IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国砿業大学の特許一覧 ▶ 華亭煤業集団有限責任公司の特許一覧 ▶ 淮陰工学院の特許一覧 ▶ 徐州弘毅科技発展有限公司の特許一覧

特開2022-52684干渉信号での鉱山による地震のP波を識別するための方法
<>
  • 特開-干渉信号での鉱山による地震のP波を識別するための方法 図1
  • 特開-干渉信号での鉱山による地震のP波を識別するための方法 図2
  • 特開-干渉信号での鉱山による地震のP波を識別するための方法 図3
  • 特開-干渉信号での鉱山による地震のP波を識別するための方法 図4
  • 特開-干渉信号での鉱山による地震のP波を識別するための方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022052684
(43)【公開日】2022-04-04
(54)【発明の名称】干渉信号での鉱山による地震のP波を識別するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01V 1/30 20060101AFI20220328BHJP
【FI】
G01V1/30
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020197538
(22)【出願日】2020-11-27
(31)【優先権主張番号】202011007422.3
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】518431602
【氏名又は名称】中国砿業大学
【氏名又は名称原語表記】CHINA UNIVERSITY OF MINING AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】No.1,Daxue Road,Tongshan,Xuzhou,Jiangsu,221116,China
(71)【出願人】
【識別番号】520468690
【氏名又は名称】華亭煤業集団有限責任公司
【氏名又は名称原語表記】Huating Coal Industry Group Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 109, Lianhu Road, Shangting Community, Xihua Town, Huating City, Pingliang City, Gansu Province,China
(71)【出願人】
【識別番号】520468704
【氏名又は名称】淮陰工学院
【氏名又は名称原語表記】HUAIYIN INSTITUTE OF TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】Meicheng Road Campus, Huaiyin Institute of Technology, No. 1, Meicheng East Road, Huaian City, Jiangsu Province,China
(71)【出願人】
【識別番号】520468715
【氏名又は名称】徐州弘毅科技発展有限公司
【氏名又は名称原語表記】Xuzhou Hongyi Technology Development Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 20-1-611, Zhongneng Science and Technology Park, Third Ring South Road, Quanshan District, Xuzhou City,Jiangsu, China
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】▲鞏▼ 思園
(72)【発明者】
【氏名】張 汝佩
(72)【発明者】
【氏名】劉 志文
(72)【発明者】
【氏名】瀋 威
(72)【発明者】
【氏名】薛 再君
(72)【発明者】
【氏名】牛 佳勝
(72)【発明者】
【氏名】白 金正
(72)【発明者】
【氏名】陸 強
(72)【発明者】
【氏名】馬 志鋒
