(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052535
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220328BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
C09K3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020158974
(22)【出願日】2020-09-23
(71)【出願人】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(71)【出願人】
【識別番号】391032783
【氏名又は名称】サンエムパッケージ 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森野 修
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 格
(72)【発明者】
【氏名】吉田 佑貴
(72)【発明者】
【氏名】三宅 隆
(57)【要約】
【課題】冷感の持続性に優れ、粘膜刺激および眼刺激が低減されたマスクを提供すること。
【解決手段】冷感付与組成物を用いて冷感付与された不織布を備えるマスクであって、前記冷感付与組成物が、l-メンチルグリセリルエーテルを4.0~20質量%、低級アルコールを5.0~50質量%、多価アルコールを10~40質量%、および水を10~80質量%含有するマスク。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷感付与組成物を用いて冷感付与された不織布を備えるマスクであって、
前記冷感付与組成物が、下記成分(A)を4.0~20質量%、下記成分(B)を5.0~50質量%、下記成分(C)を10~40質量%、および下記成分(D)を10~80質量%含有するマスク。
成分(A):l-メンチルグリセリルエーテル
成分(B):低級アルコール
成分(C):多価アルコール
成分(D):水
【請求項2】
前記冷感付与組成物がさらに下記成分(E)を含有し、前記成分(A)に対する前記成分(E)の質量含有比が0.001~0.25である、請求項1記載のマスク。
成分(E):l-メントール
【請求項3】
前記成分(E)の含有量が0.05~1.0質量%である、請求項2記載のマスク。
【請求項4】
前記冷感付与組成物が、さらに下記成分(F)を0.01~5.0質量%含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のマスク。
成分(F):分岐アルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル
【請求項5】
前記冷感付与組成物の粘度が100~400mPa・sである、請求項1~4のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のマスクの製造方法であって、前記冷感付与組成物を用いて、少なくとも前記成分(A)が付着した不織布を製造する工程を含む製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マスクは、日常生活や、工場、病院など、清潔や衛生を維持すべき環境において着用され、人前に出る際のエチケットや、感染症の予防、ウイルス飛散および感染防止、異物混入防止等を目的に使用されている。特に、ウイルス飛散および感染防止を目的とするマスクの着用は、ウイルス感染リスクが高まる冬場が主であったが、新型コロナウイルスの流行に伴い、季節に関係なくマスクを着用する必要性が生じている。
【0003】
マスクは、着用時に階段を上る、歩くなどの運動や、温度の高い場所での作業を行う場合においては、非着用時に比べて呼吸がし難い、マスク内が呼気や汗により蒸れて不快度が高くなるという問題がある。また、夏場のマスクの着用は、上記の問題に加え、非着用時に比べて熱中症のリスクが高くなることが指摘されている。
【0004】
上記問題を解消する手段として、接触冷感等の技術を用いたマスクが市販されている。また、夏場の暑さや、活動時の暑さ対策として、衣類に適用することで衣類に冷感を付与可能な組成物(特許文献1)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の衣類用冷感付与剤をマスクに適用した場合、着用直後は充分な冷感が得られるが、冷感の持続性は充分なものではなかった。また、該衣類用冷感付与剤は、エタノールおよびl-メントールの配合量が多いため、マスクに適用した場合、粘膜および眼への刺激性が懸念される。
【0007】
本発明は、冷感の持続性に優れ、粘膜刺激および眼刺激が低減されたマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、所定量のl-メンチルグリセリルエーテル、低級アルコール、多価アルコール、および水を含有する冷感付与組成物で処理した不織布を備えるマスクとすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は
