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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052568
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】尿検査具
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/493 20060101AFI20220328BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
G01N33/493 B
G01N33/50 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159024
(22)【出願日】2020-09-23
(71)【出願人】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】加藤 博之
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA16
2G045AA25
2G045AA27
2G045CB03
2G045DA54
2G045FA18
2G045FB03
2G045FB17
2G045FB19
2G045GC12
2G045HA06
2G045HA10
2G045HA13
2G045HA14
2G045JA01
2G045JA07
(57)【要約】
【課題】採尿量が多くなった場合でも、液漏れを抑制して衛生状態を良好に保つ。
【解決手段】尿検査具1は、採尿孔23と判定表示窓26とを有する表側パーツ7a及びこの表側パーツ7aに組付けられる裏側パーツ7bからなる容器6と、表側パーツ7aと裏側パーツ7bとの間に介在する状態で容器6に収容された検査シート8とを備える。裏側パーツ7bは、表側パーツ7aに対向する裏側対向面41を有し、当該裏側対向面41のうち、採尿孔23よりも判定表示窓26側の領域には、反表側パーツ7a側に凹む溝部46と、採尿孔23を通じて容器6内に取り込まれた尿の一部を溝部46に誘導する誘導部48とが設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
採尿孔と検査結果の表示窓とを有する表側パーツ及びこの表側パーツに組付けられる裏側パーツからなる容器と、前記採尿孔と前記表示窓との配列方向に延在しかつ前記表側パーツと前記裏側パーツとの間に介在する状態で前記容器に収容された検査シートと、を備える尿検査具であって、
前記裏側パーツは、前記表側パーツに対向する対向面を有し、
前記対向面のうち、前記採尿孔よりも前記表示窓側の領域には、反表側パーツ側に凹む凹部と、前記採尿孔を通じて前記容器内に取り込まれた尿の一部を前記凹部に誘導する誘導部とが設けられている、ことを特徴とする尿検査具。
【請求項2】
請求項1に記載の尿検査具において、
前記凹部は、前記配列方向に延在する溝状である、ことを特徴とする尿検査具。
【請求項3】
請求項2に記載の尿検査具において、
前記誘導部は、前記容器内に取り込まれた尿の一部を前記凹部のうち前記採尿孔側の端部に誘導するように設けられている、ことを特徴とする尿検査具。
【請求項4】
請求項3に記載の尿検査具において、
前記凹部の内底面のうち前記採尿孔側の末端部分を含む所定領域には、前記配列方向に延在するスジ状溝が形成されている、ことを特徴とする尿検査具。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の尿検査具において、
前記配列方向と直交する幅方向に並ぶ、複数の前記凹部が設けられている、ことを特徴とする尿検査具。
【請求項6】
請求項5に記載の尿検査具において、
前記複数の凹部における前記採尿孔側の端部同士を一体的に連通させる連通部が設けられている、ことを特徴とする尿検査具。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の尿検査具において、
前記誘導部は、前記凹部に連続して形成されたスロープである、ことを特徴とする尿検査具。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の尿検査具において、
前記凹部は、平面視において前記検査シートと重なる位置に設けられている、ことを特徴とする尿検査具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イムノクロマト方式等の検査に供される尿検査具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前記尿検査具の代表的な一例として排卵日予測検査具が周知である。本願出願人は、特許文献1に開示されるような尿検査具を開発し提案している。この尿検査具の構成は、概略的には以下の通りである。
【0003】
尿検査具は、検査具本体とキャップとを備える。検査具本体は、細長い扁平な容器と、容器内に収容されるリボン状(短冊状)の検査シートとを備える。容器は、互いに嵌合される、表側片(表側パーツ)と裏側片(裏側パーツ)とで構成され、検査シートは、表側片と裏側片との間に挟み込まれた状態で容器に収容されている。表側片には、その長手方向の一端側から順に採尿孔と判定表示窓とが設けられており、採尿孔を通じて検査シートの一端に尿をかけると、尿が当該検査シートに浸透しながら他端側(判定表示窓側)に移動する。
【0004】