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA03
2G105BB01
2G105EE02
2G105FF16
2G105GG05
2G105MM02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】干渉信号を識別し除去して各チャネルの効果的な鉱山による地震波信号を取得する、干渉信号での鉱山による地震のP波を識別するための方法を提供する。
【解決手段】まず干渉信号を含む可能性のある鉱山による地震波信号を収集して記憶し、記憶された各チャネルの信号のうちの鉱山による地震波信号のエネルギーが最大であるメカニズムに基づいて、対応する最適なP波の到達時刻を選択し、初期に識別される全チャネルのP波の到達時刻ベクトルTを形成し、Tを相関判定式に代入して2つのチャネルによって識別された信号の発生源が同じか否かを判断し、最適かつ効果的なチャネルに基づく識別方法により、効果的な鉱山による地震波信号の波形を含むチャネルkを決定し、チャネルkを基準として、補正が必要な干渉信号チャネルを判断し、そして該チャネルの鉱山による地震波信号のP波の到達時刻の有効識別範囲を決定し、最適なP波の到達時刻を識別する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小地震監視システムにより、干渉信号を含む可能性のある鉱山による地震波信号を収集して記憶するステップ(1)であって、
炭鉱坑内のトンネルの床に取り付けられたn個の地震波受信チャネルで構成される監視ネットワークにより、特定のサンプリング周波数SFで、切羽に対する作業とトンネルの掘削の過程中における、石炭含有岩内で発生した鉱山による地震によって放出された地震波をリアルタイムで収集し、そして、地上受信ユニットを介して、各受信チャネルからフィードバックされた鉱山による地震波信号をリアルタイムで記憶するステップ(1)と、
鉱山による地震波信号のエネルギーが最大であるメカニズムに基づいて、各チャネルのP波の到達時刻ベクトルから、対応する最適なP波の到達時刻を選択して、初期に識別される全チャネルの最適なP波の到達時刻ベクトルTを構成するステップ(3)であって、
全チャネルの最適なP波の到達時刻ベクトルを相関判定式に代入して到達時刻の相関行列Rを算出し、任意の2つのチャネルによって識別された信号が同一の鉱山による地震の地震源によって励起された信号であるか否かを判断するために使用するステップ(4)であって、
西安80座標系では、各地震波受信チャネルの空間座標[x y z]を測定し、同時にトンネルの床における各チャネルのP波の速度値VP、既知の震源位置での発破信号に基づいて逆推定し、任意のチャネルiとチャネルjの、ステップ(3)で得られた全チャネルの最適なP波の到達時刻ベクトルを、下記のチャネル相関算出式に代入して算出を行い、相関行列Rを形成し、
Rij=1である場合、チャネルiとチャネルjによって記憶されている鉱山による地震信号は、同一の鉱山による地震の地震源によって励起された信号と決定され、Rij=0である場合、チャネルiとチャネルjの信号が相関していないことを意味し、その結果、得られたデータにより相関行列Rを構成するステップ(4)と、
相関行列Rに対して最適かつ効果的なチャネルの識別方法により、効果的な鉱山による地震波信号を含むチャネルkを決定するステップ(5)であって、
最適かつ効果的なチャネルの識別方法は、相関行列Rの列ごとに和をとり、
効果的な鉱山による地震波信号チャネルkが、行ベクトルRcのうちの最大値max(Rc)が位置するチャネルであることを決定し、最大値が複数の場合、各チャネルの到達時刻においてチャネルkの最適なP波の到達時刻が最も古いと決定する方法であるステップ(5)と、
チャネルkを基準として、補正が必要な干渉信号チャネルを判断し、及び、該チャネルの、鉱山による地震波信号の最適なP波の到達時刻の有効識別範囲を決定するステップ(6)であって、
チャネルkを基準として、行ベクトルRcのうちのmax(Rc)未満の各チャネルiのそれぞれに対して、範囲拡大係数がαである場合における、各チャネルの鉱山による地震波信号の、最適なP波の到達時刻の有効識別範囲を決定し、
