(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052580
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】管状被検体の超音波探傷方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/04 20060101AFI20220328BHJP
【FI】
G01N29/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159046
(22)【出願日】2020-09-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】廣口 勤
(72)【発明者】
【氏名】中島 浩一
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA06
2G047AB01
2G047BB02
2G047BC08
2G047CB01
2G047CB02
2G047GF17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】特殊な探触子も用いずかつ生産性も落とさない、高t/D金属管の超音波探傷方法を提供する。
【解決手段】外径に対する肉厚の比(t/D)が20.0%超30.0%以下の金属製の管状被検体に、振動子から超音波を外径の接線の垂線に対して斜めに入射し、この入射した超音波が該管状被検体の内部を伝達する際の、屈折横波または屈折縦波が、管の内外面で反射またはモード変換して発生する屈折横波により該管状被検体のきずを探傷する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外径に対する肉厚の比(t/D)が20.0%超30.0%以下の金属製の管状被検体に、振動子から超音波を外径の接線の垂線に対して斜めに入射し、この入射した超音波が該管状被検体の内部を伝達する際の、屈折横波または屈折縦波が、管の内外面で反射またはモード変換して発生する屈折横波により該管状被検体のきずを探傷する超音波探傷方法。
【請求項2】
前記(t/D)が20.0%超21.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:28.0°以上{53.0-(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:43.5°以上{73.6-1.2(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、
前記(t/D)が21.0%以上22.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:{49.0-(t/D)}°以上{53.0-(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:{68.7-1.2(t/D)}°以上{73.6-1.2(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、
前記(t/D)が22.0%以上23.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:27.0°以上{53.0-(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:42.3°以上{73.6-1.2(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、
前記(t/D)が23.0%以上24.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:{50.0-(t/D)}°以上30.0°以下の屈折横波を用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:{67.6-1.1(t/D)}°以上45.9°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、
前記(t/D)が24.0%以上25.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:26.0°以上30.0°以下の屈折横波を用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上45.9°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、
前記(t/D)が25.0%以上26.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:26.0°以上{55.0-(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上{75.9-1.2(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、
前記(t/D)が26.0%以上30.0%以下のとき、前記屈折横波のうち屈折角:26.0°以上29.0°以下の屈折横波を、用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上44.7°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、
それぞれ探傷する請求項1に記載の超音波探傷方法。
【請求項3】
前記(t/D)が20.0%超21.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:28.0°以上{53.0-(t/D)}°以下の屈折横波が管の内面で反射しさらに管の外面で反射して発生する屈折横波で管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:43.5°以上{73.6-1.2(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、
前記(t/D)が21.0%以上22.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:{49.0-(t/D)}°以上{53.0-(t/D)}°以下の屈折横波が管の内面で反射しさらに管の外面で反射して発生する屈折横波で管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:{68.7-1.2(t/D)}°以上{73.6-1.2(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、
