(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052510
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】リハビリテーション装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61H 5/00 20060101AFI20220328BHJP
A61H 1/02 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
A61H5/00
A61H1/02 K
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020158940
(22)【出願日】2020-09-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】517327531
【氏名又は名称】NPO法人Ubdobe
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】岡 勇樹
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA31
4C046AA33
4C046AA45
4C046AA47
4C046BB05
4C046BB12
4C046EE13
4C046EE15
4C046EE17
4C046EE22
4C046EE32
(57)【要約】 (修正有)
【課題】眼球運動障害を有する患者が対象を見つめる注視に関する視線リハビリテーション等を行うことを可能とし、患者の生活の質を向上し得るリハビリテーション装置を提供する。
【解決手段】リハビリテーション装置2は、表示部24と、表示部での表示態様を制御する表示制御部211と、利用者(患者)の視線を検知可能な視線検知センサ3から視線に関する視線情報を受信可能な視線受信部213と、を備え、表示制御部は、少なくとも、第1画像を表示可能に制御する第1表示制御部211Aと、利用者の視線が第1画像の表示範囲から所定範囲内にある所定範囲内状態が所定時間以上継続されたときに、第1画像とは異なる第2画像を表示可能に制御する第2表示制御部211Bと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
前記表示部での表示態様を制御する表示制御部と、
利用者の視線を検知可能な視線検知センサから前記視線に関する視線情報を受信可能な視線受信部と、を備え、
前記表示制御部は、
第1画像を表示可能に制御する第1制御部と、
前記利用者の前記視線が前記第1画像の表示範囲から所定範囲内にある所定範囲内状態が所定時間以上継続されたときに、前記第1画像とは異なる第2画像を表示可能に制御する第2制御部と、
を有する、リハビリテーション装置。
【請求項2】
前記第1制御部は、前記第1画像を移動表示可能に制御する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記利用者にリハビリテーションの開始を通知可能な開始通知部と、
前記開始通知部による通知が行われた場合に、前記利用者の前記視線が前記所定範囲内にない所定範囲外状態から前記所定範囲内状態に切り換わる回数を計数する計数部と、
前記変化した回数に基づく通知を実行可能な回数通知部と、をさらに備える、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記回数通知部は、前記開始が通知された時刻から特定時間が経過するまでにおける前記変化した回数に基づく通知を実行可能である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記回数通知部は、前記開始が通知された時刻から前記変化した回数が所定回数に達した時刻までの時間に基づく通知を実行可能である、請求項3又は4に記載の装置。
【請求項6】
前記利用者の身体及び/又は前記身体のいずれかの部位の動きに関する動き情報を受信可能な動き受信部をさらに備え、
前記表示制御部は、
第3画像と前記動きに応じて移動表示可能な第4画像とを表示可能に制御する第3制御部と、
前記第4画像の表示位置が前記第3画像の表示範囲から特定範囲内にある特定範囲内状態が特定時間以上継続されたときに、前記第3画像及び前記第4画像とは異なる第5画像を表示可能に制御する第4制御部と、
をさらに有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記動き情報は、前記利用者による手を開く動作の情報及び手を閉じる動作の情報を含み、
前記第4制御部は、前記特定範囲内状態において前記手を開く動作及び/又は手を閉じる動作に関する情報を受信したときに前記第5画像を表示可能に制御する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記動き情報は、前記利用者が前記表示部に触れた位置の情報を含み、
前記第3制御部は、前記表示部に触れた位置に応じて前記第4画像を移動表示可能に制御する、請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
表示部を備えるリハビリテーション装置に、
前記表示部での表示態様を制御する表示制御ステップと、
利用者の視線を検知可能な視線検知センサから前記視線に関する情報を受信可能な視線受信ステップと、を実行させ、
前記表示制御は、
第1画像を表示可能に制御する第1制御処理と、
前記利用者の前記視線が前記第1画像の表示範囲から所定範囲内にある範囲内状態が所定時間以上継続されたときに、前記第1画像とは異なる第2画像を表示可能に制御する第2制御処理と、
を含む、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リハビリテーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
事故及び/又は病気等によって患者の眼球を動かす外眼筋や外眼筋を支配する神経に障害が生じ、患者の眼球の運動が阻害される眼球運動障害が知られている。眼球運動障害を有する患者は、眼球の運動が阻害されるため、見ようとしている対象から視線を動かさずに対象を見つめる注視に困難を覚える場合がある。注視に困難を覚える患者は、患者の生活における種々の状況においても、対象を見つめて対象の位置、形状、及び/又は対象に示された文字・記号等を把握することに困難を覚え得る。したがって、眼球運動障害は、患者の生活に支障を来たし、患者の生活の質(クォリティ・オブ・ライフ、QOLとも称する。)を低下させ得る。
【0003】
眼球運動障害を有する患者が視線を用いたリハビリテーションを行い、このリハビリテーションによって眼球運動障害によって生じる注視に関する困難を軽減できれば、患者の生活の質が改善され得る。
【0004】
視線を用いたリハビリテーションに関し、リハビリ対象者が向けるべき推奨視線情報とリハビリ対象者がとるべき推奨姿勢情報を含む複数の推奨三次元空間情報を格納する空間情報データベースと、複数の推奨三次元空間情報から選択された推奨三次元空間情報を表示するバーチャルリアリティ表示部と、携帯端末システムとを備え、この携帯端末システムがリハビリ対象者の視線情報を特定する視線特定手段と、リハビリ対象者の姿勢情報を特定する姿勢特定手段と、視線特定手段と姿勢特定手段から得られた情報を演算して得られる三次元空間情報及び選択された推奨三次元空間情報を比較する情報比較手段と、比較した情報が一致していない場合に警告及び指示を表示する指示表示手段と、を備えていることを特徴とするリハビリ支援システムが提案されている(特許文献1)。特許文献1に記載の発明によると、特定された視線情報及び姿勢情報を用いた視線及び/又は姿勢に関するリハビリテーションを行い得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、視線情報及び姿勢情報を用いてバーチャルリアリティ空間を表示し、患者の視線及び/又は姿勢が推奨される視線及び/又は姿勢でない場合に警告及び指示を表示するにとどまり、視線を対象から動かさずに対象を見つめる注視に関するリハビリテーションを行う場合に改善の余地がある。
【0007】
事故及び/又は病気等によって眼球運動障害を抱えた患者が身体の動きに関する障害をさらに抱えている場合もあり得る。眼球運動障害及び身体の動きに関する障害を抱えた患者は、眼球運動障害及び身体の動きに関するリハビリテーションを行うことによって生活の質を向上し得る。身体の動きに関するリハビリテーションに関し、特許文献1の技術では、患者の姿勢が推奨される姿勢でない場合に警告及び指示を表示するにとどまり、眼球運動障害及び身体の動きに関する障害を抱えた患者が身体の動きに関する障害のリハビリテーションを行う観点からも改良の余地がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、眼球運動障害を有する患者が対象を見つめる注視に関する視線リハビリテーション等を行うことを可能とし、患者の生活の質を向上し得るリハビリテーション装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、利用者の視線に関する視線情報を受信可能な視線受信部と、第1画像を表示可能に制御する第1制御部と、利用者の視線が第1画像の表示範囲から所定範囲内にある所定範囲内状態が所定時間以上継続されたときに第2画像を表示可能に制御する第2制御部とを有する装置を提供することで、上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0010】
第1の特徴に係る発明は、表示部と、前記表示部での表示態様を制御する表示制御部と、利用者の視線を検知可能な視線検知センサから前記視線に関する視線情報を受信可能な視線受信部と、を備え、前記表示制御部は、第1画像(例えば、視線標的画像)を表示可能に制御する第1制御部(例えば、第1表示制御部211A)と、前記利用者の前記視線が前記第1画像の表示範囲から所定範囲内にある所定範囲内状態が所定時間以上継続されたときに、前記第1画像とは異なる第2画像(例えば、視線成功画像)を表示可能に制御する第2制御部(例えば、第2表示制御部211B)と、を有する、リハビリテーション装置を提供する。
【0011】
第1の特徴に係る発明によれば、眼球運動障害を有し、対象を見つめる注視に困難を覚える利用者(患者)は、表示部に表示された第1画像を見つめる注視を所定時間以上継続する視線リハビリテーションを行える。患者の視線が表示部に表示された第1画像から所定範囲内にある状態が所定時間以上継続する場合、すなわち、患者が第1画像を所定時間以上見つめた場合に、第1画像と異なる第2画像が表示される。第2画像が表示されたことにより、患者は、表示部に表示された第1画像を見つめる注視を所定時間以上継続する視線リハビリテーションに成功したことがわかる。
【0012】
患者は、注視の継続に成功したことを第2画像の表示により判別できるため、患者は、視線リハビリテーションを行う意欲を高め、この視線リハビリテーションを継続して行うことができる。継続して行われる視線リハビリテーションによって、眼球運動障害を有する患者は、注視に関する困難を軽減し得る。したがって、第1の特徴に係る発明によれば、患者の生活の質を向上し得る。
【0013】
したがって、第1の特徴に係る発明によれば、眼球運動障害を有する患者が対象を見つめる注視に関する視線リハビリテーション等を行うことを可能とし、患者の生活の質を向上し得るリハビリテーション装置を提供できる。
【0014】
第2の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明であって、前記第1制御部は、前記第1画像を移動表示可能に制御する、装置を提供する。
【0015】
