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特開2022-52507半導体集積回路、電子機器、および周波数検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052507
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】半導体集積回路、電子機器、および周波数検知方法
(51)【国際特許分類】
   H03L 7/095 20060101AFI20220328BHJP
   H03L 7/06 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
H03L7/095
H03L7/06 230
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020158934
(22)【出願日】2020-09-23
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 裕
【テーマコード(参考)】
5J106
【Fターム(参考)】
5J106AA04
5J106CC01
5J106CC21
5J106CC41
5J106CC52
5J106DD06
5J106DD17
5J106DD32
5J106DD37
5J106EE09
5J106GG01
5J106HH01
5J106KK08
5J106KK39
(57)【要約】
【課題】簡単かつ回路規模を増大することなく参照クロックの周波数を検知することのできる半導体集積回路、電子機器、周波数検知方法を提供する。
【解決手段】
参照クロック信号を受信するノードと、ノードで受信した参照クロック信号の周波数に対応するコードに基づいて周波数を調整可能なクロック信号を生成し、制御電圧に基づいてクロック信号の周波数をさらに制御可能な電圧制御発振回路と、参照クロック信号の周波数とクロック信号の周波数とに基づいて生成されたコードを電圧制御発振回路に供給するキャリブレーション回路と、参照クロック信号およびクロック信号の位相差に基づき制御電圧を生成し、生成した制御信号を電圧制御発振回路に供給する位相同期回路と、を具備する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照クロック信号を受信するノードと、
前記ノードで受信した前記参照クロック信号の周波数に対応するコードに基づいて周波数を調整可能なクロック信号を生成し、制御電圧に基づいて前記クロック信号の周波数をさらに制御可能な電圧制御発振回路と、
前記参照クロック信号の周波数と前記クロック信号の周波数とに基づいて生成された前記コードを前記電圧制御発振回路に供給するキャリブレーション回路と、
前記参照クロック信号および前記クロック信号の位相差に基づき前記制御電圧を生成し、生成した前記制御信号を前記電圧制御発振回路に供給する位相同期回路と、
を具備する半導体集積回路。
【請求項2】
前記キャリブレーション回路は、
前記参照クロック信号の周波数と前記クロック信号の周波数とを比較する比較器と、
前記比較器の比較結果に基づいて、前記参照クロック信号に対応する前記コードを生成するコード生成器と
を備える請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記比較器は、
前記参照クロック信号のパルス数に応じたある期間を有する信号を生成する第1回路と、
前記第1回路が生成した前記信号の前記期間に前記クロック信号のパルス数をカウントする第2回路と、
を備え、
前記第2回路は、前記カウントしたパルス数を、前記比較結果として前記コード生成器に供給する、
請求項2に記載の半導体集積回路。
【請求項4】
周囲の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出結果に基づいて、前記コードを生成する回路と
を備える請求項1から請求項3の何れか1項に記載の半導体集積回路。
【請求項5】
周囲の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出結果に基づいて、前記コードを補正する回路と
を備える請求項1から請求項3の何れか1項に記載の半導体集積回路。
【請求項6】
前記参照クロックは、予め決められた複数の周波数のうちの何れか1の周波数を有する
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の半導体集積回路。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の半導体集積回路と、
