(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052505
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】メモリデバイス
(51)【国際特許分類】
G11C 11/22 20060101AFI20220328BHJP
G11C 11/56 20060101ALI20220328BHJP
H01L 27/11597 20170101ALI20220328BHJP
【FI】
G11C11/22 240
G11C11/22 120
G11C11/56 300
G11C11/22 230
G11C11/22 250
H01L27/11597
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020158932
(22)【出願日】2020-09-23
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】田中 玲華
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 真澄
(72)【発明者】
【氏名】前田 高志
(72)【発明者】
【氏名】船附 里英子
(72)【発明者】
【氏名】滋賀 秀裕
【テーマコード(参考)】
5F083
【Fターム(参考)】
5F083FR05
5F083GA10
5F083JA02
5F083JA39
5F083JA40
5F083JA60
5F083KA01
5F083KA05
(57)【要約】
【課題】メモリデバイスの特性を向上する。
【解決手段】実施形態のメモリデバイスは、基板の上方の第1乃至第3の導電層と、導電層に隣り合う強誘電体層を含むピラーと、第1の導電層とピラーとの間の第1のトランジスタと、第2の導電層とピラーとの間の第2のトランジスタと、第3の導電層とピラーとの間の強誘電体トランジスタを含むメモリセルと、メモリセルをプログラム状態に設定する第1の動作S10、第1の電圧を用いてメモリセルを消去状態に設定する第2の動作S20、及び第1の電圧より高い第2の電圧を第1のメモリセルに印加する第3の動作S11を実行する回路と、を含む。第1の電圧は、負の第1の電圧値を有し、第2の電圧は、第1の電圧値より高い負の第2の電圧値を有する。回路は、第3の動作を、第1の動作と第2の動作との間に実行する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に対して垂直な第1の方向において前記基板の上方に設けられた第1の導電層と、
前記第1の導電層と前記基板との間に設けられた第2の導電層と、
前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に設けられた第3の導電層と、
前記第1の方向に延び、前記基板の表面に対して平行な第2の方向において前記第1乃至第3の導電層に隣り合い、第1の強誘電体層を含む第1のピラーと、
前記第1の導電層と前記第1のピラーとの間に設けられた第1のトランジスタと、
前記第2の導電層と前記第1のピラーとの間に設けられた第2のトランジスタと、
前記第3の導電層と前記第1のピラーとの間に設けられた第1の強誘電体トランジスタを含む第1のメモリセルと、
前記第1のメモリセルをプログラム状態に設定する第1の動作、第1の電圧を用いて前記第1のメモリセルを消去状態に設定する第2の動作、及び前記第1の電圧より高い第2の電圧を前記第1のメモリセルに印加する第3の動作を実行する回路と、
を具備し、
前記第1の電圧は、負の第1の電圧値を有し、
前記第2の電圧は、前記第1の電圧値より高い負の第2の電圧値を有し、
前記回路は、前記第3の動作を、前記第1の動作と前記第2の動作との間に実行する、メモリデバイス。
【請求項2】
基板の表面に対して垂直な第1の方向において前記基板の上方に設けられた第1の導電層と、
前記第1の導電層と前記基板との間に設けられた第2の導電層と、
前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に設けられた第3の導電層と、
前記第1の方向に延び、前記基板の表面に対して平行な第2の方向において前記第1乃至第3の導電層に隣り合い、第1の強誘電体層を含む第1のピラーと、
前記第1の導電層と前記第1のピラーとの間に設けられた第1のトランジスタと、
前記第2の導電層と前記第1のピラーとの間に設けられた第2のトランジスタと、
前記第3の導電層と前記第1の強誘電体層との間に設けられた第1の強誘電体トランジスタを含む第1のメモリセルと、
前記第1のメモリセルの状態をプログラム状態に設定する第1の動作、第1の電圧を用いて前記第1のメモリセルの状態を消去状態に設定する第2の動作、前記第1の電圧より高い第2の電圧を前記第1のメモリセルに印加する第3の動作及び前記第1のメモリセルの状態を判定する第4の動作を実行する回路と、
を具備し、
前記第1の電圧は、負の第1の電圧値を有し、
前記第2の電圧は、前記第1の電圧値より高い負の第2の電圧値を有し、
前記回路は、前記第3の動作を、前記第1の動作と前記第4の動作との間に実行する、
メモリデバイス。
【請求項3】
前記回路は、
前記第4の動作の結果に基づいて前記第1のメモリセルの状態が記憶すべきデータに対応する状態と異なる場合、前記第3の動作を前記第1のメモリセルに対して実行する、
請求項2に記載のメモリデバイス。
【請求項4】
前記第1の方向において前記第2の導電層の下方に設けられ、前記第1のピラーに接続されたp型半導体層と、
前記第1の方向において前記第1の導電層の上方に設けられ、前記第1のピラーに接続されたビット線と、
前記p型半導体層に接続されたソース線と、
前記第1の導電層と前記第3の導電層との間に設けられ、前記第2の方向において前記第1のピラーに隣り合う第4の導電層と、
前記第4の導電層と前記第1のピラーとの間に設けられた第2の強誘電体トランジスタを含む第2のメモリセルと、
をさらに具備し、
前記回路は、前記第3の動作時において、
第3の電圧を、前記p型半導体層に印加し、
前記第2のトランジスタをオン状態に設定する第4の電圧を、前記第2の導電層に印加し、
第5の電圧を、前記第3の導電層に印加し、
前記第5の電圧より高い第6の電圧を、前記第4の導電層に印加し、
前記第2のトランジスタから前記第1のピラーにキャリアを供給し、
前記第1のピラーと前記第4の導電層との電位差は、前記第2の電圧値より高い、
請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載のメモリデバイス。
【請求項5】
前記第1の方向において前記第2の導電層の下方に設けられ、前記第1のピラーに接続された第1の半導体層と、
前記第1の方向において前記第1の導電層の上方に設けられ、前記第1のピラーに接続されたビット線と、
前記第1の半導体層に接続されたソース線と、
前記第1の導電層と前記第3の導電層との間に設けられ、前記第2の方向において前記第1のピラーに隣り合う第4の導電層と、
前記第4の導電層と前記第1のピラーとの間に設けられた第2の強誘電体トランジスタを含む第2のメモリセルと、
をさらに具備し、
前記回路は、前記第3の動作時において、
第3の電圧を、前記第1の導電層に印加し、
前記第3の電圧より高い第4の電圧を、前記ビット線に印加し、
第5の電圧を、前記第3の導電層に印加し、
前記第5の電圧より高い第6の電圧を、前記第4の導電層に印加し、
前記第1のトランジスタから前記第1のピラーにキャリアを供給し、
前記第1のピラーと前記第4の導電層との間の電位差は、前記第2の電圧値より高い、
請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載のメモリデバイス。
【請求項6】
前記第3の導電層と前記第4の導電層との間の電位差は、前記第2の電圧値より高い、
請求項4又は5に記載のメモリデバイス。
【請求項7】
前記回路は、
前記第1の動作によって、前記第1の強誘電体トランジスタの閾値電圧を第1の値に設定し、
前記第2の動作によって、前記第1の強誘電体トランジスタの閾値電圧を、前記第1の値より高い第2の値に設定する、
請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載のメモリデバイス。
【請求項8】
基板の表面に対して垂直な第1の方向において前記基板の上方に設けられた第1の導電層と、
前記第1の導電層と前記基板との間に設けられた第2の導電層と、
前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に設けられた第3の導電層と、
前記第1の導電層と前記第3の導電層との間に設けられた第4の導電層と、
前記第1の方向に延び、前記基板の表面に対して平行な第2の方向において前記第1乃至第4の導電層に隣り合い、第1の強誘電体層をそれぞれ含む複数の第1のピラーと、
前記第1の導電層と前記複数の第1のピラーのそれぞれとの間に設けられた複数の第1のトランジスタと、
前記第2の導電層と前記複数の第1のピラーのそれぞれとの間に設けられた第2のトランジスタと、
前記第3の導電層と前記複数の第1のピラーのそれぞれとの間に設けられた複数の第1のメモリセルと、
前記第4の導電層と前記複数の第1のピラーのそれぞれとの間に設けられた複数の第2のメモリセルと、
前記複数の第1のメモリセルを含む第1のグループと前記複数の第2のメモリセルを含む第2のグループのうち選択されたグループに属する複数のメモリセルをプログラム状態に設定する第1の動作、前記第1及び第2のグループのうち選択された少なくとも一方のグループに属する複数のメモリセルを第1の電圧を用いて消去状態に設定する第2の動作、及び、前記第1及び第2のグループのうち選択された少なくとも一方のグループに属する複数のメモリセルに前記第1の電圧より高い第2の電圧を印加する第3の動作を実行する回路と、
を具備し、
前記複数の第1のメモリセルのそれぞれは、第1の強誘電体トランジスタを含み、
前記複数の第2のメモリセルのそれぞれは、第2の強誘電体トランジスタを含み、
前記第1の電圧は、負の第1の電圧値を有し、
前記第2の電圧は、前記第1の電圧値より高い負の第2の電圧値を有し、
前記回路は、
前記第1及び第2のグループのうち選択されたグループに前記第1の動作を実行した後、前記選択されたグループに前記第3の動作を実行し、
前記第3の動作の後、前記第1及び第2のグループのうち少なくとも一方に前記第2の動作を実行する、
メモリデバイス。
【請求項9】
基板の表面に対して垂直な第1の方向において前記基板の上方に設けられた第1の導電層と、
前記第1の導電層と前記基板との間に設けられた第2の導電層と、
前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に設けられた第3の導電層と、
前記第1の導電層と前記第3の導電層との間に設けられた第4の導電層と、
前記第1の方向に延び、前記基板の表面に対して平行な第2の方向において前記第1乃至第4の導電層に隣り合い、第1の強誘電体層をそれぞれ含む複数の第1のピラーと、
前記第1の導電層と前記複数の第1のピラーのそれぞれとの間に設けられた複数の第1のトランジスタと、
前記第2の導電層と前記複数の第1のピラーのそれぞれとの間に設けられた第2のトランジスタと、
前記第3の導電層と前記複数の第1のピラーのそれぞれとの間に設けられた複数の第1のメモリセルと、
前記第4の導電層と前記複数の第1のピラーのそれぞれとの間に設けられた複数の第2のメモリセルと、
前記複数の第1のメモリセルを含む第1のグループと前記複数の第2のメモリセルを含む第2のグループとを制御する回路と、
を具備し、
前記複数の第1のメモリセルのそれぞれは、第1の強誘電体トランジスタを含み、
前記複数の第2のメモリセルのそれぞれは、第2の強誘電体トランジスタを含み、
前記回路は、
前記第1及び第2のグループのうち選択されたグループ内の複数のメモリセルをプログラム状態に設定する第1の動作を実行し、
前記第1の動作の後、前記選択されたグループ内の前記複数のメモリセルに第1の電圧を印加する第2の動作を実行し、
前記第2の動作の後、前記第1及び第2のグループのうち選択された少なくとも一方のグループ内の複数のメモリセルを、前記第1の電圧より低い第2の電圧を用いて消去状態に設定する第3の動作を実行し、
前記第1の電圧は、負の第1の電圧値を有し、
前記第2の電圧は、前記第1の電圧値より低い負の第2の電圧値を有する、
メモリデバイス。
【請求項10】
基板の表面に対して垂直な第1の方向において前記基板の上方に設けられた第1の導電層と、
前記第1の導電層と前記基板との間に設けられた第2の導電層と、
前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に設けられた第3の導電層と、
前記第1の導電層と前記第3の導電層との間に設けられた第4の導電層と、
前記第1の方向に延び、前記基板の表面に対して平行な第2の方向において前記第1乃至第4の導電層に隣り合い、第1の強誘電体層をそれぞれ含む複数の第1のピラーと、
前記第1の導電層と前記複数の第1のピラーのそれぞれとの間に設けられた複数の第1のトランジスタと、
前記第2の導電層と前記複数の第1のピラーのそれぞれとの間に設けられた第2のトランジスタと、
前記第3の導電層と前記複数の第1のピラーのそれぞれとの間に設けられた複数の第1のメモリセルと、
前記第4の導電層と前記複数の第1のピラーのそれぞれとの間に設けられた複数の第2のメモリセルと、
前記複数の第1のメモリセルを含む第1のグループと前記複数の第2のメモリセルを含む第2のグループとを制御する回路と、
を具備し、
前記複数の第1のメモリセルのそれぞれは、第1の強誘電体トランジスタを含み、
前記複数の第2のメモリセルのそれぞれは、第2の強誘電体トランジスタを含み、
前記回路は、
前記第1及び第2のグループのうち選択された一方のグループ内の複数のメモリセルを、消去状態に設定する消去動作を実行する
メモリデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、メモリデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
強誘電体層の分極特性を利用してデータを記憶するメモリデバイスが、提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メモリデバイスの特性を向上する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のメモリデバイスは、基板の表面に対して垂直な第1の方向において前記基板の上方に設けられた第1の導電層と、前記第1の導電層と前記基板との間に設けられた第2の導電層と、前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に設けられた第3の導電層と、前記第1の方向に延び、前記基板の表面に対して平行な第2の方向において前記第1乃至第3の導電層に隣り合い、第1の強誘電体層を含む第1のピラーと、前記第1の導電層と前記第1のピラーとの間に設けられた第1のトランジスタと、前記第2の導電層と前記第1のピラーとの間に設けられた第2のトランジスタと、前記第3の導電層と前記第1のピラーとの間に設けられた第1の強誘電体トランジスタを含む第1のメモリセルと、前記第1のメモリセルをプログラム状態に設定する第1の動作、第1の電圧を用いて前記第1のメモリセルを消去状態に設定する第2の動作、及び前記第1の電圧より高い第2の電圧を前記第1のメモリセルに印加する第3の動作を実行する回路と、を含み、前記第1の電圧は、負の第1の電圧値を有し、前記第2の電圧は、前記第1の電圧値より高い負の第2の電圧値を有し、前記回路は、前記第3の動作を、前記第1の動作と前記第2の動作との間に実行する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1の実施形態のメモリデバイスの構成例を示すブロック図。
