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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052549
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】浴槽可動式浴室
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/022 20060101AFI20220328BHJP
   A47K 3/16 20060101ALI20220328BHJP
   A47K 4/00 20060101ALI20220328BHJP
   A61H 33/00 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
A47K3/022
A47K3/16
A47K4/00
A61H33/00 310F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020158996
(22)【出願日】2020-09-23
(71)【出願人】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】上田 恭平
(72)【発明者】
【氏名】半田 昌浩
【テーマコード(参考)】
2D132
4C094
【Fターム(参考)】
2D132AA17
2D132EA05
2D132GA00
4C094AA01
4C094BB06
4C094CC11
4C094GG09
4C094GG13
(57)【要約】
【課題】浴槽が移動可能な浴室における浴槽まわりの清掃の手間を軽減し、かつ浴槽の移動時の摩擦抵抗を低減する。
【解決手段】可動浴槽3を浴室床6上に幅方向へ移動可能に配置し、可動浴槽3の前側部を幅方向へ移動可能な支柱20で支持する。浴室1の奥側壁7にバックハンガー50を設け、バックハンガー50によって可動浴槽3の奥側框部12Rを幅方向に移動可能に支持する。支柱20に設けた浮上バネ25を含む浮上手段によって、可動浴槽3に対して浮上力を付与する。可動浴槽3に加わる下向きの荷重が所定以上のとき、可動浴槽3が浴室床5に着地される。荷重が所定未満のとき、可動浴槽3が前記浮上力によって浴室床6から浮上される。
【選択図】図5(a)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室床上に幅方向へ移動可能に配置された可動浴槽と、
前記可動浴槽の前側部を支持するとともに、前記幅方向へ移動可能な支柱と、
浴室の奥側壁に設けられ、前記可動浴槽の奥側框部を幅方向に移動可能に支持するバックハンガーと、
前記支柱に設けられた浮上バネを含み、前記可動浴槽に対して浮上力を付与する浮上手段と、
を備え、前記可動浴槽に加わる下向きの荷重が所定以上のとき、前記可動浴槽が前記浴室床に着地され、前記荷重が所定未満のとき、前記可動浴槽が前記浮上力によって前記浴室床から浮上可能であることを特徴とする浴槽可動式浴室。
【請求項2】
前記浮上バネが、圧縮コイルバネであることを特徴とする請求項1に記載の浴槽可動式浴室。
【請求項3】
前記支柱が、上側柱部と下側柱部を有して上下に伸縮可能な伸縮支柱であり、
前記上側柱部と前記下側柱部の間に前記浮上バネが設けられており、
前記下側柱部の下端には車輪が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の浴槽可動式浴室。
【請求項4】
前記上側柱部が、前記可動浴槽の浴槽本体及び該浴槽本体の少なくとも前側部を覆うエプロンのうち少なくとも一方に固定されていることを特徴とする請求項3に記載の浴槽可動式浴室。
【請求項5】
前記エプロンが、前記浴槽本体の前側のエプロン本体と、前記エプロン本体の下側に連なり奥側へ引っ込むエプロン裾部とを有し、
前記車輪が、前記支柱よりも前側にずれて、平面視において前記エプロン本体と前記エプロン裾部との間に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の浴槽可動式浴室。
【請求項6】
前記車輪の前面部が車輪カバーによって覆われており、
前記車輪カバーが、前記下側柱部に固定され、かつ前記エプロン本体と面一又は前記エプロン本体より奥側に引っ込んでいることを特徴とする請求項5に記載の浴槽可動式浴室。
【請求項7】
前記エプロンの下端部には緩衝部材が設けられており、前記浮上バネによる上向きのバネ力及び前記可動浴槽に加わる下向きの荷重によって、前記緩衝部材が、浴室床に対して上方へ離間及び着地され、最も離間したときの前記緩衝部材と前記浴室床との間に形成される緩衝隙間が7mm以下であることを特徴とする請求項4~6の何れか1項に記載の浴槽可動式浴室。
【請求項8】
前記緩衝部材が、前記エプロンの下端部に固定された硬質固定部と、前記硬質固定部の下側に凹凸嵌合によって着脱可能に接合された軟質緩衝部とを含むことを特徴とする請求項7に記載の浴槽可動式浴室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動式の浴槽を有する浴室に関し、特に要介助者などの利用に適した浴槽可動式浴室に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅や介助施設における要介助者などのための浴室は、その身体機能や介助の仕方に合わせて、浴槽の位置を変更可能にしたものが知られている(特許文献1、2など参照)。