前記半導体集積回路から得られる前記クロック信号を基準信号として動作する回路と、
を備える電子機器。
【請求項8】
受信した参照クロック信号の周波数に対応するコードに基づいて周波数を調整可能なクロック信号を生成し、制御電圧に基づいて前記クロック信号の周波数をさらに制御可能な電圧制御発振回路を用いて周波数を検知する周波数検知方法であって、
前記参照クロック信号の周波数と前記クロック信号の周波数とに基づいて生成された前記コードを前記電圧制御発振回路に供給し、
前記参照クロック信号および前記クロック信号の位相差に基づき前記制御電圧を生成し、
生成した前記制御信号を前記電圧制御発振回路に供給する、
周波数検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体集積回路、電子機器、および周波数検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器は、内部の回路の動作を同期させるため、クロック信号を用いている。一般に、クロック信号は、参照クロック信号(Reference Clock)を基準として生成される。参照クロックは規格化されており、例えば19.2MHz、26MHz、38.4MHz、52MHzなどが知られている。
【0003】
電子機器がホスト装置と接続される形態では、電子機器がホスト装置から参照クロック信号を受け取ることができる。参照クロック信号を受け取った電子機器は、受け取った参照クロックを基準にして、電子機器内で用いるクロック信号を生成することができる。ここで、電子機器が未知のホスト装置と接続された場合、参照クロックの周波数が未知であるため、電子機器によるクロック信号の生成に支障をきたす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-206084
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来の電子機器では、参照クロックの周波数が未知である場合にクロック信号の生成に支障をきたす可能性がある。本発明の実施形態はかかる課題を解決するためになされたもので、容易にかつ回路規模を増大することなく参照クロックの周波数を検知することのできる半導体集積回路、電子機器、周波数検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の半導体集積回路は、参照クロック信号を受信するノードと、ノードで受信した参照クロック信号の周波数に対応するコードに基づいて周波数を調整可能なクロック信号を生成し、制御電圧に基づいてクロック信号の周波数をさらに制御可能な電圧制御発振回路と、参照クロック信号の周波数とクロック信号の周波数とに基づいて生成されたコードを電圧制御発振回路に供給するキャリブレーション回路と、参照クロック信号およびクロック信号の位相差に基づき制御電圧を生成し、生成した制御信号を電圧制御発振回路に供給する位相同期回路と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る電子機器の構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係るクロック生成器(半導体集積回路)の構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態に係る半導体集積回路におけるキャリブレーション回路の構成を示すブロック図である。
図4】第1実施形態に係る半導体集積回路におけるVCOのベース発振周波数の調整について説明する図である。
図5】第1実施形態に係る半導体集積回路におけるキャリブレーションコードの一例を示す図である。
図6】第2実施形態に係る半導体集積回路の構成を示すブロック図である。
図7】第3実施形態に係る半導体集積回路の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施形態の電子機器)
以下、図面を参照して、実施形態を詳細に説明する。図1に示すように、実施形態の電子機器Dは、メモリ200およびコントローラ300を備えている。コントローラ300は、クロック生成器100、CPU400およびインタフェース回路500を備えている。電子機器Dは、ホスト装置Hと接続することができる。
【0009】
