(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052340
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】プレス成形用ワークの段積方法
(51)【国際特許分類】
B21D 43/22 20060101AFI20220328BHJP
【FI】
B21D43/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020158676
(22)【出願日】2020-09-23
(71)【出願人】
【識別番号】520200584
【氏名又は名称】株式会社キーレックス・ワイテック・インターナショナル
(71)【出願人】
【識別番号】500213915
【氏名又は名称】株式会社ワイテック
(71)【出願人】
【識別番号】590000721
【氏名又は名称】株式会社キーレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】元谷 友彦
(72)【発明者】
【氏名】春田 洋介
(57)【要約】
【課題】段差面を有する各ワークを傾かないように積み重ねて荷崩れや取出し不良が発生し難い段積体にするとともにワークの材料歩留まりを良くする。
【解決手段】突出高さがパッチワーク12の板厚と同じに設定された凸部20をパッチワークブランク10のブランク材11の外周縁部に沿って所定の間隔をあけた複数の箇所において、ブランク材11の外周縁部を含むようにブランク材11の一方の面側に変形させることにより形成した後、パッチワークブランク10を載置する。次に積み上げるパッチワークブランク10のパッチワーク12の一方の面におけるその外周縁部に沿って凸部20を先に載置したパッチワークブランク10の各凸部20とはそれぞれ異なる位置となるように複数成形した後、形成した各凸部20の突出側が既に載置したパッチワークブランク10の各凸部20の突出側と同じ側に向く姿勢で先に載置したパッチワークブランク10の上に載置する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1領域より板厚が薄くて一方の面に上記第1領域との段差面を有する第2領域が設けられたシート状をなすプレス成形用ワークを多数積み上げて段積みにするプレス成形用ワークの段積方法であって、
突出高さが上記第1領域と上記第2領域との間の板厚差と同じに設定された凸部を、上記ワークの上記第2領域の外周縁部に沿って所定の間隔をあけた複数箇所において、上記第2領域の外周縁部を含むように当該第2領域の一方の面側に変形させることにより形成した後、上記ワークを上記各凸部の突出側が上向く姿勢か、或いは、下向く姿勢で所定の位置又は先に載置されている上記ワークの上に載置し、
次に積み上げる上記ワークの上記第2領域の一方の面におけるその外周縁部に沿って上記凸部を先に載置した上記ワークの各凸部とはそれぞれ異なる位置となるように複数形成した後、形成した各凸部の突出側が既に載置した上記ワークの各凸部の突出側と同じ側に向く姿勢で先に載置した上記ワークの上に載置することを特徴とするプレス成形用ワークの段積方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプレス成形用ワークの段積方法において、
上記凸部は、上記第2領域の一部を当該第2領域の一方の面側に折り曲げることにより形成することを特徴とするプレス成形用ワークの段積方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプレス成形用ワークの段積方法において、
上記凸部は、上記第2領域に切れ込み部を形成した後、当該切れ込み部の周囲を変形させることにより形成することを特徴とするプレス成形用ワークの段積方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段差面を有するプレス成形用ワークを多数積み上げて段積みにするプレス成形用ワークの段積方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、ホットプレス成形を行う生産ラインでは、プレス成形用のワークをパレットに多数積み上げて段積体にした状態で搬入し、搬入した段積体のワークを上から順番に取り出してプレス成形機でプレス成形を行うようになっている。
【0003】
