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特開2022-52342エレベーター用治具、巻上機のシーブに対する反らせ車の相対位置適否判定方法、及び巻上機のシーブに対する反らせ車の相対位置の位置決め方法
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  • 特開-エレベーター用治具、巻上機のシーブに対する反らせ車の相対位置適否判定方法、及び巻上機のシーブに対する反らせ車の相対位置の位置決め方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052342
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】エレベーター用治具、巻上機のシーブに対する反らせ車の相対位置適否判定方法、及び巻上機のシーブに対する反らせ車の相対位置の位置決め方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/08 20060101AFI20220328BHJP
   B66B 7/00 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
B66B11/08 K
B66B7/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020158679
(22)【出願日】2020-09-23
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 隆史
【テーマコード(参考)】
3F305
3F306
【Fターム(参考)】
3F305DA09
3F305DA21
3F306AA01
3F306BB11
(57)【要約】
【課題】シーブと反らせ車の間の周辺に位置すると共にシーブの軸方向に突出する突出部位が存在している場合でも、シーブに対する反らせ車の相対位置が適切か否か判定できるエレベーター用治具等を提供すること。
【解決手段】治具50が、略平面で構成される第1平面60aを有する第1部位60、第1平面60aに対して間隔をおいて位置すると共に、第1平面60aと略平行である第2平面70aを有する第2部位70、及び第1部位60において第1平面60aよりも第1平面60aの法線方向の第1の側に位置する第1箇所61と第2部位70において第2平面70aよりも法線方向の第1の側に位置する第2箇所71とを連結する連結部80を備える。また、使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、連結部80が、法線方向の第2の側に開口81を有する一方、法線方向の第1の側に底を有する凹部82を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻上機のシーブに対する反らせ車の相対位置が適切か否か判定できるエレベーター用治具であって、
略平面で構成される第1平面を有する第1部位と、
前記第1平面に対して間隔をおいて位置すると共に、前記第1平面と略平行である第2平面を有する第2部位と、
前記第1部位において前記第1平面よりも前記第1平面の法線方向の第1の側に位置する第1箇所と前記第2部位において前記第2平面よりも前記法線方向の第1の側に位置する第2箇所とを連結する連結部と、を備え、
使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、前記連結部が、前記法線方向の第2の側に開口を有する一方、前記法線方向の第1の側に底を有する凹部を有するように延在し、
前記使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、前記凹部の底が、前記第1平面の延在方向に関して前記第1箇所と前記第2箇所の間に位置する部分を有すると共に前記第1平面と前記第2平面のうちで前記法線方向の前記第1の側に位置している方の平面よりも前記法線方向の前記第1の側に位置する、エレベーター用治具。
【請求項2】
前記使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、前記連結部が、略コ字形状又は略U字形状になる、請求項1に記載のエレベーター用治具。
【請求項3】
前記第1部位及び前記第2部位の夫々が、平板又は角材の形状を有し、
前記使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、前記第1平面が前記第1部位における前記法線方向の第2の側の面であると共に、前記第2平面が前記第2部位における前記法線方向の第2の側の面であり、
前記使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、前記連結部が、前記第1部位の前記法線方向の前記第1の側の面から前記法線方向の前記第1の側に延在する第1延在部、前記第2部位の前記法線方向の前記第1の側の面から前記法線方向の前記第1の側に延在する第2延在部、及び前記第1延在部の先端側の第1端部と前記第2延在部の先端側の第1端部とを連結すると共に前記法線方向と略直交する直交方向に延在する直交方向延在部を有する、請求項1又は2に記載のエレベーター用治具。
【請求項4】
前記直交方向延在部の長さが伸縮可能である、請求項3に記載のエレベーター用治具。
【請求項5】
前記第1延在部の長さと前記第2延在部の長さの両方が伸縮可能である、請求項3又は4に記載のエレベーター用治具。
【請求項6】
前記第2部位が、前記法線方向に延在する1以上の貫通孔を有する、請求項3から5のいずれか1つに記載のエレベーター用治具。
【請求項7】
前記第1部位と前記第1延在部との角部に設置されて、前記第1部位と前記第1延在部の接続部を補強する第1補強部と、
前記第2部位と前記第2延在部との角部に設置されて、前記第2部位と前記第2延在部の接続部を補強する第2補強部と、
前記第1延在部と前記直交方向延在部との角部に設置されて、前記第1延在部と前記直交方向延在部の接続部を補強する第3補強部と、
前記第2延在部と前記直交方向延在部との角部に設置されて、前記第2延在部と前記直交方向延在部の接続部を補強する第4補強部と、
を備える、請求項3から6のいずれか1つに記載のエレベーター用治具。
【請求項8】
請求項1に記載のエレベーター用治具を用いて巻上機のシーブに対する反らせ車の相対位置が適切か否か判定する前記巻上機の前記シーブに対する前記反らせ車の相対位置適否判定方法であって、
前記第1平面の少なくとも一部を、前記シーブの側面と前記反らせ車の側面とのうちの一方の側面に当接させる一方、前記第2平面の少なくとも一部を、前記シーブの側面と前記反らせ車の側面とのうちの他方の側面に前記法線方向に対向するように配置する治具配置ステップと、
前記治具配置ステップの後で前記第2平面と前記他方の側面との前記法線方向の距離を互いに間隔をおいた2箇所以上で測定する測定ステップと、
前記測定ステップで測定した2以上の前記距離に基づいて前記シーブに対する前記反らせ車の相対位置が適切か否かを判定する判定ステップと、
を含む、巻上機のシーブに対する反らせ車の相対位置適否判定方法。
【請求項9】
請求項6に記載のエレベーター用治具を用いて巻上機のシーブに対する反らせ車の相対位置の位置決めを行う前記巻上機の前記シーブに対する前記反らせ車の相対位置の位置決め方法であって、
前記第1平面の少なくとも一部を、前記シーブの側面と前記反らせ車の側面とのうちの一方の側面に当接させる一方、少なくとも一つの前記貫通孔を、前記シーブの側面と前記反らせ車の側面とのうちの他方の側面に前記法線方向に対向させる治具配置ステップと、