次に、各有効識別範囲に基づいて、各チャネルiの最適なP波の到達時刻(TP i)Cが該範囲内にあるか否かを判断し、到達時刻が該範囲内にない場合、該チャネルを補正が必要な干渉信号チャネルとして記憶するステップ(6)と、
鉱山による地震波信号のエネルギーが最大であるメカニズムに基づいて、補正が必要な干渉信号チャネルの、対応するTPが有効識別範囲内にある時の最適なP波の到達時刻を識別するステップ(7)であって、
TP iにステップ(6)で決定された有効識別範囲に含まれる到達時刻がない場合、(TP i)Cは存在せず、該チャネルを削除しており、有効識別範囲に含まれる到達時刻がある場合、鉱山による地震波信号のエネルギーが最大であるメカニズムに基づいて、ステップ(3)に従って、有効識別範囲内において、チャネルiの最適なP波の到達時刻(TP i)Cを再決定し、そして、干渉信号チャネルを補正するステップを完了させるステップ(7)と、を含むことを特徴とする干渉信号での鉱山による地震のP波を識別するための方法。
【請求項2】
前記第1の閾値、第2の閾値、及び第3の閾値は、フロントタイム窓Wi B (t)をp個のサンプリングポイントだけシフトバックし、Ei(t)にヒルベルト変換し、変換された窓内の信号の平均値Ei avと標準偏差Ei sdを算出し、第1の閾値がH1 i(t)= Ei av+3Ei sdとし、第2の閾値、及び第3の閾値が信号対ノイズ比SNRの倍数とする方法によって決定される、ことを特徴とする請求項1に記載の干渉信号での鉱山による地震のP波を識別するための方法。
【請求項3】
前記地震波受信チャネルは地震波ピックアップであることを特徴とする請求項1に記載の干渉信号での鉱山による地震のP波を識別するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉信号での鉱山による地震のP波を識別するための方法に関し、炭鉱安全採掘の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
現在、微小地震監視は、地への衝撃圧力による危険性の分析と早期警告を行うための重要な方法であり、なお、鉱山による地震波信号のうちのP波の識別精度は、鉱山による地震の測位とエネルギー解析の正確さに大きく影響する。識別精度が悪い場合、微小地震監視方法は、分析と早期警告において適切な役割を果たすことができなくなる可能性がある。P波を識別するための従来の方法は、例えば、エネルギー分析法、偏光分析法、高次統計法、フラクタル法、AIC法、スペクトル分析法、又は人工ニューラルネットワーク法などがあり、環境の背景ノイズが弱い場合、P波の到達時刻を正確に識別できるが、しかし、炭鉱坑内の作業環境が騒がしく、掘削工事、車両での輸送、大型電気設備の運転等の様々な干渉源で発生した干渉信号は、上記の識別方法の正確さを深刻に制約しており、その結果、干渉信号を鉱山による地震波信号として誤って識別しまったため、記憶されている鉱山による地震波信号が有効であるか否かを正確に識別できず、結局として、鉱山による地震の測位とエネルギー解析の正確さを確保できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来技術における上記不足を鑑み、鉱山による地震波信号における干渉信号を正確に識別できることにより、正確かつ効果的な鉱山による地震波信号を取得し、後段の鉱山による地震の測位とエネルギー解析の正確さを確保する、干渉信号での鉱山による地震のP波を識別するための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明の技術的解決手段として、干渉信号での鉱山による地震のP波を識別するための方法は、
微小地震監視システムにより、干渉信号を含む可能性のある鉱山による地震波信号を収集して記憶するステップ(1)であって、
【0005】
炭鉱坑内のトンネルの床に取り付けられたn個の地震波受信チャネルで構成される監視ネットワークにより、特定のサンプリング周波数SFで、切羽に対する作業とトンネルの掘削の過程中における、石炭含有岩内で発生した鉱山による地震によって放出された地震波をリアルタイムで収集し、そして、地上受信ユニットを介して、各受信チャネルからフィードバックされた鉱山による地震波信号をリアルタイムで記憶し、
【0006】