第2の特徴に係る発明によれば、利用者(患者)は、移動する対象を見つめる注視を所定時間以上継続する視線リハビリテーションを行える。見つめる対象が移動するため、患者が視線リハビリテーションを継続して行った場合における、視線リハビリテーションへの飽きが軽減される。したがって、患者は、視線リハビリテーションを行う意欲をより一層高め、視線リハビリテーションを継続して行い得る。継続して行われる視線リハビリテーションによって、眼球運動障害を有する患者は、注視に関する困難を軽減し得る。したがって、第2の特徴に係る発明によれば、患者の生活の質を向上し得る。
【0016】
したがって、第2の特徴に係る発明によれば、眼球運動障害を有する患者が対象を見つめる注視に関する視線リハビリテーション等を行うことを可能とし、患者の生活の質を向上し得るリハビリテーション装置を提供できる。
【0017】
第3の特徴に係る発明は、第1又は第2の特徴に係る発明であって、前記利用者にリハビリテーションの開始を通知可能な開始通知部と、前記開始通知部による通知が行われた場合に、前記利用者の前記視線が前記所定範囲内にない所定範囲外状態から前記所定範囲内状態に切り換わる回数を計数する計数部と、前記変化した回数に基づく通知を実行可能な回数通知部と、をさらに備える、装置を提供する。
【0018】
第3の特徴に係る発明によれば、利用者(患者)は、第1画像を見ていない状態から視線を動かして第1画像を所定時間以上見つめる動作を繰り返す視線リハビリテーションを行うことができる。この繰り返しにより、注視に関する視線リハビリテーションの効果をより一層高め得る。
【0019】
患者は、リハビリテーションの開始が通知された後に患者がこの繰り返しを行った回数がわかるため、視線リハビリテーションを行う意欲をより一層高め、視線リハビリテーションを継続して行うことができる。継続して行われる視線リハビリテーションにより、患者は、注視に関する困難を軽減し、生活の質を向上し得る。
【0020】
したがって、第3の特徴に係る発明によれば、眼球運動障害を有する患者が対象を見つめる注視に関する視線リハビリテーション等を行うことを可能とし、患者の生活の質を向上し得るリハビリテーション装置を提供できる。
【0021】
第4の特徴に係る発明は、第3の特徴に係る発明であって、前記回数通知部は、前記開始が通知された時刻から特定時間が経過するまでにおける前記変化した回数に基づく通知を実行可能である、装置を提供する。
【0022】
第4の特徴に係る発明によれば、利用者(患者)は、第1画像を見ていない状態から視線を動かして第1画像を所定時間以上見つめる動作を特定時間内に繰り返した回数がわかる。
【0023】
該動作を繰り返し行う視線リハビリテーションを継続して行うことにより、患者は、該動作について熟達し得る。第4の特徴に係る発明によれば、患者は、該動作に熟達した度合いを、特定時間内に該動作を繰り返した回数という明瞭な指標によって把握できる。これにより、該動作を繰り返し行う視線リハビリテーションに対する意欲をより一層高め、視線リハビリテーションを継続して行うことができる。継続して行われる視線リハビリテーションにより、患者は、注視に関する困難を軽減し、生活の質を向上し得る。
【0024】
したがって、第4の特徴に係る発明によれば、眼球運動障害を有する患者が対象を見つめる注視に関する視線リハビリテーション等を行うことを可能とし、患者の生活の質を向上し得るリハビリテーション装置を提供できる。
【0025】
第5の特徴に係る発明は、第3又は第4の特徴に係る発明であって、前記回数通知部は、前記開始が通知された時刻から前記変化した回数が所定回数に達した時刻までの時間に基づく通知を実行可能である、装置を提供する。
【0026】
第5の特徴に係る発明によれば、利用者(患者)は、リハビリテーションの開始を通知された時刻から、第1画像を見ていない状態から視線を動かして第1画像を所定時間以上見つめる動作を所定回数繰り返す視線リハビリテーションを完了するまでの所要時間がわかる。
【0027】
該動作を繰り返し行う視線リハビリテーションを継続して行うことにより、患者は、該動作について熟達し得る。第5の特徴に係る発明によれば、患者は、該動作に熟達した度合いを、視線リハビリテーションの開始を通知された時刻から該動作を所定回数繰り返すまでの所要時間という明瞭な指標によって把握できる。これにより、該動作を繰り返し行うリハビリテーションに対する意欲をより一層高め、視線リハビリテーションを継続して行うことができる。継続して行われる視線リハビリテーションにより、患者は、注視に関する困難を軽減し、生活の質を向上し得る。
【0028】
したがって、第5の特徴に係る発明によれば、眼球運動障害を有する患者が対象を見つめる注視に関する視線リハビリテーション等を行うことを可能とし、患者の生活の質を向上し得るリハビリテーション装置を提供できる。
【0029】
第6の特徴に係る発明は、第1から第5の特徴のいずれかに係る発明であって、前記利用者の身体及び/又は前記身体のいずれかの部位の動きに関する動き情報を受信可能な動き受信部をさらに備え、前記表示制御部は、第3画像(例えば、動き標的画像)と前記動きに応じて移動表示可能な第4画像(例えば、動き位置画像)とを表示可能に制御する第3制御部(例えば、第3表示制御部211C)と、前記第4画像の表示位置が前記第3画像の表示範囲から特定範囲内にある特定範囲内状態が特定時間以上継続されたときに、前記第3画像及び前記第4画像とは異なる第5画像(動き成功画像)を表示可能に制御する第4制御部(例えば、第4表示制御部211D)と、をさらに有する、装置を提供する。
【0030】
事故及び/又は病気等によって眼球運動障害を抱えた患者は、該事故及び/又は該病気によって身体の動きに関する障害を抱えている可能性がある。また、眼球運動障害を抱えた患者が別の事故及び/又は別の病気等によって、身体の動きに関する障害をさらに抱えている場合もあり得る。
【0031】
第6の特徴に係る発明によれば、眼球運動障害及び身体の動きに関する障害を抱える利用者(患者)は、表示部に表示された第1画像を見つめる注視を所定時間以上継続する視線リハビリテーションに加えて、身体の動きに関するリハビリテーションを行える。
【0032】
身体の動きに障害を抱える患者は、画像を用いて身体の動きを指示する装置等によって身体の動きに関するリハビリテーションを行い得る。しかし、眼球運動障害によって画像を注視することに関する困難を抱えている患者がこのようなリハビリテーションを行うことは、容易ではない。
【0033】
眼球運動障害によって画像を注視することに関する困難を抱えている患者は、注視に関する視線リハビリテーションを行うことで画像を注視することに関する困難を軽減し得る。これにより、第3画像等を注視しながら、身体の動きに応じて移動表示される第4画像を第3画像の表示範囲の特定範囲内に維持する、身体の動きに関するリハビリテーションを行える。したがって、眼球運動障害及び身体の動きに関する障害を抱える患者であっても、身体の動きに関するリハビリテーションを、第3画像及び第4画像を用いて行える。
【0034】
患者は、身体の動きに応じて移動する第4画像を第3画像の表示範囲の特定範囲内に維持できたことを第5画像の表示により判別できるため、患者は、リハビリテーションを行う意欲を高め、リハビリテーションを継続して行うことができる。継続して行われるリハビリテーションによって、患者は、画像を注視することに関する困難を軽減するだけでなく、身体の動きに関する困難をも軽減できる。したがって、患者の生活の質をより一層向上し得る。
【0035】
したがって、第6の特徴に係る発明によれば、眼球運動障害を有する患者が対象を見つめる注視に関する視線リハビリテーション等を行うことを可能とし、患者の生活の質を向上し得るリハビリテーション装置を提供できる。
【0036】
第7の特徴に係る発明は、第6の特徴に係る発明であって、前記動き情報は、前記利用者による手を開く動作の情報及び手を閉じる動作の情報を含み、前記第4制御部は、前記特定範囲内状態において前記手を開く動作及び/又は手を閉じる動作に関する情報を受信したときに前記第5画像を表示可能に制御する、装置を提供する。
【0037】
第7の特徴に係る発明によれば、眼球運動障害及び手の開閉に関する障害を抱える利用者(患者)は、手の開閉に関するリハビリテーションを行える。これらのリハビリテーションにより、患者は、画像を注視することに関する困難を軽減するだけでなく、手の開閉に関する困難をも軽減できる。したがって、患者の生活の質をより一層向上し得る。
【0038】
したがって、第7の特徴に係る発明によれば、眼球運動障害を有する患者が対象を見つめる注視に関する視線リハビリテーション等を行うことを可能とし、患者の生活の質を向上し得るリハビリテーション装置を提供できる。
【0039】
第8の特徴に係る発明は、第6又は第7の特徴に係る発明であって、前記動き情報は、前記利用者が前記表示部に触れた位置の情報を含み、前記第3制御部は、前記表示部に触れた位置に応じて前記第4画像を移動表示可能に制御する、装置を提供する。
【0040】
第8の特徴に係る発明によれば、眼球運動障害及び身体の動きに関する障害を抱える利用者(患者)は、表示部に表示された第1画像を見つめる注視を所定時間以上継続する視線リハビリテーションに加えて、表示部に表示された第3画像に触れる動きのリハビリテーションをも行える。患者は、これらのリハビリテーションによって、生活における基本的な動作の1つである注視している対象に触れる動作に関するリハビリテーションを行える。これにより、患者の生活の質をより一層改善し得る。
【0041】
したがって、第8の特徴に係る発明によれば、眼球運動障害を有する患者が対象を見つめる注視に関する視線リハビリテーション等を行うことを可能とし、患者の生活の質を向上し得るリハビリテーション装置を提供できる。
【0042】
第9の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明のカテゴリ違いである。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、眼球運動障害を有する患者が対象を見つめる注視に関する視線リハビリテーション等を行うことを可能とし、患者の生活の質を向上し得るリハビリテーション装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るリハビリテーションシステム1のハードウェア構成及びソフトウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、リハビリテーション装置2で実行されるリハビリテーション処理の一例を示すメインフローチャートである。
【
図5】
図5は、リハビリテーション装置2を用いた視線リハビリテーションの開始時における表示部24での表示例の一例であり、表示制御部211が視線標的画像24Aを表示部24に表示させたときの一例である。
【
図6】
図6は、
図5から続く表示例の一例であり、表示制御部211が視線標的画像24Aとともに視線位置画像24Bを表示部24に表示させたときの一例である。
【
図7】
図7は、
図6から続く表示例の一例であり、表示制御部211が視線位置画像24Bを視線標的画像24Aの位置に移動させて視線成功画像24Cを表示部24に表示させたときの一例である。
【
図8】
図8は、リハビリテーション装置2を用いた動きリハビリテーションの開始時における表示部24での表示例の一例であり、表示制御部211が動き標的画像24Dを表示部24に表示させたときの一例である。
【
図9】
図9は、
図8から続く表示例の一例であり、表示制御部211が動き標的画像24Dとともに動き位置画像24Eを表示部24に表示させたときの一例である。
【
図10】
図10は、
図9から続く表示例の一例であり、表示制御部211が動き位置画像24Eを動き標的画像24Dの位置に移動させて動き成功画像24Fを表示部24に表示させたときの一例である。
【
図11】
図11は、変形例1に係る動きリハビリテーションの一例に関する説明図である。
【
図12】
図12は、変形例1における動き成功画像の表示例を示す説明図である。
【
図13】
図13は、変形例2に係る動きリハビリテーションの一例に関する説明図である。
【
図14】
