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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052375
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】車両用制動装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/18 20060101AFI20220328BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20220328BHJP
   B60T 8/94 20060101ALI20220328BHJP
   B60T 13/122 20060101ALI20220328BHJP
   B60T 13/138 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
B60T17/18
B60T8/17 B
B60T8/94
B60T13/122 A
B60T13/138 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020158734
(22)【出願日】2020-09-23
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(74)【代理人】
【識別番号】100174713
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧川 彰人
(72)【発明者】
【氏名】余語 和俊
【テーマコード(参考)】
3D048
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D048BB06
3D048CC54
3D048HH15
3D048HH18
3D048HH26
3D048HH53
3D048HH59
3D048QQ16
3D048RR06
3D049BB04
3D049CC02
3D049HH12
3D049HH34
3D049HH43
3D049HH45
3D049HH47
3D049QQ06
3D246BA02
3D246DA01
3D246GA01
3D246GB37
3D246HA03A
3D246HA45A
3D246JB02
3D246JB11
3D246JB26
3D246LA02Z
3D246LA04Z
3D246LA33Z
3D246LA59Z
3D246LA63A
3D246MA03
3D246MA21
(57)【要約】
【課題】液路が破損した際のリザーバ内のフルード漏れを抑制でき、且つ非制動時におけるフルード膨張による制動力の発生を抑制することができる車両用制動装置を提供する。
【解決手段】本発明は、シリンダ21内に形成された液圧室24に、電気モータ22によって駆動されるピストン23の位置に応じた液圧を発生させてホイルシリンダ81~84を加圧する電動シリンダ2と、シリンダ21に形成されたポート211を介して液圧室24とリザーバ45とを接続する液路54と、液圧室24の液圧が目標圧に対して過大である特定状態で液圧室24のフルードの液路54を介するリザーバ45への流出を許容し、特定状態ではない通常状態で液路54を介したフルードの流出を阻止する切替部9と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内に形成された液圧室に、電気モータによって駆動されるピストンの位置に応じた液圧を発生させてホイルシリンダを加圧する電動シリンダと、
前記シリンダに形成されたポートを介して前記液圧室とリザーバとを接続する液路と、
前記液圧室の液圧が目標圧に対して過大である特定状態で前記液圧室のフルードの前記液路を介する前記リザーバへの流出を許容し、前記特定状態ではない通常状態で前記液路を介した前記フルードの流出を阻止する切替部と、
を備える、車両用制動装置。
【請求項2】
前記電動シリンダは、前記ピストンの前記シリンダとの相対位置が所定の開放位置である場合に前記ポートが前記ピストンにより開放され、前記ピストンの前記シリンダとの相対位置が所定の閉鎖位置である場合に前記ポートが前記ピストンにより閉鎖されるように構成され、
前記切替部は、前記電気モータを制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記電気モータを制御することで、前記通常状態で且つ前記電動シリンダにより前記液圧室に液圧を発生させる液圧発生要求がない場合に前記ピストンを前記閉鎖位置に移動させ、前記特定状態で且つ前記液圧発生要求がない場合に前記ピストンを前記開放位置に移動させる、請求項1に記載の車両用制動装置。
【請求項3】