【
図2】第1の実施形態のメモリデバイスのメモリセルアレイの回路図。
【
図3】第1の実施形態のメモリデバイスのメモリセルアレイの断面図。
【
図4】第1の実施形態のメモリデバイスのメモリセルの上面図。
【
図5】第1の実施形態のメモリデバイスのメモリセルの断面図。
【
図6】第1の実施形態のメモリデバイスの特性を示す図。
【
図7】第1の実施形態のメモリデバイスの特性を示す図。
【
図8】第1の実施形態のメモリデバイスの特性を示す図。
【
図9】第1の実施形態のメモリデバイスの動作例を示す図。
【
図10】第1の実施形態のメモリデバイスの動作例を示す図。
【
図11】第1の実施形態のメモリデバイスの動作例を示すフローチャート。
【
図12】第1の実施形態のメモリデバイスの動作例を示す波形図。
【
図13】第1の実施形態のメモリデバイスの動作例を示す図。
【
図14】第1の実施形態のメモリデバイスの動作例を示す図。
【
図15】第1の実施形態のメモリデバイスの動作例を示す図。
【
図16】第1の実施形態のメモリデバイスの動作例を示す図。
【
図17】第1の実施形態のメモリデバイスの動作例を示すフローチャート。
【
図18】第1の実施形態のメモリデバイスの特性を示す図。
【
図19】第2の実施形態のメモリデバイスの構造例を示す図。
【
図20】第2の実施形態のメモリデバイスの動作例を示す図。
【
図21】第2の実施形態のメモリデバイスの動作例を示す図。
【
図22】第3の実施形態のメモリデバイスの動作例を示すフローチャート。
【
図23】第3の実施形態のメモリデバイスの動作例を示す図。
【
図24】実施形態のメモリデバイスの変形例を示す図。
【
図25】実施形態のメモリデバイスの変形例を示す図。
【
図26】実施形態のメモリデバイスの変形例を示す図。
【
図27】実施形態のメモリデバイスの変形例を示す図。
【
図28】実施形態のメモリデバイスの変形例を示す図。
【
図29】実施形態のメモリデバイスの変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については、同一符号を付す。
また、以下の各実施形態において、末尾に区別化のための数字/英字を伴った参照符号を付された構成要素(例えば、回路、配線、各種の電圧及び信号など)が、相互に区別されなくとも良い場合、末尾の数字/英字が省略された記載(参照符号)が用いられる。
【0008】
[実施形態]
図1乃至
図29を参照して、実施形態のメモリデバイスについて、説明する。
【0009】
(1)第1の実施形態
図1乃至
図18を参照して、第1の実施形態のメモリデバイスの構成例及び動作例について説明する。
【0010】
(1a)構成例
図1乃至
図8を参照して、本実施形態のメモリデバイスの構成例について、説明する。
【0011】
図1は、本実施形態のメモリデバイスの構成例を説明するためのブロック図である。
【0012】
図1に示されるように、本実施形態のメモリデバイス1は、メモリコントローラ2に電気的に結合される。
【0013】
メモリコントローラ2は、コマンドCMD、アドレス情報ADD及び各種の制御信号CNTを本実施形態のメモリデバイス1に送る。
メモリデバイス1は、コマンドCMD、アドレス情報ADD及び各種の制御信号CNTを受ける。データDATは、メモリデバイス1とメモリコントローラ2との間で、転送される。以下において、書き込み動作時に、メモリコントローラ2からメモリデバイス1に転送されるデータDATは、書き込みデータとよばれる。書き込みデータDATは、メモリデバイス1内に書き込まれる。読み出し動作時に、メモリデバイス1からメモリコントローラ2に転送されるデータDATは、読み出しデータとよばれる。読み出しデータDATはメモリデバイス1から読み出される。
【0014】
本実施形態のメモリデバイス1は、例えば、メモリセルアレイ100、コマンドレジスタ110、アドレスレジスタ120、ロウ制御回路140、センスアンプ回路150、ドライバ回路160、及びシーケンサ190を含む。
【0015】
メモリセルアレイ100は、データを記憶する。メモリセルアレイ100内に、複数のビット線及び複数のワード線が設けられる。メモリセルアレイ100は、複数のブロックBLK0~BLKn(nは1以上の整数)を含んでいる。ブロックBLKは、複数のメモリセルの集合である。各メモリセルは、1つのビット線と1つのワード線とに関連付けられている。メモリセルアレイ100の構成は後述される。
【0016】
コマンドレジスタ110は、メモリコントローラ2からのコマンドCMDを保持する。コマンドCMDは、例えばシーケンサ190に読み出し動作、書き込み動作、及び消去動作等を実行させる命令を含んでいる。
【0017】
アドレスレジスタ120は、メモリコントローラ2からのアドレス情報ADDを保持する。アドレス情報ADDは、例えばブロックアドレス、ページアドレス、及びカラムアドレスを含んでいる。例えば、ブロックアドレス、ページアドレス、及びカラムアドレスは、ブロックBLK、ワード線、及びビット線の選択にそれぞれ使用される。以下において、ブロックアドレスに基づいて選択されたブロックは、選択ブロックとよばれる。ページアドレスに基づいて選択されたワード線は、選択ワード線とよばれる。
【0018】
ロウ制御回路140は、メモリセルアレイ100のロウに関する動作を制御する。ロウ制御回路140は、アドレスレジスタ120内のブロックアドレスに基づいて、メモリセルアレイ10内の1つのブロックBLKを選択する。ロウ制御回路140は、例えば選択ワード線に対応する配線に印加された電圧を、選択ブロックBLK内の選択ワード線に転送する。
【0019】
センスアンプ回路150は、メモリセルアレイ100のカラムに関する動作を制御する。センスアンプ回路150は、書き込み動作において、メモリコントローラ2からの書き込みデータDATに応じて、メモリセルアレイ100内に設けられたビット線BLのそれぞれに電圧を印加する。センスアンプ回路150は、読み出し動作において、ビット線BLの電位(又は、電流の発生の有無)に基づいてメモリセルMCに記憶されたデータを判定する。センスアンプ回路150は、この判定結果に基づいたデータを、読み出しデータとしてメモリコントローラ2に転送する。
【0020】
ドライバ回路160は、読み出し動作、書き込み動作、消去動作等で使用される電圧を、メモリセルアレイ100に出力する。ドライバ回路160は、アドレスレジスタ120内のアドレスに基づいて、例えば、ワード線及びビット線などに対応する配線に所定の電圧を、印加する。
【0021】
シーケンサ190は、メモリデバイス1全体の動作を制御する。例えば、シーケンサ190は、コマンドレジスタ110内のコマンドCMDに基づいて各回路を制御する。
【0022】
例えば、メモリデバイス1とメモリコントローラ2との間の通信は、NANDインターフェイス規格によってサポートされている。この場合において、メモリデバイス1とメモリコントローラ2との間の通信において、コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、ライトイネーブル信号WEn、リードイネーブル信号REn、レディビジー信号RBn、及び入出力信号IOが使用される。
【0023】
コマンドラッチイネーブル信号CLEは、メモリデバイス1が受けた入出力信号IOがコマンドCMDであることを示す信号である。アドレスラッチイネーブル信号ALEは、メモリデバイス1が受けた信号IOがアドレス情報ADDであることを示す信号である。ライトイネーブル信号WEnは、入出力信号IOの入力をメモリデバイス1に命令する信号である。リードイネーブル信号REnは、入出力信号I/Oの出力をメモリデバイス1に命令する信号である。
【0024】
レディビジー信号RBnは、メモリデバイス1がメモリコントローラ2からの命令を受け付けるレディ状態であるか、命令を受け付けないビジー状態であるかを、メモリコントローラ2に通知する信号である。入出力信号IOは、例えば8ビット幅の信号であり、コマンドCMD、アドレス情報ADD、データDAT等を含み得る。
【0025】
尚、メモリデバイス1は、入出力回路(図示せず)及び電圧生成回路(図示せず)などをさらに含んでいてもよい。入出力回路は、メモリデバイス1とメモリコントローラとの間における、メモリデバイス1側のインターフェイス回路として機能する。電圧生成回路は、メモリデバイス1の各種の動作のための複数の電圧を、生成する。
【0026】
<メモリセルアレイ>
図2は、本実施形態のメモリデバイスのメモリセルアレイの構成例を示す回路図である。
【0027】
図2において、メモリセルアレイ100に含まれた複数のブロックBLKのうち1つのブロックBLKが抽出されて示されている。
【0028】
図2に示されるように、ブロックBLKは、例えば、4つのストリングユニットSU0,SU1,SU2,SU3を含む。各ストリングユニットSUは、複数のメモリセルストリングMSを含む。複数のメモリセルストリングMSのそれぞれは、複数のビット線BL0,BL1,・・・BLm-1(mは1以上の整数)のうち対応する1つに接続されている。
【0029】
各メモリセルストリングMSは、複数のメモリセルMC0,MC1,・・・,MCn-1(nは1以上の整数)、及びセレクトトランジスタST1,ST2を含んでいる。
【0030】
例えば、n個のメモリセルMC(MC0,MC1,MC2,MC3,・・・,MCn-2,MCn-1)が、各メモリセルストリングMS内に設けられている。
【0031】
メモリセルMCは、1ビット以上のデータを実質的に不揮発に記憶できる。
【0032】
セレクトトランジスタST1,ST2のそれぞれは、各種の動作時におけるストリングユニットSUの選択に使用される。例えば、各セレクトトランジスタST1は、1つ以上のトランジスタを含んでもよい。例えば、各セレクトトランジスタST2は、1つ以上のトランジスタを含んでもよい。
【0033】
各メモリセルストリングMSにおいて、複数のメモリセルMCは、セレクトトランジスタST1のソースとセレクトトランジスタST2のドレインとの間に直列接続される。同一のブロックBLK内の各メモリセルMC0,MC1,MC2,MC3,・・・,MCn-2,MCn-1のゲートは、複数のワード線WL0,WL1,WL2,WL3,・・・,WLn-2,WLn-1のうち対応する1つに接続される。
【0034】
各メモリセルストリングMSにおいて、セレクトトランジスタST1の一方の端子(ここでは、ドレイン)は、複数のビット線BL0,BL1,・・・,BLm-1のうち対応する1つに接続される。
セレクトトランジスタST1の一方の端子(ここでは、ソース)は、直列接続されたメモリセルMC0,・・・,MCn-1の一端に接続される。
【0035】
セレクトトランジスタST1のゲートのそれぞれは、複数のセレクトゲート線SGDのうち対応する1つに接続される。
【0036】
ストリングユニットSU0内のセレクトトランジスタST1のゲートは、セレクトゲート線SGD0に接続される。ストリングユニットSU1内のセレクトトランジスタST1のゲートは、セレクトゲート線SGD1に接続される。ストリングユニットSU2内のセレクトトランジスタST1のゲートは、セレクトゲート線SGD2に接続される。ストリングユニットSU3内のセレクトトランジスタST1のゲートは、セレクトゲート線SGD3にそれぞれ接続される。
【0037】
セレクトトランジスタST2の一方の端子(ここでは、ドレイン)は、直列接続されたメモリセルMC0,・・・,MCn-1の他端に接続される。セレクトトランジスタST2の他方の端子(ここでは、ソース)は、ソース線SLに接続される。同一のブロックBLK内の複数のセレクトトランジスタST2のソースは、ソース線SLに共通に接続される。
【0038】
セレクトトランジスタST2のゲートのそれぞれは、複数のセレクトゲート線SGSのうち対応する1つに接続される。
ストリングユニットSU0内のセレクトトランジスタST2のゲートは、セレクトゲート線SGS0に接続される。ストリングユニットSU1内のセレクトトランジスタST2のゲートは、セレクトゲート線SGS1に接続される。ストリングユニットSU2内のセレクトトランジスタST2のゲートは、セレクトゲート線SGS2に接続される。ストリングユニットSU3内のセレクトトランジスタST2のゲートは、セレクトゲート線SGS3にそれぞれ接続される。
【0039】
上述のメモリセルアレイ100の回路構成において、複数のブロックBLK間で同一カラムに対応するセレクトトランジスタST1のドレインは、同じビット線BLに接続される。ソース線SLは、例えば、複数のブロックBLK間で共通に接続される。
複数のストリングユニットSU間で同一のカラムに対応するセレクトトランジスタST1のドレインは、同じビット線BLに接続される。
【0040】
1つのストリングユニットSU内で共通のワード線WLに接続された複数のメモリセルMCは、例えばセルユニットCUとよばれる。
【0041】
例えば、1つのセルユニットCUは、メモリセルMCの各々が1ビットのデータを記憶する場合に、1ページ分のデータを記憶することが可能である。メモリセルMCの各々が2ビットのデータを記憶する場合に、1つのセルユニットCUは、2ページ分のデータを記憶することが可能である。
【0042】
本実施形態において、メモリセルMCは、強誘電体トランジスタ(FeFET:ferroelectric field effect transistor)である。強誘電体トランジスタの閾値電圧は、強誘電体トランジスタの強誘電体層の自発分極の向きに応じて、変化する。
本実施形態のメモリデバイス1は、自発分極の向きに応じた強誘電体トランジスタMCの閾値電圧の変化とデータとの関連付けによって、データを記憶する。
以下において、本実施形態のメモリデバイスは、強誘電体メモリとよばれる。
【0043】
図3は、本実施形態の強誘電体メモリのメモリセルアレイの構造例を示す断面図である。
【0044】
図3において、図示の明瞭化のため、基板の上面を覆う絶縁層(層間絶縁膜)の図示は、省略されている。
【0045】
図3に示されるように、メモリセルMCは、基板40の上面(X-Y面)上に、2次元に配列されている。メモリセルMCは、基板40の上面に対して垂直な方向(Z方向)に、配列されている。
このように、本実施形態において、強誘電体メモリ1は、3次元構造のメモリセルアレイを有する。
【0046】
例えば、基板40は、半導体基板(例えば、シリコン基板)である。
【0047】
基板40は、半導体層41を含む。半導体層41は、付与されるべき導電型に応じたドーパント(不純物)を含む。例えば、半導体層41は、p型の半導体層である。半導体層は、所定の濃度のp型ドーパント(例えば、ホウ素)を含む。