図14は、変形例2における動き成功画像の表示例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明を実施するための好適な形態の一例について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0046】
<リハビリテーションシステム1>
図1は、本実施形態に係るリハビリテーションシステム1のハードウェア構成及びソフトウェア構成の一例を示すブロック図である。リハビリテーションシステム1(以下、単にシステム1とも称する。)は、リハビリテーション処理を行うリハビリテーション装置2と、リハビリテーション装置2と一体又は別体に構成され、利用者の視線を検知可能であり、検知した視線に関する視線情報をリハビリテーション装置2に送信可能な視線センサ3と、を含んで構成される。視線センサ3がリハビリテーション装置2と別体に構成されている場合、システム1は、リハビリテーション装置2と視線センサ3とを通信可能に接続するネットワーク4をさらに含むことが好ましい。
【0047】
必須の態様ではないが、システム1は、利用者の身体及び/又は身体のいずれかの部位の動きに関する動き情報を検知し、検知した動き情報をリハビリテーション装置2に送信可能に構成された動きセンサ5をさらに含むことが好ましい。システム1は、動きセンサ5をさらに含むことにより、眼球運動障害及び身体の動きに関する障害を抱える利用者に身体の動きに関するリハビリテーションを行わせることができる。
【0048】
〔リハビリテーション装置2〕
リハビリテーション装置2(以下、単に装置2とも称する。)は、制御部21と、記憶部22と、通信部23と、表示部24と、入力部25と、を含んで構成される。
【0049】
[制御部21]
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)等を備える。
【0050】
制御部21は、所定のプログラムを読み込み、必要に応じて記憶部22、通信部23、表示部24及び/又は入力部25と協働することで、装置2におけるソフトウェア構成の要素である表示制御部211、開始通知部212、視線受信部213、計数部214、並びに回数通知部215等を実現する。表示制御部211は、第1表示制御部211A及び第2表示制御部211Bを有する。
【0051】
システム1が動きセンサ5を含む場合、表示制御部211は、第3表示制御部211C及び第4表示制御部211Dをさらに有することが好ましい。また、システム1が動きセンサ5を含む場合、制御部21は、所定のプログラムを読み込み、必要に応じて記憶部22、通信部23、表示部24及び/又は入力部25と協働することで、装置2におけるソフトウェア構成の要素である、動き受信部216をさらに実現可能であることが好ましい。
【0052】
[記憶部22]
記憶部22は、データやファイルが記憶される装置であって、ハードディスクや半導体メモリ、記録媒体、メモリカード等による、データのストレージ部を有する。記憶部22は、ネットワークを介してNAS(Network Attached Storage)、SAN(Storage Area Network)、クラウドストレージ、ファイルサーバ、分散ファイルシステム等の記憶装置又は記憶システムとの接続を可能にする仕組みを有してもよい。
【0053】
記憶部22には、マイクロコンピューターで実行される制御プログラムと、
注視する対象を示す視線標的画像(第1画像)をはじめとした種々の画像を格納する画像テーブル221、視線が視線標的画像の表示範囲から所定範囲内にあるか否かの情報を示す所定範囲内状態フラグ、及び視線が視線標的画像の表示範囲から所定範囲内にない所定範囲外状態から所定範囲内状態に切り替わった時刻を格納する所定範囲内切替え時刻等が記憶されている。記憶部22に所定範囲内状態フラグが記憶されていることにより、制御部21は、視線が視線標的画像の表示範囲から所定範囲内であるか否かに基づく処理を行える。記憶部22に所定範囲内切替え時刻が記憶されていることにより、制御部21は、所定範囲内切替え時刻に基づく処理を行える。
【0054】
必須の態様ではないが、記憶部22には、視線が上述の所定範囲外状態から上述の所定範囲内状態に切り替わる回数を格納する変化回数が記憶されていることが好ましい。変化回数が記憶されていることにより、制御部21は、変化回数に基づく通知を実行できる。
【0055】
必須の態様ではないが、記憶部22には、視線リハビリテーションの開始を通知した時刻を格納するリハビリテーション開始時刻が記憶されていることが好ましい。リハビリテーション開始時刻が記憶されていることにより、制御部21は、視線リハビリテーションの開始が通知された時刻を用いた通知を行える。
【0056】
システム1が動きセンサ5を含む場合、記憶部22には、動き標的画像(第3画像)の表示範囲から動き位置画像(第4画像)が特定範囲内にある特定範囲内状態であるか否かの情報を示す特定範囲内状態フラグ、及び動き位置画像が動き標的画像の表示範囲から特定範囲内にない特定範囲外状態から特定範囲内状態に切り替わった時刻を格納する特定範囲内切替え時刻等が記憶されている。記憶部22に特定範囲内状態フラグが記憶されていることにより、制御部21は、動き位置画像が特定範囲内であるか否かに基づく処理を行える。記憶部22に特定範囲内切替え時刻が記憶されていることにより、制御部21は、特定範囲内切替え時刻に基づく処理を行える。
【0057】
(画像テーブル221)
画像テーブル221は、記憶部22に記憶され、注視する対象を示す視線標的画像(第1画像)、及び注視を所定時間以上継続したことを通知する視線成功画像(第2画像)のうちのいずれであるかを少なくとも識別可能な画像種別と画像とを関連付けて格納する。画像テーブル221には、少なくとも1以上の視線標的画像と、少なくとも1以上の視線成功画像とが格納される。画像テーブル221には、画像を識別するIDと、画像種別及び画像とが関連付けられて格納されることが好ましい。画像種別及び画像がIDと関連付けられて格納されることにより、制御部21は、画像を容易に取得できる。
【0058】
必須の態様ではないが、画像テーブル221には、視線の位置を示す視線位置画像が格納されていることが好ましい。視線位置画像が格納されていることにより、利用者は、利用者の視線と視線標的画像との位置関係を容易に把握できる。したがって、視線リハビリテーションをより効果的に行える。
【0059】
必須の態様ではないが、画像テーブル221には、視線標的画像等の背景に表示される背景画像が格納されていることが好ましい。背景画像が格納されていることにより、制御部21は、表示部24に背景画像を表示できる。これにより、利用者は、背景画像を目印に用いて表示部24を注視できる。したがって、視線リハビリテーションをより効果的に行える。背景画像が利用者をリラックスさせる効果や、視線リハビリテーションに対する利用者のモチベーションを高める効果も奏し得る。
【0060】
システム1が動きセンサ5を含む場合、画像テーブル221には、画像種別が動きリハビリテーションにおける標的を示す動き標的画像(第3画像)と、画像種別が動きリハビリテーションにおける位置を示す動き位置画像(第4画像)と、画像種別が動きリハビリテーションにおける成功を示す動き成功画像(第5画像)と、がさらに格納されていることが好ましい。これらの画像が格納されていることにより、制御部21は、身体の動きによって動き位置画像を動き標的画像から特定範囲内へ移動させた状態を特定時間継続する動きリハビリテーションを行える。
【0061】
図2は、画像テーブル221の一例である。
図2に示す画像テーブル221には、画像種別が視線標的画像、視線位置画像、視線成功画像、背景画像、動き標的画像、動き位置画像及び動き成功画像のいずれかの種別を含む画像が格納されている。
【0062】
図2に示す画像テーブル221には、ID「1」と、画像種別「視線標的画像」及びチョウの画像とが関連付けられて格納されている。これにより、表示部24にチョウの画像を表示し、利用者がチョウの画像を注視する視線リハビリテーションを行える。
【0063】
図2に示す画像テーブル221には、ID「3」と、画像種別「視線成功画像」及び文字列「Nice!」を表す画像とが関連付けられて格納されている。これにより、利用者が注視を所定時間以上継続したときに、文字列「Nice!」を表示する視線リハビリテーションを行える。
【0064】
図2に示す画像テーブル221には、ID「5」と、画像種別「動き標的画像」及び人参の画像とが関連付けられて格納されている。また、ID「6」と、画像種別「動き位置画像」及び舟に乗ったうさぎの画像とが関連付けられて格納されている。したがって、表示部24に人参の画像を表示し、利用者が舟に乗ったうさぎの画像を人参の画像へ移動させる動きリハビリテーションを行える。
【0065】
図2に示す画像テーブル221には、ID「7」と、画像種別「動き成功画像」及び「Nice!」という文字列を表す画像とが関連付けられて格納されている。これにより、利用者が動き位置画像を動き標的画像へ移動させた状態を特定時間以上継続したときに、「Nice!」という文字列を表示する動きリハビリテーションを行える。
【0066】
[通信部23]
通信部23は、利用者の視線に関する視線情報を視線センサ3から受信可能なデバイス、例えば、携帯電話ネットワークに対応した無線装置、IEEE802.11に準拠したWi-Fi(Wireless Fidelity)対応デバイス、イーサネット規格に対応したネットワークカード、USB規格に準拠した汎用バス等のバス、RS-232C規格ポート等のシリアルポート、IEEE 1284準拠のインタフェース等のパラレルポート、及びシリアルATA規格に準拠したコネクタ等を有する。
【0067】
[表示部24]
表示部24の種類は、特に限定されない。表示部24として、例えば、液晶ディスプレイ(LCDディスプレイ)、モニタ、タッチパネル、及びスクリーンに映像を投影するプロジェクタを用いた表示システム等が挙げられる。表示部24は、さらに、音声を再生する機能を有していてもよく、音声を再生可能な外部の装置に音声の再生に関する情報及び/又は電気信号を送信可能に構成されていてもよい。
【0068】
[入力部25]
入力部25の種類は、特に限定されない。入力部25として、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、ソフトウェアキーボード、音声を認識するマイク、及び外部の装置から入力を受信する通信デバイス等が挙げられる。
【0069】
〔視線センサ3〕
視線センサ3は、利用者の視線に関する視線情報を検知可能であり、検知した視線情報を装置2に送信可能であれば特に限定されず、従来技術の各種の視線センサでよい。視線センサ3は、装置2と一体に構成されていてもよく、装置2と別体に構成されていてもよい。視線センサ3として、例えば、利用者の目及び/又は目の周辺を撮影し、目の向きを用いて視線を検知する視線センサや、利用者の顔を撮影し、顔の向きを用いて視線を検知する視線センサ等が挙げられる。
【0070】
〔ネットワーク4〕
ネットワーク4の種類は特に限定されず、パーソナルエリアネットワーク、ローカルエリアネットワーク、イントラネット、エクストラネット、インターネット、Wi-Fiネットワーク、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)に準拠したバスネットワーク、シリアルATA規格に準拠したバスネットワーク、あるいはこれらを含むネットワークを複数組み合わせたネットワーク等が挙げられる。
【0071】
(動きセンサ5)
動きセンサ5は、利用者の身体及び/又は身体のいずれかの部位の動きに関する動き情報を検知可能であり、検知した動き情報を装置2に送信可能であれば特に限定されず、従来技術の各種の動きセンサでよい。動きセンサ5は、利用者の身体に取り付ける動きセンサでもよく、利用者から離れた位置に設けられた動きセンサでもよい。
【0072】