ところで、テーラードブランクの如き板厚差を有する領域によって一方の面に部分的に段差面が形成されるプレス成形用ワークの場合、そのままの状態で順に重ねていくと、板厚の薄い領域の段積み箇所と板厚の厚い領域の段積み箇所との間において段積高さに大きな差が生じてしまい、段積体の各ワークが上段に行くにつれて板厚の薄い領域側に傾いた姿勢になってしまう。そうすると、段積体が荷崩れしたり、或いは、取出し装置を用いて段積体からプレス成形機へとワークを取り出す際に失敗してしまうおそれがある。
【0004】
これを回避するために、例えば、特許文献1では、テーラードブランクの一方の面における板厚の薄い領域に張出凸部を複数形成している。該張出凸部は、張出高さがテーラードブランクの一方の面における板厚の厚い領域以上に設定された第1張出部と、該第1張出部の周りに等間隔に設けられ、平面視で十字形状をなす4つの第2張出部とを備え、各第2張出部の張出高さは、テーラードブランクの一方の面における板厚の厚い領域と同じに設定されている。そして、先に載置したテーラードブランクに対して、次に積み上げるテーラードブランクの一方の面に先に載置したテーラードブランクの各張出凸部と同じ位置となるように、且つ、先に載置したテーラードブランクの各張出凸部を平面視で第1張出部の中心線周りに45度回転させた形状となるように各張出凸部を同数成形した後、成形した各張出凸部の張出側が先に載置したテーラードブランクと同じとなる姿勢で当該テーラードブランクの上に載置して下段のテーラードブランクにおける張出凸部の各第2張出部の上に上段のテーラードブランクにおける張出凸部の各第2張出部が載るようにすることで段積体になった状態の各テーラードブランクを傾かせないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の各張出凸部の形状は、第1張出部の周りに複数の第2張出部が平面視で放射状に延びる形状をなしているので、ワークの外周縁部から離れた位置に成形しないと所望する形状を得ることができない。したがって、ワークをプレス成形してプレス成形体を得る際に当該プレス成形体の外周部分における各張出凸部を含む不必要な領域を取り除く必要があるが、その取り除く領域を広く設定しなければならなくなるので、材料歩留まりが悪くなってしまう。このことは、ブランク材の所定の位置にパッチワークを取り付けてなるパッチワークブランクの如き段差面を有するその他のワークにおいても段積みする場合に同様のことが言える。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、段差面を有する各ワークを傾かないように積み重ねて荷崩れや取出し不良が発生し難い段積体にすることができ、しかも、プレス成形時における材料歩留まりを良くすることが可能なプレス成形用ワークの段積方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、各ワークに形成する傾き防止用の各凸部の位置を、重ねるワークと重ねられるワークとにおいて異なるようにし、さらには、各凸部をワークの外周縁部に絡むような形状にしたことを特徴とする。
【0009】
具体的には、第1領域より板厚が薄くて一方の面に上記第1領域との段差面を有する第2領域が設けられたシート状をなすプレス成形用ワークを多数積み上げて段積みにするプレス成形用ワークの段積方法において、次のような解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、第1の発明では、突出高さが上記第1領域と上記第2領域との間の板厚差と同じに設定された凸部を、上記ワークの上記第2領域の外周縁部に沿って所定の間隔をあけた複数箇所において、上記第2領域の外周縁部を含むように当該第2領域の一方の面側に変形させることにより形成した後、上記ワークを上記各凸部の突出側が上向く姿勢か、或いは、下向く姿勢で所定の位置又は先に載置されている上記ワークの上に載置し、次に積み上げる上記ワークの上記第2領域の一方の面におけるその外周縁部に沿って上記凸部を先に載置した上記ワークの各凸部とはそれぞれ異なる位置となるように複数形成した後、形成した各凸部の突出側が既に載置した上記ワークの各凸部の突出側と同じ側に向く姿勢で先に載置した上記ワークの上に載置することを特徴とする。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、上記凸部は、上記第2領域の一部を当該第2領域の一方の面側に折り曲げることにより形成することを特徴とする。
