(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052680
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】除殻装置
(51)【国際特許分類】
A22C 29/04 20060101AFI20220328BHJP
【FI】
A22C29/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020172222
(22)【出願日】2020-09-23
(71)【出願人】
【識別番号】518390594
【氏名又は名称】メカテック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】花村 健
【テーマコード(参考)】
4B011
【Fターム(参考)】
4B011MC02
4B011MC03
(57)【要約】
【課題】むき身の品質を低下させることなく、自動的に高速で二枚貝の除殻を行うことができる簡素構造の除殻装置を提供する。
【解決手段】牡蠣1の除殻装置S1は、牡蠣1を直線方向に搬送する搬送コンベア2と、搬送されている牡蠣1に除殻処理を施す除殻機構3とを備えている。搬送コンベア2は、駆動回転部材7と、従動回転部材8と、搬送部材9と、貝受け治具10とを有する。除殻機構3は、第1~第3牡蠣投入ステーション11~13と、第1アイドルステーション14と、殻カットステーション15と、第2アイドルステーション16と、身殻側貝柱カットステーション17と、第3アイドルステーション18と、蓋殻側貝柱カットステーション19と、第4アイドルステーション20と、むき身取り出しステーション21と、第5アイドルステーション22と、殻排出ステーション23とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身と、身を収容する身殻と、身殻の開口部を閉じる蓋殻とを有する二枚貝の除殻装置であって、
二枚貝を直線方向に搬送する搬送コンベアと、
前記搬送コンベアに沿って配置され、前記搬送コンベアによって搬送されている二枚貝に対して所定の処理又は操作を行って二枚貝から身を取り出す除殻機構とを備えていて、
前記搬送コンベアは、
回転中心軸が水平方向に伸びるように配置され間欠的に回転する駆動回転部材と、
回転中心軸が水平方向に伸びるように配置された従動回転部材と、
前記駆動回転部材と前記従動回転部材とに巻き掛けられて間欠的に周回走行する輪状の搬送部材と、
それぞれ前記搬送部材の輪の外面側の部位に、搬送部材伸長方向に所定の間隔をあけて装着され、二枚貝を身殻が下向きとなる姿勢で保持する複数の貝受け治具とを有し、
前記除殻機構は、
身殻が下向きとなる姿勢で靭帯が前記搬送部材の一方の側方を向くように、二枚貝を前記貝受け治具に保持させる二枚貝投入ステーションと、
前記一方の側方と反対側の側方において、平面視で二枚貝の靭帯と背向する部位で、身殻及び蓋殻の一部を切除して両殻間に隙間を形成する殻カットステーションと、
前記隙間からカット刃を差し込んで、身殻の内面近傍で貝柱を切断する身殻側貝柱カットステーションと、
前記隙間からカット刃を差し込んで、蓋殻の内面近傍で貝柱を切断する蓋殻側貝柱カットステーションと、
蓋殻を開き、身殻から身を取り出すむき身取り出しステーションとを有することを特徴とする除殻装置。
【請求項2】
前記二枚貝投入ステーションと、前記殻カットステーションと、前記身殻側貝柱カットステーションと、前記蓋殻側貝柱カットステーションと、前記むき身取り出しステーションとが、それぞれ、前記搬送部材の周回走行停止時において所定の貝受け治具と係合する位置に、二枚貝の搬送方向に順に並んで配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の除殻装置。
【請求項3】
二枚貝は牡蠣であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の除殻装置。
【請求項4】
凹状の空間部を画成する皿状の上殻と、上殻より深い凹状の空間部を画成し該上殻に対向して当接する下殻と、上殻と下殻との間に形成された空間部に収容された身とを有する二枚貝の除殻装置であって、
二枚貝を直線方向に搬送する搬送コンベアと、
前記搬送コンベアに沿って配置され、前記搬送コンベアによって搬送されている二枚貝に対して所定の処理又は操作を行って二枚貝から貝柱を取り出す除殻機構とを備えていて、