動きセンサ5は、例えば、カメラを介して利用者の身体の動きを検知可能な身体の動きセンサ、赤外線等の電磁波、磁場及び/又は音波等を用いて利用者の手指の動きを検知可能な手指センサ、カメラ及び/又はタッチパネル等を介して利用者が表示部24に触れる動き及び触れた位置を検知可能な動きセンサ、利用者の手首に取り付けられ、利用者の手の動く方向、移動量及び/又は加速度を検知可能な動きセンサ等でよい。動きセンサ5は、装置2と一体に構成されていてもよく、装置2と別体に構成されていてもよい。
【0073】
〔リハビリテーション処理のメインフローチャート〕
図3及び
図4は、リハビリテーション装置2で実行されるリハビリテーション処理の一例を示すメインフローチャートである。中でも、
図3は、視線リハビリテーション処理の一例を示し、
図4は、動きリハビリテーション処理の一例を示す。
【0074】
〔視線リハビリテーション処理〕
以下では、
図3を参照しながら、視線リハビリテーション処理の好ましい手順について説明する。なお、以下では、記憶部22に変化回数が記憶されているものとして説明を行う。
【0075】
[ステップS1:視線リハビリテーション処理の開始を指令されたか否かを判定]
制御部21は、記憶部22、通信部23、表示部24及び入力部25と協働して開始通知部212を実行し、視線リハビリテーション処理の開始を指令されたか否かを判定する(ステップS1)。開始を指令されたならば、制御部21は、処理をステップS2に移す。開始を指令されていないならば、制御部21は、処理をステップS1に移す。視線リハビリテーション処理の開始を指令されたか否かを判定することにより、装置2は、視線リハビリテーション処理の開始を指令された場合に、視線リハビリテーション処理を開始できる。
【0076】
制御部21が視線リハビリテーション処理の開始を指令されたか否かを判定する方法は、特に限定されず、制御部21は、入力部25を介して視線リハビリテーション処理の開始を指令する所定の入力が行われたか否かを判定する方法、及び/又は通信部23を介して視線リハビリテーション処理の開始を指令する情報を受信したか否かを判定する方法、等の従来技術の各種の方法で視線リハビリテーション処理の開始を指令されたか否かを判定できる。
【0077】
必須の態様ではないが、開始通知部212は、表示部24を介して視線リハビリテーションが開始されたことを利用者に通知することが好ましい。リハビリテーションが開始されたことを利用者に通知することにより、装置2は、視線リハビリテーション処理の開始を通知してから所定範囲外状態から所定範囲内状態に切り替わった回数を通知できる。
【0078】
表示部24を介してリハビリテーションが開始されたことを利用者に通知する方法は、特に限定されず、例えば、リハビリテーションの開始を通知する画像を表示する方法、リハビリテーションの開始を通知する文字列を表示する方法、リハビリテーションの開始を通知する記号を表示する方法、リハビリテーションの開始を通知する音声の再生する方法、及び/又はこれらの方法の2以上を組み合わせた方法等が挙げられる。
【0079】
記憶部22に変化回数が記憶されている場合、視線リハビリテーションが開始されたことが利用者に通知されたときに、制御部21は、記憶部22と協働して計数部214をさらに実行し、変化回数を0にすることが好ましい。制御部21が変化回数を0にすることにより、視線リハビリテーション処理の開始を通知してから所定範囲外状態から所定範囲内状態に切り替わった回数を通知できる。
【0080】
リハビリテーション開始時刻が記憶部22に記憶されている場合、視線リハビリテーションが開始されたことが利用者に通知されたときに、制御部21は、記憶部22に記憶されたリハビリテーション開始時刻を現在時刻に更新することが好ましい。これにより、装置2は、開始が通知された時刻から決められた時間が経過するまでにおける変化回数に基づく通知を行える。
【0081】
[ステップS2:視線標的画像を表示]
制御部21は、記憶部22及び表示部24と協働して第1表示制御部211Aを実行し、画像テーブル221から画像種別「視線標的画像」と関連付けられた画像を取得し、取得された視線標的画像を表示部24に表示する(ステップS2)。制御部21は、処理をステップS3に移す。表示部24に視線標的画像を表示することにより、利用者は、視線標的画像を注視する視線リハビリテーションを行える。
【0082】
必須の態様ではないが、制御部21は、記憶部22及び表示部24と協働して画像テーブル221から画像種別「背景画像」と関連付けられた画像を取得し、取得された背景画像を表示部24に表示することが好ましい。制御部21が表示部24に背景画像を表示することにより、利用者は、背景画像を目印に用いて表示部24を注視できる。したがって、利用者は、視線リハビリテーションをより効果的に行える。背景画像を表示することは、背景画像が利用者をリラックスさせる効果や、視線リハビリテーションに対する利用者のモチベーションを高める効果も奏し得る。
【0083】
必須の態様ではないが、第1表示制御部221Aは、取得された視線標的画像を表示部24に移動表示可能に構成されていてもよい。取得された視線標的画像を表示部24に移動表示可能に構成することにより、利用者(患者)は、移動する対象を見つめる注視を所定時間以上継続する視線リハビリテーションを行える。見つめる対象が移動するため、患者が視線リハビリテーションを継続して行った場合における、視線リハビリテーションへの飽きが軽減される。したがって、患者は、視線リハビリテーションを行う意欲をより一層高め、視線リハビリテーションを継続して行い得る。継続して行われる視線リハビリテーションによって、眼球運動障害を有する患者は、注視に関する困難を軽減し得る。したがって、装置2は、取得された視線標的画像を表示部24に移動表示することにより、患者の生活の質を向上し得る。
【0084】
[ステップS3:視線情報を受信]
制御部21は、記憶部22及び通信部23と協働して視線受信部213を実行し、視線センサ3から視線情報を受信する(ステップS3)。制御部21は、処理をステップS4に移す。制御部21が視線情報を受信することにより、装置2は、利用者の視線が視線標的画像の表示範囲から所定範囲内にあるか否かを判定できる。
【0085】
必須の態様ではないが、制御部21は、さらに、記憶部22及び表示部24と協働して、画像テーブル221から画像種別「視線位置画像」と関連付けられた画像を取得し、視線の位置を示す視線位置画像を表示部24に表示してもよい。制御部21が視線の位置を示す視線位置画像を表示することにより、利用者は、利用者の視線と視線標的画像との位置関係を容易に把握できる。したがって、利用者は、視線リハビリテーションをより効果的に行える。
【0086】
[ステップS4:回数通知に関する条件を満たしたか否かを判定]
制御部21は、記憶部22及び表示部24と協働して回数通知部215を実行し、回数通知に関する条件を満たしたか否かを判定する(ステップS4)。回数通知に関する条件を満たしたならば、制御部21は、表示部24を介して変化回数に基づく通知を行い、処理をステップS1に移し、ステップS1からステップS9を繰り返す。回数通知に関する条件を満たしていないならば、制御部21は、処理をステップS5に移す。
【0087】
制御部21が回数通知に関する条件を満たしたか否かを判定し、変化回数に基づく通知を行うことにより、利用者は、視線標的画像を見ていない状態から視線を動かして視線標的画像を所定時間以上見つめる動作を繰り返す視線リハビリテーションを行うことができる。この繰り返しは、注視に関する視線リハビリテーションの効果をより一層高め得る。
【0088】
利用者(患者)は、リハビリテーションの開始が通知された後に患者がこの繰り返しを行った回数がわかるため、視線リハビリテーションを行う意欲をより一層高め、視線リハビリテーションを継続して行うことができる。継続して行われる視線リハビリテーションにより、患者は、注視に関する困難を軽減し、生活の質を向上し得る。
【0089】
制御部21が回数通知に関する条件を満たしたか否かを判定する方法は、回数通知に関する条件を満たしたか否かを判定する方法であれば特に限定されない。回数通知に関する条件を満たしたか否かを判定する方法として、例えば、リハビリテーション開始時刻を用いて視線リハビリテーションを開始した時刻から決められた時間が経過したか否かを判定する方法、及び/又は変化回数が所定の回数に達したか否かを判定する方法、等が挙げられる。
【0090】
決められた時間は、特に限定されず、例えば、予め定められた時間、利用者が指定した時間、予め定められた複数の時間から利用者が選択した時間、及び/又は時間をランダムに決める方法によって決定された時間、等でよい。
【0091】
所定の回数は、特に限定されず、例えば、予め定められた回数、利用者が指定した回数、予め定められた複数の回数から利用者が選択した回数、及び/又は時間をランダムに決める方法によって決定された回数、等でよい。
【0092】
回数通知に関する条件を満たしたか否かを判定する方法が視線リハビリテーションを開始した時刻から決められた時間が経過したか否かを判定する方法であることにより、装置2は、視線標的画像を見ていない状態から視線を動かして視線標的画像を所定時間以上見つめる動作を決められた時間内に繰り返した回数を算出できる。
【0093】
回数通知に関する条件を満たしたか否かを判定する方法が変化回数が所定の回数に達したか否かを判定する方法であることにより、装置2は、リハビリテーションの開始を通知された時刻から、視線標的画像を見ていない状態から視線を動かして視線標的画像を所定時間以上見つめる動作を所定回数繰り返す視線リハビリテーションを完了するまでの所要時間を計測できる。
【0094】
制御部21が変化回数に基づく通知を行う方法は、変化回数に基づく通知を行う方法であれば特に限定されず、例えば、表示部24に表示することで通知する方法、及び/又は音声を再生することで通知する方法等が挙げられる。
【0095】
記憶部22にリハビリテーション開始時刻が記憶され、回数通知に関する条件を満たしたか否かを判定する方法が視線リハビリテーションを開始した時刻から決められた時間が経過したか否かを判定する方法である場合、変化回数に基づく通知は、視線リハビリテーションを開始した時刻から決められた時間が経過するまでの変化回数に関する通知であることが好ましい。
【0096】
変化回数に基づく通知が視線リハビリテーションを開始した時刻から決められた時間が経過するまでの変化回数に関する通知であることにより、利用者(患者)は、視線標的画像を見ていない状態から視線を動かして視線標的画像を所定時間以上見つめる動作を決められた時間内に繰り返した回数がわかる。
【0097】
該動作を繰り返し行う視線リハビリテーションを継続して行うことにより、患者は、該動作について熟達し得る。変化回数に基づく通知が視線リハビリテーションを開始した時刻から決められた時間が経過するまでの変化回数に関する通知であることにより、患者は、該動作に熟達した度合いを、決められた時間内に該動作を繰り返した回数という明瞭な指標によって把握できる。これにより、患者は、該動作を繰り返し行う視線リハビリテーションに対する意欲をより一層高め、視線リハビリテーションを継続して行うことができる。継続して行われる視線リハビリテーションにより、患者は、注視に関する困難を軽減し、生活の質を向上し得る。
【0098】
記憶部22にリハビリテーション開始時刻が記憶され、回数通知に関する条件を満たしたか否かを判定する方法が変化回数が所定の回数に達したか否かを判定する方法である場合、変化回数に基づく通知は、視線リハビリテーションを開始した時刻から変化回数が所定の回数に達した時刻までの時間に基づく通知であることが好ましい。
【0099】
変化回数に基づく通知が視線リハビリテーションを開始した時刻から変化回数が所定の回数に達した時刻までの時間に基づく通知であることにより、利用者(患者)は、リハビリテーションの開始を通知された時刻から、視線標的画像を見ていない状態から視線を動かして視線標的画像を所定時間以上見つめる動作を所定回数繰り返す視線リハビリテーションを完了するまでの所要時間がわかる。
【0100】
