(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052333
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】管理装置及び管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/38 20120101AFI20220328BHJP
G06Q 20/06 20120101ALI20220328BHJP
G06Q 40/06 20120101ALI20220328BHJP
【FI】
G06Q20/38 310
G06Q20/06
G06Q40/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020158655
(22)【出願日】2020-09-23
(71)【出願人】
【識別番号】519099416
【氏名又は名称】KING’S株式会社
(72)【発明者】
【氏名】玉木 秀樹
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055AA12
5L055AA71
5L055BB55
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れた資産安定性と流通性とを適切かつ産業上有利に資産に付与することができる新規かつ有用な管理装置及び管理システムを提供する。
【解決手段】第1の資産をブロックチェーン上に少なくともアドレスとともに記憶する第1の記憶手段を少なくとも有する管理装置12と、金融資産を利用できる利用者のユーザー端末11とが通信回線を介して通信可能に接続されている管理システムにおいて、管理装置12を、第1の資産とは異なる第2の資産を割り当てるための割当条件を記憶している第2の記憶手段、割当条件に基づき、第1の資産に対する第2の資産の割当量を算出する割当量算出手段及びアドレスに割当量を紐付けて記憶する第3の記憶手段として機能させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の資産をブロックチェーン上に少なくともアドレスとともに記憶する第1の記憶手段を少なくとも有する管理装置であって、
前記第1の資産に、前記第1の資産とは異なる第2の資産を割り当てるための割当条件を記憶する第2の記憶手段、
前記割当条件に基づき、前記第1の資産に対する前記第2の資産の割当量を算出する割当量算出手段、及び
前記アドレスに前記割当量を紐付けて記憶する第3の記憶手段を有していることを特徴とする管理装置。
【請求項2】
前記割当条件が、前記第1の資産あたりの前記第2の資産の割当レートを含む請求項1記載の管理装置。
【請求項3】
前記割当条件が、前記第1の資産の取引先の信用情報を含む請求項1又は2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記第1の資産が金融資産である請求項1~3のいずれかに記載の管理装置。
【請求項5】
前記金融資産がデジタル通貨又は特典である請求項4記載の管理装置。
【請求項6】
前記金融資産がデジタル通貨である請求項4記載の管理装置。
【請求項7】
前記第2の資産が実物資産である請求項1~6のいずれかに記載の管理装置。
【請求項8】
前記実物資産が動産であり、前記第3の記憶手段が、さらに前記アドレスに前記動産の倉荷証券番号を紐付けて記憶する請求項7記載の管理装置。
【請求項9】
前記第2の資産が現金預金である請求項1~8のいずれかに記載の管理装置。
【請求項10】
前記現金預金が預金であり、前記第3の記憶手段が、さらに前記アドレスに前記預金の口座番号を紐付けて記憶する請求項9記載の管理装置。
【請求項11】
第1の資産をブロックチェーン上に少なくともアドレスとともに記憶する第1の記憶手段を少なくとも有する管理装置と、前記第1の資産を利用できる利用者のユーザー端末とが通信回線を介して通信可能に接続されている管理システムであって、
前記管理装置は、
前記第1の資産に、前記第1の資産とは異なる第2の資産を割り当てるための割当条件を記憶する第2の記憶手段、
前記割当条件に基づき、前記第1の資産に対する前記第2の資産の割当量を算出する割当量算出手段、及び
前記アドレスに前記割当量を紐付けて記憶する第3の記憶手段を有していることを特徴とする管理システム。
【請求項12】
前記割当条件が、前記第1の資産あたりの前記第2の資産の割当レートを含む請求項11記載の管理システム。
【請求項13】
前記割当条件が、前記第1の資産の取引先の信用情報を含む請求項11又は12に記載の管理システム。
【請求項14】
前記第1の資産が金融資産である請求項11~13のいずれかに記載の管理システム。
【請求項15】
前記金融資産がデジタル通貨又は特典である請求項14記載の管理システム。
【請求項16】
前記金融資産がデジタル通貨である請求項14記載の管理システム。
【請求項17】
前記第2の資産が実物資産である請求項11~16のいずれかに記載の管理システム。
【請求項18】
前記実物資産が動産であり、前記第3の記憶手段が、さらに前記アドレスに前記動産の倉荷証券番号を紐付けて記憶する請求項17記載の管理システム。
【請求項19】
前記第2の資産が現金預金である請求項11~18のいずれかに記載の管理システム。
【請求項20】
前記現金預金が預金であり、前記第3の記憶手段が、さらに前記アドレスに前記預金の口座番号を紐付けて記憶する請求項19記載の管理システム。
【請求項21】
前記管理装置は、さらに、前記ユーザー端末から前記第1の資産に紐付けられている前記第2の資産の照会要求を前記管理装置が受信すると、前記管理装置は、前記第3の記憶手段から前記第1の資産に紐づけられている前記第2の資産の割当量を抽出し、前記ユーザー端末に前記割当量を送信する手段を有している請求項11~20のいずれかに記載の管理システム。
【請求項22】
前記ユーザー端末が、バーコード表示手段又はバーコード読み取り手段を有している請求項11~21のいずれかに記載の管理システム。
【請求項23】
第1の資産をブロックチェーン上に少なくともアドレスとともに記憶する第1の記憶手段を少なくとも有する管理装置を、前記第1の資産に、前記第1の資産とは異なる第2の資産を割り当てるための割当条件を記憶する第2の記憶手段、前記割当条件に基づき、前記第1の資産に対する前記第2の資産の割当量を算出する割当量算出手段、及び前記アドレスに前記割当量を紐付けて記憶する第3の記憶手段として機能させるプログラム。
【請求項24】