前記切替部は、前記液路に設けられ前記液路を開閉する電磁弁と、前記電磁弁を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記通常状態で前記電磁弁により前記液路を遮断させ、前記特定状態で前記電磁弁により前記液路を連通させる、請求項1に記載の車両用制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許6202741号公報で開示されているブレーキシステムは、リザーバと電動シリンダとホイルシリンダとを備えている。このシステムにおいて、リザーバとホイルシリンダとは、電動シリンダを介して接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6202741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記システムにおいて、例えば電動シリンダとホイルシリンダとを接続する液路が破損してしまった場合、当該破損個所からフルードが外部に漏れる。この場合、リザーバと当該破損個所が液圧的に接続されていると、リザーバ内のフルードが当該破損個所から全て漏れてしまう可能性がある。あるいは、リザーバと電動シリンダとを接続する液路にエアが混入する可能性がある。そのため、リザーバとホイルシリンダとは液圧的に遮断されていることが好ましい。これを実現するために、電動シリンダのピストンを前進させることで、電動シリンダとリザーバとを液圧的に遮断することが考えらえる。この場合、電動シリンダとホイルシリンダとの間の液路は密閉される。
【0005】
しかし、このように液路が密閉された状態で、例えば走行時にブレーキパッドとディスクロータの摩擦等でホイルシリンダ内のフルード温度が上昇してしまうと、フルード膨張によって制動中でないのに制動力(ホイル圧)が発生してしまうことになり得る。
【0006】
本発明の目的は、液路が破損した際のリザーバ内のフルード漏れを抑制でき、且つ非制動時におけるフルード膨張による制動力の発生を抑制することができる車両用制動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用制動装置は、シリンダ内に形成された液圧室に、電気モータによって駆動されるピストンの位置に応じた液圧を発生させてホイルシリンダを加圧する電動シリンダと、前記シリンダに形成されたポートを介して前記液圧室とリザーバとを接続する液路と、前記液圧室の液圧が目標圧に対して過大である特定状態で前記液圧室のフルードの前記液路を介する前記リザーバへの流出を許容し、前記特定状態ではない通常状態で前記液路を介した前記フルードの流出を阻止する切替部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、通常状態において、電動シリンダとホイルシリンダとを接続する液路が破損した場合でも、液圧室とリザーバとが遮断されているため、リザーバ内のフルード漏れは抑制される。さらに、特定状態では、液圧室とリザーバとが連通するため、目標圧が0である非制動時におけるフルード膨張による制動力の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の車両用制動装置の構成図である。
図2】第1実施形態の電動シリンダの開放位置を表す概念図である。
図3】第1実施形態の電動シリンダの閉鎖位置を表す概念図である。
図4】第1実施形態の下流ユニットの構成図である。
図5】第1実施形態の制御例を説明するためのフローチャートである。
図6】第2実施形態の車両用制動装置の構成図である。
図7】第2実施形態の制御例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
<第1実施形態>
図1に示すように、車両用制動装置1は、上流ユニット11と、下流ユニット3と、第1ブレーキECU901と、第2ブレーキECU902と、を備えている。車両用制動装置1は、車両の車輪に設けられたホイルシリンダ81、82、83、84にフルードを供給可能な装置である。第1ブレーキECU901は、少なくとも上流ユニット11を制御する。第2ブレーキECU902は、少なくとも下流ユニット3を制御する。
【0011】
(上流ユニット)
上流ユニット11は、マスタシリンダ装置4と、ストロークシミュレータ43と、シミュレータカット弁44と、リザーバ45と、第1液路51と、電動シリンダ2と、第2液路52と、連通路53と、リザーバ液路(「液路」に相当する)54と、マスタカット弁62と、連通制御弁61と、ストロークセンサ71と、圧力センサ72、73と、レベルスイッチ74と、を備えている。図1は、車両用制動装置1の非通電状態を示す。
【0012】
マスタシリンダ装置4は、ドライバ操作に応じて液圧を発生可能な装置である。マスタシリンダ装置4は、マスタシリンダ41と、マスタピストン42と、マスタ室41aと、付勢部材41bと、を備えている。マスタシリンダ41は、有底円筒状の部材である。マスタシリンダ41には、入力ポート411と出力ポート412が形成されている。入力ポート411と出力ポート412については後述する。
【0013】
マスタピストン42は、マスタシリンダ41内に配置されたピストン部材であり、ブレーキペダルZと機械的に接続されている。マスタピストン42は、ブレーキペダルZの操作に応じてマスタシリンダ41内で摺動する。マスタピストン42には貫通孔421が形成されている。マスタピストン42は、後述する付勢部材41bによって初期位置に向けて付勢されている。初期位置とは、マスタ室41aの容積が最大となる場合のマスタピストン42の位置である。マスタピストン42が初期位置に位置する場合、貫通孔421と入力ポート411とは連通する。
【0014】
マスタ室41aは、マスタシリンダ41とマスタピストン42とにより、マスタシリンダ41内に形成されている。本実施形態では、マスタシリンダ41内に形成されたマスタ室41aの数は1つである。マスタ室41aの容積は、マスタピストン42の移動に応じて変化する。マスタピストン42が軸方向一方側に移動すると、マスタ室41aの容積が小さくなり、マスタ室41aの液圧(以下「マスタ圧」という)が増大する。
【0015】