患者が該動作を繰り返し行う視線リハビリテーションを継続して行うことにより、患者は、該動作について熟達し得る。変化回数に基づく通知が視線リハビリテーションを開始した時刻から変化回数が所定の回数に達した時刻までの時間に基づく通知であることにより、患者は、該動作に熟達した度合いを、視線リハビリテーションの開始を通知された時刻から該動作を所定回数繰り返すまでの所要時間という明瞭な指標によって把握できる。これにより、患者は、該動作を繰り返し行うリハビリテーションに対する意欲をより一層高め、視線リハビリテーションを継続して行うことができる。継続して行われる視線リハビリテーションにより、患者は、注視に関する困難を軽減し、生活の質を向上し得る。
【0101】
必須の態様ではないが、システム1が動きセンサ5を含む場合、回数通知に関する条件を満たしたならば、制御部21は、表示部24を介して変化回数に基づく通知を行い、処理をステップS11に移すことが好ましい。処理をステップS11に移すことにより、ステップS11からステップS19の一連の処理によって実現される患者の身体の動きに関する動きリハビリテーション処理を行うことができる。動きリハビリテーション処理の流れについては、後に、
図4を用いて詳細に説明する。
【0102】
[ステップS5:視線が所定範囲内に切り替わったか否かを判定]
制御部21は、記憶部22及び通信部23と協働して計数部214を実行し、視線が視線標的画像の表示範囲から所定範囲外にある所定範囲外状態から視線が視線標的画像の表示範囲から所定範囲内にある所定範囲内状態に切り替わったか否かを判定する(ステップS5)。所定範囲内状態に切り替わったならば、制御部21は、処理をステップS6に移す。所定範囲内状態に切り替わっていないならば、制御部21は、処理をステップS7に移す。所定範囲内状態に切り替わったか否かを判定することにより、装置2は、視線標的画像を見ていない状態から視線を動かして視線標的画像を所定時間以上見つめる動作が行われたか否かを判定できる。
【0103】
所定範囲は、視線標的画像の表示範囲に関する範囲であれば、特に限定されない。所定範囲として、例えば、視線標的画像の中心等の特定の位置に関する範囲、視線標的画像の表示範囲を含む長方形に関する範囲、又は視線標的画像の表示範囲の外周に関する範囲等が挙げられる。所定範囲内状態に切り替わったか否かを判定する方法は、特に限定されない。制御部21が所定範囲内状態に切り替わったか否かを判定する方法として、例えば、所定範囲内状態フラグがOFFであり、かつ、視線が所定範囲内である場合に所定範囲内状態に切り替わったと判定し、それ以外の場合に所定範囲内状態に切り替わっていないと判定する方法が挙げられる。
【0104】
[ステップS6:切り替わりを記録]
制御部21は、記憶部22と協働して計数部214を実行し、所定範囲内切替え時刻に現在時刻を格納することにより、所定範囲内状態に切り替わったことを記録する(ステップS6)。制御部21は、処理をステップS7に移す。所定範囲内切替え時刻に現在時刻を格納することにより、装置2は、所定範囲内状態が所定時間継続されたか否かを判定できる。
【0105】
[ステップS7:視線が所定範囲内であるか否かを判定]
制御部21は、記憶部22、表示部24及び入力部25と協働して第2表示制御部211Bを実行し、視線が視線標的画像の表示範囲から所定範囲内である所定範囲内状態であるか否かを判定する(ステップS7)。所定範囲内状態であるならば、制御部21は、所定範囲内フラグをONにし、処理をステップS8に移す。所定範囲内状態でないならば、制御部21は、所定範囲内フラグをOFFにし、処理をステップS3に移す。所定範囲内状態であるか否かを判定することにより、装置2は、後述するステップS8で行われる処理において、所定範囲内状態が継続されたか否かを判定できる。
【0106】
[ステップS8:所定時間が経過したか否かを判定]
制御部21は、記憶部22と協働して第2表示制御部211Bを実行し、所定範囲内切替え時刻から所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS8)。所定時間が経過したならば、制御部21は、処理をステップS9に移す。所定時間が経過していないならば、制御部21は、処理をステップS3に移す。所定時間が経過したか否かを判定することにより、所定範囲内状態が所定時間以上継続されたときに、装置2は、視線標的画像とは異なる視線成功画像を表示できる。
【0107】
所定時間は、眼球運動障害を有する患者が対象を見つめる注視に関する視線リハビリテーションに係る時間であれば、特に限定されない。所定時間の下限は、1/30秒以上であることが好ましく、1/10秒以上であることがさらに好ましく、1秒以上であることが最も好ましい。所定時間の下限をこのように定めることにより、視線リハビリテーションにおいて注視が継続されている場合に、所定範囲内状態が所定時間以上継続されたと判定できる。所定時間の上限は、60秒以下であることが好ましく、20秒以下であることがさらに好ましく、5秒以下であることが最も好ましい。所定時間の上限をこのように定めることにより、患者が注視を長時間に渡って行い体力等を消耗することが軽減され得る。所定時間を決定する方法は、特に限定されず、例えば、予め定められた時間を用いて決定する方法、利用者が指定した時間を用いて決定する方法、予め定められた複数の時間から利用者が選択した時間を用いて決定する方法、及び/又は時間をランダムに決める方法によって決定する方法、等でよい。
【0108】
[ステップS9:視点成功画像を表示]
制御部21は、記憶部22及び表示部24と協働して第2表示制御部211Bを実行し、画像テーブル221から画像種別「視線成功画像」と関連付けられた画像を取得し、表示部24に視線成功画像を表示する(ステップS9)。制御部21は、処理をステップS3に移す。視線成功画像を表示することにより、利用者(患者)は、表示部24に表示された視線標的画像を見つめる注視を所定時間以上継続する視線リハビリテーションに成功したことがわかる。
【0109】
〔動きリハビリテーション処理〕
システム1が動きセンサ5を含む場合、装置2は、利用者の身体の動きに係るリハビリテーションに関する動きリハビリテーション処理をさらに実行することが好ましい。以下では、
図4を参照しながら動きリハビリテーションの好ましい手順について説明する。
【0110】
[ステップS11:動きリハビリテーション処理の終了を指示されたか否かを判定]
図3に示されたステップS4において回数通知に関する条件を満たした場合、制御部21は、記憶部22、表示部24及び入力部25と協働して開始通知部212を実行し、動きリハビリテーション処理の終了を指令されたか否かを判定する(ステップS11)。終了を指令されたならば、制御部21は、処理をステップS1に移し、ステップS1からステップS19の処理を繰り返す。終了を指令されていないならば、制御部21は、処理をステップS12に移す。動きリハビリテーション処理の終了を指示されたか否かを判定することにより、利用者は、動きリハビリテーションを終了するか継続するかを選択できる。
【0111】
動きリハビリテーション処理の終了を指令されたか否かを判定する方法は、特に限定されず、制御部21は、入力部25を介して動きリハビリテーション処理の終了を指令する所定の入力が行われたか否かを判定する方法、及び/又は通信部23を介して動きリハビリテーション処理の終了を指令する情報を受信したか否かを判定する方法、等の従来技術の各種の方法で判定できる。
【0112】
[ステップS12:動き標的画像を表示]
制御部21は、記憶部22及び表示部24と協働して第3表示制御部211Cを実行し、画像テーブル221から画像種別「動き標的画像」と関連付けられた画像を取得し、取得された動き標的画像を表示部24に表示する(ステップS12)。制御部21は、処理をステップS13に移す。表示部24に動き標的画像を表示することにより、利用者は、利用者の身体及び/又は身体のいずれかの部位の動きに応じて移動する動き位置画像を動き標的画像に向けて移動させる視線リハビリテーションを行える。
【0113】
必須の態様ではないが、制御部21は、記憶部22及び表示部24と協働して画像テーブル221から画像種別「背景画像」と関連付けられた画像を取得し、取得された背景画像を表示部24に表示することが好ましい。背景画像を表示することにより、利用者は、背景画像を目印に用いて動き位置画像を移動させられる。したがって、動きリハビリテーションをより効果的に行える。背景画像を見た利用者がリラックスする効果や、動きリハビリテーションに対するモチベーションを高める効果も奏し得る。
【0114】
必須の態様ではないが、第3表示制御部211Cは、取得された動き標的画像を表示部24に移動表示可能に構成されていてもよい。取得された動き標的画像を表示部24に移動表示可能に構成することにより、利用者(患者)は、移動表示される動き標的画像の表示範囲から特定範囲内へ動き位置画像を移動させた状態を特定時間以上継続する動きリハビリテーションを行える。動き標的画像が移動するため、患者が動きリハビリテーションを継続して行った場合における、動きリハビリテーションへの飽きが軽減される。したがって、患者は、視線リハビリテーションを行う意欲をより一層高め、動きリハビリテーションを継続して行い得る。継続して行われる動きリハビリテーションによって、眼球運動障害を有する患者は、身体の動きに関する困難を軽減し得る。したがって、取得された動き標的画像を表示部24に移動表示することにより、患者は、生活の質を向上し得る。
【0115】
[ステップS13:動き情報を受信]
制御部21は、記憶部22及び通信部23と協働して動き受信部216を実行し、動きセンサ5から動き情報を受信する(ステップS13)。制御部21は、処理をステップS14に移す。動き情報を受信することにより、制御部21は、動き情報に応じて動き位置画像を移動させることができる。
【0116】
動き情報は、利用者の身体及び/又は身体のいずれかの部位の動きに関するものであれば、特に限定されず、利用者が身体をひねる動きに関する情報、利用者の手指の動きに関する情報、利用者が表示部24に触れる動き及び触れた位置に関する情報、利用者の手の動く方向、移動量及び/又は加速度に関する情報、等でよい。
【0117】
[ステップS14:動き位置画像を表示]
制御部21は、記憶部22及び表示部24と協働して、第3表示制御部211Cを実行し画像テーブル221から画像種別「動き位置画像」と関連付けられた画像を取得し、ステップS13で受信した動き情報に応じて表示部24に動き位置画像を移動表示する(ステップS14)。動き情報に応じて動き位置画像を表示することにより、利用者は、利用者の身体の動きを視覚的に把握できる。したがって、動きリハビリテーションをより効果的に行える。
【0118】
[ステップS15:動き位置画像が特定範囲内に切り替わった否かを判定]
制御部21は、記憶部22及び通信部23と協働して計数部214を実行し、動き位置画像が動き標的画像の表示範囲から特定範囲外にある特定範囲外状態から動き位置画像が動き標的画像の表示範囲から特定範囲内にある特定範囲内状態に切り替わったか否かを判定する(ステップS15)。特定範囲内状態に切り替わったならば、制御部21は、処理をステップS16に移す。特定範囲内状態に切り替わっていないならば、制御部21は、処理をステップS17に移す。特定範囲内状態に切り替わったか否かを判定することにより、装置2は、利用者が利用者の動きに応じて移動表示される動き位置画像を動き標的画像の表示範囲から特定範囲内に移動表示させる動作を行ったか否かを判定できる。
【0119】
特定範囲は、動き標的画像の表示範囲に関する範囲であれば、特に限定されない。特定範囲として、例えば、動き標的画像の中心等の特定の位置に関する範囲、動き標的画像の表示範囲を含む長方形に関する範囲、又は動き標的画像の表示範囲の外周に関する範囲等が挙げられる。特定範囲内状態に切り替わったか否かを判定する方法は、特に限定されない。特定範囲内状態に切り替わったか否かを判定する方法として、例えば、特定範囲内状態フラグがOFFであり、かつ、動き位置画像が特定範囲内である場合に特定範囲内状態に切り替わったと判定し、それ以外の場合に特定範囲内状態に切り替わっていないと判定する方法が挙げられる。
【0120】
[ステップS16:切り替わりを記録]
