(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052523
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】発電素子、発電装置、電子機器、及び発電素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 37/00 20060101AFI20220328BHJP
H02N 11/00 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
H01L37/00
H02N11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020158960
(22)【出願日】2020-09-23
(71)【出願人】
【識別番号】516230102
【氏名又は名称】株式会社GCEインスティチュート
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】藤井 充
(57)【要約】
【課題】出力電圧の向上を図ることができる発電素子、発電装置、電子機器、及び発電素子の製造方法を提供する。
【解決手段】第1積層部10aと、第1積層部10a上に設けられた第1低熱伝導部21と、第1低熱伝導部21上に設けられた第2積層部10bとを有する積層体2を備え、第1積層部10a及び第2積層部10bは、第1主面11afを有する第1基板11aと、第1基板11aと第1方向に離間して設けられ、第1主面11afと対向する第2主面11bfを有する第2基板11bと、第1主面11af上に設けられ、第2基板11bと離間する第1電極部12aと、第2主面11bf上に設けられ、第1基板11a及び第1電極部12aと離間し、第1電極部12aとは異なる仕事関数を有する第2電極部12bと、第1電極部12aと、第2電極部12bとの間に設けられナノ粒子141を含む中間部14とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電素子であって、
第1積層部と、前記第1積層部の上に設けられた第1低熱伝導部と、前記第1低熱伝導部の上に設けられた第2積層部と、を有する積層体を備え、
前記第1積層部及び前記第2積層部は、
第1主面を有する第1基板と、
前記第1基板と第1方向に離間して設けられ、前記第1主面と対向する第2主面を有する第2基板と、
前記第1主面上に設けられ、前記第2基板と離間する第1電極部と、
前記第2主面上に設けられ、前記第1基板及び前記第1電極部と離間し、前記第1電極部とは異なる仕事関数を有する第2電極部と、
前記第1電極部と、前記第2電極部との間に設けられ、ナノ粒子を含む中間部と、
を含むこと
を特徴とする発電素子。
【請求項2】
前記第1低熱伝導部の熱伝導率は、前記第1基板及び前記第2基板の熱伝導率よりも低いこと
を特徴とする請求項1記載の発電素子。
【請求項3】
前記第1低熱伝導部は、ガラス、フリットガラス、樹脂及び空気の少なくとも何れかで構成されていること
を特徴とする請求項1又は2記載の発電素子。
【請求項4】
前記第1低熱伝導部の熱伝導率は、前記第1電極部及び前記第2電極部の熱伝導率よりも低いこと
を特徴とする請求項1~3のうち何れか1項記載の発電素子。
【請求項5】
前記第1低熱伝導部の厚みは、前記第1基板及び前記第2基板の厚みよりも厚いこと
を特徴とする請求項1~4のうち何れか1項記載の発電素子。
【請求項6】
前記第1低熱伝導部の厚みは、前記第1基板及び前記第2基板の厚みよりも薄いこと
を特徴とする請求項1~4のうち何れか1項記載の発電素子。
【請求項7】
前記第1低熱伝導部の厚みは、前記第1電極部及び前記第2電極部の厚みよりも厚いこと
を特徴とする請求項1~6のうち何れか1項記載の発電素子。
【請求項8】
前記積層体の少なくとも一部の側面は、第2低熱伝導部に接していること
を特徴とする請求項1~7のうち何れか1項記載の発電素子。
【請求項9】
前記第1積層部又は前記第2積層部の少なくともいずれかの外周は、第3低熱伝導部に覆われていること
を特徴とする請求項1~8のうち何れか1項記載の発電素子。
【請求項10】
熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電素子を備えた発電装置であって、
前記発電素子は、
第1積層部と、前記第1積層部の上に設けられた第1低熱伝導部と、前記第1低熱伝導部の上に設けられた第2積層部と、を有する積層体を備え、
前記第1積層部及び前記第2積層部は、
第1主面を有する第1基板と、
前記第1基板と第1方向に離間して設けられ、前記第1主面と対向する第2主面を有する第2基板と、
前記第1主面上に設けられ、前記第2基板と離間する第1電極部と、
前記第2主面上に設けられ、前記第1基板及び前記第1電極部と離間し、前記第1電極部とは異なる仕事関数を有する第2電極部と、
前記第1電極部と、前記第2電極部との間に設けられ、ナノ粒子を含む中間部と、
を含むこと
を特徴とする発電装置。
【請求項11】
熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電素子と、前記発電素子を電源に用いて駆動させることが可能な電子部品と、を含む電子機器であって、
前記発電素子は、
第1積層部と、前記第1積層部の上に設けられた第1低熱伝導部と、前記第1低熱伝導部の上に設けられた第2積層部と、を有する積層体を備え、
前記第1積層部及び前記第2積層部は、
第1主面を有する第1基板と、
前記第1基板と第1方向に離間して設けられ、前記第1主面と対向する第2主面を有する第2基板と、
前記第1主面上に設けられ、前記第2基板と離間する第1電極部と、
前記第2主面上に設けられ、前記第1基板及び前記第1電極部と離間し、前記第1電極部とは異なる仕事関数を有する第2電極部と、
前記第1電極部と、前記第2電極部との間に設けられ、ナノ粒子を含む中間部と、
を含むこと
を特徴とする電子機器。
【請求項12】
熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電素子の製造方法であって、
第1積層部及び第2積層部を形成する第1工程と、前記第1積層部の上に第1低熱伝導部を介して前記第2積層部を積層して積層体を形成する第2工程と、を備え、
前記第1工程は、
第1基板の第1主面上に第1電極部を形成し、第2基板の第2主面上に第2電極部を形成する電極部形成工程と、
前記第1電極部と、前記第2電極部との間にナノ粒子を含む中間部を形成する中間部形成工程と、
を有することを特徴とする発電素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電素子、発電装置、電子機器、及び発電素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、熱エネルギーを利用して電気エネルギーを生成する発電素子の開発が盛んに行われている。特に、電極の有する仕事関数の差分を利用した電気エネルギーの生成に関し、例えば特許文献1、2に開示された熱電素子等が提案されている。このような熱電素子は、電極に与える温度差を利用して電気エネルギーを生成する構成に比べて、様々な用途への利用が期待されている。