前記(t/D)が22.0%以上23.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:27.0°以上{53.0-(t/D)}°以下の屈折横波が管の内面で反射しさらに管の外面で反射して発生する屈折横波で管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:42.3°以上{73.6-1.2(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、
前記(t/D)が23.0%以上24.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:{50.0-(t/D)}°以上30.0°以下の屈折横波が管の内面で反射しさらに管の外面で反射して発生する屈折横波で管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:{67.6-1.1(t/D)}°以上45.9°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、
前記(t/D)が24.0%以上25.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:26.0°以上30.0°以下の屈折横波が管の内面で反射しさらに管の外面で反射して発生する屈折横波で管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上45.9°以下の屈折横波を用いて管
の外面きずを、
前記(t/D)が25.0%以上26.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:26.0°以上{55.0-(t/D)}°以下の屈折横波が管の内面で反射しさらに管の外面で反射して発生する屈折横波で管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上{75.9-1.2(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、
前記(t/D)が26.0%以上30.0%以下のとき、前記屈折横波のうち屈折角:26.0°以上29.0°以下の屈折横波が管の内面で反射しさらに管の外面で反射して発生する屈折横波で管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上44.7°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、
それぞれ探傷する請求項1に記載の超音波探傷方法。
【請求項4】
前記(t/D)が20.0%超21.0%未満のとき、前記屈折縦波のうち屈折角:59.0°以上{258.2-8.7(t/D)}°以下の屈折縦波が管の外面で反射/モード変換して発生する屈折横波を用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:43.5°以上{73.6-1.2(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、
前記(t/D)が21.0%以上22.0%未満のとき、前記屈折縦波のうち屈折角:{122-3.0(t/D)}°以上{175.25-4.75(t/D)}°以下の屈折縦波が管の外面で反射/モード変換して発生する屈折横波を用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:{68.7-1.2(t/D)}°以上{73.6-1.2(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、
前記(t/D)が22.0%以上23.0%未満のとき、前記屈折縦波のうち屈折角:56.0°以上{175.25-4.75(t/D)}°以下の屈折縦波が管の外面で反射/モード変換して発生する屈折横波を用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:42.3°以上{73.6-1.2(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、
前記(t/D)が23.0%以上24.0%未満のとき、前記屈折縦波のうち屈折角:{120.4-2.8(t/D)}°以上66.0°以下の屈折縦波が管の外面で反射/モード変換して発生する屈折横波を用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:{67.6-1.1(t/D)}°以上45.9°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、
前記(t/D)が24.0%以上25.0%未満のとき、前記屈折縦波のうち屈折角:53.2°以上66.0°以下の屈折縦波が管の外面で反射/モード変換して発生する屈折横波を用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上45.9°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、
前記(t/D)が25.0%以上26.0%未満のとき、前記屈折縦波のうち屈折角:53.2°以上 {158.5-3.7(t/D)}°以下の屈折縦波が管の外面で反射/モード変換して発生する屈折横波を用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上{75.9-1.2(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、
前記(t/D)が26.0%以上30.0%以下のとき、前記屈折縦波のうち屈折角:53.2°以上62.3°以下の屈折縦波が管の外面で反射/モード変換して発生する屈折横波を、用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上44.7°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、