制御部21は、記憶部22と協働して第4表示制御部211Dを実行し、特定範囲内切替え時刻に現在時刻を格納することにより、特定範囲内状態に切り替わったことを記録する(ステップS16)。制御部21は、処理をステップS17に移す。制御部21が特定範囲内切替え時刻に現在時刻を格納することにより、制御部21は、特定範囲内状態が特定時間継続されたか否かを判定できる。
【0121】
[ステップS17:動き位置画像が特定範囲内であるか否かを判定]
制御部21は、記憶部22、表示部24及び入力部25と協働して第3表示制御部211Cを実行し、動き位置画像が動き標的画像の表示範囲から特定範囲内である特定範囲内状態であるか否かを判定する(ステップS17)。特定範囲内状態であるならば、制御部21は、特定範囲内フラグをONにし、処理をステップS18に移す。特定範囲内状態でないならば、制御部21は、特定範囲内フラグをOFFにし、処理をステップS13に移す。特定範囲内状態であるか否かを判定することにより、後述するステップS18で行われる処理において、制御部21は、特定範囲内状態が継続されたか否かを判定できる。
【0122】
[ステップS18:特定時間が経過したか否かを判定]
制御部21は、記憶部22と協働して第4表示制御部211Dを実行し、特定範囲内切替え時刻から特定時間が経過したか否かを判定する(ステップS18)。特定時間が経過したならば、制御部21は、処理をステップS19に移す。特定時間が経過していないならば、制御部21は、処理をステップS13に移す。特定時間が経過したか否かを判定することにより、特定範囲内状態が特定時間以上継続されたときに、制御部21は、動き標的画像及び動き位置画像とは異なる動き成功画像を表示できる。
【0123】
特定時間は、眼球運動障害を有する患者の動きリハビリテーションに係る時間であれば、特に限定されない。特定時間の下限は、1/30秒以上であることが好ましく、1/10秒以上であることがさらに好ましく、1秒以上であることが最も好ましい。特定時間の下限をこのように定めることにより、制御部21は、患者の身体の動きが動き位置画像を動き標的画像の表示範囲から特定範囲内に移動させて維持する身体の動きであるか否かを判定できる。特定時間の上限は、60秒以下であることが好ましく、20秒以下であることがさらに好ましく、5秒以下であることが最も好ましい。特定時間の上限をこのように定めることにより、患者は、動き位置画像を動き標的画像の表示範囲から特定範囲内に移動させて維持する身体の動きを長時間に渡って行い消耗することを避け得る。特定時間を決定する方法は、特に限定されず、例えば、予め定められた時間を用いて決定する方法、利用者が指定した時間を用いて決定する方法、予め定められた複数の時間から利用者が選択した時間を用いて決定する方法、及び/又は時間をランダムに決める方法によって決定する方法、等でよい。
【0124】
[ステップS19:動き成功画像を表示]
制御部21は、記憶部22及び表示部24と協働して第4表示制御部211Dを実行し、画像テーブル221から画像種別「動き成功画像」と関連付けられた画像を取得し、表示部24に動き成功画像を表示する(ステップS19)。制御部21は、処理をステップS11に移す。動き標的画像及び動き位置画像と異なる動き成功画像を表示することにより、利用者(患者)は、身体の動きに応じて移動表示される動き位置画像を動き標的画像の表示範囲の特定範囲内に維持する、身体の動きに関する動きリハビリテーションに成功したことがわかる。
【0125】
〔リハビリテーションシステム1の使用例〕
以下では、本実施形態におけるリハビリテーションシステム1の使用例を説明する。以下に示す使用例では、システム1は、動きセンサ5を有する。以下に示す使用例では、リハビリテーション装置2は、動き受信部216を有し、変化回数、リハビリテーション開始時刻、特定範囲内フラグ及び特定範囲内切替え時刻を記憶部22に記憶し、視線リハビリテーションの開始を通知可能であり、視線リハビリテーションの開始が通知されたときにリハビリテーション開始時刻を現在時刻に更新可能であり、表示部24に背景画像を表示可能に構成されており、視線情報を受信したときに、視線の位置を示す視線位置画像を表示可能に構成されており、視線リハビリテーションの開始が通知された時刻から決められた時間が経過するまでにおける変化回数に基づく通知を実行可能であり、回数通知に関する条件を満たした場合に動きリハビリテーションを行うよう構成されている。
【0126】
図5~
図7は、リハビリテーション装置2を用いた視線リハビリテーションの一例に関する説明図である。そのうち、
図5は、視線リハビリテーションの開始時における表示部24での表示例の一例であり、表示制御部211が視線標的画像24Aを表示部24に表示させたときの一例である。
図6は、
図5から続く表示例の一例であり、表示制御部211が視線標的画像24Aとともに視線位置画像24Bを表示部24に表示させたときの一例である。
図7は、
図6から続く表示例の一例であり、表示制御部211が視線位置画像24Bを視線標的画像24Aの位置に移動させて視線成功画像24Cを表示部24に表示させたときの一例である。
【0127】
図8~
図10は、リハビリテーション装置2を用いた動きリハビリテーションの一例に関する説明図である。そのうち、
図8は、動きリハビリテーションの開始時における表示部24での表示例の一例であり、表示制御部211が動き標的画像24Dを表示部24に表示させたときの一例である。
図9は、
図8から続く表示例の一例であり、表示制御部211が動き標的画像24Dとともに動き位置画像24Eを表示部24に表示させたときの一例である。
図10は、
図9から続く表示例の一例であり、表示制御部211が動き位置画像24Eを動き標的画像24Dの位置に移動させて動き成功画像24Fを表示部24に表示させたときの一例である。
【0128】
以下、
図5~
図10を用いて、本実施形態におけるリハビリテーションシステム1の使用例を説明する。
【0129】
[視線リハビリテーションの開始]
眼球運動障害を有し、対象を見つめる注視に困難を覚える利用者P(患者)は、リハビリテーション装置2に視線リハビリテーションの開始を指令する。装置2は、視線リハビリテーションの開始を利用者Pに通知する。
【0130】
[画像の表示]
装置2は、第1表示制御部211Aを実行し、表示部24に背景画像と視線標的画像とを表示する。
図5に示す例では、画像テーブル221においてID「4」と関連付けられた背景画像(山を背景にした湖の画像)が表示された表示部24に、画像テーブル221においてID「1」と関連付けられた視線標的画像24A(矢印によって標的であることを示されたチョウの画像)が表示されている。視線センサ3は、利用者Pの視線Sを検知し、装置2(図示せず)に送信する。視線標的画像24Aの表示範囲からの所定範囲R1を示す点線の長方形は、表示部24に表示されているものではなく、視線リハビリテーションの説明のために描き加えられたものであることに留意されたい。
【0131】
図5の例によれば、利用者Pは、表示部24に表示された視線標的画像24Aにより、視線Sを向ける標的の位置がわかる。利用者Pは、山を背景にした湖において、視線でチョウを追う状況を模した視線リハビリテーションを行える。このような状況を模した視線リハビリテーションであるため、利用者Pは、リラックスすることができ、視線リハビリテーションをより効果的に行い得る。
【0132】
[視線情報の受信]
装置2は、視線受信部213を実行し、視線センサ3から利用者Pの視線Sに関する視線情報を受信する。装置2は、視線Sの位置を示す視線位置画像を表示部24に表示する。
【0133】
図6に示す例では、表示部24における利用者Pの視線Sの位置に画像テーブル221においてID「2」と関連付けられた視線位置画像24B(虫取り網の画像)が表示されている。視線位置画像24Bが表示されていることにより、利用者Pは、利用者の視線Sと視線標的画像24Aとの位置関係を視覚的に把握できる。したがって、視線リハビリテーションをより効果的に行える。
【0134】
図6に示す例によれば、利用者Pは、山を背景にした湖において、虫取り網でチョウを追う状況を模した視線リハビリテーションを行える。このような状況を模した視線リハビリテーションであるため、利用者Pは、リラックスすることができ、視線リハビリテーションをより効果的に行い得る。視線の位置に表示される虫取り網でチョウを追うというリハビリテーションの目標が視線標的画像24A及び視線位置画像24Bによって明瞭に示されているため、患者は、視線リハビリテーションに対するモチベーションを高め得る。
【0135】
[視線Sが所定範囲内であるか否かに関する処理]
装置2は、計数部214及び第2表示制御部211Bを実行し、視線Sが視線標的画像の表示範囲から所定範囲内にない所定範囲外状態から視線Sが所定範囲内にある所定範囲内状態に切り替わったか否かを判定し、さらに、視線Sが所定範囲内にある所定範囲内状態であるか否かを判定する。
【0136】
(所定範囲外状態である場合)
図6に示す例のように、視線Sが視線標的画像24Aの表示範囲から所定範囲R1内にない所定範囲外状態である場合、装置2は、視線リハビリテーションの開始が通知された時刻から決められた時間が経過するか、視線Sが、視線標的画像24Aの表示範囲から所定範囲R1内になるまで、視線情報を受信し、視線の位置を示す視線位置画像24Bを表示部24に表示し、視線Sが所定範囲R1内にある所定範囲内状態に切り替わったか否かを判定し、視線Sが所定範囲R1内にある所定範囲内状態であるか否かを判定する一連の処理を繰り返す。
【0137】
(所定範囲外状態から所定範囲内状態に切り替わった場合)
視線Sが視線標的画像24Aの表示範囲から所定範囲内にない所定範囲外状態から視線Sが所定範囲内にある所定範囲内状態に切り替わった場合、装置2は、所定範囲内切替え時刻に現在時刻を格納し、変化回数に1を加え、視線Sが所定範囲内にある所定範囲内状態であるか否かを判定する。
【0138】
(所定範囲内状態である場合)
視線Sが所定範囲内にある所定範囲内状態である場合、装置2は、第2表示制御部211Bを実行し、所定範囲内状態が所定範囲内切替え時刻から所定時間以上継続されたか否かを判定する。所定範囲内状態が所定範囲内切替え時刻から所定時間以上継続された場合、装置2は、表示部24に視線成功画像を表示する。
【0139】
図7に示す例では、
図6に示された例と異なり、視線位置画像24Bによって示される視線Sの位置が視線標的画像24Aの表示範囲から所定範囲R1内にあるため、装置2は、視線Sが所定範囲R1内にある所定範囲内状態に切り替わったと判定し、所定範囲内状態が所定範囲内切替え時刻から所定時間以上継続されたか否かを判定する。そして、所定範囲内状態が所定時間以上継続されたときに、装置2は、表示部24に画像テーブル221においてID「3」と関連付けられた視線成功画像24C(文字列「Nice!」を表す画像)を表示する。視線リハビリテーションの開始時刻から決められた時間が経過するまで、装置2は、画像の表示に関する処理と、視線情報の受信に関する処理と、視線Sが所定範囲内であるか否かに関する処理とを繰り返す。
【0140】
[決められた時間の経過]
視線リハビリテーションの開始時刻から決められた時間が経過すると、装置2は、回数通知部215を実行し、決められた時間が経過するまでにおける変化回数を利用者Pに通知する。
【0141】
[動きリハビリテーションの開始]
視線リハビリテーションに続いて動きリハビリテーションを行う利用者Pは、装置2に、動きリハビリテーションを終了する指令を送信しない。これにより、装置2は、動きリハビリテーションを終了する指令を受信せず、眼球運動障害及び身体の動きに関する障害を抱える利用者Pの身体の動きに関する動きリハビリテーション処理を開始する。
【0142】
[画像の表示]
装置2は、第3表示制御部211Cを実行し、表示部24に背景画像と動き標的画像とを表示する。