さらに、前記第1の資産に紐付けられている前記第2の資産の照会要求を受信すると、前記第3の記憶手段から前記第1の資産に紐づけられている前記第2の資産の割当量を抽出する手段として機能させる請求項23記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理装置、管理システム及びこれらに適用されるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、商品の購入時等において電子マネーやポイントを付与することが行われている。電子マネーやポイントは、付与する際も通常、事務手数料等が発生せず、電子マネーやポイントを付与する側、付与される側の双方にとってもメリットの大きなものとなっている。そして、近年においては、電子マネーやポイント用の専用口座を用いて金融機関の管理サーバーにてポイントと貨幣とを交換できるように構成されたシステム等も検討されており(特許文献1)、デジタル通貨として、ますます利便性等の向上が図られている。
しかしながら、利便性が向上する一方で、インサイダー取引、マネーロンダリング、詐欺及びその他のデジタル通貨の悪用等の不正使用の問題があり、また、管理負担も大きく、管理手数料を取得する必要がある等の問題もあった。そのため、デジタル通貨の利便性を損なったり、管理負担を増やしたりすることなく、これら不正使用の問題等を解決する方策が待ち望まれていた。
【0003】
ところで、デジタル通貨は、ブロックチェーン技術の進展もあり、不正使用等の問題を解決するのに有用なものとなってきているが、資産安定性に乏しく、発行総量の規制等をしても根本的な解決にはならず、依然としてハイリスク・ハイリターンの資産として利用されている。近年においては、資産安定性を向上させる目的で、例えば、資産安定性に優れた法定通貨(米ドル)に基づき、デジタル通貨(デジタルドル)を発行すること等が検討されている(特許文献2)。
しかしながら、発行にかかる法定通貨の処分等の手間やその管理負担が膨大であり、また、法定通貨からデジタル通貨を発行することそのものに貨幣の流通を妨げる等の重大な問題があり、実現性にも乏しく、結局のところ、通貨の良好な流通性を奏することが困難であり、このような方策も必ずしも満足のいくものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-9315号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2020/0151682号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた資産安定性と流通性とを適切かつ産業上有利に資産に付与することができる新規かつ有用な管理装置及び管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、第1の資産をブロックチェーン上に少なくともアドレスとともに記憶する第1の記憶手段を少なくとも有する管理装置であって、前記第1の資産に、前記第1の資産とは異なる第2の資産を割り当てるための割当条件を記憶する第2の記憶手段、前記割当条件に基づき、前記第1の資産に対する前記第2の資産の割当量を算出する割当量算出手段、及び前記アドレスに前記割当量を紐付けて記憶する第3の記憶手段を有している管理装置を用いれば、資産に対し、優れた資産安定性と流通性とを適切かつ産業上有利に付与することができることを知見し、このような管理装置及び管理システムが、上記した従来の問題を一挙に解決できることを見出した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] 第1の資産をブロックチェーン上に少なくともアドレスとともに記憶する第1の記憶手段を少なくとも有する管理装置であって、
前記第1の資産に、前記第1の資産とは異なる第2の資産を割り当てるための割当条件を記憶する第2の記憶手段、
前記割当条件に基づき、前記第1の資産に対する前記第2の資産の割当量を算出する割当量算出手段、及び
前記アドレスに前記割当量を紐付けて記憶する第3の記憶手段を有していることを特徴とする管理装置。
[2] 前記割当条件が、前記第1の資産あたりの前記第2の資産の割当レートを含む前記[1]記載の管理装置。
[3] 前記割当条件が、前記第1の資産の取引先の信用情報を含む前記[1]又は[2]に記載の管理装置。
[4] 前記第1の資産が金融資産である前記[1]~[3]のいずれかに記載の管理装置。
[5] 前記金融資産がデジタル通貨又は特典である前記[4]記載の管理装置。
[6] 前記金融資産がデジタル通貨である前記[4]記載の管理装置。
[7] 前記第2の資産が実物資産である前記[1]~[6]のいずれかに記載の管理装置。
[8] 前記実物資産が動産であり、前記第3の記憶手段が、さらに前記アドレスに前記動産の倉荷証券番号を紐付けて記憶する前記[7]記載の管理装置。
[9] 前記第2の資産が現金預金である前記[1]~[8]のいずれかに記載の管理装置。
[10] 前記現金預金が預金であり、前記第3の記憶手段が、さらに前記アドレスに前記預金の口座番号を紐付けて記憶する前記[9]記載の管理装置。
【0008】
[11] 第1の資産をブロックチェーン上に少なくともアドレスとともに記憶する第1の記憶手段を少なくとも有する管理装置と、前記第1の資産を利用できる利用者のユーザー端末とが通信回線を介して通信可能に接続されている管理システムであって、
前記管理装置は、
前記第1の資産に、前記第1の資産とは異なる第2の資産を割り当てるための割当条件を記憶する第2の記憶手段、
前記割当条件に基づき、前記第1の資産に対する前記第2の資産の割当量を算出する割当量算出手段、及び
前記アドレスに前記割当量を紐付けて記憶する第3の記憶手段を有していることを特徴とする管理システム。
[12] 前記割当条件が、前記第1の資産あたりの前記第2の資産の割当レートを含む前記[11]記載の管理システム。
[13] 前記割当条件が、前記第1の資産の取引先の信用情報を含む請求項11又は12に記載の管理システム。
[14] 前記第1の資産が金融資産である前記[11]~[13]のいずれかに記載の管理システム。
[15] 前記金融資産がデジタル通貨又は特典である前記[14]記載の管理システム。
[16] 前記金融資産がデジタル通貨である前記[14]記載の管理システム。
[17] 前記第2の資産が実物資産である前記[11]~[16]のいずれかに記載の管理システム。
[18] 前記実物資産が動産であり、前記第3の記憶手段が、さらに前記アドレスに前記動産の倉荷証券番号を紐付けて記憶する前記[17]記載の管理システム。
[19] 前記第2の資産が現金預金である前記[11]~[18]のいずれかに記載の管理システム。
