B)を含有し、さらにヒドロキシ化合物を含んでもよい。
【0015】
本実施形態の処理剤に供する平滑剤(A)としては、ベース成分として処理剤に配合され、弾性繊維に平滑性を付与する。平滑剤(A)としては、鉱物油、シリコーン油、及びエステル油が挙げられる。
【0016】
鉱物油としては、例えば、芳香族系炭化水素、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素等が挙げられる。より具体的には、例えば、スピンドル油、流動パラフィン等が挙げられる。これらの鉱物油は、粘度等によって規定される市販品を適宜採用してもよい。
【0017】
シリコーン油の具体例としては、例えばジメチルシリコーン、フェニル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アミド変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルキルアラルキル変性シリコーン、アルキルポリエーテル変性シリコーン、エステル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等が挙げられる。これらのシリコーン油は、動粘度等によって規定される市販品を適宜採用してもよい。動粘度は、適宜設定されるが、25℃における動粘度が2~100cst(mm2/s)であることが好ましい。25℃における動粘度は、JIS Z 8803に準拠して測定される。
【0018】
エステル油としては、特に制限はないが、脂肪酸とアルコールとから製造されるエステル油が挙げられる。エステル油としては、例えば後述する奇数又は偶数の炭化水素基を有する脂肪酸とアルコールとから製造されるエステル油が例示される。
【0019】
エステル油の原料である脂肪酸は、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、また、例えば高級脂肪酸であってもよく、環状のシクロ環を有する脂肪酸であってもよく、芳香族環を有する脂肪酸であってもよい。エステル油の原料であるアルコールは、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、また、例えば高級アルコールであっても、環状のシクロ環を有するアルコールであっても、芳香族環を有するアルコールであってもよい。
【0020】
エステル油の具体例としては、例えば(1)オクチルパルミタート、オレイルラウラート、オレイルオレアート、イソトリデシルステアラート、イソテトラコシルオレアート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(2)1,6-ヘキサンジオールジデカナート、グリセリントリオレアート、トリメチロールプロパントリラウラート、ペンタエリスリトールテトラオクタナート等の、脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(3)ジオレイルアゼラート、チオジプロピオン酸ジオレイル、チオジプロピオン酸ジイソセチル、チオジプロピオン酸ジイソステアリル等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族多価カルボン酸とのエステル化合物、(4)ベンジルオレアート、ベンジルラウラート等の、芳香族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(5)ビスフェノールAジラウラート等の、芳香族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との完全エステル化合物、(6)ビス2-エチルヘキシルフタラート、ジイソステアリルイソフタラート、トリオクチルトリメリタート等の、脂肪族モノアルコールと芳香族多価カルボン酸との完全エステル化合物、(7)ヤシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、ゴマ油、魚油及び牛脂等の天然油脂等が挙げられる。
【0021】
これらの平滑剤(A)は、1種の平滑剤を単独で使用してもよく、2種以上の平滑剤を組み合わせて使用してもよい。
本実施形態において、本発明の効果を阻害しない範囲内において、上記以外の平滑剤を併用してもよい。上記以外の平滑剤としては、公知のものを適宜採用してもよい。上記以外の平滑剤としては、例えばポリオレフィン等が挙げられる。
【0022】
ポリオレフィンは、平滑成分として用いられるポリ-α-オレフィンが適用される。ポリオレフィンの具体例としては、例えば1-ブテン、1-ヘキセン、1-デセン等を重合して得られるポリ-α-オレフィン等が挙げられる。ポリ-α-オレフィンは、市販品を適宜採用してもよい。
【0023】
本実施形態において、平滑剤(A)として鉱物油を含むことが好ましい。平滑剤(A)中における鉱物油の含有割合は、55~95質量%であることが好ましい。鉱物油の含有量をかかる範囲に規定することにより、形状特性をより向上させる。
【0024】
天然由来成分(B)は、ロジン、ロジン誘導体、テルペン樹脂、及びテルペン樹脂誘導体から選ばれる少なくとも1つである。これらの天然由来成分(B)は、1種の天然由来成分を単独で使用してもよく、2種以上の天然由来成分を組み合わせて使用してもよい。ロジンは、松から得られる天然樹脂であり、アビエチン酸又はその異性体の混合物を主成分とする。ロジンは、ロジン誘導体が適用されてもよい。ロジン誘導体としては、アビエチン酸又はその異性体の水素化、脱水素化、アミド化、エステル化合物、EO又はPO付加物、グリシジルエステル化合物、アクリル化ロジン、ロジン含有ジオール、部分金属塩等が挙げられる。これらのロジン又はロジン誘導体は、軟化点、粘度、平均分子量等によって規定される市販品を適宜採用してもよい。
【0025】
テルペン樹脂は、松の木、オレンジの表皮から採取されるテルペン系化合物を原料として、カチオン重合することにより得られる。テルペン樹脂は、テルペンモノマーの単独重合体であるポリテルペン樹脂の他、テルペン樹脂誘導体が適用されてもよい。テルペン樹脂誘導体としては、例えばテルペンモノマーと芳香族モノマーを共重合させた芳香族変性テルペン樹脂、テルペンモノマーとフェノール類を反応させたテルペンフェノール樹脂、水素添加して得られる水添テルペン樹脂等が挙げられる。これらのテルペン樹脂又はテルペン樹脂誘導体は、軟化点等によって規定される市販品を適宜採用してもよい。
【0026】
これらの中で、ロジン又はロジン誘導体が適用されることが好ましい。ロジン又はロジン誘導体が適用されることにより、飛散抑制効果をより向上させる。
天然由来成分(B)の具体例としては、例えば重合ロジン樹脂(荒川化学工業社製「ペンセルD-160」、軟化点(環球法):160℃)、重合ロジン樹脂(荒川化学工業社製「ペンセルD-135」、軟化点(環球法):135℃)、ロジンエステル樹脂(荒川化学工業社製「スーパーエステルA-75」、軟化点(環球法):75℃)、ロジンエステル樹脂(荒川化学工業社製「スーパーエステルA-100」、軟化点(環球法):100℃)、ロジンエステル樹脂(荒川化学工業社製「スーパーエステルA-125」、軟化点(環球法):125℃)、液状ロジン誘導体(荒川化学工業社製「パインクリスタルМE-GH」、粘度(40℃):830mPa・s)、テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル社製「YSポリスターT-130」、軟化点:130℃)、テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル社製「YSポリスターT-100」、軟化点:100℃)等が挙げられる。
【0027】
処理剤中において、平滑剤(A)及び天然由来成分(B)の含有割合の合計を100質量部とすると、天然由来成分(B)を0.1~30質量部の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、本発明の効果をより向上させる。
【0028】