【0003】
特許文献1には、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電素子であって、第1主面を有する第1基板、及び第1主面上に設けられた第1電極部を有する第1筐体部と、第1主面と第1方向に対向する第2主面を有する第2基板、及び第2主面上に設けられ、第1電極部と離間し、第1電極部とは異なる仕事関数を有する第2電極部を有する第2筐体部と、第1電極部と、第2電極部との間に設けられ、ナノ粒子を含む中間部と、を備え、第1主面は、第1電極部と接し、第2筐体部と離間する第1離間面と、第1離間面と連続して設けられ、第1電極部と離間し、第2筐体部と接する第1接合面と、を有し、第2主面は、第2電極部と接し、第1筐体部と離間する第2離間面と、第2離間面と連続して設けられ、第2電極部と離間し、第1筐体部と接する第2接合面と、を有し、第1方向から見て、中間部は、第1接合面及び第2接合面によって囲まれ、第1接合面は、第2接合面と接する第1基板接合面と、第2電極部と接する第1電極接合面と、を有し、第2接合面は、第1基板接合面と接する第2基板接合面と、第1電極部と接する第2電極接合面と、を有する発電素子が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ゼーベック発電素子の熱伝導を抑制するため、素子の電気及び熱の伝導路を線状にする、又は素子の電気及び熱の伝導路にくびれを設けることで、熱伝導路を狭くすること、及び素子の周りを断熱材で覆うことを第一の特徴とし、発電総量を増加するため、ゼーベック発電素子を複数積層し、多層化による直列配置したゼーベック発電素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許6598339号公報
【特許文献2】特開2018-182272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、熱電子の放出量を決める因子として、電極の温度がある。この温度をより高く維持するには、電極が形成されている基板の温度も高く維持することが望ましい。しかしながら、熱電素子を積層する場合、積層された各基板からの熱放出を抑えることができず、十分に出力電圧の向上が図れないという問題点があった。
【0007】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、出力電圧の向上を図ることができる発電素子、発電装置、電子機器、及び発電素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る発電素子は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電素子であって、第1積層部と、前記第1積層部の上に設けられた第1低熱伝導部と、前記第1低熱伝導部の上に設けられた第2積層部と、を有する積層体を備え、前記第1積層部及び前記第2積層部は、第1主面を有する第1基板と、前記第1基板と第1方向に離間して設けられ、前記第1主面と対向する第2主面を有する第2基板と、前記第1主面上に設けられ、前記第2基板と離間する第1電極部と、前記第2主面上に設けられ、前記第1基板及び前記第1電極部と離間し、前記第1電極部とは異なる仕事関数を有する第2電極部と、前記第1電極部と、前記第2電極部との間に設けられ、ナノ粒子を含む中間部と、を含むことを特徴とする。
【0009】
第2発明に係る発電素子は、第1発明において、前記第1低熱伝導部の熱伝導率は、前記第1基板及び前記第2基板の熱伝導率よりも低いことを特徴とする。
【0010】
第3発明に係る発電素子は、第1発明又は第2発明において、前記第1低熱伝導部は、ガラス、フリットガラス、樹脂及び空気の少なくとも何れかで構成されていることを特徴とする。
【0011】
第4発明に係る発電素子は、第1発明~第3発明の何れかにおいて、前記第1低熱伝導部の熱伝導率は、前記第1電極部及び前記第2電極部の熱伝導率よりも低いことを特徴とする。
【0012】
第5発明に係る発電素子は、第1発明~第4発明の何れかにおいて、前記第1低熱伝導部の厚みは、前記第1基板及び前記第2基板の厚みよりも厚いことを特徴とする。
【0013】
第6発明に係る発電素子は、第1発明~第4発明の何れかにおいて、前記第1低熱伝導部の厚みは、前記第1基板及び前記第2基板の厚みよりも薄いことを特徴とする。
【0014】
第7発明に係る発電素子は、第1発明~第6発明の何れかにおいて、前記第1低熱伝導部の厚みは、前記第1電極部及び前記第2電極部の厚みよりも厚いことを特徴とする。
【0015】
第8発明に係る発電素子は、第1発明~第7発明の何れかにおいて、前記積層体の少なくとも一部の側面は、第2低熱伝導部に接していることを特徴とする。
【0016】
第9発明に係る発電素子は、第1発明~第8発明の何れかにおいて、前記第1積層部又は前記第2積層部の少なくともいずれかの外周は、第3低熱伝導部に覆われていることを特徴とする。
【0017】
第10発明に係る発電装置は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電素子を備えた発電装置であって、前記発電素子は、第1積層部と、前記第1積層部の上に設けられた第1低熱伝導部と、前記第1低熱伝導部の上に設けられた第2積層部と、を有する積層体を備え、前記第1積層部及び前記第2積層部は、第1主面を有する第1基板と、前記第1基板と第1方向に離間して設けられ、前記第1主面と対向する第2主面を有する第2基板と、前記第1主面上に設けられ、前記第2基板と離間する第1電極部と、前記第2主面上に設けられ、前記第1基板及び前記第1電極部と離間し、前記第1電極部とは異なる仕事関数を有する第2電極部と、前記第1電極部と、前記第2電極部との間に設けられ、ナノ粒子を含む中間部と、を含むことを特徴とする。
【0018】
第11発明に係る電子機器は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電素子と、前記発電素子を電源に用いて駆動させることが可能な電子部品と、を含む電子機器であって、前記発電素子は、第1積層部と、前記第1積層部の上に設けられた第1低熱伝導部と、前記第1低熱伝導部の上に設けられた第2積層部と、を有する積層体を備え、前記第1積層部及び前記第2積層部は、第1主面を有する第1基板と、前記第1基板と第1方向に離間して設けられ、前記第1主面と対向する第2主面を有する第2基板と、前記第1主面上に設けられ、前記第2基板と離間する第1電極部と、前記第2主面上に設けられ、前記第1基板及び前記第1電極部と離間し、前記第1電極部とは異なる仕事関数を有する第2電極部と、前記第1電極部と、前記第2電極部との間に設けられ、ナノ粒子を含む中間部と、を含むことを特徴とする。
【0019】