特許文献1においては、浴槽の底部の四隅に板バネを介して車輪が設けられている。板バネのバネ力によって浴槽が持ち上げられた状態で車輪を転がして移動できる。浴槽に湯がたまると、浴槽がバネ力に抗して浴室床に着地し固定される。
【0003】
特許文献2においては、浴室床にスライドレールが設けられている。浴槽の底部には脚部が設けられ、スライドレールに脚部が載せられている。これによって、浴槽がスライドレールに沿って移動可能である。浴室の奥側の壁にはバックハンガーが設けられており、浴槽の奥側框部がバックハンガーに係止されている。これによって、浴槽が前側(洗い場側)へ傾くのが防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2551207号公報
【特許文献2】特許第5252646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の車輪付きの浴槽は、浴室の壁際に沿って真っ直ぐ移動させにくい。また、車輪には髪の毛などのゴミが絡まりやすいところ、特に浴室の奥側の壁際の車輪は掃除しにくく、動作不良のおそれがある。
特許文献2の浴室は、浴槽を移動させる際に、浴槽とスライドレールとの摩擦抵抗に加えて、奥側框部とバックハンガーとの摩擦抵抗も生じるため、浴槽を動かすにはこれらの摩擦抵抗に勝る力が必要である。また、スライドレールまわりの清掃が必要である。
本発明は、かかる事情に鑑み、浴槽が移動可能な浴室における浴槽まわりの清掃の手間を軽減し、かつ浴槽の移動時の摩擦抵抗を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る浴槽可動式浴室は、
浴室床上に幅方向へ移動可能に配置された可動浴槽と、
前記可動浴槽の前側部を支持するとともに、前記幅方向へ移動可能な支柱と、
浴室の奥側壁に設けられ、前記可動浴槽の奥側框部を幅方向に移動可能に支持するバックハンガーと、
前記支柱に設けられた浮上バネを含み、前記可動浴槽に対して浮上力を付与する浮上手段と、
を備え、前記可動浴槽に加わる下向きの荷重が所定以上のとき、前記可動浴槽が前記浴室床に着地され、前記荷重が所定未満のとき、前記可動浴槽が前記浮上力によって前記浴室床から浮上可能であることを特徴とする。
当該可動浴槽を有する浴室によれば、奥側の車輪が不要であり、浴槽底部を受けるスライドレールも不要である。したがって、可動浴槽まわりの清掃の手間が軽減される。可動浴槽の移動時には可動浴槽を浴室床から浮かせることによって摩擦抵抗を低減することができる。
【0007】
前記浮上バネが、圧縮コイルバネであることが好ましい。これによって、浮上バネを支柱にコンパクトに収めることができる。かつ浴槽の前側部に対して大きな押し上げ力(浮上力)を付与できる。
【0008】
前記支柱が、上側柱部と下側柱部を有して上下に伸縮可能な伸縮支柱であり、
前記上側柱部と前記下側柱部の間に前記浮上バネが設けられており、
前記下側柱部の下端には車輪が設けられていることが好ましい。
可動浴槽の移動時には、車輪が浴室床上を転動される。これによって、移動時の摩擦抵抗を低減でき、軽い力で可動浴槽を移動させることができる。
【0009】
前記上側柱部が、前記可動浴槽の浴槽本体及び該浴槽本体の少なくとも前側部を覆うエプロンのうち少なくとも一方に固定されていることが好ましい。
これによって、可動浴槽と上側柱部とが一体的に昇降される。
【0010】
前記エプロンが、前記浴槽本体の前側のエプロン本体と、前記エプロン本体の下側に連なり奥側へ引っ込むエプロン裾部とを有していることが好ましい。これによって、浴槽移動時に足の踏み入れ場所を確保できる。
前記車輪が、前記支柱よりも前側にずれて、平面視において前記エプロン本体と前記エプロン裾部との間に配置されていることが好ましい。これによって、浴槽側の浴室床の排水勾配が急であっても、車輪が洗い場側の浴室床上を安定的に転動されるようにできる。
【0011】
前記車輪の前面部が車輪カバーによって覆われており、
前記車輪カバーが、前記下側柱部に固定され、かつ前記エプロン本体と面一又は前記エプロン本体より奥側に引っ込んでいることが好ましい。
これによって、車輪及び車輪カバーをエプロンの下に潜らせるように配置できる。
【0012】
前記エプロンの下端部には緩衝部材が設けられており、前記浮上バネによる上向きのバネ力及び前記可動浴槽に加わる下向きの荷重によって、前記緩衝部材が、浴室床に対して上方へ離間及び着地され、最も離間したときの前記緩衝部材と前記浴室床との間に形成される緩衝隙間が7mm以下であることが好ましい。
これによって、エプロンの下端部が浴室床と直接突き当たるのを防止できる。かつ足の指がエプロンと浴室床との間に挟まれるのを防止できる。
【0013】
前記緩衝部材が、前記エプロンの下端部に固定された硬質固定部と、前記硬質固定部の下側に凹凸嵌合によって着脱可能に接合された軟質緩衝部とを含むことが好ましい。