処理剤中において、平滑剤(A)及び天然由来成分(B)の含有割合の合計を100質量部とすると、平滑剤(A)を80~99.9質量部、及び天然由来成分(B)を0.1~20質量部の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、本発明の効果をより向上させる。
【0029】
本実施形態の処理剤は、高級アルコールとして炭素数12~24の脂肪族アルコール、及び炭素数12~24の脂肪族アルコール1モルに対し、炭素数2~4のアルキレンオキサイドを1~100モルの割合で付加させた高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる少なくとも1つのヒドロキシ化合物(C)を含んでもよい。かかるヒドロキシ化合物(C)を配合することにより綾落ち防止性をより向上できる。
【0030】
炭素数12~24の脂肪族アルコールは、不飽和結合の有無について特に制限はなく、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を有するアルコールであってもよいし、環状のシクロ環を有するアルコールであってもよい。分岐鎖状の炭化水素基を有するアルコールの場合、その分岐位置は特に制限されるものではなく、例えば、α位が分岐した炭素鎖であってもよいし、β位が分岐した炭素鎖であってもよい。また、第1級アルコールであっても、第2級アルコールであってもよい。
【0031】
脂肪族アルコールの具体例としては、例えばラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、エイコサノール、ベヘニルアルコール、テトラコサノール、オレイルアルコール、12-エイコシルアルコール、ヘキサデセニルアルコール、エイコセニルアルコール、オクタデセニルアルコール、ドコシルアルコール、イソドデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、イソミリスチルアルコール、イソヘキサデシルアルコール、イソステアリルアルコール、イソテトラコサノール等の1価の脂肪族アルコール等が挙げられる。
【0032】
アルキレンオキサイドを付加した化合物が用いられる場合、アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の炭素数2~4のアルキレンオキサイドが挙げられる。高級アルコール1モルに対するアルキレンオキサイドの付加モル数は、好ましくは1~100モル、より好ましくは1~50モル、さらに好ましくは1~30モルである。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における脂肪族アルコール1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。
【0033】
これらのヒドロキシ化合物は、一種類のヒドロキシ化合物を単独で使用してもよいし、又は二種以上のヒドロキシ化合物を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、平滑剤(A)、天然由来成分(B)、及びヒドロキシ化合物(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、天然由来成分(B)を0.1~30質量部の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、本発明の効果をより向上させる。
【0034】
処理剤中において、平滑剤(A)、天然由来成分(B)、及びヒドロキシ化合物(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、平滑剤(A)を60~99.8質量部、天然由来成分(B)を0.1~20質量部、及びヒドロキシ化合物(C)を0.1~20質量部の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、本発明の効果をより向上させる。
【0035】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る弾性繊維を具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態の弾性繊維は、第1実施形態の処理剤が付着している弾性繊維である。弾性繊維に対する第1実施形態の処理剤(溶媒を含まない)の付着量は、特に制限はないが、本発明の効果をより向上させる観点から0.1~10質量%の割合で付着していることが好ましい。
【0036】
弾性繊維としては、特に制限はないが、例えばポリエステル系弾性繊維、ポリアミド系弾性繊維、ポリオレフィン系弾性繊維、ポリウレタン系弾性繊維等が挙げられる。これらの中でもポリウレタン系弾性繊維が好ましい。かかる場合に本発明の効果の発現をより高くすることができる。
【0037】
本実施形態の弾性繊維の製造方法は、第1実施形態の処理剤を弾性繊維に給油することにより得られる。処理剤の給油方法としては、希釈することなくニート給油法により、弾性繊維の紡糸工程において弾性繊維に付着させる方法が好ましい。付着方法としては、例えばローラー給油法、ガイド給油法、スプレー給油法等の公知の方法が適用できる。給油ローラーは、通常口金から巻き取りトラバースまでの間に位置することが一般的であり本実施形態の製造方法にも適用できる。これらの中でも延伸ローラーと延伸ローラーの間に位置する給油ローラーにて第1実施形態の処理剤を弾性繊維、例えばポリウレタン系弾性繊維に付着させることが効果の発現が顕著であるため好ましい。
【0038】
本実施形態に適用される弾性繊維自体の製造方法は、特に限定されず、公知の方法で製造が可能である。例えば湿式紡糸法、溶融紡糸法、乾式紡糸法等が挙げられる。これらの中でも、弾性繊維の品質及び製造効率が優れる観点から乾式紡糸法が好ましく適用される。
【0039】
本実施形態の処理剤及び弾性繊維の作用及び効果について説明する。
(1)本実施形態の処理剤では、鉱物油、シリコーン油、及びエステル油から選ばれる少なくとも1つの平滑剤(A)、並びにロジン、ロジン誘導体、テルペン樹脂、及びテルペン樹脂誘導体から選ばれる少なくとも1つの天然由来成分(B)を配合して構成した。したがって、処理剤が付与された弾性繊維について、特にワインダーで巻き取る際、処理剤の飛散抑制効果を向上できる。また、処理剤が付与された弾性繊維の形状特性、特にチーズ形状に巻き取った際、形状特性を向上させる。また、処理剤が付与された弾性繊維の綾落ち防止性を向上させる。
【0040】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態の処理剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤の品質保持のための安定化剤、制電剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常処理剤に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【実施例0041】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0042】
試験区分1(弾性繊維用処理剤の調製)
各実施例、各比較例に用いた処理剤は、表1に示される各成分を使用し、下記調製方法により調製した。
【0043】
鉱物油(40℃におけるレッドウッド粘度計での粘度が60秒)(A-1)55部(%)及びジメチルシリコーン(10cst(mm2/s)、25℃)(A-3)30部(%)と、天然由来成分として重合ロジン樹脂(B-1)7部(%)、ヒドロキシ化合物としてイソステアリルアルコール(C-1)を8部(%)とをよく混合して均一にすることで実施例1の処理剤を調製した。
【0044】
実施例2~22、比較例1,2は、実施例1と同様にして平滑剤、天然由来成分、及びヒドロキシ化合物を表1に示した割合で混合することで処理剤を調製した。