前記搬送コンベアは、
回転中心軸が水平方向に伸びるように配置され間欠的に回転する駆動回転部材と、
回転中心軸が水平方向に伸びるように配置された従動回転部材と、
前記駆動回転部材と前記従動回転部材とに巻き掛けられて間欠的に周回走行する輪状の搬送部材と、
それぞれ前記搬送部材の輪の外面側の部位に、搬送部材伸長方向に所定の間隔をあけて装着され、二枚貝を下殻が下向きとなる姿勢で保持する複数の貝受け治具とを有し、
前記除殻機構は、
下殻が下向きとなる姿勢で靭帯が前記搬送部材の一方の側方を向くように、二枚貝を前記貝受け治具に保持させる二枚貝投入ステーションと、
上殻と下殻のスリット部から二枚貝内に腱切断刃を差し込んで腱を切断し、前記一方の側方と反対側の側方において、平面視で二枚貝の靭帯と背向する部位で上殻と下殻とを開かせて隙間を生じさせる腱カットステーションと、
上殻の内面近傍で貝柱を切断し、上殻を下殻から開かせる上殻側貝柱カットステーションと、
二枚貝の外皮膜を取り出す外皮膜取り出しステーションと、
下殻の内面近傍で貝柱を切断する下殻側貝柱カットステーションと、
二枚貝から貝柱を取り出す貝柱取り出しステーションとを有することを特徴とする除殻装置。
【請求項5】
前記二枚貝投入ステーションと、前記腱カットステーションと、前記上殻側貝柱カットステーションと、前記外皮膜取り出しステーションと、前記下殻側貝柱カットステーションと、前記貝柱取り出しステーションとが、それぞれ、前記搬送部材の周回走行停止時において所定の貝受け治具と係合する位置に、二枚貝の搬送方向に順に並んで配置されていることを特徴とする、請求項4に記載の除殻装置。
【請求項6】
二枚貝は帆立貝であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の除殻装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動的に、牡蠣、帆立貝等の二枚貝を開殻して、該二枚貝の身から殻を除去し又は該二枚貝の殻から身もしくは貝柱を取り出す除殻装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
むき身の形態で出荷されることが多い二枚貝(例えば、牡蠣、帆立貝など)は、一般に、その養殖場ないしは採取場の近辺の加工場で開殻され、除殻される。従来、このような開殻作業及び除殻作業は、主として刃物等の道具類を用いて手作業で行われている。しかし、このような手作業による開殻作業及び除殻作業は、かなりの熟練を要するとともに、一人あたりの処理量が少ないので多数の人手を必要とし、人件費が高くつくといった問題がある。そこで、熟練を要する手作業を必要とせずに二枚貝を開殻ないしは除殻する開殻装置ないしは開殻方法が種々提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-252711号公報
【特許文献2】特開2000-157157号公報
【特許文献3】特開2006-280348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された牡蠣の身の取り出し手法では、開殻及び除殻を行う前に牡蠣を苦汁溶液に浸漬して牡蠣の殻を半開させるようにしているので、牡蠣を苦汁溶液に浸漬するための装置及び薬剤を必要とし、開殻・除殻装置の構造が複雑なものとなる。また、牡蠣のむき身から苦汁を完全に除去するための洗浄等の処理が必要である。
【0005】
特許文献2に開示された二枚貝の開殻手法では、二枚貝を加熱するとともに加圧して開殻するので、むき身の鮮度ないしは品質が悪くなり、また開殻・除殻装置の構造が複雑なものとなる。特許文献3に開示された帆立貝の開殻手法ないしは脱殻手法では、帆立貝に加圧加熱水蒸気を導入して開殻ないしは脱殻を行うので、むき身の鮮度ないしは品質が悪くなり、また除殻装置の構造が複雑なものとなる。
【0006】
本発明は、前記従来の問題を解決するためになされたものであって、むき身の鮮度ないしは品質を低下させることなく、自動的に高速で二枚貝の開殻及び除殻を行うことができる簡素な構造の二枚貝の除殻装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためになされた本発明の第1の態様に係る、身と、身を収容する身殻と、身殻の開口部を閉じる蓋殻とを有する二枚貝(例えば牡蠣)の除殻装置は、二枚貝を直線方向に搬送する搬送コンベアと、搬送コンベアに沿って配置され、搬送コンベアによって搬送されている二枚貝に対して所定の処理又は操作を行って二枚貝から身を取り出す除殻機構とを備えている。