付勢部材41bは、マスタ室41a内に設けられたバネ部材である。マスタピストン42に対して力が作用していない状態では、マスタピストン42は初期位置に位置する。ストロークシミュレータ43は、シミュレータカット弁44を介してマスタシリンダ装置4に接続されている。ストロークシミュレータ43は、ブレーキペダルZの操作に対して反力(負荷)を発生させる装置である。ストロークシミュレータ43は、シリンダ、ピストン、及び付勢部材を含む。ストロークシミュレータ43は液路43aを介してマスタシリンダ41の出力ポート412に接続されている。
【0016】
シミュレータカット弁44は、液路43aに設けられたノーマルクローズ型の電磁弁である。後述するマスタカット弁62が閉弁し且つシミュレータカット弁44が開弁した状態でブレーキペダルZが操作された場合、ストロークシミュレータ43によってペダル反力が発生する。
【0017】
リザーバ45は、フルードを貯留する。リザーバ45内の圧力は大気圧に保たれている。リザーバ45の内部には、各々にフルードが貯留された2つの貯留室451、452が形成されている。
【0018】
貯留室451はマスタシリンダ装置4に接続されている。詳細には、貯留室451はマスタシリンダの入力ポート411と接続されている。マスタピストン42が初期位置に位置する場合、貯留室451は入力ポート411と貫通孔421とを介してマスタ室41aに液圧的に接続される。マスタピストン42が所定量摺動した場合、入力ポート411と貫通孔421とは液圧的に非接続となる。この場合、マスタ室41aとリザーバ45とは液圧的に非接続となる。貯留室452はリザーバ液路54を介して電動シリンダ2に接続されている。リザーバ45は、2つの貯留室でなく、2つの別々のリザーバで構成されてもよい。
【0019】
第1液路51は、マスタシリンダ装置4と下流ユニット3とを接続する液路である。第1液路51は、出力ポート412を介してマスタ室41aに接続されている。マスタ室41aとリザーバ45とが液圧的に非接続な状態で、マスタピストン42がマスタ室41aを小さくするように摺動した場合、マスタ室41aから出力ポート412を介して第1液路51にフルードが供給され、第1液路51に液圧が発生する。マスタ室41aで発生された液圧は第1液路51を介して下流ユニット3に供給される。第1液路51は、後述する連通路53と接続されている接続部50を含む。第1液路51には、マスタカット弁62と圧力センサ72とが設けられている。
【0020】
マスタカット弁62は、第1液路51において、接続部50よりもマスタシリンダ装置4側に設けられたノーマルオープン型の電磁弁である。マスタカット弁62が閉弁されている場合、マスタシリンダ装置4と下流ユニット3とは液圧的に遮断される。
【0021】
圧力センサ72は、第1液路51において、マスタカット弁62よりもマスタシリンダ装置4側に設けられている。圧力センサ72は第1液路51内の圧力を検出する。マスタカット弁62が閉弁されている状態で圧力センサ72が検出する圧力は、マスタ室内で発生している圧力であるマスタ圧に相当する。
【0022】
電動シリンダ2は、シリンダ21と、電気モータ22と、ピストン23と、液圧室24と、付勢部材25と、を有する。電動シリンダ2は、シリンダ21内に単一の液圧室24が形成されているシングルタイプの電動シリンダである。以下、電動シリンダ2の説明において、ピストン23が液圧室24を小さくする方向を前方、ピストン23が液圧室24を大きくする方向を後方とする。
【0023】
シリンダ21は、有底の筒状部材である。シリンダ21には、入力ポート211及び出力ポート212が形成されている。図2及び図3に示すように、入力ポート211は開口部であり、シリンダ21に設けられたシール部材X1とシール部材X2との間に形成されている。シール部材X1とシール部材X2は環状シール部材である。出力ポート212は開口部であり、入力ポート211よりも先端側に形成されている。入力ポート211と出力ポート212は夫々、少なくとも1つ形成されていればよい。
【0024】
電気モータ22は、回転運動を直線運動に変換する直動機構22aを介してピストン23に接続されている。ピストン23は有底円筒状部材であり、電気モータ22の駆動によりシリンダ21内を摺動する。ピストン23には貫通孔231が形成されている。貫通孔231はピストン23が初期位置に位置する場合、入力ポート211と連通する。詳細は後述する。
【0025】
液圧室24は、シリンダ21とピストン23により区画されており、ピストン23の移動に応じて容積が変化する。ピストン23の初期位置は、液圧室24の容積が最大となる位置である(図2参照)。なお、電動シリンダ2の説明において、液圧室24の容積が小さくなるピストン23の移動方向を前方とし、その反対方向を後方とする。
【0026】
液圧室24は、入力ポート211を介してリザーバ45と連通可能である。詳細には、ピストン23が初期位置に位置する場合、貫通孔231と入力ポート211とを介してリザーバ45に液圧的に接続される。貫通孔231と入力ポート211とが連通していない場合、液圧室24とリザーバ45とは液圧的に遮断される。液圧室24は、出力ポート212を介して第2液路52に接続されている。
【0027】
付勢部材25は、液圧室24に配置され、ピストン23を初期位置に向けて付勢するバネである。電気モータ22が駆動していない場合、付勢部材25の付勢力によりピストン23は初期位置に位置する。
【0028】