検査シートのうち、判定表示窓に対応する位置(検出部分という)にはライン状のキャプチャ抗体が設けられており、検体である尿中に検出対象である抗原が含まれていると、検出部分にライン状の着色標識(シグナル)が現れる。例えば、排卵日予測検査具の場合には、抗原として黄体形成ホルモン(LH)が尿中に含まれていると、検出部分にライン状の着色標識が現れる。よって、被験者は、このライン状の着色標識の有無に基づき、検査結果(陽性か陰性)を知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-17689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような尿検査具では、採尿孔を通じて適量の尿を検査シートに浸透させることにより検査結果を得ることが可能となる。しかし、被検者自らが採尿孔に直接尿をかける排卵日予測検査具のような尿検査具では、意図せず採尿量が多くなる場合がある。この場合、容器内に取り込まれた尿の一部が、容器(表側片と裏側片との組付面の隙間等)から漏れ出すようなことがあると、衛生上好ましくない。従って、上記尿検査具においては、この点についての対策が講じられているのが望ましい。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、採尿量が多くなった場合でも、液漏れを高度に抑制して、衛生状態を良好に保つことが可能な尿検査具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に係る尿検査具は、採尿孔と検査結果の表示窓とを有する表側パーツ及びこの表側パーツに組付けられる裏側パーツからなる容器と、前記採尿孔と前記表示窓との配列方向に延在しかつ前記表側パーツと前記裏側パーツとの間に介在する状態で前記容器に収容された検査シートと、を備える尿検査具であって、前記裏側パーツは、前記表側パーツに対向する対向面を有し、前記対向面のうち、前記採尿孔よりも前記表示窓側の領域には、反表側パーツ側に凹む凹部と、前記採尿孔を通じて前記容器内に取り込まれた尿の一部を前記凹部に誘導する誘導部とが設けられているものである。
【0009】
この構成によれば、容器内に取り込まれた余分な尿は、前記凹部に誘導されて当該凹部内に留められる。従って、採尿量が多くなった場合でも、表側パーツと裏側パーツとの組付面の隙間等から尿が外部に漏れ出すことが高度に抑制され、これにより尿検査具の衛生状態が良好に保たれる。
【0010】
上記尿検査具において、前記凹部は、前記配列方向に延在する溝状であってもよい。
【0011】
この構成によれば、検査シートの長手方向に沿った比較的広い凹部を裏側パーツに設けることができ、余分な尿を留める上で有効となる。
【0012】
この場合、前記誘導部は、前記容器内に取り込まれた尿の一部を前記凹部のうち前記採尿孔側の端部に誘導するように設けられる。
【0013】
この構成によれば、採尿孔から取り込まれた余分な尿を、円滑に前記凹部内に導入することが可能となる。
【0014】
この場合、前記凹部の内底面のうち前記採尿孔側の末端部分を含む所定領域には、前記配列方向に延在するスジ状溝が形成されているのが好適である。
【0015】
スジ状溝は、凹部に導入された尿の流れを整流することにより、当該尿の流れを促進させる機能を発揮する。そのため、凹部内に尿を円滑に導入する上で有効となる。
【0016】
上記尿検査具においては、前記配列方向と直交する幅方向に並ぶ、複数の前記凹部が設けられていてもよい。
【0017】
この構成によれば、凹部同士の隔壁により検査シートを安定的に支持しながら、余分な尿をより多く凹部内に留めることが可能となる。
【0018】
この場合、前記複数の凹部における前記採尿孔側の端部同士を一体的に連通させる連通部が設けられているのが好適である。
【0019】
この構成によれば、各凹部に導入される尿は、先ず、一体化されて容積が大きくなった部分(連通部の部分)に導入されながら各凹部に対して分流していく。そのため、尿の流れが滞り難く、各凹部に対して円滑に尿を導入することが可能となる。
【0020】
上記の各尿検査具において、前記誘導部は、例えば、前記凹部に連続して形成されたスロープである。
【0021】
この構成によれば、容器内に取り込まれた余分な尿が自ずと凹部に流れ込むようになるので、凹部に対して円滑に尿を導入することが可能となる。
【0022】
また、上記各尿検査具において、前記凹部は、平面視において前記検査シートと重なる位置に設けられているのが好適である。
【0023】
この構成によれば、容器内に取り込まれた余分な尿を、前記対向面のうち検査シートの裏側のスペース(デッドスペース)を利用して留めることが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明の尿検査具によれば、採尿量が多くなった場合でも、表側パーツと裏側パーツとの組付面の隙間等から尿が外部に漏れ出すことが高度に抑制されるため、当該尿検査具の衛生状態を良好に保つことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る尿検査具(キャップを着けた状態)の斜視図である。
図2】上記尿検査具の分解斜視図である。
図3】上記尿検査具の検査具本体の平面図である。
図4】上記検査具本体の断面図(図3のIV-IV線断面図)である。
図5】(a)は、上記検査具本体の容器の表側パーツの内面を示す平面図、(b)は、前記容器の裏側パーツの内面を示す平面図である。
図6】上記裏側パーツの断面図(図5(b)のVI-VI線断面図)である。