【0008】
搬送コンベアは、駆動回転部材と、従動回転部材と、輪状の搬送部材と、複数の貝受け治具とを有する。駆動回転部材は、回転中心軸が水平方向に伸びるように配置され間欠的に回転する。従動回転部材も、回転中心軸が水平方向に伸びるように配置されている。輪状の搬送部材は、駆動回転部材と従動回転部材とに巻き掛けられて間欠的に周回走行する。各貝受け治具は、搬送部材の輪の外面側の部位に、搬送部材伸長方向に所定の間隔をあけて装着され、二枚貝を身殻が下向きとなる姿勢で保持する。
【0009】
除殻機構は、二枚貝投入ステーションと、殻カットステーションと、身殻側貝柱カットステーションと、蓋殻側貝柱カットステーションと、むき身取り出しステーションとを有する。二枚貝投入ステーションは、身殻が下向きとなる姿勢で靭帯が搬送部材の一方の側方(例えば、搬送部材搬送方向にみて左側)を向くように、二枚貝を貝受け治具に保持させる。殻カットステーションは、前記一方の側方と反対側の側方(例えば、搬送部材搬送方向にみて右側)において、平面視で二枚貝の靭帯と背向する部位で、身殻及び蓋殻の一部を切除して両殻間に隙間(以下「殻間隙間」という。)を形成する。身殻側貝柱カットステーションは、殻間隙間からカット刃を差し込んで、身殻の内面近傍で貝柱を切断する。蓋殻側貝柱カットステーションは、殻間隙間からカット刃を差し込んで、蓋殻の内面近傍で貝柱を切断する。むき身取り出しステーションは、蓋殻を開き、身殻から身を取り出す。
【0010】
本発明の第1の態様に係る除殻装置において、二枚貝投入ステーションと、殻カットステーションと、身殻側貝柱カットステーションと、蓋殻側貝柱カットステーションと、むき身取り出しステーションとは、それぞれ搬送部材の周回走行停止時において所定の貝受け治具と係合する位置に、二枚貝の搬送方向に順に並んで配置されているのが好ましい。
【0011】
本発明の第2の態様に係る、凹状の空間部を画成する皿状の上殻と、上殻より深い凹状の空間部を画成し該上殻に対向して当接する下殻と、上殻と下殻との間に形成された空間部に収容された身とを有する二枚貝(例えば帆立貝)の除殻装置は、二枚貝を直線方向に搬送する搬送コンベアと、搬送コンベアに沿って配置され、搬送コンベアによって搬送されている二枚貝に対して所定の処理又は操作を行って二枚貝から貝柱を取り出す除殻機構とを備えている。
【0012】
搬送コンベアは、駆動回転部材と、従動回転部材と、輪状の搬送部材と、複数の貝受け治具とを有する。駆動回転部材は、回転中心軸が水平方向に伸びるように配置され間欠的に回転する。従動回転部材も、回転中心軸が水平方向に伸びるように配置されている。輪状の搬送部材は、駆動回転部材と従動回転部材とに巻き掛けられて間欠的に周回走行する。各貝受け治具は、搬送部材の輪の外面側の部位に、搬送部材伸長方向に所定の間隔をあけて装着され、二枚貝を下殻が下向きとなる姿勢で保持する。
【0013】
除殻機構は、二枚貝投入ステーションと、腱カットステーションと、上殻側貝柱カットステーションと、外皮膜取り出しステーションと、下殻側貝柱カットステーションと、貝柱取り出しステーションとを有する。二枚貝投入ステーションは、下殻が下向きとなる姿勢で靭帯が搬送部材の一方の側方(例えば、搬送部材搬送方向にみて左側)を向くように、二枚貝を貝受け治具に保持させる。腱カットステーションは、上殻と下殻のスリット部から二枚貝内に腱切断刃を差し込んで腱を切断し、前記一方の側方と反対側の側方(例えば、搬送部材搬送方向にみて右側)において、平面視で二枚貝の靭帯と背向する部位で上殻を下殻から若干開かせて隙間を生じさせる。上殻側貝柱カットステーションは、上殻の内面近傍で貝柱を切断し、上殻を下殻から開かせる。外皮膜取り出しステーションは、二枚貝の外皮膜を取り出す。下殻側貝柱カットステーションは、下殻の内面近傍で貝柱を切断する。貝柱取り出しステーションは、二枚貝から貝柱を取り出す。
【0014】