これによって、軟質緩衝部が汚損、劣化したときは、軟質緩衝部だけを取り外して新品と交換することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、可動浴槽のまわりの清掃の手間を軽減できる。かつ可動浴槽の移動時の摩擦抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る浴槽可動式浴室の平面図である。
図2図2(a)は、浴槽が幅方向の中央部に位置する前記浴槽可動式浴室の斜視図である。図2(b)は、浴槽が幅方向の左側部に位置する前記浴槽可動式浴室の斜視図である。図2(c)は、浴槽が幅方向の右側部に位置する前記浴槽可動式浴室の斜視図である。
図3(a)】図3(a)は、前記浴槽を前側から見た斜視図である。
図3(b)】図3(b)は、前記浴槽を奥側から見た斜視図である。
図4(a)】図4(a)は、前記浴槽が浴室床から浮いた状態における前記浴槽可動式浴室の側面断面図である。
図4(b)】図4(b)は、前記浴槽が浴室床に着地した状態における前記浴槽可動式浴室の側面断面図である。
図5(a)】図5(a)は、浴室床から浮いた状態における浴槽の前側部を、図3(a)のV-V線に沿って示す側面断面図である。
図5(b)】図5(b)は、浴室床に着地した状態における浴槽の前側部を、図3(a)のV-V線に沿って示す側面断面図である。
図6(a)】図6(a)は、図3(a)のVIa-VIa線に沿う、前記浴槽の前側部の平面断面図である。
図6(b)】図6(b)は、図3(a)のVIb-VIb線に沿う、前記浴槽の前側部の平面断面図である。
図7(a)】図7(a)は、浴室床から浮いた状態における浴槽の前側部を、図3(a)のVII-VII線に沿って示す側面断面図である。
図7(b)】図7(b)は、浴室床に着地した状態における浴槽の前側部を、図3(a)のVII-VII線に沿って示す側面断面図である。
図8(a)】図8(a)は、浴室床から浮いた状態における浴槽の奥側部を示す、図4(a)の円部VIIIaの拡大断面図である。
図8(b)】図8(b)は、浴室床に着地した状態における浴槽の奥側部を示す、図4(b)の円部VIIIbの拡大断面図である。
図9図9は、図4(b)に表されたバックハンガー及び摺動レールを浴室前方かつ下方から矢視した斜視図である。
図10(a)】図10(a)は、前記バックハンガーを浴室奥側から矢視した斜視図である。
図10(b)】図10(b)は、前記バックハンガーを浴室奥側から矢視した分解斜視図である。
図11図11は、図4(b)に表されたバックハンガーを、同図のXI-XI線に沿って示す平面断面図である。
図12図12は、浴槽の移動時における浴槽奥側部の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、浴槽可動式浴室1は、洗い場2と、可動浴槽3を備えている。浴室1の幅方向と直交する奥行方向の前側(図1において下)に洗い場2が配置され、奥側(図1において上)に可動浴槽3が配置されている。洗い場2には、防水構造の洗い場パン2aが設けられている。浴槽3の下部には、防水構造の浴槽パン4が設けられている。浴槽パン4上に複数(ここでは4つ)の四角形のボード5aが幅方向に並べられて敷設されている。これらボード5aを含む敷設体5上に可動浴槽3が配置されている。
洗い場パン2aと浴槽パン4上の敷設体5とによって浴室床6が構成されている。
敷設体5は、浴室床6における浴槽側の床部分を構成している。
【0017】
図1に示すように、可動浴槽3の幅は、浴槽パン4の幅より小さい。図2(a)~同図(c)に示すように、可動浴槽3は、奥側壁7(図4(a))に沿うようにして、浴室1の幅方向に移動(位置変更)可能である。
【0018】
図3(a)及び同図(b)に示すように、浴槽3は、浴槽本体(バスタブ)10と、エプロン11を含む。浴槽本体10の上端部には、全周にわたって框12が設けられている。図1及び図4(a)に示すように、浴槽本体10の底部には、脚部17が設けられている。脚部17は、例えば浴槽本体10の幅方向の両側に配置され、奥行方向へ延びている。
浴槽3は、後述する浮上バネを含む浮上手段による浮上力と、浴槽3に加わる下向きの荷重とのバランスによって昇降される。前記浮上力が勝ると浴槽3が浴室床6から浮上される(図4(a))。前記下向きの荷重が勝ることで浴槽3が下降されると、脚部17が浴槽パンに着地される(図4(b))。
【0019】
図4(a)に示すように、さらに可動浴槽3には、奥行方向の前側部及び奥側部をそれぞれ支持する支持構造が設けられている。
前側部の支持構造は、次のように構成されている。
図1に示すように、可動浴槽3の前側部の左右のコーナーに一対の支柱20が設けられている。支柱20によって浴槽3の前側部が支持されている。図4(a)及び図4(b)に示すように、支柱20は、上下に伸縮可能な伸縮支柱である。詳しくは、図5(a)に示すように、支柱20は、上側柱部21と、下側柱部22を有している。図6(a)に示すように、各柱部21,22は、四角形断面の角筒形状になっているが、これに限らず円筒形状などであってもよい。図5(a)及び図5(b)に示すように、上側柱部21の下端部に下側柱部22の上端部が差し入れられている。これら柱部21,22が互いに相対的に上下へ変位されることによって、支柱20が上下へ伸縮される。