図7】(a)は、上記検査具本体の検査シートの平面図、(b)は、前記検査シートの構造を示す断面図である。
図8】上記検査具本体の断面図(図4のVIII-VIII線断面図)である。
図9】上記検査具本体の断面図(図4のIX-IX線断面図)である。
図10図5(b)の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0027】
[尿検査具の構成]
図1は、本発明に係る尿検査具の斜視図であり、図2は、尿検査具の分解斜視図であり、図3は、尿検査具の検査具本体の平面図であり、図4は、検査具本体の断面図(図3のIV-IV線断面図)である。
【0028】
同図に示す尿検査具1は、いわゆる排卵日予測検査具であり、尿中の黄体形成ヒトホルモン(LH)を検知することによって予測排卵日を判別するものである。
【0029】
尿検査具1は、検査具本体2とキャップ4とを備えている。検査具本体2は、細長く、かつその長手方向と直交する厚み方向に扁平な形状を有している。キャップ4は、長手方向の一端が開口した細長いフード型の中空形状を有しており、検査具本体2の一端部分を覆うように、当該検査具本体2に着脱可能に装着される。
【0030】
なお、以下の尿検査具1の説明では、特に言及する場合を除き、図1に示すように、検査具本体2の長手方向を前後方向と称し、前後方向及び厚み方向の双方に直交する方向を幅方向と称する。また、厚み方向の一方側を表側、それとは反対側を裏側と称する。
【0031】
検査具本体2は、その外郭を形成する中空の容器6と、容器6に収容される、前後方向に細長いリボン状(短冊状)の検査シート8とを備える。
【0032】
容器6には、その前端側から順に、採尿部10、キャップ止め部12及び表示部14が設けられている。採尿部10は、被験者の尿を採取する部分(被験者が尿をかける部分)であり、表示部14は、検査結果が現れる部分である。
【0033】
キャップ止め部12は、容器6(検査具本体2)に装着されるキャップ4の突き当て部分である。すなわち、容器6のうちキャップ止め部12より前側の部分は、後側の部分に比べて厚みが小さく形成されている。キャップ4は、採尿部10を覆うように検査具本体2の前端側から被せられ、キャップ止め部12の後記突き当て面371、372に突き当てられた状態で当該検査具本体2(容器6)に外嵌される。尿検査具1の使用時までは、このように採尿部10がキャップ4で覆われることで、採尿部10から容器6内への異物の侵入が防止される。なお、キャップ4は、容器6の後端部にも外嵌(装着)可能であり、尿検査具1の使用時には、後述する通り、容器6の後端部に装着されることにより持ち手部分として使用される。
【0034】
容器6は、主に表側を構成する表側パーツ7aと、主に裏側を構成する裏側パーツ7bとを含み、これら表側パーツ7aと裏側パーツ7bとが互いに厚み方向に組付けられることにより構成されている。検査シート8は、これら表側パーツ7aと裏側パーツ7bとの間に介在する状態で容器6に収容されている。
【0035】
図5(a)は、容器6の表側パーツ7aの内面を示す平面図であり、図5(b)は、容器6の裏側パーツ7bの内面を示す平面図である。また、図6は、裏側パーツ7bの断面図(図5(b)のVI-VI線断面図)である。
【0036】
容器6は、平面視で前後方向に細長い概略長円形形状である。表側パーツ7a及び裏側パーツ7bも同様に、平面視で前後方向に細長い概略長円形形状である。表側パーツ7a及び裏側パーツ7bは、プラスチックやエラストマー等の樹脂材料により形成されている。
【0037】
裏側パーツ7bは、表側パーツ7aに対向する対向面41を有する。裏側パーツ7bの当該対向面41(本発明の「対向面」に相当する。以下、裏側対向面41という)には、その外縁より内側の位置に、周方向にほぼ連続的に延びる周壁42が設けられている。裏側パーツ7bの前後両端部近傍の位置であってかつ周壁42の内側の領域には、各々幅方向に延びる隔壁43a、43bが設けられている。そして、これら周壁42及び隔壁43a、43bの内側の領域44に前記検査シート8が配置されている。つまり、裏側対向面41のうち当該領域44は、表側パーツ7aとは反対側(裏側)から検査シート8を支持するシート支持面(以下、シート支持面44と称す)である。
【0038】
一方、表側パーツ7aは、裏側パーツ7bに対向する対向面31を有する。表側パーツ7aの当該対向面31(以下、表側対向面31という)には、その外縁に沿って周方向に連続的に延びる周壁32が設けられている。また、表側対向面31には、その前端部分において前記周壁32から分岐し、後方に向かって互いに平行にかつ断続的に真っ直ぐ伸びる一対の嵌合壁34a、34bが立設されている。表側パーツ7aの周壁32の前後両端部分及び前記嵌合壁34a、34bは、裏側パーツ7bの周壁42に対応した形状を有している。つまり、表側パーツ7aの周壁32の前後両端部分及び嵌合壁34a、34bが、裏側パーツ7bの周壁42に外嵌されることによって、表側パーツ7aと裏側パーツ7bとが互いに組付けられている(図8参照)。
【0039】
表側パーツ7aのうち、採尿部10を形成する領域には、図3及び図4に示すように、採尿溝22と誘導孔24とが設けられている。採尿溝22は、検体である尿を容器6内に取り込むための前後方向に延在する溝であり、その内底面22aに形成された採尿孔23を通じて尿を容器6内に取り込む。当例では、採尿溝22の数は3つである。各採尿溝22は、表側パーツ7aの幅方向中央部、詳しくは、検査シート8(シート支持面44)に対向する領域に、互いに平行にかつ幅方向に等間隔で設けられている。