本発明の第2の態様に係る除殻装置において、二枚貝投入ステーションと、腱カットステーションと、上殻側貝柱カットステーションと、外皮膜取り出しステーションと、下殻側貝柱カットステーションと、貝柱取り出しステーションとは、それぞれ搬送部材の周回走行停止時において所定の貝受け治具と係合する位置に、二枚貝の搬送方向に順に並んで配置されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る二枚貝の除殻装置によれば、簡素な構造でもって、むき身の鮮度ないしは品質を低下させることなく、自動的に高速で二枚貝の開殻及び除殻を行うことができ、高品質の二枚貝のむき身を低コストで大量に生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)は本発明に係る牡蠣の除殻装置の模式的な平面図であり、(b)は(a)に示す除殻装置の模式的な側面図であり、(c)は除殻装置の殻カットステーションにおける身殻及び蓋殻の切断手法を示す図であり、(d)は除殻装置の身殻側貝柱カットステーションにおける貝柱の切断手法を示す図であり、(e)は除殻装置の蓋殻側貝柱カットステーションにおける貝柱の切断手法を示す図であり、(f)は除殻装置のむき身取り出しステーションにおける牡蠣の身の取り出し手法を示す図である。
【
図2】(a)は本発明に係る帆立貝の除殻装置の模式的な平面図であり、(b)は(a)に示す除殻装置の模式的な側面図である。
【
図3】(a)、(b)及び(c)は、それぞれ、帆立貝の除殻装置の二枚貝投入ステーションに投入された帆立貝の模式的な側面図、平面断面図及び正面図である。
【
図4】(a)、(b)及び(c)は、それぞれ、除殻装置の腱カットステーションにおける帆立貝の模式的な平面断面図、正面図(90°回転した状態)及び側面断面図である。
【
図5】(a)、(b)及び(c)は、それぞれ、上殻側貝柱カットステーションにおける帆立貝の模式的な平面断面図、正面図(90°回転した状態)及び側面断面図であり、(d)は上殻側貝柱カットステーションにおいて上殻が開いた状態にある帆立貝の模式的な側面断面図である。
【
図6】(a)、(b)及び(c)は、それぞれ、除殻装置の外皮膜取り出しステーションにおける帆立貝の模式的な平面断面図、正面図(90°回転した状態)及び側面断面図である。
【
図7】(a)、(b)及び(c)は、それぞれ、下殻側貝柱カットステーションにおける帆立貝の模式的な平面断面図、正面図(90°回転した状態)及び側面断面図である。
【
図8】(a)、(b)及び(c)は、それぞれ、貝柱取り出しステーションにおける帆立貝の模式的な平面断面図、正面図(90°回転した状態)及び側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態1、2を具体的に説明する。
(実施形態1)
図1(a)、(b)に示すように、本発明の実施形態1に係る、養殖場等で採取された牡蠣1を開殻して除殻する除殻装置S1は、牡蠣1を直線方向(
図1(a)、(b)に示す位置関係では左向き)に搬送する搬送コンベア2と、搬送コンベア2に沿って配置され、搬送コンベア2によって搬送されている牡蠣1に対して所定の処理又は操作を行って開殻・除殻する除殻機構3とを備えている。なお、牡蠣1は、身4(
図1(f)参照。)と、身4を収容する身殻5と、身殻5の開口部を閉じる蓋殻6とを有する二枚貝である。
【0018】
搬送コンベア2は、モータ(図示せず)によって駆動される駆動回転部材7と、従動回転部材8と、輪状(無端)の搬送部材9(例えば、チェーン、ベルト等)と、複数の貝受け治具10とを有する。駆動回転部材7は、回転中心軸が水平方向に伸びるように配置され間欠的に回転する。従動回転部材8は、回転中心軸が水平方向に伸びるように配置されている。搬送部材9は、駆動回転部材7と従動回転部材8とに巻き掛けられて間欠的に周回走行する。各貝受け治具10は、搬送部材9の輪の外面側の部位に、搬送部材伸長方向に所定の間隔をあけて装着され、牡蠣1を身殻5が下向きとなる姿勢で保持する。なお、各貝受け治具10は、牡蠣1を所定の位置に正確にセットするセンタリング機構を備えている。
【0019】
除殻機構3は、搬送部材搬送方向(
図1(a)、(b)に示す位置関係では左向き)に順に並ぶ、第1~第3牡蠣投入ステーション11~13と、第1アイドルステーション14と、殻カットステーション15と、第2アイドルステーション16と、身殻側貝柱カットステーション17と、第3アイドルステーション18と、蓋殻側貝柱カットステーション19と、第4アイドルステーション20と、むき身取り出しステーション21と、第5アイドルステーション22と、殻排出ステーション23とを有する。
【0020】