クロック生成器100は、電子機器Dを構成する各回路構成(例えばインタフェース回路500)にクロック信号を供給する発振回路である。クロック生成器100は、例えばホスト装置Hなどの電子機器Dの外部から参照クロック信号を受け、当該参照クロック信号を基準として電子機器Dが使用する各種クロック信号を生成する。クロック信号は、単一の周波数の信号には限定されず、複数の異なる周波数の複数の信号が生成されてもよい。メモリ200は、例えば、不揮発に情報を記憶することができる記憶媒体である。メモリ200は、例えばNAND型フラッシュメモリにより実現される。メモリ200は、例えば、ホスト装置Hから送信されるユーザデータ、電子機器Dの管理情報、システムデータ、ホスト装置Hや電子機器Dのログデータ等を記憶する。
【0010】
コントローラ300は、ホスト装置Hなどからのコマンドに従って、メモリ200へのデータの書き込み、またはメモリ200からのデータの読み出しなどを行う演算ブロックである。中央処理装置(CPU)400は、図示しないROM等の記憶装置から読み出したプログラムやファームウェアを実行することで様々な制御を行う演算ブロックである。インタフェース(I/F)500は、電子機器Dをホスト装置Hに接続するためのインタフェース回路である。
【0011】
クロック生成器100は、ホスト装置Hの基準信号と同期したクロック信号を生成する。そのため、クロック生成器100は、ホスト装置Hから参照クロック信号を受け取ることができる。ここで、電子機器Dが未知のホスト装置Hと接続可能に構成される場合、ホスト装置Hから受け取る参照クロック信号の周波数は未知となる。そこで、クロック生成器100は、ホスト装置Hから受け取る参照クロック信号の周波数を検知する機能を有している。
【0012】
(実施形態のクロック生成器の構成)
続いて、図2を参照して、第1の実施形態に係るクロック生成器100の構成を説明する。図2に示すように、この実施形態のクロック生成器100は、参照クロック信号REFCLKを受けてクロック信号CLKを生成する位相同期回路(Phase Locked Loop)PLLと、キャリブレーション回路CALと、を有している。実施形態のクロック生成器100は、周波数検知器としての機能をも有している。参照クロック信号REFCLKは、ノードREFCLKINを介して、クロック生成器100の外部から入力される。
【0013】
位相同期回路PLLは、参照クロック信号REFCLKを基準としてクロック信号CLKを生成する発振回路ブロックである。位相同期回路PLLは、電圧制御発振器(VCO)Voltage-Controlled Oscillator)10と、帰還分周器(Feedback Divider)20と、位相検出器(Phase Frequency Detector)30と、チャージポンプ40と、ループフィルタ50とを備えている。
【0014】
電圧制御発振器10は、与えられた制御電圧Vcに基づいて発振周波数を制御することができる発振器である。電圧制御発振器10は、発振周波数が制御されたクロック信号CLK(VCOCLK)を生成する。生成されたクロック信号CLKは、ノードCLKOUTから、クロック生成器100の外部に出力される。さらに、この実施形態の電圧制御発振器10は、キャリブレーションコードCALCODEを受けてベースの発振周波数を変更することで、制御電圧Vcと発振周波数fの関係(特性)を変更することができる。帰還分周器20は、電圧制御発振器10が生成したクロック信号CLKを所定の分周比で分周して位相検出器30に帰還させる分周回路である。
【0015】
位相検出器30は、参照クロック信号REFCLKと帰還分周器20の出力信号とを位相比較する回路である。位相検出器30は、参照クロック信号REFCLKと帰還分周器20の出力信号との位相差を電圧値に変換する。チャージポンプ40は、位相検出器30が出力する電圧を増幅する増幅器である。ループフィルタ50は、位相同期回路PLLの帰還ループフィルタであり、チャージポンプ40の出力電圧をフィルタリングするローパスフィルタとして機能する。ループフィルタ50の出力電圧Vcは、電圧制御発振器10の制御電圧Vcとなる。
【0016】
このように、位相同期回路PLLは、電圧制御発振器10が生成したクロック信号CLKと参照クロック信号REFCLKを位相比較するPLL発振器の制御ループをなしている。
【0017】
キャリブレーション回路CALは、位相同期回路PLLの電圧制御発振器10のベースの発振周波数を調整する回路ブロックである。キャリブレーション回路CALは、比較器60と、コード生成器70と、電圧制御発振器10とを備えている。比較器60は、参照クロック信号REFCLKと、電圧制御発振器10が生成したクロック信号CLKの周波数を比較する回路ブロックである。コード生成器70は、比較器60の比較結果に基づいてデジタルコードを増減し、キャリブレーションコードCALCODEとして出力する回路ブロックである。電圧制御発振器10は、コード生成器70が生成したキャリブレーションコードCALCODEに応じた周波数をベースとしたクロック信号CLKを生成する。キャリブレーションコードCALCODEによる発振周波数の調整は、例えば、19.2MHz、26MHz、38.4MHz、52MHzのように、制御電圧Vcによって制御可能な周波数範囲を超える場合に行われる。