ピストン23が初期位置に位置する場合、液圧室24は入力ポート211と貫通孔231とリザーバ液路54とを介してリザーバ45に接続される。電気モータ22の駆動によりピストン23が前方に所定量移動した場合、入力ポート211と貫通孔231との連通は遮断される。この場合、液圧室24はリザーバ45と液圧的に非接続となる。液圧室24とリザーバ45とが液圧的に非接続な状態でピストン23が液圧室24を小さくするように摺動した場合、液圧室24から出力ポート212を介してフルードが第2液路52に供給され、第2液路52に液圧が発生する。
【0029】
図2及び図3に示すように、電動シリンダ2は、ピストン23のシリンダ21に対する相対位置が所定の開放位置である場合に入力ポート211がピストン23により開放され、ピストン23のシリンダ21に対する相対位置が所定の閉鎖位置である場合に入力ポート211がピストン23により閉鎖されるように構成されている。閉鎖位置は、例えば、液圧室24とリザーバ液路54とが遮断される位置のうち液圧室24の容積が最大となる位置に設定されている。
【0030】
第2液路52は、電動シリンダ2と下流ユニット3とを接続する液路である。液圧室24で発生された液圧は、第2液路52を介して下流ユニット3に供給される。第2液路には液圧センサ73が設けられている。なお、第1液路51及び第2液路52は、マスタシリンダ装置4と下流ユニット3とを接続する液路のうち、上流ユニット11内に配置された部分である。
【0031】
液圧センサ73は、第2液路52内の圧力を検出するセンサである。車両用制動装置1の制御モードが後述するブレーキバイワイヤモード(以下「バイワイヤモード」という)である状態において、液圧センサ73が検出する液圧は、電動シリンダ2の出力圧に相当する。
【0032】
連通路53は、第1液路51と第2液路52とを接続する液路である。連通路53は接続部50で第1液路51と接続されている。連通路53には連通制御弁61が設けられている。
【0033】
連通制御弁61はノーマルクローズ型の電磁弁である。連通制御弁61の弁体は、弁座よりも第1液路51側に配置されている。そのため連通路53において、第1液路51側の圧力が第2液路52側の圧力よりも高い場合、連通制御弁61に対しては閉弁方向に力が作用する。これにより、連通制御弁61閉弁時にホイルシリンダ81、82の液圧が電動シリンダ2の出力圧よりも高くなっても、弁体には弁座に押し付けられる方向に力が加わるため(セルフシールされ)、閉弁が維持される。
【0034】
ストロークセンサ71は、ブレーキペダルZのストロークを検出する。本実施形態では、2つのストロークセンサ71が設けられている。2つのストロークセンサ71によって検出されたデータは、各ブレーキECU901、902に送信される。ブレーキECU901、902は、それぞれ対応するストロークセンサ71からストローク情報を取得する。
【0035】
レベルスイッチ74はリザーバ45に設けられていて、リザーバ45の液面レベルが所定位置未満になったことを検出する。レベルスイッチ74はリザーバ45の液面レベルが所定値未満となった場合、液面レベルが低下したことを示すデータを第1ブレーキECU901に送信する。
【0036】
(下流ユニット)
次に、図4を参照して、下流ユニット3を説明する。下流ユニット3は、いわゆるESCアクチュエータであって、各ホイルシリンダ81~84の液圧を独立に調圧することができる。詳細には、下流ユニット3は、ホイルシリンダ81、82を調圧可能に構成された第1液圧出力部31と、ホイルシリンダ83、84を調圧可能に構成された第2液圧出力部32と、を備える。以下、下流ユニット3の説明において、下流ユニット3に対する上流ユニット11の位置を上流とし、下流ユニット3に対するホイルシリンダ81~84の位置を下流とする。
【0037】
第1液圧出力部31は、上流側で第1液路51に接続され、下流側でホイルシリンダ81、82に接続されている。第1液圧出力部31と第1液路51とは、第1連結路510を介して接続されている。第2液圧出力部32は、上流側で第2液路52に接続され、下流側でホイルシリンダ83、84に接続されている。第2液圧出力部32と第2液路52とは、第2連結路520を介して接続されている。第1液圧出力部31と第2液圧出力部32とは、下流ユニット3内で液圧回路上、互いに独立している。
【0038】
第1液圧出力部31には、第1連結路510を介して上流ユニット11からフルードが供給される。第1液圧出力部31は、上流ユニット11が発生させた基礎液圧を基に、ホイルシリンダ81、82の液圧を増大可能に構成されている。第1液圧出力部31は、入力された液圧とホイルシリンダ81、82の液圧との間に差圧を発生させることでホイルシリンダ81、82を加圧するように構成されている。
【0039】
第1液圧出力部31は、液路311と、ポンプ液路315aと、圧力センサ75と、差圧制御弁312と、チェックバルブ312aと、保持弁313と、チェックバルブ313aと、減圧液路314aと、減圧弁314と、ポンプ315と、電気モータ316と、リザーバ317と、還流液路317aと、を備えている。
【0040】
液路311は、第1連結路510とホイルシリンダ81とを接続する液路である。液路311は、ポンプ液路315aと接続された分岐部Xを含む。液路311は、分岐部Xで、ホイルシリンダ81に接続する液路とホイルシリンダ82に接続する液路とに分岐する。液路311の2つの液路上の構成は同様であるため、ホイルシリンダ81に接続する液路のみを(液路311として)説明する。
【0041】