【0020】
図4(a)に示すように、上側柱部21の上端部は、ボルト23bを含む連結手段23によって浴槽本体10に連結されている。図6(a)に示すように、上側柱部21の下端部は、支持ブラケット24を介してエプロン11に連結されている。したがって、上側柱部21は、浴槽本体10に直接またはエプロン11を介して固定されている。
【0021】
図5(a)に示すように、上側柱部21と下側柱部22との間には、浮上手段として、前側浮上バネ25が設けられている。浮上バネ25は、圧縮コイルバネによって構成されている。浮上バネ25の下端部が、下側柱部22の上端部のバネ収容筒22b内に収容され、該バネ収容筒22bの底部(バネ受け部)に突き当てられている。浮上バネ25の上端部は、上側柱部21に設けられたバネ受け部21bに突き当てられている。
【0022】
浮上バネ25は、上側柱部21及び下側柱部22に対して互いに離間させるようにバネ力を付与している。ひいては、浮上バネ25は、上側柱部21を介して浴槽3に対して上向きのバネ力(浮上力)を付与している。
【0023】
図5(b)に示すように、支柱20には、伸長規制部26が設けられている。伸長規制部26は、上側柱部21に設けられたピン26aと、下側柱部22に形成されたピン孔26bを含む。ピン孔26bは、上下に延びる長孔になっている。ピン孔26bにピン26aが挿入されている。下側柱部22に対する上側柱部21の昇降に伴って、ピン26aがピン孔26b内において上下に変位される。図5(a)に示すように、上側柱部21の上昇によって支柱20が伸長したとき、ピン26aがピン孔26bの上端部に突き当たる。これによって、支柱20の最大長さ(最大伸び量)が規制される。
【0024】
図5(a)に示すように、各支柱20の下端に車輪ユニット30が設けられている。車輪ユニット30は、車輪31と、車輪ホルダ32を含む。車輪31の車軸33は、浴室1の奥行方向に向けられている。車輪ホルダ32は、コ字状に形成され、車輪31を奥行方向に跨いでいる。車軸33が、車輪ホルダ32の一対の鉛直板に架け渡されている。
【0025】
図6(b)に示すように、車輪ユニット30の車輪ホルダ32が、下側柱部22の前面部(同図において上側部)に固定されている。したがって、車輪31は、支柱20の中心軸(断面の重心)よりも前側にずれて配置されている。これによって、図5(a)に示すように、車輪31は、浴室床6における浴槽側の床部分にではなく、洗い場パン2aに接している。つまり、浴槽側の床部分を構成するボード5aにおける支柱20の直下部は、洗い場側から奥側へ向けて下がる急傾斜面5cとなっているところ、車輪31は、該急傾斜面5cを避けて、比較的平坦な洗い場パン2a上に配置されている。
車輪31は、支柱20の下端と浴室床6との間に介在されることによって、これら支柱20と浴室床6との間の摩擦を低減する前側摩擦低減手段を構成している。
【0026】
図5及び図6に示すように、車輪ユニット30は車輪カバー35によって覆われている。車輪カバー35は、平面視で概略C字形状に形成され、車輪31の前方及び側方(幅方向の両側)に被さっている。詳細な図示は省略するが、車輪カバー35は、車輪ホルダ32及び下側柱部22にボルト締め、爪嵌合などによって着脱可能に固定されている。
【0027】
さらに、車輪ユニット30及び車輪カバー35は、次のようにして、エプロン11に潜り込むようにして収められている。
図3(a)に示すように、エプロン11は、エプロン本体11aと、エプロン裾部11bを有している。図4(a)に示すように、エプロン本体11aが、浴槽本体10の前面(洗い場2を向く面)及び両側面を覆っている。エプロン本体11aの下端部に、水平な段差部11dを介して、エプロン裾部11bが連なっている。エプロン裾部11bは、段差部11dから鉛直に垂下されている。図3(a)に示すように、前側のエプロン裾部11bは、前側のエプロン本体11aより奥側へ引っ込んでおり、かつ浴室1の幅方向へ延びている。図3(a)及び図6(a)に示すように、前側のエプロン裾部11bは、前側のエプロン本体11aの幅方向の両端部まで達しておらず、エプロン裾部11bの幅方向の端部とエプロン本体11aの下端部とによって切欠部11cが形成されている。切欠部11cに車輪ユニット30及び車輪カバー35が配置されている。
【0028】
図6(b)に示すように、平面視において、車輪カバー35は、エプロン本体11aと面一又はエプロン本体11aより少し浴室奥側(同図において下側)に引っ込んでいる。車輪31は、エプロン本体11aより浴室奥側に引っ込んでおり、平面視においてエプロン本体11aとエプロン裾部11bとの間に配置されている。
【0029】
図7(a)に示すように、エプロン裾部11bの下端部ひいてはエプロン11の下端部には、緩衝部材40が設けられている。緩衝部材40は、硬質固定部41と、軟質緩衝部42を含む。硬質固定部41は、硬質の樹脂成形品であり、エプロン裾部11bの下端部に接着などによって固定されている。硬質固定部41の下側に軟質緩衝部42が設けられている。軟質緩衝部42は、軟質の樹脂成型品である。軟質緩衝部42が硬質固定部41に凹凸嵌合によって着脱可能に接合されている。硬質固定部41及び軟質緩衝部42には、前記凹凸嵌合のための嵌合凹部41a及び嵌合凸部42a、並びに嵌合爪41b及び爪嵌合溝42bが形成されている。