〔1〕冷感付与組成物を用いて冷感付与された不織布を備えるマスクであって、
前記冷感付与組成物が、下記成分(A)を4.0~20質量%、下記成分(B)を5.0~50質量%、下記成分(C)を10~40質量%、および下記成分(D)を10~80質量%含有するマスク、
成分(A):l-メンチルグリセリルエーテル
成分(B):低級アルコール
成分(C):多価アルコール
成分(D):水
〔2〕前記冷感付与組成物がさらに下記成分(E)を含有し、前記成分(A)に対する前記成分(E)の質量含有比が0.001~0.25である、上記〔1〕記載のマスク、
成分(E):l-メントール
〔3〕前記成分(E)の含有量が0.05~1.0質量%である、上記〔2〕記載のマスク、
〔4〕前記冷感付与組成物が、さらに下記成分(F)を0.01~5.0質量%含有する、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のマスク、
成分(F):分岐アルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル
〔5〕前記冷感付与組成物の粘度が100~400mPa・sである、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のマスク、
〔6〕上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のマスクの製造方法であって、前記冷感付与組成物を用いて、少なくとも前記成分(A)が付着した不織布を製造する工程を含む製造方法、
〔7〕下記成分(A)および下記成分(E)が付着した不織布を備えるマスクであって、前記成分(A)に対する前記成分(E)の質量比が0.001~0.25であるマスク、に関する。
成分(A):l-メンチルグリセリルエーテル
成分(E):l-メントール
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、冷感の持続性に優れ、粘膜刺激および眼刺激が低減されたマスクが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係るマスクを口元層側から見た構成を示す平面図である。
【
図2】本実施形態に係るマスクを
図1における平面X-Xに沿って切断した断面を示す断面図である。
【
図3】本実施形態に係るマスクにおける口元層、フィルタ層、および表層の組み合わせを示す概略断面図である。
【
図4】本実施形態に係るマスクを着用したところを示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態に係るマスクは、冷感付与組成物を用いて冷感付与された不織布を備える。なお、本明細書において、「~」を用いて数値範囲を示す場合、その両端の数値を含むものとする。
【0013】
<冷感付与組成物>
本実施形態に係る冷感付与組成物は、l-メンチルグリセリルエーテル、低級アルコール、多価アルコール、および水を必須の成分として含有する。また、任意成分としては、l-メントール、および分岐アルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルが挙げられ、これら任意成分を含むことが好ましい。
【0014】
なお、本明細書においては、上記l-メンチルグリセリルエーテルを「成分(A)」;上記低級アルコールを「成分(B)」;上記多価アルコールを「成分(C)」;上記水を「成分(D)」;上記l-メントールを「成分(E)」;上記分岐アルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルを「成分(F)」と称する場合がある。
【0015】
本実施形態に係る冷感付与組成物に含有される上記各成分の含有量は、それぞれ、冷感付与組成物中の合計の含有量が100質量%以下となるように、記載の範囲内から適宜選択することができる。
【0016】
[成分(A):l-メンチルグリセリルエーテル]
本実施形態に係る冷感付与組成物は、l-メンチルグリセリルエーテルを含有する。l-メンチルグリセリルエーテルを用いることで、冷感の持続性に優れた冷感付与組成物を得ることができる。
【0017】
冷感付与組成物100質量%中の成分(A)の含有量は、冷感の持続性の観点から、4.0質量%以上であり、5.0質量%以上が好ましく、6.0質量%以上がより好ましく、7.0質量%以上がさらに好ましく、8.0質量%以上が特に好ましい。一方、安全性および製剤化の観点からは、20質量%以下であり、18質量%以下が好ましく、16質量%以下がより好ましく、14質量%以下がさらに好ましく、12質量%以下が特に好ましい。
【0018】
[成分(B):低級アルコール]
本実施形態に係る冷感付与組成物は、上記成分(A)を溶解させ、かつ速乾性を有する観点から、低級アルコールを含有する。低級アルコールとしては、例えば、炭素数1~4の直鎖状は分枝状の脂肪族アルコールが挙げられ、具体的には、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール等が挙げられる。なかでも、エタノールが好ましい。これらの成分(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記低級アルコールを適宜組み合わせることにより、冷感付与組成物の揮発性を調整することができる。