前記貫通孔における前記法線方向の前記第2平面側とは反対側の開口からダイヤルゲージの指針を前記貫通孔に通過させて前記指針の長さを収縮させることで前記第2平面と前記他方の側面との前記法線方向の距離を互いに間隔をおいた2箇所以上で前記ダイヤルゲージを用いて測定する測定ステップと、
前記測定ステップで測定した2以上の前記距離に基づいて前記相対位置を位置決めする位置決めステップと、
を含む、巻上機のシーブに対する反らせ車の相対位置の位置決め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シーブに対する反らせ車の相対位置が適切か否か判定でき、シーブに対する反らせ車の相対位置の位置決めに用いることもできるエレベーター用治具に関する。また、本開示は、巻上機のシーブに対する反らせ車の相対位置が適切か否かを判定する巻上機のシーブに対する反らせ車の相対位置適否判定方法に関する。また、本開示は、巻上機のシーブに対する反らせ車の相対位置の位置決めを行うシーブに対する反らせ車の相対位置の位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベーターとしては、特許文献1に記載されているものがある。このエレベーターでは、釣合錘及びカゴが昇降路の内部でロープによって吊り下げられ、ロープが巻上機の駆動シーブ及び反らせ車に巻回されている。また、ロープの一端が釣合錘の下部に接続され、ロープの他端がカゴの下部に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-194123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
巻上機を新しい巻上機に取り換える際に、巻上機のシーブと反らせ車の平行度を測定したり、シーブに対する反らせ車のオフセット(シーブの軸方向におけるシーブと反らせ車の距離)の度合が許容範囲内にあるかを測定して、安全に万全を期すことは非常に意義がある。しかしながら、鉛直方向の上方から見たときに、シーブと反らせ車の間の周辺に位置すると共にシーブの軸方向に突出する突出部位、例えば、巻上台のアングル等が邪魔となって、上記平行度や上記オフセット量を長尺で測定できないことがある。
【0005】
そこで、本開示の目的は、鉛直方向の上方から見たときにシーブと反らせ車の間の周辺に位置すると共にシーブの軸方向に突出する突出部位が存在している場合でも、シーブに対する反らせ車の相対位置が適切か否か判定でき、シーブに対する反らせ車の相対位置の位置決めに用いることもできるエレベーター用治具を提供することにある。また、本開示の目的は、鉛直方向の上方から見たときにシーブと反らせ車の間の周辺に位置すると共にシーブの軸方向に突出する突出部位が存在している場合でも、巻上機のシーブに対する反らせ車の相対位置が適切か否かを判定できる巻上機のシーブに対する反らせ車の相対位置適否判定方法を提供することにある。また、本開示の目的は、鉛直方向の上方から見たときにシーブと反らせ車の間の周辺に位置すると共にシーブの軸方向に突出する突出部位が存在している場合でも、巻上機のシーブに対する反らせ車の相対位置の位置決めを行うことができるシーブに対する反らせ車の相対位置の位置決め方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示に係るエレベーター用治具は、巻上機のシーブに対する反らせ車の相対位置が適切か否か判定できるエレベーター用治具であって、略平面で構成される第1平面を有する第1部位と、前記第1平面に対して間隔をおいて位置すると共に、前記第1平面と略平行である第2平面を有する第2部位と、前記第1部位において前記第1平面よりも前記第1平面の法線方向の第1の側に位置する第1箇所と前記第2部位において前記第2平面よりも前記法線方向の第1の側に位置する第2箇所とを連結する連結部と、を備え、使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、前記連結部が、前記法線方向の第2の側に開口を有する一方、前記法線方向の第1の側に底を有する凹部を有するように延在し、前記使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、前記凹部の底が、前記第1平面の延在方向に関して前記第1箇所と前記第2箇所の間に位置する部分を有すると共に前記第1平面と前記第2平面のうちで前記法線方向の前記第1の側に位置している方の平面よりも前記法線方向の前記第1の側に位置する。
【0007】
なお、本明細書において、シーブと言及すると、それは、巻上機モータが駆動した際にロープを介さずに回動する綱車をさすものとする。また、本明細書において、反らせ車と言及すると、それは、巻上機とそれを支持する巻上台とを含む巻上機構造に含まれるシーブ以外の滑車を指すものとする。
【0008】
本開示によれば、鉛直方向の上方から見たときにシーブと反らせ車の間の周辺に位置すると共にシーブの軸方向に突出する突出部位が存在している場合でも、その突出部位を上記凹部に収容させることができるように、連結部が迂回するような形状を有している。したがって、その突出部位を凹部内に凹部の内面に対して非接触状態で収容して、その突出部位をエレベーター用治具(以下、単に治具という)に非接触にした上で、治具を、その第1平面の少なくとも一部をシーブ及び反らせ車のうちの一方の部材の側面に当接させると共に、第2平面をシーブ及び反らせ車のうちの他方の部材の側面に法線方向に対向させるように配置することができる(以下、そのような治具の配置状態を測定配置状態という)。よって、その治具の測定配置状態で、測定器具、例えば、ダイヤルゲージ、デプスゲージ、ノギス、又は物差等を用いて第2平面と他方の部材との法線方向の距離を測定することで、シーブに対する反らせ車の相対位置が適切か否か判定でき、更には、シーブに対する反らせ車の相対位置の位置決めも行うこともできる。
【0009】
また、前記使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、前記連結部が、略コ字形状又は略U字形状になっていてもよい。
【0010】
本構成によれば、鉛直方向の上方から見たときにシーブと反らせ車の間の周辺に位置すると共にシーブの軸方向に突出する突出部位が存在している場合でも、測定配置状態を簡素な構造で容易に実現でき、治具の軽量化を促進できる。
【0011】
また、前記第1部位及び前記第2部位の夫々が、平板又は角材の形状を有し、前記使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、前記第1平面が前記第1部位における前記法線方向の第2の側の面であると共に、前記第2平面が前記第2部位における前記法線方向の第2の側の面であり、前記使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、前記連結部が、前記第1部位の前記法線方向の前記第1の側の面から前記法線方向の前記第1の側に延在する第1延在部、前記第2部位の前記法線方向の前記第1の側の面から前記法線方向の前記第1の側に延在する第2延在部、及び前記第1延在部の先端側の第1端部と前記第2延在部の先端側の第1端部とを連結すると共に前記法線方向と略直交する直交方向に延在する直交方向延在部を有してもよい。
【0012】
本構成によれば、治具を簡素な構造にでき、更には、第1部位の第1平面と第2部位の第2平面との平行度も高くし易い。
【0013】
また、前記直交方向延在部の長さが伸縮可能でもよい。
【0014】
エレベーターの仕様(機種)が異なると、鉛直方向の上側から見たときのシーブの厚さ方向に直交する直交方向におけるシーブと反らせ車の直交方向距離が異なることがある。
【0015】
本構成によれば、直交方向延在部の長さを伸縮させることで、シーブと反らせ車の直交方向距離が異なるいずれのエレベーターにも適用することができる。よって、治具の汎用性を格段に向上させることができる。