第12発明に係る発電素子の製造方法は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電素子の製造方法であって、第1積層部及び第2積層部を形成する第1工程と、前記第1積層部の上に第1低熱伝導部を介して第2積層部を積層して積層体を形成する第2工程と、を備え、前記第1工程は、第1基板の第1主面上に第1電極部を形成し、第2基板の第2主面上に第2電極部を形成する電極部形成工程と、前記第1電極部と、前記第2電極部との間にナノ粒子を含む中間部を形成する中間部形成工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
第1発明~第8発明によれば、積層体は、第1積層部と、第1積層部の上に設けられた第1低熱伝導部と、第1低熱伝導部の上に設けられた第2積層部とを有する。このため、第1積層部及び第2積層部に含まれる基板のうち、第1低熱伝導部と接している面からの熱放出を抑えることができる。これにより、出力電圧の向上を図ることができる。
【0021】
特に第2発明によれば、第1低熱伝導部の熱伝導率は、第1基板及び第2基板の熱伝導率よりも低い。このため、第1基板及び第2基板上に形成された電極部からの熱放出が妨げられ、ひいては第1電極部又は第2電極部から第1基板及び第2基板への熱放出が妨げられる。これにより、第1電極部又は第2電極部の温度が高く維持されることで第1電極部又は第2電極部からの熱電子の放出量が多い状態が維持されるため、発電素子による出力電圧の向上を図ることができる。
【0022】
特に第3発明によれば、第1低熱伝導部は、ガラス、フリットガラス、樹脂及び空気の少なくとも何れかで構成されている。このため、第1基板及び第2基板からの熱放出が妨げられ、ひいては第1電極部又は第2電極部から第1基板及び第2基板への熱放出が妨げられる。これにより、第1電極部又は第2電極部の温度が高く維持されることで第1電極部又は第2電極部からの熱電子の放出量が多い状態が維持されるため、発電素子による出力電圧の向上を図ることができる。
【0023】
特に第4発明によれば、第1低熱伝導部の熱伝導率は、第1電極部及び第2電極部の熱伝導率よりも低い。このため、第1基板あるいは第2基板から外部に熱が放出される際、第1電極部あるいは第2電極部側に熱が放出され易くなる。これにより、発電素子の発電効率の更なる向上を図ることができる。
【0024】
特に第5発明によれば、第1低熱伝導部の厚みは、第1基板及び第2基板の厚みよりも厚い。このため、第1基板及び第2基板の熱が外部に放出されにくい。これにより、第1基板及び第2基板の温度を維持することができる。
【0025】
特に第6発明によれば、第1低熱伝導部の厚みは、第1基板及び第2基板の厚みよりも薄い。このため、発電素子の厚みの増加が抑制される。これにより、第1積層部又は第2積層部の積層数を増加させて出力電圧の向上を図ることができる。
【0026】
特に第7発明によれば、第1低熱伝導部の厚みは、第1電極部及び第2電極部の厚みよりも厚い。このため、第1電極部及び第2電極部の熱が外部に放出されにくい。これにより、第1電極部及び第2電極部の温度を維持することができる。
【0027】
特に第8発明によれば積層体の少なくとも一部の側面は、第2低熱伝導部に接している。このため、第1基板及び第2基板からの熱放出が妨げられ、ひいては第1電極部又は第2電極部から第1基板及び第2基板への熱放出が妨げられる。これにより、第1電極部又は第2電極部からの熱電子の放出量が多い状態が維持されるため、発電素子による出力電圧の更なる向上を図ることができる。
【0028】
特に第9発明によれば、第1積層部又は第2積層部の少なくともいずれかの外周は、第3低熱伝導部に覆われている。このため、第1基板及び第2基板からの熱放出が妨げられ、ひいては第1電極部又は第2電極部から第1基板及び第2基板への熱放出が妨げられる。これにより、第1電極部又は第2電極部からの熱電子の放出量が多い状態が維持されるため、発電素子による出力電圧の更なる向上を図ることができる。
【0029】
第10発明によれば、積層体は、第1積層部と、第1積層部の上に設けられた第1低熱伝導部と、第1低熱伝導部の上に設けられた第2積層部とを有する。このため、第1積層部及び第2積層部に含まれる基板のうち、第1低熱伝導部と接している面からの熱放出を抑えることができる。これにより、出力電圧の向上を図ることができる。
【0030】
第11発明によれば、積層体は、第1積層部と、第1積層部の上に設けられた第1低熱伝導部と、第1低熱伝導部の上に設けられた第2積層部とを有する。このため、第1積層部及び第2積層部に含まれる基板のうち、第1低熱伝導部と接している面からの熱放出を抑えることができる。これにより、出力電圧の向上を図ることができる。
【0031】
特に第12発明によれば、発電素子は、第1発明から第8発明の発電素子の製造方法により製造される。このため、第1積層部及び第2積層部に含まれる基板のうち、第1低熱伝導部と接している面からの熱放出を抑えることができる。これにより、出力電圧の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1(a)は、第1実施形態における発電素子及び発電装置の一例を示す模式断面図であり、
図1(b)は、
図1(a)におけるA-A線に沿った模式断面図である。
【
図2】
図2は、中間部の一例を示す模式断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態における発電素子の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4(a)~(b)は、第1実施形態における発電素子の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【
図5】
図5(a)は、第2実施形態における発電素子の一例を示す模式断面図であり、
図5(b)は、第3実施形態における発電素子の一例を示す模式断面図であり、
図5(c)は、
図5(b)におけるB-B線に沿った模式断面図である。
【
図6】
図6(a)~
図6(d)は、発電素子を備えた電子機器の例を示す模式ブロック図であり、
図6(e)~
図6(h)は、発電素子を含む発電装置を備えた電子機器の例を示す模式ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態としての発電素子、発電装置、電子機器、及び発電素子の製造方法それぞれの一例について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において、各積層部が積層される高さ方向を第1方向Zとし、第1方向Zと交差、例えば直交する1つの平面方向を第2方向Xとし、第1方向Z及び第2方向Xのそれぞれと交差、例えば直交する別の平面方向を第3方向Yとする。また、各図における構成は、説明のため模式的に記載されており、例えば各構成の大きさや、構成毎における大きさの対比等については、図とは異なってもよい。