【0030】
図7(a)及び図7(b)に示すように、緩衝部材40は、後述する浴槽3の昇降に伴って浴室床6に対して上方へ離間及び着地される。図7(a)に示すように、最も離間したときの緩衝部材40と浴室床6との間の緩衝隙間45は、7mm以下に設定されている。すなわち、支柱20が最大長さのときの浴室床6から緩衝部材40の下端までの高さH45は、H45≦7mmである。
【0031】
可動浴槽3における奥側部は、次のようにして支持されている。
図8(a)に示すように、浴槽3の奥側部には、摺動レール60が設けられている。摺動レール60は、概略四角形の一定断面に形成され、浴室1の幅方向へ直線状に延びている。摺動レール60は、低摩擦材料によって構成されている。低摩擦材料としては、ポリアセタール(POM)、フッ素系樹脂、高摺動性ポリエチレンなどが挙げられる。
【0032】
図8(b)及び図9に示すように、摺動レール60の底面及び前側面には、複数条の凹溝61が並んで形成されている。これによって、隣接する凹溝61の間に摺動突条62が形成されている。各凹溝61及び摺動突条62は、摺動レール60の長手方向(浴室の幅方向)へ真っ直ぐ延びている。
【0033】
図8(b)及び図9に示すように、摺動レール60の底面と奥側の側面とのコーナー部には、係止凹部63が形成されている。摺動レール60の底面には、摺動レール60の長手方向(浴室の幅方向)に間隔を置いて複数のクリック孔64が形成されている
【0034】
図8(a)に示すように、摺動レール60は、浴槽本体10の奥側框部12Rの上板部12aに固定されている。上板部12aから雌ネジ付きブッシュ13及びリブ14が垂下されている。ブッシュ13の下端面に摺動レール60が当てられ、かつレール固定ボルト15によって摺動レール60がブッシュ13に固定されている。
リブ14が、摺動レール60の奥側の側面に近接するように配置されている。なお、リブ14が摺動レール60と接していてもよい。
框部12Rの奥側の垂れ板12bが、摺動レール60の奥側の側面に当接されている。
【0035】
図1及び図3(b)に示すように、浴室1の奥側壁7には、1又は複数のバックハンガー50が設けられている。図においては、2つのバックハンガー50が、互いに浴室幅方向に間隔を置いて設けられている。好ましくは、バックハンガー50は、奥側壁7における幅方向の中央部寄りに配置されている。バックハンガー50によって、浴槽本体10の奥側框部12Rが幅方向に移動可能に支持されている。
【0036】
詳しくは、図10(b)に示すように、バックハンガー50は、壁固定部材51と、ガイド部材52を含む。壁固定部材51は、硬質樹脂の成形品である。壁固定部材51の材質としては、強度確保のために、POM、ガラス繊維強化ポリプロピレンなどを用いることが好ましい。
なお、壁固定部材51は樹脂製に限らず、金属製であってもよい。
【0037】
図10(b)及び図11に示すように、壁固定部材51は、上端が開口された概略角筒状に形成されている。図8(a)に示すように、壁固定部材51の浴室前方を向く前側壁部51aには、ネジからなるストッパ53が設けられている。前側壁部51aの上端部には、保持壁51hが上へ突出するように形成されている。
【0038】
図11に示すように、壁固定部材51の浴室奥側を向く奥側壁部51bの幅方向の両側部には、一対の突出固定部51dが形成されている。一対の突出固定部51dは、互いに浴室幅方向に離れて、奥側壁部51bから浴室奥側壁7へ向かって突出されている。詳細な図示は省略するが、各突出固定部51dが、奥側壁7にボルト締めされている。これによって、壁固定部材51が奥側壁7に固定されている。
【0039】
図11に示すように、一対の突出固定部51dと、奥側壁部51bと、浴室奥側壁7との間に水抜き隙間50dが形成されている。図8(a)に示すように、水抜き隙間50dは上下へ抜けている。
【0040】
図10(a)に示すように、壁固定部材51にガイド部材52が昇降可能に保持されている。
ガイド部材52は、硬質樹脂の成形品である。ガイド部材52の材質としては、摺動を高めるために、POM、フッ素系樹脂、高摺動性ポリエチレンなどの低摩擦材料が用いられている。ガイド部材52を構成する低摩擦材料は、摺動レール60を構成する低摩擦材料と同一でもよく、異なっていてもよい。ガイド部材52は樹脂製に限らず、金属製であってもよい。
【0041】
図10(b)に示すように、ガイド部材52は、内筒部52aと、摺動ガイド54とを有している。内筒部52aは、下端が開口された概略四角形の筒状に形成されている。該内筒部52aが、壁固定部材51内に昇降可能に収容されている。図8(b)に示すように、内筒部52aの前面部には、規制凸部52sが形成されている。図8(a)に示すように、ガイド部材52を上昇させていくと、やがて規制凸部52sがストッパ53に突き当たる。これによって、ガイド部材52の上昇可能高さが規制され、その以上は上昇不能になる。
【0042】