それぞれ探傷する請求項1に記載の超音波探傷方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載された超音波探傷方法を用いて管の探傷を行うに際し、管の内面に人工きず加工を施した管の内径が15mm未満の管状被検体をテストピースとして用いる超音波探傷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波探傷方法に関する。具体的には、本発明は金属製の管状被検体、特に外径Dに対する肉厚tの比(t/D)が20.0%超の金属管に対しても、その管の表面(外面とも言う)、その管の中空部に面する内表面(内面とも言う)にそれぞれ存在する微小なきずを、射角探傷によって高精度に探傷することができる超音波探傷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、t/Dが20.0%超の高t/D(本発明で高t/Dとはt/Dが20.0%超であり、上限はt/Dが30.0%であることを意味する)金属管を被検体とした超音波探傷では、管の内面に存在するきず(以下、内面きずという)、管の外面に存在するきず(以下、外面きずという)を、一つの探触子で探傷することができなかった。そのため、別個の探触子を用いる必要があり、通常のt/Dが20.0%以下の金属管にくらべて、その生産性は1/2程度に下げざるを得なかった。
【0003】
ここで、上記問題を解決する方法として、特許文献1に開示されているような、非対称曲率形状探触子や、探触子と非対象曲線音響レンズを組み合わせた探触子、非対象曲線形状フェーズドアレイ探触子を用いた射角探傷方法があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の超音波探傷方法では、上述したように、非対称曲線形状探触子や、探触子と非対象曲線形状音響レンズを組み合わせた探触子、または非対称曲線形状フェーズドアレイ探触子といった特殊な探触子が、管状被検体のサイズ毎にそれぞれ必要であり、探触子費用が増加するといった問題があった。加えて、管状被検体のサイズ変更による探触子の交換時間が発生するなど生産性の面でも問題が残っていた。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑み、前記課題を解決する、特殊な探触子を用いずかつ生産性も落とさない、高t/D金属管の超音波射角探傷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.外径に対する肉厚の比(t/D)が20.0%超30.0%以下の金属製の管状被検体に、振動子から超音波を外径の接線の垂線に対して斜めに入射し、この入射した超音波が該管状被検体の内部を伝達する際の、屈折横波または屈折縦波が、管の内外面で反射またはモード変換して発生する屈折横波により該管状被検体のきずを探傷する超音波探傷方法(第1発明)。
【0008】
2.前記(t/D)が20.0%超21.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:28.0°以上{53.0-(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:43.5°以上{73.6-1.2(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、前記(t/D)が21.0%以上22.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:{49.0-(t/D)}°以上{53.0-(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:{68.7-1.2(t/D)}°以上{73.6-1.2(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管
の外面きずを、前記(t/D)が22.0%以上23.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:27.0°以上{53.0-(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:42.3°以上{73.6-1.2(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、前記(t/D)が23.0%以上24.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:{50.0-(t/D)}°以上30.0°以下の屈折横波を用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:{67.6-1.1(t/D)}°以上45.9°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、前記(t/D)が24.0%以上25.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:26.0°以上30.0°以下の屈折横波を用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上45.9°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、前記(t/D)が25.0%以上26.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:26.0°以上{55.0-(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上{75.9-1.2(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、前記(t/D)が26.0%以上30.0%以下のとき、前記屈折横波のうち屈折角:26.0°以上29.0°以下の屈折横波を、用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上44.7°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、それぞれ探傷する前記1に記載の超音波探傷方法(第2発明)。
【0009】