【0034】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における発電素子1、発電装置100の一例を示す模式図である。
図1に示すように、発電素子1は、第1方向Zに積層された複数の積層部10を有する積層体2を備える。発電素子1を構成する積層部10の個数は、必要な電力を考慮して適宜増減すればよく、特に限定されるものではない。
【0035】
<発電装置100>
図1(a)に示すように、発電装置100は、発電素子1と、第1配線101と、第2配線102とを備える。発電素子1は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する。このような発電素子1を備えた発電装置100は、例えば、図示しない熱源に搭載又は設置され、熱源の熱エネルギーを元として、発電素子1が発生させた電気エネルギーを、第1配線101及び第2配線102を介して負荷Rへ出力する。負荷Rの一端は第1配線101と電気的に接続され、他端は第2配線102と電気的に接続される。負荷Rは、例えば電気的な機器を示している。負荷Rは、発電装置100を主電源又は補助電源に用いて駆動される。
【0036】
各積層部10同士は、第1端子111と第2端子112との間において直接電気的に接続されている。なお、少なくとも一部の積層部10同士は、図示しない外部の端子電極あるいは外部配線を介して、電気的に接続されてもよい。
【0037】
発電素子1の熱源としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の電子デバイス又は電子部品、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子、自動車等のエンジン、工場の生産設備、人体、太陽光、及び環境温度等を利用することができる。例えば、電子デバイス、電子部品、発光素子、エンジン、及び生産設備等は人工熱源である。人体、太陽光、及び環境温度等は自然熱源である。発電素子1を備えた発電装置100は、例えばIoT(Internet of Things)デバイス及びウェアラブル機器等のモバイル機器や自立型センサ端末の内部に設けることができ、電池の代替又は補助として用いることができる。さらに、発電装置100は、太陽光発電等のような、より大型の発電装置への応用も可能である。
【0038】
<発電素子1>
発電素子1は、例えば、上記人工熱源が発した熱エネルギー、又は上記自然熱源が持つ熱エネルギーを電気エネルギーに変換し、電流を生成する。発電素子1は、発電装置100内に設けるだけでなく、発電素子1自体を、上記モバイル機器や上記自立型センサ端末等の内部に設けることもできる。この場合、発電素子1自体が、上記モバイル機器又は上記自立型センサ端末等の、電池の代替部品又は補助部品となる。
【0039】
発電素子1は、複数の積層部10を有する積層体2を備える。各積層部10は、基板11と、第1電極部12aと、第2電極部12bと、中間部14とを含む。なお、各積層部10は、支持部13を含んでもよい。積層部10間には、第1低熱伝導部21が配置される。
【0040】
<基板11>
基板11は、第1基板11aと、第2基板11bとを有する。第1基板11aは、第1方向Zと交わる第1主面11af及び第1積層面11asを有する。第1主面11afは、第1基板11aにおいて、第2基板11b側に位置する。第2基板11bは、第1方向Zと交わる第2主面11bf及び第2積層面11bsを有する。第2主面11bfは、第2基板11bにおいて、第1基板11a側に位置する。なお、以下の説明では、第1方向Zにおいて第2基板11bが第1基板11aよりも上方側にあることとする。
【0041】
基板11の材料としては、絶縁性を有する板状の材料を選ぶことができる。絶縁性の材料の例としては、シリコン、石英、パイレックス(登録商標)等のガラス、及び絶縁性樹脂等を挙げることができる。なお、基板11には、鉄、アルミニウム等の導電性を有する金属材料、Si、GaN等の導電性を有する半導体の他、導電性高分子材料を用いてもよい。基板11の形状は、正方形、長方形、その他、円盤状であってもよい。また、基板18は、絶縁性の材料、半導体材料、金属材料が混合された構成であってもよい。
【0042】
なお、基板11は半導体であり、第1主面11af及び第2主面11bfの少なくとも何れかに設けられた縮退部と、非縮退部とを有してもよい。このため、第1電極部12a等と配線等の他の構成との接触抵抗を低減させることができる。これにより、発電素子1全体の抵抗の増加を抑制することが可能となる。
【0043】
<第1電極部12a、第2電極部12b>
第1電極部12aは、第1主面11af上に接して設けられる。第1電極部12aは、第2基板11bと離間する。第2電極部12bは、第2主面11bf上に接して設けられる。第2電極部12bは、第1基板11a及び第1電極部12aと離間して対向する。第2電極部12bは、第1電極部12aとは異なる仕事関数を有する。
【0044】
第1電極部12aは、例えば図示しない第1基板11aに挿通された配線、第1低熱伝導部21、他の積層部10及び第2端子112を介して第2配線102と電気的に接続される。第2電極部12bは、例えば図示しない第2基板11bに挿通された配線、第1低熱伝導部21、他の積層部10及び第1端子111を介して第1配線101と電気的に接続される。なお、第1端子111及び第2端子112は、省略してもよい。また、図示しない配線の配置箇所等は、任意である。
【0045】
発電素子1では、仕事関数差を有する第1電極部12aと第2電極部12bとの間に発生する、絶対温度による電子放出現象が利用できる。このため、発電素子1は、絶対温度が高いほど、第1電極部12aあるいは第2電極部12bから放出される電子の量が増加する。
【0046】
第1電極部12aの材料、及び第2電極部12bの材料は、例えば、以下に示す金属から選ぶことができる。
白金(Pt)
タングステン(W)
アルミニウム(Al)
チタン(Ti)
ニオブ(Nb)
モリブデン(Mo)
タンタル(Ta)
レニウム(Re)
発電素子1では、第1電極部12aと第2電極部12bとの間に仕事関数差が生じればよい。したがって、第1電極部12a及び第2電極部12bの材料には、上記以外の金属を選ぶことが可能である。第1電極部12a及び第2電極部12bの材料として、金属のほか、合金、金属間化合物、及び金属化合物を選ぶことも可能である。金属化合物は、金属元素と非金属元素とが化合したものである。このような金属化合物の例としては、例えば六ホウ化ランタン(LaB6)を挙げることができる。
【0047】
<支持部13>
支持部13は、第1基板11aと、第2基板11bとの間に設けられる。支持部13は、例えば第1主面11af及び第2主面11bfと連接する。支持部13は、例えば第1電極部12a及び第2電極部12bと離間しているが、第1電極部12a及び第2電極部12bと接してもよい。
【0048】