[20] 前記現金預金が預金であり、前記第3の記憶手段が、さらに前記アドレスに前記預金の口座番号を紐付けて記憶する前記[19]記載の管理システム。
[21] 前記管理装置は、さらに、前記ユーザー端末から前記第1の資産に紐付けられている前記第2の資産の照会要求を前記管理装置が受信すると、前記管理装置は、前記第3の記憶手段から前記第1の資産に紐づけられている前記第2の資産の割当量を抽出し、前記ユーザー端末に前記割当量を送信する手段を有している前記[11]~[20]のいずれかに記載の管理システム。
[22] 前記ユーザー端末が、バーコード表示手段又はバーコード読み取り手段を有している前記[11]~[21]のいずれかに記載の管理システム。
【0009】
[23] 第1の資産をブロックチェーン上に少なくともアドレスとともに記憶する第1の記憶手段を少なくとも有する管理装置を、前記第1の資産に、前記第1の資産とは異なる第2の資産を割り当てるための割当条件を記憶する第2の記憶手段、前記割当条件に基づき、前記第1の資産に対する前記第2の資産の割当量を算出する割当量算出手段、及び前記アドレスに前記割当量を紐付けて記憶する第3の記憶手段として機能させるプログラム。
[24] さらに、前記第1の資産に紐付けられている前記第2の資産の照会要求を受信すると、前記第3の記憶手段から前記第1の資産に紐づけられている前記第2の資産の割当量を抽出する手段として機能させる前記[23]記載のプログラム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の管理装置及び管理システムによれば、資産に対し、優れた資産安定性と流通性とを適切かつ産業上有利に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の管理システムの好適な実施態様の一例を示す図である。
【
図2】本発明において好適に用いられる利用者情報の一例を示す図である。
【
図3】本発明において好適に用いられるデジタル通貨取引情報の一例を示す図である。
【
図4】本発明において好適に用いられる割当条件情報の一例を示す図である。
【
図5】本発明において好適に用いられる他の割当条件情報の一例を示す図である。
【
図6】本発明において好適に用いられる他の割当条件情報の一例を示す図である。
【
図7】本発明において好適に用いられる割当資産変更情報の一例を示す図である。
【
図8】本発明において好適に用いられる他の割当資産変更情報の一例を示す図である。
【
図9】本発明において好適に用いられるデジタル通貨情報の一例を示す図である。
【
図10】本発明において好適に用いられる割当資産情報の一例を示す図である。
【
図11】本発明においてユーザー端末のシステム構成の一例を、機能的ブロック図を用いて模式的に示す図である。
【
図12】本発明において好適に実施される第1の資産の発行及び第2の資産の割り当ての情報処理フローを模式的に示す図である。
【
図13】本発明において好適に実施される残高照会の情報処理フローを模式的に示す図である。
【
図14】本発明において好適に実施される送金処理の情報処理フローを模式的に示す図である。
【
図15】本発明において好適に用いられるユーザー端末に表示される送金画面の実施態様の一例を模式的に示す図である。
【
図16】本発明において好適に用いられるブロックチェーンの構成の一例を説明する図である。
【
図17】本発明において好適に用いられるブロックチェーンのトランザクションの構成の一例を説明する図である。
【
図18】本発明において好適に用いられるブロックチェーンのトランザクションのデータ構造の一例を説明する図である。
【
図19】本発明において好適に用いられるブロックチェーンのトランザクションのスクリプトの一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の管理装置は、第1の資産をブロックチェーン上に少なくともアドレスとともに記憶する第1の記憶手段を少なくとも有する管理装置であって、前記第1の資産に、前記第1の資産とは異なる第2の資産を割り当てるための割当条件を記憶する第2の記憶手段、前記割当条件に基づき、前記第1の資産に対する前記第2の資産の割当量を算出する割当量算出手段、及び前記アドレスに前記割当量を紐付けて記憶する第3の記憶手段を有していることを特長とする。
【0013】
また、前記管理装置は、前記資産を利用できる利用者のユーザー端末と通信回線を介して通信可能に接続されて、管理システムとして好適に用いられ、このような管理システムも本発明に包含される。なお、本発明の管理システムは、第1の資産をブロックチェーン上に少なくともアドレスとともに記憶する第1の記憶手段を少なくとも有する管理装置と、前記第1の資産を利用できる利用者のユーザー端末とが通信回線を介して通信可能に接続されている管理システムであって、前記管理装置は、前記第1の資産に、前記第1の資産とは異なる第2の資産を割り当てるための割当条件を記憶する第2の記憶手段、前記割当条件に基づき、前記第1の資産に対する前記第2の資産の割当量を算出する割当量算出手段、及び前記アドレスに前記割当量を紐付けて記憶する第3の記憶手段を有していることを特長とする。
【0014】
本発明においては、前記管理装置は、さらに、前記ユーザー端末から前記第1の資産に紐付けられている前記第2の資産の照会要求を前記管理装置が受信すると、前記管理装置は、前記第3の記憶手段から前記第1の資産に紐づけられている前記第2の資産の割当量を抽出し、前記ユーザー端末に前記割当量を送信する手段を有しているのが好ましい。このような好ましい範囲によれば、資産安定性をより向上させることができるのみならず、前記第1の資産の流通性をより良好なものとすることができ、さらには、前記第2の資産の利活用をより促進することができる。
【0015】
「資産」は、ブロックチェーン上に少なくともアドレスとともに記憶できる資産であれば特に限定されず、金融資産等の公知の資産であってよい。本発明においては、前記第1の資産が金融資産であるのが好ましい。
「金融資産」は、価額の多寡にかかわらず資産価値を有する資産のうち、実物資産を除いたものであって、ブロックチェーン上に少なくともアドレスとともに記憶することができるものであれば特に限定されず、公知のものであってよい。前記金融資産としては、例えば、デジタル化が可能な資産などが挙げられ、より具体的には、デジタル通貨、特典等が好適な例として挙げられる。本発明においては、前記金融資産がデジタル通貨であるのが通貨流通性をより優れたものにし、さらに、前記手段をより容易に行うことができるようになるので好ましい。
なお、「資産価値」は、例えば、価値交換媒体の単位あたりに含まれる価値(例えば、経済価値、交換価値、購買力等)の大きさを意味し、公知の価値交換媒体から常法に基づき適宜設定される価値であってよい。