【0016】
また、前記第1延在部の長さと前記第2延在部の長さの両方が伸縮可能でもよい。
【0017】
鉛直方向の上方から見たときに、シーブと反らせ車の間の周辺に位置すると共にシーブの軸方向に突出する突出部位の上記法線方向の突出長は、エレベーターの仕様(機種)によって異なることがある。
【0018】
本構成によれば、第1延在部の長さと第2延在部の長さを変えることで、治具を突出部位の突出長が異なるいずれのエレベーターにも適用することができる。よって、治具の汎用性を格段に向上させることができる。
【0019】
また、前記第2部位が、前記法線方向に延在する1以上の貫通孔を有してもよい。
【0020】
本構成によれば、第1平面の少なくとも一部を、シーブ及び反らせ車の一方の側面に当接させると共に、貫通孔をシーブ及び反らせ車の他方の側面に法線方向に対向させた上で、ダイヤルゲージの指針を貫通孔に通過させて指針の先端側を他方の側面で収縮させるだけで、第2平面に対する他方の側面の相対位置を高精度で特定できる。よって、第1平面に対する第2平面の相対位置は既知であるので、結果として、一方の側面に対する他方の側面の相対位置を高精度で特定できる。よって、ダイヤルゲージを用いて、第1平面に対する第2平面の相対位置を高精度かつ容易に特定できる。
【0021】
また、前記第1部位と前記第1延在部との角部に設置されて、前記第1部位と前記第1延在部の接続部を補強する第1補強部と、前記第2部位と前記第2延在部との角部に設置されて、前記第2部位と前記第2延在部の接続部を補強する第2補強部と、前記第1延在部と前記直交方向延在部との角部に設置されて、前記第1延在部と前記直交方向延在部の接続部を補強する第3補強部と、前記第2延在部と前記直交方向延在部との角部に設置されて、前記第2延在部と前記直交方向延在部の接続部を補強する第4補強部と、を備えてもよい。
【0022】
本構成によれば、第1部位、第2部位、第1延在部、第2延在部、及び直交方向延在部における各接続部を、第1乃至第4補強部で補強でき、各接続部の剛性を高くできる。よって、治具の破損を抑制できる。更には、第1延在部と直交方向延在部、第1延在部と第1部位における法線方向の第1の側の面、第2延在部と直交方向延在部、及び第2延在部と第2部位における法線方向の第1の側の面が、高精度で直交している状態を維持することができる。
【0023】
また、本開示に係る、巻上機のシーブに対する反らせ車の相対位置適否判定方法は、本開示に係るエレベーター用治具を用いて巻上機のシーブに対する反らせ車の相対位置が適切か否か判定する前記巻上機の前記シーブに対する前記反らせ車の相対位置適否判定方法であって、前記第1平面の少なくとも一部を、前記シーブの側面と前記反らせ車の側面とのうちの一方の側面に当接させる一方、前記第2平面の少なくとも一部を、前記シーブの側面と前記反らせ車の側面とのうちの他方の側面に前記法線方向に対向するように配置する治具配置ステップと、前記治具配置ステップの後で前記第2平面と前記他方の側面との前記法線方向の距離を互いに間隔をおいた2箇所以上で測定する測定ステップと、前記測定ステップで測定した2以上の前記距離に基づいて前記シーブに対する前記反らせ車の相対位置が適切か否かを判定する判定ステップと、を含む。
【0024】
本開示の相対位置適否判定方法によれば、鉛直方向の上方から見たときにシーブと反らせ車の間の周辺に位置すると共にシーブの軸方向に突出する突出部位が存在している場合でも、その突出部位を上記凹部の内面に非接触な状態で凹部内に収容させることができる。したがって、治具配置ステップで、その突出部位を治具に非接触にした上で、治具を、その第1平面の少なくとも一部をシーブ及び反らせ車のうちの一方の部材の側面に当接させると共に、第2平面をシーブ及び反らせ車のうちの他方の部材の側面に法線方向に対向させるように配置することができる。そして、測定ステップで、その治具の配置状態で、測定器具、例えば、ダイヤルゲージ、デプスゲージ、ノギス、又は物差等を用いて第2平面と他方の部材との法線方向の距離を測定することができ、判定ステップで、シーブに対する反らせ車の相対位置が適切か否か判定できる。
【0025】
また、本開示に係る、巻上機のシーブに対する反らせ車の相対位置の位置決め方法は、本開示のエレベーター用治具において第2部位が法線方向に延在する1以上の貫通孔を有する実施形態のエレベーター用治具を用いて巻上機のシーブに対する反らせ車の相対位置の位置決めを行う前記巻上機の前記シーブに対する前記反らせ車の相対位置の位置決め方法であって、前記第1平面の少なくとも一部を、前記シーブの側面と前記反らせ車の側面とのうちの一方の側面に当接させる一方、少なくとも一つの前記貫通孔を、前記シーブの側面と前記反らせ車の側面とのうちの他方の側面に前記法線方向に対向させる治具配置ステップと、前記貫通孔における前記法線方向の前記第2平面側とは反対側の開口からダイヤルゲージの指針を前記貫通孔に通過させて前記指針の長さを収縮させることで前記第2平面と前記他方の側面との前記法線方向の距離を互いに間隔をおいた2箇所以上で前記ダイヤルゲージを用いて測定する測定ステップと、前記測定ステップで測定した2以上の前記距離に基づいて前記相対位置を位置決めする位置決めステップと、を含む。
【0026】
本開示の位置決め方法によれば、第1平面の少なくとも一部を、シーブ及び反らせ車の一方の側面に当接させると共に、貫通孔をシーブ及び反らせ車の他方の側面に法線方向に対向させた上で、ダイヤルゲージの指針を貫通孔に通過させて指針の先端側を他方の側面で収縮させるだけで、第2平面に対する他方の側面の相対位置を高精度で特定できる。よって、第1平面に対する第2平面の相対位置は既知であるので、結果として、一方の側面に対する他方の側面の相対位置を高精度で特定できる。よって、ダイヤルゲージを用いて、第1平面に対する第2平面の相対位置を高精度かつ容易に特定できる。
【発明の効果】
【0027】
本開示の治具によれば、鉛直方向の上方から見たときにシーブと反らせ車の間の周辺に位置すると共にシーブの軸方向に突出する突出部位が存在している場合でも、シーブに対する反らせ車の相対位置が適切か否か判定でき、シーブに対する反らせ車の相対位置の位置決めに用いることもできる。また、本開示の巻上機のシーブに対する反らせ車の相対位置適否判定方法によれば、鉛直方向の上方から見たときにシーブと反らせ車の間の周辺に位置すると共にシーブの軸方向に突出する突出部位が存在している場合でも、巻上機のシーブに対する反らせ車の相対位置が適切か否かを判定できる。また、本開示のシーブに対する反らせ車の相対位置の位置決め方法によれば、鉛直方向の上方から見たときにシーブと反らせ車の間の周辺に位置すると共にシーブの軸方向に突出する突出部位が存在している場合でも、巻上機のシーブに対する反らせ車の相対位置の位置決めを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】エレベーターの概略構成図である。
図2】巻上機構造の正面図である。
図3】巻上機構造の側面図であり、巻上機を支持している巻上台の片側を示す側面図である。
図4】巻上機構造を鉛直方向上側から見たときの平面図である。
図5】シーブと反らせ車との間の平行度を測定している最中の本開示の一実施形態に係るエレベーター用治具を、鉛直方向上側から見たときの模式平面図である。
図6】伸縮可能な延在部の一部として採用できる伸縮構造の一例を示す斜視図である。
図7】アナログ式のダイヤルゲージの正面図である。
図8】ダイヤルゲージの測定方法と、第2部位の第2平面とシーブの側面との法線方向の距離を2箇所以上で測定する理由について説明する図であり、当該距離を測定しているダイヤルゲージを鉛直方向の上方から見たときの平面図である。
図9】シーブと反らせ車との間の平行度を測定している最中の変形例の治具を、鉛直方向上側から見たときの模式平面図である。