なお、支持部13は、基板11の一部が酸化したものであってもよい。具体的には、シリコンより構成された基板11を酸化させて形成されたシリコン酸化膜の一部を支持部13としてもよい。この場合、新たに支持部13を形成する場合に比べて、支持部13の高さを高精度に制御することができ、電極間ギャップGの大きさを高精度に設定することができる。これにより、発電効率の安定化を図ることが可能となる。
【0049】
支持部13の材料としては、絶縁性を有する材料を選ぶことができる。絶縁性の材料の例としては、シリコン、石英、パイレックス(登録商標)等のガラス、及び絶縁性樹脂等を挙げることができる。上記のほか、支持部13は、例えば、フレキシブルなフィルム状でもよく、PET(polyethylene terephthalate)、PC(polycarbonate)、及びポリイミド等を用いることができる。
【0050】
<中間部14>
図2は、中間部14の一例を示す模式断面図である。
図1(a)に示すように、中間部14は、第1電極部12aと第2電極部12bとの間に設けられる。中間部14は、ナノ粒子141を含む。中間部14は、例えば
図1(b)に示すように、支持部13と、第1封止部31と、第2封止部32により積層体2内に保持される。
【0051】
第1電極部12aと第2電極部12bとの間には、第1方向Zに沿って電極間ギャップGが設定される。発電素子1では、電極間ギャップGは、支持部13の第1方向Zに沿った厚さによって設定される。電極間ギャップGの幅の一例は、例えば、10μm以下の有限値である。電極間ギャップGの幅は狭いほど、発電素子1の発電効率が向上する。また、電極間ギャップGの幅は狭いほど、発電素子1の第1方向Zに沿った厚さを薄くできる。このため、例えば、電極間ギャップGの幅は狭い方がよい。電極間ギャップGの幅は、例えば、10nm以上100nm以下であることがより好ましい。なお、電極間ギャップGの幅と、支持部13の、第1方向Zに沿った厚さとは、ほぼ等価である。
【0052】
中間部14は、例えば、複数のナノ粒子141と、溶媒142と、を含む。複数のナノ粒子141は、溶媒142内に分散されている。中間部14は、例えば、ナノ粒子141が分散された溶媒142を、ギャップ部140内に充填することで得られる。ナノ粒子141の粒子径は、電極間ギャップGよりも小さい。ナノ粒子141の粒子径は、例えば、電極間ギャップGの1/10以下の有限値とされる。ナノ粒子141の粒子径を、電極間ギャップGの1/10以下とすると、ギャップ部140内に、ナノ粒子141を含む中間部14を形成しやすくなる。これにより、発電素子1の生産に際し、作業性が向上する。
【0053】
ナノ粒子141は、例えば導電物を含む。ナノ粒子141の仕事関数の値は、例えば、第1電極部12aの仕事関数の値と、第2電極部12bの仕事関数の値との間にあるが、第1電極部12aの仕事関数の値と第2電極部12bの仕事関数の値との間以外であってもよい。例えば、ナノ粒子141の仕事関数の値は、3.0eV以上5.5eV以下の範囲とされる。これにより、中間部14内にナノ粒子141がない場合に比較して、電気エネルギーの発生量を、さらに増加させることが可能となる。
【0054】
ナノ粒子141の材料の例としては、金及び銀の少なくとも1つを選ぶことができる。なお、ナノ粒子141の材料には、金及び銀以外の導電性材料を選ぶことも可能である。
【0055】
ナノ粒子141の粒子径は、例えば、2nm以上10nm以下である。また、ナノ粒子141は、例えば、平均粒径(例えばD50)3nm以上8nm以下の粒子径を有してもよい。平均粒径は、例えば粒度分布計測器を用いることで、測定することができる。粒度分布計測器としては、例えば、レーザー回折散乱法を用いた粒度分布計測器(例えばMicrotracBEL製Nanotrac WaveII-EX150等)を用いればよい。
【0056】
ナノ粒子141は、その表面に、例えば絶縁膜141aを有する。絶縁膜141aの材料の例としては、絶縁性金属化合物及び絶縁性有機化合物の少なくとも1つを選ぶことができる。絶縁性金属化合物の例としては、例えば、シリコン酸化物及びアルミナ等を挙げることができる。絶縁性有機化合物の例としては、アルカンチオール(例えばドデカンチオール)等を挙げることができる。絶縁膜141aの厚さは、例えば20nm以下の有限値である。このような絶縁膜141aをナノ粒子141の表面に設けておくと、電子eは、例えば、第1電極部12aとナノ粒子141との間、並びにナノ粒子141と第2電極部12bとの間を、トンネル効果を利用して移動できる。このため、例えば、発電素子1の発電効率の向上が期待できる。
【0057】
溶媒142には、例えば、沸点が100℃以上の液体を用いることができる。このため、室温(例えば15℃~35℃)以上の環境下において、発電素子1を用いた場合であっても、溶媒142の気化を抑制することができる。これにより、溶媒142の気化に伴う発電素子1の劣化を抑制することができる。液体の例としては、有機溶媒及び水の少なくとも1つを選ぶことができる。有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、トルエン、キシレン、テトラデカン、及びアルカンチオール等を挙げることができる。なお、溶媒142は、電気的抵抗値が高く、絶縁性である液体がよい。
【0058】
なお、中間部14は、溶媒142を含まず、ナノ粒子141のみを含むようにしてもよい。中間部14が、ナノ粒子141のみを含むことで、例えば、発電素子1を、高温環境下で用いる場合であっても、溶媒142の気化を考慮する必要が無い。これにより、高温環境下における発電素子1の劣化を抑制することが可能となる。また、中間部14は、例えば溶媒142の代わりに、ナノ粒子141を支持する絶縁体を含んでもよい。
【0059】
<第1低熱伝導部21>
第1低熱伝導部21は、積層部10間に配置される。具体的には、
図1(a)に示すように、第1方向Zにおける下方側に位置する積層部10の第2基板11bと、第1方向Zにおける上方側に位置する積層部10の第1基板11aとの間に配置される。
【0060】
第1低熱伝導部21は、第2方向X及び第3方向Yに広がる平板状の部材であり、第1積層面11as及び第2積層面11bs全体を覆うように配置されている。第1低熱伝導部21は、第1基板11a及び第2基板11bを覆うことにより、基板11から外部に熱が放出することを防止するために設けられている。第1低熱伝導部21の厚みは、第1基板11a及び第2基板11bの厚みよりも厚い。なお、第1低熱伝導部21の厚みは、第1基板11a及び第2基板11bの厚みよりも薄くてもよい。また、第1低熱伝導部21の厚みは、第1電極部12a及び第2電極部12bの厚みよりも厚い。第1低熱伝導部21の厚みが、第1電極部12a及び第2電極部12bの厚みよりも薄い場合には、基板11から外部に熱が放出し易くなり、基板11からの熱放出を抑えることができず、出力電圧の向上を図ることが難しい。
【0061】
第1低熱伝導部21の熱伝導率は、第1基板11a及び第2基板11bの熱伝導率よりも低い。また、第1低熱伝導部21の熱伝導率は、第1電極部12a及び第2電極部12bの熱伝導率よりも低い。第1低熱伝導部21の熱伝導率が、第1基板11a及び第2基板11bの熱伝導率よりも高い、あるいは第1低熱伝導部21の熱伝導率が、第1電極部12a及び第2電極部12bの熱伝導率よりも高い場合には、基板11から外部に熱が放出し易くなり、基板11からの熱放出を抑えることができず、出力電圧の向上を図ることが難しい。