【0018】
ここで、図3を参照して、キャリブレーション回路CALの比較器60の構成例を詳細に説明する。図3に示すように、比較器60は、カウント期間生成器61と、カウンタ62とを備えている。カウント期間生成器61は、参照クロック信号REFCLKを基準として、ある時間間隔のタイミング信号を生成する回路ブロックである。タイミング信号は、参照クロック信号REFCLKの所定のパルス数に対応する時間間隔で生成される信号である。カウンタ62は、カウント期間生成器61から得たタイミング信号の期間中に入力される電圧制御発振器10からのクロック信号CLKのパルス数をカウント値としてカウントする。例えば、タイミング信号が参照クロック信号REFCLKのパルス10個分であれば、カウンタ62は、その期間内に受け取るクロック信号CLKのパルスの数をカウントする。これらを比較することで、カウンタ62は、参照クロック信号REFCLKとクロック信号CLKのどちらの周波数が高いかを判定できる。
【0019】
コード生成器70は、カウンタ62からのカウント値に基づいて、電圧制御発振器10のベースとなる発振周波数を制御するキャリブレーションコードCALCODEを生成する。ここで、カウンタ62のカウント値は、比較器60の比較結果である。例えば、カウンタ62から受け取ったカウント値が閾値よりも小さい場合、コード生成器70は、キャリブレーションコードCALCODEに1を加え、カウンタ62から受け取ったカウント値が閾値よりも大きければキャリブレーションコードCALCODEから1を減算する。電圧制御発振器10は、受け取ったキャリブレーションコードCALCODEに応じてベースとなる発振周波数を変化させる。
【0020】
このように、キャリブレーションコードCALCODEを介して電圧制御発振器10のベースとなる周波数を大まかに調整する制御ループが構成される。
【0021】
(実施形態のクロック生成器100の動作)
実施形態のクロック生成器100は、キャリブレーション回路CALと、位相同期回路PLLとをそれぞれ動作させる。キャリブレーション回路CALは、クロック生成器100が生成するクロック信号CLKのベースとなる周波数を調整する。また、位相同期回路PLLは、キャリブレーション回路CALの動作により調整されたベースとなる周波数に基づいてクロック信号の周波数をロックさせる。以下、図2ないし図4を参照してクロック生成器100の動作を説明する。
【0022】
キャリブレーション回路CALは、電子機器Dがホスト装置Hに接続された場合等、新たな周波数または未知の周波数の参照クロック信号REFCLKが供給された場合に動作する。参照クロック信号REFCLKが供給されると、比較器60のカウント期間生成器61は、参照クロック信号REFCLKの周波数に基づきカウント期間を規定するタイミング信号を生成する。カウンタ62は、カウント期間生成器61が生成したタイミング信号の間に、電圧制御発振器10が生成したクロック信号のパルス数をカウントする。
【0023】
コード生成器70は、カウンタ62がカウントしたカウント期間中のカウント値が閾値よりも小さい場合にある数(例えば「1」)を加算したキャリブレーションコードCALCODEを生成する。カウント期間中のカウント値が閾値よりも小さいことは、参照クロック信号REFCLKの周波数よりもクロック信号CLKの周波数が低いことを示す。また、コード生成器70は、カウンタ62のカウント値が閾値よりも大きい場合にある数(例えば「1」)を減算したキャリブレーションコードCALCODEを生成する。カウント期間中のカウント値が閾値よりも大きいことは、参照クロック信号REFCLKの周波数よりもクロック信号CLKの周波数が高いことを示す。
【0024】
