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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052490
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】温度検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/01 20060101AFI20220328BHJP
【FI】
G01K7/01 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020158914
(22)【出願日】2020-09-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 恭士
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056JT06
(57)【要約】
【課題】比較的小さい回路規模で、電力変換器に含まれる半導体素子に関する温度を適切に検出する。
【解決手段】半導体素子に対応付けて設けられる1つ以上の温度検出素子31と、コンパレータ5132と、コンパレータの出力端子に電気的に接続され、かつ、可変のデューティで2値のパルス信号を発生させる処理装置52と、コンパレータの第1入力端子に、1つ以上の温度検出素子の両端電圧に応じた電圧を入力する第1電気回路部512と、コンパレータの第2入力端子に、パルス信号のデューティに応じた電圧を入力する第2電気回路部5131とを含む、温度検出装置が開示される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換器に含まれる半導体素子に関する温度を検出する温度検出装置であって、
前記半導体素子に対応付けて設けられる1つ以上の温度検出素子と、
コンパレータと、
前記コンパレータの出力端子に電気的に接続され、かつ、可変のデューティで2値のパルス信号を発生させる処理装置と、
前記コンパレータの第1入力端子に、前記1つ以上の温度検出素子の両端電圧に応じた電圧を入力する第1電気回路部と、
前記コンパレータの第2入力端子に、前記パルス信号のデューティに応じた電圧を入力する第2電気回路部とを含む、温度検出装置。
【請求項2】
前記処理装置は、前記パルス信号を2つ以上のデューティで発生させた際にデューティごとに得られる前記コンパレータの各出力に基づいて、前記温度を表す温度情報を生成する、請求項1に記載の温度検出装置。
【請求項3】
前記処理装置は、前記2つ以上の異なるデューティのうちの、一のデューティを、前記パルス信号を他の一のデューティで発生させた際に得られる前記コンパレータの出力に基づいて、決定する、請求項2に記載の温度検出装置。
【請求項4】
前記処理装置は、Nを正の整数としたとき、異なる複数のタイミングのそれぞれで、N個のデューティで発生させた前記パルス信号に基づいて、前記温度を表す温度情報を生成し、
Nの値は、前記複数のタイミングのうちの、一のタイミングと、他の一のタイミングとで、異なる、請求項1に記載の温度検出装置。
【請求項5】
前記処理装置は、一のタイミングで生成した前記温度情報に基づいて、次回以降のタイミングで生成する前記温度情報のためのNの値を決定する、請求項4に記載の温度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温度検出ダイオードを備えた半導体素子の温度を検出する際に、定電流源に電気的に接続した温度検出ダイオードの順方向電圧と三角波発生回路から出力される三角波信号とをコンパレータで比較し、絶縁素子を介してデューティ情報(又はローパスフィルタ回路で平滑化して直流レベルに変換した情報)を低圧側の処理装置に伝送する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-42435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、三角波発生回路等により回路規模が大きくなりやすく、制御基板の面積の低減やコストの低減の観点から改善の余地がある。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、比較的小さい回路規模で、電力変換器に含まれる半導体素子に関する温度を適切に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、電力変換器に含まれる半導体素子に関する温度を検出する温度検出装置であって、
前記半導体素子に対応付けて設けられる1つ以上の温度検出素子と、
コンパレータと、
前記コンパレータの出力端子に電気的に接続され、かつ、可変のデューティで2値のパルス信号を発生させる処理装置と、
前記コンパレータの第1入力端子に、前記1つ以上の温度検出素子の両端電圧に応じた電圧を入力する第1電気回路部と、
前記コンパレータの第2入力端子に、前記パルス信号のデューティに応じた電圧を入力する第2電気回路部とを含む、温度検出装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本開示によれば、比較的小さい回路規模で、電力変換器に含まれる半導体素子に関する温度を適切に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電動車両用モータ駆動システムの全体構成の一例を示す図である。
図2】一の半導体チップの構成を概略的に示す図である。
図3】温度センシング部の構成を概略的に示す図である。
図4】温度検出装置の構成を概略的に示す図である。
図5】温度検出装置の電気回路の一例を示す概略図である。
図6】パルス信号の説明図である。