【0012】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、上記凸部は、上記第2領域に切れ込み部を形成した後、当該切れ込み部の周囲を変形させることにより形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明では、各ワークを段積みした際に同じ突出高さである各凸部の頂点がワークの外周縁部において隣り合うワークの各凸部が形成されていない場所に接触するようになる。また、ワークにおける各凸部が形成されていないその他の領域においては、各凸部の頂点と同じ高さに位置する第1領域の一方の面が隣り合うワークに接するようになる。したがって、隣り合う各ワークの間隔が各凸部と第1領域とで一定に保たれるようになるので、各ワークを安定した段積み状態にすることができる。また、形成する各凸部がワークの外周縁部を含むように位置しているので、ワークをプレス成形してプレス成形品を得る際に取り除くプレス成形品の外周部分の領域を狭くすることができるようになり、材料歩留まりを良くすることができる。
【0014】
第2の発明では、各凸部を形成する際、狭い領域で所望する高さに変形させることができるようになる。したがって、ワークにおける各凸部の占有する領域を狭くすることができるようになるので、例えば、張り出して各凸部を成形するような比較的ワークの広い領域を各凸部が占有する場合に比べて材料歩留まりを良くすることができる。
【0015】
第3の発明では、各凸部を形成する際、切れ込み部によって変形させる領域が区切られるので、ワークにおける切れ込み部周りを所望の突出高さに変形させるまでに設備にかかる負荷が小さくなる。したがって、設備の故障やメンテナンスに伴う費用が嵩むのを極力回避して、コストをかけずに段積み作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態1に係るワークの段積方法が適用された生産ラインのブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態1のパッチワーク取付工程において、パッチワークをブランク材に取り付けてパッチワークブランクを形成した後、各パッチワークブランクを段積みしている状態を示す概略斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態1における2種類のパッチワークブランクの一方の平面図である。
【
図5】本発明の実施形態1における2種類のパッチワークブランクの他方の平面図である。
【
図10】本発明の実施形態2の変形例を示す図である。
【
図12】本発明の実施形態3の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0018】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1の生産ライン1を示す。該生産ライン1は、パッチワークブランク10(ワーク、
図3乃至
図6参照)を形成した後、当該パッチワークブランク10をプレス成形してプレス部品を得ることができるようになっていて、生産ライン1の上流側から順に、シート状をなす金属製ブランク材11とパッチワーク12とを得るブランキング工程S1と、ブランク材11にパッチワーク12を取り付けて複数のパッチワークブランク10を得た後、各パッチワークブランク10を段積みするパッチワーク取付工程S2と、各パッチワークブランク10をプレス成形するプレス成形工程S3とが順に配置されている。
【0019】
ブランキング工程S1は、ブランク用金型が装着されたプレス成形装置(図示せず)を備え、
図3乃至
図6に示すように、プレス成形装置を用いてコイル材から平面視で緩やかに湾曲する弓形状をなすブランク材11を得るようになっている。
【0020】
ブランク材11の長手方向一端の両側方には、外側方に膨らむとともに平面視でブランク材11の長手方向に幅広な形状をなす第1膨出縁部11a及び第2膨出縁部11bが設けられる一方、長手方向他端の一側方には、外側方に膨らむとともに平面視でブランク材11の長手方向に幅広な形状をなす第3膨出縁部11cが設けられている。
【0021】
また、ブランク材11の長手方向中途部の一側方には、外側方に膨らむとともに平面視でブランク材11の長手方向に幅広な形状をなす第4膨出縁部11dが設けられ、長手方向他端寄りの他側方には、外側方に膨らむとともに平面視でブランク材11の長手方向に幅広な形状をなす第5膨出縁部11eが設けられている。