図4において、横軸は制御電圧Vcであり、縦軸はクロック信号CLKの周波数である。図4は、各キャリブレーションコードCALCODEについて、同じ制御電圧Vcの範囲に対するクロック信号CLKの周波数が異なることを示している。例えば、図4に示すように、現在のキャリブレーションコードCALCODEが「0011」であったとして、カウンタ62のカウント値が閾値よりも小さい場合(参照クロック信号REFCLKの周波数よりもクロック信号CLKの周波数が低い場合)、コード生成器70は、キャリブレーションコードCALCODEを「1」だけ加算して「0100」とする。その結果、電圧制御発振器10の発振特性が図4中「a」から「b」に変化し、制御電圧Vcに対するクロック信号CLKの発振周波数が全体的に高くシフトする。その結果、カウンタ62のカウント値が閾値と略一致すれば(参照クロック信号REFCLKの周波数とクロック信号CLKの周波数が略一致すれば)、キャリブレーションコードCALCODEが「0100」に固定され、電圧制御発振器10は図4中「b」の特性でクロック信号CLKを生成することになる。
【0025】
また、図4に示すように、現在のキャリブレーションコードCALCODEが「0011」であったとして、カウンタ62のカウント値が閾値よりも大きい場合(参照クロック信号REFCLKの周波数よりもクロック信号CLKの周波数が高い場合)、コード生成器70は、キャリブレーションコードCALCODEを「1」だけ減算して「0010」とする。その結果、電圧制御発振器10の発振特性が図4中「a」から「c」に変化し、制御電圧Vcに対するクロック信号CLKの周波数が全体的に低くシフトする。その結果、カウンタ62のカウント値が閾値と一致すれば(参照クロック信号REFCLKの周波数とクロック信号CLKの周波数が略一致すれば)、キャリブレーションコードCALCODEが「0010」に固定され、電圧制御発振器10は図4中「c」の特性でクロック信号CLKを生成することになる。
【0026】
参照クロック信号REFCLKの周波数は規格化されており、例えば19.2MHz、26MHz、38.4MHz、52MHzのような複数の周波数が用いられる。このとき、図5に示すように、それぞれの参照クロック信号REFCLKの周波数または周期にキャリブレーションコードCALCODEが対応付けられているとする。この場合、電子機器Dがホスト装置Hに接続され、ホスト装置Hから参照クロック信号REFCLKが供給されると、対応するキャリブレーションコードCALCODEが速やかに決定される。電子機器Dの電圧制御発振器10は、対応する周波数をベースとしてクロック信号CLKを生成することが可能になる。なお、図5に示す対応表では、参照クロック信号REFCLKの周波数(Frequency)、その周波数に対応する周期(Period)、キャリブレーションコードCALCODE(Code)が対応付けられている。参照クロック信号REFCLKの周期は、例えば、カウント周期生成器61が所定のタイミング信号を生成する際に参照することができる。
【0027】
図5に示す参照クロック信号REFCLKとキャリブレーションコードCALCODEのテーブルは、例えば以下により作成できる。すなわち、制御電圧Vcをある電圧値(例えば図4のVcの可変範囲の中央値)に固定した上で、キャリブレーションコードCALCODEを所定値(例えば「0100」)とする。参照クロック信号REFCLKが例えば19.2MHz(周期52.08ns)では、カウント期間生成器61によるタイミング信号の間隔が52.08nsとなり、この時間内に例えば100回カウントできるようなクロック信号CLKを出力できるキャリブレーションコードCALCODEを例えば「0001」とする。次に、参照クロック信号REFCLKが例えば38.4MHz(周期26.04ns)の時、カウント期間生成器61によるタイミング信号の間隔が26.04nsとなり、この時間内に例えば100回カウントできるようなクロック信号CLKを出力できるキャリブレーションコードCALCODEを例えば「1000」とする。これは、図4の縦軸(周波数)方向に周波数を上げる方向となる。この操作を参照クロック信号の周波数候補の数だけ繰り返し、メモリ200などに記憶させることでテーブルが完成する。
【0028】
すなわち、キャリブレーション回路CALは、電圧制御発振器10のベースとなる発振周波数、言い換えれば、発振特性(Vc-f特性)を調整する機能を有する。これにより、参照クロック信号REFCLKの周波数が都度変更される状況であっても、位相同期回路PLLによる周波数ロックが速やかに動作することができる。すなわち、クロック生成器100は、同期されたクロック信号CLKを速やかに生成することができる。キャリブレーション回路CALは、かかる機能の性質上、位相同期回路PLLが起動するよりも前の段階でキャリブレーションコードCALCODEをロックする。
【0029】