【0016】
また、本発明において好適に用いられる「デジタル通貨」は、金融トランザクションを含むトランザクションに対する支払いの通貨として用いることが可能な価値の単位であれば特に限定されない。前記デジタル通貨は、通常、電子的に生成されてその中に格納される通貨であるが、法定通貨であってよく、暗号通貨であってもよい。なお、前記デジタル通貨には、ポイント、電子マネー、仮想通貨が含まれる。
【0017】
「アドレス」とは、ブロックチェーンネットワークにおいて例えば前記デジタル通貨を送受信する際に使用される英数字からなる識別子であり、公知のものであってよい。通常、前記デジタル通貨の移動元又は移動先を指定する際に用いられる。なお、前記アドレスは、秘密鍵と対応付けられているのが好ましく、秘密鍵とペアになる公開鍵から生成されるものであるのがより好ましく、秘密鍵に対応する公開鍵によって識別される暗号アドレスであるのが最も好ましい。
【0018】
また、本発明においては、前記第2の資産が、実物資産であるのが好ましい。「実物資産」は、価額の多寡にかかわらず資産価値を有する資産のうち、前記金融資産を除いたものであれば特に限定されず、公知の実物資産であってよい。前記実物資産としては、例えば動産、不動産等が挙げられる。前記動産は、前記不動産以外の資産価値のある有体物であれば特に限定されず、公知の動産であってよい。前記動産としては、例えば商品、製品、生産品、自転車、自動車、生物又は移動体等が挙げられるが、本発明においては、前記動産が貴金属若しくはその鉱物又は美術品であるのが好ましく、貴金属又はその鉱物であるのがより好ましい。前記貴金属としては、例えば、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)及びオスミウム(Os)から選ばれる1種又は2種以上の貴金属が挙げられ、本発明においては、前記貴金属として、ダイアモンドが含まれていてもよい。前記の鉱物は、前記貴金属の鉱物であれば特に限定されない。前記鉱物は、地質調査等で算出される確定埋蔵量によって特定される鉱物であってよい。本発明においては、前記貴金属が地金番号を有しているのが好ましく、前記地金番号を前記第2の資産特定情報として前記第3の記憶手段に記憶するのが資産安定性をより効率よく向上させることができるので好ましい。前記美術品としては、例えば、絵画、書道、彫刻、工芸、写真、骨とう品等が挙げられる。前記不動産としては、例えば、土地(住宅用地、事業用地、駐車場、農地、鉄道用地、ゴルフ場用地、山、島、雑種地等)、建物(一戸建て、マンション、店舗、事務所、倉庫、共同住宅)、池、河川又は沼などが挙げられる。本発明においては、前記実物資産が、不動産登記番号を有しているのが好ましい。
【0019】
また、前記実物資産が前記動産である場合には、例えば倉庫等において保管し、倉荷証券を発行して倉荷証券番号を前記第2の資産特定情報として前記第3の記憶手段に記憶するのが資産安定性をより効率よく向上させることができるので好ましい。本発明においては、前記第2の資産特定情報が2種以上の特定情報を含んでいるのが好ましく、前記地金番号と前記倉荷証券番号とを含んでいるのがより好ましい。また、前記実物資産が前記不動産である場合には、前記不動産登記番号を前記第2の資産特定情報として前記第3の記憶手段に記憶するのが資産安定性をより効率よく向上させることができるので好ましい。
【0020】
「通信回線」は、特に限定されず、通信可能であれば無線回線であっても、有線回線であってもよいが、電話網又はインターネット網を含むことが、双方向で通信が行えるので好ましい。
【0021】
「ブロックチェーン」とは、所定の通信プロトコルに従って通信する2以上の情報処理装置によって構成されたブロックチェーンに関する情報を共有するネットワーク等をいう。ブロックチェーンの好適な一例としては、P2Pネットワーク等が挙げられる。
【0022】
前記第1の記憶手段は、前記第1の資産をブロックチェーン上に少なくとも前記アドレスとともに記憶できれば特に限定されない。前記第1の記憶手段としては、例えば、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶手段が挙げられる。本発明においては、前記第1の記憶手段が、例えば
図9に示されるようなデジタル通貨情報のデータベースにて記憶する手段であるのが好ましい。なお、前記デジタル通貨情報のデータベースとしては、例えば、
図9に示すように、発行日時、発行先ユーザーID、発行先アドレス、発行量、累積発行量等を含むデータベースなどが挙げられる。また、本発明においては、前記第1の記憶手段が、例えば
図3に示されるようなデジタル通貨取引情報のデータベースにて記憶する手段を含むのも好ましい。なお、前記デジタル通貨取引情報のデータベースとしては、例えば、
図3に示すように、取引日時、ユーザーID、アドレス、取引種別、取引量、取引先アドレス等が挙げられる。このようにしてデジタル通貨取引情報をデータベースにて記憶することにより、前記第2の資産の割当量をより容易に管理することができる。
【0023】
また、前記第1の記憶手段は、前記アドレスに利用者を特定するための利用者特定情報を紐付けて記憶するのが利用者から残高照会等があった場合に、前記第1の資産のみならず、前記第2の資産の割当量残高の算出がより容易となるので好ましい。「利用者特定情報」は、前記金融資産の利用者を直接又は間接的に特定できる情報であれば特に限定されず、公知の利用者特定情報であってよい。前記利用者特定情報としては、例えば利用者ID等が挙げられる。本発明においては、前記利用者特定情報が、利用者IDとパスワードとを少なくとも含むのが好ましい。なお、前記利用者は、特に限定されず、前記第1の資産及び前記第2の資産の利用資格を有する個人又は法人であってよく、前記金融資産の所有権の有無等についても特に限定されない。
【0024】
前記第2の記憶手段は、前記アドレスに前記割当量を紐付けて記憶できれば特に限定されない。前記第3の記憶手段としては、例えば、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶手段が挙げられる。本発明においては、前記第2の記憶手段が、例えば
図4又は
図5に示されるような割当条件情報のデータベースにて記憶する手段であるのが好ましい。なお、前記割当条件情報のデータベースとしては、例えば、
図4又は
図5に示すように、更新日時、第1の資産(デジタル通貨)1単位あたりの第2の資産(貴金属又は外国預金)の割当レート、割当てにかかる手数料等を含むデータベースなどが挙げられる。本発明においては、前記第2の記憶手段が、例えば