図7】時定数による直流電圧Vdcの変化の説明図である。
図8】順方向電圧と温度の関係の説明図である。
図9】マイコンの動作例を示す概略的なフローチャートである。
図10図9の動作例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。
【0010】
ここでは、まず、本実施例による温度検出装置の説明に先立って、まず、本実施例による温度検出装置が適用されるのが好適な電動車両用モータ駆動システム1について説明する。なお、電動車両用モータ駆動システム1に関する図1の説明において及び図2以降の各図の説明において、特に言及しない限り、各種の要素間の“接続”という用語は、“電気的な接続”を意味する。
【0011】
図1は、電動車両用モータ駆動システム1の全体構成の一例を示す図である。モータ駆動システム1は、高圧バッテリ2の電力を用いて走行用モータ5(主機)を駆動することにより車両を駆動させるシステムである。なお、電動車両は、電力を用いて走行用モータ5を駆動して走行するものであれば、その方式や構成の詳細は任意である。電動車両は、典型的には、動力源がエンジンと走行用モータ5であるハイブリッド自動車や、動力源が走行用モータ5のみである電気自動車を含む。以下、車両とは、特に言及しない限り、モータ駆動システム1が搭載される車両を指す。
【0012】
モータ駆動システム1は、図1に示すように、高圧バッテリ2、平滑コンデンサ3、インバータ4(電力変換器の一例)、走行用モータ5、及びインバータ制御装置6を備える。
【0013】
高圧バッテリ2は、電力を蓄積して直流電圧を出力する任意の蓄電装置であり、ニッケル水素バッテリ、リチウムイオンバッテリや電気2重層キャパシタ等の容量性素子を含んでよい。高圧バッテリ2は、典型的には、定格電圧が100Vを超えるバッテリであり、定格電圧が例えば288Vである。平滑コンデンサ3は、高圧バッテリ2の正極側と負極側との間に電気的に接続される。平滑コンデンサ3は、高圧バッテリ2の正極側と負極側との間の電圧を平滑化する。
【0014】
インバータ4は、正極ラインと負極ラインとの間に互いに並列に配置されるU相、V相、W相の各アームを含む。U相アームはスイッチング素子(本例ではIGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)Q1、Q2の直列接続を含み、V相アームはスイッチング素子(本例ではIGBT)Q3、Q4の直列接続を含み、W相アームはスイッチング素子(本例ではIGBT)Q5、Q6の直列接続を含む。また、各スイッチング素子Q1~Q6のコレクタ-エミッタ間には、それぞれ、エミッタ側からコレクタ側に電流を流すようにダイオードD11~D16が配置される。なお、スイッチング素子Q1~Q6は、MOSFET(metal oxide semiconductor field-effect transistor)のような、IGBT以外の他のスイッチング素子であってもよい。
【0015】
なお、本実施例では、一例として、スイッチング素子Q1(スイッチング素子Q2~Q6についても同様)はダイオードD11を内蔵したチップの形態で実現され、「半導体チップ11」とも称する。
【0016】
走行用モータ5は、例えば3相の交流モータであり、U、V、W相の3つのコイルの一端が中性点で共通接続される。U相コイルの他端は、スイッチング素子Q1、Q2の中点M1に接続され、V相コイルの他端は、スイッチング素子Q3、Q4の中点M2に接続され、W相コイルの他端は、スイッチング素子Q5、Q6の中点M3に接続される。スイッチング素子Q1のコレクタと負極ラインとの間には、平滑コンデンサ3が接続される。
【0017】
インバータ制御装置6には、走行用モータ5を流れる電流を検出する電流センサ(図示せず)等の各種センサが接続される。インバータ制御装置6は、各種センサからのセンサ情報に基づいて、インバータ4を制御する。インバータ制御装置6は、例えばCPU、ROM、メインメモリ(全て図示せず)などを含み、インバータ制御装置6の各種機能は、ROM等に記録された制御プログラムがメインメモリに読み出されてCPUにより実行されることによって実現される。インバータ4の制御方法は、任意であるが、基本的には、U相に係る2つのスイッチング素子Q1、Q2が互いに逆相でオン/オフし、V相に係る2つのスイッチング素子Q3、Q4が互いに逆相でオン/オフし、W相に係る2つのスイッチング素子Q5、Q6が互いに逆相でオン/オフする。
【0018】
なお、図1に示す例では、モータ駆動システム1は、単一の走行用モータ5を備えているが、追加のモータ(発電機を含む)を備えてもよい。この場合、追加のモータ(複数も可)は、対応するインバータと共に、走行用モータ5及びインバータ4と並列な関係で、高圧バッテリ2に接続されてもよい。また、図1に示す例では、モータ駆動システム1は、DC/DCコンバータを備えていないが、高圧バッテリ2とインバータ4の間にDC/DCコンバータを備えてもよい。
【0019】
高圧バッテリ2と平滑コンデンサ3との間には、図1に示すように、高圧バッテリ2から電力供給を遮断するための遮断用スイッチSW1が設けられる。遮断用スイッチSW1は、半導体スイッチやリレー等で構成されてもよい。遮断用スイッチSW1は、常態でオン状態であり、例えば車両の衝突検出時等にオフとされる。なお、遮断用スイッチSW1のオン/オフの切換はインバータ制御装置6により実現されてもよいし、他の制御装置により実現されてもよい。
【0020】
本実施例では、インバータ制御装置6は、インバータ4の各半導体チップ11の温度を検出する温度検出装置50を含む。なお、変形例では、以下で説明する温度検出装置50の機能の一部又は全部は、インバータ制御装置6とは異なる処理装置により実現されてもよい。
【0021】
図2は、温度検出装置50が接続される半導体チップ11の端子の説明図であり、一の半導体チップ11の構成を概略的に示す図である。