3.前記(t/D)が20.0%超21.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:28.0°以上{53.0-(t/D)}°以下の屈折横波が管の内面で反射しさらに管の外面で反射して発生する屈折横波で管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:43.5°以上{73.6-1.2(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、前記(t/D)が21.0%以上22.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:{49.0-(t/D)}°以上{53.0-(t/D)}°以下の屈折横波が管の内面で反射しさらに管の外面で反射して発生する屈折横波で管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:{68.7-1.2(t/D)}°以上{73.6-1.2(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、前記(t/D)が22.0%以上23.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:27.0°以上{53.0-(t/D)}°以下の屈折横波が管の内面で反射しさらに管の外面で反射して発生する屈折横波で管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:42.3°以上{73.6-1.2(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、前記(t/D)が23.0%以上24.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:{50.0-(t/D)}°以上30.0°以下の屈折横波が管の内面で反射しさらに管の外面で反射して発生する屈折横波で管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:{67.6-1.1(t/D)}°以上45.9°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、前記(t/D)が24.0%以上25.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:26.0°以上30.0°以下の屈折横波が管の内面で反射しさらに管の外面で反射して発生する屈折横波で管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上45.9°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、前記(t/D)が25.0%以上26.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:26.0°以上{55.0-(t/D)}°以下の屈折横波が管の内面で反射しさらに管の外面で反射して発生する屈折横波で管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上{75.9-1.2(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、前記(t/D)が26.0%以上30.0%以下のとき、前記屈折横波のうち屈折角:26.0°以上29.0°以下の屈折横波が管の内面で反射しさらに管の外面で反射して発生する屈折横波で管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上44.7°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、それぞれ探傷する前記1に記載の超音波探傷方法(第3発明)。
【0010】
4.前記(t/D)が20.0%超21.0%未満のとき、前記屈折縦波のうち屈折角:59.0°以上{258.2-8.7(t/D)}°以下の屈折縦波が管の外面で反射/モード変換して発生する屈折横波を用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:43.5°以上{73.6-1.2(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、前記(t/D)が21.0%以上22.0%未満のとき、前記屈折縦波のうち屈折角:{122-3.0(t/D)}°以上{175.25-4.75(t/D)}°以下の屈折縦波が管の外面で反射/モード変換して発生する屈折横波を用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:{68.7-1.2(t/D)}°以上{73.6-1.2(t/D)}
°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、前記(t/D)が22.0%以上23.0%未満のとき、前記屈折縦波のうち屈折角:56.0°以上{175.25-4.75(t/D)}°以下の屈折縦波が管の外面で反射/モード変換して発生する屈折横波を用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:42.3°以上{73.6-1.2(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、前記(t/D)が23.0%以上24.0%未満のとき、前記屈折縦波のうち屈折角:{120.4-2.8(t/D)}°以上66.0°以下の屈折縦波が管の外面で反射/モード変換して発生する屈折横波を用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:{67.6-1.1(t/D)}°以上45.9°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、前記(t/D)が24.0%以上25.0%未満のとき、前記屈折縦波のうち屈折角:53.2°以上66.0°以下の屈折縦波が管の外面で反射/モード変換して発生する屈折横波を用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上45.9°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、前記(t/D)が25.0%以上26.0%未満のとき、前記屈折縦波のうち屈折角:53.2°以上 {158.5-3.7(t/D)}°以下の屈折縦波が管の外面で反射/モード変換して発生する屈折横波を用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上{75.9-1.2(t/D)}°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、前記(t/D)が26.0%以上30.0%以下のとき、前記屈折縦波のうち屈折角:53.2°以上62.3°以下の屈折縦波が管の外面で反射/モード変換して発生する屈折横波を、用いて管の内面きずを、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上44.7°以下の屈折横波を用いて管の外面きずを、それぞれ探傷する前記1に記載の超音波探傷方法(第4発明)。