半導体層41は、例えば、半導体基板40内に設けられたウェル領域である。
【0048】
複数の半導体領域44,45は、半導体層41内に設けられている。半導体領域44,45のそれぞれは、付与されるべき導電型に応じたn型又はp型のドーパント(不純物)を含む。
【0049】
例えば、半導体領域44は、n型の半導体領域(拡散層)である。n型の半導体領域44は、所定の濃度のn型ドーパント(例えば、リン又はヒ素)を含む。
半導体領域44は、コンタクトプラグ70を介して、配線(例えば、金属層)71に接続されている。コンタクトプラグ70は、半導体領域44上に設けられている。コンタクトプラグ70は、Z方向に延びる。配線71は、Z方向における半導体層41の上方に設けられている。配線71は、ソース線SLとして機能する。
【0050】
例えば、半導体領域45は、p型の半導体領域(拡散層)である。p型の半導体領域は、所定の濃度のp型ドーパントを含む。
半導体領域45は、コンタクトプラグ74を介して、配線(例えば、金属層)75に接続されている。コンタクトプラグ74は、半導体領域45上に設けられている。コンタクトプラグ74は、Z方向に延びる。配線75は、Z方向における半導体層41の上方に設けられている。配線75は、ウェル配線CPWELLとして機能する。配線75を介した半導体層41に対する電圧の印加によって、半導体層41の電位が、制御され得る。
【0051】
複数の導電層51,53,55が、Z方向において半導体層41上に積層されている。絶縁層(図示せず)が、Z方向に隣り合う導電層51,53,55間に設けられている。
【0052】
複数の導電層51は、Z方向における基板40の上方において、Y方向に配列されている。各導電層51は、X方向に延在する。各導電層51は、ソース側セレクトゲート線SGS(SGS0,SGS1,SGS2,SGS3)として機能する。各導電層51は、例えば、ストリングユニットSU(SU0,SU1,SU2,SU3)ごとに、互いに分離されている。
【0053】
複数の導電層55は、Z方向における導電層53の上方において、Y方向に配列されている。各導電層55は、X方向に延在する。各導電層55は、ドレイン側セレクトゲート線SGD(SGD0,SGD1,SGD2,SGD3)として機能する。各導電層55は、例えば、ストリングユニットSU(SU0,SU1,SU2,SU3)ごとに、互いに分離されている。
【0054】
複数の導電層53は、Z方向における基板40の上方に、積層されている。複数の導電層53は、Z方向における導電層51と導電層55との間の空間において、Z方向に並んでいる。各導電層53は、例えば、X-Y平面に広がる板状の構造を有する。各導電層53は、ワード線WLとして機能する。導電層53は、ブロックBLK内の複数のストリングユニットSUにまたがる。
【0055】
複数のピラー60が、導電層51,53,55(及び図示されない絶縁層)を含む積層体500内に、設けられている。各ピラー60は、Z方向に延びる。ピラー60は、複数の導電層51,53,55を貫通する。ピラー60の側面(Z方向に沿う面)は、各導電層51,53,55に対向する。
【0056】
ピラー60のZ方向における下端(底部)は、半導体層41に接触する。ピラー60のZ方向における上端(上部)は、コンタクトプラグ79を介して、配線(例えば、金属層)78に接続される。配線78は、Y方向に延びる。配線78は、ビット線BLとして機能する。例えば、Y方向に並ぶ複数のピラー60は、1つの配線(ビット線)78に共通に接続されている。
【0057】
ピラー60は、半導体層61、絶縁層63、強誘電体層65及びコア層69を含む。本実施形態において、強誘電体層65を含むピラー60は、メモリピラーとよばれる。
【0058】
コア層69は、Z方向に沿って延在する柱状の構造を有する。例えば、コア層69の上端は、最上層の配線78が設けられた領域と導電層55が設けられた領域との間の領域内に、配置されている。コア層69の下端は、半導体層61に接触する。コア層69は、例えば、二酸化シリコン(SiO2)等の絶縁体を含む。
【0059】
半導体層61は、コア層69と絶縁層63との間、及び、コア層69と半導体層41との間に設けられている。半導体層61の下端は、コア層69の下端と半導体層41の上面との間に設けられている。半導体層61は、半導体層41に直接接触した部分を有する。これによって、半導体層61は、半導体層41と電気的に接続される。例えば、半導体層61は、コア層69を覆っている。半導体層61は、円筒状(又は楕円筒状)の構造を有する。半導体層61は、例えば、シリコンを含む層(例えば、ポリシリコン層又はアモルファスシリコン層)である。
【0060】
絶縁層63は、強誘電体層65と半導体層61との間に設けられている。絶縁層63は、半導体層61の側面(Z方向に沿う面)を覆っている。絶縁層63は、例えば、酸化シリコンを含む層である。
【0061】
強誘電体層65は、導電層51,53,55と絶縁層63との間に設けられている。強誘電体層65の側面(Z方向に沿う面)は、導電層51,53,55に対向する。
強誘電体層65は、例えば、酸化ハフニウムを含む層である。シリコン、アルミニウム、バリウム、ジルコニウム、ガドリニウム、ランタン、ストロンチウム及びイットリウムのうち少なくとも1つが添加された酸化ハフニウム層が、強誘電体層65に用いられる。
強誘電体層65は、自発分極特性を有する。
【0062】
導電層53とメモリピラー60との交差部における強誘電体層を含む部分が、メモリセル(強誘電体トランジスタ)MCとして、機能する。
【0063】
図4及び
図5は、本実施形態のメモリデバイスにおける、メモリセルの構造例を説明するための図である。
図4は、本実施形態における、メモリセルの平面構造を説明するための上面図である。
図5は、本実施形態における、メモリセルの断面構造を説明するための断面図である。
【0064】
図4に示されるように、メモリピラー60は、円柱状の構造を有する。
コア層69は、Z方向に延びる円柱状(又は楕円柱状)の構造を有する。
【0065】
半導体層61は、Z方向に延在する円筒状(又は、楕円筒状)の構造を有する。
【0066】
絶縁層63は、導電層53と半導体層61との間に設けられている。絶縁層63は、円筒状の構造を有する。円筒状(又は、楕円筒状)の絶縁層63は、半導体層61の側面(Z方向に沿う面)を覆う。
【0067】
強誘電体層65は、導電層53と絶縁層63との間に設けられている。強誘電体層65は、円筒状(又は、楕円筒状)の構造を有する。円柱状の強誘電体層65は、絶縁層63を介して、半導体層61の側面を覆う。
【0068】
上述のように、本実施形態において、メモリセルMCは、強誘電体トランジスタである。
絶縁層63及び強誘電体層65を含む積層膜は、強誘電体トランジスタMCのゲート絶縁膜として機能する。但し、絶縁層63のみがゲート絶縁膜として扱われ、強誘電体層65がメモリ層として扱われてもよい。絶縁層63は、異なる材料からなる複数の層を含む積層膜でもよいし、ある1つの材料の単層膜でもよい。
【0069】
導電層53は、強誘電体メモリ1のワード線WLであるとともに、強誘電体トランジスタMCのゲート電極として機能する。導電層53は、Z方向において絶縁層89間に設けられている。
導電層53は、例えば、金属層(例えば、タングステン層)と導電性化合物層(例えば、窒化チタン層)との積層膜である。この場合において、導電性化合物層(図示せず)が、金属層(図示せず)と絶縁層89との間、及び、金属層と強誘電体層65との間に設けられている。
【0070】
強誘電体トランジスタMCのチャネル領域CHNは、半導体層61内に設けられている。強誘電体トランジスタMCのチャネル領域CHNは、強誘電体層65及び絶縁層63を介して導電層53に対向する。強誘電体トランジスタMCの2つのソース/ドレイン領域S/Dは、チャネル領域CHNを介して、Z方向に並ぶ。
【0071】
このように、強誘電体トランジスタMCは、縦型トランジスタである。それゆえ、メモリセルとしての強誘電体トランジスタMCの電流経路は、Z方向に沿う。
【0072】
セレクトトランジスタST(ST1,ST2)は、強誘電体トランジスタMCと実質的に同じ構造を有する。但し、セレクトトランジスタSTの構造は、強誘電体トランジスタMCの構造と異なってもよい。例えば、セレクトトランジスタSTは、強誘電体層(メモリ層)を有さない構造でもよい。
【0073】
尚、
図3の構造のメモリセルアレイは、周知の技術の製造方法によって、形成される。
【0074】
本実施形態のメモリデバイスにおいて、強誘電体トランジスタの分極特性によって、強誘電体トランジスタが、メモリセルMCとして用いられる。
【0075】
<メモリセルの動作原理>
図6乃至
図8を参照して、強誘電体トランジスタのメモリセルとしての動作原理を説明する。
【0076】
図6及び
図7は、メモリセルとしての強誘電体トランジスタの特性を説明するための模式図である。
図6は、強誘電体トランジスタの分極特性を示すグラフである。
図6のグラフの横軸は、メモリセルのゲート-ソース間の電圧Vgを示し、
図6のグラフの縦軸は、強誘電体トランジスタの強誘電体層の自発分極率Pを示す。
図7は、強誘電体層の自発分極の状態に応じた、強誘電体トランジスタの状態を模式的に示す図である。
【0077】
図6に示されるように、電圧Vgと自発分極率Pとの関係において、強誘電体層65は、ヒステリシス曲線で示される特性を有する。
【0078】
電圧Vgが強誘電体トランジスタのゲート(ワード線)に印加された場合、電界が強誘電体層65内に発生する。発生した電界の影響によって、強誘電体層65内の結晶格子内に配置されたイオンの位置が変化する。これによって、分極が、強誘電体層65内に発生する。
【0079】
自発分極率(分極量ともよばれる)は、強誘電体層の自発分極の度合いを示す。自発分極率は、強誘電体層65と強誘電体層65に接する他の層(ここでは、絶縁層63)との境界領域において、強誘電体層65に発生する単位面積当たりの表面電荷量のうち、自発分極に由来する電荷の量に応じる。
例えば、電圧Vgが0Vであり、強誘電体層65の自発分極率が負の値Paである場合(
図6の“Q0”における状態)、
図7の(a)に示されるように、自発分極plz1における正の自発分極電荷が、導電層(ゲート)53側に発生し、負の自発分極電荷が、半導体層61(チャネル領域)側に発生する。
強誘電体層が負の自発分極率を有している状態で、強誘電体トランジスタMCに印加される電圧Vgが0Vから或る正の電圧値“V1”に増加された場合(
図6の“Q1”における状態)、強誘電体層65の自発分極は、ほとんど反転しない。この場合において、強誘電体層の自発分極率Pの大きさは、ほとんど変化しない。
【0080】
電圧Vgの電圧値が、V1から正の電圧値“V2”に増加された場合(
図6の“Q2”における状態)、
図7の(b)に示されるように、強誘電体層65の自発分極plz2の向きが、負の自発分極(以下では、負の自発分極状態ともよばれる)plz1に対して、部分的に反転する。これによって、強誘電体層65の自発分極率Pが、ある値P1まで急峻に増加する。
【0081】
尚、自発分極の向きが一度反転すると、自発分極の向きが反転した状態は、電圧Vgの電圧値がV2から0Vに戻されたとしても、維持される。それゆえ、電圧Vgが、状態A2における電圧値V2から0Vに低下されたとしても、状態Qaのように、自発分極率Pは、値Paより高い値Pbとなる。
【0082】
電圧Vgの電圧値が、V2から正の電圧値“V3”に増加された場合(
図6の“Q3”における状態)、強誘電体層65の自発分極の反転が進行し、自発分極率Pは、負の値P1から正の値P2まで増加する。
【0083】
上述のように、自発分極の反転状態は、維持される。それゆえ、電圧Vgの電圧値が、状態A3におけるV3から0Vに低下された場合(
図6の“Qb”における状態)、自発分極率Pは、値Pbより高い値Pcとなる。
【0084】
電圧Vgの電圧値が、V3から正の電圧値V4に増加された場合(
図6の“Q4”における状態)、
図7の(c)に示されるように、強誘電体膜65の自発分極plz2の向きは、ほぼすべて反転する。この場合において、自発分極率Pは、正の値P3まで増加し、例えば、飽和状態となる。
電圧Vgの電圧値がV4から0Vまで低下された場合、電圧Vgが0Vであったとしても、強誘電体層65は、正の値Pbの自発分極率を有し、正の自発分極率を有する状態Qcを維持する。
【0085】
このように、正の電圧値を有する電圧Vgが、負の自発分極率を有する強誘電体層65に対して印加された場合、強誘電体層65の自発分極率は、負の値から正の値側へ変わる。
【0086】
強誘電体層65が正の自発分極率を有する場合、正の自発分極率に応じた大きさの正の電圧が、強誘電体トランジスタMCのゲート(導電層53)とチャネル領域(半導体層61)との間に印加された状態となる。
この結果として、強誘電体層が正の自発分極率を有する場合の強誘電体トランジスタの閾値電圧の値は、強誘電体層が負の自発分極率を有する場合の強誘電体トランジスタの閾値電圧の値に比較して、低下する。
【0087】
電圧Vgの電圧値が、0Vから負の電圧値“V5”まで低下された場合(
図6の“Q5”における状態)、強誘電体層65の自発分極の向きは、正の分極方向から負の分極方向に反転する。
【0088】
これによって、強誘電体トランジスタMCの強誘電体層65の自発分極率は、正の値から負の値に変わる。この時、強誘電体層65の自発分極率は、負の値で飽和する。
このように、強誘電体トランジスタMCに対する負の極性の電圧Vgの印加によって、強誘電体層65の自発分極率は、正の値から負の値に戻る。
【0089】
強誘電体層65の自発分極率が正の値から負の値に変化した後、電圧Vgの電圧値がV5から0Vまで増加された場合、強誘電体層65の自発分極率は、負の値(例えば、分極率Pa)を維持する。
【0090】
以上のように、強誘電体層65の自発分極率の変化に応じて、強誘電体トランジスタMCの閾値電圧は、変化する。変化された閾値電圧の大きさは、強誘電体層65の自発分極の方向を変える電圧値を有する電圧の印加まで、維持される。
【0091】
強誘電体トランジスタがメモリセルMCとして用いられる場合、自発分極率に応じて変化する強誘電体トランジスタの複数の閾値電圧を記憶すべきデータと関連付けることができる。
【0092】
それゆえ、強誘電体トランジスタは、データを不揮発に記憶するメモリセルMCとして、メモリデバイスに適用され得る。
【0093】
<閾値電圧とデータとの関係>
図8は、メモリセルとしての強誘電体トランジスタの閾値電圧とデータとの関係を説明するための図である。
図8の(a)及び(b)のそれぞれにおいて、グラフの横軸は、メモリセル(強誘電体トランジスタ)の閾値電圧に対応し、グラフの縦軸は、メモリセルの存在確率に対応する。
【0094】
図8の(a)は、メモリセルとしての強誘電体トランジスタが1ビットのデータを記憶する場合における、“0”及び“1”データと強誘電体トランジスタの閾値電圧との関係を示すグラフである。1ビットのデータを記憶するメモリセルは、SLC(Single level cell)とよばれる。
【0095】