【0022】
そして、ブランク材11の幅方向中途部には、長手方向に所定の間隔をあけて円形状をなす4つの第1~第4孔H1~H4が形成されている。
【0023】
さらに、ブランク材11の第1~第5膨出縁部11a~11eには、それぞれ2つの突出片40,50が外周縁部に沿って所定の間隔をあけて形成されている。
【0024】
ブランキング工程S1では、ブランク材11を成形する領域が2か所あり、生産ロット毎に各突出片40,50の形状がそれぞれ異なる2種類のブランク材11が形成されてそれぞれ段積みされるようになっている。尚、以下では、一方をブランク材11A(
図3及び
図4参照)と呼び、他方をブランク材11B(
図5及び
図6参照)と呼ぶことにする。
【0025】
ブランク材11Aの各第1~第5膨出縁部11a~11eにおける長手方向一端寄りに位置する突出片40は、ブランク材11Aの一方の面側に断面略L字状となるようにそれぞれ折り曲げられ、これにより、ブランク材11Aの一方の面側に突出する凸部20がそれぞれ形成されている。尚、以下では、ブランク材11Aの各第1~第5膨出縁部11a~11eに形成されている凸部20をそれぞれ凸部20A~20Eと呼ぶことにする。
【0026】
一方、ブランク材11Aの各第1~第5膨出縁部11a~11eにおける長手方向他端寄りに位置する突出片50は、折り曲げられずにブランク材11Aの外側方に突出する平坦な形状をなしている。尚、ブランク材11Aの各第1~第5膨出縁部11a~11eにおいて折り曲げていない突出片50を、以下では、平坦部50A~50Eと呼ぶことにする。
【0027】
また、ブランク材11Bの各第1~第5膨出縁部11a~11eにおける長手方向他端寄りに位置する突出片50は、ブランク材11Bの一方の面側に断面略L字状となるようにそれぞれ折り曲げられ、これにより、ブランク材11Bの一方の面側に突出する凸部20がそれぞれ形成されている。尚、以下では、ブランク材11Bの各第1~第5膨出縁部11a~11eに形成されている凸部20をそれぞれ20A’~20E’と呼ぶことにする。
【0028】
一方、ブランク材11Bの各第1~第5膨出縁部11a~11eにおける長手方向一端寄りに位置する突出片40は、折り曲げられずにブランク材11Bの外側方に突出する平坦な形状をなしている。尚、ブランク材11Bの各第1~第5膨出縁部11a~11eにおいて折り曲げていない突出片40を、以下では、平坦部40A~40Eと呼ぶことにする。
【0029】
各凸部20は、ブランク材11A,11Bの重心部X1を中心として一方側の2箇所と他方側の1箇所との計3箇所に少なくとも設けられ、当該3箇所の凸部20で形成される三角形の内方にブランク材11A,11Bの重心部X1が含まれるようになっている。
【0030】
具体的な一例を挙げると、ブランク材11Aの凸部20A、凸部20B及び凸部20Cで形成される三角形の内方にブランク材11Aの重心部X1が含まれる一方、ブランク材11Bの凸部20A’、凸部20B’及び凸部20C’で形成される三角形の内方にブランク材11Bの重心部X1が含まれるようになっている。
【0031】
また、異なる具体例を挙げると、ブランク材11Aの凸部20A、凸部20C及び凸部20Eで形成される三角形の内方にブランク材11Aの重心部X1が含まれる一方、ブランク材11Bの凸部20A’、凸部20C’及び凸部20E’で形成される三角形の内方にブランク材11Bの重心部X1が含まれるようになっている。
【0032】
また、ブランキング工程S1では、プレス成形装置を用いてコイル材から平面視で緩やかに湾曲する弓形状をなすパッチワーク12を得るようになっている。
【0033】
該パッチワーク12は、ブランク材11A,11Bの外形より小さな外形をなしている。パッチワーク12の長手方向一端側には、円形状の第1孔h1が形成される一方、長手方向他端寄りの位置には、長孔形状の第2孔h2が形成され、第1孔h1及び第2孔h2は、ブランク材11A,11Bにパッチワーク12を重ねた際、ブランク材11A,11Bの第3孔H3及び第4孔H4にそれぞれ対応する位置になっている。
【0034】
パッチワーク取付工程S2は、
図2に示すように、ブランク材11A又はブランク材11Bを取り出す第1作業エリアW1と、ブランク材11A又はブランク材11Bにパッチワーク12を取り付けてパッチワークブランク10にする第2作業エリアW2と、複数のパッチワークブランク10を段積みにする第3作業エリアW3とが直線状に設けられている。