【0011】
5.前記1から4のいずれか1に記載された超音波探傷方法を用いて管の探傷を行うに際し、管の内面に人工きず加工を施した管の内径が15mm未満の管状被検体をテストピースとして用いる超音波探傷方法(第5発明)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、前記した特殊な探触子を用いなくても、高t/Dの管状被検体の探傷が行えるため、設備費の増加や、サイズ変更によって発生する交換時間等による生産性の低下が効果的に回避できる。
また、本発明は、内径15mm未満の管状被検体の、探傷感度や、探傷ゲートなどの内面探傷条件の確からしさを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】φ26.5×t6.0(t/D:22.6%)の探傷時における超音波の挙動をシミュレーションした結果を示した図である。
【
図2】第2発明のシミュレーションと実機テストにより得られたt/D毎の内面きず探傷に最適な屈折角を示した図である。
【
図3】第2発明のシミュレーションと実機テストにより得られたt/D毎の外面きず探傷に最適な屈折角を示した図である。
【
図5】φ26.5×t6.0(t/D:22.6%)の屈折角:30.0°を用いたときの内面きずの感度校正結果を示した図である。
【
図6】φ26.5×t6.0(t/D:22.6%)の屈折角:45.9°を用いたときの外面きずの感度校正結果を示した図である。
【
図7】φ35.0×t8.0(t/D:22.9%)の屈折角:59.0°を用いたときの内面きずの感度校正結果を示した図である。
【
図8】φ35.0×t8.0(t/D:22.9%)の屈折角:30.0°を用いたときの外面きずの感度校正結果を示した図である。
【
図9】第3発明のシミュレーションと実機テストにより得られたt/D毎の内面きず探傷に最適な屈折角を示した図である。
【
図10】第3発明のシミュレーションと実機テストにより得られたt/D毎の外面きず探傷に最適な屈折角を示した図である。
【
図11】φ22.2×t6.0(t/D:27.0%)の屈折角:27.0°を用いたときの感度校正結果を示した図である。
【
図12】φ22.2×t6.0(t/D:27.0%)の屈折角:43.5°を用いたときの感度校正結果を示した図である。
【
図13】第4発明のシミュレーションと実機テストにより得られたt/D毎の内面きず探傷に最適な屈折角を示した図である。
【
図14】第4発明のシミュレーションと実機テストにより得られたt/D毎の外面きず探傷に最適な屈折角を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体的に説明する。
高t/Dの探傷においては、振動子で発生させた超音波を斜めに入射して発生する屈折横波や屈折縦波が、複数回反射したりモード変換したりしながら、複雑な伝搬経路を辿り内面きずや外面きずに到達する。
そのため、どの超音波がどのきずを検出しているのかわからず、適正な屈折角の選定が難しい。
【0015】
そこで、発明者らは、シミュレーションによりどのような超音波が発生し、どのような伝搬経路で管の内部を伝搬しているか、またその時どれくらいの強度を持った超音波として反射するかを鋭意調査した。
【0016】
そのシミュレーションの結果の一例を
図1(a)、(b)および(c)に示す。
図1では、(a)として、φ26.5×t6.0(t/D:22.6%)材を超音波の入射角:11.13°で入射点より26.0°ずらした位置に配置した内面きずを探傷したときの超音波の伝搬時間とその強度を左図に示し、右図には、左図で得られた信号の伝搬経路を示している。
また、(b)として、φ26.5×t6.0(t/D:22.6%)材を超音波の入射角:11.13°で入射点より82.9°ずらした位置に配置した内面きずを探傷したときの超音波の伝搬時間とその強度を左図に示し、右図には左図で得られた信号の伝搬経路を示している。
さらに、(c)として、φ26.5×t6.0(t/D:22.6%)材を超音波の入射角:11.13°で入射点より101.1°ずらした位置に配置した外面きずを探傷したときの超音波の伝搬時間とその強度を左図に示し、右図には左図で得られた信号の伝搬経路を示している。
【0017】
これらの結果によれば、φ26.5×t6.0(t/D:22.6%)材を超音波の入射角:11.13°で探傷した時、A屈折横波25.00°、B屈折縦波50.66°のモート゛変換による屈折横波、C屈折横波25.00°の2回反射、D屈折横波39.45°の4種類の超音波により内面きずおよび外面きずを検出していることがわかる。なお、本明細において、入射角および屈折角は、いずれも、後述する
図4の図中左上枠内に記載の通り、外径の接線である水と鋼の境界面の垂線に対する角度(入射角が水側、屈折角が鋼側)である。
特に、上記A、B、Cに記載の超音波で内面きずを、また、上記Dに記載の超音波で外面きずをそれぞれ検出している。
【0018】
かかるA~Dに記載の4種類の超音波が発生する屈折横波の最大角は、屈折縦波の発生の有無により決まる。そして、管状被検体の超音波探傷における屈折縦波が発生する最大角度は90°である。なお、屈折角が90°超になるといずれも全反射となる。
よって、鋼管の音速を縦波5900m/s、横波3230m/sとしたときの屈折横波の屈折角は、θ=sin-1(3230/5900×sin90)=33.2°となるので、屈折横波の上限は33.2°である。
【0019】
さらに、屈折横波の下限を求めると、以下の通りになる。
すなわち、管状被検体の超音波探傷における最大t/Dは30.0%である。また、t/D:30.0%の管状被検体の内表面に超音波ビームが当たる屈折角は、θ=sin-1(1-2・t/D)よりθ=23.5°となる。よって、屈折横波のシミュレーション上の下限は23.5°である。
【0020】
以上から、高t/Dの探傷における屈折角の範囲は23.5~33.2°となる。
ここで、上記屈折角の範囲は、あくまでシミュレーションにより求められた外乱を含まない理想条件なので、実際の探傷における外乱、例えば、探傷水によるノイズや、パイプ内外表面性状によるノイズ等の影響は反映されていない。
そこで、上記のような外乱を模擬して実機テストを行い、被管状被検体の内外面を同時探傷可能な屈折角を調査し、t/D毎の適切な屈折角を見出した。
結果を表1および
図2、3に記載する。
【0021】