圧力センサ75は、液路311において差圧制御弁312よりも上流ユニット11側に設けられている。圧力センサ75は液路311内の圧力を検出する。圧力センサ75が検出する圧力は、第1液路51及び第1連結路510から第1液圧出力部31に入力される液圧に相当する。圧力センサ75によって検出されたデータは第2ブレーキECU902に送信される。
【0042】
差圧制御弁312は、液路311において、分岐部Xと圧力センサ75との間に設けられたノーマルオープン型のリニアソレノイドバルブである。差圧制御弁312の開度が制御されることで、差圧制御弁312を挟んだ上下流間に差圧を発生させることができる。チェックバルブ312aは、差圧制御弁312に対して並列に設けられている。チェックバルブ312aは、上流側から下流側に向けてのフルードの流通のみを許可するよう構成されている。
【0043】
保持弁313は、液路311において、分岐部Xとホイルシリンダ81との間に設けられたノーマルオープン型の電磁弁である。チェックバルブ313aは、保持弁313に対して並列に設けられている。チェックバルブ313aは下流側から上流側に向けてのフルードの流通のみを許可するように構成されている。
【0044】
減圧液路314aは、液路311のうち保持弁313とホイルシリンダ81との間の部分と、リザーバ317とを接続する液路である。減圧液路314aには、減圧弁314が設けられている。
【0045】
減圧弁314は、減圧液路314aに設けられたノーマルクローズ型の電磁弁である。減圧弁314が開弁状態の場合、ホイルシリンダ81内のフルードは減圧液路314aを介してリザーバ317に流入可能である。したがって、減圧弁314を開弁させることで、ホイルシリンダ81の圧力を減圧可能である。
【0046】
リザーバ317はフルードを貯留する周知の調圧リザーバであり、減圧液路314aおよび還流液路317aと接続されている。還流液路317aは、液路311において圧力センサ75と差圧制御弁312との間の部分と、リザーバ317とを接続する液路である。リザーバ317内のフルードは、ポンプ315の作動により吸入される。リザーバ317内のフルード量が減少すると、リザーバ317内の弁が開弁し、リザーバ317に還流液路317aを介して第1液路51からフルードが供給される。
【0047】
ポンプ液路315aは、減圧液路314aにおいて減圧弁314とリザーバ317との間の部分と、液路311の分岐部Xとを接続する液路である。ポンプ液路315aにはポンプ315が設けられている。
【0048】
ポンプ315は、電気モータ316の駆動に応じて作動するポンプであり、例えば周知のピストンポンプやギアポンプである。ポンプ315の吸入側はリザーバ317と接続されていて、ポンプ315の吐出側は分岐部Xに接続されている。ポンプ315が作動すると、リザーバ317内のフルードを吸入して、分岐部Xにフルードを供給する。
【0049】
第1液圧出力部31は、各種電磁弁やポンプの作動により、上流側から入力された液圧を基にホイルシリンダ81、82を加圧可能に構成されている。第2液圧出力部32は圧力センサ75が設けられていない点を除き、第1液圧出力部31と同様の構成であるため、説明を省略する。第2液圧出力部32も第1液圧出力部31と同様に、基礎液圧を基にホイルシリンダ83、84を加圧可能に構成されている。なお、第1液圧出力部31と各ホイルシリンダ81、82とは液路310により接続され、第2液圧出力部32と各ホイルシリンダ83、84とは液路320により接続されている。
【0050】
(ブレーキECU)
第1ブレーキECU901及び第2ブレーキECU902(以下「ブレーキECU901、902」ともいう)は、それぞれCPUやメモリを備える電子制御ユニットである。各ブレーキECU901、902は、各種制御を実行する1つ又は複数のプロセッサを備えている。第1ブレーキECU901と第2ブレーキECU902とは、別個のECUであって、互いに情報(制御情報等)を通信可能に接続されている。
【0051】
第1ブレーキECU901は、上流ユニット11を制御可能に構成されている。詳細には、第1ブレーキECU901は、上流ユニットの複数のセンサ71、72、73、74によって検出されたデータに基づいて、電動シリンダ2及び各電磁弁61、62、44を制御可能である。第1ブレーキECU901は、圧力センサ72、73の検出結果及び下流ユニット3の制御状態に基づいて、各ホイル圧を演算することができる。
【0052】
第2ブレーキECU902は、ストロークセンサ71及び圧力センサ75によって検出されたデータに基づいて、下流ユニット3を制御可能に構成されている。また第2ブレーキECU902は、車両に設けられた車輪速度センサ(図示略)や加速度センサ(図示略)等によって検出されたデータも受信する。第2ブレーキECU902は、下流ユニット3によりホイルシリンダ81を加圧する場合、差圧制御弁312に目標差圧(ホイルシリンダ81の液圧>第1液路51の液圧)に応じた制御電流を印加し、差圧制御弁312を閉弁させる。この際、保持弁313は開弁しており、減圧弁314は閉弁している。また、ポンプ315を作動させることで、第1液路51からリザーバ317を介して分岐部Xにフルードが供給される。これにより、ホイルシリンダ81が加圧される。
【0053】