【0040】
なお、図3に示すように、各採尿溝22の採尿孔23の後端は、採尿溝22の後側面22bから前方に所定距離L1だけ離れた位置に設定されている。このように採尿孔23の後端位置が採尿溝22の後側面22bから前方に離れていることで、尿検査具1の後記突き当て面371や採尿溝22の後側面22bに当たった尿は、各採尿溝22の内底面22aに沿って一旦前方に移動し、採尿孔23を通じて容器6内に取り込まれる。これにより、採尿部10に尿をかけた時に、その圧力(液圧)で採尿孔23の後端部分から容器6内へ過剰な尿が短時間で取り込まれることが抑制される。
【0041】
誘導孔24は、採尿部10にかけられる尿の一部を逃がすための孔である。誘導孔24は、前後方向に延在するスリット状を成し、表側パーツ7aをその厚み方向に貫通している。当例では、誘導孔24の数は2つであり、各誘導孔24は、前記3つの採尿溝22(採尿孔23)を挟むように、採尿部10の幅方向両端部に各々設けられている。具体的には、周壁32と嵌合壁34a、34bとの間の位置に設けられている。
【0042】
ここで、図5(a)、(b)に示すように、裏側パーツ7bのうち誘導孔24が設けられる部分の幅は、これに対応する部分の表側パーツ7aの幅よりも小さい。よって、各誘導孔24は、表側パーツ7aよりも幅方向外側に位置している(図8参照)。つまり、採尿部10の外縁部分(幅方向両端の縁部)にかかる尿は、各誘導孔24を通じてそのまま容器6の裏側に流下する。これにより、採尿部10の外縁部分における尿の跳ね返りが抑制されるようになっている。
【0043】
なお、図3に示すように、各誘導孔24の後端の位置は、キャップ止め部12の後記突き当て面371から前方に所定距離L2だけ離れた位置に設定されている。このように誘導孔24の後端位置が後記突き当て面371から前方に離れていることで、当該誘導孔24から両パーツ7a、7bの嵌合部分を通じて、意図せず尿が容器6内に入り込むことが抑制される。
【0044】
図4に示すように、表側パーツ7aのうち、採尿部10の後端部分を形成する領域には、さらに検査シート8に当接する当接部35が設けられている。当接部35は、前記3つの採尿溝22の底壁(内底面22a)を形成する部分でもある。
【0045】
当接部35は、シート支持面44に対向し、検査シート8の幅方向全体に亘ってその表側面に当接するほぼ平坦な当接面36を有いている。当接面36は、図4及び図5(a)に示すように、平面視矩形(正方形又は長方形)で、その中央部分には、他の部分よりも僅かに突出して幅方向に延在し、検査シート8を押圧する突部36aが設けられている。この突部36aは、検査シート8のうち、後記コンジュゲートパッド53の前端よりも前方の位置で後記サンプルパッド52と後記ベースシート51との積層部分を押圧する。
【0046】
表側パーツ7aのうち、表示部14を形成する領域には、図1図4及び図5(a)に示すように、判定表示窓26(本発明の「表示窓」に相当する)及び液量表示窓27が設けられている。判定表示窓26及び液量表示窓27は、何れも表側パーツ7aを厚み方向に貫通する、前後方向に細長い平面視長方形の孔からなる。
【0047】
判定表示窓26は、検査シート8に現れる検査結果(判定結果)を外部から視認可能にするための窓である。判定表示窓26は、検査シート8の後記テストライン54a及び後記コントロールライン54bに対応する位置に設けられている。これにより、検査結果、すなわち各ライン54a、54bが呈色することにより現れる後記ライン状の着色標識(シグナル)の有無を外部から視認可能となっている。
【0048】
液量表示窓27は、判定表示窓26の後方に設けられている。液量表示窓27は、検査シート8に現れる液量確認表示を外部から視認可能にする窓である。液量表示窓27は、検査シート8の後記液量ライン54cに対応する位置に設けられている。これにより、液量確認表示、すなわち液量ライン54cが呈色することにより現れる後記ライン状の着色標識(シグナル)を外部へ表示可能となっている。
【0049】
なお、表側パーツ7aの表側対向面31のうち、表示部14に対応する領域には保護シート28が固定されている。保護シート28は、例えばプラスチック製の透明シートである。これにより、検査結果等を外部から視認することが可能な状態で、判定表示窓26及び液量表示窓27が容器内側から塞がれている。
【0050】
表側パーツ7aのうち、キャップ止め部12を形成する領域には、図2図4に示すように、前記採尿溝22の後側面22bを厚み方向外側に延長するように形成された突き当て面371が形成されている。また、裏側パーツ7bのうち、前記突き当て面371に対応する位置には、同様に、厚み方向に延在する突き当て面372が形成されている。前記キャップ4は、その開口縁部が、これら突き当て面371、372に突き当てられた状態で検査具本体2(容器6)に装着(外嵌)される。
【0051】
表側パーツ7aの表側対向面31のうち、採尿孔23と判定表示窓26との間の領域、詳しくは当接部35と判定表示窓26との間の領域には、図4及び図5に示すに、さらに裏側対向面41に向かって各々突出して、検査シート8を押圧する複数の突部が設けられている。具体的には、前側から順に、前側突部38、中間突部39及び後側突部40が設けられている。各突部38~40は、検査シート8の表側面に沿って流れる尿を堰き止めることにより、余分な尿が後方に流れることを抑制するための突部である。
【0052】