【0022】
図2、3は、t/D:20.0%から30.0%にかけてのt/D毎の、内外面を同時探傷可能な屈折角を示した図である。t/D:20.0%から30.0%にかけて右下がりの実線は、実機テストにより得られた屈折角である。屈折角23.5°、33.2°の点線はシミュレーション上の最適屈折角である。同図に示したように、シミュレーションによる最適屈折角と実機テストにより知見した屈折角とは、相違があることがわかる。
【0023】
すなわち、本発明(第1発明)である、外径に対する肉厚の比(t/D)が20.0%超30.0%以下の金属製の管状被検体に、振動子から超音波を外径の接線の垂線に対して斜めに入射し、この入射した超音波が該管状被検体の内部を伝達する際の、屈折横波または屈折縦波が、管の内外面で反射またはモード変換して発生する屈折横波により該管状被検体のきずを探傷する超音波探傷方法は、前記検討を踏まえ、以下の3態様(第2~4発明)が特に好ましい態様として考えられる。
なお、上記振動子から超音波を入射する角度は、それぞれの態様に応じ、11.6~14.5°範囲の角度がそれぞれ挙げられる。
【0024】
(1)本発明では、前記超音波が管状被検体の表面に入射(入射角度は11.6~14.5°が好ましい)した際に生じる屈折横波のうち屈折角:26.0~33.0°の屈折横波を用いて管の内面きずを探傷する。そして、前記入射した際に生じる屈折横波のうち屈折角:41.2~49.6°の屈折横波を用いて管の外面きずを、それぞれ探傷する(第2発明)。
【0025】
具体的に、内面きずの探傷は、以下の屈折角の屈折横波とすることが肝要である。
I(t/D)が20.0%超21.0%未満のとき、屈折角:28.0°以上{53.0-(t/D)}°以下の屈折横波
II(t/D)が21.0%以上22.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:{49.0-(t/D)}°以上{53.0-(t/D)}°以下の屈折横波
III(t/D)が22.0%以上23.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:27.0°以上{53.0-(t/D)}°以下の屈折横波
IV(t/D)が23.0%以上24.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:{50.0-(t/D)}°以上30.0°以下の屈折横波
V(t/D)が24.0%以上25.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:26.0°以上30.0°以下の屈折横波
VI(t/D)が25.0%以上26.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:26.0°以上{55.0-(t/D)}°以下の屈折横波
VII(t/D)が26.0%以上30.0%以下のとき、前記屈折横波のうち屈折角:26.0°以上29.0°以下の屈折横波
をそれぞれ用いる。
これは、内面探傷で使用する横波の屈折角が26.0~33.0°の範囲では、上記したいずれかの屈折横波であると、音圧往復通過率が高く探傷に有利であり、屈折角がかかる範囲を外れると音圧往復通過率が低下し、きずからの信号強度が低下するため探傷が行えなくなるからである。
【0026】
また、外面きずの探傷は、以下の屈折角の屈折横波とすることが肝要である。
I前記(t/D)が20.0%超21.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:43.5°以上{73.6-1.2(t/D)}°以下の屈折横波
II前記(t/D)が21.0%以上22.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:{68.7-1.2(t/D)}°以上{73.6-1.2(t/D)}°以下の屈折横波
III前記(t/D)が22.0%以上23.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:42.3°以上{73.6-1.2(t/D)}°以下の屈折横波
IV前記(t/D)が23.0%以上24.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:{67.6-1.1(t/D)}°以上45.9°以下の屈折横波
V前記(t/D)が24.0%以上25.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上45.9°以下の屈折横波
VI前記(t/D)が25.0%以上26.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上{75.9-1.2(t/D)}°以下の屈折横波
VII前記(t/D)が26.0%以上30.0%以下のとき、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上44.7°以下の屈折横波
をそれぞれ用いる。
【0027】
上記屈折角:41.2~49.6°の屈折横波を用いて管の外面きずを探傷するのは、音圧往復通過率が高く探傷に有利であり、
図4に示す音圧往復通過率によってわかるとおり、屈折角が41.2°に満たないまたは49.6°を超える屈折横波になると、音圧往復通過率が低下し、きずからの信号強度が低下するため探傷が行えなくなるからである。
なお、
図4は、水から鋼に超音波を入射させた際の入射角と音圧往復通過率を示し、第1横軸:入射角、第2横軸:屈折角、縦軸:音圧往復通過率、波線:縦波、実線:横波をそれぞれ示している。
【0028】
ここで、上記段落0025および0026に記載のI~VIIの屈折角に屈折横波を調整するには、超音波探傷装置に付属している拡縮機構(被検材t/Dより選定した入射角となるよう、外形毎に探触子位置を水平方向に調整(スライド)させる機構)にてそれぞれ調整することができる。
すなわち、対象材中心軸と超音波送信方向が平行になるように探触子を配置し、対象材のt/Dにより選定した入射角となるよう、対象材中心軸と直交する方向に探触子の距離を
調整する。なお、同一外径において、距離を小さくすると入射角が小さくなり、屈折角が小さくなる、逆に距離を大きくすると入射角が大きくなり、屈折角が大きくなる。また、必要な屈折角にするための距離は、水温、水及び対象材の音速から算出され、その距離に手動で治具を用いて調整すればよい。
また、上記屈折角:41.2~49.6°の屈折横波は、上記屈折角:26.0~33.0°の屈折角の屈折横波を発生させるよう超音波探触子を設置すれば、併せて得られる。
【0029】