各例の処理剤中における平滑剤(A)、天然由来成分(B)、及びヒドロキシ化合物(C)の各成分の種類、各成分の含有割合の合計を100%とした場合における各成分の比率を、表1の「平滑剤(A)」欄、「天然由来成分(B)」欄、「ヒドロキシ化合物(C)」欄にそれぞれ示す。
【0045】
【表1】
表1の区分欄に記載するA-1~4、B-1~8、C-1,2の詳細は以下のとおりである。
【0046】
(平滑剤(A))
A-1:鉱物油(40℃におけるレッドウッド粘度計での粘度が60秒)
A-2:鉱物油(40℃におけるレッドウッド粘度計での粘度が100秒)
A-3:ジメチルシリコーン(10cst(mm2/s)、25℃)
A-4:イソトリデシルステアラート
(天然由来成分(B))
B-1:重合ロジン樹脂(荒川化学工業社製「ペンセルD-160」、軟化点:160℃)
B-2:重合ロジン樹脂(荒川化学工業社製「ペンセルD-135」、軟化点:135℃)
B-3:ロジンエステル樹脂(荒川化学工業社製「スーパーエステルA-75」、軟化点:75℃)
B-4:ロジンエステル樹脂(荒川化学工業社製「スーパーエステルA-100」、軟化点:100℃)
B-5:ロジンエステル樹脂(荒川化学工業社製「スーパーエステルA-125」、軟化点:125℃)
B-6:液状ロジン誘導体(荒川化学工業社製「パインクリスタルМE-GH」、粘度(40℃):830mPa・s)
B-7:テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル社製「YSポリスターT-130」、軟化点:130℃)
B-8:テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル社製「YSポリスターT-100」、軟化点:100℃)
(ヒドロキシ化合物(C))
C-1:イソステアリルアルコール
C-2:イソトリデシルアルコールのエチレンオキサイド3モル付加物
試験区分2(弾性繊維の製造)
分子量1000のポリテトラメチレングリコールとジフェニルメタンジイソシアネートとから得たプレポリマーをジメチルホルムアミド溶液中にてエチレンジアミンにより鎖伸長反応させ、濃度30%の紡糸ドープを得た。この紡糸ドープを紡糸口金から加熱ガス流中において乾式紡糸した。乾式紡糸したポリウレタン系弾性繊維に、試験区分1で調製した処理剤をローラーオイリング法でニート給油した。引き続いて、処理剤を付与したポリウレタン系弾性繊維をパッケージに巻き取り、20デニール(モノフィラメント)の処理済みポリウレタン系弾性繊維を得た。処理剤の付着量の調節は、給油ローラーの回転数を調整することで何れも5%となるように行った。
【0047】
こうして得られた弾性繊維、ローラー給油した乾式紡糸ポリウレタン系弾性繊維のパッケージを用いて、飛散抑制効果、弾性繊維の形状特性、綾落ち防止性について評価した。結果を表1の「飛散」欄、「形状」欄、「綾落ち防止性」欄に示す。
【0048】
試験区分3(弾性繊維の評価)
・飛散抑制効果
得られた紡糸直後の乾式紡糸ポリウレタン系弾性繊維パッケージ(500g巻き)を送り出し100m/分、巻き取り250m/分で30分巻き取った場合のワインダー付近で認められる処理剤の飛散量を目視で観察した。飛散量の観察は、ワインダーの下に厚紙を敷き、厚紙に付着した処理剤を観察することにより行った。以下の基準で評価した。
【0049】
◎(良好):飛散が認められない場合
〇(可):僅かに飛散が認められた場合
×(不良):かなりの飛散が認められた場合
・形状特性の評価
20デニール(モノフィラメント)のポリウレタン系弾性繊維に試験区分1で調製した処理剤をローラー給油法で5.0%付着させた。そして、巻き取り速度550m/分で、長さ57mmの円筒状紙管に、巻き幅42mmを与えるトラバースガイドを介して、サーフェイスドライブの巻取機を用いて500g巻き取り、ポリウレタン系弾性繊維のパッケージを得た。
【0050】
得られたポリウレタン系弾性繊維パッケージ(500g巻き)について、捲き幅の最大値(Wmax)と最小幅(Wmin)を計測し、双方の差(Wmax-Wmin)からバルジを求め、下記の基準で評価した。
【0051】
◎(良好):バルジが3mm未満の場合
○(可):バルジが3mm以上且つ6mm未満の場合
×(不可):バルジが6mm以上の場合
・綾落ち防止性の評価
得られた紡糸直後の乾式紡糸ポリウレタン系弾性繊維パッケージ(500g巻き)を送り出し20m/分、巻き取り40m/分で1000m巻き取った場合のパッケージの綾落ちによる断糸の回数を次の基準で評価した。
【0052】
◎(良好):綾落ちによる断糸が0回である場合
○(可):綾落ちによる断糸が1回以上且つ3回未満である場合
×(不良):綾落ちによる断糸が3回以上である場合
表1の各比較例に対する各実施例の評価結果からも明らかなように、本発明の処理剤によると、処理剤が付与された弾性繊維からの処理剤の飛散を抑制できる。また、形状特性及び綾落ち防止性を向上することができる。
【手続補正書】
【提出日】2020-12-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱物油、シリコーン油、及びエステル油から選ばれる少なくとも1つの平滑剤(A)、並びに、テルペン樹脂及びテルペン樹脂誘導体から選ばれる少なくとも1つの天然由来成分(B)を含有することを特徴とする弾性繊維用処理剤。
【請求項2】
前記平滑剤(A)が鉱物油を含み、前記平滑剤(A)中の鉱物油の含有割合が55~95質量%である請求項1に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項3】
鉱物油、シリコーン油、及びエステル油から選ばれる少なくとも1つの平滑剤(A)、並びに、ロジン及びロジン誘導体から選ばれる少なくとも1つの天然由来成分(B)を含有し、前記平滑剤(A)が鉱物油を含み、前記平滑剤(A)中の鉱物油の含有割合が33.3質量%以上であることを特徴とする弾性繊維用処理剤。
【請求項4】
前記平滑剤(A)中の鉱物油の含有割合が55~95質量%である請求項3に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項5】
前記平滑剤(A)及び前記天然由来成分(B)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記天然由来成分(B)を0.1~30質量部の割合で含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項6】
更に、炭素数12~24の脂肪族アルコール、及び炭素数12~24の脂肪族アルコール1モルに対し、炭素数2~4のアルキレンオキサイドを1~100モルの割合で付加させた高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる少なくとも1つのヒドロキシ化合物(C)を含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項7】
前記平滑剤(A)、前記天然由来成分(B)、及びヒドロキシ化合物(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記天然由来成分(B)を0.1~30質量部の割合で含有する請求項6に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の弾性繊維用処理剤が付着していることを特徴とする弾性繊維。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の天然由来成分を含有する弾性繊維用処理剤及びかかる弾性繊維用処理剤が付着している弾性繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばポリウレタン系弾性繊維等の弾性繊維は、他の合成繊維に比べて、繊維間の粘着性が強い。そのため、例えば弾性繊維を紡糸し、パッケージに巻き取った後、該パッケージから引き出して加工工程に供する際、パッケージから安定して解舒することが困難という問題があった。そのために、従来より弾性繊維の平滑性を向上させるため、炭化水素油等の平滑剤を含有する弾性繊維用処理剤が使用されることがある。