【0035】
第1作業エリアW1には、ブランク材11Aの段積体14を載置する第1パレット2aと、ブランク材11Bの段積体15を載置する第2パレット2bとが並設されている。
【0036】
第1作業エリアW1と第2作業エリアW2との間には、アーム先端に第1マテリアルハンドリング3aが取り付けられた第1搬送ロボット3が配置され、該第1搬送ロボット3は、ブランク材11Aとブランク材11Bとを第1パレット2aと第2パレット2bとから順に取り出して第2作業エリアW2へと搬送するようになっている。
【0037】
第2作業エリアW2には、ブランク材11A又はブランク材11Bとパッチワーク12とを重ねた状態で位置決めする溶接治具4と、該溶接治具4の一側方に位置し、アーム先端に第2マテリアルハンドリング5aが取り付けられた第2搬送ロボット5と、溶接治具4の他側方に位置し、アーム先端にスポット溶接用ガン6aが取り付けられた溶接ロボット6と、第2搬送ロボット5の側方に位置し、且つ、パッチワーク12の段積体16を載置する第3パレット7とが配設されている。
【0038】
第2搬送ロボット5は、パッチワーク12を第3パレット7から取り出して溶接治具4に載置するようになっている。
【0039】
溶接ロボット6は、溶接治具4に位置決めされたブランク材11A又はブランク材11Bとパッチワーク12とをスポット溶接用ガン6aによりスポット溶接で繋いでパッチワークブランク10を得るようになっている。
【0040】
パッチワーク12は、ブランク材11A又はブランク材11Bにおける長手方向他端側で、且つ、各凸部20の突出側に取り付けられ、パッチワーク12をブランク材11A又はブランク材11Bに取り付けると、各凸部20の突出高さがパッチワーク12の一方の面と同じ位置となるようになっている。
【0041】
すなわち、パッチワークブランク10におけるパッチワーク12の領域(第1領域)は、パッチワークブランク10のパッチワーク12を除く領域(第2領域)より板厚が厚くて一方の面に段差面が形成されていて、その板厚差と同じになるように各凸部20の突出高さが設定されている。
【0042】
尚、以下では、便宜上、ブランク材11Aから得られたパッチワークブランク10をパッチワークブランク10Aと呼び、ブランク材11Bから得られたパッチワークブランク10をパッチワークブランク10Bと呼ぶことにする。すなわち、パッチワークブランク10は、凸部20の位置の異なる2種類が形成されるようになっている。
【0043】
パッチワークブランク10A,10Bにおける凸部20は、パッチワーク12の重心部X2を中心として一方側の2箇所と他方側の1箇所との計3箇所に少なくとも設けられ、当該3箇所の凸部20で形成される三角形の内方にパッチワーク12の重心部X2が含まれるようになっている。
【0044】
具体的な一例を挙げると、パッチワークブランク10Aの凸部20C、凸部20D及び凸部20Eで形成される三角形の内方にパッチワーク12の重心部X2が含まれる一方、パッチワークブランク10Bの凸部20C’、凸部20D’及び凸部20E’で形成される三角形の内方にパッチワーク12の重心部X2が含まれるようになっている。
【0045】
また、異なる具体例を挙げると、パッチワークブランク10Aの凸部20A、凸部20C及び凸部20Eで形成される三角形の内方にパッチワーク12の重心部X2が含まれる一方、パッチワークブランク10Bの凸部20A’、凸部20C’及び凸部20E’で形成される三角形の内方にパッチワーク12の重心部X2が含まれるようになっている。
【0046】
第2作業エリアW2と第3作業エリアW3との間には、アーム先端に第3マテリアルハンドリング8aが取り付けられた第3搬送ロボット8が配置され、該第3搬送ロボット8は、溶接治具4において順に形成されるパッチワークブランク10Aとパッチワークブランク10Bとを溶接治具4から取り出して交互に第3作業エリアW3へと搬送するようになっている。
【0047】
第3作業エリアW3には、パッチワークブランク10Aとパッチワークブランク10Bとが順に積み重ねられてなる段積体17を載置する第4パレット9が配設されている。
【0048】
プレス成形工程S3は、パッチワークブランク10A,10Bを加熱する加熱炉(図示せず)とプレス金型が装着されたホットプレス装置(図示せず)とを備え、ホットプレス装置を用いて加熱炉で加熱したパッチワークブランク10A,10Bからプレス成形品を得るようになっている。