図6に示すように、利用者ID、割当資格、割当規制、割当限度額、割当特典等を含むデータベースであってもよく、割当限度額等の割当制限内での割当てとする等の割当取引そのものに制限をかけることもできる。
【0025】
前記算出手段は、前記割当条件に基づき、前記第1の資産に対する前記第2の資産の割当量を算出できれば特に限定されない。例えば、前記割当条件が、
図4に示されるデジタル通貨1単位あたりの貴金属の割当レートである場合には、前記割当てレートが、前記第1の資産であるデジタル通貨に適用されて、デジタル通貨の価額に基づいて、第2の資産である貴金属の割当量が算出される。また、例えば、前記割当条件が、
図5に示されるデジタル通貨1単位あたりの外国預金の割当レートである場合には、前記割当レートが、前記第1の資産であるデジタル通貨に適用されて、デジタル通貨の価額に基づいて、第2の資産である外国預金の預金額が割当量として算出される。なお、本発明においては、前記算出手段とともに、割当てにかかる手数料を算出するのが好ましい。前記手数料の算出手段は特に限定されないが、例えば、
図4又は
図5に示されるように、前記割当条件とともに割当てにかかる手数料も割当条件情報として記憶しておき、前記割当量の算出とともに、前記手数料も算出すること等が挙げられる。また、例えば、前記割当条件が、
図6に示される割当資格、割当規制、割当限度額又は割当特典である場合には、前記第1の資産の利用者IDと
図6に示される割当条件に基づき、取引可能な範囲すなわち割当資格や割当特典を有しており、割当規制や割当限度額等の割当制限の範囲内で、デジタル通貨の価額に基づいて、第2の資産である貴金属の割当量が算出される。
【0026】
前記第3の記憶手段は、前記アドレスに前記割当量を紐付けて記憶できれば特に限定されない。前記第3の記憶手段としては、例えば、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶手段が挙げられる。本発明においては、前記第3の記憶手段が、例えば
図7又は
図8に示されるような割当資産変更情報のデータベースにて記憶する手段であるのが好ましい。なお、前記割当資産変更情報のデータベースとしては、例えば、
図7又は
図8に示すように、変更日時、変更先アドレス、変更元アドレス、第2の資産特定情報(地金番号及び倉荷証券番号、又は口座番号)、割当量(預金額)等を含むデータベースなどが挙げられる。
【0027】
また、本発明においては、割り当てられた第2の資産の割当資産情報を、例えば
図9に示されるように、割当資産情報のデータベースにて記憶するのが好ましい。かかる記憶手段としては、例えば、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶手段が挙げられる。前記割当資産情報のデータベースとしては、例えば、
図10に示すように、割り当て日時、割り当てユーザーID、割り当てられた第2の資産を特定するための割当資産特定情報、割当量等を含むデータベースなどが挙げられる。
【0028】
また、本発明においては、前記管理装置が、前記第1の資産及び前記第2の資産の利用者を特定する利用者特定情報に紐づけて、例えば
図2に示されるような利用者情報のデータベースにて、前記利用者が保有する前記第2の資産及びその割当量を記憶する記憶手段を有するのも好ましい。かかる記憶手段としては、例えば、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶手段が挙げられる。前記利用者情報のデータベースとしては、例えば、
図2に示すように、ユーザーID、パスワード、生年月日、郵便番号、住所、デジタル通貨残高、割当資産(割当量)等を含むデータベースなどが挙げられる。
【0029】
以下、本発明の管理システムの好適な態様をより具体的に説明するが、本発明はこれら具体例に限定されるものではない。
【0030】
図1は、前記管理システムの好適な実施態様の一例を模式的に示す。
図1の管理システムは、デジタル通貨を利用できる利用者のユーザー端末11と、前記管理装置(管理サーバー)12とがブロックチェーン19を含むネットワーク(通信回線)18を介してそれぞれ通信可能に接続されている。
【0031】
図1の管理装置(管理サーバー)12は、利用者情報、デジタル通貨取引情報、割当条件情報、割当資産変更情報、デジタル通貨情報、割当資産情報等を記憶手段にそれぞれ記憶している。
【0032】
前記利用者情報としては、例えば
図2に示されるデータベース等が挙げられる。
図2の利用者情報は、ユーザーID毎に、パスワード、生年月日、住所及びその郵便番号、デジタル通貨残高又は割当資産(割当量)等が紐づけられている。なお、前記利用者としては、個人又は法人等が挙げられる。
【0033】
前記デジタル通貨取引情報としては、例えば
図3に示されるデータベース等が挙げられる。
図3のデジタル通貨取引情報は、取引日時毎に、ユーザーID、アドレス、取引種別、取引量又は取引先アドレス等が紐づけられている。
【0034】
前記割当条件情報としては、例えば
図4、
図5又は
図6に示されるデータベース等が挙げられる。
図4の割当条件情報は、更新日時毎に、デジタル通貨1単位あたりの貴金属の割当レート、手数料等が紐付けられている。前記のデジタル通貨1単位あたりの貴金属割当レートは、固定レートであってもよいし、変動レートであってもよい。デジタル通貨1単位あたりでなくてもよく、任意の単位あたりのレートであってもよい。また、例えば、貴金属取引所の法定通貨との交換レートに、任意の割当係数と前記デジタル通貨の為替レートとを乗じて算出されるレートを割当レートとして適用してもよい。また、前記割当レートが更新された場合には、
図4の割当条件情報のデータベースのとおり、更新日時とともに、更新された割当レートと手数料等が記憶される。更新日時は特に限定されず、一定期間毎に更新されてもよいし、割当レートが更新される毎に更新されるようにしてもよい。また、過去の割当レートについては、記憶するのが好ましいが、削除してもよく、例えば、一定期間経過後の割当レートについては削除するようにしてもよい。
【0035】
図5の割当条件情報は、更新日時毎に、デジタル通貨1単位あたりの外国預金の割当レート、手数料等が紐付けられている。前記のデジタル通貨1単位あたりの外国預金割当レートは、固定レートであってもよいし、変動レートであってもよい。デジタル通貨1単位あたりでなくてもよく、任意の単位あたりのレートであってもよい。また、例えば、外国預金の外国為替レートに、割当係数を乗じて算出されるレートを割当レートとして適用してもよい。また、前記割当レートが更新された場合には、