前側突部38は、前記当接部35の近傍の位置に、後側突部40は、判定表示窓26の前側の縁部に沿った位置に各々設けられており、中間突部39は、前側突部38と後側突部40との間のやや前側突部38側に偏った位置に設けられている。
【0053】
各突部38~40は、何れも表側パーツ7aの幅方向に延在する断面長方形の突条からなり、嵌合壁34aと嵌合壁34bとの間の領域に、前後方向に所定間隔を隔てて互いに平行に設けられている。各突部38~40の幅は略同等であり、何れも検査シート8の幅と同等又はそれよりも若干大きく設定されている。従って、各突部38~40の幅方向両端は、裏側パーツ7bの周壁42の内周面に接するか、当該内周面の近傍に位置している。これにより、各突部38~40は、検査シート8をその幅方向全体に亘って押圧する。各突部38~40の厚み(ここでは、表側パーツ7aの前後方向と平行な方向の長さをいう)は、略同等に設定されている。
【0054】
図4に示すように、前側突部38及び中間突部39の各先端38a、39aの位置(表側パーツ7aの厚み方向における位置)はほぼ同等である。一方、後側突部40の先端40aは、前側突部38及び中間突部39の各先端38a、39aよりもシート支持面44(裏側対向面41)側に突出するように設けられている。なお、前記当接部35の当接面36との関係では、後側突部40の先端40aは、当接面36よりも僅かにシート支持面44(裏側対向面41)側に突出しており、前側突部38及び中間突部39の各先端38a、39aは、当接面36よりも僅かに反シート支持面44側に凹んでいる。
【0055】
図7(a)は、検査シート8の平面図であり、図7(b)は、検査シート8の構造を示す断面図である。
【0056】
検査シート8は、ベースシート51、サンプルパッド52、コンジュゲートパッド53、メンブレン54、吸収パッド55及び乾燥剤56を含む。ベースシート51は、例えばニトロセルロース、グラスフィルター等かなる前後方向に細長い平面視長方形のシートである。ベースシート51の前後方向長は、検査シート8の前後方向長と同等である。このベースシート51上に、サンプルパッド52、コンジュゲートパッド53、メンブレン54、吸収パッド55及びシート状の乾燥剤56が、前端部からこの順番で配列されて積層されている。
【0057】
図7(b)では、便宜上、サンプルパッド52、コンジュゲートパッド53及び吸収パッド55を直線的に示している。そのため、サンプルパッド52等がベースシート51から部分的に離れて示されているが、実際には、サンプルパッド52等は、ベースシート51に接触するように設けられている。
【0058】
サンプルパッド52は、尿(検体)を吸収しながら輸送するものであり不織布で形成されている。コンジュゲートパッド53は、尿中の抗原の標識化を行うものであり、例えば各種不織布やガラス繊維等に、金コロイド等で標識化された抗LH・モノクローナル抗体(標識抗体)が担持された構成を有する。
【0059】
メンブレン54は、尿中の抗原を検出するものである。メンブレン54は、ニトロセルロース、各種濾紙又は各種不織布に、ライン状のキャプチャ抗体からなるテストライン54a及びコントロールライン54bが設けられた構成を有する。つまり、コンジュゲートパッド53を通過した尿中に抗原(すなわち、黄体形成ホルモン(LH)が含まれていると、各ライン54a、54bが呈色した着色標識(シグナル)がメンブレン54に現れる。このライン状の着色標識の濃淡又は着色標識な出ないことにより、検査日に被験者のホルモン分泌量の急激な増加現象(LHサージ)が生じているか否か(陽性又は陰性)が判別可能となる。
【0060】
図7(a)中の符号54cは、メンブレン54の後端部近傍に設けられた液量ラインである。尿がメンブレン54の後端部近傍の位置まで完全に浸透すると、当該液量ライン54cが呈色した着色標識(シグナル)が現れる。つまり、必要量の尿がメンブレン54に浸透しているか否かがこのライン状の着色標識の有無により判別可能となる。
【0061】
吸収パッド55は、メンブレン54に浸透した余分な尿を吸収するものであり、例えば、セルロース製の濾紙等で形成されている。乾燥剤56は、吸水による検査シート8の劣化を抑制するものである。尿検査具1は、使用直前まで、例えばアルミラミネート構造の袋等に密封されている。従って、前記乾燥剤56が設けられていることで、検査シート8(乾燥剤56以外の部分)が使用前に水分を吸収して劣化等することが抑制される。なお、乾燥剤56は、尿検査具1の使用時には、容器6内における検査シート8周りの余分な尿を吸収する機能も発揮する。
【0062】
検査シート8は、図5(b)に示すように、隔壁43a、43bにより前後方向に位置決めされるとともに、周壁42により幅方向に位置決めされた状態で、裏側パーツ7bのシート支持面44上に支持される。
【0063】
サンプルパッド52は、図7(a)、(b)に示すように、その前端部がベースシート51の前端部に揃うように当該ベースシート51に重ねられている。サンプルパッド52は、上記位置決め状態において、採尿部10からキャップ止め部12に対応する位置に亘って配置されるように、その前後方向長が設定されている。
【0064】
メンブレン54は、その前端部がサンプルパッド52の直後方に配置されるようにベースシート51に重ねられている。メンブレン54は、キャップ止め部12に対応する位置から表示部14の後端部分に亘って配置されるように、その前後方向長が設定されている。
【0065】
コンジュゲートパッド53は、サンプルパッド52の後端部からメンブレン54の前端部に亘って配置されるように、その前後方向長が設定されている。コンジュゲートパッド53の前端部は、サンプルパッド52の後端部の裏側面に、コンジュゲートパッド53の後端部は、サンプルパッド52の前端部の表側面に各々重ねられている。