【0062】
第1低熱伝導部21は、絶縁性を有し、例えばガラス、フリットガラス、樹脂又は空気の何れかにより構成されている。なお、第1低熱伝導部21は、これらに限定されることなく、熱伝導率が低い材料であれば如何なる材料により構成されてもよい。熱伝導率が低い材料とは、具体的にはJIS R1611により規定される熱伝導率として、2.0W/(m・k)以下の値であることが望ましい。熱伝導率が低い材料としては、例えば、セラミック、タイル、陶器等であればよく、ポリウレタン、ポリイミド、スチレン、塩化ビニル等の樹脂材料、ガラス、フリットガラス、空気により構成されていることが好ましい。例えば、基板11がシリコン(JIS R1611に準じて25℃で測定される熱伝導率が、150W/(m・K)程度)により構成される場合、第1低熱伝導部21はエポキシ(JIS R1611に準じて25℃で測定される熱伝導率が、0.8W/(m・K)程度)により構成されることが好ましい。
【0063】
第1低熱伝導部21は、第1積層面11as及び第2積層面11bs全体を覆うのではなく、第1積層面11as及び第2積層面11bsの一部を覆うこととしてもよい。但し、第1低熱伝導部21が第1積層面11as及び第2積層面11bsを覆う面積が多いほど、積層部10間の断熱性(熱絶縁性)を高め、積層部10の絶対温度を高い状態に維持することができる。また、第1低熱伝導部21は、複数の低熱伝導部材から構成され、この低熱伝導部材が離間した状態で積層部10間に配置されてもよい。
【0064】
<発電素子1の動作>
熱エネルギーが発電素子1に与えられると、第1電極部12aと第2電極部12bとの間に電流が発生し、熱エネルギーが電気エネルギーに変換される。第1電極部12aと第2電極部12bとの間に発生する電流量は、熱エネルギーに依存する他、第1電極部12aの仕事関数と、第2電極部12bの仕事関数との差、積層部10の温度に依存する。
【0065】
発生する電流量は、例えば、第1電極部12aと第2電極部12bとの仕事関数差を大きくすること、電極間ギャップを小さくすること、積層部10の絶対温度を上昇させること等により増加させることができる。
【0066】
<<発電素子1の製造方法>>
次に、発電素子1の製造方法の一例を、説明する。
図3は、第1実施形態における発電素子1の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図4(a)~
図4(b)は、第1実施形態における発電素子1の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【0067】
本実施形態における発電素子1の製造方法は、積層部形成工程S110としての第1工程と、積層体形成工程S120としての第2工程とを備える。積層部形成工程S110では、第1積層部10a及び第2積層部10bを形成し、積層体形成工程S120では、第1積層部10aの上に第1低熱伝導部21を介して第2積層部10bを積層して積層体2を形成する。積層部形成工程S110は、電極部形成工程と中間部形成工程とを有する。
【0068】
<積層部形成工程:S110>
<<電極部形成工程>>
先ず、積層部形成工程S110では、第1主面11af上に第1電極部12aを形成し、第2主面11bf上に第2電極部12bを形成する。なお、第1電極部12a及び第2電極部12bを形成する順番は、任意である。第1電極部12a及び第2電極部12bは、例えば、スパッタリング法又は蒸着法を用いて形成されるほか、例えば、スクリーン印刷法、インクジェット法、及びスプレイ印刷法等を用いて形成してもよい。
【0069】
<<支持部形成工程>>
次に、第1基板11aの第1主面11af上に支持部13を形成する。なお、支持部13は、第2基板11bの第2主面11bf上に形成されてもよい。支持部13は、例えば、スクリーン印刷法、インクジェット法、及びスプレイ印刷法等を用いて形成してもよい。
【0070】
<<中間部形成工程>>
次に、支持部13を介して、第1基板11aの上に、第2基板11bを積層する。これにより、第1電極部12a及び第2電極部12bは、電極間ギャップGの幅で離間した状態を保つ。その後、第1電極部12aと第2電極部12bとの間に、ナノ粒子141を含む中間部14を形成する。中間部14の形成の際には、例えばインクジェット法を用いて、第1電極部12aと第2電極部12bとの間に、中間部14を形成する。例えば積層された各基板11a、11bを中間部14の原液に浸し、毛細管現象によってギャップ部140に中間部14を形成してもよい。中間部14を形成した後、例えば各基板11a、11bの側面側に第1封止部31と、第2封止部32を形成することで、ギャップ部140が閉塞される。なお、中間部14として、例えば予めナノ粒子141を分散させた溶媒142が用いられる。
【0071】
<積層体形成工程:S120>
次に、第1低熱伝導部21を介して積層部10同士を第1方向Zに積層する(積層体形成工程S120)。積層体形成工程S120では、例えば圧着接合法を用いて、第1方向Zにおける下方側の積層部10(第1積層部10a)の上に、第1低熱伝導部21を介して積層部10(第2積層部10b)を連接させる。第1低熱伝導部21を介して複数の積層部10を積層させることにより、
図4(b)に示すように、積層体2が形成される。
【0072】
以上、各工程S110~S120の処理を行うことにより、第1低熱伝導部21を介して複数の積層部10が積層された積層体2を備える発電素子1が形成される。なお、上述した各工程S110~S120の処理を複数回実施してもよい。
【0073】
本実施形態によれば、第1積層部10aと第2積層部10bとが第1低熱伝導部21を介して積層されている。このため、第1積層部10a及び第2積層部10bに含まれる基板のうち、第1低熱伝導部21と接している面からの熱放出を抑えることができる。これにより、出力電圧の向上を図ることができる。
【0074】