【0022】
半導体チップ11は、温度センシング部110を含む。
【0023】
温度センシング部110は、2つの端子20A、20K間に接続される。なお、図2では、半導体チップ11のセンスエミッタ端子20Sや、ゲートに接続される端子20G、エミッタに接続される端子20E等のような他の端子が示される。なお、半導体チップ11の各端子は、2つの端子20A、20Kを有する限り、配置や数等は任意である。
【0024】
温度センシング部110は、その近傍の温度に応じた信号(電圧)を発生する。この場合、温度センシング部110からのアナログ信号である出力信号(以下、「温度センシング信号」とも称する)は、半導体チップ11に関する温度を表す。半導体チップ11に関する温度は、例えばスイッチング素子(図2では、スイッチング素子Q1)の温度として利用されてもよい。
【0025】
図3は、温度センシング部110の構成を概略的に示す図である。
【0026】
温度センシング部110は、1つ以上の温度検出ダイオード31(温度検出素子の一例)を含む。図3に示す例では、温度検出ダイオード31は、3つ設けられるが、数は任意である。以下では、特に言及しない限り、温度検出ダイオード31とは、3つの温度検出ダイオード31を指す。従って、例えば、温度検出ダイオード31の両端電圧とは、3つの温度検出ダイオード31全体としての両端電圧(すなわち2つの端子20A、20K間の電圧)を意味する。
【0027】
温度検出ダイオード31は、例えばそれぞれSiダイオードであってよい。本実施例では、一例として、温度検出ダイオード31は、アノード側が端子20A側になるように、2つの端子20A、20Kの間に接続される。ただし、温度検出ダイオード31は、アノード側が端子20K側になるように、2つの端子20A、20Kの間に接続されてもよい。
【0028】
図4は、温度検出装置50の構成を概略的に示す図である。
【0029】
本実施例による温度検出装置50は、電気回路51と、マイコン(マイクロコンピュータの略)52とを含む。図4では、一の半導体チップ11の温度センシング部110に対応付けられた電気回路51が示されるが、同様の電気回路51は、半導体チップ11ごとに設けられてもよい。他方、マイコン52は、複数の半導体チップ11に対して共通に設けられてもよい。
【0030】
電気回路51は、温度センシング部110に接続される。電気回路51は、2つの端子20A、20Kに接続される。電気回路51は、端子20Aから端子20Kに向かう方向の電流を生成可能である。
【0031】
端子20Aから端子20Kに向かう方向の電流は、温度検出ダイオード31に対する順方向の電流であり、以下、「順方向電流」とも称する。また、端子20Aから端子20Kに向かう方向を、「順方向」とも称する。順方向電流は、好ましくは、定電流である。すなわち、電気回路51は、好ましくは、定電流源を含む。順方向電流が生成されると、温度検出ダイオード31の両端電圧(温度センシング信号)は、温度検出ダイオード31の近傍の温度(≒半導体チップ11の温度)に応じた値となる。
【0032】
電気回路51は、順方向電流を生成した状態で得られる電圧情報(温度検出ダイオード31の両端電圧である電圧Vfを表す情報であり、以下、「順方向電圧情報」とも称する)をマイコン52に与える(図4の矢印S2参照)。
【0033】
マイコン52は、順方向電圧情報に基づいて、半導体チップ11に関する温度情報を得る。なお、半導体チップ11に関する温度とは、半導体チップ11の温度に関連する温度であり、例えば半導体チップ11自体の温度であってもよいし、半導体チップ11内の半導体素子(例えばスイッチング素子Q1等)の温度であってもよい。
【0034】
図4に示す例では、マイコン52は、パルス信号発生部520と、温度算出処理部521とを含む。なお、パルス信号発生部520及び温度算出処理部521は、マイコン52のCPU(図示せず)がメモリ(図示せず)内のプログラムを実行することで実現できる。
【0035】
パルス信号発生部520は、可変のデューティで2値のパルス信号を発生させる。パルス信号発生部520により発生されるパルス信号は、電気回路51に与えられる(図4の矢印S1参照)。パルス信号の機能は、後述する。
【0036】
温度算出処理部521は、電気回路51から得られる順方向電圧情報(図4の矢印S2参照)に基づいて、半導体チップ11に関する温度の算出値を導出する。なお、この算出値の導出方法は、後述する。
【0037】
図5は、温度検出装置50の電気回路51の一例を示す概略図である。図5には、電気回路51以外の関連構成(温度検出ダイオード31やマイコン52)も併せて示されている。なお、電気回路51は、例えば高圧バッテリ2に基づく高圧電位を扱う電子部品が配置される高圧領域に配置されるので、低圧領域に配置されるマイコン52との間には、絶縁トランシーバ60、61が設けられる。
【0038】
電気回路51は、定電流生成回路部510と、第1回路部512(第1電気回路部の一例)と、電圧情報生成部513とを含む。
【0039】
定電流生成回路部510は、定電流源を備え、順方向の定電流を生成する。定電流生成回路部510は、単電源の電源電圧(図5の“Vcc”参照)に基づいて動作する。なお、単電源は、車載の低圧バッテリ(図示せず)に基づいて生成されてよい。
【0040】
第1回路部512は、端子20Aと後述するコンパレータ5132とを接続する。これにより、コンパレータ5132には、端子20Aに生じる電圧Vfが入力される。
【0041】
電圧情報生成部513は、端子20Aに接続され、端子20Aに生じる電圧Vfを表す順方向電圧情報を生成する。なお、端子20Aに生じる電圧Vfは、定電流生成回路部510により順方向の定電流が生成されている状態では、温度検出ダイオード31の両端電圧に応じた電圧値となる。温度検出ダイオード31の両端電圧(順方向電圧)に対応する電圧Vfは、ダイオード電流Ifと、温度センシング部110の近傍の温度とに依存した値となる。ダイオード電流Ifは、定電流であるので、電圧Vfは、実質的に、温度センシング部110の近傍の温度のみに依存した値となる。