【0003】
従来、特許文献1に開示される弾性繊維用処理剤が知られている。特許文献1は、シリコーン油等のベース成分と、2族元素金属の二価カチオンの酸性リン酸エステル塩とを所定の比率で含有するポリウレタン弾性繊維用処理剤について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、弾性繊維用処理剤が付与された弾性繊維について、ワインダーで巻き取る際、処理剤の飛散抑制効果のさらなる向上が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、弾性繊維用処理剤において、所定の平滑剤(A)と、ロジン、ロジン誘導体、テルペン樹脂、及びテルペン樹脂誘導体から選ばれる少なくとも1つの天然由来成分(B)を配合した構成が好適であることを見出した。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様の弾性繊維用処理剤では、鉱物油、シリコーン油、及びエステル油から選ばれる少なくとも1つの平滑剤(A)、並びに、テルペン樹脂及びテルペン樹脂誘導体から選ばれる少なくとも1つの天然由来成分(B)を含有することを特徴とする。
上記弾性繊維用処理剤において、前記平滑剤(A)が鉱物油を含み、前記平滑剤(A)中の鉱物油の含有割合が55~95質量%であることが好ましい。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の弾性繊維用処理剤では、鉱物油、シリコーン油、及びエステル油から選ばれる少なくとも1つの平滑剤(A)、並びに、ロジン及びロジン誘導体から選ばれる少なくとも1つの天然由来成分(B)を含有し、前記平滑剤(A)が鉱物油を含み、前記平滑剤(A)中の鉱物油の含有割合が33.3質量%以上であることを特徴とする。
上記弾性繊維用処理剤において、前記平滑剤(A)中の鉱物油の含有割合が55~95質量%であることが好ましい。
【0009】
上記弾性繊維用処理剤において、前記平滑剤(A)及び前記天然由来成分(B)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記天然由来成分(B)を0.1~30質量部の割合で含有することが好ましい。
【0010】
上記弾性繊維用処理剤において、更に、炭素数12~24の脂肪族アルコール、及び炭素数12~24の脂肪族アルコール1モルに対し、炭素数2~4のアルキレンオキサイドを1~100モルの割合で付加させた高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる少なくとも1つのヒドロキシ化合物(C)を含有することが好ましい。
【0011】
上記弾性繊維用処理剤において、前記平滑剤(A)、前記天然由来成分(B)、及びヒドロキシ化合物(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記天然由来成分(B)を0.1~30質量部の割合で含有することが好ましい。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の弾性繊維では、前記弾性繊維用処理剤が付着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、飛散抑制効果を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明の弾性繊維用処理剤(以下、処理剤ともいう)を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の処理剤は、所定の平滑剤(A)及び天然由来成分(B)を含有し、さらにヒドロキシ化合物を含んでもよい。
【0015】
本実施形態の処理剤に供する平滑剤(A)としては、ベース成分として処理剤に配合され、弾性繊維に平滑性を付与する。平滑剤(A)としては、鉱物油、シリコーン油、及びエステル油が挙げられる。
【0016】
鉱物油としては、例えば、芳香族系炭化水素、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素等が挙げられる。より具体的には、例えば、スピンドル油、流動パラフィン等が挙げられる。これらの鉱物油は、粘度等によって規定される市販品を適宜採用してもよい。
【0017】
シリコーン油の具体例としては、例えばジメチルシリコーン、フェニル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アミド変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルキルアラルキル変性シリコーン、アルキルポリエーテル変性シリコーン、エステル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等が挙げられる。これらのシリコーン油は、動粘度等によって規定される市販品を適宜採用してもよい。動粘度は、適宜設定されるが、25℃における動粘度が2~100cst(mm2/s)であることが好ましい。25℃における動粘度は、JIS Z 8803に準拠して測定される。
【0018】
エステル油としては、特に制限はないが、脂肪酸とアルコールとから製造されるエステル油が挙げられる。エステル油としては、例えば後述する奇数又は偶数の炭化水素基を有する脂肪酸とアルコールとから製造されるエステル油が例示される。
【0019】
エステル油の原料である脂肪酸は、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、また、例えば高級脂肪酸であってもよく、環状のシクロ環を有する脂肪酸であってもよく、芳香族環を有する脂肪酸であってもよい。エステル油の原料であるアルコールは、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、また、例えば高級アルコールであっても、環状のシクロ環を有するアルコールであっても、芳香族環を有するアルコールであってもよい。
【0020】
エステル油の具体例としては、例えば(1)オクチルパルミタート、オレイルラウラート、オレイルオレアート、イソトリデシルステアラート、イソテトラコシルオレアート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(2)1,6-ヘキサンジオールジデカナート、グリセリントリオレアート、トリメチロールプロパントリラウラート、ペンタエリスリトールテトラオクタナート等の、脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(3)ジオレイルアゼラート、チオジプロピオン酸ジオレイル、チオジプロピオン酸ジイソセチル、チオジプロピオン酸ジイソステアリル等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族多価カルボン酸とのエステル化合物、(4)ベンジルオレアート、ベンジルラウラート等の、芳香族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(5)ビスフェノールAジラウラート等の、芳香族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との完全エステル化合物、(6)ビス2-エチルヘキシルフタラート、ジイソステアリルイソフタラート、トリオクチルトリメリタート等の、脂肪族モノアルコールと芳香族多価カルボン酸との完全エステル化合物、(7)ヤシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、ゴマ油、魚油及び牛脂等の天然油脂等が挙げられる。
【0021】
これらの平滑剤(A)は、1種の平滑剤を単独で使用してもよく、2種以上の平滑剤を組み合わせて使用してもよい。
本実施形態において、本発明の効果を阻害しない範囲内において、上記以外の平滑剤を併用してもよい。上記以外の平滑剤としては、公知のものを適宜採用してもよい。上記以外の平滑剤としては、例えばポリオレフィン等が挙げられる。