図5の割当条件情報のデータベースのとおり、更新日時とともに、更新された割当レートと手数料等が記憶される。更新日時は特に限定されず、一定期間毎に更新されてもよいし、割当レートが更新される毎に更新されるようにしてもよい。また、過去の割当レートについては、記憶するのが好ましいが、削除してもよく、例えば、一定期間経過後の割当レートについては削除するようにしてもよい。
【0036】
図6の割当条件情報は、利用者ID毎に、割当資格、割当規制、割当限度額又は割当特典等が紐付けられている。前記割当資格は、利用者IDを有する各個人や法人等の信用情報に基づいて設定されてもよい。前記割当規制は、特に限定されないが、時期的な規制(例えば有効期間等)や地域的な規制(例えば所定の国に限定する等)などであってよく、割当資産等の用途制限などであってもよい。前記割当限度額は、特に限定されないが、前記信用情報に基づいて設定される限度額等であってよい。また、前記割当特典は、ポイントの付与や商品・サービスの割引等が好適な例として挙げられる。
【0037】
前記割当資産変更情報としては、例えば
図7又は
図8に示されるデータベース等が挙げられる。
図7の割当資産変更情報は、変更日時毎に、変更先アドレス、変更元アドレス、地金番号又は倉荷証券番号等が紐づけられている。
図8の割当資産変更情報は、変更日時毎に、変更先アドレス、変更元アドレス、口座番号又は預金額(割当量)等が紐づけられている。
【0038】
前記デジタル通貨情報としては、例えば
図9に示されるデータベース等が挙げられる。
図9のデジタル通貨情報は、発行日時毎に、発行先ユーザーID、発行先アドレス、発行量、累積発行量等が紐づけられている。
【0039】
前記割当資産情報としては、例えば
図10に示されるデータベース等が挙げられる。
図10の割当資産情報は、割り当て日時毎に、割り当てユーザーID、割当資産特定情報又は割当量等が紐づけられている。
【0040】
ユーザー端末11は、管理サーバー12と通信回線を介して通信可能に接続される端末であって、ユーザー端末11から前記第1の資産に割り当てられている前記第2の資産の照会要求を管理サーバー12が受信すると、管理サーバー12は、前記第3の記憶手段から前記割当量を抽出し、ユーザー端末11に前記割当量を含む前記第2の資産の資産情報を送信する手段を有しているのが好ましい。
【0041】
前記ユーザー端末11としては、例えば
図11に示すように、記憶部1101、処理部1102、入力部1103、出力部1104、表示部1105及び通信部1106を含んで構成されるもの等が好適な例として挙げられる。すなわち、前記ユーザー端末11は、サーバーやコンピュータの基本構成を備えていれば特に限定されず、例えば、利用者が法人である場合には、店舗又は営業店の管理サーバー、券売機又は金銭登録機等とすることもできる。本発明においては、前記ユーザー端末11が、管理サーバー12からブロックチェーン19のデータを部分的に受信して処理を行うSPVクライアントとして機能するのが好ましい。
【0042】
図11において、処理部1102は、CPU等の演算処理を行う手段を含む。処理部1102は、記憶部1101に記憶されている情報処理プログラム等を実行することによって、本実施の形態における情報処理を行う。記憶部1101は、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶手段を含む。記憶部1101は、処理部1102とアクセス可能に接続され、各種処理に供されるデータ等を記憶する。入力部1103は、ユーザー端末11に情報を入力する手段を含む。入力部1103は、例えば、利用者から入力を受けるタッチパネルやキーボードを備える。また、入力部1103は、外部から情報を受け取るネットワークインターフェース等を含み、処理に供されるデータを受信する。出力部1104は、決済端末11で処理された情報を出力する手段を含む。出力部1104は、例えば、管理者に対して画像を呈示するディスプレイを備える。また、出力部1104は、通信回線18を介して、ユーザー端末11の外部へ情報等を送信するネットワークインターフェース等を含む。表示部1105は例えば、液晶ディスプレイ、ディスプレイパネルなどのディスプレイデバイスである。入力部1103と表示部1105とは、別体であってもよいし、一体化されたタッチパネルとして構成されてもよい。通信部1106は、例えば、通信インタフェースである。
【0043】
図12は、
図1の管理システムにおいて好適に実施される情報処理フローの一例を模式的に示す図である。かかる情報処理は、例えば
図11に示されるユーザー端末11の各機能が、CPUにて所定のプログラムを実行されることにより実行される。なお、管理装置12は、ユーザー端末11と各機能が同様であってよい。
利用者は、デジタル通貨を購入するため、ユーザー端末11から管理装置12にログイン認証を行う。具体的には、利用者はユーザー端末11を用いて、ユーザーID及びパスワード等からなるユーザー認証情報を管理装置12に送信する(S101)。管理装置12は、デジタル通貨の発行者によって直接又は他の業者等を介して管理運用されており、デジタル通貨情報を管理している。管理装置12は、ユーザー端末11からユーザー認証情報を受信すると、記憶している前記利用者情報を用いて認証確認を行う(S102)。認証確認の完了後、管理装置12は、認証確認結果をユーザー端末11に送信する(S103)。なお、ユーザー認証情報が、記憶している前記利用者情報と整合しない場合には、管理装置12は、認証確認においてエラーが生じたことを示すエラー情報をユーザー端末11に送信する。
【0044】
ユーザー端末11は、管理装置12から認証確認結果を受信すると、デジタル通貨購入画面を表示する(S104)。利用者は、デジタル通貨購入画面からデジタル通貨の購入分の数量等を指定して購入要求を利用者端末11を用いて、管理装置12に送信する(S105)。管理装置12は、ユーザー端末11から購入要求を受信すると、利用者の購入要求に基づいてデジタル通貨発行処理を行う(S106)。また、管理装置12は、発行するデジタル通貨の資産価値と数量から、発行分の価値を算出し、前記割当条件に基づいて、かかる価値と等価となるように割当量を算出し、算出された実物資産(例えば金)又は預金(例えば外国預金)の割当量を、発行したデジタル通貨に割り当てる(S107)。なお、資産価値の評価には、交換レートではなく、例えば貴金属交換所の貴金属換算レート等を用いて、法定通貨ベースで行ってもよい。また、前記第2の資産は、デジタル通貨の発行者の所有物であってもよいし、なくてもよい。前記第2の資産がデジタル通貨の発行者の所有物でない場合には、予め、前記の割り当てに関する包括契約を締結し、業務委託等でもって前記の割り当てを行えるようにしておくのが好ましい。管理装置12は、ユーザー端末11に、デジタル通貨発行完了及び前記第2の資産の割り当て完了を送信する(S108)。なお、前記実物資産の割当ては、例えば前記実物資産情報に記憶されることにより行われる。また、管理装置12は、利用者の決済サーバー(図示せず)にデジタル通貨発行にかかる費用の決済要求を送信する(S109)。なお、このときに、前記割当てにかかる手数料を合わせて決済要求してもよい。決済事業者の前記決済サーバーは、例えば金融機関の決済サーバーであり、管理装置12やユーザー端末11と通信回線18を介して通信可能に接続されている。前記決済サーバーは、管理装置12から決済要求を受信すると、利用者との契約等に基づいて決済処理に付す(S110)。かかる決済処理は常法に基づき実施され得る。決済処理が完了した後、前記決済サーバーは、管理装置12に対し、決済処理結果を送信し(S111)、また、ユーザー端末11に対しても決済処理結果を送信する(S112)。