図10】シーブと反らせ車との間の平行度を測定している最中の更なる変形例の治具を、鉛直方向上側から見たときの模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の実施例では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、複数の図面には、模式図が含まれ、異なる図間において、各部材における、縦、横、高さ等の寸法比は、必ずしも一致しない。また、以下で説明される構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。また、図面及び以下の説明において、X方向は、巻上機構造10(巻上機12)の長手方向を示し、Y方向は、巻上機構造10(巻上機12)の幅方向(奥行方向)を示し、Z方向は、巻上機構造10(巻上機12)の高さ方向を示す。X方向、Y方向、及びZ方向は、互いに直交する。また、下記の実施例において、シーブ55と言及すると、それは、巻上機モータ12aが駆動した際にロープ(ワイヤーロープ)14を介さずに回動する綱車をさすものとし、反らせ車25と言及すると、それは、巻上機12とそれを支持する巻上台21とを含む巻上機構造10に含まれるシーブ55以外の滑車を指すものとする。
【0030】
図1は、エレベーター1の概略構成図である。図1に示すように、エレベーター1は、カゴ11、巻上機構造10、釣合錘13、ロープ14、カゴ呼び釦15、カゴ内操作盤16、着床位置検出センサ18、及び制御盤19を備える。巻上機構造10は、巻上機12、反らせ車25、及び反らせ車25と巻上機12とを支持する巻上台21を有する。制御盤19及び巻上機構造10は、昇降路20上方にある機械室30内に設けられる。なお、エレベーターが機械室を有さない場合、制御盤及び巻上機構造は、例えば昇降路下方にあるピット上に設けられる。
【0031】
巻上機12のシーブ55には、ロープ14が巻き掛けられ、ロープ14の一端には、カゴ11が懸架されている。一方、ロープ14の他端には、反らせ車25を介して釣合錘13が懸架されている。カゴ呼び釦15は、カゴ11を呼ぶと共にカゴ11の移動方向を指定する釦であり、全ての階の乗場22に設けられる。また、カゴ内操作盤16は、複数の行先階指定釦16a、カゴ扉開釦16b、及び、カゴ扉閉釦16cを有する。複数の行先階指定釦16aは、カゴ11の行先階を指定するためにカゴ11内に設けられ、カゴ扉開釦16bは、カゴ11内の人がカゴ扉32を開くためにカゴ11内に設けられ、カゴ扉閉釦16cは、カゴ11内の人がカゴ扉32を閉じるためにカゴ11内に設けられる。
【0032】
カゴ11及び釣合錘13の夫々は、昇降路20内に設けられたガイドレールでガイドされる。カゴ呼び釦15、及び行先階指定釦16aからの信号を受けた制御盤19が巻上機12の巻上機モータ12aの回転数及び回転方向を適宜制御することで、カゴ11と釣合錘13が昇降路20内をつるべ式に昇降するようになっている。着床位置検出センサ18は、カゴ11が着床する乗場22の着床位置を検出する。着床位置検出センサ18は、例えば、各階の着床位置に対応する昇降路位置に設けられた鉄板等のベーン18aと、ベーン18aを検出する磁気方式の検出器18bとを含む。着床位置検出センサ18からカゴ11が乗場22に着床したことを表す信号を受けた制御盤19がカゴ扉開閉用モータ(図示せず)を制御することで、カゴ扉32が開くと共に、乗場扉31がカゴ扉32の開き動作に連動して開き、人がカゴ11から乗場22に乗り降り可能となる。
【0033】
図2は、巻上機構造10の正面図である。また、図3は、巻上機構造10の側面図であり、巻上機12を支持している巻上台21の片側を示す側面図である。また、図4は、巻上機構造10をZ方向上側から見たときの平面図である。図2に示すように、巻上台21は、略同一の一対の機械台5,6を有し、図3に示すように、一対の機械台5,6は、長尺形状を有する。
【0034】
図2に示すように、一対の機械台5,6は、互いに平行な状態で機械室30(図1参照)に取り付けられ、それらの幅方向(Y方向に一致)に間隔をおいて対向している状態で機械室30に配置される。各機械台5,6は、機械室30の床部59(図1参照)に設置され、巻上機12は、例えば、一対の機械台5,6に跨った状態で防振ゴム(図示せず)を介して一対の機械台5,6上にボルトで固定される。防振ゴムは、省略されてもよい。又は、防振ゴムの代わりに、転位型制振合金、双晶型制振合金、又は強磁性型制振合金等の防振材料で形成された部材を用いてもよい。
【0035】
図2に示すように、巻上台21は、長尺状の機械台5,6の延在方向(X方向に一致)に略直交する直交方向(Y方向に一致)に延在する棒状部材21aを有し、棒状部材21aの両端部は、一対の機械台5,6に固定されている。反らせ車25は、棒状部材21aに軸受を介して回転自在に固定される。また、巻上台21は、L字アングル等の長尺状のアングル(突出部位)28を有し、一対の機械台5,6の夫々は、コ字状のアングル5a,6aを有する。長尺状のアングル28は、Y方向に延在する。長尺状のアングル28の両端部は、コ字状のアングル5a,6aの上面にボルト等で固定される。長尺状のアングル28を一対の機械台5,6に跨るように固定することで、一方の機械台5に対する他方の機械台6の上記法線方向(Y方向)の相対移動を防止し、巻上台21のY方向の強度(剛性)を高くしている。
【0036】
図2に示すように、巻上機12のシーブ55は、Z方向に関し、反らせ車25に対して間隔をおいて反らせ車25よりも高い個所に位置し、長尺状のアングル28は、Z方向に関し、シーブ55と反らせ車25の間に位置している。また、長尺状のアングル28は、巻上機12のシーブ55の軸方向(Y方向に一致)に関して、シーブ55よりもY方向の一方側からシーブ55よりもY方向の他方側まで延在し、反らせ車25に関しても、反らせ車25よりもY方向の一方側から反らせ車25よりもY方向の他方側まで延在している。すなわち、長尺状のアングル28は、Y方向に延在すると共にシーブ55及び反らせ車25に対してY方向の両側に突出している。
【0037】
図3に示すように、長尺状のアングル28は、X方向に一定の幅を有すると共にY方向に延在する平板部28aを有し、その平板部28aは、図3の側面図においてシーブ55の中心軸と反らせ車25の中心軸とを結ぶ線上に位置している。図4に示すように、上から見たときの平面図において、シーブ55のX方向の一方側端部と反らせ車25のX方向の他方側端部とは重なっている。図4に示す平面図において、長尺状のアングル28は、シーブ55よりもX方向一方側に位置すると共に、反らせ車25におけるX方向の中心よりもX方向の他方側に位置している。
【0038】
以上の巻上機構造10の構成において、巻上機12の取替改修時等に、シーブ55と反らせ車25との間のロープ14の捻じれが規定範囲内であって、カゴ11が円滑な昇降動作を行うことができて安全であることを確認しようとして、シーブ55と反らせ車25の平行度を長尺で測定しようとしても、Y方向の両側に突出する長尺状のアングル28がシーブ55と反らせ車25の間に位置しているため、その長尺状のアングル28が邪魔になって、その平行度を長尺で測定することができないという問題がある。
【0039】
係る背景において、本開示のエレベーター用治具は、鉛直方向(Z方向)の上方から見たときにシーブ55と反らせ車25の間の周辺に位置すると共にシーブ55の軸方向に突出するアングル(突出部位)28が存在している場合でも、シーブ55と反らせ車25の平行度を精密に測定することができるように考え出されたものである。以下、そのような本開示のエレベーター用治具の構造と、その平行度の測定方法等について説明する。
【0040】