第1~第3牡蠣投入ステーション11~13では、それぞれ、身殻5が下向きとなる姿勢で、靭帯25(蝶番)が搬送部材搬送方向にみて左方(以下「搬送部材左方」という。)を向くようにして、牡蠣1が貝受け治具10に保持される。なお、ここでは3基の牡蠣投入ステーション11~13を設けているが、これより多くてもよく(例えば4~5基)、また少なくてもよい(1~2基)。
【0021】
第1アイドルステーション14では、牡蠣1にはとくには処理又は操作は施されず、牡蠣1は一時的に待機状態となる。第2~第5アイドルステーション16、18、20、22も同様である。なお、第1~第5アイドルステーション14、16、18、20、22は省略してもよい。また、第1~第5アイドルステーション14、16、18、20、22は、状況に応じて牡蠣1に対して何らかの処理又は操作を施すステーションを増設する場合の設置スペースとして利用することができる(予備ステーション)。
【0022】
殻カットステーション15では、搬送部材左方と反対側(以下「搬送部材右方」をいう。)において、平面視で牡蠣1の靭帯25と背向する部位で、身殻5及び蓋殻6の一部が切除され、両殻間に隙間ないしは狭い開口部(以下「殻間隙間」という。)が形成される。具体的には、
図1(c)に示すように、牡蠣1が当て金26と押え部材27とにより固定された状態で、上側カット刃28及び下側カット刃29により身殻5及び蓋殻6の一部が切除され、殻間隙間が形成される。
【0023】
身殻側貝柱カットステーション17では、
図1(d)に示すように、牡蠣1が押え部材30で固定された状態で、殻間隙間から第1貝柱カット刃31が差し込まれ、身殻5の内面近傍で貝柱32が切断される。
【0024】
蓋殻側貝柱カットステーション19では、
図1(e)に示すように、牡蠣1が押え部材33で固定された状態で、殻間隙間から第2貝柱カット刃34が差し込まれ、蓋殻6の内面近傍で貝柱32が切断される。
【0025】
むき身取り出しステーション21では、
図1(f)に示すように、蓋殻6が開かれ、身殻5から身4が取り出される。
【0026】
殻排出ステーション23では、身4が取り出された後の空の身殻5及び蓋殻6が、除殻装置S1から排出される。
【0027】
以上、本発明の実施形態1に係る除殻装置S1によれば、簡素な構造でもって、むき身の鮮度ないしは品質を低下させることなく、自動的に高速で牡蠣1の開殻及び除殻を行うことができ、高品質の牡蠣1のむき身を低コストで大量に生産することができる。なお、除殻装置S1は、牡蠣1にフジツボや汚れが付着していても、そのままの状態で牡蠣1を開殻・除殻することができる。
【0028】
(実施形態2)
以下、
図2~
図8を参照しつつ、本発明の実施形態2を説明する。
図2(a)、(b)に示すように、本発明の実施形態2に係る、養殖場等で採取された帆立貝41を開殻して除殻する除殻装置S2は、帆立貝41を直線方向(
図2(a)、(b)に示す位置関係では左向き)に搬送する搬送コンベア42と、搬送コンベア42に沿って配置され、搬送コンベア42によって搬送されている帆立貝41に対して所定の処理又は操作を行って開殻・除殻する除殻機構43とを備えている。なお、帆立貝41は、上殻44と、下殻45と、上殻44と下殻45との間に形成された空間部に収容された身(すなわち貝柱46、腱47、外皮膜48(ヒモ)、ウロ49(
図3(b)参照))とを有する二枚貝である。
【0029】
搬送コンベア42は、モータ(図示せず)によって駆動される駆動回転部材50と、従動回転部材51と、輪状(無端)の搬送部材52(例えば、チェーン、ベルト等)と、複数の貝受け治具53とを有する。駆動回転部材50は、回転中心軸が水平方向に伸びるように配置され間欠的に回転する。従動回転部材51は、回転中心軸が水平方向に伸びるように配置されている。搬送部材52は、駆動回転部材50と従動回転部材51とに巻き掛けられて間欠的に周回走行する。各貝受け治具53は、搬送部材52の輪の外面側の部位に、搬送部材伸長方向に所定の間隔をあけて装着され、帆立貝41を下殻45が下向きとなる姿勢で保持する。なお、各貝受け治具53は、帆立貝41を所定の位置に正確にセットするセンタリング機構を備えている。
【0030】
除殻機構43は、搬送部材搬送方向(
図2(a)、(b)に示す位置関係では左向き)に順に並ぶ、第1、第2帆立貝投入ステーション54、55と、アイドルステーション56と、腱カットステーション57と、上殻側貝柱カットステーション58と、外皮膜取り出しステーション59と、下殻側貝柱カットステーション60と、貝柱取り出しステーション61と、殻排出ステーション62とを有する。