図8の(a)の場合、例えば、或る電圧レベルVRより高い電圧値の閾値電圧を有する強誘電体トランジスタMCの状態(データ保持状態)は、消去状態(Er状態)とよばれる。或る電圧レベルVRより低い電圧値の閾値電圧を有する強誘電体トランジスタMCの状態は、プログラム状態(A状態)とよばれる。
【0096】
例えば、強誘電体トランジスタMCの消去状態は、強誘電体トランジスタMCの強誘電体層65の自発分極率が負の値を有する状態(例えば、
図6の“Q0”の状態)に相当する。強誘電体トランジスタMCのプログラム状態は、強誘電体トランジスタMCの強誘電体層65の自発分極率が正の値を有する状態(例えば、
図6の“Qc”の状態)に相当する。
【0097】
この場合において、例えば、Er状態の閾値電圧分布D1aは、
図6の自発分極率Paの強誘電体層を含む強誘電体トランジスタMCの集合に相当する。A状態の閾値電圧分布D2aは、
図6の自発分極率Pdの強誘電体層を含む強誘電体トランジスタMCの集合に相当する。
【0098】
例えば、“0”データが、閾値電圧分布D1aに属する消去状態の強誘電体トランジスタMCに関連づけられる。“1”データが、閾値電圧分布D2bに属するプログラム状態の強誘電体トランジスタMCに関連付けられる。
【0099】
上述のように、負の電圧値(例えば、電圧V5)のゲート-ソース間電圧VgがメモリセルMCに印加された場合、メモリセルとしての強誘電体トランジスタMCは、消去状態に設定される。
正の電圧値(例えば、電圧V4)のゲート-ソース間電圧VgがメモリセルMCに印加された場合、メモリセルとしての強誘電体トランジスタMCは、プログラム状態に設定される。
【0100】
以下において、強誘電体トランジスタMCのデータ保持状態を消去状態に設定するための電圧は、消去電圧とよばれる。消去電圧は、負の電圧値を有する。例えば、消去電圧は、電圧値Ve(例えば、
図6のV5)以下の電圧値を有する。
【0101】
強誘電体トランジスタMCのデータ保持状態をプログラム状態に設定するための電圧は、プログラム電圧(又は、書き込み電圧)とよばれる。プログラム電圧は、正の電圧値を有する。
【0102】
複数の閾値電圧分布を区別するために、隣り合う閾値電圧分布D1a,D2a間に設けられた電圧値(例えば、
図8の(a)の電圧レベルVR)は、読み出しレベルとよばれる。
【0103】
1つ以上の読み出しレベルVRを含む読み出し電圧が、強誘電体トランジスタMCに記憶されたデータの読み出し時に、強誘電体トランジスタMCのゲートに印加される。
【0104】
読み出しレベルVRの印加によって、強誘電体トランジスタMCがオンした場合、強誘電体トランジスタMCは、読み出しレベルVR以下の閾値電圧を有する。読み出しレベルVRの印加によって、強誘電体トランジスタMCがオフした場合、強誘電体トランジスタMCは、読み出しレベルVRより高い閾値電圧を有する。
強誘電体トランジスタMCのオン/オフに応じた信号の検知によって、強誘電体トランジスタMCが記憶しているデータが、読み出される。
【0105】
電圧レベル(以下では、読み出しパス電圧とよばれる)VREADが、消去状態の閾値電圧分布D1aより高い電圧レベルに、設けられている。強誘電体トランジスタに対する電圧レベルVREADの印加によって、強誘電体トランジスタMCは、記憶しているデータに依存せずに、オンする。
【0106】
図8の(b)は、メモリセルが2ビットのデータを記憶する場合における、“00”、“01”、“10”及び“11”のデータと、強誘電体トランジスタMCの閾値電圧との関係を示すグラフである。2ビットのデータを記憶するメモリセルは、MLC(Multi level cell)とよばれる。
【0107】
図8の(b)の場合、2ビットデータを記憶する強誘電体トランジスタMCは、記憶するデータに応じて、1つの消去状態(Er状態)及び3つのプログラム状態(A状態、B状態及びC状態)のうちいずれか1つの状態を有し得る。
【0108】
例えば、Er状態の閾値電圧分布D1bは、
図6の自発分極率Paの強誘電体層を含む強誘電体トランジスタMCの集合に相当する。A状態の閾値電圧分布D2bは、
図6の自発分極率Pbの強誘電体層を含む強誘電体トランジスタMCの集合に相当する。B状態の閾値電圧分布D3bは、
図6の自発分極率Pcの強誘電体層を含む強誘電体トランジスタMCの集合に相当する。C状態の閾値電圧分布D4bは、
図6の自発分極率Pdの強誘電体層を含む強誘電体トランジスタMCの集合に相当する。
【0109】
例えば、“00”データが、消去状態の閾値電圧分布(Er状態の分布)D1bに割り付けられている。“10”データが、4つの閾値電圧分布のうち最も低い閾値電圧分布(C状態の分布)D4bに、割り付けられている。“01”データが、消去状態の閾値電圧分布D1bの隣りの閾値電圧分布(A状態の分布)D2bに割り付けられている。“11”データが、閾値電圧分布D4bと閾値電圧分布(B状態の分布)D2bとの間の閾値電圧分布D3bに割り付けられている。
【0110】
隣り合う2つの閾値電圧分布間のそれぞれに、読み出しレベルVAR,VBR,VCRが設けられている。
【0111】
読み出しレベルVARの印加によって、強誘電体トランジスタMCの閾値電圧が、消去状態(Er状態)に属する値であるかプログラム状態(A状態、B状態及びC状態)に属する値であるか判別される。
読み出しレベルVCRの印加によって、強誘電体トランジスタMCの閾値電圧が、C状態に属する値であるか、B状態、A状態又はEr状態に属する値であるか判別される。
読み出しレベルVBRの印加によって、強誘電体トランジスタMCの閾値電圧が、A状態又はEr状態に属する値であるか、B状態又はC状態に属する値であるか判別される。
【0112】
読み出しレベルVAR,VCRの印加によって、2ビットのデータのうち下位ビットのデータが読み出される。例えば、読み出しレベルVBRの印加によって、2ビットのデータのうち上位ビットのデータが読み出される。
【0113】
このように、強誘電体トランジスタが、メモリセルとして、メモリデバイスに適用され得る。これによって、強誘電体メモリが、提供される。
【0114】
(1b)動作例
図9乃至
図17を参照して、本実施形態のメモリデバイス(強誘電体メモリ)の動作例について、説明する。
【0115】
以下において、動作の対象のメモリセル(強誘電体トランジスタ)MCは、選択セルとよばれる。選択セルを含むメモリセルストリング(動作の対象のメモリセルストリング)は、選択ストリングとよばれる。選択ストリングを含むストリングユニット(動作の対象のストリングユニット)は、選択ストリングユニットとよばれる。選択ストリングユニットを含むブロック(動作の対象のブロック)は、選択ブロックとよばれる。
【0116】
また、選択セル以外のメモリセルは、非選択セルとよばれる。選択ストリング以外のメモリセルストリングは、非選択ストリングとよばれる。選択ストリングユニット以外のストリングユニットは、非選択ストリングユニットとよばれる。選択ブロック以外のブロックは、非選択ブロックとよばれる。
【0117】
以下において、説明の簡略化のため、1ビットのデータを記憶するメモリセル(SLC)に対する各種の動作シーケンスが、例示されている。
【0118】
(1b-1)読み出しシーケンス
図9は、本実施形態の強誘電体メモリにおける読み出しシーケンスを説明するための模式図である。
【0119】
メモリコントローラ2は、強誘電体メモリ1に対して、読み出しコマンド及び選択アドレスを送る。
本実施形態の強誘電体メモリ1は、読み出しコマンドに基づいて、選択アドレスに示されるメモリセルアレイ100内の領域に対して、読み出しシーケンスを実行する。
【0120】
読み出しシーケンス時において、読み出し対象の選択セルMCselを含むストリングユニットSUsel及びブロックBLKselが、選択状態にそれぞれ設定される。
【0121】
シーケンサ190は、電圧VBL0を、ビット線BLに印加する。読み出しシーケンスにおける読み出し動作がページ単位(セルユニット単位)で実行される場合、選択ストリングユニットSUsel内の選択ページPGselに属する複数のビット線BLが、電圧VBL0の印加によって、選択状態に設定される。電圧VBL0は、正の電圧値を有する。
尚、データの読み出し方式に応じて、全てのビット線BLが、選択状態に設定されなくともよい。
【0122】
シーケンサ190は、電圧VSLを、ソース線SL(及び半導体層41)に印加する。電圧VSLは、例えば、グランド電圧である。
【0123】
シーケンサ190は、選択ブロックBLKsel内において、選択電圧Vonを、選択ストリングユニットSUselのドレイン側セレクトゲート線(選択ドレイン側セレクトゲート線)SGDselに印加する。選択電圧Vonと電圧VBL0との電位差は、ビット線BLに接続されたドレイン側セレクトトランジスタST1がオンすることが可能な電位差に設定される。
【0124】
これによって、選択ドレイン側セレクトゲート線SGDselに接続された複数のドレイン側セレクトトランジスタST1は、オンする。
【0125】
選択ドレイン側セレクトゲート線SGDに接続された選択ストリングMSselは、オン状態のセレクトトランジスタST1を介して、ビット線BLに電気的に接続される。
【0126】
尚、データの読み出し方式に応じて、非選択ビット線が存在する場合、非選択ビット線及び選択ドレイン側セレクトゲート線SGDselに接続されたセレクトトランジスタST1がカットオフ状態となるように、非選択ビット線に印加される電圧値が、適宜設定されてもよい。
【0127】
シーケンサ190は、選択ブロックBLKsel内において、電圧Vonを、選択ストリングユニットSUselのソース側セレクトゲート線(選択ソース側セレクトゲート線)SGSselに印加する。これによって、選択セレクトゲート線SGSselに接続されたソース側セレクトトランジスタST2elは、オンする。
【0128】
選択ソース側セレクトゲート線SGSselに接続された選択ストリングMSselは、オン状態のセレクトトランジスタST2を介して、半導体層41及びソース線SLに電気的に接続される。
【0129】
シーケンサ190は、選択ブロックBLKsel内において、電圧Voffを、非選択ストリングユニットSUzのドレイン側セレクトゲート線(非選択ドレイン側セレクトゲート線)SGDzに印加する。これによって、非選択ドレイン側セレクトゲート線SGDzに接続されたドレイン側セレクトトランジスタST1は、オフする。
【0130】
それゆえ、非選択ドレイン側セレクトゲート線SGDzに接続された非選択ストリングMSzは、オフ状態のセレクトトランジスタST1によって、ビット線BLから電気的に分離される。
【0131】
シーケンサ190は、選択ブロックBLKsel内において、電圧Voffを、非選択ストリングユニットSUzのソース側セレクトゲート線セレクトゲート線(非選択ソース側セレクトゲート線)SGSzに印加する。これによって、非選択ソース側セレクトゲート線SGSzに接続されたソース側セレクトトランジスタST2は、オフする。
【0132】
それゆえ、非選択ソース側セレクトゲート線SGSzに接続された非選択ストリングMSzは、オフ状態のセレクトトランジスタST2によって、ソース線SLから電気的に分離される。
【0133】
このように、本実施形態の強誘電体メモリは、選択ブロックBLKsel内において、ドレイン側及びソース側セレクトゲート線SGD,SGSの電位の制御によって、1つ以上の選択セルMCselを含むグループ(選択ページPGsel)が属するストリングユニットを、選択的に活性化できる。
選択ブロックBLKsel内において、非選択ストリングユニットSUzは、非活性化される。
【0134】
選択ブロックBLKsel内において、非選択電圧(読み出しパス電圧)VREADが、非選択ワード線WLzに印加される。非選択ワード線WLzに接続された非選択セルMCzは、記憶しているデータに依存せずにオンする。
【0135】
読み出しレベルVRを有する読み出し電圧が、選択ワード線WLselに印加される。1ビットデータを記憶するメモリセルMCに関して、読み出しレベルVRは、2つの閾値電圧分布D1a,D2a間の電圧値を有する。
【0136】
選択セルMCselの閾値電圧が、読み出しレベルVRの電圧値以下である場合、選択セルMCselは、オンする。この場合において、ビット線BLが、オン状態の選択セル(及び、オン状態の非選択セルMCz、及びオン状態のセレクトトランジスタST1,ST2)を介して、ソース線SLに電気的に接続される。この結果として、セル電流が、選択ストリングMSselを介して、ビット線BLとソース線SLとの間に流れる。
【0137】
選択セルMCselの閾値電圧が、読み出しレベルVRの電圧値より高い場合、選択セルMCselは、オフする。この場合において、ビット線BLは、オフ状態の選択セルMCselによって、ソース線SLから電気的に分離される。この結果として、セル電流は、ビット線BLとソース線SLとの間に流れない。
【0138】
センスアンプ回路150が、発生したセル電流をセンス及び増幅する。
センスアンプ回路150は、セル電流のセンス結果に基づいて、選択セルMCsel内のデータを判定する。センスアンプ回路150は、判定結果に基づく信号を、選択セルMCsel内のデータとして、出力する。これによって、選択セルMCselからの読み出しデータが、強誘電体メモリ1からメモリコントローラ2へ転送される。
【0139】
尚、センスアンプ回路150は、セル電流に応じたビット線BLの電位の変動の検知結果に基づいて、選択セルMCsel内のデータを判定してもよい。
【0140】
読み出しシーケンス時、非選択ブロックBLKxにおいて、非選択ワード線WLxの電位の状態は、フローティング状態に設定される。非選択ブロックBLKxの各非選択ストリングユニットSUxにおいて、電圧Voffが、非選択のドレイン側及びソース側セレクトゲート線SGDx,SGSxに印加される。これによって、読み出しシーケンス時、非選択ブロックBLKx内のメモリセルストリングMSは、ビット線BL及びソース線SLから電気的に分離される。
【0141】
この後、シーケンサ190は、各配線の電位を初期状態(例えば、プリチャージ状態、グランド電圧印加状態、又は、フローティング状態)に戻す。
【0142】
以上のように、本実施形態の強誘電体メモリにおいて、メモリセルアレイ100内のデータが、読み出しシーケンスによって読み出される。
【0143】
尚、選択ストリングユニット内の1つのメモリセルが選択状態に設定され、その1つの選択セルからデータが、読み出されてもよい。
【0144】
(1b-2)消去シーケンス
図10は、本実施形態の強誘電体メモリにおける消去シーケンスを説明するための模式図である。
【0145】
メモリコントローラ2は、強誘電体メモリ1に対して、消去コマンド及び選択アドレスを送る。
本実施形態の強誘電体メモリ1は、消去コマンドに基づいて、選択アドレスに示されるメモリセルアレイ100内の領域に対して、消去シーケンスを実行する。
【0146】
消去シーケンス時において、データの消去対象のメモリセルを含むストリングユニット及びブロックが、選択状態にそれぞれ設定される。
例えば、消去シーケンスにおける消去動作は、1つのブロック単位で実行される。
【0147】
ブロック単位の消去シーケンス時において、シーケンサ190は、電圧Vg1aを、選択ブロックBLKsel内の全てのドレイン側セレクトゲート線SGDselに印加する。例えば、電圧Vg1aは、2Vである。