上記のようにして前記デジタル通貨を発行することにより、第2の資産の利活用を促進し、さらに、流通性を良好なものとするのみならず、前記第1の資産の資産安定性を優れたものにすることができる。
【0045】
図13は、
図1の管理システムにおいて好適に実施される情報処理フローの一例を模式的に示す図である。
利用者は、デジタル通貨等の残高照会するため、ユーザー端末11を用いて、ユーザーID及びパスワード等からなるユーザー認証情報を管理装置12に送信する(S201)。管理装置12は、ユーザー端末11からユーザー認証情報を受信すると、記憶している前記利用者情報を用いて認証確認を行う(S202)。認証確認の完了後、管理装置12は、認証確認結果をユーザー端末11に送信する(S203)。なお、ユーザー認証情報が、記憶している前記利用者情報と整合しない場合には、管理装置12は、認証確認においてエラーが生じたことを示すエラー情報をユーザー端末11に送信する。
管理装置12から認証確認結果を受信した後、ユーザー端末11から管理装置12に残高照会を送信する(S204)。管理装置12は、認証確認したユーザー端末11から残高照会を受信すると、利用者のデジタル通貨の残高を前記データベースから算出し(S205)、また、利用者に割り当てられている前記実物資産又は前記外国預金の割当量の累計を算出し(S206)、算出されたデジタル通貨の残高と前記割当量の累計とを照会結果としてユーザー端末11に送信する(S207)。
【0046】
図14は、
図1の管理システムにおいて好適に実施される情報処理フローの一例を模式的に示す図である。
利用者は、デジタル通貨にて支払うため、ユーザー端末11を用いて、ユーザーID及びパスワード等からなるユーザー認証情報を管理装置12に送信する(S301)。管理装置12は、ユーザー端末11からユーザー認証情報を受信すると、記憶している前記利用者情報を用いて認証確認を行う(S302)。認証確認の完了後、管理装置12は、認証確認結果をユーザー端末11に送信する(S303)。なお、ユーザー認証情報が、記憶している前記利用者情報と整合しない場合には、管理装置12は、認証確認においてエラーが生じたことを示すエラー情報をユーザー端末11に送信する。
【0047】
管理装置12から認証確認結果を受信した後、ユーザー端末11は、デジタル通貨送金画面を利用者に表示する(S304)。デジタル通貨送金画面としては、例えば
図15に示すような画面等が好適な例として挙げられる。利用者は、ユーザー端末11を用いて、送金先アドレス及びデジタル通貨の金額等を指定し、送金処理を行うことにより、管理装置12に送金処理情報が送信される(S305)。管理装置12は、ユーザー端末11から送金処理情報を受信すると、前記送金処理情報の送金処理によって、割当条件が満たさなくなるのか否かをチェックする(S306)。チェック後、前記送金処理が割当条件を満たす場合には、前記送金処理情報の送金先アドレス及びデジタル通貨の金額等に基づき、前記実物資産又は外国預金の割り当て先を更新し(S307)、利用者の旧アドレスのデジタル通貨の残高及び割り当てられていた実物資産又は外国預金の割当量の減算処理を行い(S308)、送金先の新アドレスのデジタル通貨の残高及び前記実物資産の割当量の加算処理を行う(S309)。管理装置12は、送金処理が完了すると、送金処理結果をユーザー端末11に送信する(S310)。なお、本発明においては、前記加算処理又は減算処理に基づき、前記実物資産又は外国預金の所有者が証券を発行してもよい。また、前記送金処理が割当条件を満たさない場合には、管理装置12は、エラー情報をユーザー端末11に送信する(S311)。なお、本発明においては、前記送金処理が割当条件を満たさない場合であっても、前記割当量等を変更すれば前記割当条件を満たすのであれば、管理装置12は、前記送金処理の割当量が変更される旨の通知と確認とを割当変更確認としてユーザー端末11に送信してもよい(S311)。管理装置12からユーザー端末11が割当変更確認を受信した後、前記割当量の変更が許容できるのであれば、ユーザー端末11から割当変更確認完了が管理装置12に送信される(S312)。管理装置12は、ユーザー端末11から割当変更確認完了を受信すると、前記割当条件を満たしたとして、前記割当変更に基づき、前記と同様に、前記実物資産又は外国預金の割り当て先を更新し(S307)、利用者の旧アドレスのデジタル通貨の残高及び割り当てられていた実物資産又は外国預金の割当量の減算処理を行い(S308)、送金先の新アドレスのデジタル通貨の残高及び前記実物資産の割当量の加算処理を行う(S309)。
【0048】
図15のデジタル通貨送金画面についてより具体的に説明する。
図11のデジタル通貨送金画面では、デジタル通貨残高51が前記実物資産又は外国預金の割当量52とともに表示されている。そして、利用者が送金先アドレス及びデジタル通貨の金額等を指定する処理を、支払先のユーザー端末でもって省略できるようにバーコード53が表示されている。バーコード53は、支払先のユーザー端末が読み取ることにより、支払元のアドレス等が暗号化されており、デジタル通貨での支払い処理が実行されるように構成されている。このように構成することで、本発明の流通性をより優れたものとすることができる。なお、前記バーコードは、二次元バーコード等であってもよい。また、
図15のデジタル通貨送金画面では、二次元バーコード読取部54が表示されている。二次元バーコード読取部54のボタンを押下げることにより、二次元バーコードを読み取るスキャナーを作動することができるように構成されており、二次元バーコードをスキャナーで読み取ることにより、送金先のアドレス及び送金金額等を自動的に指定できるように構成されている。このように構成することにより、本発明の流通性をより優れたものとすることができる。また、本発明においては、送金処理に関わらず、前記した残高照会等についても同様にバーコードや二次元バーコード読取部等を利用することができる。そのため、本発明においては、前記ユーザー端末が、バーコード表示手段又はバーコード読み取り手段を有しているのが好ましい。