【0019】
冷感付与組成物100質量%中の成分(B)の含有量は、速乾性の観点から、5.0質量%以上であり、8.0質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上が特に好ましい。一方、成分(B)の含有量は、組成物の引火点と不織布への添着時組成物のかすれ防止の観点から、50質量%以下であり、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0020】
[成分(C):多価アルコール]
本実施形態に係る冷感付与組成物は、冷感付与組成物の揮発性を調整する観点、および粘度を調整する観点から、多価アルコールを含有する。多価アルコールとしては、例えば、グリコール類、グリセリン類、糖アルコール等が挙げられ、グリコール類およびグリセリン類が好ましく、グリコール類がより好ましい。上記多価アルコールとしては、としては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、イソプレングリコール、グリセリン、ジグリセリン等が挙げられる。これらの成分(C)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
冷感付与組成物100質量%中の成分(C)の含有量は、冷感付与組成物の揮発性を調整する観点から、10質量%以上であり、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。また、成分(C)の含有量は、組成物の引火点の観点から、40質量%以下であり、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0022】
[成分(D):水]
本実施形態に係る冷感付与組成物は、水を含有する。本実施形態において使用する水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、超純水等が挙げられる。
【0023】
冷感付与組成物100質量%中の成分(D)の含有量は、成分(A)、(B)、(C)、(E)、(F)およびその他の成分を除いた残部を、その含有量とすることができる。冷感付与組成物100質量%中の成分(D)の含有量は、水溶性成分の溶解性を担保する観点、みずみずしい使用感を付与する観点から、10質量%以上であり、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。また、冷感付与組成物の速乾性の観点から、80質量%以下であり、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
【0024】
[成分(E):l-メントール]
本実施形態に係る冷感付与組成物は、l-メントールを含有することが好ましい。l-メントールを用いることで、使用初期における冷感を向上させることができる。なお、上記「使用初期」とは、特に限定されないが、例えば、本実施形態に係る冷感付与組成物で処理した冷感性材料を備えるマスク等を着用した直後から5分間程度をいう。
【0025】
冷感付与組成物100質量%中の成分(E)の含有量は、特に限定されないが、使用初期における冷感向上の観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.10質量%以上がより好ましく、0.20質量%以上がさらに好ましく、0.30質量%以上が特に好ましい。一方、刺激性低減の観点からは、1.0質量%以下が好ましく、0.90質量%以下がより好ましく、0.80質量%以下がさらに好ましく、0.70質量%以下が特に好ましい。
【0026】
冷感付与組成物中の成分(A)に対する成分(E)の質量含有比は、使用初期における冷感向上と冷感との持続性のバランスの観点から、0.001~0.25が好ましく、0.005~0.20がより好ましく、0.01~0.15がさらに好ましく、0.02~0.10が特に好ましい。
【0027】
[成分(F):分岐アルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル]
本実施形態に係る冷感付与組成物は、冷感の持続性をより向上させる観点から、分岐アルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有することが好ましい。
【0028】
前記分岐アルキル基の炭素数は、冷感の持続性向上の観点から、10~24が好ましく、12~22がより好ましく、16~20がさらに好ましい。成分(F)の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンイソセチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテルなどが挙げられ、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテルが好ましい。これらの成分(F)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