シーケンサ190は、電圧VSGsel2を、選択ブロックBLKsel内の全てのソース側セレクトゲート線SGSselに印加する。電圧VSGsel2は、0Vである。
これによって、選択ブロックBLKsel内の全てのストリングユニットSUsel及びメモリセルストリングMSselが、選択状態に設定される。
【0148】
非選択ブロックBLKx内において、シーケンサ190は、電圧Vg1xを、非選択のドレイン側セレクトゲート線SGDxに印加する。非選択ブロックBLKx内において、シーケンサ190は、電圧Vunselを、非選択のソース側セレクトゲート線SGSxに印加する。例えば、電圧Vg1xは、2Vである。例えば、電圧Vunselは、4Vである。
これによって、非選択ブロックBLKx内の全てのストリングユニットSUx及びメモリセルストリングMSxは、非選択状態に設定される。
【0149】
シーケンサ190は、電圧VWLselを、選択ブロックBLKsel内の全てのワード線WLselに、印加する。例えば、電圧VWLselは、0Vである。
非選択ブロックBLKx内において、シーケンサ190は、非選択の各ワード線WLxの電位状態を、電気的にフローティングな状態に設定する。
【0150】
シーケンサ190は、電圧Vdを、選択ブロックBLKselに接続された全てのビット線BLに印加する。例えば、電圧Vdは、4Vである。
電圧Vg1a(例えば、0V)が、ドレイン側セレクトトランジスタST1のゲートに印加され、電圧Vd(例えば、4V)が、ドレイン側セレクトトランジスタST1のドレインに印加される。この場合において、選択ドレイン側セレクトゲート線SGDselに接続されたセレクトトランジスタST1は、オフする。
【0151】
シーケンサ190は、電圧Vsを、選択ブロックBLKselに接続されたソース線SL及び半導体層41(及びウェル配線CPWELL)に印加する。例えば、電圧Vsは、4Vである。
【0152】
電圧VSGsel2(例えば、0V)が、ソース側セレクトトランジスタST2のゲートに印加される。電圧Vs(例えば、4V)が、ソース側セレクトトランジスタST2のソースに印加される。
これによって、選択ソース側セレクトゲート線SGSselに接続されたセレクトトランジスタST2は、オンする。
【0153】
p型の半導体層41に起因した正孔(h+)が、オン状態のセレクトトランジスタST2を介して、メモリセルストリングMSselのソース側から半導体層61内に供給される。これによって、半導体層61は、正に帯電する。
このように、各配線に対する電圧の印加によって、半導体層61の電位が、上昇する。例えば、半導体層61の電位は、4V程度である。
【0154】
この結果として、電位差Vcellが、選択セルMCselのゲート(ワード線WLsel)と選択セルMCselのチャネル領域(半導体層61)との間に生じる。以下において、メモリセルMCのゲートとメモリセルMCのチャネル領域との間の電位差Vcellは、セル印加電圧Vcellとよばれる。
【0155】
消去シーケンスにおいて、選択セルMCselのゲートの電位は、選択セルMCselのチャネル領域の電位より低くなる。この場合において、選択セルMCselのゲートとチャネル領域との間に印加されるセル印加電圧Vcellは、負の電圧値(負の極性を有する電圧)となる。
【0156】
それゆえ、消去シーケンスにおいて、負の電圧値のセル印加電圧Vcellによって、消去動作が、選択セルMCselに実行される。例えば、消去動作時において、セル印加電圧Vcellの電圧値は、
図6の電圧V5以下の電圧値に相当する値になる。
以下において、メモリセルを消去状態に設定するためのセル印加電圧は、消去電圧(VERA)とよばれる。消去電圧VERAの下限の電圧値は、所定の電圧値以下に設定されている。
【0157】
これによって、選択セルMCselの強誘電体トランジスタの自発分極状態は、消去状態(例えば、
図7の(a)の状態)になる。
【0158】
このように、選択ブロックBLKsel内の複数の選択セルMCselは、消去状態に設定される。この消去動作によって、選択ブロック内の複数のメモリセルのデータが、消去される。
【0159】
非選択ブロックBLKx内において、セレクトトランジスタST1,ST2は、オフ状態である。それゆえ、非選択ブロックBLKx内のメモリセルストリングMSxは、ビット線BL及びソース線SLから電気的に分離されている。フローティング状態のワード線WLxによって、非選択ブロック内におけるメモリセルMCのセル印加電圧の電圧値は、負の電圧値に達しない。それゆえ、非選択ブロックBLKx内のメモリセルの状態は、消去状態に遷移しない。
【0160】
この後、シーケンサ190は、各配線の電位状態を初期状態(例えば、プリチャージ状態、グランド電圧印加状態、又は、フローティング状態)に戻す。
【0161】
以上のように、本実施形態の強誘電体メモリにおける消去シーケンスが、終了する。
【0162】
尚、消去シーケンスにおいて、消去動作の後に、消去動作に関するベリファイ動作(以下では、消去ベリファイとよばれる)が、実行されてもよい。消去ベリファイにおいて、選択セルMCの閾値電圧が、消去状態の閾値電圧分布に応じた所定の電圧値に達しているか否か検証される。
【0163】
例えば、強誘電体メモリにおいて、選択セルの閾値電圧が所定の電圧値(消去ベリファイレベルとよばれる)以上になっている場合、選択セルに対する消去ベリファイは、パスであると判定される。選択セルの閾値電圧が消去ベリファイレベル未満である場合、選択セルに対する消去ベリファイは、フェイルであると判定される。
【0164】
消去対象の複数の選択メモリセルに関して、フェイルのメモリセルの個数(又はパスのメモリセルの個数)が、消去シーケンスの終了の閾値に達するまで、消去動作及び消去ベリファイが繰り返し実行される。
【0165】
本実施形態において、ブロック単位の消去動作が、例示された。但し、消去動作は、ブロックBLKより小さい単位(例えば、サブブロック又はページ)で、実行されてもよい。
【0166】
(1b-3)書き込みシーケンス
図11乃至
図17は、本実施形態の強誘電体メモリにおける書き込みシーケンスを説明するための図である。
【0167】
図11は、本実施形態の強誘電体メモリの書き込みシーケンスの処理フローを示すフローチャートである。
図12は、本実施形態の強誘電体メモリの書き込みシーケンスにおける、選択セルに印加される電圧(セル印加電圧)を示す波形図である。
図12において、波形図の横軸は、時間に対応し、波形図の縦軸は、セル印加電圧に対応する。
【0168】
図11に示されるように、本実施形態の強誘電体メモリの書き込みシーケンスWseqは、プログラム動作(S10)と弱消去動作(S11)とを少なくとも含む。
図12に示されるように、書き込みシーケンスの各動作において、所定の電圧値を有する電圧VPGM,VWKERAが、処理フローに従って、データの書き込み対象のメモリセルに印加される。
【0169】
<S10:プログラム動作>
図13は、本実施形態の強誘電体メモリのプログラム動作時における、メモリセルアレイ内の各配線に対する印加電圧を説明するための模式図である。
【0170】
書き込みシーケンス時、メモリコントローラ2は、強誘電体メモリ1に対して、書き込みコマンド、選択アドレス及び書き込みデータを送る。
本実施形態の強誘電体メモリ1は、書き込みコマンドに基づいて、選択アドレスに示されるメモリセルアレイ100内の領域に対して、書き込みシーケンスにおける書き込みデータのプログラム動作を実行する。
【0171】
例えば、書き込みシーケンス時において、選択セルは、初期状態として消去状態に設定される。書き込みシーケンス中において、上述の消去動作が、プログラム動作の開始前に、実行されてもよい。
【0172】
書込みシーケンス時において、シーケンサ190は、プログラム動作のための各種の制御を実行する。
【0173】
シーケンサ190は、ロウ制御回路140及びセンスアンプ回路150を介して、データの書き込み対象のメモリセルを含むストリングユニット及びブロックを、選択状態にそれぞれ設定する。
例えば、書き込みシーケンスにおいて、プログラム動作は、1つのページ単位で実行される。
【0174】
プログラム動作において、シーケンサ190は、電圧Vonを、選択ブロックBLKsel内の選択されたドレイン側セレクトゲート線SGDselに印加する。電圧Vonの印加によって、選択ドレイン側セレクトゲート線SGDselに接続されたセレクトトランジスタST1は、オンする。これによって、選択ページPGselに属するメモリセルストリングMSselは、オン状態のセレクトトランジスタST1を介して、ビット線BLに電気的に接続される。
【0175】
シーケンサ190は、電圧Voffを、選択ブロックBLKsel内の選択ソース側セレクトゲート線SGSselに印加する。電圧Voffの印加によって、選択ソース側セレクトゲート線SGDselに接続されたセレクトトランジスタST2は、オフする。これによって、選択ページPGselに属するメモリセルストリングMSselは、オフ状態のセレクトトランジスタST2によって、ソース線SLから電気的に分離される。
【0176】
シーケンサ190は、電圧Voffを、選択ブロックBLKsel内の非選択のドレイン側セレクトゲート線SGDz及び非選択のソース側セレクトゲート線SGSzに印加する。電圧Voffの印加によって、非選択ドレイン側セレクトゲート線SGDzに接続されたセレクトトランジスタST1は、オフする。電圧Voffの印加によって、非選択ソース側セレクトゲート線SGSzに接続されたセレクトランジスタST2は、オフする。
これによって、選択ブロックBLKsel内の非選択ストリングユニットSUzの非選択ストリングMSzは、ビット線BL及びソース線SLから電気的に分離される。
【0177】
非選択ブロックBLKx内において、シーケンサ190は、電圧Voffを、非選択のドレイン側セレクトゲート線SGDx及び非選択のソース側セレクトゲート線SGSxにそれぞれ印加する。オフ状態のセレクトトランジスタST1,ST2によって、非選択ブロックBLKx内の非選択ストリングMSxは、ビット線BL及びソース線SLから電気的に分離される。
【0178】
シーケンサ190は、電圧VBL1を、選択ページPGselを含むセルユニットSUselに接続された複数のビット線BLに、印加する。電圧VBL1の電圧値は、各選択セルMCselに書き込むべきデータ(ここでは、“0”又は“1”)に応じる。例えば、0V(グランド電圧Vss)の電圧VBL1が、“1”データを書き込む選択セルMCselに接続されたビット線BLに印加される。正の電圧値の電圧VBL1が、“0”データを書き込むメモリセルに接続されたビット線BLに印加される。
【0179】
例えば、シーケンサ190は、ソース線SLに所定の電圧を印加する。または、シーケンサ190は、ソース線SLを電気的にフローティングな状態に設定する。
【0180】
シーケンサ190は、非選択電圧(以下では、書き込みパス電圧とよばれる)Vpassを、選択ブロックBLKsel内の非選択ワード線WLzに、印加する。例えば、書き込みパス電圧Vpassの電圧値は、正の電圧値を有する。書き込みパス電圧Vpassの印加によって、非選択セルMCzはオンする。
【0181】
シーケンサ190は、選択ブロックBLKselにおいて、選択電圧Vpを、選択ワード線WLselに印加する。選択電圧Vpの電圧値は、正の電圧値を有する。選択電圧Vpの電圧値は、書き込みパス電圧Vpassより高い。選択電圧Vpの電圧値は、正の電圧値の電圧VBL1より高い。
【0182】
シーケンサ190は、非選択ブロックBLKx内において、非選択ワード線WLxの電位状態を、フローティング状態に設定する。
【0183】
プログラム動作時において、各ビット線BLの電圧VBLが、オン状態のドレイン側セレクトトランジスタST1を介して、各半導体層61に印加される。
電圧VBLは、オン状態の非選択セルMCzを介して、選択セルMCselのチャネル領域に転送される。
【0184】
プログラム電圧Vpgmとビット線電圧VBLとの電位差が、セル印加電圧Vcellとなる。メモリセル(強誘電体トランジスタ)MCにおけるゲートの電位がチャネル領域の電位より高い場合、セル印加電圧Vcellは、正の電圧値を有する。
【0185】
“0”データがプログラムされる選択セルMCselのチャネル領域は、正の電圧値が印加されたビット線BL(例えば、電圧VBLの転送又はセレクトトランジスタのカットオフによるチャネルブースト)によって、半導体層61の電位が、上昇する。これによって、選択ワード線WLselとチャネル領域との間の電位差は、小さくなる。例えば、“0”データがプログラムされる選択セルMCselにおけるセル印加電圧(以下では、“Vcell-0”と表記される)は、電圧VBLの電圧値の設定によって、
図6の電圧V1程度(又は、0V)の大きさになる。
このため、“0”データがプログラムされる選択セルMCselは、消去状態を維持する。
【0186】
0Vの電圧VBLが、“1”データが書き込まれる選択セルMCselのチャネル領域に転送される。それゆえ、“1”データが書き込まれる選択セルMCselのセル印加電圧(以下では、“Vcell-1”と表記される)は、セル印加電圧Vcell-0より高くなる。
【0187】
この場合において、
図12に示されるように、プログラム動作時において、正の電圧値のセル印加電圧Vcellが、プログラム電圧VPGMとして、“1”データが書き込まれる選択セルMCselに印加される。例えば、プログラム電圧VPGMは、三角波のパルス形状を有する。
例えば、セル印加電圧Vcell-1は、
図6の電圧V4程度の大きさに設定される。
【0188】
図14は、プログラム動作時におけるメモリセルの自発分極状態を説明するための模式図である。
【0189】
図14に示されるように、正の電圧値を有するプログラム電圧VPGMが、選択セルMCselの強誘電体トランジスタに対して印加された場合、強誘電体トランジスタMCの強誘電体層65の分極は、反転する。これによって、強誘電体層65の自発分極状態は、負の自発分極状態から正の自発分極状態plz2に変わる。
【0190】
この時、プログラム電圧VPGMの印加によって、電子99が、絶縁層63内、絶縁層63と強誘電体層65との間の領域(例えば、界面)、又は、絶縁層63と半導体層61との間の領域(例えば、界面)に、トラップされる場合がある。
【0191】
このトラップされた電子(以下では、トラップ電子とよばれる)99に起因して、メモリセルMCのメモリウィンドウ(強誘電体トランジスタにおける“1”データ保持状態の閾値電圧と“0”データ保持状態の閾値電圧との間の差)が、狭くなる又は消失する可能性がある。
【0192】
本実施形態の強誘電体メモリ1は、プログラム動作(S10)後の弱消去動作(S11)によって、トラップ電子99を、メモリセルMC内から排出(デトラップ)する。
【0193】
<S11:弱消去動作>
図13に示されるように、本実施形態の強誘電体メモリの書き込みシーケンスにおいて、プログラム動作の後、弱消去動作(以下では、デトラップ動作ともよばれる)が実行される。
【0194】
書込みシーケンス時において、シーケンサ190は、弱消去動作のための各種の動作を実行する。
例えば、書き込みシーケンスにおいて、弱消去動作は、ページ単位で実行される。
【0195】