また、本実施形態によれば、第1低熱伝導部21の熱伝導率は、第1基板11a及び第2基板11bの熱伝導率よりも低い。このため、第1基板11a及び第2基板11b上に形成された電極部12からの熱放出が妨げられ、ひいては第1電極部12a又は第2電極部12bから第1基板11a及び第2基板11bへの熱放出が妨げられる。これにより、第1電極部12a又は第2電極部12bの温度が高い状態に維持されることで第1電極部12a又は第2電極部12bからの熱電子の放出量が多い状態が維持されるため、発電素子1による出力電圧の向上を図ることができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、第1低熱伝導部21は、ガラス、フリットガラス、樹脂及び空気の少なくとも何れかで構成されている。このため、第1基板11a及び第2基板11bの材料であるガラスやシリコンよりも熱伝導率が低くなり、第1基板11a及び第2基板11bからの熱放出が妨げられ、ひいては第1電極部12a又は第2電極部12bから第1基板11a及び第2基板11bへの熱放出が妨げられる。これにより、第1電極部12a又は第2電極部12bの温度が高い状態に維持されることで第1電極部12a又は第2電極部12bからの熱電子の放出量が多い状態が維持されるため、発電素子1による出力電圧の向上を図ることができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、第1低熱伝導部21の熱伝導率は、第1電極部12a及び第2電極部12bの熱伝導率よりも低い。このため、第1基板11aあるいは第2基板11bから外部に熱が放出される際、第1電極部12aあるいは第2電極部12b側に熱が放出され易くなる。これにより、発電素子1の発電効率の更なる向上を図ることができる。
【0077】
また、本実施形態によれば、第1低熱伝導部21の厚みは、第1基板11a及び第2基板11bの厚みよりも厚い。このため、第1基板11a及び第2基板11bの熱が外部に放出されにくい。これにより、第1基板11a及び第2基板11bの温度を維持することができる。
【0078】
また、本実施形態によれば、第1低熱伝導部21の厚みは、第1基板11a及び第2基板11bの厚みよりも薄い。このため、発電素子1の厚みの増加が抑制される。これにより、第1積層部10a又は第2積層部10bの積層数を増加させて出力電圧の向上を図ることができる。
【0079】
また、本実施形態によれば、第1低熱伝導部21の厚みは、第1電極部12a及び第2電極部12bの厚みよりも厚い。このため、第1電極部12a及び第2電極部12bの熱が外部に放出されにくい。これにより、第1電極部12a及び第2電極部12bの温度を維持することができる。
【0080】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態における発電素子1、発電装置100について説明する。上述した第1実施形態との違いは、積層体2の少なくとも一部の側面が第2低熱伝導部21aに接している点であり、その他の点は共通している。従って、以下の説明では、第1実施形態と異なっている点を主に説明し、共通する部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0081】
図5(a)は、第2実施形態における発電素子1の一例を示す模式図である。
図5(a)に示すように、積層体2の一部である第1積層部10aの外周の一部が、絶縁性を有する第2低熱伝導部21aに接している。即ち、第1実施形態と比較して、積層部10間に第1低熱伝導部21が配置された上で、第2低熱伝導部21aが設けられている分だけ第1電極部12a又は第2電極部12bから第1基板11a及び第2基板11bへの熱放出が妨げられる。なお、第2低熱伝導部21aは、第1低熱伝導部21と同様に、熱伝導率が低い材料により構成されていればよい。
【0082】
なお、第2低熱伝導部21aが積層体2の側面を覆う範囲は、特に限定されず、積層体2の少なくとも一部の側面が第2低熱伝導部21aに接しているのであれば、如何なる範囲であってもよい。また、第2低熱伝導部21aは、一体的に積層体2の側面に接するのではなく、複数の低熱伝導部材が不連続な状態で積層体2の側面に接してもよい。また、第2低熱伝導部21aは、第1低熱伝導部21と一体的に形成されてもよい。また、第2低熱伝導部21aは、第1低熱伝導部21を構成する材料と同じ材料により構成されていてもよく、又は異なる材料により構成されてもよい。更に、第2低熱伝導部21aは複数の低熱伝導部材から構成されてもよい。
【0083】
本実施形態によれば、積層体2の少なくとも一部の側面は、第2低熱伝導部21aに接している。このため、第1基板11a及び第2基板11bからの熱放出が妨げられ、ひいては第1電極部12a又は第2電極部12bから第1基板11a及び第2基板11bへの熱放出が妨げられる。これにより、第1電極部12a又は第2電極部12bからの熱電子の放出量が多い状態が維持されるため、発電素子1による出力電圧の向上を図ることができる。
【0084】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態における発電素子1、発電装置100について説明する。上述した第1実施形態と、第2実施形態との違いは、第1積層部10a又は第2積層部10bの少なくともいずれかの外周が、第3低熱伝導部21bに覆われている点であり、その他の点は共通している。従って、以下の説明では、第1、第2実施形態と異なっている点を主に説明し、共通する部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0085】
図5(b)、(c)は、第3実施形態における発電素子1の一例を示す模式図である。
図5(b)、(c)に示すように、第1積層部10aの外周全体及び第2積層部10bの外周の一部は、絶縁性を有する第3低熱伝導部21bに覆われている。即ち、第1実施形態及び第2実施形態と比較して、第3低熱伝導部21bが設けられている分だけ第1電極部12a又は第2電極部12bから第1基板11a及び第2基板11bへの熱放出が妨げられる。なお、第3低熱伝導部21bは、第1低熱伝導部21と同様に、熱伝導率が低い材料により構成されていればよい。
【0086】
なお、第3低熱伝導部21bが積層体2の側面を覆う範囲は、特に限定されず、第1積層部10aの外周全体のみならず第2積層部10bの外周全体を覆ってもよい。また、第3低熱伝導部21bは、連続的に積層体2の側面を覆うのではなく、積層体2の側面の一部が第3低熱伝導部21bに覆われていない部分があってもよい。また、第3低熱伝導部21bは、第1低熱伝導部21あるいは第2低熱伝導部21aと一体的に形成されてもよい。また、第3低熱伝導部21bは、第1低熱伝導部21あるいは第2低熱伝導部21aを構成する材料と同じ材料により構成されていてもよく、又は異なる材料により構成されてもよい。更に、第3低熱伝導部21bは複数の低熱伝導部材から構成されてもよい。
【0087】
本実施形態によれば、第1積層部10a又は第2積層部10bの少なくともいずれかの外周が、第3低熱伝導部21bに覆われている。このため、第1基板11a及び第2基板11bを含む積層部10を周囲と断熱して積層部10の温度を高い状態に維持することができる。即ち、第1基板11a及び第2基板11bからの熱放出が妨げられ、ひいては第1電極部12a又は第2電極部12bから第1基板11a及び第2基板11bへの熱放出が妨げられる。これにより、第1電極部12a又は第2電極部12bからの熱電子の放出量が多い状態が維持されるため、積層部10内における発電量を増加させることができ、発電素子1による出力電圧の更なる向上を図ることができる。なお、第3低熱伝導部21bは、積層体2の側面全体を覆ってもよい。この場合には、積層体2の一部が第3低熱伝導部21bにより覆われる場合よりも長期に亘って積層部10の温度を高い状態に維持することができるため、発電素子1による出力電圧の更なる向上を図ることができる。