【0042】
図5に示す例では、電圧情報生成部513は、第2回路部5131と、コンパレータ5132とを含む。
【0043】
第2回路部5131は、マイコン52からのパルス信号(図4の矢印S1参照)に基づいて、パルス信号のデューティに応じた直流電圧Vdcを生成する。本実施例では、第2回路部5131は、パルス信号のデューティが大きくなるほど大きい直流電圧Vdcを生成する。
【0044】
図5に示す例では、第2回路部5131は、RCフィルタ(RC回路からなるローパスフィルタ)の形態であり、抵抗素子R1、R2、R3とコンデンサCとを含む。抵抗素子R2、R3は、互いに直列に接続され、電源電圧Vccとグランドの間に、接続される。抵抗素子R1は、一端が絶縁トランシーバ61の高圧領域側の端子に接続され、他端が抵抗素子R2、R3の間の接続点P5に接続される。コンデンサCは、一端がグランドに接続され、他端が抵抗素子R2、R3の間の接続点P5に接続される。
【0045】
この場合、パルス信号が絶縁トランシーバ61を介して第2回路部5131に入力されると、パルス信号のデューティに応じた直流電圧Vdcが接続点P5で生成される。具体的には、Vdcは、デューティ=Dutyとすると、以下の式で表現できる。
Vdc=Vcc×(R1×R3+Duty×R2×R3)/(R1×R2+R1×R3+R2×R3) 式(1)
コンパレータ5132は、第2回路部5131により生成される直流電圧Vdcと、端子20Aに生じる電圧Vfとの関係を表す情報を、順方向電圧情報として生成する。すなわち、コンパレータ5132は、第2回路部5131により生成される直流電圧Vdcと、端子20Aに生じる電圧Vfとの比較結果を表す情報を、順方向電圧情報として生成する。
【0046】
図5に示す例では、コンパレータ5132の非反転入力端子(+)(第1入力端子の一例)には、端子20Aが接続され、反転入力端子(-)(第2入力端子の一例)には、接続点P5が接続される。従って、コンパレータ5132の非反転入力端子(+)には、電圧Vfが入力され、反転入力端子(-)には、直流電圧Vdcが入力される。この場合、コンパレータ5132の出力端子には、電圧Vfが直流電圧Vdcよりも大きい場合は正の電圧(High)が発生し、電圧Vfが直流電圧Vdcよりも小さい場合は負の電圧(Low)が発生する。このようなコンパレータ5132の2値の出力(High又はLow)は、順方向電圧情報として、絶縁トランシーバ60を介してマイコン52に供給される。
【0047】
このような図5に示す電気回路51によれば、第2回路部5131により生成される直流電圧Vdcがコンパレータ5132に入力される。従って、図5に示す電気回路51によれば、第2回路部5131により生成される直流電圧Vdcに代えて三角波信号を入力するような比較例(図示せず)に比べて、回路規模の小さい構成を実現できる。すなわち、直流電圧Vdcに代えて三角波信号を入力するような比較例では、三角波発生回路が必要となり、回路規模が比較的大きくなる。これに対して、本実施例によれば、三角波発生回路を必要としない回路規模の小さい構成で、順方向電圧情報を得ることができる。
【0048】
次に、図4及び図5とともに、図6以降を参照して、マイコン52の動作(直流電圧Vdcに基づく順方向電圧情報から温度情報を得る方法等)について更に詳説する。
【0049】
図6は、パルス信号発生部520により発生されるパルス信号の説明図である。図6には、横軸に時間を取り、縦軸に電圧を取り、パルス信号発生部520により発生されるパルス信号の波形の一例が示される。図7は、デューティの変化時の直流電圧Vdcの変化態様の説明図である。図7には、横軸に時間を取り、縦軸に電圧を取り、直流電圧Vdcの時系列波形の一例が示される。
【0050】
本実施例では、パルス信号発生部520は、図4に示すように、分解能設定部5201と、デューティ設定部5202とを備える。
【0051】
分解能設定部5201は、半導体チップ11に関する温度情報の分解能を設定する。半導体チップ11に関する温度情報は、分解能が高くなるほど精度が良好となる反面、処理負荷(処理時間)が大きくなる。従って、分解能設定部5201は、必要な精度等に応じて、分解能を設定してよい。例えば、分解能設定部5201は、半導体チップ11に関する温度情報が表す温度が比較的高い場合に、分解能を高く設定してもよい。
【0052】
本実施例では、一例として、半導体チップ11に関する温度情報は、Nビットの分解能を有し、分解能設定部5201は、正の整数Nの値を設定する。例えば、分解能設定部5201がN=1に設定すると、半導体チップ11に関する温度情報は、ある温度よりも高いか否かの情報となる。Nビットの分解能に応じた、半導体チップ11に関する温度情報の具体例は、後述する。
【0053】
デューティ設定部5202は、パルス信号発生部520で発生させるパルス信号のデューティを決定する。デューティは、図6に示すように、パルス信号の周期Tに対するオン時間TONの比率(TON/T)である。デューティは、上述したように、直流電圧Vdcを変化させる機能を有する。
【0054】
図6に示す例では、パルス信号発生部520により発生されるパルス信号は、区間A1と、区間A2と、区間A3(途中まで図示)とで、デューティが異なる。この場合、3種類の異なる直流電圧Vdcに基づいて、温度情報を生成できる。
【0055】
デューティ設定部5202によるデューティの可変範囲が0から1とすると、当該可変範囲で、半導体チップ11に関する温度情報の、想定される変動範囲(すなわち、想定される電圧Vfの変動範囲)がカバーされるように、上述した第2回路部5131のRCフィルタの特性が適用される。