図15は、本実施形態の強誘電体メモリの弱消去時における、メモリセルアレイ内の各配線に対する印加電圧を説明するための模式図である。
【0196】
図15に示されるように、選択ブロックBLKsel内において、シーケンサ190は、電圧Vdwkを、ビット線BLに印加する。シーケンサ190は、電圧Vswkを、ソース線SLselに印加する。例えば、電圧Vdwkの電圧値は、3Vである。電圧Vswkの電圧値は、3Vである。
【0197】
弱消去動作がページ単位で実行される場合、シーケンサ190は、書き込み対象の選択アドレスに対応する選択ワード線WLsel、セレクトゲート線SGDsel,SGSsel、及び、非選択ワード線WLz電位を制御する。
【0198】
シーケンサ190は、電圧Vg1bを、選択ストリングユニットSUselの選択ドレイン側セレクトゲート線SGDselに印加する。例えば、電圧Vg1bの電圧値は、0V程度である。
シーケンサ190は、電圧VSGSselwkを、選択ストリングユニットSUselの選択ソース側セレクトゲート線SGSselに印加する。例えば、電圧VSGSselwkの電圧値は、0V程度である。
【0199】
シーケンサ190は、例えば、電圧Vg1bを、非選択ストリングユニットSUzの非選択のドレイン側セレクトゲート線SGDzに印加する。
シーケンサ190は、電圧Vunselwkを、非選択ストリングユニットSUzの非選択のソース側セレクトゲート線SGSzに印加する。例えば、電圧Vunselwkの電圧値は、3V程度である。
【0200】
シーケンサ190は、非選択電圧(以下では、弱消去パス電圧とよばれる)Vzを、選択ブロックBLKsel内の複数の非選択ワード線WLzに印加する。非選択電圧Vzは、例えば、1V程度である。
【0201】
シーケンサ190は、選択電圧VWLwkを、選択ワード線WLselに印加する。選択電圧VWLwkは、非選択電圧Vzより低い。選択電圧VWLwkは、電圧Vdwk,Vswkより低い。例えば、選択電圧VWLwkは、0V程度である。
尚、弱消去動作時における選択ワード線WLselは、プログラム動作時における選択ワード線と同じである。
【0202】
非選択ブロックBLKxに関して、シーケンサ190は、非選択ワード線WLxの電位状態を、電気的にフローティングな状態に設定する。シーケンサ190は、電圧Vg1xx(ここでは、0V)を、非選択ドレイン側セレクトゲート線SGDxに印加する。シーケンサ190は、電圧Vunselwk(ここでは、3V)を、非選択ソース側セレクトゲート線SGSxに印加する。
【0203】
選択ドレイン側セレクトゲート線SGDselの電圧Vg1b(ここでは、0V)は、ビット線BLの電圧Vdwk(ここでは、3V)より低い。これによって、選択ドレイン側セレクトゲート線SGDselに接続されたセレクトトランジスタST1は、オフする。
選択ソース側セレクトゲート線SGSselの電圧VSGselwk(ここでは、0V)は、ソース線SLの電圧Vswk(ここでは、3V)より低い。これによって、選択ソース側セレクトゲート線SGSselに接続されたセレクトトランジスタST2は、オンする。
【0204】
選択ページPGselに含まれる複数の選択ストリングMSselにおいて、p型半導体層41は、オン状態のソース側セレクトトランジスタST2を介して、半導体層61に電気的に接続される。
【0205】
半導体層41と選択ワード線WLsel(及び非選択ワード線WLz)との間の電位差によって、正孔(h+)が、ソース側セレクトトランジスタST2を介してp型半導体層41から半導体層61に注入される。
これによって、半導体層61の電位が、上昇する。例えば、半導体層61(強誘電体トランジスタMCのチャネル領域CHN)の電位は、電圧Vswk(例えば、3V)程度になる。
【0206】
非選択ストリングMSzにおいて、選択ドレイン側セレクトゲート線SGDselに接続されたセレクトトランジスタST1と同様に、非選択ドレイン側セレクトゲート線SGDzに接続されたセレクトトランジスタST1は、オフする。
【0207】
非選択ストリングMSzにおいて、非選択ソース側セレクトゲート線SGSzの電圧Vunselwk(ここでは、3V)は、ソース線SLの電圧Vswk(ここでは、3V)と同じである。この場合において、非選択ソース側セレクトゲート線SGSzに接続されたセレクトトランジスタST2は、オフする。
選択ブロックBLKsel内の非選択ストリングMSzの半導体層61は、オフ状態のセレクトトランジスタST2によって、ソース線SL(及びp型半導体層41)から電気的に分離される。
【0208】
例えば、非選択ストリングMSzの半導体層61の電位は、ワード線WLsel,WLz間の容量性カップリングにより、選択ワード線WLselと非選択ワード線WLzとの間の電位差(ここでは、1V)程度に上昇する。
【0209】
選択ストリングMSselの半導体層61の電位の上昇によって、弱消去動作時において、選択セルMCselのチャネル領域の電位(半導体層61の電位)が、選択セルMCselのゲートの電位(選択ワード線WLselの電位)より高い。
そのため、弱消去動作時のセル印加電圧Vcell-we(=VWLwk-Vswk)は、負の電圧値を有する。
【0210】
図12に示されるように、弱消去動作時において、負の電圧値のセル印加電圧Vcellが、弱消去電圧VWKEとして、選択セルMCselに印加される。
例えば、弱消去電圧VWKEは、三角波のパルス形状を有する。
【0211】
図16は、弱消去動作時におけるメモリセルの分極状態を説明するための模式図である。
【0212】
図16に示されるように、弱消去動作時において、正孔98の供給によって、半導体層61の電位が、選択セルMCselのゲートの電位より高い。負の電圧値を有するセル印加電圧Vcell-wkが、選択セルMCselに印加される。
【0213】
負のセル印加電圧Vcellに起因する電界によって、強誘電体層65及び絶縁層63内のトラップ電子99が、半導体層61内に放出(デトラップ)される。
これによって、強誘電体トランジスタMCに対するトラップ電子の影響は、抑制される。
【0214】
弱消去電圧VWKEの極性は、消去電圧VERAの極性と同じである。弱消去電圧VWKEは、負の電圧である。
【0215】
弱消去電圧VWKEは、消去電圧VERAより高い。
消去電圧VERAの下限の電圧値は、負の電圧値Ve以下である。
弱消去電圧VWKEの下限の電圧値は、電圧値Veより高く、負の電圧値Vwe以下である。
【0216】
尚、弱消去電圧VWKEの極性は、プログラム電圧VPGMの極性と反対である。
【0217】
電圧値Veは、強誘電体トランジスタMCの強誘電体層65の分極状態を負の分極状態に設定することができる電圧値である。
電圧値Veを有する電圧VERAが、セル印加電圧Vcellとして、選択セルの強誘電体トランジスタMCselに印加された場合、強誘電体層65の分極状態は、プログラム状態(正の分極状態)から消去状態(負の分極状態)に変化する。
【0218】
電圧値Vweは、強誘電体トランジスタMCの強誘電体層65の分極状態を変化させることなしに、消去電圧の極性と同じ極性の電位差を強誘電体層65に与える電圧値である。例えば、電圧値Vweは、層63,65内の電子のデトラップが生じ得る閾値である。
【0219】
電圧値Vweを有する電圧VWKEが、セル印加電圧Vcellとして、選択セルの強誘電体トランジスタMCselに印加された場合、強誘電体層65の分極状態は、その状態を維持したまま、強誘電体層65(及び絶縁層63)内のトラップ電子を、半導体層61に放出される。
【0220】
尚、弱消去電圧VWKEの電圧値は、強誘電体層65の分極方向を変化させないだけでなく、メモリセルとしての強誘電体トランジスタMCの閾値電圧が記憶すべきデータに応じた閾値電圧分布の範囲内から逸脱しないように設定されることが好ましい。
【0221】
本実施形態において、弱消去電圧VWKEの電圧値(VWLwk-Vswk)は、-3Vである。但し、選択セルとしての強誘電体トランジスタに用いられる材料、強誘電体トランジスタのサイズ、各層の膜厚などに応じて、適宜調整される。例えば、本実施形態において、弱消去電圧VWKEの電圧値は、電圧値Veより高く、電圧値Vwe以下の関係を満たしていれば、-2.5Vから-3.5Vの間の値を取り得る。
弱消去電圧VWKEの電圧値は、電圧値Vweと等しくともよい。
【0222】
本実施形態において、消去電圧VWKEの印加によって、強誘電体層65及び絶縁層63内のトラップ電子が、デトラップされる。
【0223】
弱消去電圧VWKEの印加の後、シーケンサ190は、弱消去動作を終了する。シーケンス190は、シーケンサ190は、各配線の電位を初期状態(例えば、プリチャージ状態、グランド電圧印加状態、又は、フローティング状態)に戻す。
【0224】
尚、書き込みシーケンスにおいて、弱消去動作の後、データのプログラム結果に関するベリファイ動作が実行されてもよい。
【0225】
以上のように、本実施形態の強誘電体メモリにおいて、シーケンサ190は、書き込みシーケンスWseqを、終了する。
【0226】
<S20>
書き込みシーケンスの弱消去動作(又はベリファイ動作)の後、新たに供給されたコマンドに基づいた動作が、実行される。
図11及び
図12の例において、シーケンサ190は、消去シーケンスを実行する。
【0227】
上述の
図10のように、消去動作のための選択ブロック内の各配線に印加される。消去電圧VERAが、セル印加電圧Vcellとして、選択セルMCselに印加される。例えば、消去電圧VERAは、三角波のパルス形状を有する。
これによって、選択ブロックBLKsel内のメモリセルMCselが、消去状態に設定される。
【0228】
この後、シーケンサ190は、消去シーケンスを終了する。
【0229】
図17は、本実施形態の強誘電体メモリの変形例を示すフローチャートである。
【0230】
図17に示されるように、書き込みシーケンスにおける弱消去動作の後、ある1つのメモリセル又はページ単位で読み出しシーケンスS30が、実行されてもよい。
【0231】
以上のように、本実施形態の強誘電体メモリは、弱消去動作を含む書き込みシーケンスを実行できる。
【0232】
(1c) 特性
図18は、本実施形態の強誘電体メモリの特性を説明するためのグラフである。
【0233】
図18において、グラフの横軸は、メモリセルとして強誘電体トランジスタのゲート電圧に対応し、グラフの縦軸は、強誘電体トランジスタのドレイン電流に対応する。
【0234】
図18において、線B0は、消去状態の強誘電体トランジスタの電圧‐電流特性を示している。
線B1は、比較例としての、弱消去動作を含まない書き込みシーケンス後におけるプログラム状態の強誘電体トランジスタの電圧-電流特性を示している。
線B2は、本実施形態における、弱消去動作を含む書き込みシーケンス後におけるプログラム状態の強誘電体トランジスタの電圧-電流特性を示している。
【0235】
図18の線B1に示されるように、プログラム動作後の弱消去動作が実行されない場合、強誘電体トランジスタの閾値電圧は、強誘電体トランジスタがプログラム状態であるにも関わらず、消去状態の強誘電体トランジスタの閾値電圧より高い。
これは、トラップ電子に起因した閾値電圧の上昇が、強誘電体トランジスタに生じていることを示している。
【0236】
図18の線B2に示されるように、プログラム動作後の弱消去動作が実行された場合、強誘電体トランジスタの閾値電圧は、消去状態の強誘電体トランジスタの閾値電圧より低い。
【0237】
これは、本実施形態において、弱消去動作によるトラップ電子のデトラップによって、強誘電体トランジスタに対するトラップ電子の影響が抑制されたことを、示している。
【0238】
以上のように、本実施形態の強誘電体メモリは、プログラム動作後の弱消去動作の実行によって、メモリセル内のトラップ電子の影響を抑制できる。
【0239】
(1d)まとめ
本実施形態の強誘電体メモリ1は、強誘電体トランジスタをメモリセルMCとして含む。
【0240】
メモリセルとしての強誘電体トランジスタMCに対するプログラム動作によって、電子が、強誘電体層65と半導体層61との間にトラップされる場合がある。このトラップされた電子は、強誘電体層65の強誘電性(自発分極)に寄与せず、不安定な状態で強誘電体トランジスタMCの層63,65内に存在し得る。
【0241】
トラップされた電子の影響が、強誘電体トランジスタMCのメモリセルとしての特性に重畳される。例えば、トラップされた電子の影響によって、所望のメモリウィンドウ(例えば、2つの閾値電圧分布間の間隔)が、プログラム動作の実行から比較的長い時間が経過しないと確保されない可能性がある。
【0242】
本実施形態の強誘電体メモリ1は、書き込みシーケンスにおいて、プログラム動作の後、弱消去動作を実行する。
本実施形態の強誘電体メモリ1は、この弱消去動作によって、強誘電体トランジスタMCの分極状態を記憶すべきデータに応じた状態に維持しつつ、トラップされた電子を、強誘電体層65及び絶縁層63内から除去できる。
【0243】
これによって、本実施形態の強誘電体メモリ1は、トラップされた電子が自然に放出するまでの期間を待つこと無しに、比較的短い時間で所望のメモリウィンドウを確保できる。
この結果として、本実施形態の強誘電体メモリ1は、メモリセルとしての強誘電体トランジスタの動作及び特性を安定化できる。
【0244】
以上のように、本実施形態の強誘電体メモリ1は、メモリの特性を向上できる。
【0245】
(2)第2の実施形態
図19乃至
図21を参照して、第2の実施形態のメモリデバイスについて、説明する。
【0246】
図19は、本実施形態のメモリデバイス(例えば、強誘電体メモリ)の構造例を示す模式的な断面図である。
【0247】
図19に示されるように、基板40上の半導体層は、n型の半導体層42でもよい。メモリピラー60は、n型の半導体層42上に設けられている。半導体層61は、n型の半導体層42に、接続される。例えば、コンタクトプラグ74は、n型の半導体領域(拡散層)44上に設けられている。
【0248】
メモリセルストリングMSのソース側において、半導体層61がn型の半導体層42に接続される。メモリセルストリングMSのソースは、n型の半導体層42を介してソース線SLに接続される。
【0249】
本実施形態の強誘電体メモリにおいて、シーケンサ190は、以下のように、書き込みシーケンスにおけるプログラム動作後の弱消去動作を実行する。
【0250】
図20は、本実施形態の強誘電体メモリの弱消去動作時における、各配線の電圧印加状態を模式的に示している。
本実施形態において、書き込みシーケンスにおけるプログラム動作は、上述のプログラム動作の例(例えば、
図12及び
図13参照)と実質的に同じであるため、ここでの説明は、省略される。但し、各配線に印加される電圧の電圧値は、適宜変更されてもよい。
【0251】
本実施形態において、プログラム動作後の弱消去動作時に、シーケンサ190は、選択ブロックBLKsel内の各配線の電位を、以下のように制御する。
【0252】
図20に示されるように、シーケンサ190は、電圧Vdwk(例えば、3V)を、ビット線BLに印加する。シーケンサ190は、電圧Vswk(例えば、3V)を、ソース線SLに印加する。電圧Vswkが、ソース線SLを介して、n型の半導体層42に印加される。
【0253】