【0088】
(第4実施形態:電子機器500)
<電子機器500>
上述した発電素子1及び発電装置100は、例えば電子機器に搭載することが可能である。以下、電子機器の実施形態のいくつかを説明する。
【0089】
図6(a)~
図6(d)は、発電素子1を備えた電子機器500の例を示す模式ブロック図である。
図6(e)~
図6(h)は、発電素子1を含む発電装置100を備えた電子機器500の例を示す模式ブロック図である。
【0090】
図6(a)に示すように、電子機器500(エレクトリックプロダクト)は、電子部品501(エレクトロニックコンポーネント)と、主電源502と、補助電源503と、を備えている。電子機器500及び電子部品501のそれぞれは、電気的な機器(エレクトリカルデバイス)である。
【0091】
電子部品501は、主電源502を電源に用いて駆動される。電子部品501の例としては、例えば、CPU、モーター、センサ端末、及び照明等を挙げることができる。電子部品501が、例えばCPUである場合、電子機器500には、内蔵されたマスター(CPU)によって制御可能な電子機器が含まれる。電子部品501が、例えば、モーター、センサ端末、及び照明等の少なくとも1つを含む場合、電子機器500には、外部にあるマスター、あるいは人によって制御可能な電子機器が含まれる。
【0092】
主電源502は、例えば電池である。電池には、充電可能な電池も含まれる。主電源502のプラス端子(+)は、電子部品501のVcc端子(Vcc)と電気的に接続される。主電源502のマイナス端子(-)は、電子部品501のGND端子(GND)と電気的に接続される。
【0093】
補助電源503は、発電素子1である。発電素子1は、上述した発電素子1の少なくとも1つを含む。発電素子1のアノード(例えば第1電極部12a)は、電子部品501のGND端子(GND)、又は主電源502のマイナス端子(-)、又はGND端子(GND)とマイナス端子(-)とを接続する配線と、電気的に接続される。発電素子1のカソード(例えば第2電極部12b)は、電子部品501のVcc端子(Vcc)、又は主電源502のプラス端子(+)、又はVcc端子(Vcc)とプラス端子(+)とを接続する配線と、電気的に接続される。電子機器500において、補助電源503は、例えば主電源502と併用され、主電源502をアシストするための電源や、主電源502の容量が切れた場合、主電源502をバックアップするための電源として使うことができる。主電源502が充電可能な電池である場合には、補助電源503は、さらに、電池を充電するための電源としても使うことができる。
【0094】
図6(b)に示すように、主電源502は、発電素子1とされてもよい。発電素子1のアノードは、電子部品501のGND端子(GND)と電気的に接続される。発電素子1のカソードは、電子部品501のVcc端子(Vcc)と電気的に接続される。
図6(b)に示す電子機器500は、主電源502として使用される発電素子1と、発電素子1を用いて駆動されることが可能な電子部品501と、を備えている。発電素子1は、独立した電源(例えばオフグリッド電源)である。このため、電子機器500は、例えば自立型(スタンドアローン型)にできる。しかも、発電素子1は、環境発電型(エナジーハーベスト型)である。
図6(b)に示す電子機器500は、電池の交換が不要である。
【0095】
図6(c)に示すように、電子部品501が発電素子1を備えていてもよい。発電素子1のアノードは、例えば、回路基板(図示は省略する)のGND配線と電気的に接続される。発電素子1のカソードは、例えば、回路基板(図示は省略する)のVcc配線と電気的に接続される。この場合、発電素子1は、電子部品501の、例えば補助電源503として使うことができる。
【0096】
図6(d)に示すように、電子部品501が発電素子1を備えている場合、発電素子1は、電子部品501の、例えば主電源502として使うことができる。
【0097】
図6(e)~
図6(h)のそれぞれに示すように、電子機器500は、発電装置100を備えていてもよい。発電装置100は、電気エネルギーの源として発電素子1を含む。
【0098】
図6(d)に示した実施形態は、電子部品501が主電源502として使用される発電素子1を備えている。同様に、
図6(h)に示した実施形態は、電子部品501が主電源として使用される発電装置100を備えている。これらの実施形態では、電子部品501が、独立した電源を持つ。このため、電子部品501を、例えば自立型とすることができる。自立型の電子部品501は、例えば、複数の電子部品を含み、かつ、少なくとも1つの電子部品が別の電子部品と離れているような電子機器に有効に用いることができる。そのような電子機器500の例は、センサである。センサは、センサ端末(スレーブ)と、センサ端末から離れたコントローラ(マスター)と、を備えている。センサ端末及びコントローラのそれぞれは、電子部品501である。センサ端末が、発電素子1又は発電装置100を備えていれば、自立型のセンサ端末となり、有線での電力供給の必要がない。発電素子1又は発電装置100は環境発電型であるので、電池の交換も不要である。センサ端末は、電子機器500の1つと見なすこともできる。電子機器500と見なされるセンサ端末には、センサのセンサ端末に加えて、例えば、IoTワイヤレスタグ等が、さらに含まれる。
【0099】
図6(a)~
図6(h)のそれぞれに示した実施形態において共通することは、電子機器500は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電素子1と、発電素子1を電源に用いて駆動されることが可能な電子部品501と、を含むことである。
【0100】
電子機器500は、独立した電源を備えた自律型(オートノマス型)であってもよい。自律型の電子機器の例は、例えばロボット等を挙げることができる。さらに、発電素子1又は発電装置100を備えた電子部品501は、独立した電源を備えた自律型であってもよい。自律型の電子部品の例は、例えば可動センサ端末等を挙げることができる。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
1 :発電素子
2 :積層体
10 :積層部
10a :第1積層部
10b :第2積層部
11 :基板
11a :第1基板
11af :第1主面
11as :第1積層面
11b :第2基板
11bf :第2主面
12bs :第2積層面
12a :第1電極部
12b :第2電極部
13 :支持部
14 :中間部
140 :ギャップ部
141 :ナノ粒子
142 :溶媒
21 :第1低熱伝導部
21a :第2低熱伝導部
21b :第3低熱伝導部
31 :第1封止部
32 :第2封止部
100 :発電装置
101 :第1配線
102 :第2配線
111 :第1端子
112 :第2端子
500 :電子機器
G :ギャップ
R :負荷
S110 :積層部形成工程
S120 :積層体形成工程
Z :第1方向
X :第2方向
Y :第3方向