【0056】
具体的には、抵抗素子R1、R2、R3のそれぞれの抵抗値を、R1、R2、R3とし、想定される電圧Vfの変動範囲を、Vfmin≦Vf≦Vfmaxとし、デューティ=1のときの直流電圧VdcをVHとし、デューティ=0のときの直流電圧VdcをVLとすると、VH≧VfmaxかつVL≦Vfminとなるように、R1、R2、R3の各値が適合される。なお、VH、VLは、上記の式(1)から、以下の通りである。
VH=Vcc×(R1×R3+R2×R3)/(R1×R2+R1×R3+R2×R3)
VL=Vcc×(R1×R3)/(R1×R3+R1×R2+R2×R3)
例えば、半導体チップ11に関する温度情報の、想定される変動範囲が、-40℃~150℃とする。また、温度検出ダイオード31の特性は、-40℃のときの電圧Vf=3Vとなり、150℃のときの電圧Vf=1Vとなるものとする(図8参照)。この場合、VH=3V、VL=1Vに設定し、Vcc=5Vであるとすると、例えば、R1=10kΩ、R2=20kΩ、かつR3=10kΩに設定すれば、VH≧VfmaxかつVL≦Vfminとなる。
【0057】
なお、デューティが変化すると、上述した第2回路部5131のRCフィルタの時定数τに応じて、直流電圧Vdcが変化する。例えば、図7では、デューティが時点t1で0から0.5に変化した場合の、直流電圧Vdcの時系列波形の一例が示される。図7に示す例では、直流電圧Vdcは、時点t1から上昇し始め、時点t2付近から、ある値(デューティ=0.5に応じた値)に収束している。
【0058】
なお、コンデンサCの容量をCとし、上述した第2回路部5131のRCフィルタ(ローパスフィルタ)のカットオフ周波数をfcとすると、カットオフ周波数fcは、以下の式で表すことができる。
fc=(R1×R2+R1×R3+R2×R3)/(2π×R1×R2×R3×C) 式(2)
このとき、パルス信号の周波数fp(=1/T)とすると、カットオフ周波数fcがfpよりも十分小さくなるように、各種値R1、R2、R3、Cが適合されてよい。例えば、fp=100kHzであれば、fc<1kHzになるように設定してよい。例えば、この場合、上記の式(2)に当てはめると、以下の関係式を満たさせばよい。
1kHz>(R1×R2+R1×R3+R2×R3)/(2π×R1×R2×R3×C)
なお、上述したように、R1=10kΩ、R2=20kΩ、かつR3=10kΩであるとすると、例えばC=100nF程度であってよい。この場合、RCフィルタの時定数τは、τ=(R1×R2×R3×C)/(R1×R2+R1×R3+R2×R3)=0.4[ms]となる。デューティを変化させた時点(図7の時点t1参照)から直流電圧Vdcが安定する時点(図7の時点t2参照)までの時間ΔTを、ΔT=10×τ程度とすると、τ=0.4のとき、ΔT=4[ms]となる。これは、半導体チップ11に関する温度に有意な変化が生じるのに要する時間に比べて十分小さく、従って、後述するようなNビットの分解能に係る繰り返しの処理が可能である。
【0059】
温度算出処理部521は、パルス信号発生部520で発生させるパルス信号のデューティと、コンパレータ5132からの2値の出力(High又はLow)との関係に基づいて、電圧Vfを算出し、算出した電圧Vfに応じた温度を算出する。
【0060】
コンパレータ5132からの2値の出力(High又はLow)は、上述したように、電圧Vfが、その時の直流電圧Vdcよりも高いか否かを表す。そして、直流電圧Vdcとデューティ(式中では、Duty)とは、上述した式(1)のように、Vdc=Vcc×(R1×R3+Duty×R2×R3)/(R1×R2+R1×R3+R2×R3)の関係がある。従って、デューティを変化させることで、VL≦Vdc≦VHの範囲で、直流電圧Vdcを自由に変化させることができる。例えば、ある一のデューティで発生させるパルス信号に対して、コンパレータ5132からの2値の出力がHighであるならば、当該一のデューティに応じた直流電圧Vdcよりも、電圧Vfが大きいことがわかる。この場合、当該一のデューティよりも大きい一のデューティで発生させるパルス信号に対して、コンパレータ5132からの2値の出力がLowであるならば、当該一のデューティに応じた直流電圧Vdcよりも、電圧Vfが小さいことがわかる。このようにして、デューティを変化させたパルス信号を発生させ、デューティごとに得られるコンパレータ5132の各出力に基づいて、電圧Vfの属する電圧範囲を絞り込むことができ、必要な分解能で電圧Vfを算出(推定)できる。例えば、必要な分解能が比較的高い場合は、変化させるデューティの数を比較的大きい数に設定すればよい。
【0061】
このようにして、本実施例によれば、デューティを適切に可変することで、電圧Vfを精度良く算出(推定)できる。また、必要な分解能(電圧Vfの精度及びそれに伴う半導体チップ11に関する温度情報の精度)に応じて、電圧Vfを算出するためのデューティの数を変化させることができる。
【0062】
また、本実施例によれば、デューティをマイコン52により設定できるので、マイコン52のカウンタを利用して、変化させるデューティの数を容易に増加できる。従って、必要な分解能(電圧Vfの精度及びそれに伴う半導体チップ11に関する温度情報の精度)が比較的高い場合にも対応できる。
【0063】
温度算出処理部521は、電圧Vfを算出すると、電圧Vfに応じた温度を表す温度情報(半導体チップ11に関する温度情報)を算出する。図8は、電圧Vfと温度Tjとの関係を示す図である。図8には、横軸に温度を取り、縦軸に電圧Vfを取り、電圧Vfと温度Tjとの関係(特性)を示す直線が示される。この場合、直線は、例えばTj=95×Vf+245で表される。なお、このような直線は、温度検出ダイオード31の特性等に応じて決まり、設計情報に基づいて導出されてよい。図8に示す例では、例えば電圧Vf=1.625であるとき、Tj=90.625を導出できる。