【0066】
吸収パッド55は、規定量の尿を吸収するように前後方向長が設定されており、その前端部は、メンブレン54後端の表側面に重ねられている。乾燥剤56は、吸収パッド55から後方に離間した所定の位置からベースシート51の後端に亘って配置されるように、その前後方向長が設定されている。
【0067】
容器6に収容された検査シート8は、図7(b)に概略的に示すように、サンプルパッド52の後端部が、表側パーツ7aの前側突部38に対応する位置に配置され、メンブレン54の前端部が、表側パーツ7aの中間突部39に対応する位置に配置され、さらに、コンジュゲートパッド53の後端から僅かに後方の位置が、表側パーツ7aの後側突部40に対応する位置に配置される。従って、検査シート8は、サンプルパッド52の後端部に対応する位置が前側突部38によって押圧され、メンブレン54の前端部に対応する位置が中間突部39に押圧され、コンジュゲートパッド53の後端から僅かに後方の位置が後側突部40により押圧される。換言すれば、表側パーツ7aの前側突部38は、容器6に収容された検査シート8のうち、サンプルパッド52の後端部に対応する位置(すなわち、コンジュゲートパッド53、メンブレン54及びベースシート51が積層された部分)を押圧し、中間突部39は、メンブレン54の前端部に対応する位置(すなわち、コンジュゲートパッド53、メンブレン54及びベースシート51が積層された部分)を押圧し、後側突部40は、コンジュゲートパッド53の後端から僅かに後方の位置(すなわち、コンジュゲートパッド53の後端よりも判定表示窓26側であってメンブレン54とベースシート51とが積層された部分)を押圧するように設けられていると言うことができる。
【0068】
図2図4及び図5(b)に示すように、裏側パーツ7bの裏側対向面41のうち、キャップ止め部12に対応する位置よりも後方の領域には、反表側対向面31側に凹んで前後方向に延在する一対の溝部46(本発明の「凹部」に相当する)と、これら溝部46に尿を誘導するための誘導部48とが設けられている。
【0069】
各溝部46は、検査シート8に浸透することなく当該検査シート8に沿って前方側(採尿部10)から流れてくる尿を逃がすための場所であり、シート支持面44に設けられている。詳しくは、各溝部46は、シート支持面44のうち、検査シート8の裏側の領域、すなわち、平面視で検査シート8と重なる位置に設けられている。各溝部46は、幅方向に隣接して互いに平行に設けられており、これら溝部46を隔てる隔壁の端面は、シート支持面44の一部を形成している。
【0070】
各溝部46の前端部分は、連通部47を介して一体化され、互いに連通している。連通部47は、両溝部46を隔てる隔壁が切り欠かれることにより形成されている。
【0071】
各溝部46の前端は、表側パーツ7aの後側突部40の直後方に位置しており、前記誘導部48は、各溝部46の前端に連続するように設けられている。つまり、誘導部48は、後側突部40に対向する位置に設けられている。
【0072】
誘導部48は、両溝部46に繋がる中央の第1誘導部49aと、その両側(幅方向両側)に各々繋がる第2誘導部49bとを含む。第1誘導部49aは、図4に示すように、シート支持面44の前側から後側に向かって先下がりに傾斜するスロープ状、より詳しくはやや湾曲したスロープ状に形成されている。また、各第2誘導部49bは、図9に示すように、シート支持面44の幅方向外側から第1誘導部49aに向かって各々先下がりに傾斜するスロープ状に形成されている。各第2誘導部49bは、それらの末端(反第1誘導部49a側の末端)が検査シート8の幅方向外側に位置するように設けられている。これにより、検査シート8の幅方向両外側から、誘導部48を介して各溝部46に尿を誘導し得るようになっている。
【0073】
各溝部46の内底面46aは、前側から後側に向かって先下がりに僅かに傾斜している。各溝部46の内底面46aのうち、その前端部分の領域には、図10に示すように、各々前後方向に延びて互いに幅方向に並ぶ複数のスジ状溝461が形成されている。これらのスジ状溝461は、各溝部46の前端部分に導入された尿の流れを整流することにより、当該尿が後方へ向かって流れるのを促進させる機能を発揮する。
【0074】
なお、図5図6及び図11において、符号42aは、裏側パーツ7bの周壁42に形成された切欠部である。切欠部42aは、採尿部10の後端部分においてその幅方向両側に位置する周壁42に各々設けられている。また、符号36bは、表側パーツ7aにおける突部36aと各嵌合壁34a、34bとの間に各々形成された仕切り壁ある。各仕切り壁36bは、裏側パーツ7bのシート支持面44に対して前記各切欠部42aの位置で当接することにより、当該切欠部42aをその途中部分で前後に仕切るように形成されている。これらの切欠部42a及び仕切り壁36bが設けられていることで、後述する通り、周壁42の頂部を伝って採尿部10から表示部14側へ尿が移動することが抑制される。
【0075】
[作用効果]
次に、上述した尿検査具1の作用効果について、その使用方法と共に説明する。
【0076】
図1に示す尿検査具1は使用前の状態を示している。尿検査具1を使用する際には、キャップ4を検査具本体2から取り外し、検査具本体2(容器6)の後端部に装着する。これにより、採尿部10を露出させるとともに、検査具本体2の全長をキャップ4によって伸長させる。
【0077】