位相同期回路PLLの動作は、電圧制御発振器10が生成するクロック信号CLKを、参照クロック信号REFCLKに同期させるものである。電圧制御発振器10が生成したクロック信号CLKは帰還分周器20に入力される。帰還分周器20はクロック信号CLKを所定の分周比で分周し、出力信号として位相検出器30に送る。位相検出器30は、与えられた参照クロック信号REFCLKと帰還分周器20の出力信号とを位相比較し、位相差を電圧値に変換し、変換した信号をチャージポンプ40に送る。チャージポンプ40は受け取った信号を増幅してループフィルタ50を介して電圧制御発振器10に送る。電圧制御発振器10は、ループフィルタ50の出力電圧を制御電圧として周波数が制御されたクロック信号CLKを生成する。こうした位相同期ループにより、電圧制御発振器10は、参照クロック信号REFCLKに同期し安定したクロック信号CLKを生成することができる。
【0030】
このように、実施形態のクロック生成器100は、参照クロック信号REFCLKのベースとなる周波数をロックするキャリブレーション回路のループと、ベースとなる周波数において参照クロック信号REFCLKにロックしたクロック信号CLKを生成する位相同期回路のループとが組み合わされている。
【0031】
(クロック生成器100の構成を用いた周波数検知器101の周波数検知動作)
ところで、電子機器Dが、未知の参照クロック信号REFCLKを供給するホスト装置Hに接続される場合、電子機器Dをホスト装置Hに接続した段階では、参照クロック信号REFCLKの周波数は未知である。実施形態のクロック生成器100は、周波数が未知の信号が与えられた場合にその周波数を検知する周波数検知器101としても動作する。
【0032】
前述したとおり、実施形態のクロック生成器100は、キャリブレーション回路CALによる、参照クロック信号REFCLKに応じたキャリブレーションコードCALCODEのロックと、位相同期回路PLLによる、参照クロック信号REFCLKに同期したPLLロックとが行われる。そこで、実施形態のクロック生成器100は、同期可能な周波数の参照クロック信号REFCLKと、その参照クロック信号REFCLKが与えられた場合にロックするキャリブレーションコードCALCODEの組み合わせを、あらかじめメモリ200などに記憶しておく。これは、例えば図5に示すようにテーブルとして管理可能である。
【0033】
未知の参照クロック信号REFCLKがクロック生成器100に与えられると、キャリブレーション回路CALの制御ループにより、与えられた参照クロック信号REFCLKの周波数に対応するキャリブレーションコードCALCODEがロックされる。キャリブレーションコードCALCODEがロックしたところで、コード出力ノードCODEOUTからキャリブレーションコードCALCODEが出力される。すなわち、キャリブレーションコードCALCODEが特定されると、図5に示すテーブルに基づいて対応する周波数を特定できるから、未知の周波数の参照クロック信号REFCLKが与えられた場合、コントローラ300がその周波数を特定することが可能になる。これは周波数検知器101としての動作である。なお、キャリブレーション回路CALの制御ループにおけるキャリブレーションコードCALCODEの初期値は、想定される上限と下限の中央付近であればよい。図5に示す例では、4つのキャリブレーションコードCALCODEのうち中央付近の26.0MHzまたは38.4MHzのいずれであってもよい。
【0034】
なお、キャリブレーションコードCALCODEがロックされると、位相同期回路PLLの制御ループにより、電圧制御発振器10は、参照クロック信号REFCLKに同期したクロック信号CLKを生成する。これはクロック生成器100としての動作である。
【0035】
このように、実施形態のクロック生成器100(周波数検知器101)によれば、位相同期回路PLLによるPLLロックの前に、キャリブレーション回路CALにより周波数がロックされた参照クロック信号REFCLKのキャリブレーションコードCALCODEを得ることができる。従って、実施形態のクロック生成器100(周波数検知器101)は、極めて高速に参照クロック信号REFCLKの周波数を検知することができる。すなわち、第1の実施形態によれば、与えられたクロック信号CLKの周波数を高速に検知することができる。
【0036】
(第2実施形態)
続いて、図6を参照して、第2の実施形態のクロック生成器110(周波数検知器111)について詳細に説明する。この実施形態のクロック生成器110は、第1の実施形態のクロック生成器100のキャリブレーション回路CALの一部の構成を変更してキャリブレーション回路CAL1としたものである。以下の説明において、第1の実施形態と共通する要素については共通の符号を付して示し、重複する説明を省略する。図6に示すように、この実施形態のクロック生成器110は、第1の実施形態のコード生成器70に替えてコード生成器71を備え、更に温度センサ72を有している。温度センサ72は、例えば、温度に応じて抵抗値が変更する素子を用いて実現することができる。