【0064】
図9は、マイコン52の動作例を示す概略的なフローチャートである。図9に示す処理は、例えば車両の動作状態において、所定周期ごとに繰り返し実行されてよい。なお、「所定」とは、例えば工場出荷時までの設計段階であらかじめ規定されていることを意味する。
【0065】
ステップS900では、マイコン52は、温度検出処理フラグF1が“0”であるか否かを判定する。温度検出処理フラグF1が“1”である状態は、温度検出処理が実行されている状態に対応し、温度検出処理フラグF1が“0”である状態は、温度検出処理が実行されていない状態に対応する。温度検出処理フラグF1の初期値(例えば車両の起動直後の値)は、“0”であってよい。判定結果が“YES”の場合、ステップS902に進み、それ以外の場合は、ステップS920に進む。
【0066】
ステップS902では、マイコン52は、温度検出処理の開始条件が成立したか否かを判定する。温度検出処理の開始条件は、任意であり、例えば前回の温度検出処理の終了時から所定時間が経過した場合に満たされてもよい。この場合、所定時間は、前回の温度検出処理で得られた温度情報(半導体チップ11に関する温度情報)が高くなるほど短くなる態様で、設定(可変)されてもよい。判定結果が“YES”の場合、ステップS904に進み、それ以外の場合は、今回周期の処理はそのまま終了する。
【0067】
ステップS904では、マイコン52は、温度検出処理フラグF1を“1”にセットする。
【0068】
ステップS906では、マイコン52は、今回の温度検出処理で導出する半導体チップ11に関する温度情報の分解能を設定する。具体的には、Nビットの分解能に係る正の整数Nの値を設定する。Nの値は、任意の態様で設定されてもよい。例えば、マイコン52は、前回の温度検出処理で得られた温度情報(半導体チップ11に関する温度情報)に基づいて、半導体チップ11に関する温度情報の温度が高くなるほど大きくなる態様で、Nの値を設定してもよい。この場合、例えば、マイコン52は、前回の温度検出処理で得られた温度情報(半導体チップ11に関する温度情報)の温度が閾値を超えない場合、N=k0とし、同温度が閾値を超えた場合、N=k1と設定してもよい。この場合、k1は、k0よりも大きい。あるいは、3段階以上でNの値を可変してもよい。
【0069】
ステップS907では、マイコン52は、j=1にセットする。jは、1から、Nの値まで1ずつインクリメントされる正の数であり、j番目のデューティが利用されている状態を表す。
【0070】
ステップS908では、マイコン52は、Nビットのビット列を初期化する。この場合、Nビットのビット列の各値は、最上位のみを“1”とし、その他は“0”に初期化される。例えば、4ビットのビット列の場合は、1000が初期値である。Nビットのビット列は、後述から明らかになるように、j番目のデューティを決める機能とともに、最終的な電圧Vfを算出する際に利用される。
【0071】
ステップS910では、マイコン52は、1番目(j=1のときの、j番目)のデューティを設定する。本実施例では、一例として、1番目のデューティは、固定値0.5であるとする。なお、この場合、1番目のデューティは、Duty=β/2で表すことができる。ここで、βは、現時点でのNビットのビット列に基づく10進数の値である。例えば4ビットのビット列=1000の場合、β=8である。なお、変形例では、1番目のデューティは、0.5とは異なる任意の固定値であってもよい。例えば、1番目のデューティは、直流電圧Vdc=1/2×Vccとなるように適合されてもよい。
【0072】
ステップS912では、マイコン52は、ステップS910で設定したデューティでパルス信号を発生させる処理を開始する。
【0073】
ステップS920では、マイコン52は、直流電圧Vdcが安定したか否かを判定する。図7を参照して上述したように、直流電圧Vdcは、デューティを変化させると、時定数τに応じた時間をかけて、変化のデューティに応じた値へと変化する。従って、直流電圧Vdcが安定したか否かは、デューティの変化時点から所定時間ΔTが経過したか否かを判定することで、判定されてもよい。この場合、所定時間ΔTは、ΔT=10×τ程度であってよい。判定結果が“YES”の場合、ステップS922に進み、それ以外の場合は、ステップS950に進む。
【0074】
ステップS922では、マイコン52は、現時点でのコンパレータ5132の出力に基づいて、Nビットのビット列のうちの、最上位からj番目を“1”又は“0”にセット(確定)する。例えば、現時点でのコンパレータ5132の出力が“High”である場合、Nビットのビット列のうちの、最上位からj番目を“1”にセット(確定)し、現時点でのコンパレータ5132の出力が“Low”である場合、Nビットのビット列のうちの、最上位からj番目を“0”にセット(確定)する。
【0075】
ステップS924では、マイコン52は、j=Nであるか否かを判定する。なお、Nは、ステップS906で設定された値であり、Nビットの分解能に係る値である。判定結果が“YES”の場合、ステップS926に進み、それ以外の場合は、ステップS940に進む。
【0076】
ステップS926では、マイコン52は、現時点でのNビットのビット列(確定した最終的なNビットのビット列)に基づいて、電圧Vfを算出する。具体的には、以下の算出式に基づいて、電圧Vfが算出されてもよい。
Vf=VL+(VH-VL)×β/2 式(3)
ここで、βは、上述したように、現時点でのNビットのビット列に基づく10進数の値である。例えば4ビットのビット列=0010の場合、β=2である。
【0077】
換言すると、N番目のデューティをDuty(N)としたとき、そのときの安定後のVdc(N)は、上述した式(1)に基づいて、次の通りである。