ここで、掘削工事、採掘車両の通過、スイッチによる励起、作業者の操作などの影響により、これら記憶されている鉱山による地震波形信号の一部は、除去不可能な干渉信号が含まれるステップ(1)と、
移動時間窓と識別判断基準を設定して各チャネルのP波の到達時刻ベクトルTPを決定するステップ(2)であって、
いずれかのチャネルをチャネルi(i=1..n)とし、チャネルiに対応して記憶されている鉱山による地震波信号x(t)に対して、フロントタイム窓WB i(t)、バックタイム窓WA i(t) 、及び時間遅延窓WD i(t)という3つの移動時間ステップが1/SFの移動時間窓を一定の長さで設定し、以下のチャネルiの識別判断基準式を決定し、
R i≧H i(t)且つR i(t)≧H i(t)且つR i(t)≧H i(t)
但し、R1 i(t)は移動時間窓WB i(t)内の信号振幅の絶対値の平均値であり、H i(t)は第1の閾値であり、R i(t)はWA i(t)内の信号振幅の絶対値の平均値とWB i(t)内の信号振幅の絶対値の平均値との比であり、Hi (t)は第2の閾値であり、R i(t)はWD i(t)内の信号振幅の絶対値の平均値とWB i(t)内の信号振幅の絶対値の平均値との比であり、Hi (t)は第3の閾値であり、
上記識別判断基準式によれば、チャネルiのP波の到達時刻ベクトルTP iを取得し、更に、n個のチャネルに対してそれぞれn個の異なるP波の到達時刻ベクトルTP i(i=1..n)を形成できるステップ(2)と、
【0007】
鉱山による地震波信号のエネルギーが最大であるメカニズムに基づいて、各チャネルのP波の到達時刻ベクトルから、対応する最適なP波の到達時刻を選択して、初期に識別される全チャネルの最適なP波の到達時刻ベクトルTを構成するステップ(3)であって、
一般に、鉱山による地震波信号の波形のエネルギーが記録されている波形の大部分であるという、鉱山による地震波信号のエネルギーが最大であるメカニズムに基づいて、R i(t)のうちの最大値に対応する時間t max R i(t)を、チャネルiの最適なP波の到達時刻を確認する最適な時刻として決定し、つまり、TP iのうちのt max R i(t)に最も近い時刻をチャネルiの最適なP波の到達時刻(TP i)Cとして選択し、n個のチャネルに対して繰り返し処理を掛けることにより、全チャネルの最適なP波の到達時刻ベクトルT=[(TP i)C…(TP n)C]を取得するステップ(3)と、
【0008】
全チャネルの最適なP波の到達時刻ベクトルを相関判定式に代入して、到達時刻の相関行列Rを算出し、任意の2つのチャネルによって識別された信号が同一の鉱山による地震の地震源によって励起された信号であるか否かを判断するために使用するステップ(4)であって、
【0009】
西安80座標系では、各地震波受信チャネルの空間座標[x y z]を測定し、同時にトンネルの床における各チャネルのP波の速度値VPを、既知の震源位置での発破信号に基づいて逆推定し、任意のチャネルiとチャネルjの、ステップ(3)で得られた全チャネルの最適なP波の到達時刻ベクトルを、下記のチャネル相関算出式に代入して算出を行い、相関行列Rを形成し、
【0010】
Rij=1である場合、チャネルiとチャネルjによって記憶されている鉱山による地震信号は、同一の鉱山による地震の地震源によって励起された信号と決定され、Rij=0である場合、チャネルiとチャネルjの信号が相関していないことを意味し、その結果、得られたデータにより相関行列Rを構成するステップ(4)と、
【0011】
相関行列Rに対して最適かつ効果的なチャネルの識別方法により、効果的な鉱山による地震波信号(干渉信号が含まれない鉱山による地震波信号)を含むチャネルkを決定するステップ(5)であって、
最適かつ効果的なチャネルの識別方法は、相関行列Rの列ごとに和をとり、
【0012】
効果的な鉱山による地震波信号チャネルkが、行ベクトルRcのうちの最大値max(Rc)が位置するチャネルであることを決定し、最大値が複数の場合、各チャネルの到達時刻においてチャネルkの最適なP波の到達時刻が最も古いと決定する方法であるステップ(5)と、
【0013】
チャネルkを基準として、補正が必要な干渉信号チャネルを判断し、及び、該チャネルの、鉱山による地震波信号の最適なP波の到達時刻の有効識別範囲を決定するステップ(6)であって、