【0049】
次に、実施形態1に係るパッチワークブランク10の製造について詳述する。
【0050】
まず初めに、ブランキング工程S1において、コイル材からブランク材11を形成する。このとき、ブランク材11の外周部分に5つの凸部20を形成する。
【0051】
ブランキング工程S1では、凸部20の位置が異なる2つの種類のブランク材11Aとブランク材11Bとを生産ロット毎にそれぞれ形成する。そして、第1パレット2aに各ブランク材11Aを段積みして段積体14にし、第2パレット2bに各ブランク材11Bを段積みして段積体15にする。段積体14が載置された第1パレット2aと段積体15が載置された第2パレット2bとは、それぞれパッチワーク取付工程S2に運搬される。
【0052】
次に、パッチワーク取付工程S2において、第2搬送ロボット5が第3パレット7の段積体16からパッチワーク12を取り出して溶接治具4に載置した後、第1搬送ロボット3が第1パレット2aからブランク材11Aを取り出して溶接治具4に載置し、ブランク材11A及びパッチワーク12を重ねた状態で溶接治具4に位置決めする。その後、溶接ロボット6が溶接治具4に位置決めされたブランク材11A及びパッチワーク12をスポット溶接により一体にしてパッチワークブランク10Aを得る。
【0053】
しかる後、第3搬送ロボット8が溶接治具4のパッチワークブランク10Aを取り出して第4パレット9に載置する。このとき、同じ突出高さである各凸部20A~20Eの頂点が第4パレット9の上面に接触するとともに、パッチワーク12が第4パレット9の上面に接触してパッチワークブランク10Aが水平に延びる姿勢になる。
【0054】
溶接治具4からパッチワークブランク10Aが取り出されると、第2搬送ロボット5が第3パレット7の段積体16からパッチワーク12を取り出して溶接治具4に載置した後、第1搬送ロボット3が第2パレット2bからブランク材11Bを取り出して溶接治具4に載置し、ブランク材11B及びパッチワーク12を重ねた状態で溶接治具4に位置決めする。その後、溶接ロボット6が溶接治具4に位置決めされたブランク材11B及びパッチワーク12をスポット溶接により一体にしてパッチワークブランク10Bを得る。
【0055】
しかる後、第3搬送ロボット8が溶接治具4のパッチワークブランク10Bを取り出して第4パレット9に載置されたパッチワークブランク10Aの上に重ねる。このとき、同じ突出高さである各凸部20A’~20E’の頂点が先に載置したパッチワークブランク10Aのブランク材11Aにおける各平坦部50A~50Eに接触するようになる。すなわち、各凸部20A’~20E’の頂点は、パッチワークブランク10Aのブランク材11Aにおける各凸部20A~20Eが形成されていない場所に接触するようになる。また、パッチワーク12の一方の面が先に載置したパッチワークブランク10Aのブランク材11Aに接するようになる。したがって、隣り合う各パッチワークブランク10A,10Bの間隔のバラつきが生じ難くなり、パッチワークブランク10Bが水平に延びる姿勢になる。
【0056】
溶接治具4からパッチワークブランク10Bが取り出されると、第2搬送ロボット5が第3パレット7の段積体16からパッチワーク12を取り出して溶接治具4に載置した後、第1搬送ロボット3が第1パレット2aからブランク材11Aを取り出して溶接治具4に載置し、ブランク材11A及びパッチワーク12を重ねた状態で溶接治具4に位置決めする。その後、溶接ロボット6が溶接治具4に位置決めされたブランク材11A及びパッチワーク12をスポット溶接により一体にしてパッチワークブランク10Aを得る。
【0057】
しかる後、第3搬送ロボット8が溶接治具4のパッチワークブランク10Aを取り出して第4パレット9に載置されたパッチワークブランク10Bの上に重ねる。このとき、同じ突出高さである各凸部20A~20Eの頂点が先に載置したパッチワークブランク10Bにおける各平坦部40A~40Eに接触するようになる。すなわち、各凸部20A~20Eの頂点は、パッチワークブランク10Bのブランク材11Bにおける各凸部20A’~20E’が形成されていない場所に接触するようになる。また、パッチワーク12の一方の面が隣り合うパッチワークブランク10Bのブランク材11Bに接するようになる。したがって、隣り合う各パッチワークブランク10A,10Bの間隔のバラつきが生じ難くなり、パッチワークブランク10Aが水平に延びる姿勢になる。