【0031】
第1、第2帆立貝投入ステーション54、55では、それぞれ、下殻45が下向きとなる姿勢で、靭帯64(蝶番)が搬送部材搬送方向にみて左方(以下「搬送部材左方」という。)を向くようにして、帆立貝41が貝受け治具53によって保持される。なお、ここでは2基の帆立貝投入ステーション54、55を設けているが、これより多くてもよく(例えば3~4基)、また少なくてもよい(1基)。
図3(a)~(c)に示すように、第1、第2帆立貝投入ステーション54、55に投入される帆立貝41は、凹状の空間部を画成する皿状の上殻44と、上殻44より深い凹状の空間部を画成し上殻44に対向して当接する下殻45と、上殻44と下殻45との間に形成された空間部に収容された貝柱46、腱47、外皮膜48(ヒモ)及びウロ49とを有する。
【0032】
アイドルステーション56では、帆立貝41にはとくには処理又は操作は施されず、帆立貝41は一時的に待機状態となる。なお、アイドルステーション56は省略してもよい。また、アイドルステーション56は、状況に応じて帆立貝41に対して何らかの処理又は操作を施すステーションを増設する場合の設置スペースとして利用することができる(予備ステーション)。
【0033】
腱カットステーション57では、
図4(a)~(c)にも示すように、上殻44と下殻45の間のスリット部65から帆立貝内に腱切断刃67を差し込んで腱47を切断し、搬送部材左方と反対側の側方(以下「搬送部材右方」という。)において、平面視で帆立貝41の靭帯64と背向する部位で上殻44と下殻45とを開かせて隙間(以下「殻間隙間」という。)を生じさせる。
【0034】
上殻側貝柱カットステーション58では、
図5(a)~(d)にも示すように、両殻間隙間から帆立貝内に第1貝柱切断刃70を差し込んで、上殻44の内面近傍で貝柱46を切断し、上殻44を下殻45から大きく開かせる。
【0035】
外皮膜取り出しステーション59では、
図6(a)~(c)に示すように、バキュームパイプ71で減圧吸引することにより、帆立貝41の外皮膜48(ヒモ)を取り出して除去する。
【0036】
下殻側貝柱カットステーション60では、
図7(a)~(c)に示すように、第2貝柱切断刃72により下殻45の内面近傍で貝柱46を切断する。
【0037】
貝柱取り出しステーション61では、
図8(a)~(c)に示すように、貝柱排出装置73により、下殻45から貝柱46が取り出される。
【0038】
殻排出ステーション62では、貝柱46が取り出された後の空の上殻44及び下殻45が、除殻装置S2から排出される。
【0039】
以上、本発明の実施形態2に係る除殻装置S2によれば、簡素な構造でもって、むき身の鮮度ないしは品質を低下させることなく、自動的に高速で帆立貝41の開殻及び除殻を行うことができ、高品質の帆立貝の貝柱を低コストで大量に生産することができる。なお、除殻装置S2は、帆立貝41に異物や汚れが付着していても、そのままの状態で帆立貝41を開殻・除殻することができる。
【符号の説明】
【0040】
S1 除殻装置(実施形態1)、S2 除殻装置(実施形態2)、1 牡蠣、2 搬送コンベア、3 除殻機構、4 身、5 身殻、6 蓋殻、7 駆動回転部材、8 従動回転部材、9 搬送部材、10 貝受け治具、11 第1牡蠣投入ステーション、12 第2牡蠣投入ステーション、13 第3牡蠣投入ステーション、14 第1アイドルステーション、15 殻カットステーション、16 第2アイドルステーション、17 身殻側貝柱カットステーション、18 第3アイドルステーション、19 蓋殻側貝柱カットステーション、20 第4アイドルステーション、21 むき身取り出しステーション、22 第5アイドルステーション、23 殻排出ステーション、41 帆立貝、42 搬送コンベア、43 除殻機構、44 上殻、45 下殻、46 貝柱、47 腱、48 外皮膜、49 ウロ、50 駆動回転部材、51 従動回転部材、52 搬送部材、53 貝受け治具、54 第1帆立貝投入ステーション、55 第2帆立貝投入ステーション、56 アイドルステーション、57 腱カットステーション、58 上殻側貝柱カットステーション、59 外皮膜取り出しステーション、60 下殻側貝柱カットステーション、61 貝柱取り出しステーション、62 殻排出ステーション。