第2ブレーキECU902は、アンチスキッド制御等で下流ユニット3によりホイル圧を減圧する場合、減圧弁314を開弁させ且つ保持弁313を閉弁させた状態でポンプ315を作動させ、ホイルシリンダ81内のフルードをポンプバックさせる。第2ブレーキECU902は、下流ユニット3によりホイル圧を保持する場合、保持弁313及び減圧弁314を閉弁させる。電動シリンダ2又はマスタシリンダ装置4の作動のみによりホイル圧を加圧又は減圧する場合、第2ブレーキECU902は、差圧制御弁312及び保持弁313を開弁し、減圧弁314を閉弁させる。
【0054】
第2ブレーキECU902は、圧力センサ75及び下流ユニット3の制御状態に基づいて、各ホイル圧を演算することができる。なお、各種センサの検出値は、両方のブレーキECU901、902に送信されてもよい。
【0055】
車両用制動装置1は、通常制御を実行可能に構成されている。通常制御は、バイワイヤモードとも呼ばれる。通常制御において、上流ユニット11の出力圧は、電動シリンダ2で出力した液圧である。下流ユニット3は、上流ユニット11の出力圧に基づいて、ホイルシリンダ81~84に液圧を出力可能である。以下、通常制御について説明する。
【0056】
(通常制御)
第1ブレーキECU901は、電気モータ22等を含む上流ユニット11を制御する制御部91を備えている。制御部91は、通常制御と遮断制御とを実行可能に構成されている。通常制御は、マスタシリンダ装置4とホイルシリンダ81~84とを液圧的に遮断し、電動シリンダ2と下流ユニット3との少なくとも一方によってホイルシリンダ81~84を加圧する制御である。通常制御は、準備制御と通常加圧制御とを含む。
【0057】
準備制御は、いわゆるバイワイヤモードを形成する制御である。準備制御では、制御部91は、マスタカット弁62を閉弁し、連通制御弁61及びシミュレータカット弁44を開弁させる。準備制御は、車両用制動装置1が設けられている車両が発進可能な状態になった場合に実行される。発進可能な状態になった場合とは、例えば、車両のイグニッションがオンされた場合や、電気自動車が起動された場合である。より詳細に、第1実施形態の準備制御は、第1ブレーキECU901が起動(電源オン)した場合に実行される。
【0058】
通常加圧制御は、バイワイヤモード(準備制御完了状態)でホイルシリンダ81~84を加圧する制御である。通常加圧制御において、制御部91は、ストロークセンサ71及び圧力センサ72が検出したデータを基に、目標出力圧を設定する。設定された目標出力圧に基づいて、電動シリンダ2を制御する。第2ブレーキECU902は、アンチスキッド制御等の実行に際して下流ユニット3を作動させる。このように通常制御では、設定された目標値を基に、電動シリンダ2と第1液圧出力部31と第2液圧出力部32とが制御されることで、ホイルシリンダ81~84の液圧が調整可能となる。
【0059】
(遮断制御)
遮断制御は、電動シリンダ2とリザーバ45とを液圧的に遮断する制御である。制御部91は、図3に示すように、貫通孔231と入力ポート211とが連通しない位置まで、電動シリンダ2のピストン23を移動させる。遮断制御は、準備制御完了後、すなわち通常制御においてマスタカット弁62が閉弁し、連通制御弁61及びシミュレータカット弁44が開弁された状態で実行される。このように、遮断制御は、第1ブレーキECU901起動後、準備制御と通常加圧制御との間に実行される。
【0060】
遮断制御が実行されると、バイワイヤモードにおいて電動シリンダ2とリザーバ45とが液圧的に遮断された状態となる。そのため、例えば上流ユニット11と下流ユニット3とを接続する連結路510、520が破損したとしても、当該破損部から電動シリンダ2を介してリザーバ45のフルードが漏れることを防止することができる。また、電動シリンダ2のピストン23が初期位置よりも前進している状態で通常加圧制御が実行されることで、電動シリンダ2による加圧応答性の向上も得られる。
【0061】
(連通制御)
制御部91は、更に、連通制御も実行可能に構成されている。本実施形態では、連通制御は、電動シリンダ2のピストン23を初期位置に戻し、電動シリンダ2の液圧室24とリザーバ45とを連通させる制御である。閉鎖位置にあるピストン23は、例えば電気モータ22が非通電状態になることで、付勢部材25の力により初期位置に戻り、開放位置となる。制御部91は、電気モータ22への通電をオフにすることまたは電動モータ22でピストン23を後退させることで連通制御を実行する。
【0062】
連通制御は、バイワイヤモードが形成されていて且つ電動シリンダ2が作動していない状態で実行される。すなわち、連通制御は、準備制御と遮断制御とが実行された状態で実行される。
【0063】
本開示において、液圧室24の液圧が目標出力圧(「目標圧」に相当する)に対して過大である状態を「特定状態」と称する。また、特定状態ではない状態を「通常状態」と称する。例えば、電動シリンダ2により液圧室24に液圧を発生させる液圧発生要求(「制動要求」ともいえる)がない場合の特定状態は、目標出力圧が0であるにもかかわらず液圧室24の液圧が閾値以上である状態に相当する。
【0064】
制御部91は、液圧発生要求の有無(例えばストロークセンサ71及び/又は圧力センサ72の検出値)と圧力センサ73の検出値とに基づいて、現状が特定状態であるか否かを判定する。判定の一例として、制御部91は、液圧室24の実圧(圧力センサ73の検出値)と目標出力圧との差が閾値以上である場合、現状が特定状態であると判定する。
【0065】
制御部91は、電気モータ22を制御することで、通常状態で液圧発生要求がない場合にピストン23を閉鎖位置に移動させ、特定状態で液圧発生要求がない場合にピストン23を開放位置に移動させる。なお、通常状態において液圧発生要求がある場合(通常加圧制御時)には、入力ポート211の閉鎖状態は維持しつつ(閉鎖位置より前方で)、液圧発生要求の値に応じてピストン23の位置が制御される。