成分(F)のオキシエチレン基(エチレンオキサイド基)の付加モル数は、冷感の持続性向上の観点から、5~30が好ましく、10~25がより好ましい。
【0030】
上記成分(F)を含有する場合の冷感付与組成物100質量%中の含有量は、特に限定されないが、冷感の持続性向上の観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.08質量%以上がより好ましく、0.10質量%以上がさらに好ましい。一方、刺激性低減の観点からは、1.0質量%以下が好ましく、0.70質量%以下がより好ましく、0.50質量%以下がさらに好ましく、0.30質量%以下が特に好ましい。
【0031】
[その他の成分]
本実施形態に係る冷感付与組成物は、上記成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、成分(E)、および成分(F)以外の成分(その他の成分)を含有していてもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、上記成分(F)以外のノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、水溶性増粘剤、香料、色素、酸化防止剤、ビタミン類、動植物抽出物、金属イオン封鎖剤等の添加剤等が挙げられる。上記その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、上記その他の成分からは、成分(A)~(E)に含まれるものは除かれるものとする。
【0032】
上記成分(F)以外のノニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド等が挙げられる。
【0033】
上記アニオン性界面活性剤としては、高級脂肪酸石鹸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシルメチルタウリン塩、N-アシル-N-メチル-β-アラニン塩、N-アシルグリシン塩、N-アシルグルタミン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルカルボン酸塩、アルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸およびその塩、N-アシルサルコシンおよびその塩、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸塩等が挙げられる。
【0034】
上記カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩、エステル含有3級アミン塩等のアミン塩;モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩、トリアルキル型4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩等のアルキル4級アンモニウム塩;アルキルピリジニウム塩等の環式4級アンモニウム塩;塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0035】
上記両性界面活性剤としては、アルキルグリシン塩、カルボキシメチルグリシン塩、N-アシルアミノエチル-N-2-ヒドロキシエチルグリシン塩等のグリシン型両性界面活性剤;アルキルアミノプロピオン酸塩、アルキルイミノジプロピオン酸塩等のアミノプロピオン酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤;アルキルヒドロキシスルホベタイン等のスルホベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0036】
上記水溶性増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、カルボマー、ベントナイト等が挙げられる。これらの水溶性増粘剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
水溶性増粘剤を含有する場合の冷感付与組成物100質量%中の含有量は、特に限定されず、冷感付与組成物の用途に応じた粘度調整のために適宜選択することができるが、例えば、0.01~5.0質量%、0.05~3.0質量%、0.1~1.0質量%とすることができる。
【0038】
本実施形態に係る冷感付与組成物の粘度は、冷感付与組成物を用いて不織布に冷感付与する方法に応じて適宜選択することができるが、冷感付与組成物の不織布への付着性および添着性の観点から、100~400mPa・sが好ましく、150~350mPa・sがより好ましい。なお、上記粘度は、B型粘度計を用いて、ローターNo.2を使用して、25℃、回転速度60rpmの条件等で測定される。上記B型粘度計としては、例えば、東機産業(株)製のTV-25型粘度計を使用することができる。
【0039】