その後、検査具本体2の後端部に装着されたキャップ4を把持し、検査具本体2の採尿部10に向かって尿をかける。採尿部10にかけられた尿は、採尿孔23を通じて容器6内に取り込まれ、検査シート8のサンプルパッド52に吸収される。尿を採尿部10にかけた後、検査具本体2を平坦な場所に置き、規定時間(数分)だけ放置する。
【0078】
この放置期間中に、サンプルパッド52に吸収された尿は、さらにコンジュゲートパッド53及びメンブレン54へと浸透しながら移動する。この際、尿中に抗原(黄体形成ヒホルモン(LH))が含まれている場合、すなわち被験者の排卵が予測される場合には、メンブレン54に前記各ライン54a、54bが呈色した着色標識(シグナル)が現れる。従って、被験者は、判定表示窓26を通じて判定結果(予測される排卵日)を確認することができる。
【0079】
なお、被検者が自ら採尿部10に尿をかける上記尿検査具1では、意図せず採尿量が多くなる場合がある。この場合、検査シート8に浸透しながら移動する尿とは別に、検査シート8の表側面を伝うようにして容器6内を余分な尿が流れると、メンブレン54の表側面が尿で覆われて、最悪の場合には、前記着色標識に発色不良が生じることが考えられる。
【0080】
しかし、上記尿検査具1によると、採尿量が仮に多くなった場合でも、上記のような現象が効果的に抑制される。すなわち、上記尿検査具1では、検査具本体2(容器6)の採尿部10と判定表示窓26との間の領域に、突条からなる前側突部38、中間突部39及び後側突部40が備えられている。そのため、検査シート8(サンプルパッド52)に浸透しきれずに当該検査シート8を伝うように流れる余分な尿は、これら突部38~40によって堰き止められる。
【0081】
詳しくは、検査シート8のうち、ベースシート51とサンプルパッド52とコンジュゲートパッド53との積層部分が前側突部38により押圧されていることで、サンプルパッド52に浸透することなく採尿部10側から検査シート8を伝って流れる余分な尿は、当該前側突部38によって堰き止められる。また、尿が前側突部38の位置を通過した場合でも、ベースシート51とコンジュゲートパッド53とメンブレン54との積層部分が中間突部39により押圧されていることで、当該尿は、中間突部39により堰き止められる。仮に、尿が中間突部39の位置を通過した場合でも、コンジュゲートパッド53の直後方の位置で、ベースシート51とメンブレン54との積層部分が後側突部40により押圧されていることで、当該尿は、前記着色標識が現れる部分、つまり、検査シート8のうち、判定表示窓26及び液量表示窓27に対応する部分(以下、適宜、検出部分という)、よりも前方の位置でさらに堰き止められる。この場合、最後尾の後側突部40は、判定表示窓26の前側の縁部に沿って設けられており、しかも、その先端40aは中間突部39及び後側突部40の先端38a、39aよりも突出して設けられているため、検査シート8を伝って流れる尿は、前記検出部分の直前で効果的に堰き止められる。
【0082】
前記突部38~40でせき止められた尿の一部は、表側パーツ7aの前側突部38と中間突部39との隙間や、中間突部39と後側突部40との隙間にトラップされる。また、誘導部48によって検査シート8の裏側に誘導されて前記一対の溝部46に導入される。
【0083】
このように、上記尿検査具1では、検査シート8を伝って余分な尿が前記検出部分にまで流動すること、ひいては前記検出部分の表側面が尿に覆われて、前記着色標識に発色不良が生じることが効果的に抑制される。従って、上記尿検査具1によると、採尿量が多くなった場合でも精度良く検査を行うことが可能となる。
【0084】
また、上記尿検査具1によると、検査シート8に浸透しきれない余分な尿、特に、前記突部38~40によって堰き止められた尿は、上記のようにシート支持面44に設けられた各溝部46に誘導されて(逃がされて)ここに留められる。特に前記突部40によって尿が堰き止められることにより、より効果的に尿は各溝部46に誘導されてここに留められる。これにより、例えば採尿後の放置期間中に、余分な尿が、表側パーツ7aと裏側パーツ7bとの嵌合面の隙間などから容器6の外部に漏れ出すことが抑制される。従って、上記尿検査具1によると、採尿量が多くなった場合でも、衛生状態を良好に確保することが可能となる。また、前記突部38、39は浸透した尿によって膨らむコンゲージュパッド53を抑える効果があるため、検査シート8において尿の移動が局所的に変化することを抑制し、検査の精度を高めることが可能になる。
【0085】
特に、各溝部46は、シート支持面44(裏側対向面41)のうち、平面視で検査シート8と重なる位置(検査シート8の裏側の領域)に設けられている。従って、上記尿検査具1によれば、採尿量が多くなった場合の上記課題、すなわち、前記検出部分の着色標識に発色不良が生じることや、容器6から尿が漏れ出すことを、検査シート8の裏側のデッドスペースを利用して解決した合理的な構成が達成されるという利点もある。
【0086】
この場合、後側突部40と誘導部48とは、互いに対向する位置に設けられており、誘導部48は、検査シート8の幅方向外側に延在する第2誘導部49bを有している。そのため、後側突部40でせき止められた余分な尿は、検査シート8の側方から裏側に誘導されて各溝部46に円滑に導入される。
【0087】
