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  • 特開-工作機械のびびり振動抑制方法 図1
  • 特開-工作機械のびびり振動抑制方法 図2
  • 特開-工作機械のびびり振動抑制方法 図3
  • 特開-工作機械のびびり振動抑制方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052634
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】工作機械のびびり振動抑制方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 15/12 20060101AFI20220328BHJP
   G05B 19/404 20060101ALI20220328BHJP
   B23Q 17/12 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
B23Q15/12 A
G05B19/404 K
B23Q17/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020159136
(22)【出願日】2020-09-23
(71)【出願人】
【識別番号】000174987
【氏名又は名称】三井精機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098279
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 聖
(72)【発明者】
【氏名】一二三 敏幸
【テーマコード(参考)】
3C001
3C269
【Fターム(参考)】
3C001KA07
3C001KB04
3C001TA06
3C001TB08
3C001TC05
3C269AB05
3C269BB03
3C269CC02
3C269CC15
3C269MN07
3C269MN09
3C269MN16
3C269MN26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】加工中に振動を検出するセンサ類を設けずに、簡単な構成で工作機械のびびり振動を抑制する。
【解決手段】工具を回転させるための回転軸を備えた工作機械において、前記回転軸に生じるびびり振動を抑制する方法であって、予め機械座標ごとの機械の固有振動数を測定・記憶しておく前工程と、加工開始後に、工具の刃数を確認する第1工程と、前記第1工程で確認した工具の刃数と回転軸の回転数から切れ刃の通過周波数を検出する第2工程と、機械座標の現在値を検出し、該現在値の位置における前工程で記憶した機械の固有振動数と第2工程で検出した切れ刃の通過周波数の一致又は不一致を判定する第3工程と、前記第3工程で、前記現在値位置における機械固有振動数と切れ刃の通過周波数が一致の場合に、最適な回転軸回転数に変更する第4工程とを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を回転させるための回転軸を備えた工作機械において、前記回転軸に生じるびびり振動を抑制する方法であって、
予め機械座標ごとの機械の固有振動数を測定し、記憶しておく前工程と、
加工開始後に、前記工具の刃数を確認する第1工程と、
前記第1工程で確認した工具の刃数と前記回転軸の回転数から切れ刃の通過周波数を検出する第2工程と、
機械座標の現在値を検出し、該現在値の位置における前工程で記憶した機械の固有振動数と第2工程で検出した切れ刃の通過周波数の一致又は不一致を判定する第3工程と、
前記第3工程で、前記現在値位置における機械固有振動数と切れ刃の通過周波数が一致の場合に、最適な回転軸の回転数に変更する第4工程と、を有することを特徴とする工作機械のびびり振動抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械のびびり振動抑制方法に関し、特に、加工中に振動を検出するセンサ類を設けることなく工作機械のびびり振動を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工具やワークを回転させ加工を行なう工作機械において、加工中に発生するびびり振動によりワークの加工面の精度が悪化する場合がある。このようなびびり振動を抑制するために、従来、加速度センサやマイク等を工作機械に付帯して、加工中にびびり振動を検出し、加工条件を変更して加工するようにしている(特許文献1、2参照)。
【0003】
例えば、特許文献1記載の従来例では、マシニングセンタのびびり振動をX軸加速度センサ及びY軸加速度センサによって検出し、この検出値によってびびり振動の周波数を演算し、この周波数によりびびり振動を低減できる工具の回転数を演算し、加工条件(工具の回転数)を変更するようにしている。また、特許文献2記載の従来例では、工作機械が工具主軸を回転させている時に、振動センサによりびびり振動を検出した場合に、上限値と下限値の間の範囲内で変化量を決定し、第1回転速度を上記変化量だけ変化させた第2回転速度で工具主軸を回転させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-105160号公報
【特許文献2】特許第6494891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来例では、加工中にびびり振動を検出するセンサ類を製品に搭載して出荷する必要があるので、その分、製品のコストも上昇する。
【0006】
本発明は、上述のような事情から為されたものであり、その目的は、加工中に振動を検出するセンサ類を設けることなく、簡単な構成で工作機械のびびり振動を抑制することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、今回の発明は従来例のようにセンサ類を製品に搭載して出荷してしまわず、ハンマリング試験等により予めその機械の固有振動数を求めておくことで切れ刃の通過周波数(主軸回転数と刃数より算出)が機械の固有振動数と近い値となった場合に主軸回転数を変化させ、びびり振動を回避するものである。尚、工具の刃数は加工プログラム中に記述させるようにするのが好適である。
【0008】