図8に示す例では、画像テーブル221においてID「4」と関連付けられた背景画像(山を背景にした湖の画像)が表示された表示部24に、画像テーブル221においてID「5」と関連付けられた動き標的画像24D(矢印によって標的であることを示された人参の画像)が表示されている。動き標的画像24Dの表示範囲からの特定範囲R2を示す点線の長方形は、表示部24に表示されているものではなく、動きリハビリテーションの説明のために描き加えられたものであることに留意されたい。
【0143】
[動き情報の受信]
装置2は、動き受信部216を実行し、動きセンサ5から利用者Pの身体の動きに関する動き情報を受信する。装置2は、動き位置画像を表示部24に表示する。
【0144】
図9に示す例では、山を背景にした湖の画像である背景画像が表示された表示部24に、矢印によって標的であることを示された人参の画像である動き標的画像24Dと、画像テーブル221においてID「6」と関連付けられた動き位置画像24E(舟に乗ったうさぎの画像)とが示されている。利用者Pが腰をひねる動きを検知する動きセンサ5Aは、利用者Pが腰をひねる動きを検知し、装置2に送信する。
【0145】
図9の例によれば、利用者Pは、山を背景にした湖において、うさぎの好物とされる人参をうさぎが乗った舟で追う状況を模した動きリハビリテーションを行える。このような状況を模した動きリハビリテーションであるため、利用者Pは、リラックスすることができ、動きリハビリテーションをより効果的に行い得る。うさぎの好物とされる人参をうさぎが乗った舟で追うというリハビリテーションの目標が動き標的画像24D及び動き位置画像24Eによって明瞭に示されているため、利用者は、動きリハビリテーションに対するモチベーションを高め得る。
【0146】
[動き位置画像が特定範囲R2内であるか否かに関する処理]
装置2は、第4表示制御部211Dを実行し、動き位置画像が動き標的画像示範囲から特定範囲内にない特定範囲外状態から動き位置画像が特定範囲内にある特定範囲内状態に切り替わったか否かを判定し、さらに、動き位置画像が特定範囲内にある特定範囲内状態であるか否かを判定する。
【0147】
(特定範囲外状態である場合)
図9に示す例のように、動き位置画像24Eが動き標的画像24Dの表示範囲から特定範囲R2内にない特定範囲外状態である場合、装置2は、動き位置画像24Eが動き標的画像24Dの表示範囲から特定範囲R2内になるまで動き情報を受信し、動き位置画像24Eを表示部24に表示し、動き位置画像24Eが動き標的画像24Dの表示範囲から特定範囲R2内にある特定範囲内状態に切り替わったか否かを判定し、動き位置画像24Eが動き標的画像24Dの表示範囲から特定範囲R2内にある特定範囲内状態であるか否かを判定する一連の処理を繰り返す。
【0148】
(特定範囲外状態から特定範囲内状態に切り替わった場合)
利用者Pの身体の動きによって動き位置画像が動き標的画像の表示範囲から特定範囲内にない特定範囲外状態から動き位置画像が特定範囲内にある特定範囲内状態に切り替わった場合、装置2は、特定範囲内切替え時刻に現在時刻を格納し、動き位置画像が動き標的画像の表示範囲から特定範囲内にある特定範囲内状態であるか否かを判定する。
【0149】
図10に示す例では、利用者Pが腰をひねる動きに応じて、動き位置画像24Eが特定範囲R2内に移動表示されている。
図9に示す例における状況から
図10に示す例における状況に変化した場合、装置2は、動き位置画像24Eが動き標的画像24Dの表示範囲から特定範囲R2内にない特定範囲外状態から動き位置画像24Eが特定範囲R2内にある特定範囲内状態に切り替わったと判定し、特定範囲内切替え時刻に現在時刻を格納し、動き位置画像24Eが動き標的画像の表示範囲から特定範囲内にある特定範囲内状態であるか否かを判定する。
【0150】
(特定範囲内状態である場合)
図10に示す例のように、動き位置画像24Eが動き標的画像の表示範囲から特定範囲内にある特定範囲内状態である場合、装置2は、第4表示制御部211Dを実行し、特定範囲内状態が特定範囲内切替え時刻から特定時間以上継続されたか否かを判定する。特定範囲内状態が特定範囲内切替え時刻から特定時間以上継続された場合、装置2は、表示部24に画像テーブル221においてID「7」と関連付けられた動き成功画像24F(文字列「Nice!」を表す画像)を表示する。
【0151】
本実施形態に係るリハビリテーションシステム1を使用することにより、眼球運動障害を有し、対象を見つめる注視に困難を覚える利用者(患者)は、表示部に表示された視線標的画像(第1画像)を見つめる注視を所定時間以上継続する視線リハビリテーションを行える。患者の視線が表示部24に表示された視線標的画像から所定範囲内にある状態が所定時間以上継続する場合、すなわち、患者が視線標的画像を所定時間以上見つめた場合に、視線標的画像と異なる視線成功画像(第2画像)が表示される。視線成功画像が表示されたことにより、患者は、表示部24に表示された視線標的画像を見つめる注視を所定時間以上継続する視線リハビリテーションに成功したことがわかる。
【0152】
患者は、注視の継続に成功したことを視線成功画像の表示により判別できるため、患者は、視線リハビリテーションを行う意欲を高め、この視線リハビリテーションを継続して行うことができる。継続して行われる視線リハビリテーションによって、眼球運動障害を有する患者は、注視に関する困難を軽減し得る。したがって、本実施形態に係るリハビリテーションシステム1を使用することにより、患者は、生活の質を向上し得る。
【0153】
身体の動きに障害を抱える患者は、画像を用いて身体の動きを指示する装置等によって身体の動きに関するリハビリテーションを行い得る。しかし、眼球運動障害によって画像を注視することに関する困難を抱えている患者がこのようなリハビリテーションを行うことは、容易ではない。
【0154】
本実施形態に係るリハビリテーションシステム1を使用することにより、眼球運動障害によって画像を注視することに関する困難を抱えている患者は、注視に関する視線リハビリテーションを行うことで画像を注視することに関する困難を軽減し得る。これにより、利用者は、動き標的画像(第3画像)等を注視しながら、身体の動きに応じて移動表示される動き位置画像(第4画像)を動き標的画像の表示範囲の特定範囲内に維持する、身体の動きに関するリハビリテーションを行える。したがって、眼球運動障害及び身体の動きに関する障害を抱える患者であっても、身体の動きに関するリハビリテーションを、動き標的画像及び動き位置画像を用いて行える。
【0155】
患者は、身体の動きに応じて移動する動き位置画像を動き標的画像の表示範囲の特定範囲内に維持できたことを動き成功画像(第5画像)の表示により判別できるため、患者は、リハビリテーションを行う意欲を高め、リハビリテーションを継続して行うことができる。継続して行われるリハビリテーションによって、患者は、画像を注視することに関する困難を軽減するだけでなく、身体の動きに関する困難をも軽減できる。したがって、患者は、生活の質を向上し得る。
【0156】
したがって、本実施形態に係るリハビリテーションシステム1を使用することにより、眼球運動障害を有する患者が対象を見つめる注視に関する視線リハビリテーション等を行うことを可能とし、患者の生活の質を向上し得るリハビリテーション装置2を提供できる。
【0157】
<変形例>
以下、本実施形態に記載の発明における種々の変形例を例示する。
【0158】
〔変形例1〕 手の開閉に関するリハビリテーションを行うリハビリテーション装置2
本実施形態のリハビリテーション装置2は、利用者Pの身体の動きを用いて動き位置画像を移動する動きリハビリテーションを行うよう構成されたが、本発明のリハビリテーション装置2は、手を開く動作及び/又は手を閉じる動作に関するリハビリテーションを行えるよう構成されていてもよい。
【0159】
本変形例のリハビリテーション装置2に関し、動き受信部216が動きセンサ5から受信する動き情報は、利用者Pの身体及び/又は身体のいずれかの部位の動きに関する情報と、利用者Pが手を開く動作の情報及び/又は手を閉じる動作の情報とを含み、第4表示制御部211Dは、特定範囲内状態において利用者Pが手を開く動作及び/又は手を閉じる動作に関する情報を受信したときに、動き標的画像及び動き位置画像と異なる動き成功画像を表示可能に制御するよう構成されている。
【0160】
本変形例の動きセンサ5は、利用者Pが手を開く動作及び/又は手を閉じる動作を検知し、利用者Pが手を開く動作の情報及び/又は手を閉じる動作の情報をさらに含む動き情報を装置2に送信可能に構成されている。本変形例の動きセンサ5は、利用者Pが手を開く動作及び/又は手を閉じる動作を検知し、利用者Pが手を開く動作の情報及び/又は手を閉じる動作の情報をさらに含む動き情報を装置2に送信可能であれば特に限定されず、例えば、赤外線等の電磁波、磁場及び/又は音波等を用いて利用者Pの手指の動きを検知可能な動きセンサでよい。本変形例の動きセンサ5は、装置2と一体に構成されていてもよく、装置2と別体に構成されていてもよい。
【0161】
図11は、変形例1に係る動きリハビリテーションの一例に関する説明図である。
図12は、変形例1における動き成功画像の表示例を示す説明図である。以下、
図11及び
図12を用いて、変形例1に係る、動き位置画像を動き標的画像から特定範囲内に移動させて手を閉じる動作を行う動きリハビリテーションについて説明する。
【0162】
装置2は、第3表示制御部211Cを実行し、画像テーブル221から動き標的画像を取得し、取得された動き標的画像を表示部24に表示する。装置2は、動き受信部216を実行し、動きセンサ5から、動き情報を受信する。装置2は、第3表示制御部211Cを実行し、画像テーブル221から動き位置画像を取得し、取得された動き位置画像を動き情報に応じて表示部24に移動表示する。
【0163】
図11に示す例では、画像テーブル221においてID「4」と関連付けられた背景画像(山を背景にした湖の画像)が表示された表示部24に、画像テーブル221においてID「8」と関連付けられた動き標的画像24G(矢印によって標的であることを示された標的の画像)と、画像テーブル221においてID「8」と関連付けられた動き位置画像24H(釣りざおの画像)とが示されている。利用者Pの手指の動きを検知する動きセンサ5Bは、利用者Pの手Hについて、手指の動き、手を開く動作及び手を閉じる動作を検知し、装置2(図示せず)に送信する。
【0164】
図11及び
図12に示す例では、利用者Pは、動き標的画像24Gの表示範囲から特定範囲R3内へ動き位置画像24Hを移動させ、手を閉じる動作を行うリハビリテーションを行う。
図11に示す例では、動き位置画像24Hは、動き標的画像24Gの表示範囲から特定範囲R3内にない。利用者Pは、手Hを動かし、動き位置画像24Hを動き標的画像24Gの表示範囲から特定範囲R3内へ移動表示させる。
【0165】
装置2は、動き受信部216を実行し、手を開く動作及び手を閉じる動作に関する情報を含む動き情報を受信する。装置2は、第4表示制御部211Dを実行し、特定範囲内状態において利用者Pが手を開く動作及び/又は手を閉じる動作に関する情報を受信したときに、画像テーブル221から動き成功画像を取得し、取得された動き成功画像を表示部24に表示する。
【0166】
図12に示す例では、利用者Pが手を動かしたことにより、動き位置画像24Hが動き標的画像24Gの表示範囲から特定範囲R3内へ移動表示されている。そして、動き位置画像24Hが動き標的画像24Gの表示範囲から特定範囲R3内にある特定範囲内状態で、利用者Pは、手Hを閉じる(握る)動作を行っている。手Hを閉じる動作を検知した動きセンサ5Bは、利用者Pが手Hを閉じる動作の情報を含む動き情報を装置2に送信する。動き受信部216は、特定範囲内状態で利用者Pが手Hを閉じる動作に関する情報を受信する。手Hを閉じる動作に関する情報を受信したため、第4表示制御部221Dは、画像テーブル221においてID「7」と関連付けられ、動き標的画像24G及び動き位置画像24Hと異なる動き成功画像24F(文字列「Nice!」を表す画像)を表示部24に表示する。これにより、利用者は、手指の動きによって動き位置画像24Hを動き標的画像24Gの表示範囲から特定範囲R3内に移動させ、さらに、手Hを閉じる動作を行うリハビリテーションに成功したことを、視覚的に把握できる。