【0049】
ここで、前記第1の資産として前記金融資産(好ましくはデジタル通貨)を用いる場合を例として、本発明において好適に用いられるブロックチェーンについてより具体的に説明する。本発明においては、前記ブロックチェーンにおけるブロックは、前記金融資産(好ましくはデジタル通貨)に関する情報を含む取引データベースとして機能する。具体的には、各ブロックは、ダイジェストデータ及び取引に関する情報であるトランザクションのリストを含む。ダイジェストデータは、1つ前のブロックから算出された新たなハッシュ値を含む。すなわち、
図16に示すように、ブロックが1つ前のブロックに含まれる情報から算出されたハッシュ値を含むことによって、各ブロックがチェーンのように繋がった状態で取引データベース(ブロックチェーン)として記憶される。取引履歴データベースは、管理サーバーのみにて管理されるのではなく、ユーザー端末11等においても検証及び追加される。
【0050】
トランザクションは、前記金融資産(好ましくはデジタル通貨)の交換を記録するデータである。トランザクションは、インプット情報とアウトプット情報とを含む。インプット情報は、交換元となる利用者が取引対象となるデジタル通貨の交換を受けたときのトランザクションのアウトプット情報(トランザクションを特定する識別情報(トランザクションのハッシュ値や配列番号等))と、利用者がその前記金融資産(好ましくはデジタル通貨)を所有することを証明するための情報(当該アウトプットを使用する条件を満たすスクリプト等)を含む。アウトプット情報は、交換された前記金融資産(好ましくはデジタル通貨)の種類及び数、交換先を特定するアドレスにおいて交換された前記金融資産(好ましくはデジタル通貨)を使用するためのスクリプト等の情報を含む。
【0051】
図17は、本発明において好適に用いられるブロックチェーンのトランザクションの構成の一例を示す。前記金融資産(好ましくはデジタル通貨)は、取引履歴、すなわち、前記金融資産(好ましくはデジタル通貨)が今まで経てきた取引のまとまりとして表現される。それぞれのトランザクション(通貨等の取引)では、前のトランザクションのハッシュ値や、新たな所有者の公開鍵を含み、元の所有者の暗号鍵によってデジタル署名されている。全てのトランザクションに関する情報は、P2Pネットワーク全体で共有される。このようにトランザクションを表現することで、元の所有者の許可なく、通貨等を本人以外が勝手に譲渡することはできず、また、第三者は、通貨の譲渡を客観的に確認できるといった利点を有する。
【0052】
図18は、本発明において好適に用いられるブロックチェーンのトランザクションのデータ構造の一例を示す。トランザクションのデータ構造は、「出力(出金する通貨)」と、「入力(入金に用いる通貨)」とを有している。送金には、相手に渡す前記金融資産(好ましくはデジタル通貨)及び宛先(アドレス)が必要であるが、それらを表現したものが出力である。自分に宛てられた通貨を使うか、又は誰かに送金するためには、過去のトランザクションの出力を参照しなければならず、それが今回のトランザクションにおける入力に相当する。一つのトランザクションにおいて、出力および入力はそれぞれ複数指定できる。任意の額の送金を行うためには、過去の自分宛のトランザクションの出力を集め、これから行う取引の入力として指定する必要がある。
【0053】
図19は、本発明において好適に用いられるブロックチェーンのトランザクションのスクリプトの一例を示す。
図19の前記金融資産(好ましくはデジタル通貨)では、スクリプトによって、入力元のアドレス及び出力元のアドレスを含むトランザクションが記述される。同図に示したトランザクションは、過去に利用者から自分宛に送金されたデジタル通貨を用いて、他の利用者宛てに所定の額面の通貨を送金することを意味している。トランザクションには、そのトランザクション固有のトランザクション識別子が付されており、通常、トランザクションのハッシュ値が用いられる。「OutputScript」には複数の出力が指定できるところ、「出力2」は、入力のデジタル署名を検証する通常の記述であるのに対し、「出力1」は、バイト配列を付加するための記述である。スクリプトでは、「OP_RETURN」というコードが用意されており、これは、一般的なプログラミングのreturnと同様、そこに来るとスクリプトをストップし、その出力の参照を許さない、とするものである。そして、「OP_RETURN」に続き、「OP_PUSHDATA」を用いてバイト配列を付加すれば、デジタル署名に悪影響を及ぼすことなく、「出力1」をバイト配列の記述欄として利用することができる。なお、「OP_PUSHDATA」を用いて付加できるバイト配列のバイト数には上限がある関係上、ファイルについてはハッシュ値を用い、テキストメッセージについては上限値を超えないことが条件となる。
【0054】
上記のように構成することで、第1の資産をブロックチェーン上に少なくともアドレスとともに記憶する第1の記憶手段を少なくとも有する管理装置を、前記第1の資産に、前記第1の資産とは異なる第2の資産を割り当てるための割当条件を記憶している第2の記憶手段、前記割当条件に基づき、前記第1の資産に対する前記第2の資産の割当量を算出する割当量算出手段、及び前記アドレスに前記割当量を紐付けて記憶する第3の記憶手段として機能させることができる。なお、本発明においては、さらに、前記第1の資産に紐付けられている前記第2の資産の照会要求を受信すると、前記第3の記憶手段から前記第1の資産に紐づけられている前記第2の資産の割当量を抽出する手段として機能させるのが好ましく、このように機能させることにより、利用者は資産安定性をより実感することができるようになり、また、前記第2の資産の利活用をより促進させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の管理装置、管理システム又はこれらに適用されるプログラムは、資産の情報処理の利活用にとりわけ有用である。
【符号の説明】
【0056】
11 ユーザー端末
12 管理装置(管理サーバー)
18 通信回線
19 ブロックチェーン
51 デジタル通貨残高
52 割当量
53 バーコード
54 二次元バーコード読取部
1101 記憶部
1102 処理部
1103 入力部
1104 出力部
1105 表示部
1106 通信部