【0014】
チャネルkを基準として、行ベクトルRcのうちのmax(Rc)未満の各チャネルiのそれぞれに対して、範囲拡大係数がαである場合における、各チャネルの鉱山による地震波信号の、最適なP波の到達時刻の有効識別範囲を決定し、
【0015】
次に、それぞれの有効識別範囲に基づいて、各チャネルiの最適なP波の到達時刻(TP i)Cが該範囲内にあるか否かを判断し、到達時刻が該範囲内にない場合、該チャネルを補正が必要な干渉信号チャネルとして記憶するステップ(6)と、
【0016】
鉱山による地震波信号のエネルギーが最大であるメカニズムに基づいて、補正が必要な干渉信号チャネルの、対応するTPが有効識別範囲内にある時の最適なP波の到達時刻を識別するステップ(7)であって、
【0017】
TP iにステップ(6)で決定された有効識別範囲に含まれる到達時刻がない場合、(TP i)Cは存在せず、該チャネルを削除しており、有効識別範囲に含まれる到達時刻がある場合、鉱山による地震波信号のエネルギーが最大であるメカニズムに基づいて、ステップ(3)に従って、有効識別範囲内において、チャネルiの最適なP波の到達時刻(TP i)Cを再決定し、干渉信号チャネルを補正するステップを完了させるステップ(7)と、
を含む。
更に、前記の第1の閾値、第2の閾値、及び第3の閾値は、フロントタイム窓WB i(t)をp個のサンプリングポイントだけシフトバックし、Ei(t)にヒルベルト変換し、変換された窓内の信号の平均値Ei avと標準偏Ei sdを算出し、第1の閾値がH1 i(t)= Ei av+3Ei sdとし、第2の閾値、及び第3の閾値が信号対ノイズ比SNRの倍数とする方法によって決定される。
更に、前記の地震波受信チャネルは地震波ピックアップである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、従来技術と比較すると、まず、既存の微小地震監視システムにより干渉信号を含む可能性のあるn個のチャネルの鉱山による地震波信号を収集して記憶し、長さの異なる3つの移動時間窓を設定し、識別判断基準式を満たすチャネルiのような単一チャネルのP波の到達時刻ベクトルTP iを算出し、各チャネルに記憶された信号のうち、鉱山による地震波信号のエネルギーが最大であるメカニズムに基づいてTP iから対応する最適なP波の到達時刻(TP i)Cを選択し、初期に識別される全チャネルのP波の到達時刻ベクトルT=[(TP i)C…(TP n)C]を構成し、Tを相関判定式に代入して到達時刻の相関行列Rを算出することにより2つのチャネルによって識別された信号の発生源が同じであるか否かを判断し、最適かつ効果的なチャネルの識別方法により、到達時刻の相関行列Rに対して、効果的な鉱山による地震波信号の波形を含むチャネルkを決定し、チャネルkを基準として補正が必要な干渉信号チャネルを判断し、及び該チャネルの鉱山による地震波信号のP波の到達時刻の有効識別範囲を決定し、鉱山による地震波信号のエネルギーが最大であるメカニズムに基づいて補正が必要なチャネルの、対応するTPが有効識別範囲内にある時の最適なP波の到達時刻を識別し、その結果、干渉信号を識別して除去し、各チャネルの効果的な鉱山による地震波信号を取得する。したがって、本発明は、鉱山による地震波信号における干渉信号を正確に識別でき、干渉信号によるP波の到達時刻の誤識別という問題を解決し、それによって正確かつ効果的な鉱山による地震波信号を取得し、後段の鉱山による地震の測位とエネルギー解析の正確さを確保する。また、本発明は、実用性が高く、結果の信頼性が高く、適用範囲が広く、且つコンピュータプログラミングが容易にするという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の識別フローチャートである。
図2】実施例において収集された、干渉信号を含む鉱山による地震波信号の波形図である。
図3】実施例における、チャネル8のP波の到達時刻ベクトルTP 8を算出する概略図である。
図4】実施例における、鉱山による地震波信号のエネルギーが最大であるメカニズムに基づいてチャネル8の tmax(R2 8(t))を決定する概略図である。