【0022】
ポリオレフィンは、平滑成分として用いられるポリ-α-オレフィンが適用される。ポリオレフィンの具体例としては、例えば1-ブテン、1-ヘキセン、1-デセン等を重合して得られるポリ-α-オレフィン等が挙げられる。ポリ-α-オレフィンは、市販品を適宜採用してもよい。
【0023】
本実施形態において、平滑剤(A)として鉱物油を含むことが好ましい。平滑剤(A)中における鉱物油の含有割合は、55~95質量%であることが好ましい。鉱物油の含有量をかかる範囲に規定することにより、形状特性をより向上させる。
【0024】
天然由来成分(B)は、ロジン、ロジン誘導体、テルペン樹脂、及びテルペン樹脂誘導体から選ばれる少なくとも1つである。これらの天然由来成分(B)は、1種の天然由来成分を単独で使用してもよく、2種以上の天然由来成分を組み合わせて使用してもよい。ロジンは、松から得られる天然樹脂であり、アビエチン酸又はその異性体の混合物を主成分とする。ロジンは、ロジン誘導体が適用されてもよい。ロジン誘導体としては、アビエチン酸又はその異性体の水素化、脱水素化、アミド化、エステル化合物、EO又はPO付加物、グリシジルエステル化合物、アクリル化ロジン、ロジン含有ジオール、部分金属塩等が挙げられる。これらのロジン又はロジン誘導体は、軟化点、粘度、平均分子量等によって規定される市販品を適宜採用してもよい。
【0025】
テルペン樹脂は、松の木、オレンジの表皮から採取されるテルペン系化合物を原料として、カチオン重合することにより得られる。テルペン樹脂は、テルペンモノマーの単独重合体であるポリテルペン樹脂の他、テルペン樹脂誘導体が適用されてもよい。テルペン樹脂誘導体としては、例えばテルペンモノマーと芳香族モノマーを共重合させた芳香族変性テルペン樹脂、テルペンモノマーとフェノール類を反応させたテルペンフェノール樹脂、水素添加して得られる水添テルペン樹脂等が挙げられる。これらのテルペン樹脂又はテルペン樹脂誘導体は、軟化点等によって規定される市販品を適宜採用してもよい。
【0026】
これらの中で、ロジン又はロジン誘導体が適用されることが好ましい。ロジン又はロジン誘導体が適用されることにより、飛散抑制効果をより向上させる。
天然由来成分(B)の具体例としては、例えば重合ロジン樹脂(荒川化学工業社製「ペンセルD-160」、軟化点(環球法):160℃)、重合ロジン樹脂(荒川化学工業社製「ペンセルD-135」、軟化点(環球法):135℃)、ロジンエステル樹脂(荒川化学工業社製「スーパーエステルA-75」、軟化点(環球法):75℃)、ロジンエステル樹脂(荒川化学工業社製「スーパーエステルA-100」、軟化点(環球法):100℃)、ロジンエステル樹脂(荒川化学工業社製「スーパーエステルA-125」、軟化点(環球法):125℃)、液状ロジン誘導体(荒川化学工業社製「パインクリスタルМE-GH」、粘度(40℃):830mPa・s)、テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル社製「YSポリスターT-130」、軟化点:130℃)、テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル社製「YSポリスターT-100」、軟化点:100℃)等が挙げられる。
【0027】
処理剤中において、平滑剤(A)及び天然由来成分(B)の含有割合の合計を100質量部とすると、天然由来成分(B)を0.1~30質量部の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、本発明の効果をより向上させる。
【0028】
処理剤中において、平滑剤(A)及び天然由来成分(B)の含有割合の合計を100質量部とすると、平滑剤(A)を80~99.9質量部、及び天然由来成分(B)を0.1~20質量部の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、本発明の効果をより向上させる。
【0029】
本実施形態の処理剤は、高級アルコールとして炭素数12~24の脂肪族アルコール、及び炭素数12~24の脂肪族アルコール1モルに対し、炭素数2~4のアルキレンオキサイドを1~100モルの割合で付加させた高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる少なくとも1つのヒドロキシ化合物(C)を含んでもよい。かかるヒドロキシ化合物(C)を配合することにより綾落ち防止性をより向上できる。
【0030】
炭素数12~24の脂肪族アルコールは、不飽和結合の有無について特に制限はなく、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を有するアルコールであってもよいし、環状のシクロ環を有するアルコールであってもよい。分岐鎖状の炭化水素基を有するアルコールの場合、その分岐位置は特に制限されるものではなく、例えば、α位が分岐した炭素鎖であってもよいし、β位が分岐した炭素鎖であってもよい。また、第1級アルコールであっても、第2級アルコールであってもよい。
【0031】
脂肪族アルコールの具体例としては、例えばラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、エイコサノール、ベヘニルアルコール、テトラコサノール、オレイルアルコール、12-エイコシルアルコール、ヘキサデセニルアルコール、エイコセニルアルコール、オクタデセニルアルコール、ドコシルアルコール、イソドデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、イソミリスチルアルコール、イソヘキサデシルアルコール、イソステアリルアルコール、イソテトラコサノール等の1価の脂肪族アルコール等が挙げられる。
【0032】
アルキレンオキサイドを付加した化合物が用いられる場合、アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の炭素数2~4のアルキレンオキサイドが挙げられる。高級アルコール1モルに対するアルキレンオキサイドの付加モル数は、好ましくは1~100モル、より好ましくは1~50モル、さらに好ましくは1~30モルである。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における脂肪族アルコール1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。
【0033】
これらのヒドロキシ化合物は、一種類のヒドロキシ化合物を単独で使用してもよいし、又は二種以上のヒドロキシ化合物を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、平滑剤(A)、天然由来成分(B)、及びヒドロキシ化合物(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、天然由来成分(B)を0.1~30質量部の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、本発明の効果をより向上させる。
【0034】
処理剤中において、平滑剤(A)、天然由来成分(B)、及びヒドロキシ化合物(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、平滑剤(A)を60~99.8質量部、天然由来成分(B)を0.1~20質量部、及びヒドロキシ化合物(C)を0.1~20質量部の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、本発明の効果をより向上させる。
【0035】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る弾性繊維を具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態の弾性繊維は、第1実施形態の処理剤が付着している弾性繊維である。弾性繊維に対する第1実施形態の処理剤(溶媒を含まない)の付着量は、特に制限はないが、本発明の効果をより向上させる観点から0.1~10質量%の割合で付着していることが好ましい。