シーケンサ190は、選択電圧VWLwk(例えば、0V)を、選択ワード線WLselに印加する。シーケンサ190は、非選択電圧Vz(例えば、1V)を、非選択ワード線WLzに印加する。
【0254】
選択ストリングユニットSUselにおいて、シーケンサ190は、電圧VSGDselwkを、選択ドレイン側セレクトゲート線SGDselに印加する。シーケンサ190は、電圧Vg2bを、選択ストリングユニットSUselの選択ソース側セレクトゲート線SGSselに印加する。電圧VSGDselwkの電圧値は、例えば、0V程度である。電圧Vg2bの電圧値は、例えば、3V程度である。
例えば、本実施形態において、選択ドレイン側セレクトゲート線SGDselに接続されたセレクトトランジスタST1は、オンする。選択ソース側セレクトゲート線SGSselに接続されたセレクトトランジスタST2は、オフする。
【0255】
シーケンサ190は、電圧Vunselwkを、選択ブロックBLKsel内の非選択ストリングユニットSUz内の非選択ドレイン側セレクトゲート線SGDzに印加する。シーケンサ190は、電圧Vg2bを、非選択ストリングユニットSUz内の非選択ソース側セレクトゲート線SGSzに印加する。電圧Vg2bは、例えば、3Vである。
本実施形態において、非選択ドレイン側セレクトゲート線SGDzに接続されたセレクトトランジスタST1は、オフする。非選択ソース側セレクトゲート線SGSzに接続されたセレクトトランジスタST2は、オフする。
【0256】
シーケンサ190は、非選択ブロックBLKx内の各配線の電位を、以下のように、制御する。シーケンサ190は、電圧Vunselwkをドレイン側セレクトゲート線SGDxに印加する。シーケンス190は、電圧Vg2xをソース側セレクトゲート線SGSxに印加する。シーケンサ190は、非選択ワード線WLxを電気的にフローティングな状態にする。これによって、非選択ブロックBLKxは、弱消去動作時において、非選択状態(非活性化状態)に設定される。
【0257】
本実施形態のように、強誘電体メモリの書き込みシーケンスにおいて、弱消去動作は、ドレイン側セレクトトランジスタST1において生じるGIDL(Gate induced drain leakage)を利用して、実行される。
【0258】
選択ストリングユニットSUsel内の選択ページPGselに属する複数の選択ストリングMSselに関して、ビット線BLに印加された電圧Vdwkと選択セレクトゲート線SGDselに印加された電圧VSGDselwkとの大小関係に応じて、ドレイン側セレクトトランジスタST1のドレインの電位が、ドレイン側セレクトトランジスタST1のゲートの電位より高くなる。
【0259】
本実施形態において、電圧Vdwkと電圧VSGDselwkとの電位差は、GIDLが、選択セレクトゲート線SGDselに接続されたセレクトトランジスタST1のゲート端において発生する値以上に設定される。例えば、本実施形態において、電圧Vdwkと電圧VSGDselwkとの電位差(VSGDselwk-Vdwk)は、-3Vである。
【0260】
これによって、GIDLが、電圧VSGDselwkが印加されているセレクトトランジスタST1のゲート端において、発生する。
【0261】
尚、トランジスタにおけるGIDLの発生のためのゲートとドレインとの間の電位差(電圧)は、上記の値に限定されない。例えば、GIDLの発生のための電圧は、トランジスタに用いられる層の材料、層の寸法(膜厚及びゲートサイズ)、メモリピラーの材料及び寸法に応じて、適宜変更される。
【0262】
GIDLによって生じた正孔(h+)は、ドレイン側セレクトトランジスタST1から半導体層61内に供給される。
この結果として、半導体層61(強誘電体トランジスタMCのチャネル領域CHN)の電位が、ビット線BLに印加された電圧Vdwk程度に上昇する。
【0263】
このように、本実施形態において、半導体層61の電位は、選択ストリングMSselのドレイン側で発生したGIDLを利用して、上昇する。
【0264】
半導体層61の電位の上昇によって、選択ワード線WLselと半導体層61との間の電位差は、電圧値Ve以下の負の電圧値になる。例えば、本実施形態において、弱消去動作時のセル印加電圧Vcell-wk(=VWLwk-Vdwk)は、-3V程度である。
【0265】
この結果として、弱消去電圧(デトラップ電圧)VWKEが、選択セルMCselに印加される。
これによって、選択セルMCselのトラップ電子が、半導体層61に放出される。
【0266】
本実施形態における弱消去動作時、選択ソース側セレクトゲートSGSselに印加された電圧Vg2bとソース線SL(n型半導体層42)に印加された電圧Vswkとの間の電位差は、GIDLが発生する電圧値より小さい値に設定されている。例えば、本実施形態において、電圧Vg2bと電圧Vswkとの電位差は、0V程度である。これによって、GIDLは、メモリセルストリングMSのソース側で、発生しない。
但し、GIDLがメモリセルストリングMSのソース側で発生するように、セレクトゲート線SGSの電位及びソース線SLの電位が、制御されてもよい。
【0267】
非選択ストリングユニットSUzの非選択ストリングMSzに関して、非選択ドレイン側セレクトゲート線SGDzに印加される電圧Vunselwkと電圧Vdwkとの間の電位差は、GIDLが発生する電圧値より小さい値に設定されている。例えば、電圧Vunselwkと電圧Vdwkとの電位差は、0V程度である。非選択ストリングMSzにおいて、非選択ソース側セレクトゲートSGSzに印加された電圧Vg2bと電圧Vswkとの間の電位差は、GIDLが発生する電圧値より小さい値(例えば、0V)に設定されている。このように、GIDLは、非選択ストリングMSzにおいて発生しない。
非選択ストリングMSzの半導体層61の電位は、ワード線WLsel,WLz間の容量性カップリングによって、上昇する。
このため、非選択ストリングの非選択セルMCzにおいて、電子のデトラップは、生じない。
【0268】
以上のように、本実施形態の強誘電体メモリは、GIDLを用いた弱消去動作を実行できる。
【0269】
尚、消去シーケンスにおけるブロック単位の消去動作が、GIDLを利用して実行されてもよい。
【0270】
図21は、本実施形態の強誘電体メモリにおける、消去動作時のメモリセルアレイ内の各配線の電位の状態を説明するための模式図である。
図21に示されるように、GIDLを利用した消去動作時において、シーケンサ190は、選択ブロックBLKsel内の各配線の電位を、以下のように制御する。
【0271】
シーケンサ190は、電圧Vd(例えば、4V)をビット線BLに印加し、電圧Vs(例えば、4V)をソース線SLに印加する。
【0272】
シーケンサ190は、電圧VSGDselを、各選択ストリングユニットSUselのドレイン側セレクトゲートSGDselに印加する。シーケンサ190は、電圧Vg2aを、各選択ストリングユニットSUselのソース側セレクトゲートSGSselに印加する。例えば、電圧VSGDselは、0V程度である。例えば、電圧Vg2aは、2V程度である。
【0273】
シーケンサ190は、選択電圧VWL(例えば、0V)を、選択ブロックBLKsel内の選択ワード線WLselに印加する。
【0274】
ビット線BLの電圧Vdとセレクトゲート線SGDselの電圧VSGDselとの間の電位差(VSGDsel-Vd)によって、
図20の例と同様に、GIDLが、各ドレイン側セレクトトランジスタST1のゲート端において、発生する。GIDLに起因した正孔の注入によって、各選択ストリングMSsel内の半導体層61の電位が、上昇する。これによって、消去電圧VERAが、選択セルMCselに印加される。
この結果として、選択ブロックBLKsel内のメモリセルMCは、消去状態に設定される。
【0275】
尚、非選択ブロックBLKxの各配線の電位は、上述の
図10(又は
図20)の例と同様に制御される。但し、各配線に印加される電圧は、
図20の例に応じて、適宜変更される。例えば、非選択ブロックBLKxにおいて、シーケンサ190は、電圧Vunsel(例えば、2V)を、非選択ドレイン側セレクトゲート線SGDxに印加する。シーケンサ190は、電圧Vg2a(例えば、2V)を、非選択ソース側セレクトゲート線SGSxに印加する。
【0276】
以上のように、本実施形態の強誘電体メモリは、メモリピラー60が接続される半導体層42がn型半導体層である場合であっても、プログラム動作の後の弱消去動作を、実行できる。
【0277】
したがって、本実施形態の強誘電体メモリは、第1の実施形態で述べられた効果と実質的に同じ効果を得ることができる。
【0278】
(3)第3の実施形態
図22及び
図23を参照して、第3の実施形態のメモリデバイスについて、説明する。
【0279】
図22は、本実施形態の強誘電体メモリの動作例を示すフローチャートである。
図23は、本実施形態の強誘電体メモリの動作例を説明するための模式図である。
【0280】
図22に示されるように、本実施形態の強誘電体メモリにおいて、書き込みシーケンスWseq1は、ベリファイ動作(S15)を含む。
ベリファイ動作(以下では、プログラムベリファイとよばれる)によって、プログラム動作(及び弱消去動作)の結果が、ベリファイされる。
【0281】
本実施形態の強誘電体メモリにおいて、シーケンサ190は、以下のように、書き込みシーケンスWseq1を実行する。
【0282】
本実施形態の強誘電体メモリの書き込みシーケンスにおいて、制御回路190は、プログラム動作(S10)を、実行する。
シーケンサ190は、
図13の例と同様に、選択ブロックBLKsel内の各配線BL,SL,SGDsel,SGSsel,SGDz,SGSz,WLz,WLselの電位を制御する。
これによって、所定のデータが、選択セルMCselにプログラムされる。
【0283】
図23の(a)に示されるように、消去状態に対応した閾値電圧分布D1aよりも下位の閾値電圧分布D2zが、プログラム動作による強誘電体層65の分極の反転によって、形成される。
【0284】
例えば、1つのメモリセルMCが1ビットのデータを記憶する場合(
図8の(a)参照)、プログラム状態(例えば、A状態)の閾値電圧分布D2zは、消去状態(Er状態)の閾値電圧分布D1aより低い。プログラム状態の閾値電圧分布の下限値に対して、分布の広がりに関する制限は、小さい。
例えば、プログラム電圧の電圧値は、比較的大きな電圧値に設定可能である。シーケンサ190は、比較的大きなプログラム電圧が選択セルに印加されるように、選択ワード線WLselに印加される電圧Vpの大きさを、適宜設定する。
【0285】
シーケンサ190は、プログラム動作の後、弱消去動作(S11)を実行する。
シーケンサ190は、
図20(又は
図15)の例と同様に、選択ブロックBLKsel内の各配線BL,SL,SGDsel,SGSsel,SGDz,SGSz,WLz,WLselの電位を制御する。
これによって、選択セルMCsel内のトラップ電子が、デトラップされる。
【0286】
<S15:プログラムベリファイ>
本実施形態において、シーケンサ190は、弱消去動作の後、プログラムベリファイ(S15)を実行する。
プログラムベリファイによって、所定の書き込みデータが、選択セルMCselに書き込まれているか否か判定される。
【0287】
シーケンサ190は、上述の読み出し動作と同様に、各配線各配線BL,SL,SGDsel,SGSsel,SGDz,SGSz,WLz,WLselの電位を、制御する。
【0288】
シーケンサ190は、ベリファイ電圧Vvfyを、選択ワード線WLselに印加する。シーケンサ190は、ビット線BLの電流の発生(又はビット線の電位の変動)に基づいて、選択セルMCselがベリファイ電圧Vvfyによってオンしたか否か検知する。
【0289】
図23の(a)に示されるように、ベリファイ電圧Vvfyの電圧レベルは、閾値電圧分布D2zの高電位側の裾の近傍領域内に設けられている。
【0290】
例えば、センスアンプ回路150は、対応するビット線を流れる電流Icellの電流値が、判定レベルIth以上であるか否か検知する。
【0291】
ベリファイ電圧Vvfyの印加によって選択セルMCselがオンした場合、セル電流Icellの電流値は、判定レベルIth以上である。この場合において、オン状態の選択セルの閾値電圧は、書き込みデータに対応した閾値電圧分布内に存在する。
それゆえ、センスアンプ回路150が判定レベルIth以上のセル電流Icellを検知した場合、そのセル電流Icellをビット線BLに流す選択セルは、ベリファイパスである。
【0292】
ベリファイ電圧Vvfyの印加によって選択セルMCselがオフした場合、セル電流Icellの電流値は、判定レベルIthより小さい。この場合において、オフ状態の選択セルの閾値電圧は、書き込みデータに対応した閾値電圧分布内に存在しない。
それゆえ、センスアンプ回路150が判定レベルIthより小さいセル電流Icellを検知した場合、そのセル電流Icellをビット線BLに流す選択セルは、ベリファイフェイルである。
【0293】
ステップS16において、シーケンサ190は、ベリファイパスの選択セルの個数Npassが、所定の個数(判定基準値)N0を超えているか否か判定する。
【0294】
ステップS16の判定結果に基づいて、ベリファイパスの選択セルの個数Npassが、所定の個数(判定基準値)N0を超えるまで、プログラム動作、弱消去動作及びプログラムベリファイが、繰り返し実行される。
【0295】
例えば、ベリファイパスの選択セルの個数Npassが所定の個数N0以下である場合(S16のNoの場合)、シーケンサ190は、弱消去動作を再び実行する。
【0296】
例えば、ベリファイフェイルの選択セルに印加されるセル印加電圧が、変更される(S17)。例えば、弱消去時にビット線BLに印加される電圧Vdwkの電圧値が、所定の電圧値(以下では、ステップアップ電圧とよばれる)の分だけ増加される。
【0297】
シーケンサ190は、ベリファイフェイルの選択セルに対して、プログラムベリファイ後の弱消去動作を実行する。
【0298】
例えば、シーケンサ190は、ベリファイフェイルの選択セルに接続されたビット線に、電圧Vdwk(例えば、ステップアップ電圧を含む電圧)を印加する。
図23の(b)に示されるように、プログラムベリファイ後の弱消去動作時によって、強誘電体層65及び絶縁層63のトラップ電子が、半導体層41に放出される。
電子のデトラップによって、ベリファイフェイルの選択セルの閾値電圧は、低電圧側にシフトする。
【0299】
プログラムベリファイ後の弱消去動作時、シーケンサ190は、ベリファイパスの選択セルに接続されたビット線に、非選択電圧(弱消去禁止電圧)を印加する。例えば、非選択電圧の電圧値は、弱消去動作時における選択ワード線WLselと半導体層61との電位差が実質的に0Vになるように設定される。
これによって、プログラムベリファイ後の弱消去動作時において、ベリファイパスの選択セルにおける閾値電圧の変動(自発分極率の変化)は、防止される。
【0300】
ベリファイパスの選択セルの個数Npassが所定の個数N0より多い場合(S16のNoの場合)、シーケンサ190は、書き込みシーケンスを完了する。
書き込みシーケンスの後、シーケンサ190は、他の動作(消去シーケンス、読み出しシーケンス又は書き込みシーケンス)を実行する(S90)。