図10(a)に示すように、内筒部52aの上側部は、壁固定部材51から突出されており、そこに摺動ガイド54が一体成形されている。図10(b)に示すように、摺動ガイド54は、上蓋部54aと、係止壁54bと、奥側規制部54dとを含む。図8(a)に示すように、上蓋部54aが、内筒部52aの上端部を塞いでいる。
【0043】
図8(a)及び図10(b)に示すように、上蓋部54aの上面には、低いクリック凸部57が形成されている。クリック凸部57は、中心に向かうにしたがって隆起する部分球状に形成されている。
クリック凸部57は、ガイド部材52と一体に成形されてもよく、ガイド部材52とは別体に成形された後、上蓋部54aに接着などによって固定されてもよい。
【0044】
図8(a)に示すように、ガイド部材52の上蓋部54aにおける前側部には、係止壁54bが上方へ突出するように形成されている。係止壁54bは、保持壁51hよりも上方へ突出されている。ガイド部材52の上蓋部54aにおける奥側壁7を向く側部には、凸状の奥側規制部54dが上方へ突出するように形成されている。奥側規制部54dは、係止壁54bよりも低い。
【0045】
図8(a)に示すように、奥側規制部54dにカバー部56が一体に連なっている。カバー部56は、ヒレ状ないしは舌状に形成され、奥側規制部54dひいてはガイド部材52の上端部からガイド部材52の奥側面に沿って下方へ延びている。カバー部56は、下方へ向かうにしたがって奥側壁7に近づくように傾斜されている。該カバー部56が、奥側壁部51bの上端部に被さるとともに、水抜き隙間50dに臨んでいる。具体的には、カバー部56の下端部が水抜き隙間50dに入り込んでいる。
【0046】
図8(a)に示すように、壁固定部材51とガイド部材52との間には、浮上手段として、奥側浮上バネ55が設けられている。浮上バネ55は、圧縮コイルバネによって構成されている。該浮上バネ55が、内筒部52aの内部に収容され、かつ内筒部52aと共に壁固定部材51の内部に収容されている。浮上バネ55の下端部は、壁固定部材51の底板の上面に突き当てられている。浮上バネ55の上端部は、ガイド部材52の上蓋部54aの下面に突き当てられている。
浮上バネ55は、ガイド部材52ひいては浴槽3に対して上向きのバネ力(浮上力)を付与する。
【0047】
図8(a)及び図9に示すように、ガイド部材52の摺動ガイド部54上に摺動レール60が載せられている。摺動レール60の底面の摺動突条62が、上蓋部54aに摺動可能に接している。摺動レール60の前側面が係止壁54bと対面している。前側面の摺動突条62が、係止壁54bと近接又は当接されている。係止壁54bによって、摺動レール60ひいては浴槽3が奥行方向の前側へ変位されるのが規制されている。奥側規制部54dが係止凹部63に浴室幅方向へスライド可能に嵌っている。奥側規制部54dによって、摺動レール60ひいては浴槽3が奥側壁7の側へ変位されるのが規制されている。これによって、摺動ガイド54が、摺動レール60の幅方向への摺動(相対移動)を許容し、かつ奥行方向への相対移動を規制するようにして、摺動レール60と係合されている。
【0048】
言い換えると、摺動レール60が、摺動ガイド部54に対して浴室幅方向へ摺動可能に係合されている。ひいては、ガイド部材52によって奥側框部12Rが浴室幅方向へ移動可能にガイドされている。摺動レール60は、奥側框部12Rとバックハンガー50との間に介在されることによって、これら奥側框部12Rとバックハンガー50との摩擦を低減する奥側摩擦低減手段を構成している。
【0049】
図8(a)に示すように、摺動レール60ひいては浴槽3が浴室幅方向の所定位置に在るとき、クリック凸部57が所定のクリック孔64に嵌っている。例えば、浴槽3が浴室1の幅方向の中央部(図2(a))と左端部(図2(b))と右端部(図2(c))にそれぞれ位置されたとき、対応するクリック孔64がクリック凸部57と一致して嵌るように、摺動レール60における複数のクリック孔64の位置が設定されている。摺動レール60に対して幅方向への移動力を付与することによって、クリック凸部57がクリック孔64から抜け出し可能である。
【0050】
かかる構造の可動浴槽3は、要介助者の身体機能などに応じて適切な浴室幅方向位置に配置されて利用される。可動浴槽3の位置変更は、次のようにして行われる。
浴槽本体10内に湯水が入っているときは、先ずそれを抜く。これによって、浴槽3に加わる荷重が軽くなる。図4(a)に示すように、前記荷重が所定未満のとき、前側の浮上バネ25のバネ力によって、支柱20の上側柱部41が押し上げられる。かつ奥側の浮上バネ55のバネ力によって、バックハンガー50のガイド部材52が押し上げられる。この結果、脚部17が浴室床6から上へ離れ、浴槽本体10が浮く。したがって、浴槽本体10と浴室床6との間の静止摩擦抵抗が無くなる。
【0051】
また、図7(a)に示すように、緩衝部材40が浴室床6から上へ離れ、軟質緩衝部42が元の断面形状に弾性的に復帰される。軟質緩衝部42と浴室床6との間には緩衝隙間45が形成される。緩衝隙間45は最大でも7mm以下であるから、足の指が緩衝隙間45に挿し入れられることが無く、緩衝部材40と浴室床6の間に足の指を挟むのを防止できる。たとえ、挟んだとしても軟質緩衝部42の弾性によって、足の指のケガを防止できる。
【0052】