【0036】
弾性繊維としては、特に制限はないが、例えばポリエステル系弾性繊維、ポリアミド系弾性繊維、ポリオレフィン系弾性繊維、ポリウレタン系弾性繊維等が挙げられる。これらの中でもポリウレタン系弾性繊維が好ましい。かかる場合に本発明の効果の発現をより高くすることができる。
【0037】
本実施形態の弾性繊維の製造方法は、第1実施形態の処理剤を弾性繊維に給油することにより得られる。処理剤の給油方法としては、希釈することなくニート給油法により、弾性繊維の紡糸工程において弾性繊維に付着させる方法が好ましい。付着方法としては、例えばローラー給油法、ガイド給油法、スプレー給油法等の公知の方法が適用できる。給油ローラーは、通常口金から巻き取りトラバースまでの間に位置することが一般的であり本実施形態の製造方法にも適用できる。これらの中でも延伸ローラーと延伸ローラーの間に位置する給油ローラーにて第1実施形態の処理剤を弾性繊維、例えばポリウレタン系弾性繊維に付着させることが効果の発現が顕著であるため好ましい。
【0038】
本実施形態に適用される弾性繊維自体の製造方法は、特に限定されず、公知の方法で製造が可能である。例えば湿式紡糸法、溶融紡糸法、乾式紡糸法等が挙げられる。これらの中でも、弾性繊維の品質及び製造効率が優れる観点から乾式紡糸法が好ましく適用される。
【0039】
本実施形態の処理剤及び弾性繊維の作用及び効果について説明する。
(1)本実施形態の処理剤では、鉱物油、シリコーン油、及びエステル油から選ばれる少なくとも1つの平滑剤(A)、並びにロジン、ロジン誘導体、テルペン樹脂、及びテルペン樹脂誘導体から選ばれる少なくとも1つの天然由来成分(B)を配合して構成した。したがって、処理剤が付与された弾性繊維について、特にワインダーで巻き取る際、処理剤の飛散抑制効果を向上できる。また、処理剤が付与された弾性繊維の形状特性、特にチーズ形状に巻き取った際、形状特性を向上させる。また、処理剤が付与された弾性繊維の綾落ち防止性を向上させる。
【0040】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態の処理剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤の品質保持のための安定化剤、制電剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常処理剤に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【実施例0041】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0042】
試験区分1(弾性繊維用処理剤の調製)
各実施例、各比較例に用いた処理剤は、表1に示される各成分を使用し、下記調製方法により調製した。
【0043】
鉱物油(40℃におけるレッドウッド粘度計での粘度が60秒)(A-1)55部(%)及びジメチルシリコーン(10cst(mm2/s)、25℃)(A-3)30部(%)と、天然由来成分として重合ロジン樹脂(B-1)7部(%)、ヒドロキシ化合物としてイソステアリルアルコール(C-1)を8部(%)とをよく混合して均一にすることで実施例1の処理剤を調製した。
【0044】
実施例2~22、比較例1,2は、実施例1と同様にして平滑剤、天然由来成分、及びヒドロキシ化合物を表1に示した割合で混合することで処理剤を調製した。
各例の処理剤中における平滑剤(A)、天然由来成分(B)、及びヒドロキシ化合物(C)の各成分の種類、各成分の含有割合の合計を100%とした場合における各成分の比率を、表1の「平滑剤(A)」欄、「天然由来成分(B)」欄、「ヒドロキシ化合物(C)」欄にそれぞれ示す。
【0045】
【表1】
表1の区分欄に記載するA-1~4、B-1~8、C-1,2の詳細は以下のとおりである。
【0046】
(平滑剤(A))
A-1:鉱物油(40℃におけるレッドウッド粘度計での粘度が60秒)
A-2:鉱物油(40℃におけるレッドウッド粘度計での粘度が100秒)
A-3:ジメチルシリコーン(10cst(mm2/s)、25℃)
A-4:イソトリデシルステアラート
(天然由来成分(B))
B-1:重合ロジン樹脂(荒川化学工業社製「ペンセルD-160」、軟化点:160℃)
B-2:重合ロジン樹脂(荒川化学工業社製「ペンセルD-135」、軟化点:135℃)
B-3:ロジンエステル樹脂(荒川化学工業社製「スーパーエステルA-75」、軟化点:75℃)
B-4:ロジンエステル樹脂(荒川化学工業社製「スーパーエステルA-100」、軟化点:100℃)
B-5:ロジンエステル樹脂(荒川化学工業社製「スーパーエステルA-125」、軟化点:125℃)
B-6:液状ロジン誘導体(荒川化学工業社製「パインクリスタルМE-GH」、粘度(40℃):830mPa・s)
B-7:テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル社製「YSポリスターT-130」、軟化点:130℃)
B-8:テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル社製「YSポリスターT-100」、軟化点:100℃)
(ヒドロキシ化合物(C))
C-1:イソステアリルアルコール
C-2:イソトリデシルアルコールのエチレンオキサイド3モル付加物
試験区分2(弾性繊維の製造)
分子量1000のポリテトラメチレングリコールとジフェニルメタンジイソシアネートとから得たプレポリマーをジメチルホルムアミド溶液中にてエチレンジアミンにより鎖伸長反応させ、濃度30%の紡糸ドープを得た。この紡糸ドープを紡糸口金から加熱ガス流中において乾式紡糸した。乾式紡糸したポリウレタン系弾性繊維に、試験区分1で調製した処理剤をローラーオイリング法でニート給油した。引き続いて、処理剤を付与したポリウレタン系弾性繊維をパッケージに巻き取り、20デニール(モノフィラメント)の処理済みポリウレタン系弾性繊維を得た。処理剤の付着量の調節は、給油ローラーの回転数を調整することで何れも5%となるように行った。
【0047】
こうして得られた弾性繊維、ローラー給油した乾式紡糸ポリウレタン系弾性繊維のパッケージを用いて、飛散抑制効果、弾性繊維の形状特性、綾落ち防止性について評価した。結果を表1の「飛散」欄、「形状」欄、「綾落ち防止性」欄に示す。
【0048】
試験区分3(弾性繊維の評価)
・飛散抑制効果
得られた紡糸直後の乾式紡糸ポリウレタン系弾性繊維パッケージ(500g巻き)を送り出し100m/分、巻き取り250m/分で30分巻き取った場合のワインダー付近で認められる処理剤の飛散量を目視で観察した。飛散量の観察は、ワインダーの下に厚紙を敷き、厚紙に付着した処理剤を観察することにより行った。以下の基準で評価した。
【0049】
◎(良好):飛散が認められない場合
〇(可):僅かに飛散が認められた場合
×(不良):かなりの飛散が認められた場合
・形状特性の評価
20デニール(モノフィラメント)のポリウレタン系弾性繊維に試験区分1で調製した処理剤をローラー給油法で5.0%付着させた。そして、巻き取り速度550m/分で、長さ57mmの円筒状紙管に、巻き幅42mmを与えるトラバースガイドを介して、サーフェイスドライブの巻取機を用いて500g巻き取り、ポリウレタン系弾性繊維のパッケージを得た。
【0050】
得られたポリウレタン系弾性繊維パッケージ(500g巻き)について、捲き幅の最大値(Wmax)と最小幅(Wmin)を計測し、双方の差(Wmax-Wmin)からバルジを求め、下記の基準で評価した。
【0051】
◎(良好):バルジが3mm未満の場合
○(可):バルジが3mm以上且つ6mm未満の場合
×(不可):バルジが6mm以上の場合
・綾落ち防止性の評価
得られた紡糸直後の乾式紡糸ポリウレタン系弾性繊維パッケージ(500g巻き)を送り出し20m/分、巻き取り40m/分で1000m巻き取った場合のパッケージの綾落ちによる断糸の回数を次の基準で評価した。