図5】実施例における、鉱山による地震波信号のエネルギーが最大であるメカニズムに基づいて、有効識別範囲内でチャネル8のtmax(R2 8(t))を決定する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明については、更に説明する。
<実施例>
図1に示すように、具体的に、
微小地震監視システムにより、干渉信号を含む可能性のある鉱山による地震波信号を収集して記憶するステップ(1)であって、
【0021】
図2に示すように、炭鉱坑内のトンネルの床に取り付けられた8個の地震波受信チャネルで構成される監視ネットワークにより、サンプリング周波数500Hzで、切羽に対する作業とトンネルの掘削の過程中における、石炭含有岩内で発生した鉱山による地震によって放出された地震波をリアルタイムで収集し、且つ、地上受信ユニットを介して、各受信チャネルからフィードバックされた鉱山による地震波信号をリアルタイムで記憶し、ここで、掘削工事、採掘車両の通過、スイッチによる励起、作業者の操作などの影響により、これら記憶されている鉱山による地震波形信号の一部は、除去不可能な干渉信号が含まれるステップ(1)と、
移動時間窓と識別判断基準を設定して各チャネルのP波の到達時刻ベクトルTPを決定するステップ(2)であって、
いずれかのチャネルをチャネルi(i=1..n)とし、チャネルiに対応して記憶されている鉱山による地震波信号x(t)に対して、フロントタイム窓WB i(t)、バックタイム窓WA i(t) 、及び時間遅延窓WD i(t)という3つの移動時間ステップが1/SFの移動時間窓を一定の長さで設定し、以下のチャネルiの識別判断基準式を決定し、
R i≧H i(t)且つR i(t)≧H i(t)且つR i(t)≧H i(t)
但し、R1 i(t)は移動時間窓WB i(t)内の信号振幅の絶対値の平均値であり、H i(t)は第1の閾値であり、R i(t)はWA i(t)内の信号振幅の絶対値の平均値とWB i(t)内の信号振幅の絶対値の平均値との比であり、Hi (t)は第2の閾値であり、R i(t)はWD i(t)内の信号振幅の絶対値の平均値とWB i(t)内の信号振幅の絶対値の平均値との比であり、Hi (t)は第3の閾値であり、上記の第1の閾値、第2の閾値、及び第3の閾値は、フロントタイム窓WB i(t)を20個のサンプリングポイントだけシフトバックし、第1の閾値、第2の閾値、及び第3の閾値をいずれも定数とし、ここで、定数=4であるとする方法によって決定され、
【0022】
図3に示すように、上記識別判断基準式によれば、チャネルiのP波の到達時刻ベクトルTP iを取得し、更に、8個のチャネルのそれぞれに対して、TP 1 =[11.274 11.32 11.326 11.336];TP 2 =[11.27]; TP 3 =[11.312 11.326];TP 4 =[11.322 11.366];TP 5 =[1.816 1.82 1.832 2.288 3.018 3.026 3.03 3.034 3.038 3.052 3.952 3.97 3.974 4.812];TP 6 =[11.31 11.342];TP 7 =[11.372 11.382 11.394];TP 8 =[10.434 10.458 10.466 11.378 11.386]という8個の異なるP波の到達時刻ベクトルを形成することができるステップ(2)と、
【0023】
鉱山による地震波信号のエネルギーが最大であるメカニズムに基づいて、各チャネルのP波の到達時刻ベクトルから、対応する最適なP波の到達時刻を選択して、初期に識別される全チャネルの最適なP波の到達時刻ベクトルTを構成するステップ(3)であって、
鉱山による地震波信号のエネルギーが最大であるメカニズムとは、一般に、鉱山による地震の波形のエネルギーが、記憶されている波形の大部分であることであり、このメカニズムによれば、R i(t)のうちの最大値に対応する時間tmaxR i(t)を、チャネルiの最適なP波の到達時刻を確認する最適な時刻として決定し、つまり、TP iのうちのtmaxR i(t)に最も近い時刻をチャネルiの最適なP波の到達時刻(TP i)Cとして選択し、ここで、(TP i)Cはそれぞれ[11.298 11.298 11.314 11.326 1.814 11.312 11.372 10.458]であり、そして、全チャネルの最適なP波の到達時刻ベクトルT=[11.32 11.27 11.312 11.322 1.816 11.31 11.372 10.458]を取得するステップ(3)と、