Vdc(N)=Vcc×(R1×R3+Duty(N)×R2×R3)/(R1×R2+R1×R3+R2×R3)
この場合、電圧Vf=Vdc(N)として、電圧Vfが算出される。
【0078】
ステップS928では、マイコン52は、ステップS926で算出した電圧Vfに基づいて、電圧Vfに応じた温度を表す温度情報(半導体チップ11に関する温度情報)を算出(生成)する。この算出方法は、図8を参照して上述した通りであってよい。なお、N=1である場合は、温度情報は、コンパレータ5132の出力を表す情報自体(すなわち、1番目のデューティに応じたVdcに対応付けられた温度に対して大きいか小さいかの2値情報)であってよい。
【0079】
ステップS930では、マイコン52は、パルス信号の発生を停止し、今回の温度検出処理を終了することに伴い、温度検出処理フラグF1を“0”にリセットする。
【0080】
ステップS940では、マイコン52は、jを“1”だけインクリメントする。
【0081】
ステップS942では、マイコン52は、現時点でのNビットのビット列のうちの、最上位からj番目を“1”にセット(仮設定)する。
【0082】
ステップS944では、マイコン52は、現時点でのNビットのビット列に基づいて、デューティを設定する。この場合、デューティは、Duty=β/2に基づいて設定される。ここで、βは、上述したように、現時点でのNビットのビット列に基づく10進数の値である。
【0083】
ステップS946では、マイコン52は、ステップS944で設定したデューティでパルス信号を発生させる処理を開始する。
【0084】
ステップS950では、マイコン52は、前回のデューティを維持しつつパルス信号の発生処理を継続する。
【0085】
このようにして、図9に示す処理によれば、温度検出処理ごとに、設定したデューティでパルス信号を発生させ、一定のデューティでパルス信号を発生させている区間中に得られるコンパレータ5132の出力に基づいて、半導体チップ11に関する温度情報を得ることができる。すなわち、温度検出処理ごとの区間(図6の区間A1,A2等参照)ごとに、デューティを変化させながら必要な分解能で電圧Vfを精度良く算出(推定)できる。
【0086】
また、図9に示す処理によれば、温度検出処理ごとに、Nの値を変化させることができる。Nの値が大きいほど分解能が高くなるが、その反面として、処理負荷(処理時間)が大きくなる。従って、温度検出処理ごとに、Nの値を変化させることで、ある期間では、分解能を高め、他の期間では、処理負荷を低減する等の、使い分けを実現できる。例えば、前回の温度検出処理で得られた温度情報(ステップS928)が比較的低い場合は、Nの値を比較的小さい値に設定し(比較的低い分解能に設定し)、処理負荷を低減できる。そして、前回の温度検出処理で得られた温度情報(ステップS928)が比較的高い場合は、Nの値を比較的大きい値に設定し(比較的高い分解能に設定し)、高温になりうる半導体チップ11の保護を効率的に実現できる。
【0087】
また、図9に示す処理によれば、j≧2のとき、j番目のデューティは、j-1番目以前のデューティで発生させたパルス信号に基づいて得られたコンパレータ5132の出力に基づいて、設定される。すなわち、j番目のデューティは、j-1番目以前の温度検出処理の結果を利用して、j番目のデューティで発生させたパルス信号に応じた直流電圧Vdcが、j-1番目のデューティで発生させたパルス信号に応じた直流電圧Vdcよりも、電圧Vfに近づくように、設定される。これにより、j個のデューティを効率的に用いて、電圧Vfを精度良く算出できる。
【0088】
図10は、図9に示した処理の説明図である。図10には、上側に、横軸に時間を取り、縦軸に電圧を取り、デューティの変化に応じて変化する直流電圧Vdc(安定後の値)の波形とともに、電圧Vfが示されている。また、図10には、下側に、横軸に時間を取り、縦軸に電圧(High又はLow)を取り、デューティの変化に応じて変化するコンパレータ5132の出力の変化の波形が示されている。図10に示す時間軸は、上下で同じである。ここでは、一例として、図10では、電圧Vfは、図示の値で略一定であるものとする。
【0089】
図10では、図9のステップS906でNビットの分解能に係るNが、N=4に設定されたものとする。この場合、まず、1番目(j=1)のデューティは、Duty=1000(b)/2=0.5である。なお、1000(b)は、2進数“1000”を10進数に変換した値を表す。この場合、上記の式(1)から、Vdc=Vcc×(1+2×1000(b)/2)/5=Vcc×2/5となる。
【0090】
図10に示す例では、電圧Vf<Vdc=Vcc×2/5であるので、Nビットのビット列のうちの、最上位のビット(Bit3)は、Bit3=0となる(ステップS922)。
【0091】
従って、次の2番目(j=2)では、4ビットのビット列は“0100”に仮設定され(ステップS942)、2番目のデューティは、Duty=0100(b)/2=0.25である。この場合、上記の式(1)から、Vdc=Vcc×(1+2×0.25)/5=Vcc×3/10となる。
【0092】
図10に示す例では、電圧Vf>Vdc=Vcc×3/10であるので、4ビットのビット列のうちの、最上位から2番目のビット(Bit2)は、Bit2=1となる(ステップS922)。
【0093】
従って、次の3番目(j=3)では、Nビットのビット列は“0110”に仮設定され(ステップS942)、3番目のデューティは、Duty=0110(b)/2=3/8である。この場合、上記の式(1)から、Vdc=Vcc×(1+2×3/8)/5=Vcc×7/20となる。
【0094】
図10に示す例では、電圧Vf<Vdc=Vcc×7/20であるので、4ビットのビット列のうちの、最上位から3番目のビット(Bit1)は、Bit1=0となる(ステップS922)。