図5は、シーブ55と反らせ車25との間の平行度を測定している最中の本開示の一実施形態に係るエレベーター用治具50を、Z方向上側から見たときの模式平面図である。図5に示すように、エレベーター用治具(以下、単に治具という)50は、略平面で構成される第1平面60aを有する第1部位60と、第1平面60aに対して間隔をおいて位置すると共に、第1平面60aと略平行である第2平面70aを有する第2部位70とを備える。第1部位60及び第2部位70の夫々は、例えば、樹脂材料や金属材料で構成される板形状の部位であり、例えば、円板形状や矩形の板形状を有する。なお、第1部位60及び第2部位70の夫々は、角材の形状を有してもよい。
【0041】
また、治具50は、第1部位60において第1平面60aよりも第1平面60aの法線方向(図5の平面図においてY方向に一致)の第1の側に位置する第1箇所61と第2部位70において第2平面70aよりも上記法線方向の第1の側に位置する第2箇所71とを連結する連結部80を備える。連結部80は、治具50の使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、Y方向の第2の側に開口81を有する一方、Y方向の第1の側に底を有する凹部82を有するように略コ字状に折れ曲がっている。
【0042】
図5の平面図において、凹部82の底82aは、第1平面60aの延在方向(図5の平面図においてX方向に一致)に関して第1箇所61と第2箇所71の間に位置する部分を有する。また、凹部82の底82aは、第1平面60aと第2平面70aのうちで上記法線方向の第1の側に位置している方の平面よりも上記法線方向の第1の側に位置している。より詳しくは、使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、第1平面60aは第1部位60における上記法線方向の第2の側の面になっていると共に、第2平面70aは第2部位70における上記法線方向の第2の側の面になっている。また、使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、連結部80は、第1部位60の上記法線方向の第1の側の面68から上記法線方向の第1の側に延在する第1延在部62、及び第2部位70の上記法線方向の第1の側の面78から上記法線方向の第1の側に延在する第2延在部72を有する。また、使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、連結部80は、第1延在部62の先端側の第1端部62aと第2延在部72の先端側の第1端部72aとを連結すると共に上記法線方向と略直交する直交方向(図5の平面図においてX方向に一致)に延在する直交方向延在部87を有する。
【0043】
直交方向延在部87の長さは、伸縮可能になっている。また、第1延在部62の長さと第2延在部72の長さの両方も伸縮可能になっている。図6は、伸縮を実現でき、それらの延在部62,72,87の一部として採用できる伸縮構造40の一例を示す斜視図である。図6に示すように、伸縮構造40は、第1筒部材41、第2筒部材42、及び蝶ボルト43を有する。第2筒部材42は、その径方向に延在するねじ孔を有し、蝶ボルト43はそのねじ孔に螺合している。蝶ボルト43を締め込んでいない状態で、第1筒部材41の所望の長さ部分を第2筒部材42内に収容でき、その後、蝶ボルト43を締め込んで、蝶ボルト43の先端面を第1筒部材41の外周面に押圧することで、第2筒部材42に対する第1筒部材41の相対位置を確定でき、伸縮構造40の長さを自在に変更できるようになっている。なお、図6では図示していないが、第1筒部材41及び第2筒部材42は、スプライン嵌合、セレーション嵌合、又はキー嵌合等で嵌合し、第1筒部材41は、第2筒部材42に対して周方向に相対回転できなくなっている。
【0044】
図5に示すように、第2部位70は、上記法線方向に延在する1以上の貫通孔74を有し、本実施形態では、上記直交方向(図5の平面図においてX方向に一致)に間隔をおいて位置する2つの貫通孔74を有する。第2部位70に貫通孔74を設ける理由については、以下で図5図7を用いて説明する。
【0045】
上記構成において、治具50を用いて巻上機12のシーブ55に対する反らせ車25の相対位置が適切か否かを次のように判定することができる。先ず、治具配置ステップを行う。詳しくは、治具50の第1部位60の第1平面60aの少なくとも一部を、シーブ55の側面と反らせ車25の側面とのうちの一方の側面に当接させる一方、第2部位70の第2平面70aの少なくとも一部を、シーブ55の側面と反らせ車25の側面とのうちの他方の側面に上記法線方向に対向するように配置する。図5に示す例では、第1部位60の第1平面60aの少なくとも一部を、反らせ車25の側面25aに当接させ、第2部位70の第2平面70aの少なくとも一部を、シーブ55の側面55aに上記法線方向に対向させるように配置させている。なお、本実施形態の治具50では、直交方向延在部87、第1延在部62、及び第2延在部72の夫々が、伸縮自在であって、直交方向延在部87の長さ、第1延在部62の長さ、及び第2延在部72の長さを自在に調整できる。よって、治具50を、そのように容易に配置させることができる。
【0046】
次に、測定ステップを行う。測定ステップでは、第2部位70の第2平面70aと上記他方の側面との上記法線方向の距離を互いに間隔をおいた2箇所以上で測定する。図5に示す例では、第2部位70の第2平面70aとシーブ55の側面55aとの上記法線方向の距離を互いに間隔をおいた2箇所以上で測定する。この測定は、次に構造と距離の測定方法について説明するダイヤルゲージを用いて行うと精密な測定を行うことができて好ましい。
【0047】
図7は、アナログ式のダイヤルゲージ35の正面図である。ダイヤルゲージ35は、短い直線距離を正確に測るための道具(計測器)である。アナログ式のダイヤルゲージ35は、測定子が付いている伸縮自在な指針(スピンドル)36の直線運動を歯車(ラックアンド・ピニオン)によって回転運動に変換し、さらに歯車を用いて拡大し、目盛りと指針でその動きの大きさを表す。測定域は、例えば、0~10mmであり、目量は、(1/100)mmのものや、(1/1000)mmのものが存在する。なお、ダイヤルゲージとして、デジタル式のダイヤルゲージを用いてもよいが、この場合、測定子が付いた指針の直線の動きを、エンコーダーを用いて読み取って、液晶や表示器にエンコーダーが読み取った値を表示する。
【0048】
図8は、ダイヤルゲージ35の測定方法と、第2部位70の第2平面70aとシーブ55の側面55aとの法線方向の距離を2箇所以上で測定する理由について説明する図であり、上記距離を測定しているダイヤルゲージ35を鉛直方向の上方から見たときの平面図である。図5及び図8を参照して、上述のように、第2部位70は、上記直交方向(図5の平面図においてX方向に一致)に間隔をおいて位置すると共に上記法線方向に延在する2つの貫通孔74を有する。各貫通孔74は、ダイヤルゲージ35の伸縮自在な指針36を挿入する孔である。
【0049】
各貫通孔74の法線方向の寸法は、力を受けていない指針36の長さよりも短くなっており、力を受けていない指針36を貫通孔74に挿入すると、指針36の先端は、各貫通孔74から外部に突出する。ここで、ダイヤルゲージ35は、指針36の伸縮の基準となる端面37を、第2部位70の法線方向の第1の側の面78に当接させた状態を保持して、指針36をシーブ55の側面55aからの力で縮めた状態にする。そして、その状態での、ダイヤルゲージ35の目盛の値により、第2部位70の第2平面70aとシーブ55の側面55aとの法線方向の距離を測定する。
【0050】