【0024】
全チャネルの最適なP波の到達時刻ベクトルを相関判定式に代入して到達時刻の相関行列Rを算出し、任意の2つのチャネルによって識別された信号が同一の鉱山による地震の地震源によって励起された信号であるか否かを判断するために使用するステップ(4)であって、
【0025】
西安80座標系では、算出の便宜上、現在の鉱山掘削工事計画の左下隅にある境界点を原点として再決定し、座標系を並進移動し、各地震波受信チャネルの空間座標[x y z]を測定し、同時にトンネルの床における各チャネルのP波の速度値VPを、既知の震源位置での発破信号に基づいて逆推定し、具体的には、以下の表のとおりであり、
【0026】
任意のチャネルiとチャネルjの、ステップ(3)で得られた全チャネルの最適なP波の到達時刻ベクトルを、下記のチャネル相関算出式に代入して算出を行い、相関行列Rを形成し、
Rij=1である場合、チャネルiとチャネルjによって記憶されている鉱山による地震信号は、同一の鉱山による地震の地震源によって励起された信号と決定され、Rij=0である場合、チャネルiとチャネルjの信号が相関していないことを意味し、その結果、得られたデータにより相関行列Rを構成するステップ(4)と、
【0027】
最適かつ効果的なチャネルの識別方法により、相関行列Rに対して、効果的な鉱山による地震波信号(干渉信号が含まれない鉱山による地震波信号)を含むチャネルを決定するステップ(5)であって、
【0028】
最適かつ効果的なチャネルの識別方法は、具体的に、相関行列Rの列ごとに和をとり、行ベクトルRC= [5 4 6 5 1 6 6 1]を取得し、効果的な鉱山による地震波信号チャネルkが、行ベクトルRCのうちの最大値max(RC)が位置するチャネルであり、つまり、チャネル3、6、7は和が6であることを確認し、3つのチャネルのうちのチャネル6の最適なP波の到達時刻が最も古いため、最適かつ効果的なチャネルがチャネル6であると決定する方法ステップ(5)と、
【0029】
チャネル6を基準として、補正が必要な干渉信号チャネルを判断し、及び、該チャネルの、鉱山による地震波信号の最適なP波の到達時刻の有効識別範囲を決定するステップ(6)であって、
【0030】
チャネル6を基準として、行ベクトルRCのうちのmax(RC)未満の各チャネルに、チャネル1、2、4、5、8の、鉱山による地震波信号は範囲拡大係数がα=1.05である時の最適なP波の到達時刻の有効識別範囲がそれぞれ[10.69,11.96]、[10.726,11.925]、[10.72,11.94]、[10.75,11.9]、及び[10.71,11.94]であることを決定し、
次に、上記有効識別範囲に基づいて、対応する(T1 P)C=11.32、(T2 P)C =11.27、(T4 P)C =11.322、(T5 P)C =1.816、(T8 P)C =10.458がその範囲内にあるか否かを判断し、その結果、チャネル5及び8が該範囲内にないため、補正が必要な干渉信号チャネルとして記憶されるステップ(6)と、

【0031】
鉱山による地震波信号のエネルギーが最大であるメカニズムに基づいて、補正が必要な干渉信号チャネルの、対応するTPが有効識別範囲内にある時の最適なP波の到達時刻を識別するステップ(7)であって、
チャネル5である場合、TP 5に識別範囲[10.75,11.9]に含まれるP波の到達時刻がないため、(TP 5)cは存在せず、そのチャネルで受信した鉱山による地震波信号を削除しており、チャネル8である場合、TP 8に識別範囲[10.71,11.94]に含まれるP波の到達時刻があるため、識別範囲内においてtmaxR i(t)が11.35であることを決定でき、これにより、チャネル8のP波の到達時刻ベクトルから、11.378を対応する最適なP波の到達時刻として選択し、その結果、干渉信号チャネルの補正のステップを完了させるステップ(7)と、を含む。
更に、上記地震波受信チャネルは地震波ピックアップである。
上記地震波受信チャネルで構成される監視ネットワーク及び地上受信ユニットは、いずれも炭鉱坑内の既存の設備である。
図1
図2
図3
図4
図5