また、機械の軸位置によっても機械の固有振動数は変化するため、ある1箇所の固有振動数で全体を管理していると問題のない領域でも条件を落とすことになってしまったり、逆に条件が変わらずにそのまま加工してしまったりする。そのため軸位置ごとの固有振動数も予め求めておき、管理する周波数を変化させるようにする。これにより条件を落とす必要のない所は落とさずにすみ、加工時間が延びてしまうことを低減することができる。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の工作機械のびびり振動抑制方法は、工具を回転させるための回転軸を備えた工作機械において、前記回転軸に生じるびびり振動を抑制する方法であって、予め機械座標ごとの機械の固有振動数を測定し、記憶しておく前工程と、加工開始後に、前記工具の刃数を確認する第1工程と、前記第1工程で確認した工具の刃数と前記回転軸の回転数から切れ刃の通過周波数を検出する第2工程と、機械座標の現在値を検出し、該現在値の位置における前工程で記憶した機械の固有振動数と第2工程で検出した切れ刃の通過周波数の一致又は不一致を判定する第3工程と、前記第3工程で、前記現在値位置における機械固有振動数と切れ刃の通過周波数が一致の場合に、最適な回転軸の回転数に変更する第4工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加工中に振動を検出するセンサ類を設けることなく、簡単な構成で工作機械のびびり振動を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明が適用される工作機械のX軸位置を示す図であり、X軸が中央にあるときを示す。
図2】本発明が適用される工作機械のX軸位置を示す図であり、X軸が中央からX+方向へ移動したときを示す。
図3】本発明が適用される工作機械のX軸位置を示す図であり、X軸が中央からX-方向へ移動したときを示す。
図4】本発明の工作機械のびびり振動抑制方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明が適用される工作機械のX軸位置を示す図であり、X軸が中央にあるときを示す。
尚、本実施形態では、X軸が移動した図のみ示したが他の軸についても同様である。
図1に示すように、本発明が適用される工作機械100は、相互に直交するX軸、Y軸、Z軸と、Z軸廻りの旋回C軸を備え、X送り装置31、Z送り装置32、工具主軸33、工具34、ワークテーブル35、C回転装置36を有し、工具34によりワークWを加工する工作機械である。尚、Y送り装置は図示を省略している。図2及び図3も本発明が適用される工作機械100のX軸位置を示す図であるが、図2はX軸が中央からX+方向へ移動したときを示し、図3はX軸が中央からX-方向へ移動したときを示す。
【0013】
上述したように、本発明のびびり振動抑制方法では、従来例のようにセンサ類を製品としての工作機械に搭載して出荷してしまわず、ハンマリング試験等により予めその工作機械の固有振動数を求めておくことで、切れ刃の通過周波数(主軸回転数と刃数より算出)がその工作機械の固有振動数と近い値となった場合に主軸回転数を変化させ、びびり振動を回避するものである。従って、図1に示す工作機械100では、主軸装置(Z送り装置32)内に、加工中にびびり振動そのものを検出する振動センサ・加速度センサ等のセンサ類を備えていない。即ち、製品としての工作機械100の出荷前に、例えば、図1に示すように、X軸が中央にある状態で、ハンマリング試験等により予め工作機械100の固有振動数を求めておく。
【0014】
また、機械の軸位置によっても機械の固有振動数は変化するため、ある1箇所(例えば、図1に示すX軸が中央にある状態)の固有振動数で工作機械100の全体を管理していると問題のない領域でも条件を落とすことになってしまったり、逆に条件が変わらずにそのまま加工してしまったりする。そのため異なる軸位置ごとの固有振動数も上述したハンマリング試験等により予め求めておき、管理する周波数を変化させるようにする。これにより条件を落とす必要のない所は落とさずにすみ、加工時間が延びてしまうことを低減することができる。即ち、例えば、図2に示すように、工作機械100のX軸位置が中央からX+方向へ移動させたときの固有振動数、更に、図3に示すように、工作機械100のX軸位置が中央からX-方向へ移動したときの固有振動数も上述したハンマリング試験等により予め求めておく。
【0015】
図4は、本発明の工作機械のびびり振動抑制方法を示すフローチャートである。本発明の工作機械のびびり振動抑制方法では、前述したように、センサ類を製品(例えば、図1乃至図3に示す工作機械100)に搭載して出荷してしまわずに、ハンマリング試験等により予めその工作機械100の機械座標ごと(例えば、図1のX軸位置が中央にあるとき、図2のX軸位置が中央からX+方向へ移動したとき、図3のX軸位置が中央からX-方向へ移動したとき)の固有振動数を求めておく。そして、図4に示すように、加工が開始されると(S401)、まず、工具の刃数を確認する(S402)。続いて確認した工具の刃数と主軸の回転数から切れ刃の通過周波数を検出する(S403)。更に、機械座標を検出し(S404)、現在値位置(例えば、図1のX軸位置が中央にあるとき、図2のX軸位置が中央からX+方向へ移動したとき、図3のX軸位置が中央からX-方向へ移動したとき)における機械固有振動数と切れ刃の通過周波数が一致していないか?判定する(S405)。ここで、一致していなければ(S405でYes)、主軸回転数はそのままで(S406)、プログラムされた加工(目標)が終了したか否か?判定し(S407)、終了していれば(S407でYes)、機械による加工を終了する(S408)。一方、プログラムされた加工(目標)が終了していなければ(S407でNo)、S404からの処理を繰り返す。S405で、現在値位置における機械固有振動数と切れ刃の通過周波数が一致していれば(S405でNo)、最適な主軸回転数に変更する(S409)。そして、プログラムされた加工(目標)が終了したか否か?判定し(S407)、終了していれば(S407でYes)、機械による加工を終了する(S408)。一方、プログラムされた加工(目標)が終了していなければ(S407でNo)、S404からの処理を繰り返す。
【産業上の利用可能性】
【0016】
以上に述べた実施形態では、説明を簡単にするため、工作機械100のX軸位置が移動する場合を、X軸位置が図1図2図3の3箇所にある場合を例に説明したが、X軸位置がこれら3箇所にある場合だけに限られず、より細かい機械座標ごとの固有振動数を求めておき、管理するようにしても良いのは、勿論である。また、X軸位置のみを例に説明したが、本発明は、X軸、Y軸、Z軸等、工作機械の機械駆動軸が移動する場合に、その機械座標ごとの固有振動数と切れ刃の通過周波数が一致の場合に、最適な回転軸の回転数に変更する場合にも適用される。
【符号の説明】
【0017】
31 X送り装置、 32 Z送り装置、 33 工具主軸、 34 工具、
35 ワークテーブル、 36 C回転装置、 100 工作機械、 W ワーク
図1
図2
図3
図4