上述のように、治具50の第1平面60aと第2平面70aは、略平行になっており、第1平面60aは、反らせ車25の側面25aに当接した状態となっている。したがって、仮に、反らせ車25の側面25aとシーブ55の側面55aとが略平行な状態になっていたとすると、2つの貫通孔74のいずれを用いてダイヤルゲージ35で測定を行った場合でも、ダイヤルゲージ35の目盛は、略同じ値となる。これに対し、反らせ車25の側面25aに対してシーブ55の側面55aが傾いていたとすると、図8に示すように、一方の貫通孔74を用いてダイヤルゲージ35で測定を行ったときの距離が、他方の貫通孔74を用いてダイヤルゲージ35で測定を行ったときの距離と異なることになる。
【0051】
測定ステップが終了すると、最後に判定ステップを行う。判定ステップでは、測定ステップで測定した2以上の距離に基づいてシーブ55に対する反らせ車25の相対位置が適切か否かを判定する。判定では、平行度が適正か否かを判定すると共に、オフセット量が適正か否かを判定する。先ず、平行度に関しては、例えば、2つの貫通孔74の夫々を用いてダイヤルゲージ35を用いて測定した距離の差の絶対値の値を算出し、その算出した絶対値が第1閾値以下になっているか否かで判定を行い、絶対値が第1閾値以下である場合、平行度が適切であると判定される。ここで、当該絶対値は、第2部位70における2つの貫通孔74間の距離に比例して大きくなる。よって、治具50毎に2以上の貫通孔74間の距離は異なるので、巻上機構造10が同一である場合でも、上記第1閾値は、治具50毎に異なることになる。
【0052】
次に、オフセット量が適切か否かについては次のように判定する。先ず、オフセット量について説明する。ロープ14を収容する溝が形成される滑車の軸方向の箇所、すなわち、溝が形成されている滑車の箇所の軸方向端面からの軸方向距離は、シーブ55と反らせ車25で一致しているとは限らない。よって、シーブ55と反らせ車25が互いに平行な状態になっていたとしても、シーブ55の側面55aと反らせ車25の側面25aとが同一の平面上に位置している状態が、ロープ14が最も捻じれない最良の状態であるとは限らない。上記オフセット量とは、シーブ55と反らせ車25が平行な状態になっている場合において、シーブ55の側面55aと反らせ車25の側面25aとのシーブ55の軸方向における距離として定義されることできる。
【0053】
次に、オフセット量が適切か否かの判定については、例えば、次のように行う。最初に、第1平面60aと、第2平面70aとの法線方向の距離を求める。これは、例えば、長尺を用いて測定できる。又は、第1延在部62及び第2延在部72の夫々において、伸縮度合を特定できる目盛が第2筒状部内に所望の長さ部分だけ収容できる第1筒状部の外周面等に付してある場合、第1筒状部において第2筒状部に収容されていない部分の端の目盛が縮尺度合を示す尺度となる。よって、第1延在部62における第1筒状部の目盛と第2延在部72における第1筒状部の目盛との差を求めることで、第1平面60aと、第2平面70aとの法線方向の距離を精密かつ容易に算出できる。
【0054】
次に、ダイヤルゲージ35を用いて測定した第2部位70の第2平面70aとシーブ55の側面55aとの法線方向の距離を用いて、オフセット量を算出する。法線方向(シーブ55の軸方向)に関して、第1平面60a(すなわち、反らせ車25の側面25a)に対する第2平面70aの相対位置が算出されていると共に、第2平面70aに対するシーブ55の側面55aの相対位置が算出されているため、反らせ車25の側面25aに対するシーブ55の側面55aの相対位置を精密に特定することができる。
【0055】
よって、各巻上機構造10で、最良のオフセット量、すなわち、ロープ14が最も捻じれない最良の状態になるときの、シーブ55の側面55aと反らせ車25の側面25aとのシーブ55の軸方向における距離は、既知であるので、その最良のオフセット量と、実際に測定したオフセット量の差の絶対値が、第2閾値以下であるか否かで判定を行い、その絶対値が第2閾値以下である場合、オフセット量が適切であると判定できる。
【0056】
なお、以上の説明では、治具50を平行度とオフセット量が適正か否を判定するのに用いる場合について説明したが、治具50は、シーブ55の側面55aに対する反らせ車25の側面25aの精密な相対位置の位置決めに積極的に用いることもできる。
【0057】
詳しくは、その場合、第1平面60aの少なくとも一部を、シーブ55の側面55aと反らせ車25の側面25aとのうちの一方の側面に当接させる一方、第2部位70に設けた2つの貫通孔74の両方を、シーブ55の側面55aと反らせ車25の側面25aとのうちの他方の側面に法線方向に対向させる。そして、その後、各貫通孔74における法線方向の第2平面70a側とは反対側の開口からダイヤルゲージ35の指針36を貫通孔74に通過させて指針36の長さを収縮させることで第2平面70aと上記他方の側面との法線方向の距離を互いに間隔をおいた2箇所以上でダイヤルゲージ35を用いて測定する。その後、測定した2以上の上記距離に基づいてシーブ55の側面55aに対する反らせ車25の側面25aの相対位置を精密に位置決めする。
【0058】
上述のように、治具50は、シーブ55に対する反らせ車25の平行度及びオフセット量が適正か否かを判定できる。逆に言えば、シーブ55に対する反らせ車25の平行度及びオフセットのうちの少なくとも一方が不適格である場合、その少なくとも一方が適格になるように、シーブ55及び反らせ車25のうちの少なくとも一方の巻上機構造内での設置位置を調整することができる。上記相対位置の位置決めでは、測定した2以上の上記距離に基づいてそのような作業を行う。
【0059】
なお、上述の説明では、第2部位70に2以上の貫通孔74を形成して、ダイヤルゲージ35を用いて平行度とオフセット量が適正であるか否かを判定した。しかし、第2部位に1つのみの貫通孔74を形成して、ダイヤルゲージ35を用いて平行度とオフセット量を評価してもよい。この場合、第2部位に形成されている1つのみの貫通孔を用いて、第2部位の第2平面とシーブ55又は反らせ車25の側面との法線方向の距離を測定した後、直交方向延在部の長さを変動させて、1つのみの貫通孔の直交方向の位置を移動させるようにする。このようにすれば、第2部位に1つのみの貫通孔しか存在しない場合でも、ダイヤルゲージ35を用いて平行度とオフセット量を評価できる。
【0060】
以上、治具50は、巻上機12のシーブ55に対する反らせ車25の相対位置が適切か否か判定できる治具である。治具50は、略平面で構成される第1平面60aを有する第1部位60と、第1平面60aに対して間隔をおいて位置すると共に、第1平面60aと略平行である第2平面70aを有する第2部位70と、第1部位60において第1平面60aよりも第1平面60aの法線方向の第1の側に位置する第1箇所61と第2部位70において第2平面70aよりも法線方向の第1の側に位置する第2箇所71とを連結する連結部80と、を備える。また、使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、連結部80が、法線方向の第2の側に開口81を有する一方、法線方向の第1の側に底を有する凹部82を有するように延在する。また、使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、凹部82の底82aが、第1平面60aの延在方向に関して第1箇所61と第2箇所71の間に位置する部分を有すると共に第1平面60aと第2平面70aのうちで法線方向の上記第1の側に位置している方の平面よりも法線方向の第1の側に位置する。
【0061】