図5(a)に示すように、やがて、ピン26aがピン孔26bの上端縁に突き当たる。これによって、支柱40の伸長が規制される。これとほぼ同時に、図8(a)に示すように、規制凸部52sがストッパ53に突き当たる。これによって、バックハンガー50のガイド部材52の上昇が規制される。この結果、浴槽3の上昇が規制される。
【0053】
続いて、図2(a)~同図(c)に示すように、浴槽3を浴室1の幅方向に沿って所望の移動位置へ向けて押す。浴槽本体10が浴室床6から浮いていて、両者間に摩擦抵抗が発生することがないから、浴槽3を軽い力で動かすことができる。
【0054】
図5(a)に示すように、移動時の浴槽3の前側部においては、車輪31が浴室床6上を転がる。したがって、支柱20と浴室床6との摩擦を大幅に低減でき、浴槽3を一層容易に移動させることができる。
車輪31は、支柱20の前方にずれて配置されることで、浴室床6の浴槽側の急傾斜面5c上ではなく、比較的平らな洗い場パン2a上を円滑に転動できる。
緩衝部材40は、浴室床6から上へ離間されているから、摩擦抵抗となることはない(図7(a))。
エプロン裾部11bがエプロン本体11aより奥側へ引っ込んでいるために、浴槽移動時における足の踏み入れ場所を確保できる。
【0055】
図12に示すように、浴槽3の奥側部においては、浴槽3の移動開始によって、クリック凸部57がクリック孔64から抜け出す。クリック凸部57を低い部分球状に形成することによって、クリック孔64からの抜け出しを容易化できる。
さらに、摺動レール60が、バックハンガー50のガイド部材52上を摺動される。摺動レール60は、POM、フッ素系樹脂、高摺動性ポリエチレンなどの低摩擦材料によって構成されているから、ガイド部材52との間の摩擦抵抗を低減できる。ガイド部材52についても、POM、フッ素系樹脂、高摺動性ポリエチレンなどの低摩擦材料によって構成されることによって、摺動レール60とガイド部材52との間の摩擦抵抗を更に低減できる。
加えて、摺動レール60には凹溝61が形成されており、主に摺動突条62がガイド部材52と接触されるために、摺動レール50とガイド部材52との接触面積を小さくでき、摩擦抵抗を一層低減できる。
【0056】
更には、図12に示すように、摺動レール60の移動によって、クリック孔64がクリック凸部57からずれるために、摺動レール60の底面が、クリック凸部57の高さ分だけ上蓋部54aから離間してクリック凸部57の頂部とだけ接触される。これによって、摺動レール60とガイド部材52との間の摩擦抵抗をより一層低減できる。
この結果、浴槽3を一層軽い力で容易に幅方向へ移動させることができる。
【0057】
浴槽3の奥側框部12Rが摺動レール60を介してバックハンガー50と係合されることによって、浴槽3を奥側壁7に対して一定の間隔を保ちながら浴室幅方向へ真っ直ぐ移動させることができる。移動中、浴槽3が奥側壁7から離間されたり、奥側壁7にぶつかったりするのを回避できる。
バックハンガー50が奥側壁7における幅方向の中央部寄りに配置されることで、浴槽3の位置に拘わらず、バックハンガー50が常に奥側框部12Rと係合されるようにできる。
【0058】
浴槽3が浴室幅方向の1の所定位置まで移動された時、摺動レール60における1のクリック孔64がクリック凸部57と一致し、該クリック孔64にクリック凸部57が嵌入される。この時、クリック感が生じ、浴槽3が所定位置に来たことを感知できる。
このようにして、浴槽3を要介助者などの利用者に応じた浴室幅方向位置に位置決めできる。
【0059】
図4(b)に示すように、浴槽本体10に湯水を入れると、浴槽3の自重に湯水の重さが加わることによって浮上バネ25,55が縮み、浴槽本体3が降下される。
浴槽3と湯水の合計荷重すなわち浴槽3に加わる下向きの荷重が所定以上になると、浴槽本体10が浴室床6に着地される。具体的には、脚部17が敷設体5に接する。これによって、浴室床6が浴槽3の荷重を受けることができ、框12及びバックハンガー50ひいては奥側壁7に過剰な力がかかるのを防ぐことができる。そして、浴槽3を安定した状態で利用に供することができる。
【0060】
図7(b)に示すように、浴槽本体10の着地と併行して、緩衝部材40が浴室床6に接する。さらに、軟質緩衝部42が、硬質固定部41と浴室床6とで圧縮され、上下に押し潰されるように弾性変形される。したがって、軟質緩衝部42が浴室床6に密着される。これによって、エプロン11と浴室床6との間を塞ぐことができる。エプロン11と浴室床6との間に緩衝部材40が介在されることによって、エプロン11及び浴室床6の損傷を防止できる。
軟質緩衝部42は、硬質固定部41に対して着脱可能であるから、軟質緩衝部42が汚損、劣化されたときは、取り外して、新品と交換することができる。
【0061】
図8(a)からわかるように、浴槽3に対して奥側へ押したり奥側へ傾けたりする力が加えられたときは、係止凹部63の鉛直面63vがバックハンガー50の奥側規制部54dに突き当たる。これによって、浴槽3の奥側への変位を阻止できる。したがって、奥側框部12Rが奥側壁7にぶつかったり、こすれたりするのを阻止でき、浴槽3及び奥側壁7の損傷を回避できる。