【0066】
車両に設けられた車輪には、ディスクブレーキ(図示略)が設けられている。ディスクブレーキは各車輪に摩擦制動力を発生させるときに、摩擦熱で発熱する。発生した熱はホイルシリンダ81~84を介してフルードに伝達する。伝達された熱によってフルードが加熱されることで、フルード温度が上昇する。
【0067】
フルード温度が上昇するとフルードは膨張する。マスタカット弁62が閉弁し且つ電動シリンダ2とリザーバ45とが液圧的に遮断されている状態では、ホイルシリンダ81~84に接続する液路(液路310、320、311、510、520、51、52)は密閉されている。閉じられた液路からはフルードが流出できないため、膨張したフルードによってホイル圧は上昇する。温度上昇により増圧されたホイル圧によって、制動要求されていないにもかかわらず、車輪に対して制動力が付与される可能性がある。この場合、与えられるべきではない制動力が車両に付与されることとなる。
【0068】
図5を参照し、通常制御、遮断制御、及び連通制御の一例を説明する。制御部91は、第1ブレーキECU901が起動すると、バイワイヤモードを形成する(S1)。すなわち、ステップS1において、制御部91は、マスタカット弁62を閉弁し、連通制御弁61及びシミュレータカット弁44を開弁する。ステップS1が準備制御に相当する。
【0069】
制御部91は、電動シリンダ2のピストン23を初期位置から所定量前進させる(S2)。ステップS2では、制御部91は、貫通孔231と入力ポート211とが連通しない位置まで、電動シリンダ2のピストン23を移動させる。ステップS2が遮断制御に相当する。車両電源(例えばイグニッション又は電気自動車の電源)がオフされると(S3:Yes)、制御は終了し、電気モータ22が非通電状態となり、ピストン23は閉鎖位置から開放位置(初期位置)に戻る。
【0070】
車両電源のオンが維持された状態で(S3:No)、制御部91は、制動要求(液圧発生要求)が入力されたか否かを判断する(S4)。制御部91は、各種センサから送信されたデータを基に、制動要求が入力されたか否かを判断する。制動要求が入力された場合(S4:Yes)、制御部91は、目標出力圧を設定し、電動シリンダ2を駆動する(S5)。つまり、制御部91は、通常加圧制御を実行する。なお、ステップS5では、制動要求の程度に応じて電動シリンダ2と下流ユニット3との両方が駆動されてもよい。例えば制動要求の程度が大きく、大きな制動力が要求された場合には電動シリンダ2と下流ユニット3との両方が駆動されてもよい。
【0071】
制御部91は、制動要求がなくなったか否か、すなわち制動が終了したか否かを判断する(S6)。制動が終了した場合(S6:Yes)、ピストン23は閉鎖位置で維持され(遮断制御完了状態で)、制御はステップS3に戻る。制動が終了していない場合(S6:No)、制動要求に応じた通常加圧制御が継続される(S5)。
【0072】
制動要求が入力されていない場合(S4:No)、制御部91は、圧力センサ73が検出したデータが示す実出力圧Peと、目標出力圧Ptとを基に、ホイル圧が異常であるか否かを判断する(S10)。すなわち制御部91は、現状が特定状態であるか否かを判定する。例えばバイワイヤモードで、電動シリンダ2が作動していない状態では、目標出力圧は「0」である。制御部91は、実出力圧Peと目標出力圧Ptとの偏差Deを算出する。制御部91は、算出した偏差Deを基に、ホイル圧が異常であるか否かを判断する。
【0073】
算出された偏差Deが閾値Th1未満である場合(S10:No)、制御部91は、ホイル圧が正常であると判断する。閾値Th1は異常判断に用いられる基準値であり、予め設定されている値である。ホイル圧が正常であると判断された場合(S10:No)、制御はステップS2に戻る。ステップS2に戻り、ピストン23が所定量の前進が完了していなければ、ピストン23を所定量前進させる。
【0074】
実出力圧Peが目標出力圧Ptよりも高い値であり且つ算出された偏差Deが閾値Th1以上である場合、制御部91は、ホイル圧が異常であると判断する(S10:Yes)。ホイル圧が異常であると判断された場合、電気モータ23を制御してピストン23を後退させる(S11)。電気モータ22の駆動によりピストン23が初期位置に戻ると、液圧室24とリザーバ45とが連通する。つまり、制御部91は、ステップS11において、連通制御を実行し、ピストン23を閉鎖位置から開放位置に移動させる。これにより、フルードは液圧室24からリザーバ液路54を介してリザーバ45に流出する。
【0075】
(構成まとめ)
車両用制動装置1は、シリンダ21内に形成された液圧室24に、電気モータ22によって駆動されるピストン23の位置に応じた液圧を発生させてホイルシリンダ81~84を加圧する電動シリンダ2と、シリンダ21に形成された入力ポート211を介して液圧室24とリザーバ45とを接続するリザーバ液路54と、切替部9と、を備えている。切替部9は、液圧室24の液圧が目標出力圧に対して過大である特定状態で液圧室24のフルードのリザーバ液路54を介するリザーバ45への流出を許容し、特定状態ではない通常状態でリザーバ液路54を介したフルードの流出を阻止する。第1実施形態の切替部9は、電気モータ22を制御することで、特定状態で連通制御を実行する制御部91を有している。
【0076】
(第1実施形態の効果)