また、各溝部46の前端部分は、連通部47によって一体化されて容積が大きくなっており、誘導部48によって誘導される尿は、当該前端部分に導入されつつ各溝部46に対して分流していくこととなる。そのため、各溝部46がそれらの長手方向に完全に独立している構成(連通部47を備えていない構成)に比べると、各溝部46の前端部分で尿が停滞し難くい。しかも、各溝部46の内底面46aは、前側から後側に向かって先下がりに傾斜しており、さらに当該内底面46aには、前記スジ状溝461が設けられ、当該スジ状溝461によって尿の流れが整流されることで、後方への尿の流れが促進されるようになっている。この点でも、各溝部46の前端部分で尿が停滞することが抑制される。従って、上記尿検査具1によれば、容器6内の余分な尿を円滑に各溝部46に導入することができ、例えば各溝部46の前端部分で尿の流れが滞り、行き場を失った尿が容器6から漏れ出すといった現象を抑制することが可能となる。
【0088】
また、上記尿検査具1によれば、シート支持面44のうち検査シート8の裏側の領域に各溝部46が設けられていることで、検査シート8が各溝部46の蓋の機能を発揮する。そのため、検査終了後、尿検査具1を廃棄する際などに、各溝部46内の尿が外部に流出すること、ひいては容器6から外部に尿が漏れ出すことが抑制される。従って、衛生状態を確保する上で有利と言える。
【0089】
また、上記尿検査具1によれば、容器6を構成する裏側パーツ7bの周壁42に上記切欠部42aが設けられるとともに、表側パーツ7aのうち、裏側パーツ7bの各切欠部42aに対応する位置に仕切り壁36bが設けられているので、この点でも、余分な尿が検査シート8を伝って前記検出部分に流動することが抑制される。すなわち、上述の通り、表側パーツ7aと裏側パーツ7bとは、表側パーツ7aの嵌合壁34a、34bと裏側パーツ7bの周壁42とが嵌合することにより組付けされている。この場合、図8に示すように、表側パーツ7aの表側対向面31と周壁42の頂部との間には微少な隙間Sが形成される。そのため、仮に周壁42の切欠部42aや仕切り壁36bが無ければ、採尿部10にかけられた尿の一部が、図10中の破線矢印F1に示すように、周壁42の頂部を伝って前記隙間Sからキャップ止め部12へと流動し、さらに検査シート8の表側面を伝って前記検出部分に流動することが考えられる。
【0090】
しかし、上記尿検査具1によれば、裏側パーツ7bの前記周壁42に切欠部42aが形成されるとともに、表側パーツ7aのうち、各切欠部42aに対応する位置に仕切り壁36bが設けられているため、周壁42の頂部を伝って流れる尿の大部分は、図10中の破線矢印F2に示すように、仕切り壁36bで堰き止められ、当該仕切り壁36bと検査シート8の側面とによって外部に誘導されながら切欠部42aを通じて容器6から流出する。つまり、キャップ止め部12に到達する前に当該切欠部42aから外部へと流出する。そのため、余分な尿が採尿部10から検査シート8を伝って表示部14側に流動することが効果的に抑制される。
【0091】
[変形例等]
以上説明した尿検査具1は、本発明に係る尿検査具の好ましい実施形態の例示であって、尿検査具の具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、以下のような構成を採用することも考えられる。
【0092】
(1)実施形態では、採尿部10(採尿孔23)と判定表示窓26との間に、各々突条からなる3つの突部38~40(前側突部38、中間突部39、後側突部40)が設けられているが、例えば、真ん中の中間突部39を省略するようにしてもよい。また、中間突部39として、突条以外の形状を採用してもよい。例えば、中間突部39として、円形(楕円含む)断面や多角形断面を有する柱状の複数の突部を設けることにより、各突部38~40の間の空間に、余分な尿をその表面張力を利用してトラップするようにしてもよい。このような構成も、余分な尿が検査シート8を伝って表示部14側に流動することを抑制する上で有効となる。
【0093】
(2)実施形態では、余分な尿をシート支持面44に設けられた一対の溝部46に逃がすようにしているが、このように余分な尿を逃がすための凹部(本発明の「凹部」)の形状は溝状(溝部46)には限定されない。例えば、平面視が正方形、円形、三角形等の凹部であってもよい。また、実施形態では、各溝部46の前端部分に誘導部48が設けられているが、誘導部48の位置はこれに限定されない。誘導部48の位置は、前記凹部の具体的な形状や、裏側対向面41内における当該凹部の位置(場所)に応じて適宜選定すればよい。なお、前記凹部(溝部46)の一部が検査シート8の幅方向外側にはみ出るように当該凹部を設けてもよい。この場合には、当該はみ出し部分から前記凹部内に自ずと尿が流れ込むことが期待できるため、前記誘導部48を省略するようにしてもよい。
【0094】
(3)実施形態の尿検査具1は、いわゆる排卵日予測検査具であり、尿中の黄体形成ホルモン(LH)分泌量を検知することによってLHサージが生じているか否かを判別し、排卵日予測又はその補助をするものである。しかし、本発明に係る尿検査具は、排卵日予測検査以外の検査(例えば妊娠検査)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 尿検査具
2 検査具本体
4 キャップ
6 容器
7a 表側パーツ
7b 裏側パーツ
8 検査シート
10 採尿部
12 キャップ止め部
14 表示部
22 採尿溝
23 採尿孔
26 判定表示窓(表示窓)
31 表側対向面
41 裏側対向面(対向面)
46 溝部(凹部)
47 連通部
48 誘導部
49a 第1誘導部
49b 第2誘導部
461 スジ状溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10