【0058】
このように、溶接治具4において、交互にパッチワークブランク10A,10Bを製造するとともに、第4パレット9に順次段積みすることにより、
図7及び
図8に示すように、第4パレット9上にパッチワークブランク10A,10Bが交互に段積みされてなる段積体17が得られる。
【0059】
この段積体17は、同じ突出高さである各凸部20の頂点がブランク材11の外周縁部において隣り合うブランク材11の各凸部20が形成されていない場所に接触するようになる。また、パッチワークブランク10における各凸部20が形成されていないその他の領域においては、各凸部20の頂点と同じ高さに位置するパッチワーク12の一方の面が隣り合うパッチワークブランク10に接するようになる。したがって、隣り合う各パッチワークブランク10A,10Bの間隔が各凸部20とパッチワーク12とで一定に保たれるようになるので、各パッチワークブランク10A,10Bを安定した段積み状態にすることができる。
【0060】
その後、段積体17を載置する第4パレット9がプレス成形工程S3に運搬される。
【0061】
そして、プレス成形工程S3では、段積みされたパッチワークブランク10A,10Bを順次取り出して、図示しないプレス成形機を用いてプレス成形品が順次成形される。
【0062】
以上より、本発明の実施形態1によると、段差面を有するパッチワークブランク10A,10Bを多数積み上げる際に、安定した段積み状態にすることができる。
【0063】
また、形成する各凸部20がパッチワークブランク10の外周縁部を含むように位置しているので、パッチワークブランク10をプレス成形してプレス成形品を得る際に取り除くプレス成形品の外周部分の領域を狭くすることができるようになり、材料歩留まりを良くすることができる。
【0064】
さらに、凸部20は、ブランク材11の外周縁部の一部を当該ブランク材の一方の面側に折り曲げることにより形成しているので、狭い領域で所望する高さに変形させることができる。したがって、パッチワークブランク10における各凸部20の占有する領域を狭くすることができるようになるので、例えば、張り出して各凸部20を成形するような比較的パッチワークブランク10の広い領域を各凸部20が占有する場合に比べて材料歩留まりを良くすることができる。
【0065】
《発明の実施形態2》
図9は、本発明の実施形態2の生産ライン1において形成されるパッチワークブランク10を示す。この実施形態2は、パッチワークブランク10の各凸部20の形状が実施形態1と異なっている以外は実施形態1と同様であるので、実施形態1と同様の部分には同じ符号を付し、その他、異なる部分のみを説明する。
【0066】
実施形態2のブランク材11Aには、各第1~第5膨出縁部11a~11eにおける長手方向一端寄りの位置に凸部20A~20Eがそれぞれ形成される一方、実施形態1の如き平坦部50A~50Eが設けられていない。
【0067】
各凸部20A~20Eは、ブランク材11Aの各第1~第5膨出縁部11a~11eに外周縁部と交差するように延びる切れ込み部18を外周縁部に沿う方向に所定の間隔をあけて一対形成した後、外周縁部に沿う方向に見て断面が略への字状となるように両切れ込み部18の間をブランク材11Aの一方の面側に変形させることにより形成されている。
【0068】
また、図示しないが、実施形態2のブランク材11Bには、ブランク材11Aの凸部20A~20Eと同じ形状をなす凸部20A’~20E’が各第1~第5膨出縁部11a~11eにおける長手方向他端寄りの位置に形成される一方、実施形態1の如き平坦部40A~40Eが設けられていない。
【0069】
尚、本発明の実施形態2に係るパッチワークブランク10の製造については、パッチワークブランク10A,10Bの各凸部20の形状、及び、パッチワークブランク10A,10Bに平坦部50A~50E,40A~40Eが無い点が実施形態1と異なる以外は、実施形態1と同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0070】
以上より、本発明の実施形態2によると、ブランク材11に切れ込み部18を設けるとともに、当該切れ込み部18周りを変形させることにより凸部20を形成するので、切れ込み部18によって変形させる領域が区切られるようになり、切れ込み部18周りを所望の突出高さに変形させるまでに設備にかかる負荷が小さくなり、設備の故障やメンテナンスに伴う費用が嵩むのを極力回避して、コストをかけずに段積み作業を行うことができる。