本開示によれば、鉛直方向の上方から見たときにシーブ55と反らせ車25の間の周辺に位置すると共にシーブ55の軸方向に突出するアングル(突出部位)28が存在している場合でも、そのアングル28を凹部82に収容させることができるように、連結部80が迂回形状を有している。したがって、そのアングル28の先端側を凹部82内に非接触の状態で収容して、そのアングル28を治具50に非接触にした上で、治具50を、その第1平面60aの少なくとも一部をシーブ55及び反らせ車25のうちの一方の部材の側面に当接させると共に、第2平面70aをシーブ55及び反らせ車25のうちの他方の部材の側面に法線方向に対向させるように配置することができる(以下、この治具50の配置状態を測定配置状態という)。よって、その治具50の測定配置状態で、測定器具、例えば、ダイヤルゲージ、デプスゲージ、ノギス、又は物差等を用いて第2平面70aと上記他方の部材との法線方向の距離を測定することで、シーブ55に対する反らせ車25の相対位置が適切か否か判定でき、更には、シーブ55に対する反らせ車25の相対位置の位置決めも行うこともできる。
【0062】
また、使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、連結部80が、略コ字形状になっていてもよい。
【0063】
本構成によれば、鉛直方向の上方から見たときにシーブ55と反らせ車25の間の周辺に位置すると共にシーブ55の軸方向に突出するアングル28が存在している場合でも、測定配置状態を簡素な構造で容易に実現でき、治具の軽量化を促進できる。
【0064】
また、第1部位60及び前記第2部位70の夫々が、平板又は角材の形状を有し、使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、第1平面60aが第1部位60における法線方向の第2の側の面であると共に、第2平面70aが第2部位70における法線方向の第2の側の面でもよい。また、使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、連結部80が、第1部位60の法線方向の第1の側の面68から法線方向の第1の側に延在する第1延在部62、第2部位70の法線方向の第1の側の面78から法線方向の第1の側に延在する第2延在部72、及び第1延在部62の先端側の第1端部62aと第2延在部72の先端側の第1端部72aとを連結すると共に法線方向と略直交する直交方向に延在する直交方向延在部87を有してもよい。
【0065】
本構成によれば、治具50を簡素な構造にでき、更には、第1部位60の第1平面60aと第2部位70の第2平面70aとの平行度も高くし易い。
【0066】
また、直交方向延在部87の長さが伸縮可能でもよい。
【0067】
エレベーター1の仕様(機種)が異なると、鉛直方向の上側から見たときのシーブ55の厚さ方向に直交する直交方向におけるシーブ55と反らせ車25の直交方向距離が異なることがある。
【0068】
本構成によれば、直交方向延在部87の長さを伸縮させることで、シーブ55と反らせ車25の直交方向距離が異なるいずれのエレベーター1にも適用することができる。よって、治具50の汎用性を格段に向上させることができる。
【0069】
また、第1延在部62の長さと第2延在部72の長さの両方が伸縮可能でもよい。
【0070】
鉛直方向の上方から見たときに、シーブ55と反らせ車25の間の周辺に位置すると共にシーブ55の軸方向に突出するアングル(突出部位)28の突出長は、エレベーター1の仕様(機種)によって異なることがある。
【0071】
本構成によれば、第1延在部62の長さと第2延在部72の長さを変えることで、治具50をアングル28の突出長が異なるいずれのエレベーター1にも適用することができる。よって、治具50の汎用性を格段に向上させることができる。
【0072】
また、第2部位70が、法線方向に延在する1以上の貫通孔74を有してもよい。
【0073】
本構成によれば、第1平面60aの少なくとも一部を、シーブ55及び反らせ車25の一方の側面に当接させると共に、貫通孔74をシーブ55及び反らせ車25の他方の側面に法線方向に対向させた上で、ダイヤルゲージ35の指針36を貫通孔74に通過させて指針36の先端側を他方の側面で収縮させるだけで、第2平面70aに対する他方の側面の相対位置を高精度で特定できる。よって、第1平面60aに対する第2平面70aの相対位置は既知であるので、結果として、一方の側面に対する他方の側面の相対位置を高精度で特定できる。よって、ダイヤルゲージ35を用いて、第1平面60aに対する第2平面70aの相対位置を高精度かつ容易に特定できる。
【0074】
また、図5に示すように、治具50は、第1部位60と第1延在部62との角部に設置されて、第1部位60と第1延在部62の接続部を補強する第1補強部45と、第2部位70と第2延在部72との角部に設置されて、第2部位70と第2延在部72の接続部を補強する第2補強部46とを備えてもよい。また、治具50は、第1延在部62と直交方向延在部87との角部に設置されて、第1延在部62と直交方向延在部87の接続部を補強する第3補強部47と、第2延在部72と直交方向延在部87との角部に設置されて、第2延在部72と直交方向延在部87の接続部を補強する第4補強部48とを備えてもよい。
【0075】
本構成によれば、第1乃至第4補強部45,46,47,48によって、強度(剛性)が弱くて破損し易い構造であって異なる部位間を直交している状態で接続する直交接続構造を補強することができ、その直交接続構造の強度(剛性)を大きくすることができる。
【0076】
更には、第1乃至第4補強部45,46,47,48は、L字形状を有する部材であり、L字の外側の角部は、直角になっている。また、第1乃至第4補強部45,46,47,48の角部を上記各直交接続構造の角部に隙間なく密接させた状態で、第1乃至第4補強部45,46,47,48は、固定手段、例えば、接着剤、溶接部、又は締結手段等によって、上記各直交接続構造に固定されている。このため、第1延在部62と直交方向延在部87、第1延在部62と第1部位60における法線方向の第1の側の面68、第2延在部72と直交方向延在部87、及び第2延在部72と第2部位70における法線方向の第1の側の面78が、高精度で直交している状態を維持できる。
【0077】
また、本開示に係る、巻上機12のシーブ55に対する反らせ車25の相対位置適否判定方法は、治具50を用いて巻上機12のシーブ55に対する反らせ車25の相対位置が適切か否か判定する相対位置適否判定方法である。その相対位置適否判定方法は、第1平面60aの少なくとも一部を、シーブ55の側面と反らせ車25の側面とのうちの一方の側面に当接させる一方、第2平面70aの少なくとも一部を、シーブ55の側面と反らせ車25の側面とのうちの他方の側面に法線方向に対向するように配置する治具配置ステップを含む。また、その相対位置適否判定方法は、治具配置ステップの後で第2平面70aと上記他方の側面との法線方向の距離を互いに間隔をおいた2箇所以上で測定する測定ステップと、測定ステップで測定した2以上の距離に基づいてシーブ55に対する反らせ車25の相対位置が適切か否かを判定する判定ステップと、を含む。
【0078】
本開示の相対位置適否判定方法によれば、鉛直方向の上方から見たときにシーブ55と反らせ車25の間の周辺に位置すると共にシーブ55の軸方向に突出するアングル28が存在している場合でも、そのアングル28を治具50の凹部に収容させることができる。したがって、治具配置ステップで、その突出部位を治具50に非接触にした上で、しかも、治具50を、第1平面60aの少なくとも一部をシーブ55及び反らせ車25のうちの一方の部材の側面に当接させると共に、第2平面70aをシーブ55及び反らせ車25のうちの他方の部材の側面に法線方向に対向させるように配置することができる。そして、測定ステップで、その治具50の配置状態で、測定器具、例えば、ダイヤルゲージ、デプスゲージ、ノギス、又は物差等を用いて第2平面70aと他方の部材との法線方向の距離を測定することができ、判定ステップで、シーブ55に対する反らせ車25の相対位置が適切か否か判定できる。
【0079】