(2)前記超音波が入射(入射角度は11.6~14.5°が好ましい)した際に生じる屈折横波のうち屈折角:26.0~33.0°の屈折横波が管の内面で反射しさらに管の外面で反射して発生する屈折横波で管の内面きずを、また、前記入射した際に生じる屈折横波のうち41.2~49.6°の屈折横波で外面きずを、それぞれ探傷する(第3発明)。
【0030】
具体的に、内面きずの探傷は、以下の屈折角の屈折横波とすることが肝要である。
I前記(t/D)が20.0%超21.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:28.0°以上{53.0-(t/D)}°以下の屈折横波が管の内面で反射しさらに管の外面で反射して発生する屈折横波
II前記(t/D)が21.0%以上22.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:{49.0-(t/D)}°以上{53.0-(t/D)}°以下の屈折横波が管の内面で反射しさらに管の外面で反射して発生する屈折横波
III前記(t/D)が22.0%以上23.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:27.0°以上{53.0-(t/D)}°以下の屈折横波が管の内面で反射しさらに管の外面で反射して発生する屈折横波
IV前記(t/D)が23.0%以上24.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:{50.0-(t/D)}°以上30.0°以下の屈折横波が管の内面で反射しさらに管の外面で反射して発生する屈折横波
V前記(t/D)が24.0%以上25.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:26.0°以上30.0°以下の屈折横波が管の内面で反射しさらに管の外面で反射して発生する屈折横波
VI前記(t/D)が25.0%以上26.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:26.0°以上{55.0-(t/D)}°以下の屈折横波が管の内面で反射しさらに管の外面で反射して発生する屈折横波
VII前記(t/D)が26.0%以上30.0%以下のとき、前記屈折横波のうち屈折角:26.0°以上29.0°以下の屈折横波が管の内面で反射しさらに管の外面で反射して発生する屈折横波をそれぞれ用いる。
【0031】
また、外面きずの探傷は、具体的に、以下の屈折角の屈折横波とすることが肝要である。
I前記(t/D)が20.0%超21.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:43.5°以上{73.6-1.2(t/D)}°以下の屈折横波
II前記(t/D)が21.0%以上22.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:{68.7-1.2(t/D)}°以上{73.6-1.2(t/D)}°以下の屈折横波
III前記(t/D)が22.0%以上23.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:42.3°以上{73.6-1.2(t/D)}°以下の屈折横波
IV前記(t/D)が23.0%以上24.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:{67.6-1.1(t/D)}°以上45.9°以下の屈折横波
V前記(t/D)が24.0%以上25.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上45.9°以下の屈折横波
VI前記(t/D)が25.0%以上26.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上{75.9-1.2(t/D)}°以下の屈折横波
VII前記(t/D)が26.0%以上30.0%以下のとき、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上44.7°以下の屈折横波
をそれぞれ用いる。
【0032】
なお、上記屈折角:26.0~33.0°の屈折横波が管の内面で反射しさらに管の外面で反射して発生する屈折横波を用いて管の内面きずを探傷するのは、対象材表面のスケールや、粗度などによるノイズ(表面エコーの尾引き及び対象材探傷開始時の水膜形成不良による)が発生し、前記第2発明の探傷条件では内面きずとノイズの分離が行えない場合があるからである。
一方、上記屈折角:41.2~49.6°の屈折横波を用いて管の外面きずを探傷するのは、前述したとおり、かかる範囲を外れると信号強度が低下するため探傷が行えなくなるからである。
【0033】
ここで、上記26.0~33.0°の屈折角に屈折横波を調整するには、前述の拡縮機構を用いれば良い。また、上記屈折角:41.2~49.6°の屈折横波は、前述のように、上記26.0~33.0°の屈折角の屈折横波を発生させるよう超音波探触子を設置すれば、併せて得られる。
【0034】
(3)斜めに超音波が入射(入射角度は11.6~14.5°が好ましい)した際に生じる屈折縦波のうち屈折角:53.2~84.2°の屈折縦波が管の外面で反射しモード変換した屈折横波で内面きずを、前記入射した際に生じる屈折横波のうち屈折角:41.2~49.6°の屈折横波で外面きずを、それぞれ探傷する(第4発明)。
【0035】
具体的に、内面きずの探傷は、以下の屈折角の屈折横波とすることが肝要である。
I前記(t/D)が20.0%超21.0%未満のとき、前記屈折縦波のうち屈折角:59.0°以上{258.2-8.7(t/D)}°以下の屈折縦波が管の外面で反射/モード変換して発生する屈折横波
II前記(t/D)が21.0%以上22.0%未満のとき、前記屈折縦波のうち屈折角:{122-3.0(t/D)}°以上{175.25-4.75(t/D)}°以下の屈折縦波が管の外面で反射/モード変換して発生する屈折横波
III前記(t/D)が22.0%以上23.0%未満のとき、前記屈折縦波のうち屈折角:56.0°以上{175.25-4.75(t/D)}°以下の屈折縦波が管の外面で反射/モード変換して発生する屈折横波
IV前記(t/D)が23.0%以上24.0%未満のとき、前記屈折縦波のうち屈折角:{120.4-2.8(t/D)}°以上66.0°以下の屈折縦波が管の外面で反射/モード変換して発生する屈折横波
V前記(t/D)が24.0%以上25.0%未満のとき、前記屈折縦波のうち屈折角:53.2°以上66.0°以下の屈折縦波が管の外面で反射/モード変換して発生する屈折横波