【0071】
《実施形態2の変形例》
図10は、本発明の実施形態2の変形例を示す。この変形例は、以下の点が上記で詳述した実施形態2と異なっている。すなわち、この変形例では、切れ込み部18が各第1~第5膨出縁部11a~11eにおいて外周縁部と交差するように延びた後、外周縁部と平行に延びるような平面視でL字形状をなしており、凸部20は、外周縁部と直交する方向に見て断面が略への字状となるようにブランク材11における切れ込み部18よりも外周縁部側の領域をブランク材11の一方の面側に変形させることにより形成されている。
【0072】
したがって、外周縁部と交差する方向に見た場合に凸部20の断面形状がへの字状をなすような場合においても実施形態2と同様の効果を得ることができる。
【0073】
《発明の実施形態3》
図11は、本発明の実施形態3の生産ライン1において形成されるパッチワークブランク10を示す。この実施形態3は、パッチワークブランク10の各凸部20の形状が実施形態2と異なっている以外は実施形態2と同様であるので、実施形態2と同様の部分には同じ符号を付し、その他、異なる部分のみを説明する。
【0074】
実施形態3のブランク材11には、各第1~第5膨出縁部11a~11eにおける長手方向一端寄りの位置において張出成形によりブランク材11Aの一方の面側に突出する凸部20A~20Eがそれぞれ形成され、各凸部20A~20Eの外周縁部は、当該外周縁部と直交する方向に見て略山形状をなしており、また、各凸部20A~20Eは、全体が略三角錐になっている。
【0075】
また、図示しないが、実施形態3のブランク材11Bには、ブランク材11Aの凸部20A~20Eと同じ形状をなす凸部20A’~20E’が各第1~第5膨出縁部11a~11eにおける長手方向他端寄りの位置に形成されている。
【0076】
尚、本発明の実施形態3に係るパッチワークブランク10の製造については、パッチワークブランク10A,10Bの各凸部20の形状が実施形態2と異なる以外は、実施形態2と同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0077】
以上より、本発明の実施形態3によると、実施形態2のように凸部20を形成する際においてブランク材11A,11Bに切れ込み部18を形成する必要が無いので、設備を簡素化して投資コストを抑えることができる。
【0078】
《実施形態3の変形例》
図12は、本発明の実施形態3の変形例を示す。この変形例は、以下の点が上記で詳述した実施形態3と異なっている。すなわち、この変形例では、ブランク材11の外周縁部が当該外周縁部と直交する方向に見て略台形となるように、且つ、ブランク材11の一方の面側に突出するように凸部20が形成されている。
【0079】
したがって、張出成形により形成した凸部20の外周縁部側から見た形状が略台形状であったとしても実施形態3と同様の効果を得ることができる。
【0080】
尚、本発明の実施形態1~3では、パッチワークブランク10を段積みする際の段積み方法について説明したが、本発明は、その他の段差面を有するワークを段積みする際にも適用することが可能であり、例えば、テーラードブランクを段積みする際に本発明の方法を適用することができる。
【0081】
また、本発明の実施形態1~3では、各凸部20をブランキング工程S1にて形成しているが、これに限らず、例えば、パッチワーク取付工程S2においてブランク材11とパッチワーク12とを溶接により一体にしてパッチワークブランク10を得た後、所定の装置を用いてパッチワークブランク10の所定の位置に凸部20を形成するようにしてもよい。
【0082】
また、本発明の実施形態1~3では、各パッチワークブランク10A,10Bにそれぞれ5つの凸部20を設けたが、各パッチワークブランク10A,10Bを段積みした際にそれぞれが水平な姿勢になるのであれば、凸部20を3つ乃至4つにしてもよいし、6つ以上設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、段差面を有するプレス成形用ワークを多数積み上げて段積みにするプレス成形用ワークの段積方法に適している。
【符号の説明】
【0084】
10 パッチワークブランク(ワーク)
11 ブランク材
12 パッチワーク
17 段積体
18 切れ込み部
20 凸部