本実施形態に係る冷感付与組成物は、常法により製造することができる。例えば、上記各成分を混合し、公知の方法、具体的には、パドルミキサー等で攪拌する方法等で、各成分を均一化する方法が挙げられる。
【0040】
<マスク>
添付の図面を参照しながら本実施形態に係るマスクについて説明するが、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。本実施形態に係るマスク1は、
図1に示すように、着用時に着用者の鼻と口とを覆うマスク本体11と、マスク本体11の両側に設けられ、マスク本体11を装着者の顔面の所定の位置に保持する2本のゴム紐12とを備える。マスク本体11の両側には、不織布シート、不織布にラミネート加工したもの、およびフィルムから選択された材料からなる補強材14がマスク本体11の前面から着用者の口元側に向かって折り返された状態で溶着線11Gで溶着されてマスク本体11の両側縁部が形成される。
【0041】
図1および
図2に示すように、不織布シート、不織布にラミネート加工したもの、およびフィルムから選択された材料からなる補強材24が、マスク本体11の前面から着用者の口元側に向かって折り返された状態で、溶着線11Dと11Eでマスク上縁が、溶着線11Fでマスク下縁がそれぞれ溶着されて、マスク本体11の上下縁部が形成される。マスク上縁における溶着線11Dおよび11Eの間には、アルミニウムまたはポリプロピレン樹脂の平角材、あるいは鉄芯を樹脂で覆った部材からなるノーズグリップ13が埋包されている。
【0042】
図2に示すように、マスク本体11は、
図2の原反18を、着用時に外側となる面、すなわち前方の面が山になり、着用時に着用者の口元側となる面、すなわち後方の面が谷になるように折り返されて形成されている。マスク本体11において、原反18が折り返された部分は折り畳み部11Aとされている。折り畳み部11Aは、
図1に示すように横方向に沿って上下方向に3か所形成されている。
【0043】
マスク本体11は、
図3に示すように、着用者の口元側から順に口元層15、フィルタ層16、および表層17を積層した不織布積層体、すなわち原反18から形成されている。
【0044】
不織布の素材は特に限定されず、合成繊維であっても、天然繊維であっても、これらの混合繊維であってもよい。合成繊維としては、例えば、ナイロン繊維、ポリエステル繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維等)、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維(例えば、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等)等が挙げられる。天然繊維としては、例えば、綿、パルプ、麻、リンター、カポック等の植物繊維を原料とする天然セルロース繊維、レーヨン、アセテート等の植物のセルロースを用いて調製した半天然セルロース繊維、前記天然セルロース繊維以外の天然繊維が挙げられる。
【0045】
不織布としては、特に限定されないが、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、メルトブローン不織布、ニードルパンチ不織布、スティッチボンド不織布、湿式混紗不織布等が挙げられる。
【0046】
口元層15は、着用時に着用者の口元側に位置し、着用者の肌に直接触れる部分であるため、着用者の肌あたりの感触を重要視するように設計されている。口元層15としては、ポリプロピレン樹脂サーマルボンド不織布、パルプとポリエステル繊維とを混抄した混抄紙、およびレーヨン紙などが好適に用いられる。
【0047】
表層17は、マスク本体11の最も前方、言い換えれば最も外側に位置する層であり、フィルタ層16を保護するのが主な目的である。表層17としては、目付15~25g/m2程度のスパンボンド不織布や混抄紙が好適に用いられる。
【0048】
フィルタ層16は、表層17と口元層15との間に位置する。フィルタ層16としては、目付5~30g/m
2程度のポリプロピレン樹脂メルトブローン不織布やポリエチレン樹脂メルトブローン不織布が好適に用いられる。
図3のフィルタ層16は2層により形成されているが、フィルタ層16は1層であってもよく、3層以上であってもよい。また、複数のフィルタ層16の間、層16と層17との間、あるいは層15と層16との間に、フィルタ層16を構成する不織布とは形態および素材の少なくとも一方が異なる不織布からなる挿入層を配置してもよい。
【0049】
着用者100がマスク1を着用するときは、
図4に示すようにマスク1の2本のゴム紐12の夫々を着用者の耳にかけまわすとともに、ノーズグリップ13を鼻梁の形状に合わせて屈曲させ、マスク本体11の上縁が顔面に密着するようにしながら着用する。マスク1を着用すると、マスク本体11の折り畳み部11Aがその中央部において伸ばされ、これによって着用者100の鼻と口とが覆われる。
【0050】