VI前記(t/D)が25.0%以上26.0%未満のとき、前記屈折縦波のうち屈折角:53.2°以上{158.5-3.7(t/D)}°以下の屈折縦波が管の外面で反射/モード変換して発生する屈折横波
VII前記(t/D)が26.0%以上30.0%以下のとき、前記屈折縦波のうち屈折角:53.2°以上62.3°以下の屈折縦波が管の外面で反射/モード変換して発生する屈折横波
をそれぞれ用いる。
【0036】
また、具体的に、外面きずの探傷は、以下の屈折角の屈折横波とすることが肝要である。
I前記(t/D)が20.0%超21.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:43.5°以上{73.6-1.2(t/D)}°以下の屈折横波
II前記(t/D)が21.0%以上22.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:{68.7-1.2(t/D)}°以上{73.6-1.2(t/D)}°以下の屈折横波
III前記(t/D)が22.0%以上23.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:42.3°以上{73.6-1.2(t/D)}°以下の屈折横波
IV前記(t/D)が23.0%以上24.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:{67.6-1.1(t/D)}°以上45.9°以下の屈折横波
V前記(t/D)が24.0%以上25.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上45.9°以下の屈折横波
VI前記(t/D)が25.0%以上26.0%未満のとき、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上{75.9-1.2(t/D)}°以下の屈折横波
VII前記(t/D)が26.0%以上30.0%以下のとき、前記屈折横波のうち屈折角:41.2°以上44.7°以下の屈折横波
をそれぞれ用いる。
【0037】
上記屈折角:53.2~84.2°の屈折縦波が管の外面で反射しモード変換した屈折横波を用いて管の内面きずを探傷するのは、対象材表面のスケールや、粗度などによるノイズ(表面エコーの尾引き及び対象材探傷開始時の水膜形成不良による)、並びに探傷器設定によるノイズ(180°対向にある探触子からの信号ノイズ、繰返し周波数による固定ノイズ)が発生し、前記第2発明および第3発明の探傷条件では内面きずとノイズの分離が行えない場合があるからである。
【0038】
一方、上記屈折角:41.2~49.6°の屈折横波を用いて管の外面きずを探傷するのは、前述したとおり、かかる範囲を外れると信号強度が低下するため探傷が行えなくなるからである。
【0039】
ここで、上記:53.2~84.2°の屈折角に屈折縦波を調整するには、前述の拡縮機構を用いれば良い。また、上記屈折角:41.2~49.6°の屈折横波は、前述のように、53.2~84.2°の屈折角に屈折縦波を発生させるよう超音波探触子を設置すれば、併せて得られる。
【0040】
また、本発明は、第1発明および前記(1)から(3)のいずれかの態様(第2発明~第4発明)において、管の内径が15mm未満の管状被検体であるテストピースを用いることができる(第5発明)。
【0041】
本発明のように、内外面同時探傷可能な屈折角を用いた探傷では、被管状被検体内を屈折横波、縦波などが複数回反射、モード変換しながら複雑な伝搬経路を辿り内面に到達するため、屈折角の選定、探傷ゲートの設定は実際の内面人工きずを用いて行うことが要求される。
【0042】
しかしながら、現在の技術では、内径:15mm未満の管状被検体では内面人工きずの加工要求がない。そこで、本発明では、専用の人工きず加工治具を作成し、内面15mm未満の管状被検体でも人工きずを加工できるようにし、内面人工きず施したテストピースを用いることで、内径:15mm未満の管状被検体であっても屈折角の選定や、探傷ゲートの設定が行うことができる。
その結果、内径:15mm未満の管状被検体であっても、探傷感度、探傷ゲートの内面探傷条件の確からしさを確認することができるようになった。
【0043】
本発明は、前述したように、内外面のきずを一つの探触子で探傷できるよう適切な屈折角を選定しているため、探傷速度を低下させることなく探傷が行え、従来では探傷の確からしさが確認できなかった内径が15mm未満の管であっても確からしさが確認でき、探傷が行える。
【実施例0044】
(実施例1)
図5に、φ26.5×t6.0(t/D:22.6%)の屈折角:30.0°の屈折横波を、また、
図6に、
φ26.5×t6.0(t/D:22.6%)の屈折角:45.9°の屈折横波を、用いたときの感度校正結果をそれぞれ示す。
図中、内面きず信号レベル26.0dBに対しノイズレベル20.0dBとして、また、外面きず信号レベル26.0dBに対しノイズレベル11.0dBとしてそれぞれ表示されている。
よって、内外面きずともSN≧6.0dB(SN比≧2)となり、明瞭なきず波形として得られていることがわかる。
一方、前記した
図2、3に記載された本発明範囲外の条件では、高t/D金属管の内表面で発生する底面エコーによりノイズが発生するため探傷が行えなかった。
【0045】
(実施例2)
図7に、φ35.0×t8.0(t/D:22.9%)の屈折角28.5°の屈折横波が管の内面で反射しさらに管の外面で反射して発生する屈折横波を用いたときの感度校正結果を示す。内面きずが明瞭なきず波形として得られていることがわかる。
また、外面きずの探傷(
図8に示す)は、前記入射した際に生じる屈折横波の屈折角:44.1°の屈折横波で探傷した。外面きずが明瞭なきず波形として得られていることがわかる。
一方、
図9および
図10に記載された本発明範囲外の条件では、高t/D金属管の内表面で発生する底面エコーによりノイズが発生するため探傷が行えなかった。
【0046】
(実施例3)
図11に、φ22.2×t6.0(t/D:27.0%)の屈折角:56.0°の屈折縦波が管の外面で反射しモード変換した屈折横波を用いたときの感度校正結果を示す。内面きずが明瞭なきず波形として得られていることがわかる。
また、外面きずの探傷(
図12に示す)は、前記入射した際に生じる屈折横波の屈折角:42.3°の屈折横波で探傷した。外面きずが明瞭なきず波形として得られていることがわかる。
一方、
図13および
図14に記載された本発明範囲外の条件では、高t/D金属管の内表面で発生する底面エコーによりノイズが発生するため探傷が行えなかった。