【0037】
コード生成器71は、比較器60の比較結果に基づいてデジタルコードを増減し、キャリブレーションコードCALCODEとして出力する回路ブロックである。温度センサ72は、周囲の温度を測定して測定データをコード生成器71に送る。コード生成器71は、コード生成器70の機能に加えて、温度測定値に基づき生成するキャリブレーションコードCALCODEを補正する機能を有している。
【0038】
例えば、電圧制御発振器10の温度特性が、温度上昇に比例して、ある制御電圧Vcに対して発振周波数が高くシフトする温度特性を持っている例を説明する。温度センサ72から受け取った測定データが上昇傾向を示す場合、コード生成器71は、キャリブレーションコードCALCODEの加算幅を減らし(例えば通常時の加算量が「2」であれば「1」とする)、または減算値を増加する(例えば通常時の減少量が「1」であれば「2」とする)。すなわち、電圧制御発振器10のベースの周波数を高くする上昇幅を減らし、同じく低くする減少幅を大きくする。その結果、電圧制御発振器10のベースの周波数は高くなりにくく、低くなりやすくなる。
【0039】
通常、キャリブレーション回路CALは参照クロック信号REFCLKが供給されたときやその周波数が変更されたときに動作する。しかし、参照クロック信号REFCLKの変更がなくともクロック生成器110のキャリブレーション回路CALを動作させてその動作頻度を高くすれば、電圧制御発振器10の温度特性を平準化することができる。この効果は、クロック生成器110を周波数検知器111として動作させる場合も奏することができる。すなわち、周波数検知器としての温度特性を平準化することができる。
【0040】
(第3実施形態)
続いて、図7を参照して、第3の実施形態のクロック生成器120(周波数検知器121)について詳細に説明する。この実施形態のクロック生成器120は、第1の実施形態のクロック生成器100のキャリブレーション回路CALの一部の構成を変更してキャリブレーション回路CAL2としたものである。以下の説明において、第1の実施形態と共通する要素については共通の符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0041】
図7に示すように、この実施形態のクロック生成器120は、第1の実施形態の構成に加えて、温度センサ73およびコード補正器74をさらに有している。温度センサ73は、周囲の温度を測定して測定データを生成する。コード補正器74は、キャリブレーションコードCALCODEを補正する演算部である。
【0042】
この実施形態のクロック生成器120では、コード生成器70が生成するキャリブレーションコードCALCODEは、温度補償がなされていないデータである。そこで、コード補正器74は、温度センサ73から受け取った測定データに基づいて、キャリブレーションコードCALCODEを直接補正する。
【0043】
例えば、電圧制御発振器10の温度特性が、温度上昇に比例して、ある制御電圧Vcに対して発振周波数が高くシフトする温度特性を持っている例を説明する。この場合、同じキャリブレーションコードCALCODEであっても電圧制御発振器10は高い周波数のクロック信号を生成してしまう。そこで、コード補正器74は、温度センサ73から受け取った測定データが温度上昇を示すものであれば、キャリブレーションコードCALCODEの値から所定の値を減ずる操作を行う。
【0044】
この実施形態のクロック生成器120では、生成するクロック信号CLKの周波数の温度補償は行われない。しかし、クロック生成器120を周波数検知器121として動作させる場合、温度補償されたキャリブレーションコードCALCODEを得ることができる。すなわち、温度補償された周波数を検知することができる。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
H…ホスト装置
D…電子機器、
100,110,120…クロック生成器、
101,111,121…周波数検知器、
200…メモリ、
300…コントローラ、
400…中央処理装置(CPU)、
500…インタフェース(I/F)、
10…電圧制御発振器、
20…帰還分周器、
30…位相検出器、
40…チャージポンプ、
50…ループフィルタ、
60…比較器、
70…コード生成器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7