【0052】
◎(良好):綾落ちによる断糸が0回である場合
○(可):綾落ちによる断糸が1回以上且つ3回未満である場合
×(不良):綾落ちによる断糸が3回以上である場合
表1の各比較例に対する各実施例の評価結果からも明らかなように、本発明の処理剤によると、処理剤が付与された弾性繊維からの処理剤の飛散を抑制できる。また、形状特性及び綾落ち防止性を向上することができる。
鉱物油、シリコーン油、及びエステル油から選ばれる少なくとも1つの平滑剤(A)、並びに、テルペン樹脂及びテルペン樹脂誘導体から選ばれる少なくとも1つの天然由来成分(B)を含有することを特徴とする弾性繊維用処理剤。
鉱物油、シリコーン油、及びエステル油から選ばれる少なくとも1つの平滑剤(A)、並びに、ロジン及びロジン誘導体から選ばれる少なくとも1つの天然由来成分(B)を含有し、前記平滑剤(A)が鉱物油を含み、前記平滑剤(A)中の鉱物油の含有割合が59.5~95質量%であることを特徴とする弾性繊維用処理剤。
更に、炭素数12~24の脂肪族アルコール、及び炭素数12~24の脂肪族アルコール1モルに対し、炭素数2~4のアルキレンオキサイドを1~100モルの割合で付加させた高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる少なくとも1つのヒドロキシ化合物(C)を含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の弾性繊維用処理剤。
前記平滑剤(A)、前記天然由来成分(B)、及びヒドロキシ化合物(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記天然由来成分(B)を0.1~30質量部の割合で含有する請求項5に記載の弾性繊維用処理剤。
例えばポリウレタン系弾性繊維等の弾性繊維は、他の合成繊維に比べて、繊維間の粘着性が強い。そのため、例えば弾性繊維を紡糸し、パッケージに巻き取った後、該パッケージから引き出して加工工程に供する際、パッケージから安定して解舒することが困難という問題があった。そのために、従来より弾性繊維の平滑性を向上させるため、炭化水素油等の平滑剤を含有する弾性繊維用処理剤が使用されることがある。
従来、特許文献1に開示される弾性繊維用処理剤が知られている。特許文献1は、シリコーン油等のベース成分と、2族元素金属の二価カチオンの酸性リン酸エステル塩とを所定の比率で含有するポリウレタン弾性繊維用処理剤について開示する。
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、弾性繊維用処理剤において、所定の平滑剤(A)と、ロジン、ロジン誘導体、テルペン樹脂、及びテルペン樹脂誘導体から選ばれる少なくとも1つの天然由来成分(B)を配合した構成が好適であることを見出した。
上記課題を解決するために、本発明の一態様の弾性繊維用処理剤では、鉱物油、シリコーン油、及びエステル油から選ばれる少なくとも1つの平滑剤(A)、並びに、テルペン樹脂及びテルペン樹脂誘導体から選ばれる少なくとも1つの天然由来成分(B)を含有することを特徴とする。
上記弾性繊維用処理剤において、前記平滑剤(A)が鉱物油を含み、前記平滑剤(A)中の鉱物油の含有割合が55~95質量%であることが好ましい。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の弾性繊維用処理剤では、鉱物油、シリコーン油、及びエステル油から選ばれる少なくとも1つの平滑剤(A)、並びに、ロジン及びロジン誘導体から選ばれる少なくとも1つの天然由来成分(B)を含有し、前記平滑剤(A)が鉱物油を含み、前記平滑剤(A)中の鉱物油の含有割合が59.5~95質量%であることを特徴とする。
上記弾性繊維用処理剤において、前記平滑剤(A)及び前記天然由来成分(B)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記天然由来成分(B)を0.1~30質量部の割合で含有することが好ましい。
上記弾性繊維用処理剤において、更に、炭素数12~24の脂肪族アルコール、及び炭素数12~24の脂肪族アルコール1モルに対し、炭素数2~4のアルキレンオキサイドを1~100モルの割合で付加させた高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる少なくとも1つのヒドロキシ化合物(C)を含有することが好ましい。
上記弾性繊維用処理剤において、前記平滑剤(A)、前記天然由来成分(B)、及びヒドロキシ化合物(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記天然由来成分(B)を0.1~30質量部の割合で含有することが好ましい。
本実施形態の処理剤に供する平滑剤(A)としては、ベース成分として処理剤に配合され、弾性繊維に平滑性を付与する。平滑剤(A)としては、鉱物油、シリコーン油、及びエステル油が挙げられる。
鉱物油としては、例えば、芳香族系炭化水素、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素等が挙げられる。より具体的には、例えば、スピンドル油、流動パラフィン等が挙げられる。これらの鉱物油は、粘度等によって規定される市販品を適宜採用してもよい。
シリコーン油の具体例としては、例えばジメチルシリコーン、フェニル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アミド変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルキルアラルキル変性シリコーン、アルキルポリエーテル変性シリコーン、エステル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等が挙げられる。これらのシリコーン油は、動粘度等によって規定される市販品を適宜採用してもよい。動粘度は、適宜設定されるが、25℃における動粘度が2~100cst(mm2/s)であることが好ましい。25℃における動粘度は、JIS Z 8803に準拠して測定される。
エステル油としては、特に制限はないが、脂肪酸とアルコールとから製造されるエステル油が挙げられる。エステル油としては、例えば後述する奇数又は偶数の炭化水素基を有する脂肪酸とアルコールとから製造されるエステル油が例示される。
エステル油の原料である脂肪酸は、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、また、例えば高級脂肪酸であってもよく、環状のシクロ環を有する脂肪酸であってもよく、芳香族環を有する脂肪酸であってもよい。エステル油の原料であるアルコールは、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、また、例えば高級アルコールであっても、環状のシクロ環を有するアルコールであっても、芳香族環を有するアルコールであってもよい。
エステル油の具体例としては、例えば(1)オクチルパルミタート、オレイルラウラート、オレイルオレアート、イソトリデシルステアラート、イソテトラコシルオレアート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(2)1,6-ヘキサンジオールジデカナート、グリセリントリオレアート、トリメチロールプロパントリラウラート、ペンタエリスリトールテトラオクタナート等の、脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(3)ジオレイルアゼラート、チオジプロピオン酸ジオレイル、チオジプロピオン酸ジイソセチル、チオジプロピオン酸ジイソステアリル等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族多価カルボン酸とのエステル化合物、(4)ベンジルオレアート、ベンジルラウラート等の、芳香族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(5)ビスフェノールAジラウラート等の、芳香族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との完全エステル化合物、(6)ビス2-エチルヘキシルフタラート、ジイソステアリルイソフタラート、トリオクチルトリメリタート等の、脂肪族モノアルコールと芳香族多価カルボン酸との完全エステル化合物、(7)ヤシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、ゴマ油、魚油及び牛脂等の天然油脂等が挙げられる。