本実施形態に係るマスクは、口元層15、フィルタ層16、表層17、および挿入層から選ばれる少なくとも1つを構成する不織布として、前記冷感付与組成物の有効成分(例えば、成分(A)、成分(E)等)を付着させた不織布を用いることにより製造することができる。冷感付与組成物の有効成分を付着させた不織布は、口元層15、フィルタ層16、挿入層、および表層17の口元側およびマスク表面側のいずれにも用いることができるが、着用者100に冷感を強く感じさせる観点から、少なくとも口元層15の口元側(すなわち顔面接触側)の不織布として用いることが好ましい。
【0051】
本実施形態に係るマスクの製造方法は、冷感付与組成物を用いて不織布に冷感付与する工程を含むこと以外、従来の製造方法とすることができる。冷感付与組成物を用いて不織布に冷感付与する工程は、前記冷感付与組成物を用いて、冷感付与組成物の有効成分が付着した不織布を製造する工程とすることができる。前記有効成分は、少なくとも成分(A)を含む。また、用いた冷感付与組成物が成分(E)および/または成分(F)を含有する場合、成分(A)に加え、成分(E)および/または成分(F)も含むことが好ましい。
【0052】
冷感付与組成物の有効成分が付着した不織布を製造する方法は特に限定されないが、例えば、前記冷感付与組成物をスプレー剤型とし、前記不織布に噴霧し、その後乾燥させる方法;前記冷感付与組成物を前記不織布に含侵させ、その後乾燥させる方法;前記不織布に、印刷などの方法(好ましくはフレキソ印刷)により前記不織布を塗工し、その後乾燥させる方法などが挙げられる。
【0053】
冷感付与組成物の不織布の表面積に対する使用量は、不織布の種類、構造、特性等によって適宜選択できるが、本発明の効果を充分に発揮する観点、使用時に冷感付与組成物のカスレが発生することを防止する理由から、0.1g/m2以上が好ましく、0.5g/m2以上がより好ましく、1.0g/m2以上がさらに好ましい。また、使用時にたれ落ちが発生する等使用感が低下することを防止する観点、また乾燥時間が長くなるという理由からは、50g/m2以下が好ましく、30g/m2以下がより好ましく、10g/m2以下がさらに好ましい。
【0054】
上記の方法により製造されたマスクは、前記不織布に成分(A)が付着している。用いた冷感付与組成物が成分(E)および/または成分(F)を含有する場合、成分(A)に加え、成分(E)および/または成分(F)も付着していることが好ましい。
【0055】
前記不織布に付着した成分(A)に対する成分(E)の質量比は、使用初期における冷感向上と冷感の持続性とのバランスの観点から、0.001~0.25が好ましく、0.003~0.20がより好ましく、0.005~0.15がさらに好ましく、0.007~0.10が特に好ましい。
【実施例0056】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0057】
以下、実施例および比較例において用いた各種材料をまとめて示す。
不織布1:パルプとポリエステル繊維とを混抄した混抄紙(目付:16g/m2)
不織布2:ポリプロピレン樹脂サーマルボンド不織布(目付:18g/m2)
【0058】
(実施例および比較例)
表1に記載の組成に従い、冷感付与組成物A、B、C、D、およびEを常法により調製した。表層17に、目付16g/m
2のポリプロピレン樹脂スパンボンド不織布、フィルタ層16に、目付10g/m
2のポリプロピレン樹脂メルトブローン不織布、口元層15に表2に記載の不織布を用い、
図2に示す構成の原反18を作製した。なお、口元層15を構成する不織布の口元側(顔面接触側)にフレキソ印刷(塗工量:1.6~1.8g/m
2)することにより、冷感付与組成物A、B、C、D、またはEを塗工した。
【0059】
補強材24が原反18上縁部の前面から着用者の口元側に向かって折り返された状態で、溶着線11Dと11Eで原反上縁を溶着してマスク本体11のマスク上縁部を形成し、ノーズグリップ13を挿入した。同様に、補強材24が原反18下縁部の前面から着用者の口元側に向かって折り返された状態で、溶着線11Fで原反下縁を溶着してマスク本体11の下縁部を形成した。
【0060】
次いで、この原反18をマスク本体11の長さ(175mm)に裁断してカット品とした。そして、カット品のカット面をポリエステルの不織布テープ(25mm幅)で包み込みながら溶着して補強材14を形成した。補強材14を形成後、補強材14の上端と下端とにゴム紐12の一端と他端とを熱溶着し、実施例および比較例の各マスクを作製した。
【0061】
得られたマスクの着用後(着用直後および1時間後)の冷感強度および眼刺激の有無について、下記の評価基準により評価した。上記評価は、専門評価員3名により、25℃、湿度50%RHの恒温恒湿の条件下で実施した。
【0062】
(1)冷感強度(着用直後、および1時間後にそれぞれ評価)
3:充分に感じる
2:弱い
1:なし
【0063】
(2)眼刺激
3:刺激なし
2:1人が刺激を感じた
1:2人以上が刺激を感じた
【0064】
【0065】
【0066】
表1および表2の結果より、所定量のl-メンチルグリセリルエーテル、低級アルコール、多価アルコールおよび水を含有する本発明に係る冷感付与組成物で処理した不織布を備えるマスクは、冷感の持続性に優れ、かつ、眼刺激が低減されていることがわかる。一方、比較例1のマスクの冷感の持続性は満足のいくものではなかった。