また、本開示に係る、巻上機12のシーブ55に対する反らせ車25の相対位置の位置決め方法は、第2部位70が法線方向に延在する1以上の貫通孔74を有する実施形態の治具50を用いて巻上機12のシーブ55に対する反らせ車25の相対位置の位置決めを行う位置決め方法である。その位置決め方法は、第1平面60aの少なくとも一部を、シーブ55の側面と反らせ車25の側面とのうちの一方の側面に当接させる一方、少なくとも一つの貫通孔74を、シーブ55の側面と反らせ車25の側面とのうちの他方の側面に法線方向に対向させる治具配置ステップを含む。また、その位置決め方法は、貫通孔74における法線方向の第2平面70a側とは反対側の開口からダイヤルゲージ35の指針36を貫通孔74に通過させて指針36の長さを収縮させることで第2平面70aと他方の側面との法線方向の距離を互いに間隔をおいた2箇所以上でダイヤルゲージ35を用いて測定する測定ステップと、測定ステップで測定した2以上の距離に基づいて上記相対位置を位置決めする位置決めステップと、を含む。
【0080】
本開示の位置決め方法によれば、ダイヤルゲージ35を用いて、第1平面60aに対する第2平面70aの相対位置を高精度かつ容易に特定できる。
【0081】
なお、本開示は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0082】
例えば、上記実施形態では、治具50の連結部80が略コ字形状を有し、連結部80が、第1延在部62、第2延在部72、及び直交方向延在部87を含む場合について説明した。また、直交方向延在部87の長さが伸縮可能であり、第1延在部62の長さと第2延在部72の長さの両方も伸縮可能である場合について説明した。
【0083】
しかし、治具の連結部が、第1延在部、第2延在部、及び直交方向延在部を含み、直交方向延在部の長さが伸縮可能でなくてもよい。又は、治具の連結部が、第1延在部、第2延在部、及び直交方向延在部を含み、第1延在部の長さと第2延在部の長さの両方が伸縮可能でなくてもよい。又は、治具の連結部は、第1延在部、第2延在部、及び直交方向延在部を含まなくてもよく、治具の連結部は略コ字形状を有さなくてもよい。
【0084】
例えば、図9、すなわち、シーブ55と反らせ車25との間の平行度を測定している最中の変形例の治具150を、Z方向上側から見たときの模式平面図に示すように、使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、治具150の連結部180は、略U字形状を有してもよく、治具150は、形状を変えることができなくてもよい。
【0085】
本変形例の治具150は、例えば、樹脂や金属を材料とする射出成形で簡単安価に形成できる。また、治具150には、伸縮構造等、破損し易い構造も存在しないので治具150を慎重に取り扱う必要もなく、治具150の取り扱い性を向上でき、治具150を扱い易い。
【0086】
また、上記実施形態では、直交方向延在部87の長さを図6に示す伸縮構造40で伸縮可能とした。そして、使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、治具50における第1平面60aの延在方向の長さを伸縮自在にして、治具50が、シーブ55と反らせ車25の距離が異なる複数の異なる巻上機構造10に適用可能とする場合について説明した。しかし、治具は、直交方向延在部を伸縮可能にしなくても、使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、シーブと反らせ車の距離が異なる複数の異なる巻上機構造に適用可能とすることができる。
【0087】
詳しくは、図10、すなわち、シーブ55と反らせ車25との間の平行度を測定している最中の更なる変形例の治具250を、Z方向上側から見たときの模式平面図に示すように、使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、治具250は、第1平面260aと第2平面270aのうちの少なくとも一方の長さが長くてもよい。
【0088】
より詳しくは、治具250は、例えば、使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、第1平面260a及び第2平面270aのうちの少なくとも一方の平面の長さが、シーブ55の外径の0.3倍以上でもよく、0.5倍以上でもよく、0.7倍以上でもよく、1.0倍以上でもよく、1.2倍以上でもよく、1.5倍以上でもよく、2倍以上でもよく、2.5倍以上でもよく、3倍以上でもよい。
【0089】
本変形例の治具250によれば、使用状態において鉛直方向の上方から見た場合における、第1平面260a及び第2平面270aのうちの少なくとも一方の平面の長さが長いので、伸縮可能構造を有していないにも拘わらず、シーブ55と反らせ車25の距離が異なる複数の異なる巻上機構造10に適用可能になる。したがって、簡単安価に製造できるだけでなく汎用性も高い治具250を実現することができる。
【0090】
ここで、第2部位に設けられる貫通孔274の数は、使用状態において鉛直方向の上方から見た場合における、第2部位の第2平面の長さが長い場合、その第2部位の第2平面の長さに比例して多くなると治具250の使い勝手が良くなって好ましい。
【0091】
なお、使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、連結部は、略コ字形状でなくて略U字形状でなくてもよく、例えば、二等辺三角形の形状や、円弧形状等でもよい。要は、使用状態において鉛直方向の上方から見たときに、連結部は、法線方向の第2の側に開口を有し、法線方向の第1の側に凹部を有していれば、如何なる形状でもよい。また、本開示の治具は、補強部を有さなくてもよく、第2部位に貫通孔が設けられていなくてもよい。また、本開示の治具は、いずれかの機種の巻上機構造の専用の治具でもよい、この場合、治具に伸縮させる部位は一切必要なく、治具をコンパクトに構成できる。
【0092】
また、本明細書では、発明の名称が、エレベーター用治具を含み、特許請求の範囲にも、エレベーター用治具の発明が記載されている。しかし、本開示のエレベーター用治具をエレベーターの用途以外の用途に用いてもよい。ここで、本開示の治具を、エレベーターの用途以外の用途で用いている場合であっても、本開示の治具を、仮にエレベーターの用途に用いた場合に、特許請求の範囲に記載の要件を全て満たしている場合、その治具が、権利侵害となることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0093】
1 エレベーター、 5,6 機械台、 5a,6a コ字状のアングル、 10 巻上機構造、 11 カゴ、 12 巻上機、 12a 巻上機モータ、 13 釣合錘、 14 ロープ、 19 制御盤、 21 巻上台、 25 反らせ車、 25a 反らせ車の側面、 28 アングル、 アングルの28a 平板部、 30 機械室、 35 ダイヤルゲージ、 36 ダイヤルゲージの指針、 40 伸縮構造、 41 第1筒部材、 42 第2筒部材、 43 蝶ボルト、 45 第1補強部、 46 第2補強部、 47 第3補強部、 48 第4補強部、 50,150,250 治具、 55a シーブの側面、 59 機械室の床部、 60 第1部位、 60a,260a 第1部位の第1平面、 62 第1延在部、 62a 第1延在部の第1端部、 68 第1部位の法線方向における第1の側の面、 70 第2部位、 70a,270a 第2部位の第2平面、 72 第2延在部、 72a 第2延在部の第1端部、 74,274 第2部位の貫通孔、 78 第2部位の法線方向における第1の側の面、 80,180 連結部、 81 連結部の開口、 82 連結部の凹部、82a 凹部の底、 87 直交方向延在部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10