【0167】
本変形例のリハビリテーション装置2によれば、眼球運動障害及び手の開閉に関する障害を抱える利用者(患者)は、手の開閉に関するリハビリテーションを行える。これらのリハビリテーションにより、患者は、画像を注視することに関する困難を軽減するだけでなく、手の開閉に関する困難をも軽減できる。したがって、本変形例のリハビリテーション装置2によれば、患者の生活の質を向上し得る。
【0168】
〔変形例2〕 注視した対象に触れるリハビリテーションを行うリハビリテーション装置2
本実施形態のリハビリテーション装置2は、利用者Pの身体の動きを用いて動き位置画像を移動する動きリハビリテーションを行うよう構成されたが、本発明のリハビリテーション装置2は、利用者Pが表示部24に触れる動作に関するリハビリテーションを行えるよう構成されていてもよい。
【0169】
本変形例のリハビリテーション装置2に関し、動き受信部216が動きセンサ5から受信する動き情報は、利用者Pが表示部24に触れる動作及び利用者Pが表示部24に触れた位置の情報を含み、第4表示制御部211Dは、利用者Pが表示部24に触れる動作を行ったときに利用者Pが表示部24に触れた位置に応じて動き位置画像を移動表示可能に制御するよう構成されている。
【0170】
本変形例の動きセンサ5は、利用者Pが表示部24に触れる動作及び利用者Pが表示部24に触れた位置を検知可能な動きセンサであり、利用者Pが表示部24に触れる動作を検知し、利用者Pが表示部24に触れた位置の情報をさらに含む動き情報を装置2に送信可能に構成されている。本変形例の動きセンサ5は、表示部24がタッチパネル等の利用者Pが表示部24に触れる動作及び利用者Pが表示部24に触れた位置を検知する装置を備えた表示部24であれば、例えば、該装置を用いて利用者Pが表示部24に触れる動作及び利用者Pが表示部24に触れた位置を検知する動きセンサ等でよい。本変形例の動きセンサ5は、表示部24がタッチパネル等を備えていない表示部24であれば、例えば、カメラを介して利用者Pが表示部24に触れる動作及び利用者Pが表示部24に触れた位置を検知可能な動きセンサ等でよい。本変形例の動きセンサ5は、装置2と一体に構成されていてもよく、装置2と別体に構成されていてもよい。
【0171】
図13は、変形例2に係る動きリハビリテーションの一例に関する説明図である。
図14は、変形例2における動き成功画像の表示例を示す説明図である。以下、
図13及び
図14を用いて、変形例2に係る表示部24に表示された動き標的画像に触れる動作を行う動きリハビリテーションについて説明する。
【0172】
装置2は、第3表示制御部211Cを実行し、画像テーブル221から動き標的画像を取得し、取得された動き標的画像を表示部24に表示する。装置2は、動き受信部216を実行し、動きセンサ5から、利用者Pが表示部24に触れる動作及び利用者Pが表示部24に触れた位置に関する情報を含む動き情報を受信する。装置2は、第3表示制御部211Cを実行し、画像テーブル221から動き位置画像を取得し、利用者Pが表示部24に触れた位置に応じて、取得された動き位置画像を表示部24に移動表示する。
【0173】
図13及び
図14に示す例では、画像テーブル221においてID「4」と関連付けられた背景画像(山を背景にした湖の画像)が表示された表示部24に、画像テーブル221においてID「10」と関連付けられた動き標的画像24I(矢印によって標的であることを示された鯨の画像)と、画像テーブル221においてID「11」と関連付けられた動き位置画像24J(矢印の画像)とが示されている。利用者Pが表示部24に触れる動きを検知する動きセンサ5Bは、利用者Pが表示部24に触れる動きを検知し、装置2(図示せず)に送信する。
【0174】
図13及び
図14に示す例では、利用者Pは、動き標的画像24Iの表示範囲から特定範囲R4内に触れるリハビリテーションを行う。
図13に示す例では、動き位置画像24Jは、動き標的画像24Iの表示範囲から特定範囲R4内にない。利用者Pは、表示部24に表示された動き標的画像24Iの表示範囲から特定範囲R4内に触れ、動き位置画像24Jを動き標的画像24Iの表示範囲から特定範囲R4内へ移動表示させる。
【0175】
装置2は、動き受信部216を実行し、利用者Pが表示部24に触れる動作及び利用者Pが表示部24に触れた位置に関する情報を含む動き情報を受信する。装置2は、第4表示制御部211Dを実行し、特定範囲内状態が特定時間以上継続されたときに、画像テーブル221から動き成功画像を取得し、取得された動き成功画像を表示部24に表示する。
【0176】
図14に示す例では、利用者Pが表示部24に関し、動き標的画像24Gの表示範囲から特定範囲R4内の位置を触れる動作を行い、動きセンサ5Cが該動作及び利用者Pが触れた位置を検知している。利用者Pが表示部24に触れる動作を検知した動きセンサ5Cは、利用者Pが触れた位置を含む動き情報を装置2に送信する。動き受信部216は、利用者Pが触れた位置を含む動き情報を受信する。そして、第3表示制御部211Cは、利用者Pが触れた位置に応じて、動き位置画像24Jを移動表示する。そして、利用者Pが特定範囲R4内の位置に触れた状態を特定時間継続すると、画像テーブル221においてID「7」と関連付けられた動き成功画像24F(文字列「Nice!」を表す画像)が表示される。これにより、利用者は、表示部24に表示された動き標的画像24Iに触れる動きのリハビリテーションに成功したことを、視覚的に把握できる。
【0177】
本変形例のリハビリテーション装置2によれば、眼球運動障害及び身体の動きに関する障害を抱える利用者(患者)は、表示部に表示された視線標的画像を見つめる注視を所定時間以上継続する視線リハビリテーションに加えて、表示部に表示された動き標的画像に触れる動きのリハビリテーションをも行える。患者は、これらのリハビリテーションによって、生活における基本的な動作の1つである注視している対象に触れる動作に関するリハビリテーションを行える。これにより、患者の生活の質をより一層改善し得る。
【0178】
以上、本発明の実施形態及び各種変形例について説明したが、本発明は上述したこれらの実施形態及び各種変形例に限るものではない。また、本発明の実施形態及び各種変形例に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したものに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態及び各種変形例に記載されたものに限定されるものではない。
【0179】
また、上述した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0180】
1 システム
2 リハビリテーション装置
21 制御部
211 表示制御部
212 開始通知部
213 視線受信部
214 計数部
215 回数通知部
216 動き受信部
22 記憶部
221 画像テーブル
23 通信部
24 表示部
25 入力部
3 視線センサ
4 ネットワーク
5 動きセンサ
【手続補正書】
【提出日】2021-10-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者により注視される表示部と、
前記利用者が視線を動かす標的となる第1画像を前記表示部に表示させる第1制御部と、
前記利用者が前記表示部を注視して前記視線を動かす視線リハビリテーションを行う場合に、前記利用者の前記視線に関する視線情報を受信する視線受信部と、
前記利用者の前記視線が前記第1画像の表示範囲から所定範囲内にある所定範囲内状態が所定時間以上継続されたときに、前記第1画像とは異なり、かつ、前記視線リハビリテーションが成功したことを示す第2画像を前記表示部に表示させる第2制御部と、
前記視線リハビリテーションを開始した時刻から所定時間が経過したか否か、及び/又は前記利用者の前記視線が前記所定範囲内にない所定範囲外状態から前記所定範囲内状態に切り換わる回数が所定回数に達したか否か、を判定する判定部と、
前記視線リハビリテーションを開始した時刻から所定時間が経過した、及び/又は前記利用者の前記視線が前記所定範囲内にない所定範囲外状態から前記所定範囲内状態に切り換わる回数が所定回数に達した、と判定された場合に、前記利用者が身体及び/又は前記身体のいずれかの部位を動かす身体リハビリテーションを行う標的となる第3画像を前記表示部に表示させる表示制御部と、
前記第3画像を注視して前記身体リハビリテーションを行う前記利用者の前記身体及び/又は前記身体のいずれかの部位の動きに関する動き情報を受信する動き受信部と、
前記動き受信部で検出される前記動き情報に応じて移動する第4画像を前記表示部に表示させる第3制御部と、
前記第4画像の表示位置が前記第3画像の表示範囲から特定範囲内にある特定範囲内状態が特定時間以上継続されたときに、前記第3画像及び前記第4画像とは異なり、かつ、前記身体リハビリテーションに成功したことを示す第5画像を前記表示部で表示させる第4制御部と、
を有する、リハビリテーション装置。
【請求項2】
前記動き受信部が受信する前記動き情報は、前記利用者による手を開く動作の情報及び手を閉じる動作の情報を含み、
前記第4制御部は、前記特定範囲内状態において前記手を開く動作及び/又は手を閉じる動作に関する情報を前記動き受信部が受信したときに、前記第5画像を表示する、請求項1に記載のリハビリテーション装置。
【請求項3】
前記動き受信部が受信する前記動き情報は、前記利用者が前記表示部に触れた位置の情報を含み、
前記第3制御部は、前記表示部に触れた位置に応じて前記第4画像を移動させる、請求項1又は2に記載のリハビリテーション装置。
【請求項4】
利用者により注視される表示部を有するリハビリテーション装置の制御部に、
前記利用者が視線を動かす標的となる第1画像を前記表示部に表示させる第1制御ステップと、
前記利用者が前記表示部を注視して前記視線を動かす視線リハビリテーションを行う場合に、前記利用者の前記視線に関する視線情報を受信する視線受信ステップと、
前記利用者の前記視線が前記第1画像の表示範囲から所定範囲内にある所定範囲内状態が所定時間以上継続されたときに、前記第1画像とは異なり、かつ、前記視線リハビリテーションが成功したことを示す第2画像を前記表示部に表示させる第2制御ステップと、
前記視線リハビリテーションを開始した時刻から所定時間が経過したか否か、及び/又は前記利用者の前記視線が前記所定範囲内にない所定範囲外状態から前記所定範囲内状態に切り換わる回数が所定回数に達したか否か、を判定する判定ステップと、
前記視線リハビリテーションを開始した時刻から所定時間が経過した、及び/又は前記利用者の前記視線が前記所定範囲内にない所定範囲外状態から前記所定範囲内状態に切り換わる回数が所定回数に達した、と判定された場合に、前記利用者が身体及び/又は前記身体のいずれかの部位を動かす身体リハビリテーションを行う標的となる第3画像を前記表示部に表示させる表示制御ステップと、
前記第3画像を注視して前記身体リハビリテーションを行う前記利用者の前記身体及び/又は前記身体のいずれかの部位の動きに関する動き情報を受信する受信ステップと、
前記受信ステップで検出される前記動き情報に応じて移動する第4画像を前記表示部に表示させる第3制御ステップと、
前記第4画像の表示位置が前記第3画像の表示範囲から特定範囲内にある特定範囲内状態が特定時間以上継続されたときに、前記第3画像及び前記第4画像とは異なり、かつ、前記身体リハビリテーションに成功したことを示す第5画像を前記表示部で表示させる第4制御ステップと、
を実行させる、プログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、リハビリテーション装置及びプログラムに関する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、眼球運動障害を有する患者が対象を見つめる注視に関する視線リハビリテーション等を行うことを可能とし、患者の生活の質を向上し得るリハビリテーション装置及びプログラムを提供することである。