【0095】
従って、次の4番目(j=4)では、Nビットのビット列は“0101”に仮設定され(ステップS942)、4番目のデューティは、Duty=0101(b)/2=5/16である。この場合、上記の式(1)から、Vdc=Vcc×(1+2×5/16)/5=Vcc×13/40となる。
【0096】
図10に示す例では、電圧Vf>Vdc=Vcc×13/40であるので、4ビットのビット列のうちの、最上位から4番目のビット(Bit0)は、Bit0=1となる(ステップS922)。
【0097】
その結果、最終的な4ビットのビット列は、“0101”で確定する(ステップS922)。この場合、最終的な4ビットのビット列“0101”に基づいて、電圧Vfが算出される。Vcc=5、VL=1、かつVH=3であるとすると、上記の式(3)に基づいて、Vf≒1+2×5/16=1.625となる。Vf=1.625のとき、図8を参照して上述したように、Tj=90.625を導出できる。
【0098】
なお、図10では、N=4であるが、上述したように、Nの値は、必要な分解能(Tjの分解能)に応じて適宜されてよい。
【0099】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。また、各実施形態の効果のうちの、従属項に係る効果は、上位概念(独立項)とは区別した付加的効果である。
【0100】
例えば、上述した実施例では、分解能設定部5201を設けることで、分解能を変化させることができるが、分解能設定部5201は、省略されてもよい。この場合、分解能は、固定されるものの、上述した効果の少なくとも一部を得ることができる。
【0101】
また、上述した実施例では、デューティ設定部5202を設けることで、デューティを変化させることができるが、デューティ設定部5202は、省略されてもよい。この場合、マイコン52からのパルス信号は、デューティが固定されたHigh又はLowの2値の信号とされてもよい。この場合でも、常に分解能が低くなるものの、上述した効果の少なくとも一部を得ることができる。なお、この場合、第2回路部5131は、図5に示した特性の構成に対して、抵抗素子R2、R3が省略されてもよい。
【0102】
また、上述した実施例では、第2回路部5131は、図5に示した特定のRCフィルタを含んでなるが、RCフィルタの詳細な構成は任意である。例えば2次のRCフィルタが利用されてもよい。
【0103】
また、上述した実施例では、電圧Vfを算出すると、当該電圧Vfに応じた温度を表す温度情報(半導体チップ11に関する温度情報)を算出(生成)しているが、これに限られない。例えば、半導体チップ11に関する温度情報は、ある一定の温度範囲を表す情報であってもよい。例えば図9に示す例では、半導体チップ11に関する温度情報は、j=N-1のときのデューティで得られる電圧Vfに対応する温度をTj(N-1)とし、j=Nのときのデューティで得られる電圧Vfに対応する温度をTj(N)としたとき、Tj(N-1)~Tj(N)の範囲(又はTj(N)~Tj(N-1))の範囲として生成されてもよい。
【0104】
また、図9に示す処理では、分解能に係るNの値を設定してから温度検出処理の実体部分を実行しているが、分解能に係るNの値は、温度検出処理で得られる温度情報等に応じて動的に設定されてもよい。例えば、分解能に係るNの値が4以上である条件下で動作するとき、jが4以上となり、かつ、最新のコンパレータ5132の出力がLowである場合に、その時のjの値がNの値とされてもよい。この場合、4ビットの分解能以上で、かつ、プラス側にマージンを有する温度情報を得ることができる。
【0105】
また、上述した実施例では、インバータ4に含まれる半導体チップ11に関する温度が検出対象であるが、検出対象は、これに限られない。例えば、高圧バッテリ2とインバータ4の間にDC/DCコンバータを備える構成である場合、当該DC/DCコンバータ(電力変換器の他の一例)に含まれる半導体チップに関する温度が検出対象とされてもよい。あるいは、高圧バッテリ2の温度が検出対象とされてもよい。また、検出対象は、温度に限られず、電圧から変換できる情報であれば任意である。従って、検出対象は、電圧自体であってもよい。この点、本発明は、上述した実施例のように、マイコン52と検出対象の電圧Vfの発生箇所とが絶縁素子(絶縁トランシーバ60、61)を介して接続されている構成に好適である。かかる構成では、マイコン52に検出対象のアナログ信号を直接的に入力できないためである。
【0106】
また、上述した実施例では、端子20A、20K間に、温度検出ダイオード31のみが設けられるが、温度検出ダイオード31とは逆向きの別の温度検出ダイオードが、温度検出ダイオード31と並列に設けられてもよい。すなわち、別の温度検出ダイオードは、アノード側が端子20K側になるように、2つの端子20A、20Kの間に接続されてもよい。この場合、端子20A、20K間に、端子20Kから端子20Aに向かう定電流を流すことで、端子20A、20Kの間の電圧Vfに基づいて、別の温度検出ダイオードに対応付けられた温度を検出できる。
【0107】
また、上述した実施例では、温度検出素子としてSiダイオードのようなダイオードが用いられるが、温度検出素子としては、PNPトランジスタのような他の素子が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0108】
4・・・インバータ(電力変換器)、Q1~Q6・・・スイッチング素子(半導体素子)、50・・・温度検出装置、31・・・温度検出ダイオード(温度検出素子)、5132・・・コンパレータ、52・・・マイコン(処理装置)、512・・・第1回路部(第1電気回路部)、5131・・・第2回路部(第2電気回路部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10