ポリオレフィンは、平滑成分として用いられるポリ-α-オレフィンが適用される。ポリオレフィンの具体例としては、例えば1-ブテン、1-ヘキセン、1-デセン等を重合して得られるポリ-α-オレフィン等が挙げられる。ポリ-α-オレフィンは、市販品を適宜採用してもよい。
本実施形態において、平滑剤(A)として鉱物油を含むことが好ましい。平滑剤(A)中における鉱物油の含有割合は、55~95質量%であることが好ましい。鉱物油の含有量をかかる範囲に規定することにより、形状特性をより向上させる。
天然由来成分(B)は、ロジン、ロジン誘導体、テルペン樹脂、及びテルペン樹脂誘導体から選ばれる少なくとも1つである。これらの天然由来成分(B)は、1種の天然由来成分を単独で使用してもよく、2種以上の天然由来成分を組み合わせて使用してもよい。ロジンは、松から得られる天然樹脂であり、アビエチン酸又はその異性体の混合物を主成分とする。ロジンは、ロジン誘導体が適用されてもよい。ロジン誘導体としては、アビエチン酸又はその異性体の水素化、脱水素化、アミド化、エステル化合物、EO又はPO付加物、グリシジルエステル化合物、アクリル化ロジン、ロジン含有ジオール、部分金属塩等が挙げられる。これらのロジン又はロジン誘導体は、軟化点、粘度、平均分子量等によって規定される市販品を適宜採用してもよい。
テルペン樹脂は、松の木、オレンジの表皮から採取されるテルペン系化合物を原料として、カチオン重合することにより得られる。テルペン樹脂は、テルペンモノマーの単独重合体であるポリテルペン樹脂の他、テルペン樹脂誘導体が適用されてもよい。テルペン樹脂誘導体としては、例えばテルペンモノマーと芳香族モノマーを共重合させた芳香族変性テルペン樹脂、テルペンモノマーとフェノール類を反応させたテルペンフェノール樹脂、水素添加して得られる水添テルペン樹脂等が挙げられる。これらのテルペン樹脂又はテルペン樹脂誘導体は、軟化点等によって規定される市販品を適宜採用してもよい。
処理剤中において、平滑剤(A)及び天然由来成分(B)の含有割合の合計を100質量部とすると、天然由来成分(B)を0.1~30質量部の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、本発明の効果をより向上させる。
処理剤中において、平滑剤(A)及び天然由来成分(B)の含有割合の合計を100質量部とすると、平滑剤(A)を80~99.9質量部、及び天然由来成分(B)を0.1~20質量部の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、本発明の効果をより向上させる。
本実施形態の処理剤は、高級アルコールとして炭素数12~24の脂肪族アルコール、及び炭素数12~24の脂肪族アルコール1モルに対し、炭素数2~4のアルキレンオキサイドを1~100モルの割合で付加させた高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる少なくとも1つのヒドロキシ化合物(C)を含んでもよい。かかるヒドロキシ化合物(C)を配合することにより綾落ち防止性をより向上できる。
炭素数12~24の脂肪族アルコールは、不飽和結合の有無について特に制限はなく、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を有するアルコールであってもよいし、環状のシクロ環を有するアルコールであってもよい。分岐鎖状の炭化水素基を有するアルコールの場合、その分岐位置は特に制限されるものではなく、例えば、α位が分岐した炭素鎖であってもよいし、β位が分岐した炭素鎖であってもよい。また、第1級アルコールであっても、第2級アルコールであってもよい。
脂肪族アルコールの具体例としては、例えばラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、エイコサノール、ベヘニルアルコール、テトラコサノール、オレイルアルコール、12-エイコシルアルコール、ヘキサデセニルアルコール、エイコセニルアルコール、オクタデセニルアルコール、ドコシルアルコール、イソドデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、イソミリスチルアルコール、イソヘキサデシルアルコール、イソステアリルアルコール、イソテトラコサノール等の1価の脂肪族アルコール等が挙げられる。
アルキレンオキサイドを付加した化合物が用いられる場合、アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の炭素数2~4のアルキレンオキサイドが挙げられる。高級アルコール1モルに対するアルキレンオキサイドの付加モル数は、好ましくは1~100モル、より好ましくは1~50モル、さらに好ましくは1~30モルである。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における脂肪族アルコール1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。
処理剤中において、平滑剤(A)、天然由来成分(B)、及びヒドロキシ化合物(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、平滑剤(A)を60~99.8質量部、天然由来成分(B)を0.1~20質量部、及びヒドロキシ化合物(C)を0.1~20質量部の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、本発明の効果をより向上させる。
弾性繊維としては、特に制限はないが、例えばポリエステル系弾性繊維、ポリアミド系弾性繊維、ポリオレフィン系弾性繊維、ポリウレタン系弾性繊維等が挙げられる。これらの中でもポリウレタン系弾性繊維が好ましい。かかる場合に本発明の効果の発現をより高くすることができる。
本実施形態の弾性繊維の製造方法は、第1実施形態の処理剤を弾性繊維に給油することにより得られる。処理剤の給油方法としては、希釈することなくニート給油法により、弾性繊維の紡糸工程において弾性繊維に付着させる方法が好ましい。付着方法としては、例えばローラー給油法、ガイド給油法、スプレー給油法等の公知の方法が適用できる。給油ローラーは、通常口金から巻き取りトラバースまでの間に位置することが一般的であり本実施形態の製造方法にも適用できる。これらの中でも延伸ローラーと延伸ローラーの間に位置する給油ローラーにて第1実施形態の処理剤を弾性繊維、例えばポリウレタン系弾性繊維に付着させることが効果の発現が顕著であるため好ましい。
本実施形態に適用される弾性繊維自体の製造方法は、特に限定されず、公知の方法で製造が可能である。例えば湿式紡糸法、溶融紡糸法、乾式紡糸法等が挙げられる。これらの中でも、弾性繊維の品質及び製造効率が優れる観点から乾式紡糸法が好ましく適用される。
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
こうして得られた弾性繊維、ローラー給油した乾式紡糸ポリウレタン系弾性繊維のパッケージを用いて、飛散抑制効果、弾性繊維の形状特性、綾落ち防止性について評価した。結果を表1の「飛散」欄、「形状」欄、「綾落ち防止性」欄に示す。
得られたポリウレタン系弾性繊維パッケージ(500g巻き)について、捲き幅の最大値(Wmax)と最小幅(Wmin)を計測し、双方の差(Wmax-Wmin)からバルジを求め、下記の基準で評価した。