浴槽3に対して手前側へ引いたり手前側へ傾けたりする力が加えられたときは、摺動レール60の前側面がバックハンガー50の係止壁54bに突き当たることによって、浴槽3が手前側へ変位されるのを阻止できる。更に、係止壁54bの前方に保持壁51hが配置されることで、浴槽3の手前側への変位を確実に阻止できる。
これによって、バックハンガー50に、浴槽3を幅方向へ滑らせる機能と、浴槽3を奥行方向に規制する機能とを併有させることができる。2つの機能を1つの部材に持たせることによって、構成を簡素化できる。
【0062】
浮上バネ55(浮上バネ)をバックハンガー50に設けることによって、押し上げ力の反力を奥側壁7に持たせることができる。つまり、押し上げ力の反力を浴室床6の奥側部分に持たせる必要が無い。したがって、浴室床6の奥側部分に押し上げ力の反力受け部を設ける必要が無い。
摺動レール60の奥側面に奥側框部12Rの垂れ板12bが宛がわれることで、浴槽本体10に対する摺動レール60の奥側への変位を阻止できる。また、摺動レール60の前方にリブ14が近接配置されることで、浴槽本体10に対する摺動レール60の前側への変位を規制できる。ひいては、雌ネジ付きブッシュ13及びボルト15にかかる負荷を軽減できる。
【0063】
可動浴槽3によれば、前側部にだけ車輪31を設ければよく、奥側部には車輪が不要である。かつ、浴室床7には、浴槽本体10の底部を受けるスライドレールも不要である。更に前述したように、浴室床6の奥側部分には、押し上げ力の反力受け部が不要である。したがって、可動浴槽3まわりの清掃の手間が軽減される。浴槽本体10を浴室床6から浮かせることで、浴槽本体10の底部と浴室床6との間の部分を洗うこともできる。特に、浴槽本体10の底部と浴室床6との間における奥側部分の掃除を容易化できる。
敷設体5ひいては浴槽パン4の一部は、浴槽3の幅方向の外側に露出されているから、容易に掃除できる。浴槽3を幅方向に移動させると、敷設体5及び浴槽パン4の新たに露出された部分を容易に掃除できる。
前側の車輪31まわりは奥側部分と比べて掃除が容易である。これによって、車輪31の転動に支障を来さないようにでき、浴槽3の移動を円滑に行うことができる。
【0064】
前側の浮上バネ25は、支柱20内に収容されているから、掃除や入浴時の水で濡れるおそれがない。したがって、浮上バネ25の腐食、劣化による押し上げ機能の低下を防止できる。
【0065】
奥側の浮上バネ55は、バックハンガー50内に収容されることで、掃除や入浴時の水で濡れるのを防止できる。水がバックハンガー50上にかかったとしても、カバー部56が奥側壁部51bの上端部に被さることによって、水が壁固定部材51の内部に入り込むのを防止できる。更に、バックハンガー50上にかかった水をカバー部56に沿って水抜き隙間50dに案内して、該水抜き隙間50dの下方へ排水できる。これによって、浮上バネ55が掃除や入浴時の水で濡れるのを確実に防止できる。したがって、浮上バネ55の腐食、劣化による押し上げ機能の低下を防止又は抑制できる。さらには、摺動レール60に水がかかるのを防止でき、摺動機能を維持できる。
【0066】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、浮上バネは、圧縮コイルバネに限らず、引張コイルバネでもよく、板バネ、空気バネなどであってもよい。
浮上バネは、少なくとも支柱20すなわち浴槽の前側部に設けられていればよい。浴槽の奥側部の浮上手段としては、ガイド部材52が壁固定部材51に対してネジ操作などによって高さ調整されるようになっていてもよい。
車輪61を省略してもよく、支柱20の下端部が浴室床6と接して摺動されるようにしてもよい。
摺動レール60に1又は複数のクリック凸部57が設けられ、バックハンガーにクリック孔64が設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、例えば介助施設における浴室に適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 浴槽可動式浴室
2 洗い場
2a 洗い場パン
3 可動浴槽
4 浴槽パン
5 敷設体(浴槽側の床部分)
5a ボード
5c 急傾斜面
6 浴室床
7 奥側壁
10 浴槽本体
11 エプロン
11a エプロン本体
11b エプロン裾部
11d 段差部
11c 切欠部
12 框
12R 奥側框部
20 伸縮支柱(支柱)
21 上側柱部
21b バネ受け部
22 下側柱部
22b バネ収容筒
23 連結手段
23b ボルト
24 支持ブラケット
25 浮上バネ(圧縮コイルバネ、浮上手段)
26 伸長規制部
26a ピン
26b ピン孔
30 車輪ユニット
31 車輪(前側摩擦低減手段)
32 車輪ホルダ
33 車軸
35 車輪カバー
40 緩衝部材
41 硬質固定部
41a 嵌合凹部
41b 嵌合爪
42 軟質緩衝部
42a 嵌合凸部
42b 爪嵌合溝
45 緩衝隙間
50 バックハンガー
54 摺動ガイド
60 摺動レール(奥側摩擦低減手段)
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図4(a)】
図4(b)】
図5(a)】
図5(b)】
図6(a)】
図6(b)】
図7(a)】
図7(b)】
図8(a)】
図8(b)】
図9
図10(a)】
図10(b)】
図11
図12