【0301】
以上のように、
図22に示されるベリファイ動作を含む書き込みシーケンスの処理フローが、終了する。
【0302】
尚、プログラムベリファイ後において、プログラム動作が、プログラムベリファイの結果に基づいて実行されてもよい。プログラムベリファイ後にプログラム動作が実行される場合、ベリファイ電圧は、閾値電圧分布の上端側に設けられる。
この場合において、ベリファイ電圧より高い閾値電圧を有するメモリセルが、ベリファイフェイルと判定される。ベリファイフェイルのメモリセルに対して、プログラム動作が実行される。これによって、ベリファイフェイルのメモリセルの閾値電圧は、低電圧側にシフトする。
【0303】
プログラムベリファイは、プログラム動作と弱消去動作との間に実行されてもよい。
【0304】
以上のように、本実施形態の強誘電体メモリ1は、書き込みシーケンスにおいてベリファイ動作を実行する。これによって、本実施形態の強誘電体メモリ1は、データの書き込みの信頼性を向上できる。
【0305】
したがって、本実施形態の強誘電体メモリ(メモリデバイス)は、特性を向上できる。
【0306】
(4)変形例
図24乃至
図29を参照して、実施形態のメモリデバイス(強誘電体メモリ)の変形例について、説明する。
【0307】
<変形例1>
図24を参照して、本実施形態の強誘電体メモリの変形例1を説明する。
【0308】
実施形態の強誘電体メモリにおいて、消去動作は、ブロックより小さい単位で実行されてもよい。例えば、消去動作は、ページ単位又はサブブロック単位で実行される。
【0309】
図24は、本実施形態の強誘電体メモリにおいて、消去動作がページ単位で実行される場合における、各配線の電位状態を示している。
【0310】
図24の例において、メモリセルアレイ100が
図19の構造を有する場合におけるページ単位の消去動作が、示されている。
【0311】
図24に示されるように、ページ単位で、GIDLを利用した消去動作が実行される場合において、シーケンサ190は、電圧Vd(例えば、4V)を、選択ページPGselに対応するセルユニットSUselに接続された複数のビット線BLに印加する。
シーケンサ190は、電圧Vs(例えば、4V)を、ソース線SLに印加する。
【0312】
シーケンサ190は、電圧VSGsel(例えば、0V)を、選択ページPGselを含む選択ストリングユニットSUselのドレイン側セレクトゲート線SGDselに印加する。
シーケンサ190は、電圧Vunsel(例えば、4V)を非選択ストリングユニットSUzのドレイン側セレクトゲート線SGDzに印加する。
【0313】
シーケンサ190は、電圧Vg2b(例えば、2V)を、選択ストリングユニットSUselのソース側セレクトゲート線SGSselに印加する。
シーケンサ190は、電圧Vg2bを、非選択ストリングユニットSUzのソース側セレクトゲート線SGSzに印加する。
【0314】
シーケンサ190は、ページ単位の消去動作時において、電圧Vz(例えば、2V)を、選択ワード線WLsel以外の非選択ワード線WLzに印加する。
シーケンサ190は、選択ページが割り付けられている選択ワードWLselに、電圧VWL(例えば、0V)を印加する。
【0315】
ビット線BLとセレクトゲート線SGDselとの間の電位差によって、GIDLが、発生する。半導体層61の電位は、GIDLに起因した正孔の供給によって、上昇する。
【0316】
非選択ワード線WLzの電位と半導体層61の電位との間の電位差は、消去電圧より高い。非選択ワード線に接続された非選択セルは、記憶しているデータに応じた分極状態を維持する。それゆえ、非選択ワード線WLzに接続された選択セルMCzに対して、データの消去は、生じない。
【0317】
選択ワード線WLselの電位と半導体層61の電位との間の電位差は、消去電圧Ve以下である。これによって、選択ワード線WLselに接続された選択セルMCselは、消去状態に遷移する。
【0318】
このように、選択ページPGsel内のメモリセルMCselのデータが、選択的に消去される。
【0319】
以上のように、本変形例1の強誘電体メモリは、ページ単位の消去動作を実行できる。
【0320】
図25は、本変形例1の強誘電体メモリの消去シーケンスの一例を説明するための模式図である。
【0321】
図25に示されるように、メモリセルストリングMSの半導体層の昇圧が、ソース線側から実行される場合であっても、ページ単位の消去動作は、実行可能である。
【0322】
この場合において、選択ページPGselを含む選択ストリングユニットSUselにおいて、シーケンサ190は、電圧VSGselを、ソース側セレクトゲート線SGSselに印加する。これによって、正孔が、メモリセルストリングのソース側から半導体層61内に供給される。
【0323】
シーケンサ190は、非選択電圧Vzを、非選択ワード線WLzに印加する。
シーケンサ190は、選択電圧Vselを、選択ワード線WLselに印加する。
【0324】
選択ワード線WLと半導体層61との電位差によって、消去電圧が、選択ワード線に割り付けられた選択ページの選択セルMCselに印加される。
これによって、選択セルMCselのデータは、消去される。
【0325】
尚、ページより大きく、ブロックより小さい単位で、消去動作が実行されてもよい。
例えば、サブブロックは、所定の個数(例えば、1つ又は2つ)のストリングユニットを含む。サブブロック単位の消去動作が実行される場合、ブロックBLK内の所定の個数のストリングユニットSUが、消去動作の対象として選択される。他のストリングユニットSUは、非選択状態に設定される。
【0326】
複数の選択ストリングユニットSUのそれぞれのドレイン側セレクトゲート線(又はソース側セレクトゲート線)が、選択状態に設定される。メモリセルストリングのドレイン側(又はソース側)からの正孔の供給によって、半導体層の電位が、上昇する。選択電圧Vselが、複数の選択ワード線WLselのそれぞれに印加される。
【0327】
これによって、選択ワード線WLselに接続された複数のメモリセルのデータが、消去される。
【0328】
例えば、複数のワード線WLのうち任意の2つ以上の選択ワード線WLselに選択電圧Vselが印加され、残りの複数のワード線WLzに非選択電圧Vzが印加された状態で、複数の選択ワード線WLselに接続された複数のメモリセルに対して、データの消去が選択的に実行されてもよい。
【0329】
以上のように、変形例1の強誘電体メモリは、ブロックより小さい単位(例えば、ページ単位)で、消去動作を実行できる。
変形例1の強誘電体メモリは、上述の実施形態で述べられた効果を得ることができる。
【0330】
<変形例2>
図26を参照して、本実施形態の強誘電体メモリの変形例2を説明する。
【0331】
実施形態の強誘電体メモリのメモリセルの構造は、
図4及び
図5の例に限定されない。
実施形態の強誘電体メモリのメモリセルの構造は、
図26に示される構造でもよい。
【0332】
図26は、変形例のメモリセルの構造例を示す上面図である。
【0333】
図26に示されるように、変形例2の強誘電体メモリのメモリセルにおいて、X-Y平面においてY方向に隣り合う2つのメモリセル(強誘電体トランジスタ)MCL,MCRは、メモリピラー60を介して対向する。
【0334】
強誘電体層65は、Y方向に並ぶ2つの強誘電体トランジスタMCL,MCR間で連続している。絶縁層63は、Y方向に並ぶメモリセルMCR,MCL間で連続している。半導体層61は、Y方向に並ぶ2つの強誘電体トランジスタMCL,MCR間で連続している。
【0335】
導電層53Lは、導電層53Rから電気的に分離されている。この場合において、導電層53L及び導電層53Rは、互いに異なるワード線WLL,WLRとして機能する。例えば、導電層53L,53Rは、X方向に延びる直線状の構造を有する。
【0336】
絶縁層68は、Y方向において導電層53Lと導電層53Rとの間に設けられている。絶縁層68は、導電層53Lを導電層53Rから電気的に分離する。
【0337】
図26において、半導体層61を介してY方向に並ぶメモリセル(強誘電体トランジスタ)MCR,MCLは、互いに独立にデータを記憶できる。
【0338】
尚、メモリピラー60が、Y方向に並ぶ2つの部分に分割されてもよい。この場合において、強誘電体トランジスタMCL側の半導体層が、強誘電体トランジスタMCR側の半導体層から分離される。強誘電体トランジスタMCLの強誘電体層が、強誘電体トランジスタMCLの強誘電体層から分離される。
【0339】
変形例2の強誘電体メモリは、上述の実施形態で述べられた効果を得ることができる。
【0340】
<変形例3>
図27乃至
図29を参照して、本実施形態の強誘電体メモリの変形例3を説明する。
実施形態の強誘電体メモリのメモリセルアレイの構造は、
図3及び
図19の構造に限定されない。
【0341】
実施形態の強誘電体メモリのメモリセルアレイの構造は、
図27乃至
図29に示される構造でもよい。
【0342】
図27乃至
図29は、変形例3の強誘電体メモリにおける、メモリセルアレイの構造を示す図である。
図27は、変形例3のメモリセルアレイの構造例を示す鳥瞰図である。
図28は、X-Z平面に沿う変形例3のメモリセルアレイの構造例を示す断面図である。
図29は、Y-Z平面に沿う変形例3のメモリセルアレイの構造例を示す断面図である。
【0343】
図27乃至
図29に示されるように、変形例のメモリセルアレイ100Aは、X方向に並ぶ複数の積層体600を含む。積層体600は、絶縁層81を介して基板80上に配置されている。
各積層体600は、Z方向に積層された複数の半導体層61Aを含む。
【0344】
積層体600内において、複数の半導体層61Aが、Z方向に配列されている。半導体層61Aは、Y方向に延びる角柱状の構造を有している。
【0345】
積層体600は、複数の絶縁層82を含む。最下層の絶縁層82は、絶縁層81と最下層の半導体層61Aとの間に設けられている。各絶縁層82は、Z方向に並ぶ2つの半導体層61A間に設けられている。
【0346】
複数のビット線コンタクトBC(BC1,BC2,BC3)が、積層体600のY方向の一端のコンタクト領域内に設けられている。各ビット線コンタクトBCは、積層体600内の複数の半導体層61Aのうち対応する1つに接続される。これによって、複数のビット線BL(BL1,BL2,BL3)うち1つが、対応するビット線コンタクトBCを介して、1つの積層体600の複数の半導体層61Aのうち1つに電気的に接続される。
【0347】
ソース線コンタクト70A(SC)が、積層体600のY方向の他端のコンタクト領域内に設けられている。ソース線コンタクト70Aは、複数の半導体層61A及び絶縁層82を貫通する。ソース線コンタクト70は、積層体600の複数の半導体層61Aに接続される。これによって、1つのソース線SLが、ソース線コンタクト70Aを介して、1つの積層体600の複数の半導体層61Aに電気的に接続される。
【0348】
絶縁層63Aが、積層体600のX方向の側面(半導体層61Aの幅方向の側面)及び上面上に、設けられている。
【0349】
強誘電体層65Aが、絶縁層63A上に設けられている。強誘電体層65Aは、絶縁層63Aを介して、積層体600の側面及び上面を覆う。
【0350】
強誘電体層65Aは、メモリセルMCaのメモリ層として機能する。
【0351】
複数の導電層52A,52B,53A,59Aが、積層体600上に設けられている。
各導電層52A,52B,53A,59Aは、X方向に並ぶ複数の積層体600にまたがる。各導電層52A,52B,53A,59Aは、X方向に並ぶ積層体600間のスペース内に設けられている。
【0352】
導電層52A,52Bは、セレクトゲート線SGD,SGSとして用いられる。導電層52A,52Bのうちビット線コンタクトBC側の層が、ドレイン側セレクトゲート線SGDとして機能する。導電層52A,52Bのうちソース線コンタクトSC側の層が、ソース側セレクトゲート線SGSとして機能する。
複数の導電層53Aのそれぞれは、ワード線WLとして用いられる。
【0353】
強誘電体層65Aを含むメモリセル(強誘電体トランジスタ)MCaは、導電層53Aと半導体層61Aとの交差領域に設けられている。
ドレイン側セレクトトランジスタST1は、導電層52A(又は導電層52B)と半導体層61Aとの交差領域との間に設けられている。ソース側セレクトトランジスタST2は、導電層52B(52A)と半導体層61Aとの交差領域との間に設けられている。
【0354】
図27乃至
図29のメモリセルアレイ100Aにおいて、複数のメモリセルストリングMSaは、積層体600内においてZ方向に並ぶ。各メモリセルストリングMSaは、Y方向に延びる。
メモリセルストリングMSaのメモリセルMCaは、Y方向に並ぶ。セレクトトランジスタST1aは、メモリセルストリングMSaのY方向の一端(ビット線コンタクトBC側)に設けられている。セレクトトランジスタST2aは、メモリセルストリングMSaのY方向の他端(ソース線コンタクトSC側)に設けられている。
【0355】
図27乃至
図29の構造のメモリセルアレイ100Aにおいて、導電層59Aが設けられた領域が、ビット線コンタクトBCが設けられる領域とメモリセルストリングMSaのドレイン側の領域との間に、設けられている。
【0356】
複数の導電層59Aのそれぞれは、絶縁層63A及び強誘電体層65Aを介して、積層体600の上面及びX方向の側面を覆っている。各導電層59Aは、積層体600毎に設けられている。
【0357】
導電層59Aは、複数の積層体600のうち1つをビット線BLに選択的に接続するための制御線SSL(SSL1,SSL2,SSL3,SSL4)として機能する。
【0358】
トランジスタATが、導電層59Aと半導体層61Aとの交差領域内に設けられている。トランジスタATは、ビット線BLとメモリセルストリングMSaとの電気的な接続を制御する。トランジスタATは、制御線SSL(導電層59A)の電位の制御によって、オン状態又はオフ状態に設定される。オン状態のトランジスタATによって、積層体600内のメモリストリングMSaは、ビット線BLに接続可能になる。オフ状態のトランジスタATによって、積層体600内のメモリストリングMSaは、ビット線BLから電気的に分離される。
【0359】
強誘電体メモリ1が、
図27乃至
図29の構造のメモリセルアレイ100Aを含む場合であっても、変形例3の強誘電体メモリ1は、書き込みシーケンスにおけるプログラム動作後の弱消去動作を、実行できる。
弱消去動作後に、他の動作(ベリファイ動作、消去シーケンス、読み出しシーケンス、又は書き込みシーケンス)が、実行される。
【0360】
本変形例1乃至3の強誘電体メモリは、上述の実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。
【0361】
したがって、本実施形態の変形例のメモリデバイスは、メモリデバイスの特性を向上できる。
【0362】
(5) その他
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0363】
1:メモリデバイス、100:メモリセルアレイ、MC:強誘電体トランジスタ、ST1,ST2:セレクトトランジスタ、SGD,SGS:セレクトゲート線、WL:ワード線。