上述した連通制御によれば、ホイル圧が上昇したことに伴い異常であると判断された場合に、電動シリンダ2とリザーバ45とが液圧的に接続される。つまり、ホイルシリンダ81~84は、電動シリンダ2を介してリザーバ45と液圧的に接続される。これにより制動要求に対応せずに上昇していたホイル圧は減圧される。制動要求されていないにもかかわらず、車両に制動力が付与されることが防止される。
【0077】
また、特定状態以外の通常状態においては、遮断制御又は通常加圧制御により、入力ポート211は閉鎖された状態が維持される。つまり、通常状態では、リザーバ液路54を介した液圧室24とリザーバ45との接続経路は遮断される。
【0078】
このように、第1実施形態によれば、通常状態において、電動シリンダ2とホイルシリンダ81~84とを接続する液路が破損した場合でも、液圧室24とリザーバ45とが遮断されているため、リザーバ45内のフルード漏れは抑制される。さらに、特定状態では、液圧室24とリザーバ45とが連通するため、非制動時(目標出力圧=0)におけるフルード膨張による制動力の発生を抑制することができる。
【0079】
<第2実施形態>
図6及び図7を参照して、第2実施形態を説明する。第2実施形態の説明において、第1実施形態の説明及び図面を参照できる。図6に示すように、第2実施形態における上流ユニット11は、電磁弁63を備えている。電磁弁63は、リザーバ液路54に設けられたノーマルオープン型の電磁弁である。第2実施形態では、遮断制御および連通制御における制御内容が第1実施形態と異なる。以下、主に相違点を説明する。
【0080】
第2実施形態の遮断制御において、制御部91は、電動シリンダ2を駆動して入力ポート211と貫通孔231とを液圧的に切断しなくてもよい。第2実施形態の遮断制御では、制御部91は、電磁弁63を閉弁する。電磁弁63が閉弁されることで、電動シリンダ2とリザーバ45とが液圧的に遮断される。すなわち、この場合、遮断制御において電動シリンダ2は駆動されなくてもよい。
【0081】
第2実施形態の連通制御では、制御部91は、電磁弁63を開弁させる。遮断制御で電動シリンダ2が駆動されていない場合、連通制御でも電動シリンダ2を制御しない。第2実施形態において、切替部9は、リザーバ液路54に設けられリザーバ液路54を開閉(連通/遮断)する電磁弁63と、電磁弁63を制御する制御部91と、を有している。制御部91は、通常状態で電磁弁63によりリザーバ液路54を遮断させ、特定状態で電磁弁63によりリザーバ液路54を連通させる。なお、通常加圧制御中、貫通孔231が閉鎖されているため、制御部91は、電磁弁63を開弁してもよい。つまり、制御部91は、通常状態で且つピストン23が開放位置に位置する際にのみ電磁弁63を閉弁してもよい。
【0082】
図7を参照して、第2実施形態における連通制御を説明する。通常加圧制御および遮断制御の説明は割愛する。制御部91は、ホイル圧が異常であると判断した場合(S10:Yes)、電磁弁63を開弁する(S21)。ステップS21において、制御部91は、電磁弁63への通電を中止する。通電中止に伴い、ノーマルオープン型の電磁弁である電磁弁63は開弁する。これにより、電動シリンダ2とリザーバ45とが液圧的に接続される。第2実施形態における連通制御でも、ホイル圧が上昇した場合に、電動シリンダ2を介してホイル圧を減圧することが可能である。つまり、第2実施形態の構成でも第1実施形態と同様の効果が発揮される。
【0083】
<その他>
本発明は、上記実施形態及び制御例に限られない。例えば、第1実施形態の連通制御において、制御部91は、電気モータ22への通電を停止してもよい。この場合、ステップS11では電気モータ23を駆動せずに通電を停止させることで、付勢部材25の付勢力によりピストン23が初期位置に向けて移動する。ピストン23が初期位置に戻ることで液圧室24とリザーバ45が液圧的に連通する。この連通制御は、付勢部材25を備えている電動シリンダに対して適用可能である。なお、第1及び第2実施形態の電動シリンダ2に替えて、付勢部材25を備えない電動シリンダを採用する場合、電気モータ22への通電構成が冗長構成となっていることが好ましい。
【0084】
また、ピストン23の位置にかかわらず、常に液圧室24とリザーバ45とを連通する液路を設け、当該液路に電磁弁を設けてもよい。この場合でも制御部91は、通常状態で電磁弁を閉じ、特定状態で電磁弁を開ける。また、この場合、制御部91は、制動中であっても、目標圧に対して実圧が所定値以上高い場合、特定状態と判定し、電磁弁を開ける連通制御を実行してもよい。つまり、この場合、連通制御は、液圧発生要求(制動要求)がある場合でも実行可能である。
【0085】
また、下流ユニット3は、ポンプ315に替えて電動シリンダを備えてもよい。また、制御部91が取得する制動要求は、ドライバによるブレーキペダルZの操作に基づく制動要求に限らず、自動ブレーキ制御・自動運転の制御にかかる制動要求や、他の装置(ECU)からの制動要求であってもよい。また、本発明は、例えば、回生制動装置を含む車両(ハイブリッド車や電気自動車)、自動ブレーキ制御を実行する車両、又は自動運転車両にも適用できる。
【符号の説明】
【0086】
1…車両用制動装置、2…電動シリンダ、21…シリンダ、22…電気モータ、23…ピストン、24…液圧室、45…リザーバ、54…リザーバ液路(液路)、63…電磁弁、81~84…ホイルシリンダ、9…切替部、91…制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7